説明

アヘン剤拮抗物質およびカルシウム塩を含む薬剤組成物、エンドルフィン介在病状の治療のためのこれらの使用法

【課題】エンドルフィンに関係する病状の治療用の薬剤の製造のための、アヘン剤拮抗物質の提供。
【解決手段】エンドルフィンが介在する病状の治療用の薬剤の製造のための、アヘン剤拮抗物質およびカルシウム塩の併用法であって、アヘン剤拮抗物質のナロキソン、ナルトレキソンおよび、ジプレモルフィン、ナルブフィン、ベータクロロナルトレキソニン、ナルトレキソナジン、ナロキサゾン、ナルメフェン、ベーターフナルトレキサミン、ICI 174.864、7−ベンジリデンナルトレキソン(BNTX)、ナルトリンドール、ノルビナルトルフィミン、ノルビナルトルファミン、ナルトリベンなど選択されるその他のアヘン剤拮抗物質を使用する、方法など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドルフィンに関係する病状の治療用の薬剤の製造のための、アヘン剤拮抗物質およびカルシウム塩の併用に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明によって以下が提供される:
(1)エンドルフィンが介在する病状の治療用の薬剤の製造のための、アヘン剤拮抗物質およびカルシウム塩の併用法。
(2)アヘン剤拮抗物質のナロキソン、ナルトレキソンおよび、ジプレモルフィン、ナルブフィン、ベータクロロナルトレキソニン、ナルトレキソナジン、ナロキサゾ ン、ナルメフェン、ベーターフナルトレキサミン、ICI 174.864、7−ベンジリデンナルトレキソン(BNTX)、ナルトリンドール、ノルビナルトルフィミン、ノルビナルトルファミン、ナルトリベン (NTB)、プロファドール、クァダゾシン、ナロキソナジン、D−Pen−Cys−Tyr−D−Trp−Orn−Thr−Pen−NH2(CTOP)、MR−2266、ナルトリンドールー5’−イソチオシアネート(5’−NTII)、N−メチルーD−アスパルテート(NMDA)、デキストロルファン、メ チルナルトレキソン(MNTX)、DALCE(D−Ala2、Leu5、Cys6−エンケファリン)、メチルナロキソニウム、ブレマゾシンおよびLY 274614から選択されるその他のアヘン剤拮抗物質を使用する、項目1に記載の用法。
(3)プロテアーゼと組み合わせた、項目1または2に記載の用法。
(4)カルシウム塩および場合によりプロテアーゼ、プロスタグランジン、ホルボールおよびビタミンCおよびKから選択されるその他の活性成分と組み合わせたアヘン剤拮抗物質を活性成分として含有する、ヒトならびに獣医学用薬剤組成物。
(5)プロテアーゼが、ブロメリン、パパイン、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、サブチリシン、プロテイナーゼAおよびK、カリクレイン、エラスターゼ、 キモパパイン、クロストリパイン、コラゲナーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、フィシンから選択される、項目4に記載の組成物。
(6)活性成分の同時または逐次投与のための別々の剤形より成る要素の一式の形の、項目4または5のいずれかに記載の組成物。
(7)カルシウム塩が、アスコルビン酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ドベシレート(dobesilate)、グルコビオネート(glucobionate)、レブリン酸塩、乳酸塩、ラクトビオネート(lactobionate)、パントテン酸塩、ケトグルタル酸塩、ボログルコン酸塩から選択される、項目4ないし6のいずれか1項に記載の組成物。
(8)アヘン剤拮抗物質がナロキソンである、項目4ないし7のいずれか1項記載の組成物。
(9)アヘン剤拮抗物質がナルトレキソンである、項目4ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
