説明

アボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス

本発明は、アボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセスであって、連続的に、(1)新鮮アボカド又は前もって変換されたアボカドの制御された脱水の工程、(2)脱水された果実からの油の抽出の工程、(3)該抽出された油の加熱処理の工程及び該油の不けん化分画の濃縮の工程(或いは、これら2つの操作が、この順序で、又は逆の順序で連続的に行われうる)、最後に、(4)不けん化物のけん化及び抽出の工程を含むプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、アボカドは、フラン型の特定の脂質(その主要構成成分はリノール酸フラン:
【0003】
【化1】

【0004】
である)を含有する。
従って、本発明によれば、表現「アボカド由来のフラン脂質」は、式
【0005】
【化2】

【0006】
(式中、Rは、飽和であるか、又は1つ以上のエチレン性又はアセチレン性不飽和を含むC11−C19、好ましくはC13−C17直鎖炭化水素鎖である)
に対応する構成成分を意味する。
これらのアボカド由来のフラン脂質は、特にFarines,M. et al, 1995, J. of Am. Oil Chem. Soc. 72, 473に記載されている。
【0007】
不けん化物は、アルカリ塩基の長時間作用後に水に不溶のままで、有機溶媒で抽出されうる脂肪物質の分画である。植物油の不けん化物のほとんどに、5つの主要な群の物質が存在する:飽和又は不飽和炭化水素、脂肪族又はテルペンアルコール、ステロール、トコフェロール、カロチノイド色素及びキサントフィル。
【0008】
FR 91 08301特許は、分画Hとして知られる分画(それらは、実際には、これら同じフラン脂質に対応する)の1つに濃縮されたアボカド油から出発する、アボカド由来の不けん化物を得るプロセスを記載する。フラン脂質に富んだこのような不けん化物(その含量は30〜60%の範囲でありうる)の製造は、80〜120℃の温度で、好ましくは24〜48時間の間で選択される継続時間、予め薄スライスにスライスされた新鮮果実の制御された加熱を本質的に条件とする。このプロセスでは、加熱処理は、果実の脱水をその前に行いうるが、好ましくは果実の乾燥と同時に行われる。この加熱処理は、抽出後、フラン脂質に富んだアボカド油の製造を可能とする。最終的に、この油を用いて、液液抽出の工程によって完了する、標準的けん化プロセスに従って不けん化分画が得られる。
【0009】
このプロセスの第1の欠点は、これらの条件下で容易に酸化されうる脂質に富んだ果実のスライスを、比較的高温(少なくとも80℃に等しい)で、比較的長期間(1〜2日)、加熱する必要性である。更に、この型の加熱処理は、植物ベースの食品に、メイラード反応(これは製品の所望でない褐色化を引き起こす)などの当業者に周知の二次的分解反応、及びしばしば不愉快なフレーバーやアロマの出現をもたらす。
【0010】
更に、不活性雰囲気の予備的確立なしに空気中で行われるこの型の加熱処理は、特に、脂質(例えば不飽和脂肪酸)及びそれらの不けん化分画(例えばビタミンE)などの熱感受性基質の存在下、主要な化学変化を伴いうる。従って、加熱プロセスは、基質の加熱酸化、過酸化物の出現の原因であるフリーラジカル反応、また重産物の形成の原因である分子内もしくは分子間縮合反応を好む。
【0011】
事実、これらの制御されない二次的プロセスの同時発生により、処理製品の感覚受容性の主な欠陥及びそれらの物理化学的性質の著しい変化が導かれうる。最後に、この型の産物は、標的産物(この場合、フラン脂質)の収量の著しい減少の原因でありえ、従って、プロセスの全体の経済的実行可能性に有害でありうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
