説明

アポトーシスの検出方法

【課題】アポトーシスを簡便かつ正確に検出する。
【解決手段】細胞に存在するヘパリン骨格又はヘパラン硫酸骨格における「N位が置換されていないグルコサミン残基」の増加を検知するステップを少なくとも含む、アポトーシスの検出方法、または、細胞におけるNDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現の増加を検知するステップを少なくとも含む、アポトーシスの検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アポトーシスの検出方法、アポトーシス検出剤、アポトーシス検出キット及びアポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願書類中で使用する略号及びその意義は以下の通りである。
2SH:(6−O・N)−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
6DSH:6−O−脱硫酸化HEP
6SH:(2−O・N)−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
AS:アカラン硫酸
ACH:2−O−脱硫酸化AS
Ac−6DSH:N−アセチル化6DSH
Ac−NAH:N−アセチル化NAH
Ac−NSH;N−アセチル化NSH
CDSH:完全脱硫酸化・N−アセチル化HEP
Ch:コンドロイチン
CS:コンドロイチン硫酸
CS−A(S):サメ由来コンドロイチン硫酸A
CS−A(W):クジラ由来コンドロイチン硫酸A
CS−B:コンドロイチン硫酸B(DSと同義である)
CS−C:コンドロイチン硫酸C
CS−D:コンドロイチン硫酸D
CS−E:コンドロイチン硫酸E
DMEM:ダルベッコの改変イーグル培地
DS:デルマタン硫酸(CS−Bと同義である)
DTT:ジチオスレイトール
EHS−HS:マウスのエンジェルブレス−ホーム−スワーン腫瘍組織(Engelbreth-Holm-Swarm sarcoma)由来のHS
ELISA法:酵素標識抗体測定法
FCS:仔ウシ胎仔血清
FITC:フルオレセインイソチオシアネート
G3PDH:グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ
GlcA:グルクロン酸
GlcN:N位が置換されていないグルコサミン
GlcNAc:N−アセチルグルコサミン
GlcNS:N−硫酸化グルコサミン
HA:ヒアルロン酸
HEP:ヘパリン
HS:ヘパラン硫酸
HS2ST:HS 2−O−硫酸基転移酵素
HS6ST:HS 6−O−硫酸基転移酵素
IdoA:イズロン酸
IdoA(2S):2−O−硫酸化イズロン酸
KS:ケラタン硫酸
NAc−HEP:N−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
NAH:N−アセチルヘパロザン
NDST:HS/HEP GlcNAc N−脱アセチル/GlcN N−硫酸基転移酵素(heparan sulfate/heparin GlcNAc N-deacetylase/GlcN N-sulfotransferase)
NH2−2SH:(6−O・N)−脱硫酸化HEP
NH2−6SH:(2−O・N)−脱硫酸化HEP
NH2−CDSH:完全脱硫酸化HEP
NH2−HEP:N−脱硫酸化HEP
NSH:(2−O・6−O)−脱硫酸化HEP
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PDNAc−NAH:部分的脱アセチル化NAH
【0003】
アポトーシスは、細胞核の染色体凝集、細胞核の断片化、染色体DNAラダーなどを指標にして検出できることが知られている(非特許文献1)。また、LeY糖鎖を認識する抗体を用いてアポトーシスを検出する方法が知られている(特許文献1)。
しかし、グリコサミノグリカンやプロテオグリカンを指標としてアポトーシスを検出する方法は知られていない。
一方、HEP骨格やHS骨格におけるGlcN残基を認識し結合する抗体として、例えばJM403抗体(特許文献2)や、NAH43抗体(特許文献3)が知られている。そして、例えばJM403抗体についてはリソソーム病の検出用途が(特許文献2)、NAH43抗体についてはHSやNAHの検出用途が(特許文献3)それぞれ知られている。しかし、いずれの抗体も、アポトーシス検出用途として用いることについては知られていない。
また、HEPやHSの生合成に関与する酵素として、NDST−1、−2、−3及び−4が知られているが(非特許文献2)、これらの酵素の発現を指標としてアポトーシスを検出することも知られていない。
【0004】
また、アポトーシスの初期段階には、細胞表面が変化しホスファチジルセリンの原形質膜の内側から外層への転座が起こることから、ホスファチジルセリンと高い親和性で結合するアネキシンVを用いて、この転座したホスファチジルセリンを検出することでアポトーシスを検出する手法も知られている。しかし、アネキシンVはカルシウム依存的であり、カルシウムの存在が検出結果に重大な影響を与えるため、この手法は付着性の細胞(解析にあたり培養ディッシュから細胞を剥がす際にカルシウムを用いる必要がある)には利用することができない。
【特許文献1】特開平6−109729号公報
【特許文献2】特表2005−524074号公報
【特許文献3】国際公開第2006/106950号パンフレット
【非特許文献1】今堀和友,山川民夫監修,「生化学辞典」(第3版),株式会社東京化学同人,1998年10月8日発行,p54−55
【非特許文献2】アイカワ,ジュンイチら(Aikawa, Jun-ichi)ら,2001年,ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry),第276巻,第8号,p.5876−5882
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たなアポトーシスの検出方法、アポトーシス検出剤、アポトーシス検出キット及びアポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、細胞に存在するHEP骨
格又はHS骨格におけるGlcN残基の増加を検知することによりアポトーシスを検出できることを見い出した。さらに、細胞におけるNDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現の増加を検知することによりアポトーシスが検知できることを見い出した。さらに、これらの知見に基づいて、アポトーシス検出剤、アポトーシス検出キット及びアポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニング方法を提供するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、細胞に存在するHEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基の増加を検知するステップを少なくとも含む、アポトーシスの検出方法(以下「本発明検出方法1」という。)を提供する。
このGlcN残基は、GlcA残基とグリコシド結合した構造として存在するものが好ましい。
また、この検知は、なかでも抗体によって行われることが好ましい。この場合に用いる抗体としては、HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体が好ましい。
【0008】
また本発明は、HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体を有効成分とする、アポトーシス検出剤(以下「本発明検出剤」という。)を提供する。
この抗体が結合するGlcN残基は、GlcA残基とグリコシド結合しているものが好ましい。
【0009】
また本発明は、次の(1)及び(2)に示す構成成分を少なくとも含む、アポトーシス検出キット(以下「本発明キット」という。)を提供する。
(1)HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体、
(2)上記(1)の抗体を検出する試薬。
この抗体が結合するGlcN残基は、GlcA残基とグリコシド結合しているものが好ましい。
【0010】
また本発明は、被験物質と細胞とを接触させ、当該細胞におけるHEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基が増加又は減少した場合に当該被験物質を選択するステップを少なくとも含む、アポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニング方法(以下「本発明スクリーニング方法1」という。)を提供する。
このGlcN残基は、GlcA残基とグリコシド結合した構造として存在するものが好ましい。
【0011】
また本発明は、細胞におけるNDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現の増加を検知するステップを少なくとも含む、アポトーシスの検出方法(以下「本発明検出方法2」という。)を提供する。この「発現」は、なかでもmRNAの発現であることが好ましい。
