説明

アネキシンII及びその使用

本発明は、神経変性疾患、虚血現象及び中枢神経系傷害の診断及び治療、並びに組織外傷に又は慢性若しくは急性変性的変化に起因するか否かに関わらず、損傷を受けた神経細胞組織に伴う症候及び兆候の改善又は軽減のための組成物及び方法を提供する。本発明は、具体的には、アネキシンIIの発現が、酸化的ストレスによって引き起こされるアポトーシスに関与しているという発見及びアンチセンスアネキシンII RNA及びアネキシンII siRNAが細胞をこのアポトーシスから保護したという発見に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本特許出願は、2004年3月26日に出願された米国仮特許出願第60/556724号の優先権を主張するものであり、米国仮特許出願第60/556724号は、参照により、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、神経変性疾患、虚血現象及び中枢神経系傷害の診断及び治療の分野に関する。
【発明の背景】
【0003】
脳の虚血
外傷及び卒中などの脳傷害は、西洋社会における死亡率及び身体障害の主な原因である。
【0004】
外傷性脳傷害(TBI;traumatic brain injury)は、現代社会における入院及び身体障害の最も深刻な理由の一つである。TBIが外傷直後に発生する一次損傷及び外傷から数日の間に発生する二次損傷に分類され得ることが、臨床的な経験によって示唆されている。現行のTBIの治療は、手術か、あるいは主として対症療法である。
【0005】
脳血管疾患は、主に、中年及び晩年に発生する。脳血管疾患は、毎年、アメリカで約20万人の死亡の原因となっているとともに、かなりの神経性身体障害を引き起こしている。卒中の発生は、年齢とともに増加し、人口の中で急速に増大している層である多くの高齢者に影響を与えている。これらの疾病は、虚血−梗塞又は脳内出血の何れかを引き起こす。
【0006】
卒中は、中断された血液供給の結果として生じる急性の神経傷害であり、脳に対して損傷をもたらす。多くの脳血管疾患は、局所的な神経の欠損の突発的な発症として生じる。欠損は、固定化された状態を保つ場合もあり得、又は、改善し、若しくは徐々に悪化して、通常、虚血の中心部に不可逆的な神経損傷をもたらすのに対して、周辺部の神経的機能障害は、治療可能であり、及び/又は可逆的であり得る。長期間の虚血は、明白な組織壊死をもたらす。脳浮腫が続発し、その後2ないし4日にわたって進行する。梗塞の領域が大きければ、浮腫は、その付随する結果の全てを伴うかなりの腫瘤効果を生じ得る。
【0007】
周辺部の神経細胞を死滅から救出するために、神経保護薬が開発されているが、有効性が明らかとなっているものは存在しない。
【0008】
神経細胞組織への損傷は、重い身体障害及び死をもたらすことが可能である。損傷の程度は、傷害された組織の位置及び程度によって主に影響を受ける。急性発作に応答して活性化される内在性カスケードは、機能転帰において役割を果たす。損傷を最小限に抑え、制限し、及び/又は回復するための努力は、臨床的な結果を改善する大きな可能性を秘めている。
【0009】
アネキシンII
アネキシンIIは、2つの重鎖(p36、アネキシンタンパク質ファミリーに属する。)と2つの軽鎖(p10又はp11、S−100タンパク質ファミリーに属する。)を含有する四量体である。アネキシンは、カルシウム及びリン脂質を結合し、プラスミノーゲン変換において、補因子として機能する。膜貫通アネキシンは、プラスミノーゲン活性化因子(組織及びウロキナーゼ型の両方)を結合し、プラスミノーゲンのプラスミンへの変換を、最大15倍活性化する(Cesarman GM, Guevara CA, Hajjar KA:An endothelial cell receptor for plasminogen/tissue plasminogen activator(t-PA).II. Annexin II-mediated enhancement of t-PA-dependent plasminogen activation. J Biol Chem. 1994 Aug 19; 269(33):21198-203; Hajjar KA, Jacovina AT, Chacko J.:An endothelial cell receptor for plasminogen/tissue plasminogen activator. I. Identity with Annexin II. J Biol Chem. 1994 Aug 19; 269(33):21191-7.; Kim J, Hajjar KA.:Annexin II:a plasminogen-plasminogen activator co-receptor. Front Biosci. 2002 Feb 1; 7:d341-8.)。さらに、アネキシンは、プラスミノーゲンのプロセッシングのさらなる工程に影響を与え、プラスミン還元酵素として機能する(Kwon M, Caplan JF, Filipenko NR, Choi KS, Fitzpatrick SL, Zhang L, Waisman DM:Identification of Annexin II heterotetramer as a plasmin reductase. J Biol Chem. 2002 Mar 29; 277(13):10903-11. Epub 2002 Jan 07.)。アネキシンの精製及び酵素反応におけるその使用は、記載されている(Choi KS, Fitzpatrick SL, Filipenko NR, Fogg DK, Kassam G, Magliocco AM, Waisman DM:“Regulation of plasmin-dependent fibrin clot lysis by annexin II heterotetramer”, J Biol Chem. 2001 Jul 6;276(27):25212-21(Epub 2001 Apr 23)。さらに、アネキシンIIは、内皮細胞の表面上で、tPA及びプラスミノーゲンに対する繊維素溶解促進共同受容体として働き、プラスミンの生成を促進する。
【0010】
アネキシンIIは、プラスミンの生成による、又はプラスミンによって仲介される、他のメタロプロテイナーゼのタンパク質分解活性化によって、細胞外マトリックスを通じて、癌細胞の浸潤能に寄与し得る。細胞内アネキシンIIは、細胞増殖及び分化に関与していることが推測されている。骨髄環境中で分泌されるアネキシンIIは、破骨細胞形成への関与が推測されている。さらに、アネキシンIIは、クロム親和性顆粒が形質膜に付着される際に、クロム親和性顆粒に密接に付随してアネキシンIIが見出される副腎クロム親和性細胞の分泌経路への関与が推測されている。
【0011】
さらに、アネキシンIIは、肺胞上皮II型細胞からの層状体のエキソサイトーシスの間に、(アラキドン酸と相乗的に)膜融合に関与する(Chattopadhyay S, Sun P, Wang P, Abonyo B, Cross NL, Liu L.:Fusion of lamellar body with plasma membrane is driven by the dual action of Annexin II tetramer and arachidonic acid. J Biol Chem. 2003 Oct 10; 278(41):39675-83. Epub 2003 Aug 05.)。
【0012】
単量体として、アネキシンIIは、DNA合成に関与している。アネキシンIIのN末端は、CRM1−経路に対する、Leuに富む核外移行シグナル(NES)を含有する。核では、アネキシンIIは、細胞周期依存性にリン酸化されており、リン酸化が核外移行を制御している可能性がある。NESの変異による強制的な核保持は、細胞増殖の減少をもたらす(Liu J, Rothermund CA, Ayala-Sanmartin J, Vishwanatha JK.:Nuclear Annexin II negatively regulates growth of LNCaP cells and substitution of ser 11 and 25 to glu prevents nucleo-cytoplasmic shuttling of Annexin II. BMC Biochem. 2003 Sep 9; 4(1):10.)。
【0013】
アネキシンII発現の疾病関連パターン
アネキシンIIは、原発性膵臓癌細胞、胃癌組織中で過剰発現されており、この過剰発現は予後の不良と相関している。アネキシンIIの発現は、前立腺癌中では喪失している(Liu et al.,上記参照)。アネキシンIIの軽鎖は、細胞表面上でプロカテプシンB(腫瘍中で上方制御されている。)を結合し、そのプロセッシングを促進する(Roshy S, Sloane BF, Moin K.:Pericellular cathepsin B and malignant progression. Cancer Metastasis Rev. 2003 Jun-Sep; 22(2-3):271-86.)。さらに、アネキシンIIの軽鎖は、B型肝炎ポリメラーゼを結合し、その機能を調節する(Choi J, Chang JS, Song MS, Ahn BY, Park Y, Lim DS, Han YS.:Association of hepatitis B virus polymerase with promyelocytic leukemia nuclear bodies mediated by the S100 family protein p11 Biochem Biophys Res Commun. 2003 Jun 13; 305(4):1049-56.)。
【0014】
上記文献は何れも、神経毒性現象と関連してアネキシンIIに対する役割を開示しておらず、特に、発作などの神経変性疾患の診断若しくは治療も開示していない。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、組織外傷又は慢性若しくは急性の変性的変化に起因するものであると否とを問わず、損傷を受けた神経組織を伴う症候及び兆候を改善又は軽減するための組成物及び方法を提供する。
【0016】
特に、本発明の一実施形態は、アネキシンII阻害剤を活性成分として含み、薬学的に許容される希釈剤又は担体をさらに含む、1又は複数の薬学的組成物を提供する。
【0017】
さらなる実施形態は、中枢神経系に対する傷害を患った患者に、中枢神経系への損傷を軽減するのに十分な投薬量で、薬学的組成物を投与することを含む、中枢神経系に対する傷害を患った患者おける中枢神経系への損傷を軽減する方法を提供する。さらに別の実施形態は、神経変性疾患又は中枢神経系に対する傷害を患った患者において回復を促進又は強化するための医薬の調製のための、アネキシンII阻害剤の使用を提供する。
【0018】
さらなる実施形態は、アポトーシスを調節する化学的化合物を同定するための方法を提供する。
【0019】
さらに、対象において神経変性疾患又は虚血現象を診断するための方法が提供される。
【0020】
本明細書において記載されている好ましい方法、材料及び例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。本明細書に記載されている材料及び方法と類似又は均等な材料及び方法を、本発明の実施又は試験において使用することが可能である。本発明の別の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から、明らかとなるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0021】
本発明は、その幾つかの実施形態において、組織外傷又は急性及び慢性の変性的変化に起因するものであると否とを問わず、損傷を受けた神経組織を伴う症候及び兆候を改善又は軽減するための、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、小分子、組成物及び方法を提供する。本発明のある種の側面は、組織の損傷又は変性を低減し、又は完全に縮小する薬学的組成物を提供する。さらなる側面において、本発明は、外傷虚血現象後の機能的な改善をもたらす方法を提供する。これらの効果は、アネキシンIIの生物活性又はアネキシンIIの発現を阻害する因子を投与することによって達成される。
【0022】
本発明の発明者らは、アネキシンIIの発現が、酸化的ストレスによって誘導されるアポトーシスに関与していること、並びにアンチセンスアネキシンIIRNA及びアネキシンIIsiRNAが、このアポトーシスから細胞を保護することを発見した。
【0023】
理論に拘泥するものではないが、アネキシンII阻害剤が、虚血現象の間に生じる神経細胞の神経毒性ストレス誘導性アポトーシスを抑制可能であること、このため、前記虚血現象によって引き起こされた損傷の抑制に寄与し得ることを、出願人は示唆する。
【0024】
「アポトーシス」という用語は、膜に結合された粒子へのクロマチンの断片化、細胞骨格及び膜構造の変化並びに、他の細胞によるアポトーシス細胞のその後の貪食作用をもたらす、内蔵された細胞死プログラムの実行として、具体的に定義される。さらに、本用語は、アポトーシスを誘導する虚血性疾患病変(例えば、血管の収縮又は閉塞によって一般的に引き起こされる、身体の臓器、組織又は体の一部への、血液供給の減少を伴う虚血性疾患、例えば、心筋梗塞及び卒中)を含むものと理解される。「プログラムされた細胞死」という用語も、「アポトーシス」と互換的に使用することができる。本明細書において使用される場合、本用語は、細胞死が、厳密に、上記アポトーシスプロセスによるものであるか否かを問わず、さらに広く、神経細胞死を包含するものと解釈すべきであることを理解すべきである。
【0025】
本明細書において使用される「アネキシンII」という用語は、「カルパクチンI」、「リポコルチン2」、「クロモビンディン8」、「p36」及び「胎盤抗凝固タンパク質IV(「PAP−IV」)」の別称でも知られる、任意の生物、好ましくはヒトに由来するアネキシンII遺伝子の発現されたポリペプチド、並びに類似の生物活性を有するその相同体(ラット及びマウスの相同体を含む。)及び断片を表す。本分野において周知である(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland(1988), 1995 及び1998年に改訂)高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件下で、アネキシンII遺伝子に結合する核酸配列によってコードされるポリペプチドも、本用語によって包含される。アネキシンIIのcDNA配列及びアミノ酸配列は、それぞれ、図1及び2に記載されている。アネキシンIIの具体的な断片には、図2に示されている配列のアミノ酸1−50、51−100、101−150、151−200、201−250、251−300及び301−339が含まれる。アネキシンIIのさらに具体的な断片には、図2に示されている配列のアミノ酸25−74、75−124、125−174、175−224、225−274、275−324及び325−339が含まれる。
【0026】
GeneBank参照番号が、より長いポリペプチドをコードする50845387(バリアント1)、50845385(バリアント2)及び、これらより短い同じポリペプチドをコードする50845389(バリアント3)である3つの異なるスプライスバリアントによってコードされる、少なくとも2つのアネキシンIIポリペプチドが存在する。図1に示されているヌクレオチド配列は、スプライスバリアント2(gi−50845385)及びスプライス3(gi−50845389)のORFである。これらのバリアントは、スプライスバリアント1(gi−50845387)とは、それらのORFの5’末端が僅かに異なっており、これらのバリアント2及び3は、5’−UTRが互いに異なっている。図1に対応するポリペプチド配列は、339個のアミノ酸を有する。図2を参照。これらのバリアント及び他の任意の類似の微量バリアントは、アネキシンIIポリペプチドの定義及びこれらをコードするアネキシンII遺伝子の定義に含まれる。
【0027】
「アネキシンIIの生物学的効果」又は「アネキシンII生物活性」とは、アポトーシスにおけるアネキシンIIの効果を意味し、本明細書では、「アネキシンII誘導性アポトーシス」とも称され、これは、直接的又は間接的であり得、理論に拘泥するものではないが、神経毒性ストレスによって誘導されたアポトーシスに対するアネキシンIIの効果が含まれる。間接的な効果には、アポトーシスをもたらすシグナル伝達カスケードに関与する複数の分子のうちの1つに結合し、又は該分子対して効果を有するアネキシンIIが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0028】
「アネキシンII阻害剤」とは、上述されているように、アネキシンIIの生物学的効果を抑制又は低下させる、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体又は小化学的化合物であると否とを問わず、任意の分子を意味する。アネキシンII阻害剤は、とりわけ、アンチセンスRNA分子、siRNA、ドミナントネガティブペプチド、リボザイムなどの、アネキシンIIプロモーターの阻害剤又はアネキシンII転写/翻訳の阻害剤であってもよい。
【0029】
本発明の一側面は、治療的有効量のアネキシンII阻害剤(ニトロプルシドナトリウムなどの小化学的化合物(Liu et al., Eur. J. Biochem. 269, 4277−4286(2002))又はアネキシンII分泌を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤Tyrphostin AG1024(Zhao et al., JBC 278, 6:4205−4215(2003))としてもよい。);図1に示されている配列(配列番号1)に対するアンチセンス配列である配列を有し、図3に示されている配列のうちの1つ(配列番号3又は配列番号4)を必要に応じて有する連続ヌクレオチドを含むアンチセンスポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチド、又は図1に示されている配列(配列番号1)に対するセンス配列であり、且つ前記配列に対するドミナントネガティブペプチドをコードする配列を有し、図4に示されている配列のうちの1つ(配列番号5又は配列番号6)を必要に応じて有する連続ヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチドであるポリヌクレオチド、又はサイレンシングRNA(siRNA)として機能し、表1−3、特に表1に記載されている配列の1つを必要に応じて有するポリヌクレオチド;これらのポリヌクレオチドの何れかを含むベクター;ドミナントネガティブペプチドなどのポリペプチド、例えば、配列番号5又は配列番号6によってコードされるペプチド、アネキシンIIを結合することが見出されたPCT特許出願公開WO200404/1844号のペプチド#41、S−ニトロソグルタチオン(GSNO; Liu et al., Eur. J. Biochem. 269, 4277−4286(2002))又はとりわけ、「Pietropaolo & Compton:Direct interaction between human cytomegalovirus glycoprotein B and cellular Annexin II J Virol 1997, 71:9803-9807」に開示されている抗アネキシンII抗体などの抗体、必要に応じて、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体)を、活性成分として含む、薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、さらに、希釈剤又は担体を含有してもよい。
【0030】
本発明の別の側面は、アネキシンII阻害剤の治療的有効量を、神経変性疾患及び/又は中枢神経系(CNS)疾患に罹患している患者に投与することにより、該患者を治療することを含む、神経変性疾患及び/又は中枢神経系(CNS)疾患に罹患している患者を治療するための方法に関する。投与は、定期的としてもよい。アネキシンII阻害剤は、ニトロプロシドナトリウムなどの小化学的化合物(Liu et al., Eur. J. Biochem. 269, 4277−4286(2002))又はアネキシンII分泌を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤Tyrphostin AG1024(Zhao et al., JBC 278, 6:4205−4215(2003))としてもよい。);図1に示されている配列(配列番号1)に対するアンチセンス配列である配列を有し、図3に示されている配列のうちの1つ(配列番号3又は配列番号4)を必要に応じて有する連続ヌクレオチドを含むアンチセンスポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチド、又は図1に示されている配列(配列番号1)に対するセンス配列であり、且つ前記配列に対するドミナントネガティブペプチドをコードする配列を有し、図4に示されている配列のうちの1つ(配列番号5又は配列番号6)を必要に応じて有する連続ヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチドであるポリヌクレオチド、又はサイレンシングRNA(siRNA)として機能し、表1−3、特に表1の配列番号z−zに記載されている配列の1つを必要に応じて有するポリヌクレオチド;これらのポリヌクレオチドの何れかを含むベクター;ドミナントネガティブペプチドなどのポリペプチド、例えば、配列番号5又は配列番号6によってコードされるペプチド、アネキシンIIを結合することが見出されたPCT特許出願公開WO200404/1844号のペプチド#41、S−ニトロソグルタチオン(GSNO; Liu et al., Eur. J. Biochem. 269, 4277−4286(2002))又はとりわけ、「Pietropaolo & Compton:Direct interaction between human cytomegalovirus glycoprotein B and cellular Annexin II J Virol 1997, 71:9803-9807」に開示されている抗アネキシンII抗体などの抗体、必要に応じて、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体)としてもよい。
【0031】
この側面では、神経変性疾患又は中枢神経系に対する傷害を患った患者において回復を促進又は強化するための医薬の調製のための、アネキシンII阻害剤(上に詳述されている阻害剤の何れかなど)の治療的有効量の使用がさらに提供される。
【0032】
さらに、本発明は、(上述のような)病変又は疾病を制御する処置を必要としている患者に、治療的有効量の少なくとも1つの阻害剤(例えば、少なくとも1つのアンチセンス(AS)オリゴヌクレオチド又前記核酸配列に対する少なくとも1つのsiRNA又はアネキシンII配列若しくはアネキシンIIタンパク質に対して誘導されたドミナントネガティブペプチド)又はアネキシンIIポリペプチドに対して誘導された抗体又は上記阻害剤の何れかを投与することによって、このような処置を必要としている患者における(上述のような)病変又は疾病を制御する方法を提供する。
【0033】
「化学的化合物」、「小分子」、「化学的分子」、「小化学的分子」及び「小化学的化合物」という用語は、本明細書において互換的に使用され、合成的に製造されてもよく、又は天然の採取源から取得されてもよい、典型的には、2000ダルトン未満、より好ましくは1000ダルトン未満又は600ダルトン未満の分子量を有する任意の種類の化学的部分を表すものと理解される。
【0034】
