アポトーシス細胞を選択的に標的化する方法、および、それらに用いられる低分子物質リガンド
本発明は、死プロセス、特にアポトーシスを受けた細胞、および、血液凝固の際の活性化血小板へ、化学物質を選択的に標的化する新規の方法を提供する。本発明はさらに、医療、診断剤および治療目的のための、前記方法で用いることができる化合物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、化学物質を、死プロセス、特にアポトーシスを受けた細胞、および、血液凝固の際に活性化された血小板に選択的に標的化するための新規の方法に関する。本発明はさらに、医療で用いるための、すなわち診断剤および治療目的で用いるための低分子量の化合物を提供する。
【0002】
発明の背景
無傷の真核細胞の細胞質膜(外側の膜)は、高度に組織化された構造を特徴とする。この高レベルの膜組織は、なかでも、膜を構成する特定の脂質の分子構造;膜を構成する様々な種類の脂質の比率;膜の外部層と内部層間のリン脂質の分布;および、膜タンパク質の成分によって決定される。
【0003】
高レベルの膜組織の維持は正常な細胞生理学にとって重要であるが、細胞の細胞質膜の正常な構成の実質的な乱れ(perturbations of the normal organization of the cell plasma membrane: PNOM)や変性が、死プロセスを受けた細胞で、特にアポトーシスによって、および、血液凝固の際の活性化された血小板において発生する。このような変性や乱れ(perturbation)は、形態学的なレベル(例えば、膜に突起が出現すること)と、分子レベルの両方の証拠となり得る。このような細胞死または血小板活性化の際に生じる乱れの範囲は、十分に解明されていない。このような乱れとしては、なかでも、通常は、ほぼ完全に膜二分子層の内層に限定されるアミノリン脂質、主としてホスファチジルセリン(PS)、および、ホスファチジルエタノールアミン(PE)の細胞の表面への移動、および、スフィンゴミエリン(SM)、および、ホスファチジルコリン(PC)の外葉から膜の内層への相反移動を伴う、膜リン脂質の不規則性や再分配が挙げられる。また、PNOMは、膜リン脂質の充填レベルの減少、および、膜流動性の増加に関連することも多い。
【0004】
このような変性は、テナーゼおよびプロトロンビナーゼタンパク質複合体のような、数種の凝固因子複合体のアセンブリのための、細胞表面における触媒作用のプラットフォームを作成することにおいて重要な役割を果たす。従って、PNOMは、正常な血液凝固における重要な因子を構成する際の血小板、同様に、多数の障害における異常で過剰な血液凝固の開始および/または増殖において発生する。これらの障害としては、なかでも、動脈もしくは静脈血栓症、または、血栓塞栓症が挙げられる。
【0005】
アポトーシスは、PNOMが起こるその他の主要な状況である。アポトーシスは、あらゆる真核細胞に本来備わっている、細胞の自己破壊または「自殺」の本質的なプログラムである。刺激の発生に応答して、細胞は、極めて特徴的なカスケード、すなわち、細胞の縮小現象、細胞膜での突起の出現、クロマチン凝縮および細分化、細胞の膜結合粒子のクラスター(アポトーシスの主体)への変換、その後のマクロファージによる吸収が最高潮に達すること、を受ける。PNOMは、アポトーシスにおいて普遍的な現象であり、アポトーシスのカスケードの初期に発生し、マクロファージによるアポトーシス細胞の認識および除去において重要な因子であることもわかっている。
【0006】
アネキシンVは、37kDaのタンパク質であり、アポトーシスに関連するPNOMプロセスの結果としてアポトーシス細胞の表面に出現したPSの頭部に結合することによって、アポトーシス細胞へ選択的に結合できる。しかしながら、アネキシンVは、比較的高分子量タンパク質であり、比較的複雑な合成とマーカー付着の手法を必要とする。その上、アネキシンVは、初期のアポトーシスにおける細胞の表面にしか結合せず、その段階で細胞中に蓄積させることができない。
【0007】
従って、PNOMを受けた細胞(PNOM細胞)の選択的な標的化、結合および蓄積が可能な低分子量の化合物が存在することが望ましい。このような化合物は、アポトーシス、および、血液凝固の分子イメージングにおいて、用途を有する可能性がある。また、このような化合物を、治療上有用な薬物に付着させることによって、標的化成分として機能化し、活性な薬物をPNOMを受けた細胞に特異的に標的化し、それらに結合し、そこに蓄積させ、病気の増殖巣における活性な薬物の濃度を高めることによって、有用な治療用途を有する可能性もある。
【0008】
発明の要約
本発明の一実施形態において、細胞質膜の正常な構成が乱された細胞に、化学化合物を選択的に標的化する方法が提供され、このような細胞は、死プロセス(例えばアポトーシス)を受けた細胞、および、活性化を受けた血小板から選択される。以下、このような細胞を包括的に、PNOM(perturbations of the normal organization of the cell plasma membrane: PNOM)細胞という。本方法は、細胞群中に存在する、または散在する上記細胞に選択的に化学化合物を標的化することに関する。本方法は:
(i)細胞群を、乱された膜に結合する化合物(perturbed membrane binding compound:PMBC)と称される化学化合物、または、PMBCを含む結合体と接触させる工程、を含む。PMBCは、式(I):
【0009】
【化1】
【0010】
に記載の構造によって示される化合物であり、式中、Zは、存在しないか、または、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール基、または、このような基の組み合わせで形成された環系、5、6、7、8、9または10個の原子からなる環系を示し;Xは、原子(C、N、OまたはS)を示し、ここで、これらの原子はそれぞれ、Zの意味に応じて0、1または2個の水素原子を有していてもよく;R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2基、または、W−Qbから選択され;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル、ヒドロキシアルキル、または、直鎖もしくは分岐鎖ハロアルキルを示し、ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;および、
bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり;Wが窒素の場合、2であり;または、Wが炭素原子である場合、3であり;
AおよびA’は、それぞれ独立して、以下の4種の基のいずれか一種から選択されるラジカルであり:
i)水素;
ii)SO3H、および、L−SO3H、ここで、Lは、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
iii)式IIに記載の構造:
【0011】
【化2】
【0012】
式中、R3は、水素、(CH2)p−OH、(CH2)p−SH、(CH2)p−F、または、C1、C2、C3またはC4のカルボン酸のラジカルであり、ここで、pは、1、2または3の整数であり;
R4は、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;
cおよびdはそれぞれ、0または1の整数であり;cおよびdは、同一でも異なっていてもよく;*は、式(I)の構造への付着点を示し;または、
iv)式(III)に記載の構造:
【0013】
【化3】
【0014】
式中、R5およびR6は、独立して、水素、直鎖または分岐鎖C1、C2、C3、C4、C5、C6アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、および、ハロアルキルであり;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;および、Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4もしくはC5アルキレンリンカーを意味し;*は、式(I)の構造への付着点を示し;
AまたはA’基の少なくとも1つは、水素以外であり、式(III)の構造以外であり;
それによって、化学物質を、細胞群中のPNOM細胞に選択的に標的化する工程、を含む。
【0015】
その他の本発明の実施形態において、このようなPNOM細胞を含む疑いがある細胞群中でのPNOM細胞の存在を検出する方法が提供され、本方法は、以下の工程を含む:細胞群を、PMBCまたはPMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーと接触させる工程、ここで、前記PMBCは、式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは上記で定義された通りであり;および、(ii)細胞に結合したPMBCの量を決定する工程、ここで、結合した量がコントロールより有意に高いことは、細胞群中でPNOM細胞が存在すること示す。
【0016】
その他の本発明の実施形態において、患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在を検出する方法が提供され、本方法は、以下の工程を含む:
(i)PMBCまたはPMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーを、ヒトまたは動物に投与する工程、ここで、前記PMBCは、式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは上記で定義された通りであり;および、(ii)組織中の細胞に結合したPMBCの量を決定する工程、ここで、組織中の細胞に結合した化合物の量がコントロールより有意に高いことは、前記組織が、PNOM細胞を含むことを示す。
【0017】
本発明の実施形態において、PNOM細胞は、体、臓器、組織、組織培養または体液に存在する。
【0018】
その他の本発明の実施形態において、式(V):
【0019】
【化4】
【0020】
に記載の構造によって示され、式中、Tは、−OH、−O−CH3、−O−(CH2)yCH3、NH2、N(CH3)2、−N[(CH2)3CH3]2、−N(CH3)[(CH2)2CH3]、−N(CH3)CH2CH3、または、−N(CH3)[(CH2)3CH3]であり;yは、1、2または3の整数を意味し;および、R3、R4はそれぞれ、上記で定義された通りである化合物が提供される。
【0021】
その他の本発明の実施形態において、式(VI):
【0022】
【化5】
【0023】
に記載の構造によって示され、式中、Tは上記で定義された通りであり、R4は、水素、または、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキルであり、ここで、前記F原子は、18Fまたは19Fである化合物が提供される。
【0024】
その他の本発明の実施形態において、式(VIII):
【0025】
【化6】
【0026】
に記載の構造によって示され、中、前記F原子は、18Fまたは19Fである化合物が提供される式。
【0027】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XII):
【0028】
【化7】
【0029】
に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含み、式中、Aは、SO3HまたはL−SO3Hであり、ここで、Lは、置換された、または非置換のC1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
Jは、A(上記で定義された通り)、水素、および、W−Qbから選択され;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル、ヒドロキシアルキル、または、ハロアルキルを示し;ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり、Wが窒素である場合2であり、または、Wが炭素原子である場合、3であり;
U1およびU2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい。
【0030】
上記の式(XII)で示される化合物は、置換基Jは、A’と類似であり、置換基U1およびU2は、式(I)におけるR1およびR2と類似であることから、より広範囲の式(I)の範囲に含まれるとみなすこともできる。
【0031】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XII)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0032】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XV):
【0033】
【化8】
【0034】
に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含み、式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルから選択され;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;
Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4もしくはC5アルキレンリンカーを意味し;
U1およびU2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい。
【0035】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0036】
その他の本発明の実施形態において、本発明で説明されている化合物を、PETイメージングのためのマーカーで標識する方法が提供され、本方法は:PETイメージングのためのマーカーを、上記化合物のアミンサブユニットに付着させること;および、アミンサブユニットとスルホン酸サブユニットとを、スルホンアミド結合の形成を介して連結させること、を含む。
【0037】
本発明の実施形態いくつかにおいて、PETイメージングのためのマーカーとしては、18Fが可能である。
【0038】
図面の簡単な説明
図1:抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞へのNST705の選択的な結合;フローサイトメトリー解析;図1Aおよび図1Bは、それぞれコントロール中のアポトーシス細胞群、および、抗Fasで処理した培養物へのNST705化合物の取り込みを説明するFACSドットプロットである。図1Cは、図1Aおよび1Bに示されるデータのヒストグラム解析である。
【0039】
図2:抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞へのNST703の選択的な結合;フローサイトメトリー解析;図2Aおよび図2Bは、それぞれコントロール中のアポトーシス細胞群、および、抗Fasで処理した培養物へのNST703化合物の取り込みを説明するFACSドットプロットである。図2Cは、図2Aおよび2Bに示されるデータのヒストグラム解析である。
【0040】
図3A、3B:インビボでの、細胞死を受けた腫瘍細胞へのNST705の選択的な結合を示す蛍光顕微鏡検査法;マウスのリンパ腫。
【0041】
図4:培養した抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞への、DCの選択的な結合;フローサイトメトリー解析;図4Aおよび4Bは、コントロールの未処理細胞(4A)、および、アポトーシスの誘発を受けた細胞のDCの取り込み(4B)を示すドットプロットであり;図4Cは、図4Aおよび4Bに示されるデータのフローサイトメトリー(FACS)ヒストグラム表示である。
【0042】
図5:インビボでの、DCの、細胞死を受けた腫瘍細胞への選択的な結合;B16マウス黒色腫。図5Aは、腫瘍の蛍光顕微鏡観察を示す。DCの、多数のアポトーシスを受けた腫瘍細胞への大規模な結合を観察できる;図5Bは、同じ動物の小腸組織の蛍光顕微鏡観察を示しており、生存している正常な組織に、化合物が結合していないことを示す。
【0043】
図6:インビボでの、NST730の、細胞死を受けた腫瘍細胞への選択的な結合;B16マウス黒色腫。図6Aは、腫瘍の蛍光顕微鏡観察を示す。NST730の、多数のアポトーシスを受けた腫瘍細胞への大規模な結合を観察できる。図6Bは、同じ動物の筋肉組織の蛍光顕微鏡観察を示し、生存している正常な組織に、化合物が結合していないことを示す。
【0044】
図7(A〜C):インビボで、放射線照射により誘発された細胞死を受けたマウスのリンパ腫細胞への、NST732の選択的な結合:7A:H&E染色、7B:NST732の結合;蛍光顕微鏡;7C:TUNEL染色。
【0045】
図8(A〜D):NST732による細胞死の検出、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞;コンピューター化された蛍光イメージング。
【0046】
図9(A〜B):NST730による細胞死の検出、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞。
【0047】
図10:NST601の、アポトーシスを起こしたHeLa細胞への選択的な結合;フローサイトメトリー解析;図10Aは、アポトーシス誘発の際のNST601の選択的な結合を示すドットプロットであり;図10Bは、図10Aに示されるデータのヒストグラム解析である。
【0048】
図11:抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞への、DAの選択的な結合;フローサイトメトリー解析;図11Aは、アポトーシス誘発の際の選択的な結合を示すドットプロットであり;図11Bは、図11Aに示されるデータのヒストグラム解析である。
【0049】
発明の実施形態の詳細な記述
本発明の実施形態において、細胞質膜の正常な構成が乱された細胞に選択的に結合する化合物、および、それらの使用が提供され、このような細胞は、死プロセス(例えばアポトーシス)を受けた細胞、および、活性化を受けた血小板から選択される。以下、このような細胞は、包括的に、PNOM細胞という。
【0050】
それに対して、上記化合物は、細胞質膜の正常な構成を維持している細胞(正常な細胞)にはほとんど結合しない。PNOM細胞における結合の比率は、ここで「正常な細胞」と定義される細胞質膜の正常な組織を維持している同じ組織の細胞と比較して、少なくとも30%高い。PNOM細胞は、本発明の一実施形態において、死プロセスを受けた細胞であり、その他の実施形態においては、アポトーシス細胞であり、さらに、その他の実施形態においては、活性化血小板である。本発明はさらに、PNOM細胞に選択的に結合する化合物を用いることによってPNOM細胞を検出する方法に関する。
【0051】
用語「乱された膜に結合する化合物」(pertured membrane-binding compound: PMBC)は、正常な細胞にはほとんど結合せずに、PNOM細胞を選択的に標的化する化合物を意味する。本発明に係る、PNOM細胞へのPMBCの結合は、正常な細胞への結合より少なくとも30%大きいこととする。また、本発明で用いられるPMBCという化合物は、製薬上許容できる塩、金属キレート、上記化合物の溶媒化合物および水和物、同様に、製薬上許容できる塩の溶媒化合物および水和物も含む。製薬上許容できる付加塩の例としては、無機および有機酸付加塩が挙げられる、例えば、これらに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、シュウ酸塩、および、酢酸塩が挙げられる。あるいは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのような、製薬上許容できる無機および有機塩基付加塩を用いてもよい。
【0052】
用語「PMBC結合体」または「結合体」は、PMBCが、その他の有用な化合物、例えばイメージングのためのマーカーまたは薬物に連結したものを意味する。
【0053】
用語「アルキル」または「アルキレン」は、直鎖または分岐鎖の、場合により置換されたアルキルまたはアルキレンを意味する。同様に、本発明のヒドロキシアルキルおよびフルオロアルキルはそれぞれ、直鎖でもよいし、または、分岐鎖でもよい。
【0054】
用語「アリール」は、単環式または多環式芳香族の環系を意味する。
【0055】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味し;
本発明のアルキル、アルキレン、アリール、および、アラルキルのいずれかは、1またはそれ以上のアルキル、ニトロ、ハロまたはヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0056】
本発明において、用語「を選択的に標的化する」は、PMBCのPNOM細胞への選択的な結合を意味し、すなわち、正常な細胞への結合より少なくとも30%大きい程度で、PNOM細胞へ結合することを意味する。
【0057】
本発明に係る用語「有意な量」は、PNOM細胞に結合したPMBCの量が、非PNOM細胞に結合した量より少なくとも30%高いことを意味する。その他の本発明の実施形態において、上記量は、少なくとも50%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも60%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも70%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも80%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも90%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも95%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも150%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも200%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、PNOM細胞に結合する量の5倍より大きい量であり得る。実際の量を決定する方法は、用いられるイメージング方法および器具や、試験される臓器または組織に応じて様々なものが可能である。
【0058】
用語「固体支持体」は、本明細書において、固体マトリックス、不溶性マトリックス、および、不溶性の支持体を意味する。本発明に係る固体支持体は、マイクロ微粒子、マイクロフィルターまたはマイクロキャピラリー(micro−capillara)のスタックのような多種多様な構造に形成することが可能であり、さらに、アルミナ、けいそう土、セライト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、イオン交換樹脂、シリカゲル、活性炭、アンバーライト、ダウエックス(Dowex)、オイパーギット(Eupergit)、および、エチルスルホセルロース(ethylsufoxycellulose)のような様々な材料で構成することが可能である。
【0059】
本発明の実施形態において、インビボまたはインビトロでPNOM細胞を選択的に標的化する物質の製造に、PMBCが用いられる。なかでも、PMBCを、インビボまたはインビトロでPNOM細胞を検出するための、イメージングのためのマーカーを含む物質の製造に用いてもよい。
【0060】
本発明の実施形態において、本発明の化合物を、以下の物質のいずれか一つ、または、それらの組み合わせに連結させ、それにより「PMBC結合体」または「結合体」を形成してもよい。このような連結は、直接的に、または、リンカーを介してのいずれかが可能であり、ここで、リンカーは、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキレン、5または6個の原子の芳香族、または、ヘテロ芳香環、金属キレート化剤、およびそれらの組み合わせから選択され、ここで、上記物質としては、以下のようなものが可能であり:
i.イメージングのためのマーカー、これは、色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴イメージング(MRI)、および、放射性同位体スキャン、例えば単光子放射型断層撮影法(SPECT)または陽電子放射断層撮影法(PET)の検出器から選択され;
ii.PNOM細胞の出現を示す特定の病気を、予防、回復または治療するための薬物。このような薬物としては、これらに限定されないが、以下のようなあらゆる薬物が挙げられる:(i)アポトーシス阻害剤(例えば、カスパーゼ阻害剤、抗酸化剤、Bcl−2系のモジュレーター);(ii)細胞死の活性化因子、アポトーシス誘発物質(例えば、抗ガン薬);(iii)血液凝固のモジュレーター、これは、凝固防止剤、血小板凝集阻止薬、または、血栓溶解薬から選択される。本発明の実施形態によれば、上記薬物は、抗血小板薬、ヘパリン、低分子量ヘパリン、糖タンパク質IIb/IIIaのアンタゴニスト、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、または、凝固因子の阻害剤、例えばトロンビン阻害剤、または、Xa因子阻害剤から選択してもよく;(iv)抗炎症薬、または、免疫調整薬;または、(v)また、特定の放射性原子も、十分な用量で運搬される場合、細胞毒性となり得る;
iii.固体支持体。
【0061】
本発明の実施形態において、化学化合物をPNOM細胞に選択的に標的化する方法が提供される。本方法は、以下の工程を含む:(i)細胞群を、乱された膜に結合する化合物(PMBC)と称される化学化合物、または、このようなPMBCを含む結合体と接触させる工程。前記PMBCは、式(I)に記載の構造によって示される化合物であり:
【0062】
【化9】
【0063】
式中、Zは、存在しないか、または、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール基、または、このような基の組み合わせで形成された環系、5、6、7、8、9または10個の原子からなる環系を示し;
Xは、原子(C、N、OまたはS)を示し、ここで、これらの原子はそれぞれ、Zの意味に応じて0、1または2個の水素原子を有していてもよく;
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2基、または、W−Qbから選択され;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル、ヒドロキシアルキル、または、ハロアルキルを示し、ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;および、
bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり;Wが窒素の場合、2であり;または、Wが炭素原子である場合、3であり;
AおよびA’はそれぞれ、以下の4種の基のいずれか一種から選択されるラジカルであり:
i)水素;
ii)SO3H、および、L−SO3H、ここで、Lは、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
iii)式IIに記載の構造:
【0064】
【化10】
【0065】
式中、R3は、水素、(CH2)p−OH、(CH2)p−SH、(CH2)p−F、および、C1、C2、C3またはC4のカルボン酸のラジカルから選択され、ここで、pは、1、2または3の整数であり;
R4は、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6アルキル、C1、C2、C3、C4、C5、C6ヒドロキシアルキル、または、C1、C2、C3、C4、C5、C6フルオロアルキルであり;
cおよびdはそれぞれ、0または1の整数であり;cおよびdは、同一でも異なっていてもよく;*は、式(I)の構造への付着点を示し;または、
iv)式(III)に記載の構造:
【0066】
【化11】
【0067】
式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6アルキル、ヒドロキシアルキル、および、ハロ−アルキルから選択され;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;および、Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4もしくはC5アルキレンリンカーを意味し;*は、式(I)の構造への付着点を示し;
ここで、AまたはA’基の少なくとも1つは、水素以外であり、式(III)の構造以外であり;
(ii)それによって、化学物質を、細胞群中のPNOM細胞に選択的に標的化する工程、を含む。
【0068】
本発明の実施形態において、PNOM細胞は、死プロセスを受けた細胞、アポトーシス細胞、または、活性化血小板である。
【0069】
本発明の実施形態において、PNOM細胞は、体、臓器、組織、組織培養または体液を標的化することが可能である。
【0070】
本発明の化合物の、アポトーシスを受けた細胞に選択的に結合する能力は、実施例3〜7、9〜12および15〜16、ならびに、図1〜11に示され、これらは全て、インビボおよびインビトロの条件下で、本発明の、アポトーシスを受けた細胞に結合する化合物の能力を対象としたものである。
【0071】
本発明の実施形態いくつかによれば、本発明は、PNOM細胞の検出に用いることができる。このアプローチによれば、上記で定義されたPMBCまたはPMBC結合体を含み、インビトロ、エクスビボまたはインビボのいずれかでサンプル中のPNOM細胞の検出のためのイメージングのためのマーカー、および、製薬上許容できるキャリアーを含む、組成物の使用が提供される。
