説明

アポトーシス細胞の選択的標的化

【課題】アポトーシス細胞を選択的に標的化するアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および活性な薬剤、常磁性イオン、及びX線造影剤を含む系を脊椎動物に投与する工程を含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤、常磁性イオン、及びX線造影剤を選択的に標的化する方法の提供。
【解決手段】該活性薬剤が、3H、11C、14C、15O、13N、32P、33P、35S等からなる群より選択される放射性ヌクレオチドから選択される診断薬であり、該常磁性イオンが、クロム(III)、ガドリニウム(III)、鉄(II)等からなる群より選択され、該X線造影剤が、金(III)、鉛(II)等からなる群より選択され、該アルゼノキシド化合物が、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸等の第1の結合メンバーに連結し、ならびに該活性薬剤が、前記第1の結合メンバーに結合した化合物及びその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、概して、一般に治療薬または診断薬である活性な薬剤の標的化送達に関する。より詳細には、本発明は、アポトーシス細胞を選択的に標的化して治療薬または診断薬などの活性な薬剤をアポトーシス細胞およびその周囲に送達させるアルゼノキシド(arsenoxide)(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および少なくとも1つの薬剤を含む系を投与する工程による、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤を選択的に標的化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
プログラム細胞死(すなわち、アポトーシス)は、細胞代謝回転で不可欠な役割を果たす。細胞増殖と比較してアポトーシスの顕著な増加または減少によって特徴付けられるアポトーシスの不均衡は、しばしば疾患に関連する(Thompson、1995:非特許文献1)。例えば、過剰なアポトーシスは、中でも血管障害(Stefanec、2000:非特許文献2)、神経変性疾患(Rimonら、1997:非特許文献3)、骨髄異形成症候群(ParkerおよびMufti、2001:非特許文献4)、虚血/再灌流傷害(GotiliebおよびEngler、1999:非特許文献5)、器官移植片拒絶(KramsおよびMartinez、1998:非特許文献6)、腫瘍および癌に特徴的である。
【0003】
しかし、患者の診断または治療で使用されるアポトーシスの特定の基準は存在しない。これは、一部は、インビボでのアポトーシスのモニターに都合がよく且つ感度の高いマーカーの欠如による。したがって、アポトーシス細胞の選択マーカーは、疾患の診断および治療に有利であり、正常な細胞プロセスの画像化も目的とする。
【0004】
したがって、治療または診断を目的とする部位に活性な薬剤を選択的に標的化することが必要である。特に、アポトーシス細胞に選択的に薬剤を標的化することが必要である。
【0005】
本発明は、アポトーシス細胞を選択的に標的化するアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および活性な薬剤を含む系を脊椎動物に投与する工程を含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤を標的化する方法に関する。アルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物は、主に、治療薬または造影剤などの活性な薬剤を比較的高い特異性でアポトーシス細胞に送達するための標的化剤として機能する。本発明の特定の利点は、アルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物は、アポトーシス細胞によって選択的に取り込まれて細胞内の多数のタンパク質に結合することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Thompson, C.B. Apoptosis in the pathogenesis and treatment of disease. Science 267, 1456-1462 (1995).
【非特許文献2】Stefanec, T. Endothelial apoptosis: Could it have a role in the pathogenesis and treatment of disease? Chest 117, 841-854 (2000).
【非特許文献3】Rimon, G., Bazenet, C.E., Philpott, K.L. et al. Increased surface phosphatidylserine is an early marker of neuronal apoptosis. J. Neurosci. Res. 48, 563-570 (1997).
【非特許文献4】Parker, J.E. & Mufti, G.J. The role of apoptosis in the pathogenesis of the myelodysplastic syndromes. Int. J. Hematol. 73, 416-28 (2001).
【非特許文献5】Gottlieb, R.A. & Engler, R.L. Apoptosis in myocardial ischemia-reperfusion. Ann. N. Y. Acad. Sci. 874, 412-26 (1999).
【非特許文献6】Krams, S.M. & Martinez, O.M. Apoptosis as a mechanism of tissue injury in liver allograft rejection. Seminars in Liver Disease 18, 153-167 (1998).
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明の第1の態様によれば、アポトーシス細胞を選択的に標的化するアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および薬剤を含む系を脊椎動物に投与する工程を含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化する方法を提供する。
【0008】
典型的には、系は、少なくとも1つの活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤に連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む。
【0009】
より典型的には、系は、
(i)第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
(ii)活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤である第2の結合メンバーを含む第2の成分とを含む。
【0010】
典型的には、第1の結合メンバーは酵素であり、第2の結合メンバーは酵素の基質である。典型的には、酵素の基質は、酵素によって活性な薬剤に変換されるプロエージェント(pro-agent)である。さらにより典型的には、酵素の基質は、酵素によって活性な薬物に変換されるプロドラッグである。
【0011】
さらにより典型的には、系は、
(i)第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
(ii)少なくとも1つの活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)に連結した第2の結合メンバーを含む第2の成分とを含む。
【0012】
典型的には、第1の結合メンバーがビオチンであり、第2の結合メンバーがアビジンまたはストレプトアビジンである。さらに典型的には、第1の結合メンバーがアビジンまたはストレプトアビジンであり、第2の結合メンバーがビオチンである。
【0013】
さらに典型的には、第1の結合メンバーがビオチンであり、第2の結合メンバーがアビジンおよびストレプトアビジンであり、第2の結合メンバーは、アビジンまたはストレプトアビジンと活性な薬剤に直接連結する少なくとも1つのさらなるビオチン部分との間のさらなる結合相互作用によって活性な薬剤に間接的に連結している。
【0014】
典型的には、第1の結合メンバーはメトトレキセートであり、第2の結合メンバーはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)である。さらに典型的には、第1の結合メンバーはジヒドロ葉酸還元酵素であり、第2の結合メンバーはメトトレキセートである。
【0015】
典型的には、第1の結合メンバーはヒルジンであり、第2の結合メンバーはトロンビンである。さらに典型的には、第1の結合メンバーはトロンビンであり、第2の結合メンバーはヒルジンである。
【0016】
典型的には、第1の結合メンバーは抗原であり、第2の結合メンバーは抗体である。
【0017】
典型的には、第2の結合メンバーが活性な薬剤に直接連結している。さらに典型的には、第2の結合メンバーが活性な薬剤に間接的に連結している。さらにより典型的には、活性な薬剤と第2の結合メンバーとの間接的連結が第2の結合メンバーと活性な薬剤に直接連結する少なくとも1つのさらなる結合メンバーとの間のさらなる結合相互作用による。
【0018】
なおさらに典型的には、系は、
(i)第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
(ii)酵素に連結した第2の結合メンバーを含む第2の成分と、
(iii)酵素の基質とを含む。
【0019】
典型的には、酵素の基質が酵素によって活性な薬剤に変換されるプロエージェントである。典型的は、プロエージェントはプロドラッグである。
【0020】
典型的には、活性な薬剤が、治療薬または診断薬である。
【0021】
典型的には、治療薬には、放射性ヌクレオチド;化学療法薬;細胞毒素;凝固剤;成長因子、サイトカイン;細菌、植物、または真菌の内毒素などの薬剤が含まれる。
【0022】
本発明での使用に適切な典型的な放射性ヌクレオチドは、3H、11C、14C、15O、13N、32P、33P、35S、18F、125I、127I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re、188Re、および99mTcからなる群より選択される。
【0023】
典型的な化学療法薬が、アドリアマイシン、タキソール、フルオロウラシル、メルファラン、シスプラチン、インターフェロンα、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンギオインヒビン、TNP-470、ペントサンポリサルフェート、血小板第4因子、アンギオスタチン、LM-609、SU-101、CM-101、テクガラン、サリドマイド、およびSP-PGなどが含まれる。他の典型的な化学療法薬には、メクロエタミン、メルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、およびイフォスファミドを含むナイトロジェンマスタード、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、およびストレプトゾシンを含むニトロソ尿素などのアルキル化剤;ブスルファンを含むアルキルスルホネート;ジカルバジンを含むトリアジン;チオテパおよびヘキサメチルメラミンを含むエチエンイミン;メトトレキセートを含む葉酸類似体;5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシドを含むピリミジン類似体;6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニンを含むプリン類似体;アクチノマイシンDを含む抗腫瘍抗生物質;ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、およびメトラマイシンを含むアントラサイクリン;タモキシフェンおよび副腎皮質ステロイドを含むホルモンおよびホルモンアンタゴニストならびにシスプラチンおよびブレキナー(brequinar)を含む種々の薬剤、ならびにCOMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキセート、およびプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびデキサメタゾン)、およびPROMACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキセート(w/ロイコビンレスキュー)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)などの投薬計画が含まれる。
【0024】
典型的には、細胞毒素はリシンである。
【0025】
典型的な細菌、植物、および真菌の内毒素は、リボゾーム不活性化タンパク質、ジフテリア毒素、シュードモナス内毒素、A鎖毒素、α-サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、およびリボヌクレアーゼからなる群より選択される。
【0026】
典型的には、診断薬は造影剤である。より典型的には、診断薬として機能する物質は当業者に周知であり、蛍光標識、放射性ヌクレオチド、常磁性イオン、X線造影剤、化学発光標識、または二次的な酵素工程または結合工程によって検出可能な標識が含まれる。本発明の系での使用に適切な典型的な蛍光標識には、Cy(商標)5.5およびフルオレセインが含まれる。本発明の使用に適切な他の一般的な蛍光プローブは、「Handbook of Fluorescent Probes and Research Products」、第8版(その内容が参照として本明細書に組み入れられる)に列挙されている。
【0027】
本発明の造影剤としての使用に適切な典型的な放射性ヌクレオチドは、3H、11C、14C、15O、13N、32P、33P、35S、18F、125I、127I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re、188Re、および99mTcからなる群より選択される。
【0028】
典型的には、常磁性イオンは、クロム(III)、ガドリニウム(III)、鉄(II)、鉄(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、マンガン(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、イットリウム(III)、サマリウム(III)、およびジスプロシウム(III)からなる群より選択される。より典型的には、常磁性イオンがガドリニウム(III)である。
【0029】
典型的には、X線造影剤は、金(III)、鉛(II)、ランタン(III)、およびビスマス(III)からなる群より選択される。
【0030】
典型的には、活性な薬剤は、薬剤の送達用の賦形剤中に存在する。より典型的には、活性な薬剤用の賦形剤はリポソームである。
【0031】
典型的には、アルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物は、アポトーシス細胞を標的化する。より典型的には、アルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物は、式(I):
A-(L-Y)p (I)
(式中、Aは少なくとも1つの突出基を含み、Lは任意の適切なリンカーおよび/またはスペーサー基を含み、Yは少なくとも1つのアルゼノキシドまたはアルゼノキシドの等価物を含み、pは1〜10の整数である)である。
【0032】
典型的には、AとLを合わせた総炭素原子数は6を超える。
【0033】
本発明での使用に適切な式(I)の化合物に関して、典型的には、Aは、天然、非天然、および合成のアミノ酸、親水性アミン、ペプチド、ポリペプチド、オリゴ糖、およびチオール含有タンパク質、またはその組み合わせからなる群より選択される。より典型的には、Aは、グルタチオン、グルコサミン、システイニルグリシン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、およびアルギニンからなる群より選択され、各硫黄含有化合物の硫黄原子が選択的に酸化されてスルホキシドまたはスルホンを形成することができる。
【0034】
アミノ酸側鎖は、当業者に公知であり、例えば、KingおよびStansfield、「A Dictionary of Genetics」、第4版、Oxford University Press、1990(その内容が、参照として本明細書に組み入れられる)などの標準的な参考書に列挙されている。
【0035】
さらにより典型的には、Aはグルタチオンである。
【0036】
典型的には、pは1〜5の整数である。なおさらにより典型的には、pは1である。
【0037】
典型的には、Lは、式(XBX')nB'に対応する。典型的には、nは0〜20、より典型的には0〜15、さらにより典型的には0〜10、なおより典型的には0〜5の整数である。
【0038】
本発明での使用に適切なアルゼノキシド化合物になおさらに関して、以下が(XBX')nB'に関する。
【0039】
典型的には、Xは、-NR、-S(O)-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、および-P(O)(R1)O-からなる群より選択されるか、存在せず、
Bは、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、ヘテロアリーレン、およびC2〜C10アシルからなる群より選択され、
X'は、-NR-、-O-、-S-、-Se-、-S-S-、S(O)-、-OS(O)-、OS(O)O-、-OS(O)2、-OS(O)2O-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-OP(O)(R1)-、-OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、-P(O)(R1)O-、および

からなる群より選択されるか、存在せず、EはO、S、Se、NR、またはN(R)2、であり、nは0、1、または2であり、
B'は、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびヘテロアリーレンからなる群より選択されるか、存在せず、
各Rは、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、OR2、およびC2〜C10アシルからなる群より選択され、
R'は、Rと同一であるか、2つのR'が窒素原子と結合した場合に5員環または6員環の飽和複素環または不飽和複素環を形成し、
各R1は、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より選択され、
各R2は、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、および-C(O)R5からなる群より選択され、
各R5は、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より選択され、
Bおよび/またはB'がそれぞれアリーレンである場合、各アリーレン環(アルゼノキシドまたはアルゼノキシドの等価物を含む)に直接結合する置換基は、パラ、メタ、またはオルソの関係にあってよく、
各アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアシルは、独立して、水素、ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルゼノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'’)2、-NRC(O)(CH2mQ、-C(O)R5

に置換され、R、R1、およびR5は、上記定義の通りであり、
R2aは、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R42、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され、
各R3は、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、およびN(R)2からなる群より選択され、
各R4は、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より選択され、
R6は、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され、
R'’は、Rと同一であるか、2つのR'’がN原子と結合して飽和、不飽和、または芳香族の複素環系を形成することができ、
Qは、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され、Q1は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され、
mは1〜5である。
【0040】
より好ましくは、本発明での使用に適切なアルゼノキシド化合物は、式IV:

の4-(N-(S-グルタチオニルアセチル)アミノ)-フェニルアルゼノキシド(GSAOと略すことができる)、である。
【0041】
典型的には、本発明での使用に適切なアルゼノキシド化合物では、アルゼノキシド基(-As=O)を、アルゼノキシドの等価物に置換することができる。
【0042】
アルゼノキシドの等価物は、本質的に-As=Oと同一のジチオールに対する親和性を示す任意のジチオール反応種である。典型的には、アルゼノキシドの等価物には、As種、Ge種、Sn種、およびSb種などのジチオール反応性物質が含まれる。より典型的には、アルゼノキシドの等価物を、-D(Z1)(Z2)で示すことができる。アルゼノキシドの等価物は、対応するアルゼノキシドと同一または実質的に同一の活性を示すと予想される。
【0043】
典型的には、式-D(Z1)(Z2)のアルゼノキシドの等価物について、Dは、例えば、As、RSn、Sb、またはRGeであり、Z1およびZ2は不安定な基(すなわち、生理学的条件下で容易に置換される基)である。Z1およびZ2は同一でも異なっていてもよく、互いに連結していても独立していてもよい(ヒ素原子にのみ結合)。
【0044】
適切なアルゼノキシド等価物には、
-D(Z1)(Z2
(式中、Z1およびZ2は、OH、C1〜C10アルコキシ、C6〜C10アリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C6〜C10アリールチオ、C1〜C10アルキルセレノ、C6〜C10アリールセレノ、F、Cl、Br、およびI、

(式中、E1=E2=O、E1=O、およびE2=SまたはE1=E2=S;MはR'’’であり、R'’’は、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C8〜C12アリール、ハロゲン、C1〜C10アルコキシ、C6〜C10アリールオキシ、ヒドロキシ、およびカルボキシからなる群から選択され、n=1〜10)からなる群から選択される)
が含まれる。
【0045】
式D(Z1)(Z2)のアルゼノキシドの等価物について、DがAsであり、Z1およびZ2がOHである場合、アルゼノキシドの等価物は、以下の高分子種と平衡状態にあり得る。

【0046】
上記の平衡に関して、ヒ素は、そのヒドロキシ種が対応する高分子無水物と平衡状態にある多数の元素の1つである。したがって、アルゼノキシド化合物は、実際に、低分子量または中程度の分子量のポリマー(例えば、n=3〜6)として存在し得る。しかし、脱水反応は可逆的であるので、可溶性高分子無水物は、アルゼノキシドの等価物として挙動すると予想される(すなわち、以下の単量体 -As(OH)2種と実質的に同一の方法で空間的に密接にジチオールに結合すると予想される)。

(式中、X3=NH、Y1=O;X3=Y1=O、またはX3=S、Y1=O、R'は、水素、C1〜C10アルキル、C8〜C12アリール、およびカルボキシからなる群から選択されるか、20種のアミノ酸残基のうちの1つである)、

(式中、X3=Y1=O、またはX3=NH、Y1=O;およびX3=S、Y1=O;X3=Y1=NH;またはX3=S、Y1=NH;またはX3=S、Y1=NH、R11〜R14は、水素、C1〜C10アルキル、C8〜C12アリール、およびCO2Hからなる群から選択される)、