「ポリヌクレオチド」という用語は、DNAヌクレオチド、RNAヌクレオチド又は両種の組み合わせから構成される任意の分子、すなわち、とりわけ、塩基グアニジン(guanidine)、シトシン、チミジン、アデニン、ウラシル又はイノシンの2以上を含む任意の分子を表す。ポリヌクレオチドには、天然のヌクレオチド、化学的に修飾されたヌクレオチド及び合成ヌクレオチド又はこれらの化学的類縁体が含まれ得る。本用語は、「オリゴヌクレオチド」が含み、及び「核酸」を包含する。ポリヌクレオチドは、一般的には、約75から10,000個までのヌクレオチド、必要に応じて、約100から3,500個までのヌクレオチドを有する。オリゴヌクレオチドとは、一般的には、2ないし75ヌクレオチドから伸長するヌクレオチドの鎖を表す。
【0035】
「アンチセンス(AS)」又は「アンチセンス断片」という用語は、阻害的アンチセンス活性を有するポリヌクレオチド断片を意味し、該活性は、対応する遺伝子(この場合には、アネキシンII)の内在性ゲノムコピーの発現の減少を引き起こす。アネキシンIIASポリヌクレオチドは、ASのアネキシンII遺伝子へのハイブリダイゼーションを可能とするために、十分な長さの配列と、配列番号1に記載されているアネキシンII遺伝子の配列内に存在する配列に対する十分な相同性とを有する連続的なヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである。ASの配列は、目的の標的mRNAを相補し、RNA:AS二重鎖を形成するために設計される。この二重鎖の形成は、関連するmRNAのプロセッシング、スプライシング、輸送又は翻訳を抑制することが可能である。さらに、ある種のASヌクレオチド配列は、それらの標的mRNAとハイブリダイズしたときに、細胞RNAアーゼH活性を示すことが可能であり、mRNAの分解をもたらす(Calabretta et al, 1996:Antisense strategies in the treatment of leukemias. Semin Oncol. 23(1):78-87)。その場合には、RNアーゼHは、二重鎖のRNA成分を切断し、標的RNAのさらなる分子とさらにハイブリダイズするために、ASを放出できる可能性を秘めている。さらなる作用様式は、転写的に不活性であり得る三重螺旋を形成するために、ゲノムDNAとASの相互作用から得られる。具体的なAS断片は、本明細書に記載されているアネキシンIIの具体的な断片をコードするDNAのASである。本発明のAS断片は、必要に応じて、図3に図示されている配列又はその相同的配列を有する。具体的なAS断片は、上記されているアネキシンIIの具体的な断片をコードするDNAのASである。AS断片の送達については、実施例12を参照。
【0036】
多くの総説が、アンチセンス(AS)技術及びその治療的可能性の主要な側面を網羅している(Wright & Anazodo, 1995. Antisense Molecules and Their Potential For The Treatment Of Cancer and AIDS. Cancer J. 8:185-189)。この技術の化学的側面(Crooke, 1995:Progress in antisense therapeutics Hematol Pathol. 1995;9(2):59-72.;Uhlmann et al, 1990 )、細胞的側面(Wagner, 1994:Gene inhibition using antisense oligodeoxynucleotides. Nature. 1994 Nov 24;372(6504):333-5.)及び治療的側面(Hanania, et al, 1995:Recent advances in the application of gene therapy to human disease. Am J Med. 1995 Nov;99(5):537-52. ;Scanlon, et al, 1995:Oligonucleotide-mediated modulation of mammalian gene expression. FASEB J. 1995 Oct;9(13):1288-96. ;Gewirtz, 1993:Oligodeoxynucleotide-based therapeutics for human leukemias. Stem Cells. 1993 Oct;11 Suppl 3:96-103)に関する総説が存在する。
【0037】
特異的遺伝子の発現におけるアンチセンス介入は、合成ASオリゴヌクレオチド配列の使用によって達成することが可能である(Lefebvre-d’Hellencourt et al, 1995. Immunomodulation by cytokine antisense oligonucleotides. Eur. Cytokine Netw. 6:7.; Agrawal, 1996、Antisense oligonucleotides:towards clinical trials, TIBTECH, 14:376.; Lev-Lehman et al., 1997. Antisense Oligomers in vitro and in vivo. In Antisense Therapeutics, A. Cohen and S. Smicek, eds(Plenum Press, New York))を参照)。ASオリゴヌクレオチド配列は、目的の標的mRNAを相補し、RNA:AS二重鎖を形成するために設計される。この二重鎖の形成は、関連するmRNAのプロセッシング、スプライシング、輸送又は翻訳を抑制することが可能である。さらに、ある種のASヌクレオチド配列は、それらの標的mRNAとハイブリダイズしたときに、細胞RNAアーゼH活性を示すことが可能であり、mRNAの分解をもたらす((Calabretta et al, 1996:Antisense strategies in the treatment of leukemias. Semin Oncol. 23(1):78)。その場合には、RNアーゼHは、二重鎖のRNA成分を切断し、標的RNAのさらなる分子とさらにハイブリダイズするために、ASを放出できる可能性を秘めている。さらなる作用様式は、転写的に不活性であり得る三重螺旋を形成するために、ゲノムDNAとASの相互作用から得られる。
【0038】
アンチセンスオリゴヌクレオチドに対する配列標的セグメントは、該配列が、それらの相補的テンプレートとのオリゴヌクレオチド二重鎖の形成にとって重要な、適切なエネルギー関連特性を示し、自己二量体化又は自己相補化に対して低い可能性をように選択される(Anazodo et al., 1996)。例えば、アンチセンス配列融解温度、自由エネルギー特性を決定し、潜在的な自己二量体化形成及び自己相補的特性を推測するために、コンピュータプログラムOLIGO(Primer Analysis Software, Version 3.4)を使用することが可能である。本プログラムは、これらの2つのパラメータ(自己二量体形成及び自己相補性の可能性)の定量的推測の決定を可能とし、「可能性なし」又は「若干の可能性」又は「実質的に完全な可能性」という示唆を与える。一般的に、これらのパラメータで可能性なしという推測を有するこのプログラム標的セグメントの使用が選択される。しかしながら、カテゴリーのうちの1つでは、「若干の可能性」を有するセグメントを使用することが可能である。本分野において公知であるように、選択においては、パラメータのバランスが使用される。さらに、オリゴヌクレオチドは、類縁的な置換が機能に実質的に影響を与えないように、必要とされるように選択される。
【0039】
本分野で公知であるとおりに、選択において、パラメータのバランスが使用される。さらに、オリゴヌクレオチドも、類縁の置換が機能に実質的に影響を与えないように、必要に応じて選択される。
【0040】
ホスホロチオアートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、効果的である濃度で有意な毒性を通常示さず、動物では、十分な薬動力学的半減期を示し(Agrawal, 1996. Antisense oligonucleotides towards clinical trials, TIBTECH, 14:376)、ヌクレアーゼ耐性である。アンチセンスによって誘導された、細胞発達と関連する機能喪失表現型が、グリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP)について、ニワトリ中での蓋板(tectal plate)形成の確立について(Galileo et al., 1991. J. Cell. Biol., 112:1285.)、神経外胚葉培養物中での細胞の不均一性の維持に対して必要なN−mycタンパク質(epithelial vs. neuroblastic cells, which differ in their colony forming abilities, tumorigenicity and adherence)(Rosolen et al., 1990. Cancer Res. 50:6316.; Whitesell et al., 1991. Episome-generated N-myc antisense RNA restricts the differentiation potential of primitive neuroectodermal cell lines. Mol. Cell. Biol. 11:1360.)について示された。分裂促進的及び血管新生的特性を有する塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFgF)のアンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害は、飽和的及び特異的な様式で、神経膠腫細胞において、増殖の80%を抑制した(Morrison, 1991. Suppression of basic fibroblast growth factor expression by antisense oligonucleotides inhibits the growth of transformed human astrocytes. J. Biol. Chem. 266:728.)。疎水性であるので、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、リン脂質膜と、良好に相互作用する(Akhter et al, 1991. Interactions of antisense DNA oligonucleotide analogs with phospholipid membranes(liposomes) Nuc. Res. 19:5551-5559)。細胞の形質膜との相互作用に引き続き、それらは、特異的な受容体の関与を予測される飽和的な機序で(Yakubov et al, 1989. PNAS USA 86:6454)、生きた細胞中へ、能動的(又は受動的に)輸送される(Loke et al, 1989. Characterization of oligonucleotide transport into living cells. PNAS USA 86:3474.)。
【0041】
「リボザイム」とは、RNA触媒能を有し(総説については、Cech参照)、標的RNA中の特異的部位を切断するRNA分子である。
【0042】
本発明に従えば、アネキシンIImRNAを切断するリボザイムは、アネキシンII阻害剤として使用され得る。これは、アンチセンス療法が、化学両論的考察によって制限される場合に、必要であるかもしれない(Sarver et al., 1990, Gene Regulation and Aids, pp. 305−325)。次いで、アネキシンII配列を誘導し得るリボザイムを使用することが可能である。リボザイムによって切断されるRNA分子の数は、化学両論によって予測される数より多い(Hampel and Tritz, 1989; Uhlenbeck, 1987)。
【0043】
リボザイムは、RNAのホスホジエステル結合切断を触媒する。グループIイントロン、RNアーゼP、肝炎δウイルスリボザイム、ハンマーヘッドリボザイム及びタバコ輪点ウイルスサテライトRNA(sTRSV)のネガティブストランドから最初に得られたヘアピンリボザイムなど(Sullivan, 1994;米国特許第5,225,347号、カラム4−5)、幾つかのリボザイム構造ファミリーが同定されている。後2者のファミリーは、リボザイムがローリングサークル複製の間に作製されたオリゴマーからモノマーを分離すると考えられているウイロイド及びウイルソイドから得られる(Symons, 1989 and 1992)。ハンマーヘッド及びヘアピンリボザイムモチーフは、遺伝子治療用のmRNAのトランス切断に対して、最も一般的に適合されている(Sullivan,1994)。本発明で使用されるリボザイム種は、本分野において公知であるとおりに選択される。ヘアピンリボザイムは、現在、臨床試験中であり、好ましい種類である。一般的に、リボザイムは、30ないし100ヌクレオチド長である。リボザイムの送達は、AS断片及び/又はsiRNA分子の送達と類似している。
【0044】
siRNAとは、その内在性細胞対応物の遺伝子/mRNAの発現を減少し、又は停止(妨害)するRNA分子を意味する。本用語は、「RNA干渉(RNAi)」を包含するものと理解される。RNA干渉(RNAi)は、低分子干渉RNA(siRNA)によって媒介される、哺乳動物中での配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを表す(Fire et al, 1998, Nature 391, 806)。植物中での対応するプロセスは、一般に、特異的転写後遺伝子サイレンシング又はRNAサイレンシングと称され、真菌では、沈静化(quelling)とも称される。RNA干渉応答は、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)と一般に称されるsiRNAを含有するエンドヌクレアーゼ複合体を特徴としてもよく、これは、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介する。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で起り得る(Elbashir et al 2001, Genes Dev., 15, 188)。これらの用語及び提案される機序に関する最近の情報については、「Bernstein E., Denli AM., Hannon GJ: The rest is silence. RNA. 2001 Nov;7(11):1509-21; and Nishikura K.: A short primer on RNAi: RNA-directed RNA polymerase acts as a key catalyst. Cell. 2001 Nov 16;107(4):415-8」を参照されたい。本発明において使用され得るsiRNA分子のヌクレオチド配列の例は、表1−3に記載されており、使用される化学的修飾は、PCT特許出願公開WO204035615号(atugen)に記載されている。
【0045】
近年、遺伝子を不活化するための最も効率的な方法の1つとして、RNAiが浮上してきた(Nature Reviews, 2002, v.3, p.737-47; Nature, 2002, v.418,p.244-51)。1つの方法として、それは、dsRNA種が特異的なタンパク質複合体に入ることが出来る能力に基づいており、次いで、該複合体において、dsRNA種は、相補的な細胞RNAへと標的誘導され、RNAを特異的に分解する。さらに詳しく述べると、dsRNAは、III型RNAアーゼ(DICER, Drosha, etc)(Nature, 2001, v.409, p.363-6; Nature, 2003, .425, p.415-9)によって、短い(17−29bp)の阻害的RNA(siRNA)へと消化される。これらの断片及び相補的mRNAは、特異的なRISCタンパク質複合体によって認識される。標的mRNAのエンドヌクレアーゼ切断によって、完全なプロセスに至る(Nature Reviews, 2002, v.3, p.737-47; Curr Opin Mol Ther. 2003 Jun;5(3):217-24)。
【0046】
公知の遺伝子に対するsiRNAの調製方法に関する開示については、例えば、「Chalk AM, Wahlestedt C, Sonnhammer EL. Improved and automated prediction of effective siRNA Biochem. Biophys. Res. Commun. 2004 Jun 18;319(1):264-74; Sioud M, Leirdal M., Potential design rules and enzymatic synthesis of siRNAs, Methods Mol Biol.2004;252:457-69; Levenkova N, Gu Q, Rux JJ.: Gene specific siRNA selector Bioinformatics. 2004 Feb 12;20(3):430-2. and Ui-Tei K, Naito Y, Takahashi F, Haraguchi T, Ohki-Hamazaki H, Juni A, Ueda R, Saigo K., Guidelines for the selection of highly effective siRNA sequences for mammalian and chick RNA interference Nucleic Acids Res. 2004 Feb 9;32(3):936-48。「Liu Y, Braasch DA, Nulf CJ, Corey DR.Efficient and isoform-selective inhibition of cellular gene expression by peptide nucleic acids Biochemistry, 2004 Feb 24;43(7):1921-7」を参照されたい。修飾された/より安定なsiRNAの作製については、PCT公開WO2004/015107(Atugen)及びWO02/44321号(Tuschl et al)及び「Chiu YL, Rana TM. siRNA function in RNAi:a chemical modification analysis, RNA 2003 Sep;9(9):1034−
48 及び米国特許第5898031号及び第6107094号(Crooke)を参照されたい。
【0047】
細胞内でsiRNAを生成することが可能なDNAをベースとしたベクターが開発されている。本方法は、一般に、効率的にプロセッシングされて、細胞内でsiRNAを形成する短いヘアピンRNAの転写を含む。「Paddison et al. PNAS 2002, 99:1443-1448; Paddison et al. Genes & Dev 2002, 16:948-958」;「Sui et al. PNAS 2002, 8:5515-5520」;及び「Brummelkamp et al. Science 2002, 296:550-553」。これらの報告は、内在的及び外在的に発現された多くの遺伝子を特異的に標的とすることが可能なsiRNAを生成するための方法を記載する。
【0048】
siRNAの送達については、例えば、「Shen et al(FEBS letters 539: 111-114(2003)), Xia et al., Nature Biotechnology 20: 1006-1010(2002), Reich et al., Molecular Vision 9: 210-216(2003), Sorensen et al.(J.Mol.Biol. 327: 761-766(2003), Lewis et al., Nature Genetics 32: 107-108(2002))及び「Simeoni et al., Nucleic Acids Research 31, 11: 2717-2724(2003)」を参照されたい。siRNAは、最近、霊長類での阻害に対する使用が成功を収めており、さらなる詳細については、「Tolentino et al., Retina 24(1) February 2004 pp 132−138」を参照されたい。
【0049】
本発明のsiRNA
本発明のsiRNAの一般的な仕様
一般的には、本発明で使用されるsiRNAは、二本鎖構造を含むリボ核酸を含み、該二本鎖構造は第一の鎖と第二の鎖を含み、該第一の鎖は、連続的ヌクレオチドの第一の伸長を含み、該第一の伸長は標的核酸に対して少なくとも部分的に相補的であり、及び第二の鎖は、連続的ヌクレオチドの第二の伸長を含み、該第二の伸長は標的核酸に対して少なくとも部分的に同一であり、前記第一の鎖及び/又は前記第二の鎖は、2’位に修飾を有する修飾されたヌクレオチドの複数の群を含み、該鎖内において、修飾されたヌクレオチドの各群は、ヌクレオチドの隣接する基によって一方又は両方側上で隣接しており、ヌクレオチドの隣接する群を形成する隣接ヌクレオチドは、修飾されていないヌクレオチド又は前記修飾されたヌクレオチドの修飾とは異なる修飾を有するヌクレオチドの何れかである。さらに、前記第一の鎖及び/又は前記第二の鎖は、前記複数の修飾されたヌクレオチドを含んでもよく、及び修飾されたヌクレオチドの複数の群を含んでもよい。
【0050】
修飾されたヌクレオチドの群及び/又は隣接ヌクレオチドの群は、多数のヌクレオチドを含むことができ、その数は、1個のヌクレオチドないし10個のヌクレオチドを含む群から選択される。本明細書に明記されている任意の範囲に関連して、各範囲は、該範囲を規定する2つの数字を含む範囲を規定するために使用されるそれぞれの数字の間にある任意の各整数を開示する。本事例では、このため、前記群は、1個のヌクレオチド、2個のヌクレオチド、3個のヌクレオチド、4個のヌクレオチド、5個のヌクレオチド、6個のヌクレオチド、7個のヌクレオチド、8個のヌクレオチド、9個のヌクレオチド及び10個のヌクレオチドを含む。
【0051】
前記第一の鎖の修飾されたヌクレオチドのパターンは、前記第二の鎖の修飾されたヌクレオチドのパターンと同一であってもよく、前記第二の鎖のパターンと一致してもよい。さらに、前記第一の鎖のパターンは、前記第二の鎖のパターンに対して、1以上のヌクレオチドだけシフトしてもよい。
【0052】
上述の修飾は、アミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシ及びアルキルを含む群から選択され得る。
【0053】
siRNAの二本鎖構造は、一方又は両方側が平滑末端であってもよい。より具体的には、二本鎖構造は、第一の鎖の5’末端及び第二の鎖の3’末端によって規定される二本鎖構造の側が平滑末端であってもよく、又は前記二本鎖構造は、前記第一の鎖の3’末端及び前記第二の鎖の5’末端によって規定される二本鎖構造の側を平滑末端としてもよい。
【0054】
さらに、2つの鎖の少なくとも1つが、5’末端に少なくとも1つのヌクレオチドの突出を有してもよく、この突出は、少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドからなり得る。また、鎖の少なくとも一つが、3’末端に少なくとも1つのヌクレオチドの突出を必要に応じて有してもよい。
【0055】
siRNAの二本鎖構造の長さは、典型的には、約17から21まで、より好ましくは18又は19塩基である。さらに、前記第一の鎖の長さ及び/又は前記第二の鎖の長さは、約15から約23塩基まで、17ないし21塩基及び18又は19塩基の範囲を含む群から、互いに独立に選択してもよい。
【0056】
さらに、前記第一の鎖と標的核酸間の相補性は完全であってもよく、又は前記第一の鎖と前記標的核酸との間で形成された二重鎖は、少なくとも15個のヌクレオチドを含んでもよく、前記二本鎖構造を形成する前記第一の鎖及び前記標的核酸との間に1つのミスマッチ又は2つのミスマッチが存在する。