【0072】
その他の本発明の実施形態において、このようなPNOM細胞を含む疑いがある細胞群中でのPNOM細胞の存在の検出方法が提供され、本方法は、以下の工程を含む:
(i)細胞群を、PMBCまたはPMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーと接触させる工程、ここで、前記PMBCは、式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは上記で定義された通りであり;および、
(ii)細胞に結合したPMBCの量を決定する工程、ここで、結合した量がコントロールより有意に高いことは、細胞群中でPNOM細胞が存在すること示す。
【0073】
その他の本発明の実施形態において、患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在を検出する方法が提供され、本方法は、以下の工程を含む:
(i)PMBCまたはPMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーを、ヒトまたは動物に投与する工程、ここで、前記PMBCは、式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは上記で定義された通りであり;および、
(ii)組織中の細胞に結合したPMBCの量を決定する工程、ここで、組織中の細胞に結合した化合物の量がコントロールより有意に高いことは、前記組織が、PNOM細胞を含むことを示す。
【0074】
本発明の実施形態において、PNOM細胞は、体、臓器、組織、組織培養または体液に存在する。
【0075】
本発明の実施形態において、用語「コントロール」は、正常な細胞に結合する化合物の量を意味する。本発明の目的のための正常な細胞は、細胞質膜の正常な組織を維持する、同じ組織または同じサンプル由来の細胞を意味する。
【0076】
用語「イメージングのためのマーカー」は、あらゆるレポーター分子を意味し、例えば、放射性核種、酵素、蛍光性の、化学発光の、または、クロモジェニック物質、基質、補因子、阻害剤、または、磁気粒子、検出可能な色を生産する酵素反応で処理できる標識、X線のためのマーカー、MRIのためのマーカー、または、例えば単光子放射型断層撮影法(SPECT)、CTスキャン、MRIまたは陽電子放射断層撮影法(PETスキャン)のような放射性同位体イメージングのためのマーカーが挙げられる。本発明のPMBCまたはPMBC結合体は、PMBCの作用を介して、マーカーを、選択的な方法でPNOM細胞に標的化することを可能にする。次に、検出可能な標識は、用いられた特異的な標識(例えば蛍光、放射発光、または、色の生産)、MRI、X線などによって、当業界既知のあらゆる方法で検出できる。用語「結合」は、PNOMを検出可能な標識に接触させる共有結合または非共有結合(例えば静電結合)を意味する。
【0077】
本発明の実施形態において、検出可能な標識としては、以下の金属同位体のいずれか:Tc、In、Cu、Ga、Xe、TlおよびRe、および、共有結合で連結された原子:123Iおよび131I(放射性同位体スキャンのため)、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、および、イッテルビウム(III)(MRIのため)、および、18F、15O、18O、11C、13C、124I、13Nおよび75Br(陽電子放射断層撮影法(PET)スキャンのため)が可能である。
【0078】
本発明の実施形態において、PMBCまたはPMBC結合体は、PETスキャンによるアポトーシスまたは血餅の臨床的なイメージングを目的とする。このような場合において、PMBCまたはPMBC結合体は、本発明の実施形態において、PETイメージング、本発明の実施形態いくつかにおいては、例えば18F原子(直接的に、または、上記で定義されたリンカーを介してのいずれかでPMBCに連結させる)のイメージングのためのマーカーを含んでもよい。
【0079】
PETのための放射標識は、比較的短い半減期(例えば、18Fで115分間)を有する場合が多いため、放射性同位体の付着は、診断剤化合物を患者に投与する直前に、合成の最後の工程として行われることが多い。従って、PMBC−PET前駆体(ここで、PMBCは、イメージングの前の最終工程で18Fで置換され得る成分を含むか、またはそれらを付着させてある)を合成することが望ましい場合がある。本発明の実施形態において、上記成分は、ヒドロキシル基、ニトロ基、または、臭素または塩素のようなハロゲン原子である。このようなPMBC−PET前駆体もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0080】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(IV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0081】
【化12】
【0082】
式中、R2、R3およびR4は、式Iで定義された通りである。
【0083】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(IV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含み、式中、R2、R3およびR4は、上記で式Iにおいて定義された通りである。
【0084】
その他の本発明の実施形態において、式(V)に記載の構造によって示される化合物が提供される:
【0085】
【化13】
【0086】
式中、Tは、−OH、−O−CH3、−O−(CH2)yCH3、NH2、N(CH3)2、−N[(CH2)3CH3]2、−N(CH3)[(CH2)2CH3]、−N(CH3)CH2CH3、または、−N(CH3)[(CH2)3CH3]であり;yは、1、2または3の整数を意味し;および、R3、R4はそれぞれ、上記で定義された通りである。
【0087】
その他の本発明の実施形態において、式(VI)に記載の構造によって示される化合物が提供される:
【0088】
【化14】
【0089】
式中、Tは上記で定義された通りであり、R4は、水素、または、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキルであり、ここで、前記F原子は、18Fまたは19F、または、同位体の混合物である。
【0090】
その他の本発明の実施形態において、式(VII)に記載の構造によって示される、NST730と称される化合物が提供される:
【0091】
【化15】
【0092】
式中、前記F原子は、18Fまたは19F、または、同位体の混合物である。
【0093】
その他の実施形態において、式(VIII)に記載の構造によって示される、NST732と称される化合物が提供される:
【0094】
【化16】
【0095】
式中、前記F原子は、18Fまたは19F、または、同位体の混合物である。
【0096】
その他の実施形態において、式(IX)に記載の構造によって示される、NST705と称される化合物が提供される:
【0097】
【化17】
【0098】
その他の実施形態において、式(X)に記載の構造によって示される、NST703と称される化合物が提供される:
【0099】
【化18】
【0100】
その他の実施形態において、式(XI)に記載の構造によって示される化合物が提供される:
【0101】
【化19】
【0102】
式中、Eは、水素;C1、C2、C3またはC4のアルキル;C1、C2、C3またはC4フルオロ−アルキル;または、C1、C2、C3またはC4ヒドロキシアルキルであり;pは、1または2の整数を意味する。
【0103】
Eが水素であり、pが1の場合、上記化合物は、ダンシルシステイン(DC)である。留意すべきことは、DCは、当業界で既知の化合物である。しかしながら、それを、選択的にPNOM細胞に結合するPMBCとしての使用、および、インビトロまたはインビボでPNOM細胞を検出するための使用は新規である。
【0104】
その他の本発明の実施形態において、式XIに記載の構造で示され、式中、Eは、C1、C2、C3またはC4のアルキル;C1、C2、C3またはC4のフルオロアルキル;および、C1、C2、C3またはC4ヒドロキシアルキルから選択され、pは1または2である化合物が提供される。
【0105】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XII)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0106】
【化20】
【0107】
式中、Aは、SO3HまたはL−SO3Hであり、ここで、Lは、置換された、または非置換のC1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
Jは、A(上記で定義された通り)、水素、および、W−Qbから選択され;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル、ヒドロキシアルキル、または、ハロアルキルを示し;ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり、Wが窒素である場合2であり、または、Wが炭素原子である場合、3であり;
U1およびU2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ハロ−アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい。
【0108】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XII)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0109】
その他の本発明の実施形態において、式(XII)に記載の構造で示され、式中、U1またはU2のいずれかは、フッ素、および、C1、C2、C3またはC4のフルオロアルキルから選択され、前記F原子は、18Fまたは19Fのいずれか、または、同位体の混合物である化合物が提供される。
【0110】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XIII)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0111】
【化21】
【0112】
式中、nは、1、2、3、4、5または6整数を意味し、mは、0、1、2または3の整数を意味し、Q’は、水素、−OH または −Fであり;Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味する。
【0113】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中で、PNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、それらに連結した、式(XIII)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0114】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XIV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0115】
【化22】
【0116】
式中、nは、1、2、3、4、5または6整数を意味し、mは、0、1、2または3の整数を意味し、Q’は、水素、−OHまたは−Fを意味する。
【0117】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XIV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0118】
その他の実施形態において、式(XIV)に記載の構造で示され、式中、Q’がFであり、18Fまたは19Fのいずれか、または、同位体の混合物である化合物が提供される。mが0であり、nが4であり、Q’が水素である場合、上記化合物は、NST601と称される。
【0119】
mが0であり、nが3であり、Q’がヒドロキシルである場合、上記化合物は、NST602と称される。
【0120】
mが0であり、nが4であり、Q’がフッ素である場合、上記化合物は、NST603と称される。
【0121】
mが0であり、nが1であり、Q’が水素である場合、上記化合物は、ダンシル酸(dansylic acid,DA)である。ダンシル酸は、当業界において既知の化合物であるが、本発明における、それらのPNOM細胞を選択的に標的化する化合物としての使用、および、インビトロまたはインビボのいずれかにおけるPNOM細胞の検出のための使用は、新規である。
【0122】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0123】
【化23】
【0124】
式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルから選択され;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;
Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4もしくはC5アルキレンリンカーを意味し;
U1およびU2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい。
【0125】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0126】
その他の実施形態において、式(XV)に記載の構造で示され、式中、U1またはU2のいずれかは、フッ素、および、C1、C2、C3またはC4のフルオロアルキルから選択され、前記F原子は、18Fまたは19Fのいずれか、または、同位体の混合物である化合物が提供される。
【0127】
その他の実施形態において、が提供される PNOM細胞を選択的に標的化する方法であり、本方法は、式(XVI)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0128】
【化24】
【0129】
式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルから選択され;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;U1およびU2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい。
【0130】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XVI)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0131】
その他の実施形態において、式(XVI)に記載の構造によって示される化合物が提供され、式中、R5は、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;R6は、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;および、U1またはU2のいずれかは、水素以外である。
【0132】
U基が両方とも水素原子であり、R5がブチルであり、R6が水素である場合、その化合物は、NST650と称される。
【0133】
U基の一方がフッ素であり、F18またはF19のいずれかであり、R5がブチルである、および、R6が水素である場合、上記化合物は、NST651と称される。
【0134】
U基が両方とも水素原子であり、R5がブチルであり、R6がメチルである場合、上記化合物は、NST652と称される。
【0135】
U基の一方がフッ素であり、F18またはF19のいずれかであり、R5がブチルであり、R6がメチルである場合、上記化合物は、NST653と称される。
【0136】
U基が両方とも水素原子であり、R5が水素であり、R6がブチルである場合、上記化合物は、NST654と称される。
【0137】
U基の一方がフッ素であり、F18またはF19のいずれかであり、R5が水素であり、R6がブチルである場合、上記化合物は、NST655と称される。
【0138】
その他の実施形態において、上述の工程を含む、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれかに記載の構造によって示される化合物を用いることによって、化合物をPNOM細胞に選択的に標的化する方法が提供される。
【0139】
その他の実施形態において、上述の工程を含む、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つに記載の構造によって示される化合物を用いて、細胞群中でPNOM細胞を検出する方法が提供される。
【0140】
その他の実施形態において、上述の工程を含む、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つに記載の構造によって示される化合物を用いて、患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在をイメージングによって検出する方法が提供される。
【0141】
その他の実施形態において、化合物をPNOM細胞に選択的に標的化するための、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれかに記載の構造によって示される化合物の使用が提供される。
【0142】
その他の実施形態において、PNOM細胞を検出するための、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれかに記載の構造によって示される化合物の使用が提供される。
【0143】
その他の実施形態において、患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在をイメージングによって検出するための、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれかに記載の構造によって示される化合物が提供される。
【0144】
ある実施形態において、本発明は、試験される被検体の脳中のPNOM細胞を検出する方法を提供し、本方法は、以下を含む:(i)式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つに記載の構造に従った化合物を、試験される被検体に投与すること、ここで、前記化合物は、イメージングのためのマーカー、または、標識された金属キレートを含むか、または、それらに連結している;および、(ii)脳中の細胞に結合した化合物の量を決定すること、ここで、細胞に結合した化合物が著しい量であれば、それがPNOM細胞であることを示す。本発明のPMBCの、脳中のPNOM細胞を検出する能力は、実施例11および12、ならびに、図8および9で示される。
【0145】
その他の実施形態において、本発明は、試験される被検体の腫瘍中で、死プロセスを受けた細胞を検出する方法を提供し、本方法は、以下を含む:化合物または前記化合物を含む結合体、および、イメージングのためのマーカーを、試験される被検体に投与すること、ここで、前記化合物は、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つに記載の構造によって示される;および、本発明の実施形態に係る試験される被検体をイメージングすること。このようなPMBCの能力は、異なるマウスのガン、例えばリンパ腫や黒色腫(実施例および図3、5、6および7を参照)で示される。
【0146】
本発明の実施形態いくつかにおいて、固体支持体、イメージングのためのマーカー、または、治療薬物から選択される構成要素に、直接的に、または、リンカーYを介してのいずれかで連結された本発明において提供される化合物のいずれかを含む物質が提供され、ここで、リンカーYは、C1、C2、C3、C4、C5およびC6アルキレン;5〜6個の原子の芳香族、または、ヘテロ芳香環、ここで、前記ヘテロ芳香環のヘテロ原子は、N、OまたはSであり;金属キレート化剤、および、それらの組み合わせ、から選択される。
【0147】
その他の本発明の実施形態において、PETイメージングのための放射性マーカー(前記マーカーは、一実施形態において、これらに限定されないが、18F原子であり得る)を、式Iに記載の構造を有する本発明のPMBC(式中、Aは、式IIに記載の構造を有する)に付着させる方法が提供される。PMBCは、以下のスキームで示される2つのサブユニットからなるとみなすことができる:
【0148】
【化25】
【0149】
このような場合、PETイメージングのためのマーカーの上記化合物への付着は、以下の工程を含んでもよい:(i) マーカー(例えば18F原子)を、PMBCのアミンサブユニットに付着させること;および、(ii)それに続き、その放射標識したアミンサブユニットを、スルホンアミド結合の形成を介してスルホン酸サブユニットに連結させること。
【0150】
その他の本発明の実施形態において、PMBCをPETイメージングのためのマーカー(一実施形態において、これらに限定されないが、18Fであり得る)で標識する方法は、アミンサブユニットおよび/またはスルホン酸サブユニットの官能基を適切な保護基で保護する工程をさらに含む。その他の実施形態において、保護基は、PETイメージングのためのマーカーを付着させる工程、および/または、アミンサブユニットとスルホン酸サブユニットとを連結させる工程の後に除去される。その他の実施形態において、本方法は、当業者既知のあらゆる方法によって、生成物を精製する最終工程をさらに含む。
【0151】
本発明の実施形態において、イメージングのためのマーカーが金属原子(例えばGdまたは99mTc)である場合、PMBC結合体は、金属キレート化剤を含む。本発明の実施形態において、キレート化剤の原子を配位させる金属は、窒素、硫黄および酸素原子から選択される。その他の本発明の実施形態において、キレート化剤は、ジアミンジチオール、モノアミン−モノアミド−ビスチオール(MAMA)、トリアミド−モノチオール、および、モノアミン−ジアミド−モノチオールから選択される。
【0152】
このような場合、PMBC結合体前駆体(金属原子での錯化の前にキレート化剤に付着させたPMBC)と、その金属原子を含む複合体の両方は、本発明の範囲に含まれる。
【0153】
PMBCまたはPMBC結合体中に含まれるイメージングのためのマーカーが蛍光を発する成分である場合、その成分としては、直接的に、または、上記で定義されたリンカーを介してのいずれかでPMBCに連結した5−(ジメチルアミノ) ナフタレン−1−スルホニルアミド(ダンシル−アミド)基が可能である。
【0154】
本発明の化合物および本方法を、PNOM細胞の出現を特徴とする多種多様の生理学的条件、病的状態、病気または障害に関する、検出、診断、および、製薬的に有用な薬物をPNOM細胞の増殖巣に標的化するために用いてもよい。
【0155】
PNOM細胞を特徴とする医学的な障害の例は、これらに限定されないが、以下の通りであり:
過剰なアポトーシスの出現を特徴とする病気、例えば、変性性の障害、神経変性障害(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病)、AIDS、骨髄異形成症候群、虚血性または毒性の発作、移植による拒絶反応の際の移植細胞の損失; 腫瘍、および、特に極めて悪性の/高悪性度の腫瘍もまた、過剰な組織の増殖に加えて、促進されたアポトーシスを特徴とすることが多い。このような実施例によって、医学的な障害は、中枢神経系腫瘍、乳ガン、肝臓ガン、肺ガン、リンパ腫または黒色腫のようなガンが挙げられる。
【0156】
過剰な血液凝固を示す病気:これらの病気としては、なかでも、動脈または静脈血栓症、血栓塞栓症、例えば、心筋梗塞、脳卒中、深在静脈血栓症、汎発性血管内凝固(DIC)、血小板減少性血栓性紫斑病(TTP)、鎌状赤血球症、サラセミア、抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデスが挙げられる。
【0157】
免疫介在性の原因論または病因に関連する炎症性の障害および/または疾患、自己免疫性の障害、例えば抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデス、結合織疾患、例えばリウマチ様関節炎、強皮症;甲状腺炎;外皮の障害、例えば天疱瘡または結節性紅斑;自己免疫性の血液障害;自己免疫性の神経疾患、例えば重症筋無力症;多発性硬化症;炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎;血管炎。
【0158】
アテローム斑、特に不安定な、易損性の、かつ破裂しやすい斑もまた、PNOM細胞を特徴とし、例えばアポトーシス性のマクロファージ、アポトーシス性の平滑筋細胞、アポトーシス性の内皮細胞および活性化血小板が挙げられる。
【0159】
ガンに関連する病的状態を検出する本発明の化合物の能力は、DCの、マウスで誘発された腫瘍におけるアポトーシス細胞への標的化を示す実施例7で示される。
【0160】
また、関連する病気の重症度を評価するための検出方法や、被検体の治療剤への応答をモニターするための検出方法を行ってもよい。このようなモニタリングに関する例は、抗ガン治療への応答の評価である。実施例5からはっきり観察されるように、本発明の化合物は、リンパ腫細胞の化学療法によって誘発されたアポトーシスを検出できる。ほとんどの抗腫瘍治療、化学療法または放射線治療は、アポトーシスの誘発によってそれらの作用を発揮するため、腫瘍細胞の治療によって誘発されたアポトーシスのPMBCによる検出は、治療の直後で、腫瘍の減少が起こる前の腫瘍の抗腫瘍剤への感受性の程度について情報を与えることができるので、実質的に、抗ガン治療の投与時間と、その有効性を適正に評価する時点との時間差を短くする。その上、このようなモニタリングは、非侵襲的に、および定量的に行うことができ、ガン治療中に定期的に繰り返すことができるので、腫瘍の抗ガン治療に対する応答の時間的プロファイルに関する有用なデータを提供できる。
【0161】
加えて、抗ガン治療の悪影響をモニターするのに検出を用いてもよい。このような悪影響の大部分は、正常な、ただし感受性の高い細胞(例えば胃腸の上皮または骨髄の細網内皮系の細胞)の有害な処理によって誘発されたアポトーシスによる。このような組織でのPMBCまたはPMBC結合体によるアポトーシスを検出することにより、このような有害な組織の損傷の初期検出、および、治療プロトコールのよりよい最適化を可能にする場合がある。
【0162】
加えて、検出方法は、腫瘍中にもともと存在するアポトーシスの量、すなわち、腫瘍中で生じる自発的なアポトーシスのレベルの特徴付けを目的としてもよい。アポトーシスの荷重(load)は、腫瘍の悪性度のレベルと関連することが多いため、本発明の方法は、腫瘍の特徴付けに関する有用な情報を提供することが可能である。また、検出方法は、転移中のアポトーシスを検出することによって転移の検出を支援することも可能である。
【0163】
同様に、移植片拒絶反応の際の細胞の損失において、PMBCまたはPMBC結合体によって検出可能と思われるアポトーシスが主要な役割を果たすため、本発明のPMBCまたはPMBC結合体は、臓器移植後に、移植片の生存をモニターすることにおいて有用な場合がある。
【0164】
加えて、検出アプローチは、細胞保護的な治療に対する応答をモニターするのに用いてもよく、従って、ある程度の細胞死の評価を可能にすることによって、様々な病気(例えば上記で列挙したようなもの)における細胞の損失を阻害できる薬物のスクリーニングと開発に用いることができる。
【0165】
また、上記検出は、アテローム斑の検出に有用である場合もあり、なぜなら、このようなプラークの不安定化は、プラークを、易損性で、破裂、血栓症および塞栓形成を起こしやすくし、アポトーシス細胞(アポトーシス性のマクロファージ、平滑筋細胞および内皮細胞)、および、活性化血小板などの数種のタイプのPNOM細胞の関与を特徴とするためである。
【0166】
また、PMBCまたはPMBC結合体による検出は、組織培養または動物モデルにおけるアポトーシスの研究の、基礎的な調査の目的で行ってもよい。
【0167】
本発明のその他のアプローチに従って、本発明は、活性成分としてPMBCまたはPMBC結合体を、場合により製薬上許容できるキャリアーと共に含む医薬組成物に関する;PMBCまたはPMBC結合体は、(i)医薬として有用な、製薬的に活性な薬物;および、(ii)PMBCを含む。PMBCまたはPMBC結合体は、薬物をPNOM細胞に標的するように作用してもよく、従って、上記で定義されたようなPNOM細胞の存在を特徴とする病気の治療に有用な可能性がある。
【0168】
用語「製薬上許容できる」とは、製剤が、滅菌およびパイロジェンフリーであることを含む。適切な製薬用キャリアーは、薬学界周知である。キャリアーは、発明の化合物に適合し、かつそれらのレシピエントにとって有害でないという意味で「許容できる」ものでなければならない。典型的には、キャリアーは、滅菌およびパイロジェンフリーの水または塩類溶液であり得る;しかしながら、その他の許容できるキャリアーを用いてもよい。
【0169】
本発明のPMBCまたはPMBC結合体を含む医薬組成物は、既知の経路のいずれか、特に、経口、静脈内、腹膜内、筋肉内、皮下、舌下、眼内、鼻腔内または局所投与によって投与できる。キャリアーは、望ましい投与様式に従って選択されるべきであり、例えば、あらゆる既知の成分、例えば溶媒;乳化剤、賦形剤などが挙げられる。また、本医薬組成物は、必要に応じて、病気を治療する、副作用を取り除く、または活性成分の活性を増大させるのに用いられるその他の製薬的に活性な化合物も含んでもよい。
【0170】
