説明

アポトーシス性酵素を不活性化するためのニトロシル化

【課題】増殖因子欠乏および活性酸素種への曝露などによる組織傷害で生じるプログラム細胞死であるアポトーシスによって生じる筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、アルツハイマー病およびAIDS痴呆などの慢性神経変性疾患、ならびに急性焦点性脳梗塞および脊髄損傷もしくは他の形態の中枢神経系外傷の治療薬を提供する。
【解決手段】偽カスパーゼ酵素を含む治療用組成物。さらにS-ニトロシル化化合物を投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本出願は、1997年3月31日に提出された仮出願第60/042,144号による利益を請求するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本出願は、アポトーシスを特徴とする疾患の治療の一般的分野におけるものである。
アポトーシスは、自然発生においてのみならず、増殖因子欠乏および活性酸素種に対する曝露などの特定の傷害に伴う多くの組織の疾患においても生じるプログラム細胞死である。アポトーシスは、例えば筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、アルツハイマー病およびAIDS痴呆などの慢性神経変性疾患のほか、急性焦点性脳梗塞の半影部(penumbra)において、および脊髄損傷もしくは他の形態の中枢神経系外傷後に関与する(シュワルツ(Schwartz)およびミリガン(Milligan)、Trends in Neurosci. 19:555〜562(1996)(非特許文献1))。
【0003】
インターロイキン1β変換酵素(ICE)に関連するシステインプロテアーゼのファミリーは、一般にアポトーシスに不可欠であることが明らかになっている。パテール(Patel)ら、FASEB. J. 10:587〜797(1996)(非特許文献2)、シュワルツ(Schwartz)およびミリガン(Milligan)、Trends in Neurosci. 19:555〜562(1996)(非特許文献1)、トロイ(Troy)ら、Proc. Nat'l Acad. Sci.(USA)93:5635〜5640(1996)(非特許文献3)。現在、カスパーゼという用語は、一般にこのICEファミリーの酵素を指して用いられる(アルネムリ(Alnemri)ら、Cell 87:171(1996)(非特許文献4))。カスパーゼに特徴的である保存されたシステイン含有配列が、その活性に不可欠である(パテール(Patel)ら、FASEB. J. 10:587〜797(1996)(非特許文献2))。既知のすべてのカスパーゼ酵素に関して、この配列はQACRGである。パテール(Patel)ら、FASEB. J. 10:587〜797(1996)(非特許文献2)。神経細胞様細胞系(PC12細胞)を増殖因子欠乏または活性酸素種へ曝露することによって誘発されるアポトーシス様神経細胞死プロセスは、この重要配列を含む天然基質(IQACRG)の断片である偽カスパーゼ酵素(pseudo-caspase enzyme)によって改善させることが可能であり、天然基質と複合体を形成することによってそれをカスパーゼによる分解から保護すると考えられている(トロイ(Troy)ら、Proc. Nat'l. Acad. Sci.(USA)93:5635〜5640(1996)(非特許文献3))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】シュワルツ(Schwartz)およびミリガン(Milligan)、Trends in Neurosci. 19:555〜562(1996)
【非特許文献2】パテール(Patel)ら、FASEB. J. 10:587〜797(1996)
【非特許文献3】トロイ(Troy)ら、Proc. Nat'l Acad. Sci.(USA)93:5635〜5640(1996)
【非特許文献4】アルネムリ(Alnemri)ら、Cell 87:171(1996)
【発明の概要】
【0005】
S-ニトロシル化(一酸化窒素[NO]種がカスパーゼの重要なシステインスルフヒドリル基[RS]と反応してRS-NOが生じる反応)は、カスパーゼ活性を阻害し、それによってアポトーシスを改善させる。この種の阻害は、神経および非神経組織の両方ならびに眼組織および非眼組織を問わず全身で起こる。したがって、本発明の1つの面は、カスパーゼ活性を低下させる有効な量でS-ニトロシル化化合物を患者に投与することによって、アポトーシスを特徴とする疾患を治療する方法を特徴とする。
【0006】