結合組織(特に変形性関節炎、歯周炎、硬皮症などの炎症性症状における)に対するその有益で治療的な作用のために、アボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物の治療的価値及びその一般的に高いコストを考えれば、フラン脂質が豊富で、酸化及び縮合化合物が非常に少ないアボカド油由来の不けん化分画の、とりうる最大収量での製造には強い関心がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本出願人は、フラン脂質に富み(即ち、50%〜80%の範囲の含量を有する)、重産物と過酸化物の低い含量を有する、アボカド由来の不けん化物を高収量で得るプロセスを開発した。
このプロセスは、以下の連続工程:
(1)−50℃〜75℃の温度で行われる、新鮮アボカド又は前もって変換を受けたアボカドの制御された脱水の工程、
(2)脱水された果実からの油の抽出の工程、
(3)二者択一で、
− a.80〜150℃の範囲でありうる温度での該抽出された油の加熱処理の工程(必要に応じ、不活性雰囲気下で)、次いで油の不けん化分画の濃縮の工程、又は
− b.該油の不けん化分画の濃縮の工程、次いで80〜150℃の範囲でありうる温度での加熱処理(必要に応じ、不活性雰囲気下で)、次いで
(4)不けん化物のけん化及び抽出の工程
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
表現「前もって変換を受けたアボカド」は、新鮮アボカド油の抽出のプロセスに由来する副産物、特に「遠心分離」プロセスに由来する副産物を意味する。従って、「前もって変換を受けたアボカド」に関して、特に、i)パルプを圧搾することによって得られるアボカドミルク5(半液体ピューレ)、又はii)遠心分離による部分脱脂パルプの清澄化の産物(遠心分離シーブの出口に一般に存在する副産物)、又は分離中に産生される遠心分離ペレットが挙げられうる。
表現「前もって変換を受けたアボカド」の下に入るアボカドの他の供給源も挙げられうる。従って、果実(新鮮又は乾燥)の冷却圧搾又は有機溶媒を用いる新鮮もしくは乾燥果実からのアボカド油の液固抽出中に副産生されるアボカドケーキも、この形態で、本発明の状況で使用されうる代替の出発物質を構成しうる。
最後に、アボカド仁は、油が乏しいが、潜在的に脂質の供給源を構成しえ、本発明の状況で使用されうる。
【0015】
プロセスの工程(1)で行われる用語「脱水」はより一般的には、水を化合物から除去しうる、当業者に公知の技術全てを意味する。挙げられうるこれらの技術の中でも、厚い層又は薄い層で大気圧又は真空下、熱空気流下又は制御された雰囲気(例えば窒素)下での乾燥、またマイクロ波乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、及び溶液(直接浸透)又は固相(例えば、浸透バッグでの乾燥)での浸透圧脱水がある。本プロセスの状況で、工業的遂行の容易さとコストのために、70〜75℃の温度、8〜36時間、薄い層で熱空気流下、通風乾燥機中で乾燥するのが好ましい。
【0016】
抽出工程(2)は、当業者に公知の任意の手段によって、好ましくは単純な冷却圧搾又は低温の溶媒によって行われうる。
【0017】
本発明のプロセスによれば、工程(3)a.又はb.で行われる加熱処理工程は、酸触媒の存在下又は非存在下行われうる。用語「酸触媒」は、広い意味で、塩酸、硫酸、酢酸又はパラ−トルエンスルホン酸などの均質な無機及び有機触媒を意味するが、また、そして好ましくは、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、ゼオライト及び酸性樹脂などの不均質な固体触媒も意味する。大きな比表面積(即ち少なくとも200m/gに等しい)を有する酸性アルミナが特に選択される。酸性アルミナ型の触媒は、本発明のプロセスの実施に好適である。有利には、この加熱処理は、窒素の連続した流れの下で行われる。好ましくは加熱処理温度は80〜130℃である。
【0018】
工程(3)a.又は(3)b.における濃縮工程は冷却結晶化又は分子蒸留でありうる。
【0019】
分子蒸留は、10−3〜10−2mmHgの圧力を維持しながら、180〜260℃の温度で行われうる。
不けん化物の分子蒸留のこの工程は好ましくは、遠心分離型の分子蒸留装置及び薄膜蒸留型(wiped−film type)の分子装置から選択される装置を用いて行われる。