(式中、X3=Y1=O、またはX3=NH、Y1=O;およびR11〜R14は、水素、C1〜C10アルキル、C8〜C12アリール、ハロゲン、C1〜C10アルコキシ、およびCO2Hからなる群から選択される)
【0047】
典型的には、(XBX')B'は、上記の定義の通りである。
【0048】
典型的には、本発明の第1の態様の方法は、
(a)系の第1の成分を投与する工程と、
(b)選択的に一定期間待つ工程と、
(c)系の第2の成分を投与する工程とを含む。
【0049】
典型的には、期間は、約1時間〜約48時間、より典型的には約3時間〜約36時間、さらにより典型的には約6時間〜約24時間である。さらにより典型的には、期間は約18時間である。
【0050】
より典型的には、本発明の第1の態様の方法は、
(a)系の第1の成分を投与する工程と、
(b)選択的に一定期間待つ工程と、
(c)系の第2の成分を投与する工程と、
(d)選択的にさらに一定期間待つ工程と、
(e)活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)に連結したさらなる結合メンバーを投与する工程とを含む。
【0051】
典型的には、期間は、上記定義の通りである。
【0052】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも1つの活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤に連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分を含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための系を提供する。
【0053】
本発明の第3の態様によれば、第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤である第2の結合メンバーを含む第2の成分とを含む系、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための系を提供する。
【0054】
本発明の第4の態様によれば、第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)に連結した第2の結合メンバーを含む第2の成分とを含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための系を提供する。
【0055】
典型的には、第2の結合メンバーは薬剤に直接連結している。
【0056】
さらに典型的には、第2の結合メンバーは薬剤に間接的に連結している。より典型的には、薬剤と第2の結合メンバーとの間接的連結が、第2の結合メンバーと薬剤に直接連結する少なくとも1つのさらなる結合メンバーとの間のさらなる結合相互作用による。さらにより典型的には、第1の結合メンバーがさらなる結合メンバーと異なる。さらにより典型的には、第1の結合メンバーがさらなる結合メンバーと同一である。
【0057】
典型的には、本発明の第2から第4の態様のいずれか1つに関して、第1の成分は、切断可能なリンカーを介して薬剤と連結する。より典型的には、本発明の第2の態様に関して、第1の成分は切断可能なリンカーを介して薬剤に連結する。
【0058】
典型的には、本発明の第3または第4の態様に関して、第1および第2の結合メンバーは、本発明の第1の態様に従って上記の通りである。さらに典型的には、本発明の第2から第4の実施形態のいずれか1つに関して、アルゼノキシド化合物は、本発明の第1の態様に従って上記の通りである。さらに典型的には、活性な薬剤は、本発明の第1の態様に従って上記の通りである。
【0059】
本発明の第5の態様によれば、アポトーシス細胞を選択的に標的化するアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および治療薬を含む治療有効量の系を脊椎動物に投与する工程を含む、治療および/または予防を必要とする脊椎動物の疾患を治療および/または予防する方法を提供する。
【0060】
本発明の第5の態様によれば、典型的には、投薬計画の組み合わせによってさらなる治療利益を実現することができる。より典型的には、本発明の第5の態様の治療方法を、従来の治療(放射線療法、化学療法、または手術など)と組み合わせて適用することができる。
【0061】
本発明の第6の態様によれば、アポトーシス細胞を選択的に標的化する、疾患の治療および/または予防のための薬物の製造のためのアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および治療薬を含む系の使用を提供する。
【0062】
本発明の第5および第6の態様に関して、典型的には、疾患は、アポトーシスの不均衡によって特徴付けられる。より典型的には、疾患は、血管形成依存性疾患、細胞増殖疾患、炎症性障害、自己免疫疾患、血管疾患、血栓症、癌、神経変性疾患、骨髄異形成症候群、虚血/再灌流傷害、および器官移植治療からなる群より選択される。
【0063】
典型的には、本発明の第5および第6の態様に関して、系は、本発明の第1の態様に従って上記の通りである。より典型的には、治療薬は、本発明の第1の態様に従って定義の通りである。
【0064】
本発明の第7の態様によれば、アポトーシス細胞を選択的に標的化するアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および診断薬を含む生物学的有効量の系を脊椎動物に投与する工程と、診断薬を検出する工程とを含む、脊椎動物のアポトーシス細胞の検出および/または画像化方法を提供する。
【0065】
本発明の第8の態様によれば、アポトーシス細胞を選択的に標的化する、アポトーシス細胞の検出および/または画像化用の薬物を製造するためのアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および診断薬を含む系の使用を提供する。
【0066】
典型的には、本発明の第7および第8の態様に関して、系は、本発明の第1の態様に従って定義の通りである。さらに典型的には、診断薬は、本発明の第1の態様に従って定義の通りである。
【0067】
典型的には、脊椎動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ウシ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、ウサギ、トリ、ネコ、およびイヌからなる群より選択される。より典型的には、脊椎動物は、ヒト、非ヒト霊長類、またはマウスである。さらにより典型的には、脊椎動物はヒトである。
【0068】
本発明の第9の態様によれば、選択的に、治療的および/または診断的に許容される担体および/または希釈剤とともに、
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤である第2の結合メンバーを含む第2の成分とを含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための治療および/または診断のキットを提供する。
【0069】
本発明の第10の態様によれば、選択的に、治療的および/または診断的に許容される担体および/または希釈剤とともに、
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)に連結した第2の結合メンバーを含む第2の成分を含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための治療および/または診断のキットを提供する。
【0070】
本発明の第11の態様によれば、選択的に、治療的および/または診断的に許容される担体および/または希釈剤とともに、
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
第2の結合メンバーを含む第2の成分と、
活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)に連結した第3の結合メンバーを含む第3の成分を含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための治療および/または診断のキットを提供する。
【0071】
典型的には、本発明の第9の態様に関して、成分は個別にパッケージングされている。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】GSAOの合成。立体化学および二次元1H-13C HMBC NMRスペクトルの考察で使用したナンバリングスキームを示すGSAO合成の略図である。
【図2】GSAOの構造の割り当て図である。脂肪族領域を示すDCI/D2O中のGSAOの1H-13C HMBCスペクトルの拡大(expansion)。スペクトルは、横軸および縦軸に沿って対応する1Hおよび13Cシグナルに基づいて、クロスピークとしての任意のロングレンジ異核(1H-13C)カップリングを示す。囲んだクロスピークは、C7とC11メチレンとの間の1H-13Cカップリングに対応し、グルタチオンの硫黄原子上でBRAOによるアルキル化が起こったことが確認される。「i」と印をつけたピークおよびクロスピークは、夾雑物に起因し、C9メチレンおよびC2メチンに対応する1結合クロスピークもまた、HMBCパルスシーケンスによる不完全なフィルタリングに起因する二重項として認められる。
【図3】GSAO-A合成の略図である。
【図4】GSAO-B合成の略図である。
【図5】GSAO-F合成の略図である。
【図6】GSAO-Cy(商標)5.5合成の略図である。
【図7】GSAO-BとPDIおよびチオレドキシンとの相互作用を示す図である。A:GSAO-Bの構造。B:精製ヒト組換えPDI(5μM)、ヒト組換えチオレドキシン(5μM)、またはウシ血清アルブミン(5μM)を、ジチオスレイトール(10μM)と室温で60分間インキュベートして、PDIおよびチオレドキシンの活性部位ジスルフィドがジチオール還元型であることを確認した。次いで、GSAO-B(100μM)またはGSAO-BおよびDMP(400μM)を添加し、反応液を室温で30分間インキュベートした。標識PDI(レーン1および2)、チオレドキシン(レーン3および4)、アルブミン(レーン5)(75pmole)を、4〜16%SDS-PAGEで分離し、PVDFメンブレンに移し、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼでブロッティングしてGSAO-Bレベルを検出した。Mrマーカーの位置を左側に示す。
【図8】GSAO-Bが臨時(occasional)培養細胞を標識することを示す図である。コンフルエントなBAE細胞を、GSAO-Bで染色し、ストレプトアビジン-Alexa488で視覚化した。予備細胞は、非常に明るく染色された(矢印の先を参照のこと)。大部分の細胞が、非常に少量のGSAO-Bに結合した。
【図9】GSAOにより、カスパーゼ活性化後にアポトーシス細胞を標識した。HT1080細胞は、非処置のままであるか(パーツaおよびb)、アポトーシス誘導のためにカンプトセシンで処置し(パーツbおよびe)、その後分離してアネキシンV-PEおよびGSAO-F(パーツaおよびb)またはアネキシンV-PEおよびGSAO-F(パーツbおよびe)で標識した。フルオレセイン蛍光に対するフィコエリトリン蛍光をプロットする。アネキシンV(UL象限)、GSAOまたはGSAA(LR象限)、またはビオチンアネキシンVおよびGSAOまたはGSAA(UR象限)で明るく標識される全細胞に対する割合を、パーツc(GSAO)およびf(GSAA)に示す。パーツgでは、HT1080細胞を、非処置のままであるか(白抜きのバー)、アポトーシス誘導のためにカンプトセシンで処置し(黒塗りのバー)、その後分離してGSAO-F、アネキシンV-PE、およびヨウ化プロピジウムで標識した。全細胞またはヨウ化プロピジウムを取り込んだ細胞以外の全細胞について、GSAO-F蛍光に対するアネキシンV-PE蛍光をプロットした(FL4において200超の蛍光単位)。パーツhでは、HT1080細胞を、広いスペクトルのカスパーゼ阻害剤Z-VAD-FMKの非存在下または存在下でカンプトセシンで処置し、その後分離してGSAO-Fで標識した。2つの実験における非処置集団の平均蛍光を標準化し、バーおよびエラーは、平均および範囲を示す。
【図10】GSAOはアポトーシス細胞に侵入し、空間的に密接なジチオールを含むタンパク質を標識した。a.HT1080細胞を、アポトーシス誘導のためにカンプトセシンで処置し、その後分離してGSAO-FおよびアネキシンV-Alexa-594で標識した。細胞を、共焦点顕微鏡で画像化した。アネキシンV-Alexa-594標識細胞についての6つの反転切片(i〜vi)を示す。パネルviiは、アネキシンV-Alexa-594によって強く標識されなかった細胞を示す。b.HT1080細胞を、アポトーシス誘導のためにカンプトセシンで処置し、その後分離してアネキシンV-PEおよびGSAO-Bで標識した。細胞を、アネキシンV陽性(レーン1)集団およびアネキシンV陰性(レーン2)集団に分類した。各集団由来の同数の細胞を溶解し、SDS-PAGEで分離し、GSAO-Bについてストレプトアビジン-ペルオキシダーゼでブロッティングした。Mrマーカーの位置を左側に示す。c.パーツb由来のGSAO-B標識タンパク質を、ストレプトアビジン-ダイナビーズ上に回収し、SDS-PAGEで分離し、PDIについてウェスタンブロッティングを行った。d.HT1080細胞を、非処置(レーン1および2)またはカンプトセシンで処置し(レーン3および4)、その後分離してジメルカプトエタノールの非存在下(レーン1および3)および存在下(レーン2および4)でGSAO-Bとインキュベートした。同数の細胞を溶解し、SDS-PAGEで分離し、GSAO-Bについてストレプトアビジン-ペルオキシダーゼでブロッティングした。
【図11】GSAOはインビボでアポトーシス細胞を標識し、腫瘍の画像化に使用することができる。a.近位背側に皮下BxPC-3腫瘍を有するマウスに、GSAO-BまたはGSAA-Bを側腹後部への皮下注射によって投与した。6時間後に腫瘍を切り出し、切片にし、ビオチン標識化合物について染色した。切片にした腫瘍の低出力(i)および高出力(ii)の顕微鏡写真は、選択した細胞へのGSAO-Bの組み込みを示す(褐色)。b.パーツaに記載した腫瘍切片を、活性型カスパーゼ3(赤色)およびGSAO-BまたはGSAA-B(緑色)について染色し、核酸染色法を使用して対比染色した(青色)。赤色、緑色、および重複画像を示す。c.GSAO-Cy(商標)5.5の投与から1〜24時間後のC57BL/6マウスの皮下で増殖したマウスルイス肺腫瘍の蛍光画像。A:ルイス肺腫瘍の白色光画像(white light image)。パネルB:GSAO-Cy(商標)5.5注射1時間後の腫瘍および背中の皮膚。パネルCおよびD:それぞれ注射24時間後の背中の皮膚および腫瘍。d.GSAO-Cy(商標)5.5、GSAA-Cy(商標)5.5、またはCy(商標)5.5の投与から24時間後のSCIDマウスの皮下で増殖させたヒトBxPC-3膵臓腫瘍。パネルA:BxPC-3腫瘍の白色光画像。パネルB、C、およびD:GSAA-Cy(商標)5.5、GSAO-Cy5.5(商標)、またはCy(商標)5.5の注射後の腫瘍。e.GSAO-Cy(商標)5.5投与から24時間後のTRAMPマウスの自発性前立腺癌。パネルA:白色光画像、パネルB:蛍光画像。矢印は、中心静脈および腫瘍のマージンを示す。c、d、およびe中のバーは、1mmを示す。
【図12】MPBでのtTFの標識。A.SDS-PAGEで分離し、クーマシーブリリアントブルーで染色した非標識(レーン1)またはMPB標識(レーン2)Q219CtTF(5μg)。B.SDS-PAGEで分離し、ポリビニルジエチルフルオリドに転写し、ビオチン標識検出のためにアビジン-ペルオキシダーゼでブロッティングした非標識(レーン1)またはMPB標識(レーン2)Q219CtTF(50ng)。Mrマーカーの位置を左側に示す。
【図13】GSAO-B-アビジン-tTF-B複合体の形成。PDIをマイクロタイターウェルに固定し、GSAO-Bで標識し、tTF-Bとインキュベートし、アビジンのモル比を増加させた。抗TFモノクローナル抗体およびペルオキシダーゼ結合二次抗体を使用して結合したtTFを検出した。バーおよびエラーは、3つの測定値の平均±SDである。
【図14】腫瘍血管を血栓にするためのGSAO-Bおよびアビジン-tTF-Bの使用原理を示す図である。
【図15】GSAO-Bの皮下投与およびその後のアビジン-tTF-Bの静脈投与による腫瘍脈管構造の血栓症および腫瘍の壊死を示す図である。A.非処置および処置腫瘍の断面を示す。処置した腫瘍の中心部の広範な壊死が明らかである。挿入図は、処置腫瘍の血栓化血管を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
定義
本明細書の文脈では、「含まれる」という用語は、「主に含む」を意味し、「必ず単独で含む」ことを意味しない。さらに、「comprise」および「comprises」などの「comprising」という用語の変形形態は、対応して意味が変化する。
【0074】
本明細書の文脈では、「アルゼノキシド」という用語は、-As=O基をいう。
【0075】
本明細書の文脈では、-As=Oおよび-As(OH)2と記載した基は、同義語と見なされる。
【0076】
本明細書の文脈では、「アルゼノキシドの等価物」という用語は、-As=OまたはAs(OH)2と本質的に同一のジチオールに対する親和性を示す任意のジチオール反応種をいい、この用語には、例えば、遷移元素を含む基、および水性溶媒(細胞培養緩衝液および処置される生物中に含まれる体液など)に溶解された場合に-As=Oまたは-As(OH)2のいずれかに加水分解される任意の3価のヒ素化合物(arsenical)が含まれる。
【0077】
本明細書中で使用される、「ヒ素化合物」という用語には、ヒ素を含む任意の化合物が含まれる。
【0078】
本明細書中で使用される、「アシル」という用語には、炭化水素部分、カルボニル部分、またはその両方で結合することができる末端にカルボニル置換基を有する1価および2価のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、およびシクロアルケニル部分が含まれる。
【0079】
本明細書中で使用される、「アルキル」という用語には、その意味の範囲内で、1価の飽和した直鎖および分岐鎖の炭化水素ラジカルが含まれる。
【0080】
本明細書中で使用される、「アルケニル」という用語には、その意味の範囲内で、少なくとも1つの二重結合を有する1価の直鎖および分岐鎖の炭化水素ラジカルが含まれる。
【0081】
本明細書中で使用される、「アルキニル」という用語には、その意味の範囲内で、少なくとも1つの三重結合を有する1価の直鎖および分岐鎖の炭化水素ラジカルが含まれる。
【0082】
本明細書中で使用される、「アルキレン」という用語には、その意味の範囲内で、2価の飽和した直鎖の炭化水素ラジカルが含まれる。
【0083】
本明細書中で使用される、「アルケニレン」という用語には、その意味の範囲内で、少なくとも1つの二重結合を有する2価で直鎖の炭化水素ラジカルが含まれる。
【0084】
本明細書中で使用される、「アルキニレン」という用語には、その意味の範囲内で、少なくとも1つの三重結合を有する2価で直鎖の炭化水素ラジカルが含まれる。
【0085】
本明細書中で使用される、「アリール」という用語には、その意味の範囲内で、1価で1つの多核結合および融合芳香族炭化水素ラジカルが含まれる。
【0086】
本明細書中で使用される、「アリーレン」という用語には、その意味の範囲内で、2価で1つの多核結合および融合芳香族炭化水素ラジカルが含まれる。
【0087】
本明細書中で使用される、「空間的に密接した(closely spaced)ジチオール」という用語には、その意味の範囲内で、化学的に隣接したチオールならびに分子立体配座によって空間的に同格となるチオールが含まれる。
【0088】
本明細書中で使用される、「シクロアルキル」という用語には、その意味の範囲内で、1価の飽和した単環式、多環式、または融合多環式の炭化水素ラジカルが含まれる。
【0089】
本明細書中で使用される、「シクロアルキレン」という用語には、その意味の範囲内で2価の飽和した単環式、二環式、多環式、または融合多環式の炭化水素ラジカルが含まれる。
【0090】
本明細書中で使用される、「シクロアルケニル」という用語には、その意味の範囲内で、少なくとも1つの二重結合を有する1価の飽和した単環式、二環式、多環式、または融合多環式の炭化水素ラジカルが含まれる。
【0091】
本明細書中で使用される、「シクロアルケニレン」という用語には、その意味の範囲内で、少なくとも1つの二重結合を有する2価の飽和した単環式、二環式、多環式、または融合多環式の炭化水素ラジカルが含まれる。
【0092】
本明細書中で使用される、「ハロ」という用語には、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨウ素が含まれる。
【0093】
本明細書中で使用される、「ヘテロアリール」という用語には、その意味の範囲内で、1〜12個の原子を含み、そのうちの1〜6個の原子がO、N、およびSから選択されるヘテロ原子である、1価で1つの多核の結合芳香族ラジカルおよび融合芳香族ラジカルが含まれる。
【0094】
本明細書中で使用される、「ヘテロアリーレン」という用語には、その意味の範囲内で、1〜12個の原子を含み、そのうちの1〜6個の原子がO、N、およびSから選択されるヘテロ原子である、2価で1つの多核の結合芳香族ラジカルおよび融合芳香族ラジカルが含まれる。
【0095】
本明細書中で使用される、「ヘテロシクロアルキル」という用語には、その意味の範囲内で、1〜5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、1価で飽和した単環式ラジカル、二環式ラジカル、多環式ラジカル、または融合ラジカルが含まれる。
【0096】
本明細書中で使用される、「ヘテロシクロアルキレン」という用語には、その意味の範囲内で、1〜5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、2価で飽和した単環式ラジカル、二環式ラジカル、多環式ラジカル、または融合多環式ラジカルが含まれる。
【0097】
本明細書中で使用される、「ヘテロシクロアルケニル」という用語には、その意味の範囲内で、少なくとも1つの二重結合を有し、且つ1〜5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、1価で飽和した単環式ラジカル、二環式ラジカル、多環式ラジカル、または融合多環式ラジカルが含まれる。
【0098】
本明細書中で使用される、「ヘテロシクロアルケニレン」という用語には、その意味の範囲内で、少なくとも1つの二重結合を有し、且つ1〜5個の原子がO、N、またはSから選択されるヘテロ原子である、2価で飽和した単環式ラジカル、二環式ラジカル、多環式ラジカル、または融合多環式ラジカルが含まれる。
【0099】
本明細書中で使用される、「フェニルアルソリン酸」という用語は、「ベンゼンアルソリン酸」と同義語と見なすべきである。
【0100】
本明細書中で使用される、「治療有効量」という用語には、その意味の範囲内で、毒性がないが、所望の治療効果を得るために本発明の系または系の成分の十分な量が含まれる。正確な必要量は、治療を受ける種、被験体の年齢および全身症状の健康、治療を受ける病態の重症度、特に投与する薬剤および投与様式などの要因に依存して被験体によって異なる。したがって、正確な「有効量」を特定することはできない。しかし、任意の所与の場合について、当業者は、適切な「有効量」を、日常的な実験を使用して決定することができる。
【0101】
本発明は、アポトーシス細胞の検出に関し、治療薬または診断薬などの活性な薬剤を正常な細胞と比較して比較的高い特異性でアポトーシス細胞に選択的に標的化するためのアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を使用する。
【0102】
1.化合物の調製
1.1 GSAOの合成
国際(PCT)特許出願番号PCT/AU00/011434(国際公開公報第01/21628号)(その開示が参照として本明細書に組み入れられる)に記載のように、アルゼノキシド化合物またはアルゼノキシドの等価物(GSAOなど)を、当技術分野において一般に公知の方法によって調製することができ、当業者は、本発明で有用な任意の所与の化合物を合成するために種々の試薬および反応物質を日常的作業で改変することができると認識する。当業者はまた、本発明はまた、任意のイオン化状態(例えば、酸性塩、非電荷の双性イオン、双性イオン性アニオン、ジアニオン)の化合物の使用を提供すると認識する。
【0103】
本発明での使用のための好ましいアルゼノキシド化合物の典型的な合成では、グルタチオンを、グルタチオンの遊離チオールとアルゼノキシドが結合してGSAOが得られる化学物質との間の共有結合の形成に好ましい条件下で4-(N-(ブロモアセチル)アミノ)フェニルアルゼノキシド(BRAO)と反応させることができる。グルタチオンのチオールによる求核攻撃を含む反応は、一般に、アルカリ条件が必要である。グルタチオンの硫黄原子に対するいくつかの反応種の求電子攻撃を行うことができ、一般に、これは酸性条件が必要な可能性が高い。GSAOの合成を実施例1(a)に示し、図1に図示する。
【0104】
1.2 GSAO-Bの合成
以下のGSAO-Bの合成方法を、実施例1(c)に示し、図4に例示する。

