説明

アニオン重合開始剤とその製法

一般式(I)で定義される化合物の一群を用いて不飽和モノマーのアニオン重合を開始することができる。前記式において、Mはアルカリ金属原子、Rは少なくとも1つのOR置換基を含有するアリール基であり、RはそれぞれMと反応しない基であり、Rはヒドロカルビル基である。かかる開始剤を、高温で行われるもセミバッチ重合および連続重合法に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
良好なトラクション及び耐摩耗性はタイヤトレッドに対する主な考慮事項である。しかしながら、自動車の燃費効率への関心から、タイヤの動作中のヒステリシス及び発熱性の低減と相関する転がり抵抗の最小化を論じる。これらの考慮事項は大いに競合し、いくらか矛盾する。良好な路面トラクション性をもたらすように設計された組成物から製造されたトレッドは、通常転がり抵抗の増大を示し、逆もまた同様である。一般に、トレッド組成物は、1種以上のエラストマーと、粒状カーボンブラックやシリカのような1種以上の補強性物質を含む。例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook、第13版、1990年、603〜604頁参照。
【0002】
充填剤、ポリマー、そして添加剤は、所望の特性の容認できる妥協又はバランスをもたらすように選択される。補強性充填剤をエラストマー材料全体に良く分散させるのを確実にすることは、加工性を高め、物理特性を向上させるように作用する。充填剤粒子の分散は、そのエラストマーとの相互作用を高めることにより、及び/又は充填剤同士の相互作用を弱めることにより向上させることができる。このタイプの工夫の例として、選択的に反応する促進剤の存在下での高温混合、配合材料の表面酸化、表面グラフト化、及びポリマー、通常その末端での化学修飾が挙げられる。
【0003】
末端化学修飾は、リビング(即ちアニオン的に開始した)ポリマーと官能性停止剤との反応によりしばしば起こる。このアプローチの多くの例のいくつかが、米国特許第3,109,871号、第4,647,625号、第4,677,153号、第5,109,907号、第6,977,281号等、並びにこれら特許に引用された文献、そして後にこれら特許を引用した刊行物に挙げられる。
【0004】
末端修飾はまた、独立して又は官能性停止と組合せた官能性開始剤により得ることができる。官能性開始剤は、さらに他の官能性、通常窒素原子を含む官能性を含み、1種以上の粒状充填剤物質と相互作用し得る有機リチウム化合物である。
【0005】
一般に、官能性開始剤はアニオン重合に通常用いるタイプの炭化水素溶媒に比較的難溶性である。さらに、多くの官能性開始剤はまた、ブチルリチウムのようなより一般的なアルキルリチウムと同様に、リビング末端の伝播を維持しない。これらの特性は、重合速度や効率に悪影響を与える。
【0006】
国際公開第2009/086490号に記載された新種の官能性開始剤の少なくともいくつかは、炭化水素溶媒、一様な脂肪族炭化水素溶媒への優れた溶解性及び/又はポリマー鎖のリビング末端の伝播を維持する能力を示す。しかしながら、これら化合物の多くは比較的穏やかな温度(例えば80℃以下)でのみ最も効果的であり、これは通常その使用がバッチプロセスの特徴である傾向の例えば大きな反応容器、緩やかな重合速度(即ち、より長時間の重合)等に対し熱伝導が最も配慮され得るシステム又はプロセスに限定されることを意味する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、例えば半バッチ重合および連続重合のようなバッチプロセス以外に関与したより高温かつ短時間であっても不飽和モノマーのアニオン重合を開始できる化合物の一群を提供する。
【0008】
1つの態様において、エチレン系不飽和モノマーのアニオン重合を開始し得る化合物を提供する。該化合物は、以下の式で表される。
【化1】

式中のMはアルカリ金属原子、好ましくはLi、Na又はKであり、Rは少なくとも1つのOR置換基を含むアリール基で、RはMに非反応性で且つ加水分解され得る基であり、Rはヒドロカルビル基である。エチレン系不飽和モノマーの重合用開始剤としての使用に特に適した式(I)で定義される分類内の化合物の具体例は、以下の一般式を有する。
【化2】

式中のMとRは上記のように定義され、各Gは独立して保護基であり、mは1〜5を含む整数である。有利なことに、かかる化合物はアニオン重合に用いるタイプの炭化水素溶媒に可溶で、連続および半バッチ処理中の比較的高温で使用することができる。
【0009】
もう1つの態様において、1種以上の不飽和モノマーの重合を式(I)又は式(Ia)の化合物で開始する工程を含む反応容器中で官能化ポリマーを製造する方法を提供する。開始化合物及び/又は不飽和モノマーの一部を重合開始後に添加することができる。即ち、該プロセスはバッチ以外とすることができる。さらに、重合は70℃を超えて、最大で120℃の温度で実施してもよい。
【0010】
さらにもう1つの態様において、エチレン系不飽和モノマーの重合を開始し得るイオン化合物を製造する方法を提供する。該方法は、ヒドロカルビルアルカリ金属化合物を以下の一般式を有するスチレン化合物と反応させる工程を含む。
【化3】

