説明

アニリド誘導体

【課題】本発明は、sEH活性を阻害することで、EETsを増加させ、血管拡張作用に基づいた高血圧、腎疾患、脳梗塞を含む循環器疾患、NFκB/IκBキナーゼ活性化を介する一連の炎症性疾患あるいは、自己免疫疾患治療剤、さらには高脂血症および糖尿病を含む内分泌代謝疾患や成人呼吸促迫症候群の治療剤として期待される、アニリド誘導体を提供する。
【解決手段】


[式中、R1はハロゲン原子;置換されてもよいC1-18アルキル基等であり、
R2およびR3は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、1〜4個のハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基等を示し、
Ar1はフラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール等を示し、
R9およびR10は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいC1-18アルキル基等を示す。]で表されるアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性エポキシドヒドロラーゼ(soluble epoxide hydrolase,以後、必要によりsEHと省略することがある)を阻害するアニリド誘導体に関するものである。本発明の化合物はsEH活性を阻害することで、エポキシエイコサトリエノイックアシッド(Epoxyeicosatrienoic acids,以後、必要によりEETsと省略することがある)を増加させ、血管拡張作用に基づいた高血圧、腎疾患、脳梗塞を含む循環器疾患、NFκB/IκBキナーゼ活性化を介する一連の炎症性疾患、あるいは、自己免疫疾患治療剤、さらには高脂血症および糖尿病を含む内分泌代謝疾患や成人呼吸促迫症候群の治療剤として期待される。
【背景技術】
【0002】
EETsはアラキドン酸からP450代謝経路により産生される血管作動性エイコサノイドであるが、哺乳動物においてはエポキシ基の位置により5,6-EET、8,9-EET、11,12-EET、14,15-EET等の異性体が生合成される。これらEETsには種々の生理作用が報告されている(非特許文献1参照)。
【0003】
EETsは強力な血管拡張物質として知られており、摘出した腎、肝あるいは脳血管を生理的に存在しうる濃度域で拡張させる。一部のEETsは血管内皮細胞で産生され、血管平滑筋細胞に存在するCa2+-activated K+-channelを活性化させることから、血管内皮細胞由来の過分極因子(Endothelium-derived hyperpolarization factor; EDHF)の1つとして考えられている(非特許文献2参照)。
【0004】
EETsはNFκBおよびIκBキナーゼの転写抑制により、TNFα刺激によるVCAM-1発現を阻害することが報告されている(非特許文献3参照)。NFκBおよびIκBキナーゼは炎症反応において中心的な役割を担っているため、血管内あるいは組織内で増加したEETsは抗炎症作用を持つと考えられている。
【0005】
また、EETsあるいはCYP4Aによる代謝産物(19あるいは20-hydroxy EET)が転写因子Peroxisome Proliferator - Activated Receptor (PPAR)αを活性化することが報告されている(非特許文献4参照)。PPARα活性化作用を持つフィブレート系薬剤は、肝臓において脂質代謝関連遺伝子発現を亢進させることから血中脂質低下剤として使用されている。さらに11,12-EETが血管内皮細胞において転写因子forkhead transcription factor(FOXO)-1を抑制することも知られている(非特許文献5参照)。FOXO-1の活性化は脂肪細胞の成熟化を抑制することから、糖尿病における耐糖能異常との関わりが注目されており(非特許文献6参照)、実験的にもFOXO-1ノックアウトマウスは耐糖能異常が改善している(非特許文献7参照)。従ってEETsは血管性あるいは炎症疾患に有効性が期待できるだけでなく、内分泌代謝調節にも関与すると考えられる。
【0006】
Epoxide hydrolaseはエポキシ基やarene oxide基に水分子を付加して水解する酵素群の総称である。ほ乳類では異物性のepoxide, 変異原性物質のepoxide等の加水分解を司っていると考えられ、soluble epoxide hydrolase(sEH)、leukotriene A4 hydrolase、cholesterol epoxide hydrolaseまたはmicrosomal epoxide hydrolase(mEH)等が報告されている。このうちsEHはアラキドン酸やリノレン酸等の長鎖不飽和脂肪酸由来epoxideの代謝に深く関与している。一方、mEHも長鎖不飽和脂肪酸由来epoxideの代謝を行うが、その反応速度は低いと考えられている。
【0007】
sEHはほぼ全ての臓器に活性が認められ、生理的には細胞内で産生されたEETsを、不活性物質であるDihydroxyeicosatrienoic acid(DHET)へ変換する反応を担っている。sEHはAgII誘発性高血圧モデル(非特許文献8参照)あるいは自然発症型高血圧モデル(SHR)(非特許文献9参照)の腎臓で発現亢進することが報告されている。これらの結果はsEHが高血圧に関与することを示唆しており、実験的にもsEH ノックアウトマウスは平均血圧が正常動物に比べて低いことが証明されている(非特許文献10参照)。
【0008】
現在までにいくつかのsEH阻害剤が報告されている。例えば、式3の化合物。