【0012】
また本発明は、被験物質と細胞とを接触させ、当該細胞におけるNDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現が増加又は減少した場合に当該被験物質を選択するステップを少なくとも含む、アポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニング方法(以下「本発明スクリーニング方法2」という。)を提供する。この「発現」は、なかでもmRNAの発現であることが好ましい。
【0013】
以下、本発明検出方法1と2とを併せて「本発明検出方法」と総称する。また、本発明スクリーニング方法1と2とを併せて「本発明スクリーニング方法」と総称する。
【発明の効果】
【0014】
本発明検出方法は、従来から知られているアポトーシス検出の方法(アポトーシス小体検出や、DNAの断片化)とは質的に異なる指標による客観的なアポトーシス検出を可能とすることから、極めて有用である。また本発明検出剤及び本発明キットは、本発明検出方法の実施をより簡便かつ迅速なものとすることができ、極めて有用である。さらに本発明スクリーニング方法は、医薬の候補物質としても利用しうるアポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質を簡便かつ迅速にスクリーニングできることから、極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<1>本発明検出方法1
本発明検出方法1は、細胞に存在するHEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基の増加を検知するステップを少なくとも含む、アポトーシスの検出方法である。
本発明検出方法1によるアポトーシスの検出対象となる「細胞」は、アポトーシスを引き起こしうる細胞である限りにおいて特に限定されず、アポトーシス検出を所望する細胞をそのまま用いればよい。細胞の一例としては、例えば、癌細胞、T細胞などの血球細胞、神経細胞などを挙げることができる。例えば、ヒトの癌細胞におけるアポトーシスの検出を所望するのであれば、当該癌細胞をそのまま用いればよい。
【0016】
本発明検出方法1は、このような細胞に存在する、HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基の増加を検知するステップを少なくとも含むことを特徴とする。なお、本出願書類におけるGlcN残基は、いずれも「N位がアセチル基及び硫酸基のいずれにも置換されていないグルコサミン残基」であることが好ましい。
また、本出願書類におけるGlcN残基は、GlcA残基とグリコシド結合した構造として存在するものが好ましい。
したがって、本出願書類におけるGlcN残基として最も好ましいものは、「N位がアセチル基及び硫酸基のいずれにも置換されていないグルコサミン残基」であって、これがGlcA残基とグリコシド結合した構造として存在するものである。
【0017】
細胞に存在する、HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基の検知の方法は、このような特定の糖鎖構造を検知できる手法を用いる限りにおいて特に限定されない。例えば、アポトーシス検出対象となる細胞の糖鎖を抽出し、抽出された当該糖鎖について、公知の物理化学的分析手法によってHEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基を検知してもよい。
【0018】
また、HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体を用いた抗原抗体反応により、当該糖鎖構造を検知することもできる。
この場合に用いる抗体は、HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合するものである限りにおいて特に限定されない。なかでも、当該抗体が結合する抗原をヘパリチナーゼで処理すると、当該抗原に対する結合性が消失するものであることが好ましい。また、HA、CS、DS、KSのいずれとも実質的に結合しないものが好ましい。すなわち、当該糖鎖構造に特異的に結合するものが好ましい。
また抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれであってもよいが、継続的な生産性の確保や、抗体の均一性の観点からすればモノクローナル抗体であることが好ましい。また、本出願書類において「実質的に結合しない」とは、1分子たりとも結合しないことを意味するものではなく、結合が検出できないか又は結合が検出できたとしても弱いものであって本発明の属する技術分野における当業者からみて無視できる程度のものであることを意味する。
【0019】
本発明検出方法1において用いることができ、当業者が一般的に入手できる具体的な抗体としては、例えばJM403抗体(特表2005−524074号公報:Diabetologia
, 37(3), p313-320 (1994))を挙げることができる。この抗体は、生化学バイオビジネス株式会社から市販され、一般に入手可能である。JM403抗体はモノクローナル抗体であり、その免疫グロブリンクラスはマウスIgMであって、HEP骨格又はHS骨格中に存在する、GlcN残基に結合する。
また抗原をヘパリチナーゼ処理することによって結合性が消失し、HA、CS、DS、KSとは実質的に結合しない。
また、JM403抗体と同じ相補性決定領域(CDR)を有する抗体も本発明において使用できる。
【0020】
また、本発明検出方法1において用いることができ、当業者が一般的に入手できる別の具体的な抗体としては、例えばNAH43抗体(国際公開第2006/106950号パンフレット)を挙げることができる。この抗体は、平成17年3月11日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に受託番号FERM BP−10535として受託されたハイブリドーマによって産生される。NAH43抗体はモノクローナル抗体であり、その免疫グロブリンクラスはマウスIgMであって、HEP骨格又はHS骨格中に存在するGlcN残基に結合する。一方、EHS−HS、HA、Ch、各種CS(CS−A、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E)及びKSには実質的に結合しない。
また、NAH43抗体と同じ相補性決定領域(CDR)を有する抗体も本発明において使用できる。
【0021】
ここで用いることができる抗体は、HEP骨格又はHS骨格における、GlcN残基、好ましくは、GlcA残基とグリコシド結合したGlcN残基を抗原として、公知の方法で製造することもできる。例えば、モノクローナル抗体を所望するのであれば、当該抗原で哺乳動物を免疫し、当該動物からリンパ球を採取して、これを哺乳動物由来のミエローマ細胞と細胞融合させることによりハイブリドーマを形成させ、当該ハイブリドーマのなかから当該抗原に特異的に結合する抗体を産生するものを選択し、抗体を採取すればよい。
【0022】
また、ここで用いることができる抗体は、免疫グロブリンとして精製されたものであっても、未精製のもの(例えば、ハイブリドーマの培養上清、腹水、抗血清そのものなど)であっても良いが、免疫グロブリンとして精製されているものが好ましい。なお、本出願書類において「精製」という語は、いわゆる完全精製(実質的に純粋となるまで精製すること)のみならず、部分精製(実質的に純粋とまではいえないが、画分中に占める精製目的物質の割合が多数となる程度にまで精製すること)をも含む概念として用いる。
また、ここで用いることができる抗体は、免疫グロブリンの分子構造を完全に保持しているものは勿論、抗原結合部位(Fab)を分解しないプロテアーゼ(例えばプラスミン、ペプシン、パパイン等)で処理してFabを含むフラグメントとしたものであっても良い。抗体のFabを含むフラグメントとしては、Fab以外に、Fabc、(Fab')2等が例示される。
【0023】
また、ここで用いることができる抗体をコードする遺伝子の塩基配列やこれらの抗体のアミノ酸配列が決定されれば、遺伝子工学的にこれらの抗体、Fabを含むフラグメント、キメラ抗体等を作製することもできる。前記抗体のFabを含むフラグメントやキメラ抗体等も、前記糖鎖構造に結合する限りにおいて、本出願書類における「抗体」の概念に包含される。
【0024】
抗体を用いて前記の糖鎖構造を検知する場合には、例えばアポトーシスの検出対象となる細胞から抽出された糖鎖と当該抗体とを接触させ抗原抗体反応させてもよく、また当該細胞と当該抗体とを直接接触させ抗原抗体反応させてもよい。前者の場合には、例えばイ
ムノブロッティング法によって当該糖鎖構造を検知することができ、後者の場合には、例えばフローサイトメトリー法によって当該糖鎖構造を検知することができる。なお、抗体を接触させて抗原抗体反応させ、抗原(当該糖鎖構造)を検知する方法・条件等については、一般的なイムノアッセイの手法・条件をそのまま利用することができる。
【0025】