ここでRは式(I)に関連して上記のように定義される。式(II)で定義される分類内の化合物の具体例は、以下の一般式を有する化合物を含む。
【化4】

ここでGとmは式(Ia)に関連して上記のように定義される。式(II)と式(IIa)タイプの化合物は、対応するアルデヒドのカルボニルメチレン化によって製造することができる。
【0011】
前述した態様のいくつか又は全てにおいて、ポリマーはポリエン・マー単位を含むことができ、また任意にビニル芳香族・マーを含むことができる。特定の実施形態において、上記ポリエンは1種以上の共役ジエンとすることができる。これらおよび他の実施形態において、上記ポリマーは実質的にランダム(即ち、構成モノマーが実質的に分子鎖に沿ってランダムに組み込まれている)であってもよく、及び/又は実質的に直鎖状であってもよい。また、ブロックインターポリマー、分岐ポリマー、星状ポリマー等も予期される。
【0012】
上記ポリマーは、例えばカーボンブラックのような粒状充填剤と相互作用することができる。加硫物を含み、粒状充填剤と上記ポリマーを含む組成物、かかる組成物を製造および使用方法も提供する。
【0013】
本発明の他の態様は、以下の詳細な説明から当業者にとって明らかとなるであろう。その説明の理解を助けるため、特定の定義をすぐ下に記載するが、これらは周囲の文章が明確に反対の意を示さない限り、全体としてこれらを適用することを意図とする。
「ポリマー」とは、1つ以上のモノマーの重合生成物を意味し、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマー等を包含する。
「マー」又は「マー単位」とは、単一反応体分子から生じたポリマーの部分を意味する(例えば、エチレン・マーは一般式−CHCH−を有する)。
「コポリマー」とは、2種の反応体、通常モノマーから生じたマー単位を含むポリマーを意味し,ランダム,ブロック,セグメント,グラフト等のコポリマーを包含する。
「インターポリマー」とは、少なくとも2種の反応体、通常モノマーから生じたマー単位を含むポリマーを意味し、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマー等を包含する。
「置換された」とは、検討中の基の意図する目的を妨害しないヘテロ原子又は官能基(例えば、ヒドロカルビル基)を含有するものを意味する。
「直接結合した」とは,原子又は基の仲介なしに共有結合していることを意味する。
「ポリエン」とは、最長部又はその鎖中に少なくとも二個の二重結合がある分子を意味し、具体的にはジエン、トリエン等を包含する。
「ポリジエン」とは、1種以上のジエンからなるマー単位を含むポリマーを意味する。
「phr」とは、ゴム100重量部当たりの重量部(pbw)を意味する。
「ラジカル」とは、反応の結果としていずれかの原子が得られ又は失われるに関わらず、もうひとつの分子と反応した後に残った分子の部分を意味する。
「アリール基」とは、フェニル基又は多環式の芳香族ラジカルを意味する。
「ゴムムーニー粘度」とは、あらゆる充填剤の添加前の未硬化ポリマーのムーニー粘度である。
「化合物ムーニー粘度」とは、とりわけ未硬化又は部分的に硬化したポリマーと、粒状充填剤とを含む組成物のムーニー粘度である。
「末端」とは、ポリマー鎖の終端を意味する。
「末端部分」とは、末端に位置する基又は官能性を意味する。
【0014】
この文章を通して、周囲の文章が明確に反対の意を示さない限り、パーセントの形式で示した値は全て重量パーセントである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
前述の発明の概要から明らかなように、より具体的な式(Ia)式により定義されたものを含む式(I)により一般に定義される化合物を用いて、1種以上の不飽和モノマーのアニオン重合を開始することができる。特に、生成したポリマーがタイヤ構成材の使用である場合、上記ポリマーはポリエン・マー単位、特に共役ジエン・マー、そして任意にビニル芳香族・マーを含むことができる。
【0016】
該ポリマーはエラストマーとすることができ、ポリエン、特にジエンおよびトリエン(例えばミルセン)に由来したもののような不飽和含有マーを含んでもよい。実例となるポリエンとしては、C−C12のジエン、特に、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンのような共役ジエンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
ポリエンを複数の方法でポリマー鎖に組み込むことができる。特にタイヤトレッド用としては、この組み込む方法を制御することが望ましい。この制御を達成するための技術を後述する。ポリエンの総含有量に対し8〜80%、任意に25〜65%の数量百分率として得られる総1,2−ミクロ構造を有するポリマー鎖は、特定の最終用途に望ましい。ポリエンの総含有量に対し50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらにより好ましくは35%以下、そして最も好ましくは30%以下の総1,2−ミクロ構造を有するポリマーは、「実質的に直鎖」であると考えられる。
【0018】
直接結合したペンダント芳香族基は、ビニル芳香族、特に例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン及びビニルナフタレンのようなC−C20のビニル芳香族に由来したマー単位の組み込みによって得ることができる。ランダムインターポリマーに1つ以上のポリエンと共に使用する(各種の構成モノマーに由来したマー単位が非反復的に実質的に同時に組み込まれている)場合、ペンダント芳香族性を有するマー単位は、ポリマー鎖の1〜50%、10〜45%、20〜40%を構成できる。ランダムミクロ構造は、例えば、タイヤトレッドの製造に用いるゴム組成物のようないくつかの最終使用用途に格別の利点をもたらすことができる。ブロックインターポリマー又はコポリマーが望ましい場合、ペンダント芳香族性を有するマー単位は、ポリマー鎖の1〜90%、一般に2〜80%、通常3〜75%、代表的には5〜70%を構成できる。