本発明のもう1つの面は、神経学的、眼科学的およびその他のすべてのアポトーシス性適応症を治療するためのカスパーゼ偽酵素の使用を特徴とする。具体的には、軽度の興奮毒性損傷によって誘発される大脳皮質ニューロンのアポトーシス様神経細胞死は[Bonfocoら、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)92:7162〜7166(1995)を参照のこと]、偽カスパーゼ酵素―配列QACRGを含むペプチド、特にIQACRGを含むもの、および最も特定すればIQACRGそれ自体―によって改善されうる。これらのペプチドはアンテナペディア配列(参照として本明細書に組み入れられる前記のTroyらを参照のこと)と結合させてもよく、または血液脳関門を介した輸送および/もしくはニューロン内への移行を促進するためにリポソーム中に封入してもよい。
なお、アポトーシス性適応症の治療のためにこの2つのアプローチ(ニトロシル化療法および偽カスパーゼ療法)を組み合わせることもできる。
【0007】
好ましい態様の説明
本発明に従って治療しうる非神経細胞性の医学的適応症には以下のものがある:リンパ球疾患を含む自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、慢性関節リウマチ(RA)の滑膜細胞、線維芽細胞(強皮症)、造血障害、アテローム性動脈硬化、肝胆汁性疾患を含む細胞死に伴う胃腸疾患、細胞媒介性細胞傷害、薬物および化学物質中毒、発癌、ウイルス性疾患、AIDSに伴うT細胞欠乏、酸化的ストレス、糸球体腎炎、嚢胞性腎疾患、尿細管損傷、心筋虚血または梗塞、糖尿病性腎症、シャーガス病、多発性嚢胞腎、低細胞性末期腎疾患、糖尿病に伴う腎疾患、シェーグレン症候群、劇症肝炎(B型およびC型肝炎)、赤血球障害、赤血球増加症、サラセミア、葉酸、ビタミンB12、鉄の欠乏症、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの異常、骨髄障害、脊髄形成異常および慢性炎症性疾患。
【0008】
神経細胞性の医学的適応症には、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、神経系の自己免疫性炎症、多発性硬化症、脱髄疾患、自己免疫性脳脊髄炎、てんかん重積持続状態およびその他の発作性疾患、神経性機械的外傷、低酸素症、低血糖症および虚血、視神経障害、緑内障、AIDS痴呆、脳卒中、神経障害性疼痛、ハンチントン病、代謝異常(ホモシスチン血症を含む)、トゥレット症候群、および薬物嗜癖、薬物耐性または薬物依存による離脱症状が含まれる。
【0009】
本発明に係る治療を奏効させるために用いうるS-ニトロシル化療法には、アポトーシス性障害または損傷の抑制を目的として哺乳動物に投与されると十分な量のNO(NO等価物またはNO供与体などの関連した酸化還元分子種である可能性が最も高い)を生じるあらゆる化合物が含まれる。便宜上、本発明者は、上記のNO関連酸化還元分子種(例えば、RS-NO、NO等価物、またはNO)または生理的に許容しうるその塩を生成する化合物を含めるために、やや正確性が落ちる「NO生成性化合物」という用語も用いる。
【0010】
特定の化合物がカスパーゼをニトロシル化する能力の確認は、以下に提供する実験によって達成しうる。
2つの好ましい化合物(ニトログリセリンおよびニトロプルシドナトリウム)には、ヒトに安全に投与しうるとの実績(すなわち、心血管疾患に対する治療に関して)が証明されているという利点がある。本発明の方法に用いうるその他のニトロソ化合物には以下のものが含まれる:硝酸イソソルビド(イソルジル)、S-ニトロソカプトプリル(SNOCAP)、一酸化窒素結合性血清アルブミン(「SA-NO」)、一酸化窒素結合性カテプシン(カテプシン-NO)、NO結合性組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA-NO)、Fe2+-ニトロシル複合体を含むSIN-1(またはモルシドミン)陽イオン-ニトロシル複合体、ニコランジル、S-ニトロソグルタチオン、NOと結合したメナンチンなどのエナメル質誘導体(本明細書に参照として組み入れられる米国特許第5,614,650号を参照のこと)、S-ニトロソシステインを含むS-ニトロソチオール類、ピロロキノリンキノン(PQQ)、PQQのエステル誘導体、もしくはユビキノンを含むキノン類、シドノイミン類(sydnonimines)、または以下の式で表されるNONOエート(NONO ate):
X-[N(O)NO]