(n=1または2)
【0105】
1.3 GSAO-Fの合成
GSAO-Fの合成方法を、実施例1(d)に示し、図5に例示する。

【0106】
1.4 GSAO-Cy(商標)5.5の合成
以下のGSAO-Cy(商標)5.5の合成方法を、実施例1(e)に示し、図6に例示する。

【0107】
2.アポトーシス細胞および/または死細胞に活性な薬剤を標的化するための系
本発明は、アポトーシス細胞に活性な薬剤を選択的に標的化するためのアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む系を使用する。GSAOは、アポトーシス細胞および死細胞の両方を標的化する。実施例3(d)に概説するように、少なくとも7つのタンパク質により、GSAOがアポトーシス細胞に組み込まれた。さらに、GSAOがインビボでアポトーシス腫瘍細胞に選択的に結合した。本明細書中に開示するように、この結合を使用して、近赤外線蛍光標識GSAOでマウスの腫瘍を画像化した。
【0108】
本発明での使用に適切な系の例を、以下に概略的に示す。
【0109】
2.1 スキームI
本発明での使用に適切な1つの系は、少なくとも1つの活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤に直接連結するアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む。典型的には、活性な薬剤は、5-フルオロウラシル、アドリアマイシン、およびビンクリスチンなどの治療薬またはフロレセイン、Cy(商標)5.5、および8-アミノナフタレン1,3,6-トリスルホネート(ANTS)を含むフルオロフォアなどの検出可能な薬剤である。

【0110】
この系によれば、以下に例示のように、リンカーは、活性な薬剤が標的部位にてインサイチューで「放出される」ように切断することができる。

【0111】
切断可能なリンカーは、当業者に周知であり、例えば、ペプチド不安定性およびエステラーゼ不安定性リンカーなどの酵素切断可能な結合が含まれる。
【0112】
アポトーシス細胞の検出および/または画像化に有用な系の例は、アルゼノキシド化合物GSAOがフルオロフォアであるフルオレセインおよびCy(商標)5.5にそれぞれ共有結合したGSAO-F(図5)およびGSAO-Cy(商標)5.5(図6)である。GSAO部分は、アポトーシス細胞を選択的に標的化し、それによりフルオロフォアがアポトーシス細胞に選択的に送達される(図9〜11)。
【0113】
さらなる例として、GSAO-Cy(商標)5.5を、インビボでのアポトーシス細胞の検出に使用することができる。本発明の方法によれば、GSAO-Cy(商標)5.5を被験体に投与する。投与様式は、検出すべき部位によって変化する。典型的には、投与様式は、非経口、静脈内、皮下、または経口である。投与後、全身循環から残存するGSAO-Cy(商標)5.5をクリアランスするために一定期間を経過させる。典型的には、期間は、約1時間〜約48時間、より典型的には約3時間〜約36時間、さらにより典型的には約6時間〜約24時間である。さらにより典型的には、期間は約18時間である。当技術分野において周知の一般的技術を使用してCy(商標)5.5フルオロフォアの検出を行うことができ、アポトーシス細胞の位置を決定することができる(図11)。
【0114】
系に蛍光剤またはMRI剤(例えば、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸)またはDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)の常磁性ランタニドイオン複合体)などの造影剤を組み込む場合、造影剤は、アポトーシス細胞部位に選択的に標的化される。次いで、造影剤の標準的な検出方法により、これらの部位を容易に同定可能である。
【0115】
Gd(III)は、磁気共鳴影像法(MRI)における造影剤として非常に有効であることが示されているランタニドイオンの1つの例である。以下のスキームは、本発明における使用に適切なGd(III)DOTAおよびGd(III)DPTAに代表されるランタニドイオン複合体に直接連結するアルゼノキシド化合物(GSAOで示す)を含む系の合成を示す。
【0116】
2.1.1 ランタニドイオンを含む検出可能な系
(a)GSAO-[Gd(III)DOTA]の合成

(i)(CH32NCH(OCH32、トルエン、120℃。(ii)メチルブロモアセテートを含むCH2Cl2、Na2CO3の水溶液。(iii)水、エタノール。(iv)ブロモ酢酸、Na2CO3の水溶液。(v)GdCl3・6H2Oの水溶液。(vi)XX-リンカー、触媒NHS、触媒H2SO4。(vii)NHS、DCCのアセトン溶液。(viii)GSAO、NaHCO2の水溶液。
【0117】
(b)GSAO-[Gd(III)DTPA]の合成

(i)無水酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸。(ii)イミノ二酢酸、Na2CO3の水溶液;硫酸。(iii)触媒硫酸、水。(iv)メチルブロモアセテートのCH2Cl2溶液、Na2CO3の水溶液;硫酸。(v)NHS、触媒H2SO4。(vi)XX-リンカー、NaHCO3の水溶液;GdCl3・6H2Oの水溶液。(vii)NHS、DCC、アセトン。(viii)GSAO、NaHCO3の水溶液。
【0118】
当業者は、上記スキームに例示のGSAO部分とDOTAまたはDTPAとの複合体の結合基を、公知の化学反応を使用して容易に調製することができる。合成経路の1つの例を以下に示す。

(i)クロロ無水酢酸、Na2CO3水溶液;硫酸。(ii)NHS、DCC、アセトン。(iii)α-アミノ-n-カプロン酸、NaHCO3水溶液;硫酸。(iv)チオ尿素、エタノール;水。
【0119】
アルゼノキシド-[ランタニド複合体]結合体の別の調製プロトコールは、下記のイソチオシアネート誘導体などの官能化されたDOTAおよびDTPAリガンドを使用する。

【0120】
上記リガンドは全てGd(III)、Y(III)、および他のランタニドイオンとの安定性について十分に定義されている。上記リガンドのアルゼノキシド結合体の合成経路の例を、CHX-A'’リガンドを使用した以下のスキームに示す。アルゼノキシド部分を、GSAOと例示する。

【0121】
2.1.3 放射性ヌクレオチドを含む検出可能な系および/または治療系
放射性同位体は、造影剤および治療薬の両方として有用である。アルゼノキシド部分(GSAOと例示)が放射性標識部分に連結する本発明での使用に適切な系の合成経路を以下に示す。

【0122】
上記のスキームは、123ヨウ素を使用するが、当業者は、上記合成が一般的であり、他の活性な薬剤および放射性同位体にも適用されることを容易に理解する。例えば、[123]ヨウ素の[125]ヨウ素または[131]ヨウ素への置換により、対応する放射性ヨウ素放射性ヌクレオチドを含む系が得られる。下記に例示するように、上記合成と類似の様式で18Fフッ素化系を容易に調製することができる。

【0123】
18Fは、公知の陽電子放射体であり、造影剤として陽電子放射断層写真(PET)で使用される。PETシステムでの使用に適切な他の放射性同位体は当技術分野において周知である(例えば、86Yおよび99Tc)。したがって、活性な薬剤がアルゼノキシド部分に直接連結する本発明のさらなる系はPET剤であり、以下のスキームにしたがって調製したテクネチウム-99標識系である。

【0124】
MRIでの使用に加えて、リガンドのCHX-A'’、1B4M、またはC-DOTA(上記)のアルゼノキシド結合体を、例えば、γシンチグラフィでの使用のために111Inで放射性標識するか、PET画像化での使用のために84Cu、18F、86Y、または99Tcで放射性標識することもできる。本発明の範囲内での治療目的に有用な他の放射性同位体には、レニウム-188、銅-64、インジウム-111、ルテチウム-177、およびイットリウム-90、ビスマス-213が含まれる。他の放射性同位体は、当業者に周知である。治療適用のための放射性同位体の適合性を、標的化速度論に基づいて容易に同定することができ、この適合性は生体分配研究から得られる。
【0125】
2.2 系II
以下に図示する本発明での使用に適切な別の系は、(i)第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、(ii)活性な薬剤であるか活性な薬剤にすることができる薬剤である第2の結合メンバーを含む第2の成分を含む。

【0126】
GSAOなどのアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)部分はアポトーシス細胞を選択的に標的化し、それによりアポトーシス細胞に第1の結合メンバーが送達される。第1の結合メンバーは、第2の結合メンバーと相互作用することができる。例えば、第1の結合メンバーは酵素であり、第2の結合メンバーは酵素の基質である。酵素基質は、アポトーシス細胞部位で酵素によって活性な薬物に変換されるプロドラッグであり得る。特に、この系は、「バイスタンダー効果」を使用することができ、それにより活性な薬物は上記系によって標的化されたアポトーシス細胞周囲の隣接細胞に拡散することができる。
【0127】
本発明の方法によれば、この系の第1の成分を、被験体に投与し、その後アポトーシス細胞によって取り込まれない任意の成分が全身循環からクリアランスされるまで時間をおく。その後、第2の成分(viz)(第2の結合メンバー)を、被験体に投与することができる。投与様式は、典型的には非経口、皮下、静脈内、または経口である。第2の結合メンバーは、アポトーシス細胞に選択的に存在する第1の結合メンバーと相互作用し、それによりアポトーシス細胞環境で治療薬または検出可能な薬剤を単離することができる。
【0128】
2.3 系III
以下に図示した本発明での使用に適切なさらなる系は、(i)第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、(ii)少なくとも1つの活性な薬剤に連結した第2の結合メンバーを含む第2の成分を含む。

【0129】
この系によれば、アルゼノキシド部分(GSAOなど)は、第1の結合メンバー(ビオチンなど)に連結する(すなわち、この系の第1の成分の例はGSAO-Bである)。被験体に投与した場合、アルゼノキシド部分は、GSAO-Bをアポトーシスに選択的に標的化する。第2の成分は、第1の結合メンバーと相互作用することができる第2の結合メンバーを含む。第2の結合メンバーを、治療薬(例えば、化学療法薬)または診断薬(例えば、フルオロフォア)などの活性な薬剤に連結することができる。第2の結合メンバーを、リポソームなどの活性な薬剤のための賦形剤に連結することができ、活性な薬剤は賦形剤内(すなわち、リポソーム内)に存在することができる。第2の成分を被験体に投与する場合、アポトーシス細胞部位で第1の成分に選択的に結合する。第1の結合メンバーがビオチンであるGSAO-Bの場合、適切な第2の結合メンバーはアビジンまたはストレプトアビジンである。
【0130】
典型的には、系の第1の成分を被験体に投与した後、これの後にアポトーシス細胞に取り込まれなかった任意の残存する第1の成分を循環からクリアランスすることができる期間おく。その後、第2の成分を投与する。
【0131】
この系に関するの1つの例では、第1の成分はGSAO-Bを含むことができ、第2の成分は、化学療法薬(例えば、デオキシルビシン)などの活性な薬剤をカプセル化するリポソームに連結されたアビジンを含むことができる。典型的には、リポソームはアビジンでコーティングされている。この系により、正常な細胞と比較して高濃度の活性な薬剤(デオキシルビシンなど)をアポトーシス細胞に選択的に標的化可能である。
【0132】
本発明で使用されるこの系のさらなる例を、実施例3(d)および3(e)に示す。実施例3(d)では、細胞をインビトロで第1の成分GSAO-Bで処置し、残存するGSAO-Bを洗浄によってクリアランスした。次いで、アビジン-ペルオキシダーゼを含む第2の成分を添加した。公知の検出方法によりアポトーシス細胞を同定可能である。
【0133】
2.4 系IV
本発明での使用に適切な別の系を、以下に図示する。

