説明

アニオン型電着塗料用樹脂組成物、及びそれを電着塗装してなる塗膜

【課題】本発明は、潤滑性、離型性、摺動性等に優れたアニオン型電着塗料用樹脂組成物、塗膜及び塗装方法の開発。
【解決手段】水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)、水酸基価4 3〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)及びアミノ樹脂(C)を含むアニオン型電着塗料用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑性、離型性、摺動性等に優れたアニオン型電着塗料用樹脂組成物、それを電着塗装してなる塗膜及びその塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、摺動部品には潤滑性の機能を付与させた塗料を用いた塗装が行われている。一般に、この種の塗料に配合されている潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、フッ素系界面活性剤、ポリオレフィンワックス、シリコーンオイル、シリコーングリース等がある。
これらの潤滑剤を樹脂に配合し、得られた樹脂組成物を水や溶剤を用いて分散させて塗料とし、それを浸漬塗装法、あるいは、スプレー塗装法にて被塗物に塗布するのが一般的な潤滑性を有する摺動部品の製造方法である。
【0003】
しかしながら、上記製造時の塗装法では均一な膜厚が得られず、複雑な形状のものへの適用が難しい。特に、浸漬塗装法においては、潤滑剤と樹脂及び溶剤との親和力が弱いために、塗料槽壁に凝集物が付着し、この凝集物が塗布材料に混入付着し、ブツ付着不良として被塗装物の外観異常を起こす問題があった。
また、樹脂成型用金型等の離型性を必要とする部材においても、前記の潤滑剤を使用した塗料が用いられており、その場合も同様な問題が発生していた。
前記した問題点を解決するために、均一な膜厚が得られる電着塗装法を用いた塗装方法も提案されている(特許文献1等)。
この電着塗装法においては、均一な膜厚が得られ良好な摺動性が得られるが、潤滑剤としてフッ素樹脂微粒子を含有しており、このフッ素樹脂微粒子が基体樹脂との相溶性に劣ることから電着塗料液の分散性安定性に課題があった。
【0004】
前記問題を解決するために、シリコーン含有共重合性ビニル単量体を共重合したシリコーン含有(メタ)アクリル樹脂と架橋剤からなる電着塗料用樹脂組成物も提案されている(特許文献2等)。
この電着塗料用樹脂組成物は塗料の安定性という点では改善されているが、ここで使用されている上記シリコーン含有(メタ)アクリル樹脂は、架橋剤と反応し塗膜強度を向上させるために水酸基を多く有する構造となっている。
そのため、焼付時に水酸基と架橋剤との架橋が塗膜中に形成され、シリコーン含有(メタ)アクリル樹脂のシリコーン基が塗膜表面に配向するのを抑制する現象が発生し、シリコーン基の持つ特性を十分に生かしきれていないのが現状である。
この樹脂の持つ欠点を改善し十分な性能を出すには、シリコーン含有共重合性ビニル単量体を多く配合することが必要となるが、その場合は、塗膜内部に多くのシリコーン基が存在することとなり、そのシリコーン基がアクリル樹脂と架橋剤の反応を阻害し、十分な塗膜硬度を得られないという新たな問題が発生することになる。
【0005】
このように、シリコーン基が持つ機能を十分に発揮させることと十分な塗膜強度の確保とは現状では二律背反の関係にあり、さらに、シリコーン含有共重合性ビニル単量体を多く配合することは、コストアップに繋がることから、その点も新たな問題点となっていた。
また、別の改善方法として、シリコーン系界面活性剤等を配合することで、塗膜表面のみに潤滑性を持たせることも試みられているものの、時間の経過とともに、界面活性剤が脱落していくことにより、摺動性、離型性等が経時的に低下し、満足のできる性能は未だ得られていない。
以上のように、塗料安定性が良好で摺動性、離型性、潤滑性と塗膜硬度が両立した電着塗料用樹脂組成物が望まれていたが、これまでそれらの性能を満足する電着塗料用樹脂組成物は開発されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−117556号公報
【特許文献2】特開平1−129078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような従来技術における問題点を解決し、塗料安定性が高いだけでなく、潤滑性、摺動性、離型性、さらに、塗膜硬度などに優れたアニオン型電着塗料用樹脂組成物とそれを電着塗装することにより得られる上記性能を有する塗膜を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題に対して、鋭意研究の結果、本発明者らは、水酸基価が低いシリコーン含有ビニル系共重合体(A)、水酸基価が高くシリコーンを含有しないビニル系共重合体(B)及びアミノ樹脂(C)を組み合わせること、具体的には、
(1)(a)置換基としてカルボキシル基を有する共重合性ビニル系単量体、(b)置換基として水酸基を有する共重合性ビニル系単量体、(c)置換基としてシリコーン基を有する共重合性ビニル系単量体、(d)上記(a)〜(c)以外の共重合性ビニル系単量体を共重合した水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)、
(2)(a)置換基としてカルボキシル基を有する共重合性ビニル系単量体、(b)置換基として水酸基を有する共重合性ビニル系単量体、(d)上記(a)〜(b)以外の共重合性ビニル系単量体を共重合した水酸基価4 3〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)並びに架橋剤として