ここで用いることができる抗体は、標識物質と直接結合させたものでもよい。また、ここで用いることができる抗体を一次抗体とし、この一次抗体に結合し、かつ標識物質が結合した二次抗体(当該一次抗体に係る免疫グロブリンに結合する抗体)を用いてもよい。
この標識物質としては、例えば酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性同位元素(125I、131I、3Hなど)、蛍光色素(FITC、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(DTAF)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リスアミンローダミンB(Lissamine Rhodamine B)、テキサスレッド(Texas Red)、フィコエリスリン(Phycoerythrin;PE)、ウンベリフェロン、ユーロピウム、フィコシアニン、トリカラー、シアニンなど)、化学発光物質(ルミノールなど)、ハプテン(ジニトロフルオロベンゼン、アデノシン一リン酸(AMP)、2,4−ジニトロアニリンなど)、金属粒子(フェリチン粒子、金コロイド粒子など)、特異的結合対(ビオチンとアビジン類(ストレプトアビジンなど)、レクチンと糖鎖、アゴニストとアゴニストの受容体、HEPとアンチトロンビンIII(ATIII)など)のいずれか一方の物質等が例示される。
【0026】
抗体の検知は、抗体に直接結合している標識物質のシグナルを検知することにより行うことができる。シグナルの検知は、用いる試料の種類・状態や、標識物質の種類等に応じて、公知の方法から当業者が適宜設定して行うことができる。例えば、細胞そのものを試料とした場合には、顕微鏡を用いて色素、金属粒子の密度、放射能のカウント、蛍光強度、蛍光偏光、発光強度等を検知すればよい。また細胞の懸濁液を試料とした場合には、顕微鏡や、フローサイトメトリー等の手法を採用することができる。また、抽出された糖鎖を試料とした場合には、イムノブロッティング、ELISA法等の手法を採用することができる。具体的な一例については、実施例を参照されたい。
なお、迅速性・簡便性等の面からすると、前記の糖鎖構造の検知は、抗体を用いて行われることが好ましい。
【0027】
細胞に存在するHEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基が増加したか否かは、アポトーシスの検出対象となる細胞において、アポトーシスが惹起されていないもの(正常なもの:ネガティブコントロール)と、アポトーシスが惹起されている可能性があるものとを比較することにより調べることができる。すなわち、アポトーシスが惹起されている可能性がある細胞における前記糖鎖構造の検知結果(当該糖鎖構造の量)が、当該細胞であってアポトーシスが惹起されていないもの(正常なもの)の細胞における当該糖鎖構造の検知結果(当該糖鎖構造の量)を上回るものであれば、前者の細胞における当該糖鎖構造の「増加」として判定・検知することができる。そして、これにより当該糖鎖構造の増加が検知された細胞については、アポトーシスが惹起されているものとして判定・検出することができる。
【0028】
本発明検出方法1は、以上のような、「細胞に存在するHS骨格におけるGlcN残基の増加を検知するステップ」を少なくとも含む限りにおいて、他のステップをさらに含んでいてもよい。例えば、アポトーシスの検出対象となる細胞から糖鎖を抽出するステップや、統計解析するステップなど、本発明の実施にあたりさらに必要となるステップを適宜追加してもよい。
【0029】
<2>本発明検出剤
本発明検出剤は、HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体を有効成分とする、アポトーシス検出剤である。
本発明検出剤の有効成分である、「HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体」についての説明は、前記<1>と同様である。すなわち、本発明検出方法1において用いることができる抗体を、そのまま本発明検出剤の有効成分として用いることができる。当該抗体に標識物質が直接結合していてもよいことはいうまでもない。
本発明検出剤は、「HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体」を有効成分として含有している限りにおいて、さらに他の成分を含有していてもよい。このような他の成分の一例としては、例えば試薬的に許容される安定化剤、保存剤、賦形剤等を例示することができる。
本発明検出剤は、「HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体」をそのまま、又は必要に応じてさらに前記のような他の成分を添加して、通常の試薬・製剤等の調製方法にしたがって製造することができる。
また本発明検出剤は、前記<1>における本発明検出方法1に記載の方法にしたがって使用することができる。
【0030】
<3>本発明キット
本発明キットは、次の(1)及び(2)に示す構成成分を少なくとも含む、アポトーシス検出キットである;
(1)HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体、
(2)上記(1)の抗体を検出する試薬。
本発明キットの構成成分である、(1)「HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体」についての説明は、前記<1>と同様である。すなわち、本発明検出方法1において用いることができる抗体を、そのまま本発明キットの構成成分(1)に係る抗体として用いることができる。当該抗体に標識物質が直接結合していてもよいことはいうまでもない。
【0031】
また、本発明キットのもう一つの構成成分である「上記(1)の抗体を検出する試薬」は、「HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体」を何らかのかたちで検出できる試薬である限りにおいて特に限定されない。このような試薬としては、例えば、前記<1>中で説明した二次抗体(「HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体」(一次抗体)に結合し、かつ標識物質が結合した抗体(当該一次抗体に係る免疫グロブリンに結合する抗体))を例示することができる。また、「HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基に結合する抗体」が標識物質と直接結合しているような場合において、例えば当該標識物質が酵素である場合には、「上記(1)の抗体を検出する試薬」は、当該酵素の基質(発色基質など)であってもよい。
本発明キットは、前記<1>の本発明検出方法1にしたがって使用することができる。
本発明キットは、前記の(1)及び(2)に示す構成成分を少なくとも含む限りにおいて、さらに所望の他の構成成分を含ませてもよい。このような他の構成成分としては、例えば洗浄液、酵素反応停止液等を例示することができる。また、測定バッチ同士の実施レベルを一定水準に保つための陽性コントロール(QCコントロール)を含有させることもできる。
これらの構成成分は、それぞれ別体の容器に収容し保存しておくことができる。
【0032】
<4>本発明スクリーニング方法1
本発明スクリーニング方法1は、被験物質と細胞とを接触させ、当該細胞におけるHEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基が増加又は減少した場合に当該被験物質を選択するステップを少なくとも含む、アポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニング方法である。
ここにいう「被験物質」とは、アポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニングに付される物質を意味する。
本発明スクリーニング方法1においては、まずこの被験物質と、アポトーシス誘導又はアポトーシス阻害のターゲットとする細胞とを接触させる。接触の方法は、被験物質分子が細胞と接触できる状態となる限りにおいて特に限定されない。簡便な方法の一例として、例えば細胞を含有する培養液に、被験物質を添加する方法を例示することができる。
【0033】
アポトーシス誘導剤の候補物質のスクリーニングを行う場合には、被験物質と、ターゲットとする細胞の維持・生育が可能な培地中でインキュベートした細胞とを接触させ、インキュベートすればよい。
また、アポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニングを行う場合には、ターゲットとする細胞を予めアポトーシスが惹起される環境下(例えば、ダウノマイシン等のアポトーシス誘導物質の存在下や、血清成分が欠乏した環境下)でインキュベートしてこの細胞と被験物質とを接触させるか、または被験物質とターゲットとする細胞とを接触させた後に、そのままアポトーシスが惹起される環境下(上記参照)でインキュベートすればよい。