【0134】
本発明の方法により使用されるこの系の例を実施例5(c)に示す。本明細書中で開示されるように、アポトーシス腫瘍細胞を標的化するGSAOの性質を使用して、凝固薬を腫瘍の血管に送達させた。組織因子(TF)は、血液凝固カスケードの主要な開始受容体である。第VII/VIIa因子のTFへの結合により、制限されたタンパク質分解によってセリンプロテイナーゼ酵素原の第IX因子および第X因子が活性化され、それによりトロンビンが生成され、最終的に凝血する。TFの細胞外ドメイン(tTF)は、適切なリン脂質膜環境で天然の膜貫通TFよりも約5桁低い第X因子活性化する活性を有する可溶性タンパク質である。これは、負電荷の表面に会合した場合、TF:VIIa複合体はより有効に第IX因子および第X因子に結合して活性化するためである。
【0135】
例えば腫瘍を有する脊椎動物に投与した場合、アルゼノキシド化合物は、組織因子をほぼ排他的にアポトーシス増加部位(すなわち、腫瘍部位)に送達させる。一旦腫瘍部位に局在すると、組織因子の存在によりトロンビンカスケードを開始させて部位特異的凝血を誘導することができ、それにより腫瘍への血流を塞いで腫瘍組織を重篤に壊死させる。
【0136】
3.薬学的製剤および/または治療製剤
さらに、本発明の系の成分は、しばしば、薬学的製剤および/または治療製剤の形態(すなわち、薬学的に許容される担体、アジュバント、および/または希釈剤と共に存在する活性な薬剤)で存在する上記概説の活性な薬剤を含む。
【0137】
医学的使用のために、活性な薬剤の塩を、本発明の系で使用することができ、これらには、薬学的に許容される塩が含まれるが、化合物またはその薬学的に許容される塩の調製に他の塩を使用することができる。薬学的に許容される塩は、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを示さずにヒトおよび下等動物の組織に接触させた使用に適切であり、妥当な利益/リスク比のバランスが取れている塩を意味する。薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知である。
【0138】
例えば、本発明の系で有用な化合物の適切な薬学的に許容される塩を、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸、酒石酸、またはクエン酸などの薬学的に許容される酸と本発明の化合物との混合によって調製することができる。したがって、本発明の系で有用な化合物の適切な薬学的に許容される塩には、酸付加塩が含まれる。
【0139】
例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences、1977、66、1〜19に薬学的に許容される塩を詳細に記載している。塩を、本発明の系で使用した化合物の最終的な単離および精製時にインサイチューで調製するか、遊離の塩基の官能基と適切な有機酸との反応によって分離することができる。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロシオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリル酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピルビン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、および吉草酸塩などが含まれる。代表的なアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムなどが含まれ、無毒のアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンには、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびエチルアミンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
プロドラッグもまた本発明の系で有用な化合物の範囲内に含まれる。典型的には、プロドラッグは、治療薬および/または診断薬などの活性な薬剤として本発明の系で使用される必要な(活性な)化合物にインビボで容易に変換される本発明で使用される化合物の機能的な誘導体である。プロドラッグの典型的な選択および調製手順は、当業者に公知であり、例えば、H.Bundgaard編、Design of Prodrugs、Elsevier、1985に記載されている。
【0141】
処置を施す医師によって選択された投与のレベルおよびパターンを使用して化合物または薬学的組成物を1回または複数回投与することができる。とにかく、本発明の系で有用な化合物または薬学的組成物により、患者の有効な治療に十分の化合物量が得られるべきである。
【0142】
当業者は、日常的作業の実験によって、アポトーシス細胞の検出ならびに/または障害および疾患の治療もしくは予防に必要な本発明で使用される化合物または薬学的組成物の有効且つ毒性のない量を決定することができる。一般に、有効量は、約0.0001mg〜約1000mg/kg体重/24時間、典型的には、約0.001mg〜約750mg/kg体重/24時間、約0.01mg〜約500mg/kg体重/24時間、約0.1mg〜500mg/kg体重/24時間、約0.1mg〜約250mg/kg体重/24時間、約1.0mg〜約250mg/kg体重/24時間の範囲と予想される。より典型的には、有効量の範囲は、約1.0mg〜約200mg/kg体重/24時間、約1.0mg〜約100mg/kg体重/24時間、約1.0mg〜約50mg/kg体重/24時間、約1.0mg〜約25mg/kg体重/24時間、約5.0mg〜約50mg/kg体重/24時間、約5.0mg〜約20mg/kg体重/24時間、約5.0mg〜約15mg/kg体重/24時間の範囲と予想される。
【0143】
または、有効量は、約500mg/cm2までであってよい。一般に、有効量は、約25〜約500mg/m2、好ましくは約25〜約350mg/m2、より好ましくは約25〜約300mg/m2、さらにより好ましくは約25〜約250mg/m2、さらにより好ましくは約50〜約250mg/m2、なおさらにより好ましくは約75〜約150mg/m2、の範囲であると予想される。
【0144】
GSAOに関して、有効量は、約0.0001mg〜約100mgのGSAO/kg体重/24時間、好ましくは約0.001mg〜約100mgのGSAO/kg体重/24時間、より好ましくは約0.01mg〜約50mgのGSAO/kg体重/24時間、さらにより好ましくは約0.1mg〜約20mgのGSAO/kg体重/24時間、さらにより好ましくは約0.1mg〜約10mgのGSAO/kg体重/24時間の範囲である。
【0145】
本発明の系での使用のための活性な薬剤に関して、有効量は、約0.0001mg〜約100mgの薬剤/kg体重/24時間、好ましくは約0.001mg〜約100mgの薬剤/kg体重/24時間、より好ましくは約0.01mg〜約50mgの薬剤/kg体重/24時間、さらにより好ましくは約0.1mg〜約20mgの薬剤/kg体重/24時間、さらにより好ましくは約0.1mg〜約10mgの薬剤/kg体重/24時間の範囲である。
【0146】
典型的には、病態の持続中に処置する。
【0147】
さらに、本発明の系で使用する化合物の最適な量および各投与の間隔を、治療を受ける病態の性質および範囲、投与の形態、経路、および部位、ならびに治療を受ける特定の脊椎動物の性質によって決定されることが当業者に明らかである。また、このような最適な条件を、従来の技術によって決定することができる。
【0148】
当業者は、選択的な治療単位(所定の日数での1日あたりに投与される本発明の系内の化合物の投与数など)を従来の治療決定試験の治療単位を使用して確認することができることもまた当業者に明らかである。
【0149】
本発明の系で使用される化合物を単独で投与することができるが、一般に、薬学的組成物/製剤として化合物を投与することが好ましい。一般に、本発明の系の成分を示す薬学的製剤を、当業者に公知の方法によって調製することができるので、薬学的に許容される担体、希釈剤、および/またはアジュバントを含むことができる。
【0150】
担体、希釈剤、およびアジュバントは、製剤の他の成分と適合することができ、且つそのレシピエントに有害でないという点で「許容されなければならない」。
【0151】
薬学的および獣医学的に許容される担体または希釈剤の例は、脱塩水もしくは蒸留水;生理食塩水;植物由来の油(ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ラッカセイ油またはヤシ油など);シリコーン油(メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、およびメチルフェニルポリシロキサンなどのポリシロキサンを含む);揮発性シリコーン;流動パラフィン、ソフトパラフィン、またはスクアランなどの鉱物油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;低級アルカノール(例えば、エタノールまたはイソプロパノール);低級アラルカノール;低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールまたはグリセリン);パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、またはオレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル;ポリビニルピロリドン;寒天;カラギナン;トラガカントガムまたはアラビアガム;およびワセリンである。典型的には、担体は、組成物の10%〜99.9重量%を形成する。
【0152】
好ましい形態では、本発明での使用に適切な化合物の薬学的組成物は、実施例6に示す薬学的に許容される担体、希釈剤、および/またはアジュバントと共に有効量の活性な薬剤を含む。
【0153】
本発明の系の成分を示す薬学的組成物を、標準的経路によって投与することができる。一般に、組成物を、局所、経皮、腹腔内、頭蓋内、脳室内、大脳内、膣内、子宮内、経口、直腸、または非経口(例えば、静脈内、髄腔内、皮下、または筋肉内)経路で投与することができる。さらに一般的に、本発明の系の成分を示す組成物は、経口摂取に適切なカプセル、局所投与に適切な軟膏、クリーム、またはローションの形態、目薬としての送達に適切な形態、鼻腔内吸入または経口吸入などの吸入による投与に適切なエアゾール形態であり得る。
【0154】
注射可能な溶液または懸濁液としての投与のために、無毒で非経口に許容される希釈剤または担体には、リンガー液、等張生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、エタノール、および1,2-プロピレングリコールを含み得る。
【0155】
経口での使用に適切な担体、希釈剤、賦形剤、およびアジュバントの例には、ピーナッツ油、流動パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アカシアガム、トラガカントガム、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン、およびレシチンが含まれる。さらに、これらの経口製剤は、適切な香料および着色料を含み得る。カプセル形態で使用する場合、カプセルを、カプセルの崩壊を遅延させるモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの化合物でコーティングすることができる。
【0156】
アジュバントには、典型的には、皮膚軟化薬、乳化剤、増粘剤、防腐剤、殺菌剤、および緩衝剤が含まれる。
【0157】
経口投与のための固体形態は、ヒトおよび動物の薬学実務で許容される結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、香料、コーティング剤、防腐剤、潤滑剤、および/または徐放剤を含み得る。適切な結合剤には、アカシアガム、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、またはポリエチレングリコールが含まれる。適切な甘味料には、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、またはサッカリンが含まれる。適切な崩壊剤には、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアールガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、または寒天が含まれる。適切な希釈剤には、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、または第二リン酸カルシウムが含まれる。適切な香料には、ペパーミントオイル、ウィンターグリーン油、チェリー、オレンジ、またはラズベリーの香料が含まれる。適切なコーティング剤には、アクリル酸および/またはメタクリル酸のポリマーまたはコポリマーおよび/またはそのエステル、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、シェラック、またはグルテンが含まれる。適切な防腐剤には、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α-トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、または亜硫酸水素ナトリウムが含まれる。適切な潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、またはタルクが含まれる。適切な徐放剤には、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルが含まれる。
【0158】
経口投与のための液体形態は、上記薬剤に加えて、液体担体を含み得る。適切な液体担体には、水、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ラッカセイ油、ヤシ油、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド、またはその混合物が含まれる。
【0159】
経口投与のための懸濁液は、分散剤および/または懸濁剤をさらに含み得る。適切な懸濁剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、またはアセチルアルコールが含まれる。適切な分散剤には、レシチン、ステアリン酸などの脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸またはポリオキシエチレンソルビトールジオレイン酸、ポリオキシエチレンソルビトールステアリン酸、またはポリオキシエチレンソルビトールラウリン酸、ポリエチレンソルビタンモノオレイン酸またはポリエチレンソルビタンジオレイン酸、ポリエチレンソルビタンステアリン酸、およびポリエチレンソルビタンラウリン酸などが含まれる。
【0160】
経口投与のために乳濁液は、1つまたは複数の乳化剤をさらに含み得る。適切な乳化剤には、上記例示の分散剤またはグアールガム、アカシアガム、またはトラガカントガムなどの天然のガムが含まれる。
【0161】
本発明で使用される局所製剤は、1つまたは複数の許容される担体および選択的に任意の他の治療成分と共に有効成分を含む。
【0162】
局所投与に適切な製剤には、湿布薬、ローション、クリーム、軟膏、またはペーストなどの治療を必要とする部位への皮膚を介した浸透に適切な液体または半液体調製物および眼、耳、または鼻への投与に適切な小滴が含まれる。
【0163】
本発明で使用するための小滴は、滅菌水溶液もしくは油性溶液または懸濁液を含み得る。これらを、殺菌薬および/または殺真菌薬および/または任意の他の適切な防腐剤水溶液への有効成分の溶解および選択的に界面活性剤を含めることによって調製することができる。次いで、得られた溶液を、濾過によって清澄化し、適切な容器に移し、滅菌することができる。加圧滅菌または90〜100℃で30分〜1時間の維持、または濾過、およびその後の無菌技術による容器への移動によって滅菌を行うことができる。小滴中に含めるのに適切な殺菌薬および殺真菌薬の例は、硝酸フェニル水銀または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)、および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)である。油性溶液調製のための適切な溶媒には、グリセロール、希釈アルコール、およびプロピレングリコールが含まれる。
【0164】
本発明のローションには、皮膚または眼への適用に適切なローションが含まれる。洗眼液は、選択的に殺菌薬を含む滅菌水溶液を含むことができ、小滴調製に関する上記方法と類似の方法によって調製することができる。皮膚への適用のためのローションまたは湿布薬には、急速に乾燥させる薬剤およびアルコールまたはアセトンなどの皮膚を冷却する薬剤、および/またはグリセロールなどの保湿剤、またはヒマシ油もしくはラッカセイ油も含まれる。
【0165】
本発明のクリーム、軟膏、またはペーストは、外用のための有効成分の半固体製剤である。これらを、単独または水性もしくは非水性液中の細かく砕いた形態または粉末形態の有効成分と脂肪性基剤または非脂肪性基剤との混合によって調製することができる。この基剤は、プロピレングリコールまたはマクロゴールなどのアルコールと共に、固形パラフィン、ソフトパラフィン、または流動パラフィン、グリセロール、蜜蝋、金属石鹸などの炭化水素;漿剤;アーモンド油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ヒマシ油、またはオリーブ油などの天然起源の油;羊毛脂もしくはその誘導体、またはステアリン酸またはオレイン酸などの脂肪酸を含み得る。
【0166】
製剤は、ソルビタンエステルまたはそのポリオキシエチレン誘導体などの陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤などの任意の適切な界面活性剤を組み込むことができる。天然ゴム、セルロース誘導体、または珪質シリカなどの無機材料、およびラノリンなどの他の成分などの懸濁剤も含めることができる。
【0167】
非経口投与のための組成物は、一般に、滅菌されて比較的粒子状物質を含まない、水、緩衝液、0.4%生理食塩水、および0.3%グリシンなどの許容される担体に溶解した本発明の成分の系で有用な活性な薬剤の溶液またはそのカクテルを含む。
【0168】
非経口投与可能な組成物の調製方法は、当業者に明らかであり、例えば、「Remington's Pharmaceutical Science」、第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa(参照として本明細書中に組み入れられる)に詳細に記載されている。
【0169】
本発明の系の成分および/または活性な薬剤を示す薬学的組成物を、リポソームの形態で投与することもできる。リポソームは、一般に、リン脂質または他の脂質物質に由来し、水性溶媒中に分散する単層または多層水和液晶によって形成される。任意の無毒の生理学的に許容され且つ代謝されるリポソームを形成することができる脂質を使用することができる。リポソーム形態中の製剤は、安定剤、防腐剤、および賦形剤などを含み得る。好ましい脂質は、天然および合成のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームの形成方法は、当技術分野において公知であり、特定の引例(Prescott編、Methods in Cell Biology、第XIV巻、Academic Press、New York、N.Y.、1976、33、以下を参照のこと)(その内容が参照として本明細書に組み入れられる)を参照して作製される。
【0170】
4.キット
本発明での使用に適切な系は、系の各成分が個別にパッケージングされているキットとして利用することができる。適切な容器には、ガラス容器、プラスチック容器、およびプラスチックの包みなどのプラスチックまたは紙のストリップが含まれる。キットは、典型的には、本発明の方法にしたがってキット成分を使用するための種々の成分および説明書を入れる容器が含まれる。
【0171】
本発明の治療方法または検出方法にしたがってキットを使用することができる。
【0172】
本発明の1つのキットの例を、腫瘍脈管構造の血栓症および腫瘍の壊死の誘導に使用する。キットには、GSAO-Bを含む第1の容器およびアビジンを含む第2の容器、およびtTF-Bを含む第3の容器が含まれる。GSAO-Bを、最初に脊椎動物に投与し、その後しばらくおく(典型的には12〜24時間、さらに典型的には約18時間)。第2の成分(アビジン)を、第3の成分と合わせ、tTF-Bおよび得られたアビジン-tTF-B複合体を脊椎動物に投与する。このキットにより、アビジン-tTF-B複合体を投与した場合にアポトーシス細胞でtTF-BがGSAO-Bに結合して血栓症が誘導されるようにGSAO-Bはアポトーシス細胞を標的化することができる。
【0173】
5.疾患の治療および/または予防
本発明で使用される系は、脊椎動物の種々の障害および疾患の治療に有用である。障害および疾患の例を、以下の広範なカテゴリーに分類することができる。血管形成依存性疾患、細胞増殖疾患(例えば、乾癬、IBD、悪性疾患、再狭窄)、炎症性障害、自己免疫疾患、血管疾患、血栓症、癌、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病)、骨髄異形成症候群、虚血/再灌流傷害、および器官移植損傷。
【0174】
典型的には、癌は、発癌性腫瘍、上皮起源の腫瘍(結腸直腸癌など)、乳癌、肺癌、頭頸部腫瘍、肝臓癌、膵臓癌、卵巣癌、胃癌、脳腫瘍、膀胱癌、前立腺癌、および尿管/生殖管癌、間葉腫瘍(肉腫など)、および造血細胞腫瘍(B細胞リンパ腫など)からなる群から選択される。
【0175】
典型的には、癌は、血液腫瘍である。より典型的には、癌は、固形癌である。
【0176】
本発明の系を、炎症性障害および/または自己免疫疾患で使用することもでき、その例には、以下が含まれる:慢性関節リウマチ、血清反応陰性関節炎、および他の炎症性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、多発動脈炎および関連症候群、全身性硬化症、シェーグレン症候群および他の炎症性眼病、混合結合組織病、多発性筋炎および皮膚筋炎、リウマチ性多発性筋痛および巨細胞性動脈炎、炎症性関節疾患、非炎症性関節炎、および柔組織リウマチ、疼痛ジストロフィ。
【0177】
本発明の系が予防様式および/または治療様式で有用な血管疾患および血栓症の例には、以下が含まれる:アテローム性動脈硬化症;一過性虚血、完全脳卒中、および頚動脈手術後などの脳血管障害;急性心筋梗塞(原発性および続発性);狭心症;冠状動脈バイパス移植片の閉塞;経皮経管腔冠動脈血管形成術後の閉塞;冠動脈ステント挿入後の閉塞;末梢動脈疾患における血管閉塞;手術後、妊娠中、または固定中の種々の血管塞栓症の進行。
【0178】
本発明の系が有用な小血管疾患の例には、以下が含まれる:糸球体腎炎;血栓性血小板減少性紫斑病;溶血性尿毒症症候群;胎盤不全、および子癇前症。
【0179】
本発明の系を、血管症候群および骨髄増殖疾患の治療に使用することもできる。
【0180】
本発明の系を、以下の条件での血栓形成の予防に適用することもできる。人工(artificial)/補綴(prosthetic)血管シャントおよび移植片;人工心臓弁;心肺バイパス手順;血液灌流および血液透析。
【0181】
典型的には、本発明の系を、他の公知の治療(化学療法または放射線療法を含む手術用薬剤および/または治療薬など)と組み合わせて使用することができる。例えば、固形腫瘍の治療で使用する場合、本発明の化合物を、アドリアマイシン、タキソール、フルオロウラシル、メルファラン、シスプラチン、インターフェロンα、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキセート、およびプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびデキサメタゾン)、PROMACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキセート(w/ロイコビンレスキュー)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンギオインヒビン、TNP-470、ペントサンポリサルフェート、血小板第4因子、アンギオスタチン、LM-609、SU-101、CM-101、テクガラン、サリドマイド、およびSP-PGなどの化学療法薬と共に投与することができる。他の化学療法薬には、メクロエタミン、メルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、およびイフォスファミドを含むナイトロジェンマスタード、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、およびストレプトゾシンを含むニトロソ尿素などのアルキル化剤;ブスルファンを含むアルキルスルホネート;ジカルバジンを含むトリアジン;チオテパおよびヘキサメチルメラミンを含むエチエンイミン;メトトレキセートを含む葉酸類似体;5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシドを含むピリミジン類似体;6-メルカプトプリンおよび6-チオグアニンを含むプリン類似体;アクチノマイシンDを含む抗腫瘍抗生物質;ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、およびメトラマイシンを含むアントラサイクリン;タモキシフェンおよび副腎皮質ステロイドを含むホルモンおよびホルモンアンタゴニストならびにシスプラチンおよびブレキナー(brequinar)を含む種々の薬剤が含まれる。
【0182】
典型的には、本発明にしたがって治療すべき生理学的系(例えば、肝臓系、膵臓系)を、本発明の系の投与前の手術によるか手術中に単離することができる。
【実施例】
【0183】
本発明を、特定の実施例を参照してさらに詳細に記載するが、本発明を制限すると決して解釈されるべきではない。
【0184】
実施例1
アルゼノキシド化合物の合成
以下の化合物を購入し、さらに精製することなく使用した。フェニルアルゼノキシド、ブロモアセチルブロミド、二酸化硫黄、d6-ジメチルスルホキシド、重水、メタノール、98%硫酸、48%臭化水素酸、37%塩酸(Ajax、Auburn、NSW);ジクロロメタン、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム(BDH、Kilsyth、VIC);P-2 Gel extra fine、1,800MWカットオフ(Bio-Rad、Hercules、CA);2,3-ジメルカプトプロパノール(DMP);塩化チオニル(Merck、Darmstadt、Germany);6,8-チオクト酸、エチレンジアミン四酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-エタンスルホン酸)、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム(Sigma、Castle Hill、NSW);p-アルサニル酸(Tokyo Kasei Kogyo、Tokyo、Japan);グリシン(ICN、Aurora、Ohio);6-((6-((ビオチノイル)アミノ)ヘキサノイル)アミノ)ヘキサン酸、スクシニミジルエステル(ビオチン-XX、SE)をMolecular Probes、Eugene、Oregonから入手した。他の全ての試薬は、分析グレードであった。
【0185】
装置
300.17MHzおよび75.48MHzで検出した1Hおよび13Cを用いたBruker DPX300核磁気共鳴分光計を使用して一次元NMRスペクトルおよび二次元NMRスペクトルをそれぞれ得た。Molecular Devices Thermomax Plus(Palo Alto、CA)マイクロプレートリーダーによってUV-可視吸収を記録した。
【0186】
酸性化重水の調製
新鮮な塩化チオニルを、過剰量の重水に慎重に添加した。SO2の発生を停止させた後、得られた溶液(0.6ml)を、5mmNMRチューブ中のGSAO(約50mg)に添加した。この試料を使用して、NMRスペクトルを得た。
【0187】
実施例1(a)
4-(N-(S-グルタチオニルアセチル)アミノ)フェニルアルゼノキシド(GSAO)の合成
GSAOの全合成を図1に図示する。
【0188】
4-(N-ブロモアセチル)アミノ)フェニルアルソン酸の合成
炭酸ナトリウム(40.14g、378.7mmol)を、水(200mL)に添加し、全ての固体が溶解するまで室温で撹拌した。撹拌した炭酸溶液に、p-アルサニル酸(29.99g、138.2mmol)を滴下し、さらなる水の添加によって溶液の体積を300mlにした。溶液(pH10〜11)を30分撹拌し、必要に応じて、濾過して任意の非溶解固体を除去し、2〜3時間再度冷却した。溶液を分液漏斗に移し、氷を添加した。ブロモアセチルブロミド(15mL、34.76g、172.1mmol)をジクロロメタン(50mL)で希釈し、ジクロロメタン溶液のほぼ半分を冷水溶液に慎重に添加した。混合物を、過剰な加圧を回避するために頻繁に通気しながら慎重に振盪した。1〜2分後、二酸化炭素の発生が弱まり、より強く振盪した。残りのブロモアセチルブロミドを慎重に添加し、手順を繰り返した。反応終了後、溶液はpH7であることがわかった。下のジクロロメタン層を破棄し、水層を1Lフラスコに移し、98%硫酸の滴下によって慎重に酸性化した。白色生成物の完全な析出には、溶液を約pH1にするまでの酸の添加が必要であった。粗生成物を回収し、ポンプで乾燥させ、典型的には収率は50%〜75%であった。

