説明

アニオン電着塗料

【課題】 仕上り性、耐候性、ダイスマーク隠蔽性及び新規な意匠性を有するアニオン電着塗料を見出すこと。
【解決手段】1.カルボキシル基含有樹脂(A)と架橋剤(B)の固形分合計100質量部に対して、平均粒子径が5〜30μmでかつ平均厚みが0.01〜0.2μmのリーフィング性を付与した顔料(C)を0.01〜20質量部含有するアニオン電着塗料。
2.リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)が、リーフィング性を付与した蒸着アルミニウム顔料である1項のアニオン電着塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕上り性、耐候性、ダイスマーク隠蔽性及び新規な意匠性を有するアニオン電着塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムは鉄鋼などに比べて高温における加工性が良いので、熱間押し出しにより種々の断面形状を持つ型材を比較的容易に得ることができる。また、アルミニウムは軽量で加工性が容易であることや耐食性に優れるといった、本来のアルミニウムの優れた性質を利用して、特に建材関係の材料として多く使用されるようになってきている。
【0003】
このアルミニウムの熱間押し出し方法は、通常、円柱形のアルミニウム鋳塊を加熱して溶融させ、次いでこの溶融物を押し出し機に入れ、所定の断面形状の孔を持つダイスに押し付けて、ところてん式に孔を通過させて所定の形状を持つ型材を得る方法である。
【0004】
また、アルミニウム自体は耐塩水性等の腐食物質に対しては腐食され難いが、耐アルカリ性(モルタル等)に対して容易に腐食するため、通常、アルミニウムを陽極酸化処理した後、アニオン電着塗料等によりクリヤー塗膜が被覆されているのが一般的である。このようなアニオン電着塗料としては、例えば、水分散性ビニル系共重合体などの水溶性樹脂に、架橋剤としてメラミン樹脂やブロック化ポリイソシアネートやなどを配合してなるものが公知である。
【0005】
しかしながら、上記アニオン電着塗料を陽極酸化被膜処理したアルミニウム型材に電着塗装した場合に、アルミニウム型材のダイスマークが目立ち易く商品価値が劣るといった問題点がある。
【0006】
また、本出願人はこの様なダイスマークを目立ち難くするために、水溶性アクリル樹脂と、これらのアクリル系樹脂と相溶性のないメラミン樹脂を水分散させてなるアニオン電着塗料を提供した(特許文献1)。しかしながら、アニオン電着塗料では塗料貯蔵安定性に優れると共にアルミニウム型材のダイスマークが目立ち難い塗膜を形成するといった両者の性能を満足するものは得られなかった。
【0007】
他に、長手方向の径が30μm以下のマイカ又は、アルミニウムを主成分とする鱗片状顔料を含有する陽極析出型電着塗料組成物が、ダイスマーク隠蔽性や仕上り性に優れることが開示されている(特許文献2)。しかし、さらに新規な意匠性を有する塗装物品が、ユーザーからの要求で求められていた。
【0008】
【特許文献1】特開平10−46065号公報
【特許文献2】特開2001−271032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、仕上り性、耐候性、ダイスマーク隠蔽性に優れ、かつ新規な意匠性が得られるアニオン電着塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記した問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)を含有したアニオン電着塗料によって得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアニオン電着塗料は、アニオン電着塗料を電着塗装して得られた塗膜は、ダイスマークが目立たない艶消し塗膜で、かつ金属光沢に優れ、キメが細かく銀のような高級感のあるメッキ調の外観を有する塗膜が得られる。また、この新規な意匠は、通常の2次電解着色(エッチング工程−中和−陽極化成処理−電解着色処理−封孔)による表面処理(陽極酸化被膜)で容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、カルボキシル基含有樹脂(A)と架橋剤(B)を樹脂成分とし、該樹脂成分の固形分合計100質量部に対して、リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)を0.01〜20質量部含有することによって、ダイスマーク隠蔽性に優れ、かつ金属光沢やキメが細かくて銀のような高級感のあるメッキ調の塗膜が得られる。以下、詳細に説明する。
【0013】
カルボキシル基含有樹脂(A):
カルボキシル基含有樹脂は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有し、好ましくは少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂が挙げられ、この中でも耐候性の面からアクリル樹脂が好適である。上記のアクリル樹脂は、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体、必要に応じて水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体、及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を共重合せしめることによって製造することができる。
