説明

アフリカウマ病ウイルスに対するワクチン

本発明は、ウマにおいてアフリカウマ病ウイルスに対抗する免疫応答を誘引する、アフリカウマ病ウイルスのVP2およびVP5またはそのエピトープをコードする遺伝子を含み、さらに前記遺伝子をin vivoで発現するベクター、前記ベクターを含む組成物、アフリカウマ病ウイルスに対してワクチン接種する方法、並びにそのような方法および組成物とともに使用されるキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照により含まれる事柄
本出願は、米国仮特許出願番号61/108,075(2008年10月24日出願)および米国仮特許出願番号61/163,517(2009年3月26日出願)の権利を主張する。
前述の出願、およびそれらにおいてまたはそれらに審査の間に引用された全ての文書(“出願引用文書”)並びに前記出願引用文書中の全ての文書および参考文献、並びに本明細書で引用または参照された全ての文書(“本明細書引用文書”)並びに本明細書引用文書中で引用または参照された全ての文書は、本明細書または参照により本明細書に含まれる一切の文書に記載された一切の製品についての一切の製造業者による指示、記載、製品明細書およびプロダクトシートとともに参照により本明細書に含まれ、さらに本発明の実施に利用することができる。
【0002】
本発明は、アフリカウマ病ウイルス(African Horse Sickness Virus)(AHSV)に対して対象動物にワクチン接種することに関する。特に、本発明は、アフリカウマ病ウイルスの1つまたは2つ以上の免疫原性タンパク質を含みそれらをウマで発現する組換えベクターの構築および使用に関する。本発明はさらに、アフリカウマ病ウイルスに対して免疫応答を誘発する免疫学的組成物またはワクチンに関する。本発明はさらに、アフリカウマ病ウイルスによる感染に対する防御免疫を付与する組成物またはワクチンに関する。
いくつかの刊行物が本明細書で引用される。これら文書の完全な引用は、特許請求の範囲に先行する詳細な説明の最後、および/または当該文書が引用されてある箇所で見出される。これらの文書は本発明の分野に属し、本明細書で引用または参照されるそれら文書(“本明細書引用文書”)の各々および本明細書引用文書で引用または参照される各文書は、参照により本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
アフリカウマ病(AHS)は、重篤でしばしば致死性の、ウマおよびラバの節足動物媒介ウイルス性疾患である(African Horse Sickness, The Merck Veterinary Manual)。致死率はこの疾患のいくつかの形態では95%の高率であり得る。無症状または軽度の感染が、シマウマおよびロバと同様にウマで、特に以前にこのウイルスの異なる血清型に感染したウマで生じ得る。感染動物または媒介動物はこのウイルスをAHS非汚染地域に運び入れることができる。何人かの著者らは、関連するブルータングウイルスで最近発生したように、気候の変化が節足動物媒介疾患(例えばアフリカウマ病)の拡散リスクを高める可能性があると推測している(A. Wilson et al. 2008, Parasitol Res, 103:69-77)。クリコイデス・イミコラ(Culicoides imicola)(この疾患の主要な媒介動物)は、北アフリカおよび南ヨーロッパへの侵入を果たした。潜在的な節足媒介動物はまた、世界の本質的に全地域(米国の大半およびアメリカの残りの地域を含む)に存在する。
アフリカウマ病は、アフリカウマ病ウイルス(レオウイルス科のオルビウイルス属のメンバー)の感染により生じる。今日までにアフリカウマ病ウイルスの9つの血清型が知られている。アフリカウマ病ウイルスの血清型9は固有の地域で広範囲に蔓延しているが、一方、血清型1から8は地理的に限定的な領域で主として見出される。血清型9はアフリカ以外の大半のアフリカウマ病流行の原因であった。血清型4は1987年から1990年の間にスペインおよびポルトガルで1つの流行を引き起こした(J. Lubroth, 1998, Equine Pract, 10:26-33)。
【0004】
アフリカウマ病ウイルスの初期の研究によって、1930年代にアフリカウマ病ウイルスに対するマウス脳弱毒化改変生ウイルスワクチンが開発された。これらのワクチンは洗練され、1960年代に組織培養弱毒化改変生ウイルス(MLV)ワクチンが開発された。
このワクチンの有効性にもかかわらず、前記ワクチンは以下を含む固有の限界を有する:個々の動物におけるワクチン反応(死亡を含む)、個々の動物における多様な免疫応答、母体由来受動免疫を有する若年動物の免疫の困難性、ワクチンウイルスのビルレンスへの復帰の可能性、およびビルレンスへの起こり得る復帰を伴うワクチン接種後のワクチン株の組換え(M. du Plessis et al. 1998, Onderstepoort Journal of Veterinary Research 65:321-329)。さらにまたMLVの使用に関して社会経済学的示唆が存在する。南アフリカは、欧州連合および他の多くの国へのウマの輸出を許容するプロトコルを有する。このプロトコルはまたウマが他国から南アフリカに入り多様な事象で競合するかまたは一時的に繁殖用となることを可能にする。前記プロトコルは、アフリカウマ病に対してウマが適切にワクチン接種されていることの保証を基本にしている。獣医機関はMLVワクチン使用により起こり得る危険性を認識している。これらの問題の多くは、代替アフリカウマ病ウイルスワクチンの開発によって大きく緩和されよう。
【0005】
アフリカウマ病ウイルスゲノムは、少なくとも10個のウイルスタンパク質をコードする10個の二本鎖RNAセグメントで構成される(R.A. Oellermann et al. 1970;C.W. Bremer et al. 1976)。前記ゲノムセグメントは、PAGEでのそれらの泳動順に1−10の番号が付与されている。前記ウイルスタンパク質のうち7つは構造タンパク質であり、二重の外殻を有するウイルス粒子を形成する。外側キャプシドは2つの主要ウイルスタンパク質、VP2およびVP5(前記はアフリカウマ病ウイルスの抗原変動性を決定する)で構成され、一方、内側キャプシドは、2つの主要ウイルスタンパク質(VP3およびVP7)および3つの微量ウイルスタンパク質(VP1、VP4およびVP6)で構成される(SA Lewis and MJ Grubman, 1991;JL Martinez-Torrecuadrada et al. 1994;CW Bremer et al. 1990;MJ Grubman & SA Lewis, 1992)。VP3とVP7は9つの血清型間で高度に保存されている(Oellermann et al. 1970;Bremer et al. 1990)。少なくとも3つの非構造タンパク質(NS1、NS2およびNS3)が認定された(H. Huismans & HJ Els, 1979;V. van Staden & H Huismans, 1991;N. Mizukoshi et al. 1992)。
弱毒化ウイルスに由来する組換えカナリアポックスウイルスが、異種性ウイルス遺伝子の発現用ベクターとして開発された。爾来、これらの多数のカナリアポックス構築物が、多くの国々(南アフリカ、欧州連合およびアメリカ合衆国を含む)でウマ(JM Minke et al. 2004aおよび2004b;JM Minke et al. 2007;L Siger et al. 2006)および他の種(H Poulet et al. 2003)での使用について認可された。
【0006】
これらのワクチンが問題の生物の遺伝子しか含まないという事実により、それらのワクチンは本質的に安全である(M Minke et al. 2004b)。さらにまた、検出可能な中和抗体の開始はただ1回のワクチン用量の投与後でも迅速である(JM Minke et al. 2004b)。そのようなワクチンの固有の安全性および中和抗体の出現の特質は、家畜流行病での使用についてそのようなワクチンを特に有望なものにする(Minke et al. 2004a)。
以前の研究によって、ウマは、外因的に発現させたVP2および適切なアジュバントを接種されたときAHSに対する中和抗体を出現させることが示された(M Scanlen et al. 2002)。ヒツジでの研究によって、ブルータングウイルスに対する中和抗体の応答は、VP2およびVP5を同時発現するウイルス様粒子をヒツジに接種することによって強化されることが示された(LD Pearson, P Roy, 1993)。ブルータングウイルスのVP2およびVP5外側キャプシドタンパク質をコードする遺伝子を同時発現する組換えカナリア痘瘡ウイルスワクチンは、高レベルの防御を誘発することが最近示された(JD Boone et al. 2007)。
AHSV VP2およびVP5を含み、前記を同時発現するベクターを接種したとき、ウマはアフリカウマ病ウイルスに対する中和抗体を出現させることはまだ示されていない。したがって、組換えポックスウイルス(前記由来の組成物および生成物を含む)、特にALVAC系組換え体並びに前記由来の組成物および生成物、特にAHSV VP2および5またはその任意の組合せを発現する組換え体並びに前記に由来する組成物および生成物を提供することによって、本発明は当業界の要請を満たすことは理解し得よう。
本出願におけるいずれの文書の引用または検証も当該文書が本発明の先行技術として利用可能であることを容認するものではない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、組換えベクターまたはウイルス、および、そのような組換えベクターまたはウイルスの製造方法を提供すること、さらにアフリカウマ病ウイルスによる感染を治療および予防するための組成物および/またはワクチン、および、前記治療および予防のための方法を提供すること、のいずれか1つまたは全部であり得る。
本発明は、少なくとも1つの外因性核酸分子を含み、これを発現する組換えベクター、例えば組換えウイルス(例えば組換えポックスウイルス)を提供する。前記少なくとも1つの外因性核酸分子は、アフリカウマ病ウイルスに由来する問題の免疫原またはエピトープ、特にアフリカウマ病ウイルスのウイルスタンパク質またはその部分をコードする核酸分子を含むことができる。
本発明はさらに、前記アフリカウマ病ウイルス株が1、2、4または9であるである組換えベクターを提供する。
本発明はさらに、そのようなウイルスまたはそのようなウイルスの発現生成物を含む免疫学的(または免疫原性)またはワクチン組成物を提供する。
本発明はさらに、アフリカウマ病ウイルスに対抗する免疫学的(または免疫原性)または防御応答を誘発する方法、および、アフリカウマ病ウイルスまたはアフリカウマ病ウイルスによって引き起こされる症状を予防または治療する方法を提供する。前記方法は、前記ウイルスもしくは前記ウイルスの発現生成物、または前記ウイルスを含む組成物、または前記ウイルスの発現生成物を含む組成物を投与する工程を含む。
本発明はまた、前記ウイルスの発現生成物、前記発現生成物またはそのin vivo発現から生みだされる抗体、並びにそのような生成物および抗体の例えば診断的利用における使用を包含する。
本発明はさらに、AHSV VP2およびVP5ポリペプチド並びにAHSV VP2およびVP5ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、新規なAHS株のAHSV4-Janeを提供する。
これらの実施態様および他の実施態様は以下の詳細な説明に記載されているか、または詳細な説明から明白であり前記に含まれている。
以下の詳細な説明(例示として提供されるが記載した特定の実施態様にのみ本発明を限定しようとするものではない)は、添付の図面と一緒にして最良の理解を提供しよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】pLHD3460.4(合成AHSV-4-VP2(配列番号:1)および合成AHSV-4-VP5(配列番号:2)タンパク質を発現するALVAC組換え体を作製するためのC3ドナープラスミド)の構築模式図を提供する。
【図2】pLHD3460.4(pC3 H6P合成AHSV-4-VP2/42Kp合成AHSV-4-VP5)のマップおよび対応する配列番号を提供する。pLHD3460.4=配列番号:6;AHSV-4VP2 DNA(pLHD3460.4)=配列番号:4;AHSV-4VP5 DNA(pLHD3460.4)=配列番号:5;AHSV-4VP2 PRT(pLHD3460.4)の予想されるAA配列=配列番号:1;AHSV-4VP5 PRT(pLHD3460.4)の予想されるAA配列=配列番号:2。
【図3】vCP2377(ALVAC C3 H6P-合成AHSV-4-VP2/42Kp-合成AHSV-4-VP5)のin vitro組換えの模式図を提供する。
【図4】ベクターNTI中に作出されたゲノムDNAの理論的制限酵素ゲルを提供する。
【図5】vCP2377.6.1.1のP3ストックを抽出した後でBamHI、HindIIIまたはPstIにより消化したゲノムDNAの0.8%アガロースゲル電気泳動の結果を提供する。
【図6】AHSV-4-VP2プローブを用いたvCP2377.6.1.1のサザンブロット分析を提供する。
【図7】AHSV-4-VP5タンパク質の発現を示す、組換えvCP2377のウェスタンブロット分析の結果を提供する。
【図8】マウス抗AHSV VP5 mAb 10AE12継代9を1:100の希釈で用いたとき、vCP2377.6.1.1集団の100%均一性を示すイムノプラークの結果を提供する。
【図9】C3R-AHSV挿入物-C3Lフラグメントの増幅に用いられたプライマーのマップ、および組換えvCP2377.6.1.1配列のための配列番号参照(配列番号:17−21)を提供する。
【図10】pCXL2415.1(配列番号:22)(AHSV9-VP2(配列番号:20)およびAHSV9-VP5(配列番号:21)タンパク質を発現するALVAC組換え体を作製するためのC3ドナープラスミド)の構築模式図を提供する。
【図11】pCXL2415.1(pALVAC C3 AHSV-9 H6 VP2 42K VP5)のマップおよび関連する配列番号(18−21)を提供する。
【図12】vCP2383(ALVAC C3 H6-合成AHSV9 VP2/42K-合成AHSV9 VP5)のin vitro組換えの模式図を提供する。
【図13】ベクターNTI中に作出されたゲノムDNAの理論的制限酵素ゲルを提供する。
【図14】vCP2383.3.1.1.1およびvCP2383.9.1.1.1から抽出した後でBamHI、HindIIIまたはXbaIにより消化したゲノムDNAの0.8%アガロースゲル電気泳動の結果を提供する。
【図15】AHSV-4-VP5プローブを用いたvCP2383のサザンブロット分析を提供する。
【図16】AHSV9 VP5タンパク質の発現を示す、組換えvCP2383のウェスタンブロット分析の結果を提供する。
【図17】マウス抗AHSV VP5 mAb 10AE12継代9を1:100の希釈で用いたとき、vCP2383.3.1.1.1集団の100%均一性を示すイムノプラークの結果を提供する。
【図18】全C3L-H6 AHSV9 VP2-42K AHSV9 VP5-C3Rフラグメントの増幅に用いられたプライマーのマップ、および組換えvCP2383配列に対して対応する配列番号(27−31)を提供する。
【図19】感染CEF細胞における抗VP2および抗VP5 IFIによる免疫蛍光の結果を提供する。
【図20A−B】抗VP2(A)および抗VP5(B)を用いた、感染およびトランスフェクトさせたCEFにおけるウェスタンブロットの結果を示す。
【図21】cpAHSV-4(vCP2377)を用いてワクチン接種された6頭のウマについてのAHSV-4に対する血清-中和試験の結果を提供する。結果は0、28および42日目について示されている。
【図22】pJSY2247.2(AHSV5-VP2およびVP5タンパク質を発現するALVAC組換え体を作製するためのC3ドナープラスミド)の構築模式図を提供する。
【図23】pJSY2247.2(pALVAC C3 AHSV5 H6 VP2 42K VP5)配列のマップおよび対応する配列番号を提供する。
【図24】vCP2398(ALVAC C3 H6-合成AHSV5 VP2/42K-合成AHSV5 VP5)のin vitro組換えの模式図を提供する。
【図25】ベクターNTI中に作出されたゲノムvCP2398 DNAの理論的制限酵素ゲルを提供する。
【図26】vCP2398.2.1.1および3.1.1から抽出しBamHI、HindIIIまたはPstIにより消化したゲノムDNAの0.8%アガロースゲル電気泳動の結果を提供する。
【図27】AHSV5 VP2特異的プローブを用いたvCP2398のサザンブロット分析を提供する。
【図28】AHSV5 VP5タンパク質の発現を示す、組換えvCP2398のウェスタンブロット分析の結果を提供する。
【図29】マウス抗AHSV VP5 mAb 10AE12継代を1:100の希釈で用いたとき、vCP2383.2.1.1集団の100%均一性を示すイムノプラークの結果を提供する。
【図30】組換えvCP2398のために全C3L-H6 AHSV5 VP2-42K AHSV5 VP5-C3Rフラグメントを増幅するために用いられたプライマーのマップを提供する。
【図31】vCP2377(部分的に配列番号:17で示されている)でワクチン接種された8頭のウマおよびEIV-CPで免疫された1頭のウマのAHSVチャレンジの結果に関する3つのパネルを提供する。 パネルA:AHSV NS2およびVP7タンパク質をコードする遺伝子についてのqRT-PCRのサイクル閾値(NS2およびVP7プロフィルの平均が示されている)。ウマの血液中のAHSVの存在は、AHSVのVP7およびNS2タンパク質をコードする個々の遺伝子を検出するqRT-PCRによって決定され、最大40サイクル以内で蛍光が0.1の閾値を越えた場合にサンプルは陽性と分類された。 パネルB:体温、IDEM。 パネルC:ビルレント野外株AHSV血清型4.IDEMでチャレンジした後の、8頭のvCP2377ワクチン接種ウマおよび1頭のワクチン未接種コントロールウマの血小板数。
【図32】配列表に存在する配列番号を要約した図表を提供する。
【図33】AHSV-4/5/9 VP2タンパク質(配列番号:1、44、30)のClusta1Wアラインメントを提供する。
【図34】AHSV-4/5/9 VP5タンパク質(配列番号:2、45、31)のClusta1Wアラインメントを提供する。
【図35】合成AHSV-4-VP2タンパク質(配列番号:1)と野外単離株AHSV4 Jane株(配列番号:49)とのClusta1Wアラインメントを提供する。パーセント同一性もまた示される。
【図36】合成AHSV-4-VP5タンパク質(配列番号:2)と野外単離株AHSV4 Jane株(配列番号:51)とのClusta1Wアラインメントを提供する。パーセント同一性もまた示される。
【図37】合成AHSV-4-VP2タンパク質(配列番号:1)と多数の寄託AHSV-4-VP2タンパク質(配列番号:59−63)とのClusta1Wアラインメントを提供する。パーセント同一性の表が提供される。
【図38】合成AHSV-4-VP5タンパク質(配列番号:2)と多数の寄託AHSV-4-VP5タンパク質(配列番号:52−58)とのClusta1Wアラインメントを提供する。パーセント同一性の表が提供される。
【図39】コドン最適化AHSV-4-VP2(配列番号:04)と野外単離株AHSV-4-VP2(配列番号:48)とのClusta1Wアラインメントを提供する。パーセント同一性が提供される。
【図40】コドン最適化AHSV-4-VP5(配列番号:05)と野外単離株AHSV-4-VP5(配列番号:50)とのClusta1Wアラインメントを提供する。パーセント同一性が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本開示および特に特許請求項および/または文書で、例えば“comprise”、“comprised”、“comprising”などの用語は、米国特許法で前記用語に帰された意味を有し、例えば、それらは“include”、“included”、“including”などを意味することができ、さらに、例えば“consisting essentially of”および“consists essentially of”、のような用語は、米国特許法でそれらに帰された意味を有し、例えば、それらは明示的に列挙されていない要素も考慮するが、先行技術において見出されたかまたは本発明の基礎的または新規な特徴に影響を及ぼす要素を排除することが特筆される。
特段の記載がなければ、技術用語は慣例にしたがって用いられる。分子生物学における一般的用語の定義は以下で見出すことができる:Benjamin Lewin, Genes V、1994年Oxford University Press発行(ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al.編、The Encyclopedia of Molecular Biology、1994年Blackwell Science Ltd.発行(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers編、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、1995年VCH Publishers, Inc.発行(ISBN 1-56081-569-8)。
単数用語の“a”、“an”および“the”には、文脈が明白にそうでないことを示していないかぎり複数の対象が含まれる。同様に、“or”という語は、文脈が明白にそうでないことを示していないかぎり“and”を含むことが意図される。“or”という語は、具体的なリストの任意の1つのメンバーを意味し、当該リストのメンバーの任意の組合せもまた含む。
【0010】