式中、Zは酸素または硫黄、Wは炭素、リンまたは硫黄、XとYはそれぞれ独立して窒素、酸素または硫黄、そして、Xが炭素である場合Ra〜Rdの少なくとも一つは水素であり、Xが窒素のときRbは水素であるが、Xが酸素や硫黄の時は存在しない、Yが窒素のときRdは水素であるが、Yが酸素や硫黄の時、RaとRcはそれぞれ独立して置換または無置換C1−C20アルキル、シクロアルキル、アリール、アシルまたはヘテロサイクルである(特許文献1参照)と記載されている。
【0009】
また、式4に示されるピラゾリルフェニル誘導体に関する報告もある(特許文献2参照)。

また、種々のモデル動物でその有効性が報告されており、AngiotensinII(AgII)誘発性高血圧モデルではsEH阻害剤であるN-cyclohexyl-N-dodecylureaに降圧作用が認められている(非特許文献8参照)。また高血圧に伴い腎機能低下の指標であるアルブミン尿が増加するが、別のsEH阻害剤である1-cyclohexyl-3-dodecylureaは、これを著明に抑制した(非特許文献11参照)。SHRにおいてもN, N'-dicyclohexylureaは尿中の14, 15-DHET量を減少させ、それに伴い降圧作用を有する(非特許文献9参照)。さらにsEH阻害剤である1-cyclohexyl-3-dodecyl ureaは血小板由来成長因子刺激に伴う血管平滑筋細胞増殖を抑制するため、動脈硬化治療剤としても期待できる(非特許文献12参照)。
【0010】
一方、リノレン酸(あるいはleukotoxinおよびisoleukotoxin)のsEHによる代謝産物(leukotoxin-diolおよびisoleukotoxin-diol)は成人呼吸促迫症候群(ARDS)の原因物質であり、sEH阻害剤4-phenylchalconeがその死亡率を改善できることが報告されている(非特許文献13参照)。また、別のsEH阻害剤1-(4-aminophenyl)pyrazolesがTリンパ球からのIL-2産生を抑制することが報告されており、自己免疫疾患治療剤としても期待される(特許文献3参照)。
【0011】
このような背景から、sEH阻害剤は、血管拡張作用に基づいた高血圧、腎疾患、脳梗塞を含む循環器疾患、NFκB/IκBキナーゼ活性化を介する一連の炎症性疾患、あるいは、自己免疫疾患、さらには高脂血症および糖尿病を含む内分泌代謝疾患や成人呼吸促迫症候群の治療剤として期待される。
【0012】
一方で、様々な芳香環、例えば、インデンやベンゾチオフェン等とのアニリド誘導体、特に4−sec−ブチルアニリド化合物がsEH阻害活性を示すとの報告はなかった。
【0013】
【非特許文献1】Chem Biol Interact., 129, 41-59(2000)
【非特許文献2】Circ Res., 78, 415-423(1996)
【非特許文献3】Science. 285(5431),1276-1279(1999)
【非特許文献4】J Biol Chem., 277, 38, 35105-35112(2002)
【非特許文献5】J Biol Chem., 278, 32, 29619-29625(2003)
【非特許文献6】Dev Cell., 4, 119-129(2003)
【非特許文献7】Nat Genet., 32, 245-253.(2002)
【非特許文献8】Hypertension, 39, 690-694(2002)
【非特許文献9】Circ Res., 87, 992-998(2000)
【非特許文献10】J Biol Chem., 275, 51, 40504-40510(2000)
【非特許文献11】J Am Soc Nephrol. 15, 1244-53(2004)
【非特許文献12】Proc Natl Acad Sci U S A. 99, 2222-7(2002)
【非特許文献13】Am J Respir Cell Mol Biol. 25, 434-8(2001)
【特許文献1】米国特許US6531506号
【特許文献2】国際公開第WO03/00255号
【特許文献3】国際公開第WO00/23060号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、sEH活性を阻害することで、EETsを増加させ、血管拡張作用に基づいた高血圧、腎疾患、脳梗塞を含む循環器疾患、NFκB/IκBキナーゼ活性化を介する一連の炎症性疾患あるいは、自己免疫疾患治療剤、さらには高脂血症および糖尿病を含む内分泌代謝疾患や成人呼吸促迫症候群の治療剤として期待される、アニリド誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を解決する目的で鋭意探索研究した結果、以外にも様々なアリールまたはヘテロアリール誘導体とのアニリド化合物が、優れたsEH阻害活性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明は、下記式1
式1