【0057】
幾つかの事例では、第一の鎖と第二の鎖の両方がそれぞれ、修飾されたヌクレオチドの少なくとも1つの群とヌクレオチドの少なくとも1つの隣接群を含み、修飾されたヌクレオチドの各群は少なくとも1つのヌクレオチドを含み、及び、ヌクレオチドの各隣接群は少なくとも1つのヌクレオチドを含み、第一の鎖の修飾されたヌクレオチドの各群は第二の鎖上のヌクレオチドの隣接基と一致しており、前記第一の鎖の最も末端の5’ヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチドの基のヌクレオチドであり、前記第二の鎖の最も末端の3’ヌクレオチドは、ヌクレオチドの隣接基のヌクレオチドである。修飾されたヌクレオチドの各群が単一のヌクレオチドからなってもよく、及び/又はヌクレオチドの各隣接群が単一のヌクレオチドからなってもよい。
【0058】
さらに、第一の鎖上では、ヌクレオチドの隣接群を形成するヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチドの群を形成するヌクレオチドに対して3’方向に配置された非修飾ヌクレオチドであり、第二の鎖上では、修飾されたヌクレオチドの群を形成するヌクレオチドは、ヌクレオチドの隣接基を形成するヌクレオチドに対して5’方向に配置された修飾ヌクレオチドである。
【0059】
さらに、siRNAの第一の鎖は、8ないし12個、好ましくは9ないし11個の、修飾されたヌクレオチドの群を含んでもよく、前記第二の鎖は、7ないし11個、好ましくは8ないし10個の、修飾されたヌクレオチドの群を含んでもよい。
【0060】
前記第一及び第二の鎖は、特に、ポリエチレングリコールなどの非核酸ポリマーから構成され得るループ構造によって連結されてもよい。あるいは、ループ構造は、核酸から構成されてもよい。
【0061】
さらに、siRNAの第一の鎖の5’末端は、前記第二の鎖の3’末端に連結されてもよく、又は前記第一の鎖の3’末端は、前記第二の鎖の5’末端に連結されてもよい。
【0062】
本発明のsiRNAの具体的な仕様
本発明は、アネキシンII遺伝子の発現を下方制御する二本鎖オリゴリボヌクレオチド(siRNA)を提供する。本発明のsiRNAは、センス鎖がアネキシンII遺伝子のmRNA配列から由来し、アンチセンス鎖がセンス鎖に対して相補的である二重鎖オリゴリボヌクレオチドである。一般に、標的mRNA配列からの若干の逸脱は、siRNA活性を損なうことなく許容される(例えば、Czauderna et al 2003 Nucleic Acids Research 31(11), 2705−2716を参照。)。本発明のsiRNAは、mRNAを破壊して、又は破壊することなく、転写後の段階で遺伝子発現を阻害する。理論に拘泥するものではないが、siRNAは、特異的な切断及び分解のためにmRNAを標的としてもよく、及び/又は標的とされたメッセージからの翻訳を阻害してもよい。
【0063】
より具体的には、本発明は、構造(構造A):
5’(N)−Z3’ (アンチセンス鎖)
3’Z’−(N’)5’(センス鎖)
(各N及びN’は、その糖残基において修飾されてもよく、又は修飾されなくてもよいリボヌクレオチドであり、(N)及び(N’)は、連続する各N又はN’が、共有結合によって、次のN又はN’に連結されているオリゴマーであり、
x及びyの各々は、19ないし40の整数であり;
Z及びZ’の各々は、存在し、又は存在しないことができるが、存在する場合には、dTdTであり、その中にそれが存在する鎖の3’末端に共有結合されており;
(N)の配列は、アネキシンIIのcDNAに対するアンチセンス配列を含む。)
特に、本発明は、(N)の配列が、表1、2及び3中に存在するアンチセンス配列の一又は複数を含む、上記化合物を提供する。
【0064】
本発明の化合物は、共有結合を通じて連結される複数のヌクレオチドからなることが、当業者には自明であろう。このような各共有結合は、各鎖のヌクレオチド配列の長さに沿って、ホスホジエステル結合、ホスホチオアート結合又は両方の組み合わせとしてもよい。他の可能な骨格修飾は、とりわけ、米国特許第5,587,361号;第6,242,589号;第6,277,967号;第6,326,358号;第5,399,676号;第5,489,677号;及び第5,596,086号に記載されている。
【0065】
特定の実施形態において、x及びyは、好ましくは、約19ないし約27、最も好ましくは約19から23までの間の整数である。本発明の化合物の特定の実施形態では、xはyに等しくてもよく(すなわち、x=y)、好ましい実施形態では、x=y=19又はx=y=21である。特に好ましい実施形態では、x=y=19である。
【0066】
本発明の化合物の一実施形態では、Z及びZ’は何れも不存在であり、別の実施形態では、Z又はZ’の一方が存在する。
【0067】
本発明の化合物の一実施形態では、化合物のリボヌクレオチドの全てが、それらの糖残基中に修飾が施されていない。
【0068】
本発明の化合物の幾つかの実施形態では、少なくとも1つのリボヌクレオチドは、その糖残基が修飾されており、好ましくは2’位が修飾されている。2’位の修飾は、好ましくは、アミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシ及びアルキル基を含む群から選択される部分の存在をもたらす。本発明で最も好ましい実施形態では、2’位の部分は、メトキシ(2’−O−メチル)である。
【0069】
本発明の幾つかの実施形態では、化合物のアンチセンス及びセンス鎖の両鎖中で、交互のリボヌクレオチドが修飾される。
【0070】
本発明の特に好ましい実施形態では、アンチセンス鎖は5’末端がリン酸化されており、3’末端はリン酸化されていてもよく、若しくはリン酸化されていなくてもよく、並びに、センス鎖は5’末端及び3’末端がリン酸されていてもよく、若しくはリン酸化されていなくてもよい。
【0071】
本発明の化合物の別の実施形態では、アンチセンス鎖の5’及び3’末端のリボヌクレオチドの糖残基が修飾されており、センス鎖の5’及び3’末端のリボヌクレオチドの糖残基は修飾されていない。
【0072】
本発明は、さらに、細胞中では非修飾形態であり、その後、適切な修飾を施してもよい先述されたオリゴリボヌクレオチドのいずれかを発現することが可能なベクターを提供する。
【0073】
本発明は、担体中、好ましくは薬学的に許容される担体中に、本発明の化合物の一又は複数を含む組成物も提供する。本組成物は、同一遺伝子に対して2以上の異なるsiRNAの混合物を含んでもよい。
【0074】
本発明の別の化合物は、本発明の1以上の化合物(構造A)に共有結合又は非共有結合された本発明の上記化合物(構造A)を含む。本化合物は、担体、好ましくは、薬学的に許容される担体中に入れて送達してもよく、本発明の1又は複数のsiRNAを産生するために、内在性細胞複合体によって細胞内でプロセッシングされ得る。
【0075】
本発明は、担体と、ヒトアネキシンIIの細胞中での発現を下方制御するのに有効な量の1又は複数の本発明の化合物とを含み、該化合物が(N)の配列に対して実質的に相補的な配列を含む組成物も提供する。
【0076】
本発明は、遺伝子のmRNA転写物を、本発明の化合物の一又は複数と接触させることを含む、ヒトアネキシンIIの発現を、対照と比べて少なくとも50%下方制御する方法も提供する。
【0077】
一実施形態において、前記化合物は、アネキシンIIポリペプチドを下方制御し、アネキシンIIの下方制御は、アネキシンII機能の下方制御(酵素的アッセイ、又は、とりわけ、固有遺伝子/ポリペプチドの公知の相互作用因子を用いた結合アッセイによって調べてもよい。)、アネキシンIIタンパク質の下方制御(とりわけ、ウェスタンブロッティング、ELISA又は免疫沈降によって調べてもよい。)及びアネキシンIImRNA発現の下方制御(とりわけ、ノーザンブロッティング、定量的RT−PCR、インシチュハイブリダイゼーション又はマイクロアレイハイブリダイゼーションによって調べてもよい。)を含む群から選択される。
【0078】
本発明は、神経変性疾患及び/又は中枢神経系に対する傷害に罹患している患者に、治療的有効量で本発明の組成物を投与し、これにより前記患者を治療することを含む、神経変性疾患及び/又は中枢神経系に対する傷害に罹患している患者を治療する方法も提供する。
【0079】
本発明は、神経変性疾患及び/又は中枢神経系の病変を患った患者において回復を促進するための組成物の調製のための、治療的有効量の又は複数の本発明の化合物の使用も提供する。
【0080】
本明細書において使用される「治療」という用語は、疾病に付随する症候を改善し、重度を軽減し若しくは疾病を治癒し、又は疾病の発生を抑制するのに有効な治療用物質の投与を表す。
【0081】
化合物は、各末端領域塩基中のリボヌクレオチドの最大2個が変化された相同体を有してもよく、末端領域は、4つの末端リボヌクレオチドを表し、例えば、19マー配列では、塩基1ないし4及び/又は16ないし19を表し、21マー配列では、塩基1ないし4及び/又は18ないし21を表す。
【0082】
本発明の好ましいオリゴヌクレオチドは、表1、2及び3に列記されているオリゴヌクレオチド、好ましくは表1に列記されているオリゴヌクレオチド及び/又はヒトcDNAを標的とするオリゴヌクレオチドである。本発明の最も好ましいオリゴヌクレオチドは、表1に示されている阻害的活性を有するオリゴヌクレオチド、好ましくは、ヒトアネキシンIIcDNAを標的とするオリゴヌクレオチドである。
【0083】
本発明の最も好ましい化合物は、平滑末端の19マーオリゴヌクレオチド(すなわち、x=Y−19であり、Z及びZ’がともに存在しない)であり;該オリゴヌクレオチドは、アンチセンス鎖の5’位及びセンス鎖の3’位がリン酸化されており、交互のリボヌクレオチドが、アンチセンス及びセンス鎖の両方注で、2’位において修飾されており、2’位の部分がメトキシ(2’−O−メチル)であり、アンチセンス鎖の5’及び3’末端のリボヌクレオチドの糖残基が修飾されており、センス鎖の5’及び3’末端のリボヌクレオチドの糖残基は修飾されていない。本発明において最も好ましいこのような化合物は、表1のsiRNA番号5である。この化合物のアンチセンス鎖は、配列番号12を有し、センス鎖は配列番号7を有する。別の好ましい化合物は、表1の他のsiRNAである。
【0084】
本発明の一側面では、前記オリゴヌクレオチドは、二本鎖構造を含み、このような二本鎖構造は、
第一の鎖及び第二の鎖を含み、
該第一の鎖は連続的ヌクレオチドの第一の伸長を含み、該第二の鎖は連続的ヌクレオチドの第二の伸長とを含み、
第一の伸長は、アネキシンIIをコードする核酸配列と相補的であるか、又は同一であり、前記第二の伸長は、アネキシンIIをコードする核酸配列に対して同一であるか又は相補的である。
【0085】
一実施形態において、前記第一の伸長及び/又は第二の伸長は、約14から40個までのヌクレオチド、好ましくは約18ないし30個のヌクレオチド、より好ましくは約19から27個までのヌクレオチド、最も好ましくは約19から23個までのヌクレオチド、特に、約19から21個までのヌクレオチドを含む。このような実施形態では、オリゴヌクレオチドは、17から40個までのヌクレオチド長としてもよい。
【0086】
さらに、本発明のさらなる核酸は、配列番号7−368の何れか1つの少なくとも14個の連続するヌクレオチド、より好ましくは、上記第一の伸長及び第二の伸長から構成される二本鎖構造の何れかの末端に14個の連続するヌクレオチド塩基対を含む。
【0087】
本発明は、本発明の少なくとも1つの二本鎖siRNA化合物を取得することと、及び
該化合物を、薬学的に許容される担体と混合することと、
を含む薬学的組成物を調製する方法も提供する。
【0088】
本発明は、本発明の化合物を、薬学的に許容される担体と混合することを含む、薬学的組成物を調製する方法も提供する。本発明は、同様に、動物の治療及び世話のために獣医学診療において使用するための、特に、哺乳動物の治療及び世話において使用するための医薬及び方法にも関する。
【0089】
好ましい実施形態において、薬学的組成物の調製において使用される化合物は、薬学的に有効な用量で担体とともに混合される。具体的な実施形態において、本発明の化合物は、ステロイドに、又は脂質に、又は他の適切な分子に、例えば、コレステロールに抱合される。
【0090】
本発明の化合物は、直接的に、又はウイルス若しくは非ウイルスベクターとともに送達することが可能である。直接送達される場合、配列は、一般的には、ヌクレアーゼ耐性とされる。あるいは、本明細書の以下で論述されているように、配列が細胞中で発現されるように、発現カセット又は構築物中に配列を取り込ませることが可能である。一般的には、構築物は、標的とされる細胞中で配列を発現可能とするために、適切な制御配列又はプロモーターを含有する。本発明の化合物の送達のために必要に応じて使用されるベクターは市販されており、当業者に公知の方法によって、本発明の化合物を送達する目的のために修飾してもよい。
【0091】
1又は複数のステム及びループ構造(ステム領域は、本発明のオリゴヌクレオチドの配列を含む。)を含む長いオリゴヌクレオチド(典型的には25ないし500ヌクレオチド長)は、担体中、好ましくは薬学的に許容される担体中に入れて送達してもよく、本発明のオリゴヌクレオチドである一又は複数のさらに小さな二本鎖オリゴヌクレオチド(siRNA)を産生させるために、内在性細胞複合体(例えば、上記のようなDROSHA及びDICER)によって細胞内で加工されてもよいことも想定される。このオリゴヌクレオチドは、タンデムshRNA構築物と名付けることができる。この長いオリゴヌクレオチドは、一又は複数のステム及びループ構造を含む一本鎖オリゴヌクレオチドであり、各ステム領域は、アネキシンII遺伝子のセンス及び対応するアンチセンスsiRNA配列、好ましくは、表1−3中に存在する配列の一部を含む。特に、本発明において使用されるsiRNAは、1つの鎖が配列番号3−52又は配列番号103−174又は配列番号247−295(これらはセンス鎖である。)中に記された配列を5’から3’へと有する連続的ヌクレオチドを含み、複数の塩基が、好ましくは2−O−メチル修飾によって修飾され得るオリゴヌクレオチド、又はその相同体(各末端領域中の最大2個のヌクレオチドで、塩基が変化している。)である。
【0092】
オリゴヌクレオチドの末端領域は、19マー配列中の塩基1−4及び/又は16−19(下表1及び2)並びに21マー配列中の塩基1−4及び/又は18−21(下表3)を表す。
【0093】
さらに、本発明において使用されるsiRNAは、1つの鎖が配列番号12−16又は配列番号119−220又は配列番号295−368(アンチセンス鎖)中に記された配列を5’から3’へと有する連続的ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド、又はその相同体(各末端領域中の最大2個のヌクレオチドで、塩基が変化している。)である。
【0094】
このように、特定の側面において、オリゴヌクレオチドは、二本鎖構造を含み、このような二本鎖構造は、第一の鎖及び第二の鎖を含み、該第一の鎖は、連続的ヌクレオチドの第一の伸長を含み、該第二の鎖は連続的ヌクレオチドの第二の伸長を含み、第一の伸長は、遺伝子アネキシンIIをコードする核酸配列と相補的であるか、又は同一であり、前記第二の伸長は、アネキシンIIをコードする核酸配列に対して同一であるか又は相補的である。前記第一の伸長は、少なくとも14個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも18個のヌクレオチド、さらに好ましくは19個のヌクレオチド又はさらには少なくとも21個のヌクレオチドを含む。一実施形態において、前記第一の伸長は、約14から40個までのヌクレオチド、好ましくは約18ないし30個のヌクレオチド、より好ましくは約19から27個までのヌクレオチド、最も好ましくは約19から23個までのヌクレオチドを含む。一実施形態において、前記第二の伸長は、約14から40個までのヌクレオチド、好ましくは約18ないし30個のヌクレオチド、より好ましくは約19から27個までのヌクレオチド、最も好ましくは約19から23個までのヌクレオチド、又は、約19ないし21個のヌクレオチドを含む。一実施形態において、前記第一の伸長の前記第一のヌクレオチドは、アネキシンIIをコードする核酸配列のヌクレオチドに対応し、前記第一の伸長の最後のヌクレオチドは、アネキシンIIをコードする核酸配列のヌクレオチドに対応する。一実施形態において、前記第一の伸長は、オリゴヌクレオチドの少なくとも14個の連続的ヌクレオチドの配列を含み、このようなオリゴヌクレオチドは、配列番号7−368を含む群から、好ましくは、表1中の連続番号1−5、表2中の100−107及び表3中の174−181の何れかの配列を有するオリゴリボヌクレオチドを含む群から選択される。さらに、本発明で使用されるsiRNA分子の仕様は、二ヌクレオチドdTdTが3’末端に共有結合され、及び/又は、少なくとも1つのヌクレオチドにおいて、おそらくは、2’−O−メチル修飾を含む修飾で、糖残基が修飾されているオリゴリボヌクレオチドを与えてもよい。さらに、2’OH基は、−H−OCH、−OCHCH、−OCHCHCH、−NH及び−Fを含む群から選択される基又は部分によって置換されてもよい。
【0095】
さらに、本発明において使用されるsiRNAは、交互のヌクレオチド中で、修飾された糖が両鎖中に位置するオリゴリボヌクレオチドであってもよい。特に、オリゴリボヌクレオチドは、末端の5’及び3’ヌクレオチド中で糖が非修飾であるセンスストランドの1つ、又は末端の5’及び3’ヌクレオチド中で糖が修飾されているアンチセンス鎖の1つを含み得る。
【0096】
さらに、本発明において使用されるべきさらなる核酸は、配列番号7−368の何れか1つの少なくとも14個の連続するヌクレオチド、より好ましくは、上記第一の伸長及び第二の伸長から構成される二本鎖構造の何れかの末端に14個の連続するヌクレオチド塩基対を含む。本発明の核酸の長さ、特に本発明のこのような核酸を形成する各伸長の潜在的長さに鑑みれば、各側に対して配列番号1に詳述されているアネキシンII遺伝子のコード配列に比して幾つかのシフトが可能であり、このようなシフトは、両方向に最大1、2、3、4、5及び6個のヌクレオチドとすることができ、このようにして生成された二本鎖核酸分子も、本発明に属するものとする。
【0097】
アネキシンIIに対するsiRNAは、アネキシンIIの公知配列(配列番号1)に基づいて、本明細書に記載されているように本分野で公知の方法を用いて作製することが可能であり、上記様々な修飾によって安定化することが可能である。さらなる情報については、実施例4を参照。
【0098】
さらに、本明細書に記載されている本発明の方法に関連して、本発明の方法とともに使用され得る本発明のさらなる阻害的RNA分子は、表1−3中に詳述されている配列(19マー及び21マー)中に存在する少なくとも7−14の連続するヌクレオチドの伸長を好ましくは含む一本鎖オリゴリボヌクレオチドを含み、該オリゴリボヌクレオチドは、細胞内複合体によって認識される特定の立体構造で二本鎖領域を形成し、及び/又は含むことが可能であり、該オリゴリボヌクレオチドは、アネキシンIIの阻害を実施することが可能な、さらに小さなRNA分子、及びこのようなRNA分子をコードするDNA分子へと分解される。
【0099】
例えば、本明細書に開示されているsiRNAを含むアンチセンスDNA分子などの任意の分子(適切な核酸修飾を有する。)が特に望ましく、本明細書に開示されている全ての使用及び方法のために、対応するそれらのsiRNAと同じ能力で使用することができる。
【0100】
本発明において、本明細書に開示されているsiRNA分子の何れか、又は内在性細胞複合体(DICERなど−上記参照)によって加工されて、本明細書に開示されているsiRNA分子を形成し、若しくは本明細書に開示されているsiRNAを含む分子を形成する、任意の長い二本鎖RNA分子(典型的には、25−500ヌクレオチド長さ)は、任意の疾病又は疾患の治療において使用可能であることが理解されるべきである。より具体的には、本発明は、特に神経変性疾患又は中枢神経系疾患などの疾病又は疾患に罹患した患者に、本明細書に開示されているアネキシンII siRNAの一又は複数(又は上述のように、前記siRNAの1若しくは複数をコードする1若しくは複数の長いdsRNA)を含む薬学的組成物を、治療的有効量で投与して、これにより前記患者を治療することを含む、特に神経変性疾患又は中枢神経系疾患などの疾病又は疾患に罹患した患者を治療する方法を提供する。
【0101】
本発明の分子によって治療することができるさらなる疾患には、本明細書に記載されている心筋梗塞(MI)及びアポトーシス関連疾患が含まれる。本発明のさらなる側面は、アポトーシス関連疾患を治療する方法を提供する。制御されない、病理的細胞増殖、例えば、とりわけ癌、乾癬、自己免疫疾患を伴う疾病又は疾患を治療するための方法、並びに、虚血及び適切な血流の欠如を伴う疾病、例えば、心筋梗塞(MI)及び卒中を治療するための方法が提供される。
【0102】
このように、この側面では、本発明は、MIに罹患している患者に、アネキシンII阻害剤を治療的有効量で含む薬学的組成物を患者に投与し、これにより前記患者を治療することを含む、MIに罹患している患者を治療する方法を提供する。前記阻害剤は、ニトロプロシドナトリウムなどの小化学的化合物(Liu et al., Eur. J. Biochem. 269, 4277−4286(2002))又はアネキシンII分泌を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤Tyrphostin AG1024(Zhao et al., JBC 278, 6:4205−4215(2003))としてもよい。);アネキシンII遺伝子へのハイブリダイゼーションを可能とするために配列番号1に記されているアネキシンII遺伝子の配列内に存在する配列に対して十分な長さと相同性の配列を有し、図3に示されている配列のうちの1つ(配列番号3又は配列番号4)を必要に応じて有する連続ヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、又は図1に示されている配列(配列番号1)に対するセンス配列であり、且つ前記配列に対するドミナントネガティブペプチドをコードする配列を有し、図4に示されている配列のうちの1つ(配列番号5又は配列番号6)を必要に応じて有する連続ヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチドであるポリヌクレオチド、siRNA、必要に応じて、表1−3(配列番号7−368)、特に表1のsiRNA番号1−5、表2の100−107及び表3の174−181に記載されている配列の何れか1つと同一の配列を有する連続的ヌクレオチドを含むsiRNAであるポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチド;これらのポリヌクレオチドの何れかを含むベクター;ドミナントネガティブペプチドなどのポリペプチド、例えば、配列番号5又は配列番号6によってコードされるペプチド、アネキシンIIを結合することが見出されたPCT特許出願公開WO200404/1844号のペプチド#41、S−ニトロソグルタチオン(GSNO; Liu et al., Eur. J. Biochem. 269, 4277−4286(2002))若しくは、その配列が図2に示されている(配列番号2)連続的アミノ酸を含むポリペプチド内に存在するエピトープに特異的に結合する抗体、必要に応じて、ポリクローナル若しくはモノクローナル抗体;又はリボザイムを含んでもよい。前記薬学的組成物は、希釈剤又は担体をさらに含有してもよい。
【0103】
本発明のさらなる方法は、MIに罹患している患者に、本明細書に記載されている阻害剤の何れかなどの、アネキシンII阻害剤の治療的有効量を含む薬学的組成物を投与し、これにより前記患者を治療することを含む、MIに罹患している患者を治療する方法を提供する。
【0104】
本発明のアポトーシス関連疾病治療の側面は、癌又はMIに罹患している患者の回復を促進するための医薬の調製のための、アネキシンII阻害剤の治療的有効量の使用も提供する。阻害剤は、本明細書に詳述されている選択肢の一又は複数であることができる。