(3)アミノ樹脂(C)を含むことを特徴とするアニオン型電着用樹脂組成物から製造したアニオン型電着塗料液により電着塗装を行なうことで克服できることを知見し発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、共重合性単量体として、(1)(a)置換基としてカルボキシル基を有する共重合性ビニル系単量体 3〜15重量%、(b)置換基として水酸基を有する共重合性ビニル系単量体 1〜7重量%、(c)置換基として分子量300〜30000のシリコーン基を有する共重合性ビニル系単量体 1〜30重量%及び(d)上記(a)〜(c)以外の共重合性ビニル系単量体 48〜95重量%を共重合してなる水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性又は水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)
5〜40重量部、
(2)(a)置換基としてカルボキシル基を有する共重合性ビニル系単量体 3〜15重量%、(b)置換基として水酸基を有する共重合性ビニル系単量体 10〜30重量%及び(d)上記(a)〜(b)以外の共重合性ビニル系単量体 55〜87重量%を共重合してなる水酸基価4 3〜145mgKOH/gである水溶性又は水分散性ビニル系共重合体(B) 10〜75重量部、
上記水溶性又は水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)及び水溶性又は水分散性ビニル系共重合体(B)の合計が50重量部〜80重量部に対し、(3)アミノ樹脂(C) 20〜50重量部含有することを特徴とするアニオン型電着塗料用樹脂組成物、さらに、電着塗膜、電着塗装方法を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアニオン型電着用樹脂組成物は、塗料安定性に優れ、これを用いて構成した電着塗料組成物及びこの電着塗料組成物により形成された電着塗膜は、膜厚が均一で非常に良好な摺動性、離型性、潤滑性、さらに、十分な塗膜硬度を有しており、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について更に詳しく説明する。
本発明においては、水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)、水酸基価4 3〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)及びアミノ樹脂(C)の各成分は、電着塗膜および電着塗料用樹脂液を得るための必須構成成分である。
本発明の水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)、及び、水酸基価4 3〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)を構成するビニル系単量体のうち、(a)置換基としてカ
ルボキシル基を含有する単量体としては、アクリル酸、α−クロロアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、メサコン酸等がある。
【0012】
本発明の水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)、及び、水酸基価43〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)を構成する(b)置換基として水酸基を含有する単量体と
しては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート等が挙げられる。
【0013】
本発明の水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)を構成する(c)置換基として数平均分子量300〜30000のシリコーン基を有する共重合性ビニル系単量体としては、ポリシロキサン化合物等やシリコーンオイルの片末端に(メタ)アクリロイル基等の反応性ビニル基を導入したもの等が挙げられる。
このシリコーン基を有する共重合性ビニル系単量体は、末端に水酸基を有するポリシロキサン化合物や末端に水酸基を有するシリコーンオイルに対して、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートの如き水酸基と反応する官能基と共重合性ビニル基とを有する化合物を反応させる方法、末端にグリシジル基を有するポリシロキサン化合物や末端にグリシジル基を有するシリコーンオイルに対して、アクリル酸の如きグリシジル基と反応する官能基と共重合性ビニル基とを有する化合物を反応させる方法等により合成することができるが、本発明において使用される数平均分子量300〜30000のシリコーン基を有する共重合性ビニル系単量体の製造方法については特に制約はない。
市販品としては、サイラプレーンFM−0711、サイラプレーンFM−0721、サイラプレーンFM−0725(チッソ製)、X−24−8201、X−22−174DX、X−22−2426(信越化学工業製)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0014】
本発明の水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)、及び、水酸基価43〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)を構成する(d)その他ビニル系単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n
