説明

アニオンラクタム重合用の組成物

【課題】貯蔵安定性があり、優れた品質のポリアミドをもたらすアニオンラクタム重合用の組成物を提供する。
【解決手段】a)少なくとも2個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物及びb)4〜7個の炭素原子を含有する少なくとも1種のラクトンを含む組成物、並びにポリアミドを得るためのアニオンラクタム重合の活性化剤としての該組成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、ラクタムの活性化アニオン重合によるポリアミドの調製用の組成物に関する。
【0002】
[発明の背景]
ラクタムの活性化アニオン重合は、ポリアミド造形品の製造の多数の様々なプロセスにおいて使用されている。問題のない重合及び様々なプロセスにより調製されるポリアミドの品質は、触媒に左右されるだけでなく、使用する活性化剤の性質にも非常に左右される。
【0003】
多数の化合物が、ラクタム、すなわち、アシルラクタム(EP1449865)、オキサゾリン(EP0786482)、エチレンビスアミド(米国特許出願公開第2010/0113661号)、イソシアネート及び対応するマスクド(masked)イソシアネート化合物のアニオン重合用の活性化剤として使用されてきた。
【0004】
ポリイソシアネート又はイソシアネート、特にジイソシアネートが、活性化剤としてよく使用されている。ヘキサメチレンジイソシアネートは、非常に流動性の液体であり、そのため、特に計量供給ポンプによる正確な送達が重要な連続プロセスにおいて相当な利益をもたらすため、特に好ましい。しかし、ヘキサメチレンジイソシアネートの使用により生じる重大な欠点の1つはその毒性であり、その原因は蒸気圧が高いことによるものであり、特別な安全対策を必要とする。
【0005】
この欠点を克服するためにブロックト(blocked)イソシアネート化合物が使用されてきた。そのようなマスキング剤の1つとして、生理学的に無害であると分類されてきたヘキサメチレンビスカルバミドカプロラクタムを形成するカプロラクタムが使用されていた。
【0006】
イソシアネート化合物をピロリドン化合物、例えばN−メチルピロリドン又はN−エチルピロリドン(EP0167907)と混合するアニオンラクタム重合用の他の液体活性化剤系が知られている。しかし、ピロリドンの重大な欠点の1つは、それらの毒性である。EU規則(EC)第1272/2008号に従って、N−メチルピロリドンは、生殖毒性であると分類されてきた。
【0007】
欧州特許出願公開第0697424号は、有機溶媒及び水中で乳化し得るポリイソシアネートを含む組成物を開示している。これらの組成物は、水性分散系の調製において使用することを意図したものであり、該分散系は、接着剤、含浸組成物及びコーティング組成物用の添加剤として利用することができる。水中エマルジョンを形成するのに適したものとするために、ポリイソシアネートは、ポリイソシアネート化合物に親水性部分を形成する化合物と少なくとも部分的に反応させている。
【0008】
国際公開第00/42091号パンフレットは、環状アミド及び特定の環状エステルの共重合により調製されるポリエステルアミド樹脂を含む帯電防止樹脂成形品を開示している。
【0009】
欧州特許出願公開第0134616号及び欧州特許出願公開第0135233号は、N−置換カルバモイル−ラクタム化合物を開示しており、これらはラクタムのアニオン重合用の好適な促進剤又は活性化剤として記載されている。これらの2つの先行技術文献は、ブロックトイソシアネート化合物を使用するという上記の基本概念と一致している。
【0010】
米国特許第4757095号は、微孔性フォームの調製に利用することができるウレタン変性プレポリマーの調製において利用することができるラクトン及びラクタムを開示している。
【0011】
米国特許第5,684,119号は、糸及び繊維の調製に利用することができる、直接造形可能な透明なポリアミドイミド溶液を開示している。
【0012】
さらに、得られるポリアミドの衝撃強さを増大するためには、ポリエーテルアミンなどの耐衝撃性改良剤をラクタムのアニオン重合に添加しなければならない。しかし、従来の液体活性化剤系は、そのような耐衝撃性改良剤と共に反応容器に供給されると凝固する。この問題を克服するために、別個の添加手段が必要とされるが、該手段により、重合プロセスが複雑になる。耐衝撃性改良剤がラクタム溶融物への添加の前に重合触媒と混合される場合もあるが、アニオンラクタム重合用の重合触媒は非常に吸湿性であるため、触媒活性の低下は避けられない。
【0013】
本発明の目的は、ピロリドン化合物、特にN−アルキルピロリドン化合物を含有しておらず、貯蔵安定性があり、優れた品質のポリアミドをもたらすアニオンラクタム重合用の組成物を提供することである。
【0014】
[発明の詳細な説明]