【0105】
「癌」又は「腫瘍」とは、異常な細胞の、制御されていない増殖塊を表す。これらの用語には、良性又は悪性であり得る原発性腫瘍並びに体内の他の部位に伝播した二次性腫瘍又は転移の両方が含まれる。癌タイプの疾病の例には、とりわけ、癌腫(例えば、乳癌、大腸癌及び肺癌)、B細胞白血病などの白血病、B細胞リンパ腫などのリンパ腫、神経芽腫及び悪性黒色腫等の芽細胞腫が含まれる。
【0106】
「発現ベクター」という用語は、外来細胞中に異種DNA断片を取り込み、該断片を発現する能力を有するベクターを表す。多くの原核及び真核発現ベクターが公知であり、及び/又は市販されている。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識の範疇に属する。
【0107】
「ポリペプチド」とは、アミノ酸から構成される分子を意味し、本用語には、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質及びペプチド模倣物が含まれる。
【0108】
ペプチド模倣物とは、天然の親ペプチドの生物作用を模倣することが可能である非ペプチド構造要素を含有する化合物である。ペプチド模倣物中には、酵素的に切断可能なペプチド結合などの古典的ペプチド特性の幾つかが通常存在しない。
【0109】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在する20のアミノ酸の何れか1つ、化学的に修飾されたアミノ酸(下記参照)又は合成アミノ酸からなる分子を表す。
【0110】
「ドミナントネガティブペプチド」という用語は、完全なタンパク質と相互作用し、その活性を阻害することが可能であるか、又は他のタンパク質と相互作用し、完全なタンパク質に応答して他のタンパク質の活性を阻害することができるタンパク質の一部をコードするcDNA断片によってコードされるポリペプチドを表す。
【0111】
「抗体」という用語は、とりわけ、IgG、IgM、IgD、IgA及びIgE抗体を表す。この定義には、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体が含まれる。本用語は、完全な抗体又は抗GPCRV産物抗体の抗原結合ドメインを含む抗体の断片、例えば、Fc部分を含まない抗体、一本鎖抗体、抗体の可変抗原結合ドメインのみから実質的になる断片などを表す。「抗体」という用語は、cDNAワクチン接種によって得られる核酸配列に対する抗体も表し得る。
【0112】
本用語は、それらの抗原又は受容体と選択的に結合する能力を保持した抗体断片も包含し、特に、以下のものが例示される。
【0113】
(1)Fab、抗体分子の一価抗原結合断片を含有する断片であり、軽鎖及び重鎖の一部を生成するために、完全な抗体を、酵素パパインで消化することによって作製することが可能である;
(2)(Fab’)、その後の還元なしに、酵素ペプシンで完全な抗体を処理することによって得ることが可能な抗体の断片;(Fab’)は、2つのジスルフィド結合によって互いに固定された2つのFab断片の二量体である;
(3)Fv、2つの鎖として発現される、軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを含有する遺伝子操作された断片として定義される;
(4)一本鎖抗体(SCA)、軽鎖の可変領域と、遺伝学的に融合された一本鎖分子として、適切なポリペプチドリンカーによって連結された重鎖の可変領域とを含有する遺伝子操作された断片として定義される。
【0114】
本発明において使用される「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原上の抗原決定基を意味する。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸又は糖の側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特異的な三次元構造特性及び特異的な電荷特性を有する。
【0115】
本発明の一実施形態において、これらの薬学的組成物の任意の1つが、組織外傷又は慢性の変性的な変化に起因するものであると否とを問わず、損傷を受けた神経組織に伴われる症候及び兆候を改善又は軽減するために使用される。本実施形態は、中枢神経系に対する傷害を患った患者において、中枢神経系に対する損傷を軽減し、又は回復を促進するのに十分な投薬量及び期間にわたって、上記薬学的組成物の何れか1つを前記患者に投与することを含む、中枢神経系に対する傷害を患った患者おける中枢神経系への損傷を軽減し又は回復を促進する方法に関する。本実施形態は、必要に応じて、本明細書に記載されている症状又は傷害の何れかの結果として、中枢神経系に対する傷害を患った患者に、アネキシンIIを阻害するのに十分な投薬量及び期間にわたって、本明細書に例示されているように、アネキシンII阻害剤の治療的有効量を含む薬学的組成物を前記患者に投与し、これによって前記患者を治療することを含む、中枢神経系に対する傷害を患った患者を治療する方法又はプロセスをさらに提供する。
【0116】
ある種の神経疾患(例えば、脳虚血又は卒中)では、正常な対象に比べて、脳血液関門(BBB)が比較的開放されているため、抗体を含む巨大分子などの大きな分子さえ、脳まで透過することが可能であり、これによって、その後、分子がアネキシンIIと相互作用することが可能となる。脳内への送達に関するさらに詳しい情報は、以下の実施例8に記載されている。
【0117】
本発明の一側面において、前記薬学的組成物が軽減を目的とし、又は前記薬学的組成物が回復の促進を試みる中枢神経系に対する傷害は、全体的な又は局所的な脳の発作であり得る(これに限定されない)虚血性発作であり、前記傷害は、本明細書中に論述されているように、卒中現象又は外傷性脳傷害であり得る。中枢神経系の傷害又は外傷に関するさらに詳しい情報は、以下に記載されている。
【0118】
本発明の別の側面では、先述の薬学的組成物と組み合わせて、薬学的に有効な追加の化合物が投与される。
【0119】
「組み合わせて」とは、アネキシンII阻害剤を含む薬学的組成物の投与の前、同時又は後に、薬学的に有効な追加の組成物が投与されることを意味する。
【0120】
本発明のさらなる実施形態において、神経の再生を必要としている対象中に神経の再生を引き起こすために、上記薬学的組成物の任意の1つが使用される。本発明の本実施形態は、損傷を軽減し、又は回復を促進するのに十分な投薬量及び期間にわたって、神経細胞の再生を必要とする患者に、上記薬学的組成物の何れか1つを投与することを含む、前記患者中に神経細胞の再生を引き起こす方法に関する。
【0121】
本発明の薬学的組成物は、神経細胞の変性又は損傷が関与し、又は推測される任意の疾病、とりわけ、以下の症状の治療に用途を有することが可能である。高血圧、高血圧性脳血管疾患、血栓又は塞栓、血管腫、血液異混和症の場合に発生するような血管の収縮又は閉塞、心停止又は心不全を含む任意の形態の悪化した心機能、全身性低血圧;並びに卒中、パーキンソン病、癲癇、うつ病、ALS、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病及び他の何らかの疾病によって誘導された認知症(例えば、HIVによって誘導された認知症など)などの疾病。これらの症状は、本明細書において、「神経変性疾患」とも称される。動脈瘤の破裂、心停止、心臓性ショック、敗血症ショック、脊髄外傷、頭部外傷、外傷性脳傷害(TBI)、発作、腫瘍からの出血などの中枢神経系に対する外傷は、本発明において、「中枢神経系に対する傷害」とも称され、同じく、本発明の化合物及び組成物を用いて治療してもよい。
【0122】
特許請求の範囲に記載された本発明の一実施形態は、特に、虚血性発作、卒中又は外傷性脳傷害などの中枢神経系に対する傷害を患った患者の治療用医薬の調製のための方法において、治療的有効量のアネキシンII阻害剤を使用することを提供する。前記阻害剤は、ニトロプルシドナトリウム(Liu et al., Eur. J. Biochem. 269, 4277−4286(2002))又はアネキシンII分泌を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤Tyrphostin AG1024(Zhao et al., JBC 278, 6: 4205−4215(2003))などの小化学的化合物;図1に示されている配列(配列番号1)に対するアンチセンス配列である配列を有し、図3に示されている配列のうちの1つ(配列番号3又は配列番号4)を必要に応じて有する連続ヌクレオチドを含むアンチセンスポリヌクレオチド、又は図1に示されている配列(配列番号1)に対するセンス配列であり、且つ前記配列に対するドミナントネガティブペプチドをコードする配列を有し、図4に示されている配列のうちの1つ(配列番号5又は配列番号6)を必要に応じて有する連続ヌクレオチドを含むセンスポリヌクレオチドであるポリヌクレオチド、又はサイレンシングRNA(siRNA)として機能し、表1−3、特に表1に記載されている配列の1つを必要に応じて有するポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチド;これらのポリヌクレオチドの何れかを含むベクター;ドミナントネガティブペプチドなどのポリペプチド、例えば、配列番号5又は配列番号6によってコードされるペプチド、アネキシンIIを結合することが見出されたPCT特許出願公開WO200404/1844号のペプチド#41、S−ニトロソグルタチオン(GSNO; Liu et al., Eur. J. Biochem. 269, 4277−4286(2002))又は上に詳述されている抗体などの抗体、必要に応じてポリクローナル抗体若しくはモノクローナル抗体であってもよい。薬学的組成物は、さらに、希釈剤又は担体を含有してもよい。
【0123】
本発明に従う治療計画は、投与様式、投与のタイミング及び投薬量の観点で、虚血性現象又は中枢神経系傷害の有害な結果からの患者の機能的な回復が改善されるように、すなわち、患者の運動技能(例えば、姿勢、バランス、握持又は歩き方)、認知技能、会話及び/又は感覚知覚(視覚能力、味覚、嗅覚及び自己受容を含む。)の少なくとも1つが、本発明の阻害剤投与の結果として改善する。このように、前記阻害剤は、これらの技能の少なくとも1つを改善することによって、患者の回復を促進又は補強する。
【0124】
本発明のアネキシンII阻害剤を含む薬学的組成物の投与は、静脈内、動脈内、皮下又は脳内を含む、任意の公知の投与経路によって実施することが可能である。特殊化された製剤を使用すれば、これらを、経口的に又は吸入を介して投与することも可能であり得る。組成物を必要としている個体に組成物を投与するための適切な投薬及び治療計画は、以下に詳しく論述されている。
【0125】
本発明は、様々な症状の何れかに起因する中枢神経系傷害の有害な結果を治療するために使用することが可能である。血栓、塞栓及び全身性低血圧は、脳虚血発作の最も一般的な原因の1つである。他の傷害は、高血圧、高血圧性脳血管疾患、動脈瘤の破裂、血管腫、血液異混和症、心不全、心停止、心臓性ショック、敗血症ショック、頭部外傷、脊髄外傷、発作、腫瘍からの出血又は他の血液喪失によって引き起こされ得る。
【0126】
虚血に発作が伴う場合には、以下に定義されているように、全身的又は局所的な虚血の何れかであり得る。たとえ、傷害からかなり後に投与が行われた場合でさえ、本発明の薬学的組成物の投与は有効であると考えられる。
【0127】
「虚血性発作」とは、組織への血液供給の欠乏をもたらす任意の状況を意味する。脳虚血発作は、脳への血液供給の欠乏に起因する。中枢神経系の一部でもある脊髄は、血流減少に起因する虚血に対して、同様に感受性を有する。虚血性発作は、高血圧、高血圧性脳血管疾患、動脈瘤の破裂、血栓又は塞栓、血管腫、血液異混和症の場合に発生するような血管の収縮又は閉塞、心停止又は心不全を含む、任意の形態の悪化した心機能、全身性低血圧、心停止、心臓性ショック、敗血症ショック、脊髄外傷、頭部外傷、発作、腫瘍からの出血又はその他の血液喪失によって引き起こされ得る。本発明は、頭部又は脊髄への打撃などの機械的な力によって引き起こされた中枢神経系に対する傷害を治療するためも有用であると予測される。外傷には、頭部、頸部又は脊柱の任意の部位又は頭部、頸部又は脊柱に対する付属物と外来物体が外傷的に接触することによって生じ得るなど、擦り傷、切開、打撲、刺し傷、圧迫などの組織損傷を含むことが可能である。外傷性傷害の他の形態は、液体の不適切な蓄積によって中枢神経組織の収縮又は圧縮から生じ得る(例えば、正常な脳脊髄液の封鎖若しくは機能不全若しくは硝子体液産生、代謝回転若しくは容量制御、又は硬膜下若しくは頭蓋内血腫若しくは浮腫)。同様に、外傷性収縮又は圧縮は、転移性又は原発性腫瘍などの異常な組織の塊の存在から生じることが可能である。
【0128】
中枢神経系に関して本明細書で使用される「局所虚血」とは、血液を脳又は脊髄へ供給する単一の動脈の閉塞から生じ、前記動脈によって供給される領域における細胞要素すべての死滅(頭蓋壊死(pan−necrosis))に至る状態を意味する。
【0129】
中枢神経系に関して本明細書で使用される「全体的脳虚血」とは、脳全体、前脳、又は脊髄への血流の一般的な減少から生じ、これらの組織全体にわたる選択的に脆弱な領域において神経細胞を死滅させる状態を意味する。これらの場合の各々における病理学的状態は、臨床的な相関現象のため極めて異なる。局所虚血モデルは局所脳梗塞を有する患者へ応用し、一方で全体的虚血のモデルは心停止、及び全身性体血圧の他の原因に類似している。
【0130】
本明細書で使用される「神経毒性ストレス」という語は、正常な神経細胞に対して毒性がある(及び前記神経細胞の死滅又はアポトーシスを生じるかもしれない)いずれかのストレスを包含するものとする。このようなストレスは、酸化的ストレス(低酸素症又は高酸素症)又は虚血又は外傷であってもよく、及び/又は前記ストレスは、グルタミン酸塩又はドーパミン又はAβタンパク質、又は酸化的ストレスを生じる任意の物質又は処理など、インビボで前記細胞に対して毒性のある物質へ前記細胞を供することを包含してもよい。前記神経毒性物質は内因性又は外因性であってもよく、神経毒性という語は、有機リン中毒を含むさまざまな公知の神経毒素への暴露、又はこのタイプのいずれかの他の傷害も包含するものとする。さらに、神経毒性ストレスは、神経変性疾患によって生じ得る。
【0131】
さらなる実施形態において、本発明は、神経細胞の再生を必要とする対象に、治療的有効量で活性成分としてのアネキシンII阻害剤を含み、希釈剤又は担体をさらに含み、必要に応じて本明細書に記載されている薬学的組成物のいずれかである薬学的組成物を前記対象へ投与することをさらに含む、神経細胞の再生を引き起こすための方法又はプロセスを提供する。
【0132】
「スクリーニング」実施形態として本明細書で称される本発明のさらなる実施形態は、アネキシンIIの生物活性、神経毒性ストレス及び/又はアポトーシスを調節する種及び/又は化合物を得るための方法及びプロセスに関する。この実施形態のある側面は、アネキシンIIを発現する細胞を、種及び/又は化合物と接触させることと、対照と比較して細胞のアネキシンIIの生物活性、神経毒性ストレス及び/又はアポトーシスを調節する前記種及び/又は化合物の能力を決定することとを含む、アネキシンIIの生物活性、神経毒性ストレス及び/又はアポトーシスを調節する種及び/又は化合物を得るためのプロセスを提供する。調べられている細胞は、アネキシンIIを発現するように修飾されてもよく、理論に拘泥するものではないが、アポトーシスはアネキシンIIの存在によって、又は必要に応じて、過酸化水素、グルタミン酸塩、ドーパミン、Aβタンパク質若しくは任意の公知の神経毒若しくは虚血若しくは低酸素症などの神経毒性処理によって引き起こされる神経毒性ストレスによって、又は卒中などの神経変性疾患によって誘導されてもよい。さらに、このプロセスは、薬学的組成物を調製するために使用されてもよい。次に、前記プロセスは、前述のプロセスによって得られる種若しくは化合物又はその化学的類縁体若しくは相同体を薬学的に許容される担体と混合することを含む。
【0133】
本明細書で使用される、「発現するように修飾されている」細胞とは、形質移入、形質導入、感染、又は前記細胞に前記望ましい遺伝子を発現させるその他の公知の分子生物学的方法によって修飾される細胞を意味する。このような方法を実施するための材料及びプロトコールは、当業者にとって自明である。
【0134】
前記スクリーニングの実施形態のさらなる側面は、
(a)アネキシンIIを発現する細胞を、複数の種及び/又は化合物と接触させること、
(b)アネキシンIIの生物活性、神経毒性ストレス及び/又はアポトーシスが、対照と比較して、前記種及び/又は化合物の存在下で調節されるかどうかを決定し、もし調節されていれば
(c)アネキシンIIの生物活性、神経毒性ストレス及び/又はアポトーシスの調節が複数の種及び/又は化合物に含まれるそれぞれの種及び/又は化合物によって影響されるかどうかを個別に決定し、これによりアネキシンIIの生物活性、神経毒性ストレス及び/又はアポトーシスを調節する種及び/又は化合物を同定すること、を含む、
アネキシンIIの生物活性、神経毒性ストレス及び/又はアポトーシスを調節する種及び/又は化合物を得るために複数の種又は化合物をスクリーニングするプロセスを提供する。
【0135】
前記接触工程にある細胞は、アネキシンIIポリペプチドを発現するように修飾されてもよく、理論に拘泥するものではないが、アポトーシスはアネキシンIIの過剰発現によって、又は前記細胞を、必要に応じて過酸化水素、グルタミン酸塩、ドーパミン、Aβタンパク質若しくはいずれかの公知の神経毒又は虚血若しくは低酸素症などの神経毒性処理によって生じる神経毒性ストレスに供した結果として、又は脳卒中などの神経変性疾患によって自発的に誘導されてもよい。さらに、このプロセスは、薬学的組成物を調製するために使用されてもよい。次に、前記プロセスは、前述のプロセスによって同定された種若しくは化合物又はその化学的類縁体若しくは相同体を、薬学的に許容される担体と混合することを含む。
【0136】
前記プロセスは、さらに、改善された活性を有する化合物を生じるために、上記プロセスによってアポトーシスを調節することが明らかとなった種又は化合物の修飾と、このような化合物を薬学的に許容される担体と混合することとを含んでもよい。この付加的な作用は、本発明のスクリーニング実施形態において開示されるプロセスのいずれかによって発見された化合物を使用して実施されてもよく、これにより改善された活性を有する化合物を含む薬学的組成物を得る。
【0137】
さらに、本発明のスクリーニング実施形態は、
(a)アネキシンII又はアネキシンII遺伝子の、相互作用因子への結合を測定することと、
(b)アネキシンII又はアネキシンII遺伝子を、種又は化合物と接触させることと、及び
(c)アネキシンII又はアネキシンII遺伝子の、前記相互作用因子への結合が前記種又は化合物によって影響を受けるかどうかを決定することと、を含む、アネキシンIIの生物活性、神経毒性ストレス及び/又は(アネキシンIIを通じての)アポトーシスを調節する種又は化合物を得るための非細胞ベースのプロセスを提供する。
【0138】
インビトロ系は、とりわけ過酸化水素、グルタミン酸塩、ドーパミン、Aβタンパク質又は任意の公知の神経毒による処理の結果として、神経毒性ストレスを引き起こすことによって誘導できる(理論に拘泥するものではない。)アポトーシス条件へ供されてもよい。さらに、このプロセスは、薬学的組成物を調製するために使用されてもよい。次に、前記プロセスは、前述のプロセスによって得られる種若しくは化合物又はその化学的類縁体若しくは相同体を、薬学的に許容される担体と混合することを含む。
【0139】
本発明によって提供されるスクリーニング実施形態の別の側面は、
(a)アネキシンII又はアネキシンII遺伝子と、及び
(b)アネキシンII又はアネキシンII遺伝子が相互作用する相互作用因子と、
(c)アネキシンII又はアネキシンII遺伝子と相互作用因子との相互作用を測定するための手段と、
(d)アネキシンII又はアネキシンII遺伝子の前記相互作用因子への結合が種又は化合物によって影響を受けるかどうかを決定する手段とを含む、アネキシンII又はアネキシンII遺伝子の生物活性、神経毒性ストレス及び/又はアポトーシスを、細胞中で調節する種又は化合物を得るためのキットである。
【0140】
分子間の相互作用を測定し、該相互作用の強度、親和性、結合活性及び他の因子を決定する手段は、本分野で周知である(例えば、Lubert Stryer、Biochemistry、W.H.Freeman & Co、第5版(2002年4月刊行)、及びPergamon Pressによって刊行された様々な著者及び編者による「Comprehensive Medicinal Chemistry」を参照されたい。)。
【0141】
本発明のさらなる実施形態は、配列番号1に含まれる配列又はその断片若しくは相同体に対応するRNAに対する、又は該配列の一つが部分である遺伝子の発現産物に対するアッセイを含む、神経毒性ストレス及び/又は卒中及び/又は癌へ供された細胞を診断するための方法又はプロセスに関し、正常対照と比較したときの前記RNA又は発現産物の上方制御に関する知見は、このような細胞が神経毒性ストレス及び/又は脳卒中へ供された可能性を示唆し、さらに、正常対照と比較したときの前記RNA又は発現産物の下方制御に関する知見は、このような細胞が癌へ供されたか又は癌性になった可能性を示唆する。
【0142】
本発明は、さらに、対照と比較したときの、対象におけるアネキシンII(例えば、イムノアッセイにおいてアネキシンIIを検出することによって)又はアネキシンII遺伝子(例えば、アネキシンIIをコードするmRNAを検出することによって)の発現レベルの調節を検出することを含む、前記対象において神経変性疾患を診断するための方法又はプロセスを提供する。一実施形態では、対象において、診断されている対象は卒中に罹患したことが疑われる。
【0143】
本発明の別の実施形態は、対照と比較したときの、対象におけるアネキシンポリペプチドの発現レベルの調節を検出することを含む、前記対象において神経変性疾患を診断するための方法又はプロセスに関し、前記発現の調節は前記対象における神経変性疾患の可能性を示唆し、実際、本発明の診断方法は、卒中を患っていると疑われる対象に関して実施してもよい。
【0144】
前記ポリペプチドの発現レベルは、(図1に記載されるもの、又はその断片若しくは相同体などの)前記アネキシンポリペプチドをコードするmRNAに対してアッセイすることによって、又は前記ポリペプチドを検出する抗体を使用するイムノアッセイの方法によって評価できる。mRNA及びイムノアッセイの両検出は、本分野で周知の方法によって実施できる。アネキシンIIポリペプチドのレベルの測定は、免疫組織化学(Microscopy,Immunohistochemistry and Antigen Retrieval Methods: For Light and Electron Microscopy, M.A.Hayat(Author),Kluwer Academic Publishers, 2002; Brown C.“Antigen retrievalmethods for immunohistochemistry”,Toxicol Pathol 1998; 26(6): 830-831),western blotting(Laemmeli UK:「Cleavage of structural proteins during the assembley of the head of a bacteriophage T4」,Nature 1970; 227: 680-685; Egger & Bienz“Protein(western) blotting”,Mol Biotechnol 1994; 1(3): 289-305),ELISA(Onoratoet al.,“Immunohistochemical and ELISA assays for biomarkers of oxidative stress in aging and disease”,Ann NY Acad Sci 1998, 20; 854: 277-290),antibody microarray hybridization(Huang, “detection of multiple proteins in an antibody-based protein microarray system, Immunol Methods 2001 1; 255(1-2):1-13) and targeted molecula