遠心分離型の分子蒸留装置は当業者に公知である。例えば、特許出願EP 493 144は、この型の分子蒸留装置を記載している。一般的に、蒸留されるべき産物は、高速で回転する円錐ロータの加熱表面(ホット表面)上に薄い層で広げられる。蒸留チャンバは真空下に置かれる。これらの条件下、沸騰よりも不けん化物の構成成分のホット表面からの蒸発が起こる。利点は、油と不けん化物(これらの産物は周知の如くこわれやすい)が蒸発中に分解されないということである。
【0020】
薄膜蒸留型の分子蒸留装置(これも当業者に公知である)は、回転ドクターブレードを備えた蒸留チャンバを備え、回転ドクターブレードは、蒸留されるべき産物が蒸発表面(ホット表面)上に連続的に広げられるのを可能とする。産物の蒸気は、蒸留チャンバの中央にある冷フィンガーによって液化される。周辺の供給システム及び真空システムは、遠心分離蒸留装置のものに非常に類似している(供給ポンプ、羽根真空ポンプ、油拡散ポンプなど)。残留物及び蒸留物は、重力の流れによってガラスフラスコに回収される。
【0021】
油又は油性抽出物のけん化の工程(4)は、アルコール性媒体(好ましくはエタノール性媒体)中水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの存在下で行われえ、次いで1回以上の抽出が行われうる。脂肪酸石鹸と不けん化化合物とを分離するために、適切な有機溶媒での抽出(液液抽出)が、使用に特に適している。適切な有機溶媒は、例えば、アルカン、ハロアルカン、芳香族溶媒、エーテル(メチル tert−ブチル エーテル(MTBE)やエチルエーテルなど)、又は水性アルコール性溶液と不混和性である任意の他の適切な溶媒の群から選択されうる。
ハロアルカン、特に1,2−ジクロロエタンが好ましくは選択される。
【0022】
得られた抽出溶液を、次いで、好ましくは、遠心分離し、濾過し、次いで、水で洗浄して残留するわずかなアルカリ性を除去する。最後に、抽出溶媒を完全に蒸発し、不けん化物を回収する。言うまでも無いが、脱臭工程などの当業者に公知の更なる操作を含めることもできる。
【実施例】
【0023】
以下の非限定的実施例によって本発明を説明する。
新鮮アボカド(正味重量1000kg、南アフリカからのフエルテ(Fuerte)変種)の同一バッチから出発して、各50kgの6つのサブバッチを作製する。
【0024】
実施例1/果実の激しい加熱処理のプロセス
ディスクスライサーを用いて、新鮮アボカド50kgを仁を含め2〜5mm厚の薄スライスに切る。乾燥装置は、熱空気流を備える温度制御されたオーブンである。スライスされたアボカドを、搭載トレー上に4〜5cmの厚さに広げる。乾燥温度は85℃に設定され、その継続時間は48時間である。乾燥したらすぐ、果実をすり砕き、次いで冷却圧搾に供する。この操作を、小さな実験室Kometプレスで行う。次いで、抽出した油をブフナー漏斗を通して濾過し、次いで、光と水分から防御された窒素下で保存する。
次いで、得られた油を、230℃の温度で10−3mmHgの真空下、Leybold KDL 4薄膜蒸留分子蒸留装置で蒸留する。この操作の蒸留物の収率は9.2%である。
【0025】
得られた蒸留物を、メカニカルスターラーを備え、上に冷却管を取り付けたガラス反応容器中、50%水酸化カリウム175gとエタノール875gの存在下、還流で4時間けん化する。反応終了時に、混合物を30℃に冷却し、次いで、脱ミネラル水を加えることによって希釈する。次いで、得られた水性アルコール性溶液(AAS)を、分液漏斗を用いて1,2−ジクロロエタンで抽出する。
次いで、有機相を一緒にし、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒の留去と真空下での乾燥後、溶解した不けん化分画を最終的に回収する。この工程を、70℃で、1mmHgの真空下、2時間、ロータリーエバポレーター中で行う。アボカド由来の不けん化分画126gをこのように回収し、次いで、分析を待つ間、窒素下で保存する。
【0026】
この分画の物理化学的及びクロマトグラフィー的分析により、以下の結果を得た。
− 過酸化物価:87.2meqO/kg
− けん化価:12.3mgKOH/g
− 灰化残留物:0.3%
− フラン脂質含量:49.2%
− 脂肪アルコール含量:14.7
− 重化合物:22.3%
【0027】