【0189】
4-(N-(ブロモアセチル)アミノ)フェニルアルゼノキシド水和物(BRAO.xH2O)の合成
三口の500mL丸底フラスコに、BRAA(12.15g、36mmol)を入れた。固体を、撹拌しながらメタノール(75ml)と臭化水素酸(48%、75mL)との混合物に溶解して、透明な黄色の溶液を得た。溶液を濾過して残存する固体をろ過した。触媒としてヨウ化ナトリウム(0.20g、1.3mmol)を添加し、溶液の色が橙色がかった褐色まで暗くなり、二酸化硫黄ガスをゆっくりと(約2気泡/分)約2.5時間かけて撹拌溶液に通した。得られた白色沈殿を、ブフナー漏斗を使用して回収し、湿った白色固体として生成物(17.43g)を得た。酸素除去したDMSO(800μl)への固体(40.7mg)の一部の溶解によって溶液の活性が56mMであることが測定された(以下を参照のこと)。したがって、BRAO.xH2Oの分子量は908.5であり、BRAOは35%w/wでありH2Oは65%w/wであった。したがって、BRAO生成物の「無水」重量は、17.43gの35%であり、6.10g(19mmol、収率53%)であった。

【0190】
4-(N-(S-グルタチオニルアセチル)アミノ)フェニルアルゼノキシド(GSAO)の合成
数分間の窒素ガス流の通過によってDMSO(10mL)から酸素を除去し、これを使用してBRAO.xH2O(1.00g、2.48mmol活性アルゼノキシド)を溶解した。グルタチオン(1.15g、3.74mmol、1.5当量)を、0.5M重炭酸緩衝液(pH9.6)(35mL)に溶解し、BRAO.xH2OのDMSO溶液に添加した。0.5M重炭酸緩衝液を使用して総体積を50mLにし、溶液を室温で一晩穏やかに撹拌した。37%塩酸を使用して慎重に中和し、その後凍結乾燥させて白色の粉末生成物を得て、これを固体が残存することなく水に溶解させることができる。得られた溶液の活性アルゼノキシド濃度は、DMP/DTNBアッセイ法を使用して決定したところ49.6mMであることが見出された(以下を参照のこと)。
【0191】
溶離液として20mM Hepes、0.14M NaCl、1mM EDTA(pH7.4)緩衝液を使用した流速0.10mL/分での130mLカラムにおけるゲル濾過(P-2 Gel extra fine、1.8kDaカットオフ、50g)を使用して生成物を精製した。全部で144mLを回収し(2mLの72画分)、UV(λ214nm)でモニターした。4つのピークA、B、C、およびDを解析した。ピークBおよびCは、DTNB/DMPアッセイ法(以下を参照のこと)で活性を示し、それぞれGSAOおよび未反応BRAOとして割り当てた。ピークAおよびDは、暫定的にそれぞれ酸化生成物GSAAおよびBRAA(BRAOの酸化生成物)と割り当てた(以下を参照のこと)。ピークAに対応する画分で未反応グルタチオンも検出された(DTNBを使用)。ピークBに対応する画分を合わせ、窒素ガスで酸素を除去してGSAO溶液(15mM、約12mL)を得た。