r imaging(Thomas, Targeted Molecular Imaging in Oncology, Kim et al(Eds)., Springer Verlag, 2001)からなる群から選択される方法によって決定される。
【0145】
アネキシンIIポリヌクレオチドのレベルの測定は、RT−PCR分析、切片上ハイブリッド形成法(“Introduction to Fluorescence In Situ Hybridization: Principles and Clinical Applications”, Andreeff & Pinkel(Editors), John Wiley & Sons Inc., 1999), polynucleotide microarray and Northern blotting(Trayhurn, “Northern blotting”, Proc Nutr Soc 1996; 55(1B): 583-9; Shifman & Stein, ”A reliable and sensitive method for non-radioactive Northern blot analysis of nerve growth factor mRNA from brain tissues“, Journal of Neuroscience Methods 1995; 59: 205-208)から選択される方法によって決定される。この診断方法は、とりわけ脳卒中を経験したと疑われる患者を診断するために有用であるかもしれない。
【0146】
タンパク質発現の文脈において「異常である」とは、対照と比較したときの前記ポリペプチドの発現レベルが少なくとも10%異なることを意味する。
【0147】
さらに、本発明は、アネキシンIIの生物活性を調節する薬学的組成物の治療的有効量を、対象に投与することを含む、前記対象において腫瘍又は自己免疫疾患を治療する方法又はプロセスを提供する。
【0148】
さらに、本発明は、アネキシンIIの生物活性を阻害する薬学的組成物の治療的有効量を対象に投与することを含む、前記対象において神経変性疾患を治療する方法又はプロセスを提供する。
【0149】
本発明はさらに、医薬品の調製におけるアネキシンII調節因子の使用について提供し、該医薬品は神経変性疾患の治療に使用されてもよい。
【0150】
本発明の別の実施形態は、図3又は図4に記載の配列のうちのいずれか1つを有する連続したヌクレオチド、すなわち配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6若しくは該配列のいずれか1つと又は表1ないし表3、特に表1に開示されたsiRNA配列のいずれかと少なくとも70%相同性のある配列と、該ポリヌクレオチドのいずれか1つを含むベクターとを含む、実質的に精製されたポリヌクレオチドを提供する。該ベクターは、遺伝子療法又は遺伝子ターゲティングの目標とされる特異的な種類に属してもよい。
【0151】
本発明の別の側面は、アポトーシスを亢進させるアネキシンIIの能力についてのアネキシンIIの使用に関する。この側面において、本発明は、すべて個別に又は組み合わせて、アネキシンII又はアネキシンIIcDNAを含む化合物の治療的有効量又はアネキシンIIcDNA若しくはポリペプチドを刺激する化合物の治療的有効量を対象に投与することによって、前記対象における腫瘍又は自己免疫疾患を治療する方法又はプロセスを提供する。この側面において、本発明はさらに、腫瘍又は自己免疫疾患に罹患している患者において回復を促進又は亢進させるための医薬品の調製のための、アネキシンII又はアネキシンIIcDNAを含むベクターの使用を提供する。
【0152】
改善された治療特性を有するようにするために、本発明において使用されるべきポリヌクレオチドは全て、修飾を施してもよいことが注目されるであろう。ポリヌクレオチドの治療特性を改善するために、ヌクレオチドの修飾又は類縁体を導入することが可能である。改善される特性には、ヌクレアーゼ耐性の増加及び/又は細胞膜を透過する能力の増加が含まれる。必要とされる場合、使用及び送達の方法に必要とされるASポリヌクレオチド、siRNA、cDNA及び/又はリボザイムの生物活性を干渉しない、本分野で公知の任意の方法によって、ヌクレアーゼ耐性が提供される(Iyer et al., 1990; Eckstein, 1985; Spitzer and Eckstein, 1988; Woolf et al., 1990; Shaw et al., 1991)。ヌクレアーゼ耐性を増加させるためにオリゴヌクレオチドに対して施すことができる修飾には、リン酸塩主鎖中のリン又は酸素の複素原子を修飾することが含まれる。これらには、リン酸メチル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート及びモルフォリノオリゴマーを調製することが含まれる。ある実施形態において、それは、4個ないし6個の3’末端ヌクレオチド塩基間を結合するホスホロチオエート結合を有することによって提供される。あるいは、ホスホロチオエート結合はすべてのヌクレオチド塩基を結合する。生物活性が保持されるが、ヌクレアーゼに対する安定性が実質的に増加する場合には、本分野で公知の他の修飾を使用してもよい。
【0153】
ポリペプチドの機能に対して実質的に影響を与えない、ポリヌクレオチドの全ての類縁体又はポリヌクレオチドに対する全ての修飾を、本発明とともに使用してもよい。前記ヌクレオチドは、自然に存在するか又は合成的に修飾される塩基から選択できる。自然に存在する塩基には、アデニン、グアニン、シトシン、チミン及びウラシルが含まれる。ヌクレオチドの修飾された塩基には、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル、2−ピロピル及び他のアルキルアデニン、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、6−アザシトシン及び6−アザチミン、偽性ウラシル、4−チオウラシル、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオールアルキルアデニン、8−ヒドロキシルアデニン及び他の8置換されたアデニン、8−ハログアニン、8−アミノグアニン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルグアニン、8−ヒドロキシルグアニン及び他の置換されたグアニン、他のアザアデニン及びデアザアデニン、他のアザグアニン及びデアザグアニン、5−トリフルオロメチルウラシル及び5−トリフルオロシトシンが含まれる。
【0154】
さらに、ヌクレオチドの構造が基本的に変化され、治療剤又は実験用試薬としてさらに適しているポリヌクレオチドの類縁体を調製できる。ヌクレオチド類縁体の例は、DNA(又はRNA)におけるデオキシリボース(又はリボース)リン酸塩主鎖がペプチドに見られるものと同様であるポリアミド主鎖と置換される場合、ペプチド核酸(PNA)である。PNA類縁体は、酵素による分解に耐性があり、生体内又はインビトロで寿命が延長されることが示されてきた。さらに、PNAは、相補的なDNA配列に対してDNA分子よりも強く結合することが示されてきた。この知見は、前記PNA鎖と前記DNA鎖との間に電荷反発がないことに起因する。オリゴヌクレオチドに対してできる他の修飾には、ポリマー主鎖、環式主鎖、又は非環式主鎖が含まれる。
【0155】
本発明で採用されるポリペプチドは又、それらの治療活性を改善するために修飾され、必要に応じて化学的に修飾されてもよい。前記ポリペプチドに関する場合、「化学的に修飾される」は、そのアミノ酸残基の少なくとも1つがプロセッシングまたは他の翻訳後修飾などの自然なプロセスか、又は本分野で周知の化学的修飾技術のいずれかによって修飾される場合のポリペプチドを意味する。多くの公知の修飾のうち、典型的であるが、これらに限定されない例には、アセチル化、アシル化、アミド化、ADPリボシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、脂質又は脂質誘導体の共有結合、メチル化、ミリスチル化、ペグ化、プレニル化、リン酸化、ユビキチン化、又はいずれかの同様のプロセスが含まれる。(核酸配列変化から生じるものなどの)さらなる可能なポリペプチド修飾には以下のものが含まれる。
【0156】
「保存的な置換」は、あるクラスのアミノ酸の、前記同一クラスのアミノ酸による置換を指し、クラスは、共通の物理化学的アミノ酸側鎖特性及び本来見られる相同性ポリペプチドにおける高頻度置換によって定義され、それは例えば、標準的なデイホフ頻度交換マトリクス又はBLOSUMマトリクスによって決定される。アミノ酸側鎖の6つの一般的なクラスは類別されており、それには以下のものが含まれる。すなわち、クラスI(Cys)、クラスII(Ser、Thr、Pro、Ala、Gly)、クラスIII(Asn、Asp、Gln、Glu)、クラスIV(His、Arg、Lys)、クラス(Ile、Leu、Val、Met)、及びクラスVI(Phe、Tyr、Trp)である。例えば、Aspの、Asn、Gln、又はGluなどの別のクラスIII残基への置換は保存的な置換である。
【0157】
「非保存的な置換」は、あるクラスにおけるアミノ酸の、別のクラス由来のアミノ酸との置換を指し、例えば、クラスII残基であるAlaの、Asp、Asn、Glu、又はGlnなどのクラスIII残基との置換がある。
【0158】
「欠失」は、1つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸残基がそれぞれ欠失するヌクレオチド配列又はアミノ酸配列のいずれかにおける変化である。
【0159】
「挿入」又は「付加」は、自然発生する配列と比較したとき、1つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸残基の付加をそれぞれ生じるヌクレオチド配列又はアミノ酸配列における変化である。
【0160】
「置換」は、異別のヌクレオチド又はアミノ酸による、それぞれ1つ以上のヌクレオチド又はアミノ酸の置換を指す。アミノ酸配列に関して、前記置換は保存的であってもよいか又は非保存的であってもよい。
【0161】
本発明のさらなる実施形態において、アネキシンIIポリペプチド又はポリヌクレオチドは、対象における黄斑変性症を診断又は検出するのに使用されてもよい。検出方法は、対象由来の試料におけるアネキシンIImRNA又はアネキシンIIポリペプチドについてのアッセイを典型的に含むであろう。
【0162】
「検出」は、疾病の検出の方法を指す。この用語は、疾病に対する素因の検出又は前記疾病の重度の検出を指してもよい。
【0163】
本発明において利用される「相同体/相同性」が意味するものは、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約75%の相同性であり、有利には少なくとも約80%の相同性、より有利には少なくとも約90%の相同性、さらにより有利には少なくとも約95%であり、例えば、少なくとも約97%、約98%、約99%又は約100%の相同性でさえある。本発明は、これらのポリヌクレオチド及びポリペプチドが本明細書又は前述のポリヌクレオチド及びポリペプチドと同一の形式で使用できることも包含する。
【0164】
あるいは又はそれに加えて、配列に関する「相同性」は、2つの配列のうちの短いほうのヌクレオチド又はアミノ酸残基の数によって分割される同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基を有する位置の数を指すことができ、この場合、前記2つの配列の配列比較はWilbur及びLipmanアルゴリズム((1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80: 726)に従って決定でき、例えば、20ヌクレオチドのウィンドウサイズ、4ヌクレオチドの言語長、4つの間隙ペナルティを使用して、配列比較を含む配列データのコンピュータ支援分析及び解釈は商業上入手可能なプログラム(例、Intelligenetics(R)Suite,Intelligenetics社,CA)を使用して簡便に実施できる。RNA配列がDNA配列と配列同一性又は相同性の程度と同様であるか又は前記程度を有するといわれるとき、前記DNA配列中のチミジン(T)は前記RNA配列中のウラシル(U)と等しいと考慮される。本発明の範囲内のRNA配列は、前記DNA配列中のチミジン(T)をウラシル(U)と置換することによって、DNA配列又はその補体から生じうる。
【0165】
それに加えて又はそれに替わるものとして、アミノ酸配列類似性又は相同性は、例えばNCBIで利用可能なBlastPプログラム(Altschulほか、Nucl.Acids Res.25:3389−3402)を使用して決定できる。以下の参考文献は、2つのポリペプチドのアミノ酸残基の相対的な同一性又は相同性を比較するためのアルゴリズムを提供し、それに加えて又はそれに替わるものとして、前述に関してこれらの参考文献における教示は%相同性を決定するのに使用できる。すなわち、Smithほか、(1981)Adv.Appl.Math.2:482-489; Smithほか、(1983) Nucl.Acids Res.11:2205-2220; Devereuxほか、(1984) Nucl. Acids Res.12:387-395; Fengほか、(1987) J.Molec.Evol.25:351-360; Higginsほか、(1989)CABIOS 5:151-153;及びThompsonほか、(1994) Nucl.Acids Res.22:4673-4680である。
【0166】
2つのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列に関して、「少なくともX%の相同性を有すること」は、前記配列が最適に整列されるとき、前記2つの配列における同一の残基の%を指す。したがって、90%のアミノ酸配列同一性は、2つ以上の最適に整列されるポリペプチド配列におけるアミノ酸の90%が同一であることを意味する。
【0167】
アポトーシス調節の脈絡において「調節する」という語の意味は、増大(促進、亢進)又は低下(防止、阻害)のいずれかである。
【0168】
本発明は、実例となる様式で記載されており、使用された用語法が制限よりもむしろ記述の言語の本質上において存在するよう企図されることは理解されるべきである。
【0169】
上記教示に照らして、本発明の多くの修飾及び改変が可能であることは明らかである。
【0170】
本願を通じて、米国特許を含むさまざまな刊行物が、著者及び発行年及び特許番号によって引用される。これらの刊行物及び特許及び特許出願の全開示内容は、本発明が属する分野の状態をより完全に記載するために、参照により、本願に組み込まれる。
【実施例】
【0171】
さらなる詳述がなくても、当業者は前述の記載を使用して本発明をその最大限まで利用できると考えられる。それゆえ、以下の好ましい具体的な実施形態は、前記請求された本発明を単に説明するものにすぎず、いかなる意味でも限定されることのないように解釈されるべきである。
【0172】
本分野で公知の標準的な分子生物学のプロトコールは、特段の記載がなければ、特にSambrookほか、Molecular Cloning: A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989, 1992)及びAusubelほか、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1988)に一般的に従う。
【0173】
本分野で公知の標準的な有機合成プロトコールは、特段の記載がなければ、特にOrganic syntheses: 第1巻ないし第79巻、編者不一、J.Wiley,New York(1941-2003)、Gewertほか、Organic synthesis workbook,Wiley-VCH,Weinheim(2000)、Smith & March、Advanced Organic Chemistry,Wiley-Interscience、第5版(2001)に一般的に従う。
【0174】
本分野で公知の標準的な医薬品化学的方法は、特段の記載がなければ、特にPergamon Pressによって刊行される著者及び編者不一の「Comprehensive Medicinal Chemistry」シリーズに一般的に従う。
【0175】
実施例1:
卒中現象に関与する遺伝子の同定−アネキシンII
新薬発見のための第一段階として、以下の方法に記載されているように、卒中発症に関与する主要な遺伝子を同定した。
【0176】
cDNAマイクロアレイ構築の概要
マイクロアレイを利用した差次的遺伝子発現によって、アネキシンIIをコードするポリヌクレオチドが見出され、インビボ及びインビトロモデルの両方によって評価した。
【0177】
cDNAマイクロアレイは、卒中特異的遺伝子が濃縮されたcDNAライブラリー(サブトラクションライブラリーを含む。)(表A)を組み合わせることによって、構築した。その結果、「卒中チップ」は、約10,000の低冗長性卒中特異的cDNAクローンが刻み込まれたマイクロアレイからなる。チップ上に印刷されたライブラリーは、表Aに記載されているとおりであった。
【表A】

各ライブラリーは、L及び番号によって表されている。SDラット中で中大脳動脈閉塞(MCAO)を行い、初代神経細胞は、ラット皮質の初代神経細胞である。正常酸素圧は、正常な酸素濃度を表す。
【0178】
FK506(タクロリムス)は、ストレプトミセス・ツクバエシス(Streptomyces tsukubaesis)によって産生される公知の免疫抑制剤である。FK506は、低酸素によって誘導される神経細胞の死を遅延又は抑制することによって、神経保護活性を有する。さらに、FK506は、損傷を受けた神経細胞の再増殖を引き起こすことができる。FK506の神経保護活性の基礎を成す具体的分子機序の多くは不明であるが、カルシニューリン及び酸化窒素合成酵素の活性の抑制並びに発作によって誘導される、セラミド及びFasシグナルの生成の抑制に関する示唆が存在する。本発明において、FK506は、虚血によって誘導される損傷によって制御されるのみならず、FK−506の添加によっても制御される遺伝子を特定するのに役立つ。
【0179】
発作チップ上に刻印されたライブラリーは、以下のように構築した。
【0180】
a)サブトラクティブライブラリー:虚血(卒中)モデルは、恒久的な中大脳動脈閉塞(MCAO)によって、SD及びSHRラット中に作製した。同じ系統の対照ラットは、シャム手術に供した(Sham)。各群のラットの半分に、0時間の時点で、FK506処理を与えた。サブトラクションライブラリーは、MCAOラット中で発現されているが、シャム手術されたラット(MCAO−Syam)中では発現されていない遺伝子、及びFK506で処理されたMCAOラットで発現されているが(FK506処置から3時間及び6時間後に採取)、MCAO処理されたラット中では発現されていない遺伝子([MCAO+FK506]−[MCAO])を含んでいた。発作チップ中に含まれている別のライブラリーは、7日齢ラットの仔の小脳から得られる初代神経細胞のインビトロ処理から得られた。この細胞を、16時間、低酸素状態(0.5% O)に供した。低酸素状態下の細胞及び正常酸素濃度(正常酸素)下の対照細胞を、0時間の時点で、FK506(100ng/mL)で処理し、16時間後にcDNAを抽出した。サブトラクションライブラリーは、低酸素状態でFK506処理された細胞中で発現されているが、正常酸素状態下でFK506処理された細胞中で発現されていないcDNA断片から作製された([低酸素状態+FK506−[正常酸素状態+FK506])。
【0181】
b)配列依存性遺伝子同定(SDGI)によって作製されたライブラリー。この技術は、本質的に、PCT出願PCT/US01/09392号に記載されているとおりである。SDGIライブラリーは、MCAOに供されたラット、FK506による処置から3時間及び6時間後のMCAOラット、並びにFK506による処置から3時間及び6時間後にシャム手術されたラットの脳組織から調製した。SDGIライブラリーは、インビトロ実験で、低酸素状態に16時間供された初代神経細胞から、及びFK506で前処理して、低酸素状態に16時間供された初代神経細胞からも調製した。
【0182】
このように、発作チップの調製において使用されるcDNAライブラリーは、上述のように調製されたので、サブトラクティブハイブリダイゼーション(SSH)及び/又は配列依存性遺伝子同定(SDGI)の何れかによって、発作中で差次的に発現されているcDNAが濃縮された。
【0183】
以下に記載されているように、発作チップは、ディファレンシャルハイブリダイゼーション実験に対して使用した。
【0184】
卒中チップへのハイブリダイゼーション
当該事象に応答して、遺伝子を活性化させ、又は抑制させ得る発達的、生理的、薬理学的又は他の合図となる事象に(この遺伝子発現アレイ技術は、例えば、米国特許第5,807,522号に開示されている。)、インビボ又はインビトロの細胞を供し、プローブを作製した。プローブの作製及びマイクロアレイチップの調査におけるそれらの使用は、例えば、米国特許第6,291,170号に記載されている。
【0185】
ハイブリダイゼーションは、以下に従って行った。
【0186】
発作チップ上でのハイブリダイゼーションに対して使用されるプローブは、以下の処置によって処理された動物の、対を成す4つの群を使用して調製した。
【0187】
1.MCAOに加えて、FK−506を与えられた動物を、1.5時間、3及び6時間で屠殺した。これらの動物の皮質を取り出し、プローブ作製のために使用した。
【0188】
2.MCAOに加えて、FK−506を与えられた動物を、1.5時間、3及び6時間で屠殺した。これらの動物の同側半球全体(手術された側)を取り出し、プローブ作製のために使用した。
【0189】
3.MCAOに加えて、ビヒクルを与えられた動物は、1.5、3、6、12、24及び48時間の時点で屠殺した。これらの動物の同側の皮質を取り出し、プローブ作製のために使用した。
【0190】
4.MCAOに加えて、FK−506を与えられた動物は、1.5、3、6、12、24及び48時間の時点で屠殺した。これらの動物の同側の皮質全体を取り出し、プローブ作製のために使用した。
【0191】
プローブを標識し、卒中チップにハイブリダイズさせた。
【0192】
これらのプローブに加えて、各ハイブリダイゼーションに、Cy3で標識された共通の対照プローブを添加した。共通の対照プローブは、SD4ラットの全脳から抽出されたポリA RNAの混合物であった。
【0193】
インシチュ分析のための組織の調製
シャム手術されたラットの脳及びMCAOに供された脳のパラフィンブロックから、冠状切片を調製した。
【0194】
c−fos及びp21など、卒中において影響を受けることが知られている対照遺伝子のハイブリダイゼーション、並びに微小管随伴タンパク質2(神経細胞の細胞体及び樹状突起を染色し、神経細胞の細胞骨格の完全性を示唆する。)GFAP(グリア繊維随伴タンパク質)(この染色は、星状膠細胞に対して特異的であり、ミエリン形成乏突起膠細胞に対しては特異的でなく、膠細胞細胞骨格の完全性を示唆する。)による切片の染色を用いて、モデルの特徴を決定した。これらのハイブリダイゼーションの結果は、以前に報告された結果と合致していた。このように、得られたパラフィンブロックがインシチュハイブリダイゼーション研究に対して適切であること、及び本研究に対して前記モデルが適切であることが実証された。
【0195】
結果の要約
発作チップのスクリーニングの結果、6時間のMCAOを行うと、アネキシンIIの発現が誘導されることが見出された。この誘導は、48時間に最大に達した(皮質−3.5倍、半球全体−5.5倍)。
【0196】
