説明

アミドの生成方法

本発明は、a)式IIの化合物(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)を、少なくとも1種の還元剤と反応させ、式IIIの化合物(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)を形成する工程;並びに、(b)その化合物を、少なくとも1種の還元剤と反応させ、式IVの化合物(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)を形成する工程;並びに、(c)その化合物を、式Vの化合物(式中、Qは、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、又はC1-C6アルコキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)との反応により、式Iの化合物へ転換する工程:による、式Iの化合物(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルであり、そしてR3は、CF3又はCF2Hである)の調製プロセス;並びに、そのプロセスにおいて使用するための新規中間体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラゾリル-4-カルボン酸ベンゾノルボルネン-5-イル-アミドを調製するプロセス、及び同じくそのようなプロセスにおいて使用するための新規中間体に関する。本発明は、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの新規結晶変態、これを含有する組成物、及び栽培された植物における真菌蔓延の制御におけるそれらの使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
ピラゾリル-4-カルボン酸ベンゾノルボルネン-5-イル-アミド、例えば3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドは、例えば国際公開公報第04/035589号に開示されたようは、価値のある殺真菌剤である。
【0003】
国際公開公報第04/035589号は、ピラゾリル-4-カルボン酸ベンゾノルボルネン-5-イル-アミドの調製法を開示している(スキーム1参照):
【化1】

【0004】
国際公開公報第04/035589号に従い、例えば、式(A)の6-ニトロ-アントラニル酸(式中、R2そしてR3は、とりわけ、水素であってよい)から生成された3-ニトロ-デヒドロベンゼンは、ディールス-アルダー反応において式(B)の環式1,4-ジエン(式中、R4、R5、R6、及びR7は、とりわけ、水素であってよく、並びにYは、とりわけ、-CH(i)-C3H7)-であってよい)と最初に反応し、式(C)の5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエン化合物を形成する。引き続きの溶媒(例えばメタノール)中の標準条件(例えばRa/Ni又はPd/C)下での触媒的還元は、ニトロ基及び2,3-位の環内二重結合の両方を還元し、式(D)の5-アミノ-ベンゾノルボルネンを生じる。次に式(D)の5-アミノ-ベンゾベンゾノルボルネンは、溶媒(例えばジクロロメタン)中で、式(E)の酸誘導体(式中、Hetは、とりわけ、置換されたピラゾール環であってよく、及びQは、塩素、フッ素、臭素、又はヒドロキシであってよい)と反応され、式(F)のピラゾリル-4-カルボン酸ベンゾノルボルネン-5-イル-アミドを形成する。
【0005】
式(E)の化合物(式中、Qは、塩素、フッ素、又は臭素である)との反応は、例えば塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下で進行する。式(F)の化合物は、2当量の塩基の存在下、酸-活性化剤(例えば、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)-ホスフィン酸クロリド)の存在下で、式(D)の5-アミノ-ベンゾノルボルネンの、式(E)の酸誘導体(式中、Hetは先に定義されたものであり、及びQはヒドロキシである)との反応によって得ることができる。
【0006】
このような合成手順において、9-一置換されたピラゾリル-4-カルボン酸ベンゾノルボルネン-5-イル-アミドの調製では、複数の位置異性体が形成される。例えば、式(F)のピラゾリル-4-カルボン酸 ベンゾノルボルネン-5-イル-アミド(式中、R4、R5、R6、及びR7は水素であり、及びYは、-CH((i)-C3H7)-である)の調製において、下記の5種の位置異性体が、式(C)の5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエン化合物を形成するための、ディールス-アルダー反応の段階において形成される:
【化2】

【0007】
説明された調製プロセスにおいて、9-一置換された位置異性体(IA)は、低い収量でしか得られない。
式(D)の5-アミノ-ベンゾノルボルネン又は式(F)のピラゾリル-4-カルボン酸ベンゾ-ノルボルネン-5-イル-アミドの、位置異性体の分離及び/又は立体異性体の形の分離は、式(C)のニトロ-ベンゾノルボルナジエン化合物の段階で行うことができ、並びに一般に例えば、分別結晶化、分別蒸留、又はクロマトグラフィー法の使用のような、慣習的プロセスを用い実現される。
【0008】
9-置換された位置異性体の低収量の観点において、そのような反応手順は、式(F)の9-置換されたピラゾリル-4-カルボン酸ベンゾノルボルネン-5-イル-アミド調製、特に大規模調製には適していない。
【発明の開示】
【0009】
従って本発明の目的は、これらの化合物が高収量及び良好な品質の経済的に有利な様式で調製されることを可能にする、9-一置換されたピラゾリル-4-カルボン酸ベンゾノルボルネン-5-イル-アミドの調製プロセスを提供することである。
【0010】
従って本発明は、式Iの化合物の調製プロセス:
【化3】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルであり、並びにR3は、CF3又はCF2Hである)であり;
a)式IIの化合物:
【化4】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)を、少なくとも1種の還元剤と反応させ、式IIIの化合物を形成する工程:
【化5】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
(b)その化合物を、少なくとも1種の還元剤と反応させ、式IVの化合物を形成する工程:
【化6】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
(c)その化合物を、式Vの化合物との反応により、式Iの化合物へ転換する工程:
【化7】

(式中、Qは、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、又はC1-C6アルコキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである):を含むプロセスに関する。
【0011】
これらの置換基の定義におけるアルキル基は、直鎖又は分枝されてよく、並びに例えば、メチル(CH3)、エチル(C2H5)、n-プロピル(n-C3H7)、イソプロピル(i-C3H7)、n-ブチル(n-C4H9)、sec-ブチル(sec-C4H9)、イソブチル(i-C4H9)、tert-ブチル(tert-C4H9)、及びペンチル、更にはそれらの分枝した異性体である。
【0012】
これらの置換基の定義におけるアルコキシ基は、直鎖又は分枝されてよく、並びに例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ及びヘキシルオキシであり、並びにペンチルオキシ及びヘキシルオキシの分枝した異性体でもある。
【0013】
式Iの9-一置換されたピラゾリル-4-カルボン酸ベンゾノルボルネンは、キラル分子であり、及び様々な立体異性体の形で生じることができる。これらは、式II、III、IIII、及びIIVのエナンチオマーとして示される:
【化8】

(式中、R1、R2、及びR3は、式Iで定義されたものである)。本発明のプロセスは、式II、III、IIII、及びIIVのこれらの立体異性体の形の調製、並びにこれらの立体異性体の形の任意の比の混合物の調製を含む。
【0014】
本発明の文脈において、式Ia(syn)の化合物は:
【化9】

(式中、R1、R2、及びR3は、式Iで定義されたものである)、式IIの化合物;式IIIの化合物;又は、式IIの化合物及び式IIIの化合物の任意の比の混合物であると理解される。
【0015】
本発明の文脈において、式Ia(syn)の化合物は、好ましくは式IIの化合物及び式IIIの化合物のラセミ混合物であると理解される。
【0016】
本発明の文脈において、式Ib(anti)の化合物は:
【化10】