【0019】
ポリマー製品のランダム化とビニル含有量(即ち、1,2−ミクロ構造)は、配位結合剤、通常極性化合物を重合成分に含めることによって増大させることができ、該配位結合剤を単独で1つ以上のモノマー又は開始剤(もし重合容器の外側で形成)と共に添加することができる。配位結合剤として有用な化合物としては、非結合電子対を有するヘテロ原子(例えば、O又はN)を含む有機化合物が挙げられ、その例としてモノおよびオリゴアルキレングリコールのジアルキルエーテル;クラウンエーテル;テトラメチルエチレンジアミンのような第三級アミン;THF;THFオリゴマー;2,2−ビス(2´−テトラヒドロフリル)プロパン、ジ−ピペリジルエタン、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N´−ジメチルピペラジン、ジアザビシクロオクタン、ジエチルエーテル、トリブチルアミン等のような直鎖および環状オリゴマーオキソラニルアルカン(米国特許第4,429,091号参照)がある。例えば、所望のビニル含有量、使用する非ポリエンモノマーのレベル、反応温度および使用する具体的な配位結合剤の性質に応じて、開始剤の当量に対し最大90当量またはそれ以上の配位結合剤を使用することができる。
【0020】
典型的なエラストマーは、例えばSBRとしても既知のポリ(スチレン−コ−ブタジエン)のような1つ以上のポリエンとスチレンのインターポリマーを含む。
【0021】
ポリマーの数平均分子量(M)は、通常急冷サンプルが2〜150、より一般的に2.5〜125、さらにより一般的に5〜100、最も一般的に10〜75のゴムムーニー粘度(ML/100℃)を示すようなものである。
【0022】
乳化重合と溶液重合の両方を通常用いてSBRのようなエラストマーを製造するが、後者の方が、ランダム度合い、ミクロ構造等のような特性をより良好に制御することができる。溶液重合は20世紀中盤から行われており、その一般的な態様は当業者によく知られているが、それにもかかわらず特定の態様を参照の都合上ここに提供する。
【0023】
THFのような極性溶媒と非極性溶媒の両方をアニオン重合技術に用いることができ、後者のタイプが産業的実施により一般的である。非極性溶媒の例としては、種々のC−C12環式および非環式アルカン並びにそのアルキル化誘導体、特定の液体芳香族化合物、そしてそれらの混合物が挙げられる。当業者であれば、その他の有用な溶媒と混合物を知っている。
【0024】
大抵の溶液タイプのアニオン重合は、n−ブチルリチウムのようなアルキルリチウム開始剤、2つ以上のリビング末端を有するポリマーを形成し得る所謂多官能性開始剤、又は背景技術の欄に記載したタイプの官能化開始剤を使用する。官能化開始剤の多くは、上述した多くの溶媒、特に比較的非極性の溶媒に難溶性であり、反対に式(I)で定義される多くの化合物は、溶液重合で溶媒として通常用いるタイプの有機液体に許容し得る溶解性を示す。以後この式に含まれる化合物をR含有開始剤と称する。かかる開始剤において、対カチオン(M)はアルカリ金属、好ましくはK、Na又はLi原子であり、最も好ましくはLi原子である。
【0025】
含有開始剤のアリール基はフェニル基又は2つ以上の結合した芳香族環とすることができる。Rアリール基が2つ以上のOR基(各RはMに対して非反応性の基)を含む場合、上記OR基は、アリール基内の同じ環の置換基であってもよいし、アリール基内の異なる環の置換基であってもよい。アリール基が3つ以上のOR基を含む場合、そのうちの2つは同じ環の置換基で、その他は異なる環の置換基であってもよい。一実施形態において、2つのOR基はアリール基、好ましくはフェニル基内の同じ環の3位と4位に位置することができる。Rがフェニル基以外で、2つ以上のOR基を含み、該OR基が2つ以上の環上にある場合、OR基の少なくとも2つは、少なくともいくらか隣接していることが好ましい。即ち、4つ、好ましくは3つ、より好ましくは2つの他の環状原子により分離された環状C原子に直接結合する。単一OR基がフェニル基上に存在する場合、これは環のどの位置に位置していてもよいが、ビニル基からパラの位置が特定の応用に好ましい。
【0026】
含有開始剤のR部分は、容易性と単純性が通常所定のR含有開始剤につき単一タイプのRとなるが、全く同じである必要はなく、R含有開始剤がアニオン重合を開始するためのR含有開始剤の能力を阻害する活性水素原子を含まないことを保証する。特定のRが粒状充填剤(いくつかを以下の実施例において使用する)との相互活性を付与し得る部分を構成しない限り、ポリマー鎖の一端を形成中にR含有開始剤を重合に使用した後、これはまたフェノール性ヒドロキシル基を付与するように加水分解され得ることが好ましい。このタイプの末端単位は、カーボンブラック、シリカ並びに無機酸化物、水酸化物、クレイ等のような非従来的な充填剤を含む幅広い粒状充填剤と優れた相互活性を付与することを見出した。
【0027】
式(I)で定義した化合物は、一般式(II)で定義したスチレン系化合物を一般式RMのヒドロカルビルアルカリ金属化合物と反応させることによって製造することができる。ここで、Rはアルキル(通常C−C10アルキル)、シクロアルキル(通常C−C10シクロアルキル)およびアリール基である。典型的なRM化合物としては、n−ブチルリチウム、フェニルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、アルカリ金属ナフタレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
式(II)のタイプの化合物は、適当なアルデヒドのカルボニルメチレン化によって製造することができる。例えば、アリール基がフェニル基である式(IIa)で定義した一連の形態は、Gとmが上記のように定義された以下の一般式の化合物からウィティッヒ試薬、テッベ試薬等を用いて製造することができる。
【化5】