−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ノルマルブチルアクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、ノルマルヘキシルアクリレート、ノルマルヘキシルメタクリレート、ノルマルヘプチルアクリレート、ノルマルヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノルマルラウリルアクリレート、ノルマルラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等の炭素数約20までのアルキル基を有する同様な共重合性ビニルエステルやシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレートなどの置換基として脂環式炭化水素基を有する共重合性ビニルエステル系単量体、及び、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族基を有するビニル系単量体が使用できる。
【0015】
さらに、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−イソブトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類やアクリロニトリル、酢酸ビニル等を使用することも出来る。
【0016】
本発明のアミノ樹脂(C)としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂等が使用できるが、特にメラミン樹脂では、メチロール基の少なくとも一部を低級アルコールでアルコキシ化したアルコキシ化メラミン等が好ましく、低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の一種または二種以上を使用できる。
【0017】
本発明における水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)、及び、水酸基価43〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)のカルボキシル基を中和するために用いることのできる有機アミンとしては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、トリ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、などのアルカノールアミン類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミン類、エチレンイミン、プロピレンイミン等のアルキレンイミン類、ピペラジン、モルホリン、ピラジン、ピリジン等が挙げられる。有機アミンは、シリコーン含有ビニル系共重合体(A)成分及びビニル系共重合体(B)成分中のカルボキシル基に対して、モル比が0.3〜0.9となるように添加すればよい。
【0018】
本発明の水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)を構成する共重合性単量体は、置換基としてカルボキシル基を有する共重合性ビニル系単量体(a)3〜15重量%、好ましくは4〜10重量%、置換基として水酸基を有する共重合性ビニル系単量体(b)1〜7重量%、好ましくは3〜6重量%、置換基として数平均分子量300〜30000、好ましくは数平均分子量500〜15000のシリコーン基を有する共重合性ビニル系単量体(c)1〜30重量%、好ましくは5〜15重量%であり、それらを共重合した水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)から得られた電着樹脂組成物は水分散性が特に良好であり、その電
着塗膜は特に摺動性、離型性、潤滑性に優れている。
これは、水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体の水酸基価が低いためにシリコーン含有水分散性ビニル系共重合体の側鎖のシリコーン基が塗膜表面に配向しやすくなるためである。
【0019】
本発明の水酸基価43〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)を構成する共重合性単量体は、置換基としてカルボキシル基を有する共重合性ビニル系単量体(a)3〜15重量%、好ましくは4〜10重量%、置換基として水酸基を有する共重合性ビニル系単量体(b)10〜30重量%、好ましくは12〜25重量%であり、それらを共重合した共重合体から得られた電着樹脂組成物は水分散性が特に良好であり、その電着塗膜は塗膜硬度に優れている。
【0020】
本発明では、水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)が5〜40重量部、好ましくは8〜35重量部と
水酸基価43〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)が10〜75重量部、好ましくは20〜67重量部の合計50〜80重量部、好ましくは55〜75重量部に対し、
アミノ樹脂(C)が20〜50重量部、好ましくは25〜45重量部である電着樹脂組成物は塗料安定性が良好で、塗膜性能のバランスが良好である。
【0021】
本発明の水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)において、置換基としてカルボキシル基を有する共重合性ビニル系単量体(a)が3重量%未満であると塗料安定性が低下し、15重量%を超えると耐水性が悪くなる。また、置換基として水酸基を有する共重合性ビニル系単量体(b)の割合が
1重量%未満であるとアミノ樹脂との架橋が不十分になり溶剤ラビングや摩擦等により塗膜から脱落しやすくなり、7重量%を超えるとアミノ樹脂との反応が早くなりシリコーン側鎖の塗膜表面配向性が落ち、塗膜内部の架橋反応を阻害し塗膜の塗膜硬度低下を起こす。
【0022】
本発明の水酸基価43〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)において、置換基としてカルボキシル基を有する共重合性ビニル系単量体(a
)の割合が3重量%未満では液安定性が悪く、15重量%を超えると耐水性が悪くなる。また、置換基として水酸基を有する共重合性ビニル系単量体(b)の割合が10重量%未
満であると十分な塗膜性能(耐薬品性、塗膜硬度)が得られず、30重量%を超えると耐水性が悪くなる。