(式中、R1、R2、そしてR3は、式Iで定義されたものである)、式IIIIの化合物;式IIVの化合物;又は、式IIIIの化合物及び式IIVの化合物の任意の比の混合物であると理解される。
【0017】
本発明の文脈において、式Ib(anti)の化合物は、好ましくは式IIIIの化合物及び式IIVの化合物のラセミ混合物であると理解される。
【0018】
式IVの化合物は、様々な立体異性体の形で生じ、これは式IVI、IVII、IVIII、及びIVIVで表される:
【化11】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)。本発明のプロセスは、式IVI、IVII、IVIII、及びIVIVのこれらの立体異性体の形の調製、及びこれらの立体異性体の形の任意の比の混合物の調製を含む。
【0019】
本発明の文脈において、式IVa(syn)の化合物は:
【化12】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)、式IVIの化合物;式IVIIの化合物;又は、式IVIの化合物及び式IVIIの化合物の任意の比の混合物であると理解される。
【0020】
本発明の文脈において、式IVa(syn)の化合物は、好ましくは式IVIの化合物及び式IVIIの化合物のラセミ混合物であると理解される。
【0021】
本発明の文脈において、式IVb(anti)の化合物は:
【化13】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)、式IVIIIの化合物;式IVIVの化合物;又は、式IVIIIの化合物及び式IVIVの化合物の任意の比の混合物であると理解される。
本発明の文脈において、式IVb(anti)の化合物は、好ましくは式IVIIIの化合物及び式IVIVの化合物のラセミ混合物であると理解される。
【0022】
本発明の文脈において、2つのエナンチオマーの「ラセミ混合物」は、実質的に1:1に等しい比の2つのエナンチオマーの混合物と理解される。
【0023】
本発明のプロセスは、R1及びR2はメチルである、式Iの化合物の調製に特に適している。
【0024】
本発明のプロセスは、R1及びR2はメチルであり、並びにR3はCF2Hである、式Iの化合物の調製に極めて特に適している。
【0025】
本発明のプロセスにおいて、R1及びR2はメチルである、式IIの化合物の使用が好ましい。
【0026】
本発明のプロセスにおいて、R1及びR2はメチルである、式IIIの化合物の使用が好ましい。
【0027】
本発明のプロセスにおいて、特にR1及びR2はメチルである、式IVの化合物の使用が好ましい。
【0028】
プロセス工程a)
本発明のひとつの実施態様において、単独の還元剤が、プロセス工程a)において使用される。
【0029】
プロセス工程a)に好適な還元剤は、例えば、金属触媒の存在下の水素である。
【0030】
本発明のその実施態様のプロセス工程a)において使用するための還元剤の好適な量は、例えば、最大4当量であり、好ましくはその反応に関して4当量が与えられる。
【0031】
プロセス工程a)は、密閉容器内で実行されることが好ましい。
【0032】
プロセス工程a)が密閉容器内で実行される本発明のプロセスの実施態様において、例えば、過剰な水素が、その中に金属触媒が既に存在する反応混合物へ導入される。その後の水素の消費は、反応時間経過にわたりモニタリングされる。本発明のプロセスのその実施態様において、反応は、所望の量の水素が消費された時点で停止されることが好ましい。
【0033】
好適な金属触媒は、例として、白金/炭素触媒、もしくはPtO2などの、白金触媒;Pd/Cなどの、パラジウム触媒;Rh/C、Rh/Al2O3、もしくはRh2O3などの、ロジウム触媒;ラネーニッケルなどの、ニッケル触媒;又は、Ir(COD)Py(Pcy)などの、イリジウム触媒;並びに、それらの混合物である。好ましいのは、白金触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒、又はニッケル触媒であり;特に好ましいのは、パラジウム触媒、ロジウム触媒、又はニッケル触媒であり;並びに非常に特に好ましいのは、Pd/C、Rh/C、又はラネーニッケルである。
【0034】
その反応に関して金属触媒の好適な量は、例えば、0.001から最大0.5当量であり、特に0.01から最大0.1当量である。
【0035】
その反応は、不活性溶媒の存在下で実行されることが好ましい。好適な溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、もしくはイソプロパノールなどの、アルコール、又はテトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、もしくは酢酸エチルなどの、非プロトン性溶媒、並びにそれらの混合物である。特に好ましいのは、テトラヒドロフラン又はメタノールである。
【0036】
温度は一般に、-40℃〜80℃であり、好ましいのは-20℃〜50℃の範囲であり、特に好ましいのは0℃〜30℃の範囲である。ひとつの実施態様において、温度は20〜30℃の範囲である。
【0037】
この反応は、大気圧又は加圧で実行されて良く、好ましいのは大気圧又は最高6barの加圧であり、特に好ましいのは大気圧である。
【0038】
その反応の反応時間は一般に、1〜60時間、好ましくは1〜6時間である。
【0039】
更なる本発明の実施態様(プロセス変形a2)において、1種よりも多い還元剤が、プロセス工程a)において使用される。好ましいのは、全体の還元プロセスの連続するサブ-工程での2種の異なる還元剤の使用である。第一のサブ-工程において得られた中間体は、好適な反応条件を選択することにより単離することができ、その後式IIIの化合物を形成するために、第二のサブ-工程において使用することができる。
【0040】
プロセス変形(a2)、第一サブ-工程
プロセス変形(a2)、第一のサブ-工程のための好適な還元剤は、例えば、酸の存在下での元素鉄、スズ又は亜鉛である。特に好ましい還元剤は、酸の存在下での元素鉄である。
【0041】
プロセス変形(a2)、第一サブ-工程のひとつの実施態様において、式IIの化合物:
【化14】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)は、酸の存在下で元素鉄と反応され、式IIAの化合物:
【化15】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)を形成する。式IIAの化合物は、好適な反応条件を選択することにより単離することができ、その後プロセス変形(a2)の第二サブ-工程において使用される。
式IIAの化合物は、単離することなく、直接、プロセス変形(a2)の第二サブ-工程において使用することもできる。
【0042】
プロセス変形(a2)の第一サブ-工程に好適な鉄の量は、例えば、少なくとも5当量であり;好ましくは、5〜10当量が、その反応に使用される。
【0043】
好適な酸は、例えば、ギ酸、酢酸、もしくはプロピオン酸のような、有機酸;又は、例えば、塩酸、もしくは硫酸のような、無機酸である。好ましいのは、有機酸であり、特に好ましいのは酢酸である。
【0044】
この反応は、不活性溶媒の存在下で実行されることが好ましい。好適な溶媒は、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、もしくはイソプロパノールなどの、アルコール;又は、テトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、もしくは酢酸エチルなどの、非プロトン性溶媒;並びに、それらの混合物であり;アルコールが、特に好ましい。
【0045】
温度は一般に、0℃〜120℃であり、好ましいのは0℃〜100℃の範囲であり、特に好ましいのは20℃〜60℃の範囲である。ひとつの実施態様において、温度は、20〜30℃の範囲である。
【0046】
この反応は、大気圧又は加圧で実行されて良い。
【0047】
その反応の反応時間は一般に、1〜60時間、好ましくは1〜6時間である。
【0048】
プロセス変形(a2)、第二サブ-工程
プロセス変形(a2)の第二サブ-工程において、第一サブ-工程において形成された化合物が、第一のサブ-工程の還元剤とは異なる更なる還元剤により反応され、式IIIの化合物を形成する。
【0049】
プロセス変形(a2)の第二サブ-工程に好適な還元剤は、プロセス工程a)について言及した還元剤である。
【0050】
プロセス変形(a2)の第二サブ-工程の還元剤の好適な量は、例えば、最大2当量であり;好ましくは、2当量がこの反応に使用される。
【0051】
プロセス変形(a2)の第二サブ-工程は、密閉容器内で実行されることが好ましい。
【0052】
プロセス変形(a2)の第二のサブ-工程が密閉容器内で実行される本発明のプロセスのひとつの実施態様において、例えば、過剰な水素が、その中に金属触媒が既に存在する反応混合物へ導入される。その後の水素の消費は、反応時間経過にわたりモニタリングされる。本発明のプロセスのその実施態様において、反応は、所望の量の水素が消費された時点で停止されることが好ましい。
【0053】
好適な金属触媒は、例として、白金/炭素触媒、もしくはPtO2など;パラジウム触媒、例えばPd/Cなどの、白金触媒; Rh/C、Rh/Al2O3、もしくはRh2O3などの、ロジウム触媒;ラネーニッケルなどの、ニッケル触媒;又は、Ir(COD)Py(Pcy)などの、イリジウム触媒;並びに、それらの混合物である。好ましくは、白金触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒、又はニッケル触媒であり;特に好ましいのは、パラジウム触媒、ロジウム触媒、又はニッケル触媒であり;並びに非常に特に好ましいのは、Pd/C、Rh/C、又はラネーニッケルである。
【0054】
その反応に関して金属触媒の好適な量は、例えば、0.001から最大0.5当量であり、特に0.01から最大0.1当量である。
【0055】
この反応は、不活性溶媒の存在下で実行されることが好ましい。好適な溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、もしくはイソプロパノールなどの、アルコール、又は、テトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、もしくは酢酸エチルなどの、非プロトン性溶媒;並びに、それらの混合物である。特に好ましいのは、テトラヒドロフラン又はメタノールである。
【0056】
温度は一般に、-40℃〜80℃であり、好ましいのは-20℃〜50℃の範囲であり、特に好ましいのは0℃〜30℃の範囲である。ひとつの実施態様において、温度は20〜30℃の範囲である。
【0057】
この反応は、大気圧又は加圧で実行されて良く、好ましいのは大気圧又は最高6barの加圧であり、特に好ましいのは大気圧である。
【0058】
その反応の反応時間は一般に、1〜60時間、好ましくは1〜6時間である。
【0059】
式IIの化合物は、例えば、下記の反応配列により、調製されてよい(スキーム2参照のこと):
【0060】
【化16】