標的種または対象動物(宿主)には動物およびヒトが含まれる。本明細書で用いられる動物は、ウマ科の動物(例えばウマ)、イヌ科の動物(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ科の動物(例えばライオン、トラ、イエネコ、野生ネコ、他の大型のネコ類および他のネコ科の動物(チーターおよびオオヤマネコを含む))、羊類(例えばヒツジ)、ウシ科の動物(例えばウシ)、豚類(例えばブタ)、鳥類(例えばニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミュおよびヒクイドリ)、霊長類(例えばキツネザル、メガネザル、有尾猿、テナガザル、無尾猿)および魚類から成る群から選択することができる。“動物”という用語にはまた全ての発育段階(胚性期および胎児期を含む)の個々の動物が含まれる。
“ポリペプチド”および“タンパク質”という用語は本明細書では相互に用いられ、連続するアミノ酸残基のポリマーを指す。
“核酸”、“ヌクレオチド”および“ポリヌクレオチド”という用語はRNAまたはDNAおよびそれらの誘導体(例えば改変骨格を含むもの)を指す。本発明は、本明細書に記載した配列に相補的な配列を含むポリヌクレオチドを提供することは理解されよう。本発明のポリヌクレオチドは、種々の方法で(例えば化学的合成によって、遺伝子クローニングによって)調製することができ、多様な形態(例えば線状または分枝、一本鎖または二本鎖、または前記のハイブリッド、プライマー、プローブなど)をもつことができる。
【0011】
“遺伝子”という用語は広く用いられ、生物学的機能と密接に関連するポリヌクレオチドの任意のセグメントを指す。したがって、遺伝子またはポリヌクレオチドは、ゲノム配列の場合にはイントロンおよびエクソン、cDNAの場合には単にコード配列、例えばオープンリーディングフレーム(ORF)(開始コドン(メチオニンコドン)から始まり終了シグナル(停止コドン)で終わる)を含む。遺伝子およびポリヌクレオチドはまたそれらの発現、例えば転写開始、翻訳および転写終了を調節する領域を含むことができる。したがって、プロモーターおよびリボソーム結合領域(一般的にはこれらの調節エレメントはコード配列または遺伝子の開始コドンのほぼ60から250ヌクレオチド上流に存在する(SM Doree et al.;K Pandher et al.;JY Chung et al.))、転写ターミネーター(一般的にはターミネーターはコード配列または遺伝子の停止コドンのほぼ50ヌクレオチド下流に位置する;CK Ward et al.)もまた含まれる。遺伝子またはポリヌクレオチドはまた、mRNAまたは機能的なRNAを発現するか、または特異的なタンパク質をコードする核酸フラグメントを指し、前記には調節配列が含まれる。
本明細書で用いられる“免疫原性ポリペプチド”または“免疫原性フラグメント”という用語は、対立遺伝子特異的モチーフ、エピトープまたは他の配列を含むポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメントであって、前記ポリペプチドまたはフラグメントがMHC分子と結合し、細胞傷害性Tリンパ球(“CTL”)応答、および/またはB細胞応答(例えば抗体産生)、および/またはT-ヘルパーリンパ球応答、および/または免疫原性ポリペプチドまたは免疫原性フラグメントが由来した抗原に対する遅延型過敏(DTH)応答を誘発するようなものを指す。DTH応答は、T-細胞依存マクロファージ活性化および炎症が組織の損傷を引き起こす免疫反応である。抗原の皮下注射に対するDTH反応は、細胞媒介免疫のためのアッセイとしてしばしば用いられる。
【0012】
定義すれば、エピトープとは、いったん宿主に投与されると液性(B細胞)および/または細胞性タイプ(T細胞)の免疫応答を引き起こすことができるという意味で免疫学的に活性な抗原決定基である。これらは、抗原性を有する分子上の特定の化学基またはペプチド配列である。抗体はポリペプチド上の特定の抗原性エピトープと特異的に結合する。エピトープの具体的で非限定的な例には、ポリペプチド中のテトラペプチドからペンタペプチドの配列、多糖類中のトリグリコシドからテトラグリコシドの配列が含まれる。動物では、大半の抗原がいくつかの、場合によって多数の抗原決定基を同時に提示するであろう。そのようなポリペプチドはまた免疫原性ポリペプチドとみなされ、エピトープはさらに詳述するように認定することができる。
本明細書で用いられる“精製”という用語は絶対的純度を要求せず、むしろ相対的用語とされる。したがって、例えば精製ポリペプチド調製物は、当該ポリペプチドがその天然の環境に存在する場合よりも濃縮されている調製物である。ポリペプチド調製物は、いくつかの実施態様では、当該ポリペプチドが調製物の全ポリペプチド含有量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%を占めるように実質的に精製される。同じことがポリヌクレオチドにも当てはまる。本明細書に開示したポリペプチドは当分野で公知の任意の手段によって精製することができる。
【0013】
組換えポリヌクレオチドは、天然には生じない配列を有するか、または人工的に結合させなければ分離している2つの配列セグメントの人工的結合によって生成される配列を有するポリヌクレオチドである。この人工的結合は、化学的合成によって、またはより一般的には核酸の単離セグメントの人工的操作によって、例えば遺伝子操作技術によってしばしば達成される。ある実施態様では、組換えポリヌクレオチドは融合タンパク質をコードする。
ある特徴では、本発明はアフリカウマ病ウイルス由来のポリペプチドを提供する。別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63に記載の配列を有するポリペプチドおよびその変種またはフラグメントを提供する。
本明細書で用いられるように、“アフリカウマ病ウイルスタンパク質またはアフリカウマ病ウイルスポリペプチド(AHSV VP)”という用語には、AHSV VP1、VP2、VP3、VP4、NS1、VP5、VP6、VP7、NS2並びにそれらのホモローグ、フラグメントおよび変種が含まれる。
アフリカウマ病ウイルスのウイルスタンパク質のホモローグは本発明の範囲内にあると考える。本明細書で用いられるように、“ホモローグ”という用語は、オルトローグ、アナローグおよびパラローグを含む。“アナローグ”という用語は、同じまたは類似の機能を有するが無関係の生物で別個に進化した2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。“オルトローグ”という用語は、異なる種に由来するが共通の先祖遺伝子から種分化によって進化した2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。通常は、オルトローグは同じまたは類似の機能を有するポリペプチドをコードする。“パラローグ”という用語は、ゲノム内での重複によって関連性を有する2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。パラローグは通常異なる機能を有するが、これらの機能は関連を有することがある。野生型のアフリカウマ病ウイルスポリペプチドのアナローグ、オルトローグおよびパラローグは、翻訳後修飾により、アミノ酸配列の相違により、またはその両方により野生型アフリカウマ病ウイルスポリペプチドとは相違することがある。具体的には、本発明のホモローグは、野生型アフリカウマ病ウイルスポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の全部または部分に関して一般的少なくとも80−85%、85−90%、90−95%または95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を示し、類似の機能を示すであろう。
【0014】
別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63に記載の配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するAHSV VPを提供する。
さらに別の特徴では、本発明は、上記に認定のAHSV VP(配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63)のフラグメントおよび変種を提供し、前記は当業者により周知の分子生物学的技術を用いて容易に調製することができる。
変種は、配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有する相同なAHSV VPである。
【0015】
変種には対立遺伝子変種が含まれる。“対立遺伝子変種”という用語は、タンパク質のアミノ酸配列における変化をもたらし、天然の集団(例えばウイルスの種または変種)に存在する多形成をもつポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。そのような天然の対立遺伝子変種は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドにおいて典型的には1−5%の変異度をもたらし得る。対立遺伝子変種は多数の異なる種で問題の核酸配列をシークェンシングすることによって認定することができ、シークェンシングは、ハイブリダイゼーションプローブを用いてそれらの種で同じ遺伝子の遺伝子座を識別することによって容易に達成することができる。天然の対立遺伝子の変異の結果であり機能的活性を変化させない、任意のおよび全ての核酸変異並びにその結果のアミノ酸多形性または変異は、必要ならば本発明の範囲内であると考える。
変種はワクチン接種した動物(例えばウマ)においてアフリカウマ病ウイルスによる刺激時にインターフェロンガンマ(IFN-ガンマ)の分泌を特徴とする特異的な細胞系免疫応答を誘導することができるアフリカウマ病ウイルス由来の任意のポリペプチドである。そのようなIFN-ガンマ分泌はin vitro方法論(すなわちR&D Systems Inc.のQUANTIKINE(商標)イムノアッセイ(カタログ番号CAIF00);JF Djoba Siawaya et al.)を用いて示すことができる。
【0016】
本明細書で用いられるように、“誘導体”または“変種”という用語は、1つまたは2つ以上の保存的アミノ酸変異または他の小さな改変を有するポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸を指し、前記変異または改変は、(1)対応するポリペプチドが野生型ポリペプチドと比較したとき実質的に等価の機能を有するか、または(2)当該ポリペプチドに対して生じた抗体が野生型ポリペプチドと免疫反応性を有するものである。これらの変種または誘導体には、未改変の対応ポリペプチドと比較したとき実質的に等価の活性を有するペプチドを生じることができる小さな改変をアフリカウマ病ウイルスポリペプチドの一次アミノ酸配列に有するポリペプチドが含まれる。そのような改変は、位置指定変異導入による場合のように意図されたものでもよく、または偶発的なものでもよい。“変種”はさらに、当該ポリペプチドが機能して本明細書に定義するように免疫学的応答を生じるかぎり配列に対する欠失、付加および置換も含む。
アフリカウマ病ウイルスポリペプチドの免疫原性フラグメントは、配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63に記載の配列を有するアフリカウマ病ウイルスポリペプチドまたはその変種の少なくとも8、10、15または20の連続するアミノ酸、少なくとも21アミノ酸、少なくとも23アミノ酸、少なくとも25アミノ酸、または少なくとも30アミノ酸を含む。別の実施態様では、アフリカウマ病ウイルスのフラグメントは完全長のアフリカウマ病ウイルスポリペプチドで見出される特異的な抗原性エピトープを含む。
【0017】
ポリペプチドのフラグメントおよびエピトープを決定する方法、例えばオーバーラップペプチドライブラリーの作製(B. Hemmer et al.)、ペプスキャン(Pepscan)(H.M. Geysen et al. 1984;H.M. Geysen et al. 1985;R. Van der Zee et al.;H.M. Geysen)およびアルゴリズムを、煩雑な実験を実施することなく本発明の実施に用いことができる。一般的には、抗体は特定の抗原性エピトープに特異的に結合することができる。具体的な非限定的エピトープの例には、ポリペプチド中のテトラペプチドからペンタペプチドの配列、多糖類中のトリグリコシドからテトラグリコシドの配列が含まれる。動物では、大半の抗原がいくつかの、場合によって多数の抗原決定基を同時に提示するであろう。エピトープがより大きな分子のタンパク質フラグメントである場合、好ましくは、エピトープは全タンパク質と同じ免疫学的活性を有するであろう。
別の特徴では、本発明は、AHSV VPをコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63に記載の配列を有するAHSV VPをコードするポリヌクレオチドを提供する。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63に記載の配列を有するポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチド、または保存的変種、対立遺伝子変種、ホモローグもしくはこれらポリペプチドの1つの少なくとも8つまたは少なくとも10の連続するアミノ酸を含むフラグメント、またはこれらのポリペプチドの組合せをコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0018】
別の特徴では、本発明は、配列番号:3、4、5、6、17、18、19、22、27、28、29、32、33、34、41、42、43、48または50に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドまたはその変種を提供する。さらに別の特徴では、本発明は、配列番号:3、4、5、6、17、18、19、22、27、28、29、32、33、34、41、42、43、48または50に記載の配列を有するポリヌクレオチドの1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド、またはその変種を提供する。
これらのポリヌクレオチドには、AHSV VPをコードするDNA、cDNAおよびRNA配列が含まれ得る。アフリカウマ病ウイルスポリペプチドをコードするいずれのポリヌクレオチドも、それらが認知された活性(例えば当該ポリペプチドを認識する抗体との結合、当該ポリペプチドに対する免疫応答の誘発、またはアフリカウマ病ウイルスに暴露されたかもしくはアフリカウマ病の徴候もしくは症状の減退を示す対象動物に投与されたときアフリカウマ病で生存する効果)を有するポリペプチドをコードするかぎり本発明に含まれることは理解されよう。
【0019】
本開示のポリヌクレオチドは、遺伝暗号の結果として縮退配列、例えば特定の宿主のための最適化コドン使用頻度を含む。本明細書で用いられるように、“最適化”とは、ある種においてその発現を増加させるために遺伝的に操作されたポリヌクレオチドをいう。アフリカウマ病ポリペプチドをコードする最適化ポリヌクレオチドを提供するために、アフリカウマ病ウイルスタンパク質遺伝子のDNA配列を以下のように改変することができる:(1)特定の種で高度に発現される遺伝子が好むコドンを含む;(2)ヌクレオチド塩基組成のA+TまたはG+C含量を前記種で実質的に見出されるものに構成させる;(3)前記種の開始配列を形成する;または(4)RNAの脱安定化、不適切なポリアデニル化、分解および終了を引き起こすか、または二次構造ヘアピンもしくはRNAスプライス部位を形成する配列を排除する。前記種におけるアフリカウマ病タンパク質の発現の増加は、真核細胞および原核細胞における、または特定の種におけるコドン使用頻度の分布頻度を利用することによって達成することができる。“好ましいコドン使用頻度の頻度”とは、あるアミノ酸を指定するためにヌクレオチドコドン使用頻度において個々の宿主細胞が示す優先性を指す。20の天然のアミノ酸が存在し、その大半は2つ以上のコドンによって指定される。したがって、全ての縮退ヌクレオチド配列が、当該ヌクレオチド配列によってコードされるアフリカウマ病ウイルスポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に変化しないかぎり本開示に含まれる。
【0020】
2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、NCBI(National Cancer for Biotechnology Information)のペアワイズブラストおよびブロサム62マトリックスで標準的なパラメーターを用いて確立させることができる(例えば、“National Cancer for Biotechnology Information”(NCBI, Bethesda, Md, USA)サーバーの他に論文(Altschul et al.)で入手可能なBLASTまたはBLASTXアルゴリズムを参照されたい、したがって本明細書は前記アルゴリズムまたはBLASTもしくはBLASTXおよびBLOSUM62マトリックスの使用を“ブラスト(blasts)”という用語によって述べる)。
2つのヌクレオチド間の配列同一性はまた、Myers and Miller(”Optimal Alignments in Linear Space”, CABIOS 4, 11-17, 1988)の“Align”プログラム(NCBIで入手可能)の他に、インターネットを介してそれらのサイト(例えばNCBIサイト)で利用できる同じまたは別のプログラムを用いて決定することができる。
前記とは別にまたは前記に加えて、例えばヌクレオチドまたはアミノ酸配列に関して“同一性”という用語は、2つの配列間の相同性の定量的測定値を示すことができる。パーセント配列相同性は以下のように計算することができる:(Nref−Ndif)*100/Nref、式中Ndifはアラインメントを実施したときの2つの配列中の非同一残基の総数であり、Nrefは当該配列の一方の残基の数である。したがって、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATCについて75%の配列同一性を有するであろう(Nref=8;Ndif=2)。
【0021】
前記とは別にまたは前記に加えて、配列に関して“同一性”は、同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸を有する位置の数を2つの配列の短い方の配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の数で割ったものを指す。この場合、2つの配列のアラインメントは、Wilbur and Lipmanアルゴリズム(Wilbur and Lipman)にしたがい、例えば20ヌクレオチドのウィンドウサイズ、4ヌクレオチドのワード長および4のギャップペナルティを用いて決定することができ、さらにアラインメントを含むコンピュータ支援解析および配列データの解釈は市販プログラム(例えばIntelligeneticsTM Suite(Intelligenetics Inc. CA))を用いて簡便に実施することができる。RNA配列が、DNA配列と類似またはある程度の配列同一性もしくは相同性を有するというとき、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列中のウラシル(U)と等価であるとみなされる。したがって、DNA配列中のチミジン(T)をRNA配列中のウラシル(U)と等価であるとみなすことによって、RNA配列は本発明の範囲内にあり、DNA配列から誘導することができる。
2つのアミノ酸配列の配列同一性もしくは配列類似性、または2つのヌクレオチド配列間の配列同一性は、Vector NTIソフトウェアパッケージ(Invitrogen, 1600 Faraday Ave., Carlsbad, CA)を用いて決定することができる。
以下の文書は配列の相対的同一性または相同性を比較するためのアルゴリズムを提供し、さらにこれらの参考文献中の教示は、前述の記載に加えまたは前記とは別にパーセント相同性または同一性の決定に用いることができる:SB Needleman and CD Wunsch;TF Smith and MS Waterman;TF Smith, MS Waterman and JR Sadler;DF Feng and RF Dolittle;DG Higgins and PM Sharp;JD Thompson, DG Higgins and TJ Bibson;およびJ Devereux, P Haeberlie and O Smithies。さらに煩雑な実験を実施することなく、当業者はパーセント相同性の決定のために他のプログラムまたは参考文献を用いることができる。
【0022】
アフリカウマ病ウイルスポリヌクレオチドは、ベクター、自律的複製プラスミドまたは原核細胞もしくは真核細胞のDNAゲノムに取り込まれるか、または他の配列から独立した別個の分子(例えばcDNA)に存在する組換えDNA を含むことができる。
本明細書に開示する組換えベクターは、ポリペプチド、その変種またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。組換えベクターにはプラスミドおよびウイルスベクターが含まれ、in vitroまたはin vivo発現に用いることができる。組換えベクターはさらにシグナルペプチドを含むことができる。シグナルペプチドは、ある細胞器官(例えば核、ミトコンドリアマトリックス、小胞体、葉緑体、アポプラストおよびペルオキシソーム)へのタンパク質(サイトゾルで合成される)の翻訳後輸送を指令する。シグナル配列は、アフリカウマ病ウイルスタンパク質由来の天然の配列であっても、または分泌タンパク質由来のペプチドシグナル、例えば組織プラスミノーゲン活性化因子タンパク質(pTA)、具体的にはヒトpTA由来のシグナルペプチド(S. Friezner Degen et al.;R. Rickles et al.))、またはインスリン様増殖因子1(IGF1)由来のシグナルペプチド、具体的にはウマIGF1(K Otte et al.)、イヌIGF1(P Delafontaine et al.)、ネコIGF1(WOO03/022886)、ウシIGF1(S Lien et al.)、ブタIGF1(M Muller et al.)、ニワトリIGF1(Y Kajimoto et al.)、シチメンチョウIGF1(GenBank accession No. AF084980)であってもよい。IGF1由来のシグナルペプチドは天然であっても最適化されてあってもよい。最適化は、隠ぺいスプラス部位の除去および/またはコドン使用頻度の調整によって達成することができる。翻訳に際して、プロセッシングを経ていないポリペプチドは切断部位で切断され成熟ポリペプチドを生じることができる。切断部位はVon Heijne(1986)の方法を用いて予測することができる。