(式中Xは、アミンならびにα-リポ酸(チオクト酸およびその光学異性体)ジヒドロリポ酸塩、グルタチオン、アスコルビン酸塩またはビタミンEなどのNOによって生じるものと類似した酸化カスケードを生じる試薬を含む任意の求核基)。または、NO供与体が、ピローティ酸、アンジェリ塩(Oxi-NO)またはsulfi-NOなどのニトロキシル(NO)生成性物質(generator)であってもよい。一般的には、本明細書に参照として組み入れられるフェーリッシュ(Feelisch)およびスタムラー(Stamler)、一酸化窒素研究法(Methods in Nitric Oxide Research)、Wiley and Sons、Chichester、UK(1996)、pp71〜115の第7章に記載されたNO化合物の一覧を参照されたい。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、種々の酸化還元形態のNO基は、カスパーゼの活性部位にある重要なシステインを置換するかそれと反応して酵素機能を抑制し、このためアポトーシスに対する保護をもたらす。
【0011】
上記のいずれかのニトロソ化合物を、NOの生成および維持を促進する他の酸化還元化合物と結合させることもできる。例えば、直接的NO生成性物質をピロロキノリンキノン(PQQ)(米国特許第5,091,391号参照)またはPQQの誘導体エステル、またはユビキチンなどの他のキノン類と結合させることができる。
NOに細胞膜まで輸送されてそれを通過する能力があることが、本発明に係る治療を容易にする。
【0012】
本発明者の以前の米国特許である米国特許第5,455,279号は、NO化合物の望ましくない心血管副作用(例えば低血圧)に対する耐性を、その望ましい保護作用を失うことなく形成しうることを開示している。それによれば、アポトーシスに対する保護能をもつニトロソ化合物を、患者の血圧を実質的に低下させない用量レベルから開始し、その後で抗アポトーシス効果を達成するために望ましいより高い用量レベルに徐々に増やすようにして、長期間にわたり徐々に用量を増やしながら連続投与することが可能である。この、後での用量レベルは、投薬経験のない患者の血圧を実質的に低下させる程度には十分に高いが、その患者ではすでに耐性が達成されているため、化合物の血圧低下作用は認容しうるレベルまで減少する。
【0013】
ニトログリセリンなどのNO供与体の血圧低下作用を打ち消すための1つの代替的な方法は、フェニレフリン、ドーパミンまたはヨヒンビンなどの試薬であるNO供与性化合物を同時投与することである。例えばマー(Ma)ら、Cardiovasc. Pharmacol. 20:826〜836(1992)を参照のこと。これらの試薬は、薬物に応じて非経口的(例えばIV)に投与してもよく、経口的に投与してもよい。
【0014】
ニトログリセリンを、上記に参照した本発明者の米国特許第5,455,279号で詳細に説明されているような経皮パッチによって投与することもできる。または、カスパーゼのニトロシル化に対する作用を保持したままで心血管耐性を誘導するために、通常は8〜12時間毎に投与される硝酸イソソルビドSR錠などの持効性硝酸製剤を、より高頻度(例えば4時間毎)に投与することもできる。また、NOとスーパーオキシドアニオン(O2)との反応による過酸化亜硝酸塩の形成を抑えることによって毒性を制限するために、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、またはその両方を投与することも有用である。
【0015】
薬学的担体(例えば生理食塩水)を用いて、化合物を薬学的製剤中に含めることもできる。治療用混合物の厳密な製剤形態は投与経路によって決まる。好ましくは、化合物は経口または静脈注射により投与されるが、舌下により、鼻内噴霧により、経皮パッチにより、皮下に、心室内に(intraventricularly)、硝子体内に、または軟膏により投与することもできる。好ましい化合物であるニトログリセリンまたはその誘導体(例えば医科向け医薬品便覧(Physician's Desk Reference)(1997)に冠血管拡張薬またはニトログリセリンもしくはニトログリセリン静脈注射剤として記載されているもの、ならびに一硝酸イソソルビド、硝酸イソソルビド、ニトログリセリン舌下錠、ミニトラン(Minitran)、NT-1、ニオトロコール(Niotrocor)、ニトロダーム(Nitroderm)、ニトロディスク(Nitrodisc)、ニトロ-ドゥール(Nitro-dur)、ニトロドゥールII(Nitro-Dur II)、ニトロフィルム(Nitrofilm)、ニトロガード(Nitrogard)、ニトログリン(Nitroglin)、ニトロペン(Nitropen)、トリジール(Tridil)および硝酸6-クロロ-2-ピリジルメチルを含む、市販されているそのようなすべての製剤を含む)は、0.01mg〜60mg/日で分割投与される。ニトロプルシドナトリウム―Na[Fe(CN)N0]-2HO(Elkins-Sinn, Inc.、Cherry Hill NJ製)、ニプライド(Nipride)(Roche、Nutley、NJ製)またはその他の製剤―は0.5〜10μg/分で静脈内投与される。
【0016】