式IIの9-アルキリデン-5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエン(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)は、L. Paquetteらの論文(J.Amer. Chem. Soc. 99, 3734 (1977))に説明されているような、その場で生成された式Bのデヒドロベンゼン[例えば、6-ニトロ-アントラニル酸(式Aの化合物)から出発して調製される]の、亜硝酸C1-8アルキル、例えば、亜硝酸イソアミル、亜硝酸tert-アミル、亜硝酸n-アミル、もしくは亜硝酸tert-ブチルなどによる、又は他の好適な前駆体[H. Pellissierら、Tetrahedron, 59, 701 (2003)、R. Muneyuki及びH. Tanida、J. Org. Chem. 31, 1988 (1966)参照]から式Cのフルベン(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)への、ディールス-アルダー付加により調製されて良い。その反応は、以下の論文と同様に実行されて良い:R. Muneyuki及びH. Tanida、J. Org. Chem. 31, 1988 (1966)、P. Knochelら、Angew. Chem. 116, 4464 (2004)、J.W. Coeら、Organic Letters, 6, 1589 (2004)、L. Paquetteら、J.Amer. Chem. Soc. 99, 3734 (1977)、R.N.Warrenerら、Molecules, 6, 353 (2001)、及びR.N. Warrenerら、Molecules, 6, 194 (2001)。その工程に好適な非プロトン性溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジクロロメタン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、2-ブタノン又はジメトキシ-エタンである。好適な反応温度は、周囲温度〜100℃であり、好ましくは35℃〜80℃である。
【0061】
式Cのフルベンは、以下の論文に従った又は類似した方式で調製されて良い:M. Neuenschwanderら、Helv. Chim.Acta, 54, 1037 (1971)、同書、48, 955 (1965)、R.D. Littleら、J. Org. Chem. 49, 1849 (1984)、I. Erdenら、J. Org. Chem. 60, 813 (1995)、S. Collinsら、J. Org. Chem. 55, 3395 (1990)、J. Thiele、Chem. Ber. 33, 666 (1900)、及びLiebigs, Ann. Chem. 1, 348 (1906)。
【0062】
一般式(C)のフルベン:
【化17】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)は、シクロペンタ-1,3-ジエンの式(F)の化合物:
【化18】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)との、塩基の存在下での反応により調製されてよい。
【0063】
式(C)の化合物の調製のための反応は、不活性溶媒の存在下で実行されることが好ましい。好適な溶媒は、例えば、ジメチルホルムアミド;ジメチルスルホキシド;N-メチル-2-ピロリドン;テトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタンなどの、エーテル; C1-C10アルコール、例えば、メタノール又はエタノールなどの、アルコール;又は、トルエン、キシレン又はジクロロベンゼンなどの、芳香族溶媒である。
【0064】
好適な塩基は、例えば、アミン塩基、例えば、ピロリジン、モルホリン、チオモルホリン、もしくはピペリジンなど;アルカノラート、例えば、ナトリウムメタノラート、もしくはナトリウムエタノラートなど、又は水酸化物、例えば、KOH、もしくはNaOHなどであり;好ましいのはピロリジンである。
【0065】
この反応に関する塩基の好適な量は、例えば、0.01〜2当量、特に0.25〜0.8当量である。
【0066】
温度は一般に、-20℃〜80℃であり、好ましいのは-10℃〜周囲温度の範囲である。
【0067】
この反応の反応時間は一般に、30分〜24時間、好ましくは1〜6時間である。
【0068】
実施例A1:6,6-ジメチルフルベンの調製
メタノール950g(5当量)、アセトン543g(1.3当量)、及びシクロペンタジエン397g(6mol)を、一緒に混合し、-5℃に冷却した。ピロリジン107g(0.25当量)を添加した。反応混合物を、-5℃で2時間攪拌した。酢酸及び水を添加することにより、反応を停止した。相分離後、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で抽出した。溶媒を真空中で除去した。6,6-ジメチルフルベン535g(純度:93%;収率:78%)を得た。
【0069】
6-ニトロ-アントラニル酸は、例えば、H. Seidel, Chem. Ber. 34, 4351 (1901)に従いアクセス可能である。
【0070】
プロセス工程b)
本発明のひとつの実施態様において、単独の還元剤が、プロセス工程b)において使用される。
【0071】
プロセス工程b)に好適な還元剤は、例えば、金属触媒の存在下での水素である。
【0072】
その反応に関する還元剤の好適な量は、例えば、最大1当量であり、好ましいのはその反応に関して1当量である。
【0073】
プロセス工程b)は、密閉容器内で実行されることが好ましい。
【0074】
プロセス工程b)が密閉容器内で実行される本発明のプロセスの実施態様において、例えば、過剰な水素が、その中に金属触媒が既に存在する反応混合物へ導入される。その後の水素の消費は、反応時間経過にわたりモニタリングされる。本発明のプロセスのその実施態様において、反応は、所望の量の水素が消費された時点で停止されることが好ましい。
【0075】
好適な金属触媒は、例として、白金/炭素触媒(Pt/C)、もしくはPtO2などの、白金触媒;Pd/Cなどの、パラジウム触媒;Rh/C、Rh/Al2O3、もしくはRh2O3などの、ロジウム触媒;ラネーニッケルなどの、ニッケル触媒;又は、Ir(COD)Py(Pcy)などの、イリジウム触媒;並びに、それらの混合物である。特に好ましいのは、Pd/C、又はRh/Cである。
その反応に関して金属触媒の好適な量は、例えば、0.001から最大0.5当量であり、特に0.01から最大0.1当量である。
【0076】
この反応は、不活性溶媒の存在下で実行されることが好ましい。好適な溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、もしくはイソプロパノールなどの、アルコール、又は、テトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、もしくは酢酸エチルなどの、非プロトン性溶媒、並びに、それらの混合物である。特に好ましいのは、テトラヒドロフラン又はメタノールである。
【0077】
温度は一般に、-40℃〜80℃であり、好ましいのは-20℃〜50℃の範囲であり、特に好ましいのは0℃〜30℃の範囲である。ひとつの実施態様において、温度は20〜30℃の範囲である。
【0078】
この反応は、大気圧又は加圧で実行されて良く、好ましいのは大気圧又は最高150barの加圧であり、特に好ましいのは大気圧又は最高100barの加圧である。
その反応の反応時間は一般に、1〜100時間、好ましくは1〜24時間である。
【0079】
プロセス工程c)
プロセス工程c)における使用に特に好適であるのは、式Vの化合物(式中、Qは、塩素、フッ素、臭素又はヨウ素であり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)である。更に特に好適であるのは、式Vの化合物(式中、Qは、塩素、フッ素、又は臭素であり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)である。極めて好適であるのは、式Vの化合物(式中、Qは、塩素であり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)である。
【0080】
式Vの化合物(式中、Qは、塩素、フッ素、又は臭素であり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)による本発明の反応(プロセス変形c1)において、式Vの化合物は、式IVの化合物に関して等モル量、等モル未満量又は過剰量で使用され、好ましくは等モル量又は最大3-倍過剰量であり、特に好ましくは等モル量又は最大1.5-倍過剰量であり、非常に特に好ましくは等モル量である。
【0081】
プロセス変形c1)の反応は、不活性溶媒の存在下で実行されることが好ましい。好適な溶媒は、例えば、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ブチルメチルエーテル又は水、及びそれらの混合物であり、特に好ましいのはトルエン又はジクロロメタンである。
【0082】
プロセス変形c1)の反応は、塩基の存在下で実行されることが好ましい。
好適な塩基は、例えば、トリエチルアミンもしくはピリジンなどの、アミン塩基;又は、炭酸塩、例えばK2CO3もしくはNa2CO3など、又は水酸化物、例えばNaOHもしくはKOHなどの、無機塩基であり;好ましいのは、トリアルキルアミンであり、特に好ましいのはトリエチルアミンである。
【0083】
この反応に関する塩基の好適な量は、例えば、1〜1.5当量、特に1〜1.2当量である。
【0084】
温度は一般に、0℃〜100℃であり、好ましいのは10℃〜50℃の範囲であり、特に好ましいのは15℃〜30℃の範囲である。
【0085】
この反応は、大気圧又は加圧で実行され、好ましいのは大気圧である。
【0086】
その反応に関する反応時間は一般に、1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。
【0087】
同じくプロセス工程c)における使用に特に好適であるのは、式Vの化合物(式中、Qはヒドロキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)である。
【0088】
式Vの化合物(式中、Qはヒドロキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)による本発明の反応(プロセス変形c2)において、式Vの化合物は、式IVの化合物に関して等モル量、等モル未満量又は過剰量で使用され、好ましくは等モル量又は最大3-倍過剰量であり、特に好ましくは等モル量又は最大1.5-倍過剰量であり、非常に特に好ましくは等モル量である。
【0089】
プロセス変形c2)、すなわち式Vの化合物(式中、Qはヒドロキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)の本発明の反応は、好ましくは活性化剤の存在下で実行される。
【0090】
好適な活性化剤は、例えば、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)-ホスフィン酸クロリドである。
【0091】
プロセス変形c2)の反応は、不活性溶媒の存在下で実行されることが好ましい。好適な不活性溶媒は、例えば、ジクロロメタン及びクロロホルム、並びにそれらの混合物であり;ジクロロメタンが特に好ましい。
【0092】
プロセス変形c2)の反応は、塩基の存在下で実行されることが好ましい。
【0093】
好適な塩基は、例えば、トリエチルアミンもしくはピリジンなどの、アミン塩基であり;特に好ましいのはトリエチルアミンである。
【0094】
この反応に関する塩基の好適な量は、例えば、少なくとも2当量、特に2〜最大3当量である。
【0095】
温度は一般に、0℃〜100℃であり、好ましいのは10℃〜50℃の範囲であり、特に好ましいのは15℃〜30℃の範囲である。
【0096】
この反応は、大気圧又は加圧で実行され、好ましいのは大気圧である。
【0097】
その反応に関する反応時間は一般に、1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。
【0098】
同じくプロセス工程c)における使用に特に好適であるのは、式Vの化合物(式中、QはC1-C6-アルコキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)である。
【0099】
特に好適であるのは、式Vの化合物(式中、Qはメトキシ又はエトキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)である。
【0100】
式Vの化合物(式中、QはC1-C6-アルコキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)による本発明の反応(プロセス変形c3)において、式Vの化合物は、式IVの化合物に関して等モル量、等モル未満量又は過剰量で使用される。
【0101】
プロセス変形c3)の反応は、不活性溶媒の存在下で実行されることが好ましい。好適な溶媒は、例えば、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、又はブチルメチルエーテル、及びそれらの混合物であり;クロロベンゼン又はトルエンが、溶媒として好ましい。この反応は、溶媒の非存在下で実行されてもよい。
【0102】
プロセス変形c3)の反応は、塩基の存在下で実行されることが好ましい。
【0103】
好適な塩基は、例えば、トリエチルアミンもしくはピリジンなどの、アミン塩基;又は、炭酸塩、例えばK2CO3もしくはNa2CO3など、又は水酸化物、例えばNaOHもしくはKOHなどの、無機塩基;又は、カリウムtert-ブトキシドなどの、アルコキシドである。好ましいのは、例えば、カリウムtert-ブトキシドである。
【0104】
この反応に関する塩基の好適な量は、例えば、1〜1.5当量、特に1〜1.2当量である。
【0105】
温度は一般に、0℃〜120℃であり、好ましいのは50℃〜100℃の範囲であり、特に好ましいのは70℃〜100℃の範囲である。
【0106】
この反応は、大気圧又は加圧で実行され、好ましいのは大気圧である。
【0107】
その反応に関する反応時間は一般に、1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。
【0108】
式Vの化合物は、国際公開公報第04/035589号に開示されているか、又はそこに説明されたプロセスにより調製することができる。
【0109】
本発明のプロセスの好ましい実施態様は、式Iの化合物(式中、R1及びR2は、メチルであり、並びにR3は、CF2Hである)を調製するプロセスであり、これは:
a)溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、式IIの化合物(式中、R1及びR2は、メチルである)を、ロジウム/炭素触媒の存在下で、水素と反応させ、式IIIの化合物(式中、R1及びR2は、メチルである)を形成する工程;並びに
(b)その化合物を、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ラネーニッケル触媒の存在下で、水素と反応させ、式IVの化合物(式中、R1及びR2は、メチルである)を形成する工程;並びに
(c)その化合物を、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)-ホスフィン酸クロリドの存在下で、式Vの化合物(式中、Qは、ヒドロキシであり、そしてR3は、CF2Hである)との反応により、式Iの化合物へ転換する工程であり、この反応は、トリエチルアミンの存在下で実行される工程:を含む。
【0110】
反応工程a)に関する好適な反応条件を選択することにより、反応工程a)において得られた式IIIの化合物は、完全な水素化により、中間体を単離することなく、直接、式IVの化合物へ転換することができる。その本発明の好ましい実施態様は、特に本発明のプロセスの利点である。
【0111】
好ましいその実施態様において、より好ましくは合計5当量の還元剤が、組合せられた反応工程a)及びb)において使用される。
【0112】
本発明のその好ましい実施態様において、金属触媒存在下の水素が、好ましくは反応工程a)及び反応工程b)において還元剤として使用される。
【0113】
本発明のその好ましい実施態様において、同じ金属触媒が、好ましくは反応工程a)及び反応工程b)において使用される。
【0114】
その好ましい実施態様について金属触媒の好適な量は、例えば、0.001〜0.5当量、特に0.01〜0.1当量である。
【0115】
好ましくは、本発明のプロセスのその好ましい実施態様における反応工程a)及びb)の組合せは、密閉容器内で実行される。その組合せにおいて、過剰な水素が、例えば、金属触媒が既に存在する反応混合物へ導入される。その後水素の消費は、反応時間の経過にわたりモニタリングされる。本発明のプロセスのその好ましい実施態様において、この反応は、好ましくは、所望の量の水素、より好ましくは5当量である水素が消費された時点で、停止される。
【0116】
その実施態様において、反応は、大気圧又は最大150barの加圧で実行され、好ましいのは大気圧又は最大50barの加圧であり、特に好ましいのは大気圧又は最大20barの加圧であり、非常に特に好ましいのは大気圧又は最大6barの加圧である。
【0117】
反応のその好ましい実施態様の反応時間は一般に、1〜100時間であり、好ましくは1〜24時間である。
本発明は、下記実施例によりより詳細に説明される:
【実施例】
【0118】
実施例P1:9-イソプロピリデン-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(化合物番号Z2.11)の調製
【化19】