インシチュハイブリダイゼーション研究の結果は、上衣(ependimal)細胞及び髄膜上皮性細胞中で、アネキシンII遺伝子が恒常的に発現されていることを示唆する。MCAOは、アネキシンIIを発現している白血球及びマクロファージの蓄積をもたらす。アネキシンII発現の活性化は、神経細胞中には見出されなかった。
【0197】
実施例2:
一般的な方法
分子生物学における一般的な方法
本分野において公知であり、具体的に記載されていない標準的な分子生物学的技術は、概ね、「Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New York(1989, 1992), and in Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland(1989)」に従った。
【0198】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、概ね、「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications, Academic Press, San Diego, CA(1990)」に従って行った。他の核酸技術を伴う反応及び操作は、別段の記載がなければ、概ね、「Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press」及び米国特許第4,666,828号;第4,683,202号;第4,801,531号;第5,192,659 号及び第5,272,057号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている方法に従って行った。
【0199】
タンパク質の精製は、実施例6において、以下で記載されているとおりに行った。
【0200】
本発明のcDNAを含有するベクターは、当業者によって構築され、転写が必要であれば、配列の所望の転写を達成するために必要な全ての発現要素を含有することが可能である(さらに詳細な説明については、以下の具体的な方法を参照。)。異なる形態の核酸を回収するための機構など、他の有益な特徴もベクター内に含有させることが可能である。プラスミドとして、又はバクテリオファージベクターとして使用することが可能であるので、ファジミドは、このような有益なベクターの具体的な例である。他のベクターの例には、バクテリオファージ、バキュロウイルス及びレトロウイルスなどのウイルス、DNAウイルス、コスミド、プラスミド、リポソーム及び他の組換えベクターが含まれる。ベクターは、原核生物又は真核生物宿主系において使用するための要素をも含有することが可能である。何れの宿主系が特定のベクターに対して適合するかは、当業者に公知である。
【0201】
ベクターは、本分野において公知の様々な方法(リン酸カルシウムトランスフェクション;電気穿孔;リポフェクション;プロトプラスト融合;ポリブレントランスフェクション)のうち任意の一つによって、細胞又は組織中に導入される。宿主細胞は、ベクターで形質転換されることが可能であり、且つポリペプチドの産生を補助する任意の真核細胞及び原核細胞とすることが可能である。形質転換のための方法は、一般に、「Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New York(1992)」、「Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland(1989)」、「Chang et al., Somatic Gene Therapy, CRC Press, Ann Arbor,MI(1995)」、Vega et al., Gene Targeting, CRC Press, Ann Arbor, MI(1995)」及び「Gilboa, et al.(1986)」に記載されており、例えば、安定な又は一過性のトランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔及び組換えウイルスベクターによる感染が含まれる。さらに、中枢神経系を含むベクターについては米国特許第4,866,042号を参照し、また、陽性−陰性選択法については、米国特許第5,464,764号及び第5,487,992号を参照されたい。
【0202】
免疫学における一般的な方法
本分野において公知であり、具体的に記載されていない免疫学における標準的な方法は、概ね、「Stites et al.(eds), Basic and Clinical Immunology(8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT(1994)」及び「Mishell and Shiigi(eds), Selected Methods in Cellular Immunology, W.H. Freeman and Co., New York(1980)」に従った。
【0203】
イムノアッセイ
一般的に、ELISAは、標本を評価するために使用される好ましいイムノアッセイである。ELISAアッセイは、当業者に周知である。該アッセイでは、ポリクローナル及びモノクローナル抗体の両方を使用することが可能である。適宜、当業者に公知であるように、ラジオイムノアッセイ(RIA)などの他のイムノアッセイを使用することが可能である。利用可能なイムノアッセイは、特許及び科学的文献に詳しく記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号;第3,839,153号;第3,850,752号;第3,850,578号;第3,853,987号;第3,867,517号;第3,879,262号;第3,901,654号;第3,935,074号;第3,984,533号;第3,996,345号;第4,034,074号;第4,098,876号;第4,879,219号;第5,011,771号及び第5,281,521号並びに「Sambrook et al, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor, New York, 1989」を参照されたい。
【0204】
実施例3:
実験的な検証結果
検証のために、siRNAを使用した。siRNAを使用すれば、所望の特異的なmRNAのレベルを阻害又は抑制することが可能である。アネキシンの内在性mRNAレベルを減少させるために、表1でNo.5と表記されているsiRNAを使用した。
【0205】
アネキシンII遺伝子発現に対するsiRNAの効果
REF−52を形質移入された細胞中でのラットアネキシンII遺伝子発現に対するsiRNAの効果は、Real−Time−PCRによって測定した。GAPDHの発現は、基準(対照)遺伝子としての役割を果たす。
【表B】

明らかなように、siAnn−II−rB(図5に図示されているラットアネキシンIIsiRNAを含むベクター)は、ラットアネキシンIIの発現を82.8%減少させる。
【0206】
この効果は、ウェスタンブロット分析によっても検証された。siRNAベクターの形質移入後に、アネキシンIIタンパク質の発現は、大幅に減少する(市販のアネキシンII抗体(Santa Cruz)を用いて測定)。
【0207】
アネキシンII遺伝子を安定的に形質移入されたBe2C細胞中でのヒトアネキシンII遺伝子発現に対するsiRNAの効果は、Real−Time−PCRによって測定した。サイクロフィリンの発現は、基準(対照)遺伝子としての役割を果たす。
【表C】

明らかなように、siAnn−II−rB(図5に図示されているヒトアネキシンIIsiRNAを含むベクター)は、ラットアネキシンIIの発現を76%減少させる。
【0208】
この効果は、ウェスタンブロット分析によっても検証された。siRNAベクター(vactor)の形質移入後に、アネキシンIIタンパク質の発現は、大幅に減少する(市販のアネキシンII抗体(Santa Cruz)を用いて測定)。
【0209】
アポトーシスに対するアネキシンII活性の重要性の機能喪失(LOF;Loss−of−function)検証
a)インビボLOFの結果
本明細書に開示されているsiRNAのインビボ送達及びMCAO実験(実施例9参照)を行った。
【0210】
siRNA処理された脳組織中でのアネキシンII発現の測定:
脳皮質及び線条体から、RNA試料を調製し、それぞれ、アガロースゲル分析及び光学密度測定によって、品質と量を評価した。
【0211】
逆転写酵素反応を行い、cDNA産物を定量的PCR(Real−Time)に供した
脳の各領域(皮質、線条体)について、4つの独立した定量的PCR実験(計29試料)を行った。内部対照としてGAPDHを使用し、アネキシン−IIと平行して検査した。
【表D】

結論
1.MCAO操作の後、アネキシン−II遺伝子の発現は、10ないし30倍増加する。例えば、LUCを注入された正常ラット(対照)では、アネキシン−II発現のレベルは、LUCを注入されたMCAOラットでの14.84に比べて0.393である。
【0212】
2.siRNAを注入されたラットでは、アネキシン−II遺伝子発現の顕著な減少が達成された。LUCを注入されたMCAOラットでは、アネキシン−II発現のレベルは、Ann−IIを注入されたMCAOラットでの5.62に比べて14.84であった。LUCを大量投与されたMCAOラットでは、アネキシンII発現のレベルは、Ann−IIを注入されたMCAOラットでの8.75に比べて16.46であった。
【0213】
3.siRNAの効果は、皮質では観察されたが、線条体では観察されなかった。可能な説明:
i.siRNAは、線条体に比べて皮質へ、より効率的に到達した。
【0214】
ii.MCAO操作は、(皮質とは反対に)線条体中でアネキシンの発現を上昇させない。
【0215】
iii.線条体中のアネキシンの基底レベルは極めて低いので、siRNA活性を測定することは困難である。
【0216】
b)インビトロLOF
分化を誘導するために、30μMのレチノイン酸で、ヒトアネキシンIIsiRNAを発現した安定なBe2C細胞を処理した。6日後、細胞は完全に分化し、ドーパミン及び低酸素処理に供された。細胞の生存性は、XTTアッセイ(代謝的に活性な細胞が、テトラゾリウム塩XTTを還元して、ホルマザンの橙色化合物とする能力に基づいた、細胞増殖アッセイ)を用いて調べた。色素の強度は、代謝的に活性な(「生きた」)細胞の数に比例する。(Hansen et al,(1989), J. Immunol. Meth. 119, 203−210))。図6に示されている結果は、独立した4つの実験の要約である。
【0217】
図6から明らかなように、アネキシンIIsiRNAは、低酸素状態及びドーパミンによって媒介される細胞死から、Be2C細胞を保護する。
【0218】
実施例4:
siRNAの調製
独自のアルゴリズムと遺伝子アネキシンIIの公知配列(配列番号1)を用いて、多くのsiRNA候補の配列を作製した。上記仕様に従うsiRNA分子は、本質的に、本明細書に記載されているとおりに調製した。
【0219】
本発明のsiRNAは、リボ核酸(又はデオキシリボ核酸)オリゴヌクレオチドの合成に関して本分野で周知である任意の方法によって合成することが可能である。例えば、(特に、Applied Biosystemsから入手可能な)市販の機械を使用することが可能である。オリゴヌクレオチドは、本明細書に開示されている配列に従って調製される。化学的に合成された断片の重複する対は、本分野で周知の方法を用いて連結することが可能である(例えば、米国特許第6,121,426号参照)。鎖は別個に合成され、次いで、管内で互いにアニールさせる。次いで、(例えば、一方が過剰であるために)アニールされなかった一本鎖オリゴヌクレオチドから、HPLCによって二本鎖siRNAを分離する。siRNA又は本発明のsiRNA断片に関連して、2以上のこのような配列を合成し、本発明において使用するために一緒に連結することが可能である。
【0220】
本発明のsiRNA分子は、本分野で公知の手法、例えば、「Usman et al., 1987, J. Am. Chem. Soc., 109, 7845 ;Scaringe et al., 1990, Nucleic Acids Res., 18, 5433 ; Wincott et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23, 2677-2684 ;and Wincott et al., 1997, Methods Mol. Bio., 74, 59,」に記載された手法によって合成してもよく、5’末端のジメトキシトリチル及び3’末端のホスホルアミダイトなどの共通の核酸保護基及びカップリング基を使用してもよい。修飾された(例えば、2’−O−メチル化された)ヌクレオチド及び修飾されていないヌクレオチドが、所望に応じて取り込まれる。
【0221】
あるいは、本発明の核酸分子は、別個に合成し、例えば、合成及び/又は脱保護の後、連結によって(Moore et al., 1992, Science 256, 9923 ;Draper et al., International PCT publication No. WO93/23569 ;Shabarova et al., 1991, Nucleic Acids Research 19, 4247 ;Bellon et al., 1997, Nucleosides & Nucleotides, 16, 951 ;Bellon et al., 1997, Bioconjugate Chem. 8, 204)、又はハイブリダイゼーションによって、合成後一緒に連結することが可能である。本発明のsiRNA分子は、米国特許出願公開US2004/0019001(McSwiggen)に記載されているように、タンデム合成法を用いて合成することも可能であり、この方法では、ハイブリダイズし、siRNA二重鎖の精製を可能とする分離したsiRNA断片又は鎖を与えるために後に切断される切断可能なリンカーによって分離された単一の連続オリゴヌクレオチド断片又は鎖として、両siRNA鎖が合成される。リンカーは、ポリヌクレオチドリンカー又は非ヌクレオチドリンカーとすることが可能である。さらなる情報については、PCT公開第WO2004/015107号(atugen)を参照されたい。
【0222】
上述されているように、表1のsiRNA(以下)は、交互の糖が2’−O−メチル修飾を有するように、すなわち、交互のヌクレオチドがこのようにして修飾されるように構築された。これらの好ましい実施形態では、siRNAの一つの鎖中で、修飾されたヌクレオチドは番号1、3、5、7、9、11、13、15、17及び19であり、反対鎖中では、修飾されたヌクレオチドでは、番号2、4、6、8、10、12、14、16及び18であった。このように、これらのsiRNAは、上述のように、交互の2−O’−メチル修飾を有する、平滑末端の19マーRNA分子である。表2及び3(以下)のsiRNAも、このようにして構築される。表2のsiRNAは、交互の2−O’−メチル修飾を有する、平滑末端の19マーRNA分子である。表3のsiRNAは、交互の2−O’−メチル修飾を有する、平滑末端の21マーRNA分子である。
【0223】
表1は、生成され、続いて合成された、遺伝子アネキシンIIに対する様々な新規siRNA分子を詳しく記している。これらのsiRNAの幾つかを調べた。さらなる詳細については、実施例3を参照されたい。さらなるsiRNAも、例えば、検査すべき特異的な新規siRNAでHeLa又はHacat細胞を形質移入することによって調べることが可能である。次いで、アネキシンIIポリペプチドの発現は、アネキシンIIポリペプチドに対する抗体を用いたウェスタンブロッティングによって測定することが可能である。本明細書に開示されているsiRNA分子の任意の一つ、特に表1に詳述されている活性分子が新規であり、本発明の一部と考えられる。
【0224】
下表1では、siRNA1−5のセンス鎖は、それぞれ配列番号7−11を有し、siRNA 1−5のアンチセンス鎖は、それぞれ配列番号12−16を有する。下表2では、siRNA6−107のセンス鎖は、それぞれ配列番号17−118を有し、siRNA 6−107のアンチセンス鎖は、それぞれ配列番号119−220を有する。下表3では、siRNA108−181のセンス鎖は、それぞれ配列番号221−294を有し、siRNA 108−181のアンチセンス鎖は、それぞれ配列番号295−368を有する。
【表1】

【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

実施例5:
抗アネキシンII抗体の調製
アネキシンIIに結合する抗体は、完全な状態のポリペプチド又はこれより小さなポリペプチドを含有する断片を、免疫抗原として用いて調製してもよい。例えば、アネキシンIIのN末端若しくはC末端又はアネキシンIIの他の任意の適切なドメインに特異的に結合する抗体を産生することが望ましいかもしれない。動物を免疫するために使用されるポリペプチドは、翻訳されたcDNA又は化学合成から得ることが可能であり、所望であれば、担体タンパク質に抱合することができる。ポリペプチドに化学的に結合されるこのような一般的に使用される担体は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、サイログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)及び破傷風トキソイドが含まれる。次いで、動物を免疫するために、結合されたポリペプチドを使用する。
【0225】
所望であれば、ポリクローナル又はモノクローナル抗体は、例えば、それに対する抗体を産生すべきポリペプチド又はペプチドが結合されたマトリックスに結合し、及び該マトリックスから溶出することによってさらに精製することが可能である。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の精製及び/又は濃縮のための、免疫学において一般的な様々な技術が、当業者に公知である(Coligan et al, Unit 9, Current Protocols in Immunology, Wiley Interscience, 1994)。
【0226】
あらゆる種類の抗体(断片を含む。)を作製する方法が、本分野において公知である(例えば、「Harlow and Lane, Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1988)」を参照)。適切なアジュバント中で免疫原を調製し、抗体結合を測定し、抗体を単離する全ての必要な工程を含む免疫化の方法、モノクローナル抗体を取得する方法、及びモノクローナル抗体のヒト化は全て、当業者に公知である。
【0227】
抗体は、ヒト化抗体又はヒト抗体であってもよい。抗体は、CDR移植(EP239,400:PCT公開WO91/09967;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号及び第5,585,089号)ベニアリング又はリサーフェシング(EP 592,106 ;EP 519,596 ;Padlan, Molecular Immunology 28(4/5):489-498(1991) ;Studnicka et al., Protein Engineering 7(6):805-814(1994) ;Roguska et al., PNAS 91:969-973(1994))及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)など、本分野で公知の様々な技術を用いてヒト化することが可能である。
【0228】
上記モノクローナル抗体には、1つの種(マウス、ウサギ、ヤギ、ラット、ヒトなど)から得られた抗体並びにキメラ抗体及びヒト化抗体など、2(以上の)種から得られた抗体が含まれる。
【0229】
完全なヒト抗体は、ヒト患者の治療的処置のために特に望ましい。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列から得られた抗体ライブラリーを用いて、ファージディスプレイ法を含む本分野で公知の様々な方法によって作製することが可能である。米国特許第4,444,887号及び第4,716,111号;並びにPCT公開WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735及びWO 91/10741も参照されたい(各々は、その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)。
【0230】
ヒト化抗体、ヒト抗体及び抗体断片を含む、あらゆる種類の抗体に関するさらなる情報は、WO01/05998号に見出すことが可能である(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)。
【0231】
実施例6:
ポリペプチドの調製
ポリペプチドは、幾つかの方法を用いて、作製してもよい。例えば、
1)合成的に:
アネキシンIIの公知配列を使用し、市販の機械を用いて、合成ポリペプチドを作製することが可能である。
【0232】
2)組換え法:
アネキシンIIポリペプチドを作製する好ましい方法は、アネキシンII遺伝子のcDNAを含むポリペプチドを、発現ベクターベクター中にクローニングし、コードされたポリペプチドを発現するために該ベクターを有する細胞を培養し、次いで、得られたポリペプチドを精製することであり、全て、例えば、「Marshak et al., “Strategies for Protein Purification and Characterization A laboratory course manual.” CSHL Press(1996)(さらに、Bibl Haematol. 1965;23:1165-74 Appl Microbiol. 1967 Jul;15(4):851-6 ;Can J Biochem. 1968 May;46(5):441-4 ;Biochemistry. 1968 Jul;7(7):2574-80 ;Arch Biochem Biophys. 1968 Sep 10;126(3):746-72 ;Biochem Biophys Res Commun. 1970 Feb 20;38(4):825-30)を参照。」に記載されているように、本分野で公知の方法を用いて実施される。
【0233】
発現ベクターは、異種物質の転写を制御するためのプロモーターを含むことが可能であり、選択的な転写を可能とするために、構成的又は誘導性プロモーターの何れかとであることが可能である。必要な転写レベルを得るために必要とされ得るエンハンサーを、必要に応じて、含めることが可能である。発現ビヒクルは、選択遺伝子を含むことも可能である。
【0234】
ベクターは、本分野において公知の様々な方法のうち任意の一つによって、細胞又は組織中に導入することが可能である。このような方法は、一般に、「Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New York(1989, 1992)」、「Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland(1989), Vega et al., Gene Targeting, CRC Press, Ann Arbor, MI(1995), Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses, Butterworths, Boston MA(1988) and Gilboa et al.(1986)」に記載されている。
【0235】
3)天然源からの精製:
アネキシンIIは、例えば、抗アネキシンII抗体を用いた免疫沈降、又はアネキシンIIを結合することが知られた任意の物質を用いたマトリックス結合アフィニティークロマトグラフィーなど、当業者に公知の多くの方法を用いて、(組織等の)天然源から精製することが可能である。
【0236】
タンパク質精製は、例えば、「Marshak et al., “Strategies for Protein Purification and Characterization. A laboratory course manual.” CSHL Press(1996)」に記載されているとおり、本分野で公知であるように実施される。
