説明

アポトーシス阻害タンパク質リガンド−エストロゲン受容体リガンドハイブリッド化合物並びにそれを利用したエストロゲン受容体分解誘導剤及び乳癌、子宮頚癌又は卵巣癌の予防及び治療剤

【課題】新規な作用機序により乳癌等の癌細胞に発現するエストロゲン受容体を特異的に分解して細胞死を誘導するアポトーシス阻害タンパク質リガンド−エストロゲン受容体リガンドハイブリッド化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式
【化1】


(式中、Xは、アポトーシス阻害タンパク質に特異的に結合するアポトーシス阻害タンパク質リガンドを表し、Yは、エストロゲン受容体に特異的に結合するエストロゲン受容体リガンドを表し、Zは、前記アポトーシス阻害タンパク質リガンド及び前記エストロゲン受容体リガンドの前記特異的結合性を阻害せずに両者を結合する低分子鎖状リンカーを表す)で示されることを特徴とする、アポトーシス阻害タンパク質リガンド−エストロゲン受容体リガンドハイブリッド化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアポトーシス阻害タンパク質(IAP)リガンド−エストロゲン受容体(ER)リガンドハイブリッド化合物に関する。詳しくは、乳癌等の癌細胞に発現するERを特異的に分解して、細胞死を誘導するIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの乳癌の患者の組織において、ERの発現上昇が認められ(例えば、非特許文献1参照)、これらの癌細胞はエストロゲン依存性の増殖を示すことが報告されている(例えば、非特許文献2及び3参照)。抗エストロゲン薬として頻用されるタモキシフェンは、乳癌組織等のERに対してエストロゲンと競合的に結合し、ER依存性の遺伝子発現を抑制することで、細胞の増殖を抑制して、抗腫瘍効果を発揮する(例えば、非特許文献4および5参照)。しかし、タモキシフェンは、子宮癌組織においてエストロゲンと同様にERに対するアゴニストとして作用し、子宮内膜癌のリスクを増大させることが知られている(例えば、非特許文献6および7参照)。さらに、タモキシフェンは、ERとの結合を介してAkt等の細胞内シグナルカスケードを起動し、がん細胞のアポトーシスを阻害することが報告されている(例えば、非特許文献8及び9参照)。
【0003】
一方、先に本発明者らは、タンパク質分解機構のユビキチン−プロテアソーム系を利用して、標的タンパク質を選択的に分解するプロテインノックダウン法を開発した(非特許文献10〜13参照)。即ち、生体内のタンパク質は、それを認識するユビキチンリガーゼ(E3)によってポリユビキチン化され、プロテアソームによって分解されるが、ユビキチンリガーゼ活性を持つcIAP1のリガンドと標的タンパク質のリガンドを連結させた分子を用いることにより、cIAP1と標的タンパク質の人口複合体を形成させ、生体内のタンパク質分解機構と同様にして標的タンパク質をユビキチン化してプロテアソームによる分解を誘導するものである。本発明者らは、当該プロテインノックダウン法を用いて、実際にウベニメクスとオールトランスレチノイン酸を結合したハイブリッド化合物を合成して、当該ハイブリッド化合物が、レチノイン酸に結合するタンパク質、CRABP(cellular retionic acid−binding protain)をユビキチン化してプロテアソームによる分解を誘導することを実証した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Frederik Holst, et al., "Estrogen receptor alpha (ESR1) gene amplification is ferquent in breast cancer", Nat Genet, 2007, 39, 655-660
【非特許文献2】S. F. Doisneau, et al., "Estrogen and antiestrogen regulation of cell cycle progression in breast cancer cells", Endocrine-Related Cancer, 2003, 10, 179-186
【非特許文献3】James S. Foster, et al., "Multifaceted Regulation of Cell Cycle Progression by Estrogen: Regulation of Cdk Inhibitors and Cdc25A Independent of Cyclin D1-Cdk4 Function", Mol. Cell. Biol., 2001, 21, 794-810
【非特許文献4】Bonnie J. Deroo, et al., "Estrogen receptors and human disease", J. Clin. Invest., 2006, 116(3), 561-570
【非特許文献5】Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group, "Tamoxifen for early breast cancer: an overview of the randomised trials", Lancet, 1998, 351, 1451-1467
【非特許文献6】Leslie Bernstein, et al., "Tamoxifen Therapy for Breast Cancer and Endometrial Cancer Risk", J. Natl. Cancer Inst., 1999, 91, 1654-1662
【非特許文献7】Yongfeng Shang, et al., "Molecular Determinants for the Tissue Specificity of SERMs", Science, 2002, 295, 2465-2468
【非特許文献8】Grazia Arpino, et al., "Crosstalk between the Estrogen Receptor and the HER Tyrosine Kinase Recoptor Family: Molecular Mechanism and Clinical Implications for Endocrine Therapy Resistance", Endocr. Rev., 2008, 29, 217-233
【非特許文献9】Sheng-Li Lin, et al., "ER-α36, a Variant of ER-α, Promotes Tomxifen Agonist Action in Endometrial Cancer Cells via the MAPK/ERK and PI3K/Akt Pathways", PLoS One, 2010, 5, e9013
【非特許文献10】Keiko Sekine, et al., "Small Molecules Destabilize cIAP1 by Activating Auto-ubiquitylation", J. Biol. Chem., 2008, 283, 8961-8968
【非特許文献11】Yukihiro Itoh, et al., "Protein Knockdown Using Methyl Bestatin -Ligand Hybrid Molecules: Design and Synthesis of Inducers of Ubiquitination-Mediated Degradation of Cellular Retinoic Acid-Binding Proteins", J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 5820-5826
【非特許文献12】Keiichiro Okuhira, et al., "Specific degradation of CRABL-II via cIAP1-mediated ubiquitylation induced by hybrid molecules that crosslink cIAP1 and the target protein", FEBS Letters, 2011, 585, 1147-1152
【非特許文献13】Yukihiro Itoh, et al., "Development of target protein-selective degradation inducer for protein knockdown", Bioorg. Med. Chem., 2011, 19, 3229-3241
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、新規な作用機序により乳癌等の癌細胞に発現するERを特異的に分解して細胞死を誘導するIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物並びにそれを利用したER分解誘導剤及び乳癌、子宮頚癌又は卵巣癌の予防及び治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0007】
(1)すなわち、本発明は、下記一般式
【化1】