【0023】
プラスミドは、DNA転写ユニット、例えば宿主細胞でのその複製を可能にする核酸配列、例えば複製起点(原核細胞または真核細胞性)を含むことができる。プラスミドはまた、1つまたは2つ以上の選別可能なマーカー遺伝子および当分野で公知の他の遺伝エレメントを含むことができる。本発明には環状形および線状形プラスミドが含まれる。
さらに別の特徴ではワクチン組成物または医薬組成物に関し、前記は当該組成物を接種された宿主動物で免疫学的または防御的応答を誘発する。前記組成物は、担体または希釈剤または賦形剤および/またはアジュバント、並びに組換えベクター、例えば組換えウイルスを含む。前記組換えウイルスは、改変組換えウイルス、例えばウイルスがコードする遺伝的機能をその中で既に不活化(例えば破壊または欠失)させたウイルス組換え体であり得る。改変組換えウイルスは、例えば毒性が低下し安全性が強化されるように、ウイルスがコードする非本質的な遺伝的機能がその中で不活化されてもよい。本発明の組成物で用いられるウイルスは、有利にはポックスウイルス、例えばワクシニアウイルスまたはアライグマポックスウイルス、または好ましくはアビポックスウイルス、例えば鶏痘ウイルス、またはより好ましくはカナリアポックスウイルス、より有利にはALVACウイルスである。組換えベクターまたは組換えウイルスは哺乳動物種で複製されずに発現することが有利である。別の特徴では、1つまたは2つ以上のアフリカウマ病ウイルス(AHSV)抗原をコードする少なくとも1つの核酸分子を含む組換えベクターに関する。本発明はさらに、1つまたは2つ以上のアフリカウマ病ウイルス(AHSV)抗原をコードする少なくとも1つの核酸分子を含む組換えアビポックスベクターの、対象動物で防御的免疫応答を誘引するために有効な量を含むワクチンまたは免疫原性組成物に関する。本発明はさらに、アフリカウマ病ウイルスに対抗して対象動物にワクチン接種する対応する方法に関する。
【0024】
使用される医薬的に許容できるビヒクルまたは賦形剤は通常のものである。本明細書に開示したポリペプチド、プラスミド、ウイルスベクターの医薬的デリバリーに適した組成物および処方物が文献(Remington’s Pharmaceutical Sciences, E.W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Ed., 1975)に記載されている。一般的には、ビヒクルまたは賦形剤の性質は、用いられる具体的な投与態様に左右される。例えば、非経口処方物には通常、医薬的および生理学的に許容できる液体、例えば水、生理学的食塩水、均衡塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどを含む注射可能な液体がビヒクルとして含まれる。固体組成物(例えば凍結乾燥トローチ、散剤、ピル、錠剤またはカプセル形)については、通常の非毒性固形ビヒクルまたは賦形剤は、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプンまたはステアリン酸マグネシウムを含むことができる。生物学的に中立のビヒクルまたは賦形剤の他に、投与される免疫原性組成物は微量の非毒性補助物質、例えば湿潤もしくは乳化剤、保存料、およびpH緩衝剤、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートなどを含むことができる。
【0025】
本発明の組成物またはワクチンは、本発明にしたがって上記に記載の1つまたは2つ以上のAHSV VPをコードする1つまたは2つ以上のポリヌクレオチドを含むベクターを含むことができる。
別個の挿入部位を用いるかまたは同じ挿入部位を用いて多数の挿入を同じベクターで実施することができる。同じ挿入部位を用いるときは、各ポリヌクレオチド挿入物(前述の本発明の任意のポリヌクレオチドであり得る)を、同じおよび/または別個のプロモーターの制御下に挿入することができる。挿入は、尾尾、頭頭、尾頭または頭尾で実施できる。IRESエレメント(内部リボソーム侵入部位、EP0803537参照)もまた、同じおよび/または別個のプロモーターに作動できるように連結した多数の挿入物を分離させ、さらにそれらを発現させるために用いることができる。
ある実施態様では、本発明は上述の1つまたは2つ以上のポリヌクレオチドを含む発現ベクターに関する。前記発現ベクターはin vivo発現ベクターであってもin vitro発現ベクターであってもよい。
ある実施態様では、前記組換えベクターまたはウイルスは、1つまたは2つ以上のアフリカウマ病ウイルス(AHSV)抗原、免疫原(そのエピトープまたはフラグメントを含む)をコードする1つまたは2つ以上の異種核酸分子を含むことができる。前記組換えベクターまたは改変組換えウイルスは、例えばウイルスゲノム内に(例えばウイルスゲノムの非本質的領域内に)異種DNA配列を含むことができ、前記異種DNA配列は、例えばアフリカウマ病ウイルスのウイルスタンパク質、例えばAHSV VP1、VP2、VP3、VP4、NS1、VP5、VP6、VP7、NS2、NS3またはその任意の組合せ、好ましくはAHSV VP2および5に由来する免疫原性タンパク質をコードする(この場合、前記免疫原性タンパク質は、問題のエピトープ、例えばAHSV VP1、VP2、VP3、VP4、NS1、VP5、VP6、VP7、NS2、NS3の任意の1つまたは2つ以上によって発現されるタンパク質の問題のエピトープ、例えばAHSV VP2および/または5の問題のエピトープであり得る)。前記ベクターまたはウイルスは、有利にはポックスウイルス、例えばワクシニアウイルスまたは好ましくはアビポックスウイルス、例えば鶏痘ウイルスまたはより好ましくはカナリアポックスウイルスであり、より有利にはALVACウイルスである。
【0026】
別の実施態様では、1つまたは2つ以上のアフリカウマ病ウイルス(AHSV)抗原、免疫原(そのエピトープまたはフラグメントを含み、前記は、例えばアフリカウマ病ウイルスのウイルスタンパク質、例えばAHSV VP1、VP2、VP3、VP4、NS1、VP5、VP6、VP7、NS2、NS3またはその任意の組合せ、好ましくはAHSV VP2および5に由来し、前記免疫原性タンパク質は、問題のエピトープ、例えばAHSV VP1、VP2、VP3、VP4、NS1、VP5、VP6、VP7、NS2またはNS3の任意の1つまたは2つ以上によって発現されるタンパク質の問題のエピトープ、例えばAHSV VP2および/または5の問題のエピトープであり得る)をコードする異種核酸分子は、プロモーター配列および場合によってエンハンサーに作動できるように連結される。有利な実施態様では、プロモーター配列は、H6ワクシニアプロモーター、13Lワクシニアプロモーター、42Kポックスウイルスプロモーター、7.5KワクシニアプロモーターおよびPiワクシニアプロモーターから成る群から選択される。より有利には、プロモーター配列はH6ワクシニアプロモーターまたは42Kポックスウイルスプロモーターである。より好ましくは、VP2はH6ワクシニアプロモーターに作動できるように連結され、VP5は42Kポックスウイルスプロモーターに作動できるように連結される。
【0027】
別の実施態様では、1つまたは2つ以上のアフリカウマ病ウイルス(AHSV)抗原、免疫原(そのエピトープまたはフラグメントを含み、前記は、例えばアフリカウマ病ウイルスのウイルスタンパク質、例えばAHSV VP1、VP2、VP3、VP4、NS1、VP5、VP6、VP7、NS2、NS3またはその任意の組合せ、好ましくはAHSV VP2および5に由来し、前記免疫原性タンパク質は、問題のエピトープ、例えばAHSV VP1、VP2、VP3、VP4、NS1、VP5、VP6、VP7、NS2またはNS3の任意の1つまたは2つ以上によって発現されるタンパク質の問題のエピトープ、例えばAHSV VP2および/または5の問題のエピトープであり得る)をコードする異種核酸分子はある挿入座位に挿入され、この場合、前記挿入座位はC5および/またはC6および/またはC3を含み、さらにC6、C5および/またはC3挿入座位のフランキング配列は、同族の挿入座位を有するアフリカウマ病ウイルス抗原の相同性組換えを促進する。
別の実施態様では、1つまたは2つ以上のアフリカウマ病ウイルス(AHSV)抗原、免疫原(そのエピトープまたはフラグメントを含み、前記は、例えばアフリカウマ病ウイルスのウイルスタンパク質、例えばAHSV VP1、VP2、VP3、VP4、NS1、VP5、VP6、VP7、NS2、NS3またはその任意の組合せ、好ましくはAHSV VP2および5に由来し、前記免疫原性タンパク質は、問題のエピトープ、例えばAHSV VP1、VP2、VP3、VP4、NS1、VP5、VP6、VP7、NS2またはNS3の任意の1つまたは2つ以上によって発現されるタンパク質の問題のエピトープ、例えばAHSV VP2および/または5の問題のエピトープであり得る)をコードする異種核酸分子はある挿入座位に挿入され、この場合、前記挿入座位はC5および/またはC6および/またはC3を含み、さらにC6、C5および/またはC3挿入座位のフランキング配列は、同族の挿入座位を有するアフリカウマ病ウイルス抗原の相同性組換えを促進し、さらに前記フランキング配列は、アビポックスのC3LおよびC3Rオープンリーディングフレームを含む。
【0028】
別の実施態様では、アビポックスベクターはvCP2377またはvCP2383またはvCP2398である。
特段の指示がなければ、本発明の実施には分子生物学、微生物学、細菌学、組換えDNA工学および免疫学の一般的な技術が用いられ、前記技術は当業者の技量範囲内である。そのような技術は刊行物に詳しく説明されている。例えば以下を参照されたい:Sambrook et al. 1989および1985;MJ Gait ed., 1984;BD Hames & SJ Higgins eds. 1984;RK Freshney ed. 1986;IRL Press, 1986;B Perbal, 1984;DM Weir and CC Blackwell eds. 1986。
ある特徴では、本発明は、組換えベクター、例えばウイルス、例えばアフリカウマ病ウイルスのDNA配列を、例えばウイルス(例えばポックスウイルス)ゲノム内に、有利にはウイルスの非本質的領域内、例えばポックスウイルスゲノム内に含む組換えポックスウイルスを提供する。前記ポックスウイルスはワクシニアウイルス、例えばNYVACまたはNYVAC系ウイルスを含むことができ、前記ポックスウイルスは、有利にはアビポックス、例えば鶏痘ウイルス(特に弱毒化鶏痘ウイルス、例えばTROVAC)、またはカナリアポックスウイルス(好ましくは弱毒化カナリアポックスウイルス、例えばALVAC)である。しかしながら、本発明のベクターは、任意の適切な組換えウイルスまたはウイルスベクター、例えばポックスウイルス(例えばワクシニアウイルス、アビポックスウイルス、カナリアポックスウイルス、鶏痘ウイルス、アライグマポックスウイルス、ブタポックスウイルスなど)、アデノウイルス(例えばイヌアデノウイルス)、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルスなど(本明細書に参照により含まれる文書にあるとおり)であり得る。またはベクターはプラスミドでもよい。
【0029】
組換えウイルスは、改変組換えウイルス、例えばウイルスがコードする遺伝的機能がその中で不活化(例えば破壊または欠失)されてあるウイルスの組換え体であり得る。改変組換えウイルスは、例えば毒性が低下し安全性が強化されるように、ウイルスがコードする非本質的な遺伝的機能がその中で不活化され得る。本発明の組成物で用いられるウイルスは、有利にはポックスウイルス、例えばワクシニアウイルスまたは好ましくはアビポックスウイルス、例えば鶏痘ウイルス、またはより好ましくはカナリアポックスウイルス、より有利にはALVACウイルスである。組換えベクターまたは組換えウイルスは哺乳動物種で複製されずに発現することが有利である。
ある具体的な実施態様では、ウイルスベクターはポックスウイルス、例えばワクシニアウイルスまたは弱毒化ワクシニアウイルス(例えばMVA、ニワトリ胚線維芽細胞でAnkaraワクチン株を570代より多く継代した後で得られた改変Ankara株(以下を参照されたい:Stickl & Hochstein-Mintzel, Munch. Med. Wschr., 1971, 113:1149-1153;Sutter et al. Proc Natl Acad Sci, USA, 1992, 89:10847-10851)で、ATCC VR-1508として入手できる;またはNYVAC(以下を参照されたい:米国特許5,494,807号、例えば同特許の実施例1から6およびその後続の記載、前記はNYVACの構築、ワクシニアウイルスコペンハーゲン株のゲノムから欠失させたORFが付加されたNYVACの変異とともにこの組換え体の複数部位への異種コード核酸分子の挿入並びに適合プロモーターの使用を考察する;WO96/40241もまた参照されたい)、アビポックスウイルスまたは弱毒化アビポックスウイルス(例えばカナリアポックス、鶏痘、ハトポックス、ピジョンポックス、ウズラポックス、ALVACまたはTROVAC;例えば米国特許5,505,941号、5,494,807号を参照されたい)、ブタポックス、アライグマポックス、ラクダポックスまたは粘液腫症ウイルスである。
【0030】
組換えポックスウイルスは当分野で公知の2つの工程で構築することができる。さらに前記工程は、米国特許4,769,330号、4,722,848号、4,603,112号、5,110,587号、5,174,993号、5,494,807号、5,942,235号及び5,505,941号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に記載された、ポックスウイルス(例えばワクシニアウイルスおよびアビポックスウイルス)の合成組換え体を作製する方法に類似する。或いは、本発明の遺伝子の遺伝子生成物のin vivoまたはin vitro発現のためのベクター、組換え体またはプラスミドの製造および/または投与方法は所望されるいずれの方法であってもよい。例えば前記方法は、以下の文献に開示されてあるか、または前記文献に引用された文書に開示されてある方法またはそれらに類似する:米国特許6,130,066号、5,494,807号、5,514,375号、5,744,140号、5,744,141号、5,756,103号、5,762,938号、5,766,599号、5,990,091号、6,004,777号、6,130,066号、6,497,883号、6,464,984号、6,451,770号、6,391,314号、6,387,376号、6,376,473号、6,368,603号、6,348,196号、6,306,400号、6,228,846号、6,221,362号、6,217,883号、6,207,166号、6,207,165号、6,159,477号、6,153,199号、6,090,393号、6,074,649号、6,045,803号、6,033,670号、6,485,729号、6,103,526号、6,224,882号、6,312,682号、6, 312,683号、6,348,450号、4,603,112号、4,769,330号、5,174,993号、5,505,941号、5,338,683号、5,494,807号、4,394,448号、4,722,848号、4,745,051号、4,769,331号、5,591,639号、5,589,466号、4,945,050号、5,677,178号、5,591,439号、5,552,143号、5,580,859号、WO94/16716、WO 96/39491、W091/11525、WO 98/33510、WO 90/01543、EP0370573、EP265785、(Paoletti 1996)、(Moss 1996)、Richardson (Ed) (1995)、(Smith, Summers et al. 1983)、(Pennock, Shoemaker et al. 1984)、(Roizman 1996)、(Andreansky, He et al. 1996)、(Robertson, Ooka et al. 1996)、(Frolov, Hoffman et al. 1996)、(Kitson, Burke et al. 1991)、(Ballay, Levrero et al. 1985)、(Graham 1990)、(Prevec, Schneider et al. 1989)、(Felgner, Kumar et al. 1994)、(Ulmer, Donnelly et al. 1993)、(McClements, Armstrong et al. 1996)、(Ju, Edelstein et al. 1998)および(Robinson and Torres 1997)。
【0031】
有利にはポリヌクレオチドの発現のためのエレメントが本発明のベクターに存在する。最低限として前記は、開始コドン(ATG)、停止コドンおよびプロモーター、並びに場合によってある種のベクター(例えばプラスミド)およびある種のウイルスベクター(例えばポックスウイルス以外のウイルスベクター)のためのポリアデニル化配列を含むか、本質的に前記から成るか、または前記から成る。ポリヌクレオチドが、(例えば有利にはベクター内で)タンパク質フラグメントをコードするとき、ATGはリーディングフレームの5’に配置され、停止コドンは3’に配置される。発現を制御するための他のエレメント、例えばエンハンサー配列、安定化配列およびタンパク質の分泌を可能にするシグナル配列も存在し得る。
特許出願WO90/11092、WO93/19183、WO94/21797およびWO95/20660は、最近開発されたポリヌクレオチドワクチンの技術を利用する。これらのワクチンは、プラスミドに挿入された抗原を宿主細胞で発現することができるプラスミドを使用することが分かっている。全ての投与ルート(腹腔内、静脈内、筋肉内、経皮、皮内、粘膜ルートなど)が提唱されている。多様なワクチン接種手段もまた用いることができる。前記は例えば、金粒子の表面に沈積させて動物の皮膚を貫通するように発射されるDNA(Tang et al. 1992)、および皮膚、筋肉、脂肪組織の他に乳房組織へのトランスフェクションを可能にする液体ジェットインジェクター(Furth et al. 1992)である。(さらにまた以下を参照されたい:米国特許5,846,946号、5,620,896号、5,643,578号、5,580,589号、5,589,466号、5,693,622号および5,703,055号;JB Ulmer et al. 1993;Robinson et al. 1997;Luke et al. 1997;Norman et al. 1997;Bourne et al. 1996;さらにまた一般的にワクチンまたは免疫学的組成物のためのプラスミドは、宿主細胞(例えば哺乳動物細胞)の抗原の発現または発現および分泌を制御する調節配列に作動できるように連結された抗原をコードするDNAを含むことができることに留意されたい(例えば上流から下流に、プロモーターのためのDNA、分泌のために真核細胞リーダーペプチドのためのDNA、抗原のためのDNAおよびターミネーターをコードするDNA))。
【0032】
本発明の別の実施態様にしたがえば、ポックスウイルスベクターはカナリアポックスウイルスまたは鶏痘ウイルスベクター、有利には弱毒化カナリアポックスウイルスまたは鶏痘ウイルスである。これに関しては、アクセス番号VR-111でATCCから入手可能なカナリアポックスが引用される。弱毒化カナリアポックスウイルスは米国特許5,756,103号(ALVAC)およびWO01/05934に記載されている。多数の鶏痘ウイルスワクチン株がまた入手可能である。前記は、例えばMERIALによって販売されているDIFTOSEC CT株およびINTERVETによって販売されているNOBILIS VARIOLEワクチンであり、さらに弱毒化鶏痘株TROVACに関する米国特許5,766,599号もまた参照できる。
発現ベクターがワクシニアウイルスのとき、発現されるべきポリヌクレオチドのための挿入部位はチミジンキナーゼ(TK)遺伝子にあるか、または挿入部位はヘマグルチニン(HA)遺伝子であるか、または挿入部位はA型封入体(ATI)をコードする領域である(本明細書に引用した文書、特にワクシニアウイルスに関するものをまた参照されたい)。カナリアポックスの場合には、挿入部位はORF、C3、C5および/またはC6であり得る(本明細書に引用した文書、特にカナリアポックスウイルスに関するものをまた参照されたい)。鶏痘の場合、挿入部位はORF7および/またはF8であり得る(本明細書に引用した文書、特に鶏痘ウイルスに関するものをまた参照されたい)。MVAウイルス挿入部位領域は、多様な刊行物に記載されたとおりであり得る。前記刊行物には以下の文献が含まれ(MW Carroll et al., Vaccine 1997, 15(4):387-394;KJ Stittelaar et al., J Virol 2000, 74(9):4236-4243;G. Sutter et al., 1994, Vaccine, 12(11):1032-1040)、さらに前記に関連して、完全なMVAゲノムが以下の文献に記載されている:G. Antoine, Virology 1998, 244:365-396(前記文献は当業者が他の挿入部位または他のプロモータを使用することを可能にする)。
【0033】