本明細書に記載されるアッセイによって有効な保護剤(protective agent)であることが決定された化合物は、細胞障害を軽減するために適した用量で上記のように投与される。一般に、この種の化合物は0.01mg〜60mg/日の範囲の用量で、より好ましくは 0.1〜5mg/日の用量で投与される。
【0017】
当業者は、至適用量の決定に役立つその他の因子があることを理解するであろう。例えば、NO抱合型薬物については、非抱合型薬物に関して用いられる用量(例えば、tPAでは0.35〜1.08 mg/kgおよび一般的には≦0.9mg/kgの用量)が有用なNO抱合薬の用量の予測値となる。投薬は分割してもよい。NOまたは関連した酸化還元分子種の脳内レベルを1nMから500μMまでに維持することが望ましい。治療は必要に応じて反復しうる。
【0018】
神経細胞療法に関しては、中枢神経系(CNS)内への吸収性ならびにSODおよび/またはカタラーゼの有効性を高めるためにポリエチレングリコール(PEG)が用いられる。蛋白質結合型のカワラタケ(Coriolus versicolor)多糖QUELで「PS-K」と呼ばれるSOD擬似薬(mimic)も、特にCNS吸収を高めるためにPEGともに用いた場合には、経口的または非経口的投与経路により有効であると思われ、このような擬似薬は本発明のこの面におけるSODの代わりに用いうる。カリヤ(Kariya)ら、Mol. Biother. 4:40〜46(1992)およびリュウ(Liu)ら、(1989)Am. J. Physiol. 256:589〜593を参照のこと。
【0019】
実施例
実施例1
本発明者らは、カスパーゼ[例えば、CPP32(カスパーゼ-3、Alnemriら)およびICE(カスパーゼ-l)]のS-ニトロシル化により、それらが基質PARP [ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ]を切断する能力が阻害されることを示している。神経細胞およびその他の細胞培養物におけるカスパーゼ活性の蛍光発生アッセイにより、外因性または内因性のNO種によるS-ニトロシル化によって酵素活性が阻害され、このためアポトーシスが予防されることが判明した。
【0020】
カスパーゼにおける重要なシステイン(ペプチドICARG中に存在する)のニトロシル化は、当業者に周知であるサビル反応(Saville reaction)によって証明しうる(フェーリッシュ(Feelish)およびスタムラー(Stamler)、上記に引用、第36章、p. 527)。
【0021】
本発明者らは細胞毒性実験で、内因性NOによってHEK-293-nNOS細胞におけるカスパーゼ誘発性アポトーシスが阻害されることを示した。nNOSを過剰発現するHEK-293細胞[Bredtら、Nature 351:714〜719(1991)]に対して、リン酸カルシウム沈殿法を用いてmICE-lacZ(カスパーゼ-1構築物[Miuraら、Cell 75:653〜660(1993)]を含む)または対照placZによる一時的トランスフェクションを行った。トランスフェクションの後、4-Br-A23187の非存在下(0μM)または6μMの存在下で、細胞を48時間インキュベートした。続いて細胞を透過化処理し、固定し、ヨウ化プロピジウムで染色した。12以上のフィールドでアポトーシス性の核を計数し、結果を核全体に占める比率として表現した。結果は図1に示している。値は、少なくとも2回の実験によるn≧3に関しての平均±SEMである。フィッシャーの保護最小有意差事後的検定(Fisher's protected least significance difference post-hoc test)により、カスパーゼ-1トランスフェクションおよびCa2+を上昇させるための4-Br-A23187曝露の後にHEK-293-nNOS細胞のアポトーシスが有意に減少し、このことからnNOSがNOを生成するように活性化されたことが示された(P≦0.007)。
【0022】
実施例2
図2は、偽カスパーゼ酵素IQACRG(「VICE」)が、興奮毒N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)およびグリシン(NMDA受容体共アゴニスト(co-agonist))によって誘発されるアポトーシスを明らかに抑制することを示す1つの特定の実験の結果を示している。アンテナぺディアペプチド(細胞膜を介しての移行を可能にするシグナル配列)との結合により、VICEの細胞内への移行が促進されたことが注目される。また、NMDA受容体がグルタミン酸受容体のサブタイプであり、これは過度に興奮すると神経障害を引き起こすことにも留意されたい。200nM VICEによるNMDA誘発性(300μM NMDA/5μMグリシン)神経細胞アポトーシスの抑制は有意であった。
【0023】