9-イソプロピリデン-5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエン(化合物番号Z1.11)の5.0g (22mmol)を、5%Rh/Cの1.5gの存在下、テトラヒドロフラン50ml中で、25℃及び大気圧で、水素化した。4当量の水素(2.01L又は理論値の102%)を吸収した後、混合液を濾過し、溶媒を真空中で除去し、残渣を溶離液としてヘキサン/酢酸エチル(6:1)を用いるシリカゲルカラム上のクロマトグラフィーにより溶離した。9-イソプロピリデン-5-アミノ-ベンゾノルボルネン2.76gを、固形物の形で得た(m.p. 81-82℃;収率:理論値の62.9%)。1H-NMR (CDCl3), ppm: 6.90 (t, 1H), 6.67 (d, 1H), 6.46 (d, 1H), 3.77 (m, 1H), 3.73 (m, 1H), 3.35 (brd, D2Oと交換可, 2H), 1.89 (m, 2H), 1.63 (2s, 6H), 1.26 (m, 2H)。13C-NMR (CDCl3), ppm: 148.73, 147.65, 138.30, 131.75, 126.19, 113.12, 110.89, 110.19, 43.97, 39.44, 26.98, 26.06, 19.85, 19.75。
【0119】
実施例P2:9-イソプロピリデン-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(化合物番号Z2.11)の調製
1Lの鋼鉄製オートクレーブ内で、活性炭上に担持された5%ロジウム(43.1g、湿潤、含水量70%)を、メタノール225gに添加した。水素圧7barを適用し、攪拌を周囲温度で実行した。2時間の間に、この混合物へ、テトラヒドロフラン120g及びメタノール24g中の9-イソプロピリデン-5-ニトロ-1,4-ジヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン96.7gの溶液を添加した。平行して、圧力7barで水素を吸収させた。添加終了後30分で、反応を停止した。反応混合液を、セルロースを通して濾過し、メタノールで洗浄した。濾液を蒸発により濃縮し乾固した。得られた残渣へメタノールを添加した。沈殿した粗生成物を濾過し、蒸発により濃縮し乾固した。残渣を、酢酸エチル/ヘキサン(1:6)を用い、シリカゲル上でクロマトグラフィーにかけた。9-イソプロピリデン-5-アミノ-ベンゾノルボルネンを得た。
【0120】
実施例P3:9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(化合物番号Z3.11)の調製
【化20】