【0023】
本発明の水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)の割合が、5重量部未満では十分な摺動性、離型性、潤滑性が得られず、40重量部を超えると塗膜硬度の低下を引き起こし、製造コストも上昇する。
本発明の水酸基価43〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)の割合が10重量部未満では、十分な塗膜硬度が得られず、75重量部を超えると十分な摺動性、離型性、潤滑性が得られない。
本発明のアミノ樹脂(C)の割合が、20重量部未満では、十分な塗膜性能(耐薬品性、塗膜硬度)が得られず、50重量部を超えると、塗料安定性が低下する。
【0024】
本発明により構成されるアニオン型電着樹脂組成物を用いた電着条件としては、通電工程において印加される電圧は10〜400V、好ましくは50〜250Vであり、通電時間は0.5分〜7分、好ましくは1〜4分である。
電圧が高いほど通電時間は短く、電圧が低ければ通電時間を長くする。印加電圧は通電と同時に設定電圧をかけるハードスタート、あるいは徐々に設定電圧まで電圧を上げてい
くソフトスタートのいずれでもかまわない。
電着塗装された被塗装物は、水洗され、次いで150〜200℃で15〜60分間加熱し、塗装膜が硬化される。本発明が適用できる被塗装物としては、導電性を有するものであれば特に限定されない。
【実施例】
【0025】
以下に本発明の実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、製造例、実施例及び比較例中の部は、特に断りのない限り、重量部である。
(製造例1)
攪拌装置、還流冷却器および窒素導入管を備えた3リットルの4つ口フラスコにイソプ
ロパノール12部、ブチルセロソルブ8部を仕込み、90℃に昇温した。別にイソプロパノール18部、アクリル酸5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部、スチレン5部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、n−ブチルアクリレート30部、メチルメタクリレート40部、反応性シリコーンオイル(サイラプレーンFM−0711)5部、アゾビスイソブチロニトリル1部の混合液を滴下ロートに仕込み、前記フラスコ内に120分かけて滴下した。滴下終了後、さらにイソプロパノール0.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部を、30分毎に3回添加したのちに、さらに90℃で90分反応を続けた。得られた共重合体は、酸価38.9mgKOH、水酸基価24.1mgKOHの水分散性ビニル共重合体(固形分72.2%)であった。
【0026】
(製造例2)
攪拌装置、還流冷却器および窒素導入管を備えた3リットルの4つ口フラスコにイソプ
ロパノール12部、ブチルセロソルブ8部を仕込み、90℃に昇温した。別にイソプロパノール18部、アクリル酸5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、スチレン5部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、n−ブチルアクリレート25部、メチルメタクリレート40部、アゾビスイソブチロニトリル1部の混合液を滴下ロートに仕込み、前記フラスコ内に120分かけて滴下した。滴下終了後、さらにイソプロパノール0.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部を、30分毎に3回添加したのちに、さらに90℃で90分反応を続けた。得られた共重合体は、酸価38.9mgKOH、水酸基価72.4mgKOHの水分散性ビニル共重合体(固形分72.2%)であった。
【0027】
(製造例3)
攪拌装置、還流冷却器および窒素導入管を備えた3リットルの4つ口フラスコにイソプ
ロパノール12部、ブチルセロソルブ8部を仕込み、90℃に昇温した。別にイソプロパノール18部、アクリル酸5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部、スチレン5部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、n−ブチルアクリレート25部、メチルメタクリレート40部、反応性シリコーンオイル(サイラプレーンFM−0711)10部、アゾビスイソブチロニトリル1部の混合液を滴下ロートに仕込み、前記フラスコ内に120分かけて滴下した。滴下終了後、さらにイソプロパノール0.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部を、30分毎に3回添加したのちに、さらに90℃で90分反応を続けた。得られた共重合体は、酸価38.9mgKOH、水酸基価24.1mgKOHの水分散性ビニル共重合体(固形分72.2%)であった。
【0028】
(製造例4)
攪拌装置、還流冷却器および窒素導入管を備えた3リットルの4つ口フラスコにイソプ
ロパノール12部、ブチルセロソルブ8部を仕込み、90℃に昇温した。別にイソプロパノール18部、アクリル酸5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、スチレン5部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、n−ブチルアクリレート25部、メチルメタクリレート35部、反応性シリコーンオイル(サイラプレーンFM−0711)5部、
アゾビスイソブチロニトリル1部の混合液を滴下ロートに仕込み、前記フラスコ内に120分かけて滴下した。滴下終了後、さらにイソプロパノール0.4部、アゾビスイソブチロニトリル0.2部を、30分毎に3回添加したのちに、さらに90℃で90分反応を続けた。得られた共重合体は、酸価38.9mgKOH、水酸基価72.4mgKOHの水分散性ビニル共重合体(固形分72.2%)であった。
