説明

アナログ信号の伝送システム及び監視システム

【課題】監視システム等のアナログ信号を伝送する伝送システムにおいて、配線を簡素化して容易に設置可能であり、安価なアナログ信号の伝送システムを提供する。
【解決手段】アナログ信号を発生する電子機器として監視カメラ10と、監視カメラ10のアナログ信号を受信する映像受信装置20との間をLANケーブル30で配線する。LANケーブル30を構成する電線の一部を監視カメラ10のグランドに接続する。このように構成することで、電源に映像信号を重畳させることなく、LANケーブル1本で映像信号の伝送と、監視カメラへの電源の供給とが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ信号の伝送システムに関し、特に監視カメラによって撮影された映像を映像受信装置に伝送する監視システムにおける映像信号の伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
CCDを撮像素子とするビデオカメラを利用した監視カメラを屋内外に設置し、監視カメラによって撮影された映像をモニタ等の映像受信装置に伝送する監視システムが用いられている。この監視システムでは、監視カメラで捉えた映像・音声信号をアナログ変換し、監視カメラと離れた場所に設置された映像受信装置に伝送して処理し、映像受信装置で記録するとともに表示部に映像を表示する構成であるため、有線を基本とする。このように、設置場所が無人であっても監視できることから、防犯や監視の目的だけでなく、人が立ち入れない場所の異常監視、ダム、河川、火山などの状況の監視・記録・計測にも使用される。
【0003】
映像受信装置は、監視カメラと映像受信装置との間を同軸ケーブルによって接続されるものであり、配線の方法により、電源分離型と電源重畳型(ワンケーブルタイプ)の2種類がある(特許文献1、2参照)。電源分離型では、映像・音声信号を伝送する同軸ケーブルと、監視カメラに電源を供給する専用のケーブルの2本のケーブルによって配線する。電源重畳型では、監視カメラと映像受信装置との間を同軸ケーブル1本で配線し、映像受信装置は同軸ケーブルにより監視カメラに電源を供給すると同時に、監視カメラからの映像信号を分離受信し、監視カメラは映像受信装置から電源を受給し、映像信号をケーブル上に重畳する。電源重畳型の場合、カメラ側に電源工事が必要でないため、電源工事が削減できるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−61331号公報
【特許文献2】特開2010−114867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電源に映像信号を重畳させる場合、重畳回路や分離回路を、監視カメラや映像受信装置、又はこれらとは別に設ける必要がある。また、同軸ケーブルは値段が高い上、同軸ケーブルを用いた設置工事は、設置場所・カメラ台数・配線ケーブル長等の設置環境により変わるため、設置工事のための専門業者は限られる。
【0006】
したがって、本発明は、配線を簡素化して容易に設置可能であり、安価なアナログ信号の伝送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係るアナログ信号の伝送システムは、アナログ信号を発生する電子機器と、アナログ信号を伝送するLANケーブルと、アナログ信号を受信する受信装置とを備え、LANケーブルを構成する電線の一部が、電子機器のグランドに接続されることを特徴とする。一般に流通している安価なLANケーブルを用いることで、電力供給のためのケーブルや重畳回路や分離回路を用いることなく、かつ、配線を簡素化でき、安価なアナログ信号の伝送システムを提供することができる。
【0008】
電子機器は撮影装置であり、アナログ信号は映像信号であり、記録装置は映像受信装置であり、電線は、映像信号と、撮影装置のグランドと、記録装置から供給される電源に接続される。
【0009】
電線のうち、映像信号及び撮影装置のグランドに割り当てられる電線以外の全ての電線がグランドに接続される。
【0010】
アナログ信号は、音声信号を含んでもかまわない。
【0011】
本発明に係る監視システムは、監視カメラと、監視カメラによって撮影され生成される映像信号を伝送するLANケーブルと、LANケーブルによって伝送された映像信号を受信する映像受信装置とを備え、LANケーブルを構成する電線の一部が、監視カメラのグランドに接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配線を簡素化し、安価なアナログ信号の伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る監視カメラシステムを示す構成図である。