その後、前記<1>の本発明検出方法1にしたがって、当該細胞におけるHEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基を検知すればよい。
そして、アポトーシス誘導剤の候補物質のスクリーニングにおいては、被験物質を接触させることによって細胞における当該糖鎖構造が増加すれば、アポトーシスが誘導されたのであるから、当該被験物質をアポトーシス誘導剤の候補物質として選択することができる。
同様に、アポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニングにおいては、被験物質を接触させることにより、細胞における当該糖鎖構造が減少すれば、アポトーシスが阻害されたのであるから、当該被験物質をアポトーシス阻害剤の候補物質として選択することができる。
【0034】
本発明スクリーニング方法1は、以上のような、「被験物質と細胞とを接触させ、当該細胞におけるHEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基が増加又は減少した場合に当該被験物質を選択するステップ」を少なくとも含む限りにおいて、他のステップをさらに含んでいてもよい。例えば、当該ステップにより選択された物質(アポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質)を、他のスクリーニングや試験に付するステップをさらに含んでいてもよい。
【0035】
<5>本発明検出方法2
本発明検出方法2は、細胞におけるNDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現の増加を検知するステップを少なくとも含む、アポトーシスの検出方法である。
細胞におけるNDST−3やNDST−4の発現は、タンパク質として検知してもよく、mRNAとして検知してもよい。タンパク質として検知する場合には、例えば抗体等を用いることもできる。またmRNAとして検知する場合には、例えば実施例に例示したような、NDST−3やNDST−4についての特異的なプライマーを用いたRT−PCRを採用することもできる。なかでもmRNAの発現を検知することが好ましい。この場合におけるNDST−3やNDST−4についての特異的なプライマーは、それぞれの塩基配列(NDST−3:配列番号19、NDST−4:配列番号21)に基づいて設計することができるが、その具体例としては、NDST−3について配列番号5と6の組合わせ、NDST−4について配列番号7と8の組合わせを例示することができる。また、RT−PCRの条件等の具体例についても、実施例に記載したものを例示することができる。
【0036】
細胞におけるNDST−3やNDST−4の発現が増加したか否かは、アポトーシスの検出対象となる細胞において、アポトーシスが惹起されていないもの(正常なもの:ネガティブコントロール)と、アポトーシスが惹起されている可能性があるものとを比較する
ことにより調べることができる。すなわち、アポトーシスが惹起されている可能性がある細胞におけるNDST−3やNDST−4の発現量が、当該細胞であってアポトーシスが惹起されていないもの(正常なもの)の細胞におけるNDST−3やNDST−4の発現量を上回るものであれば、発現の「増加」として判定・検知することができる。そして、これにより発現の増加が検知された細胞については、アポトーシスが惹起されているものとして判定・検出することができる。
【0037】
<6>本発明スクリーニング方法2
本発明スクリーニング方法2は、被験物質と細胞とを接触させ、これにより当該細胞におけるNDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現が増加又は減少した場合に当該被験物質を選択するステップを少なくとも含む、アポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニング方法である。NDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現が増加した場合には当該被験物質をアポトーシス誘導剤として選択することができ、NDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現が減少した場合には当該被験物質をアポトーシス阻害剤として選択することができる。
本発明スクリーニング方法2は、本発明スクリーニング方法1のスクリーニング指標である「HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基の増加又は減少」に代えて、「NDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現が増加又は減少」をスクリーニング指標として採用したものである。したがって、この点以外の説明は、本発明スクリーニング方法1と同様である。
そして、NDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現は、前記<5>の本発明検出方法2にしたがって検知すればよい。したがって本発明スクリーニング方法2における「発現」もmRNAの発現であることが好ましく、これに関する他の説明も前記<5>と同様である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に詳説する。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、これにより本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0039】
1.材料及び方法
1−1.本実施例で用いた細胞
以下の各種細胞株を生体組織由来の試料として用いた。
(1)K562株: ヒト慢性骨髄性白血病由来細胞株(Blood, 1975 Mar; 45(3): 321-334)(RCB0027)である。
(2)HL−60株: ヒト前骨髄球性白血病細胞株(Nature, 1977 Nov 24; 270(5635): 347-349)(RCB0041)である。
(3)U937株: ヒトリンパ腫由来細胞株(J. Exp. Med., 1976 Jun 1; 143(6): 1528-1533)(RCB1978)である。
(4)C−1株: ヒト大腸癌由来細胞株(Cancer Res. 2001 Jun 1; 61(11): 4620-4627)である。
(5)LS174T株: ヒト大腸癌由来細胞株(Clin. Cancer Res., 2006 Mar 1; 12(5): 1606-1614)である。
(6)PC12株: ラット褐色腫由来細胞株であり、NGF添加により神経突起を伸ばして分化する特性を有する(Natl. Acad. Sci. USA., 1976 Jul; 73(7): 2424-2428)(RCB0009)。
(7)Jurkat株: ヒトT細胞株(Int. J. Cancer, 1977 May 15; 19(5): 621-626)(RCB0806)である。
なお、「RCB」で始まる番号は、理化学研究所 バイオリソースセンター 細胞バンク(RIKEN CELL BANK)における細胞番号である。
なお、C−1株、LS174T株及びPC12株についてはFCSを10%含有するDMEMを、他の細胞株についてはFCSを10%含有するRPMI−1640培地を、それぞれ細胞培養液として用いた。
【0040】
1−2.本実施例で用いた抗体
(1)JM403抗体: 生化学バイオビジネス株式会社製のものを用いた。この抗体の免疫グロブリンクラスはマウスIgMであり、HEP骨格又はHS骨格中に存在する、GlcN残基に結合する。抗原をヘパリチナーゼ処理することによって結合性が消失し、HA、CS、DS、KSとは実質的に結合しない。
【0041】
(2)NAH43抗体: 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−10535として受託されたハイブリドーマによって産生されたものを用いた。この抗体の免疫グロブリンクラスはマウスIgMである。この抗体はHEP骨格又はHS骨格中に存在するGlcN残基に結合するが、EHS−HS、HA、Ch、各種CS(CS−A、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E)及びKSには実質的に結合しない。
【0042】
(3)NAH46抗体:生化学バイオビジネス株式会社製のものを用いた。この抗体の免疫グロブリンクラスはマウスIgMであり、HEP骨格又はHS骨格中に存在するGlcNAcに結合する。抗原をヘパリチナーゼ処理すると結合性が消失し、HA、CS、DS、KSとは結合しない。(WO2006/106950に記載の方法でも製造することができ、また、平成17年3月11日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−10536として受託されたハイブリドーマからも製造することができる)。
【0043】