実施例2/油の激しい加熱処理のプロセス
ディスクスライサーを用いて、新鮮アボカド50kgを仁を含め2〜5mm厚の薄スライスに切る。乾燥装置は、熱空気流を備える温度制御されたオーブンである。スライスされたアボカドを、搭載トレー上に4〜5cmの厚さに広げる。乾燥温度は70℃に設定され、その継続時間は48時間である。乾燥したらすぐ、果実をすり砕き、次いで冷却圧搾に供する。この操作を、小さな実験室Kometプレスで行う。次いで、抽出した油をブフナー漏斗を通して濾過し、次いで、光と水分から防御された窒素下で保存する。
次いで、この油を、メカニカルスターラーを備えたガラス反応容器中で、窒素の連続した流れの下、85℃で48時間加熱する。
次いで、得られた油を、230℃の温度で10−3mmHgの真空下、Leybold KDL 4薄膜蒸留分子蒸留装置で蒸留する。この操作の蒸留物の収率は9.4%である。
【0028】
この蒸留物350gを、メカニカルスターラーを備え、上に冷却管を取り付けたガラス反応容器中、50%水酸化カリウム175gとエタノール875gの存在下、還流で4時間けん化する。反応終了時に、混合物を30℃に冷却し、次いで、脱ミネラル水を加えることによって希釈する。次いで、得られた水性アルコール性溶液(AAS)を、分液漏斗を用いて1,2−ジクロロエタンで抽出する。
次いで、有機相を一緒にし、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒の留去と真空下での乾燥後、溶解した不けん化分画を最終的に回収する。この工程を、70℃で、1mmHgの真空下、2時間、ロータリーエバポレーター中で行う。アボカド由来の不けん化分画141gをこのように回収し、次いで、分析を待つ間、窒素下で保存する。
【0029】
この分画の物理化学的及びクロマトグラフィー的分析により、以下の結果を得た。
− 過酸化物価:23.2meqO/kg
− けん化価:11.3mgKOH/g
− 灰化残留物:0.2%
− フラン脂質含量:57.6%
− 脂肪アルコール含量:13.7
− 重化合物:14.3%
【0030】
実施例3/蒸留物の激しい加熱処理のプロセス
ディスクスライサーを用いて、新鮮アボカド50kgを仁を含め2〜5mm厚の薄スライスに切る。乾燥装置は、熱空気流を備える温度制御されたオーブンである。スライスされたアボカドを、搭載トレー上に4〜5cmの厚さに広げる。乾燥温度は70℃に設定され、その継続時間は48時間である。乾燥したらすぐ、果実をすり砕き、次いで冷却圧搾に供する。この操作を、小さな実験室Kometプレスで行う。次いで、抽出した油をブフナー漏斗を通して濾過し、次いで、光と水分から防御された窒素下で保存する。
次いで、得られた油を、230℃の温度で10−3mmHgの真空下、Leybold KDL 4薄膜蒸留分子蒸留装置で蒸留する。この操作の蒸留物の収率は9.9%である。
次いで、この蒸留物を、メカニカルスターラーを備えたガラス反応容器中で、窒素の連続した流れの下、85℃で48時間加熱する。
【0031】
得られた油を、メカニカルスターラーを備え、上に冷却管を取り付けたガラス反応容器中、50%水酸化カリウム175gとエタノール875gの存在下、還流で4時間けん化する。反応終了時に、混合物を30℃に冷却し、次いで、脱ミネラル水を加えることによって希釈する。次いで、得られた水性アルコール性溶液(AAS)を、分液漏斗を用いて1,2−ジクロロエタンで抽出する。
次いで、有機相を一緒にし、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒の留去と真空下での乾燥後、溶解した不けん化分画を最終的に回収する。この工程は、70℃で、1mmHgの真空下、2時間、ロータリーエバポレーター中で行う。アボカド由来の不けん化分画163gをこのように回収し、次いで、分析を待つ間、窒素下で保存する。
【0032】
この分画の物理化学的及びクロマトグラフィー的分析により、以下の結果を得た。
− 過酸化物価:26.3meqO/kg
− けん化価:10.7mgKOH/g
− 灰化残留物:0.3%
− フラン脂質含量:62.2%
− 脂肪アルコール含量:14.1
− 重化合物:13.2%
【0033】
中間結論:
【0034】
【表1】