9-イソプロピリデン-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(Z2.11)の0.2gを、テトラヒドロフラン40ml中で、25℃及び圧力100bar、RaNi(EtOH-処理)0.1gの存在下で、24時間水素化した。この混合液を濾過し、溶媒を真空中で除去し、残渣を、溶離液としてヘキサン/酢酸エチル(6:1)を使用する、シリカゲルカラム上のクロマトグラフィーにより精製した。9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(Z3.11)を固形物の形で得た(syn/anti比29:71;収率:理論値の82%)。
【0121】
実施例P4:9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(化合物番号Z3.11)の調製
テトラヒドロフラン1L中の9-イソプロピリデン-5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエン(化合物番号Z1.11)41.4gを、常圧下、5%Pd/C 22gの存在下で、25℃で4時間完全に水素化した。この反応混合液を濾過し、溶媒を真空中で除去し、シリカゲル上のクロマトグラフィーによる精製を、溶離液として酢酸エチル/ヘキサン(1:7)を用いて行った。9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(化合物番号Z3.11) 29.9g(syn/anti比32:68;収率:理論値の81.5%)を、油状物の形で得た。Synエピマー:1H-NMR (CDCl3), ppm: 6.91 (t, 1H), 6.64 (d, 1H), 6.48 (d, 1H), 3.54 (brd, D2Oと交換可, 2H), 3.20 (m, 1H), 3.15 (m, 1H), 1.92 (m, 2H), 1.53 (d, 1H), 1.18 (m, 2H), 1.02 (m, 1H), 0.81 (m, 6H); 13C-NMR (CDCl3), ppm: 147.73, 140.03, 130.15, 126.41, 113.35, 112.68, 69.00, 46.62, 42.06, 27.74, 26.83, 25.45, 22.32, 22.04;antiエピマー: 1H-NMR (CDCl3), ppm: 6.89 (t, 1H), 6.63 (d, 1H), 6.46 (d, 1H), 3.55 (brd, D2Oと交換可, 2H), 3.16 (m, 1H), 3.13 (m, 1H), 1.87 (m, 2H), 1.48 (d, 1H), 1.42 (m, 1H), 1.12 (m, 2H), 0.90 (m, 6H);13C-NMR (CDCl3), ppm: 150.72, 138.74, 133.63, 126.15, 1 12.94, 111.53, 68.05, 45.21, 40.61, 26.25, 24.47, 23.55, 20.91 (2x)。syn/anti割当は、NOE-NMR実験を基に行った。
【0122】
実施例P5:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド(化合物番号A.11)の調製
【化21】

ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)-ホスフィン酸クロリド(7.2mmol, 1.4当量) 1.9gを、ジクロロメタン40ml中の9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(化合物番号Z3.11, syn/anti比90:10;5mmol)1g、トリエチルアミン1.7ml(12.1mmol, 2.4当量)及び3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸1.2g (6.2mmol, 1.4当量)の溶液へ、周囲温度で添加し、攪拌を20時間行った。水及び飽和NaHCO3溶液の添加後、有機相を、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル/ヘキサン(2:3)中のシリカゲル上の精製及び引き続きのヘキサンからの結晶化は、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド1.31gを生じた(m.p. 124-125℃;1H-NMRに従いsyn/anti比92:8;収率:73%)。結晶性物質を、示差走査熱量測定及びx-線回折により分析し、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bと同定した(図7参照)。
【0123】
実施例P6:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド(化合物番号A.11)の調製
【化22】

クロロベンゼン200g中の9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(化合物番号Z3.11、syn/anti比90:10;0.5mol, 50%クロロベンゼン溶液)100g、及びトリエチルアミン55.7g(0.55mol, 1.1当量)の溶液へ、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-塩化カルボニル97.3g(50%クロロベンゼン溶液, 0.5mol, 1当量)を40℃で2時間かけて添加し、攪拌を1時間行った。水及び塩酸の添加後(pH6〜7が確立された)、有機相をクロロベンゼンで抽出した。有機相を、クロロベンゼンを蒸留除去し、濃縮した。メタノール/水(3:1混合物)からの引き続きの結晶化後、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド126gを得た(m.p. 124-125℃;純度:99.2%;GCに従いsyn/anti比95:5, 収率:70%)。結晶性物質を、示差走査熱量測定及びx-線回折により分析し、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bとして同定した(図8参照)。
【0124】
実施例P7:9-イソプロピリデン-5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエンの調製
【化23】

ジメトキシエタン700ml中の6-ニトロアントラニル酸110.4g (0.6mol)及び6,6-ジメチルフルベン98.5g (1.5当量)の混合液を、72℃で、窒素大気下で、1,2-ジメトキシエタン2L中の亜硝酸tert-ブチル96.3g(1.4当量)の溶液へ滴下した。気体の発生が始まり、混合物の温度が79℃に上昇した。30分後、気体の発生が静まった。溶媒の還流温度で3時間攪拌した後、混合液を周囲温度へ冷却した。溶媒を真空中で除去し、残渣を溶離液としてヘキサン/酢酸エチル(95:5)を使用する、シリカゲルカラム上のクロマトグラフィーにより精製した。9-イソプロピリデン-5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエン76.7gを、黄色固形物の形で得た(m.p. 94-95℃)。1H-NMR (CDCl3), ppm: 7.70 (d, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.06 (t, 1H), 6.99 (m, 2H), 5.34 (brd s, 1H), 4.47 (brd s, 1H), 1.57 (2d, 6H)。13C-NMR (CDCl3), ppm: 159.83, 154.30, 147.33, 144.12, 142.89, 141.93, 125.23 (2x), 119.32, 105.68, 50.51, 50.44, 19.05, 18.90。
【0125】
実施例P8:9-イソプロピリデン-5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエンの調製
【化24】

メチルエチルケトン500g中の6,6-ジメチルフルベン98.5gを、60℃に加熱した。メチルエチルケトン700g中の6-ニトロアントラニル酸182gの溶液を、窒素大気下、60℃で2時間かけて添加し、平行して、亜硝酸tert-アミル216gを、2.5時間かけて添加した。溶媒を60℃で真空中で除去した。キシレン200gを添加し、その後ヘキサン1200gを添加した。得られた懸濁液を濾過し、ヘキサンで洗浄した。溶媒を60℃で真空中で除去し、粗生成物にメタノール200gを添加した。結晶化した粗生成物を、0℃で濾過し、メタノール100gで洗浄した。残存する溶媒を真空中、60℃で除去した後、9-イソプロピリデン-5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエン(m.p. 93℃)120gを得た。
【0126】
実施例P9:9-イソプロピリデン-5-アミノ-ベンゾノルボルナジエン(化合物番号Z4.11)の調製
【化25】