典型的には、本発明の医薬組成物または製剤は、非経口投与、より特定には静脈内投与用である。非経口投与に適した製剤としては、以下が挙げられる:水性および非水性の滅菌注射液、これは、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、および、製剤を対象とするレシピエントの血液と等張にする溶質を含んでいてもよく;および、水性および非水性の滅菌懸濁液、これは、懸濁化剤および増粘剤を含んでいてもよい。
【0171】
薬物の製剤は、例えば、Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1975年)、および、Liberman,H. A.およびLachman,L.編集,Pharmaceutical Dosage Forms,マルセル・デッカー(Marcel Decker),ニューヨーク,ニューヨーク州(1980年)で論じられている。
【0172】
注射用製剤(例えば、滅菌した注射用の水性または油性懸濁液)は、既知の技術で、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて製剤化できる。また、滅菌した注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の、滅菌した注射用溶液または懸濁液であってもよい。使用可能な許容できる 媒体および溶媒のなかでも、水、リンガー溶液、および、等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。加えて、従来、溶媒または懸濁媒としては、滅菌した不揮発性油が用いられている。この目的のために、あらゆる無刺激性の不揮発性油が、使用可能であり、例えば、合成モノ−またはジグリセリドが挙げられる。加えて、オレイン酸のような脂肪酸が、注射液の製造において有用である。また、ジメチルアセトアミド、界面活性剤、例えばイオン性および非イオン性界面活性剤、および、ポリエチレングリコールも用いることができる。また、上記したような溶媒と湿潤剤の混合物はも有用である。
【0173】
1回の投薬形態を製造するためのキャリアー材料と併用できる活性成分の量は、患者と特定の投与様式に応じて様々であり得る。
【0174】
医薬として有用な薬物とPMBCとの結合は、共有結合、非共有結合(例えば静電力)、または、薬物を含み、表面に複合体をPNOM細胞に標的化するPMBCを有するキャリアー粒子(例えばリポソーム)の形成のいずれかが可能である。
【0175】
治療効果を発揮する薬物に連結させるPMBCまたはPMBC結合体の目的は、PNOM細胞、ならびに、上述したような病気または障害におけるPNOM細胞を含む組織および臓器に選択的に結合することである。薬物が標的に到達したら、PMBC結合体の一部として複合体のままで、または、PMBC単位から切り離された後(例えば開裂、破壊、天然の酵素の活性などによって)のいずれかの場合に、その他の既知のあらゆるメカニズムによってその生理学的活性が作用すると予想される。
【0176】
薬物(また、本発明においては「医薬活性物質」ともいう)は、本組成物が対象とする特定の病気によって適宜選択されるべきである。従って、本発明は、医薬活性物質を細胞に運搬する方法を提供し、本方法は、細胞を、PMBC、医薬活性物質、および、PMBCと医薬活性物質とを連結させるリンカー成分を含むPMBC結合体の有効量と接触させる工程を含む。
【0177】
その他の観点において、本発明は、PMBCと、上記病気を治療、阻害または予防するのに有用なことがわかっている医薬活性物質を含むPMBC結合体を形成することによって、医学的な障害の治療、阻害または予防を改善する方法を提供する。それによって、治療、阻害または予防の改善は、増殖巣中に含まれるPNOM細胞への標的化を介して、結合体を病気の増殖巣に選択的に標的化することによって達成できる。このような医学的な障害の例は上述の通りである。
【0178】
その他の本発明の実施形態において、凝固防止剤または線維素溶解薬を血栓に標的化する方法が提供され、本方法は、本発明に係る、凝固防止剤または線維素溶解薬を含むPMBC結合体を投与し、それによって治療剤の血栓への標的化を達成する工程を含む。
【0179】
PMBCまたはPMBC結合体は、異常で過剰な血液凝固の開始または増加を示す病気、不適切で過剰なアポトーシスを示す病気、例えば変性性の障害、神経変性障害、炎症性の障害、および/または、免疫介在性の原因論または病因に関連する病気、例えば自己免疫性の障害の治療、回復または予防に用いることもできる。これらの医学的な障害としては、これらに限定されないが、上述の病気のいずれかであり得る。
【0180】
血栓症またはアポトーシスを特徴とする不安定なアテローム斑を治療または予防することを目的として、上記の薬物群から薬物を選択できる。
【0181】
その他の本発明の実施形態において、抗ガン剤をアポトーシス細胞の増殖巣を有する腫瘍に標的化する方法が提供され、本方法は、本発明に係る、細胞毒性の薬物を含むPMBC結合体を投与し、それによって、腫瘍中の細胞死の増殖巣への薬物の標的化を達成する工程を含む。
【0182】
本発明の、抗ガン薬を含むPMBC結合体は、抗ガン治療計画の有効性を高めるために用いてもよい。抗ガン治療計画の増強は、以下のいずれかによって達成される:(1)結合体の腫瘍組織への標的化;このような組織は、異常で過剰なアポトーシスの荷重を特徴とすることが多い(後者は、腫瘍の悪性度のレベルと関連することが多い);(2)2段階のアポトーシスの使用:第一段階は、腫瘍中でのアポトーシスプロセスの開始を目的とする標準的な化学療法剤または放射線治療剤を用いることによって達成され;続くアポトーシスの第二段階は、PMBC結合体の一部として抗ガン薬が投与され、それによって第一段階で生産されたアポトーシス細胞を標的化する。従って、腫瘍巣中での抗ガン薬の局所濃度の選択的な増大は、局所的に腫瘍を死滅させるプロセスを結果的に高めることによって達成され、一方で、非腫瘍組織では比較的低い薬物レベルが維持される。
【0183】
この観点によれば、本発明は、さらにその上、病気の治療に有用な薬物の、個体の体内の病気の増殖巣への標的化を改善することによって、PNOM細胞を示す病気の治療を改善する方法に関する。本方法は、このような治療が必要な個体に、個体の病気の治療に有用なことがわかっている薬物を含むPMBCまたはPMBC結合体の有効量を投与することを含む。PMBC結合体は、活性な薬物を、病気に罹った組織に選択的に標的化することを可能にする。このような組織は、PNOM細胞を含むため、本発明の方法は、病気に罹った組織中において活性な薬物の局所的な濃度を増大させ、標的部位での薬物の治療効果を増強するように作用する。
【0184】
用語「有効量」は、症状の少なくとも1つの悪い徴候を、測定可能な作用に減少させることができる量を意味する。これは、用いられる薬物、投与様式、患者の年齢と重量、病気の重症度などに応じて選択されると予想される。
【0185】
本発明のその他のアプローチによれば、細胞の体液を清浄化するために、PMBCのPNOM細胞に特異的に結合する特性が用いられる。体液としては、一実施形態において、血液または血液製剤であり得る。
【0186】
本発明の実施形態によれば、本発明は、固体支持体に固定されたPMBCを提供する。固定は、共有結合または非共有結合のいずれかによる直接的な付着、または、スペーサーを介した付着が可能である。固定されたPMBCは、PNOM細胞からの体液を清浄化することを目的とする。
【0187】
用語「固体支持体」は、本明細書において、固体マトリックス、不溶性マトリックス、および、不溶性の支持体を意味する。本発明に係る固体支持体は、マイクロ微粒子、マイクロフィルターまたはマイクロキャピラリーのスタックのような多種多様な構造に形成することが可能であり、さらに、アルミナ、けいそう土、セライト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、イオン交換樹脂、シリカゲル、活性炭、アンバーライト、ダウエックス(Dowex)、オイパーギット(Eupergit)、および、エチルスルホキシセルロース(ethylsofoxycellulose)のような様々な材料で構成することが可能である。
【0188】
固体支持体に固定された化合物は、フィルター装置の一部を形成する。それにより、清浄化アプローチに従って、本発明はさらに、固体支持体に固定されたPMBCを含むハウジング、ならびに、流体の注入口および流体の出口を含むフィルター装置に関する。体液、例えば血液、または、血液製剤が、注入口を通ってハウジングに注入され、ハウジングに含まれる固定されたPMBCと接触し、付着する。従って、体液から、乱された膜を有する細胞、例えば障害を受けた細胞または死んでいる細胞を除去する、または、PNOM膜を含む塞栓のようなより大きい構造を除去する。その結果として、出口から出る流体のPNOM細胞含有量は減少しているか、または実質的にそれらを含まない。
【0189】
実施例
本発明を理解し、実際的にどうように実行可能であるかを観察するために、いくつかの実施形態を以下で説明するが、ここでは、本発明の化合物の、アポトーシスによるPNOMを受けた細胞への結合の検出を評価した。
【0190】
数種の化合物(いずれも式Iの一般構造を有する)の性能を実証することによって、PNOM細胞へ選択的に結合する際の本発明のPMBCの性能を決定することにおいて式Iの構造的特徴の役割が示される。
【0191】
本化合物の、PNOM細胞に選択的に結合する際の性能は、インビトロで、組織培養研究において、フローサイトメトリー(FACS)解析を用いて化合物固有の蛍光モニターすること;および、インビボで化合物の静脈内投与に続いて、組織切片の蛍光顕微鏡観察による固有の蛍光を検出することの両方によって測定した。以下、これらの実施形態を、非限定的な実施例によって、添付の図面を参照しながら説明する。
【0192】
実施例1:(5-ブチルメチルアミノ-ナフタレン-1-スルホニル)-グリシン(NST703)の合成
a.5−ブチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(1):
ジメチルホルムアミド(2.2L)中の、1−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(111g,0.497モル)、炭酸水素ナトリウム(124g,1.48モル)、および、1−ブロモブタン(79mL,0.734モル)の混合物を撹拌し、125℃で2.5時間加熱した。この混合物を、水(13L)と塩化ナトリウム(2.90kg)の混合物に注入し、pHを濃塩酸で8.9から3.0に低くし、形成された固体をろ過によって単離し、水で洗浄し(250mLで3回)、乾燥させ、53.9gの茶色の粉末を得た。この固体を、炭酸水素ナトリウム(22.4g,0.267モル)を加えながら、水(2.5L)に溶解させた。pHを7.9〜3.0に低くするために、塩酸(3M,78mL)を添加した。沈殿をろ過によって単離し、50℃で乾燥させ、47.9gの茶色の固体を得た。再結晶(イソプロパノール:水=2:1)により、44.5gの1を得た(32%)。
【0193】
b.5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(2):
1(42.7g,0.153モル)を、水(850mL)に懸濁し、および、炭酸水素ナトリウム(38.6g,0.459モル)を添加した。得られた溶液を、15℃で撹拌し、硫酸ジメチル(15mL,0.16モル)を添加した。6時間後に、さらに硫酸ジメチル(15mL,0.16モル)を添加した。この溶液を一晩撹拌し、80℃で0.5時間加熱した。室温に冷却した後に、pHを3.0に調節した。形成された固体を一晩ろ過し、水で洗浄し、50℃で乾燥させ、32.8g(73%)の茶色の粉末2を得た。
【0194】
c.5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−塩化スルホニル(3):
窒素下で、2(23.9g,0.081モル)を氷で冷却し、五塩化リン(18.7g,0.0896モル)と混合した。この混合物を水浴で60℃で2時間加熱し、氷(164g)と水(341g)の混合物に注入した。酢酸エチル(400mL)と、炭酸水素ナトリウム(50g,0.60モル)を添加した。相分離を行い、酢酸エチルで水相を抽出した。合わせた有機相を洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、活性炭(1.1g)で処理した。溶媒を蒸発させることにより、20.8gの3を油として得た。この生成物は、クロマトグラフィーで精製できる。
【0195】
d.5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニル)−グリシン(NST703):
2ミリモルのL−グリシン、および、3ミリモルのNaHCO3を、5mLの水に溶解させた。1ミリモルの3を含むアセトン溶液をゆっくり添加した。さらに溶液が透明になるまでアセトンを添加した。この混合物を一晩室温で撹拌し、光を遮断した。アセトンをフラッシュ蒸発により除去し、残存する水溶液を、2Mクエン酸を加えることによってpH4.5〜5に酸性化した。次に、NaClを飽和するまで添加し、この溶液を、酢酸エチルを3回(それぞれ20mL)用いて抽出した。抽出物を合わせ、MgSO4上で乾燥させ、溶液をろ過した。溶媒を除去し、残留物をシリカゲルを用いた液体クロマトグラフィーで精製した。溶出液として、ジクロロメタン中のメタノール勾配0〜5%を用いた。望ましい生成物を含む分画を合わせ、溶媒を除去した。1:1のエーテル:石油エーテル中で残留物を粉砕した。沈殿物をろ過して除き、真空中で一晩乾燥させることによって、5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニル−グリシン(NST703)を得た。
【0196】
NMRデータは以下の通りであった:
1H-NMR (CDCl3, δ=ppm): 8.58 (1H, d); 8.33 (1H, d); 8.22 (1H, d); 7.53 (2H, m); 7.26 (1H, m); 3.71 (2H, s); 3.10 (2H, t); 2.88 (3H, s); 1.66 (2H, m); 1.32 (2H, m); 0.87 (3H, t).ESI-MS: Consistent. m/z + H+= 351.7。
【0197】
実施例2:(5−ジブチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニル)−L−アスパラギン酸(NST705)の合成
2ミリモルのアスパラギン酸と、4ミリモルのNaHCO3を、5mLの水に溶解させた。1ミリモルの5−ジブチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニル塩化物(塩化バンシル(bansyl chloride),TCIから購入した)を含むアセトン溶液をゆっくり添加した。さらにアセトンを、溶液が透明になるまで添加した。この混合物を一晩室温で撹拌し、光を遮断した。アセトンをフラッシュ蒸発により除去し、残存する水溶液を、2Mクエン酸を加えることによってpH4.5〜5に酸性化した。次に、NaClを飽和するまで添加し、この溶液を、酢酸エチルを3回(それぞれ20mL)用いて抽出した。抽出物を合わせた、MgSO4上で乾燥させ、溶液をろ過した。溶媒を除去し、残留物をシリカゲルを用いた液体クロマトグラフィーで精製した。溶出液として、ジクロロメタン中のメタノール勾配0〜5%を用いた。所望の生成物を含む分画を合わせ、溶媒を除去した。1:1のエーテル:石油エーテル中で残留物を粉砕した。沈殿をろ過して除き、真空中で一晩乾燥させることによって、5−ジブチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニル)−L−アスパラギン酸(NST705)を得た。
【0198】
1H-NMR (CD3OD, δ=ppm): 8.63 (1H, d); 8.38 (1H, d); 8.27 (1H, d); 7.55 (2H, m); 7.34 (1H, d); 3.84 (1H, broad); 3.11 (1H, d); 8.63 (4H, t); 2.68 (2H, broad); 1.43 (4H, m); 1.30 (4H, m); 0.85 (6H, t).
ESI-MS: Consistent. m/z + H+= 451.4。
【0199】
実施例3:NST705の、アポトーシスを起こしたJurkat細胞への選択的な結合;フローサイトメトリー(FACS)解析
培養したJurkat細胞(ヒト成人のT細胞性白血病細胞)を、10%のウシ胎仔血清(FCS)、4mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mMのCaCl2、および、抗生物質(100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン、および、12.5ユニット/mlのナイスタチン)が添加されたRPMI培地(Beit−Haemek,イスラエル)の懸濁液中で成長させた。アポトーシスの誘発の前に、培地を、HBS緩衝液(10mMのHEPES;140mMのNaCl、1mMのCaCl)で置き換えた。次に、アポトーシスを、抗FasAb(0.1μg/ml;3時間)での処理によって発生させた。その結果、かなりの割合の細胞がアポトーシスを起こし、これらは新たに形成された初期のアポトーシス細胞とみなされる。未処理細胞をコントロールとして用いた。次に、コントロール細胞とアポトーシス細胞の両方を、100μMのNST705と共に20分間インキュベートした。その後、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)で共染色し、細胞死の後期の膜の崩壊のマーカー、および、NST705化合物のコントロールとアポトーシス細胞への選択的な結合を、ベクトン・ディッキンソンのセルソーターとCellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS)解析によって決定した(356nmで励起させ、発光を530nmで測定した)。図1に示される解析は、コントロールと抗Fas処理した培養物中のアポトーシス細胞群へのNST705化合物の取り込みを説明する。
【0200】
図1Aおよび図1Bに示されるドットプロットにおいて、左下の四分の一区画は、健康な染色されていない細胞の分画を示す。右下の四分の一区画は、アポトーシスの初期段階で新たに形成された細胞群を示す。これらの細胞はなお、無傷の膜を維持しているため、PIを遮断している。NST705とPIの両方に結合している細胞、すなわち、アポトーシスの後期段階における細胞は、右上の四分の一区画で示される。
【0201】
アポトーシスの誘発は、選択的にNST705に結合し、プロットの右下の四分の一区画を占める、アポトーシスプロセスの初期段階における著しい別個の細胞群の出現に関連していた。個体群中で同定された初期のアポトーシス性の事象のパーセントは、未処理コントロール細胞の3%と比較して、アポトーシス細胞においては70.8%である。図1Cは、図1Aおよび1Bに示されるデータのヒストグラム解析である。アポトーシスプロセスの初期段階における高度に蛍光性の細胞の新しい別個のピークの出現は、抗Fas処理に明らかに関連する。
【0202】
実施例4:NST703の、アポトーシスを起こしたJurkat細胞への選択的な結合;フローサイトメトリー(FACS)解析
培養したJurkat細胞(ヒト成人のT細胞性白血病細胞)を、10%のウシ胎仔血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mM 1mMのHEPES、および、抗生物質(100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン、および、12.5ユニット/mlのナイスタチン)が添加されたRPMI培地(Beit−Haemek,イスラエル)の懸濁液中で成長させた。アポトーシスの誘発の前に、培地を、HBS緩衝液(10mMのHEPES;140mMのNaCl、1mMのCaCl)で置き換えた。次に、アポトーシスを、抗FasAb(0.1μg/ml;3時間)での処理によって発生させた。その結果、かなりの割合の細胞がアポトーシスを起こした。未処理細胞をコントロールとして用いた。次に、コントロール細胞とアポトーシス細胞の両方を、100μMのNST703と共に20分間インキュベートした。その後、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)で共染色した。NST703のコントロールとアポトーシス細胞への結合を、ベクトン・ディッキンソンのセルソーターとCellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS)解析によって決定した(356nmで励起させ、発光を530nmで測定した)。解析は、図2に示される。
【0203】
図2Aおよび2Bに示されるドットプロットにおいて、左下の四分の一区画は、健康な染色されていない細胞の分画を示す。右下の四分の一区画は、アポトーシスの初期段階で新たに形成された細胞群を示す。これらの細胞はなお、無傷の膜を維持しているため、PIを遮断している。NST703とPIの両方に結合している細胞、すなわち、アポトーシスの後期段階における細胞は、右上の四分の一区画で示される。
【0204】
アポトーシスの誘発は、選択的にNST703に結合し、プロットの右下の四分の一区画を占める、アポトーシスプロセスの初期段階における著しい別個の細胞群の出現に関連していた。個体群中で同定された初期のアポトーシス性の事象のパーセントは、未処理コントロール細胞の3.27%と比較して、アポトーシス細胞においては75.6%である。図2Cは、図2Aおよび図2Bに示されるデータのヒストグラム解析である。アポトーシスプロセスの初期段階における高度に蛍光性の細胞の新しい別個のピークの出現は、抗Fas処理に明らかに関連する。
【0205】
実施例5:インビボでの、NST705の、マウスにおけるリンパ腫の化学療法によって誘発されたアポトーシス細胞への標的化
8週齢の雄DBA/2マウス(ハーラン・ラボラトリーズ(Harlan laboratories),イギリス)に、リンパ腫細胞を皮下注射することによってリンパ腫を誘発させた。
【0206】
化学的に誘発されたLY−Rクローン由来の細胞を、ATCC(CRL−1722)から得て、続いてマウスの継代を維持した。腫瘍を誘発するために、容積100(μl中の5×105細胞を、マウスの大腿領域に注射した。10日後に、腫瘍の直径が5〜7mmの大きさに達したら、マウスを化学療法処理で処理した(タキソール,20mg/Kg,腹膜内注射)。24時間後、NST705を、用量1.4mg/マウスで全身に注射した。2時間後、マウスを殺し、腫瘍を液体窒素中で凍結させた。次に、低温切開片を調製し、連続スライドを、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)染色、または、オリンパス(Olympus)の蛍光顕微鏡(モデルIX70)を用いた蛍光顕微鏡評価(波長360nmで励起、530nmで発光)のいずれかで処理した。
【0207】
図3Aで示されるように、細胞死を受けた細胞は、H&E染色において、クロマチン凝縮と高度に好酸性の細胞質によって同定できる。また、これらの細胞は、NST705の著しい取り込みも示す(図3B)。実際に、このような死プロセスを受け、NST705の著しい取り込みの兆候を示す細胞の多くが実証されている。それに対して、このような取り込みは、生存しているアポトーシス性ではない腫瘍細胞(暗くなったままの部分)では観察されなかった。従って、これらの発見は、NST705を、腫瘍組織中の細胞死を受けた細胞に選択的に標的化すること実証している。
【0208】
実施例6:DCの、アポトーシスを起こしたJurkat細胞への選択的な結合;フローサイトメトリー(FACS)解析
培養したJurkat細胞(ヒト成人のT細胞性白血病細胞)を、10%のウシ胎仔血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mM 1mMのHEPES、および、抗生物質(100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン、および、12.5ユニット/mlのナイスタチン)が添加されたRPMI培地(Beit−Haemek,イスラエル)の懸濁液中で成長させた。アポトーシスの誘発の前に、培地を、HBS緩衝液(10mMのHEPES;140mMのNaCl、1mMのCaCl)で置き換えた。次に、アポトーシスを、抗FasAb(0.1μg/ml;3時間)での処理によって発生させた。その結果、かなりの割合の細胞がアポトーシスを起こした。未処理細胞をコントロールとして用いた。次に、コントロール細胞とアポトーシス細胞の両方を、100μMのDCと共に20分間インキュベートした。その後、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)で共染色した。DCのコントロールとアポトーシス細胞への結合を、ベクトン・ディッキンソンのセルソーターとCellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS)解析によって決定した(356nmで励起させ、発光を530nmで測定した)。解析は、図4に示される。
【0209】
図4Aおよび図4Bはそれぞれ、アポトーシスの活性化により、コントロール細胞(図4A)と比較して、アポトーシスの初期段階における細胞(図4B)により著しいDCの取り込みが起こることを示す代表的なFACSドットプロットである。UV軸は、DCの蛍光強度を示し;FL2軸は、ヨウ化プロピジウム(PI)の蛍光強度を示す。
【0210】
コントロールの未処理細胞において(図4A)、初期アポトーシス段階の細胞はほんのわずかな割合しかなかった(2.3%,右下の四分の一区画)。しかしながら、アポトーシスを誘発した場合(図4B)、アポトーシスの初期段階における、著しいDCの取り込みを示すが、無傷の膜を維持している細胞の大きい集団が出現しした(76%)(すなわち、PIに結合しない;右下の四分の一区画)。
【0211】
図4Cは、図4Aおよび4Bに示されるデータのフローサイトメトリー(FACS)ヒストグラム表示である。x軸は、DCの蛍光強度を示し、一方で、カウント軸は、事象のパーセンテージを示す。コントロール細胞は、実線で示し、抗Fas−Abで処理した細胞は、点線で示した。抗Fas抗体での処理により、細胞のUV蛍光における著しいシフトが起こり、これは、アポトーシス性の死プロセスの初期段階における著しいDCの取り込みの特徴が得られたことを反映している。
【0212】
実施例7:インビボでの、腫瘍、マウス黒色腫における、DCのアポトーシス細胞への標的化
腫瘍、特に攻撃性の悪性腫瘍(例えば黒色腫)は、異常な組織の増殖に加えて、腫瘍細胞の著しいアポトーシスによっても特徴付けられる。従って、腫瘍中のこれらのアポトーシス細胞を選択的に標的化するDCの性能を試験した。マウス(c57/黒;8週齢の雄マウス)に、マウス黒色腫から誘発されたB16−F10細胞(ATCC CRL−6475;容積100μlで、105細胞/マウス)を両側のわき腹の皮下に注射した。注射の前に、細胞系を、4mMのL−グルタミン;100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;12.5ユニット/mlのナイスタチン、および、10%のウシ胎仔血清(FCS)が添加されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の培養中で維持した。腫瘍を14日間成長させたところ、腫瘍は直径5〜7mmに達した。
【0213】
DC化合物(2mg/マウス,NaPpi緩衝液中、pH7.40)を静脈注射した。2時間後、マウスを殺し、腫瘍、同様に、他の臓器を採取し、直ちに液体窒素中で凍結させた。続いて、凍結させた切片を、それぞれの臓器から製造した。腫瘍または他の臓器によるDCの取り込みを蛍光顕微鏡で評価した。
【0214】
図5Aは、腫瘍の蛍光顕微鏡観察を示す。DCの、多数のアポトーシスを受けた腫瘍細胞への大規模な結合を観察できる。また、アポトーシス細胞への著しい取り込みを反映する、化合物の細胞内蓄積と、高いレベルの選択性も実証され、一方で、生存している腫瘍細胞は未染色のままである。
【0215】
また、この高いレベルの選択性は、同じ動物の小腸組織の蛍光顕微鏡観察が示されている図5Bでも実証されており、生存している正常な組織に、化合物が結合していないことが示される。同様の結果を、様々なその他の非標的組織、例えば結腸、腎臓、脾臓、筋肉および心臓から得た。
【0216】
実施例8:末端ダンシル化標識法(TDLM):
18Fの短い半減期(約110分間)が、この同位体が、本発明のPMBCのPETイメージングのためのマーカーとして付着するための特定の条件を規定している。この条件としては、なかでも、塩基性溶液中での迅速な反応、および、比較的高温(「PETホットボックスケミストリー(PET Hot Box chemistry)」)が挙げられる。これらの条件は、本発明のPMBCの比較的感受性のあるスルホンアミドサブユニットに適合していない場合がある。また、望ましくない副反応も生じる可能性がある。これら起こり得る難点を克服するために、末端ダンシル化標識法を開発した(TDLM)。この方法によれば、PMBCは、2つのサブユニット:アミンサブユニット(これに18Fが連結されると予想される)と、スルホン酸サブユニット(例えばダンシル)を含むとみなされる。この方法によれば、18Fは、まずアミンサブユニットに付着される。精製前の最終工程としてのみ、フッ素化アミンサブユニットにスルホン酸サブユニットを付着させ、それによって、望ましい化合物を形成する。この反応条件を最適化することにより、ダンシル化の最終工程の実行を10分間にすることができ、それによって、「PETホットボックス」計画における18F付着の時間枠に適した合成が可能になる。
【0217】
本発明の化合物へのフッ素の付着の方法論、および、末端ダンシル化標識法を実証するために、19Fを含むNST730の合成スキームを説明する。この化合物は、以下の合成スキームで、アルバニー・モレキュラー・リサーチ社(Albany Molecular Research Inc.)(アルバニー,ニューヨーク州,米国)によって合成された:
【0218】
【化26】
実施例9:インビボでの、腫瘍、マウス黒色腫におけるNST730のアポトーシス細胞への標的化
NST730の、腫瘍中のアポトーシス細胞へ選択的に標的化する性能を、実施例7で説明されているようにして試験した。マウス(c57/黒;8週齢の雄マウス)に、マウス黒色腫から誘発されたB16−F10細胞(ATCC CRL−6475;容積100μlで、105細胞/マウス)をわき腹の両側の皮下に注射した。腫瘍を14日間成長させたところ、腫瘍は直径5〜7mmに達した。
【0219】
NST730化合物(2mg/マウス,NaPpi緩衝液中,pH7.40)を静脈注射した。2時間後、マウスを殺し、腫瘍、同様に、他の臓器を採取し、直ちに液体窒素中で凍結させた。続いて、凍結させた切片を、それぞれの臓器から製造した。腫瘍または他の臓器によるNST730の取り込みを蛍光顕微鏡で評価した。
【0220】
図6Aは、腫瘍の蛍光顕微鏡観察を示す。NST730の、多数のアポトーシスを受けた腫瘍細胞への大規模な結合を観察できる。また、アポトーシス細胞への著しい取り込みを反映する、化合物の細胞内蓄積と、高いレベルの選択性も実証され、一方で、生存している腫瘍細胞は未染色のままである。
【0221】
また、この高いレベルの選択性は、同じ動物の筋肉組織の蛍光顕微鏡観察が示されている図6Bでも実証されており、生存している正常な組織に、化合物が結合していないことが示される。同様の顕著な結合がみられない結果が、様々なその他の非標的組織、例えば結腸、腎臓、脾臓および心臓から得られた。
【0222】
実施例10:インビボでの、放射線照射により誘発された細胞死のNST732による検出;マウスのリンパ腫
DBAマウス(5〜6週齢の雄,ジャクソン・ラボラトリーズ(Jackson laboratories))に、50μlの塩類溶液中の106個のlyS細胞を皮下注射し、腫瘍形成に関して毎日試験した。8、9および10日目に、マウスをパースペックス製の箱に置き、6MVのX線装置(Linac)で、それぞれ6グレイを数回にわけて照射した。各マウスに、約1.0センチグレイ/モニターユニットの線量が照射された。13日目(最後の放射線照射から72時間)に、マウスに、NST732(70mg/kg,25%クレモフォア(cremophore)RH410、pH9を含むトリス塩基に溶解させた)を静脈注射した。2時間後に、腫瘍を切り出し、液体窒素中で凍結させ、組織病理学的な評価を行った。
【0223】
腫瘍の蛍光顕微鏡観察を示す図7Bで示されるように、NST732の多数のアポトーシスを受けた腫瘍細胞への大規模な結合を観察できる。NST732の取り込みを示す細胞と、細胞死を受けた細胞との同一性は、連続スライドで行われたH&EとTUNEL染色で確認された(それぞれ図7Aおよび7C)。
【0224】
従って、この実施例は、NST732の、放射線照射により誘発された細胞死を受けた腫瘍細胞に結合する能力、臨床実践で用いられる抗ガン治療の一般的な様式を示し、従って、この化合物の、この治療様式の作用をイメージングすることにおける重要な可能性を示す。
【0225】
実施例11:NST732による、ニューロン細胞死、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞の検出
Balb/Cマウス(10〜12週間)で、中大脳動脈を焼灼することによって脳虚血を誘発した。マウスを麻酔し、側頭骨を露出させた。骨を最小限の大きさの穴まで削り取って、焼灼を受ける動脈に接触できるようにした。22時間後、NST732(70mg/kg)を静脈注射した。2時間後(傷害の誘発から24時間で)、マウスを麻酔し、殺して、凍結させた切片を組織病理学的に解析するために、脳を採取して液体窒素中に入れた。蛍光顕微鏡による解析のために、4μmの薄片を作製し、それにより、細胞をNST732ではっきりと染色した。
【0226】
図8A〜Dで明らかにわかるように、障害のある領域における細胞は、NST732の大規模な結合を示した。それに対して、障害のある領域の外側の細胞は、上記化合物の顕著な結合は示さなかった。
【0227】
従って、これらの結果は、NST732の、インビボでニューロン細胞死をイメージングする能力を示しており、従って、脳卒中の診断と経過観察のための有用なツールであり得る。
【0228】
実施例12:NST730による、ニューロン細胞死、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞の検出
Balb/Cマウス(10〜12週間)で、中大脳動脈を焼灼することによって脳虚血を誘発した。マウスを麻酔し、側頭骨を露出させた。骨を最小限の大きさの穴まで削り取って、焼灼を受ける動脈に接触できるようにした。22時間後、NST730(70mg/kg)を静脈注射した。実施例11で説明されているように、2時間後(傷害の誘発から24時間で)、マウスを麻酔し、殺して、凍結させた切片を組織病理学的に解析するために、脳を採取して液体窒素中に入れた。
【0229】
図9から明らかにわかるように、障害を受けた領域の細胞は、NST730の大規模な結合を示した(図9A)。それに対して、障害のある領域の外側の細胞は、上記化合物の顕著な結合を示さなかった(図9B)。
【0230】
従って、これらの結果は、NST730の、インビボでニューロン細胞死をイメージングする能力を示し、従って、脳卒中の診断と経過観察のための有用なツールであり得る。
【0231】
実施例13:5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(NST601)の合成
a.5−ブチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(1):
ジメチルホルムアミド(2.2L)中の、5−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(111g,0.497モル)、炭酸水素ナトリウム(124g,1.48モル)、および、1ブロモブタン(79mL,0.734モル)の混合物を撹拌し、125℃で2.5時間加熱した。この混合物を、水(13L)と塩化ナトリウム(2.90kg)の混合物に注入し、pHを濃塩酸で8.9から3.0に低くし、形成された固体をろ過によって単離し、水で洗浄し(250mLで3回)、乾燥させ、53.9gの茶色の粉末を得た。この固体を、炭酸水素ナトリウム(22.4g,0.267モル)を加えながら、水(2.5L)に溶解させた。pHを7.9〜3.0に低くするために、塩酸(3M,78mL)を添加した。沈殿をろ過によって単離し、50℃で乾燥させ、47.9gの茶色の固体を得た。再結晶(イソプロパノール:水=2:1)により、44.5gの1(32%)を得た。
【0232】
b.5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(2):
化合物1(42.7g,0.153モル)を、水(850mL)に懸濁し、炭酸水素ナトリウム(38.6g,0.459モル)を添加した。得られた溶液を、15℃で撹拌し、硫酸ジメチル(15mL,0.16モル)を添加した。6時間後に、さらに硫酸ジメチル(15mL,0.16モル)を添加した。この溶液を一晩撹拌し、80℃で0.5時間加熱した。室温に冷却した後に、pHを3.0に調節した。形成された固体を一晩ろ過し、水で洗浄し、50℃で乾燥させ、32.8g(73%)の茶色の粉末2を得た。
【0233】
実施例14:5−ヒドロキシプロピル−メチル−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(NST602)、および、5−フルオロプロピル−メチル−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(NST603)への合成経路
【0234】
【化27】
実施例15:インビトロでの、NST601の、アポトーシスを起こしたHeLa細胞への選択的な結合
HeLaS3細胞(ATCC CCL−2.2)を、2mMのL−グルタミン;100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;12.5ユニット/mlのナイスタチン、および、10%のウシ胎仔血清(FCS)が添加されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で成長させた。細胞を、5×106細胞/プレートの密度で、10cm3の培養プレート(容積10ml)上に植え、培養物を、増殖培地を交換しないで96時間インキュベートすることによって、老化させた。その結果、かなりの割合の細胞がアポトーシスを起こした。細胞スクレーパーを用いて細胞を回収し、18G注射針を備えた注射器で植え継ぐことによって単一の細胞に分離し、106細胞/mlの密度でpH7.4のPBS緩衝液中に再懸濁した。NST601化合物のアポトーシス細胞への選択的な結合を、ベクトン・ディッキンソンのセルソーターとCellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS)解析によって決定した(356nmで励起させ、発光を530nmで測定した)。図10に示される解析は、NST601化合物のアポトーシス細胞群への取り込みを説明する。
【0235】
図10Aに示されるドットプロットで示されるように、培養物を老化させることによるアポトーシスの誘発は、アポトーシスプロセスの後期段階における著しい別個の細胞群の出現、NST601の結合、および、プロットの右上の四分の一区画の占有に関連していた。老化させた培養物中のNST601に結合した細胞の分画は、培養物中で老化させた細胞に典型的な、成長因子の損失と培地の酸性化による、自然に起こる細胞死プロセスを示す。細胞死プロセスを受けていない細胞(プロットの左下の四分の一区画を占める)は、染色されないままであった。
【0236】
図10Bは、図10Aに示されるデータのヒストグラム解析である。アポトーシスプロセスにおける高度に蛍光性の細胞の別個のピークの出現は、明らかに、培養物の老化に関連する。従って、NST601は、アポトーシス細胞への選択的な結合を行うマーカーとして役立たせることができる。
【0237】
実施例16:インビトロで抗FasAbにより誘発された、DAの、アポトーシスを受けたJurkat細胞への選択的な結合
培養したJurkat細胞(ヒト成人のT細胞性白血病細胞)を、10%のウシ胎仔血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mM 1mMのHEPES、および、抗生物質(100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン、および、12.5ユニット/mlのナイスタチン)が添加されたRPMI培地(Beit−Haemek,イスラエル)の懸濁液中で、成長させた。アポトーシスの誘発の前に、培地を、HBS緩衝液(10mMのHEPES;140mMのNaCl、1mMのCaCl)で置き換えた。次に、アポトーシスを、抗FasAb(0.1μg/ml;3時間)での処理によって発生させた。その結果、かなりの割合の細胞がアポトーシスを起こした。未処理細胞をコントロールとして用いた。次に、コントロール細胞とアポトーシス細胞の両方を、250μMのDAで20分間インキュベートした。その後、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)で共染色した。DAのコントロールとアポトーシス細胞への結合を、ベクトン・ディッキンソンのセルソーターとCellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS)解析によって決定した(356nmで励起させ、発光を530nmで測定した)。解析は、図11に示される。
【0238】
図11Aに示されるドットプロットにおいて、左下の四分の一区画は、健康な染色されていない細胞の分画を示す。右下の四分の一区画は、アポトーシスの初期段階で新たに形成された細胞群を示す。これらの細胞はなお、無傷の膜を維持しているため、PIを遮断している。DAとPI両方が結合した細胞、すなわち、アポトーシスの後期段階における細胞は、右上の四分の一区画で示される。
【0239】
アポトーシスの誘発は、アポトーシスプロセスの初期段階における著しい別個の細胞群の出現、DAの選択的な結合、および、プロットの右下の四分の一区画の占有に関連していた。個体群中で同定された初期のアポトーシス性の事象のパーセントは、未処理コントロール細胞の4.2%と比較して、アポトーシス細胞では77%である。図11Bは、図11Aに示されるデータのヒストグラム解析である。アポトーシスプロセスの初期段階における高度に蛍光性の細胞の新しい別個のピークの出現は、抗Fas処理に明らかに関連する。従って、DAは、初期のアポトーシスで細胞に選択的に結合するマーカーとして役立たせることができる。
【0240】
実施例17:NST650の合成スキーム
【0241】
【化28】
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞へのNST705の選択的な結合である。
【図2】抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞へのNST703の選択的な結合である。
【図3】インビボでの、細胞死を受けた腫瘍細胞へのNST705の選択的な結合を示す蛍光顕微鏡検査法である。
【図4】培養した抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞への、DCの選択的な結合;フローサイトメトリー解析である。
【図5】インビボでの、DCの、細胞死を受けた腫瘍細胞への選択的な結合である。
【図6】インビボでの、NST730の、細胞死を受けた腫瘍細胞への選択的な結合である。
【図7】インビボで、放射線照射により誘発された細胞死を受けたマウスのリンパ腫細胞への、NST732の選択的な結合である。
【図8】NST732による細胞死の検出、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞である。
【図9】NST730による細胞死の検出、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞である。
【図10】NST601の、アポトーシスを起こしたHeLa細胞への選択的な結合である。
【図11】抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞への、DAの選択的な結合;フローサイトメトリー解析である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、化学物質を、死プロセス、特にアポトーシスを受けた細胞、および、血液凝固の際に活性化された血小板に選択的に標的化するための新規の方法に関する。本発明はさらに、医療で用いるための、すなわち診断剤および治療目的で用いるための低分子量の化合物を提供する。
【0002】
発明の背景
無傷の真核細胞の細胞質膜(外側の膜)は、高度に組織化された構造を特徴とする。この高レベルの膜組織は、なかでも、膜を構成する特定の脂質の分子構造;膜を構成する様々な種類の脂質の比率;膜の外部層と内部層間のリン脂質の分布;および、膜タンパク質の成分によって決定される。
【0003】
高レベルの膜組織の維持は正常な細胞生理学にとって重要であるが、細胞の細胞質膜の正常な構成の実質的な乱れ(perturbations of the normal organization of the cell plasma membrane: PNOM)や変性が、死プロセスを受けた細胞で、特にアポトーシスによって、および、血液凝固の際の活性化された血小板において発生する。このような変性や乱れ(perturbation)は、形態学的なレベル(例えば、膜に突起が出現すること)と、分子レベルの両方の証拠となり得る。このような細胞死または血小板活性化の際に生じる乱れの範囲は、十分に解明されていない。このような乱れとしては、なかでも、通常は、ほぼ完全に膜二分子層の内層に限定されるアミノリン脂質、主としてホスファチジルセリン(PS)、および、ホスファチジルエタノールアミン(PE)の細胞の表面への移動、および、スフィンゴミエリン(SM)、および、ホスファチジルコリン(PC)の外葉から膜の内層への相反移動を伴う、膜リン脂質の不規則性や再分配が挙げられる。また、PNOMは、膜リン脂質の充填レベルの減少、および、膜流動性の増加に関連することも多い。
【0004】
このような変性は、テナーゼおよびプロトロンビナーゼタンパク質複合体のような、数種の凝固因子複合体のアセンブリのための、細胞表面における触媒作用のプラットフォームを作成することにおいて重要な役割を果たす。従って、PNOMは、正常な血液凝固における重要な因子を構成する際の血小板、同様に、多数の障害における異常で過剰な血液凝固の開始および/または増殖において発生する。これらの障害としては、なかでも、動脈もしくは静脈血栓症、または、血栓塞栓症が挙げられる。
【0005】
アポトーシスは、PNOMが起こるその他の主要な状況である。アポトーシスは、あらゆる真核細胞に本来備わっている、細胞の自己破壊または「自殺」の本質的なプログラムである。刺激の発生に応答して、細胞は、極めて特徴的なカスケード、すなわち、細胞の縮小現象、細胞膜での突起の出現、クロマチン凝縮および細分化、細胞の膜結合粒子のクラスター(アポトーシスの主体)への変換、その後のマクロファージによる吸収が最高潮に達すること、を受ける。PNOMは、アポトーシスにおいて普遍的な現象であり、アポトーシスのカスケードの初期に発生し、マクロファージによるアポトーシス細胞の認識および除去において重要な因子であることもわかっている。
【0006】
アネキシンVは、37kDaのタンパク質であり、アポトーシスに関連するPNOMプロセスの結果としてアポトーシス細胞の表面に出現したPSの頭部に結合することによって、アポトーシス細胞へ選択的に結合できる。しかしながら、アネキシンVは、比較的高分子量タンパク質であり、比較的複雑な合成とマーカー付着の手法を必要とする。その上、アネキシンVは、初期のアポトーシスにおける細胞の表面にしか結合せず、その段階で細胞中に蓄積させることができない。
【0007】
従って、PNOMを受けた細胞(PNOM細胞)の選択的な標的化、結合および蓄積が可能な低分子量の化合物が存在することが望ましい。このような化合物は、アポトーシス、および、血液凝固の分子イメージングにおいて、用途を有する可能性がある。また、このような化合物を、治療上有用な薬物に付着させることによって、標的化成分として機能化し、活性な薬物をPNOMを受けた細胞に特異的に標的化し、それらに結合し、そこに蓄積させ、病気の増殖巣における活性な薬物の濃度を高めることによって、有用な治療用途を有する可能性もある。
【0008】
発明の要約
本発明の一実施形態において、細胞質膜の正常な構成が乱された細胞に、化学化合物を選択的に標的化する方法が提供され、このような細胞は、死プロセス(例えばアポトーシス)を受けた細胞、および、活性化を受けた血小板から選択される。以下、このような細胞を包括的に、PNOM(perturbations of the normal organization of the cell plasma membrane: PNOM)細胞という。本方法は、細胞群中に存在する、または散在する上記細胞に選択的に化学化合物を標的化することに関する。本方法は:
(i)細胞群を、乱された膜に結合する化合物(perturbed membrane binding compound:PMBC)と称される化学化合物、または、PMBCを含む結合体と接触させる工程、を含む。PMBCは、式(I):
【0009】
【化1】
【0010】
に記載の構造によって示される化合物であり、式中、Zは、存在しないか、または、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール基、または、このような基の組み合わせで形成された環系、5、6、7、8、9または10個の原子からなる環系を示し;Xは、原子(C、N、OまたはS)を示し、ここで、これらの原子はそれぞれ、Zの意味に応じて0、1または2個の水素原子を有していてもよく;R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2基、または、W−Qbから選択され;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル、ヒドロキシアルキル、または、直鎖もしくは分岐鎖ハロアルキルを示し、ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;および、
bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり;Wが窒素の場合、2であり;または、Wが炭素原子である場合、3であり;
AおよびA’は、それぞれ独立して、以下の4種の基のいずれか一種から選択されるラジカルであり:
i)水素;
ii)SO3H、および、L−SO3H、ここで、Lは、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
iii)式IIに記載の構造:
【0011】
【化2】
【0012】
式中、R3は、水素、(CH2)p−OH、(CH2)p−SH、(CH2)p−F、または、C1、C2、C3またはC4のカルボン酸のラジカルであり、ここで、pは、1、2または3の整数であり;
R4は、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;
cおよびdはそれぞれ、0または1の整数であり;cおよびdは、同一でも異なっていてもよく;*は、式(I)の構造への付着点を示し;または、
iv)式(III)に記載の構造:
【0013】
【化3】
【0014】
式中、R5およびR6は、独立して、水素、直鎖または分岐鎖C1、C2、C3、C4、C5、C6アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、および、ハロアルキルであり;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;および、Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4もしくはC5アルキレンリンカーを意味し;*は、式(I)の構造への付着点を示し;
AまたはA’基の少なくとも1つは、水素以外であり、式(III)の構造以外であり;
それによって、化学物質を、細胞群中のPNOM細胞に選択的に標的化する工程、を含む。
【0015】
その他の本発明の実施形態において、このようなPNOM細胞を含む疑いがある細胞群中でのPNOM細胞の存在を検出する方法が提供され、本方法は、以下の工程を含む:細胞群を、PMBCまたはPMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーと接触させる工程、ここで、前記PMBCは、式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは上記で定義された通りであり;および、(ii)細胞に結合したPMBCの量を決定する工程、ここで、結合した量がコントロールより有意に高いことは、細胞群中でPNOM細胞が存在すること示す。
【0016】
その他の本発明の実施形態において、患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在を検出する方法が提供され、本方法は、以下の工程を含む:
(i)PMBCまたはPMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーを、ヒトまたは動物に投与する工程、ここで、前記PMBCは、式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは上記で定義された通りであり;および、(ii)組織中の細胞に結合したPMBCの量を決定する工程、ここで、組織中の細胞に結合した化合物の量がコントロールより有意に高いことは、前記組織が、PNOM細胞を含むことを示す。
【0017】
本発明の実施形態において、PNOM細胞は、体、臓器、組織、組織培養または体液に存在する。
【0018】
その他の本発明の実施形態において、式(V):
【0019】
【化4】
【0020】
に記載の構造によって示され、式中、Tは、−OH、−O−CH3、−O−(CH2)yCH3、NH2、N(CH3)2、−N[(CH2)3CH3]2、−N(CH3)[(CH2)2CH3]、−N(CH3)CH2CH3、または、−N(CH3)[(CH2)3CH3]であり;yは、1、2または3の整数を意味し;および、R3、R4はそれぞれ、上記で定義された通りである化合物が提供される。
【0021】
その他の本発明の実施形態において、式(VI):
【0022】
【化5】
【0023】
に記載の構造によって示され、式中、Tは上記で定義された通りであり、R4は、水素、または、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキルであり、ここで、前記F原子は、18Fまたは19Fである化合物が提供される。
【0024】
その他の本発明の実施形態において、式(VIII):
【0025】
【化6】
【0026】
に記載の構造によって示され、中、前記F原子は、18Fまたは19Fである化合物が提供される式。
【0027】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XII):
【0028】
【化7】
【0029】
に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含み、式中、Aは、SO3HまたはL−SO3Hであり、ここで、Lは、置換された、または非置換のC1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
Jは、A(上記で定義された通り)、水素、および、W−Qbから選択され;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル、ヒドロキシアルキル、または、ハロアルキルを示し;ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり、Wが窒素である場合2であり、または、Wが炭素原子である場合、3であり;
U1およびU2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい。
【0030】
上記の式(XII)で示される化合物は、置換基Jは、A’と類似であり、置換基U1およびU2は、式(I)におけるR1およびR2と類似であることから、より広範囲の式(I)の範囲に含まれるとみなすこともできる。
【0031】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XII)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0032】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XV):
【0033】
【化8】
【0034】
に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含み、式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルから選択され;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;
Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4もしくはC5アルキレンリンカーを意味し;
U1およびU2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい。
【0035】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0036】
その他の本発明の実施形態において、本発明で説明されている化合物を、PETイメージングのためのマーカーで標識する方法が提供され、本方法は:PETイメージングのためのマーカーを、上記化合物のアミンサブユニットに付着させること;および、アミンサブユニットとスルホン酸サブユニットとを、スルホンアミド結合の形成を介して連結させること、を含む。
【0037】
本発明の実施形態いくつかにおいて、PETイメージングのためのマーカーとしては、18Fが可能である。
【0038】
図面の簡単な説明
図1:抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞へのNST705の選択的な結合;フローサイトメトリー解析;図1Aおよび図1Bは、それぞれコントロール中のアポトーシス細胞群、および、抗Fasで処理した培養物へのNST705化合物の取り込みを説明するFACSドットプロットである。図1Cは、図1Aおよび1Bに示されるデータのヒストグラム解析である。
【0039】
図2:抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞へのNST703の選択的な結合;フローサイトメトリー解析;図2Aおよび図2Bは、それぞれコントロール中のアポトーシス細胞群、および、抗Fasで処理した培養物へのNST703化合物の取り込みを説明するFACSドットプロットである。図2Cは、図2Aおよび2Bに示されるデータのヒストグラム解析である。
【0040】
図3A、3B:インビボでの、細胞死を受けた腫瘍細胞へのNST705の選択的な結合を示す蛍光顕微鏡検査法;マウスのリンパ腫。
【0041】
図4:培養した抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞への、DCの選択的な結合;フローサイトメトリー解析;図4Aおよび4Bは、コントロールの未処理細胞(4A)、および、アポトーシスの誘発を受けた細胞のDCの取り込み(4B)を示すドットプロットであり;図4Cは、図4Aおよび4Bに示されるデータのフローサイトメトリー(FACS)ヒストグラム表示である。