この目的は、成分a)として少なくとも2個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物及び成分b)として4〜7個の炭素原子を有する少なくとも1種のラクトンを含む組成物により、並びにアニオンラクタム重合への該組成物の使用により達成された。
【0015】
成分a)に好適な化合物は、少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物である。ジイソシアネート化合物が好ましく、該化合物は、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ポリ(イソホロンジイソシアネート)、ポリ(4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン)、ポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)からなる群から選択することができる。好ましいジイソシアネート化合物は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)であり、これらは併用することもできる。
【0016】
本発明の組成物は、ブロックトイソシアネートを含有しておらず、並びに/又は本発明の組成物は、欧州特許出願公開第0697424号に定義及び開示されている親水性基を形成する化合物と反応したポリイソシアネートを含有していない。
【0017】
成分b)に好適な化合物は、好ましくはδ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンからなる群から選択される、4〜7個の炭素原子を含有するラクトンである。好ましいラクトンはε−カプロラクトンである。
【0018】
本発明の組成物は、60〜80重量%の量で、好ましくは65〜75重量%の量で成分a)を含有することができ、最も好ましい量は約70重量%である。
【0019】
本発明の組成物は、20〜40重量%の量で、好ましくは25〜35重量%の量で成分b)を含有することができ、最も好ましい量は約30重量%である。
【0020】
特に機械的性質をさらに調整することを望む場合に好ましいと考えられる別の実施形態においては、本発明の組成物中の成分a)及びb)の量がまさに逆である場合、すなわち、成分a)の量が20〜60重量%、好ましくは25〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%の範囲、最も好ましくは約30重量%である場合が好ましいことがある。したがって、成分b)の量は、40〜80重量%、好ましくは60〜75重量%、より好ましくは65〜75重量%、最も好ましくは約70重量%となろう。
【0021】
これらの重量パーセントは、成分a)及び成分b)の総重量に対して示すものである。
【0022】
上述の通り、成分a)は、少なくとも2個のイソシアネート基を有するモノマーの脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物と合わせてポリマージイソシアネートを含み得る。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)からなる群から選択することができるそのようなモノマー化合物のジイソシアネートが好ましい。好ましいモノマージイソシアネートは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。少なくとも2個のイソシアネート基を有するこのモノマーの脂肪族又は脂環式イソシアネート化合物は、一般に、少量で利用するものであり、すなわち、成分a)がポリマーイソシアネートのみを含む場合が好ましい。併用する場合、モノマーイソシアネートの量は、一般に、組成物全体に対して2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、最大で0.4重量%の量などである。
【0023】
上述の通り、本発明の組成物は、成分a)及びb)を含む。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、これら2種の成分からなり、場合により第3の成分として以下で特定する従来のポリアミド耐衝撃性改良剤のみを含有する。他の成分は存在しない(唯一のその他の例外は場合によっては存在する不可避な不純物である)ことが好ましく、本明細書に記載の全ての組成物はラクタムのアニオン重合用の活性化剤としての使用を意図したものである。したがって、本発明は、本明細書で論じる成分を開示している量で含むか、又は本明細書で論じる成分からなる、ラクタムの活性化アニオン重合において使用するための組成物を提供する。
【0024】
本発明の組成物の製造方法は、成分a)及び成分b)を好適な量で混合することにより実施する。該方法は、実質的に水分のない条件下、好ましくは不活性ガス雰囲気下で実施する。本発明の組成物は約22℃の温度で液体である。そのため、該組成物は、別個の加熱していない貯蔵容器に貯蔵し、注型(casting)ステップの間に、触媒を含有するラクタム流中に計量供給することができ、それにより、ポリアミドが形成される。