本発明の別の実施態様では、発現されるべきポリヌクレオチドは、特定のポックスウイルスプロモーター、とりわけ例えばワクシニアプロモーター7.5kDa;Cochran et al., J Virology 1985, 54:30-35)、ワクシニアプロモーター13L(Riveere et al., J Virology 1992, 6:3424-3434)、ワクシニアプロモーターHA(Shida, Virology 1986, 150:451-457)、牛痘プロモーターATI(Funahashi et al., J Gen Virol 1988, 69:35-47)、ワクシニアプロモーターH6(J Taylor et al., Vaccine 1988, 6:504-508;P Guo et al., J Virol 1989, 63:4189-4198;M. Perkus et al., J Virol 1989, 63:3829-3836)の制御下に挿入される。
別の実施態様では、ウイルスベクターはアデノウイルス、例えばヒトアデノウイルス(HAV)またはイヌアデノウイルス(CAV)である。
組換えウイルスベクター系ワクチンは、fMLP(N-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン;米国特許6,017,537号)および/またはCARBOMERアジュバント(Pharmeuropa Vol.)と併せることができる。
【0034】
別の実施態様では、ウイルスベクターはヒト、ブタ、オパイン(opine)、ウシまたはトリのアデノウイルスであり得る(ただしこれらに限定されない)。ヒトアデノウイルスについては、特にアデノウイルス血清型5が、ウイルスゲノムのE1領域(特にアクセッション番号M73260によりGenBankにおいて、および参考文献(J Chroboczek et al., Virology 1992, 186:280-285)において開示されているhAD5の配列を参照してヌクレオチド約459からヌクレオチド約3510)における欠失によって複製不能にされた。前記欠失アデノウイルスはE1発現293(F. Graham et al., J Gen Virol 1977, 36:59-72)またはPER細胞、特にPER.C6(F Falloux et al., Human Gene Therapy 1998, 9:1909-1917)で増殖させる。ヒトアデノウイルスは、E3領域(具体的にはヌクレオチド約28592からヌクレオチド約30470)において欠失させることができる。E1領域の欠失はE3領域の欠失と一緒に実施することができる(例えば以下を参照されたい:J. Shriver et al. Nature, 2002, 415, 331-335;F. Graham et al Methods in Molecular Biology Vol .7: Gene Transfer and Expression Protocols (E. Murray Ed.), The Human Press Inc, 1991, p 109-128;Y. Ilan et al Proc. Natl. Acad. Sci. 1997, 94, 2587-2592;米国特許6,133,028号;米国特許6,692,956号;S. Tripathy et al Proc. Natl. Acad. Sci. 1994, 91, 11557-11561;B. Tapnell Adv. Drug Deliv. Rev.1993, 12, 185-199;X. Danthinne et al Gene Therapy 2000, 7, 1707-1714;K. Berkner Bio Techniques 1988, 6, 616-629;K. Berkner et al Nucl. Acid Res. 1983, 11, 6003-6020;C. Chavier et al J. Virol. 1996, 70, 4805-4810)。挿入部位は、E1および/またはE3座位(領域)の部分的または完全な欠失後、結局E1および/またはE3領域であり得る。発現ベクターがアデノウイルスのとき、発現されるべきポリヌクレオチドは、真核細胞で機能するプロモーター、例えば強力なプロモーター、例えばサイトメガロウイルス極初期遺伝子プロモーター(CMV-IEプロモーター)、具体的にはヌクレオチド約-734からヌクレオチド約+7のエンハンサー/プロモーター領域(M Boshart et al., Cell 1985, 41:521-530)またはpCIベクター(Promega Corp.)のエンハンサー/プロモーター領域の制御下に挿入される。CMV-IEプロモーターは有利にはネズミまたはヒト起源である。伸長因子1αのプロモーターもまた用いることができる。筋特異的プロモーターもまた用いることができる(X. Li et al., Nat Biotechnol 1999, 17:241-245)。強力なプロモーターはまたプラスミドベクターに関連して本明細書で考察される。ある実施態様では、スプライシング配列はエンハンサー/プロモーター領域の下流に配置することができる。前記は例えば、CMV-IE遺伝子から単離したイントロン1(R. Stenberg et al., J Virol 1984, 49:190)、ウサギまたはヒトβグロビン遺伝子、特にβグロビン遺伝子のイントロン2、免疫グロブリン遺伝子から単離されたイントロン、SV40初期遺伝子のスプライシング配列、またはpCIベクター(Promega Corp.)から単離されたキメライントロン(マウス免疫グロブリンアクセプター配列と融合させたヒトβグロビン遺伝子ドナー配列を含む)(GenBankアクセッション番号CVU47120のヌクレオチド約890からヌクレオチド約1022)である。ポリ(A)配列およびターミネーター配列は発現されるべきポリヌクレオチドの下流に挿入することができる。前記は例えば、ウシ成長ホルモン放出ホルモン遺伝子(特にGenBankアクセッション番号BOVGHRH(AF242855)のヌクレオチド約2339からヌクレオチド約2550)、ウサギβグロビン遺伝子またはSV40後期遺伝子ポリアデニル化シグナルである。
【0035】
別の実施態様では、ウイルスベクターはイヌアデノウイルス、特にCAV-2である(例えば以下を参照されたい:L. Fischer et al. Vaccine, 2002, 20, 3485-3497;米国特許5,529,780号;米国特許5,688,920号;PCT出願番号WO95/14102)。CAVの場合、挿入部位は、E3領域および/またはE4領域と右ITR領域との間に位置する領域に存在し得る(米国特許6,090,393号:米国特許6,156,567号を参照されたい)。ある実施態様では、挿入物は、プロモーター(例えばサイトメガロウイルス極初期遺伝子プロモーター(CMV-IEプロモーター)またはヒトアデノウイルスベクターについて既に述べたプロモーター)の制御下にある。ポリ(A)配列およびターミネーター配列は発現されるべきポリヌクレオチドの下流に挿入でき、前記は例えばウシ成長ホルモン遺伝子またはウサギβグロビン遺伝子ポリアデニル化シグナルである。
別の具体的な実施態様では、ウイルスベクターは、ヘルペスウイルス、例えばウマヘルペスウイルス(EHV1−5)、ブタヘルペスウイルス(PRV)、イヌヘルペスウイルス(CHV)またはネコヘルペスウイルス(FHV)である。挿入部位は、チミジンキナーゼ遺伝子、ORF3またはUL43 ORF(CHVのためのUL43 ORF;米国特許6,159,477号を参照されたい)に存在し得る。ある実施態様では、発現されるべきポリヌクレオチドは、真核細胞で機能するプロモーター、有利にはCMV-IEプロモーター(ネズミまたはヒト)の制御下で挿入される。ポリ(A)配列およびターミネーター配列は発現されるべきポリヌクレオチドの下流に挿入でき、前記は例えばウシ成長ホルモン遺伝子またはウサギβグロビン遺伝子ポリアデニル化シグナルである。
より一般的には、本発明は任意のプラスミド(EP-A2-1001025;P. Chaudhuri)を含むin vivo発現ベクターを包含し、前記は、アフリカウマ病ウイルスポリペプチド、その変種またはそのフラグメントのポリヌクレオチドまたは遺伝子およびそのin vivo発現に必要なエレメントを含み、さらにこれを宿主細胞でin vivo発現させる。
【0036】
本発明のさらに別の実施態様にしたがえば、発現ベクターは、プラスミドベクターまたはDNAプラスミドベクター、特にin vivo発現ベクターである。具体的で非限定的な例では、pVR1020または1012プラスミド(VICAL Inc.;Luke C. et al., Journal of Infectious Diseases, 1997, 175, 91-97;Hartikka J. et al., Human Gene Therapy, 1996, 7, 1205-1217;例えば米国特許5,846,946号および6,451,769号を参照されたい)を、ポリヌクレオチド配列の挿入用ベクターとして用いることができる。pVR1020プラスミドはpVR1012から誘導され、ヒトtPAシグナル配列を含む。ある実施態様では、ヒトtPAシグナルはGenBankアクセッション番号HUMTPA14のアミノ酸M(1)からアミノ酸S(23)を含む。別の具体的で非限定的な例では、ポリヌクレオチド配列の挿入用ベクターとして用いられるプラスミドは、GenBankアクセッション番号U28070のアミノ酸M(24)からアミノ酸A(48)のウマIGF1シグナルペプチド配列を含むことができる。参考にするか、または実際に用いることができるDNAプラスミドに関する更なる情報は、例えば米国特許6,852,705号、6,818,628号、6,586,412号、6,576,243号、6,558,674号、6,464,984号、6,451,770号、6,376,473号および6,221,362号で見出される。
本明細書で用いられるように、“プラスミド”という用語は、本発明のポリヌクレオチドおよび所望の宿主または標的の細胞でのそのin vivo発現に必要なエレメントを含む任意のDNA転写ユニットを含むことができる。前記に関連して、スーパーコイルまたは非スーパーコイル、環状プラスミドが、線状形と同様に本発明の範囲内に含まれることを特記しておく。プラスミドはまた、他の転写調節エレメント、例えばイントロン型の安定化配列を含むことができる。いくつかの実施態様では、プラスミドは、CMV-IEの第一のイントロン(WO89/01036)、ウサギベータグロビン遺伝子のイントロンII(van Ooyen et al.)、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA、Montgomery et al.)によってコードされるタンパク質のシグナル配列、および/またはポリアデニル化シグナル(ポリA)、具体的にはウシ成長ホルモン(bGH)遺伝子のポリA(米国特許5,122,458号)またはウサギベータグロビン遺伝子もしくはSV40ウイルスのポリAを含むことができる。
【0037】
各プラスミドは、AHSV抗原、エピトープまたは免疫原(場合によって異種ペプチド配列と融合されてある)をコードするポリヌクレオチドの他に、変種、アナローグまたはフラグメントを含むかまたは本質的にそれらから成り、それらはプロモーターと作動できるように連結されてあるか、またはプロモーターの制御下にあるか、またはプロモーターに依存している。一般的には、真核細胞で機能する強力なプロモーターを利用することが有利である。好ましい強力なプロモーターは、ヒトまたはネズミ起源、または場合によって別の起源(例えばラットまたはモルモット)の極初期サイトメガロウイルスプロモーター(CMV-IE)である。CMV-IEプロモーターは実際に存在するプロモーター部分を含むことができる(前記はエンハンサー部分と結合していてもしてなくてもよい)。EP-A-260 148;EP-A-323 597;米国特許5,168,062号、5,385,839号および4,968,615号をPCT出願WO87/03905と同様に参照することができる。CMV-IEプロモーターは有利にはヒトCMV-IE(M Boshart et al., Cell 1985, 41:521-530)またはネズミCMV-IEである。本発明の実施で有用に利用できる強力な細胞性プロモーターは、細胞骨格遺伝子のプロモーター、例えばデスミンプロモーター(M Kwissa et al.)またはアクチンプロモーター(J Miyazaki et al.)である。これらプロモーターのサブフラグメント、すなわち適切なプロモーター活性を維持するこれらプロモーターの部分(例えばWO98/00166または米国特許6,156,567号の切端CMV-IEプロモーター)は本発明の範囲内に含まれ、本発明の実施に用いることができる。結果として、本発明の実施で有用なプロモーターには、誘導体および/または完全長プロモーターのサブフラグメントであって、適切なプロモーター活性したがってプロモーターとしての機能を維持し、さらに有利には、前記誘導体またはサブフラグメントが誘導された実際のもしくは完全長のプロモーターの活性と実質的に類似する、例えば、完全長のCMV-IEプロモーターの活性に匹敵する米国特許6,156,567号の切端CMV-IEプロモーターの活性と類似するプロモーター活性を有し得る前記誘導体および/またはサブフラグメントが含まれる。したがって、本発明の実施で用いられるCMV-IEプロモーターは、完全長プロモーターのプロモーター部分および/または完全長プロモーターのエンハンサー部分をその誘導体および/またはサブフラグメントと同様に含むか、または本質的に前記から成るか、または前記から成り得る。
【0038】
より一般的に言えば、プロモーターはウイルスまたは細胞起源である。本発明の実施で有益に用いることができるCMV-IE以外の強力なウイルスプロモーターは、SV40ウイルスの初期/後期プロモーターまたはラウス肉腫ウイルスのLTRプロモーターである。本発明の実施で有益に用いることができる強力な細胞プロモーターは、細胞骨格遺伝子のプロモーター、例えばデスミンプロモーター(M Kwissa et al., Vaccine 2000, 18:2337-2344)またはアクチンプロモーター(J Miyazaki et al., Gene 1989, 79:269-277)である。
これらプロモーターのサブフラグメント、すなわち適切なプロモーター活性を維持するこれらプロモーターの部分は本発明の範囲内に含まれ、例えばPCT出願WO98/00166または米国特許6,156,567号の切端CMV-IEプロモーターを本発明の実施に用いることができる。結果として、本発明の実施で用いられるプロモーターには、誘導体および完全長のプロモーターのサブフラグメントであって、適切なプロモーター活性したがってプロモーターとしての機能、好ましくは、前記誘導体またはサブフラグメントが誘導された実際のまたは完全長のプロモーターの活性と実質的に類似するプロモーター活性を維持するもの、例えば、完全長のCMV-IEプロモーターの活性に匹敵する米国特許6,156,567号の切端CMV-IEプロモーターの活性と類似するものが含まれる。したがって、本発明の実施で用いられるCMV-IEプロモーターは、完全長プロモーターのプロモーター部分および/または完全長プロモーターのエンハンサー部分を誘導体およびサブフラグメントと同様に含むか、または本質的に前記から成るか、または前記から成り得る。
好ましくは、プラスミドは他の発現制御エレメントを含むかまたは本質的に前記から成る。安定化配列、例えばイントロン配列、好ましくはCMV-IEの第一のイントロン(PCT出願WO89/01036)、ウサギベータグロビン遺伝子のイントロンII(van Ooyen et al. Science 1979, 206:337-344)を含むことは特に有利である。
プラスミドおよびポックスウイルス以外のウイルスベクターのためのポリアデニル化シグナル(ポリA)に関しては、ウシ成長ホルモン(bGH)遺伝子のポリAシグナル(米国特許5,122,458号参照)またはウサギベータグロビン遺伝子のポリ(A)シグナルまたはSV40ウイルスのポリ(A)シグナルがより多く利用され得る。
【0039】
本発明の別の実施態様にしたがえば、発現ベクターは、適切な細胞系でタンパク質のin vivo発現に用いられる発現ベクターである。発現タンパク質は、分泌後にまたは分泌後ではなく(分泌されない場合は典型的には細胞溶解が起こるかまたは細胞溶解を実施する)培養上清においてまたは培養上清から採集し、場合によっては濃縮方法(例えば限外濾過)によって濃縮し、および/または精製手段(例えばアフィニティー、イオン交換またはゲルろ過型クロマトグラフィー方法)によって精製する。
組換え発現ポリペプチドの単離および精製は、調製用クロマトグラフィー(例えばサイズ排除、イオン交換、アフィニティークロマトグラフィー)、選択性沈殿および限外濾過を含む慣用的な手段によって実施することができる。使用することができる当業界の技術の例は以下の文献で見出すことができるが、ただしこれらに限定されない:”Protein Purification Applications”, Second Edition, Simon Roe Ed., Oxford University Press。そのような組換え発現ポリペプチドは本発明の部分である。上記に記載の本発明の全てのポリペプチドの製造方法が、特に本発明のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターの使用および宿主細胞の使用が包含される。
【0040】
本発明の組換えウイルスベクターを含むワクチンは、有利には安定化剤とともに凍結乾燥することができる。凍結乾燥は、周知の標準的凍結乾燥方法にしたがって実施できる。医薬的にまたは獣医的に許容できる安定化剤は、炭水化物(例えばソルビトール、マンニトール、ラクトース、シュクロース、グルコース、デキストラン、トレハロース)、グルタミン酸ナトリウム(T. Tsvetkov et al.;E. Israeli et al.)、タンパク質(例えばペプトン、アルブミン、ラクトアルブミンまたはカゼイン)、タンパク質含有剤(例えば脱脂乳;CK Mills et al.;E Wolff et al.)、および緩衝剤(例えばリン酸緩衝剤、アルカリ金属リン酸塩緩衝剤)であり得る。アジュバントを用いて凍結乾燥調製物を溶解させることができる。
有利には、本発明の組成物またはワクチンはまた1つまたは2つ以上のアジュバントを含むことができる。
プラスミド系ワクチンは、陽イオン性脂質、有利にはDMRIE(N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウム(WO96/34109)と、または中性脂肪、例えばDOPE(ジオレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン;JP Behr)とDMRIE-DOPEを生成させて、一緒に処方することができる。ある実施態様では、混合物を即席的に作製し、さらに混合物の適切な複合体形成のために投与前に約10分から約60分、例えば約30分待つのが有利である。DOPEを用いるときは、DMRIE/DOPEのモル比は95/5から5/95であり、有利には1/1であり得る。プラスミド/DMRIEまたはDMRIE-DOPEアジュバントの重量比は、例えば50/1から1/10、10/1から1/5または1/1から1/2である。
【0041】
場合によってサイトカイン、特にGM-CSFまたはTh1(例えばIL12)を誘発するサイトカインを組成物に添加することができる。これらのサイトカインは、サイトカインタンパク質をコードするプラスミドとして添加することができる。ある実施態様では、サイトカインはイヌ起源、例えばイヌGM-CSFである(前記の遺伝子配列はGenBankデータベース(アクセッション番号S49738)に寄託されている)。この配列を用いて、WO00/77210で実施されたものと類似の態様で前記プラスミドを作製することができる。
“宿主細胞”は、外因性ポリヌクレオチド(例えば組換えプラスミドまたはベクター)の投与によって遺伝的に変異させた、または遺伝的に変異させることができる原核細胞または真核細胞を指す。遺伝的に変異させた細胞というとき、前記用語は最初に変異させた細胞とその子孫の両方を指す。有利な宿主細胞には、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、大腸癌(Caco-2)細胞、COS7細胞、MCF-7細胞、MCF-10A細胞、Madin-Darbyイヌ腎(MDCK)株、ミンク肺(Mv1Lu)細胞、MRC-5細胞、U937細胞およびVERO細胞が含まれるが、ただしこれらに限定されない。所望の配列を含むポリヌクレオチドは適切なクローニングまたは発現ベクターに挿入でき、当該ベクターを順次適切な宿主細胞に導入し複製および増幅させることができる。ポリヌクレオチドは当分野で公知の任意の手段によって宿主細胞に導入できる。問題のポリヌクレオチドを含むベクターは多数の適切な任意の手段によって宿主細胞に導入できる。前記手段には、直接取り込み;エンドサイトーシス;トランスフェクション;f-接合;エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランまたは他の物質を利用するトランスフェクション;微小発射体ボンバードメント;リポフェクション;および感染(この場合ベクターは感染性で例えばレトロウイルスベクターである)が含まれる。ベクターまたはポリヌクレオチドの導入の選択はしばしば宿主細胞の特性に左右される。
【0042】
ポリヌクレオチドワクチンは、裸のDNAおよび例えばリポソーム内もしくは陽イオン性脂質内にまたはCpGとともに処方されたDNAの両方を利用することができる。
遺伝暗号の縮退により天然のアフリカウマ病ウイルス核酸とは相違する核酸もまた本発明の範囲内に包含される。例えば、多数のアミノ酸が2つ以上のトリプレットによって指定される。同じアミノ酸を規定するコドンまたは同義コドン(例えばCAUおよびCACはヒスチジンの同義コドンである)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を与えない“サイレント”変異を生じる。本発明の組換えベクターによってコードされるアフリカウマ病ウイルスの対象タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列変異体もまた本発明に包含される。そのようなヌクレオチド変異体並びに生成されるアミノ酸変異体のいずれかおよびいずれも本発明の範囲内に包含される。