【0042】
図5:インビボでの、DCの、細胞死を受けた腫瘍細胞への選択的な結合;B16マウス黒色腫。図5Aは、腫瘍の蛍光顕微鏡観察を示す。DCの、多数のアポトーシスを受けた腫瘍細胞への大規模な結合を観察できる;図5Bは、同じ動物の小腸組織の蛍光顕微鏡観察を示しており、生存している正常な組織に、化合物が結合していないことを示す。
【0043】
図6:インビボでの、NST730の、細胞死を受けた腫瘍細胞への選択的な結合;B16マウス黒色腫。図6Aは、腫瘍の蛍光顕微鏡観察を示す。NST730の、多数のアポトーシスを受けた腫瘍細胞への大規模な結合を観察できる。図6Bは、同じ動物の筋肉組織の蛍光顕微鏡観察を示し、生存している正常な組織に、化合物が結合していないことを示す。
【0044】
図7(A〜C):インビボで、放射線照射により誘発された細胞死を受けたマウスのリンパ腫細胞への、NST732の選択的な結合:7A:H&E染色、7B:NST732の結合;蛍光顕微鏡;7C:TUNEL染色。
【0045】
図8(A〜D):NST732による細胞死の検出、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞;コンピューター化された蛍光イメージング。
【0046】
図9(A〜B):NST730による細胞死の検出、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞。
【0047】
図10:NST601の、アポトーシスを起こしたHeLa細胞への選択的な結合;フローサイトメトリー解析;図10Aは、アポトーシス誘発の際のNST601の選択的な結合を示すドットプロットであり;図10Bは、図10Aに示されるデータのヒストグラム解析である。
【0048】
図11:抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞への、DAの選択的な結合;フローサイトメトリー解析;図11Aは、アポトーシス誘発の際の選択的な結合を示すドットプロットであり;図11Bは、図11Aに示されるデータのヒストグラム解析である。
【0049】
発明の実施形態の詳細な記述
本発明の実施形態において、細胞質膜の正常な構成が乱された細胞に選択的に結合する化合物、および、それらの使用が提供され、このような細胞は、死プロセス(例えばアポトーシス)を受けた細胞、および、活性化を受けた血小板から選択される。以下、このような細胞は、包括的に、PNOM細胞という。
【0050】
それに対して、上記化合物は、細胞質膜の正常な構成を維持している細胞(正常な細胞)にはほとんど結合しない。PNOM細胞における結合の比率は、ここで「正常な細胞」と定義される細胞質膜の正常な組織を維持している同じ組織の細胞と比較して、少なくとも30%高い。PNOM細胞は、本発明の一実施形態において、死プロセスを受けた細胞であり、その他の実施形態においては、アポトーシス細胞であり、さらに、その他の実施形態においては、活性化血小板である。本発明はさらに、PNOM細胞に選択的に結合する化合物を用いることによってPNOM細胞を検出する方法に関する。
【0051】
用語「乱された膜に結合する化合物」(pertured membrane-binding compound: PMBC)は、正常な細胞にはほとんど結合せずに、PNOM細胞を選択的に標的化する化合物を意味する。本発明に係る、PNOM細胞へのPMBCの結合は、正常な細胞への結合より少なくとも30%大きいこととする。また、本発明で用いられるPMBCという化合物は、製薬上許容できる塩、金属キレート、上記化合物の溶媒化合物および水和物、同様に、製薬上許容できる塩の溶媒化合物および水和物も含む。製薬上許容できる付加塩の例としては、無機および有機酸付加塩が挙げられる、例えば、これらに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、シュウ酸塩、および、酢酸塩が挙げられる。あるいは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのような、製薬上許容できる無機および有機塩基付加塩を用いてもよい。
【0052】
用語「PMBC結合体」または「結合体」は、PMBCが、その他の有用な化合物、例えばイメージングのためのマーカーまたは薬物に連結したものを意味する。
【0053】
用語「アルキル」または「アルキレン」は、直鎖または分岐鎖の、場合により置換されたアルキルまたはアルキレンを意味する。同様に、本発明のヒドロキシアルキルおよびフルオロアルキルはそれぞれ、直鎖でもよいし、または、分岐鎖でもよい。
【0054】
用語「アリール」は、単環式または多環式芳香族の環系を意味する。
【0055】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味し;
本発明のアルキル、アルキレン、アリール、および、アラルキルのいずれかは、1またはそれ以上のアルキル、ニトロ、ハロまたはヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0056】
本発明において、用語「を選択的に標的化する」は、PMBCのPNOM細胞への選択的な結合を意味し、すなわち、正常な細胞への結合より少なくとも30%大きい程度で、PNOM細胞へ結合することを意味する。
【0057】
本発明に係る用語「有意な量」は、PNOM細胞に結合したPMBCの量が、非PNOM細胞に結合した量より少なくとも30%高いことを意味する。その他の本発明の実施形態において、上記量は、少なくとも50%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも60%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも70%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも80%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも90%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも95%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも150%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、少なくとも200%であり得る。その他の実施形態において、上記量は、PNOM細胞に結合する量の5倍より大きい量であり得る。実際の量を決定する方法は、用いられるイメージング方法および器具や、試験される臓器または組織に応じて様々なものが可能である。
【0058】
用語「固体支持体」は、本明細書において、固体マトリックス、不溶性マトリックス、および、不溶性の支持体を意味する。本発明に係る固体支持体は、マイクロ微粒子、マイクロフィルターまたはマイクロキャピラリー(micro−capillara)のスタックのような多種多様な構造に形成することが可能であり、さらに、アルミナ、けいそう土、セライト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、イオン交換樹脂、シリカゲル、活性炭、アンバーライト、ダウエックス(Dowex)、オイパーギット(Eupergit)、および、エチルスルホセルロース(ethylsufoxycellulose)のような様々な材料で構成することが可能である。
【0059】
本発明の実施形態において、インビボまたはインビトロでPNOM細胞を選択的に標的化する物質の製造に、PMBCが用いられる。なかでも、PMBCを、インビボまたはインビトロでPNOM細胞を検出するための、イメージングのためのマーカーを含む物質の製造に用いてもよい。
【0060】
本発明の実施形態において、本発明の化合物を、以下の物質のいずれか一つ、または、それらの組み合わせに連結させ、それにより「PMBC結合体」または「結合体」を形成してもよい。このような連結は、直接的に、または、リンカーを介してのいずれかが可能であり、ここで、リンカーは、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキレン、5または6個の原子の芳香族、または、ヘテロ芳香環、金属キレート化剤、およびそれらの組み合わせから選択され、ここで、上記物質としては、以下のようなものが可能であり:
i.イメージングのためのマーカー、これは、色、蛍光、X線、CTスキャン、磁気共鳴イメージング(MRI)、および、放射性同位体スキャン、例えば単光子放射型断層撮影法(SPECT)または陽電子放射断層撮影法(PET)の検出器から選択され;
ii.PNOM細胞の出現を示す特定の病気を、予防、回復または治療するための薬物。このような薬物としては、これらに限定されないが、以下のようなあらゆる薬物が挙げられる:(i)アポトーシス阻害剤(例えば、カスパーゼ阻害剤、抗酸化剤、Bcl−2系のモジュレーター);(ii)細胞死の活性化因子、アポトーシス誘発物質(例えば、抗ガン薬);(iii)血液凝固のモジュレーター、これは、凝固防止剤、血小板凝集阻止薬、または、血栓溶解薬から選択される。本発明の実施形態によれば、上記薬物は、抗血小板薬、ヘパリン、低分子量ヘパリン、糖タンパク質IIb/IIIaのアンタゴニスト、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)、または、凝固因子の阻害剤、例えばトロンビン阻害剤、または、Xa因子阻害剤から選択してもよく;(iv)抗炎症薬、または、免疫調整薬;または、(v)また、特定の放射性原子も、十分な用量で運搬される場合、細胞毒性となり得る;
iii.固体支持体。
【0061】
本発明の実施形態において、化学化合物をPNOM細胞に選択的に標的化する方法が提供される。本方法は、以下の工程を含む:(i)細胞群を、乱された膜に結合する化合物(PMBC)と称される化学化合物、または、このようなPMBCを含む結合体と接触させる工程。前記PMBCは、式(I)に記載の構造によって示される化合物であり:
【0062】
【化9】
【0063】
式中、Zは、存在しないか、または、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール基、または、このような基の組み合わせで形成された環系、5、6、7、8、9または10個の原子からなる環系を示し;
Xは、原子(C、N、OまたはS)を示し、ここで、これらの原子はそれぞれ、Zの意味に応じて0、1または2個の水素原子を有していてもよく;
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2基、または、W−Qbから選択され;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル、ヒドロキシアルキル、または、ハロアルキルを示し、ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;および、
bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり;Wが窒素の場合、2であり;または、Wが炭素原子である場合、3であり;
AおよびA’はそれぞれ、以下の4種の基のいずれか一種から選択されるラジカルであり:
i)水素;
ii)SO3H、および、L−SO3H、ここで、Lは、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
iii)式IIに記載の構造:
【0064】
【化10】
【0065】
式中、R3は、水素、(CH2)p−OH、(CH2)p−SH、(CH2)p−F、および、C1、C2、C3またはC4のカルボン酸のラジカルから選択され、ここで、pは、1、2または3の整数であり;
R4は、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6アルキル、C1、C2、C3、C4、C5、C6ヒドロキシアルキル、または、C1、C2、C3、C4、C5、C6フルオロアルキルであり;
cおよびdはそれぞれ、0または1の整数であり;cおよびdは、同一でも異なっていてもよく;*は、式(I)の構造への付着点を示し;または、
iv)式(III)に記載の構造:
【0066】
【化11】
【0067】
式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6アルキル、ヒドロキシアルキル、および、ハロ−アルキルから選択され;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;および、Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4もしくはC5アルキレンリンカーを意味し;*は、式(I)の構造への付着点を示し;
ここで、AまたはA’基の少なくとも1つは、水素以外であり、式(III)の構造以外であり;
(ii)それによって、化学物質を、細胞群中のPNOM細胞に選択的に標的化する工程、を含む。
【0068】
本発明の実施形態において、PNOM細胞は、死プロセスを受けた細胞、アポトーシス細胞、または、活性化血小板である。
【0069】
本発明の実施形態において、PNOM細胞は、体、臓器、組織、組織培養または体液を標的化することが可能である。
【0070】
本発明の化合物の、アポトーシスを受けた細胞に選択的に結合する能力は、実施例3〜7、9〜12および15〜16、ならびに、図1〜11に示され、これらは全て、インビボおよびインビトロの条件下で、本発明の、アポトーシスを受けた細胞に結合する化合物の能力を対象としたものである。
【0071】
本発明の実施形態いくつかによれば、本発明は、PNOM細胞の検出に用いることができる。このアプローチによれば、上記で定義されたPMBCまたはPMBC結合体を含み、インビトロ、エクスビボまたはインビボのいずれかでサンプル中のPNOM細胞の検出のためのイメージングのためのマーカー、および、製薬上許容できるキャリアーを含む、組成物の使用が提供される。
【0072】
その他の本発明の実施形態において、このようなPNOM細胞を含む疑いがある細胞群中でのPNOM細胞の存在の検出方法が提供され、本方法は、以下の工程を含む:
(i)細胞群を、PMBCまたはPMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーと接触させる工程、ここで、前記PMBCは、式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは上記で定義された通りであり;および、
(ii)細胞に結合したPMBCの量を決定する工程、ここで、結合した量がコントロールより有意に高いことは、細胞群中でPNOM細胞が存在すること示す。
【0073】
その他の本発明の実施形態において、患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在を検出する方法が提供され、本方法は、以下の工程を含む:
(i)PMBCまたはPMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーを、ヒトまたは動物に投与する工程、ここで、前記PMBCは、式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは上記で定義された通りであり;および、
(ii)組織中の細胞に結合したPMBCの量を決定する工程、ここで、組織中の細胞に結合した化合物の量がコントロールより有意に高いことは、前記組織が、PNOM細胞を含むことを示す。
【0074】
本発明の実施形態において、PNOM細胞は、体、臓器、組織、組織培養または体液に存在する。
【0075】
本発明の実施形態において、用語「コントロール」は、正常な細胞に結合する化合物の量を意味する。本発明の目的のための正常な細胞は、細胞質膜の正常な組織を維持する、同じ組織または同じサンプル由来の細胞を意味する。
【0076】
用語「イメージングのためのマーカー」は、あらゆるレポーター分子を意味し、例えば、放射性核種、酵素、蛍光性の、化学発光の、または、クロモジェニック物質、基質、補因子、阻害剤、または、磁気粒子、検出可能な色を生産する酵素反応で処理できる標識、X線のためのマーカー、MRIのためのマーカー、または、例えば単光子放射型断層撮影法(SPECT)、CTスキャン、MRIまたは陽電子放射断層撮影法(PETスキャン)のような放射性同位体イメージングのためのマーカーが挙げられる。本発明のPMBCまたはPMBC結合体は、PMBCの作用を介して、マーカーを、選択的な方法でPNOM細胞に標的化することを可能にする。次に、検出可能な標識は、用いられた特異的な標識(例えば蛍光、放射発光、または、色の生産)、MRI、X線などによって、当業界既知のあらゆる方法で検出できる。用語「結合」は、PNOMを検出可能な標識に接触させる共有結合または非共有結合(例えば静電結合)を意味する。
【0077】
本発明の実施形態において、検出可能な標識としては、以下の金属同位体のいずれか:Tc、In、Cu、Ga、Xe、TlおよびRe、および、共有結合で連結された原子:123Iおよび131I(放射性同位体スキャンのため)、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、および、イッテルビウム(III)(MRIのため)、および、18F、15O、18O、11C、13C、124I、13Nおよび75Br(陽電子放射断層撮影法(PET)スキャンのため)が可能である。
【0078】
本発明の実施形態において、PMBCまたはPMBC結合体は、PETスキャンによるアポトーシスまたは血餅の臨床的なイメージングを目的とする。このような場合において、PMBCまたはPMBC結合体は、本発明の実施形態において、PETイメージング、本発明の実施形態いくつかにおいては、例えば18F原子(直接的に、または、上記で定義されたリンカーを介してのいずれかでPMBCに連結させる)のイメージングのためのマーカーを含んでもよい。
【0079】
PETのための放射標識は、比較的短い半減期(例えば、18Fで115分間)を有する場合が多いため、放射性同位体の付着は、診断剤化合物を患者に投与する直前に、合成の最後の工程として行われることが多い。従って、PMBC−PET前駆体(ここで、PMBCは、イメージングの前の最終工程で18Fで置換され得る成分を含むか、またはそれらを付着させてある)を合成することが望ましい場合がある。本発明の実施形態において、上記成分は、ヒドロキシル基、ニトロ基、または、臭素または塩素のようなハロゲン原子である。このようなPMBC−PET前駆体もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0080】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(IV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0081】
【化12】
【0082】
式中、R2、R3およびR4は、式Iで定義された通りである。
【0083】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(IV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含み、式中、R2、R3およびR4は、上記で式Iにおいて定義された通りである。
【0084】
その他の本発明の実施形態において、式(V)に記載の構造によって示される化合物が提供される:
【0085】
【化13】
【0086】
式中、Tは、−OH、−O−CH3、−O−(CH2)yCH3、NH2、N(CH3)2、−N[(CH2)3CH3]2、−N(CH3)[(CH2)2CH3]、−N(CH3)CH2CH3、または、−N(CH3)[(CH2)3CH3]であり;yは、1、2または3の整数を意味し;および、R3、R4はそれぞれ、上記で定義された通りである。
【0087】
その他の本発明の実施形態において、式(VI)に記載の構造によって示される化合物が提供される:
【0088】
【化14】
【0089】
式中、Tは上記で定義された通りであり、R4は、水素、または、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキルであり、ここで、前記F原子は、18Fまたは19F、または、同位体の混合物である。
【0090】
その他の本発明の実施形態において、式(VII)に記載の構造によって示される、NST730と称される化合物が提供される:
【0091】
【化15】
【0092】
式中、前記F原子は、18Fまたは19F、または、同位体の混合物である。
【0093】
その他の実施形態において、式(VIII)に記載の構造によって示される、NST732と称される化合物が提供される:
【0094】
【化16】
【0095】
式中、前記F原子は、18Fまたは19F、または、同位体の混合物である。
【0096】
その他の実施形態において、式(IX)に記載の構造によって示される、NST705と称される化合物が提供される:
【0097】
【化17】
【0098】
その他の実施形態において、式(X)に記載の構造によって示される、NST703と称される化合物が提供される:
【0099】
【化18】
【0100】
その他の実施形態において、式(XI)に記載の構造によって示される化合物が提供される:
【0101】
【化19】
【0102】
式中、Eは、水素;C1、C2、C3またはC4のアルキル;C1、C2、C3またはC4フルオロ−アルキル;または、C1、C2、C3またはC4ヒドロキシアルキルであり;pは、1または2の整数を意味する。
【0103】
Eが水素であり、pが1の場合、上記化合物は、ダンシルシステイン(DC)である。留意すべきことは、DCは、当業界で既知の化合物である。しかしながら、それを、選択的にPNOM細胞に結合するPMBCとしての使用、および、インビトロまたはインビボでPNOM細胞を検出するための使用は新規である。
【0104】
その他の本発明の実施形態において、式XIに記載の構造で示され、式中、Eは、C1、C2、C3またはC4のアルキル;C1、C2、C3またはC4のフルオロアルキル;および、C1、C2、C3またはC4ヒドロキシアルキルから選択され、pは1または2である化合物が提供される。
【0105】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XII)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0106】
【化20】
【0107】
式中、Aは、SO3HまたはL−SO3Hであり、ここで、Lは、置換された、または非置換のC1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
Jは、A(上記で定義された通り)、水素、および、W−Qbから選択され;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル、ヒドロキシアルキル、または、ハロアルキルを示し;ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり、Wが窒素である場合2であり、または、Wが炭素原子である場合、3であり;
U1およびU2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ハロ−アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい。
【0108】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XII)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0109】
その他の本発明の実施形態において、式(XII)に記載の構造で示され、式中、U1またはU2のいずれかは、フッ素、および、C1、C2、C3またはC4のフルオロアルキルから選択され、前記F原子は、18Fまたは19Fのいずれか、または、同位体の混合物である化合物が提供される。
【0110】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XIII)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0111】
【化21】
【0112】
式中、nは、1、2、3、4、5または6整数を意味し、mは、0、1、2または3の整数を意味し、Q’は、水素、−OH または −Fであり;Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味する。
【0113】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中で、PNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、それらに連結した、式(XIII)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0114】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XIV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0115】
【化22】
【0116】
式中、nは、1、2、3、4、5または6整数を意味し、mは、0、1、2または3の整数を意味し、Q’は、水素、−OHまたは−Fを意味する。
【0117】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XIV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0118】
その他の実施形態において、式(XIV)に記載の構造で示され、式中、Q’がFであり、18Fまたは19Fのいずれか、または、同位体の混合物である化合物が提供される。mが0であり、nが4であり、Q’が水素である場合、上記化合物は、NST601と称される。
【0119】
mが0であり、nが3であり、Q’がヒドロキシルである場合、上記化合物は、NST602と称される。
【0120】
mが0であり、nが4であり、Q’がフッ素である場合、上記化合物は、NST603と称される。
【0121】
mが0であり、nが1であり、Q’が水素である場合、上記化合物は、ダンシル酸(dansylic acid,DA)である。ダンシル酸は、当業界において既知の化合物であるが、本発明における、それらのPNOM細胞を選択的に標的化する化合物としての使用、および、インビトロまたはインビボのいずれかにおけるPNOM細胞の検出のための使用は、新規である。
【0122】
その他の実施形態において、PNOM細胞を選択的に標的化する方法が提供され、本方法は、式(XV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0123】
【化23】
【0124】
式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルから選択され;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;
Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4もしくはC5アルキレンリンカーを意味し;
U1およびU2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい。
【0125】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XV)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0126】
その他の実施形態において、式(XV)に記載の構造で示され、式中、U1またはU2のいずれかは、フッ素、および、C1、C2、C3またはC4のフルオロアルキルから選択され、前記F原子は、18Fまたは19Fのいずれか、または、同位体の混合物である化合物が提供される。
【0127】
その他の実施形態において、が提供される PNOM細胞を選択的に標的化する方法であり、本方法は、式(XVI)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む:
【0128】
【化24】
【0129】
式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルから選択され;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;U1およびU2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい。
【0130】
その他の実施形態において、細胞群、または、患者もしくは動物の組織中でPNOM細胞を検出する方法が提供され、本方法は、イメージングのためのマーカーを含むか、または、イメージングのためのマーカーに連結した式(XVI)に記載の構造によって示される化合物を用いる上述の工程を含む。
【0131】
その他の実施形態において、式(XVI)に記載の構造によって示される化合物が提供され、式中、R5は、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;R6は、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;および、U1またはU2のいずれかは、水素以外である。
【0132】
U基が両方とも水素原子であり、R5がブチルであり、R6が水素である場合、その化合物は、NST650と称される。
【0133】
U基の一方がフッ素であり、F18またはF19のいずれかであり、R5がブチルである、および、R6が水素である場合、上記化合物は、NST651と称される。
【0134】