【0237】
実施例7:
ポリヌクレオチドの調製
本発明のポリヌクレオチドは、リボ核酸又はデオキシリボ核酸オリゴヌクレオチドの合成に関して本分野で周知である任意の方法によって合成することが可能である。このような合成は、とりわけ、「Beaucage S.L. and Iyer R.P., Tetrahedron 1992 ;48:2223-2311, Beaucage S.L. and Iyer R.P., Tetrahedron 1993 ;49:6123-6194」及び「Caruthers M.H. et. al., Methods Enzymol. 1987 ;154:287-313」に記載されており、チオアートの合成は、とりわけ「Eckstein F., Annu. Rev. Biochem. 1985 ;54:367-402」に記載されており、RNA分子の合成は、「Sproat B., in Humana Press 2005 Edited by Herdewijn P. ;Kap. 2:17-31」に記載されており、それぞれの下流フ゜ロセスは、とりわけ、「Pingoud A. et. al., in IRL Press 1989 Edited by Oliver R.W.A. ;Kap. 7:183-208」及び「Sproat B., in Humana Press 2005 Edited by Herdewijn P. ;Kap. 2:17-31(上記)」に記載されている。
【0238】
他の合成手順は、本分野において公知であり(例えば、Usman et al., 1987, J. Am. Chem. Soc., 109, 7845 ;Scaringe et al., 1990, Nucleic Acids Res., 18, 5433 ;Wincott et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23, 2677-2684 ;及びWincott et al., 1997, Methods Mol. Bio., 74, 59に記載されている手順)、これらの手順は、5’末端のジメトキシトリチル及び3’末端のホスホルアミダイトなどの、一般的な核酸保護基及びカップリング基を使用してもよい。修飾された(例えば、2’−O−メチル化された)ヌクレオチド及び修飾されていないヌクレオチドが、所望に応じて取り込まれる。
【0239】
本発明のオリゴヌクレオチドは、別個に合成し、例えば、合成及び/又は脱保護の後、連結によって(Moore et al., 1992, Science 256, 9923 ;Draper et al., International PCT publication No. WO93/23569 ;Shabarova et al., 1991, Nucleic Acids Research 19, 4247 ;Bellon et al., 1997, Nucleosides & Nucleotides, 16, 951 ;Bellon et al., 1997, Bioconjugate Chem. 8, 204)、又はハイブリダイゼーションによって合成後に一緒に連結することが可能である。
【0240】
(特に、Applied Biosystemsから入手可能な)市販の機械を使用することが可能である。オリゴヌクレオチドは、本明細書に開示されている配列に従って調製されることが注目される。化学的に合成された断片の重複する対は、本分野で周知の方法を用いて連結することが可能である(例えば、米国特許第6,121,426号参照)。鎖は別個に合成され、次いで、管内で互いにアニールされる。次いで、HPLCによって、(例えば、一方が過剰であるために)アニールされなかった一本鎖オリゴヌクレオチドから二本鎖siRNAを分離する。本発明のsiRNA又はsiRNA断片に関連して、2以上のこのような配列を合成し、本発明において使用するために一緒に連結することが可能である。
【0241】
本発明の化合物は、米国特許出願公開US2004/0019001(McSwiggen)に記載されているように、タンデム合成法を用いて合成することも可能であり、この方法では、ハイブリダイズし、siRNA二重鎖の精製を可能とする分離したsiRNA断片又は鎖を与えるために後に切断される切断可能なリンカーによって分離された単一の連続オリゴヌクレオチド断片又は鎖として、siRNA鎖が合成される。リンカーは、ポリヌクレオチドリンカー又は非ヌクレオチドリンカーとすることが可能である。
【0242】
ポリヌクレオチドを単離する別の手段は、その配列に基づいて、天然のDNA断片又は人工的に設計されたDNA断片を取得することである。このDNA断片は、当業者に周知である適切な標識系を用いることによって標識される。例えば、Davisら(1986)を参照されたい。次いで、本分野で周知の方法を用いてλファージcDNAライブラリー又はプラスミドcDNAライブラリをスクリーニングするためのプローブとして、断片を使用する。一般的には、「Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York(1989), in Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland(1989)」を参照されたい。
【0243】
cDNAプローブに関連するクローンを含有するコロニーを同定することが可能であり、これらのクローンは、公知の方法によって精製することが可能である。次いで、完全長配列を同定するために、新たに精製されたクローンの末端の配列を決定する。完全長クローンの完全な配列決定は、酵素的消化又はプリマーウォーキングによって行われる。類似のスクリーニング及びクローン選択アプローチは、ゲノムDNAライブラリーから得られるクローンに適用することが可能である。
【0244】
本明細書に開示されているポリヌクレオチドは、特に診断作業用プローブとして使用することが可能である。本明細書に開示されているポリヌクレオチドは、卒中、神経毒性ストレス又はTBIを受けており、それによって、前記ポリヌクレオチド配列が過剰発現されており、このため、高レベルのmRNA遺伝子転写物が存在する細胞を診断するために使用することが可能である。さらに、本明細書に開示されているポリヌクレオチドは、癌の形質転換を受けている細胞を診断するために使用することが可能であり、この場合には、先述したポリヌクレオチドは過少発現されているであろう(且つ、そのレベルは、診断のために、正常対象中のレベルに対して比較することが可能である)。
【0245】
実施例8:
薬理学及び薬物送達
本発明の化合物又は薬学的組成物は、各患者の臨床症状、治療すべき疾病、投与の部位及び方法、投与のスケジュール、患者の年齢、性別、体重並びに医療従事者に公知の他の要素を考慮に入れながら、良質の医療のための原則に従って、投与及び投薬される。
【0246】
このように、本明細書において薬学的に「有効な量」は、本分野において公知であるこのような検討事項によって決定される。量は、改善された生存率若しくはより迅速な回復、又は症候の改善若しくは消去などの改善(これらに限定されない。)を達成するのに有効でなければならず、当業者によって、適切な措置として、その他の指標が選択される。
【0247】
治療は、一般的には、疾病過程の長さ及び薬物の有効性及び治療されている患者の種に比例した長さを有する。ヒトは、本明細書に例示されているマウス又はその他の実験動物より一般的に長く治療される。
【0248】
本発明の化合物は、投与の慣用的経路の何れかによって投与することが可能である。前記化合物は、化合物として、又は薬学的に許容される塩として投与することが可能であり、単独で、又は、薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント及びビヒクルと組み合わせた活性成分として投与することが可能であることに留意すべきである。化合物は、経口、皮下又は非経口的に(静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内及び鼻内投与並びに髄腔内及び注入技術を含む。)投与することが可能である。化合物のインプラントも有用である。液体形態は、注射用に調製してもよく、本用語は、皮下、経皮、静脈内、筋肉内、髄腔内及びその他の非経口投与経路を含む。液体組成物には、有機共溶媒を含む及び含まない水溶液、水性又は油性懸濁液、食用油を有するエマルジョン並びに類似の薬学的ビヒクルが含まれる。さらに、ある種の状況下では、本発明の新規治療において使用するための組成物は、鼻内及び類似の投与のために、エアロゾルとして形成されてもよい。治療されている患者は、温血動物、及び、特に、ヒトを含む哺乳動物である。薬学的に許容される担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント及びビヒクル並びにインプラント担体は、一般的には、本発明の活性成分と反応しない、不活性な無毒の固体又は液体充填剤、希釈剤又は封入材料を表す。
【0249】
本発明の化合物を非経口的に投与する場合には、本発明の化合物は、単位投薬注射可能形態(溶液、懸濁液、エマルジョン)で一般に調合される。注射に適した薬学的製剤には、無菌水性溶液又は分散液及び無菌注射可能溶液又は分散液中に再構成するための無菌粉末が含まれる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散溶媒とすることが可能である。
【0250】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合に必要とされる粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することが可能である。綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、トウモロコシ油、ヒマワリ油又はピーナッツ油及びミリスチン酸イソプロピルなどのエステルのような非水性ビヒクルも、化合物組成物のための溶媒系として使用することが可能である。さらに、抗微生物防腐剤、抗酸化剤、キレート剤及び緩衝剤など、組成物の安定性、無菌性及び等張性を増強する様々な添加物を添加することが可能である。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗微生物剤及び抗真菌剤によって確保することが可能である。多くの場合、例えば、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい。注射可能な薬学的形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる因子、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって実現することが可能である。しかしながら、本発明に従えば、使用される全てのビヒクル、希釈剤又は添加物は、化合物と適合的でなければならない。
【0251】
無菌注射可能溶液は、所望に応じて、他の様々な成分とともに適切な溶媒の必要量で、本発明を実施する際に使用される化合物を取り込むことによって調製することが可能である。
【0252】
本発明の薬学的製剤は、様々なビヒクル、アジュバント、添加物及び希釈剤などの、任意の適合的担体を含有する注射可能製剤中に入れて、患者に投与することが可能であり、又は、本発明で使用される化合物は、徐放皮下インプラント若しくはモノクローナル抗体などの標的化された送達系、ベクター化された送達、イオントフォレーシス、ポリマーマトリックス、リポソーム及び小球体の形態で、患者に、非経口的に投与することが可能である。本発明において有用な送達系の例には、米国特許第5,225,182号;第5,169,383号;第5,167,616号;第4,959,217号;第4,925,678号;第4,487,603号;第4,486,194号;第4,447,233号;第4,447,224号;第4,439,196号;及び第4,475,196号が含まれる。このような他の多くのインプラント、送達系及びモジュールが、当業者に周知である。
【0253】
本発明において使用される化合物の薬理学的製剤は、患者に、経口的に投与することが可能である。錠剤、懸濁液、溶液、エマルジョン、カプセル、粉末シロップなどの中の化合物を投与するなどの慣用法を使用することが可能である。経口的に又は静脈内にこれを送達し、生物活性を保持する公知の技術が好ましい。一実施形態では、本発明の化合物は、血液レベルを適切なレベルにするために、静脈内注射によって最初に投与することが可能である。次いで、経口剤形によって患者のレベルが維持されるが、上述されているように、患者の状態に応じて、他の投与形態を使用することが可能である。
【0254】
一般的に、ヒトに対する化合物の活性用量は、1ないし2週以上、好ましくは、24ないし48時間の期間にわたる1投薬/日若しくは2若しくは3回以上/日の投与計画で、又は1−2週以上の期間中連続的な注入によって、1ng/kgから約20−100mg/kg体重/日まで、好ましくは約0.01mgないし約2−10mg/kg体重/日の範囲である。本明細書に開示されている適応症の幾つかについては、長年にわたる、又は生涯にわたる治療も想定される。
【0255】
本発明の薬学的組成物の最も適切な投与は、治療されている傷害又は疾病の種類に依存し得ることは自明であろう。このため、急性事象の治療は、傷害の誘導の後、比較的迅速に、活性組成物を全身投与することを必要とするであろう。一方、慢性変性損傷の治療(減少)は、持続的な投薬計画を必要する場合がある。
【0256】
アネキシンII阻害剤の脳内への送達
脳内への化合物の送達は、とりわけ、神経外科的インプラント、血液脳関門破壊、脂質によって媒介される輸送、担体によって媒介される流入若しくは流出、血漿タンパク質によって媒介される輸送、受容体によって媒介されるトランスサイトーシス、吸収によって媒介されるトランスサイトーシス、血液脳関門での神経ペプチド輸送及び薬物標的誘導のための遺伝子工学的「トロイの木馬」など、幾つかの方法によって達成することが可能である。上記方法は、例えば、「“Brain Drug Targeting:the future of brain drug development”, W.M. Pardridge, Cambridge University Press, Cambridge, UK(2001)」に記載されているように行われる。
【0257】
実施例9:
実験モデル
CNS傷害−CNS傷害を治療するためにアネキシンII阻害剤を使用できる可能性を、動物モデルで評価する。モデルは、対照動物を、阻害剤処理された動物と比較することによって、様々なレベルの複雑性を示す。このような治療の効果は、臨床的転帰、神経学的障害、用量応答及び治療濃度域の観点で評価される。静脈内又は皮下又は経口的に、アネキシンII阻害剤で、試験動物を処理する。緩衝液又は薬学的ビヒクルのみで、対照動物を処置する。使用されるモデルは、以下から選択してもよい。
【0258】
1.閉鎖性頭部外傷(CHI)−実験的TBIは、行動的欠陥の程度及び度合いに関連している神経学的及び神経代謝カスケードに寄与する一連の現象を引き起こす。正中前頭面中の左半球を覆う露出された頭蓋骨上に、予め固定された高さから錘を自由落下させながら、麻酔下で、CHIを誘導する(Chen et al, J.Neurotrauma 13,557,1996)。
【0259】
2.一過性の中大脳動脈閉塞(MCAO)−成体の雄Sprague Dawleyラット300ないし370g中に、90ないし120分の一過性局所虚血を実施する。使用される方法は、管腔内縫合MCAOである(Longa et al., Stroke, 30, 84, 1989, and Dogan et al., J. Neurochem. 72, 765, 1999)。要約すれば、ハロタン麻酔下で、ポリ−L−リジンで被覆された3−0ナイロン縫合材料を、外頚動脈中の穴を通して、右内頚動脈(ICA)中に挿入する。右MCA起点(20−23mm)に、ナイロン糸をICA中に押し入れる。90ないし120分後に抜糸し、動物を閉鎖し、回復させる。
【0260】
3.永久中大脳動脈閉塞(MCAO)−閉塞は永久、片側性であり、MCAの電気凝固によって誘導される。両方法は、脳皮質の同側の局所脳虚血を引き起こし、反対側を無傷の状態のままとする(対照)。左MCAは、「Tamura A.et al., J Cereb Blood Flow Metab. 1981;1:53−60」によってラットについて記載されているように、側頭頭蓋局部切開術を用いて露出される。微少二極性凝固を用いて、MCA及びそのレンズ核線条体分岐を、嗅索の内側縁に対して近位側に閉塞する。傷を縫合し、26℃ないし28℃に加温された室内の飼育ケージに動物を戻す。動物の温度は、自動サーモスタットを用いて、常時一定に保たれる。
【0261】
評価プロセス。アネキシンII阻害剤の効力は、死亡率、体重増加、梗塞容積、生存した動物における短期及び長期の臨床的及び神経生理学的及び行動的(摂食行動を含む。)転帰によって決定される。梗塞容積は、組織学的に評価する(Knight et al., Stroke, 25, 1252, 1994, and Mintorovitch et al., Magn. Reson. Med. 18, 39, 1991)。MCAO後の機能的転帰を評価するために、階段試験(Montoya et al., J. Neurosci. Methods 36, 219, 1991)又はBederson法に従った運動障害スケール(Bederson et al., Stroke, 17, 472, 1986)を使用する。異なる時点にわたって(最長は2ヶ月である。)、動物を追跡する。各時点(24時間、1週、3、6、8週)で、動物を屠殺し、PBS中の4%ホルムアルデヒドによる心臓灌流を行う。脳を取り出し、プロセッシング及びパラフィン包埋のために、連続冠状200μm切片を調製する。TCCなどの適切な色素で、切片を染色する。コンピュータ化された画像分析器を用いて、これらの切片中の梗塞部位を測定する。
【0262】
上記動物モデルで例示されているようにアネキシンII阻害剤処理を使用することによって、急性であると慢性であるとを問わず、ヒト脳傷害の処置に対する新たな可能性が得られる。
【0263】
実施例10:
スクリーニングシステム
アネキシンII遺伝子又はポリペプチドは、その活性を調節する化合物、及び、特に、神経毒性ストレス又は神経変性疾患を調節する化合物を同定及び単離するためのスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。スクリーニングされるべき化合物は、特に、小化学分子、抗体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA又はRNA分子、ポリペプチド及びドミナントネガティブ及び発現ベクターなどの物質を含む。
【0264】
多種のスクリーニングアッセイが当業者に公知である。選択される具体的なアッセイは、候補遺伝子の活性又はこれによって発現されるポリペプチドの活性に大きく依存する。このため、候補遺伝子の発現産物が酵素活性を有することが知られていれば、酵素活性の阻害(又は刺激)に基づくアッセイを使用することが可能である。候補ポリペプチドが、リガンド又は他の相互作用物質に結合することが知られていれば、アッセイは、このような結合又は相互作用の阻害を基礎とすることが可能である。候補遺伝子が公知の遺伝子である場合には、その特性の多くも公知であり得、これらは、最高のスクリーニングアッセイを決定するために使用することが可能である。候補遺伝子が新規であれば、その候補遺伝子の活性の阻害剤を発見するために使用すべき最良のアッセイを決定するために、何らかの分析及び/又は実験が適切である。分析は、その活性を解明する配列中のドメインを発見するために、配列分析を含むことが可能である。
【0265】
本分野において周知であるようにスクリーニングアッセイは、細胞をベースとしたもの、又は細胞をベースとしていないものとすることが可能である。細胞をベースとしたアッセイは、HeLa細胞などの真核細胞を用いて実施され、細胞をベースとしたこのようなシステムは、抗アポトーシス機能遺伝子である候補遺伝子(すなわち、遺伝子の発現がアポトーシスを抑制し、又はその他、標的細胞中の細胞死を抑制する。)の活性を直接測定するために特に適している。細胞をベースとしたこのようなアッセイを実行する1つの方法は、テトラサイクリン誘導性(Tet誘導性)遺伝子発現を使用する。Tet誘導性遺伝子発現は、本分野において周知である。例えば、「Hofmann et al, 1996, Proc Natl Acad Sci 93(11):5185−5190」を参照。
【0266】
Tet誘導性レトロウイルスは、3’Ltrエンハンサー/プロモーターレトロウイルス欠失変異体の自己不活性化(SIN)機能を取り込むように設計されている。このベクターの細胞中での発現は、テトラサイクリン又は他の活性類縁体の存在下では、事実上検出不可能である。しかしながら、Tetの不存在下では、誘導から48時間以内に、発現は、最大限まで作動され、誘導性レトロウイルスを保有する細胞の全集団の発現を均一に増加させ、このため、発現が感染細胞集団内で均一に制御されることを示している。
【0267】
候補遺伝子の遺伝子産物が特異的な標的タンパク質をリン酸化すれば、このレポーター遺伝子産物のリン酸化はその活性化を引き起こし、その後、発色反応を行うことが可能であるように、特異的なレポーター遺伝子構築物を設計することが可能である。候補遺伝子は、上記Tet誘導性の系を用いて、特異的に誘導することが可能であり、誘導された遺伝子と誘導されなかった遺伝子の比較が、レポーター遺伝子活性化の指標を与える。
【0268】
類似の間接的なアッセイでは、候補タンパク質のタンパク質−タンパク質相互作用中の変化に応答するレポーター系を設計することが可能である。レポーターが候補化合物との実際の相互作用に対して応答すれば、発色反応が起こる。
【0269】
レポーター遺伝子活性の阻害又は刺激は、特異的な候補プロモーター又はその他の制御要素を介して、その発現レベルを調節することによって測定することも可能である。候補遺伝子の活性を調節する特異的プロモーター又は制御要素を、本分野で周知の方法によって規定する。特異的な候補遺伝子プロモーター又は制御要素によって調節されるレポーター遺伝子を構築する。特異的プロモーター又は制御因子を含有するDNAを、レポーターをコードする遺伝子に実際に連結する。レポーター活性は、プロモーター又は制御要素の特異的活性化に依存する。このため、レポーターの阻害又は刺激は、レポーター遺伝子の刺激/阻害の直接的アッセイである。例えば、「Komarov et al(1999), Science vol 285, 1733-7」及び「Storz et al(1999) Analytical Biochemistry, 276, 97-104」を参照。
【0270】
細胞をベースとしない様々なスクリーニングアッセイも、十分、当業者の技術の範疇に属する。例えば、候補タンパク質がキナーゼ活性を有する場合など、酵素活性を測定すべき場合には、標的タンパク質を確定し、標的の特異的リン酸化を追跡することが可能である。本アッセイは、標的リン酸化の阻害又は標的リン酸化の刺激のうち何れかを含むことが可能であり、何れのタイプのアッセイも、本分野で周知である。例えば、キナーゼ活性の測定については、「Mohney et al(1998) J.Neuroscience 18, 5285」及び「Tang et al(1997) J Clin. Invest. 100, 1180」を参照。具体的には、アネキシンIIの酵素活性を測定するためのアッセイが、「Choi KS, Fitzpatrick SL, Filipenko NR, Fogg DK, Kassam G, Magliocco AM, Waisman DM:“Regulation of plasmin-dependent fibrin clot lysis by annexin II heterotetramer”, J Biol Chem. 2001 Jul 6;276(27):25212-21(Epub 2001 Apr 23)」によって提供されている。さらに、アネキシンIIが酵素と相互作用し、タンパク質−タンパク質相互作用を通じて、その酵素的活性を制御する可能性が存在する。