[式中、R1はハロゲン原子;-OR4およびC3-18シクロアルキル基からなる群から選択される1〜4個の置換基で置換されてもよいC1-18アルキル基、C2-12アルケニル基、C2-12アルキニル基、C3-18シクロアルキル基であり、
R2およびR3は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、1〜4個のハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基、-OR4を示し(R4は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基である)、
Ar1はフラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インデン、キノリンまたはイソキノリン環を示し、
R9およびR10は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基、C3-18シクロアルキル基、または式
-(CH2)m-Q3
[式中、mは0〜4の整数を示し、Q3は、-OH、-CHO、-NH2、-NO2、-CN、-CO2H、-SO3H、-OR4'、-CO2R5、-CONH2、-CONHR5、-CONR5R6、-COR7、-OCOR7、-OCO2R7、-SR8、-SOR8、―SO2R8、-NHCHO、-NHCOR7、-NHCO2R7、-NHCONH2、-NHCONHR7、-NHSO2R8、-NHR5、-NR5R6、-OCH2CO2R5、置換されてもよいフェニル基、置換されてもよいフェノキシ基、置換されてもよいピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、ピペリジノ基またはモルホリノ基を示す。(R4'は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基、C2-18アルカノイル基、フェニル基、ベンゾイル基を示し、R5およびR6はC1-18アルキル基を示し、R7はC1-18アルキル基、C7-10アラルキル基、フェニル基またはC3-18シクロアルキル基を示し、R8は、C1-18アルキル基またはフェニル基である。)]]
で表されるアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0017】
または、Ar1がベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、キノリンまたはイソキノリン環である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0018】
好ましくは、
R1がsec-ブチル基である、上記アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0019】
より好ましくは、
R2およびR3が水素原子である、上記アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0020】
さらに好ましくは、
R9およびR10が同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基またはOR4である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0021】
本発明の態様によると、
Ar1がフラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールまたはオキサジアゾールある、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0022】
または、
Ar1がフラン、チオフェン、ピロール、イソオキサゾール、またはチアジアゾールある、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0023】
好ましくは、
R1がsec-ブチル基である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0024】
より好ましくは、
R2およびR3が水素原子である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0025】
本発明の態様によると、
Ar1が式

である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物提供する。
【0026】
本発明の態様によると
Ar1が式

である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0027】
本発明の態様によると、
Ar1が式

である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0028】
本発明の態様によると、
Ar1が式

である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0029】
さらに好ましくは、上記式で示されるヘテロ環上の置換基R9およびR10が同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基またはOR4である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物である。
【0030】
本発明の態様によると、
式1において



[式中、nは0〜4の整数を示し、R11は、-NH2、-COR7、-OCO2R7、-SOR8、-SO2R8、-NHCHO、-NHCOR7、-NHCO2R7、-NHCONH2、-NHCONH R7、-NHSO2R8、-NHR5、-NR5R6、-OCH2CO2R5、置換されてもよいピラゾリル基、トリアゾリル基、ピペリジノ基またはモルホリノ基]で表される、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0031】
本発明の態様によると、
Ar1がインドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフランまたはインデン環である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0032】
本発明の態様によると、
Ar1が式