本発明の組換えベクターによってコードされるアフリカウマ病ウイルスの対象ポリペプチドの構造を、治療的または予防的有効性を強化する(例えば前記ポリペプチドの免疫原性を高める)目的のために改変することもまた可能である。そのような改変ポリペプチドは、当該タンパク質の天然に存在する形態の少なくとも1つの活性を保持するように設計されるとき、本明細書でさらに詳細に記載するアフリカウマ病ウイルスポリペプチドの機能的等価物とみなされる。そのような改変ポリペプチドは、例えばアミノ酸置換、欠失または付加によって作製することができる。
【0043】
例えば、ロイシンのイソロイシンまたはバリンによる、アスパラギン酸のグルタミン酸による、スレオニンのセリンによる隔離された置換、またはあるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸による同様な置換(すなわち保存的変異導入)は、生じる分子の生物学的活性に大きな影響を与えないであろうということを予想するのは合理的である。保存的置換は、それらの側鎖が関連性を有するアミノ酸ファミリー内で生じる置換である。遺伝的にコードされるアミノ酸は以下の4つのファミリーに分類することができる:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンはときに芳香族アミノ酸として一緒に分類される。同様な態様で、アミノ酸一覧は以下のように分類することができる:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)脂肪族=グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン(セリンおよびスレオニンは場合によって鎖式ヒドロキシルとして別個に分類される);および(4)芳香族=フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;(5)アミド=アスパラギン、グルタミン;および(6)硫黄含有=システインおよびメチオニン(例えば以下を参照されたい:Biochemistry, 2nd ed., L. Stryer ed., W.H. Freemann and Co., 1981)。ポリペプチドのアミノ酸配列の変化が機能的ホモローグを生じるか否かは、変種ポリペプチドが野生型タンパク質と類似の態様で細胞の応答を引き起こす能力を判定することによって容易に決定することができる。
【0044】
問題のエピトープに関しては、以下を参照できる:Kendrew, THE ENCYCLOPEDIA OF MOLECULAR BIOLOGY(Blackwell Science Ltd., 1995)およびSambrook et al. 1982。問題のエピトープは、例えば獣医もしくは人間に関係がある病原体または毒素、例えばアフリカウマ病ウイルス由来の免疫原の免疫学的に関連する領域またはその免疫学的に活性なフラグメントである。当業者は、ペプチドまたはポリペプチドしたがってそのコードDNAのエピトープまたはイムノドミナント領域を、煩雑な実験を実施することなく当該ペプチドまたはポリペプチドのアミノ酸および対応するDNA配列の情報から、さらに具体的なアミノ酸の性質(例えばサイズ、電荷など)およびコドンディクショナリーから決定することができる。
好ましくは、DNA配列は少なくとも抗体応答またはT細胞応答を生じる領域をコードする。T細胞およびB細胞エピトープを決定するある方法はエピトープのマッピングを必要とする。問題のタンパク質は短いオーバーラップペプチドとして合成される(PEPSCAN)。続いて個々のペプチは、天然のタンパク質によって誘導された抗体との結合能力またはT細胞もしくはB細胞活性化を誘導する能力について試験される(Janis Kuby, 1992)。
問題のエピトープを決定する別の方法は親水性タンパク質領域の選別である。親水性残基はしばしばタンパク質の表面に存在し、したがって抗体が近づくことができるタンパク質の領域である(Janis Kuby, 1992)。T細胞応答を生じることができる問題のエピトープを選別するまた別の方法は、当該タンパク質配列から潜在的なHLAアンカー結合モチーフを認定することである(前記モチーフはMHC分子とおそらく結合することが知られているペプチド配列である)。
【0045】
問題の推定的エピトープであってT細胞応答を生じるペプチドはMHC複合体で提示されるはずである。前記ペプチドは、好ましくはMHC分子との結合のために適切なアンカーモチーフを含み、十分に強い親和性で結合して免疫応答を生じるはずである。
タンパク質がT細胞応答を刺激する問題のエピトープであるか否かを決定する際のいくつかの指針には以下が含まれる。ペプチドの長さ:ペプチドは、MHCクラスI複合体に適合するために少なくとも8または9アミノ酸長、MHCクラスII複合体に適合するために少なくとも13−25アミノ酸長である。この長さは、MHC複合体と結合するペプチドについて最小ある。細胞は発現されたペプチドを切断することができるので、ペプチドはこれらの長さよりも長いことが好ましい。種々のクラスIまたはクラスII分子と十分に強い特異性でペプチドを結合させて免疫応答を生じさせる適切なアンカーモチーフをペプチドは含むはずである(以下を参照されたい:M Bocchia et al.;VH Englehard, 1994)。前記は、問題のタンパク質の配列をMHC分子と密接に関連するペプチドの発表された構造と比較することによって煩雑な実験を行うことなく実施することができる。
さらにまた、当業者は、当該タンパク質配列をタンパク質データベースに列挙された配列と比較することによって問題のエピトープを確認することができる。
さらにまた別の方法は、単純に問題のタンパク質の部分を作製または発現させ、問題のタンパク質のそれらの部分に対するモノクローナル抗体を作製し、続いてそれら抗体が、当該タンパク質が由来した病原体のin vitro増殖を阻害するか否かを確認するものである。当業者は、問題のタンパク質の部分を作製または発現させ、前記タンパク質に対する抗体がin vitro増殖を阻害するか否かについて解析するために、本明細書または当分野で示された他の指針を用いてもよい。
【0046】
さらに別の実施態様では、1つまたは2つ以上のアフリカウマ病ウイルスタンパク質、例えばVP2および/またはVP5(前記は、イムノドミナント非中和エピトープを抑えこむためにその天然の形態から改変されている)をコードする1つまたは2つ以上の核酸を含む組換えベクターを提供する。イムノドミナント非中和エピトープは、例えば免疫応答を中和エピトープから別の方向に誘導することによって中和エピトープに対抗するおとりとして作用する。イムノドミナント非中和エピトープは、病原体(例えばアフリカウマ病ウイルス)の免疫原性タンパク質で見出され得る。
本発明は、例えば天然の配列のアミノ酸残基の欠失および/または挿入および/または置換によってその天然の形態から改変されてある、1つまたは2つ以上のアフリカウマ病ウイルスタンパク質をコードする核酸を含む組換えベクターおよび改変組換えウイルスを包含する。
“免疫原性組成物”、“免疫学的組成物”および“ワクチン”に関して、前記ベクター(またはその発現生成物)を含む免疫学的組成物は、免疫学的応答(局所的または全身的)を誘引する。前記応答は防御的であり得るが、かならずしも防御的である必要はない。本発明の組換え体またはベクター(またはその発現生成物)を含む免疫原性組成物は、同様に局所的または全身的免疫学的応答(防御的である得るが、そうであるとは限らない)を誘引する。ワクチン組成物は局所的または全身的防御応答を誘引する。したがって、“免疫学的組成物”および“免疫原性組成物”という用語は“ワクチン組成物”を含む(前の2つの用語は防御性組成物であり得るので)。本発明は免疫学的、免疫原性またはワクチン組成物を包含する。
【0047】
本発明にしたがえば、組換えベクター、例えばウイルス(例えばポックスウイルス)は、外来性のアフリカウマ病ウイルス遺伝子または核酸分子の遺伝子生成物発現する。アフリカウマ病ウイルス特異的ウイルスタンパク質または特異的アフリカウマ病ウイルスタンパク質由来エピトープをコードする特異的核酸分子が、組換えベクター、例えばウイルス(例えばポックスウイルスベクター)に挿入され、生じたベクター、例えば組換えウイルス(例えばポックスウイルス)を用いて動物に感染させるか、または動物に投与するためにin vitroで生成物を発現させる。アフリカウマ病ウイルス遺伝子生成物の動物での発現は、アフリカウマ病ウイルスに対する免疫応答を動物で生じる。したがって、組換えベクター、例えばウイルス、例えば本発明の組換えポックスウイルスを免疫学的組成物またはワクチンで用い、免疫応答を誘発する手段を提供することができる。
組換えベクター、例えば組換えウイルス、例えば組換えポックスウイルス-AHSV、またはその発現生成物のための投与手段は、本発明の組成物、例えば免疫学的もしくはワクチン組成物または治療用組成物(例えば組換えベクターまたは組換えウイルス、例えばポックスウイルスまたはその発現生成物を含む)の投与のための投与手段と同様に、非経口的ルート(皮内、筋肉内または皮下)によることができる。
【0048】
ベクターまたは組換えウイルス-AHSV、例えばポックスウイルス-AHSV、またはその発現生成物、またはそのような発現生成物および/またはベクターまたはウイルスを含む組成物を任意の年齢または性別のウマに投与して、例えばアフリカウマ病ウイルスに対する免疫学的応答を誘引し、それによって例えばアフリカウマ病ウイルスおよび/またはアフリカウマ病ウイルスに付随する他の病原性続発症を予防することができる。有利には、ベクターまたは組換えウイルス-AHSV、例えばポックスウイルス-AHSV、またはその発現生成物、またはそのような発現生成物および/またはベクターまたはウイルスを含む組成物をウマ(新生仔を含む)および/または妊娠雌馬に投与して、妊娠期間中の能動免疫および/または母体抗体から新生仔への受動免疫が付与される。好ましい実施態様では、本発明は、アフリカウマ病ウイルス由来の免疫原、またはそのような免疫原の問題のエピトープ(例えばAHSV VP2および/またはVP5由来の免疫原)、および/またはこれらVpの任意の1つもしくは2つ以上またはVpの組み合わせによって発現される問題のエピトープを含む組成物による、および/またはそのような免疫原または問題のエピトープを発現するベクターによる雌ウマ(例えば成熟雌馬)の接種を提供する。前記接種は、出産前、および/または交尾前、および/または妊娠期間中、および/または周産期前でもよく、および/または一生にわたって反復してもよい。有利には、交尾前に少なくとも1回の接種が実施される。さらにまた有利には、続いて1回の接種が、妊娠期間中、例えば妊娠中期(妊娠約5−6カ月)および/または妊娠終了時(または妊娠約10−11ヶ月)に実施される。したがって、有利な接種計画は交尾前の接種および妊娠中のブースター接種である。その後は再接種が、各交尾前および/または妊娠期間中(ほぼ妊娠中期(妊娠約5−6カ月)および/または妊娠終了時(または妊娠約10−11ヶ月))に実施し得る。好ましくは、再接種は妊娠期間中のみであり得る。別の好ましい実施態様では、仔馬、例えばワクチン接種雌馬(例えば本明細書で考察したように接種)に由来する仔馬は、誕生後最初の数カ月以内に、例えば誕生後3および/または4カ月、および/または4および/または5カ月、および/または5および/または6カ月、および6カ月で接種される。より有利には、そのような仔馬は続いて(最初の接種から)2から8週間後にブースターを受ける。したがって、仔と雌ウマ(例えば成熟雌馬)の両方に本発明の組成物を投与することができ、および/または仔と雌ウマの両方が本発明の方法の実施の対象であり得る。接種は本明細書に記載の用量で実施できる。ポックスウイルスまたはウイルス組成物の投与および母体免疫に関しては、米国特許5,338,683号を参照されたい。
【0049】
組換えウイルスおよびその発現生成物の投薬量、投与経路、処方、アジュバントおよび使用に関連して、本発明の組成物は、好ましくは皮内、皮下または筋肉内ルートによる非経口的投与または粘膜投与のために用いることができる。粘膜投与を用いるときは、口、眼または鼻のルートを用いることができる。さらに別の特徴では、本発明は、本発明の組換え体またはベクター(例えばウイルス、例えば組換えポックスウイルス)の発現生成物、および使用(したがって例えば治療、予防、診断または検査用の免疫学的またはワクチン組成物を作製するため)、および組換え体または本発明のウイルス(例えばポックスウイルス)由来のDNA(DNAプローブおよびPCRプライマーの構築で有用)に関する。
本発明の組換えベクターまたはウイルス-AHSV(例えばポックスウイルス-AHSV組換え体)免疫学的もしくはワクチン組成物または治療用組成物は、医薬または獣医分野の業者によく知られた標準的技術にしたがって調製することができる。そのような組成物は、年齢、性別、重量および投与経路のような因子を考慮しながら、獣医分野の業者によく知られた調剤および技術によって投与することができる。前記組成物は、単独で投与することができるが、また複数の組成物とともに、例えば“他の”免疫学的組成物または弱毒化、不活化組換えワクチンもしくは治療用組成物とともに同時投与、または連続投与することができ、それによって本発明の多価または“カクテル”またはコンビネーション組成物およびそれらを用いる方法を提供する。前記組成物は、アフリカウマ病ウイルス成分(例えば、アフリカウマ病ウイルスの免疫原もしくは問題のエピトープを発現する組換えベクター(例えばプラスミドまたはウイルス)、またはアフリカウマ病ウイルス免疫原もしくは問題のエピトープを発現するポックスウイルス、および/またはアフリカウマ病ウイルス免疫原もしくは問題のエピトープ)、および1つまたは2つ以上の無関係のウマ病原体ワクチン(例えば問題のエピトープ、免疫原および/またはそのような問題のエピトープまたは免疫原を発現する組換えベクターまたはウイルス(例えば組換えウイルス、例えば組換えポックスウイルス))の組合せを含むことができる。前記1つまたは2つ以上の無関係のウマ病原体ワクチンは、例えば1つまたは2つ以上のウマの細菌性および/またはウイルス性病原体の1つまたは2つ以上の免疫原または問題のエピトープであり、前記ウマの問題のエピトープまたは免疫原は、例えば以下の1つまたは2つ以上に由来する:ウマヘルペスウイルス(EHV)、ウマインフルエンザウイルス(EIV)、ウマ西ナイルウイルス(WNV)、東部ウマ脳脊髄炎(EEE)、西部ウマ脳脊髄炎(WEE)およびベネズエラウマ脳脊髄炎(VEE)、破傷風、狂犬病およびポトマックウマ熱+EPM。繰り返せば、成分および投与態様(連続投与または同時投与)は、投薬量と同様に年齢、生物、重量および投与ルートのような要件を考慮しながら決定することができる。これに関しては、米国特許5,843,456号を参照できる(前記特許は参照により本明細書に含まれ、前記は狂犬病組成物および組み合わせ組成物およびその使用に関する)。
【0050】
本発明の組成物の例には、粘膜投与(例えば口、鼻、眼などの投与)用の液体調製物(例えば懸濁物)、および非経口、皮下、皮内、筋肉内(例えば注射可能)投与用調製物、例えば無菌的懸濁物または乳液が含まれる。そのような組成物では、組換えポックスウイルスまたは免疫原は、適切な担体、希釈剤または賦形剤(例えば滅菌水、生理学的食塩水など)と混合することができる。組成物はまた、凍結乾燥または凍結することができる。組成物は、補助物質、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、アジュバント、保存料などを投与ルートおよび所望の調製物に応じて含むことができる。
組成物は以下から選択される少なくとも1つのアジュバント化合物を含むことができる:水酸化アルミニウム、代謝性油(テルペン炭化水素およびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む)、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマー、無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマー、および免疫刺激複合体マトリックス(ISCOM)(QUIL Aノグリコシド、コレステロール、抗原および/またはリン脂質を含む)。
【0051】
好ましいアジュバント化合物はアクリル酸またはメタクリル酸のポリマーであり、前記は特に糖またはポリアルコールのポリアルケニルエーテルで架橋される。これらの化合物はCARBOMER(Pharmeuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)という名称で知られている。当業者はまた米国特許2,909,462号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)を参照できる。前記文献には、少なくとも3つ(好ましくは8つを越えない)のヒドロキシル基を含み、少なくとも3つのヒドロキシル基の水素原子は少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置換されてあるポリヒドロキシル化化合物で架橋されたアクリル酸ポリマーが記載されている。好ましいラジカルは2から4の炭素原子を含むもの、例えばビニル、アリルおよび他のエチレン誘導不飽和基である。前記不飽和ラジカルはそれら自体他の置換基、例えばメチルを含むことができる。CARBOPOL(商標)(BE Goodrich, Ohio, USA)の名称で販売されている製品が特に適切である。それらは、アリルシュクロースまたはアリルペンタエリトリトールで架橋される。それらの中で特にCARBOPOL(商標)974P、934Pおよび971Pが挙げられる。
無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーの中で、無水マレイン酸とエチレンのコポリマーであって線状または架橋(例えばジビニルエーテルで架橋)されているコポリマーEMA(商標)(Monsanto)が好ましい。以下の文献を参照することができる:J Fields et al. 1990(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
それらの構造を見れば、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーおよびコポリマーEMA(商標)は、好ましくは以下の式の基本単位から形成される:
【0052】

【0053】
式中、
R1およびR2は同一でも異なっていてもよく、HまたはCH3を表し;
x=0または1で、好ましくはx=1であり;
y=1または2で、x+y=2である。
コポリマーEMA(商標)については、x=0で、y=2である。カルボマーについてはx=y=1である。
【0054】
これらポリマーを水に溶解することによって酸性溶液が生じ、この溶液は、ワクチン自体をその中に取り込むアジュバント溶液を生成するために中和され、好ましくは生理学的pHに中和されるであろう。ポリマーのカルボキシル基は続いて部分的にCOO-形となる。
好ましくは、本発明のアジュバント溶液(特にカルボマー溶液)は、蒸留水中で、好ましくは塩化ナトリウムの存在下で調製され、得られる溶液は酸性pHである。このストック溶液は、前記をまたはその実質的部分を所望の量のNaCl含有水、好ましくは生理学的食塩水(NaCl 9g/L)にいくつかの部分に分けて一度に全部添加することによって稀釈され、同時にまたは引き続いて好ましくはNaOHで中和(pH7.3から7.4)される。この生理学的pHの溶液はそのままワクチンと混合するために用いられ、特に凍結乾燥形、液体形または凍結形で保存されるであろう。
最終ワクチン組成物におけるポリマー濃度は0.01%から2%w/v、より具体的には0.06%から1%w/v、好ましくは0.1%から0.6%w/vである。
本発明の組成物はまた、文献(V Ganne et al. 1994)に記載されているように、水中油としてまたは油中水として懸濁水状態で処方することができる。
標準的な成書、例えば”Remington’s Pharmaceutical Science”(17th, edition, 1985)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)を参考にして、煩雑な実験を実施することなく適切な調製物を作製することができる。
多様な投与ルートに適した形態の組成物が本発明に包含される。さらにまた、有効な投与量および投与ルートは、既知の要件、例えば年齢、性別、重量、および公知でありさらに煩雑な実験を必要としない他のスクリーニング方法によって決定される。各活性物質の投与量は、本明細書に引用した文書(または本明細書に引用した文書に参照または引用された文書)に記載されたとおりであり得る。
【0055】
in vivo発現を得るために、本明細書および/または本明細書に引用した文書に記載された投与量に対応する適切な量で組換えベクターを投与することができる。例えば、ウイルス懸濁液のための適切な範囲を経験的に決定することができる。本発明のウイルスベクターまたは組換え体は、単位用量当たり、例えば2mL用量当たり、少なくとも約103pfu、より好ましく約104pfuから約1010pfu、例えば約105pfuから約109pfu、例えば約106pfuから約108pfuの量でウマに投与するか、または細胞に感染もしくはトランスフェクトすることができる。さらに、2つ以上の組換え体によって2つ以上の遺伝子生成物が発現される場合は、各組換え体をこれらの量で投与するか、または組換え体の合計がこれらの量を含むように各組換え体を投与することができる。本発明で用いられる組換えベクター組成物では、投与量は、本明細書に引用した文書に記載されているか、または本明細書に記載されているか、または本明細書に引用した文書に参照または引用されている文書に記載されているとおりである。例えば、組換えベクター組成物中の各DNAの適切な量は1μgから2mg、好ましくは50μgから1mgである。当業者はDNAベクターに関して本明細書に引用した文書(または本明細書に引用した文書に引用または参照された文書)を参考にして、煩雑な実験を実施することなく本発明の組換えDNAベクター組成物に適した他の投与量を確認することができる。