【0271】
候補ポリペプチドの、相互作用物質とのインビトロ相互作用を測定することも可能である。このスクリーニングでは、ビース上に、候補ポリペプチドが固定される。受容体リガンドなどの相互作用物質を、放射性標識し、添加する。放射性標識された相互作用物質がビーズ上の候補ポリペプチドに結合すれば、ビーズ上に担持されている放射活性の量(候補ポリペプチドとの相互作用に起因する。)を測定することが可能である。本アッセイは、ビーズ上の放射活性の量を測定することによって、相互作用の阻害を示す。
【0272】
本発明によれば、何れのスクリーニングアッセイも、アッセイ中で陽性を検査する化学的化合物(上述のとおり)又は他の種を同定する工程を含むことが可能であり、このようにして同定された医薬として産生するさらなる工程を含むことも可能である。このような化合物又はこれらの化学的類縁体若しくは相同体を含む医薬は、本発明の一部であると考えられる。アポトーシスの阻害又は刺激に対して同定されたこのような全ての化合物の使用も、本発明の一部であると考えられる。
【0273】
実施例11:
遺伝子治療
本明細書において使用される「遺伝子治療」という用語は、遺伝的又は後天的疾病又は症状の表現型を治療又は予防するために、目的の遺伝的物質(例えば、DNA又はRNA)を宿主中に伝達することを表す。目的の遺伝的物質は、インビボでのその産生が望まれる産物(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、機能的RNA、アンチセンス)をコードする。例えば、目的の遺伝的物質は、治療的価値を有するホルモン、受容体、酵素、ポリペプチド又はペプチドをコードすることが可能である。あるいは、目的の遺伝的物質は、自殺遺伝子をコードしてもよい。総説としては、一般的には、教科書「“Gene Therapy”(Advances in Pharmacology 40, Academic Press, 1997)」を参照されたい。
【0274】
本発明の遺伝子治療は、インビボ又はエキソビボで実施することが可能である。エキソビボでの遺伝子治療には、患者からの細胞の単離及び精製、治療的遺伝子の導入並びに遺伝的に変化を受けた細胞の患者中への再導入が必要とされる。修飾されたレトロウイルスなどの複製欠損ウイルスは、治療用アネキシンIIcDNA又はアネキシンIIアンチセンス断片を、このような細胞中に導入するために使用することが可能である。例えば、マウスモロニー白血病ウイルス(MMLV)は、臨床遺伝子治療試験における周知のベクターである。例えば、「Boris−Lauerie et al., Curr. Opin. Genet. Dev., 3, 102−109(1993)」を参照されたい。
【0275】
これに対して、インビボ遺伝子治療は、患者から細胞を単離及び精製することを必要としない。アンチセンス断片などの治療用遺伝子又は断片は、典型的には、患者に投与するために、リポソーム中又は「Berkner, K. L., in Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158, 39−66(1992)」によって記載されているようなアデノウイルス又は「Muzyczka, N., in Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158, 97−129(1992)」及び米国特許第No. 5,252,479号に記載されているアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターのような複製欠損ウイルス中などに「パッケージされて」いる。別のアプローチは、治療用遺伝子又はアンチセンス断片などの断片が血流又は筋肉組織中に直接注射される「裸のDNA」の投与である。さらに別のアプローチは、治療用遺伝子又はアンチセンス断片などの断片が、DNAで被覆された金粒子を用いた微粒子銃によって組織中に導入される「裸のDNA」の投与である。
【0276】
遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号)によって、又は定位的注射(例えば、Chen et al.(1994) PNAS 91:3054−3057を参照。)によって、対象に送達することが可能である。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、許容可能な希釈剤中に、遺伝子治療ベクターを含むことが可能であり、又は、遺伝子送達ビヒクルがその中に埋め込まれた徐放マトリックスを含むことが可能である。あるいは、組換え細胞から、完全な遺伝子送達ベクター(例えば、レトロウイルスベクター)を、そのままの状態で生産することが可能である場合には、薬学的調製物は、遺伝子送達系を産生する一以上の細胞を含むことが可能である。
【0277】
本発明の遺伝子治療に対して有用な細胞種は、リンパ球、肝細胞、筋芽細胞、繊維芽細胞並びに網膜細胞などの眼のあらゆる細胞、上皮及び内皮細胞が含まれる。好ましくは、細胞は、治療されるべき患者から採取されたTリンパ球、肝細胞、眼のあらゆる細胞又は呼吸器若しくは肺の上皮細胞である。肺の上皮細胞の形質移入は、リポソーム中のDNAベクター、DNA−タンパク質複合体又は複製欠損アデノウイルスの噴霧状(neubulized)の調製物の吸入を介して行うことが可能である。例えば、米国特許第5,240,846号を参照されたい。遺伝子治療の対象の総説については、全般的に、教科書「“Gene Therapy”(Advances in Pharmacology 40, Academic Press, 1997)」を参照されたい。
【0278】
実施例12:
アンチセンス断片の治療的送達
本発明の実施に際しては、アンチセンス断片を使用してもよい。アンチセンス断片の長さは、好ましくは約9から約4,000ヌクレオチドまで、より好ましくは約20から約2,000ヌクレオチドまで、最も好ましくは約50から約500ヌクレオチドまでである。
【0279】
効果的であるためには、本発明のアンチセンス断片は、細胞膜を横切って移動しなければならない。一般に、アンチセンス断片は、おそらくは、特異的な受容体を介した取り込みによって、細胞膜を横切る能力を有している。アンチセンス断片としては、一本鎖分子があり、これらは、ある程度疎水性であり、これによって膜を通した受動拡散が増強される。アンチセンス断片が膜を横切る能力を改善するために、アンチセンス断片に修飾を導入してもよい。例えば、カルボン酸基、エステル基及びアルコール基などの、部分的に不飽和な脂肪族炭化水素鎖及び一以上の極性又は荷電基を含む基にAS分子を連結してもよい。あるいは、好ましくは、膜向性(membranotropic)ペプチドであるペプチド構造に、AS断片を連結してもよい。このような修飾されたAS断片は、膜をさらに容易に貫通し(これは、AS断片の機能にとって不可欠である。)、従って、それらの活性を著しく増強し得る。パルミチル連結されたオリゴヌクレオチドが、「Gerster et al(1998):Quantitative analysis of modified antisense oligonucleotides in biological fluids using cationic nanoparticles for solid-phase extraction Anal Biochem. 1998 Sep 10;262(2):177-84」によって記載されており、ゲラニオール連結されたオリゴヌクレオチドが、「Shoji et al(1998):Enhancement of anti-herpetic activity of antisense phosphorothioate oligonucleotides 5’ end modified with geraniol. J Drug Target. 1998;5(4):261-73」によって記載されている。ペプチド(例えば、膜向性ペプチド)に連結されたオリゴヌクレオチド及び該オリゴヌクレオチドの調製は、「Soukchareun et al(1998):Use of Nalpha-Fmoc-cysteine(S-thiobutyl) derivatized oligodeoxynucleotides for the preparation of oligodeoxynucleotide-peptide hybrid molecules. Bioconjug Chem. 1998 Jul-Aug;9(4):466-75」によって記載されている。分子をある種の細胞へ誘導し、該細胞によるオリゴヌクレオチドの取り込みを増強する、アンチセンス分子又は他の薬物の修飾が、Wang(1998)によって記載されている。
【0280】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般的に、薬学的組成物の形態で提供される。これらの組成物は、特に、注射、局所投与又は経口取り込みによる使用のためのものであり、実施例8の薬理学及び薬物送達を参照されたい。
【0281】
アンチセンスRNAの作用機序及びアンチセンスツールの使用に対する現在の技術水準は、「Kumar et al(1998):Antisense RNA:function and fate of duplex RNA in cells of higher eukaryotes. Microbiol Mol Biol Rev. 1998 Dec;62(4):1415-34」に概説されている。この急速に発展している技術の化学的側面(Crooke, 1995:Progress in antisense therapeutics Hematol Pathol. 1995;9(2):59-72.;Uhlmann et al, 1990 )、細胞的側面(Wagner, 1994:Gene inhibition using antisense oligodeoxynucleotides. Nature. 1994 Nov 24;372(6504):333-5.)及び治療的側面(Hanania, et al, 1995:Recent advances in the application of gene therapy to human disease. Am J Med. 1995 Nov;99(5):537-52. ;Scanlon, et al, 1995:Oligonucleotide-mediated modulation of mammalian gene expression. FASEB J. 1995 Oct;9(13):1288-96.;Gewirtz, 1993:Oligodeoxynucleotide-based therapeutics for human leukemias. Stem Cells. 1993 Oct;11 Suppl 3:96-103)に関する総説が存在する。アネキシン受容体合成の阻害におけるアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、「Yeh et al(1998):Inhibition of Annexin receptor synthesis by antisense oligonucleotides attenuates OP-1 action in primary cultures of fetal rat calvaria cells. J Bone Miner Res. 1998 Dec;13(12):1870-9」に記載されている。電圧依存性カリウムチャネル遺伝子Kv1.4の合成を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、「Meiri et al(1998) Memory and long-term potentiation(LTP) dissociated:normal spatial memory despite CA1 LTP elimination with Kv1.4 antisense. Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Dec 8;95(25):15037-42」によって記載されている。Bcl−xの合成を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、「Kondo et al(1998):Antisense telomerase treatment:induction of two distinct pathways, apoptosis and differentiation. FASEB J. 1998 Jul;12(10):801-11.」によって記載されている。アンチセンス薬物の治療的使用は、「Stix(1998):Shutting down a gene. Antisense drug wins approval. Sci Am. 1998 Nov;279(5):46, 50 ;Flanagan(1998) Antisense comes of age. Cancer Metastasis Rev. 1998 Jun;17(2):169-76 ;Guinot et al(1998) Antisense oligonucleotides:a new therapeutic approach Pathol Biol(Paris). 1998 May;46(5):347-54」及びその中の参考文献によって記載されている。比較的短時間の間に、培養された初代細胞及び細胞株中でのASヌクレオチド配列のインビトロ使用並びに特異的なプロセスを抑制するために、及び一過性に身体機能を変化させるために、このようなヌクレオチド配列をインビボ投与することに関して多くの情報が蓄積された。さらに、現在では、ヒトでの効果を予測するために、インビトロ及びインビボ動物モデル並びにヒト臨床試験から十分な経験を利用することが可能である。
【0282】
実施例13:
siRNAの治療的送達
哺乳動物の細胞中に、siRNAの増強及び改善された送達を行うことを特別に目的とした送達系が開発されている。例えば、哺乳動物細胞中へのsiRNAの効率的な送達用のアデノウイルスベースのベクターを記載する「Shen et al(FEBS letters 539:111-114(2003))」;Xia et al., Nature Biotechnology 20:1006-1010(2002), Reich et al., Molecular Vision 9:210-216(2003), Sorensen et al.(J.Mol.Biol. 327:761-766(2003)(陽イオン性リポソームを用いた静脈内注射及び/又は腹腔内注射によって、siRNAを成体マウスに全身送達するための注射を使用した系を考案した。)、「Lewis et al., Nature Genetics 32:107−108(2002)」(迅速な尾静脈(vain)注射による、マウス中へのsiRNAの効率的な送達のための系を開発した。)、「Simeoni et al., Nucleic Acids Research 31, 11:2717−2724(2003)」(適切な修飾を施して、ペプチドをベースとした遺伝子送達系MPGを用いてsiRNAを送達した。)。
【0283】
siRNAは、最近、霊長類中での阻害のための使用に成功を収めた。さらなる詳細については、「Tolentino et al., Retina 24(1) February 2004 I 132−138」を参照されたい。siRNAのための呼吸器製剤は、Davisらの米国特許出願2004/0063654号に記載されている。コレステロール抱合されたsiRNA(並びにその他のステロイド及び脂質抱合されたsiRNA)を、送達のために使用することが可能である。「Soutschek et al Nature 432:173-177(2004) Therapeutic silencing of an endogenous gene by systemic administration of modified siRNAs」及び「Lorenz et al. Bioorg. Med. Chemistry. Lett. 14:4975-4977(2004) Steroid and lipid conjugates of siRNAs to enhance cellular uptake and gene silencing in liver cells」を参照されたい。
【0284】
siRNAの送達のために使用され得るさらなる方法は、実施例8及び12に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0285】
【図1】この図は、ヒトアネキシンII遺伝子cDNAのヌクレオチド配列−配列番号1を記載する。
【図2】この図は、ヒトアネキシンIIに対応するポリペプチドのアミノ酸配列−配列番号2を記載する。
【図3】この図は、2つのアネキシンIIアンチセンス断片のヌクレオチド配列(配列番号3及び配列番号4)を記載する。
【図4】この図は、2つのアネキシンIIセンス断片のヌクレオチド配列(配列番号5及び配列番号6)を記載する。
【図5】この図は、機能確証実験の損失の結果を説明するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患又は中枢神経系疾患に罹患している患者に、治療的有効量のアネキシンII阻害剤を含む薬学的組成物を前記患者に投与して、これにより、前記患者を治療することを含む、神経変性疾患又は中枢神経系疾患に罹患している患者を治療する方法。
【請求項2】
前記神経変性疾患が発作である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記神経変性疾患が、高血圧、高血圧性脳血管疾患、全身性低血圧、パーキンソン病、癲癇、うつ病、ALS、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病及びHIVによって誘導される認知症からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
中枢神経系に対する傷害を患った患者に、該患者を治療する投薬量で、及び該患者を治療する期間にわたって、アネキシンII阻害剤の治療的有効量を含む薬学的組成物を前記患者に投与することを含む、中枢神経系に対する傷害を患った患者を治療する方法。
【請求項5】
前記傷害がTBIである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記傷害が脊髄傷害である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記傷害が、動脈瘤の破裂、心停止、心臓性ショック、敗血症ショック、頭部外傷、発作及び腫瘍からの出血からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記アネキシンII阻害剤が、小化学的化合物ニトロプロシドナトリウム又はトリホスチンAG1024である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アネキシンII阻害剤が、図1に記されている配列(配列番号1)に対するアンチセンス配列である配列を有する連続的ヌクレオチドを含むアンチセンスポリヌクレオチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記阻害剤が、図3に記されている配列(配列番号3又は配列番号4)を有するアンチセンスポリヌクレオチドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アネキシンII阻害剤がsiRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記siRNAが表1ないし3の何れか1つに記載されている配列を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アネキシンII阻害剤が、配列番号12ないし16からなる群から選択される、表1に記載されている配列を有するsiRNAである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記阻害剤が、構造:
5’(N)−Z3’ (アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)5’ (センス鎖)
(各N及びN’は、その糖残基において修飾されてもよく、又は修飾されなくてもよいリボヌクレオチドであり、(N)及び(N’)は、連続する各N又はN’が、共有結合によって、次のN又はN’に連結されているオリゴマーであり、
x及びyの各々は、19ないし40の整数であり;
Z及びZ’の各々は、存在し、又は存在しないことができるが、存在する場合には、dTdTであり、それが存在する鎖の3’末端に共有結合されており;
(N)の配列は、アネキシンIIのcDNAに対するアンチセンス配列を含む。)
【請求項15】
(N)の配列が、表1、2及び3中に存在するアンチセンス配列の1又は複数を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アネキシンII阻害剤が、配列番号5又は配列番号6によってコードされるドミナントネガティブペプチド、PCT特許出願公開WO200404/1844号のペプチド#41又はS−ニトロソグルタチオンからなる群から選択されるポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記アネキシンII阻害剤が抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記アネキシンII阻害剤が、請求項9ないし16の何れか1項に記載の阻害剤をコードするポリヌクレオチドを含むベクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
中枢神経系に対する傷害を患った患者における回復を促進又は強化するための医薬の調製のための、治療的有効量のアネキシンII阻害剤の使用。
【請求項20】
神経変性疾患に罹患している患者における回復を促進又は強化するための医薬の調製のための、治療的有効量のアネキシンII阻害剤の使用。
【請求項21】
構造
5’(N)−Z3’(アンチセンス鎖)
3’ Z’−(N’)5’(センス鎖)
(各N及びN’は、その糖残基において修飾されてもよく、又は修飾されなくてもよいリボヌクレオチドであり、(N)及び(N’)は、連続する各N又はN’が、共有結合によって、次のN又はN’に連結されているオリゴマーであり、
x及びyの各々は、19ないし40の整数であり;
Z及びZ’の各々は、存在し、又は存在しなくてもよいが、存在する場合には、dTdTであり、それが存在する鎖の3’末端に共有結合されており;
(N)の配列は、アネキシンIIのcDNAに対するアンチセンス配列を含む。)
【請求項22】
(N)の配列が、表1、2及び3中に存在するアンチセンス配列の1又は複数を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
x=y=19である、請求項22に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−530029(P2007−530029A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504561(P2007−504561)
【出願日】平成17年3月27日(2005.3.27)
【国際出願番号】PCT/IL2005/000342
【国際公開番号】WO2005/091716
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(502337583)クアーク・ファーマスーティカルス、インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】Quark Pharmaceuticals,Inc.
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】