【0192】
二次元NMR分光法を使用して、GSAOの構造も確認した。一連の1Hおよび13C NMRスペクトル、1H、13C、1H-1H COSY、1H-13C HMQC、および1H-13C HMBCは、全て図1に提案した構造と一致することが見出された。合わせて考慮すると、全てのスペクトルは、全ての炭素および交換不可能な水素原子に明白に割り当てられた。脂肪族領域を示すGSAOの1H-13C HMBCスペクトルを、図2に示す。1H-13C HMBC技術は、カップリングした1Hおよび13C核と相互作用するが、直接結合した核を除去した。これは、2つ、3つ、または(時折)4つの結合によって分離された1Hおよび13C核がスペクトルのクロスピークとして認められることを意味する。図2は、C11のみがH7(C7に結合したプロトンをいう)と強くカップリングし、C7はH6に加えてH11に強力にカップリングすることを示す。これにより、グルタチオンの硫黄がBRAOでアルキル化が成功したことが確認される。
【0193】
実施例1(b)
4-(N-(S-グルタチオニルアセチル)アミノ)フェニルアルソン酸(GSAA)の合成
GSAAの合成を、図3に図示する。
【0194】
BRAA(1.00g、2.96mmol)およびグルタチオン(1.36g、4.44mmol、1.5当量)を、0.5M重炭酸緩衝液(pH9.6)(50mL)に溶解し、溶液を室温で一晩穏やかに撹拌した。凍結乾燥によって固体残渣が残存しない水に溶けやすい白色粉末の生成物が得られた。溶離液として脱イオン水を使用した流速0.1mL/分でのBio-Gel P-2 extra fine(BioRad、Hercules、CA)の570mLカラム(2.5×117cm)におけるゲル濾過によって生成物を精製した。GSAOの精製におけるピークAに対応する位置にカラムから生成物(GSAA)が溶離された。
【0195】
実施例1(c)
4-(N-(S-(N-(6-((6-((ビオチノイル)アミノ)ヘキサノイル)アミノ)ヘキサノイル)グルタチオニル)-アセチル)-アミノ)フェニルアルゼノキシド(GSAO-B)の合成
GSAO-Bの合成を図4に図示する。
【0196】
GSAO(0.13g)を0.5M重炭酸ナトリウム緩衝液(5mL、pH8.5)に溶解し、得られた溶液中の活性のあるヒ素化合物の濃度は、39mMと測定された。緩衝化ヒ素化合物溶液(165μmolの活性のあるヒ素化合物を含む4.2mL)を、ビオチン-XX、SE(100mg、176μmol)のDMSO(1mL)溶液に添加し、混合物を数分逆さにし、4℃で4時間インキュベートした。グリシン(17.5mg、233μmol)を添加し、混合物を4℃で一晩保持した。GSAO-B生成物中の3価のヒ素化合物の濃度は31mMと測定され、この溶液をさらに改変せずに使用した。
【0197】
実施例1(d)
フルオレセインのGSAOまたはGSAAへの結合
フルオレセイン-5-EXスクシニミジルエステル溶液(Molecular Probes、Eugene、OR)(2.4mg、4.1μmol)のDMSO(240μL)溶液を、GSAOまたはGSAA(33.8mM)を含むMes緩衝液(pH5.5)(5mM、473μL)に添加し、混合物を重炭酸塩緩衝液(pH9)(0.5M、3.287mL)で希釈し、室温で80分間静置した。次いで、反応液をグリシン(100mM)のPBS(4mL)溶液で希釈し、室温で一晩静置した。最終溶液は、3価のヒ素化合物(2.00mM)およびグリシン(50mM)を含んでいた。フルオレセイン-5X:GSAOまたはGSAAのモル比は、約1.5:1であった。GSAO-およびGSAA-フルオレセイン(GSAO-FおよびGSAA-F)の分子量は、それぞれ1024および1040である。GSAO-Fの合成を、図5に図示する。
【0198】
実施例(1e)
Cy(商標)5.5のGSAOまたはGSAAへの結合
Cy(商標)5.5(Amersham Pharmacia Biotech、Uppsala、Sweden)(266nmol)の重炭酸塩緩衝液(pH9)(0.5M、968μL)溶液を、GSAOまたはGSAA(33.8mM)を含むMe緩衝液(pH5.5)(5mM、32μL)と混合し、室温で80分間静置した。次いで、反応液をグリシン(100mM)のPBS(1mL)溶液で希釈し、室温で一晩静置した。最終溶液は、3価のヒ素化合物(0.54mM)およびグリシン(50mM)を含んでいた。GSAOまたはGSAA:Cy(商標)5.5のモル比は、約4:1であった。GSAO-Cy(商標)5.5およびGSAA-Cy(商標)5.5の分子量は、それぞれ1447および1463である。GSAO-Cy(商標)5.5の合成を、図6に図示する。
【0199】
実施例2
実施例2(a)
GSAO-B、GSAO-F、およびGSAO-Cy(商標)5.5のアッセイ法
溶液中のGSAO-B、GSAO-フルオレセイン(GSAO-F)、およびGSAO-Cy(商標)5.5の濃度を、ジメルカプトプロパノール(DMP)での滴定および5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)(Sigma、St.Louis、MO)での残存する遊離チオールの計算によって測定した(Donoghueら、2000)。DMPのストック溶液(5μL、50μmol)を、DMSO(995μL)に溶解し、濃度50mMのDMPを得た。pH7.0緩衝液(0.1M HEPES、0.3M NaCl、1mM EDTA)(990μL)での50mM DMPストック溶液(10μL)の第2の希釈により、500μM DMPの検定用溶液を得た。次いで、ヒ素化合物の活性を、緩衝液の添加によって総体積を195μLにした96穴マイクロタイタープレート中でのDMP検定用溶液(10μL)に対する種々の量のヒ素化合物の滴定によって測定することができる。室温で10分間のインキュベーション後(その間に溶液をプレート振盪器で撹拌した)、5μLのDMSO(1mL)の37.9mM DTNB(15mg)のストック溶液を添加し、プレートを振盪しながらさらに10分間インキュベートした。TNBジアニオンの形成に起因する412nmの吸光度を、Molecular Devices Thermomax Plus(Palo Alto、CA)マイクロプレートリーダーを使用して測定した。pH7.0でのTNBジアニオンの減衰係数は、412nmで14,150M-1cm-1である(Riddlesら、1983)。結合体を、濾過滅菌し、使用するまで4℃の暗所で保存した。これらの条件下で保存した場合、少なくとも1週間ヒ素化合物のストック溶液の活性濃度の有意な喪失は認められなかった。グリシンは、GSAOのGSAAへの酸化を示す(Donoghueら、2000)。
【0200】
実施例2(b)
GSAO-BのPDIとチオレドキシンとの相互作用
ヒト組換えPDIおよびチオレドキシンはGSAO-Bに結合した(図7)。組換えヒトタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)を、大腸菌(E.coli)にて産生させ、Jiangら(1999)にしたがって精製した。実験では、精製PDI、チオレドキシン、または負の対照としてのアルブミンを、2倍モル過剰のジチオスレイトールと60分間インキュベートして、PDIの活性部位であるジスルフィドおよびチオレドキシンが確実に還元ジチオール状態となるようにした。次いで、タンパク質を、GSAO-BまたはGSAO-Bおよび4倍モル過剰のDMPと30分間インキュベートした。等モルの標識タンパク質を、SDS-PAGEで分離し、PVDFメンブレンに転写し、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼでブロッティングしてGSAO-Bレベルを検出した。試料を、非還元条件下にて4〜15%SDS-PAGEで分離し、PDVFメンブレンに転写した。タンパク質を、抗PDIマウスモノクローナル抗体(Jiangら、1999)(2μg/mL使用)を使用したウェスタンブロットによって検出した。ウサギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗体(Dako Corporation、Carpinteria、CA)を、2000倍希釈で使用した。GSAO-B標識タンパク質を、1000倍希釈で使用したストレプトアビジンペルオキシダーゼ(Amersham、Sydney、NSW)でブロッティングした。タンパク質を、製造者の説明書に従って、化学発光物質(DuPont NEN、Boston、MA)を使用して視覚化した。化学発光フィルムを、GS-700画像診断デンシトメーターおよびMulti-Analystソフトウェア(Bio-Rad、Hercules、CA)を使用して分析した。
【0201】
PDIおよびチオレドキシンはGSAO-Bを取り込んだがアルブミンは取り込まなかった。図7Bのレーン1中の高Mrバンドは、調製物中の少量の凝集したPDIであった(Jiangら、1999)。PDIの標識密度は、チオレドキシンのそれの約2倍であり、チオレドキシンの1つに対するPDIの2つの活性部位であるジチオールと一致することは注目すべきである。
【0202】
実施例3
インビトロ/インビボ研究
実施例3(a)
GSAO-Bによる接着細胞の染色
方法
BAE細胞を、2穴ガラスチャンバースライド(Nunc、Napervile、IL)中に5×105細胞の密度で播種し、一晩結合させた。細胞を、10μM GSAO-Bで16時間処理し、その後PBSで2回洗浄し、3.7%ホルムアルデヒドを含むPBSで固定し、3.7%ホルムアルデヒドおよび0.1%トライトン(Triton)X-100を含むPBSで浸透処理し、2回洗浄し、1%PBSを含む200倍希釈のAlexa488結合ストレプトアビジン(Molecular Probes、Eugene、OR)のPBS溶液と室温で1時間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、VectaShield退色防止剤(Vector Laboratories、Burlingame、CA)に封入した。BX-FLA蛍光およびDiagnostic Instrumentsのスポットデジタルカメラおよびソフトウェアv2.2(Sterling Heights、MI)を備えたOlympus BX60顕微鏡で写真を撮影した。
【0203】
結果
培養内皮細胞をGSAO-Bで染色してストレプトアビジン-Alexa488で視覚化した場合、時折細胞が非常に明るく染色されていることが認められた(図8)。大部分の細胞は非常に少数のGSAO-Bに結合した。
【0204】
実施例3(b)
カスパーゼ活性化後のGSAO標識アポトーシス細胞
方法
細胞培養
HT1080ヒト線維肉腫およびウシ大動脈内皮細胞(ATCC、Bethesda、MD)を、10%FBS、2mM L-グルタミン、および5U/mLペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco BRL、Gaithersburg、MD)を含むDMEM中で培養した。ヒト微小血管内皮細胞株(HMEC-1)(Adesら、1992)を、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、5U/mLペニシリン/ストレプトマイシン、10ng/ml表皮成長因子(Gibco BRL、Gaithersburg、MD)、および1μg/mlヒドロコルチゾン(Sigma、St.Louis、MO)を含むMCDB131培地(Gibco BRL、Gaithersburg、MD)中で培養した。10mM EDTAまたはトリプシン/EDTA溶液(Gibco BRL、Giathersburg、MD)を含むPBSで細胞を分離した。培養プレートは、Coning Costar、Corning、NYのものであった。
【0205】
GSAO-およびアネキシンV標識細胞のフローサイトメトリー
HT1080細胞を、1μg/mLカンプトセシン(Calbiochem、San Diego、CA)で20時間処置し、その後2.5mM EDTAを含むPBSで分離し、インキュベーション中に分離した細胞とあわせた。細胞を、アネキシンV結合緩衝液(10mM Hepes、140mM NaCl、2.5mM CaCl2、pH7.4)で2回洗浄し、2×105細胞/処置を10μM GSAO-FまたはGSAA-Fを含む100μLアネキシンV結合緩衝液中、室温で15分間撹拌しながらインキュベートした。細胞を2回洗浄し、その後、5μlフィコエリトリン結合アネキシンV(アネキシンV-PE)(PharMingen、San Diego、CA)および1μlの100μg/mLヨウ化プロピジウム溶液(Molecular Probes、Eugene、OR)を含む100μLアネキシンV結合緩衝液中で15分間インキュベートした。次いで、アネキシンV結合緩衝液で総体積を500μlにし、試料を氷に移した。FACSstarフローサイトメーター(Beckton Dickson)を使用してフローサイトメトリーを行った。結果を、104細胞/試料で示す。GSAO-F取り込みに対するカスパーゼの阻害効果を試験するために、10μg/mLのZ-VAD-FMK(カルボベンズオキシ-バリル-アラニル-アスパルチル-[O-メチル]-フルオロメチルケトン)(Calbiochem-Novabiochem、San Diego、CA)の非存在下または存在下で細胞をカンプトセシンで処置し、その後、分離し、洗浄し、10μM GSAO-Fを含むアネキシンV結合緩衝液中で15分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、フローサイトメトリーに供した。
【0206】
結果
ヒト線維肉腫HT1080細胞を、トポイソメラーゼ阻害剤であるカンプトセシン(Kaufmann、1998)で20時間処置してアポトーシスを誘導し、非処置細胞またはカンプトセシン処置細胞を、フルオレセイン結合GSAO(GSAO-F)またはGSAA(GSAA-F)、およびフィコエリトリン結合アネキシンV(アネキシンV-PE)とインキュベートした。フローサイトメトリーによって蛍光を定量した(図9a〜f)。カンプトセシン処置後のアポトーシス細胞および死細胞の増加は明らかであり、100蛍光単位を超えるフィコエリトリン蛍光を有する細胞に比例して7.3倍増加した。このアネキシンV陽性細胞における増加は、フルオレセイン蛍光が1027単位を超える細胞に比例して8.6倍増加に相関した(図9c)。対照的に、カンプトセシン処置では、GSAA-FおよびアネキシンV-PEで同時標識した細胞の割合を増加されなかった(図9f)。GSAA-FまたはGSAO-Fで標識した非処置細胞の平均フルオレセイン蛍光は類似しているが(GSAO-Fについて255単位、GSAA-Fについては213単位)、カンプトセシン処置細胞集団については平均蛍光のはっきりとした相違が明らかになった(GSAO-Fについて1400単位、GSAA-Fについては219単位)。1μg/mLカンプトセシンまたは10mMもしくは25mMホモシステインのいずれかを使用してヒト皮膚微小血管内皮細胞中で24時間アポトーシスを誘導した場合、類似の結果が得られた(示さず)。
【0207】
HT1080細胞を、非処置のまままたはアポトーシスを誘導するためにカンプトセシンで処置し、その後分離し、GSAO-F、アネキシンV-PE、核酸結合色素、ヨウ化プロピジウムで標識した。後期アポトーシス細胞および壊死細胞によってヨウ化プロピジウムが取り込まれ、アネキシンVはアポトーシスプログラムの初期に細胞に結合する。アネキシンV-PE蛍光を、全細胞およびヨウ化プロピジウムを取り込んだ細胞以外の全細胞(200蛍光単位超)についてGSAO-F蛍光に対してプロットした。アネキシンV-PE(200蛍光単位超)およびGSAO-F(1980蛍光単位超)で明るく染色された細胞の割合を示す(図9g)。GSAO-Fは、アポトーシス細胞および死細胞の両方に結合した。
【0208】
カスパーゼは、細胞骨格および核DNAの断片化などの細胞標的のタンパク質分解を誘発する全細胞におけるアポトーシス刺激によって活性化されるアスパラギン酸プロテアーゼクラスである(ThornberryおよびLazebnik、1998)。カスパーゼの活性化は、アポトーシスプログラムの不可欠な成分であり、広域性カスパーゼ阻害剤Z-VAD-FMKを広範に使用してカスパーゼ依存性プロセスを遮断している(Zhuら、1995)。HT1080細胞を、Z-VAD-FMKの存在下または非存在下で上記のカンプトセシンで処置した。Z-VAD-FMKでの処置により、カンプトセシン処置で認められるGSAO-F陽性細胞の増加が実質的に遮断された。これにより、カスパーゼ活性がGSAOのアポトーシス細胞への取り込みに必要であることを示された。
【0209】
実施例3(c)
GSAOはアポトーシス細胞に侵入し、空間的に密接したジチオールを含むタンパク質を標識した
方法
GSAO標識細胞およびアネキシン標識細胞の共焦点顕微鏡検査法
HT1080細胞を、1μg/mLカンプトセシンで20時間処置し、その後10mM EDTAを含むPBSで分離し、アネキシンV結合緩衝液で洗浄し、10μM GSAO-Fおよび20倍希釈(v/v)Alexa594結合アネキシンV(Molecular Probes、Eugene、OR)を含むアネキシンV結合緩衝液中で15分間インキュベートした。次いで、細胞をアネキシンV結合緩衝液で2回洗浄し、顕微鏡スライド上にピペッティングした。細胞横断面を、Olympus BX60顕微鏡およびOptiscan F900e共焦点ユニットおよびソフトウェア(Optiscan、Notting Hill、オーストラリア)を使用して画像を取り込んだ。
【0210】
GSAO-Bでの細胞の標識
HT1080細胞を、1μg/mLカンプトセシンで20時間処置し、GSAO-FおよびアネキシンV-PEによる標識のために上記のように10μMのGSAO-BおよびアネキシンV-PEで標識した。細胞を、そのアネキシンV-PE蛍光に基づいて分類し、PBSで3回洗浄し、4×104細胞を、4℃の40μLのRIPA緩衝液(50mM Tris-HCl、0.5M NaCl、1% トライトンX-100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、10μMロイペプチン、10μMアプロチニン、2mM フェニルメチルスホニルフッ化物、5mM EDTA、pH8.0)中に溶解した。同量の溶解物を、8〜16%勾配のSDS-ポリアクリルアミドゲル(Gradipore、Sydney)で電気泳動し、ポリビニルジエチレンフルオリド(PVDF)メンブレン(Millipore、Bedford、MA)に転写し、ビオチン化タンパク質を、2000倍希釈したアビジン-ペルオキシダーゼで検出した(Molecular Probes、Eugene、OR)。GSAO-Bを組み込んだタンパク質を同定するために、20μlのRIPA溶解物を、5μlのストレプトアビジン-ダイナビーズ(Dynal Biotech、Osio、Norway)と4℃で15分間インキュベートした。次いで、ビーズを、RIPA緩衝液で2回洗浄し、20μlのSDS-PAGEローディング緩衝液に再懸濁し、SDS-PAGEで分離し、ポリビニリデンジフルオリドメンブレンに転写し、PDIを、2μg/mLの抗PDIポリクローナル抗体(Donoghueら、2000)および2000倍希釈のヤギ抗ウサギペルオキシダーゼ結合抗体(Dako Corporation、Carpinteria、CA)を使用したウェスタンブロットによって検出した。ECL増強化学発光(NEN、Boston、MA)を使用して、ブロットを発色させた。
【0211】
非処置およびカンプトセシン処置HT1080細胞も、50μMジメルカプトプロパノールの非存在下または存在下で撹拌しながら20℃で15分間標識した。細胞をPBSで3回洗浄し、2×105細胞を4℃の100μlのRIPA緩衝液で溶解した。上記のように、溶解物をSDS-PAGEで分離し、アビジン-ペルオキシダーゼでブロッティングした。
【0212】
結果
HT1080細胞を、カンプトセシンで処置してアポトーシスを誘導し、その後分離し、GSAO-FおよびアネキシンV-Alexa-594で標識した。細胞を、共焦点顕微鏡で画像化した。GSAO-Fは、アネキシンV陽性細胞の細胞質に分布した(図10a(i〜vi))。アネキシンVで標識されない細胞中にわずかなGSAO-F蛍光が存在した(図10a(vii))。
【0213】
HT1080細胞を、カンプトセシンで処置してアポトーシスを誘導し、その後分離し、アネキシンV-PEおよびビオチン結合GSAO(GSAO-B)で標識した(Donoghueら、2000)。細胞を、アネキシンV陽性(100蛍光単位超)集団およびアネキシンV陰性(100単位未満)集団に分類し、各集団由来の同数の細胞を、SDS-PAGEで分離し、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼでブロットしてGSAO-B標識タンパク質を検出した。アネキシンV陽性細胞で約7種のタンパク質が明白にGSAO-Bに組み込まれた(図10b)。アネキシンV陰性細胞へのGSAO-Bの組み込みレベルは比較すると無視してよかった。
【0214】
GSAO-B標識タンパク質を、ストレプトアビジン-ダイナビーズ上に回収し、SDS-PAGEで分離し、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)(小胞体中に豊富に存在し、酸化還元シャペロンとして機能するタンパク質)についてウェスタンブロッティングを行った(Donoghueら、2000;Novia、1999)。アネキシンV陽性細胞中のPDIの標識強度は、アネキシンV陰性細胞中のこのタンパク質の標識よりもはるかに強かった(図10c)。
【0215】
GSAO-Bがアポトーシス細胞中の空間的に密接なジチオールと相互作用することを確認するために、HT1080細胞をカンプトセシンで処置しないか処置し、その後分離し、ジメルカプトプロパノールの非存在下または存在下でGSAO-Bで標識した(図10d)。この合成ジチオールは、タンパク質ジチオールとGSAO-Bへの結合を競合する(Donoghueら、2000)。また、カンプトセシン処置集団の標識は非処置集団よりもかなり強く、GSAO-Bによるアポトーシス細胞タンパク質の標識は、5倍モル過剰のジメルカプトプロパノールとの細胞のインキュベーションによって減少した。
【0216】
実施例3(d)
インビボでのGSAO標識アポトーシス細胞または死滅腫瘍細胞
方法
近位背側に皮下BxPC-3腫瘍を有するBALB/C-ヌードマウス(Biological Resource Centre、University of New South Wales、Sydney)に、36mg/kg GSAO-BまたはGSAA-Bの20mMグリシンを含む0.2mL PBS溶液を、側腹後部(hind flank)への皮下注射によって投与した。6時間後にマウスを屠殺し、腫瘍をOCT化合物(Sukura、Torrence、CA)中に包埋し、液体窒素で瞬間冷凍した。5μMの腫瘍切片を、アセトンで固定し、製造者の説明書に従ってStreptABComplex/HRP(Dako Corporation、Carpinteria、CA)で染色し、ヘマトキシリンで対比染色した。切片を、アセトン/メタノールでも固定し、0.1%トライトンX-100で浸透処理し、ウサギ抗活性化カスパーゼ-3抗体(Promega、Madison、WI)/ヤギ抗ウサギTexas Redおよびアビジン-Alexa Fluor488(Molecular Probes、Eugene、OR)で染色した。切片を、DAPI(Sigma、St.Louis、MO)で対比染色し、Fluoromount-G(Southern Biotechnology、Birmingham、AL)で封入した。
【0217】
結果
皮下BxPC-3腫瘍を有するマウスに、腫瘍から離れた部位に皮下注射によってGSAO-BまたはGSAA-Bを投与した。6時間後にマウスを屠殺し、腫瘍を切り出し、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼでGSAO-Bを検出した。アポトーシス細胞または死滅細胞が優勢な腫瘍領域にGSAO-Bが蓄積していた(図11a)。GSAO-Bは、核が濃縮されて皺のある細胞質を含むが、健常な腫瘍細胞ではないアポトーシスの明らかな兆候を示す細胞を染色した。ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼとインキュベートした腫瘍やGSAA-Bを投与したマウスの腫瘍は染色されなかった(示さず)。アポトーシス細胞の標識を、活性化カスパーゼ3およびGSAO-Bについての切片の染色によって確認した。活性化カスパーゼ3およびGSAO-Bは共局在するが、GSAA-Bは切片中に検出されなかった(図11b)。SCIDマウスの皮下で増殖させたAsPC-1ヒト膵臓癌腫瘍のアポトーシス領域および壊死領域でもGSAO-Bが検出された(示さず)。
【0218】
実施例4
近赤外線蛍光色素標識GSAOでの腫瘍のインビボ画像化
方法
皮下ルイス肺腫瘍を有するC57BL/6(Jackson Labs、Bar Harbor、ME)マウス、皮下でBxPC-3腫瘍を有するSCID(Massachusetts General Hospital、Boston、MA)マウス、またはTRAMP(Greenbergら、1995)マウスに、0.8mg/kgのGSAO-Cy(商標)5.5、GSAA-Cy(商標)5.5、またはCy(商標)5.5色素のみの、20mMグリシンを含む0.1mL PBS溶液を右側腹後部の皮下注射によって投与した。近位背側に皮下腫瘍を確立させた。
【0219】
画像化システムは、100Wハロゲンランプ光源およびCy(商標)5.5(Chroma Technology、Brattleboro、VT)を備えたLeica Microsystems蛍光顕微鏡(Allendale、NJ)を使用した。麻酔マウスを、遮光ボックスに拘束し、12ビットのモノクロ電荷結合素子(Photometrics、Tuscon、AZ)によって蛍光を検出した。IPLabでの16ビットTiffファイルとしてデジタルで得た画像の必要な曝露時間は8秒間であった(Scanalytics、Fairfax、VA)。腫瘍の白色光画像も得た。
【0220】
結果
Cy(商標)5.5は、インビボでの腫瘍の画像化に使用した近赤外蛍光色素である(Weisslederら、1999)。約0.3gのマウスルイス肺腫瘍を有するC57BL/6マウスに、0.8mg/kgのGSAO-Cy(商標)5.5を皮下注射で投与し、注射から1時間後から開始して48時間後に終了する蛍光画像を得た。ルイス肺腫瘍の白色光画像を図11c(A)に示す。注射1時間後の近赤外フィルターによって認められる同一の図を、図11c(B)に示す。画像は、GSAO-Cy(商標)5.5が脈管構造に吸収され、腫瘍のみならず皮膚も標識されたことを示す。注射24時間後の背側皮膚および腫瘍の蛍光画像を図11c(C)および11c(D)にそれぞれ示す。GSAO-Cy(商標)5.5は、大部分の脈管構造からクリアランスされ、腫瘍のみが標識されたままとなった。尿の実験は、注射1時間以内でGSAO-Cy(商標)5.5の排泄を示し、ピーク強度は4〜8時間である(示さず)。30時間、36時間、48時間での腫瘍のさらなる実験は、48時間シグナルが持続する24時間でのバックグラウンドシグナルに対するピーク腫瘍を証明が証明した。GSAA-Cy(商標)5.5およびCy(商標)5.5標識ルイス肺腫瘍では認められなかった(示さず)。C57BL/6マウスの背側で増殖させたマウスT241線維肉腫もまた、GSAO-Cy(商標)5.5を使用して画像化した(示さず)。
【0221】
免疫不全マウスで増殖したヒト腫瘍もGSAO-Cy(商標)5.5で標識した。約0.3gのヒトBxPC-3膵臓癌を有するSCIDマウスに、0.8mg/kgのGSAO-Cy(商標)5.5を皮下注射で投与し、注射から1時間後および24時間後に蛍光画像を得た。GSAO-Cy(商標)5.5を使用した24時間後に腫瘍についての優れたシグナル:バックグラウンド比が再度認められた(図11d(C))。GSAA-Cy(商標)5.5(図11d(B))およびCy(商標)5.5(図11d(D))のいずれもBxPC-3腫瘍を標識しなかった。肝臓、心臓、肺、膀胱、および腎臓を取り出し、GSAO-Cy(商標)5.5について試験した。膀胱および腎臓のみが、近赤外シグナルの任意の証拠が得られた(示さず)。さらに、SCIDマウスの背側上に皮下で増殖したヒトCRL-1973胚腫瘍およびSCIDマウスの前立腺で増殖したヒトLnCaP前立腺細胞もGSAO-Cy(商標)5.5を使用して画像化した(示さず)。これらの結果は、GSAO-Cy(商標)5.5は異なるマウス株のマウスおよびヒト腫瘍の両方を画像化することができることを示す。
【0222】
また、GSAO-Cy(商標)5.5を使用して、TRAMPマウスの自発的前立腺腫瘍を画像化した(Greenbergら、1995)。動物を超音波を用いて試験して、画像化前に腫瘍の存在を確認した。前立腺腫瘍を有するTRAMPマウスに、0.8mg/kgのGSAO-Cy(商標)5.5を側腹上部の皮下注射によって投与した。現在使用されている画像化システムの深度検出閾値は、1cm以下であり(Weisslederら、1999)、開腹して腫瘍を露呈させた。明視野に、巨大な腫瘍および中心静脈で満たされる(図11e(A))。腫瘍はGSAO-Cy(商標)5.5で標識されるが、中心静脈は標識されなかった(図11e(B))。
【0223】
実施例5
実施例5(a)
MPBでのtTFの標識
tTFのクローニングおよび変異
ヒトTFcDNAは、Karen Fisher(Fisherら、1987)から入手した。TFの細胞外ドメイン(tTF、残基1〜219位)の増幅および変異に使用したプライマーは、