特定のウィティッヒタイプのメチレン化反応は、後述する実施例に記載する。
【0029】
含有開始剤は、それが開始剤として作用する場合、重合容器の外部で製造することができる。この場合、モノマーと溶媒の混合物を反応容器に投入し、次に開始剤を添加することができ、該開始剤をしばしば溶液又は混合物(即ち溶剤担体中)の一部として添加する。あるいはまた、R含有開始剤をその場で合成することができる。
【0030】
バッチプロセスにおいては、重合溶媒とモノマーの溶液を約−80℃〜100℃、より一般的には約−40℃〜50℃、そして多くの場合0〜30℃の温度で準備し、この溶液にR含有開始剤(又は前躯体とヒドロカルビルリチウム、通常アルキルリチウム)を添加する。該溶液は約−70℃〜150℃、より一般的には約−20℃〜120℃、多くの場合10℃〜100℃の温度を有してもよい。重合は所望のポリマーの形成をもたらすに十分な時間、通常0.01〜100時間、より一般的には0.08〜48時間、そして多くの場合0.15〜2時間続行することができる。アニオン重合は一般に無水、無酸素状態下で通常攪拌しながら行う。
【0031】
半バッチプロセスについて、前述のバッチの記載が、1種以上のエチレン系不飽和モノマー及び/又は極性重合調整剤を反応容器に非連続的に又は連続的に計量することによって修正される。半バッチプロセスを通常行う温度範囲はバッチプロセスのものと類似する一方、常時変換されるモノマーの量が減少することで、熱伝導の考慮事項が平易になり、従って様々な範囲のより高い限界でしばしば行われる。さらに、1つ以上のタイプのモノマー及び/又は極性重合調整剤を計量することで、ポリマーのミクロ構造をより制御することができる。典型的な半バッチプロセスを以下実施例において記述する。
【0032】
連続プロセスについて、バッチプロセスが、全ての反応体と添加剤、即ち、エチレン系不飽和モノマー、配位結合剤、R含有開始剤等を反応容器に非連続的に又は連続的に計量することによって修正される。連続プロセスを通常行う温度範囲はバッチプロセスのものと類似する傾向がある。連続プロセスは、バッチ又は半バッチプロセスよりも効率的(生産高の観点で)であると通常考えられる。典型的な連続プロセスを以下の実施例に記述する。かかるプロセスの追加情報については、米国特許第7,442,748号、第6,897,270号および第5,489,660号並びにこれらの特許に引用され、そしてこれら特許を引用した特許と刊行物を参照)。
【0033】
所望の転化率が達成された後、熱源(用いる場合)を取り除くことができ、反応容器を重合のためだけに用いる場合は、反応混合物を官能化及び/又は急冷用の後重合容器へ移す。この時、反応混合物は、その比較的高いポリマー濃度のため、一般に「ポリマーセメント」と称される。さらに、各リビングポリマー鎖は、直接結合したR含有開始剤ラジカルを有し、これはそれらポリマーが官能化されると見なされることを意味する。
【0034】
ポリマーは、R含有開始剤からの末端官能性を含むと考えられる。しかしながら、粒状充填剤との相互作用を高めるために追加又は他の官能性を望む場合、ポリマーは適切な停止剤、カップリング剤及び/又は連結剤との反応によりさらに官能化することができる。当業者は、このタイプの後重合官能化により提供され得る末端官能性の多数の例についてよく知っている。追加の詳細について関心のある読者には、米国特許第4,015,061号、米国特許第4,616,069号、第4,935,471号、第5,153,159号、第5,149,457号、第5,196,138号、第5,329,005号、第5,496,940号、第5,502,131号、第5,567,815号、第5,610,227号、第5,663,398号、第5,786,441号、第6,812,295号、第7,153,919号、並びにこれら特許によって引用された文献、そしてこれら特許を引用する刊行物を薦める。また米国公開特許第2007/0149744号、第2007/0037956号、第2007/0078232号、第2008/0027171号等も参照。具体的な典型的官能性付与化合物としては、SnCl、RSnCl、RSnCl、RSnCl,カルボジイミド、N−環状アミド、N,N´−二置換環状尿素、環状アミド、環状尿素、イソシアネート、シッフ塩基、4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、アルキルチオチアゾリン、アルコキシシラン(例えばSi(OR、RSi(OR、RSi(OR等)、環状シロキサン、そしてそれらの混合物が挙げられる。(前述のように、各Rは独立してC−C20アルキル基、C−C20シクロアルキル基、C−C20アリール基またはC−C20のアラルキル基である。)好ましい官能性付与化合物の具体的な例としては、SnCl、塩化トリブチルスズ、塩化ジブチルスズ、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)が挙げられる。
【0035】
大部分のタイプの官能性付与化合物とリビングポリマーとの反応は、穏やかな温度(例えば0〜75℃)で比較的速く(数分〜数時間)行うことができる。必須ではないが、急冷はポリマーと、アルコール又は酸のような活性水素含有化合物を最大120分間25℃〜150℃の温度で攪拌することにより行うことができる。
【0036】
重合と任意の後重合官能化の間、大部分のR基は恐らく加水分解性基の部類に留まる。言い換えると、重合容器中に通常存在する無水、無酸素条件は、R含有開始剤からの実質的に全てのR基が残存するようなものである。R基の全てではないが、大部分を水素原子に転換することを確実にすることは、官能化ポリマーと粒状充填剤の間の相互活性(ポリマーを充填剤入りの組成物中で使用する場合)を強めるためにしばしば望ましい。官能化反応の条件(又は以下に記載する急冷および処理工程に関連する条件)がいくらかのR基を加水分解するのに十分である場合、H原子への完全な変換を確実にするようにした別個の加水分解反応を利用することができる。1つの典型的な手段が実施例に開示されているが、当業者は様々な潜在的に有用な加水分解反応を知っている。