(4)10E4抗体: 生化学バイオビジネス株式会社製のもの(商品名:F58-10E4)を用いた。この抗体の免疫グロブリンクラスはマウスIgMであり、HS中に存在するGlcNS残基に結合する。抗原をヘパリチナーゼ処理すると結合性が消失し、HA、CS、DS、KS、DNAとは実質的に結合しない。
【0044】
(5)HepSS−1抗体: 生化学バイオビジネス株式会社製のものを用いた。この抗体の免疫グロブリンクラスはマウスIgMであり、HS中に存在するO−硫酸化・N−アセチル化グルコサミンに結合する。マウス、サル、ラット、ハムスター、ニワトリ由来の多様な正常細胞とも結合する。HA、Ch、HEP、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、DS、CS−D、CS−E及びKSとは実質的に結合しない。
【0045】
(6)ACH55抗体: 平成18年3月1日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−10779として受託されたハイブリドーマによって産生されたものを用いた。この抗体の免疫グロブリンクラスはマウスIgMである。この抗体はACHに結合するが、AS、HEP、HS、NAH及びEHS−HS、HA、各種CS(CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E)及びKSには実質的に結合しない。またこの抗体は、HEP誘導体のうち、CDSHに対しては強く反応し、2SH、6SHとAc−NSHに対しては極弱く反応するが、NH2−HEP、NAc−HEP、6DSH、Ac−6DSH、NH2−6SH、NH2−2SH、NSH、NH2−CDSHには実質的に結合しない。
ACH55抗体が強く反応したACHは、イズロン酸ユニット(-[IdoA-GlcNAc]-)を主な構成二糖としていることから、ACH55抗体のエピトープは、イズロン酸ユニットから構成されていると考えられる。このことは、この抗体がCDSH(グルクロン酸ユニット及びイズロン酸ユニットにより主に構成される多糖であり、イズロン酸ユニットの存在比は60%以上と高い)とも強く反応することからも裏付けられる。
またこの抗体が結合しなかったNAHは、グルクロン酸ユニット(-[GlcA-GlcNAc]-)からなるACHのウロン酸C5−エピマーであることから、特にイズロン酸残基がこの抗体の抗原認識において必須であることが示唆される。さらに、この抗体はAS(イズロン酸残基の2位水酸基が硫酸化されている)に対する結合性がみられないことから、イズロン酸の硫酸化(IdoA(2S))は、この抗体の結合性を阻害することが示唆される。
またこの抗体の結合性は、GlcNAc残基のN−脱アセチル化(NH2−CDSH)及びN−硫酸化(NSH)によって消失したので、GlcN残基のアミノ基がアセチル化されていることも、この抗体の抗原の認識において重要であることが示唆された。ASと結合しないこの抗体が、2SH、6SHやAc−NSHと弱く反応した理由は、HEPがN−脱硫酸化、2−O脱硫酸化及び6−O脱硫酸化等、複数の修飾を経る過程で、イズロン酸ユニットがHEP誘導体中に顕在化したためと推察される。
【0046】
(7)AS22抗体: 平成18年3月1日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−10775として受託されたハイブリドーマによって産生されたものを用いた。この抗体の免疫グロブリンクラスはマウスIgMである。
この抗体はASに対して強く反応するが、HS及びHEPに対して実質的に結合しない。またこの抗体は、ACH、EHS−HS、KS、HA、NAH、CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E及びChのいずれに対しても実質的に結合しない。したがってこの抗体のエピトープには、IdoA(2S)残基が含まれていることが示唆される。
また、この抗体が結合性を示さないHS及びHEPの分子中には、IdoA(2S)のα(1−4)結合が存在するが、その大部分はGlcNS又はO−硫酸化GlcNSと結合した二糖ユニットとして存在することから、GlcN残基の修飾も、この抗体の結合を阻害する要因となっていることが推察される。
また、この抗体は、NH2−HEP及び6DSHに対して実質的に結合しないが、それらをN−アセチル化したNAc−HEP及びAc−6DSHに対してはASと同程度の結合性を示す。このことから、この抗体のエピトープには、N位が何らかの形で修飾されたGlcN残基、特にN−アセチル化されたGlcN残基が含まれていることが示唆される。また、この抗体のNAc−HEP及びAc−6DSHとの結合性からみて、そのGlcN残基のO−硫酸化やN−硫酸化はこの抗体の結合性に実質的に影響しないことが示唆される。
【0047】
(8)LY111抗体: 生化学バイオビジネス株式会社製のものを用いた。この抗体の免疫グロブリンクラスはマウスIgMであり、コンドロイチン−4−硫酸と結合する。HA、Ch、HEP、HS、DS及びKSとは実質的に結合しない。
【0048】
(9)G152抗体(6-硫酸化シアリルルイスXセラミドに結合するが、6'-硫酸化シアリルルイスXセラミド、6,6'-bis-硫酸化シアリルルイスXセラミド、6-硫酸化ルイスXセラミド、ルイスXセラミド等には結合しない抗体。特開平11−313684に記載の方法で製造した。)
【0049】
1−3.アポトーシス誘導処理
前記の各種細胞に対するアポトーシスの誘導は、以下のいずれかの方法によって行った。
(1)ダウノマイシン(daunomycin、daunorubicinともいう)処理
上記細胞の培養液中に、ダウノマイシン(daunorubicin hydrochloride;シグマ社製)を添加することによってアポトーシスを誘導した。
(2)血清欠乏処理
FCS含量(通常は10%)を0.6%とした細胞培養液中で上記細胞を培養すること
により、アポトーシスを誘導した。
【0050】
1−4.アポトーシス誘導の確認
アポトーシスが誘導されていることは、アガロースゲル電気泳動によって、細胞の染色体DNAのラダー(断片化)を観察することにより確認した。
【0051】
1−5.フローサイトメトリー
前記の各細胞(アポトーシスを誘導しないもの及びアポトーシスを誘導したもののそれぞれ)の懸濁液に、終濃度5μg/ml又は20μg/mlとなるように前記の各種抗体(一次抗体)を添加して4℃で30分間インキュベートした。その後、終濃度2%のFCSを含有するPBSで洗浄し、次いで1/200に希釈した二次抗体(FITC標識抗マウスイムノグロブリン抗体(Chemicon;カタログ番号AQ326F))を添加して4℃で30分間インキュベートした。その後、終濃度2%のFCSを含有するPBSで洗浄し、フローサイトメトリーにより解析した。なお、一次抗体を用いずに二次抗体のみでインキュベートしたものをコントロールとした。
【0052】
1−6.NDSTのmRNAの発現解析
前記1−3.(1)に記載の方法でダウノマイシン(終濃度1.0μM)処理をしたK562株における、各種NDST(NDST−1、NDST−2、NDST−3、NDST−4)のmRNAの発現を、RT−PCRで解析した。詳細な条件等は、次のとおりである。
前記の各細胞を、直径100mmの細胞培養ディッシュを用いて、ダウノマイシンの在下又は非存在下で培養した。その後、培養上清を除去し、細胞をPBS(−)で洗浄した。洗浄後の細胞に、1mlのISOGEN(株式会社ニッポンジーン)を添加して細胞を溶解させた。この細胞溶解液をクロロホルム抽出し、RNA画分を分離し、イソプロパノール沈殿を行って全RNAを分離した。回収したRNAを、DEPC処理水(RNaseフリーの水;ナカライテスク株式会社)で溶解してRNA溶液を得た。
cDNAの合成は、SuperScript II Reverse Transcription kit(インビトロジェン社)を用いて行った。全容量10μlの反応液に、5μgの全RNA、1mMのdNTP混合物、500ngのオリゴ(dT)12-18プライマー及びDEPC処理水を混合し、65℃で5分間加熱した後、氷上で急冷した。この反応液に、前記キットに付属している1x反応緩衝液、5mM MgCl2、10mM DTT及び40U RNaseOUT(登録商標)を混合し、全容量を20μlとした。42℃で2分間加熱した後、200UのSuperScript II Reverse Transcriptase(逆転写酵素;インビトロジェン社)を添加し、更に50分間保温した。その後、70℃で15分間加熱することによって逆転写酵素を失活させた。その後、RNaseHを添加して37℃で20分間保温し、cDNA合成の鋳型として用いた全RNAを分解した。これによって得られたcDNAを、次の実験に用いた。
前記で得られたcDNAと、以下に示す各遺伝子特異的プライマーを用いて標的遺伝子の部分配列を増幅した。なお、用いたプライマーは以下の通りである。「F:」は正方向(forward)プライマーを、「R:」は逆方向(reverse)プライマーをそれぞれ示す。なお、括弧内に記載された温度の意義は後述する。
【0053】
(1)NDST−1(59℃、397bp)
F:5'-ACCTGTCCAACTATGGGAATGACC-3'(配列番号1)
R:5'-AACTCCATGTACCAGTCGATGCCT-3'(配列番号2)