【0014】
上記カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、
メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の単量体が挙げられる。水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、これ以外にプラクセルFM1、プラクセルFM2、プラクセルFM3、プラクセルFA1、プラクセルFA2、プラクセルFA3(以上、ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)等が挙げられる。
【0015】
上記その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有不飽和単量体;例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のC〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー類、(メタ)アクリル酸アミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド及びその誘導体類、(メタ)アクリロニトリル化合物類等が挙げられる。
【0016】
アクリル樹脂としては通常、上記のカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体、
必要に応じて水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体、及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を溶媒中にて重合開始剤によりラジカル重合反応して得られる。この重合反応に際し、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体が1〜20質量%、好ましくは4〜10質量%、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体が0〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体が40〜99質量%、好ましくは60〜91質量%の範囲が好適である。
【0017】
重合反応に使用する溶媒としては、例えば、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノブチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類などが好適に使用できる。
【0018】
これ以外にも必要に応じて、例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族類;アセトン、
メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;も併用することができる。
【0019】
ラジカル共重合に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンザンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、α,α'−アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。上記のようにして製造されたアクリル樹脂の重量平均分子量(注1)は、5,000〜150,000、好ましくは20,000〜100,000の範囲が好適である。
【0020】
(注1)重量平均分子量:JIS K 0124−83に準じて行ない、分離カラムにT
SK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東
ソー社製)を用いて40℃で流速1.0ml/分、溶離液にGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラフとポリスチレンの検量線から計算により求めた。
【0021】
架橋剤(B):
架橋剤は、従来から公知の化合物を使用することができ、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂、該メチロール化アミノ樹脂のアルキルエーテル化物及びブロックポリイソシアネート化合物があげられる。
【0022】
上記メチロール化アミノ樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂が好適であり、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基の一部もしくは全部がメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の1種もしくは2種以上の1価アルコールで変性されたメラミン樹脂を使用することができる。