(式中、Xは、アポトーシス阻害タンパク質に特異的に結合するアポトーシス阻害タンパク質リガンドを表し、Yは、エストロゲン受容体に特異的に結合するエストロゲン受容体リガンドを表し、Zは、前記アポトーシス阻害タンパク質リガンド及び前記エストロゲン受容体リガンドの前記特異的結合性を阻害せずに両者を結合する低分子鎖状リンカーを表す)で示されることを特徴とする、アポトーシス阻害タンパク質リガンド−エストロゲン受容体リガンドハイブリッド化合物である。
【0008】
(2)本発明はまた、前記アポトーシス阻害タンパク質リガンドは、ウベニメクス、MV−1若しくはAEG40599又はこれらの誘導体からなる群より選択される化合物から誘導される1価の基である、(1)に記載のハイブリッド化合物である。
【0009】
(3)本発明はまた、前記エストロゲン受容体リガンドは、エストロゲン受容体阻害剤から誘導される1価の基である、(1)又は(2)に記載のハイブリッド化合物である。
【0010】
(4)本発明はまた、前記エストロゲン受容体阻害剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント若しくはICI182780又はこれらの誘導体である、(1)〜(3)のいずれか1つに記載のハイブリッド化合物である。
【0011】
(5)本発明はまた、前記低分子鎖状リンカーは、下記一般式、
【化2】

(式中、Rは、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のモノエーテル基若しくはポリエーテル基又は炭素数3〜10のアミド基を表す)で示されることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1つに記載のハイブリッド化合物である。
【0012】
(6)本発明はまた、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−{3−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オクソプロビル}−4−メチルペンタンアミド、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−{5−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オクソペンチル}−4−メチルペンタンアミド、7−{(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−4−メチルペンタンアミド}−N−(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)−N−メチルヘプタンアミド、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−(2−{2−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−2−オクソエトキシ}エチル)−4−メチルペンタンアミド又は(R)−1−{(S)−2−シクロヘキシル−2−[(S)−2−(メチルアミノ)プロパンアミド]アセチル}−N−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オクソヘプチルアミノ}−1−オクソ−3,3−ジフェニルプロパン−2−イル)ピロリジン−2−カルボアミドである、(1)〜(5)のいずれか1つに記載のハイブリッド化合物である。
【0013】
(7)また、本発明は、下記一般式
【化3】

(式中、Xは、アポトーシス阻害タンパク質に特異的に結合するアポトーシス阻害タンパク質リガンドを表し、Yは、エストロゲン受容体に特異的に結合するエストロゲン受容体リガンドを表し、Zは、前記アポトーシス阻害タンパク質リガンド及び前記エストロゲン受容体リガンドの前記特異的結合性を阻害せずに両者を結合する低分子鎖状リンカーを表す)で示されるアポトーシス阻害タンパク質リガンド−エストロゲン受容体リガンドハイブリッド化合物又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする、エストロゲン受容体分解誘導剤である。
【0014】
(8)本発明はまた、前記アポトーシス阻害タンパク質リガンドは、ウベニメクス、MV−1若しくはAEG40599又はこれらの誘導体からなる群より選択される化合物から誘導される1価の基である、(7)に記載のエストロゲン受容体分解誘導剤である。
【0015】
(9)本発明はまた、前記エストロゲン受容体リガンドは、エストロゲン受容体阻害剤から誘導される1価の基である、(7)又は(8)に記載のエストロゲン受容体分解誘導剤である。
【0016】
(10)本発明はまた、前記エストロゲン受容体阻害剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント若しくはICI182780又はこれらの誘導体である、(7)〜(9)のいずれか1つに記載のエストロゲン受容体分解誘導剤である。
【0017】
(11)本発明はまた、前記低分子鎖状リンカーは、下記一般式
【化4】

(式中、Rは、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のモノエーテル基若しくはポリエーテル基又は炭素数3〜10のアミド基を表す)で示されることを特徴とする、(7)〜(10)のいずれか1つに記載のエストロゲン受容体分解誘導剤である。
【0018】
(12)本発明はまた、アポトーシス阻害タンパク質リガンド−エストロゲン受容体リガンドハイブリッド化合物は、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−{3−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オクソプロビル}−4−メチルペンタンアミド、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−{5−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オクソペンチル}−4−メチルペンタンアミド、7−{(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−4−メチルペンタンアミド}−N−(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)−N−メチルヘプタンアミド、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−(2−{2−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−2−オクソエトキシ}エチル)−4−メチルペンタンアミド又は(R)−1−{(S)−2−シクロヘキシル−2−[(S)−2−(メチルアミノ)プロパンアミド]アセチル}−N−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オクソヘプチルアミノ}−1−オクソ−3,3−ジフェニルプロパン−2−イル)ピロリジン−2−カルボアミドである、(7)〜(11)のいずれか1つに記載のエストロゲン受容体分解誘導剤である。
【0019】
(13)更に、本発明は、(7)〜(12)のいずれか1つに記載のエストロゲン受容体分解誘導剤を含む乳癌、子宮頚癌又は卵巣癌の予防及び治療剤である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物は、IAPに特異的に結合するIAPリガンドとERに特異的に結合するERリガンドとがリンカーを介して結合された構造を有するので、細胞内でユビキチンリガーゼ活性を有するcIAP1とERとを架橋し、ERを特異的にユビキチン化してプロテアソームによる分解を誘導する。従って、本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物を乳癌、子宮頚癌、卵巣癌等の患者に投与すれば、癌組織におけるERの発現そのものを減少させ、癌細胞を自滅に導くことができ、ER分解誘導剤又は乳癌等の予防及び治療剤として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物のER分解誘導活性の評価結果を示す図である。
【図2】本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物のアポトーシス促進活性の評価結果を示す図である。
【図3】本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物のアポトーシス促進活性の評価結果を示す図である。
【図4】本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物のER分解誘導活性の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物は、
【0024】
下記一般式(I)
【化5】