(式中、XはSまたはCH2を示す)アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物である。
【0033】
好ましくは、Ar1が上記縮合環、すなわち3−ベンゾチオフェニル基または3−インデニル基であって、
R1がsec-ブチル基である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0034】
さらに好ましくは、
R2およびR3が水素原子である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0035】
本発明の態様によると、
3−ベンゾチオフェニル基または3−インデニル基上の置換基であるR9およびR10が、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基またはOR4である、アニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物である。
【0036】
以下に示す具体的な化合物、すなわち
N-(4-sec-ブチルフェニル)-5-メチルイソオキサゾール-4-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-2,5-ジメチルフラン-3-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-1H-インデン-3-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-1-ベンゾチオフェン-3-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(メトキシメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(ジメチルアミノ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(ピペリジノメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(モルホリノメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(メタンスルホニルメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(フェニルチオメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(フェニルスルフィニル)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(フェニルスルホニル)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(アセチルアミノ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(イソブチリルアミノ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(ベンゾイルアミノ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[[(シクロプロピルカルボニル)アミノ]メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(ベンゾイルオキシ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(エトキシカルボニルオキシ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
[[5-[[(4-sec-ブチルフェニル)アミノ]カルボニル]-1,2,3-チアジアゾール-4-イル]メトキシ]酢酸イソプロピル、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を提供する。
【0037】
本発明の他の様態によると、上記いずれかのアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を含有する医薬を提供する。
【0038】
本発明の他の様態によると、上記いずれかのアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を含有する可溶性エポキシヒドロラーゼの阻害剤を提供する。
【0039】
本発明の他の様態によると、上記いずれかのアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を有効成分とする高血圧、腎疾患または脳梗塞治療薬を提供する。
【0040】
本発明において使用される用語の定義および例示は、本明細書および請求の範囲を例示するためであって、限定されずに提供される。
【0041】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。
【0042】
「C1-18アルキル基」とは、炭素数1−18個の直鎖状または分枝状のアルキル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、tert−アミル基、3−メチルブチル基、ネオペンチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0043】
「C2-12アルケニル基」とは、炭素数2−12個の直鎖状または分枝状の少なくとも1つの二重結合を含むアルケニル基を示し、例えば、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、アレニル基、オクテニル基、デカニル基、ドデカニル基等が挙げられる。
【0044】
「C2-12アルキニル基」とは、炭素数2−12個の直鎖状または分枝状の少なくとも1つの三重結合を含むアルキニル基を示し、例えば、エチニル基、プロピニル基、ヘキシニル基、オクチニル基、デシニル基、ドデシニル基等が挙げられる。
【0045】
「C2-18アルカノイル基」とは、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数2〜18のアルカノイル基を意味し、C2-8アルカノイル基が好ましい。例えばアセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基等が挙げられる。
【0046】
「C7-10アラルキル基」とは、炭素数7−10個のアリールアルキル基を示し、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基が挙げられる。
【0047】
「C3-18シクロアルキル基」とは、炭素数3−18個の環状アルキル基および二環系炭化水素も含む。例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル基、ビシクロ[3.2.1]オクタニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0048】
「置換されてもよいC1-18アルキル基」とは、置換または無置換の炭素数1−18個のアルキル基を示す。アルキル基における置換基とは、ハロゲン原子、OR4またはシクロアルキル基からなる群から選択される1個以上を示す。ハロゲン原子の好ましい置換数は1〜6個、より好ましくは1〜4個であり、好ましいハロゲン原子は、塩素原子またはフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。水酸基の好ましい置換数は1〜6個、より好ましくは1〜2個である。このような置換されてもよいC1-18アルキル基とは、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、1,1,1−トリフルオロエチル基等が挙げられる。
【0049】
「置換されてもよいフェニル基」とは、置換または無置換のフェニル基を示す。フェニル基における置換基とは、ハロゲン原子、水酸基、−NO2、C1-18アルキル基およびOR4からなる群から選択される1個以上を示す。好ましい置換基はハロゲン原子、C1-4アルキル基、メトキシ基またはエトキシ基である。このような置換されてもよいフェニル基とは、例えば、4−クロロ−3−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロ−2−ニトロフェニル基が挙げられる。
【0050】
「置換されてもよいフェノキシ基」とは、置換または無置換のフェノキシ基を示す。フェノキシ基における置換基とは、ハロゲン原子、−NO2、C1-18アルキル基およびOR4からなる群から選択される1個以上を示す。好ましい置換基はハロゲン原子、C1-4アルキル基、メトキシ基である。
【0051】
「置換されてもよいピラゾリル基」とは、置換または無置換のピラゾリル基を示す。ピラゾリル基における置換基とは、ハロゲン原子、−NO2およびC1-18アルキル基からなる群から選択される1個以上を示す。好ましい置換基はハロゲン原子、C1-4アルキル基である。このような置換されてもよいピラゾリル基とは、N−エチル−3−メチルピラゾリル基等が挙げられる。
【0052】
Ar1が以下の式とは、

それぞれ、2−ピロリル基、2−チエニル基、3−イソオキサゾリル基、および3−フリル基がカルボニル基と結合することを意味する。
【0053】
Ar1が式

(式中、XはSまたはCH2を示す)とは、3−ベンゾチオフェニル基、および3−インデニル基がカルボニル基と結合することを意味する。
【0054】
また、「製薬学的に許容される塩」とは、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、アルキルアンモニウムなどとの塩、鉱酸または有機酸との塩であり、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ぎ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、ラクトビオン酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アジピン酸塩、システインとの塩、N−アセチルシステインとの塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、よう化水素酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、ピクリン酸塩、チオシアン酸塩、ウンデカン酸塩、アクリル酸ポリマーとの塩、カルボキシビニルポリマーとの塩を挙げることができる。
【0055】
本発明化合物である、式1の化合物の種々の製造方法を以下に詳細に説明するが、例示されたものに特に限定されない。
(製造法1)