(2)NDST−2(58℃、307bp)
F:5'-TCTCGTGAACTAGACCGGAGCAT-3'(配列番号3)
R:5'-GACGATCACAGGTTTTCTCCTTGGAC-3'(配列番号4)

(3)NDST−3(58℃、310bp)
F:5'-ACTATGGGAATGACCGACTGGGAT-3'(配列番号5)
R:5'-GGGGAGTTACTAAGGATGGAAGGATG-3'(配列番号6)

(4)NDST−4(59℃、397bp)
F:5'-TGAGCAGAAAGACCCTCTATGGCA-3'(配列番号7)
R:5'-TGAGGGGTCAATGAGGATGGTGAT-3'(配列番号8)

(5)HS2ST(60℃、444bp)
F:5'-CAGGATTTTATCATGGACACG-3'(配列番号9)
R:5'-TCTTTCCTGTGCGATAGAGT-3'(配列番号10)

(6)HS6ST−1(60℃、490bp)
F:5'-TGGACCGAGCTCACCAACTG-3'(配列番号11)
R:5'-AGGGCCGGATGAACTTGAGG-3'(配列番号12)

(7)HS6ST−2(60℃、333bp)
F:5'-TGGACCGAGCTCACCAACTG-3'(配列番号13)
R:5'-AGGGCCGGATGAACTTGAGG-3'(配列番号14)

(8)HS6ST−3(60℃、398bp)
F:5'-TAGCTGCAAAGCGGGTCAGAAG-3'(配列番号15)
R:5'-TGTTAGCCAGGTTGTAGGTGCAATCC-3'(配列番号16)

(9)G3PDH(57℃、498bp)
F:5'-AAGGTCATCCATGACAAC-3'(配列番号17)
R:5'-CACCCTGTTGCTGTAGCCA-3'(配列番号18)
【0054】
PCR反応は、1xAmpliTaq反応緩衝液、1mM dNTP混合物、0.5μM 正方向プライマー、0.5μM 逆方向プライマー、250ng cDNA(RNA換算)、2.5U AmpliTaq Gold(登録商標) DNA polymerase(アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社)及びオートクレーブ水を含有する50μlの反応液を用いて、GeneAmp9700(アプライドバイオシステムズ社)を用いて行った。増幅は、94℃(30秒)、X℃(上記のプライマーペアに付記された温度。)(30秒)、72℃(30秒)のサイクルを、上記の遺伝子(1)〜(4)については35回、(5)〜(8)については30回繰り返した。ただしG3PDHは25回繰り返した。PCR産物を2%アガロースゲルを用いて電気泳動し、増幅されたDNA断片を検出した。
【0055】
2.結果
2−1.アポトーシス誘導の確認
前記「1−3.」の方法で処理した細胞は、いずれもアガロースゲル電気泳動によって染色体DNAのラダー(断片化)が観察され、アポトーシスが誘導されていることが確認された。一例として、K562株を終濃度1μMのダウノマイシンで2日間処理した場合の電気泳動像を図1に示す。図1中の「M」のレーンは分子量マーカーを、「−」のレーンはダウノマイシン処理していない細胞を、「+」のはダウノマイシン処理した細胞をそれぞれ示す。
図1の「+」において、細胞の染色体DNAが断片化し、アポトーシスが誘導されたことが示された。
【0056】
2−2.フローサイトメトリー
結果を図2〜図13に示す。各図とも、グラフの横軸は蛍光強度を、縦軸は細胞数を示す。また各図とも、グラフ中の左側の位置に存在する山型の実線はコントロールを示す。このコントロールよりも実線のピークが右側にシフトしている場合には、一次抗体が細胞に結合している(一次抗体によって細胞が染色されている)ことになる。
【0057】
各図の説明は以下の通りである。なお、以下に示した抗体は、一次抗体として用いた抗体である。またカッコ内の濃度は、一次抗体を反応させた際の当該抗体の終濃度である。
図2:K562株を用いた結果である。A〜Eは細胞をダウノマイシン処理していないもの、F〜Jは細胞を終濃度2μMのダウノマイシンで2日間処理したもの、K〜Oは細胞を終濃度5μMのダウノマイシンで2日間処理したものである。
A:JM403抗体(5μg/ml)
B:NAH46抗体(50μg/ml)
C:NAH43抗体(20μg/ml)
D:NAH43抗体(50μg/ml)
E:NAH43抗体(100μg/ml)