(10)アヘン剤拮抗物質が:ジプレモルフィン、ナルブフィン、ベータクロロナルトレキソニン、ナルトレキソナジン、ナロキサゾン、ナルメフェン、ベーターフナル トレキサミン、ICI 174.864、7ーベンジリデンナルトレキソン(BNTX)、ナルトリンドール、ノルビナルトルフィミン、ノルビナルトルファミン、ナルトリベン (NTB)、プロファドール、クァダゾシン、ナロキソナジン、D−Pen−Cys−Tyr−D−Trp−Orn−Thr−Pen−NH2(CTOP)、 MR−2266、ナルトリンドールー5’−イソチオシアネート(5’−NTII)、N−メチルーD−アスパルテート(NMDA)、テキストロルファン、メ チルナルトレキソン(MNTX)、DALCE(D−Ala2、Leu5、Cys6−エンケファリン)、メチルナロキソニウム、ブルマゾシンおよびLY 274614、から選択される、項目4ないし7のいずれか1項に記載の組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0003】
本発明はまた、活性成分として、カルシウム塩および場合によりプロテアーゼ、プロスタダランジンおよびビタミンCおよびKと組み合わせたアヘン剤拮抗物質を含有する、ヒトおよび獣医学用の薬剤組成物に関する。本発明の組成物は、場合により上述の活性成分の同時または逐次投与のための別々の剤形より成る要素 キット(kit−of−parts)の形であってもよい。
【0004】
多くの他の神経構造とともに、黒質線状体系のニューロンは、フェナントレンアルカロイドのモルヒネの作用と事実上同一の作用を有する低核量化合物(low nuclear weight compounds)であるエンドルフィンを合成する。これらの内因性のオピオイド(エンドルフィン)は、ヒトを含むすべての動物の中枢神経系において必 須の生物学的な役割を演じる。
【0005】
アミノ酸(5から31まで)配列より成る内因性アヘン剤ペプチド、エンケファリンおよびエンドルフィン、は、内分泌線(副腎、下垂体、卵巣、精巣)、および胃腸系、筋肉−骨格系および免疫系中と同様に視床下部、大脳および脊髄レベル(level)で存在する。最近まで公知のエンドルフィンの作用は多様で、最もよく知られたものは:モルヒネ様の鎮痛性、行動上の効果、神経変調物質作用である。
【0006】
これらのペプチドはまた、記憶、ストレスに対する反応、痛みの伝達、食欲、温度、呼吸頻度、性欲、免疫などの調節、のような機能において顕著な役割を演じる。
【0007】
哺乳動物の中枢神経系の内部および外部に遍在するエンドルフィンは、少なくとも3つの異なる前駆体:プレープローオペオメラノコルチン(pre−pro−opiomelanocortine)(POMC)、プレープローエンケファリンAおよびプレープローエンケファリンB、に由来し、十分に明確にされた生物学的活性を有するこれらの前駆体に関連する3種類のペプチドが得られる。
【0008】
特に、プレープローオピオメラ/コルチンは、種々の組織において変異させられたリーシス(lytic)の過程の結果としてアルファー、ベータ−およびガン マーエンドルフィンを産生し;プレープローエンケファリンAは、メチオニン(met)−エンケファリンおよびロイシン(leu)−エンケファリンを生じ、一方プレープローエンケファリンBは、アルファーネオーエンドルフィン、ベーターネオーエンドルフィンおよびジノルフィン(dinorphine)の前駆 体である。種々の組織におけるこれらのペプチドの役割および分布は、特にこれらのもののアヘン剤レセプタとの相互作用能力に関して広く研究されてきた。
【0009】
エンドルフィンは、異なる種類のストレスおよび病因にさらされた生物において分析および鎮静をひきおこすことができる防衛剤(defence agent)として事実上理解されてきた。
【0010】
例えば、エンドルフィン生成の増大は、外傷、神経性、内分泌性、代謝性または感染性の疾患、身体的疲労、分娩、不眠、外科手術、食中毒または薬物中毒などの後の認められた。
【0011】