【0023】
上記のメラミン樹脂の市販品としては、例えば、ユーバン20SE−60、ユーバン225(以上、いずれも三井化学社製、商品名)、スーパーベッカミンG840、スーパーベッカミンG821(以上、いずれも大日本インキ化学工業社製、商品名)などのブチルエーテル化メラミン樹脂;スミマールM−100、スミマールM−40S、スミマールM−55(以上、いずれも住友化学社製、商品名)、サイメル232、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370(以上、いずれも日本サイテックインダストリーズ社製、商品名)、ニカラックMS17、ニカラックMX15、ニカラックMX430、ニカラックMX600、(以上、いずれも三和ケミカル社製、商品名)、レジミン741(モンサント社製、商品名)等のメチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル235、サイメル202、サイメル238、サイメル254、サイメル272、サイメル1130(以上、いずれも三井サイテック社製、商品名)、スマミールM66B(住友化学社製、商品名)等のメチル化とイソブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂;サイメルXV805(三井サイテック社製、商品名)、ニカラックMS95(三和ケミカル社製、商品名)等のメチル化とn−ブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0024】
ブロックポリイソシアネート化合物は、従来から公知のポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックしたものを使用することができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネートもしくは4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの如き芳香族ジイソシアネート類の如き有機ジイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等が挙げられる。
【0025】
ブロックポリイソシアネート化合物の市販品の例としては、バーノックD−750、−800、DN−950、−970もしくは15−455、(以上、大日本インキ化学工業社製、商品名)、デスモジュールL、N、HL、ILもしくはN3390(以上、バイエル社製品社製)、タケネートD−102、−202、−110Nもしくは123N(武田薬品工業社製、商品名)、コロネートL、HL、EHもしくは203(日本ポリウレタン工業社製、商品名)またはデュラネート24A−90CX(旭化成工業社製、商品名)等が挙げられる。
【0026】
なおカルボキシル基含有樹脂(A)と架橋剤(B)の中和に用いる塩基性化合物は、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミントリエチルアミンなどが挙げられる。
【0027】
塩基性化合物の配合割合は、中和当量として0.1〜1.2当量の範囲が好ましく、カルボキシル基含有樹脂(A)、架橋剤(B)の固形分の総合計量に対して塩基性化合物が0.01〜10質量%の範囲、好ましく0.05〜5質量%である。カルボキシル基含有樹脂(A)の水分散化は、カルボキシル基含有樹脂(A)に、架橋剤(B)、塩基性化合物、脱イオン水を加え、ディスパーなどで攪拌しながらエマルションを得ることができる。
【0028】
リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C):
本発明のアニオン電着塗料は、顔料成分として、リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)を用いることを特徴とする。リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)は、アルミニウムを、例えば、疎水及び/又は疎油性剤による表面処理を施してなるものであり、平均粒子径(注2)が5〜30μm、好ましくは10〜15μm、平均厚み(注3)が、0.01〜0.2μm、好ましくは0.02〜0.08μm、を有する。
(注2)平均粒子径:レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラックHRA、ハネウェル(Honeywell)社製)の測定系内循環水に投入し、超音波で30秒分散させたて、測定した。
(注3)平均厚み:得られたリーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)をガラス板状に均一に分散させ、プローブ顕微鏡(セイコーインスツルメンツ株式会社製、ナノピクス(Nanopics)1000)にて、粒子の厚さ10個について測定し、その平均値を平均厚みとした。