鉄粉を、テトラヒドロフラン50ml及び酢酸(水中5%)61ml中に溶解した9-イソプロピリデン-5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエン(化合物番号Z1.11)2.72gに添加し、30℃で20時間攪拌した。粗生成物を濾過し、酢酸エチルを添加した。その後NaHCO3水溶液及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、Na2SO4を添加し乾燥した。粗生成物を、シリカゲルカラム(溶離液として:1:3酢酸エチル:ヘキサン)上で精製した。9-イソプロピリデン-5-アミノ-ベンゾノルボルナジエン2.01gを、ベージュ色の結晶として得た(収率:85%;m.p. 121-123℃)。
1H-NMR (CDCl3): 6.95 (m, 2H), 6.80 (m, 2H), 6.39 (d, 1H), 4.41 (m, 1H), 4.37 (m, 1H), 3.91 (brd, D2Oと交換可, 2H), 1.58 (s, 3H), 1.57 (s, 3H);13C-NMR (CDCl3): 160.8, 151.6, 143.0, 141.9, 139.1, 134.2, 125.3, 113.2, 112.5, 101.5, 50.9, 46.3, 19.0, 18.8。
【0127】
実施例P10:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド(化合物番号A.11)の調製
【化26】

9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン6.2g(化合物番号Z3.11、syn/anti比90:10;30mmol, 1.05当量)及びカリウムtert-ブトキシド1.6g (14.7mmol, 0.5当量)を、クロロベンゼン60ml中の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル6g(29mmol)の溶液へ添加した。反応混合物を95℃へ加熱し、クロロベンゼン溶媒を真空中で完全に除去した。反応混合物を120℃に加熱し、20時間攪拌した。その後クロロベンゼン30mlを添加した。有機相を、最初に低pH、次に高pHの水で2回抽出した。有機相を、クロロベンゼンの蒸留除去により濃縮した。3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド8gを、茶色油状物の形で得た(粗収率:33%)。
式Vの出発化合物の調製は、下記実施例に説明されている。
【0128】
実施例A2:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-塩化カルボニルの調製
【化27】

チオニルクロリド69.5g(0.58mol, 1.17当量)を、クロロベンゼン440g中の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸88g(0.5mol)の溶液へ、110℃で2時間かけて添加した。反応混合液を、110℃で1時間攪拌した。反応混合物を、濃縮し、粗生成物溶液とした。3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-塩化カルボニル190g(クロロベンゼン中50%、収率:98%)を得た。粗生成物溶液を、更に精製することなく使用した。
【0129】
下記の式Iの化合物は、前記実施例を基に調製することができる:
【0130】
表1:式Iの化合物
【化28】