U基が両方とも水素原子であり、R5がブチルであり、R6がメチルである場合、上記化合物は、NST652と称される。
【0135】
U基の一方がフッ素であり、F18またはF19のいずれかであり、R5がブチルであり、R6がメチルである場合、上記化合物は、NST653と称される。
【0136】
U基が両方とも水素原子であり、R5が水素であり、R6がブチルである場合、上記化合物は、NST654と称される。
【0137】
U基の一方がフッ素であり、F18またはF19のいずれかであり、R5が水素であり、R6がブチルである場合、上記化合物は、NST655と称される。
【0138】
その他の実施形態において、上述の工程を含む、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれかに記載の構造によって示される化合物を用いることによって、化合物をPNOM細胞に選択的に標的化する方法が提供される。
【0139】
その他の実施形態において、上述の工程を含む、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つに記載の構造によって示される化合物を用いて、細胞群中でPNOM細胞を検出する方法が提供される。
【0140】
その他の実施形態において、上述の工程を含む、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つに記載の構造によって示される化合物を用いて、患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在をイメージングによって検出する方法が提供される。
【0141】
その他の実施形態において、化合物をPNOM細胞に選択的に標的化するための、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれかに記載の構造によって示される化合物の使用が提供される。
【0142】
その他の実施形態において、PNOM細胞を検出するための、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれかに記載の構造によって示される化合物の使用が提供される。
【0143】
その他の実施形態において、患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在をイメージングによって検出するための、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれかに記載の構造によって示される化合物が提供される。
【0144】
ある実施形態において、本発明は、試験される被検体の脳中のPNOM細胞を検出する方法を提供し、本方法は、以下を含む:(i)式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つに記載の構造に従った化合物を、試験される被検体に投与すること、ここで、前記化合物は、イメージングのためのマーカー、または、標識された金属キレートを含むか、または、それらに連結している;および、(ii)脳中の細胞に結合した化合物の量を決定すること、ここで、細胞に結合した化合物が著しい量であれば、それがPNOM細胞であることを示す。本発明のPMBCの、脳中のPNOM細胞を検出する能力は、実施例11および12、ならびに、図8および9で示される。
【0145】
その他の実施形態において、本発明は、試験される被検体の腫瘍中で、死プロセスを受けた細胞を検出する方法を提供し、本方法は、以下を含む:化合物または前記化合物を含む結合体、および、イメージングのためのマーカーを、試験される被検体に投与すること、ここで、前記化合物は、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つに記載の構造によって示される;および、本発明の実施形態に係る試験される被検体をイメージングすること。このようなPMBCの能力は、異なるマウスのガン、例えばリンパ腫や黒色腫(実施例および図3、5、6および7を参照)で示される。
【0146】
本発明の実施形態いくつかにおいて、固体支持体、イメージングのためのマーカー、または、治療薬物から選択される構成要素に、直接的に、または、リンカーYを介してのいずれかで連結された本発明において提供される化合物のいずれかを含む物質が提供され、ここで、リンカーYは、C1、C2、C3、C4、C5およびC6アルキレン;5〜6個の原子の芳香族、または、ヘテロ芳香環、ここで、前記ヘテロ芳香環のヘテロ原子は、N、OまたはSであり;金属キレート化剤、および、それらの組み合わせ、から選択される。
【0147】
その他の本発明の実施形態において、PETイメージングのための放射性マーカー(前記マーカーは、一実施形態において、これらに限定されないが、18F原子であり得る)を、式Iに記載の構造を有する本発明のPMBC(式中、Aは、式IIに記載の構造を有する)に付着させる方法が提供される。PMBCは、以下のスキームで示される2つのサブユニットからなるとみなすことができる:
【0148】
【化25】
【0149】
このような場合、PETイメージングのためのマーカーの上記化合物への付着は、以下の工程を含んでもよい:(i) マーカー(例えば18F原子)を、PMBCのアミンサブユニットに付着させること;および、(ii)それに続き、その放射標識したアミンサブユニットを、スルホンアミド結合の形成を介してスルホン酸サブユニットに連結させること。
【0150】
その他の本発明の実施形態において、PMBCをPETイメージングのためのマーカー(一実施形態において、これらに限定されないが、18Fであり得る)で標識する方法は、アミンサブユニットおよび/またはスルホン酸サブユニットの官能基を適切な保護基で保護する工程をさらに含む。その他の実施形態において、保護基は、PETイメージングのためのマーカーを付着させる工程、および/または、アミンサブユニットとスルホン酸サブユニットとを連結させる工程の後に除去される。その他の実施形態において、本方法は、当業者既知のあらゆる方法によって、生成物を精製する最終工程をさらに含む。
【0151】
本発明の実施形態において、イメージングのためのマーカーが金属原子(例えばGdまたは99mTc)である場合、PMBC結合体は、金属キレート化剤を含む。本発明の実施形態において、キレート化剤の原子を配位させる金属は、窒素、硫黄および酸素原子から選択される。その他の本発明の実施形態において、キレート化剤は、ジアミンジチオール、モノアミン−モノアミド−ビスチオール(MAMA)、トリアミド−モノチオール、および、モノアミン−ジアミド−モノチオールから選択される。
【0152】
このような場合、PMBC結合体前駆体(金属原子での錯化の前にキレート化剤に付着させたPMBC)と、その金属原子を含む複合体の両方は、本発明の範囲に含まれる。
【0153】
PMBCまたはPMBC結合体中に含まれるイメージングのためのマーカーが蛍光を発する成分である場合、その成分としては、直接的に、または、上記で定義されたリンカーを介してのいずれかでPMBCに連結した5−(ジメチルアミノ) ナフタレン−1−スルホニルアミド(ダンシル−アミド)基が可能である。
【0154】
本発明の化合物および本方法を、PNOM細胞の出現を特徴とする多種多様の生理学的条件、病的状態、病気または障害に関する、検出、診断、および、製薬的に有用な薬物をPNOM細胞の増殖巣に標的化するために用いてもよい。
【0155】
PNOM細胞を特徴とする医学的な障害の例は、これらに限定されないが、以下の通りであり:
過剰なアポトーシスの出現を特徴とする病気、例えば、変性性の障害、神経変性障害(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病)、AIDS、骨髄異形成症候群、虚血性または毒性の発作、移植による拒絶反応の際の移植細胞の損失; 腫瘍、および、特に極めて悪性の/高悪性度の腫瘍もまた、過剰な組織の増殖に加えて、促進されたアポトーシスを特徴とすることが多い。このような実施例によって、医学的な障害は、中枢神経系腫瘍、乳ガン、肝臓ガン、肺ガン、リンパ腫または黒色腫のようなガンが挙げられる。
【0156】
過剰な血液凝固を示す病気:これらの病気としては、なかでも、動脈または静脈血栓症、血栓塞栓症、例えば、心筋梗塞、脳卒中、深在静脈血栓症、汎発性血管内凝固(DIC)、血小板減少性血栓性紫斑病(TTP)、鎌状赤血球症、サラセミア、抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデスが挙げられる。
【0157】
免疫介在性の原因論または病因に関連する炎症性の障害および/または疾患、自己免疫性の障害、例えば抗リン脂質抗体症候群、全身性エリテマトーデス、結合織疾患、例えばリウマチ様関節炎、強皮症;甲状腺炎;外皮の障害、例えば天疱瘡または結節性紅斑;自己免疫性の血液障害;自己免疫性の神経疾患、例えば重症筋無力症;多発性硬化症;炎症性腸疾患、例えば潰瘍性大腸炎;血管炎。
【0158】
アテローム斑、特に不安定な、易損性の、かつ破裂しやすい斑もまた、PNOM細胞を特徴とし、例えばアポトーシス性のマクロファージ、アポトーシス性の平滑筋細胞、アポトーシス性の内皮細胞および活性化血小板が挙げられる。
【0159】
ガンに関連する病的状態を検出する本発明の化合物の能力は、DCの、マウスで誘発された腫瘍におけるアポトーシス細胞への標的化を示す実施例7で示される。
【0160】
また、関連する病気の重症度を評価するための検出方法や、被検体の治療剤への応答をモニターするための検出方法を行ってもよい。このようなモニタリングに関する例は、抗ガン治療への応答の評価である。実施例5からはっきり観察されるように、本発明の化合物は、リンパ腫細胞の化学療法によって誘発されたアポトーシスを検出できる。ほとんどの抗腫瘍治療、化学療法または放射線治療は、アポトーシスの誘発によってそれらの作用を発揮するため、腫瘍細胞の治療によって誘発されたアポトーシスのPMBCによる検出は、治療の直後で、腫瘍の減少が起こる前の腫瘍の抗腫瘍剤への感受性の程度について情報を与えることができるので、実質的に、抗ガン治療の投与時間と、その有効性を適正に評価する時点との時間差を短くする。その上、このようなモニタリングは、非侵襲的に、および定量的に行うことができ、ガン治療中に定期的に繰り返すことができるので、腫瘍の抗ガン治療に対する応答の時間的プロファイルに関する有用なデータを提供できる。
【0161】
加えて、抗ガン治療の悪影響をモニターするのに検出を用いてもよい。このような悪影響の大部分は、正常な、ただし感受性の高い細胞(例えば胃腸の上皮または骨髄の細網内皮系の細胞)の有害な処理によって誘発されたアポトーシスによる。このような組織でのPMBCまたはPMBC結合体によるアポトーシスを検出することにより、このような有害な組織の損傷の初期検出、および、治療プロトコールのよりよい最適化を可能にする場合がある。
【0162】
加えて、検出方法は、腫瘍中にもともと存在するアポトーシスの量、すなわち、腫瘍中で生じる自発的なアポトーシスのレベルの特徴付けを目的としてもよい。アポトーシスの荷重(load)は、腫瘍の悪性度のレベルと関連することが多いため、本発明の方法は、腫瘍の特徴付けに関する有用な情報を提供することが可能である。また、検出方法は、転移中のアポトーシスを検出することによって転移の検出を支援することも可能である。
【0163】
同様に、移植片拒絶反応の際の細胞の損失において、PMBCまたはPMBC結合体によって検出可能と思われるアポトーシスが主要な役割を果たすため、本発明のPMBCまたはPMBC結合体は、臓器移植後に、移植片の生存をモニターすることにおいて有用な場合がある。
【0164】
加えて、検出アプローチは、細胞保護的な治療に対する応答をモニターするのに用いてもよく、従って、ある程度の細胞死の評価を可能にすることによって、様々な病気(例えば上記で列挙したようなもの)における細胞の損失を阻害できる薬物のスクリーニングと開発に用いることができる。
【0165】
また、上記検出は、アテローム斑の検出に有用である場合もあり、なぜなら、このようなプラークの不安定化は、プラークを、易損性で、破裂、血栓症および塞栓形成を起こしやすくし、アポトーシス細胞(アポトーシス性のマクロファージ、平滑筋細胞および内皮細胞)、および、活性化血小板などの数種のタイプのPNOM細胞の関与を特徴とするためである。
【0166】
また、PMBCまたはPMBC結合体による検出は、組織培養または動物モデルにおけるアポトーシスの研究の、基礎的な調査の目的で行ってもよい。
【0167】
本発明のその他のアプローチに従って、本発明は、活性成分としてPMBCまたはPMBC結合体を、場合により製薬上許容できるキャリアーと共に含む医薬組成物に関する;PMBCまたはPMBC結合体は、(i)医薬として有用な、製薬的に活性な薬物;および、(ii)PMBCを含む。PMBCまたはPMBC結合体は、薬物をPNOM細胞に標的するように作用してもよく、従って、上記で定義されたようなPNOM細胞の存在を特徴とする病気の治療に有用な可能性がある。
【0168】
用語「製薬上許容できる」とは、製剤が、滅菌およびパイロジェンフリーであることを含む。適切な製薬用キャリアーは、薬学界周知である。キャリアーは、発明の化合物に適合し、かつそれらのレシピエントにとって有害でないという意味で「許容できる」ものでなければならない。典型的には、キャリアーは、滅菌およびパイロジェンフリーの水または塩類溶液であり得る;しかしながら、その他の許容できるキャリアーを用いてもよい。
【0169】
本発明のPMBCまたはPMBC結合体を含む医薬組成物は、既知の経路のいずれか、特に、経口、静脈内、腹膜内、筋肉内、皮下、舌下、眼内、鼻腔内または局所投与によって投与できる。キャリアーは、望ましい投与様式に従って選択されるべきであり、例えば、あらゆる既知の成分、例えば溶媒;乳化剤、賦形剤などが挙げられる。また、本医薬組成物は、必要に応じて、病気を治療する、副作用を取り除く、または活性成分の活性を増大させるのに用いられるその他の製薬的に活性な化合物も含んでもよい。
【0170】
典型的には、本発明の医薬組成物または製剤は、非経口投与、より特定には静脈内投与用である。非経口投与に適した製剤としては、以下が挙げられる:水性および非水性の滅菌注射液、これは、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、および、製剤を対象とするレシピエントの血液と等張にする溶質を含んでいてもよく;および、水性および非水性の滅菌懸濁液、これは、懸濁化剤および増粘剤を含んでいてもよい。
【0171】
薬物の製剤は、例えば、Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1975年)、および、Liberman,H. A.およびLachman,L.編集,Pharmaceutical Dosage Forms,マルセル・デッカー(Marcel Decker),ニューヨーク,ニューヨーク州(1980年)で論じられている。
【0172】
注射用製剤(例えば、滅菌した注射用の水性または油性懸濁液)は、既知の技術で、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて製剤化できる。また、滅菌した注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の、滅菌した注射用溶液または懸濁液であってもよい。使用可能な許容できる 媒体および溶媒のなかでも、水、リンガー溶液、および、等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。加えて、従来、溶媒または懸濁媒としては、滅菌した不揮発性油が用いられている。この目的のために、あらゆる無刺激性の不揮発性油が、使用可能であり、例えば、合成モノ−またはジグリセリドが挙げられる。加えて、オレイン酸のような脂肪酸が、注射液の製造において有用である。また、ジメチルアセトアミド、界面活性剤、例えばイオン性および非イオン性界面活性剤、および、ポリエチレングリコールも用いることができる。また、上記したような溶媒と湿潤剤の混合物はも有用である。
【0173】
1回の投薬形態を製造するためのキャリアー材料と併用できる活性成分の量は、患者と特定の投与様式に応じて様々であり得る。
【0174】
医薬として有用な薬物とPMBCとの結合は、共有結合、非共有結合(例えば静電力)、または、薬物を含み、表面に複合体をPNOM細胞に標的化するPMBCを有するキャリアー粒子(例えばリポソーム)の形成のいずれかが可能である。
【0175】
治療効果を発揮する薬物に連結させるPMBCまたはPMBC結合体の目的は、PNOM細胞、ならびに、上述したような病気または障害におけるPNOM細胞を含む組織および臓器に選択的に結合することである。薬物が標的に到達したら、PMBC結合体の一部として複合体のままで、または、PMBC単位から切り離された後(例えば開裂、破壊、天然の酵素の活性などによって)のいずれかの場合に、その他の既知のあらゆるメカニズムによってその生理学的活性が作用すると予想される。
【0176】
薬物(また、本発明においては「医薬活性物質」ともいう)は、本組成物が対象とする特定の病気によって適宜選択されるべきである。従って、本発明は、医薬活性物質を細胞に運搬する方法を提供し、本方法は、細胞を、PMBC、医薬活性物質、および、PMBCと医薬活性物質とを連結させるリンカー成分を含むPMBC結合体の有効量と接触させる工程を含む。
【0177】
その他の観点において、本発明は、PMBCと、上記病気を治療、阻害または予防するのに有用なことがわかっている医薬活性物質を含むPMBC結合体を形成することによって、医学的な障害の治療、阻害または予防を改善する方法を提供する。それによって、治療、阻害または予防の改善は、増殖巣中に含まれるPNOM細胞への標的化を介して、結合体を病気の増殖巣に選択的に標的化することによって達成できる。このような医学的な障害の例は上述の通りである。
【0178】
その他の本発明の実施形態において、凝固防止剤または線維素溶解薬を血栓に標的化する方法が提供され、本方法は、本発明に係る、凝固防止剤または線維素溶解薬を含むPMBC結合体を投与し、それによって治療剤の血栓への標的化を達成する工程を含む。
【0179】
PMBCまたはPMBC結合体は、異常で過剰な血液凝固の開始または増加を示す病気、不適切で過剰なアポトーシスを示す病気、例えば変性性の障害、神経変性障害、炎症性の障害、および/または、免疫介在性の原因論または病因に関連する病気、例えば自己免疫性の障害の治療、回復または予防に用いることもできる。これらの医学的な障害としては、これらに限定されないが、上述の病気のいずれかであり得る。
【0180】
血栓症またはアポトーシスを特徴とする不安定なアテローム斑を治療または予防することを目的として、上記の薬物群から薬物を選択できる。
【0181】
その他の本発明の実施形態において、抗ガン剤をアポトーシス細胞の増殖巣を有する腫瘍に標的化する方法が提供され、本方法は、本発明に係る、細胞毒性の薬物を含むPMBC結合体を投与し、それによって、腫瘍中の細胞死の増殖巣への薬物の標的化を達成する工程を含む。
【0182】
本発明の、抗ガン薬を含むPMBC結合体は、抗ガン治療計画の有効性を高めるために用いてもよい。抗ガン治療計画の増強は、以下のいずれかによって達成される:(1)結合体の腫瘍組織への標的化;このような組織は、異常で過剰なアポトーシスの荷重を特徴とすることが多い(後者は、腫瘍の悪性度のレベルと関連することが多い);(2)2段階のアポトーシスの使用:第一段階は、腫瘍中でのアポトーシスプロセスの開始を目的とする標準的な化学療法剤または放射線治療剤を用いることによって達成され;続くアポトーシスの第二段階は、PMBC結合体の一部として抗ガン薬が投与され、それによって第一段階で生産されたアポトーシス細胞を標的化する。従って、腫瘍巣中での抗ガン薬の局所濃度の選択的な増大は、局所的に腫瘍を死滅させるプロセスを結果的に高めることによって達成され、一方で、非腫瘍組織では比較的低い薬物レベルが維持される。
【0183】
この観点によれば、本発明は、さらにその上、病気の治療に有用な薬物の、個体の体内の病気の増殖巣への標的化を改善することによって、PNOM細胞を示す病気の治療を改善する方法に関する。本方法は、このような治療が必要な個体に、個体の病気の治療に有用なことがわかっている薬物を含むPMBCまたはPMBC結合体の有効量を投与することを含む。PMBC結合体は、活性な薬物を、病気に罹った組織に選択的に標的化することを可能にする。このような組織は、PNOM細胞を含むため、本発明の方法は、病気に罹った組織中において活性な薬物の局所的な濃度を増大させ、標的部位での薬物の治療効果を増強するように作用する。
【0184】
用語「有効量」は、症状の少なくとも1つの悪い徴候を、測定可能な作用に減少させることができる量を意味する。これは、用いられる薬物、投与様式、患者の年齢と重量、病気の重症度などに応じて選択されると予想される。
【0185】
本発明のその他のアプローチによれば、細胞の体液を清浄化するために、PMBCのPNOM細胞に特異的に結合する特性が用いられる。体液としては、一実施形態において、血液または血液製剤であり得る。
【0186】
本発明の実施形態によれば、本発明は、固体支持体に固定されたPMBCを提供する。固定は、共有結合または非共有結合のいずれかによる直接的な付着、または、スペーサーを介した付着が可能である。固定されたPMBCは、PNOM細胞からの体液を清浄化することを目的とする。
【0187】
用語「固体支持体」は、本明細書において、固体マトリックス、不溶性マトリックス、および、不溶性の支持体を意味する。本発明に係る固体支持体は、マイクロ微粒子、マイクロフィルターまたはマイクロキャピラリーのスタックのような多種多様な構造に形成することが可能であり、さらに、アルミナ、けいそう土、セライト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、イオン交換樹脂、シリカゲル、活性炭、アンバーライト、ダウエックス(Dowex)、オイパーギット(Eupergit)、および、エチルスルホキシセルロース(ethylsofoxycellulose)のような様々な材料で構成することが可能である。
【0188】
固体支持体に固定された化合物は、フィルター装置の一部を形成する。それにより、清浄化アプローチに従って、本発明はさらに、固体支持体に固定されたPMBCを含むハウジング、ならびに、流体の注入口および流体の出口を含むフィルター装置に関する。体液、例えば血液、または、血液製剤が、注入口を通ってハウジングに注入され、ハウジングに含まれる固定されたPMBCと接触し、付着する。従って、体液から、乱された膜を有する細胞、例えば障害を受けた細胞または死んでいる細胞を除去する、または、PNOM膜を含む塞栓のようなより大きい構造を除去する。その結果として、出口から出る流体のPNOM細胞含有量は減少しているか、または実質的にそれらを含まない。
【0189】
実施例
本発明を理解し、実際的にどうように実行可能であるかを観察するために、いくつかの実施形態を以下で説明するが、ここでは、本発明の化合物の、アポトーシスによるPNOMを受けた細胞への結合の検出を評価した。
【0190】
数種の化合物(いずれも式Iの一般構造を有する)の性能を実証することによって、PNOM細胞へ選択的に結合する際の本発明のPMBCの性能を決定することにおいて式Iの構造的特徴の役割が示される。
【0191】
本化合物の、PNOM細胞に選択的に結合する際の性能は、インビトロで、組織培養研究において、フローサイトメトリー(FACS)解析を用いて化合物固有の蛍光モニターすること;および、インビボで化合物の静脈内投与に続いて、組織切片の蛍光顕微鏡観察による固有の蛍光を検出することの両方によって測定した。以下、これらの実施形態を、非限定的な実施例によって、添付の図面を参照しながら説明する。
【0192】
実施例1:(5-ブチルメチルアミノ-ナフタレン-1-スルホニル)-グリシン(NST703)の合成
a.5−ブチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(1):
ジメチルホルムアミド(2.2L)中の、1−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(111g,0.497モル)、炭酸水素ナトリウム(124g,1.48モル)、および、1−ブロモブタン(79mL,0.734モル)の混合物を撹拌し、125℃で2.5時間加熱した。この混合物を、水(13L)と塩化ナトリウム(2.90kg)の混合物に注入し、pHを濃塩酸で8.9から3.0に低くし、形成された固体をろ過によって単離し、水で洗浄し(250mLで3回)、乾燥させ、53.9gの茶色の粉末を得た。この固体を、炭酸水素ナトリウム(22.4g,0.267モル)を加えながら、水(2.5L)に溶解させた。pHを7.9〜3.0に低くするために、塩酸(3M,78mL)を添加した。沈殿をろ過によって単離し、50℃で乾燥させ、47.9gの茶色の固体を得た。再結晶(イソプロパノール:水=2:1)により、44.5gの1を得た(32%)。
【0193】
b.5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(2):
1(42.7g,0.153モル)を、水(850mL)に懸濁し、および、炭酸水素ナトリウム(38.6g,0.459モル)を添加した。得られた溶液を、15℃で撹拌し、硫酸ジメチル(15mL,0.16モル)を添加した。6時間後に、さらに硫酸ジメチル(15mL,0.16モル)を添加した。この溶液を一晩撹拌し、80℃で0.5時間加熱した。室温に冷却した後に、pHを3.0に調節した。形成された固体を一晩ろ過し、水で洗浄し、50℃で乾燥させ、32.8g(73%)の茶色の粉末2を得た。
【0194】
c.5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−塩化スルホニル(3):
窒素下で、2(23.9g,0.081モル)を氷で冷却し、五塩化リン(18.7g,0.0896モル)と混合した。この混合物を水浴で60℃で2時間加熱し、氷(164g)と水(341g)の混合物に注入した。酢酸エチル(400mL)と、炭酸水素ナトリウム(50g,0.60モル)を添加した。相分離を行い、酢酸エチルで水相を抽出した。合わせた有機相を洗浄し、乾燥させ(硫酸ナトリウム)、活性炭(1.1g)で処理した。溶媒を蒸発させることにより、20.8gの3を油として得た。この生成物は、クロマトグラフィーで精製できる。
【0195】
d.5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニル)−グリシン(NST703):
2ミリモルのL−グリシン、および、3ミリモルのNaHCO3を、5mLの水に溶解させた。1ミリモルの3を含むアセトン溶液をゆっくり添加した。さらに溶液が透明になるまでアセトンを添加した。この混合物を一晩室温で撹拌し、光を遮断した。アセトンをフラッシュ蒸発により除去し、残存する水溶液を、2Mクエン酸を加えることによってpH4.5〜5に酸性化した。次に、NaClを飽和するまで添加し、この溶液を、酢酸エチルを3回(それぞれ20mL)用いて抽出した。抽出物を合わせ、MgSO4上で乾燥させ、溶液をろ過した。溶媒を除去し、残留物をシリカゲルを用いた液体クロマトグラフィーで精製した。溶出液として、ジクロロメタン中のメタノール勾配0〜5%を用いた。望ましい生成物を含む分画を合わせ、溶媒を除去した。1:1のエーテル:石油エーテル中で残留物を粉砕した。沈殿物をろ過して除き、真空中で一晩乾燥させることによって、5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニル−グリシン(NST703)を得た。
【0196】
NMRデータは以下の通りであった:
1H-NMR (CDCl3, δ=ppm): 8.58 (1H, d); 8.33 (1H, d); 8.22 (1H, d); 7.53 (2H, m); 7.26 (1H, m); 3.71 (2H, s); 3.10 (2H, t); 2.88 (3H, s); 1.66 (2H, m); 1.32 (2H, m); 0.87 (3H, t).ESI-MS: Consistent. m/z + H+= 351.7。
【0197】
実施例2:(5−ジブチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニル)−L−アスパラギン酸(NST705)の合成
2ミリモルのアスパラギン酸と、4ミリモルのNaHCO3を、5mLの水に溶解させた。1ミリモルの5−ジブチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニル塩化物(塩化バンシル(bansyl chloride),TCIから購入した)を含むアセトン溶液をゆっくり添加した。さらにアセトンを、溶液が透明になるまで添加した。この混合物を一晩室温で撹拌し、光を遮断した。アセトンをフラッシュ蒸発により除去し、残存する水溶液を、2Mクエン酸を加えることによってpH4.5〜5に酸性化した。次に、NaClを飽和するまで添加し、この溶液を、酢酸エチルを3回(それぞれ20mL)用いて抽出した。抽出物を合わせた、MgSO4上で乾燥させ、溶液をろ過した。溶媒を除去し、残留物をシリカゲルを用いた液体クロマトグラフィーで精製した。溶出液として、ジクロロメタン中のメタノール勾配0〜5%を用いた。所望の生成物を含む分画を合わせ、溶媒を除去した。1:1のエーテル:石油エーテル中で残留物を粉砕した。沈殿をろ過して除き、真空中で一晩乾燥させることによって、5−ジブチルアミノ−ナフタレン−1−スルホニル)−L−アスパラギン酸(NST705)を得た。
【0198】
1H-NMR (CD3OD, δ=ppm): 8.63 (1H, d); 8.38 (1H, d); 8.27 (1H, d); 7.55 (2H, m); 7.34 (1H, d); 3.84 (1H, broad); 3.11 (1H, d); 8.63 (4H, t); 2.68 (2H, broad); 1.43 (4H, m); 1.30 (4H, m); 0.85 (6H, t).