【0056】
しかしながら、組成物の投与量、その中の成分の濃度および組成物を投与するタイミング(それらは適切な免疫学的応答を誘引する)は、複数の方法によって、例えば血清の抗体力価の測定(例えばELISAおよび/または血清中和アッセイの解析による)によって、および/またはウマでのワクチン接種チャレンジ判定によって決定することができる。そのような決定には、当業者の知識、本明細書および本明細書に引用した文書によって煩雑な実験は要求されない。さらに、連続投与の期間は同様に、本開示および当業者の知識により確認できる方法を用いて、煩雑な実験を実施することなく確かめることができる。
アフリカウマ病ウイルス免疫原または問題のエピトープはアフリカウマ病ウイルスの9つの血清型のいずれかから入手するか、またはアフリカウマ病ウイルス遺伝子またはその部分のin vitro組換え体発現によって入手できる。発現用ベクター(または組換え体)の製造および/または使用の方法、並びに発現生成物およびそれらから得られる生成物(例えば抗体)の使用の方法は、本明細書に引用した文書および本明細書に引用した文書に参照または引用された文書に開示された方法によるかまたはそれらに類似することができる。
適切な投与量はまた下記の実施例を基準にすることができる。
具体的な特徴では、本発明は、アフリカウマ病ウイルス由来のDNA配列をその中に含む組換えポックスウイルス、有利にはポックスウイルスゲノムの非本質領域に前記DNA配列を含む組換えポックスウイルスを目的とする。前記組換えポックスウイルスは、外来性アフリカウマ病ウイルス遺伝子の遺伝子生成物を発現する。具体的には、アフリカウマ病ウイルスのウイルスタンパク質をコードするVP2およびVP5遺伝子を単離し、性状を決定してALVAC(カナリアポックスベクター)組換え体に挿入した。
本発明のある実施態様は新規なAHSV株、すなわちAHSV-Jane株に関する。
本発明の好ましい実施態様をこのように詳細に述べてきたが、上述の文書で規定した本発明は、多くの明確なそれらの変型が本発明の範囲を外れることなく可能であるので、上記に記載した具体的な内容に限定されないことは理解されよう。
以下の非限定的な実施例によって本発明をこれからさらに詳しく述べる。
【0057】
実施例
更なる労作を必要とすることなく、当業者は前述の記載を用いて本発明を完全に実施できると考える。以下の詳細な実施例は単なる例示と解し、いかなる場合においても前述の開示を制限するものと解するべきではない。当業者は、反応物質並びに反応条件および技術に関して本方法から適切な変型を直ちに認識するであろう。
DNA挿入物、プラスミドおよび組換えウイルスベクターの構築は、以下のJ. Sambrookらの成書に記載された標準的な分子生物学技術を用いて実施した(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989)。本発明で使用した全ての制限フラグメントは“Geneclean”キット(BIO 101 Inc., La Jolla, Calif)を用いて単離した。
【実施例1】
【0058】
カナリアポックス組換えウイルスベクターの構築
アフリカウマ病ウイルスのVP1およびVP5をコードする合成遺伝子を組換えカナリアポックスウイルスベクターの構築で用いた。簡単に記せば、アフリカウマ病ウイルスの血清型4、5および9のVP2およびVP5をそれぞれコードするL2およびM5遺伝子セグメントを逆転写ポリメラーゼ連鎖反応によって増幅させ、文献(KR Bonneau, BA Mullens(2001)、KR Bonneau et al.(1999))に以前に記載されたプロトコルを用いてシークェンシングを実施した。
AHSV-4のビルレント野外株(以後“AHSV4 Jane株”と称する)のL2/VP2(配列番号:48)およびM5/VP5(配列番号:50)遺伝子の配列を、GenBankで入手できるAHSV血清型4の他の株の同じ遺伝子の公表されている配列と比較し、続いてGeneOptimizer(商標)ソフト(Geneart GmbH)を用いて最適化合成配列を誘導し、個々の遺伝子の各々を包含するオリゴヌクレオチドアレーを化学的に合成した。PCRによる手法を用いて前記オリゴヌクレオチドをアッセンブリングさせ、完全な完全長合成VP2およびVP5コード配列を作製した。続いて、本質的にカナリアポックスウイルスベクター媒介西ナイルウイルス(WNV-CP)ワクチンについて以前に記載(JM Minke et al. 2004a)されたように、この合成VP2およびVP5コード遺伝子をカナリアポックスウイルスベクターに再クローニングし、AHSV-カナリアポックスウイルス組換え体(AHSV-CP)を作製した。
簡単に記せば、AHSV-4のVP2をコードする合成遺伝子(配列番号:4)をカナリアポックスC3挿入ベクター(ワクシニアウイルスH6プロモーターおよびカナリアポックスC3座位のフランキングアームを含むプラスミド)にサブクローニングし、H6プロモーターの制御下にVP2(配列番号:4)遺伝子を含む発現カセットを作製した。続いて、エントモポックスウイルスアムサクタ・ムーレイ(Amsacta moorei)の42Kプロモーターの制御下に合成VP5遺伝子(配列番号:5)を含む発現カセットを構築し、H6-VP2ドナープラスミドでクローニングした。得られた挿入プラスミドは、2つの発現カセット(H6プロモーターの制御下のVP2(配列番号:4)遺伝子および42Kプロモーターの制御下のVP5遺伝子(配列番号:5))を頭-尾の向きで含んでいた。
AHSV-CPウイルス組換え体を作製するために、前記挿入プラスミドを初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)にトランスフェクトし、続いて前記にカナリアポックスウイルスを感染させた。24時間後、トランスフェクトした感染細胞を採集し、超音波処理して組換えウイルスのスクリーニングに用いた(A Piccini et al, (1987)。AHSV-特異的プローブを用い、組換え体のプラークをin situプラークリフトハイブリダイゼーション法(Sambrook et al. 1982)によりスクリーニングした。4回連続プラーク精製の後、アフリカウマ病ウイルス挿入物について100%陽性であることをハイブリダイゼーションによって確認したこの組換え体を増幅させてワクチンストックの調製に用い、-80℃で保存した。
【実施例2】
【0059】
H6プロモーター駆動合成AHSV-4-VP2および42Kプロモーター駆動合成AHSV-4-VP5を発現するpLHD3460.4ドナープラスミドの構築
図1はpLHD3460.4(配列番号:6)の構築模式図を示す(pLHD3460.4はAHSV-4-VP2およびAHSV-4-VP5ウイルスタンパク質を発現するALVAC組換え体を作製するためのC3ドナープラスミドである)。AHSV-4-VP2(配列番号:4)およびAHSV-4-VP5(配列番号:5)をコードする遺伝子は、哺乳動物細胞における発現のためのコドン最適化を有する合成物である。合成AHSV-4-VP2(配列番号:4)遺伝子をワクシニアpC3H6プロモーターの制御下に置き、合成AHSV-4-VP5(配列番号:5)遺伝子をワクシニア42Kプロモーターの制御下に置いた。前記プラスミドはまたアンピシリン耐性を付与する遺伝子を含む。
合成AHSV-4-VP2遺伝子を含むプラスミドをBamHIおよびNruIで消化した。得られた3.2KbのAHSV-4-VP2挿入物を単離し、pJY1107.5(pF8 AIV H7N2 HA)から調製したシャトルベクターのBamHI/NruI部位にクローニングし、pLHD3410.9(pF8 H6p AHSV-4-VP2)を作製した(前記はH6プロモーターのNruI部位およびその後ろにXhoI部位が続く完全長のAHSV-4-VP2を含む)。
pLHD3410.9を再度NruIおよびXhoIで消化し、H6プロモーターの3’NruIおよび完全長のAHSV-4-VP2遺伝子を含む3.2KbのDNAフラグメントを単離し、pJY1738.2から調製したALVAC C3ドナープラスミド(pC3 H6p CPV-VP2)のNruI/XhoI部位にクローニングし、pLHD3426.1(H6p-AHSV-4-VP2発現カセットを含むALVAC C3ドナープラスミド)を作製した。
AHSV-4-VP5を含むプラスミドを鋳型として、さらに用いプライマー対、13599.JY(配列番号:7)および13600.JY(配列番号:8)を用いて、SpeI部位にフランキングされる発現カセット42Kp-AHSV-4-VP5を増幅させた。プライマー3599.JY(配列番号:7)は、SpeI部位およびその後にVP5の5’配列が続く42Kプロモーターの配列を含む。プライマー13600.JY(配列番号:8)は、その後にT5NTおよびSpeI部位が続くVP5の3’配列から成る。続いて増幅発現カセットをpCR2.1(TOPOベクター)でクローニングし、pCR2.1 42Kp AHSV-4-VP5を作製した(前記が正確な配列を含むことを確認した)。
プラスミドpCR2.1 AHSV-4-VP5をSpeIで消化し、続いて42Kp-VP5発現カセットを単離し、プラスミドpLHD3426.1のSpeI部位でクローニングし、二重発現カセットH6p-AHSV-4-VP2/42Kp-Vp5を含むALVAC C3ドナープラスミド(pLHD3460.4)を作製した。前記をシークェンシングし、配列番号:6に示される正確な配列を含むことを確認した。
42Kp-AHSV-4-VP5発現カセットの増幅用プライマーは以下のとおりである:

13599.JY(配列番号:7)
5’TGACTAGTTCAAAATTGAAAATATATAATTACAATATAAAATGGGCAAGTTTACCAGCTTCCTGAAG
SpeI 42Kp

13600.JY(配列番号:8)
5’ TTAACTAGTAGAAAAATCATCAGGCGATCTTCACGCCGTACAG
SpeI T5NT

予想される分子量はAHSV-4-VP2(配列番号:1)については124.3kDaさらにAHSV-4-VP5(配列番号:2)については57kDaであった。等電点はAHSV-4-VP2については6.75さらにAHSV-4-VP5については5.8であった。両ウイルスタンパク質は主として細胞質で発現された。
【実施例3】
【0060】
組換えウイルスベクターvCP2377(ALVAC C3 H6p-合成AHSV-4-VP2/42Kp-合成AHSV-4-VP5)の構築
vCP2377組換えウイルスベクターを作製するために、初代ニワトリ胚線維芽細胞(初代CEFまたはCEF)を用いドナープラスミド(pLHD3460.4(配列番号:6))および親ウイルス(ALVAC、4.4x1010 pfu/mL)のin vitro組換えを実施した。図3はこの方法の概略である。AHSV-4-VP5特異的プローブによるプラークハイブリダイゼーションを用いて組換えウイルスベクターを確認した。
Fugene試薬(Roche, Palo Alto, California 94304-1353)を用いNotI線状化ドナープラスミドpLHD3460.4(15μg)を初代CEF細胞にトランスフェクトすることによって、in vitro組換えを実施した。続いてこのトランスフェクトした細胞にレスキューウイルスとしてALVAC(4.4x1010 pfu/mL)を感染数(MOI)10で感染させた。24時間後に、このトランスフェクション-感染実施細胞を採集して超音波処理し、組換えウイルスのスクリーニングのために用いた。
AHSV-4-VP5特異的プローブを用いプラークリフトハイブリダイゼーション法(Sambrook et al. 1982)により組換え体プラークをスクリーニングした。前記プローブは、製造業者(Amersham, Alpharetta, GA 30058, Cat #RPN3001)のプロトコルにしたがいセイヨウワサビペルオキシダーゼで標識した。3回連続プラーク精製の後、vCP2377.6.1.1(配列番号:17によって提供される部分配列)と称される組換え体が生成され、AHSV挿入物について100%陽性であることおよび空C3部位について100%陰性であることがハイブリダイゼーションによって確認された。
最終回のプラーク精製から単プラークを選択して増やし、vCP2377.6.1.1増幅のためにP1(T-25フラスコ)、P2(T-75フラスコ)およびP3(ローラーボトル)ストックを得た。P2レベルでハイブリダイゼーションにより組換え体を再確認し、挿入物について100%陽性であることおよび空C3座位について100%陰性であることを見出した。ローラーボトルから感染細胞培養液を採集し、濃縮してウイルスストックを作製した(1.2x1010 pfu/mLのvCP2377.6.1.1.が3.2mL)。マウス抗BTV4-VP2 mAbおよびマウス抗VP5 AHSV mAb 10AE12継代9(Martinez-Torrecuadrada et al. 1999, Virology 257:449-459)をウェスタンブロットおよびイムノプラークに用いた(それぞれ図7および図8)。
in vitro組換えに用いた細胞は初代ニワトリ胚線維芽細胞(初代CEF)であり、前記細胞を10%ウシ胎児血清(FBS)(JRH bioscience, Lenexa, KS 66215:γ照射カタログ番号12107、ロット番号1L0232)、4mMグルタミン(Invitrogen/BRL/Gibco, Carlsbad, California, 92008-7321, cat#11960)および1mMピルビン酸ナトリウム(Invitrogen/BRL/Gibco, cat#11360-070)補充ダルベッコー改変イーグル培養液(DMEM)(Invitrogen/BRL/Gibco, Carlsbad, California, 92008-7321, cat#25030-081)で1x抗生物質/抗菌剤(P/S/A/A, Invitrogen/BRL/Gibco, cat#15240-062)、Fugene(Roche, Lot#181444)の存在下にて増殖させた。最終ウイルス濃縮物を1mMトリス(pH9.0)に再懸濁させた。
【実施例4】
【0061】
組換えウイルスベクターvCP2377(ALVAC C3 H6p-合成AHSV-4-VP2/42Kp-合成AHSV-4-VP5)の解析
P3ストックが、AHSV-4-VP2およびAHSV-4-VP5挿入物について100%陽性であることおよび空C3座位について100%陰性であることをハイブリダイゼーションによって再確認した。ゲノムDNAの理論的制限マップ(図4)をベクターNTI(Invitrogen, Carlsbad, California)で作製した。実際の実験を行うために、ゲノムDNAをvCP2377.6.1.1.ウイルス濃縮物から抽出してBamHI、HindIIIまたはPstIで消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動によって分離した(図5)。前記の結果は、外来遺伝子配列が正確に挿入されていることを示した。
サザンブロット:BamHI、HindIIIまたはPstIで消化したゲノムDNAをナイロン膜に移し、AHSV-4-VP2プローブを用いることによってサザンブロット分析を実施した。予想サイズのバンドが観察された(すなわち16047bp、6971bp BamHI;20660bp HindIII;および13658bp、4061bp PstI)。前記の結果は、AHSV-4-VP2およびAHSV-4-VP5がC3座位に正確に挿入されていることを示した(図6)。
発現解析:初代CEF細胞にvCP2377.6.1.1.のP3ストックをMOI10で感染させ、37℃で24時間インキュベートした。続いて細胞および培養上清を採集した。サンプルタンパク質を10% SDS-PAGEで分離し、IMMOBILIONナイロン膜に移し、AHSV(アフリカウマ病ウイルス)10AE12継代9(Martinez-Torrecuadrada et al. 1999)のマウス抗VP5抗体の1:100希釈で別個に調べた。ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗血清を二次抗体として用い、バンドはAmersham検出試薬を用いて可視化した。マウス抗AHSV VP5 mAbの使用により、55から70kDaの間のタンパク質バンドがvCP2377.6.1.1.の細胞ペレットで検出され、AHSV-4-VP5タンパク質の発現が示された(図7)。培養液ではAHSV-4-VP5タンパク質の発現は検出されなかった。AHSV-4-VP2の発現は抗BTV4-VP2 mAb(Merial私有物質)では検出されなかった。
イムノプラーク:vCP2377.6.1.1.集団の均質性は、マウス抗AHSV VP5 mAb 10AE12継代9(Martinez-Torrecuadrada et al. 1999)の1:100希釈を用いてイムノプラークアッセイによって証明されたように100%であった(図8)。抗AHSV VP2抗体は入手できなかった。
配列解析: PCR増幅並びにC3座位のフランキングアームおよびAHSV-4-VP2、AHSV-4-VP5挿入物の配列解析を用いることによって、P3ストックゲノムDNAのより詳細な解析を実施した。プライマー8103JY(配列番号:13)/13616.LH(配列番号:15)および13637.LH(配列番号:16)/8104JY(配列番号:14)を用いて全C3R-AHSV-4-VP2/VP5-挿入物-C3Lフラグメントを増幅した(図9)。得られた配列(すなわち配列番号:17)は、vCP2377.6.1.1.のAHSV-4-VP2およびAHSV-4-VP5挿入物、並びにAHSV挿入物の周辺のC3左および右アームの配列が正確であることを示した。
AHSV-4-VP2プローブを増幅するためのプライマー
13625.LH(配列番号:9)5’ TACGACCACGGCACCGACATCATCT 3’
13632.LH(配列番号:10)5’ TTTTCAGCTTCTTAAAGGCGTACTC 3’
AHSV-4-VP5プローブを増幅するためのプライマー
13615.LH(配列番号:11)5’ AAGAAGATGTACAAGCTGGCCGGCA 3’
13620.LH(配列番号:12)5’ GCCGCTCGTATTCCTGCTTCACGAT 3’
vCP2377 C3アーム+挿入物のPCR増幅のためのプライマー
8103.JY(配列番号:13)5’ GAGGCATCCAACATATAAAGAAGACTAAAG 3’
8104.JY(配列番号:14)5’ TAGTTAAATACTCATAACTCATATCTG 3’
13616.LH(配列番号:15)5’ TGCCGGCCAGCTTGTACATCTTCTT 3’
13637.LH(配列番号:16)5’ CACCACACTGAAGCTGGACAGAAGA 3’
【実施例5】
【0062】
H6プロモーター駆動合成AHSV-9-VP2および42Kプロモーター駆動合成AHSV-9-VP5を発現するpCXL2415.1ドナープラスミドの構築
pCXL2415.1(配列番号:22)の全体的な構築模式図は図10に示されている。合成AHSV-9-VP2(配列番号:28)を含むプラスミドをNruI/BamHIで消化して3188bpフラグメントを単離し、NruI/BamHI-線状化pJY1107.5(pF8 H6p-AIV H7N2 HA)でクローニングした。得られたプラスミド、pCXL2275.1(pF8 H6p-AHSV-9-VP2)はH6プロモーターのNruI部位および完全長AHSV-9-VP2とその後に続くXhoI部位を含んでいる。配列確認の後、pCXL2275.1をNruI/XhoIで消化して3194bpのAHSV-9-VP2フラグメントを単離し、NruI/XhoI消化pJY1378.2(C3 ALVACドナープラスミド)でクローニングした。得られたプラスミド、pCXL2328.4(pC3 H6p-AHSV-9-VP2)は発現カセットH6p-AHSV-9-VP2を含んでいる。
42Kp-AHSV-9-VP5発現カセットを作製するために、18020CXL(配列番号:23)および18021CXL(配列番号:24)プライマーを用いて、AHSV-9合成VP5遺伝子をコードするDNAを増幅した。続いて、このPCR生成物をTOPO pCR2.1ベクターを用いてクローニングし、プラスミドpCXL2313.2(pCR2.1 42Kp-VP5)を作製した。しかしながら、pCXL2313.2はプライマー18020CKLの設計に起因してVP5遺伝子の末端にTN5T配列を含まないことが判明した。したがって、新しいプライマーセット、18041CXL(配列番号:46)および18042CXL(配列番号:47)を合成し、前記を用いてプラスミドpCXL2313.2のVP5遺伝子の末端にT5NT配列を導入した。部位指定変異導入はStratagene社のQuickChangeキットを用いて実施し、得られたプラスミド、pCXL2399.3をシークェンシングして、SpeI部位にフランキングする正確な42K-AHSV-9-VP5を含むことを確認した。
続いて、プラスミドpCXL2399.3をSpeIで消化して42Kp-AHSV-9-VP5発現カセットを含む1556bpフラグメントを単離し、プラスミドpCXL2328.4のSpeI部位にクローニングしてpCXL2425.1(配列番号:22)を作製した。前記は、二重発現カセットH6p-AHSV-9-VP2/42Kp-AHSV-9-Vp5を頭尾の向きで含むALVAC C3ドナーである(図11)。AHSV-9-VP2およびAHSV-9-VP5の予想される分子量はそれぞれ123.5kDaおよび56.8kDaである。VP2およびVP5の等電点はそれぞれ8.14および5.96であり、タンパク質は主として細胞質で発現した。
【実施例6】
【0063】
組換えウイルスベクターvCP2383(ALVAC C3 H6p-合成AHSV-9-VP2/42Kp-合成AHSV-9-VP5)の構築