(式中、記号は前記と同意義である。)
【0056】
上記、アリールまたはヘテロアリールカルボン酸5とアニリン誘導体6を縮合し、本発明化合物1を製造することができる。アミド結合の縮合試薬としては、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸(EDC)、カルボニルジイミダゾール、ベンゾトリアゾール−N−ヒドロキシトリスジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロリン酸(Bop試薬)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)等が用いられる。中でも、DCCとEDCが好ましい。また、DCCやEDCにN−ヒドロキシスクシンイミドや1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を添加することで、高収率に目的物を得る場合もある。反応に用いる溶媒はクロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等が挙げられる。反応温度は−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜40℃である。
【0057】
(製造法2)

(式中、記号は前記と同意義である。)
【0058】
4−クロロメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボキシレート(7)(合成参考文献:Chem. Ber.113、183−192、1980)をアルカリ加水分解し、カルボン酸誘導体8を得ることができる。用いる塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物や炭酸カリウム等の炭酸塩を用いることが出来、反応溶媒としてはメタノールやエタノール等のアルコールと水との混合溶媒またはテトラヒドロフラン、アルコール、水の混合溶媒を用いることが出来、反応温度は0℃〜還流温度である。
【0059】
次に、カルボン酸誘導体8とアニリン誘導体6を縮合し、アニリド9を製造することができる。この時の縮合条件として、製造法1記載の方法の他に、カルボン酸を酸クロリドとした後に、アニリン誘導体6を適当な塩基の存在下反応することで、アニリド9を製造することができる。酸クロリドとする試薬としては、塩化チオニル、塩化オキザリル、塩化ホスホリル等があげられる。溶媒を用いる場合はクロロホルム、ジクロロメタン等が良く、反応温度は0℃〜還流温度である。酸クロリドとアニリンとの縮合に用いる塩基は、トリエチルアミン、ピリジン等が好ましい。反応溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等が挙げられる。
【0060】
次に、アニリド9と様々な求核試薬、例えば酢酸ナトリウム、メチルメルカプタンナトリウム等を反応させることで本発明化合物10を得ることができる。反応に用いる溶媒はクロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等が挙げられる。塩基を用いる場合は、トリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、t−BuOK等が挙げられる。また、反応温度は0℃〜還流温度である。
【0061】
本発明における「可溶性エポキシドヒドロラーゼの阻害剤」とは、sEHによる基質の加水分解を触媒する作用を阻害する化合物を意味する。当該阻害剤の活性は、例えば、ヒト由来のsEHと、その基質であるEETsとを、被検化合物存在下で反応させ、当該反応によって生成される Dihydroxyeicosatrienoic acid (DHET) の量を測定することで確認することができる。本発明の阻害剤は、被検化合物の非存在下で反応させたDHETの産生量と比較した場合にその産生量が減少しているものであればよいが、本発明の充分な効果を得るためには、被検化合物無添加時のDHET産生量を100%として、被検化合物存在下に50%産生量が阻害される化合物濃度(IC50値)が10μM以下であることが好ましく、1μM以下がより好ましい。具体的には、例えば、試験例1の記載に従って確認することができる。
【0062】
このように、本発明の化合物は、sEHの活性を阻害することが可能であるから、sEHの活性に起因する疾患、特にsEHの活性によるEETsの減少に起因する疾患の治療に有用である。
【0063】
そのような疾患としては、例えば、高血圧、腎疾患、脳梗塞を含む循環器疾患、NFκB/IκBキナーゼ活性化を介する一連の炎症性疾患や自己免疫疾患治療剤、高脂血症および糖尿病を含む内分泌代謝疾患や成人呼吸促迫症候群を挙げることができる。
【0064】
特に、EETsは、強力な血管拡張物質(Circ Res. 1996 78:415-23)であるから、sEHによる基質の加水分解作用を抑制する本発明の化合物を使用すれば、生体内でのEETsの濃度を生理的な濃度領域内で一定に維持することが可能である。そのため、正常な血管拡張作用を維持することが可能であり、優れた循環器疾患の治療薬として利用することが可能であると考えられる。
【0065】
本発明の医薬は、全身的または局所的に経口または直腸内、皮下、筋肉内、静脈内、経皮等の非経口投与することができる。
【0066】
本発明の化合物を医薬として用いるためには、固体組成物、液体組成物およびその他の組成物のいずれの形態でもよく、必要に応じて最適のものが選択される。本発明の医薬は、本発明の化合物に薬学的に許容されるキャリヤーを配合して製造することができる。具体的には、常用の賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、糖衣剤、pH調整剤、溶解剤または水性若しくは非水性溶媒などを添加し、常用の製剤技術によって、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤等に調製する事ができる。賦形剤、増量剤としては、たとえば、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、オリーブ油、ゴマ油、カカオバター、エチレングリコール等やその他常用されるものを挙げることができる。
【0067】
また、本発明化合物は、α、β若しくはγ−シクロデキストリンまたはメチル化シクロデキストリン等と包接化合物を形成させて製剤化することができる。
【0068】
本発明化合物の投与量は、疾患、症状、体重、年齢、性別、投与経路等により異なるが、成人に対し、好ましくは0.1〜1000 mg / kg体重/日であり、より好ましくは0.1〜200 mg / kg体重/日であり、これを1日1回または数回に分けて投与することができる。
【発明の効果】
【0069】
本発明の化合物は、sEHの活性を阻害する作用を有しており、sEHの活性に起因する疾患、特にsEHの活性によるEETsの減少に起因する疾患の治療に有用である。
【0070】
このような疾患としては、例えば、高血圧、腎疾患、脳梗塞を含む循環器疾患、NFκB/IκBキナーゼ活性化を介する一連の炎症性疾患や自己免疫疾患治療剤、高脂血症および糖尿病を含む内分泌代謝疾患や成人呼吸促迫症候群を挙げることができる。
【0071】