(順方向プライマー)および

(逆方向プライマー)であった。両プライマーは、クローニングを容易にするためにコード配列の外側にBamHI部位を含む。システインのTGTコドンは、逆方向プライマーのコドン219位に存在し、グルタミンをGAAコドンに置換する。Q219C tTF cDNAを、DNAポリメラーゼPfxを使用したPCRによって増幅し、pTrc-HisAベクター(Invitrogen、San Diego、CA)のBamHI部位にクローニングした。tTF cDNAの完全性およびQ219変異を、自動化配列決定によって確認した。ベクター構築物を使用して、大腸菌 BL21 Star(Invitrogen、San Diego、CA)を形質転換した。
【0224】
tTFの発現、精製、およびビオチン標識
組換えtTFを、Jiangら(1999)に記載のように発現させ、ProBond(Invitorgen、San Diego、CA)アフィニティクロマトグラフィによって精製し、Stoneら(1995)に記載のように再びフォールディングさせた。0.2mgのtTFあたり1単位のEKMax(Invitorgen、San Diego、CA)の室温で16時間のインキュベーションによって、精製し、再度折りたたんだタンパク質からHis-タグを切断した。切断したHis-タグを、陰イオン交換クロマトグラフィによってtTFから分離した。反応液を、20mM Tris-HCl(pH8.0)緩衝液に対して透析し、同一の緩衝液で平衡化した1mL Mono-Qカラム(Amersham Pharmacia Biotech、Uppsala、Sweden)にアプライした。結合したタンパク質を、0〜0.5Mの直線NaCl勾配で分離した。tTFは、約0.4M NaClで溶離した。
【0225】
tTF中のチオール数を、DTNBを使用して測定した。tTF(約10μM)を、DTNB(約1mM)を含む0.1M HEPES、0.3M NaCl、1mM EDTA(pH7.0)緩衝液と共に室温で10分間インキュベートし、Molecular Devices Thermomax Plus(Palo Alto、CA)マイクロタイターリーダーを使用して412nmの吸光度からTNBを測定した。pH7.0でのTNBジアニオンの減衰係数は、412nmで14,150M-1cm-1である(Riddlesら、1983)。tTFを、20倍モル過剰の3-(N-マレイミジルプロピオニル)ビオチン(MPB)(Molecular Probes Incorporated、Eugene、OR)と室温で16時間インキュベートして、遺伝子操作したCysを標識した。未反応のMPBを、透析によって除去した。
【0226】
精製tTFおよびMPB標識tTF(tTF-B)を、8〜16%勾配のSDS-ポリアクリルアミドゲル(Gradipore、Sydney)で電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー(Sigma、St.Louis、MO)で染色した。1つの場合に、タンパク質をポリビニルジエチレンフルオリド(Millipore、Bedford、MA)に転写し、2000倍希釈のアビジン-ペルオキシダーゼ(Molecular Probes、Eugene、OR)でブロッティングして、MPB標識を検出した。ブロットを、ECL増強化学発光(NEN、Boston、MA)を使用して発色させた。
【0227】
Q219tTFを、図12Aに示す。タンパク質は、1molのタンパク質あたりに0.77molのチオールが含まれており、MPBとの反応の際に1molのタンパク質あたり0.13molチオールに還元される。Q219tTFへのMPBの組み込みを、図12Bに示す。
【0228】
実施例5(b)
GSAO-B-アビジン-tTF-B複合体の形成
GSAO-B-アビジン-tTF-B複合体の形成を測定するためのELISA法
ヒト組換えタンパク質であるジスルフィドイソメラーゼ(PDI)を、Jiangら(1999)に記載のように産生した。PDI(5μg/mLの0.1M NaHCO3、0.02%アジド(pH8.3)を含む100μlの緩衝液)を、湿度の高い条件下でNunc PolySorp 96穴プレートに4℃で一晩吸着させた。0.05%Tween20(PBS/Tween)、200μlの3%BSAを含むPBS溶液の添加および37℃で90分間のインキュベーションによって遮断した非特異的結合部位を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)でウェルを1回洗浄しPBS/Tweenで2回洗浄した。以下のインキュベーションは全て軌道回転振盪機を使用した室温で30分間のインキュベーションであり、各インキュベーション後にウェルをPBS/Tweenで3回洗浄した。ジチオスレイトール(10mMを100μl)をウェルに添加して、PDIの活性部位(ジスルフィド)を還元した。GSAO-B(100μMの100μl)をウェルに添加して、PDIの活性部位(ジチオール)を標識した。tTF-B(0.1μM)および漸増濃度のアビジン(Sigma、st. Louis、MO)(最終体積100μl)をウェルに添加して、PDI-GASO-B-アビジン-tTF-B複合体を形成させた。マウス抗ヒトTFモノクローナル抗体(American Diagnostica、Greenwich、CT)(2μg/mLの100μl)をウェルに添加して、結合したtTF-Bを検出し、結合したマウス抗体をウサギ抗マウスペルオキシダーゼ結合IgG(500倍希釈の100μl)で測定した。ペルオキシダーゼ活性を、100μlの0.003%H2O2、1mg/mLの2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)を含む50mMクエン酸(pH4.5)緩衝液にて室温で軌道回転で振盪しながら測定した。Molecular Devices Thermomax Kinetic Microplate Reader(Molecular Devices Corporation、CA、USA)を使用して405nmの吸光度を読み取った。結果を、PDIでコーティングしていない対照ウェルについて補正した。
【0229】
GSAO-Bは、精製PDIの活性部位(ジチオール)および細胞表面のPDIと反応する(Donoghueら、2000)。この相互作用さを、マイクロタイタープレート形式で使用して、GSAO-B-アビジン-tTF-B複合体の形成を試験した。PDIを、マイクロタイタープレートウェル中に固定し、GSAO-Bで標識し、tTF-Bとインキュベートし、アビジンのモル比を増大させた。結合したtTFを、抗TF抗体を使用して検出した。GSAO-B-アビジン-tTF-B複合体の形成に最適なアビジン:tTF-Bモル比は、-0.5:1であった(図13)。
【0230】
実施例5(c)
GSAO-Bの皮下投与およびその後のアビジン-tTF-Bの静脈投与による腫瘍の脈管構造の血栓症および腫瘍の壊死
雌6〜8週齢Balb/cヌードマウス(Biological Resources Centre、University of New South Wales、Sydney)に、2.5×106AsPC-1細胞を含む0.2mLのPBSを近位背側正中線に皮下で注射した。腫瘍体積を、関係式a.b2.0.52(aは最も長い直径であり、bは最も短い直径である)を使用して計算した。腫瘍および器官を、緩衝化ホルムアミド-Fresh(Fisher Scientific、Fair Lawn、NJ)中に固定し、パラフィン中に包埋し、厚さ5μmの切片に切断し、スライドガラス上に置いた。切片を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
【0231】
約0.6gのAs-PC-1腫瘍を有するSCIDマウスに、7.5mg/kgのGSAO-Bを含む0.15mLの20mMグリシン含有PBSを側腹の皮下によって投与した。GSAO-Bは、全身循環によって18時間でクリアランスされ、マウスに、1mg/kgアビジン-[tTF-B](モル比0.5:1)を含む0.2mLの生理食塩水を静脈注射によって尾静脈に投与した。この治療計画の原理を、図14に示す。
【0232】
約75%の腫瘍が、アビジンtTF-Bの投与から2〜4時間後に紫色に染色された。アビジン-tTF-Bの投与から10日後にマウスを屠殺し、組織学的に切り出して試験した。腫瘍の脈管構造に顕著な血栓および治療腫瘍に壊死が認められた(図15)。腫瘍細胞の周辺層のみが視覚可能なままであった。処置マウスの体重は、一連の実験で変化しなかった。実験の最後に、処置マウスの心臓、肺、肝臓、腎臓、および脾臓を、組織学的に試験した。いかなる器官にも血栓の兆候は認められなかった(示さず)。
【0233】
実施例6
薬学的製剤
本発明の系の成分として使用した化合物を単独で投与することができるが、薬学的製剤として投与することが好ましい。有効成分は、局所投与については、0.001重量%〜10重量%、より典型的には1重量%〜5重量%の製剤含み得るが、10重量%ほどを含むことができる。
【0234】
本明細書中に記載の本発明を実施するための最良の形態によれば、本発明の系の成分として使用する特定の好ましい薬学的製剤を以下に概説する。以下は、製剤の例示のみを目的とし、本発明の範囲を決して制限しないと解釈すべきである。
【0235】
実施例6(a)
局所クリーム組成物
局所クリームとして送達させるための局所組成物を以下に概説する。
GSAO-Cy(商標)5.5 1.0g
ポーラワックス(Polawax)GP200 25.0g
無水ラノリン 3.0g
白蝋 4.5g
メチルヒドロキシベンゾエート 0.1g
脱イオン滅菌水で100gにする。
【0236】
ポーラワックス、蜜蝋、およびラノリンを、共に60℃に加熱し、メチルヒドロキシベンゾエート溶液を添加し、高速撹拌を用いてホモジネートする。次いで、温度を50℃に提げる。本発明の成分(本実施例ではGSAO-Cy(商標)5.5)を添加し、完全に分散させ、組成物を低速撹拌を使用して冷却する。
【0237】
実施例6(b)
局所ローション組成物
局所クリームとして送達させるための局所組成物を以下に概説する。
GSAO-Cy(商標)5.5 1.2g
ソルビタンモノラウレート 0.8g
ポリソルベート 200.7g
セトステアリルアルコール 1.5g
グリセリン 7.0g
メチルヒドロキシベンゾエート 0.4g
滅菌水で約100mlにする。
【0238】
メチルヒドロキシベンゾエートおよびグリセリンを70mlの水で75℃において溶解する。ソルビタンモノラウレート、ポリソルベート20、およびセトステアリルアルコールを、互いに75℃で融解し、水溶液に添加する。得られた乳濁液をホモジネートし、継続的撹拌によって冷却し、残存する水中での懸濁液としてGSAO-Cy(商標)5.5を添加する。全ての懸濁液を均一化するまで撹拌する。
【0239】
実施例6(c)
洗眼液組成物
洗眼液として送達させるための局所組成物を以下に概説する。
GSAO-Cy(商標)5.5 0.3g
メチルヒドロキシベンゾエート 0.005g
プロピルヒドロキシベンゾエート 0.06g
滅菌水で約100mlにする。
【0240】
メチルおよびプロピルヒドロキシベンゾエートを、70mlの75℃精製水に溶解し、得られた溶液を冷却する。GSAO-Cy(商標)5.5を添加し、溶液をメンブレンフィルター(孔径0.22μm)での濾過によって滅菌し、滅菌容器に無菌的にパッケージングする。
【0241】
実施例6(d)
吸入投与用組成物
容積20〜30mlのエアゾール容器用:10mgのGSAO-Cy(商標)5.5と0.5〜0.8重量%の潤滑剤(ポリソルベート85またはオレイン酸など)との混合物を、フロンなどの高圧ガスに分散させ、鼻腔内または経口の吸入投与用の適切なエアゾール容器に入れる。
【0242】
実施例6(e)
非経口投与用組成物
筋肉内注射用の本発明の薬学的組成物を、1mL滅菌緩衝液および1mgのGSAO-Cy(商標)5.5を含むように調製することができる。
【0243】
同様に、静脈内注入用の薬学的組成物は、250mlの滅菌リンガー液、および5mgのGSAO-Cy(商標)5.5を含み得る。
【0244】
実施例6(f)
カプセル組成物
カプセル形態のGSAO-Cy(商標)5.5の薬学的組成物を、標準的な2片の硬ゼラチンカプセルへの粉末形態の50mgのGSAO-Cy(商標)5.5、100mgのラクトース、35mgのタルク、および10mgのステアリン酸マグネシウムの充填によって調製することができる。
【0245】
実施例6(g)
注射用非経口組成物
注射による投与に適切な形態での本発明の薬学的組成物を、1重量%のGSAO-Cy(商標)5.5と10重量%のプロピレングリコールおよび水との混合によって調製することができる。溶液を濾過滅菌する。
【0246】
実施例6(h)
軟膏組成物
軟膏としての送達のための局所組成物は、滑らかで均一な生成物が得られるように分散された100.0gまでの白色軟パラフィンと共に1.0gのGSAO-Cy(商標)5.5を含む。
【0247】
参照文献


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アポトーシス細胞を選択的に標的化するアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および薬剤を含む系を脊椎動物に投与する工程を含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化する方法。
【請求項2】
系が、活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤に連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
系が、
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤である第2の結合メンバーを含む第2の成分とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1の結合メンバーが酵素であり、第2の結合メンバーが酵素の基質である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
酵素の基質が酵素によって活性な薬剤に変換されるプロエージェントである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
プロエージェントが酵素によって活性な薬物に変換されるプロドラッグである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
系が、
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
少なくとも1つの活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)に連結した第2の結合メンバーを含む第2の成分とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第1の結合メンバーがビオチンであり、第2の結合メンバーがアビジンおよびストレプトアビジンから選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第1の結合メンバーがアビジンおよびストレプトアビジンから選択され、第2の結合メンバーがビオチンである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
第1の結合メンバーがメトトレキセートであり、第2の結合メンバーがジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)である、請求項7記載の方法。
【請求項11】
第1の結合メンバーがジヒドロ葉酸還元酵素であり、第2の結合メンバーがメトトレキセートである、請求項7記載の方法。
【請求項12】
第1の結合メンバーがヒルジンであり、第2の結合メンバーがトロンビンである、請求項7記載の方法。
【請求項13】
第1の結合メンバーがトロンビンであり、第2の結合メンバーがヒルジンである、請求項7記載の方法。
【請求項14】
第1の結合メンバーが抗原であり、第2の結合メンバーが抗体である、請求項7記載の方法。
【請求項15】
第2の結合メンバーが活性な薬剤に直接または間接的に連結している、請求項7記載の方法。
【請求項16】
活性な薬剤と第2の結合メンバーとの間接的連結が、第2の結合メンバーと活性な薬剤に直接連結する少なくとも1つのさらなる結合メンバーとの間のさらなる結合相互作用による、請求項16記載の方法。
【請求項17】
第1の結合メンバーがビオチンであり、第2の結合メンバーがアビジンおよびストレプトアビジンから選択され、第2の結合メンバーが、アビジンまたはストレプトアビジンと活性な薬剤に直接連結する少なくとも1つのさらなるビオチン部分との間のさらなる結合相互作用によって活性な薬剤に間接的に結合される、請求項7記載の方法。
【請求項18】
系が、
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
酵素に連結した第2の結合メンバーを含む第2の成分と、
酵素の基質とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
酵素の基質が酵素によって活性な薬剤に変換されるプロエージェントである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
プロエージェントがプロドラッグである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
活性な薬剤が、治療薬または診断薬である、請求項1、3、7、または19のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
治療薬が、放射性ヌクレオチド、化学療法薬、細胞毒素、凝固剤、成長因子、サイトカイン、細菌、植物、および真菌の内毒素からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
放射性ヌクレオチドが、3H、11C、14C、15O、13N、32P、33P、35S、18F、125I、127I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re、188Re、および99mTcからなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
化学療法薬が、アドリアマイシン、タキソール、フルオロウラシル、メルファラン、シスプラチン、インターフェロンα、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンギオインヒビン、TNP-470、ペントサンポリサルフェート、血小板第4因子、アンギオスタチン、LM-609、SU-101、CM-101、テクガラン、サリドマイド、SP-PG、アルキル化剤、ニトロソ尿素、アルキルスルホネート、トリアジン、エチレニミン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、シトシンアラビノシド、プリン類似体、抗腫瘍抗生物質、アントラサイクリン、ホルモンおよびホルモンアンタゴニスト、ブレキナー、ならびにCOMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキセート、およびプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびデキサメタゾン)、およびPROMACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキセート(w/ロイコビンレスキュー)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)を含む投薬計画からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
細胞毒素がリシンである、請求項22記載の方法。
【請求項26】
細菌、植物、および真菌の内毒素が、リボゾーム不活性化タンパク質、ジフテリア毒素、シュードモナス内毒素、A鎖毒素、α-サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、およびリボヌクレアーゼからなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項27】
診断薬が造影剤である、請求項21記載の方法。
【請求項28】
診断薬が、蛍光標識、放射性ヌクレオチド、常磁性イオン、X線造影剤、化学発光標識、または二次的な酵素工程または結合工程によって検出可能な標識からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項29】
蛍光標識が、Cy(商標)5.5およびフルオレセインから選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
放射性ヌクレオチドが、3H、11C、14C、15O、13N、32P、33P、35S、18F、125I、127I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re、188Re、および99mTcからなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
常磁性イオンが、クロム(III)、ガドリニウム(III)、鉄(II)、鉄(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、マンガン(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、イットリウム(III)、サマリウム(III)、およびジスプロシウム(III)からなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項32】
常磁性イオンがガドリニウム(III)である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
X線造影剤が、金(III)、鉛(II)、ランタン(III)、およびビスマス(III)からなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項34】
活性な薬剤が、薬剤の送達用の賦形剤中に存在する、請求項21記載の方法。
【請求項35】
活性な薬剤用の賦形剤が、リポソームである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
アルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物がアポトーシス細胞を標的化する、請求項1記載の方法。
【請求項37】
アルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物が、式(I):
A-(L-Y)p (I)
(式中、Aが少なくとも1つの突出基を含み、Lが任意の適切なリンカーおよび/またはスペーサー基を含み、Yが少なくとも1つのアルゼノキシドまたはアルゼノキシドの等価物を含み、pが1〜10の整数である)である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
AとLを合わせた総炭素原子数が6を超える、請求項37記載の方法。
【請求項39】
Aが、天然、非天然、および合成のアミノ酸、親水性アミン、ペプチド、ポリペプチド、オリゴ糖、およびチオール含有タンパク質、またはその組み合わせからなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項40】
Aが、グルタチオン、グルコサミン、システイニルグリシン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、およびアルギニンからなる群より選択され、各硫黄含有化合物の硫黄原子が選択的に酸化されてスルホキシドまたはスルホンを形成する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
Aがグルタチオンである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
pが1〜5の整数である、請求項37記載の方法。
【請求項43】
Lが、式(XBX')nB'(式中、nが0〜20、0〜15、0〜10、および0〜5からなる群より選択される整数である)に対応する、請求項37記載の方法。
【請求項44】
式(XBX')nB'が、(式中、
Xが、-NR、-S(O)-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、および-P(O)(R1)O-からなる群より選択されるか、存在せず、
Bが、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、ヘテロアリーレン、およびC2〜C10アシルからなる群より選択され、
X'が、-NR-、-O-、-S-、-Se-、-S-S-、S(O)-、-OS(O)-、OS(O)O-、-OS(O)2、-OS(O)2O-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-OP(O)(R1)-、-OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、-P(O)(R1)O-、および