【0025】
アニオンラクタム重合により得られるポリアミドの機械的性質は、本発明の組成物を使用すると実質的に改善される。ラクタムのポリアミドへの注型重合プロセスの間、本発明の組成物中に含有されるラクトンはポリアミド鎖に統計的に挿入され、それにより、ポリアミドの高分子セクションに欠陥が発生し、注型ポリアミドの完全な結晶化が防止される。これらの高分子欠陥は、得られるポリアミドのDSC−分析により求めることができる。得られるポリアミドは実質的に改善された弾性率及び衝撃強さを示す。
【0026】
驚くべきことに、液体活性化剤として本発明の組成物を使用すると、耐衝撃性改良剤を添加しない場合でさえ、得られるポリアミドが改善された衝撃強さを示し、それにより重合プロセスが簡素化されることが分かった。
【0027】
しかし、得られるポリアミドの衝撃強さをさらに増大するために、本発明の組成物に加えてさらなる耐衝撃性改良剤をラクタムのアニオン重合に添加することができる。
【0028】
したがって、例えば、ジェファーミン(Jeffamine)(登録商標)(Huntsman)、ポリエーテラミン(Polyetheramin)(BASF)又はPCアミン(PC Amine)(登録商標)(Nitroil)、ジェファーミン(登録商標)T−403、ジェファーミン(登録商標)T−3000、ジェファーミン(登録商標)T−5000、ポリエーテラミンT403、ポリエーテラミンT5000、PCアミン(登録商標)TA403、PCアミン(登録商標)TA5000という商品名で市販されているポリエーテルアミン(ポリオキシアルキレントリアミン)のようなポリオールの群から選択されるものなどの従来のポリアミド耐衝撃性改良剤を本発明の組成物に添加することがさらに可能である。
【0029】
先行技術の開示に関連して記載した問題(従来の液体活性化剤組成物による凝固)とは反対に、本発明の組成物については有害作用は見られず、そのため、これらの耐衝撃性改良剤は、驚くべきことに、本明細書に開示の活性化剤組成物の他の必須成分と共に利用することができる。成分a)及びb)をポリアミド耐衝撃性改良剤と混合すると貯蔵安定性のある組成物を得ることが可能であるが、それでもなお、そのような耐衝撃性改良剤と本発明の活性化剤系との混合は、重合系への添加直前にのみ行うのが好ましい。それにもかかわらず、有害作用を生じることなくこれらの成分を重合系に共に添加することができるという事実を考慮すると、耐衝撃性改良剤のための別個の添加手段が必要とされないため、このプロセス全体が容易になっている。
【0030】
耐衝撃性改良剤は、(該組成物の総重量に対して)最大で25重量%の量で使用することができる。
【0031】
本発明の組成物は、約70重量%(67〜73、好ましくは68〜72重量%など)の成分a)、好ましくはポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)、及び約30重量%(27〜33、好ましくは28〜32重量%など)の成分b)、好ましくはε−カプロラクトンを含むことが好ましい。
【0032】
しかし、上述の通り、特定の用途については、成分a)及びb)の量を逆にすることも有益となり得、すなわち、本発明の好ましい組成物は、約30重量%の成分a)(27〜33、好ましくは28〜32重量%など)、特にポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)、及び約70重量%(67〜73、好ましくは68〜72重量%など)の成分b)、特にε−カプロラクトンも含み得る。
【0033】
ポリアミドの該製造方法は、重合されるラクタムへの本発明の組成物の添加により実施する。本発明の組成物は、重合される純粋なラクタム又は純粋なラクタム溶融物に添加することができる。当業者の知識に従って重合用の従来の触媒を使用する。
【0034】
アニオンラクタム重合プロセスにおいて使用する本発明の組成物の好適な量は、ポリアミドに必要とされる物理的性質に応じて適切に求めることができる。好適な濃度は、重合されるラクタム100重量%に対して0.1〜10重量%、実施形態においては0.1〜4、好ましくは0.5〜2.5重量%である。
【0035】
水がアニオン重合触媒の分解を引き起こし、それにより触媒活性が低減するため、アニオンラクタム重合は、実質的に水分のない条件下で実施する。得られるポリアミドの着色防止の観点から、重合系と酸素との接触は可能な限り回避することが望ましい。
【0036】
アニオンラクタム重合は、スターラーを備えた反応器中で実施する。この場合、主にラクタム及びラクタム用のアニオン重合触媒を含む第1の成分と、主に本発明の組成物及びラクタムを含む第2の成分とは、別個に調製する。所定量のこれら2種の成分を混合し、溶融させる。重合が生じる温度まで2種の成分を溶融させ、この温度で合わせる。
【0037】