(式中、Xは、IAPに特異的に結合するIAPリガンドを表し、Yは、ERに特異的に結合するERリガンドを表し、Zは、前記IAPリガンド及び前記ERリガンドの前記特異的結合性を阻害せずに両者を結合する低分子鎖状リンカーを表す)で示されることを特徴とするものである。
【0025】
上記一般式(I)において、XのIAPリガンドとしては、IAPに特異的に結合する化合物から誘導される1価の基であれば特に限定されるものではない。係るIAPに特異的に結合する化合物の具体例としては、ウベニメクス((2S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタノイルアミノ]−4−メチルペンタン酸)、MV−1((R)−2−((R)−1−{(S)−2−シクロヘキシル−2−[(S)−2−(メチルアミノ)プロパナミド]アセチル}ピロリジン−2−カルボキサミド)−3,3−ジフェニルプロパン酸)若しくはAEG40599((S)−N−((S)−3,3−ジメチル−1−オキソ−1−{(R)−2−[(2,2,2−トリフルオロ−N−フェネチルアセトアミド)メチル]ピロリジン−1−イル}ブタン−2−イル)−2−(メチルアミノ)プロパナミド)又はこれらの誘導体が挙げられ、これらの中ではウベニメクスが特に好適に利用される。
【0026】
また、YのERリガンドとしては、ERに特異的に結合する化合物から誘導される1価の基であれば特に限定されるものではない。係るERに特異的に結合する化合物の具体例としては、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニル−1−ブテニル)フェノキシ]−N,N−ジメチルエチルアミン)、ラロキシフェン([6−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゾ[b]チエン−3−イル][4−(2−ピペリジン−1−イルエトキシ)フェニル]メタノン)、トレミフェン(2−[4−〔(Z)−4−クロロ−1,2−ジフェニル−1−ブテニル〕フェノキシ]−N,N−ジメチルエチルアミン)、フルベストラント(7α−[9−[(4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチルスルフィニル)]ノニル]エストラ−1(10),2,4−トリエン−3,17β−ジオール)、ICI182780(フルオロペンチルスルフィニル)ノニル]エストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17β−ジオール)等のエストロゲン受容体阻害剤又はこれらの誘導体が挙げられ、これらの中ではタモキシフェンが特に好適に利用される。
【0027】
更に、Zの低分子鎖状リンカーとしては、前記IAPリガンド及び前記ERリガンドの前記特異的結合性を阻害せずに両者を結合する2価の基であれば特に限定されるものではない。係る低分子鎖状リンカーの具体例としては、下記一般式(II)
【化6】

(式中、Rは、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のモノエーテル基若しくはポリエーテル基又は炭素数3〜10のアミド基を表す)で示される2価の基が挙げられる。一般式(II)において、炭素数2〜10のアルキレン基の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、メチルトリメチレン基等が挙げられる。また、炭素数2〜10のモノエーテル基若しくはポリエーテル基としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。更に、炭素数3〜10のアミド基としては、アルキルアミド、アルキルスルホニルアミド等が挙げられる。
【0028】
本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物の具体例としては、下記式(III)
【化7】

で示される(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−{3−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オクソプロビル}−4−メチルペンタンアミド、下記式(IV)
【化8】

で示される(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−{5−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オクソペンチル}−4−メチルペンタンアミド、下記式(V)
【化9】

で示される7−{(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−4−メチルペンタンアミド}−N−(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)−N−メチルヘプタンアミド、下記式(VI)
【化10】

で示される(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−(2−{2−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−2−オクソエトキシ}エチル)−4−メチルペンタンアミド、下記式(VII)
【化11】

で示される(R)−1−{(S)−2−シクロヘキシル−2−[(S)−2−(メチルアミノ)プロパンアミド]アセチル}−N−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オクソヘプチルアミノ}−1−オクソ−3,3−ジフェニルプロパン−2−イル)ピロリジン−2−カルボアミド等が挙げられる。
【0029】
次に、本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物の製造方法を、IAPリガンドがウベニメクス、ERリガンドがタモキシフェンの場合を例にして説明する。即ち、下記反応式(VIII)
【化12】