【0037】
水、アルコール又は水蒸気での凝固、熱的脱溶媒和等と組み合わ得るドラム乾燥、押出乾燥、真空乾燥等のような従来技術により溶媒を急冷したポリマーセメントから除くことができる。凝固を行う場合は、オーブン乾燥が望ましい場合がある。
【0038】
生成したポリマーをトレッドストック配合物に用いることができるか、或いは天然ゴム及び/又は非官能化合成ゴム、例えば単にポリエン由来のマー単位を含む1種以上のホモポリマー及びインターポリマー(例えば、ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、並びにブタジエン、イソプレン等を組み込んだコポリマー)、SBR、ブチルゴム、ネオプレン、EPR、EPDM、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フルオロエラストマー、エチレン/アクリルゴム、EVA、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレンゴム等を含むあらゆる従来使用のトレッドストックゴムと混合することができる。官能化ポリマーを従来のゴムと混合する場合、その量はゴム全体の約5〜約99%の範囲で変化させることができ、従来のゴムがゴム全体の残余部分を埋める。最小量は、所望のヒステリシス減少の度合に大きく依存する。
【0039】
非晶質シリカ(SiO)を充填剤として用いることができる。シリカは一般に湿式、水和シリカに分類されるが、それは水中での化学反応により製造されるためであり、超微細な球形粒子として沈殿する。これら1次粒子は強力に結合して凝集体となり、次々により弱く結合して集合体となる。「高分散性シリカ」とは、薄片顕微鏡法で観察し得るエラストマーのマトリックス中で集合を解き分散する非常に大きな能力を有するシリカである。
【0040】
表面積は、異なるシリカの補強特性の信頼性のある指標であり、Brunauer、Emmet及びTeller(「BET」)の方法(J. Am. Chem. Soc、第60巻、309頁以下参照)が広く認められている表面積測定方法である。シリカのBET表面積は一般に450m2/g未満であり、表面積の有用な範囲は32〜400m2/g、100〜250m2/g、及び150〜220m2/gである。
【0041】
シリカ充填剤のpHは、一般に約5〜7又はそれよりやや大きく、好適には約5.5〜6.8である。
【0042】
用い得る幾つかの市販のシリカとしては、Hi‐SilTM215、Hi‐SilTM233、及びHi‐SilTM190(PPGインダストリーズ社、ピッツバーグ、ペンシルバニア)が挙げられる。市販のシリカの他の供給業者としては、グレースダビソン社(ボルティモア、メリーランド)、デグサ社(パーシッパニー、ニュージャージー)、ローディアシリカシステムズ社(クランブリー、ニュージャージー)、及びJ.M.フーバー社(エジソン、ニュージャージー)が挙げられる。
【0043】
シリカは、1〜100phrの量、好ましくは5〜80phrの量で用いることができる。有用な上限範囲は、かかる充填剤が与え得る高い粘度により制限される。
【0044】
他の有用な充填剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びランプブラック等の総ての形態のカーボンブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではない。より具体的に、カーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネスブラック、高耐摩耗性ファーネスブラック、高速押出性ファーネスブラック、微細ファーネスブラック、準耐摩耗性ファーネスブラック、半補強性ファーネスブラック、中級加工性チャンネルブラック、難加工性チャンネルブラック、導電性チャンネルブラック及びアセチレンブラックが挙げられ、これら2種以上の混合物を用いることができる。少なくとも20m/g、好適には少なくとも35m/gの表面積(EMSA)を有するカーボンブラックが好ましい。表面積の値はCTAB技術を用いるASTM D‐1765により求めることができる。カーボンブラックはペレット化形状または非ペレット化凝集塊であってもよいが、非ペレット化カーボンブラックが特定の混合機での使用に対して好ましい可能性がある。
【0045】
カーボンブラックの量は、最大50phrとすることができるが、5〜40phrが一般的である。カーボンブラックをシリカと共に用いる場合、シリカの量を約1phrまで減らすことができ、シリカの量が減ると、もしあればシランを加えたより少ない量の加工助剤を用いることができる。
【0046】
一般に、エラストマー配合物は加えた充填剤の総体積をエラストマーストックの総体積計で割った体積分率で、25%まで充填され、従って補強性充填剤、すなわちシリカ及びカーボンブラックの典型的な(総合)量は30〜100phrである。
【0047】
シリカを補強性充填剤として用いる場合、シランのようなカップリング剤の添加は、エラストマー中での良好な混合およびそれとの相互作用を確実にするための慣例である。一般に、シランの添加量は、エラストマー化合物中に存在するシリカ充填剤の重量に対し4〜20%の範囲である。
【0048】