【図2】LANケーブルにおけるピン配列を示す説明図である。
【図3】監視カメラのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るアナログ信号の伝送システムについて、監視カメラシステムに適用した例を図面を参照して説明する。ここでは、監視カメラ1台と映像受信装置1台とを、1本のLANケーブルで結び監視する基本的なシステムを示す。
【0015】
図1は、本発明における監視カメラシステムの構成図である。監視カメラシステムは、被写体を撮影する監視カメラ10と、監視カメラ10で得られた映像を受信して記録・表示する映像受信装置20と、監視カメラ10と映像受信装置20とを接続するLANケーブル30とを備える。
【0016】
図1に示すように、映像受信装置20は、記録部21と、表示部22と、電源部23と、LANケーブル30のLANコンセントを差し込むためのレセプタクル(差込口)であるLANポート(図示せず)とを備える。映像受信装置20は、LANケーブル30の映像信号ライン31によって伝送された映像信号を受信し、記録映像を表示する表示部22に出力すると同時に、映像信号を記録部21に記録する。また、電源部23は、LANケーブル30の電源ライン32によって監視カメラ10に電源を供給する。
【0017】
LANケーブル30は、ツイストペアケーブル(図示せず)とLANコンセント(図示せず)を備える。ツイストペアケーブルは、現在パソコンへの接続で最も一般的に使用される4ペア8芯タイプを用いる。ツイストペアケーブルは、カテゴリ、単線/ヨリ線仕様、UTP/STP等の種別があるが、本実施形態ではカテゴリが3以上であればいずれも使用可能である。例えば、カテゴリ5のツイストペアケーブル(例えば、フジクラ社製CTP-LAN5)を使用する。このツイストペアケーブルは、4対8芯ケーブルでUTPであり、特性インピーダンスは100±15Ωである。
【0018】
LANケーブルには、通常、導体の配線方法によりストレートケーブルとクロスケーブルがあり、本実施形態ではストレートケーブルを用いるが、クロスケーブルであっても構わない。LANケーブルの結線方法は、ペアの配置によりTIA/EIA568AとTIA/EIA568Bの2方式あるが、いずれも使用可能である。本実施形態では、一般的に多く使われるTIA/EIA568Bの結線方法を採用する。
【0019】
ツイストペアケーブルの両端には、8ピンのLANプラグ(情報通信用プラグ)が接続される。図2に、本発明の実施形態におけるピン配列を示す。このLANケーブルでは、例えば橙白/橙、緑白/緑、青/青白、茶白/茶がそれぞれツイストペアを構成する。通常のTIA/EIA568Bの結線では、例えば10BASE−Tと100BBASE−Tでは送信用に1ペア、受信用に1ペアの計2ペアのみが使用され、1000BBASE−Tでは4ペア全てが使用される。本実施形態では、LANプラグのピン4を映像信号、ピン7を監視カメラ用電源、残りのピン1〜3、5、6、8を基準電位(GND)に用いる。つまり、LANプラグのピン4に映像信号ライン31が接続され、ピン7に電源ライン32が接続される。映像信号、監視カメラ用電源に必要なピン以外の残りの6本は、監視カメラ10のグランド(図示せず)に接続される。なお、LANプラグは、両方とも同一形状かつ同一ピン配列に構成する。
【0020】
図3に監視カメラ10のブロック図を示す。監視カメラ10は、映像受信装置20から電源が供給され、撮影素子としてのCCD11と、映像信号処理回路12と、D/A変換回路13と、CCD駆動回路14と、テレビ用同期信号発生回路15と、LANケーブル30を差し込むためのLANポート(図示せず)とを備える。
【0021】
CCD11は、CCD駆動回路14によって駆動し、レンズを通して得られた被写体の映像を結像させて映像信号として出力する。映像信号処理回路12は、CCD11から出力された映像信号に対して所定の信号処理を施す。例えば、映像信号処理回路12は、映像信号に対して相関二重サンプリング処理を行い、更にアナログ信号をデジタル信号に変換し、更に、歪み補正等の処理を施す。
【0022】
D/A変換回路13は、映像信号処理回路12によって処理された信号に対してテレビ用同期信号発生回路15から出力されたテレビ用同期信号を付加し、NTSC等の所定の方式に準拠した映像信号を生成し、アナログテレビ信号に変換して出力する。D/A変換回路13から出力された映像信号は、増幅された後、75Ωのインピーダンスで出力される。
【0023】