この反応は、大気圧で、低圧下で又は真空中で、ラクタムの融点から200℃までの温度で実施する。この重合反応は1時間以内に完了させる。
【0038】
通常の濃度で使用することができる、ラクタムのアニオン重合用として知られている任意の触媒を適用することができる。アルカリ金属ラクタメートが好ましく、その中でもナトリウムラクタメートが最も好ましい。
【0039】
重合されるラクタム溶融物への本発明の組成物の添加は、連続的又は不連続的に実施する。本発明の組成物は好ましくは、ポリアミドを得るためのラクタムの不連続重合に適し、ポリアミド、特にPA−6を得るためのε−カプロラクタムの不連続重合に最も適する。
【0040】
本発明の組成物は、特に、大きいサイズのポリアミド成形品及び/又は中空体を調製するために実施する重合反応において使用することができ、典型的な適用分野は回転成形、又は樹脂トランスファー成形プロセスの分野である。該プロセスは、特に、繊維強化材を含む成形品を調製する(既に繊維強化材を含む金型を利用して)ために使用することができ、そのため、最終ポリアミドが繊維強化材に含浸されて繊維強化材を被覆するように、重合をこの繊維強化材の存在下で実施するか、又は重合した溶融物を該強化剤と接触させる。
【0041】
本発明の組成物は、アニオンラクタム重合用の活性化剤として使用され、重合されるラクタムに可溶である。本発明の組成物は、ラクタム重合用の促進剤として機能し、得られるポリアミドの一部を構成するコモノマー成分を提供する。
【0042】
本発明の組成物は、造形品及び前記造形品を含む物品の製造に使用することができる。
【0043】
次に、以下の実施例により本発明をより詳細に説明する。これらの実施例において、別段の指示がない限り、パーセントは重量によるものである。
【0044】
[実施例及び比較例]
市販の材料
【0045】
ブルゴーレン(BRUGGOLEN)(登録商標)C230(L.Bruggemann):ポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)(ポリHDI)(CAS28182−81−2);N−メチルピロリドン(NMP)(CAS872−50−4);
ブルゴーレン(登録商標)C231(L.Bruggemann):ポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)(ポリHDI)(CAS28182−81−2)、N−エチルピロリドン(NEP)(CAS2687−91−4);
ブルゴーレン(登録商標)C20P(L.Bruggemann):ε−カプロラクタム中のブロックト1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、18〜20%(CAS5888−87−9);
ブルゴーレン(登録商標)C10(L.Bruggemann):ε−カプロラクタム中の17〜19重量%のナトリウムε−カプロラクタメート(CAS2123−24−2、105−60−2);
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(CAS822−06−0)。
【0046】
分析法
分析法BRGC 206
分析法BRGC 206を使用して、カプロラクタムのアニオン重合用触媒の短時間試験における反応性を求める。
【0047】
溶融ε−カプロラクタム(工業用、水分<0.02%)、触媒(ブルゴーレン(登録商標)C10(L.Bruggemann))及び活性化剤が重合するとポリアミドが生じる。このプロセスの間に、様々な重合の段階が存在している。これらの違いは視覚的に分類する。
【0048】
手順
2つの試験管(A及びB)にそれぞれ18.75gのカプロラクタムを量り分ける。各試験管をコルクの栓で密閉する。各試験管を油浴に入れてカプロラクタムを溶融させる。1.5±1gのブルゴーレン(登録商標)C10を試験管A中の溶融カプロラクタムに添加する。
【0049】
自動ビュレットを使用して0.5〜0.55mlのHDIを試験管B中の溶融カプロラクタムに添加し、ガラス棒で完全に混合する。
【0050】
1.050±0.001gのブルゴーレン(登録商標)C20(P)、C230、C231又は本発明の組成物を化学天秤で秤量し、試験管Bに充填する。その後、ガラススターラーで均質化する。130±1℃(試験管A内での温度の直接測定)で試験管Aを油浴から取り出し、試験管Bの内容物を試験管Aに添加する。試験管Aを再び栓で密閉し、激しい振とうにより溶融材料を完全に混合し、該浴に入れる。同時にストップウォッチを始動させる。重合の段階を視覚的に分析する。3つの相それぞれについて時間を測定する。
【0051】
分類
相1(T1)、粘性;溶融塊は試験管の弱い回転の間は動かない;相2(T2)、混濁;透明な溶融物が混濁し始める;相3(T3)、試験管壁からの重合塊の解放;試験管の上部領域で溶融物が壁から離れ始める。
【0052】