カップリング剤は一般式A−T−Qを有することができ、式中のAはシリカ充填剤の表面上の基(例えば、表面シラノール基)と物理的及び/又は化学的に結合し得る官能基を表し、Tは炭化水素基結合を表し、Qはエラストマーと結合し得る(例えば、硫黄含有結合を介して)官能基を表す。かかるカップリング剤としては、有機シラン、特に多硫化アルコキシシラン(例えば、米国特許第3,873,489号、3,978,103号、3,997,581号、4,002,594号、5,580,919号、5,583,245号、5,663,396号、5,684,171号、5,684,172号、5,696,197号等参照)、又は上述のQ及びA官能性を有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。典型的なカップリング剤はビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドである。
【0049】
加工助剤の添加は、シランの使用量を減らすために用いることができる。加工助剤として用いる糖の脂肪酸エステルの説明については、例えば米国特許第6,525,118号を参照。加工助剤として有用な追加の充填剤としては、クレイ(含水ケイ酸アルミニウム)、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)及びマイカのような鉱物系充填剤、並びに尿素及び硫酸ナトリウムのような非鉱物系充填剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。追加の充填剤は、約40phrまで、通常20phrまでの量で用いることができる。
【0050】
従来のその他のゴム添加剤を用いることもできる。これらとしては、例えば、プロセスオイル、可塑剤、老化防止剤及びオゾン劣化防止剤のような抗劣化剤、硬化剤等が挙げられる。
【0051】
総ての成分を、例えばバンバリー又はブラベンダーミキサーのような標準的設備を用いて混合することができる。一般に、混合は2つ以上の段階で生ずる。第1段階(しばしばマスターバッチ段階と称する)の間、混合を通常120〜130℃の温度で開始し、一般に165℃である所謂落下温度に達するまで上げる。
【0052】
配合物がシリカを含む場合、別の再混合段階をシラン成分の別の添加用にしばしば用いる。この段階は、やや低いこともあるが、マスターバッチ段階で用いるものと類似した温度、即ち90℃から150℃の落下温度までの温度で行う。
【0053】
補強ゴム配合物は、従来約0.2〜約5phrの、例えば硫黄又は過酸化物系硬化システムのような1種以上の既知加硫剤で硬化させる。適当な加硫剤の一般的な開示について興味のある読者には、Kirk-Othmer、Encyclopedia of Chem. Tech.第3版、(Wiley Interscience, New York、1982年)、第20巻、365〜468頁に記載されているような概説を薦める。加硫剤、促進剤等を最終混合段階で加える。加硫の開始が早期に生じないようにするために、この混合工程をしばしば低温で行い、例えば60〜65℃で開始し、105〜110℃よりも高くならないようにする。
【0054】
以下の非限定的で、説明用の例は、本発明の実施に有用であり得る典型的な条件及び材料を提供することを意図するものである。
【実施例】
【0055】
ブタジエンの溶液(ヘキサン中で22.5%)、スチレンの溶液(ヘキサン中で33.5%)、ヘキサン、n−ブチルリチウム(ヘキサン中で1.70M)、2,2−ビス(2´テトラヒドロフリル)プロパン(1.6Mのヘキサン溶液、CaH内で保存)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)のヘキサン溶液、および3−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル−メチルジエトキシシラン(ヘキサン中で1.0M)をこれら実施例に用いた。
【0056】
下記に含まれる市販の試薬と出発材料の全てを、特定の実施例において特記しない限りさらなる精製無しに用いた。
シグマアルドリッチ社の3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(97%)、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(98%)、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド(97%)、3,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド(98%)、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド(98%)、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド一水和物(98%)、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(MTP−Br、98%)、p−トルエンスルホン酸一水和物(98.5%)、酢酸エチル(99.5%)および4−ジ(メチルアミノ)ピリジン(DMAP、99%)
アクロスオーガニクス社のtert−ブチルジメチルシリルクロライド(98%)と、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF、THF中1M、水を5%含有)。
【0057】
実施例における試験データは、表1a(カーボンブラックのみを粒状充填剤として用いた配合物)と表1b(シリカのみを粒状充填剤として用いた配合物)に従って作製した充填剤入り組成物に対して行った。これらの表において、N−フェニル−N´−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニルジアミンは老化防止剤として作用する一方、2,2´−ジチオビスベンゾチアゾール、N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドおよびN,N´−ジフェニルグアニジンは促進剤として作用する。
【0058】
【表1−1】