【0029】
[実施例1]
製造例1で得られたビニル系共重合体30部と製造例2で得られたビニル系共重合体70部およびメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ株式会社製 C−235、有効成分100%)30部を混合し、ジメチルアミノエタノール1.3部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を124.2部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を742.3部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液255.5部を投入し、次にジメチルアミノエタノールを2.2部添加し電着塗料を得た。
【0030】
[実施例2]
製造例1で得られたビニル系共重合体の代わりに製造例3で得られたビニル系共重合体を使用する以外は実施例1と同様な方法で電着塗料を作製した。
【0031】
[実施例3]
製造例1で得られたビニル系共重合体20部と製造例2で得られたビニル系共重合体80部およびメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ株式会社製 C−235、有効成分100%)30部を混合し、ジメチルアミノエタノール1.3部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を124.2部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を742.3部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液255.5部を投入し、次にジメチルアミノエタノールを2.2部添加し電着塗料を得た。
【0032】
[実施例4]
製造例1で得られたビニル系共重合体40部と製造例2で得られたビニル系共重合体60部およびメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ株式会社製 C−235、有効成分100%)30部を混合し、ジメチルアミノエタノール1.3部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を124.2部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を742.3部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液255.5部を投入し、次にジメチルアミノエタノールを2.2部添加し電着塗料を得た。
【0033】
[比較例1]
製造例1で得られたビニル系共重合体5部と製造例2で得られたビニル系共重合体95部およびメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ株式会社製 C−235、有効成分100%)30部を混合し、ジメチルアミノエタノール1.3部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を124.2部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を742.3部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液255.5部を投入し、次にジメチルアミノエタノールを2.2部添加し電着塗料を得た。
【0034】
[比較例2]
製造例1で得られたビニル系共重合体60部と製造例2で得られたビニル系共重合体40部およびメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ株式会社製 C−235、有効成分100%)30部を混合し、ジメチルアミノエタノール1.3部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を124.2部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液
を得た。別の容器に脱イオン水を742.3部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液255.5部を投入し、次にジメチルアミノエタノールを2.2部添加し電着塗料を得た。
【0035】
[比較例3]
製造例1で得られたビニル系共重合体100部とメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ株式会社製 C−235、有効成分100%)30部を混合し、ジメチルアミノエタノール1.3部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を124.2部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を742.3部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液255.5部を投入し、次にジメチルアミノエタノールを2.2部添加し電着塗料を得た。
【0036】
[比較例4]
製造例2で得られたビニル系共重合体100部とメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ株式会社製 C−235、有効成分100%)30部を混合し、ジメチルアミノエタノール1.3部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を124.2部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を742.3部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液255.5部を投入し、次にジメチルアミノエタノールを2.2部添加し電着塗料を得た。