F:JM403抗体(5μg/ml)
G:NAH46抗体(50μg/ml)
H:NAH43抗体(20μg/ml)
I:NAH43抗体(50μg/ml)
J:NAH43抗体(100μg/ml)

K:JM403抗体(5μg/ml)
L:NAH46抗体(50μg/ml)
M:NAH43抗体(20μg/ml)
N:NAH43抗体(50μg/ml)
O:NAH43抗体(100μg/ml)
【0058】
図3:HL60株を用いた結果である。A〜Cは細胞をダウノマイシン処理していないもの、D〜Fは細胞を終濃度3μMのダウノマイシンで2日間処理したものである。
A:10E4抗体(5μg/ml)
B:NAH46抗体(5μg/ml)
C:JM403抗体(5μg/ml)

D:10E4抗体(5μg/ml)
E:NAH46抗体(5μg/ml)
F:JM403抗体(5μg/ml)
【0059】
図4:U937株を用いた結果である。A〜Cは細胞を10%のFCS存在下で4日間培養したもの、D〜Fは細胞を血清欠乏条件下(0.6%FCS存在下)で4日間処理したものである。
A:10E4抗体(5μg/ml)
B:NAH46抗体(5μg/ml)
C:JM403抗体(5μg/ml)

D:10E4抗体(5μg/ml)
E:NAH46抗体(5μg/ml)
F:JM403抗体(5μg/ml)
【0060】
図5:U937株を用いた結果である。A〜Cは細胞をダウノマイシン処理していないもの、D〜Fは細胞を終濃度0.2μMのダウノマイシンで2日間処理したものである。
A:10E4抗体(5μg/ml)
B:NAH46抗体(5μg/ml)
C:JM403抗体(5μg/ml)

D:10E4抗体(5μg/ml)
E:NAH46抗体(5μg/ml)
F:JM403抗体(5μg/ml)
【0061】
図6:C−1株を用いた結果である。いずれも細胞を10%のFCS存在下で4日間培養したものである。
A:AS22抗体(5μg/ml)
B:ACH55抗体(5μg/ml)
C:10E4抗体(1μg/ml)
D:NAH46抗体(1μg/ml)
E:JM403抗体(1μg/ml)
F:HepSS−1抗体(1μg/ml)
【0062】
図7:C−1株を用いた結果である。いずれも細胞を血清欠乏条件下(0.6%のFCS存在下)で4日間培養したものである。
A:AS22抗体(5μg/ml)
B:ACH55抗体(5μg/ml)
C:10E4抗体(1μg/ml)
D:NAH46抗体(1μg/ml)
E:JM403抗体(1μg/ml)
F:HepSS−1抗体(1μg/ml)
【0063】
図8:LS174T株を用いた結果である。いずれも細胞を10%のFCS存在下で4日間培養したものである。
A:AS22抗体(5μg/ml)
B:ACH55抗体(5μg/ml)
C:10E4抗体(1μg/ml)
D:JM403抗体(1μg/ml)
E:NAH46抗体(1μg/ml)
F:HepSS−1抗体(5μg/ml)
G:LY111抗体(5μg/ml)
H:G152抗体(20倍希釈)
【0064】
図9:LS174T株を用いた結果である。いずれも細胞を血清欠乏条件下(0.6%のFCS存在下)で4日間培養したものである。
A:AS22抗体(5μg/ml)
B:ACH55抗体(5μg/ml)
C:10E4抗体(1μg/ml)
D:JM403抗体(1μg/ml)
E:NAH46抗体(1μg/ml)
F:HepSS−1抗体(5μg/ml)
G:LY111抗体(5μg/ml)
H:G152抗体(20倍希釈)
【0065】
図10:PC12株を用いた結果である。A〜Cは細胞を10%のFCS存在下で5日間培養したもの、D〜Fは細胞を血清欠乏条件下(0.6%FCS存在下)で5日間処理したものである。
A:10E4抗体(5μg/ml)
B:NAH46抗体(5μg/ml)
C:JM403抗体(5μg/ml)

D:10E4抗体(5μg/ml)
E:NAH46抗体(5μg/ml)
F:JM403抗体(5μg/ml)
【0066】
図11:PC12株を用いた結果である。A〜Cは細胞をダウノマイシン処理していないもの、D〜Fは細胞を終濃度1μMのダウノマイシンで2日間処理したものである。
A:10E4抗体(5μg/ml)
B:NAH46抗体(5μg/ml)
C:JM403抗体(5μg/ml)

D:10E4抗体(5μg/ml)
E:NAH46抗体(5μg/ml)
F:JM403抗体(5μg/ml)
【0067】
図12:Jurkat株を用いた結果である。A〜Cは細胞を10%のFCS存在下で5日間培養したもの、D〜Fは細胞を血清欠乏条件下(0.6%FCS存在下)で4日間処理したものである。
A:10E4抗体(5μg/ml)
B:NAH46抗体(5μg/ml)
C:JM403抗体(5μg/ml)

D:10E4抗体(5μg/ml)
E:NAH46抗体(5μg/ml)
F:JM403抗体(5μg/ml)
【0068】
図13:Jurkat株を用いた結果である。A〜Cは細胞をダウノマイシン処理していないもの、D〜Fは細胞を終濃度1μMのダウノマイシンで2日間処理したものである。A:10E4抗体(5μg/ml)
B:NAH46抗体(5μg/ml)
C:JM403抗体(5μg/ml)