これらの所見は、カスパーゼのS-ニトロシル化によってアポトーシスが阻害されるという本発明者らの結論を裏づけるものである。カスパーゼの活性部位を含む偽酵素IQACRGもアポトーシスを妨げる。この2つの組み合わせは相乗的である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】細胞毒性実験において、内因性NOによってHEK-293-nNOS細胞におけるカスパーゼ誘発性アポトーシスが阻害されることを示す図である。
【図2】偽カスパーゼ酵素IQACRG(「VICE」)が、興奮毒N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)およびグリシン(NMDA受容体共アゴニスト(co-agonist))によって誘発されるアポトーシスを明らかに抑制することを示す1つの特定の実験の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のS-ニトロシル化化合物を哺乳動物に投与することによる、哺乳動物におけるアポトーシス性の非神経細胞性および非眼性の細胞死または損傷を改善させる方法。
【請求項2】
S-ニトロシル化化合物がカスパーゼの酵素活性を低下させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
化合物が下記の化合物からなる群より選択される、請求項1記載の方法:
ニトログリセリン、
ニトロプルシドナトリウム、
硝酸イソソルビド(イソルジル)、
S-ニトロソカプトプリル(SNOCAP)、
一酸化窒素結合性血清アルブミン(「SA-NO」)、
一酸化窒素結合性カテプシン(カテプシン-NO)、
NO結合性組織プラスミノゲンアクチベーター(tPA-NO)、
SIN-1(またはモルシドミン)陽イオン-ニトロシル複合体[Fe2+-ニトロシル複合体を含む]、
ニコランジル、
S-ニトロソグルタチオン、
NOと結合したメナンチンなどのエナメル質誘導体、
S-ニトロソシステインを含むS-ニトロソチオール類、
キノン類(ピロロキノリンキノン(PQQ)、PQQのエステル誘導体またはユビキノンを含む)、
SIN-1などのシドノイミン類。
【請求項4】
化合物が、下記の式で表されるNONOエート(NONOate)である、請求項1記載の方法:
X-[N(O)NO]
式中、Xは、アミンならびにα-リポ酸(チオクト酸およびその光学異性体)、ジヒドロリポ酸塩、グルタチオン、アスコルビン酸塩、およびビタミンEなどのNOによって生じるものと類似した酸化カスケードを生じる試薬を含む任意の求核基。
【請求項5】
化合物がニトロキシル(NO)生成性物質である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
化合物がピローティ酸、アンジェリ塩(Oxi-NO)、またはsulfi-NOである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
化合物が、本明細書に参照として組み入れられるフェーリッシュ(Feelisch)およびスタムラー(Stamler)による[一酸化窒素研究法(Methods in Nitric Oxide Research)、Wiley and Sons、Chichester、UK(1996)、pp71〜115]の第7章に記載されたNO生成性化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物が、以下の疾患からなる群より選択される少なくとも1つの医学的適応症を特徴とするヒト患者である、請求項1記載の方法:
非神経細胞性または非眼性の酸化ストレス、リンパ球疾患を含む自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、慢性関節リウマチ(RA)、線維芽細胞(強皮症)、造血障害、アテローム性動脈硬化、肝胆汁性疾患を含む細胞死に伴う胃腸疾患、細胞媒介性細胞傷害、薬物および化学物質中毒、発癌、ウイルス性疾患、AIDSに伴うT細胞欠乏、糸球体腎炎、嚢胞性腎疾患、尿細管損傷、心筋虚血または梗塞、糖尿病性腎症、シャーガス病、多発性嚢胞腎、低細胞性末期腎疾患、糖尿病に伴う腎疾患、シェーグレン症候群、劇症肝炎(B型およびC型肝炎)、赤血球障害、赤血球増加症、サラセミア、葉酸、ビタミンB12、鉄の欠乏症、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの異常、骨髄障害、脊髄形成異常、慢性炎症性疾患、ならびに非神経学的および非眼科学的な低酸素症および虚血につながる外傷。
【請求項9】
偽カスパーゼ酵素を含む治療用組成物を患者に投与することを含む、アポトーシスを特徴とする医学的適応症を治療する方法。
【請求項10】