ESI-MS: Consistent. m/z + H+= 451.4。
【0199】
実施例3:NST705の、アポトーシスを起こしたJurkat細胞への選択的な結合;フローサイトメトリー(FACS)解析
培養したJurkat細胞(ヒト成人のT細胞性白血病細胞)を、10%のウシ胎仔血清(FCS)、4mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mMのCaCl2、および、抗生物質(100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン、および、12.5ユニット/mlのナイスタチン)が添加されたRPMI培地(Beit−Haemek,イスラエル)の懸濁液中で成長させた。アポトーシスの誘発の前に、培地を、HBS緩衝液(10mMのHEPES;140mMのNaCl、1mMのCaCl)で置き換えた。次に、アポトーシスを、抗FasAb(0.1μg/ml;3時間)での処理によって発生させた。その結果、かなりの割合の細胞がアポトーシスを起こし、これらは新たに形成された初期のアポトーシス細胞とみなされる。未処理細胞をコントロールとして用いた。次に、コントロール細胞とアポトーシス細胞の両方を、100μMのNST705と共に20分間インキュベートした。その後、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)で共染色し、細胞死の後期の膜の崩壊のマーカー、および、NST705化合物のコントロールとアポトーシス細胞への選択的な結合を、ベクトン・ディッキンソンのセルソーターとCellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS)解析によって決定した(356nmで励起させ、発光を530nmで測定した)。図1に示される解析は、コントロールと抗Fas処理した培養物中のアポトーシス細胞群へのNST705化合物の取り込みを説明する。
【0200】
図1Aおよび図1Bに示されるドットプロットにおいて、左下の四分の一区画は、健康な染色されていない細胞の分画を示す。右下の四分の一区画は、アポトーシスの初期段階で新たに形成された細胞群を示す。これらの細胞はなお、無傷の膜を維持しているため、PIを遮断している。NST705とPIの両方に結合している細胞、すなわち、アポトーシスの後期段階における細胞は、右上の四分の一区画で示される。
【0201】
アポトーシスの誘発は、選択的にNST705に結合し、プロットの右下の四分の一区画を占める、アポトーシスプロセスの初期段階における著しい別個の細胞群の出現に関連していた。個体群中で同定された初期のアポトーシス性の事象のパーセントは、未処理コントロール細胞の3%と比較して、アポトーシス細胞においては70.8%である。図1Cは、図1Aおよび1Bに示されるデータのヒストグラム解析である。アポトーシスプロセスの初期段階における高度に蛍光性の細胞の新しい別個のピークの出現は、抗Fas処理に明らかに関連する。
【0202】
実施例4:NST703の、アポトーシスを起こしたJurkat細胞への選択的な結合;フローサイトメトリー(FACS)解析
培養したJurkat細胞(ヒト成人のT細胞性白血病細胞)を、10%のウシ胎仔血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mM 1mMのHEPES、および、抗生物質(100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン、および、12.5ユニット/mlのナイスタチン)が添加されたRPMI培地(Beit−Haemek,イスラエル)の懸濁液中で成長させた。アポトーシスの誘発の前に、培地を、HBS緩衝液(10mMのHEPES;140mMのNaCl、1mMのCaCl)で置き換えた。次に、アポトーシスを、抗FasAb(0.1μg/ml;3時間)での処理によって発生させた。その結果、かなりの割合の細胞がアポトーシスを起こした。未処理細胞をコントロールとして用いた。次に、コントロール細胞とアポトーシス細胞の両方を、100μMのNST703と共に20分間インキュベートした。その後、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)で共染色した。NST703のコントロールとアポトーシス細胞への結合を、ベクトン・ディッキンソンのセルソーターとCellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS)解析によって決定した(356nmで励起させ、発光を530nmで測定した)。解析は、図2に示される。
【0203】
図2Aおよび2Bに示されるドットプロットにおいて、左下の四分の一区画は、健康な染色されていない細胞の分画を示す。右下の四分の一区画は、アポトーシスの初期段階で新たに形成された細胞群を示す。これらの細胞はなお、無傷の膜を維持しているため、PIを遮断している。NST703とPIの両方に結合している細胞、すなわち、アポトーシスの後期段階における細胞は、右上の四分の一区画で示される。
【0204】
アポトーシスの誘発は、選択的にNST703に結合し、プロットの右下の四分の一区画を占める、アポトーシスプロセスの初期段階における著しい別個の細胞群の出現に関連していた。個体群中で同定された初期のアポトーシス性の事象のパーセントは、未処理コントロール細胞の3.27%と比較して、アポトーシス細胞においては75.6%である。図2Cは、図2Aおよび図2Bに示されるデータのヒストグラム解析である。アポトーシスプロセスの初期段階における高度に蛍光性の細胞の新しい別個のピークの出現は、抗Fas処理に明らかに関連する。
【0205】
実施例5:インビボでの、NST705の、マウスにおけるリンパ腫の化学療法によって誘発されたアポトーシス細胞への標的化
8週齢の雄DBA/2マウス(ハーラン・ラボラトリーズ(Harlan laboratories),イギリス)に、リンパ腫細胞を皮下注射することによってリンパ腫を誘発させた。
【0206】
化学的に誘発されたLY−Rクローン由来の細胞を、ATCC(CRL−1722)から得て、続いてマウスの継代を維持した。腫瘍を誘発するために、容積100(μl中の5×105細胞を、マウスの大腿領域に注射した。10日後に、腫瘍の直径が5〜7mmの大きさに達したら、マウスを化学療法処理で処理した(タキソール,20mg/Kg,腹膜内注射)。24時間後、NST705を、用量1.4mg/マウスで全身に注射した。2時間後、マウスを殺し、腫瘍を液体窒素中で凍結させた。次に、低温切開片を調製し、連続スライドを、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)染色、または、オリンパス(Olympus)の蛍光顕微鏡(モデルIX70)を用いた蛍光顕微鏡評価(波長360nmで励起、530nmで発光)のいずれかで処理した。
【0207】
図3Aで示されるように、細胞死を受けた細胞は、H&E染色において、クロマチン凝縮と高度に好酸性の細胞質によって同定できる。また、これらの細胞は、NST705の著しい取り込みも示す(図3B)。実際に、このような死プロセスを受け、NST705の著しい取り込みの兆候を示す細胞の多くが実証されている。それに対して、このような取り込みは、生存しているアポトーシス性ではない腫瘍細胞(暗くなったままの部分)では観察されなかった。従って、これらの発見は、NST705を、腫瘍組織中の細胞死を受けた細胞に選択的に標的化すること実証している。
【0208】
実施例6:DCの、アポトーシスを起こしたJurkat細胞への選択的な結合;フローサイトメトリー(FACS)解析
培養したJurkat細胞(ヒト成人のT細胞性白血病細胞)を、10%のウシ胎仔血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mM 1mMのHEPES、および、抗生物質(100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン、および、12.5ユニット/mlのナイスタチン)が添加されたRPMI培地(Beit−Haemek,イスラエル)の懸濁液中で成長させた。アポトーシスの誘発の前に、培地を、HBS緩衝液(10mMのHEPES;140mMのNaCl、1mMのCaCl)で置き換えた。次に、アポトーシスを、抗FasAb(0.1μg/ml;3時間)での処理によって発生させた。その結果、かなりの割合の細胞がアポトーシスを起こした。未処理細胞をコントロールとして用いた。次に、コントロール細胞とアポトーシス細胞の両方を、100μMのDCと共に20分間インキュベートした。その後、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)で共染色した。DCのコントロールとアポトーシス細胞への結合を、ベクトン・ディッキンソンのセルソーターとCellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS)解析によって決定した(356nmで励起させ、発光を530nmで測定した)。解析は、図4に示される。
【0209】
図4Aおよび図4Bはそれぞれ、アポトーシスの活性化により、コントロール細胞(図4A)と比較して、アポトーシスの初期段階における細胞(図4B)により著しいDCの取り込みが起こることを示す代表的なFACSドットプロットである。UV軸は、DCの蛍光強度を示し;FL2軸は、ヨウ化プロピジウム(PI)の蛍光強度を示す。
【0210】
コントロールの未処理細胞において(図4A)、初期アポトーシス段階の細胞はほんのわずかな割合しかなかった(2.3%,右下の四分の一区画)。しかしながら、アポトーシスを誘発した場合(図4B)、アポトーシスの初期段階における、著しいDCの取り込みを示すが、無傷の膜を維持している細胞の大きい集団が出現しした(76%)(すなわち、PIに結合しない;右下の四分の一区画)。
【0211】
図4Cは、図4Aおよび4Bに示されるデータのフローサイトメトリー(FACS)ヒストグラム表示である。x軸は、DCの蛍光強度を示し、一方で、カウント軸は、事象のパーセンテージを示す。コントロール細胞は、実線で示し、抗Fas−Abで処理した細胞は、点線で示した。抗Fas抗体での処理により、細胞のUV蛍光における著しいシフトが起こり、これは、アポトーシス性の死プロセスの初期段階における著しいDCの取り込みの特徴が得られたことを反映している。
【0212】
実施例7:インビボでの、腫瘍、マウス黒色腫における、DCのアポトーシス細胞への標的化
腫瘍、特に攻撃性の悪性腫瘍(例えば黒色腫)は、異常な組織の増殖に加えて、腫瘍細胞の著しいアポトーシスによっても特徴付けられる。従って、腫瘍中のこれらのアポトーシス細胞を選択的に標的化するDCの性能を試験した。マウス(c57/黒;8週齢の雄マウス)に、マウス黒色腫から誘発されたB16−F10細胞(ATCC CRL−6475;容積100μlで、105細胞/マウス)を両側のわき腹の皮下に注射した。注射の前に、細胞系を、4mMのL−グルタミン;100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;12.5ユニット/mlのナイスタチン、および、10%のウシ胎仔血清(FCS)が添加されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)の培養中で維持した。腫瘍を14日間成長させたところ、腫瘍は直径5〜7mmに達した。
【0213】
DC化合物(2mg/マウス,NaPpi緩衝液中、pH7.40)を静脈注射した。2時間後、マウスを殺し、腫瘍、同様に、他の臓器を採取し、直ちに液体窒素中で凍結させた。続いて、凍結させた切片を、それぞれの臓器から製造した。腫瘍または他の臓器によるDCの取り込みを蛍光顕微鏡で評価した。
【0214】
図5Aは、腫瘍の蛍光顕微鏡観察を示す。DCの、多数のアポトーシスを受けた腫瘍細胞への大規模な結合を観察できる。また、アポトーシス細胞への著しい取り込みを反映する、化合物の細胞内蓄積と、高いレベルの選択性も実証され、一方で、生存している腫瘍細胞は未染色のままである。
【0215】
また、この高いレベルの選択性は、同じ動物の小腸組織の蛍光顕微鏡観察が示されている図5Bでも実証されており、生存している正常な組織に、化合物が結合していないことが示される。同様の結果を、様々なその他の非標的組織、例えば結腸、腎臓、脾臓、筋肉および心臓から得た。
【0216】
実施例8:末端ダンシル化標識法(TDLM):
18Fの短い半減期(約110分間)が、この同位体が、本発明のPMBCのPETイメージングのためのマーカーとして付着するための特定の条件を規定している。この条件としては、なかでも、塩基性溶液中での迅速な反応、および、比較的高温(「PETホットボックスケミストリー(PET Hot Box chemistry)」)が挙げられる。これらの条件は、本発明のPMBCの比較的感受性のあるスルホンアミドサブユニットに適合していない場合がある。また、望ましくない副反応も生じる可能性がある。これら起こり得る難点を克服するために、末端ダンシル化標識法を開発した(TDLM)。この方法によれば、PMBCは、2つのサブユニット:アミンサブユニット(これに18Fが連結されると予想される)と、スルホン酸サブユニット(例えばダンシル)を含むとみなされる。この方法によれば、18Fは、まずアミンサブユニットに付着される。精製前の最終工程としてのみ、フッ素化アミンサブユニットにスルホン酸サブユニットを付着させ、それによって、望ましい化合物を形成する。この反応条件を最適化することにより、ダンシル化の最終工程の実行を10分間にすることができ、それによって、「PETホットボックス」計画における18F付着の時間枠に適した合成が可能になる。
【0217】
本発明の化合物へのフッ素の付着の方法論、および、末端ダンシル化標識法を実証するために、19Fを含むNST730の合成スキームを説明する。この化合物は、以下の合成スキームで、アルバニー・モレキュラー・リサーチ社(Albany Molecular Research Inc.)(アルバニー,ニューヨーク州,米国)によって合成された:
【0218】
【化26】
実施例9:インビボでの、腫瘍、マウス黒色腫におけるNST730のアポトーシス細胞への標的化
NST730の、腫瘍中のアポトーシス細胞へ選択的に標的化する性能を、実施例7で説明されているようにして試験した。マウス(c57/黒;8週齢の雄マウス)に、マウス黒色腫から誘発されたB16−F10細胞(ATCC CRL−6475;容積100μlで、105細胞/マウス)をわき腹の両側の皮下に注射した。腫瘍を14日間成長させたところ、腫瘍は直径5〜7mmに達した。
【0219】
NST730化合物(2mg/マウス,NaPpi緩衝液中,pH7.40)を静脈注射した。2時間後、マウスを殺し、腫瘍、同様に、他の臓器を採取し、直ちに液体窒素中で凍結させた。続いて、凍結させた切片を、それぞれの臓器から製造した。腫瘍または他の臓器によるNST730の取り込みを蛍光顕微鏡で評価した。
【0220】
図6Aは、腫瘍の蛍光顕微鏡観察を示す。NST730の、多数のアポトーシスを受けた腫瘍細胞への大規模な結合を観察できる。また、アポトーシス細胞への著しい取り込みを反映する、化合物の細胞内蓄積と、高いレベルの選択性も実証され、一方で、生存している腫瘍細胞は未染色のままである。
【0221】
また、この高いレベルの選択性は、同じ動物の筋肉組織の蛍光顕微鏡観察が示されている図6Bでも実証されており、生存している正常な組織に、化合物が結合していないことが示される。同様の顕著な結合がみられない結果が、様々なその他の非標的組織、例えば結腸、腎臓、脾臓および心臓から得られた。
【0222】
実施例10:インビボでの、放射線照射により誘発された細胞死のNST732による検出;マウスのリンパ腫
DBAマウス(5〜6週齢の雄,ジャクソン・ラボラトリーズ(Jackson laboratories))に、50μlの塩類溶液中の106個のlyS細胞を皮下注射し、腫瘍形成に関して毎日試験した。8、9および10日目に、マウスをパースペックス製の箱に置き、6MVのX線装置(Linac)で、それぞれ6グレイを数回にわけて照射した。各マウスに、約1.0センチグレイ/モニターユニットの線量が照射された。13日目(最後の放射線照射から72時間)に、マウスに、NST732(70mg/kg,25%クレモフォア(cremophore)RH410、pH9を含むトリス塩基に溶解させた)を静脈注射した。2時間後に、腫瘍を切り出し、液体窒素中で凍結させ、組織病理学的な評価を行った。
【0223】
腫瘍の蛍光顕微鏡観察を示す図7Bで示されるように、NST732の多数のアポトーシスを受けた腫瘍細胞への大規模な結合を観察できる。NST732の取り込みを示す細胞と、細胞死を受けた細胞との同一性は、連続スライドで行われたH&EとTUNEL染色で確認された(それぞれ図7Aおよび7C)。
【0224】
従って、この実施例は、NST732の、放射線照射により誘発された細胞死を受けた腫瘍細胞に結合する能力、臨床実践で用いられる抗ガン治療の一般的な様式を示し、従って、この化合物の、この治療様式の作用をイメージングすることにおける重要な可能性を示す。
【0225】
実施例11:NST732による、ニューロン細胞死、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞の検出
Balb/Cマウス(10〜12週間)で、中大脳動脈を焼灼することによって脳虚血を誘発した。マウスを麻酔し、側頭骨を露出させた。骨を最小限の大きさの穴まで削り取って、焼灼を受ける動脈に接触できるようにした。22時間後、NST732(70mg/kg)を静脈注射した。2時間後(傷害の誘発から24時間で)、マウスを麻酔し、殺して、凍結させた切片を組織病理学的に解析するために、脳を採取して液体窒素中に入れた。蛍光顕微鏡による解析のために、4μmの薄片を作製し、それにより、細胞をNST732ではっきりと染色した。
【0226】
図8A〜Dで明らかにわかるように、障害のある領域における細胞は、NST732の大規模な結合を示した。それに対して、障害のある領域の外側の細胞は、上記化合物の顕著な結合は示さなかった。
【0227】
従って、これらの結果は、NST732の、インビボでニューロン細胞死をイメージングする能力を示しており、従って、脳卒中の診断と経過観察のための有用なツールであり得る。
【0228】
実施例12:NST730による、ニューロン細胞死、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞の検出
Balb/Cマウス(10〜12週間)で、中大脳動脈を焼灼することによって脳虚血を誘発した。マウスを麻酔し、側頭骨を露出させた。骨を最小限の大きさの穴まで削り取って、焼灼を受ける動脈に接触できるようにした。22時間後、NST730(70mg/kg)を静脈注射した。実施例11で説明されているように、2時間後(傷害の誘発から24時間で)、マウスを麻酔し、殺して、凍結させた切片を組織病理学的に解析するために、脳を採取して液体窒素中に入れた。
【0229】
図9から明らかにわかるように、障害を受けた領域の細胞は、NST730の大規模な結合を示した(図9A)。それに対して、障害のある領域の外側の細胞は、上記化合物の顕著な結合を示さなかった(図9B)。
【0230】
従って、これらの結果は、NST730の、インビボでニューロン細胞死をイメージングする能力を示し、従って、脳卒中の診断と経過観察のための有用なツールであり得る。
【0231】
実施例13:5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(NST601)の合成
a.5−ブチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(1):
ジメチルホルムアミド(2.2L)中の、5−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(111g,0.497モル)、炭酸水素ナトリウム(124g,1.48モル)、および、1ブロモブタン(79mL,0.734モル)の混合物を撹拌し、125℃で2.5時間加熱した。この混合物を、水(13L)と塩化ナトリウム(2.90kg)の混合物に注入し、pHを濃塩酸で8.9から3.0に低くし、形成された固体をろ過によって単離し、水で洗浄し(250mLで3回)、乾燥させ、53.9gの茶色の粉末を得た。この固体を、炭酸水素ナトリウム(22.4g,0.267モル)を加えながら、水(2.5L)に溶解させた。pHを7.9〜3.0に低くするために、塩酸(3M,78mL)を添加した。沈殿をろ過によって単離し、50℃で乾燥させ、47.9gの茶色の固体を得た。再結晶(イソプロパノール:水=2:1)により、44.5gの1(32%)を得た。
【0232】
b.5−ブチルメチルアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(2):
化合物1(42.7g,0.153モル)を、水(850mL)に懸濁し、炭酸水素ナトリウム(38.6g,0.459モル)を添加した。得られた溶液を、15℃で撹拌し、硫酸ジメチル(15mL,0.16モル)を添加した。6時間後に、さらに硫酸ジメチル(15mL,0.16モル)を添加した。この溶液を一晩撹拌し、80℃で0.5時間加熱した。室温に冷却した後に、pHを3.0に調節した。形成された固体を一晩ろ過し、水で洗浄し、50℃で乾燥させ、32.8g(73%)の茶色の粉末2を得た。
【0233】
実施例14:5−ヒドロキシプロピル−メチル−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(NST602)、および、5−フルオロプロピル−メチル−アミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(NST603)への合成経路
【0234】
【化27】
実施例15:インビトロでの、NST601の、アポトーシスを起こしたHeLa細胞への選択的な結合
HeLaS3細胞(ATCC CCL−2.2)を、2mMのL−グルタミン;100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン;12.5ユニット/mlのナイスタチン、および、10%のウシ胎仔血清(FCS)が添加されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で成長させた。細胞を、5×106細胞/プレートの密度で、10cm3の培養プレート(容積10ml)上に植え、培養物を、増殖培地を交換しないで96時間インキュベートすることによって、老化させた。その結果、かなりの割合の細胞がアポトーシスを起こした。細胞スクレーパーを用いて細胞を回収し、18G注射針を備えた注射器で植え継ぐことによって単一の細胞に分離し、106細胞/mlの密度でpH7.4のPBS緩衝液中に再懸濁した。NST601化合物のアポトーシス細胞への選択的な結合を、ベクトン・ディッキンソンのセルソーターとCellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS)解析によって決定した(356nmで励起させ、発光を530nmで測定した)。図10に示される解析は、NST601化合物のアポトーシス細胞群への取り込みを説明する。
【0235】
図10Aに示されるドットプロットで示されるように、培養物を老化させることによるアポトーシスの誘発は、アポトーシスプロセスの後期段階における著しい別個の細胞群の出現、NST601の結合、および、プロットの右上の四分の一区画の占有に関連していた。老化させた培養物中のNST601に結合した細胞の分画は、培養物中で老化させた細胞に典型的な、成長因子の損失と培地の酸性化による、自然に起こる細胞死プロセスを示す。細胞死プロセスを受けていない細胞(プロットの左下の四分の一区画を占める)は、染色されないままであった。
【0236】
図10Bは、図10Aに示されるデータのヒストグラム解析である。アポトーシスプロセスにおける高度に蛍光性の細胞の別個のピークの出現は、明らかに、培養物の老化に関連する。従って、NST601は、アポトーシス細胞への選択的な結合を行うマーカーとして役立たせることができる。
【0237】
実施例16:インビトロで抗FasAbにより誘発された、DAの、アポトーシスを受けたJurkat細胞への選択的な結合
培養したJurkat細胞(ヒト成人のT細胞性白血病細胞)を、10%のウシ胎仔血清(FCS)、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、1mM 1mMのHEPES、および、抗生物質(100ユニット/mlのペニシリン;100μg/mlのストレプトマイシン、および、12.5ユニット/mlのナイスタチン)が添加されたRPMI培地(Beit−Haemek,イスラエル)の懸濁液中で、成長させた。アポトーシスの誘発の前に、培地を、HBS緩衝液(10mMのHEPES;140mMのNaCl、1mMのCaCl)で置き換えた。次に、アポトーシスを、抗FasAb(0.1μg/ml;3時間)での処理によって発生させた。その結果、かなりの割合の細胞がアポトーシスを起こした。未処理細胞をコントロールとして用いた。次に、コントロール細胞とアポトーシス細胞の両方を、250μMのDAで20分間インキュベートした。その後、細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)で共染色した。DAのコントロールとアポトーシス細胞への結合を、ベクトン・ディッキンソンのセルソーターとCellQuestソフトウェアを用いたフローサイトメトリー(FACS)解析によって決定した(356nmで励起させ、発光を530nmで測定した)。解析は、図11に示される。
【0238】
図11Aに示されるドットプロットにおいて、左下の四分の一区画は、健康な染色されていない細胞の分画を示す。右下の四分の一区画は、アポトーシスの初期段階で新たに形成された細胞群を示す。これらの細胞はなお、無傷の膜を維持しているため、PIを遮断している。DAとPI両方が結合した細胞、すなわち、アポトーシスの後期段階における細胞は、右上の四分の一区画で示される。
【0239】
アポトーシスの誘発は、アポトーシスプロセスの初期段階における著しい別個の細胞群の出現、DAの選択的な結合、および、プロットの右下の四分の一区画の占有に関連していた。個体群中で同定された初期のアポトーシス性の事象のパーセントは、未処理コントロール細胞の4.2%と比較して、アポトーシス細胞では77%である。図11Bは、図11Aに示されるデータのヒストグラム解析である。アポトーシスプロセスの初期段階における高度に蛍光性の細胞の新しい別個のピークの出現は、抗Fas処理に明らかに関連する。従って、DAは、初期のアポトーシスで細胞に選択的に結合するマーカーとして役立たせることができる。
【0240】
実施例17:NST650の合成スキーム
【0241】
【化28】
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞へのNST705の選択的な結合である。
【図2】抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞へのNST703の選択的な結合である。
【図3】インビボでの、細胞死を受けた腫瘍細胞へのNST705の選択的な結合を示す蛍光顕微鏡検査法である。
【図4】培養した抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞への、DCの選択的な結合;フローサイトメトリー解析である。
【図5】インビボでの、DCの、細胞死を受けた腫瘍細胞への選択的な結合である。
【図6】インビボでの、NST730の、細胞死を受けた腫瘍細胞への選択的な結合である。
【図7】インビボで、放射線照射により誘発された細胞死を受けたマウスのリンパ腫細胞への、NST732の選択的な結合である。
【図8】NST732による細胞死の検出、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞である。
【図9】NST730による細胞死の検出、それに続く中大脳動脈(MCA)閉塞である。
【図10】NST601の、アポトーシスを起こしたHeLa細胞への選択的な結合である。
【図11】抗FasAbにより誘発されたアポトーシスを受けたJurkat細胞への、DAの選択的な結合;フローサイトメトリー解析である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞群中に存在する、細胞質膜の正常な構成が乱された細胞(PNOM細胞)に選択的に化学化合物を標的化する方法であって:
(i)細胞群を、PMBCと接触させる工程、ここで、PMBCは、式(I):
【化1】
に記載の構造によって示される化学物質であり、式中、Zは、存在しないか、または、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール基、または、このような基の組み合わせで形成された環系を示し、当該環系は5、6、7、8、9または10個の原子からなり;
Xは、原子(C、N、OまたはS)を示し、ここで、これらの原子はそれぞれ、Zの意味に応じて0、1または2個の水素原子を有していてもよく;
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2基、または、W−Qbであり;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル、ヒドロキシアルキル、または、直鎖もしくは分岐鎖ハロアルキルを示し、ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;および、
bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり;Wが窒素である場合、2であり;または、Wが炭素原子である場合、3であり;
AおよびA’は、それぞれ独立して、以下の4種の基のいずれか一種 から選択されるラジカルであり:
i)水素;
ii)SO3H、および、L−SO3H、ここで、Lは、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
iii)式IIに記載の構造:
【化2】
式中、R3は、水素、(CH2)p−OH、(CH2)p−SH、(CH2)p−F、または、このようなPNOM細胞を含む疑いがあり、細胞群を、示される化合物と接触させる工程を含み、C1、C2、C3またはC4のカルボン酸のラジカルであり、ここで、pは、1、2または3であり;
R4は、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;
cおよびdはそれぞれ、0または1の整数であり;cおよびdは、同一でも異なっていてもよく;*は、式(I)の構造への付着点を示し;または、
iv)式(III)に記載の構造:
【化3】
式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖ハロアルキルであり;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;および、Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;*は、式(I)の構造への付着点を示し;
ここで、AまたはA’基の少なくとも1つが水素以外であるの場合、少なくともAまたはA’基の他方は、式(III)の構造と異なり;
それによって、化学物質を、細胞群中のPNOM細胞に選択的に標的化する工程、を含む、前記方法。
【請求項2】
細胞群中のPNOM細胞の存在を検出する方法であって:
(i)細胞群を、PMBCまたは前記PMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーと接触させる工程(ここで、前記PMBCは、請求項1の式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは、請求項1で定義された通り);および、
(ii)前記細胞に結合したPMBCの量を決定する工程(ここで、結合した量がコントロールより有意に高いことは、細胞群中でPNOM細胞が存在すること示す)、
を含む前記方法。
【請求項3】
患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在を検出する方法であって:
(i)PMBCまたは前記PMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーを、ヒトまたは動物に投与する工程(ここで、前記PMBCは、請求項1の式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは、請求項1で定義された通り);および、