に示すように、ERリガンド(タモキシフェン)のアミノ基とリンカーのカルボキシル基とを既知の方法で縮合反応させ、IAPリガンドのアミノ基上にリンカーを導入する。次いで、得られた反応生成物のリンカーのアミノ基とIAPリガンド(ウベニメクス)の1位の水酸基とを既知の方法で縮合反応させ、目的のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物を得る。なお、逆の順序で、先にIAPリガンドにリンカーを縮合させ、次にIAPリガンドと縮合させてもよい。
【0030】
本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物は、IAPに特異的に結合するIAPリガンドとERに特異的に結合するERリガンドとがリンカーを介して結合された構造を有する。従って、細胞内でユビキチンリガーゼ活性を有するcIAP1とERとを架橋し、ERを特異的にユビキチン化してプロテアソームによる分解を誘導する。故に、本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物を乳癌、子宮頚癌、卵巣癌等の患者に投与すれば、癌組織におけるERの発現そのものを減少させ、癌細胞を自滅に導くことができ、ER分解誘導剤又は乳癌等の予防及び治療剤として極めて有用である。
【0031】
本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物をER分解誘導剤又は乳癌等の予防及び治療剤とする場合、前記IAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物を単体で、または錠剤、丸剤、散剤、粉剤、顆粒剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、カプセル剤等として患者に経口投与できる。また、注射剤として静脈内、筋肉内、皮内、皮下、腹腔内、動脈内、脊髄腔内等に投与できる。さらに、座薬として直腸内に投与しても良いし、ペレットによる埋め込みも可能である。点眼剤、点鼻剤、噴霧剤、吸入剤等として直接患部およびその周辺部位に局所的に投与することもできるし、軟膏、クリーム、粉状もしくは液状塗布剤、貼付剤等の外用剤として経皮的に投与しても良い。上述したうち、好ましい製剤形態や投与形態等は、患者の年齢、性別、体質、症状、処置時期等に応じて、医師によって適宜選択される。
【0032】
本剤を錠剤、丸剤、散剤、粉剤、顆粒剤等の固形製剤とする場合には、前記IAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物を、常法に従って適当な添加剤、例えば、乳糖、ショ糖、マンニット、トウモロコシデンプン、合成もしくは天然ガム、結晶セルロース等の賦形剤、デンプン、セルロース誘導体、アラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボシキメチルセルーロースカルシウム、カルボシキメチルセルーロースナトリウム、デンプン、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム等の滑沢剤、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等の充填剤または希釈剤等と適宜混合して製造することができる。錠剤等は、必要に応じて適当な被覆用基剤を用いて、糖衣、ゼラチン、腸溶被覆、フイルムコーティング等を施しても良い。
【0033】
本剤を注射剤、点眼剤、点鼻剤、吸入剤、噴霧剤、ローション剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の液状製剤とする場合には、前記IAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物を、精製水、リン酸緩衝液等の適当な緩衝液、生理的食塩水、リンゲル溶液、ロック溶液等の生理的塩類溶液、カカオバター、ゴマ油、オリーブ油等の植物油、鉱油、高級アルコール、高級脂肪酸、エタノール等の有機溶媒等に溶解して、必要に応じてコレステロール等の乳化剤、アラビアゴム等の懸濁剤、分散助剤、浸潤剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、ポリエチレングリコール系等の界面活性剤、リン酸ナトリウム等の溶解補助剤、糖、糖アルコール、アルブミン等の安定化剤、パラベン等の保存剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖、グリセリン等の等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、吸着防止剤、保湿剤、酸化防止剤、着色剤、甘味料、フレーバー、芳香物質等を適宜添加することにより、滅菌された水溶液、非水溶液、懸濁液、リポソームまたはエマルジョン等として調整できる。この際、注射剤は、生理学的なpH、好ましくは6〜8の範囲内のpHを有することが好ましい。
【0034】
本剤を、ローション剤、クリーム剤、軟膏等の半固形製剤とするには、前記IAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物を脂肪、脂肪油、ラノリン、ワセリン、パラフィン、蝋、硬膏剤、樹脂、プラスチック、グリコール類、高級アルコール、グリセリン、水、乳化剤、懸濁化剤等と適宜混和することにより製造することができる。
【0035】
本発明のER分解誘導剤又は乳癌等の予防及び治療剤に含まれる前記IAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物の含有量は、投与形態、重篤度や目的とする投与量などによって様々であるが、一般的には、製剤の全重量に対して0.1〜90重量%、好ましくは5〜50重量%である。
【0036】
また、本発明のER分解誘導剤又は乳癌等の予防及び治療剤の投与量は、患者の年齢、体重及び症状、目的とする投与形態や方法、治療効果、および処置期間等によって異なり、正確な量は医師により決定されるものであるが、通常、成人に対し1日当り前記IAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物の投与量換算で、経口投与の場合は10〜1000mgを、静脈内投与の場合は5〜500mgを、1回または数回に分けて投与する。
【0037】
次に、本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物について、実施例を示して更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
【化13】

【0039】
工程1:(E/Z)−tert−ブチル3−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オキソプロピルカルバメートの合成
【0040】
窒素雰囲気下、(E/Z)−エンドキシフェン(0.5mmol)、3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロパン酸(0.6mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,0.6mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.6mmol)、およびN,N−ジイソプロピルアミン(DIPEA,1.2mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、室温で3時間撹拌した。反応後、飽和重曹水(10mL)を加えクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)にて精製すると、(E/Z)−tert−ブチル3−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オキソプロピルカルバメートが収率88%で得られた。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.06−7.24(m,7H),6.71−6.83(m,4H),6.47−6.50(m,2H),5.33(brs,1H),4.10(m,1H),3.95(m,1H),3.38−3.76(m,5H),3.02−3.39(m,3H),2.44−2.95(m,4H),1.42(s,9H),1.24(t,J=8.0Hz,3H)
[ESI(+)−MS]:m/z 567[M+Na]
【0041】
工程2:tert−ブチル(2R,3S)−3−ヒドロキシ−4−((S)−1−{3−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オキソプロピルアミノ}−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イルアミノ)−4−オキソ−1−フェニルブタン−2−イルカルバメートの合成
【0042】
窒素雰囲気下、(E/Z)−tert−ブチル3−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オキソプロピルカルバメート(0.4mmol)、およびトリフルオロ酢酸(0.5mL)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、室温で10分間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣をジクロロメタン(5mL)に溶解し、(S)−2−((2S,3R)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド)−4−メチルペンタン酸(0.5mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,0.5mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.5mmol)、およびN,N−ジイソプロピルアミン(DIPEA,1.0mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応後、飽和重曹水(10mL)を加えクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル)にて精製すると、tert−ブチル(2R,3S)−3−ヒドロキシ−4−((S)−1−{3−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オキソプロピルアミノ}−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イルアミノ)−4−オキソ−1−フェニルブタン−2−イルカルバメートが収率82%で得られた。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.00−7.52(m,15H),6.67−6.83(m,4H),6.45−6.49(m,2H),5.60(brs,1H),5.22(m,1H),4.40(m,1H),3.88−4.13(m,4H),3.43−3.70(m,4H),2.87−3.07(m,5H),2.41−2.50(m,4H),1.56−1.62(m,2H),1.24−1.36(m,10H),0.87−0.94(m,9H)
[ESI(+)−MS]:m/z 857[M+Na]
【0043】
工程3:(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド]−N−{3−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オキソプロピル}−4−メチルペンタナミド塩酸塩の合成
【0044】
tert−ブチル(2R,3S)−3−ヒドロキシ−4−((S)−1−{3−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オキソプロピルアミノ}−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イルアミノ)−4−オキソ−1−フェニルブタン−2−イルカルバメート(0.2mmol)、および6M塩酸(0.1mL)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解した。室温で24時間撹拌した後、反応液を濃縮することで、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド]−N−{3−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オキソプロピル}−4−メチルペンタナミド塩酸塩が収率99%で得られた。
H NMR(400MHz,CDOD):δ=7.00−7.34(m,12H),6.90(m,1H),6.74−6.76(m,2H),6.63(d,J=8.8Hz,1H),6.54(m,1H),6.39(d,J=8.4Hz,1H),4.29(m,1H),4.09−4.12(m,2H),3.94(m,1H),3.40−3.79(m,5H),2.90−3.12(m,5H),2.44−2.80(m,4H),1.59−1.66(m,3H),0.88−0.93(m,9H)
[ESI(+)−MS]:m/z 757[M+Na]
【実施例2】
【0045】
【化14】