本発明の組成物の貯蔵能は、表1に示しており、ガラス瓶に入れて22℃のデシケーター(乾燥剤:オレンジゲル)及び40℃のオーブン中で評価した。該組成物中の微量の水はカールフィッシャー滴定により求めた。
【0053】
表2に示している引張強さ試験については、11mm×170mmのサイズの試験片を使用した。EN ISO 527標準を使用してE−弾性率、σ値、ε値、σ値、及びε値を評価した。
【0054】
DIN EN 31357−1標準を使用してDSC−分析(示差走査熱量測定)を実施した。
【0055】
活性化剤組成物
実施例1
本発明の活性化剤組成物は、70重量%のポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)(成分a))を30重量%のε−カプロラクトン(CAS502−44−3)(成分b))と22℃で混合することにより得る。
【0056】
比較例1〜3は市販されている活性化剤組成物である。
【0057】
比較例1:ブルゴーレン(登録商標)C230(L.Bruggemann):N−メチルピロリドン(NMP)(CAS872−50−4)中のポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)(Merck、CAS28182−81−2)
【0058】
比較例2:ブルゴーレン(登録商標)C231(L.Bruggemann):N−エチルピロリドン(NEP)(CAS2687−91−4)中のポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)(CAS28182−81−2)
【0059】
比較例3:ブルゴーレン(登録商標)C20P(L.Bruggemann):ε−カプロラクタム中のブロックト1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
【0060】
重合活性は、上述の試験管法BRGC 206に従って測定した(表1)。値T1〜T3は、重合(T1)、不溶性ポリマーの結晶化(T2)及び重合中の結晶化による収縮(T3)の開始点を示している。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から分かるように、本発明の活性化剤組成物の粘度は一定のままである。比較例2から分かるように、従来の活性化剤は、高温で粘度の顕著な増大を示している。本発明の活性化剤組成物は、40℃でさえ黄変を示していないが、先行技術の活性化剤は、40℃で視覚的に確認することができる黄変を示している。
【0063】
さらに、本発明の活性化剤組成物は、比較例1の従来の活性化剤系と比較して毒性物質を含有していない。さらに、カプロラクトンの沸点は235℃であり、従来のラクタム重合は最大で200℃で実施される(NMPの沸点は203℃であり、NEPの沸点は212℃である)ため、本発明の組成物を使用すると悪臭公害を低減することができる。
【0064】
活性化剤組成物により得られるポリアミド
実施例2
2つのガラス丸底フラスコA及びBそれぞれに400gのε−カプロラクタムを入れ、150℃の油浴中で溶融させる(該フラスコ中で測定される溶融ε−カプロラクタムの温度は100℃である)。次いで、両方のフラスコを窒素でフラッシュする。6.4gのナトリウムカプロラクタメート触媒(ブルゴーレン(登録商標)10)を溶融ε−カプロラクタムのフラスコAに添加し、ガラス棒で撹拌する。混合物Bの完全な均質化後、5.6gの本発明の組成物(実施例1)をフラスコBに添加し、溶融するまで加熱する。両方の溶融物(A及びB)の均質化後、135℃の溶融物B及び溶融物Aを同時に注型用金型に充填する(両方の溶融物A及びBを該金型に充填する前に該金型を窒素ガスでフラッシュした)。重合反応は30分以内に完了させる。
【0065】
比較例4
2つのガラス丸底フラスコA及びBそれぞれに400gのε−カプロラクタムを入れ、150℃の油浴中で溶融させる(溶融ε−カプロラクタムの温度は100℃である)。次いで、両方のフラスコを窒素でフラッシュする。次いで、6.4gのナトリウムカプロラクタメート触媒(ブルゴーレン(登録商標)10)を溶融ε−カプロラクタムのフラスコAに添加する。その後、1.8mLの1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をフラスコBに添加し、ガラス棒で撹拌する。この混合物の完全な均質化後、5.6gのブルゴーレン(登録商標)230をフラスコBに添加し、溶融するまで加熱する。両方の溶融物(A及びB)の均質化後、135℃の溶融物B及び溶融物Aを同時に注型用金型に充填する(両方の溶融物A及びBを該金型に充填する前に該金型を窒素ガスでフラッシュした)。重合反応は30分以内に完了させる。
【0066】
比較例5及び6は比較例4と同様に調製し、活性化剤としてブルゴーレン(登録商標)230(比較例4)の代わりにブルゴーレン(登録商標)231(比較例5)又はブルゴーレン(登録商標)20P(比較例6)を同じ量で使用した。
【0067】
【表2】

【0068】