エンドルフィンは、生体内では、血漿および体液中に、種々の組織および器官内に存在するレセプタと結合した形および遊離の形の両方で見出される。遊離エンドルフィンと結合エンドルフィンとの間の比率は、増大した生成、減少した異化または、例えばナロキソン、ナルトレキソン(naltrexone)および誘導体ならびに同族体のようなアヘン剤拮抗物質による、結合エンドルフィンのレセプタからの競合除去、に関連して増大させられるであろう。
【0012】
遊離エンドルフィンは、もし異化機構によって迅速に除去されるのでなければ、各レセプタに再結合して一連の細胞代謝を妨害する生化学的効果を誘発し、神経作用を妨げそして影響をうけた器官の発病作用を誘発する。
【0013】
驚くべきことに、アヘン剤拮抗物質をカルシウムイオンと組み合わせて投与すると、上記の発病作用に有効に拮抗することができて、その結果、本明細書中で以後エンドルフィン関連病状を定義する高い遊離および結合エンドルフィン水準によって特徴づけられる病状において、ヒトおよび獣医学の両方の臨床実務に有用であることが今回発見された。
【0014】
本発明の妥当性には全く関係なく提案された仮説は、高い組織および循環水準のエンドルフィン(生理学的および病理学的種類の両方)がCa++代謝およびすべての関連または依存機能と相互作用するということである。エンドルフィンが生理学的限度を超えて増大した場合には、細胞内外のCa++の流れがいくらか妨害され、その結果カルシウム血症の増大をともなう細胞内および組織内カルシウム欠乏がおこることが、事実上考えられる。同時に、増大した細胞内カルシウム要求の信号が、外部のカルシウムの損傷組織への補充をひきおこし、そこに結合エンドルフィンが集積することが考えられる。
【0015】
言い換えれば、異なる生理学的または病理学的条件が循環エンドルフィンの内因性の増加を誘発するとき、この後者は1つ以上の構造または器官内でアヘン剤拮抗物質に結合する。どの器官にも神経レセプタに結合したエンドルフィンが通常水準で存在することは生理的であるけれども、反対に結合エンドルフィンが増加すると大量のこれらの神経変調物質[これはレセプタに大量に結合すると、神経、筋肉構造内またはエンドルフィンレセプタを有するあらゆる細胞内の膜ポテンシャルおよび透過性の変化を包含する一種の“エンドルフィン雲(endorphin cloud)”を形成する]の蓄積をひき起こす。細胞透過性の変化は主としてカルシウムチャンネルの活性および機能性およびその結果としてのすべての関連しそしてその結果の活性および機能に影響を与える。
【0016】
高エンドルフィン水準が持続するときはいつでも、代謝障害過程は神経末端から始まる。急性の過程では、カルシウム流入の遮断および細胞内のカルシウムの可 動化により代謝調和が得られるが、この代謝調和は、“エンドルフィン雲”の除去とその結果として生じる膜ポテンシャルの激しい変化および血流中の適量のカ ルシウムの不在下で先に遮断された細胞内からのカルシウムの血流内への流入によって、致命的になるであろう。
【0017】
“エンドルフィン雲”は最初に細胞および組織の機能性および反応性を低下させ、その後に細胞壁上に存在するCa++チャンネルの一種の遮断によって異常な活性をひきおこすことが考えられる。
【0018】
外側および内側のカルシウム遮断は、影響をうけた細胞に小胞体中およびミトコンドリア中の内部沈積物からのCa++の移動をひきおこし、そのためその代謝活性は、少なくとも一部分は保存されることができる。同時発生する細胞外のカルシウムの増加(増大したカルシウム血症)は、神経筋毒性をひきおこす。
【0019】
本発明に従ってカルシウムを投与すると、低カルシウム血症の場合には、すでにCa++欠乏によって損なわれている細胞から血流中へのカルシウム流出が妨げられ、その結果細胞の損傷とこれによる病状の悪化が妨げられる。
【0020】
どんな場合にも、これまで決して発表もされずにあるいは仮定もされなかった前に報告した機構の証明とは無関係に、本発明は、エンドルフィンが介在する病状において驚くべき治療結果を達成することを可能にする。
【0021】