【0046】
工程1:(E/Z)−tert−ブチル5−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オキソペンチルカルバメートの合成
【0047】
窒素雰囲気下、(E/Z)−エンドキシフェン(0.5mmol)、5−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ペンタン酸(0.6mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,0.6mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.6mmol)、およびN,N−ジイソプロピルアミン(DIPEA,1.2mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、室温で24時間撹拌した。反応後、飽和重曹水(10mL)を加えクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)にて精製すると、(E/Z)−tert−ブチル5−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オキソペンチルカルバメートが収率90%で得られた。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.40−7.10(m,7H),6.67−6.85(m,4H),6.49−6.51(m,2H),4.76(brs,1H),4.13(m,1H),3.96(m,1H),3.60−3.76(m,2H),2.94−3.15(m,5H),2.26−2.52(m,4H),1.48−1.67(m,5H),1.43(s,9H),0.92(t,J=6.4Hz,3H)
[ESI(+)−MS]:m/z 595[M+Na]
【0048】
工程2:tert−ブチル(2R,3S)−3−ヒドロキシ−4−((S)−1−{5−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オキソペンチルアミノ}−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イルアミノ)−4−オキソ−1−フェニルブタン−2−イルカルバメートの合成
【0049】
窒素雰囲気下、(E/Z)−tert−ブチル5−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オキソペンチルカルバメート(0.4mmol)、およびトリフルオロ酢酸(0.5mL)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、室温で10分間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣をジクロロメタン(5mL)に溶解し、(S)−2−((2S,3R)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド)−4−メチルペンタン酸(0.5mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,0.5mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.5mmol)、およびN,N−ジイソプロピルアミン(DIPEA,1.0mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応後、飽和重曹水(10mL)を加えクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル)にて精製すると、tert−ブチル(2R,3S)−3−ヒドロキシ−4−((S)−1−{5−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オキソペンチルアミノ}−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イルアミノ)−4−オキソ−1−フェニルブタン−2−イルカルバメートが収率86%で得られた。
H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.05−7.27(m,10H),6.67−6.85(m,6H),6.47−6.51(m,2H),5.77(brs,1H),5.07(d,J=9.6Hz,1H),4.50(m,1H),4.12−4.18(m,2H),3.97(m,1H),3.70(brs,1H),3.59(brs,1H),3.31(m,1H),2.90−3.14(m,5H),2.17−2.50(m,4H),1.36−1.80(m,21H),0.92−0.98(m,9H)
[ESI(+)−MS]:m/z 885[M+Na]
【0050】
工程3:(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド]−N−{5−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オキソペンチル}−4−メチルペンタナミド塩酸塩の合成
【0051】
tert−ブチル(2R,3S)−3−ヒドロキシ−4−((S)−1−{5−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オキソペンチルアミノ}−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イルアミノ)−4−オキソ−1−フェニルブタン−2−イルカルバメート(0.2mmol)、および6M塩酸(0.1mL)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解した。室温で24時間撹拌した後、反応液を濃縮することで、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド]−N−{5−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オキソペンチル}−4−メチルペンタナミド塩酸塩が収率99%で得られた。
H NMR(400MHz,CDOD):δ=7.30−7.35(m,6H),7.09−7.31(m,5H),7.00(d,J=8.4Hz,1H),6.95(m,1H),6.74−6.76(m,2H),6.63(d,J=8.4Hz,1H),6.52(m,1H),6.39(d,J=8.4Hz,1H),4.33(m,1H),3.77−4.17(m,3H),3.30−3.80(m,3H),2.90−3.17(m,7H),2.32−2.47(m,4H),1.52−1.86(m,7H),0.90−0.98(m,9H)
[ESI(+)−MS]:m/z 785[M+Na]
【実施例3】
【0052】
【化15】