【0035】
− 果実の激しい加熱の標準的プロセス(実施例1)は、高度に酸化された産物(Ip=87.2meqO/kg)を与え、かなりの含量の重化合物(22.3%)を有する。これらの化合物は、プロセスの温度及び長い継続時間により活性化される化学的縮合プロセスに由来する。
【0036】
− 不活性雰囲気下行われる油の激しい加熱プロセスは、収率におけるかなりの増加(果実の加熱の参照プロセスに対し+12%)を可能とする。それによりまた、重化合物の含量がより小さい(前の22%に対し約14%)、より酸化されていない(過酸化物価<30)、逆にフラン脂質により富んだ(49%に対し57%)産物が生じる。
【0037】
− 蒸留物それ自体の加熱のプロセスは、より良い収率(+29%)及び最終不けん化物中のフラン脂質の高い含量(62%)を提供する。従って、フラン脂質の全体の収量は、このように大きく増加する。
【0038】
実施例4/触媒の存在下での蒸留物の激しい加熱処理のプロセス
ディスクスライサーを用いて、新鮮アボカド50kgを仁を含め2〜5mm厚の薄スライスに切る。乾燥装置は、熱空気流を備える温度制御されたオーブンである。スライスされたアボカドを、搭載トレー上に4〜5cmの厚さに広げる。乾燥温度は70℃に設定され、その継続時間は48時間である。乾燥したらすぐ、果実をすり砕き、次いで冷却圧搾に供する。この操作を、小さな実験室Kometプレスで行う。次いで、抽出した油をブフナー漏斗を通して濾過し、次いで、光と水分から防御された窒素下で保存する。
次いで、得られた油を、230℃の温度で10−3mmHgの真空下、Leybold KDL 4薄膜蒸留分子蒸留装置で蒸留する。この操作の蒸留物の収率は9.9%である。
次いで、この蒸留物を、窒素の連続した流れの下、5%酸性アルミナ(触媒)存在下、メカニカルスターラーを備えたガラス反応容器中、85℃で2時間加熱する。
【0039】
加熱処理した蒸留物を濾過し、そして、メカニカルスターラーを備え、上に冷却管を取り付けたガラス反応容器中、50%水酸化カリウム175gとエタノール875gの存在下、還流で4時間けん化する。反応終了時に、混合物を30℃に冷却し、次いで、脱ミネラル水を加えることによって希釈する。次いで、得られた水性アルコール性溶液(AAS)を、分液漏斗を用いて1,2−ジクロロエタンで抽出する。
次いで、有機相を一緒にし、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒の留去と真空下での乾燥後、溶解した不けん化分画を最終的に回収する。この工程を、70℃で、1mmHgの真空下、2時間、ロータリーエバポレーター中で行う。アボカド由来の不けん化分画126gをこのように回収し、次いで、分析を待つ間、窒素下で保存する。
【0040】
この分画の物理化学的及びクロマトグラフィー的分析により、以下の結果を得た:
− 過酸化物価:23.3meqO/kg
− けん化価:11.3mgKOH/g
− 灰化残留物:0.2%
− フラン脂質含量:71.5%
− 脂肪アルコール含量:13.9
− 重化合物:5.2%
【0041】
実施例5/触媒の非存在下での蒸留物の激しい加熱処理のプロセス
ディスクスライサーを用いて、新鮮アボカド50kgを仁を含め2〜5mm厚の薄スライスに切る。乾燥装置は、熱空気流を備える温度制御されたオーブンである。スライスされたアボカドを、搭載トレー上に4〜5cmの厚さに広げる。乾燥温度は70℃に設定され、その継続時間は48時間である。乾燥したらすぐ、果実をすり砕き、次いで冷却圧搾に供する。この操作を、小さな実験室Kometプレスで行う。次いで、抽出した油をブフナー漏斗を通して濾過し、次いで、光と水分から防御された窒素下で保存する。
次いで、得られた油を、230℃の温度で10−3mmHgの真空下、Leybold KDL 4薄膜蒸留分子蒸留装置で蒸留する。この操作の蒸留物の収率は9.9%である。
次いで、この蒸留物を、窒素の連続した流れの下、メカニカルスターラーを備えたガラス反応容器中で、85℃で2時間加熱する。
【0042】
加熱処理された蒸留物を、メカニカルスターラーを備え、上に冷却管を取り付けたガラス反応容器中、50%水酸化カリウム175gとエタノール875gの存在下、還流で4時間けん化する。反応終了時に、混合物を30℃に冷却し、次いで、脱ミネラル水を加えることによって希釈する。次いで、得られた水性アルコール性溶液(AAS)を、分液漏斗を用いて1,2−ジクロロエタンで抽出する。