図12に示されているin vitro組換え(IVR)模式図にしたがって、vCP2383組換えウイルスベクターを作製した。IVRは、初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)にFuGENE(商標)HDトランスフェクション試薬(Roche, Cat#04709705001)を用いて13.2μgのSapI-線状化ドナープラスミドpCXL2415.1をトランスフェクトすることによって実施した。続いてトランスフェクトした細胞にレスキューウイルスとしてALVAC(4.4x1010 pfu/mL)を感染多重度(MOI)10で感染させた。24時間後に、このトランスフェクション-感染実施細胞を採集して超音波処理し、組換えウイルスのスクリーニングのために用いた。
AHSV-9-VP5特異的プローブを用いプラークリフトハイブリダイゼーション法(Sambrook et al. 1982)により組換え体プラークをスクリーニングした。前記プローブは、製造業者(Amersham, Cat #RPN3001)のプロトコルにしたがいセイヨウワサビペルオキシダーゼで標識した。4回連続プラーク精製の後、vCP2383.3.1.1.1およびvCP2383.9.1.1.1と称される組換え体が生成され、AHSV挿入物について100%陽性であることおよびC3座位について100%陰性であることがハイブリダイゼーションによって確認された。
最終回のプラーク精製から単プラークを選択して増やし、vCP2383.3.1.1.1増幅のためにP1(T-25フラスコ)、P2(T-75フラスコ)およびP3(6xローラーボトル)ストックを得た。ローラーボトルから感染細胞培養液を採集し、濃縮してウイルスストックを作製した(2.2x1010 pfu/mLのvCP2383.3.1.1.1が4.5mL)。
【実施例7】
【0064】
組換えウイルスベクターvCP2383(ALVAC C3 H6p-合成AHSV-9-VP2/42Kp-合成AHSV-9-VP5)の解析
P3ストックが、AHSV-9-VP2およびAHSV-9-VP5挿入物について100%陽性であることおよびC3座位について100%陰性であることをハイブリダイゼーションによって再確認した。
ゲノム解析: ベクターNTIを用いてvCP2383ゲノムDNAの理論的制限酵素ゲルを作製した(図13)。実際の実験を行うために、ゲノムDNAをvCP2383.3.1.1.1およびvCP2383.9.1.1.1から抽出してBamHI、HindIIIまたはXbaIで消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動によって分離した。前記の結果は、外来遺伝子配列が正確に挿入されていることを示した(図14)。
サザンブロット:BamHI、HindIIIまたはXbaIで消化したゲノムDNAをナイロン膜に移し、AHSV-9-VP5プローブを用いることによってサザンブロット分析を実施した。予想サイズのバンドが観察された(すなわち4940bp BamHI;20633bp HindIII;および9559bp XbaI)。前記の結果は、AHSV-9-VP2およびAHSV-9-VP5がC3座位に正確に挿入されていることを示した(図15)。
発現解析:初代CEF細胞にvCP2383.3.1.1.1のP3ストックをMOI10で感染させ、37℃で26時間インキュベートした。細胞および培養上清を採集し、サンプルタンパク質を10% SDS-PAGEで分離し、IMMOBILIONナイロン膜に移し、AHSV(アフリカウマ病ウイルス)10AE12継代9(Martinez-Torrecuadrada et al. 1999)のマウス抗VP5抗体の1:100希釈で別個に調べた。ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗血清を二次抗体として用い、バンドはAmersham検出試薬を用いて可視化した。マウス抗AHSV VP5 mAbの使用により、55から72kDaの間のタンパク質バンドがvCP2383.3.1.1.1の細胞ペレットで検出され、AHSV-9-VP5タンパク質の発現が示された(図16)。培養液中にはAHSV-9-VP5タンパク質の発現は検出されなかった。AHSV-9-VP2の発現はマウス抗BTV4-VP2 mAb(Merial私有物質)では検出されなかった。
イムノプラーク:マウス抗AHSV VP5 mAb 10AE12継代9(Martinez-Torrecuadrada et al. 1999)の1:100希釈を用いてイムノプラークアッセイによって証明されたように、vCP2383.3.1.1.1集団の均質性は100%であった(図17)。
配列解析: PCR増幅並びにC3座位のフランキングアームおよびAHSV-9-VP2(配列番号:28)とAHSV-9-VP5(配列番号:29)の挿入物の配列解析を用いることによって、P3ストックゲノムDNAのより詳細な解析を実施した。プライマー8103JY(配列番号:13)および8104JY(配列番号:14)(図18)を用いて全C3L−AHSV-9-VP2−42K-AHSV-9-VP5−C3Rフラグメントを増幅した。得られた配列(すなわち配列番号:27)は、vCP2383.3.1.1.1のAHSV-9-VP2(配列番号:28)およびAHSV-9-VP5(配列番号:29)挿入物、並びにAHSV挿入物の周辺のC3左および右アームの配列が正確であることを示した。
AHSV-9-VP5プローブを増幅するためのプライマー
18020CXL(配列番号:23)5’ CTAGACTAGTTTACTATCATTTCACGCCGAACAGCA
18021CXL(配列番号:24)5’ GCAAGGACCAGAGCGAGCGGATCA
AHSV-9-VP2プローブを増幅するためのプライマー
13660CXL(配列番号:25)5’ AGGCCTTCGCCGGCAACAGCCTGCT
13665CXL(配列番号:26)5’ AGGGCATCGATCAGGAACTCGCTCT
vCP2383 C3アーム+挿入物のPCR増幅のためのプライマー
8103.JY(配列番号:13)5’ GAGGCATCCAACATATAAAGAAGACTAAAG 3’
8104.JY(配列番号:14)5’ TAGTTAAATACTCATAACTCATATCTG 3’
【実施例8】
【0065】
H6プロモーター駆動合成AHSV-5-VP2および42Kプロモーター駆動合成AHSV-5-VP5を発現するpJSY2247.2ドナープラスミドの構築
pJSY2247.2(配列番号:32)の全体的な構築模式図は図22に示されている。合成AHSV-5-VP2(配列番号:33)遺伝子を含むプラスミドをXhoIおよびNruIで消化した。得られたAHSV-5-VP2(配列番号:33)挿入物を単離し、pJY1738.2(pC3 H6p CPV-VP2)から調製したALVAC C3ドナープラスミドのNruI/XhoI部位でクローニングし、pJSY2245.1 (H6p-AHSV-5-VP2発現カセットを含むALVAC C3ドナープラスミド)を作製した。
合成AHSV-5-VP5(配列番号:34)を含むプラスミドからSpeI部位にフランキングされる発現カセット42Kp-AHSV-5-VP5をSpeI消化によって単離し、続いてプラスミドpJSY2245.1のSpeI部位にクローニングして、二重発現カセットpJSY2247.2(配列番号:32、H6p-AHSV-5-VP2/42Kp-VP5)を含むALVAC C3ドナープラスミドを作製した。前記をシークェンシングして正確な配列を含むことを確認した。プラスミドpJSY2247.2 の図および対応する配列番号は図23に示されている。合成AHSV-5-VP2(配列番号:35)および合成AHSV-5-VP5(配列番号:36)の分子量はそれぞれ約122.9kDaおよび約57.1kDaである。合成AHSV-5-VP2(配列番号:35)および合成AHSV-5-VP5(配列番号:36)の等電点はそれぞれ約8.4および5.77である。両ウイルスタンパク質は主として細胞質で見出された。
【実施例9】
【0066】
組換えウイルスベクターvCP2398(配列番号:41)(H6-合成AHSV-5-VP2−42K-合成AHSV-5-VP5)の構築
図24に示されているin vitro組換え(IVR)の模式図にしたがって、vCP2398(配列番号:41)組換えウイルスベクターを作製した。IVRは、初代CEFにFuGENE試薬(Roche, Cat#04709705001)を用いて15μgのNotI-線状化pJSY2247.2(配列番号:32)ドナープラスミドをトランスフェクトすることによって実施した。続いてトランスフェクトした細胞にレスキューウイルスとしてALVAC(1)(2x1010 pfu/mL HM1355)を感染数(MOI)10で感染させた。24時間後に、このトランスフェクション-感染実施細胞を採集して超音波処理し、組換えウイルスのスクリーニングのために用いた。
製造業者(Amersham, Cat #RPN3001)のプロトコルにしたがいセイヨウワサビペルオキシダーゼで標識したAHSV-5-VP2特異的プローブを用いプラークリフトハイブリダイゼーション法(Sambrook et al. 1982)により組換え体プラークをスクリーニングした。。3回連続プラーク精製の後、vCP2398.2.1.1と称される組換え体が生成され、AHSV挿入物について100%陽性であることおよび空C3座位について100%陰性であることがハイブリダイゼーションによって確認された。
最終回のプラーク精製から単プラークを選択して増やし、vCP2398.2.1.1増幅のためにP1(T-25フラスコ)、P2(T-75フラスコ)およびP3(ローラーボトル)ストックを得た。P2レベルでハイブリダイゼーションにより組換え体を再確認し、挿入物について100%陽性であることおよび空C3座位について100%陰性であることを見出した。ローラーボトルから感染細胞培養液を採集し、濃縮してウイルスストックを作製した(3.3x1010 pfu/mLのvCP2398.2.1.1が2.6mL)。
【実施例10】
【0067】
組換えウイルスベクターvCP2398(配列番号:41)(H6-合成AHSV-5-VP2−42K-合成AHSV-5-VP5)の解析
P3ストックが、AHSV-5-VP2およびAHSV-5-VP5挿入物について100%陽性であることおよび空C3座位について100%陰性であることをハイブリダイゼーションによって再確認した。
ゲノム解析:ゲノムDNAの理論的制限酵素ゲルをベクターNTIで作製し、図25に示した。ゲノムDNAをvCP2398.2.1.1から抽出してBamHI、HindIIIまたはPstIで消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動によって分離した。前記の結果は、外来遺伝子配列が正確に挿入されていることを示した(図26)。
サザンブロット:BamHI、HindIIIまたはPstIで消化したゲノムDNAをナイロン膜に移し、AHSV-5-VP2プローブを用いることによってサザンブロット分析を実施した。特異的な20975bpおよび11899bpのBamHI、4980bpのHindIII、および1818bpのPstIバンドが予想サイズで観察された。前記の結果は、AHSV-5-VP2およびAHSV-5-VP5がC3座位に正確に挿入されていることを示した(図27)。
発現解析:初代CEF細胞にvCP2398.2.1.1のP3ストックをMOI10で感染させ、37℃で24時間インキュベートした。続いて細胞および培養上清を採集した。サンプルタンパク質を10% SDS-PAGEで分離し、IMMOBILIONナイロン膜に移し、AHSV(アフリカウマ病ウイルス)10AE12継代9(Martinez-Torrecuadrada et al. 1999)のマウス抗VP5抗体の1:100希釈で別個に調べた。ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗血清を二次抗体として用い、バンドはAmersham検出試薬を用いて可視化した。マウス抗AHSV VP5 mAbの使用により、55から72kDaの間のタンパク質バンドがvCP2398.2.1.1の細胞ペレットで検出され、AHSV-5-VP5タンパク質の発現が示された(図28)。培養液ではAHSV-5-VP5タンパク質の発現は検出されなかった。
イムノプラーク:マウス抗AHSV VP5 mAb 10AE12継代9(Martinez-Torrecuadrada et al. 1999)の1:100希釈を用いてイムノプラークアッセイによって証明されたように、vCP2398.2.1.1集団の均質性は100%であった(図29)。
配列解析: PCR増幅並びにC3座位のフランキングアームおよびAHSV-5-VP2とAHSV-5-VP5の挿入物の配列解析を用いることによって、P3ストックゲノムDNAのより詳細な解析を実施した。プライマー8103.JY/8104.JYを用いて全C3R-AHSV-5-VP2/VP5挿入物-C3Lフラグメントを増幅した。プライマーマップは図30に示されている。得られた配列(すなわち配列番号:41)は、vCP2398.2.1.1のAHSV-5-VP2およびAHSV-5-VP5挿入物、並びにAHSV挿入物の周辺のC3左および右アームの配列が正確であることを示した。
AHSV-5-VP2プローブを増幅するためのプライマー
18098.JY(配列番号:37)5’GGATCGAGCGGGACGAGCTGGACG 3’
18103.JY(配列番号:38)5’GCCAGCCGTACTGGAACTTGTAGC 3’
AHSV-5-VP5プローブを増幅するためのプライマー
18115.JY(配列番号:39)5’ TGCTGGACCTGAGCGCCGAGGTGA 3’
18120.JY(配列番号:40)5’ TCAGGCGATCTTCACGCCGAACAG 3’
vCP2398 C3アーム+挿入物のPCR増幅のためのプライマー
8103.JY(配列番号:13)5’ GAGGCATCCAACATATAAAGAAGACTAAAG 3’
8104.JY(配列番号:14)5’ TAGTTAAATACTCATAACTCATATCTG 3’
【実施例11】
【0068】
実験的ワクチンの作製
ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)のコンフルエントな単層でvCP2377(実施例6にしたがって作製)を4日間培養して採集し処理した後、種ウイルスマスターストックから5継代目(MSV+5)で得られた活性成分を用いて3種の異なるワクチンを作製した。MSV+5継代は、(ゲノム/遺伝子の構造安定性から)市販ワクチン製品の好例であり、典型的には市販バッチの製造に用いられる。3種のワクチン(GMP条件で作製)はアジュバントとしてCARBOMERを用い(4mg/mL)、それらはその抗原濃度が相違する。用いた具体的なCARBOMERは、CARBOMER(商標)/CARBOPOL(商標)974P(医薬品グレード、Goodrich Chemicals Europe NV(ベルギー)製)であった。使用濃度は、1用量=1mLの場合4mg/mLであった。本明細書を通じてCARBOMER(商標)974PはCARBOPOL(商標)974Pと互換的に用いられる。
ワクチン処方物で用いた活性成分vCP2377の感染力価は8.89 Log10 CCID50/mLであった。ワクチン処方物はまた以下の成分を含んでいた:0.1%のNaClを含む注射用水で1.5%カルボマー溶液で作製したアジュバント;pH7.1で生理学的に緩衝させた希釈液;pH調節のための0.1NのNaOH。
-70℃で保存した活性成分を水浴(37℃)で使用前72時間以内に融解させた。融解後直ちに、それらを+5℃で保存した。攪拌系を備えた滅菌容器に、処方物に対して80%の緩衝生理学的食塩水(pH7.1)を室温で導入した。活性成分を攪拌下で添加した。均質化後に、1NのNaOHを用いてpHを調節しながら、CARBOMER(商標)974Pの15%溶液をゆっくりと添加した。処方中に、pH値を好ましくは6.5から7.3に維持しCARBOMERの最終濃度を4mg/mLにした。CARBOMER(商標)974Pを全て添加したとき、緩衝生理学的食塩水(pH7.1)の残量を攪拌しながら添加して最終体積を完成させた。
必要ならば、水酸化ナトリウム(1N)または塩酸(1N)の添加によりpHを7.1±0.2に調整することができる。前記バルク物質を+2℃を下らない温度で少なくとも2時間攪拌することによって均質化させた。得られたバルク物質を+5℃(±3℃)で充填まで保存した。ワクチンの組成の要旨を表1に示す。
【0069】
表1

【実施例12】
【0070】
合成AHSV-4-VP2および合成AHSV-4-VP5キャプシドタンパク質を発現するvCP2377組換えウイルスベクターを含む3種のワクチンバッチの同一性の立証
974Pアジュバント添加vCP2377を含む前記3種のワクチンは以下のとおりであった:バッチ87859A011、標的の力価:7.5 Log10 DICC50/mL、バッチ87859A021、標的の力価:7.2 Log10 DICC50/mLおよびバッチ87859A031、標的の力価:6.8 Log10 DICC50/mL。処方前のvCP2377はvCP2377-1-CEPI 7007/17/07/07で、力価は8.3 Log10 DICC50/mLであった。
CARBOPOL(商標)974Pアジュバントが添加された2つの“無関係”組換えカナリアポックスを含むワクチンを陰性コントロールとした用いた(バッチ-76435V191、力価7.34 Log10 DICC50/mL)。
方法:ウイルスタンパク質AHSV-4-VP2およびAHSV-4-VP5の発現は間接免疫蛍光およびウェスタンブロットによって立証し、さらにワクチンの同一性確認のために用いた。試薬には以下が含まれていた:抗AHSV VP5 10AE12(INGENASA, 28037 Madrid)、ブタポリクローナル血清抗VP2血清型4 AHSV(GENOVAC)、抗cMycクローン4A6(マウスモノクローナルIgG1、Upstate, Cat #05-724)、抗マウスIRDye800、抗モルモットIRDye800、抗マウスCy3および抗モルモットCy3。合成AHSV-4-VP2(配列番号:1)およびAHSV-4-VP5(配列番号:2)タンパク質をコードするプラスミドを陽性コントロールとして用いた:pVR1012(挿入物を含まないコントロールプラスミド);pCG050(pVR1012に合成AHSV-4-VP2(配列番号:4)を挿入);pCG042(pVR1012に合成AHSV-4-VP5(配列番号:5)を挿入);およびpCG049(pVR1012に合成AHSV-4-VP2(配列番号:4)+vMyc-タグを挿入)。
間接免疫蛍光のためには、組換えウイルスベクター感染/プラスミドトランスフェクションニワトリ胚線維芽細胞(CEF)を96ウェルプレートに播種した(25000細胞/ウェル)。トランスフェクションの約24時間後(感染後約72時間に匹敵する)に細胞を固定した。続いて細胞を抗VP2および抗VP5一次抗体を用いて標識し、続いてCy3結合二次抗体で標識した。標識細胞を蛍光顕微鏡で観察した。
ウェスタンブロットのためには、組換えウイルスベクター感染/プラスミドトランスフェクションニワトリ胚線維芽細胞(CEF)を6 cmディッシュに播種した(1.10e6細胞/ディッシュ)。トランスフェクションの約24時間後(感染後約72時間に匹敵する)に細胞を採集した。貫通処理後、採集したサンプルをアクリルアミドトリス-グリシン4−20%ゲルに静置した。泳動後、ゲルをニトロセルロース膜に移し、抗VP2、抗VP5および抗cMyc一次抗体プローブで、その後IRDye800結合二次抗体プローブで調べた。読み取りはOdyssey-LiCorスキャナーを用いて実施した。
結果:図19に示した免疫蛍光の結果によれば、VP5タンパク質は、CARBOPOLアジュバント添加vCP2377の3バッチおよび処方前のvCP2377によってCEF感染細胞で発現した(陰性コントロールとしてvCP EIVを使用)。VP2は、処方前vCP2377およびvCPの3バッチの処方後にモルモットの3血清のプールを用いて正確に検出された。それにもかかわらず、抗VP5モノクローナル抗体と比較してポリクローナル抗体のプールを用いたときに蛍光は弱く、さらにvCP EIV陰性コントロールで少しのノイズが示された。
さらに、試薬の有効性は個々のタンパク質(挿入物を含まないコントロールプラスミド(pVR1012)、pVR1012中の合成AHSV-4-VP2(配列番号:4)(pCG050)、pVR1012中の合成AHSV-4-VP5(配列番号:5)(pCG042)およびpVR1012中の合成AHSV-4-VP2+his-タグ(pCG049)を含む)をコードするプラスミドをトランスフェクトしたCEFを用いて立証した。VP5タンパク質はpCG042プラスミドをトランスフェクトしたCEFでのみ示された。VP2タンパク質は、pCG050およびpCG049プラスミドをトランスフェクトしたCEFで正確に検出された。これらの結果は技術および試薬の有効性を立証した。
図20Aは、感染およびトランスフェクションCEFの溶解物で実施したウェスタンブロットであり、AHSV血清型4のVP2タンパク質の発現を示している。VP2タンパク質は、CARBOPOLアジュバント添加vCP2377の3バッチの各々(9A011、9A021および9A031)および処方前のvCP2377で検出された。プラスミドpCG050(pVR1012中のVP2)およびpCG049(pVR1012中のVP2+c-myc)は陽性コントロールとして用いられ、それらもまたVP2を発現した。pCG049プラスミドをトランスフェクトしたCEFの抗c-mycによる処理はトランスフェクション陽性コントロールとして用いられた。
予想した通り、vCP EIV感染CEFまたはpVR1012およびpCG042トランスフェクトCEFについてシグナルは検出されなかった。さらに、抗VP2ポリクローナル抗体はAHSV血清型4のVP2タンパク質に特異的であった。
図20Bは、感染およびトランスフェクションCEFの溶解物で実施したウェスタンブロットであり、AHSV血清型4のVP5タンパク質の発現を示している。