【0053】
工程1:(E/Z)−tert−ブチル7−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソへプチルカルバメートの合成
【0054】
窒素雰囲気下、(E/Z)−エンドキシフェン(0.5mmol)、7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘプタン酸(0.6mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,0.6mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.6mmol)、およびN,N−ジイソプロピルアミン(DIPEA,1.2mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、室温で12時間撹拌した。反応後、飽和重曹水(10mL)を加えクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)にて精製すると、(E/Z)−tert−ブチル7−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソへプチルカルバメートが収率76%で得られた。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.04−7.17(m,7H),6.70−6.86(m,4H),6.48−6.52(m,2H),4.60(brs,1H),4.13(m,1H),3.96(m,1H),3.61−3.75(m,2H),2.95−3.15(m,5H),2.23−2.50(m,4H),1.42−1.63(m,18H),0.94(t,J=7.2Hz,3H)
[ESI(+)−MS]:m/z 623[M+Na]
【0055】
工程2:tert−ブチル(2R,3S)−3−ヒドロキシ−4−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソヘプチルアミノ}−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イルアミノ)−4−オキソ−1−フェニルブタン−2−イルカルバメートの合成
【0056】
窒素雰囲気下、(E/Z)−tert−ブチル7−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソへプチルカルバメート(0.3mmol)、およびトリフルオロ酢酸(0.5mL)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、室温で10分間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣をジクロロメタン(5mL)に溶解し、(S)−2−((2S,3R)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド)−4−メチルペンタン酸(0.4mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,0.4mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.4mmol)、およびN,N−ジイソプロピルアミン(DIPEA,1.0mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応後、飽和重曹水(10mL)を加えクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル)にて精製すると、tert−ブチル(2R,3S)−3−ヒドロキシ−4−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソヘプチルアミノ}−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イルアミノ)−4−オキソ−1−フェニルブタン−2−イルカルバメートが収率77%で得られた。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.03−7.36(m,12H),6.66−6.83(m,5H),6.46−6.49(m,2H),5.89(brs,1H),5.06(brs,1H),4.48(m,1H),3.97−4.11(m,3H),3.56−3.72(m,2H),2.91−3.22(m,6H),2.44−2.50(m,2H),2.07−2.20(m,2H),1.20−1.63(m,24H),0.87−0.93(m,9H)
[ESI(+)−MS]:m/z 914[M+Na]
【0057】
工程3:7−{(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド]−4−メチルペンタナミド}−N−(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)−N−メチルヘプタナミド塩酸塩の合成
【0058】
tert−ブチル(2R,3S)−3−ヒドロキシ−4−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソヘプチルアミノ}−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イルアミノ)−4−オキソ−1−フェニルブタン−2−イルカルバメート(0.2mmol)、および6M塩酸(0.1mL)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解した。室温で12時間撹拌した後、反応液を濃縮することで、7−{(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド]−4−メチルペンタナミド}−N−(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)−N−メチルヘプタナミド塩酸塩が収率99%で得られた。
H NMR(400MHz,CDOD):δ=6.91−7.35(m,13H),6.40−6.76(m,5H),3.98−4.34(m,4H),3.66−3.83(m,3H),2.91−3.18(m,7H),2.30−2.47(m,4H),1.28−1.84(m,11H),0.89−0.99(m,9H)
[ESI(+)−MS]:m/z 813[M+Na]
【実施例4】
【0059】
【化16】

【0060】
工程1:(E/Z)−tert−ブチル2−{2−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−2−オキソエトキシ}エチルカルバメートの合成
【0061】
窒素雰囲気下、(E/Z)−エンドキシフェン(0.5mmol)、2−[2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エトキシ]酢酸(0.6mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,0.6mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.6mmol)、およびN,N−ジイソプロピルアミン(DIPEA,1.2mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、室温で12時間撹拌した。反応後、飽和重曹水(10mL)を加えクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)にて精製すると、(E/Z)−tert−ブチル2−{2−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−2−オキソエトキシ}エチルカルバメートが収率87%で得られた。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.02−7.31(m,7H),6.76−6.83(m,4H),6.43−6.56(m,2H),5.08(brs,1H),3.98−4.40(m,4H),3.57−3.80(m,4H),3.31−3.41(m,3H),2.82−3.12(m,3H),2.43(t,J=7.6Hz,2H),1.41(s,9H),0.95(t,J=7.2Hz,3H)
[ESI(+)−MS]:m/z 597[M+Na]
【0062】
工程2:tert−ブチル(11S,14S,15R)−14−ヒドロキシ−1−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}−11−イソブチル−3−メチル−4,10,13−トリオキソ−16−フェニル−6−オキサ−3,9,12−トリアザヘキサデカン−15−イルカルバメートの合成
【0063】
窒素雰囲気下、(E/Z)−tert−ブチル2−{2−[(2−{4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−2−オキソエトキシ}エチルカルバメート(0.4mmol)、およびトリフルオロ酢酸(0.5mL)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣をジクロロメタン(5mL)に溶解し、(S)−2−((2S,3R)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド)−4−メチルペンタン酸(0.5mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,0.5mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.5mmol)、およびN,N−ジイソプロピルアミン(DIPEA,1.0mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応後、飽和重曹水(10mL)を加えクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:メタノール=20:1)にて精製すると、tert−ブチル(11S,14S,15R)−14−ヒドロキシ−1−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}−11−イソブチル−3−メチル−4,10,13−トリオキソ−16−フェニル−6−オキサ−3,9,12−トリアザヘキサデカン−15−イルカルバメートが収率71%で得られた。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.76(m,1H),6.95−7.26(m,13H),6.66−6.82(m,4H),6.45−6.48(m,2H),5.67(m,1H),5.13(d,J=8.0Hz,1H),4.62(m,1H),3.95−4.43(m,7H),3.26−3.70(m,6H),2.84−3.04(m,5H),2.46−2.73(m,2H),1.28−1.88(m,12H),0.92−0.98(m,9H)
[ESI(+)−MS]:m/z 887[M+Na]
【0064】
工程3:(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド]−N−(2−{2−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−2−オキソエトキシ}エチル)−4−メチルペンタナミド塩酸塩の合成
【0065】
tert−ブチル(11S,14S,15R)−14−ヒドロキシ−1−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}−11−イソブチル−3−メチル−4,10,13−トリオキソ−16−フェニル−6−オキサ−3,9,12−トリアザヘキサデカン−15−イルカルバメート(0.2mmol)、および6M塩酸(0.1mL)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解した。室温で24時間撹拌した後、反応液を濃縮することで、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタナミド]−N−(2−{2−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−2−オキソエトキシ}エチル)−4−メチルペンタナミド塩酸塩が収率99%で得られた。
H NMR(400MHz,CDOD):δ=7.25−7.38(m,7H),6.91−7.16(m,6H),6.75−6.77(m,2H),6.55−6.63(m,2H),6.40(d,J=8.0Hz,1H),3.92−4.37(m,6H),3.51−3.83(m,5H),3.36−3.40(m,2H),2.92−3.13(m,5H),2.43−2.54(m,2H),1.59−1.84(m,3H),0.90−0.98(m,9H)
[ESI(+)−MS]:m/z 787[M+Na]
【実施例5】
【0066】
【化17】