D:10E4抗体(5μg/ml)
E:NAH46抗体(5μg/ml)
F:JM403抗体(5μg/ml)
【0069】
図2〜図13より、細胞株の種類、アポトーシスの誘導の有無、用いた一次抗体の種類に応じて、その染色特性はさまざまであった。しかしJM403抗体を一次抗体として用いた場合には、すべての細胞株に共通して、アポトーシスを誘導した細胞における染色性がアポトーシスを誘導していない細胞よりも増加することが示された。また、NAH43抗体を用いた場合にも同様であった。
これらのことから、アポトーシスを誘導した細胞においては、アポトーシスを誘導していない細胞に比して、JM403抗体やNAH43抗体に対する抗原(HEP骨格又はHS骨格におけるGlcN残基)の発現が増加することが示された。
【0070】
2−3.NDSTのmRNAの発現解析
RT−PCRによる各種NDSTのmRNAの発現解析の結果を図14に示す。なお図14中、レーン「C」はダウノマイシン処理していないK562株の結果を、レーン「1」はダウノマイシンで1日間処理したK562株の結果を、レーン「2」はダウノマイシンで2日間処理したK562株の結果をそれぞれ示す。またG3PDHは、RT−PCRのコントロールである。
図14より、NDST−1及びNDST−2については、アポトーシス誘導処理(ダウノマイシン処理)の有無にかかわらず、これらの発現量に変化はなかった。一方、NDST−3及びNDST−4については、アポトーシス誘導処理(ダウノマイシン処理)によって、これらの発現が誘導されることが示された。
また、図面には示していないが、HS6ST−2とHS6ST−3についてはアポトーシス誘導処理(ダウノマイシン処理)の有無にかかわらずmRNAの発現は観察されなかった。HS6ST−1については、アポトーシス誘導処理(ダウノマイシン処理)によって1日目はmRNAの発現量に変化はなかったが、2日目に発現量が減少した。HS2STについては、アポトーシス誘導処理(ダウノマイシン処理)によって1日目はmRNAの発現量に変化はなかったが、2日目に発現量が不変かやや減少した。
【0071】
3.本発明キットの製造
以下の構成成分からなる本発明キットを製造した。
(1)JM403抗体 1本(一次抗体)
(2)FITC標識した抗マウスイムノグロブリン抗体 1本(二次抗体)
(3)洗浄液(PBS) 1本

また、以下の構成成分からなる本発明キットを製造した。
(1)NAH43抗体 1本(一次抗体)
(2)FITC標識した抗マウスイムノグロブリン抗体 1本(二次抗体)
(3)洗浄液(PBS) 1本
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】終濃度1μMのダウノマイシンで2日間処理したK562株の染色体DNAのアガロース電気泳動を示す図(写真)である。
【図2】K562株への各種抗体の結合の程度を示す図である。A〜Eは細胞をダウノマイシン処理していないもの、F〜Jは細胞を終濃度2μMのダウノマイシンで2日間処理したもの、K〜Oは細胞を終濃度5μMのダウノマイシンで2日間処理したものの結果である。
【図3】HL60株への各種抗体の結合の程度を示す図である。A〜Cは細胞をダウノマイシン処理していないもの、D〜Fは細胞を終濃度3μMのダウノマイシンで2日間処理したものの結果である。
【図4】U937株への各種抗体の結合の程度を示す図である。A〜Cは細胞を10%のFCS存在下で4日間培養したもの、D〜Fは細胞を血清欠乏条件下(0.6%FCS存在下)で4日間処理したものの結果である。
【図5】U937株への各種抗体の結合の程度を示す図である。A〜Cは細胞をダウノマイシン処理していないもの、D〜Fは細胞を終濃度0.2μMのダウノマイシンで2日間処理したものの結果である。
【図6】C−1株への各種抗体の結合の程度を示す図である。いずれも細胞を10%のFCS存在下で4日間培養したものの結果である。
【図7】C−1株への各種抗体の結合の程度を示す図である。いずれも細胞を血清欠乏条件下(0.6%のFCS存在下)で4日間培養したものの結果である。
【図8】LS174T株への各種抗体の結合の程度を示す図である。いずれも細胞を10%のFCS存在下で4日間培養したものの結果である。
【図9】LS174T株への各種抗体の結合の程度を示す図である。いずれも細胞を血清欠乏条件下(0.6%のFCS存在下)で4日間培養したものの結果である。
【図10】PC12株への各種抗体の結合の程度を示す図である。A〜Cは細胞を10%のFCS存在下で5日間培養したもの、D〜Fは細胞を血清欠乏条件下(0.6%FCS存在下)で5日間処理したものの結果である。
【図11】PC12株への各種抗体の結合の程度を示す図である。A〜Cは細胞をダウノマイシン処理していないもの、D〜Fは細胞を終濃度1μMのダウノマイシンで2日間処理したものの結果である。
【図12】Jurkat株への各種抗体の結合の程度を示す図である。A〜Cは細胞を10%のFCS存在下で5日間培養したもの、D〜Fは細胞を血清欠乏条件下(0.6%FCS存在下)で4日間処理したものの結果である。
【図13】Jurkat株への各種抗体の結合の程度を示す図である。A〜Cは細胞をダウノマイシン処理していないもの、D〜Fは細胞を終濃度1μMのダウノマイシンで2日間処理したものの結果である。
【図14】K562株をダウノマイシン処理することによる、各種NDSTのmRNA発現の変化を示す図(写真)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞に存在するヘパリン骨格又はヘパラン硫酸骨格における「N位が置換されていないグルコサミン残基」の増加を検知するステップを少なくとも含む、アポトーシスの検出方法。
【請求項2】
「N位が置換されていないグルコサミン残基」が、グルクロン酸残基とグリコシド結合した構造として存在するものである、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
検知が、抗体によって行われるものである、請求項1または2に記載の検出方法。
【請求項4】
抗体が、ヘパリン骨格又はヘパラン硫酸骨格における「N位が置換されていないグルコサミン残基」に結合する抗体である、請求項3に記載の検出方法。
【請求項5】
ヘパリン骨格又はヘパラン硫酸骨格における「N位が置換されていないグルコサミン残基」に結合する抗体を有効成分とする、アポトーシス検出剤。
【請求項6】
「N位が置換されていないグルコサミン残基」が、グルクロン酸残基とグリコシド結合しているものである、請求項5に記載の検出剤。
【請求項7】
次の(1)及び(2)に示す構成成分を少なくとも含む、アポトーシス検出キット;
(1)ヘパリン骨格又はヘパラン硫酸骨格における「N位が置換されていないグルコサミン残基」に結合する抗体、
(2)上記(1)の抗体を検出する試薬。
【請求項8】
「N位が置換されていないグルコサミン残基」が、グルクロン酸残基とグリコシド結合しているものである、請求項7に記載の検出キット。
【請求項9】
被験物質と細胞とを接触させ、当該細胞におけるヘパリン骨格又はヘパラン硫酸骨格における「N位が置換されていないグルコサミン残基」が増加又は減少した場合に当該被験物質を選択するステップを少なくとも含む、アポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニング方法。
【請求項10】
「N位が置換されていないグルコサミン残基」が、グルクロン酸残基とグリコシド結合した構造として存在するものである、請求項9に記載のスクリーニング方法。
【請求項11】
細胞におけるNDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現の増加を検知するステップを少なくとも含む、アポトーシスの検出方法。
【請求項12】
発現が、mRNAの発現である、請求項11に記載の検出方法。
【請求項13】
被験物質と細胞とを接触させ、当該細胞におけるNDST−3及びNDST−4の少なくとも一方の発現が増加又は減少した場合に当該被験物質を選択するステップを少なくとも含む、アポトーシス誘導剤又はアポトーシス阻害剤の候補物質のスクリーニング方法。
【請求項14】
発現が、mRNAの発現である、請求項13に記載のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−180673(P2009−180673A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21469(P2008−21469)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(304031427)愛知県 (36)
【出願人】(000195524)生化学工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】