説明

アミジニウム塩及びそれを用いた帯電防止剤

【課題】本発明は、耐熱性が高く、より高温域で使用可能な活性プロトンを有するアミジニウム塩及びそれらアミジニウム塩の少なくとも1種を含有してなる帯電防止剤を提供することを目的とする。
【解決手段】式(1):
【化1】


(式中、R及びRはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく炭素数1〜6のアルキル基を示し、RとRがそれぞれ末端で互いに結合して炭素原子及び窒素原子とともに環を形成していてもよい。nは0〜3の整数を示す。Aはビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド又はパーフルオロアルカンスルホネートを示す。)で表されるアミジニウム塩及びそれらアミジニウム塩の少なくとも1種を含有してなる帯電防止剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物である式(1):
【0002】
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく炭素数1〜6のアルキル基を示し、RとRがそれぞれ末端で互いに結合して炭素原子及び窒素原子とともに環を形成していてもよい。nは0〜3の整数を示す。Aはビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド又はパーフルオロアルカンスルホネートを示す。)で表されるアミジニウム塩(以下、アミジニウム塩(1)という)及びそれを用いた帯電防止剤に関する。
【背景技術】
【0003】
活性プロトンを有するアミジニウム塩としては、シラノール基含有有機ケイ素化合物とケイ素原子結合アルコキシ基含有有機ケイ素化合物とを脱アルコール縮合させて有機ケイ素化合物を製造する際の触媒として、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=アセテートが知られている。また、半導体素子などにおける層間絶縁膜材料の一成分として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=アセテート等が知られている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−22094号公報
【特許文献2】特開2002−38090号公報
【0005】
一方、本発明のアミジニウム塩(1)は、文献等に記載されていない新規な化合物である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
活性プロトンを有するアミジニウム塩は、上記記載のような触媒、層間絶縁膜材料等に使用されることが知られている。本発明者が、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=アセテート、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=アセテート及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=アセテートの耐熱性について分析を実施したところ、その熱分解温度(実施例で定義)はいずれも200℃以下であり、十分な耐熱性を有していないことが判明した。本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐熱性が高く、より高温域で使用可能な活性プロトンを有するアミジニウム塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アミジニウム塩(1)が上記課題を解決でき、しかもアミジニウム塩(1)が導電性を有するため、帯電防止剤として使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は式(1):
【0009】
【化2】

(式中、R及びRはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく炭素数1〜6のアルキル基を示し、RとRがそれぞれ末端で互いに結合して炭素原子及び窒素原子とともに環を形成していてもよい。nは0〜3の整数を示す。Aはビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド又はパーフルオロアルカンスルホネートを示す。)で表されるアミジニウム塩及びそれらアミジニウム塩の少なくとも1種を含有してなる帯電防止剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐熱性が高く、より高い温度域での使用に対応しうるアミジニウム塩及びそれらの少なくとも1種を含有する帯電防止剤を提供できるため、工業的利用価値が高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
式(1)中、R及びRで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1〜2のアルキル基である。
【0013】
とRがそれぞれ末端で互いに結合して炭素原子及び窒素原子とともに環を形成していてもよい。RとRが末端で互いに結合して炭素原子及び窒素原子とともに環を形成する場合の環としては4〜7員環であり、好ましくは5〜7員環である。
【0014】
式(1)中、Aはビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド又はパーフルオロアルカンスルホネートを示す。
【0015】
ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドイオンとしては、式(4):
(RSO)(RSO)N (4)
(式中、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。)で表されるアニオンであり、R及びRで示される炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン[(CFSO]、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン[(CFCFSO]、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン[(CFCFCFCFSO]、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン[(CFSO)(CFCFSO)N]、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドイオン[(CFSO)(CFCFCFSO)N]、(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン[(CFSO)(CFCFCFCFSO)N]等が挙げられ、好ましくはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン[(CFSO]及びビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン[(CFCFSO]である。