表2から分かるように、本発明の活性化剤組成物を使用した場合、得られたポリアミドブロックは、改善された破断点伸び値を示している。実施例2のε値が32%であるのに対し、比較例6のε値は5.8%である。実施例2のポリアミドの弾性率(E−弾性率)は、比較例4及び5のポリアミドの弾性率より有意に低い(2280MPa)。
【0069】
ポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)及びε−カプロラクトンからなる活性化剤組成物を使用して、これらの成分の(重量による)比を70:30(実施例1)から約30:70に変え、同時に、成分a)の絶対量が(重合組成物の総重量に対して)変化しないように使用する活性化剤組成物の総量を増大したこと以外は先の説明に従ってさらなる実験を実施した。本発明に従ってこのような変更を加えることにより、非常に満足のいく機械的性質を有するポリアミド組成物が得られ、重合系中の成分b)の総量をさらに変えることにより(活性化剤組成物を適切に再調整することにより)、機械的性質を調整することが可能であった。成分b)の量の増大により剛性が低減し、引張強さも同時に同様に低減するが、引張伸びは増大する。破断応力は成分b)の含量の増大により同様に低減するが、破断点伸び及び衝撃強さは増大し、残留モノマー含量も同様である。成分a)の含量の低下により剛性が増大し、引張強さが増大し、引張伸びが低下し、破断応力が増大し、破断点伸びが低下すると同時に最終成形品中の残留モノマー含量が低下し、衝撃強さも低下する。
【0070】
したがって、概して、活性化剤系及び本発明の組成物により、成分a)及びb)、それぞれの量、並びにそれらの重量比を増大又は低減することにより最終ポリアミド成形物の性質を調整するという非常に有益な選択肢がもたらされることが容易に明らかになる。上述の通り、本発明の組成物は、非常に安定であり、先行技術組成物と比較してそれほど環境又は安全又は健康上の懸念をもたらさず、そのため、健康又は環境上の危険を増大することなく、ポリアミドの重合中のポリアミド成形品の性質の調整が可能となる。
【0071】
概して、本発明の組成物の粘度は高温で一定のままである。本発明の組成物は40℃でさえ黄変を示さないが、先行技術の活性化剤組成物は40℃では黄変を示す。さらに、本発明の組成物は、従来の活性化剤系と比較して毒性物質を含有していない。さらに、本発明の組成物を使用すると悪臭公害を低減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも2個のイソシアネート基を有する少なくとも1種の脂肪族イソシアネート化合物;
b)4〜7個の炭素原子を含有する少なくとも1種のラクトン
を含む組成物。
【請求項2】
成分a)がポリ(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分b)がε−カプロラクトンを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
成分a)が30〜80重量%、実施形態においては60〜80又は20〜40重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分b)が20〜80重量%、実施形態においては20〜40又は60〜80重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分a)及び成分b)からなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
成分a)を成分b)と混合するステップを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物をラクタムに添加するステップを含む、アニオンラクタム重合によるポリアミドの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物が、重合されるラクタム100重量%に対して0.1〜10重量%、実施形態においては0.1〜4重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法から得ることができるポリアミド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリアミドを含む造形品。
【請求項12】
請求項11に記載の造形品を含む物品。
【請求項13】
アニオンラクタム重合の活性化剤としての請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物の使用。




【公開番号】特開2012−233188(P2012−233188A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−105402(P2012−105402)
【出願日】平成24年5月2日(2012.5.2)
【出願人】(512116424)
【Fターム(参考)】