特に、強力な血管拡張作用を有するEETsの加水分解作用を抑制することが可能であるため、高血圧、腎疾患、脳梗塞等の循環器疾患に対して有用である。
【0072】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
実施例1
N−(4−sec−ブチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド (化合物1)
5−メチルイソオキサゾール−4−カルボン酸(200mg)と4−sec−ブチルアミン(235mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(5ml)溶液に1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(241mg)と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(302mg)を加え、5時間攪拌した。反応液を水(30ml)にあけ、酢酸エチル(60ml)にて抽出した。有機層を水(20ml)、飽和食塩水(30ml)にて洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=5:1〜3:1)で精製し、無色粉末として表題化合物(300mg)を得た。
【0074】
1H NMR (200 MHz, CDCl3/TMS) δppm 0.82 (t, J=7.25 Hz, 3 H) 1.23 (d, J=7.03 Hz, 3 H) 1.47-1.69 (m, 2 H) 2.46-2.70 (m, 1 H) 2.75 (s, 3 H) 7.08-7.56 (m, 5 H) 8.42 (brs, 1 H).
MS ESI m/z=281 (M+Na+).
【0075】
実施例2
N−(4−sec−ブチルフェニル)−4−メチルチオメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボキサミド(化合物57)
中間体−1 N−(4−sec−ブチルフェニル)−4−クロロメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボン酸の製造;水酸化ナトリウム0.44gを溶解した水、エタノール(1:10)20mlに、エチル 4−クロロメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボキシレート(合成参考文献:Chem. Ber.113、183−192、1980)(2.1g)を加えて室温で3時間、40℃で1時間攪拌反応した。反応後、エタノールの大部分を減圧留去し、水(20ml)を加えてジエチルエーテル(20ml)で分液洗浄した。分取した水相を1N−塩酸水で酸性とし、塩化ナトリウムで飽和後、酢酸エチル(20ml)にて2回抽出した。酢酸エチル相は無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。濃縮残さにn−ヘキサンを加え、析出した結晶をろ取し乾燥した。得量1.6g(収率91%)。
【0076】
中間体−2 N−(4−sec−ブチルフェニル)−4−クロロメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボン酸クロリドの製造;上記方法にて製造した中間体1(1.5g)に塩化チオニル(3g)を加えて3時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮することで目的とする化合物を油状物として定量的収率で得た。
【0077】
中間体−3 N−(4−sec−ブチルフェニル)−4−クロロメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルキサミドの製造;4−sec−ブチルアニリン(1.2g)、トリエチルアミン(1.0g)を溶解させたテトラヒドロフラン(THF)(10ml)に、上記中間体−2のTHF(5ml)溶液を攪拌下、反応温度を10℃以下に保って滴下した。滴下終了後、室温にて5時間攪拌反応した後、反応液を水(40ml)にあけ、酢酸エチル(30ml)にて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残さにジエチルエーテル2ml、n−ヘキサン7mlの混合溶媒を加えて析出した結晶をろ取、乾燥した。得量2.1g(収率87%)、mp=102.5℃。
【0078】
1H-NMR(400MHz,CDCl3/TMS)δppm 0.82(t, J=7.6Hz,3H), 1.24 (d, J=7.2Hz, 3H), 1.56 -1.63 (m, 2H), 2.58-2.66 (m, 1H), 5.29 (s, 2H), 7.21-7.23 (m,2H), 7.52-7.55 (m, 2H), 8.12(brs, 1H).
【0079】
化合物57の製造;中間体−3(0.52g)とメチルメルカプタンナトリウム塩水溶液(15%)(0.9g)をアセトニトリル(10ml)中で1時間還流下に攪拌反応した。反応液を水(30ml)にあけ、酢酸エチル(20ml)にて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残さにジエチルエーテル(1ml)、n−ヘキサン(5ml)の混合溶媒を加えて析出した結晶をろ取、乾燥した。得量0.27g(収率50%)、mp=73.9−75.5℃。
【0080】
1H-NMR(400MHz,CDCl3/TMS)δppm 0.83 (t, J=7.6Hz, 3H), 1.24 (d, J=6.8Hz, 3H), 1.56-1.63 (m,2H), 2.20 (s,3H),2.57-2.66 (m,1H), 4.40 (s,2H), 7.20-7.22 (m,2H), 7.56-7.58(m,2H), 9.34(brs, 1H).
【0081】
実施例3
{5−(4−sec−ブチルフェニルアミノカルボニル)−1,2,3−チアジアゾール−4−イル}−メチル アセテート(化合物68)
N−(4−sec−ブチルフェニル)−4−クロロメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルキサミド(実施例2、中間体−3、2.1g)と酢酸ナトリウム(1g)をジメチルホルムアミド(20ml)中、40℃にて2時間攪拌反応した。反応液を水(40ml)にあけ、酢酸エチル(20ml)にて抽出した。有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 n−ヘキサン:アセトン=9:1)で精製し、淡黄色ペースト状の表題化合物を得た。得量2.1g(収率95%)。
【0082】
1H-NMR(400MHz, CDCl3/TMS)δppm 0.82(t, J=7.2Hz, 3H),1.23(d, J=6.8Hz, 3H), 1.56-1.63 (m, 2H), 2.22 (s, 3H), 2.56-2.65 (m, 1H), 5.61(s, 2H), 7.19-7.22 (m, 2H), 7.63-7.65 (m, 2H), 10.22(brs, 1H).
相当する出発原料と反応物を用い、上記実施例と同様な操作を行なうことにより、下記表に示す本発明化合物を得た。上記実施例で得た本発明化合物を合わせ表1−1〜表1−9に示した。
【0083】
【表1−1】