ここで、平均粒子径が小さいアルミニウムは、一般的に、高い輝度が得られにくい傾向がある。そのため、平均粒子径が5μm未満では、強い金属光沢、高い反射率が得られず、一方で、平均粒子径が30μmを超えると、塗膜のキメの細かさが得られなくなるとともに、粒子感やキラキラ感が強調されすぎて銀のような高級感のあるメッキ調の仕上り性が得られない。
【0029】
リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)の製造方法は、特に制限されず、従来公知の方法で製造することが可能であり、例えば、原料としてアルミニウム粉末を使用し、有機溶媒の存在下でボールミルを用いて、一定時間以上の磨砕処理をすることによって得ることができる。磨砕メディアとしては、従来公知の工業用磨砕ボールが使用できるが、例えば、直径が0.3〜4mmの範囲にある鋼球やステンレス球などが好適に使用できる。
【0030】
また磨砕時に用いる磨砕助剤は、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使
用可能であるが、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘニン酸などの高級脂肪酸、オレイン酸などの高級不飽和脂肪酸、ステアリンアミンなどの高級脂肪族アミン、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級脂肪族アルコール、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミド、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウムなどの高級脂肪酸金属塩などが挙げられる。 当該磨砕助剤は、原料アルミニウム粉末に対し、0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%の範囲で使用すればさらに好ましい。製造方法において用いる磨砕溶剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の溶剤を使用可能であるが、たとえば、ミネラルスピリット、ソルベントナフサなどの炭化水素系溶剤やアルコール系、エーテル系、ケトン系、エステル系の溶剤が好適に使用できる。また、前記の溶剤の中でも、安全性の面から、ミネラルスピリット、ソルベントナフサなどの高沸点の炭化水素系溶剤の使用が特に好ましい。
【0031】
さらに、原料アルミニウム粉末100質量部に対する磨砕溶剤の量は、250〜20
00質量部の範囲にあることが好ましい。 また、磨砕装置としては、上記のようにボールミル以外に、アトライター、振動ミルなどの従来公知の磨砕装置でも好適に製造可能である。
なお、リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)は、アニオン電着塗料中のカルボキシル基含有樹脂(A)と架橋剤(B)の固形分合計100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは0.02〜10質量部、さらに好ましくは0.05〜5質量部の範囲内に配合される。この範囲内であることによって、塗料安定性を確保して、かつダイスマークが目立たない艶消し塗膜で、かつ金属光沢に優れて、キメが細かく銀のような高級感のあるメッキ調の外観を有する塗膜が得られる。
【0032】
また、リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)の中でも、リーフィング性を付与した蒸着アルミニウム顔料であれば、キメ細かいメッキ調の仕上り性を得る為には好ましく、例えば、市販品として、メタシーンKM1000(東洋アルミニウム社製)が挙げられる。
【0033】
上記リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)には他の光輝性顔料や着色顔料及び染料等を併用してもよく、他の光輝性顔料としては、例えばアルミニウムフレーク、金属酸化物被覆アルミナフレーク、金属酸化物被覆シリカフレーク、グラファイト顔料、天然雲母(マイカ)や合成マイカに酸化鉄や酸化チタン等の金属酸化物を被覆した金属酸化物被覆マイカ、チタンフレーク、ステンレスフレーク、塩化オキシビスマス、板状酸化鉄顔料、金属めっきガラスフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク、ホログラム顔料などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0034】
着色顔料としては、例えば二酸化チタン、カーボンブラック、亜鉛華、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0035】
染料としては、例えばアゾ系染料、アントラキノン系染料、インジゴイド染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、フタロシアニン染料などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0036】