(ii)前記組織中の細胞に結合したPMBCの量を決定する工程、ここで、組織中の細胞に結合した化合物の量がコントロールより有意に高いことは、それがPNOM細胞を含む組織であることを示す、
を含む、前記方法。
【請求項4】
前記PNOM細胞は、死プロセスを受けた細胞、アポトーシス細胞、または、活性化血小板である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記PNOM細胞は、体、臓器、組織、組織培養または体液に存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)に記載の構造によって示される化合物において、式中、AまたはA’は式(II)によって示され、R1は水素であり、R2はNQ2であり、ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素、または、C1〜C4アルキルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記PMBCは、式(IV):
【化4】
に記載の構造によって示され、式中、R2、R3およびR4は、請求項1で定義された通りである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アポトーシスの出現を特徴とする病気において細胞死を検出するための、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
血液凝固を特徴とする病気において、活性化血小板を検出するための、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
腫瘍中でアポトーシス細胞を検出するための、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
抗ガン治療に対する腫瘍の応答をモニターするための、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
抗ガン治療の際に、正常な組織におけるアポトーシスをモニターするためであり、前記正常な組織におけるアポトーシスは、前記治療に悪影響を与える、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
式(V):
【化5】
に記載の構造によって示され、式中、Tは、−OH、−O−CH3、−O−(CH2)yCH3、NH2、N(CH3)2、−N[(CH2)3CH3]2、−N(CH3)[(CH2)2CH3]、−N(CH3)CH2CH3、または、−N(CH3)[(CH2)3CH3]であり;yは、1、2または3の整数を意味し;および、
R3およびR4はそれぞれ、請求項1で定義された通りである、前記化合物。
【請求項14】
式(VI):
【化6】
に記載の構造によって示され、式中、Tは、請求項13で定義された通りであり、R4は、水素、または、C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキルであり、ここで、F原子は、18Fまたは19F、または、フッ素同位体の混合物である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
式(VII):
【化7】
に記載の構造によって示され、式中、前記F原子は、18Fまたは19F、または、フッ素同位体の混合物である、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
式(VIII):
【化8】
に記載の構造によって示され、式中、前記F原子は、18Fまたは19F、または、フッ素同位体の混合物である、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
式(IX):
【化9】
に記載の構造によって示される、請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
式(X):
【化10】
に記載の構造によって示される、請求項13に記載の化合物。
【請求項19】
式(XI):
【化11】
に記載の構造によって示され、式中、Eは、C1、C2、C3またはC4のアルキルであり;C1、C2、C3またはC4のフルオロアルキルであり;または、C1、C2、C3またはC4ヒドロキシアルキルであり;pは、1または2の整数を意味する、請求項13に記載の化合物。
【請求項20】
pは1である、請求項13に記載の化合物。
【請求項21】
細胞群を、式(XII)に記載の構造によって示される化合物と接触させる工程を含む、細胞群中のPNOM細胞を選択的に標的化する方法であって:
【化12】
式中、Aは、SO3HまたはL−SO3Hであり、ここで、Lは、置換された、または非置換のC1、C2、C3、C4またはC5のアルキレンを意味し;
Jは、SO3H、L−SO3H(ここで、Lは上記で定義された通りである)、水素およびW−Qbから選択され;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖もしくは分岐鎖ハロアルキルを示し;ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり、Wが窒素である場合2であり、または、Wが炭素原子である場合、3であり;
U1およびU2はそれぞれ、ハロゲン、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2であり;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキルであり;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ハロ−アルキルであり;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキルであり;U1およびU2基は、同一でも異なっていてもよい、前記方法。
【請求項22】
細胞群中のPNOM細胞を選択的に標的化する方法であって、細胞群を、式(XIII):
【化13】
に記載の構造によって示される化合物と接触させる工程を含み、式中、nは、1、2、3、4、5または6整数を意味し、mは、0、1、2または3の整数を意味し、Q’は、水素、−OHまたは−Fであり、Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4またはC5のアルキレンを意味する、
それによって、PNOM前記細胞群中の細胞を選択的に標的化する、
前記方法。
【請求項23】
PNOM細胞を含む疑いがある細胞群中で、PNOM細胞を選択的に標的化する方法であって、細胞群を、式(XIV):
【化14】
に記載の構造によって示される化合物と接触させる工程を含み、式中、nは、1、2、3、4、5または6整数を意味し、mは、0、1、2または3の整数を意味し、Q’は、水素、−OHまたは−Fである、前記方法。
【請求項24】
Q’は、Fであり、18Fまたは19Fのいずれか、または、同位体の混合物である、式(XIV)に記載の構造によって示される化合物。
【請求項25】
式(XIV)に記載の構造によって示され、式中、mは、0であり、nは、4であり、Q’は、水素である化合物。
【請求項26】
式(XIV)に記載の構造によって示され、式中、mは、0であり、nは、3であり、Q’は、ヒドロキシルである化合物。
【請求項27】
式(XIV)に記載の構造によって示される、式中、mは、0であり、nは、4であり、Q’は、フッ素である化合物。
【請求項28】
PNOM細胞を含む疑いがある細胞群中で、PNOM細胞を選択的に標的化する方法であって、細胞群を、式(XV):
【化15】
に記載の構造によって示される化合物と接触させる工程を含み、
式中、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;
Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
U1およびU2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい、前記方法。
【請求項29】
U1またはU2のいずれかは、フッ素、または、C1、C2、C3またはC4のフルオロアルキルであり、前記F原子は、18Fまたは19Fのいずれかである、式(XV)に記載の構造によって示される化合物。
【請求項30】
細胞群と、式(XVI):
【化16】
に記載の構造によって示される化合物とを接触させる工程を含む、PNOM細胞を選択的に標的化する方法であって、
式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;U1およびU2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい、前記方法。
【請求項31】
R5は、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、および、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;R6は、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;および、U1またはU2のいずれかは、水素以外である、式(XVI)に記載の構造によって示される化合物。
【請求項32】
細胞群中のPNOM細胞を検出する方法であって:
(i)細胞群を、PMBCまたは前記PMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーと接触させる工程(ここで、前記PMBCは、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つで示される構造によって示される);および、
(ii)前記細胞群中の細胞に結合したPMBCの量を決定する工程を含み、ここで、結合した量がコントロールより有意に高いことは、細胞群中でPNOM細胞が存在すること示す、
前記方法。
【請求項33】
患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在を検出する方法であって:
(i)PMBCまたは前記PMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーを、ヒトまたは動物に投与する工程(ここで、前記PMBCは、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つに記載の構造によって示される);および、
(ii)前記組織中の細胞に結合したPMBCの量を決定する工程を含み、ここで、組織中の細胞に結合した化合物の量がコントロールより有意に高いことは、それがPNOM細胞を含む組織であることを示す、
前記方法。
【請求項34】
前記化合物は、直接、または、リンカーYを介してのいずれかで、固体支持体、イメージングのためのマーカー、または、治療薬物から選択される構成要素に連結され、前記リンカーYは、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキレン、5〜6個の原子の芳香族、または、5〜6個のヘテロ芳香環(ここで、前記ヘテロ芳香環のヘテロ原子は、N、OおよびSである)、金属キレート化剤、またはそれらの組み合わせである、請求項13〜20、24〜27、29および31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
請求項13〜20、24〜27、29および31のいずれか一項に記載の化合物を含み、前記化合物は、イメージングのためのマーカーに連結されているか、または、イメージングのためのマーカーを含む、PNOM細胞を検出するための薬剤。
【請求項36】
前記イメージングのためのマーカーは、色、蛍光、X線、CTスキャン、MRI、放射性同位体スキャン、SPECT、または、PETスキャンの検出器によって検出可能である、請求項35に記載の薬剤。
【請求項37】
請求項13〜20に記載の化合物をPETイメージングのためのマーカーで標識する方法であって、
(i)PETイメージングのためのマーカーを、前記化合物のアミンサブユニットに付着させること;
(ii)前記アミンサブユニットと、スルホン酸サブユニットとを、スルホンアミド結合の形成を介して連結させることを含む、前記方法。
【請求項38】
前記アミンサブユニットおよび/または前記スルホン酸サブユニットの官能基を適切な保護基で保護する工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
精製工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
PETイメージングのためのマーカーを付着させる工程の後に、および/または、前記アミンサブユニットとスルホン酸サブユニットとを連結させる工程の後に、前記保護基を除去する工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記PETイメージングのためのマーカーが、18Fである、請求項37に記載の化合物を標識する方法。
【請求項1】
細胞群中に存在する、細胞質膜の正常な構成が乱された細胞(PNOM細胞)に選択的に化学化合物を標的化する方法であって:
(i)細胞群を、PMBCと接触させる工程、ここで、PMBCは、式(I):
【化1】
に記載の構造によって示される化学物質であり、式中、Zは、存在しないか、または、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール基、または、このような基の組み合わせで形成された環系を示し、当該環系は5、6、7、8、9または10個の原子からなり;
Xは、原子(C、N、OまたはS)を示し、ここで、これらの原子はそれぞれ、Zの意味に応じて0、1または2個の水素原子を有していてもよく;
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2基、または、W−Qbであり;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキル、ヒドロキシアルキル、または、直鎖もしくは分岐鎖ハロアルキルを示し、ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;および、
bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり;Wが窒素である場合、2であり;または、Wが炭素原子である場合、3であり;
AおよびA’は、それぞれ独立して、以下の4種の基のいずれか一種 から選択されるラジカルであり:
i)水素;
ii)SO3H、および、L−SO3H、ここで、Lは、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
iii)式IIに記載の構造:
【化2】
式中、R3は、水素、(CH2)p−OH、(CH2)p−SH、(CH2)p−F、または、このようなPNOM細胞を含む疑いがあり、細胞群を、示される化合物と接触させる工程を含み、C1、C2、C3またはC4のカルボン酸のラジカルであり、ここで、pは、1、2または3であり;
R4は、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;
cおよびdはそれぞれ、0または1の整数であり;cおよびdは、同一でも異なっていてもよく;*は、式(I)の構造への付着点を示し;または、
iv)式(III)に記載の構造:
【化3】
式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖ハロアルキルであり;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;および、Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;*は、式(I)の構造への付着点を示し;
ここで、AまたはA’基の少なくとも1つが水素以外であるの場合、少なくともAまたはA’基の他方は、式(III)の構造と異なり;
それによって、化学物質を、細胞群中のPNOM細胞に選択的に標的化する工程、を含む、前記方法。
【請求項2】
細胞群中のPNOM細胞の存在を検出する方法であって:
(i)細胞群を、PMBCまたは前記PMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーと接触させる工程(ここで、前記PMBCは、請求項1の式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは、請求項1で定義された通り);および、
(ii)前記細胞に結合したPMBCの量を決定する工程(ここで、結合した量がコントロールより有意に高いことは、細胞群中でPNOM細胞が存在すること示す)、
を含む前記方法。
【請求項3】
患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在を検出する方法であって:
(i)PMBCまたは前記PMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーを、ヒトまたは動物に投与する工程(ここで、前記PMBCは、請求項1の式(I)に記載の構造によって示され、式中、A、A’、X、Z、R1、R2、R3、R4、R5、R6、L、cおよびdは、請求項1で定義された通り);および、
(ii)前記組織中の細胞に結合したPMBCの量を決定する工程、ここで、組織中の細胞に結合した化合物の量がコントロールより有意に高いことは、それがPNOM細胞を含む組織であることを示す、
を含む、前記方法。
【請求項4】
前記PNOM細胞は、死プロセスを受けた細胞、アポトーシス細胞、または、活性化血小板である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記PNOM細胞は、体、臓器、組織、組織培養または体液に存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)に記載の構造によって示される化合物において、式中、AまたはA’は式(II)によって示され、R1は水素であり、R2はNQ2であり、ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素、または、C1〜C4アルキルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記PMBCは、式(IV):
【化4】
に記載の構造によって示され、式中、R2、R3およびR4は、請求項1で定義された通りである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
アポトーシスの出現を特徴とする病気において細胞死を検出するための、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
血液凝固を特徴とする病気において、活性化血小板を検出するための、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
腫瘍中でアポトーシス細胞を検出するための、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
抗ガン治療に対する腫瘍の応答をモニターするための、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
抗ガン治療の際に、正常な組織におけるアポトーシスをモニターするためであり、前記正常な組織におけるアポトーシスは、前記治療に悪影響を与える、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
式(V):
【化5】
に記載の構造によって示され、式中、Tは、−OH、−O−CH3、−O−(CH2)yCH3、NH2、N(CH3)2、−N[(CH2)3CH3]2、−N(CH3)[(CH2)2CH3]、−N(CH3)CH2CH3、または、−N(CH3)[(CH2)3CH3]であり;yは、1、2または3の整数を意味し;および、
R3およびR4はそれぞれ、請求項1で定義された通りである、前記化合物。
【請求項14】
式(VI):
【化6】
に記載の構造によって示され、式中、Tは、請求項13で定義された通りであり、R4は、水素、または、C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキルであり、ここで、F原子は、18Fまたは19F、または、フッ素同位体の混合物である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
式(VII):
【化7】
に記載の構造によって示され、式中、前記F原子は、18Fまたは19F、または、フッ素同位体の混合物である、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
式(VIII):
【化8】
に記載の構造によって示され、式中、前記F原子は、18Fまたは19F、または、フッ素同位体の混合物である、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
式(IX):
【化9】
に記載の構造によって示される、請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
式(X):
【化10】
に記載の構造によって示される、請求項13に記載の化合物。
【請求項19】
式(XI):
【化11】
に記載の構造によって示され、式中、Eは、C1、C2、C3またはC4のアルキルであり;C1、C2、C3またはC4のフルオロアルキルであり;または、C1、C2、C3またはC4ヒドロキシアルキルであり;pは、1または2の整数を意味する、請求項13に記載の化合物。
【請求項20】
pは1である、請求項13に記載の化合物。
【請求項21】
細胞群を、式(XII)に記載の構造によって示される化合物と接触させる工程を含む、細胞群中のPNOM細胞を選択的に標的化する方法であって:
【化12】
式中、Aは、SO3HまたはL−SO3Hであり、ここで、Lは、置換された、または非置換のC1、C2、C3、C4またはC5のアルキレンを意味し;
Jは、SO3H、L−SO3H(ここで、Lは上記で定義された通りである)、水素およびW−Qbから選択され;ここで、Wは、存在しないか、窒素、酸素または炭素であり;および、Qは、水素、C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖もしくは分岐鎖ハロアルキルを示し;ここで、Q基は、同一でも異なっていてもよく;bは、整数であり、ここで、Wが酸素であるか、または、存在しない場合、1であり、Wが窒素である場合2であり、または、Wが炭素原子である場合、3であり;
U1およびU2はそれぞれ、ハロゲン、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2であり;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキルであり;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ハロ−アルキルであり;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキルであり;U1およびU2基は、同一でも異なっていてもよい、前記方法。
【請求項22】
細胞群中のPNOM細胞を選択的に標的化する方法であって、細胞群を、式(XIII):
【化13】
に記載の構造によって示される化合物と接触させる工程を含み、式中、nは、1、2、3、4、5または6整数を意味し、mは、0、1、2または3の整数を意味し、Q’は、水素、−OHまたは−Fであり、Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4またはC5のアルキレンを意味する、
それによって、PNOM前記細胞群中の細胞を選択的に標的化する、
前記方法。
【請求項23】
PNOM細胞を含む疑いがある細胞群中で、PNOM細胞を選択的に標的化する方法であって、細胞群を、式(XIV):
【化14】
に記載の構造によって示される化合物と接触させる工程を含み、式中、nは、1、2、3、4、5または6整数を意味し、mは、0、1、2または3の整数を意味し、Q’は、水素、−OHまたは−Fである、前記方法。
【請求項24】
Q’は、Fであり、18Fまたは19Fのいずれか、または、同位体の混合物である、式(XIV)に記載の構造によって示される化合物。
【請求項25】
式(XIV)に記載の構造によって示され、式中、mは、0であり、nは、4であり、Q’は、水素である化合物。
【請求項26】
式(XIV)に記載の構造によって示され、式中、mは、0であり、nは、3であり、Q’は、ヒドロキシルである化合物。
【請求項27】
式(XIV)に記載の構造によって示される、式中、mは、0であり、nは、4であり、Q’は、フッ素である化合物。
【請求項28】
PNOM細胞を含む疑いがある細胞群中で、PNOM細胞を選択的に標的化する方法であって、細胞群を、式(XV):
【化15】
に記載の構造によって示される化合物と接触させる工程を含み、
式中、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;
Lは、存在しないか、または、C1、C2、C3、C4またはC5アルキレンリンカーを意味し;
U1およびU2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい、前記方法。
【請求項29】
U1またはU2のいずれかは、フッ素、または、C1、C2、C3またはC4のフルオロアルキルであり、前記F原子は、18Fまたは19Fのいずれかである、式(XV)に記載の構造によって示される化合物。
【請求項30】
細胞群と、式(XVI):
【化16】
に記載の構造によって示される化合物とを接触させる工程を含む、PNOM細胞を選択的に標的化する方法であって、
式中、R5およびR6は、独立して、水素、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;R5およびR6は、同一でも異なっていてもよく;U1およびU2はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、−NO2;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖アルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ハロアルキル;C1、C2、C3、C4、C5またはC6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキルであり;U基は、同一でも異なっていてもよい、前記方法。
【請求項31】
R5は、C1、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、および、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;R6は、C2、C3、C4、C5、C6の直鎖または分岐鎖アルキル、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル、または、直鎖または分岐鎖フルオロアルキルであり;および、U1またはU2のいずれかは、水素以外である、式(XVI)に記載の構造によって示される化合物。
【請求項32】
細胞群中のPNOM細胞を検出する方法であって:
(i)細胞群を、PMBCまたは前記PMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーと接触させる工程(ここで、前記PMBCは、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つで示される構造によって示される);および、
(ii)前記細胞群中の細胞に結合したPMBCの量を決定する工程を含み、ここで、結合した量がコントロールより有意に高いことは、細胞群中でPNOM細胞が存在すること示す、
前記方法。
【請求項33】
患者または動物の組織中のPNOM細胞の存在を検出する方法であって:
(i)PMBCまたは前記PMBCを含む結合体、および、イメージングのためのマーカーを、ヒトまたは動物に投与する工程(ここで、前記PMBCは、式I、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XVまたはXVIのいずれか一つに記載の構造によって示される);および、
(ii)前記組織中の細胞に結合したPMBCの量を決定する工程を含み、ここで、組織中の細胞に結合した化合物の量がコントロールより有意に高いことは、それがPNOM細胞を含む組織であることを示す、
前記方法。
【請求項34】
前記化合物は、直接、または、リンカーYを介してのいずれかで、固体支持体、イメージングのためのマーカー、または、治療薬物から選択される構成要素に連結され、前記リンカーYは、C1、C2、C3、C4、C5またはC6アルキレン、5〜6個の原子の芳香族、または、5〜6個のヘテロ芳香環(ここで、前記ヘテロ芳香環のヘテロ原子は、N、OおよびSである)、金属キレート化剤、またはそれらの組み合わせである、請求項13〜20、24〜27、29および31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
請求項13〜20、24〜27、29および31のいずれか一項に記載の化合物を含み、前記化合物は、イメージングのためのマーカーに連結されているか、または、イメージングのためのマーカーを含む、PNOM細胞を検出するための薬剤。
【請求項36】
前記イメージングのためのマーカーは、色、蛍光、X線、CTスキャン、MRI、放射性同位体スキャン、SPECT、または、PETスキャンの検出器によって検出可能である、請求項35に記載の薬剤。
【請求項37】
請求項13〜20に記載の化合物をPETイメージングのためのマーカーで標識する方法であって、
(i)PETイメージングのためのマーカーを、前記化合物のアミンサブユニットに付着させること;
(ii)前記アミンサブユニットと、スルホン酸サブユニットとを、スルホンアミド結合の形成を介して連結させることを含む、前記方法。
【請求項38】
前記アミンサブユニットおよび/または前記スルホン酸サブユニットの官能基を適切な保護基で保護する工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
精製工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
PETイメージングのためのマーカーを付着させる工程の後に、および/または、前記アミンサブユニットとスルホン酸サブユニットとを連結させる工程の後に、前記保護基を除去する工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記PETイメージングのためのマーカーが、18Fである、請求項37に記載の化合物を標識する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−528359(P2007−528359A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516808(P2006−516808)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000535
【国際公開番号】WO2004/110339
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505467867)エヌエスティー・ニューロサバイバル・テクノロジーズ・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000535
【国際公開番号】WO2004/110339
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505467867)エヌエスティー・ニューロサバイバル・テクノロジーズ・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
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