図20Aは感染およびトランスフェクションCEFの抗VP5ウェスタンブロットの結果を示す。VP5タンパク質は、CARBOPOL(登録商標)974Pアジュバント添加vCP2377の3バッチの各々および処方前のvCP2377で検出された。プラスミドpCG042(pVR1012中のVP5)をトランスフェクトしたCEFもまたVP5を発現した。
予想した通り、vCP EIV感染CEFでも、pVR1012、pCG050およびpCG049トランスフェクションCEFでもシグナルは検出されず、文献(Martinez-Torrecuadrada et al. 1999, Virology 257:449-459)に記載されているように、抗VP5抗体はAHSV血清型4のVP5タンパク質に明確に特異的であることを示した。
IV結論:間接免疫蛍光およびウェスタンブロットによって提供された結果はいずれも、CARBOPOL(商標)974Pアジュバントを添加した3種のvCP2377ワクチンはAHSV血清型4のVP2およびVP5タンパク質を発現することを示している。
【実施例13】
【0071】
ウマにおけるワクチン用量応答
A 実験動物
総数6頭の以前にワクチンを接種されていないウマを免疫原性実験に用いた。前記動物を標準的方法で飼養し取り扱った。
B ワクチン未接種動物における免疫原性
候補ワクチンに対するウマの免疫応答を評価するために、以前にワクチンを接種されていない6頭の仔馬を任意に2頭ずつの3グループに分けた。0日目に候補ワクチン(AHSV-CP)のそれぞれ別個の3種のバッチ調製物(バッチ:87859A011、87859A021および87859A031)の1つの3用量を2頭ずつの各群に接種した。それぞれのバッチは、図21に示すようにそれらの標的力価が異なっていた(すなわち7.3、6.96および6.28 Log10CCID50/mL)。各群で、該当用量のうち2用量を頸部の一方の側の筋肉内(IM)に投与し、さらに1用量を頸部の他方の側にIM投与した。0日目に投与したワクチンと同じバッチの1用量を用いて28日目に頸部筋肉内でウマを免疫した。ワクチンの初回用量の接種前に、頸静脈穿刺によって血液サンプルを2x7mLチューブ(SST VACUTAINERチューブ)に採取した。さらにまた、28日目および42日目に、全てのウマから頸静脈穿刺によって血液サンプルを2x7mLのSST VACUTAINERチューブに採取した。
C 解析
最初のワクチン接種の前、最初のワクチン接種期間中、2回目のワクチン接種時、および2回目のワクチン接種期間中に採集した血清サンプルを、アフリカウマ病ウイルスに対するグループ特異的ELISA試験(C Hamblin et al. 1990, Epidemiology and Infection 104:303-312)およびAHS血清型4特異的血清-ウイルス中和試験(PG Howell, 1962)に付した。
結果は図21に示されている。0日目には、全てのウマがAHSV-4に対して検出可能な血清抗体をもたず陰性であった。28日目(初回免疫後4週間)には、最高力価(Log10CCID50/mL 7.3)を含むバッチのワクチンで免疫されたウマの全てが中和力価を生じた。28日目には、中間力価(Log10CCID50/mL 6.96)を含むバッチのワクチンで免疫された2頭のウマの1頭が中和力価を生じた。最後に、最低力価(Log10CCID50/mL 6.28)を含むバッチのワクチンで免疫されたウマはいずれも中和力価を生じなかった。42日目(ブースター用量の投与後2週間)には、6頭のうち5頭が良好な抗体力価を生じた(図21)。最低力価のバッチ(87859A031)のワクチンで免疫された1頭のウマ(#53761)は、アフリカウマ病ウイルスに対する抗体が陰性であった。
【実施例14】
【0072】
組換えカナリアポックスウイルスによるウマのワクチン接種
9頭のボーアパード(Boerperd)馬(雄5頭、雌4頭)の1年子を南アフリカノザーンケーププロビンス(少なくとも先行する12ヶ月間はAHSが報告されていない地域)から入手した。これらのウマは、間接酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によってAHSV特異抗体をもたないことが確認された(前記ELISAは、AHSV血清グループのウイルスに共通のVP7コアタンパク質に対する抗体を検出する(S Maree and JT Paweska, 2005))。病原媒介動物を防ぐ隔離施設に前記のウマをこれらの実験を通して収容した。各々4頭のウマを含む2つのグループ(雄2頭および雌2頭)にCARBOPOLアジュバントを含むほぼ1mLの希釈液中の107.1または106.4 TCID50/用量のAHSV-CPをそれぞれ筋肉内接種した。動物愛護的理由から、チャレンジ接種物の病毒性の確認にはただ1頭のコントロールのウマを用いた(このウイルス株は、接種したウマで重篤または致死的な症状を引き起こすことが以前に示されたからである:JP Nurton et al. 2001)。コントロールのウマにはウマインフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質を発現する組換えカナリアポックスウイルス(EI-CP;PROTEQFLU(商標)ウマインフルエンザウイルスワクチン;Merial)が接種された(製造業者の指示にしたがって投与)。対応するワクチン構築物を28日後に全てのウマに再接種した。ワクチンのタイプに関係なく動物を一緒に収容した。全ての実験室試験はワクチン接種情報から独立して実施された。
A 方法
ウマのAHSV感染およびサンプル採集
2回目のワクチン接種から28日後に105.5 TCID50のAHSV-4を静脈内接種することによって、9頭全てのウマをチャレンジした。接種後毎日23日間、アフリカウマ病の症状発現についてウマを判定した。チャレンジ感染前並びに感染後2、5、7、9、12、14、16、19、21および23日(DPI)に完全血球算定(CBC)のために、血液をEDTA VACUTAINERTMチューブ(Becton Dickinson)に採集した。定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)およびBHK-21細胞でのウイルス単離のために、血液サンプルはまた0日目から23DPIまでEDTA VACUTAINERTMチューブ(Becton Dickinson)に毎日採集した。ワクチン接種直前およびその後は2週間間隔で全てのウマからSST血清セパレーターチューブ(Becton Dickinson)に血清を採集した。
臨床検査室アッセイ
血液学的分析は細胞電子計測装置(Coulter Electronics Inc.)を用いて実施した。
ウイルス検出
ウマ血中のAHSVの存在は、AHSVのVP7およびNS2をコードする個々の遺伝子を検出するqRT-PCRを用いて決定した(M Quan and AJ Guthrie, 2009)。サンプルは、最大40サイクル以内で蛍光が0.1の閾値を越えた場合に陽性に分類した。血液のウイルス単離は、文献(M Quan et al. 2008)に記載されたようにBHK-21細胞で実施した。
血清学的アッセイ
AHSVの血清型特異的中和抗体は、文献(PG Howell et al. 2002)に記載されたように、チャレンジウイルスとしてAHSV-4を用いたマイクロ中和アッセイによって検出した。抗体力価は、BHK-21細胞の少なくとも50%防御を提供する最高の最終血清希釈の逆数として記録した。10を超える力価を有意とみなした。
統計解析
初回ワクチン接種から8週間後およびAHSV感染から6週間後のAHSV-4中和抗体力価をマン-ホイットニーU検定(P>0.05を有意とみなす)によってワクチングループ間で比較した。
B 解析
AHSV-CPの免疫原性
ワクチン接種前には、全てのウマがELISAおよびAHSV-4マイクロ中和アッセイの両方で血清陰性であった。さらに表2で2頭を除く全てが、AHSV-CP組換えベクターによる免疫後AHSV-4に対する中和抗体を生じたが、一方、EIV-CPで免疫したウマはAHSV-4に対する中和抗体を生じなかった(表2)。ワクチン接種後8週間で、AHSV-4力価は、低用量群の力価よりも高ワクチン用量を投与したウマで優位に高かったが(P=0.021)、この違いは感染後6週間では同様には明瞭でなかった(P=0.057)。全てのウマが健康を維持し、さらにワクチン接種後の副作用を示さなかった。
【0073】
表2:アフリカウマ病血清型4中和抗体の力価

a BHK-21単層細胞の50%を越える防御を提供した最高希釈の逆数として表現
【0074】
C AHSV-CPで免疫したウマの防御
ウマに防御免疫を付与するAHSV-CPの能力を、AHSV-CP(ワクチン接種)およびEIV-CP(コントロール)で免疫したウマのチャレンジ感染後の血中AHSV核酸量(Ct値)を比較することによって判定した(図31、パネルA)。AHSV核酸はコントロールのウマ(EIV-CP)で感染後8日(DPI)から検出されたが、一方、ワクチン接種したウマの血液では全く検出されなかった。同様に、AHSV-4はコントロールのウマの血液からは繰り返し単離されたが、ワクチン接種したウマからは全く検出されなかった。
コントロール(EIV-CP)のウマは、“ディックコップ(dikkop)”またはアフリカウマ病の心臓形状と合致する臨床症状を発したが、一方、ワクチン接種したウマはいずれも実験中ずっと正常を維持した。特に、コントロールのウマは高熱および血小板減少症を発し、この症状は血中のウイルス負荷の上昇と一致した(図31、それぞれパネルBおよびC)。コントロールのウマはまた12DPIに眼窩上窩の著名な浮腫を発し、前記は21DPIまで持続した。
D AHSV-4チャレンジ暴露後のAHSV-CPワクチン接種およびコントロールのウマの血清学的応答
ワクチン接種(AHSV-CP)およびコントロール(EIV-CP)のウマの血清学的応答をAHSV-4チャレンジ感染後にSN(表2)およびELISA(データは示されていない)によって決定した。コントロールのウマは、SNアッセイで決定したときチャレンジ後4週間でAHSVに対して血清転換したが、一方、ワクチン接種ウマはいずれも血清転換を示さなかった。さらにまた、実験期間中ワクチン接種した全てのウマがELISAでVP7に対する抗体について陰性のままであった。ワクチン接種したウマのSNアッセイにおける血清転換の欠如およびELISAによるVP7に対する抗体検出の失敗は、ワクチン接種したウマではウイルス複製が起こらないかまたは極めて低いことを示唆している。同様に、チャレンジ前には血清が陰性であったコントロール(WNV-CP)のウマではチャレンジ感染後のAHSV-4中和抗体は、ワクチン接種ウマで感染から4および6週間後に観察された力価よりも顕著に高かった。
【0075】
参考文献







【0076】
本発明の好ましい実施態様を上記のように詳細に述べてきたが、添付の文書によって規定される本発明は、本発明の真髄または範囲を逸脱することなく多くの明確なそれらの変型が可能であるので、上記の記述に示す具体的な事柄に限定されるべきではないことは理解されよう。
【図1−1】

【図1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のa)およびb)を含む医薬組成物:
a)AHSV VP、AHSV VPの変種またはフラグメント、およびその混合物から成る群から選択される1つまたは2つ以上のポリペプチドをコードする1つまたは2つ以上のポリヌクレオチドを含む発現ベクター;
および
b)医薬的または獣医的に許容できるビヒクル、希釈剤または賦形剤。
【請求項2】
発現ベクターがin vivoまたはin vitro発現ベクターである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリヌクレオチドがAHSV VP2またはVP5をコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ベクターが、AHSV VP2およびAHSV VP5をコードする2つのポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ポリヌクレオチドが、配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63に記載の配列を有するポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ポリヌクレオチドが、配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63に記載の配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ポリヌクレオチドが、配列番号:3、4、5、6、17、18、19、22、27、28、29、32、33、34、41、42、43、48または50に記載の配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ベクターが、vCP2377(配列番号:17)、vCP2383(配列番号:27)、vCP2398(配列番号:41)およびその混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
医薬的または獣医的に許容できるビヒクル、希釈剤または賦形剤がCARBOPOLである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
AHSV VP、前記AHSV VPの変種またはフラグメント、およびその混合物から成る群から選択される1つまたは2つ以上のポリペプチドをコードする1つまたは2つ以上のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項11】
ポリヌクレオチドが、
a)配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63に記載の配列を有するポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
b)配列番号:1、2、20、21、30、31、35、36、44、45、49、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62または63に記載の配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列同一性を有するポリヌクレオチド;および
c)配列番号:3、4、5、6、17、18、19、22、27、28、29、32、33、34、41、42、43、48または50に記載の配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列同一性を有するポリヌクレオチドから成る群から選択され、
ベクターがin vivo発現ベクターまたはin vitro発現ベクターである、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
ベクターがウイルスベクターであり、前記ウイルスベクターがアビポックス、カナリアポックスまたは鶏痘ベクターである、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
ベクターが2つのポリヌクレオチドを含み、前記2つのポリヌクレオチドが、配列番号:4、42および18から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するAHSV VP2、並びに配列番号:5、43および19から成る群から選択されるポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するAHSV VP5をコードする、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
ポリヌクレオチドが、H6ワクシニアプロモーター、13Lワクシニアプロモーター、42Kポックスウイルスプロモーター、7.5KワクシニアプロモーターおよびPiワクシニアプロモーターから成る群から選択されるプロモーターに作動できるように連結されている、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
AHSV VP2をコードするポリヌクレオチドがH6ワクシニアプロモーターに作動できるように連結され、さらにAHSV VP5をコードするポリヌクレオチドが42Kポックスウイルスプロモーターに作動できるように連結される、請求項14に記載のベクター。
【請求項16】
請求項10に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物の有効量を宿主に投与する工程を含む、動物において免疫学的応答を誘発する方法。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物を少なくとも1回投与する工程を含む、アフリカウマ病感受性動物にワクチン接種する方法。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物を少なくとも2回投与する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
単離されたポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドが
a)配列番号:48または50に記載の配列を有するポリヌクレオチドと少なくとも80%の配列同一性を有するヌクレオチド配列;
b)配列番号:49または51に記載の配列を有するポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;または
c)配列番号:49または51に記載の配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、前記単離ポリヌクレオチド。
【請求項21】
実質的に精製されたAHSV VPであって、
a)配列番号:49または51に記載の配列を有するポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
b)配列番号:49または51に記載のアミノ酸配列の保存的変種;
c)配列番号:49または51に記載のアミノ酸配列と特異的に結合する抗体と特異的に結合する、配列番号:49または51に記載のアミノ酸配列の少なくとも8つの保存アミノ酸を含む免疫原性フラグメント;または
d)配列番号:49または51に記載のアミノ酸配列を有し、
さらに前記ポリペプチドの対象動物への投与がAHSVに対する免疫応答を生じる、前記精製AHSV VP。
【請求項22】
単離されたアフリカウマ病ウイルスAHSV4-Jane株。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32−1】
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【図32−2】
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【図33−1】
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【図33−2】
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【図34】
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【図35−1】
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【図35−2】
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【図36】
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【図37−1】
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【図37−2】
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【図37−3】
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【図37−4】
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【図38−1】
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【図38−2】
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【図38−3】
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【図39−1】
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【図39−2】
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【図39−3】
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【図39−4】
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【図40−1】
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【図40−2】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−506699(P2012−506699A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533331(P2011−533331)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/061669
【国際公開番号】WO2010/048394
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【出願人】(511102479)ユニヴァーシティー オブ プレトリア (1)
【Fターム(参考)】