【0084】
【表1−2】

【0085】
【表1−3】

【0086】
【表1−4】

【0087】
【表1−5】

【0088】
【表1−6】

【0089】
【表1−7】

【0090】
【表1−8】

【0091】
【表1−9】

【0092】
【表1−10】

【0093】
試験例1
ジメチルスルホキシドで種々濃度に調製した被験薬溶液を、250mM ショ糖、0.1mM エチレンジアミン四酢酸および0.1mM ジチオスレイトールを含む10mM トリス塩酸(pH7.4)緩衝液に加え、酵素源としてヒト肝臓細胞質画分(Analytical Biological Services社)と室温にて保温した。15分間後に基質として14,15-[5,6,8,9,11,12,14,15(n)- 3H] epoxyeicosatrienoic acid([3H]14,15-epoxyeicosatrienoic acid)を添加し、室温でさらに60分間反応させた。メタノール添加により反応を停止(終濃度50%)させた後、反応液中に含まれる基質([3H]14,15-epoxyeicosatrienoic acid)と反応生成物([3H]14,15-dihydroxyeicosatrienoic acid)をオクタドデシルシラン樹脂(ワコーゲル50C18)に吸着させた。60%メタノール溶液で基質と反応生成物を分離した後、被検化合物無添加時の[3H]14,15-dihydroxyeicosatrienoic acid産生量を100%として、被検化合物存在下に50%産生量が阻害される化合物濃度(IC50値)を算出した。結果を表2に示した。
【0094】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明により、soluble epoxide hydrolase 活性を阻害するアニリド化合物を提供することができる。これにより体内のEpoxyeicosatrienoic acidsを増加させ、血管拡張作用に基づいた高血圧、腎疾患、脳梗塞を含む循環器疾患に有効な薬剤の提供が可能になる。さらに、NFκB/IκBキナーゼ活性化を介する一連の炎症性疾患あるいは、自己免疫疾患治療剤、または高脂血症および糖尿病を含む内分泌代謝疾患や成人呼吸促迫症候群の治療剤の提供が可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1