次いで、有機相を一緒にし、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒の留去と真空下での乾燥後、溶解した不けん化分画を最終的に回収する。この工程を、70℃で、1mmHgの真空下、2時間、ロータリーエバポレーター中で行う。アボカド由来の不けん化分画17gをこのように回収し、次いで、分析を待つ間、窒素下で保存する。
【0043】
この分画の物理化学的及びクロマトグラフィー的分析により、以下の結果を得た:
− 過酸化物価:21.2meqO/kg
− けん化価:10.1mgKOH/g
− 灰化残留物:0.1%
− フラン脂質含量:70.1%
− 脂肪アルコール含量:14.2%
− 重化合物:3.2%
【0044】
結論:
加熱処理2時間後、アルミナの非存在下でのたった17gに対し、不けん化物126gが得られるので、アルミナ触媒の添加は、変換率を著しく増大する。
【0045】
反例/果実又はその必要に応じ濃縮された油の激しい加熱処理なしのプロセス
ディスクスライサーを用いて、新鮮アボカド50kgを仁を含め2〜5mm厚の薄スライスに切る。乾燥装置は、熱空気流を備える温度制御されたオーブンである。スライスされたアボカドを、搭載トレー上に4〜5cmの厚さに広げる。乾燥温度は65℃に設定され、その継続時間は72時間である。乾燥したらすぐ、果実をすり砕き、次いで冷却圧搾に供する。この操作を、小さな実験室Kometプレスで行う。次いで、抽出した油をブフナー漏斗を通して濾過し、次いで、光と水分から防御された窒素下で保存する。
次いで、得られた油を、230℃の温度で10−3mmHgの真空下、Leybold KDL 4薄膜蒸留分子蒸留装置で蒸留する。この操作の蒸留物の収率は9.1%である。
【0046】
得られた蒸留物を、メカニカルスターラーを備え、上に冷却管を取り付けたガラス反応容器中、50%水酸化カリウム175gとエタノール875gの存在下、還流で4時間けん化する。反応終了時に、混合物を30℃に冷却し、次いで、脱ミネラル水を加えることによって希釈する。次いで、得られた水性アルコール性溶液(AAS)を、分液漏斗を用いて1,2−ジクロロエタンで抽出する。
次いで、有機相を一緒にし、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。低温、真空下での溶媒の留去後、溶解した不けん化分画を最終的に回収する。この工程を、70℃で、1mmHgの真空下、2時間、ロータリーエバポレーター中で行う。アボカド由来の不けん化分画105gをこのように回収し、次いで、分析を待つ間、窒素下で保存する。
【0047】
この分画の物理化学的及びクロマトグラフィー的分析により、以下の結果を得た。
− 過酸化物価:5.1meqO/kg
− けん化価:11.3mgKOH/g
− 灰化残留物:0.4%
− フラン脂質含量:5.2%
− 脂肪アルコール含量:13.7
− 重化合物:31.2%
結論:
果実、又は非加熱果実から得られるであろう油の激しい加熱の工程の非存在下、得られるアボカド由来の不けん化分画のフラン脂質含量は非常に低い(10%よりもかなり低い)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセスであって、以下の連続工程:
(1)−50℃〜75℃の温度で行われる、新鮮アボカド又は前もって変換を受けたアボカドの制御された脱水の工程、
(2)脱水された果実からの油の抽出の工程、
(3)二者択一で、
− a.80〜150℃の範囲でありうる温度での該抽出した油の加熱処理の工程、次いで油の不けん化分画の濃縮の工程、又は
− b.該油の不けん化分画の濃縮の工程、次いで80〜150℃の範囲でありうる温度での加熱処理の工程、次いで
(4)不けん化物のけん化及び抽出の工程
を含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
工程(3)a.又は(3)b.の間の加熱処理が触媒存在下に行われることを特徴とする、請求項1に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項3】