【0016】
パーフルオロアルカンスルホネートイオン(RSO)としては、炭素数1〜8のパーフルオロアルカンスルホネートイオンが挙げられ、具体的には、トリフルオロメタンスルホネートイオン(CFSO)、ペンタフルオロエタンスルホネートイオン(CFCFSO)、ヘプタフルオロプロパンスルホネートイオン[CF(CFSO]、ノナフルオロブタンスルホネートイオン[CF(CFSO]、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネートイオン[CF(CFSO]等が挙げられ、好ましくはトリフルオロメタンスルホネートイオン(CFSO)である。
【0017】
アミジニウム塩(1)としては、具体的には、4,5−ジヒドロ−1,2−ジメチル−1H−イミダゾリウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、4,5−ジヒドロ−1,2−ジメチル−1H−イミダゾリウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、4,5−ジヒドロ−1,2−ジメチル−1H−イミダゾリウム=トリフルオロメタンスルホネート、1,4,5,6−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−ピリミジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,4,5,6−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−ピリミジニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,4,5,6−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−ピリミジニウム=トリフルオロメタンスルホネート、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=トリフルオロメタンスルホネート、1,5−ジアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,5−ジアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,5−ジアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン=トリフルオロメタンスルホネート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=トリフルオロメタンスルホネート等が挙げられ、1,4,5,6−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−ピリミジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,4,5,6−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−ピリミジニウム=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,4,5,6−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−ピリミジニウム=トリフルオロメタンスルホネート、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=トリフルオロメタンスルホネート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=トリフルオロメタンスルホネートが好ましい。
【0018】
次にアミジニウム塩(1)の製造方法について説明する。アミジニウム塩(1)は、式(2):
【0019】
【化3】

(式中、R、R及びnは前記と同じ。)で表されるアミジン化合物(以下、アミジン(2)という)と、
式(3):
(3)
(式中、Aは前記と同じ。)で表される有機酸(以下、有機酸(3)という)を反応させることにより製造できる。
【0020】
アミジン(2)としては、具体的には、4,5−ジヒドロ−1,2−ジメチル−1H−イミダゾール、1,4,5,6−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−ピリミジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等が挙げられ、1,4,5,6−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−ピリミジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンが好ましい。
【0021】
有機酸(3)としては、式(5):
(RSO)(RSO)N (5)
(式中、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を示す。)で表される有機酸が用いられる。R及びRで示される炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸[H(CFSO]、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸[H(CFCFSO]、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸[H(CFCFCFCFSO]、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸[H(CFSO)(CFCFSO)N]、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド酸[H(CFSO)(CFCFCFSO)N]、(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド酸[H(CFSO)(CFCFCFCFSO)N]等が挙げられ、好ましくはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸[H(CFSO]及びビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸[H(CFCFSO]である。