中枢神経系に加えて、エンドルフィンレセプタは生体中に広く分布しており、このため本発明によって治療されるかまたは軽減されることができる病状には、対麻痺、神経伝達障害、アルツハイマー病、大脳虚血、多発性硬化症のような中枢神経系の疾患;潰瘍、過敏性腸症候群のような胃腸疾患;梗塞、敗血症性ショッ クのような心臓血管病;白斑、乾癬、脱毛、皮膚炎、外傷および熱傷のような皮膚科学的疾患、LUF症候群、卵巣ミクロポリシストシス(ovaric micropolycystosis)、インポテンス、過プロラクチン血症(hyperprolactinemia)、下垂体前葉性株儒 (hypophysary dwarfism)、間質性膀胱炎、原発性無月経(primary amenorrea)のような尿生殖器疾患;が包含される。
【0022】
本発明はまた、炎症性状態、感染病、骨粗鬆症、関節炎、骨炎、骨膜炎、筋障害、自己免疫性疾患のような筋肉−骨格系の疾患の治療にも有利に使用することができる。
【0023】
本発明は一般に、天然の組織−または細胞−の修復過程が保存または再確立されなくてはならない状態において有利な効果を与えることが認められるであろう。
【0024】
獣医学においては、上に挙げた相当するヒトの病状に加えて本発明は、ウシの産褥ショック、犬および猫のウイルス病(パルボウイルス感染、ジステンパー)、MMA症候群(子宮筋層炎−乳腺炎−アガラクシア)、マルベリー(Mulberry’s)心臓疾患、反すう(ruminal)鼓腸、ホフルンド(Hoflund)症候群、骨折のような骨−関節外傷、多発性関節炎、骨軟化症、くる病素因、股関節形成異常症のような特異な状態の治療用に有利に使用されることができる。
【0025】
本発明はまた、哺乳動物、魚類および鳥類における生殖活動を誘発および制御するため、黄体のリーシス(lysis)をひきおこすため、および馬および犬の運動能力を改善するためにも使用することができ;これはまた避妊のためにも有用である。
アヘン剤拮抗物質の選択は、速度論、効力、安全性、薬理学的な危険などのようないくつかの因子に依存するであろう。急性病状用には、たとえばナロキソンのような速効性で短い半減期の薬剤の使用が好ましく、一方慢性病状用にはナルトレキソンのような寿命の長い薬剤が好適に使用されるであろう。
【0026】
本発明に従って使用することができるその他のアヘン剤拮抗物質には:ジプレモルフィン(dipremorphine)、ナルブフィン(nalbuphine)、ベータクロロナルトレキソニン(betachloronaltrexonine)、ナルトレキソナジン(naltrexonazine)、ナロキサゾン(naloxazone)、ナルメフェン(nalmefene)、ベーターフナルトレキサミン(beta −funaltrexamine)、ICI174.864、7ーベンジリデンナルトレキソン(BNTX)、ナルトリンドール(naltrindole)、 ノルビナルトルフイミン(norbinaltorphimine)、ノルビナルトルファミン(norbinaltorphammine)、ナルトリベン(naltribene)(NTB)、プロファドール、クアダゾシン(quadazocine)、ナロキソナジン(naloxonazine)、D−Pen−Cys−Tyr−D−Trp−Orn−Thr−Pen−NH(CTOP)、MR−2266、ナルトリンドールー5’−イ ソチオシアネート(5’−NTII)、N−メチルーD−アスパルテート(NMDA)、デキストロルファン(dextrorphane)、メチルナルトレキ ソン(MNTX)、DALCE(D−Ala2、Leu5、Cys6−エンケファリン)、メチルナロキソニウム、ブレマゾシン(bremazocine)およびLY 274614、が包含される。
【0027】
アヘン剤拮抗物質活性を有するすべての化合物を使用することはとにかく可能である。
【0028】
また薬量学および投与経路は、種々の因子(動物種、体重、病状の種類および重篤性)に依存するであろうが、この因子は獣医または医師により評価されるであ ろう。用量は一般に、これらの薬剤の広く知られそして古典的な指示用に推奨された用量の約1/10ないし約10倍より成るであろう。例えば、ヒトの医療に おいては、ナロキソンが最初に1日に0.1−2mgの用量で投与されそしてナルトレキソンが1日に5−50mgの用量で投与されることができるが、一方、維持治療用には10−20mgの用量のナルトレキソンが推奨される。