【0067】
工程1:tert−ブチル(S)−1−{(S)−1−シクロヘキシル−2−[(R)−2−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソヘプチルアミ}−1−オキソ−3,3−ジフェニルプロパン−2−イルカルバモイル)ピロリジン−1−イル]−2−オキソエチルアミノ}−1−オキソプロパン−2−イル(メチル)カルバメートの合成
【0068】
窒素雰囲気下、tert−ブチル(2R,3S)−3−ヒドロキシ−4−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソヘプチルアミノ}−4−メチル−1−オキソペンタン−2−イルアミノ)−4−オキソ−1−フェニルブタン−2−イルカルバメート(0.4mmol)、およびトリフルオロ酢酸(0.5mL)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣をジクロロメタン(5mL)に溶解し、(R)−2−[(R)−1−((S)−2−{(S)−2−[tert−ブトキシカルボニル(メチル)アミノ]プロパナミド}−2−シクロヘキシルアセチル)ピロリジン−2−カルボキサミド]−3,3−ジフェニルプロパン酸(0.5mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC,0.5mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.5mmol)、およびN,N−ジイソプロピルアミン(DIPEA,1.0mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応後、飽和重曹水(10mL)を加えクロロホルム(20mL×3)で抽出した。有機層を乾燥後、減圧濃縮し、残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:メタノール=50:1)にて精製すると、tert−ブチル(S)−1−{(S)−1−シクロヘキシル−2−[(R)−2−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソヘプチルアミノ}−1−オキソ−3,3−ジフェニルプロパン−2−イルカルバモイル)ピロリジン−1−イル]−2−オキソエチルアミノ}−1−オキソプロパン−2−イル(メチル)カルバメートが収率33%で得られた。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.05−7.30(m,17H),6.70−6.84(m,4H),6.31−6.52(m,3H),6.00(brs,1H),5.20(brs,1H),4.62−4.76(m,2H),4.39−4.41(m,2H),3.62−4.14(m,5H),2.77−3.31(m,9H),2.24−2.54(m,4H),0.91−1.95(m,40H)
[ESI(+)−MS]:m/z 1168[M+Na]
【0069】
工程2:(R)−1−{(S)−2−シクロヘキシル−2−[(S)−2−(メチルアミノ)プロパナミド]アセチル}−N−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソヘプチルアミノ}−1−オキソ−3,3−ジフェニルプロパン−2−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド塩酸塩の合成
【0070】
tert−ブチル(S)−1−{(S)−1−シクロヘキシル−2−[(R)−2−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソヘプチルアミノ}−1−オキソ−3,3−ジフェニルプロパン−2−イルカルバモイル)ピロリジン−1−イル]−2−オキソエチルアミノ}−1−オキソプロパン−2−イル(メチル)カルバメート(0.1mmol)、および6M塩酸(0.05mL)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解した。室温で12時間撹拌した後、反応液を濃縮することで、(R)−1−{(S)−2−シクロヘキシル−2−[(S)−2−(メチルアミノ)プロパナミド]アセチル}−N−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オキソヘプチルアミノ}−1−オキソ−3,3−ジフェニルプロパン−2−イル)ピロリジン−2−カルボキサミド塩酸塩が収率99%で得られた。
H NMR(400MHz,CDOD):δ=7.00−7.44(m,17H),6.41−6.92(m,6H),5.12(d,J=9.2Hz,1H),3.95−4.47(m,5H),3.30−3.87(m,5H),2.65−3.18(m,6H),2.14−2.50(m,4H),0.90−1.98(m,31H)
[ESI(+)−MS]:m/z 1068[M+Na]
【実施例6】
【0071】
実施例3で得られたIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物のER分解誘導活性及びアポトーシス促進活性を評価した。
【0072】
乳癌細胞株MCF−7は10%FBS/RPMI+60μg/ml kanamycinで培養した。細胞を播種して、翌日化合物を添加し、6時間後に細胞の写真を撮影した。ERを含む各種タンパク質発現量の評価については、化合物反応後の細胞を1%SDS、0.1MTris−HCl(pH7)及び10%Glycerolで溶解して熱処理したのち、BCA法によりタンパク質定量を行い、10μg相当をSDS−PAGEで分離した。PVDF膜にトランスファーし、それぞれ対応する抗体と二次抗体を用いてタンパク質を検出した(図1及び図4)。アポトーシスの評価については、化合物反応後、位相差顕微鏡で細胞を観察し(図2)、及びAnnexinV−FITCを含むバッファーと細胞を室温で5分間インキュベートし、細胞をメタノール固定して蛍光顕微鏡によりAnnexinVの細胞への結合を観察した(図3)。
【0073】
本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物は、ERを発現した乳癌細胞株MCF−7において、ERα及びERβの分解を誘導し(図1)、アポトーシスによる細胞死を促進した(図2及び図3)。ERを発現しない細胞U2OSにおいては、細胞死の誘導はほとんど見られなかった。プロテアソーム阻害剤MG132を処理することで本発明化合物によるERの分解は阻害され(図1)、細胞死は抑制された(図2)。タモキシフェン刺激において観察されるAkt,Erkの活性化が、SNIPER(ER)の刺激においては抑制されていた(図4)。本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物によるERの分解により、これらの抗アポトーシス性シグナルが阻害され、細胞死を促進していることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
上述したように、本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物は、細胞内でユビキチンリガーゼ活性を有するcIAP1とERとを架橋し、ERを特異的にユビキチン化してプロテアソームによる分解を誘導する。従って、本発明のIAPリガンド−ERリガンドハイブリッド化合物をER分解誘導剤又は乳癌、子宮頚癌、卵巣癌等の予防及び治療剤として利用した場合極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式
【化18】