【0059】
【表1−2】

【0060】
「ダイナスタットtanδ」に対応するデータは、次の条件:1Hz、静的質量2kg及び動荷重1.25kg、円筒型(直径9.5mm×高さ16mm)加硫ゴムサンプル及び60℃を用いてダイナスタットTM機械的分光計(ダイナスタティクスインスツルメンツ社、アルバニー、ニューヨーク州)で行った試験から得た。
【0061】
「バウンドラバー」に対応するデータは,J.J.Brennanら著,Rubber Chem. and Tech.,40巻,p817(1967年)に記載された手順を用いて求めた。
【0062】
ムーニー粘度(ML1+4)の値は,1分間の準備期間と4分間の測定時間を用いてアルファ テクノロジーズTMムーニー粘度計(大型ローター)で求めた。引張機械特性は,ASTM−D412記載の標準手順を用いて求めた。ペイン効果(ΔG’,すなわち,0.25%歪及び14%歪でのG'の差)及びヒステリシス(tanδ)データは,60℃・10Hz(歪掃引)及び2%歪・10Hz(温度掃引)で行った動的試験から得た。引張特性に関して,MxはX%伸びでのモジュラスであり,Tbは破断引張強度であり,Ebは破断伸び率である。
実施例1:3,4−ジ(tert−ブチルジメチルシロキシル)ベンズアルデヒド
【0063】
磁気攪拌子を装着した乾燥フラスコに8.3gの3,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、0.5gのDMAP、30mLのトリエチルアミンおよび100mLのTHFを投入した。50mLのTHFに19.0gのtert−ブチルジメチルシリルクロライドが溶解した溶液を注射器によりゆっくりと添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。固形物をろ過し、ろ液を濃縮した。残渣を溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル(90:10 v/v)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィー(200−425メッシュ、フィッシャーサイエンティフィック社製)により精製した。おおよそ21.3g(収率96.8%)の無色の油性ろう状生成物を得た。プロトンおよび13CNMR分光分析により、該生成物は3,4−ビス(tert−ブチルジメチルシロキシル)ベンズアルデヒド[3,4−(TBDMSO)BA]であることを確認した。
実施例2〜5:官能スチレンの合成
【0064】
窒素雰囲気下100mLの乾燥THFに23.2gのMTP−Brが溶解した0℃の攪拌溶液に、40.6mLのn−BuLi溶液を滴下した。15分後、30mLのTHFに22.3gの3,4−(TBDMSO)BA(実施例1)が溶解した溶液を注射器により滴下した。生成した黄色の懸濁液をNHClで処理する前に4時間攪拌した。この溶液をろ過し、真空下で濃縮した。残渣を溶離剤としてヘキサン/酢酸エチル(95:5 v/v)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、無色のオイル20.6g(収率94%)を収集した。プロトンおよび13CNMR分光分析により、該化合物は3,4−ジ(tert−ブチルジメチルシロキシル)スチレン[3,4−TBDMSOS、実施例2]であることを確認した。
【0065】
同様の手順を使用して、3,4,5−トリヒドロキシベンズアルデヒド一水和物から3,4,5−トリ(tert−ブチルジメチルシロキシル)スチレン[3,4,5−TBDMSOS、実施例3](90%、無色の液体)を、3,5−ジヒドロキシベンズアルデヒドから3,5−ジ(tert−ブチルジメチルシロキシル)スチレン[3,5−TBDMSOS、実施例4](88%、無色の液体)を、そして4−ヒドロキシベンズアルデヒドから4−(tert−ブチルジメチルシロキシル)スチレン[4−TBDMSOS、実施例5](91%、無色の液体)を製造した。
実施例6〜11:官能化スチレンモノマーを用いた半バッチ重合
【0066】
室温でパージ、乾燥したガラス瓶に3.34mLのn−ブチルリチウム溶液、その後1.10mLの2,2−ビス(2´−テトラヒドロフリル)プロパン溶液を、1.0Mの3,4−TBDMSOS(実施例2)のヘキサン溶液5.7mLに添加した。即座に深紅の溶液が生成し、これを5分後攪拌器を備え、82℃に予熱し、Nパージされた反応器に投入した。
【0067】
流量計を備えた混合タンクから1.73kgのヘキサン、0.66kgのスチレン溶液および2.04kgのブタジエン溶液の予備混合溶液の計量を0.45g/秒の流速で2時間にわたって始めた。反応器への計量5分後、バッチ温度は85℃のピークに達した。
【0068】
さらに15分経過後、ポリマーセメントを乾燥ガラス瓶に入れて、以下のように処理した。
実施例6: イソプロパノールで停止した。
実施例7: イソプロパノールで停止し、50℃で30分間攪拌し、TBAF溶液(開始剤に対し6:5のモル比)を添加して保護基を加水分解し、室温で1時間攪拌した。
実施例8: 1.0Mの3,4−TBDMSOS(実施例2)のヘキサン溶液(開始剤に対し1:1のモル比)を添加し、50℃で30分間攪拌し、TBAF溶液(開始剤に対し6:5のモル比)を添加して保護基を加水分解し、室温で1時間攪拌した。
実施例9: 1.0Mの3,4−(TBDMSO)BA(実施例1)のヘキサン溶液(開始剤に対し1:1のモル比)を添加し、50℃で30分間攪拌し、TBAF溶液(開始剤に対し6:5のモル比)を添加して保護基を加水分解し、室温で1時間攪拌した。
実施例10: 3−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル−メチルジエトキシシラン溶液(開始剤に対し1:1のモル比)を添加し、50℃で30分間攪拌し、TBAF溶液(開始剤に対し6:5のモル比)を添加して保護基を加水分解し、室温で1時間攪拌した。
実施例11: 0.25MのSnClのヘキサン溶液(開始剤に対し1:4のモル比)を添加し、50℃で30分間攪拌した。
各ポリマーセメントを、ドラム乾燥する前にBHT含有イソプロパノールに滴下した。これら官能化ポリマーの特性を以下の表2に示す。ここでMはピーク分子量を表し、1,2−ミクロ構造の割合は使用したブタジエンの総量に基づく。
【0069】
【表2】

実施例12〜14:官能化スチレンモノマーを用いた連続重合
【0070】
滞留時間25分の25L反応器にヘキサンを充填し、ジャケット温度を90.5℃に設定した。
【0071】
反応器の底部に1.98g/秒のスチレン溶液(ヘキサン中31.8重量%)、4.72g/秒のブタジエン溶液(ヘキサン中21.7重量%)、2.31g/秒のヘキサン、0.23g/秒の2,2−ビス(2´−テトラヒドロフリル)プロパン(ヘキサン中0.027M)、0.0012cm/秒の1,2−ブタジエン(13.8%)、0.97g/秒の3,4−TBDMSOSの0.08Mヘキサン溶液、および0.97g/秒のn−ブチルリチウム(ヘキサン中0.08M)を計量した。反応器の中間点で1.17g/秒のブタジエン溶液の追加流れを加えて、ブロックスチレンの形成を最小化した。
【0072】
これらの条件下で18%の全固形ポリマーが反応器中に生成した。ポリマーセメントを反応器の頂部で貯蔵容器に移した。
【0073】
60〜90分の重合時間の後、定常状態に達した(最も高い反応器温度94.4℃、低い反応器温度82.8℃)。さらに60分の重合の後、サンプルを反応器の頂部で採取し、ドラム乾燥した。NMR検査は36%のスチレン含有量および41%の1,2−ミクロ構造を示し、ポリマーは49.7のムーニー(ML1+4)粘度と3.2秒のt80を示した。ポリマーセメントを貯蔵タンクに集め、イソプロパノールで停止した。ポリマーは56.4の最終ムーニー(ML1+4)粘度と3.1秒のt80を示した。これは、以下に指定した実施例12である。
【0074】
同様の技術を用いて2つの追加重合を行って、16%と20%のポリマーセメント濃度を得た。これらはそれぞれ以下に指定した実施例13、14である。
【0075】
実施例12〜14のポリマーの特性を以下の表にまとめた。スチレン含有量と1,2−ミクロ構造はNMRにより求めた。
【0076】
【表3】