【0022】
また、有機酸(3)としてはパーフルオロアルカンスルホン酸(HSO)も用いることができる。パーフルオロアルカンスルホン酸(HSO)としては、炭素数1〜8のパーフルオロアルカンスルホン酸が挙げられ、具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸(HCFSO)、ペンタフルオロエタンスルホン酸(HCFCFSO)、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸[HCF(CFSO]、ノナフルオロブタンスルホン酸[HCF(CFSO]、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸[HCF(CFSO]等が挙げられ、好ましくはトリフルオロメタンスルホン酸(HCFSO)である。
【0023】
アミジン(2)と有機酸(3)との反応においては、溶媒を使用しても使用しなくともよく、溶媒を使用するときの溶媒としては、アミジン(2)及び有機酸(3)に対して安定な溶媒であれば特に制限されないが、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族又は脂環式炭化水素系溶媒等が挙げられる。溶媒の使用量は、特に制限はないが、アミジン(2)1重量部に対して通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは5〜25重量部である。
【0024】
アミジン(2)と有機酸(3)との反応を実施するには、例えば、アミジン(2)と有機酸(3)の混合物、又はアミジン(2)、有機酸(3)と溶媒の混合物を通常50℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは−10〜20℃で撹拌すればよい。
【0025】
アミジン(2)と有機酸(3)、又はアミジン(2)、有機酸(3)と溶媒の混合順序は特に限定されず、アミジン(2)に有機酸(3)を添加してもよいし、有機酸(3)にアミジン(2)を添加してもよい。溶媒を使用する場合は、アミジン(2)と溶媒を混合した後に有機酸(3)又は有機酸(3)と溶媒の混合物を添加してもよいし、有機酸(3)と溶媒を混合した後にアミジン(2)又はアミジン(2)と溶媒の混合物を添加してもよい。アミジン(2)の使用量は、有機酸(3)1モルに対して1モル使用すればよいが、通常0.9モル以上、好ましくは0.95〜1.2モル、より好ましくは0.95〜1.05モルである。
【0026】
反応により生成したアミジニウム塩(1)は、過剰に用いたアミジン(2)又は有機酸(3)を加熱減圧等により留去することにより得られる。また、アミジニウム塩(1)が溶媒に不溶であれば、濾過することにより得ることができる。得られたアミジニウム塩(1)は、溶媒から再結晶することにより、精製することができる。
【0027】
本発明の帯電防止剤は、アミジニウム塩(1)を導電性成分として含有してなるものであり、単独であっても帯電防止剤として用いることができるが、必要に応じて安定化剤等の添加剤又は溶媒等を混合して用いることもできる。本発明の帯電防止剤を使用できる絶縁物としては樹脂組成物、ゴム等が挙げられる。帯電防止性を付与するには、本発明の帯電防止剤を樹脂組成物、ゴム等の製造時にそれらの材料に添加、混合する等の方法または樹脂組成物、ゴム等に塗布する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。下記の実施例中、H−NMRは日本ブルカー株式会社製「AVANCE400」を使用し、溶媒にacetone−d6又はDMSO−d6を用いて400MHzで測定した。融点はセイコーインスツルメント株式会社製の示差走査熱量測定器「DSC220」を使用して測定した。また、熱分解温度は、セイコーインスツルメント株式会社製の熱重量・示差熱同時測定器「TG/DTA220」を使用して測定し、重量減少零の直線と重量減少を直線近似した線との交点から算出した値を熱分解温度とした。
【0029】
実施例1
1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成
温度センサーと撹拌子を備えた50ml二つ口丸底フラスコに、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン(以下、DMTHPMと示す)1.12g(0.01モル)及びDMTHPMに対して10倍重量部のトルエンを入れ、撹拌しながら0℃まで冷却した。この溶液に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸2.81g(0.01モル)をトルエン14.15gに溶解させた液を、温度が6℃を超えないように滴下した。滴下終了後、0℃で10分間撹拌し、さらに室温で1時間撹拌した。この時、反応液は二層に分液していた。この反応液を分液して得た下層を、トルエン8gで二度洗浄し、75℃及び3〜4kPaで1時間濃縮した。得られた濃縮残渣を0.1kPa以下及び75℃で6時間乾燥し、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド3.44g(収率87%)を得た。得られた1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0030】
H−NMR(acetone−d6) δppm8.58(broad,1H)、3.61(t,2H)、3.49(t,2H)、3.29(s,3H)、2.40(s,3H)、2.18−2.07(m,2H)
【0031】
融点:36℃、熱分解温度:421℃
【0032】
実施例2
1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成
実施例1のDMTHPMの代わりに1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(以下、DBNと示す)1.24g(0.01モル)を用いた以外は、実施例1と同様に実施し、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩3.56g(収率88%)を得た。得られた1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0033】