【0029】
獣医学においては、馬およびウシに対して5−50mgのナロキソンが静脈内または筋肉内に、病状に従って1日に1回以上投与されることができる。犬では、大きさによって0.5−1mg/kgの投与量が通常投与される。
【0030】
犬の慢性病状では、ナルトレキソンの半減期がナロキソン半減期よりはるかに長く、2−3日までにもなり活性代謝産物をともなうことを考慮して、5−10−20−50mgのナルトレキソンを経口投与するのが好ましい。薬理学的反応は、使用した薬量に依存する。実際には、最小の用量では一部のレセプタの活性化だけをひき起こし,一方高用量ではレセプタに対して完全で強力な効果を及ぼす。このためアヘン剤拮抗物質の異なる種類のレセプタ部位への結合を調整することによって、薬理学的治療を調節することが可能である。
【0031】
投薬に関するさらに厳密な指示は、最初の放射免疫測定法およびナロキソン自体のような特異なエンドルフィン拮抗物質の投与後の1回以上のこれに続く分析より成る動物診断法による、影響を受けた組織および器官に結合したエンドルフィンの定量から得ることができる。拮抗物質投与前と投与後の遊離エンドルフィンの値の間の差異は、結合エンドルフィン値を与え、そして場合により、拮抗物質投与後にさらに多くの分析を行う場合には、エンドルフィンの結合速度論(binding kinetics)を与える。
【0032】
上記の診断法によって得ることができるパラメータは本発明に従う治療のためのガイドラインを与える。本発明の治療によって誘発されるカルシウム血症(calcemia)の変化はまた、適用されるべき治療に対する有用なヒントを与えるであろう。
【0033】
カルシウムイオン供給物としては、アスコルビン酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ドベシレート(dobesilate)、グルコビオネート(glucobionate)、レブリン酸塩、乳酸塩、ラクトビオネート(lactobionate)、パントテン酸塩、ケトグルタル酸塩、ボログルコン 酸塩などのような薬学的使用と矛盾しないすべての可溶性カルシウム塩が使用できる。またこれらの化合物の用量はすでに確立された治療実務に従って決定され るであろう。例えば、グッドマン(Goodman)およびギルマン(Gilman)、“ザ・ファーマコロジカル・ベイシス・オブ・セラピューティクス (The pharmacological basis of therapeutics)”、第VII版、マクミラン出版社(Macmillan Pub.Co.)、第1521ページを参照されたい。
【0034】
カルシウム塩は、特定の治療指示に従って、経口および非経口経路の両方で投与することができる。
【0035】
本発明の好ましい具体化に従えば、アヘン剤拮抗物質およびカルシウムの組み合わせ物には、遊離エンドルフィンを分解してこの組み合わせ物自体の効力を増大 させるプロテアーゼを加えることができる。40ないし160 U.P.F.U.の範囲の用量で投与することができる適当なプロテアーゼの例としては、ブロメリン、パパイン、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、サブチリシン、プロテイナーゼAおよびK、カリクレイン、エラスターゼ、キモパパイン、クロストリパイン(clostripaine)、コラゲナーゼ、メタ ロエンドペプチダーゼ(metalloendopeptidase)、フィシンがある。
【0036】
この組み合わせ物はまた他の活性成分、すなわちプロスタグランジン、ホルボール、ATP、ビタミンC、レバミゾール(levamisol)を、常にこれらの物質についてすでに公知の用量で包含してもよい。
【0037】