からなる群より選択されるか、存在せず、EがO、S、Se、NR、またはN(R)2、であり、nが0、1、または2であり、
B'が、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびヘテロアリーレンからなる群より選択されるか、存在せず、
各Rが、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、OR2、およびC2〜C10アシルからなる群より選択され、
R'が、Rと同一であるか、2つのR'が窒素原子と結合した場合に5員環または6員環の飽和複素環または不飽和複素環を形成し、
各R1が、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より選択され、
各R2が、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、および-C(O)R5からなる群より選択され、
各R5が、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より選択され、
Bおよび/またはB'がそれぞれアリーレンである場合、各アリーレン環(アルゼノキシドまたはアルゼノキシドの等価物を含む)に直接結合する置換基が、パラ、メタ、またはオルソからなる群より選択される関係にあり、
各アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアシルが、選択的に、独立して、水素、ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルゼノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'’)2、-NRC(O)(CH2mQ、-C(O)R5

に置換され、R、R1、およびR5が、上記定義の通りであり、
R2aが、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R42、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され、
各R3が、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、およびN(R)2からなる群より選択され、
各R4が、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より選択され、
R6が、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され、
R'’が、Rと同一であるか、2つのR'’がN原子と結合して飽和、不飽和、または芳香族の複素環系を形成することができ、
Qが、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され、Q1が、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され、
mが1〜5である)である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
化合物が、式IV:

の4-(N-(S-グルタチオニルアセチル)アミノ)-フェニルアルゼノキシド(GSAO)である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
(a)系の第1の成分を投与する工程と、
(b)選択的に一定期間待つ工程と、
(c)系の第2の成分を投与する工程とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項47】
(a)系の第1の成分を投与する工程と、
(b)選択的に一定期間待つ工程と、
(c)系の第2の成分を投与する工程と、
(d)選択的にさらに一定期間待つ工程と、
(e)活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)に連結したさらなる結合メンバーを投与する工程とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項48】
期間が、約1時間〜約48時間、約3時間〜約36時間、約6時間〜約24時間、および約18時間からなる群より選択される、請求項46または請求項47記載の方法。
【請求項49】
活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤に連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分を含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための系。
【請求項50】
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤である第2の結合メンバーを含む第2の成分とを含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための系。
【請求項51】
第1の結合メンバーが酵素であり、第2の結合メンバーが酵素の基質である、請求項50記載の系。
【請求項52】
酵素の基質が酵素によって活性な薬剤に変換されるプロエージェントである、請求項51記載の系。
【請求項53】
プロエージェントが酵素によって活性な薬物に変換されるプロドラッグである、請求項52記載の系。
【請求項54】
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
少なくとも1つの活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)に連結した第2の結合メンバーを含む第2の成分とを含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための系。
【請求項55】
第2の結合メンバーが、薬剤に直接連結している、請求項51記載の系。
【請求項56】
第2の結合メンバーが、薬剤に間接的に連結している、請求項51記載の系。
【請求項57】
薬剤と第2の結合メンバーとの間接的連結が、第2の結合メンバーと薬剤に直接連結する少なくとも1つのさらなる結合メンバーとの間のさらなる結合相互作用による、請求項56記載の系。
【請求項58】
第1の結合メンバーがビオチンであり、第2の結合メンバーがアビジンおよびストレプトアビジンから選択される、請求項54記載の系。
【請求項59】
第1の結合メンバーがアビジンおよびストレプトアビジンから選択され、第2の結合メンバーがビオチンである、請求項54記載の系。
【請求項60】
第1の結合メンバーがビオチンであり、第2の結合メンバーがアビジンおよびストレプトアビジンから選択され、第2の結合メンバーが、アビジンまたはストレプトアビジンと活性な薬剤に直接連結する少なくとも1つのさらなるビオチン部分との間のさらなる結合相互作用によって活性な薬剤に間接的に結合される、請求項57記載の系。
【請求項61】
第1の結合メンバーがメトトレキセートであり、第2の結合メンバーがジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)である、請求項54記載の系。
【請求項62】
第1の結合メンバーがジヒドロ葉酸還元酵素であり、第2の結合メンバーがメトトレキセートである、請求項54記載の系。
【請求項63】
第1の結合メンバーがヒルジンであり、第2の結合メンバーがトロンビンである、請求項54記載の系。
【請求項64】
第1の結合メンバーがトロンビンであり、第2の結合メンバーがヒルジンである、請求項54記載の系。
【請求項65】
第1の結合メンバーが抗原であり、第2の結合メンバーが抗体である、請求項54記載の系。
【請求項66】
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
酵素に連結した第2の結合成分を含む第2の成分と、
酵素の基質とを含む系。
【請求項67】
酵素の基質が酵素によって活性な薬剤に変換されるプロエージェントである、請求項66記載の系。
【請求項68】
プロエージェントがプロドラッグである、請求項67記載の系。
【請求項69】
第1の成分が切断可能なリンカーを介して薬剤に連結する、請求項49、50、54、または67のいずれか一項記載の系。
【請求項70】
活性な薬剤が治療薬または診断薬である、請求項49、50、54、または67のいずれか一項記載の系。
【請求項71】
治療薬が、放射性ヌクレオチド、化学療法薬、細胞毒素、凝固剤、成長因子、サイトカイン、細菌、植物、および真菌の内毒素からなる群より選択される、請求項70記載の系。
【請求項72】
放射性ヌクレオチドが、3H、11C、14C、15O、13N、32P、33P、35S、18F、125I、127I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re、188Re、および99mTcからなる群より選択される、請求項71記載の系。
【請求項73】
化学療法薬が、アドリアマイシン、タキソール、フルオロウラシル、メルファラン、シスプラチン、インターフェロンα、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンギオインヒビン、TNP-470、ペントサンポリサルフェート、血小板第4因子、アンギオスタチン、LM-609、SU-101、CM-101、テクガラン、サリドマイド、SP-PG、アルキル化剤、ニトロソ尿素、アルキルスルホネート、トリアジン、エチレニミン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、シトシンアラビノシド、プリン類似体、抗腫瘍抗生物質、アントラサイクリン、ホルモンおよびホルモンアンタゴニスト、ブレキナー、ならびにCOMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキセート、およびプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキセート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびデキサメタゾン)、およびPROMACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキセート(w/ロイコビンレスキュー)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロエタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン)を含む投薬計画からなる群より選択される、請求項71記載の系。
【請求項74】
細胞毒素がリシンである、請求項72記載の系。
【請求項75】
細菌、植物、および真菌の内毒素が、リボゾーム不活性化タンパク質、ジフテリア毒素、シュードモナス内毒素、A鎖毒素、α-サルシン、アスペルギリン、レストリクトシン、およびリボヌクレアーゼからなる群より選択される、請求項72記載の系。
【請求項76】
診断薬が造影剤である、請求項71記載の系。
【請求項77】
診断薬が、蛍光標識、放射性ヌクレオチド、常磁性イオン、X線造影剤、化学発光標識、または二次的な酵素工程または結合工程によって検出可能な標識からなる群より選択される、請求項71記載の系。
【請求項78】
蛍光標識が、Cy(商標)5.5、フルオレセイン、および8-アミノナフタレン1,3,6-トリスルホネート(ANTS)から選択される、請求項77記載の系。
【請求項79】
放射性ヌクレオチドが、3H、11C、14C、15O、13N、32P、33P、35S、18F、125I、127I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Re、188Re、および99mTcからなる群より選択される、請求項77記載の系。
【請求項80】
常磁性イオンが、クロム(III)、ガドリニウム(III)、鉄(II)、鉄(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、マンガン(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、イットリウム(III)、サマリウム(III)、およびジスプロシウム(III)からなる群より選択される、請求項77記載の系。
【請求項81】
常磁性イオンがガドリニウム(III)である、請求項80記載の系。
【請求項82】
X線造影剤が、金(III)、鉛(II)、ランタン(III)、およびビスマス(III)からなる群より選択される、請求項77記載の系。
【請求項83】
活性な薬剤が、薬剤の送達用の賦形剤中に存在する、請求項70記載の系。
【請求項84】
活性な薬剤用の賦形剤が、リポソームである、請求項83記載の系。
【請求項85】
アルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物がアポトーシス細胞を標的化する、請求項49、50、54、または67のいずれか一項記載の系。
【請求項86】
アルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物が、式(I):
A-(L-Y)p (I)
(式中、Aが少なくとも1つの突出基を含み、Lが任意の適切なリンカーおよび/またはスペーサー基を含み、Yが少なくとも1つのアルゼノキシドまたはアルゼノキシドの等価物を含み、pが1〜10の整数である)である、請求項85記載の系。
【請求項87】
AとLを合わせた総炭素原子数が6を超える、請求項86記載の系。
【請求項88】
Aが、天然、非天然、および合成のアミノ酸、親水性アミン、ペプチド、ポリペプチド、オリゴ糖、およびチオール含有タンパク質、またはその組み合わせからなる群より選択される、請求項86記載の系。
【請求項89】
Aが、グルタチオン、グルコサミン、システイニルグリシン、システイン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、およびアルギニンからなる群より選択され、各硫黄含有化合物の硫黄原子が選択的に酸化されてスルホキシドまたはスルホンを形成する、請求項88記載の系。
【請求項90】
Aがグルタチオンである、請求項86記載の系。
【請求項91】
pが1〜5の整数である、請求項86記載の系。
【請求項92】
Lが、式(XBX')nB'(式中、nが0〜20、0〜15、0〜10、および0〜5からなる群より選択される整数である)に対応する、請求項86記載の系。
【請求項93】
式(XBX')nB'が、(式中、
Xが、-NR、-S(O)-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、および-P(O)(R1)O-からなる群より選択されるか、存在せず、
Bが、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、ヘテロアリーレン、およびC2〜C10アシルからなる群より選択され、
X'が、-NR-、-O-、-S-、-Se-、-S-S-、S(O)-、-OS(O)-、OS(O)O-、-OS(O)2、-OS(O)2O-、-S(O)O-、-S(O)2-、-S(O)2O-、-OP(O)(R1)-、-OP(O)(R1)O-、-OP(O)(R1)OP(O)(R1)O-、-C(O)-、-C(S)-、-C(O)O-、C(S)O-、-C(S)S-、-P(O)(R1)-、-P(O)(R1)O-、および

からなる群より選択されるか、存在せず、EがO、S、Se、NR、またはN(R)2、であり、nが0、1、または2であり、
B'が、C1〜C10アルキレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C10アルキニレン、C3〜C10シクロアルキレン、C5〜C10シクロアルケニレン、C3〜C10ヘテロシクロアルキレン、C5〜C10ヘテロシクロアルケニレン、C6〜C12アリーレン、およびヘテロアリーレンからなる群より選択されるか、存在せず、
各Rが、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、OR2、およびC2〜C10アシルからなる群より選択され、
R'が、Rと同一であるか、2つのR'が窒素原子と結合した場合に5員環または6員環の飽和複素環または不飽和複素環を形成し、
各R1が、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、ハロ、OR2、およびN(R)2からなる群より選択され、
各R2が、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、および-C(O)R5からなる群より選択され、
各R5が、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、OH、SH、およびN(R)2からなる群より選択され、
Bおよび/またはB'がそれぞれアリーレンである場合、各アリーレン環(アルゼノキシドまたはアルゼノキシドの等価物を含む)に直接結合する置換基が、パラ、メタ、またはオルソからなる群より選択される関係にあり、
各アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルケニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、およびアシルが、選択的に、独立して、水素、ハロゲン、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、OR2a、SR6、ニトロ、アルゼノキシド、-S(O)R3、-OS(O)R3、-S(O)2R3、-OS(O)2R3、-P(O)R4R4、-OP(O)R4R4、-N(R'’)2、-NRC(O)(CH2mQ、-C(O)R5

に置換され、R、R1、およびR5が、上記定義の通りであり、
R2aが、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C6〜C12アリール、-S(O)R3、-S(O)2R3、-P(O)(R42、N(R)2、および-C(O)R5からなる群より選択され、
各R3が、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、およびN(R)2からなる群より選択され、
各R4が、独立して、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルコキシ、C3〜C10アルケニルオキシ、C3〜C10アルキニルオキシ、C3〜C10シクロアルキルオキシ、C5〜C10シクロアルケニルオキシ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルオキシ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルオキシ、C6〜C12アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、ハロ、およびN(R)2からなる群より選択され、
R6が、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C3〜C10シクロアルキル、C5〜C10シクロアルケニル、C3〜C10ヘテロシクロアルキル、C5〜C10ヘテロシクロアルケニル、C6〜C12アリール、ヘテロアリール、C1〜C10アルキルチオ、C3〜C10アルケニルチオ、C3〜C10アルキニルチオ、C3〜C10シクロアルキルチオ、C5〜C10シクロアルケニルチオ、C3〜C10ヘテロシクロアルキルチオ、C5〜C10ヘテロシクロアルケニルチオ、C6〜C12アリールチオ、ヘテロアリールチオ、-S(O)R3、-S(O)2R3、および-C(O)R5からなる群より選択され、
R'’が、Rと同一であるか、2つのR'’がN原子と結合して飽和、不飽和、または芳香族の複素環系を形成することができ、
Qが、ハロゲンおよび-OS(O)2Q1から選択され、Q1が、C1〜C4アルキル、C1〜C4ペルフルオロアルキル、フェニル、p-メチルフェニルから選択され、
mが1〜5である)である、請求項92記載の系。
【請求項94】
化合物が、式IV:

の4-(N-(S-グルタチオニルアセチル)アミノ)-フェニルアルゼノキシド(GSAO)である、請求項93記載の系。
【請求項95】
アポトーシス細胞を選択的に標的化するアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および治療薬を含む治療有効量の系を脊椎動物に投与する工程を含む、治療および/または予防を必要とする脊椎動物の疾患を治療および/または予防する方法。
【請求項96】
疾患が、血管形成依存性疾患、細胞増殖疾患、炎症性障害、自己免疫疾患、血管疾患、血栓症、癌、神経変性疾患、骨髄異形成症候群、および虚血/再灌流傷害からなる群より選択される、請求項95記載の方法。
【請求項97】
アポトーシス細胞を選択的に標的化するアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物および診断薬を含む生物学的有効量の系を脊椎動物に投与する工程と、診断薬を検出する工程とを含む、脊椎動物のアポトーシス細胞の検出および/または画像化方法。
【請求項98】
選択的に、治療的および/または診断的に許容される担体および/または希釈剤とともに、
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
活性な薬剤または活性な薬剤にすることができる薬剤である第2の結合メンバーを含む第2の成分とを含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための治療および/または診断のキット。
【請求項99】
選択的に、治療的および/または診断的に許容される担体および/または希釈剤とともに、
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)に連結した第2の結合メンバーを含む第2の成分を含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための治療および/または診断のキット。
【請求項100】
選択的に、治療的および/または診断的に許容される担体および/または希釈剤とともに、
第1の結合メンバーに連結したアルゼノキシド(またはアルゼノキシドの等価物)化合物を含む第1の成分と、
第2の結合メンバーを含む第2の成分と、
活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)に連結した第3の結合メンバーを含む第3の成分を含む、脊椎動物のアポトーシス細胞に活性な薬剤(または活性な薬剤にすることができる薬剤)を選択的に標的化するための治療および/または診断のキット。
【請求項101】
化合物がそれぞれ個別にパッケージングされている、請求項98〜100のいずれか一項記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−6467(P2011−6467A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199056(P2010−199056)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2003−541855(P2003−541855)の分割
【原出願日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【出願人】(505167794)ニューサウス イノベイションズ ピーティーワイ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】