実施例15〜21:開始剤の比較
【0077】
3種類のスチレン/ブタジエンインターポリマーを付与するようにバッチ重合を実施した。第一の重合では開始剤としてn−ブチルリチウム(WO2009/086490の実施例部分で用いたものと類似の手順を使用)を用い、第二の重合では開始剤としてヘキサメチレンイミン(HMI)(米国特許第5,329,005号を参照)を用い、第三の重合では開始剤として3,4−TBDMSOS(実施例2を参照)を用いた。
【0078】
各ポリマーセメントの一部を乾燥ガラス瓶に滴下し、以下のように処理した。
n−ブチルリチウムで開始
実施例15: イソプロパノールで停止した。
HMIで開始
実施例16: イソプロパノールで停止した。
実施例17: 3,4−(TBDMSO)BA(実施例1)(開始剤に対し1:1のモル比)を添加し、50℃で30分間攪拌し、TBAF溶液を添加して保護基を加水分解し、室温で1時間攪拌した。
実施例18: SnClのヘキサン溶液(開始剤に対し1:4のモル比)を添加し、攪拌した。
3,4−TBDMSOSで開始
実施例19: イソプロパノールで停止し、TBAF溶液を添加して保護基を加水分解し、室温で1時間攪拌した。
実施例20: 3,4−(TBDMSO)BA(実施例1)(開始剤に対し1:1のモル比)を添加し、50℃で30分間攪拌し、TBAF溶液を添加して保護基を加水分解し、室温で1時間攪拌した。
実施例21: ヘキサン中のSnClを添加(開始剤に対し、1:4のモル比)し、攪拌した。
これらの各ポリマーセメントを、ドラム乾燥する前にBHT含有イソプロパノールに滴下した。これらの官能化ポリマーの特性を以下の表4に示す。
【0079】
【表4】

実施例22〜35: 加硫物の製造と検査
【0080】
上記表1aおよび1bの配合物を用いて、実施例15〜21のポリマーから補強性充填剤を含むゴム配合物を調製した。これらの配合物を171℃で15分間硬化して、それぞれ実施例22〜28(カーボンブラック)と実施例29〜35(シリカ)との加硫物を得た。
【0081】
これらポリマーから製造した加硫物に対する物理的な検査の結果を以下の表5および6にまとめた。「温度掃引」欄について、データの上の列は0℃での測定値であり、下の列は60℃での測定値である。歪掃引の試験結果を表7および8に一覧にした。
【0082】
これらの表のデータから、官能性開始剤を用いて製造したSBRインターポリマーは、高温tanδの低下、ΔG´の減少、低温tanδの上昇等から明らかなように、カーボンブラックおよび特にシリカ充填剤と優れた相互作用を示すことがわかった。
【0083】
【表5】

【0084】
【表6】

【0085】
【表7】

【0086】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式
【化1】

(式中のMはアルカリ金属原子、Rはヒドロカルビル基、Gはそれぞれ独立して保護基、mは1〜5を含む整数であり、但しm=1のとき、(OG)置換基はM含有置換基に対してパラ位である)を有するエチレン系不飽和モノマーの重合用開始剤としての使用に適した化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を製造するに当たり、ヒドロカルビルアルキル金属化合物を以下の一般式
【化2】

(式中のGはそれぞれ独立して保護基、mは1〜5を含む整数であり、但しm=1のとき、(OG)置換基はビニル基に対してパラ位である)を有するスチレン系化合物と反応させて前記イオン化合物を得る工程を備えたことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記スチレン系化合物を、以下の一般式
【化3】

(式中のGはそれぞれ独立して保護基、mは1〜5を含む整数であり、但しm=1のとき、(OG)置換基はカルボニル含有置換基に対してパラ位である)を有するアルデヒドのカルボニルメチレン化により得る請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1種以上の不飽和モノマーの重合を請求項1に記載の化合物で開始する工程を備えたことを特徴とする反応容器中で官能化ポリマーを製造する方法。
【請求項5】
前記1種以上の不飽和モノマーが、少なくとも1種のジエンを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1種以上の不飽和モノマーが、少なくとも1種の共役ジエンを含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記1種以上の不飽和モノマーが、さらに少なくとも1種のビニル芳香族化合物を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1種以上の不飽和モノマーの少なくとも1種の一部を、前記重合の開始後に前記反応容器に加える請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記開始化合物と、前記1種以上の不飽和モノマーとの少なくとも一部を前記反応容器に連続的に加える請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記反応容器を少なくとも70℃の温度で維持する請求項4に記載の方法。
【請求項11】
Mがリチウム原子である請求項1に記載の化合物、請求項2もしくは3に記載の方法又は請求項4〜10に記載の方法。
【請求項12】
Rがアルキル基である請求項1に記載の化合物、請求項2もしくは3に記載の方法又は請求項4〜10に記載の方法。
【請求項13】
RがC−Cのアルキル基である請求項12に記載の化合物又は方法。
【請求項14】
mが2である請求項1に記載の化合物、請求項2もしくは3に記載の方法又は請求項4〜10に記載の方法。

【公表番号】特表2012−532132(P2012−532132A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518567(P2012−518567)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/040242
【国際公開番号】WO2011/008501
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】