[式中、R1はハロゲン原子;-OR4およびC3-18シクロアルキル基からなる群から選択される1〜4個の置換基で置換されてもよいC1-18アルキル基、C2-12アルケニル基、C2-12アルキニル基またはC3-18シクロアルキル基であり、
R2およびR3は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、1〜4個のハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基またはOR4を示し(R4は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基である)、
Ar1はフラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インデン、キノリンまたはイソキノリン環を示し、
R9およびR10は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基、C3-18シクロアルキル基、または式
-(CH2)m-Q3
[式中、mは0〜4の整数を示し、Q3は、-OH、-CHO、-NH2、-NO2、-CN、-CO2H、-SO3H、-OR4'、-CO2R5、-CONH2、-CONHR5、-CONR5R6、-COR7、-OCOR7、-OCO2R7、-SR8、-SOR8、-SO2R8、-NHCHO、-NHCOR7、-NHCO2R7、-NHCONH2、-NHCONHR7、-NHSO2R8、-NHR5、-NR5R6、-OCH2CO2R5、置換されてもよいフェニル基、置換されてもよいフェノキシ基、置換されてもよいピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、ピペリジノ基またはモルホリノ基を示す。(R4'は、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基、C2-18アルカノイル基、フェニル基、ベンゾイル基を示し、R5およびR6はC1-18アルキル基を示し、R7はC1-18アルキル基、C7-10アラルキル基、フェニル基またはC3-18シクロアルキル基を示し、R8は、C1-18アルキル基またはフェニル基である。)]]
で表されるアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項2】
Ar1がベンゼン、ナフタレン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、キノリンまたはイソキノリン環である、請求項1記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項3】
R1がsec-ブチル基である、請求項2記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項4】
R2およびR3が水素原子である、請求項3記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項5】
R9およびR10が同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基またはOR4である、請求項4記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項6】
Ar1がフラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾールまたはオキサジアゾールある、請求項1記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項7】
Ar1がフラン、チオフェン、ピロール、イソオキサゾール、またはチアジアゾールある、請求項6記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項8】
R1がsec-ブチル基である、請求項7記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項9】
R2およびR3が水素原子である、請求項8記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項10】
Ar1が式

である、請求項9記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項11】
Ar1が式

である、請求項9記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項12】
Ar1が式

である、請求項9記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項13】
Ar1が式

である、請求項9記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項14】
R9およびR10が同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基またはOR4である、請求項10から13のいずれか1項に記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項15】
式1において



[式中、nは0〜4の整数を示し、R11は、-NH2、-COR7、-OCO2R7、-SOR8、-SO2R8、-NHCHO、-NHCOR7、-NHCO2R7、-NHCONH2、-NHCONH R7、-NHSO2R8、-NHR5、-NR5R6、-OCH2CO2R5、置換されてもよいピラゾリル基、トリアゾリル基、ピペリジノ基またはモルホリノ基]で表される、請求項9記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項16】
Ar1がインドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフランまたはインデン環である、請求項1記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項17】
Ar1が式

(式中、XはSまたはCH2を示す)請求項16記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項18】
R1がsec-ブチル基である、請求項17記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項19】
R2およびR3が水素原子である、請求項18記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項20】
R9およびR10が同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-18アルキル基またはOR4である、請求項19記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項21】
N-(4-sec-ブチルフェニル)-5-メチルイソオキサゾール-4-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-2,5-ジメチルフラン-3-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-1H-インデン-3-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-1-ベンゾチオフェン-3-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(メトキシメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(ジメチルアミノ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(ピペリジノメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(モルホリノメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(メタンスルホニルメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(フェニルチオメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(フェニルスルフィニル)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(フェニルスルホニル)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(アセチルアミノ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(イソブチリルアミノ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(ベンゾイルアミノ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[[(シクロプロピルカルボニル)アミノ]メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(ベンゾイルオキシ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-[(エトキシカルボニルオキシ)メチル]-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
[[5-[[(4-sec-ブチルフェニル)アミノ]カルボニル]-1,2,3-チアジアゾール-4-イル]メトキシ]酢酸イソプロピル、
N-(4-sec-ブチルフェニル)-4-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルメチル)-1,2,3-チアジアゾール-5-カルボキサミド、
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項1記載の化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項記載のアニリド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩またはその水和物を含有する医薬。
【請求項23】
可溶性エポキシドヒドロラーゼの阻害剤である請求項22記載の医薬。
【請求項24】
高血圧、腎疾患または脳梗塞治療薬である請求項22記載の医薬。

【公開番号】特開2007−126454(P2007−126454A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273922(P2006−273922)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】