組み合わせられているかまたは“キット”の形の本発明の組成物の製造は、“レミソトンズ・ファーマシューティカル・サイエンシーズ・ハンドブック (Remington’s Pharmaceutical Sciences Handbook)”、マック出版社(Mack Pub.Co.)、アメリカ合衆国ニューヨーク、第XVII版、に記載されたような通常使用される賦形剤を用いて実施される。
【0038】
下記の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0039】
実施例1 分娩麻痺(milkfever)により冒された乳牛の治療
ウシ種は特に複雑なカルシウム代謝を有するので、乳牛における低カルシウム症性の分娩麻痺は、有効な実験モデルを提供する。
【0040】
事実乳分泌には、産生されたミルク1kgあたり約1gのカルシウムを、循環液から出発して乳腺中に固定する必要があるが、一方血流中のカルシウムの全量は1.5gである。結果として、特に乳汁分泌のはじめには乳牛内でのカルシウムの入れ代わりは特に能率的ではなくてはならないことおよびいくつかの場合には 他の種で起こるものに関連してより重大な遮断および相互作用機構があることが明らかである。このことは、例えば、すべての哺乳動物の場合と同様にベーター エンドルフィンの最大の生理学的増大およびCa++代謝の重大な障害が起こる分娩中に起こる。
【0041】
分娩麻痺に冒された30頭の乳牛を、ナロキソン5mg、ボログルコン酸カルシウム50g(静脈内)、トリプシン100uFnおよびキモトリプシン27.7uFn(筋肉内)、で治療した。
すべての動物が容易に回復し、致死は全く起こらなかった。
【0042】
実施例2 鼓腸をともなう分娩麻痺に冒された乳牛の治療
乳牛の分娩麻痺はときどき前胃の運動性および結果としての鼓腸をともなうおくび反射の同時ブロック(block)を併発する。
【0043】
無菌水500ml中の50gのグルコン酸カルシウムの溶液中に溶解させた5mgのナロキソンを、非常に顕著な鼓腸をともなう上記の合併症に冒された1頭の 乳牛に投与すると、250mlのカルシウムーナロキソンをゆっくり静脈内注入した後に分娩麻痺と鼓腸との両方に関して正の効果がひきおこされ、おくび反射 の回復と第一胃中の過剰なガスの排出がみられた。
【0044】
注入(500ml)の終了時に、乳牛は症状が軽快して立ち上がった。プロテアーゼ(Endozym)の投与により最終的に、遊離エンドルフィン濃度の低下がひき起こされた。
【0045】
実施例3 パルボウィルスに誘発された犬の出血性胃腸炎の治療
犬のパルボウィルス性胃腸炎は、もし治療されなければ一般には動物の死をひきおこす悪性の接触感染性疾患である。適当な治療が適当されるときでさえ、この病気はしばしば好ましくない予後を有する。この病気は1才未満の子犬に頻繁に起こる。3−4日の潜伏期間後に披験体は:食欲不振、感覚低下 (sensory depression)、嘔吐、出血性下痢、重症の脱水症、ショック;を示す。この病気は、症例の70%において2−5日中の披験体の死という結果になる。
【0046】
電解質、大量のビタミンCおよびK、抗生物質、コルチゾンなどの注入より成る複合的な治療後にのみ、5日目より後に生き残っている動物に回復が起こるであろう。
パルボウィルス性胃腸炎にかかった40匹の犬を毎日、ナロキソン(0.5−1mg)、グルコン酸カルシウム(0.5g)、ビタミンC(500−1000mg)、ビタミンK(1g)を含有する無菌水溶液の静脈内投与により治療した。
この治療によってすでに2日目には症状の軽快がみられ、そして3−5日のうちに完全な回復がもたらされた。
【0047】
実施例4 乳牛における大腸菌による実質性乳腺炎の治療
実質性乳腺炎は大腸菌によってひき起こされる乳房セクション(section)の重大な炎症である。
【0048】
この病気にかかった10頭の乳牛を、用量0.5mg/100kg体重のナロキソン塩酸塩、グルコン酸カルシウム(50g)およびプロテアーゼ(Endozim)で治療した。病状に特異的な抗生物質およびサルファ剤(sulfamidic)を同時に投与した。治療をうけた披験体は、最初の投与ですでにその正常な生体機能を回復し、症状の完全な軽快化がおこった。治療は2−3日続いた。