医学的適応症が、例えばNMDAおよび非NMDA受容体複合体を含むグルタミン酸受容体の過度の刺激などの興奮毒性によって媒介される中枢神経系ニューロンの損傷を特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
偽カスパーゼ酵素が配列QACRGを含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
偽カスパーゼ酵素が配列IQACRGを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
偽カスパーゼ酵素がIQACRGである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
偽カスパーゼ酵素が、血液脳関門および/または細胞膜の透過を増強させる移行成分を含む治療用組成物中に包含される、請求項9〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
移行成分がアンテナペディア蛋白質であって、該アンテナペディア蛋白質が偽カスパーゼ酵素と結合している、請求項14記載の方法。
【請求項16】
治療用組成物が透過性を高めるためのリポソームを含む、請求項9〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
医学的適応症が、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、神経系の自己免疫性炎症、多発性硬化症、脱髄疾患、自己免疫性脳脊髄炎、てんかん重積持続状態およびその他の発作性疾患、神経性機械的外傷、神経細胞性低酸素症、低血糖症または虚血、ハンチントン病、AIDS痴呆、脳卒中、神経障害性疼痛、代謝異常(ホモシスチン血症を含む)、トゥレット症候群、ならびに薬物の嗜癖、耐性、離脱、または依存症である、請求項9記載の方法。
【請求項18】
医学的適応症が、非神経細胞性または非眼科性酸化ストレス、リンパ球疾患を含む自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、慢性関節リウマチ(RA)、線維芽細胞(強皮症)、造血障害、アテローム性動脈硬化、肝胆汁性疾患を含む細胞死に伴う胃腸疾患、細胞媒介性細胞傷害、薬物および化学物質中毒、発癌、ウイルス性疾患、AIDSに伴うT細胞欠乏、糸球体腎炎、嚢胞性腎疾患、尿細管損傷、心筋梗塞、糖尿病性腎症、シャーガス病、多発性嚢胞腎、低細胞性末期腎疾患、糖尿病に伴う腎疾患、シェーグレン症候群、劇症肝炎(B型およびC型肝炎)、赤血球障害、赤血球増加症、サラセミア、葉酸、ビタミンB12、鉄の欠乏症、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの異常、骨髄障害、脊髄形成異常、慢性炎症性疾患、ならびに非神経学的および非眼科学的な低酸素症および虚血につながる外傷である、請求項9記載の方法。
【請求項19】
偽カスパーゼ酵素を含む組成物を硝子体内に投与することを含む、眼科学的疾患を特徴とする患者を治療する方法。
【請求項20】
治療用組成物がリポソームを含む、請求項17または請求項19記載の方法。
【請求項21】
治療用組成物が、偽カスパーゼ酵素と結合したアンテナぺディア蛋白質を含む、請求項17または請求項19記載の方法。
【請求項22】
眼科学的疾患が緑内障である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
眼科学的適応症が視神経障害である、請求項19記載の方法。
【請求項24】
治療用組成物がリポソーム中に存在する状態で投与される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
患者にS-ニトロシル化化合物を投与することをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項26】
有効量のS-ニトロシル化化合物を患者に投与することによって、患者における薬物離脱症状、薬物耐性または薬物嗜癖を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−221206(P2009−221206A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111141(P2009−111141)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【分割の表示】特願平10−541915の分割
【原出願日】平成10年3月31日(1998.3.31)
【出願人】(502327207)ザ・チルドレンズ・メディカル・センター・コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】