【0037】
[比較例5]
製造例4で得られたビニル系共重合体100部とメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ株式会社製 C−235、有効成分100%)30部を混合し、ジメチルアミノエタノール1.3部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を124.2部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を742.3部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液255.5部を投入し、次にジメチルアミノエタノールを2.2部添加し電着塗料を得た。
[比較例6]
製造例2で得られたビニル系共重合体70部と製造例4で得られたビニル系共重合体130部とメラミン樹脂(日本サイテックインダストリーズ株式会社製 C−235、有効成分100%)30部を混合し、ジメチルアミノエタノール1.3部を添加混合した。攪拌を続けながら、脱イオン水を124.2部加えて転相乳化を行ない、電着塗料用原液を得た。別の容器に脱イオン水を742.3部仕込み、攪拌しながら前記電着塗料用原液255.5部を投入し、次にジメチルアミノエタノールを2.2部添加し電着塗料を得た。
前記実施例1〜4および比較例1〜6の塗装原液および電着塗料液の成分を総括して表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
<樹脂組成物の評価> 実施例1〜4、比較例1〜6で調整した電着塗料液を使用し、被塗物として脱脂処理したニッケルめっき板に、陰極に18−8ステンレス鋼板を用いて、浴温20℃、両極間に直流電圧100Vを2分間印加した。次いで電着塗装されたニッケルめっき板を取り出して充分に水洗したのち、180℃の温度で30分間焼付乾燥した。各ニッケルめっき板上に形成された電着塗膜の特性は表2に示すとおりであった。
【0040】
[評価方法]
(1)塗膜厚:渦電流式膜厚計(Fisher製 ISOSCOPE)を用いて測定した。
(2)肌感 目視判定で、◎:良好 ○:やや不足 ×:不足をそれぞれ示す。
(3)摩擦係数
HEIDON表面性測定装置トライボギアTYPE14FWを用いて、荷重100g、SUS304ボール圧子で測定した。動摩擦係数で評価した。
◎:0.07未満、○:0.07以上0.1未満、×:0.1以上
【0041】
(4)シリコン表面配向性
FT−IR ATR法にて、1260cm−1(Si−CH)と1730 cm−1(C=O)の吸光度比について、塗膜表面部と基材側とで比較することにより、シリコン成分の表面配向性を評価した。
シリコン表面配向性=(塗膜表面の1260cm−1/1730cm−1吸光度比)/(塗膜内部の1260cm−1/1730cm−1吸光度比)
◎:1.3以上、○:1.1〜1.3、×:1.1未満
(5)鉛筆硬度
JIS K 5600-5-4の方法に従って試験を行った。
◎:4H以上、○:3H、×:2H以下
(6)液分離安定性 目視判定にて判定
◎;液調整後1週間沈降分離無し
○;液調整後1週間沈降分離少しあり
×;液調整後1週間沈降分離多量を示す。
【0042】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のアニオン型電着樹脂組成物およびこれを用いて構成した電着塗料並びにこれにより形成された電着塗膜は、電着塗装の分野において好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(a)置換基としてカルボキシル基を有する共重合性ビニル系単量体 3〜15重量%、
(b)置換基として水酸基を有する共重合性ビニル系単量体 1〜7重量%、
(c)置換基として数平均分子量300〜30000のシリコーン基を有する共重合性ビニル系単量体 1〜30重量%及び
(d)上記(a)〜(c)以外の共重合性ビニル系単量体 48〜95重量%を共重合してなる水酸基価4〜34mgKOH/gである水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A):5〜40重量部、
(2)(a)置換基としてカルボキシル基を有する共重合性ビニル系単量体 3〜15重量%、
(b)置換基として水酸基を有する共重合性ビニル系単量体 10〜30重量%及び
(d)上記(a)〜(b)以外の共重合性ビニル系単量体 55〜87重量%を共重合してなる水酸基価4 3〜145mgKOH/gである水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B):10〜75重量部 並びに
(3)アミノ樹脂(C):上記水溶性または水分散性シリコーン含有ビニル系共重合体(A)及び水溶性または水分散性ビニル系共重合体(B)の合計 50重量部〜80重量部に対し、20〜50重量部
を含有することを特徴とするアニオン型電着塗料用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のアニオン型電着塗料用樹脂組成物を電着塗装後、加熱硬化して得られることを特徴とする電着塗膜。
【請求項3】
請求項1に記載のアニオン型電着塗料用樹脂組成物を印加電圧10〜400V、通電時間0.5分〜7分の電着条件で電着塗装し、水洗後150〜200℃で塗装膜を加熱硬化することを特徴とする電着塗装方法。

【公開番号】特開2012−56977(P2012−56977A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198462(P2010−198462)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【特許番号】特許第4707767号(P4707767)
【特許公報発行日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000111591)ハニー化成株式会社 (13)
【Fターム(参考)】