【0049】
実施例5 犬のジステンパーの治療
ジステンパーにかかった8匹の動物を、1日に0.5−1mgのナロキソン塩酸塩(1週間)、ビタミンC(0.5−1g/日で1週間)、静脈内のグルコン酸カルシウム(0.5g/日で1週間)、EndozimおよびビタミンB(500−1000mg)(非経口的に1週間)および抗生物質(セファロスポリン+アミノグリコシドを筋肉内に1週間)で治療した。
【0050】
各々の場合に、心身の状態は顕著に前進したが明白な神経症状をともなった。
披験体は2−3日後に改善された。神経症状からも完全に回復したのは5−15日後であった。
【0051】
実施例6 治療過程に関するナロキソン投与の効果
6ケ月前に虫垂切除を行い、治癒期において脂肪壊死(liponecrosis)に冒された臨床的には健康な52才の被験者にナロキソンを経口投与すると、開腹術の位置に、薬の投与から2−3時間内に限局性のかゆみを誘発した。
その次の日からは、治癒過程により小さなフィステルの形成がおこり、この小フィステルからいくつかの再吸収されない縫合糸の残分が除去された。エンドルフィンが治癒過程の妨害の原因となったと考えられる。
【0052】
実施例7 LUF症候群の治療
ヒトの医療において特定の型の無排卵は、規則的な月経と、排卵のない正常な黄体化とによって特徴づけられる、黄体化した破裂していない卵胞 (luteinized unrupted follicle)すなわちLUFとして知られている。LUF症候群は、解明されていない不妊症の原因となっていると考えられる。
【0053】
1年以上排卵がないので以前にゴナドトロピンで治療をしたLUF症候群にかかった女性は、通常は正常と認められる50pg/mlというベーターエンドル フィンの血漿濃度を有していた。経口用ナロキソン(25mg)、カルシウム(1g)、ビタミンC(2g)で経口治療した後にこの患者は、治療の4日後に2 個の排卵をし、妊娠して、一人の正常な子供を満期に分娩した。
【0054】
実施例8 犬の筋−骨格系の病状の治療
股関節部形成異常に冒された1匹の犬および肢を骨折した2匹の犬を治療した。本発明に従う薬理学的治療(48時間毎に0.2〜0.5mgのナロキソンまたは5−10mgのナルトレキソンを2−4週間、250−500mg/日(die)のカルシウムを1ケ月、場合によりプロテアーゼおよびビタミンC)後に、これらの動物は簡単にその痛みおよび機能状況が改善された(2−3日中)。
【0055】
仮骨は、骨折した被験体中に迅速に形成され、硬化時間は通常の約半分であった。
【0056】
実施例9 周期性の(cyclic)ウシにおける黄体のアポプトシスの誘発
発情間期の5頭の周期性のウシを、連続2日間、体重100kgあたり5mgのナロキソン+2gのポログルコン酸Caを静脈内に投与して治療した。
【0057】
超音波検査法により黄体の進行性の損傷が観察された。治療をうけたウシはすべて治療の終了から4−5日後に発情した。循環するプロゲステロンの水準は、だ んだんに0に達した。これらの結果は、エンドルフィンが黄体細胞内へのカルシウムの流入を媒介し、黄体のアポプトシス過程に影響を与えることを示す。
【0058】
実施例 10くる病の子犬の治療
くる病素因に冒された12匹の犬を、0.1mg/kgのナロキソンおよび50mg/kgのグルコン酸カルシウムを1日交代で1ケ月間そしてビタミンC(250mg)を1ケ月間、筋肉内投与して治療した。すべての動物が治療の開始から2ケ月後に最終的に回復した。痛みはすでに治療の第3日の後には消えた。
【0059】
ナロキソン単独のくる病の子犬への投与は、強直性発症をともなう急性低カルシウム症を数分のうちにひき起こし、一方カルシウム塩単独の投与は、顕著な頻拍をともなう嘔吐をひき起こすので、この結果は特に驚くべきことである。
本発明に従う治療は、反対に副作用がなく、治療される被験体の完全な回復をもたらす。
【0060】
実施例11 馬の胆汁症候群の治療