なお、監視カメラ10は、通常のデジタルカメラ程度の機能を有するものであれば撮像素子がCCDに限られず、CMOSや他の素子であっても構わない。また、撮影対象は、動画に限られず、静止画像も含むものとする。また、動画の場合には、音声の有無は問わない。
【0024】
本発明の実施形態に係る監視カメラシステムでは、監視カメラ10と映像受信装置20との間をLANケーブル30で配線したことにより、電源に映像信号を重畳させることなく、LANケーブル1本で映像信号の伝送と、監視カメラへの電源の供給とが可能となる。また、LANケーブルは同軸ケーブルと比べると約半分の価格であり、またインターネットの普及により容易に入手することができるため、安価でかつ容易にシステムを設置することが可能となる。更に、監視カメラ10と映像受信装置20それぞれに設けられたLANポートにLANケーブル30のLANプラグを差し込むだけで配線が完了するため、設置工事が容易であり、配線工数の削減が可能となる。
【0025】
本発明の実施形態に係る監視カメラシステムでは、上述したように、監視カメラ10から出力される映像信号の特性インピーダンスは75Ωであり、LANケーブル30の特性インピーダンスは100±15Ωである。このように特性インピーダンスに差があるが、LANケーブル30を構成する電線の一部を監視カメラ10のグランドに接続して出力するインピーダンスを下げることにより、映像受信装置20の表示部22で表示される映像の劣化を抑える。また、LANケーブル30を構成する電線の一部を監視カメラ10のグランドに接続することにより、反射による画質の劣化が小さい。
【0026】
なお、電線の一部をグランドに接続する際は、監視カメラ10の電源容量や特性インピーダンスによって適宜使用する本数を選択する。
【0027】
また、上記したようにLANケーブルは通常ネットワーク接続に用いるため、本発明の実施形態に係る監視カメラシステムに用いるLANケーブルとは信号が異なる。このため、本発明の実施形態に係る監視カメラシステムに用いるLANケーブルをネットワークに接続しないように注意書きをする。
【0028】
ここでは、監視カメラ1台とモニタをLANケーブルで結び監視するだけの基本的なシステムを示したが、複数台の監視カメラや複数の映像受信装置とを利用した監視システムにおいても、LANケーブルで配線してシステムを構築することが可能である。また、アナログ信号の伝送であれば監視カメラの映像信号を伝送する監視カメラシステムに限らず使用可能であり、例えば、音声信号を伝送するようなインターホン、防犯機器、火災報知機等にも使用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10 監視カメラ
11 CCD
12 映像信号処理回路
13 D/A変換回路
14 CCD駆動回路
15 テレビ用同期信号発生回路
20 映像受信装置
21 記録部
22 表示部
23 電源部
30 LANケーブル
31 映像信号ライン
32 電源ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号を発生する電子機器と、前記アナログ信号を伝送するLANケーブルと、前記アナログ信号を受信する受信装置とを備えたアナログ信号の伝送システムであって、
前記LANケーブルを構成する電線の一部が、前記電子機器のグランドに接続されることを特徴とするアナログ信号の伝送システム。
【請求項2】
前記電子機器は撮影装置であり、前記アナログ信号は映像信号であり、前記記録装置は映像受信装置であり、
前記電線は、前記映像信号と、前記撮影装置のグランドと、前記記録装置から供給される電源に接続されることを特徴とする請求項1に記載のアナログ信号の伝送システム。
【請求項3】
前記電線のうち、前記映像信号及び前記撮影装置のグランドに割り当てられる電線以外の全ての電線が前記グランドに接続されることを特徴とする請求項2に記載のアナログ信号の伝送システム。
【請求項4】
前記アナログ信号は、音声信号を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のアナログ信号の伝送システム。
【請求項5】
監視カメラと、前記監視カメラによって撮影され生成される映像信号を伝送するLANケーブルと、前記LANケーブルによって伝送された映像信号を受信する映像受信装置とを備えた監視システムであって、
前記LANケーブルを構成する電線の一部が、前記監視カメラのグランドに接続されることを特徴とする監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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