上記の他の光輝性顔料、着色顔料及び染料の配合量は、アニオン電着塗料中のカルボキシル基含有樹脂(A)と架橋剤(B)の固形分合計100質量部に対して、0.01〜50質量部、好ましくは1〜30質量部の範囲内が適当である。
【0037】
なお上記の顔料成分は、目的とする意匠性に応じて顔料の種類や使用量を調整し、適宜に、顔料分散用樹脂、界面活性剤水を加えて、攪拌機によって十分に攪拌すること、又はボールミルやサンドミル等を用いて分散することによって顔料分散ペーストを製造し、アニオン電着塗料の製造に用いることが好ましい。
【0038】
アニオン電着塗料は、カルボキシル基含有樹脂(A)と架橋剤(B)を水分散したエマルション、顔料分散ペーストのほかに、必要に応じて、硬化触媒、表面調整剤を加えて、pH調整を行い、脱イオン水を加えて固形分5〜20質量%のアニオン電着塗料を得ることができる。該アニオン電着塗料の被塗物としては、例えば、陽極酸化処理を施したアルミニウム材やベーマイト処理を施したアルミニウム材が挙げられる。
【0039】
該アニオン電着塗料を使用して塗膜を形成するには、上記で得られたアニオン電着塗料を浴とし、この浴中に被塗物を浸漬した後、10〜35℃、さらに好ましくは15〜30℃で、塗装電圧として100〜300Vで乾燥膜厚が約5〜30μmになるようにアニオン電着塗装を行い、必要に応じて、純水又は逆浸透膜(RO)水などの水で水洗を行い、又は水洗を行わず(ノンリンス)、又は水洗(リンス)を行い、次いで室温でセッテングした後、焼付け(例えば、約160〜200℃で約20〜40分間)により、仕上り性、耐候性及び60度鏡面光沢度(後記、注12参照)が20以下でダイスマーク隠蔽性に優れ、かつ新規な意匠性を有する塗膜が得られる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0041】
製造例1
内径500mm、長さ180mmのボールミル内に、平均粒子径3μmのアトマイズドアルミニウム球状粉を1kg、ミネラルスピリット6L、及びオレイン酸100gからなる配合物を充填し、直径1.8mmのスチールボール50kgを用いて、33rpm(臨界回転数の55%相当)にて、8時間かけて1段目の磨砕を行なった。
1段目の磨砕後、ボールミル内のスラリーをミネラルスピリットで洗い出し、パンフィルターで固液分離した。その後、得られたフィルターケーキ(不揮発分85%)からアルミニウム金属分換算で500gを、再度直径が1.5mmのスチールボール50kgを投入した同型ボールミルに戻し、さらにミネラルスピリット5Lおよびオレイン酸100gを追加して、40rpm(臨界回転数の67%相当)にて、20時間かけて2段目の磨砕を行なった。
2段目の磨砕終了後、ボールミル内のスラリーをミネラルスピリットで洗い出し、400メッシュ、500メッシュのスクリーンに順次かけ、得られたケーキをニーダーミキサ
ーに移し、100℃で乾燥して、リーフィング性を付与したアルミニウム顔料No.1を得た。リーフィング性を付与したアルミニウム顔料No.1の平均粒子径は12.8μm、粒子厚み0.045μmであった。
【0042】
製造例2 顔料分散ペーストNo.1の製造例
樹脂固形分55質量%のアクリル樹脂系顔料分散樹脂(注4)5.5(固形分3
部)、製造例1で得たアルミニウム顔料No.1を2.5部加え、トリエチルアミン0.5部、脱イオン水2.55部を加えて固形分50%の顔料分散ペーストNo.1を得た。
(注4)アクリル樹脂系顔料分散樹脂:酸価54.5mgKOH/g、水酸基価74.2mgKOH/g、重量平均分子量40,000のカルボキシル基有するアクリル樹脂、樹脂固形分55質量%。
【0043】
製造例3 顔料分散ペーストNo.2の製造例
樹脂固形分55質量%のアクリル樹脂系顔料分散樹脂(注4)5.5(固形分3部)、メタシーンKM1000(注5)を2.5部加え、トリエチルアミン0.5部、脱イオン水2.55部を加えて固形分50%の顔料分散ペーストNo.2を得た。
(注5)メタシーンKM1000:東洋アルミニウム社製、商品名、リーフィング性を付与した蒸着アルミニウム顔料、平均粒子径11.1μm、粒子厚み0.025μm。
【0044】
製造例4〜10 顔料分散ペーストNo.3〜No.8の製造例
製造例3と同様に、表1の配合内容にて顔料分散ペーストNo.3〜No.8を得た。
【0045】
【表1】

【0046】
(注6)612R:メルク社製、商品名、グレー系パール顔料、平均粒子径12.5μm
(注7)MH6601:旭化成社製、商品名、ノンリーフィング性のアルミニウムを含有したペースト、固形分65重量%、平均粒子径15.5μm。
【0047】
製造例11 アクリル樹脂溶液の製造
反応容器中にイソプピルアルコール280gを仕込み80℃に保持した中へスチレン40g、メチルメタクリレート96g、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン 28g、n−ブチルアクリレート40g、エチルアクリレート120g、2−ヒドロキシエチルアクリレート48g、アクリル酸28g、及びアゾビスジメチルバレロニトリル8gの混合物を3時間かけて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル4gを添加し、80℃で1時間保持して反応を行って、樹脂固形分65重量%のアクリル樹脂溶液を製造した。アクリル樹脂溶液は、重量平均分子量約25,000、酸価55mgKOH/g、水酸基価58mgKOH/gであった。