胆汁症候群に冒された11頭の馬を、0.6gのグルコン酸カルシウム+1.2mgのナロキソン/100kg体重、で静脈内治療した。良好な一般的な状態の迅速な回復、痛みの消失および放尿ならびに排便の再確立は、すでに治療から15’−30’後に起こった。
【0061】
実施例12 犬における肥大性の骨形成異常症の治療
肥大性の骨形成異常症に冒されている生後2ケ月の犬を、1日(die)にボログルコン酸カルシウム(1g)およびナロキソン(1mg)を30日間筋肉内投 与して治療した。この犬は顕著な臨床的ならびに機能的回復を示し、これは骨膜の正常化およびウィンバーガー(Winberger)信号の消失を示す放射線 医学的検査によって確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潰瘍、炎症状態、感染症、骨格筋系の疾患または自己免疫疾患を処置するための治療用の薬剤の製造のための、アヘン剤拮抗物質および可溶性カルシウム塩の組み合わせ使用。
【請求項2】
アヘン剤拮抗物質のナロキソン、ナルトレキソンおよび、ジプレモルフィン、ナルブフィン、ベータクロロナルトレキソニン、ナルトレキソナジン、ナロキサゾン、ナルメフェン、ベーターフナルトレキサミン、ICI 174.864、7−ベンジリデンナルトレキソン(BNTX)、ナルトリンドール、ノルビナルトルフィミン、ノルビナルトルファミン、ナルトリベン(NTB)、プロファドール、クァダゾシン、ナロキソナジン、D−Pen−Cys−Tyr−D−Trp−Orn−Thr−Pen−NH2(CTOP)、MR−2266、ナルトリンドールー5’−イソチオシアネート(5’−NTII)、N−メチルーD−アスパルテート(NMDA)、デキストロルファン、メチルナルトレキソン(MNTX)、DALCE(D−Ala2、Leu5、Cys6−エンケファリン)、メチルナロキソニウム、ブレマゾシンおよびLY274614から選択されるその他のアヘン剤拮抗物質を使用する、請求項1に記載の組み合わせ使用。
【請求項3】
プロテアーゼともに併用される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
アヘン剤拮抗物質および可溶性カルシウム塩を含む、潰瘍、炎症状態、感染症、骨格筋系の疾患または自己免疫疾患を処置するための組成物。
【請求項5】
アヘン剤拮抗物質のナロキソン、ナルトレキソンおよび、ジプレモルフィン、ナルブフィン、ベータクロロナルトレキソニン、ナルトレキソナジン、ナロキサゾン、ナルメフェン、ベーターフナルトレキサミン、ICI 174.864、7−ベンジリデンナルトレキソン(BNTX)、ナルトリンドール、ノルビナルトルフィミン、ノルビナルトルファミン、ナルトリベン(NTB)、プロファドール、クァダゾシン、ナロキソナジン、D−Pen−Cys−Tyr−D−Trp−Orn−Thr−Pen−NH2(CTOP)、MR−2266、ナルトリンドールー5’−イソチオシアネート(5’−NTII)、N−メチルーD−アスパルテート(NMDA)、デキストロルファン、メチルナルトレキソン(MNTX)、DALCE(D−Ala2、Leu5、Cys6−エンケファリン)、メチルナロキソニウム、ブレマゾシンおよびLY274614から選択されるその他のアヘン剤拮抗物質を使用する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
プロテアーゼとともに併用される、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
実施例に記載の使用。

【公開番号】特開2007−210995(P2007−210995A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303392(P2006−303392)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【分割の表示】特願平7−530058の分割
【原出願日】平成7年5月22日(1995.5.22)
【出願人】(506374281)
【出願人】(506374432)
【Fターム(参考)】