触媒が、塩酸、硫酸、酢酸及びパラ−トルエンスルホン酸の群から選択される均質な無機又は有機触媒型の酸触媒、或いはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、ゼオライト及び酸性樹脂からなる群から選択される不均質な固体触媒であることを特徴とする、請求項2に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項4】
触媒が、少なくとも200m/gに等しい比表面積を有する酸性アルミナ型のものであることを特徴とする、請求項3に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項5】
工程(1)における脱水が、熱空気流下又は制御された雰囲気下での乾燥、厚い層又は薄い層で大気圧又は真空下での乾燥、マイクロ波乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、及び溶液又は固相での浸透圧脱水からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項6】
工程(1)における脱水が、70〜75℃の温度で、8〜36時間、薄い層で熱空気流下、通風乾燥機での乾燥であることを特徴とする、請求項5に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項7】
工程(2)における抽出が、単純な冷却圧搾又は低温の溶媒によって行われることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項8】
工程(3)a.又は(3)b.における濃縮工程が冷却結晶化又は分子蒸留であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項9】
濃縮工程が、10−3〜10−2mmHgの圧力を維持しながら180〜260℃の温度で行われる分子蒸留であることを特徴とする、請求項8に記載のアボカド由来の不けん化物を得るプロセス。
【請求項10】
分子蒸留が、遠心分離型の分子蒸留装置及び薄膜蒸留型の分子装置から選択される装置で行われることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項11】
油又は油性抽出物のけん化の工程(4)が、アルコール性媒体中水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの存在下で行われ、次いで1回以上の抽出が行われることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項12】
抽出が、アルカン、ハロアルカン、芳香族溶媒及びエーテルの群から選択される有機溶媒による液液抽出によって行われることを特徴とする、請求項11に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項13】
抽出用の有機溶媒が1,2−ジクロロエタンであることを特徴とする、請求項10に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。
【請求項14】
脱臭工程を次いで行うことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のアボカド由来のフラン脂質に富んだ不けん化物を得るプロセス。

【公表番号】特表2006−500340(P2006−500340A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525478(P2004−525478)
【出願日】平成15年7月28日(2003.7.28)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002379
【国際公開番号】WO2004/012496
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(503028525)ラボラトワール エクスパンシアンス (12)
【Fターム(参考)】