【0048】
製造例12 アニオン電着塗料用のエマルションの製造例
製造例11で得たアクリル樹脂溶液を固形分70部(固形分)のカルボキシル基に対して0.4当量のトリエチルアミンを配合した後、混合分散し、次いでこのものに、ニカラックMX600(三和ケミカル株式会社製、商品名、ブトキシ化メラミン樹脂)30部(固形分)を混合分散した後、攪拌を行いながら脱イオン水を徐々に滴下し、更にpHが7.5になるようにトリエチルアミンを添加し固形分10%アニオン電着塗料用のエマルションを得た。
【0049】
実施例1 アニオン電着塗料No.1の製造
製造例12で得た10%のアニオン電着塗料用のエマルションNo.1を1000部(樹脂固形分100部)に、顔料分散ペーストNo.1を11部(固形分5.5部)を配合し、脱イオン水を44部加えて固形分10%のアニオン電着塗料No.1を得た。
【0050】
実施例2〜4、比較例1〜4
実施例1と同様の操作により表2の配合内容で、実施例2〜4及び比較例1〜4のアニオン電着塗料No.2〜No.8を得た。
【0051】
【表2】

【0052】
塗装方法:
実施例及び比較例で得られたアニオン電着塗料No.1〜No.8を浴として、このものに被塗物を2次電解処理(脱脂−エッチング−中和−陽極化成処理−封孔)を施した被膜厚さ約10μmの陽極酸化アルミニウム材(シルバー:大きさは150×70×0.5mm)を浸漬し、乾燥膜厚が10μmになるように電着塗装を行い、水洗後、180℃で30分間焼き付けた。その試験内容及び試験結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
(注8)塗料安定性:塗料を試験管(高さ20cm、容量20mL)に充填し、20℃で7日間静置した後、容器の底に沈殿した残渣の高さを調べた。
◎は、残渣が0.5mm以下で良好、
○は、残渣が0.6mm〜5mmでほぼ良好、
△は、残渣が6mm〜10mmでやや不良、
×は、11mm以上で不良を示す。
【0055】
(注9)仕上り性:塗膜表面(ユズ肌、凹凸等)を目視で評価した。
◎は、良好、
○は、ほぼ良好、
△は、やや不良、
×は、不良を示す。
【0056】
(注10)ダイスマーク隠蔽性:
○は、ダイスマーク隠蔽性が良好、
△は、ダイスマーク隠蔽性が劣る、
×は、ダイスマーク隠蔽性が著しく劣る。
【0057】
(注11)L値:変角分光光度計GCMS−4(村上色彩究所社製、商標名)を使用して測定した。入射角45度に対して、受光角を90度と変角して測定した。L値が大きい程塗膜が白く濁りダイスマーク隠蔽性が良好となる。
【0058】
(注12)60度鏡面光沢度:複層塗膜の光沢の程度を、JIS K−5400 7.6(1990)の60度鏡面光沢度に従い、入射角と受光角とがそれぞれ60度のときの反射率を測定して、鏡面光沢度の基準面の光沢度を100としたときの百分率で表した。
【0059】
(注13)耐候性:JIS K5400に準拠し、カーボンアーク灯式促進耐候性試験機サンシャインウェザオメーターを使用して塗膜の光沢を測定し、暴露試験前の光沢に対する光沢保持率が80%を割る時間を測定した。さらに塗膜表面を目視により観察した。 ◎は、光沢保持率が80%を割る時間が3,000時間を越える
○は、光沢保持率が80%を割る時間が2,500時間以上、かつ3,000時間未満
○△は、光沢保持率が80%を割る時間が2,000時間以上、かつ2,500時間未満
△は、光沢保持率が80%を割る時間1,000時間以上、かつ2,000時間未満、
×は、光沢保持率が80%を割る時間1,000時間未満。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のアニオン電着塗料によって、ダイスマーク隠蔽性に優れ、かつ新規な意匠性の塗装物品が得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有樹脂(A)と架橋剤(B)の固形分合計100質量部に対して、平均粒子径が5〜30μmでかつ平均厚みが0.01〜0.2μmのリーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)を0.01〜20質量部含有するアニオン電着塗料。
【請求項2】
リーフィング性を付与したアルミニウム顔料(C)が、リーフィング性を付与した蒸着アルミニウム顔料である請求項1のアニオン電着塗料。
【請求項3】
陽極酸化処理したアルミニム基材に、請求項1又は2に記載のアニオン電着塗料を塗装してなる塗膜面の60度鏡面光沢度が20未満である艶消し塗装物品。





























【公開番号】特開2007−138089(P2007−138089A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336644(P2005−336644)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】