H−NMR(acetone−d6) δppm8.78(broad,1H)、3.87−3.75(m,2H)、3.64−3.46(m,4H)、3.01(t,2H)、2.28−2.17(m,2H)、2.17−2.07(m,2H)
【0034】
融点:58℃、熱分解温度:428℃
【0035】
実施例3
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの合成
実施例1のDMTHPMの代わりに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(以下、DBUと示す)1.52g(0.01モル)を用いた以外は、実施例1と同様に実施し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド3.89g(収率90%)を得た。得られた1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0036】
H−NMR(DMSO−d6) δppm9.48(broad,1H)、3.59−3.51(m,2H)、3.48(t,2H)、3.25(t,2H)、2.69−2.58(m,2H)、1.97−1.86(m,2H)、1.73−1.56(m,6H)
【0037】
融点:29℃、熱分解温度:427℃
【0038】
実施例4
1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドの合成
温度センサーと撹拌子を備えた50ml二つ口丸底フラスコに、DMTHPM0.34g(0.003モル)及びDMTHPMに対して10倍重量部のトルエンを入れ、撹拌しながら0℃まで冷却した。この溶液に、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸1.15g(0.003モル)をトルエン5.73gに溶解させた液を、温度が4℃を超えないように滴下した。滴下終了後、0℃で10分間撹拌し、さらに室温で1時間撹拌した。この時、反応液は二層に分液していた。この反応液を分液して得た下層を、トルエン8gで二度洗浄し、75℃及び3〜4kPaで1時間濃縮した。得られた濃縮残渣を0.1kPa以下及び75℃で6時間乾燥し、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド1.16g(収率78%)を得た。得られた1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0039】
H−NMR(acetone−d6) δppm8.04(broad,1H)、3.62(t,2H)、3.49(t,2H)、3.29(s,3H)、2.41(s,3H)、2.18−2.08(m,2H)
【0040】
融点:46℃、熱分解温度:407℃
【0041】
実施例5
1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドの合成
実施例4のDMTHPMの代わりにDBN0.37g(0.003モル)を用いた以外は、実施例4と同様に実施し、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド1.21g(収率80%)を得た。得られた1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0042】
H−NMR(acetone−d6) δppm8.77(broad,1H)、3.83(t,2H)、3.64−3.50(m,4H)、3.01(t,2H)、2.28−2.18(m,2H)、2.18−2.08(m,2H)
【0043】
融点:43℃、熱分解温度:412℃
【0044】
実施例6
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドの合成
実施例4のDMTHPMの代わりにDBU0.46g(0.003モル)を用いた以外は、実施例4と同様に実施し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド1.30g(収率81%)を得た。得られた1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0045】
H−NMR(acetone−d6) δppm8.31(broad,1H)、3.78−3.66(m,4H)、3.49(t,2H)、2.88−2.77(m,2H)、2.19−2.09(m,2H)、1.86−1.71(m,6H)
【0046】
融点:52℃、熱分解温度:409℃
【0047】
実施例7
1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=トリフルオロメタンスルホネートの合成
温度センサーと撹拌子を備えた50ml二つ口丸底フラスコに、DMTHPM1.69g(0.015モル)及びDMTHPMに対して10倍重量部のトルエンを入れ、撹拌しながら0℃まで冷却した。この溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸2.08g(0.014モル)を、温度が8℃を超えないように滴下した。滴下終了後、0℃で10分間撹拌し、さらに室温で1時間撹拌した。この時、白色の結晶が析出していた。この結晶を濾過し、トルエン8gで三回洗浄し、75℃及び3〜4kPaで1時間乾燥した。さらに0.1kPa以下及び75℃で6時間乾燥し、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=トリフルオロメタンスルホネート3.56g(収率97%:トリフルオロメタンスルホン酸基準)を得た。得られた1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=トリフルオロメタンスルホネートのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0048】
H−NMR(acetone−d6) δppm8.77(broad,1H)、3.59(t,2H)、3.44(t,2H)、3.28(s,3H)、2.37(s,3H)、2.16−2.06(m,2H)
【0049】
融点:37℃、熱分解温度:390℃
【0050】
実施例8
1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=トリフルオロメタンスルホネートの合成