(式中、Xは、アポトーシス阻害タンパク質に特異的に結合するアポトーシス阻害タンパク質リガンドを表し、Yは、エストロゲン受容体に特異的に結合するエストロゲン受容体リガンドを表し、Zは、前記アポトーシス阻害タンパク質リガンド及び前記エストロゲン受容体リガンドの前記特異的結合性を阻害せずに両者を結合する低分子鎖状リンカーを表す)で示されることを特徴とする、アポトーシス阻害タンパク質リガンド−エストロゲン受容体リガンドハイブリッド化合物。
【請求項2】
前記アポトーシス阻害タンパク質リガンドは、ウベニメクス、MV−1若しくはAEG40599又はこれらの誘導体からなる群より選択される化合物から誘導される1価の基である、請求項1に記載のハイブリッド化合物。
【請求項3】
前記エストロゲン受容体リガンドは、エストロゲン受容体阻害剤から誘導される1価の基である、請求項1又は2に記載のハイブリッド化合物。
【請求項4】
前記エストロゲン受容体阻害剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント若しくはICI182780又はこれらの誘導体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド化合物。
【請求項5】
前記低分子鎖状リンカーは、下記一般式
【化19】

(式中、Rは、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のモノエーテル基若しくはポリエーテル基又は炭素数3〜10のアミド基を表す)で示されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド化合物。
【請求項6】
(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−{3−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オクソプロビル}−4−メチルペンタンアミド、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−{5−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オクソペンチル}−4−メチルペンタンアミド、7−{(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−4−メチルペンタンアミド}−N−(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)−N−メチルヘプタンアミド、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−(2−{2−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−2−オクソエトキシ}エチル)−4−メチルペンタンアミド又は(R)−1−{(S)−2−シクロヘキシル−2−[(S)−2−(メチルアミノ)プロパンアミド]アセチル}−N−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オクソヘプチルアミノ}−1−オクソ−3,3−ジフェニルプロパン−2−イル)ピロリジン−2−カルボアミドである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド化合物。
【請求項7】
下記一般式
【化20】

(式中、Xは、アポトーシス阻害タンパク質に特異的に結合するアポトーシス阻害タンパク質リガンドを表し、Yは、エストロゲン受容体に特異的に結合するエストロゲン受容体リガンドを表し、Zは、前記アポトーシス阻害タンパク質リガンド及び前記エストロゲン受容体リガンドの前記特異的結合性を阻害せずに両者を結合する低分子鎖状リンカーを表す)で示されるアポトーシス阻害タンパク質リガンド−エストロゲン受容体リガンドハイブリッド化合物又はその生理学的に許容される塩を有効成分とする、エストロゲン受容体分解誘導剤。
【請求項8】
前記アポトーシス阻害タンパク質リガンドは、ウベニメクス、MV−1若しくはAEG40599又はこれらの誘導体からなる群より選択される化合物から誘導される1価の基である、請求項7に記載のエストロゲン受容体分解誘導剤。
【請求項9】
前記エストロゲン受容体リガンドは、エストロゲン受容体阻害剤から誘導される1価の基である、請求項7又は8に記載のエストロゲン受容体分解誘導剤。
【請求項10】
前記エストロゲン受容体阻害剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント若しくはICI182780又はこれらの誘導体である、請求項7〜9のいずれか1項に記載のエストロゲン受容体分解誘導剤。
【請求項11】
前記低分子鎖状リンカーは、下記一般式
【化21】

(式中、Rは、それぞれ置換基を有してもよい、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のモノエーテル基若しくはポリエーテル基又は炭素数3〜10のアミド基を表す)で示されることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載のエストロゲン受容体分解誘導剤。
【請求項12】
アポトーシス阻害タンパク質リガンド−エストロゲン受容体リガンドハイブリッド化合物は、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−{3−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−3−オクソプロビル}−4−メチルペンタンアミド、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−{5−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−5−オクソペンチル}−4−メチルペンタンアミド、7−{(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−4−メチルペンタンアミド}−N−(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)−N−メチルヘプタンアミド、(S)−2−[(2S,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンアミド]−N−(2−{2−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−2−オクソエトキシ}エチル)−4−メチルペンタンアミド又は(R)−1−{(S)−2−シクロヘキシル−2−[(S)−2−(メチルアミノ)プロパンアミド]アセチル}−N−((S)−1−{7−[(2−{4−[(E/Z)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エニル]フェノキシ}エチル)(メチル)アミノ]−7−オクソヘプチルアミノ}−1−オクソ−3,3−ジフェニルプロパン−2−イル)ピロリジン−2−カルボアミドである、請求項7〜11のいずれか1項に記載のエストロゲン受容体分解誘導剤。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載のエストロゲン受容体分解誘導剤を含む乳癌、子宮頚癌又は卵巣癌の予防及び治療剤

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−56837(P2013−56837A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195081(P2011−195081)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】