温度センサーと撹拌子を備えた50ml二つ口丸底フラスコに、DBN1.87g(0.015モル)及びDBNに対して10倍重量部のトルエンを入れ、撹拌しながら0℃まで冷却した。この溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸2.08g(0.014モル)を、温度が8℃を超えないように滴下した。滴下終了後、0℃で10分間撹拌し、さらに室温で1時間撹拌した。この時、反応液は二層に分液していた。この反応液を分液して得た下層を、トルエン8gで二回洗浄し、75℃及び3〜4kPaで1時間濃縮した。得られた濃縮残渣を0.1kPa以下及び75℃で6時間乾燥し、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=トリフルオロメタンスルホネート3.33g(収率87%:トリフルオロメタンスルホン酸基準)を得た。得られた1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=トリフルオロメタンスルホネートのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0051】
H−NMR(acetone−d6) δppm7.97(broad,1H)、3.79(t,2H)、3.59−3.51(m,2H)、3.51−3.43(m,2H)、2.99−2.90(m,2H)、2.26−2.14(m,2H)、2.14−2.06(m,2H)
【0052】
融点:58℃、熱分解温度:392℃
【0053】
比較例1
1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=アセテートの合成
実施例7のトリフルオロメタンスルホン酸の代わりに酢酸0.84g(0.014モル)を用いた以外は、実施例7と同様に実施し、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=アセテート2.06g(収率85%:酢酸基準)を得た。得られた1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン=アセテートのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0054】
H−NMR(acetone−d6) δppm3.46−3.38(m,2H)、3.34−3.26(m,2H)、3.14(s,3H)、2.29(s,3H)、1.99−1.90(m,2H)、1.72(s,3H)
【0055】
融点:85℃、熱分解温度:168℃
【0056】
比較例2
1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=アセテートの合成
実施例8のトリフルオロメタンスルホン酸の代わりに酢酸0.86g(0.014モル)を用いた以外は、実施例8と同様に実施し、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=アセテート0.44g(収率17%:酢酸基準)を得た。得られた1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン=アセテートのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0057】
H−NMR(DMSO−d6) δppm12.76(broad,1H)、3.56−3.44(m,2H)、3.37−3.16(m,4H)、2.80−2.66(m,2H)、2.06−1.91(m,2H)、1.91−1.76(m,2H)、1.66(s,3H)
【0058】
融点:51℃、熱分解温度:162℃
【0059】
比較例3
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=アセテートの合成
比較例2のDBNの代わりにDBU2.29g(0.015モル)を用い、酢酸量を0.85g(0.014モル)にした以外は、比較例2と同様に実施し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=アセテート0.03g(収率1%:酢酸基準)を得た。得られた1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン=アセテートのH−NMRの分析結果、融点及び熱分解温度を次に示す。
【0060】
H−NMR(acetone−d6) δppm3.61−3.42(m,4H)、3.34−3.21(m,2H)、2.87−2.73(m,2H)、1.97−1.84(m,2H)、1.79−1.53(m,9H)
【0061】
融点:57℃、熱分解温度:158℃
【0062】
応用例
実施例1から8で製造したアミジニウム塩の帯電防止能を、株式会社ナノシーズ社製の静電気電荷拡散率測定装置「NS−D100」を用いて測定した。この装置は、試料に正電荷または負電荷をコロナ放電により強制的に印加し、その後の表面電位の減衰を測定するものである。電荷印加終了時の初期表面電位から、表面電位の減衰があるということは、その試料は導電性、つまり帯電防止能があるということを意味する。
今回の測定は、温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿器内で、アミジニウム塩に正電荷または負電荷を120秒間印加し、その後600秒間、表面電位を測定した。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の結果から、本発明のアミジニウム塩は、電荷が印加されても(帯電しても)表面電位が顕著に減衰することから、帯電防止能があることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく炭素数1〜6のアルキル基を示し、RとRがそれぞれ末端で互いに結合して炭素原子及び窒素原子とともに環を形成していてもよい。nは0〜3の整数を示す。Aはビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド又はパーフルオロアルカンスルホネートを示す。)で表されるアミジニウム塩。
【請求項2】
とRがメチル基又はエチル基である請求項1に記載のアミジニウム塩。
【請求項3】
がビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド又はトリフルオロメタンスルホネートである請求項1又は2に記載のアミジニウム塩。
【請求項4】
式(2):
【化2】

(式中、R、R及びnは前記と同じ。)で表されるアミジン化合物と、
式(3):
(3)
(式中、Aは前記と同じ。)で表される有機酸を反応させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアミジニウム塩の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のアミジニウム塩の少なくとも1種を含有することを特徴とする帯電防止剤。