【0131】
【表1】

【表2】

好ましい式IIの化合物を、下記表に列挙する:
表2:式IIの化合物
【化29】

【0132】
【表3】

【表4】

【0133】
好ましい式IIIの化合物を、下記表に列挙する:
表3:式IIIの化合物
【化30】

【0134】
【表5】

【表6】

【0135】
好ましい式IVの化合物を、下記表に列挙する:
表4:式IVの化合物
【化31】

【0136】
【表7】

【0137】
好ましい式IIAの化合物を、下記表に列挙する:
表5:式IIAの化合物
【化32】

【0138】
【表8】

【0139】
本発明のプロセスの出発材料は、入手の容易さ及び良好な取り扱い特性により特徴付けられ、更に妥当な価格である。
【0140】
本発明の特に好ましい実施態様(bb)において、工程(b)において使用される還元剤は、ロジウム触媒の存在下の水素である。
【0141】
その特に好ましい実施態様(bb)は、式Iaのsyn異性体の式Ibのanti異性体に対する比が、国際公開公報第04/035589号に開示されたものよりも有意に高い、式Iの化合物の簡単な方式での調製を可能にし;一般に、90:10よりも大きい調製された9-一置換されたピラゾリル4-カルボン酸ベンゾノルボルネン-5-イル-アミドの syn/anti比が実現される。
【0142】
国際公開公報第04/035589号に開示された反応配列(スキーム1)は、anti異性体に好ましい9-一置換されたピラゾリル4-カルボン酸ベンゾノルボルネン殺真菌剤のsyn:anti比を生じる。当該技術分野の言明に従い、個々のsyn/anti異性体の後処理は一般に、例えば、クロマトグラフィー法のような慣習的方法を用いて実行される。
【0143】
それとは対照的に、本発明のプロセスの特に好ましい実施態様(bb)に従い、簡便な方式で、式Ia(syn)の化合物対式Ib(anti)の化合物が90:10〜99:1である式Iの化合物が調製される。
【0144】
従って、簡便な方式でsyn異性体に強く好ましいsyn/anti比を有する式Iの化合物の混合物を調製することができることは、本発明のプロセスの特に好ましい実施態様(bb)の特定の利点である。
【0145】
本発明の文脈において、「syn異性体に強く好ましいsyn/anti比を有する式Iの化合物の混合物」とは、式Ia(syn)の化合物の式Ib(anti)の化合物に対する比が、90:10〜99:1である式Iの化合物の混合物であると理解される。
【0146】
本発明のプロセスにおいて、このプロセスの最終生成物である式Iの9-一置換されたピラゾリル-4-カルボン酸ベンゾノルボルネン-5-イル-アミドのsyn/antiの割合は、プロセス工程(b)が実行される場合に形成された式IVの5-アミノ-ベンゾノルボルネンのsyn/anti割合により、実質的に決定される。
【0147】
このプロセスの最終生成物である式Iの化合物を形成するための5-アミノ-ベンゾノルボルネンのアミド化である、プロセス工程(c)の実行時に、そのsyn割合は、実質的に変更されないままである。
【0148】
プロセス工程(c)の実行後に、式Iの化合物のsyn割合は、好適な溶媒を使用する、例えば、tert-ブチルメチルエーテル/ヘキサン混合物又はメタノールを溶媒として使用する、分別結晶により、増大することができる。
【0149】
本発明のプロセスの特に好ましい実施態様(bb)において、プロセス工程(a)に従い得られた式IIIの化合物:
【化33】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)は、ロジウム触媒の存在下で水素と反応しbb)、式IVの化合物を形成する:
【化34】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものであり、及びここで式IVa(syn)の化合物の式IVb(anti)の化合物に対する比は90:10超である)。その後これらの化合物は、プロセス工程(c)において使用される。
プロセス工程(c)の実行後、syn割合は実質的に変化しない。従ってその特に好ましいプロセス変形は、式Iの化合物(ここで式Ia(syn)の化合物の式Ib(anti)の化合物に対する比は90:10超である)を生じる。
【0150】
プロセス工程bb)
好適なロジウム触媒は、例えば、Rh/C、RhAl2O3、又はRh2O3、及びそれらの混合物である。特に好ましいのはRh/Cである。
この反応は好ましくは、不活性溶媒の存在下で実行される。好適な溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、もしくはイソプロパノールなどのアルコール、又はテトラヒドロフラン、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジオキサン、もしくはトルエンなどの非プロトン性溶媒、及びそれらの混合物であり;特に好ましいのは、エタノール又はメタノールである。
【0151】
温度は一般に、0℃〜80℃であり、好ましいのは0℃〜25℃の範囲である。
その反応の反応時間は一般に、1〜100時間であり、好ましくは1〜24時間である。
【0152】
同じく本発明の特に好ましい実施態様(bb)において、反応工程a)に関する好適な反応条件を選択することにより、反応工程a)において得られた式IIIの化合物は、完全な水素化により、中間体の単離を伴わずに、式IVの化合物を直接形成することができる。この本発明の非常に特に好ましい実施態様は、本発明のプロセスの非常に特別な利点がある。その実施態様(bb)の好ましいアレンジメントにおいて、組合せられた反応工程a)及びb)において合計5当量の還元剤が、好ましくは使用される。
【0153】
実施態様(bb)のその好ましいアレンジメントにおいて、反応工程a)及び反応工程b)において同じ金属触媒が、好ましくは使用される。
【0154】
実施態様(bb)のその好ましいアレンジメントの金属触媒の好適な量は、例えば、0.001〜最大0.5当量、特に0.01〜最大0.1当量である。
【0155】
実施態様(bb)のその好ましいアレンジメントにおける反応工程a)及びb)の組合せは、好ましくは密閉容器内で実行される。そのアレンジメントにおいて、過剰な水素が例えば、金属触媒が既に存在する反応混合物へ導入される。その後水素の消費が、反応時間の経過にわたりモニタリングされる。実施態様(bb)のその好ましいアレンジメントにおいて、反応は、所望の量の水素、より好ましくは5当量が消費された時点で停止されることが好ましい。
【0156】
実施態様(bb)のその好ましいアレンジメントにおいて、反応は、大気圧又は最大150barの加圧で実行されてよく、好ましいのは大気圧又は最大50barの加圧であり、特に好ましいのは大気圧又は最大20barの加圧であり、非常に特に好ましいのは大気圧又は最大6barの加圧である。
【0157】
この反応のその好ましい実施態様の反応時間は一般に、1〜100時間、好ましくは1〜24時間である。
【0158】
前述の本発明のプロセスの特に好ましい実施態様(bb)は、下記実施例によりより詳細に説明される:
【0159】
実施例P11:9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(化合物番号Z3.11)の調製
テトラヒドロフラン1L中の9-イソプロピリデン-5-ニトロ-ベンゾノルボルナジエン(Z1.11)95g(0.42mol)を、5%Rh/Cの50gの存在下で、常圧25℃で完全に水素化した。3日半後、水素の吸収が終了した。反応混合液を濾過し、溶媒を真空中で除去し、クロマトグラフィーによる精製を、シリカゲル上で、溶離液として酢酸エチル/ヘキサン(1:4)を用いて実行した。9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン71.8g(理論値の85%)を、油状物の形で得、1H-NMRに従い、syn/anti比92:8であった。
【0160】
式IVの化合物:
【化35】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものであり、並びに式IVa(syn)の化合物:
【化36】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)の、式IVb(anti)の化合物:
【化37】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)に対する比は、90:10〜99:1である)は、式Iの化合物の調製における価値のある中間体であり、及び具体的には本発明の現プロセスのために開発されている。従って本発明は、これにも関係する。
【0161】
式Iの化合物の調製において、式IVa(syn)の化合物の式IVb(anti)の化合物に対する比が91:9〜99:1であるような式IVの化合物は特に価値がある。
【0162】
式Iの化合物の調製において、式IVa(syn)の化合物の式IVb(anti)の化合物に対する比が92:8〜98:2であるような式IVの化合物は特に価値がある。
【0163】
式Iの化合物の調製において、式IVa(syn)の化合物の式IVb(anti)の化合物に対する比がおよそ95:5であるような式IVの化合物は非常に特に価値がある。
【0164】
式Iの化合物の調製における中間体として特に好適なのは、式IVの化合物(式中、R1及びR2は、メチルである)である。
【0165】
スキーム2に説明されたように、6-ニトロ-アントラニル酸(スキーム2の式Aの化合物)は、式IIの化合物の調製において使用することができる。6-ニトロ-アントラニル酸は、下記スキーム(スキーム3)に従い、簡便に調製することができ、及び高い位置選択的収率を生じることがわかっている:
【化38】

そのスキームにおいて、3-ニトロ-フタルイミド(式Eの化合物)は、水性塩基、例えば水酸化ナトリウム水溶液などとの反応により、及び水性酸、例えば塩酸水溶液との引き続きの反応により、6-ニトロフタルアミド酸(式Dの化合物)へ転換される。6-ニトロフタルアミド酸は、高い位置選択的収率で得られ;典型的には、出発材料3-ニトロ-フタルイミドに対して測定され、70%超が実現される。
【0166】
第二の工程において、6-ニトロフタルアミド酸は次に、所望の6-ニトロ-アントラニル酸(式Aの化合物)へ転換される。その工程において、6-ニトロフタルアミド酸は、例えば、最初に水性塩基、例えば水酸化ナトリウム、及び次亜塩素酸ナトリウムの水溶液と、その後水性酸、例えば塩酸水溶液と反応される。
【0167】
3-ニトロ-フタルイミドは市販されている。
【0168】
スキーム2は、下記実施例においてより詳細に説明されている:
実施例A3:6-ニトロ-アントラニル酸の調製
a)6-ニトロフタルアミド酸の調製
水672g中の3-ニトロ-フタルイミド57.6g(0.3mol)の懸濁液を、5℃に冷却した。30%水酸化ナトリウム溶液80g(0.6mol, 2当量)を、できる限り短時間で添加した。5℃で2時間経過後、反応混合物を、5℃で、予め水72mlで希釈した、32%塩酸溶液65g(0.57mol, 1.9当量)へ添加した。そのpHを2〜2.5に調節し、晶出した粗生成物を濾過し、水で2回洗浄した。6-ニトロフタルアミド酸は、収率73%で得た。
【0169】
b)6-ニトロ-アントラニル酸の調製
水429g中の6-ニトロフタルアミド酸126.3g(0.6mol)の懸濁液を、5℃に冷却した。30%水酸化ナトリウム溶液80g(0.6mol, 1当量)を、5℃で0.5時間かけて添加した。
【0170】
15.2%次亜塩素酸ナトリウム溶液288g (0.6mol, 1当量)と一緒にした反応混合液を、43℃に予め加熱した水酸化ナトリウム溶液(30%水酸化ナトリウム溶液235.2g(1.76mol, 3当量)、水280gで希釈)へゆっくり添加した。添加時に温度は、40〜45℃に維持した。40〜45℃で1時間経過後、反応混合物を、32%塩酸268g(2.35mol, 3.9当量)及び水200gの混合物へ添加した。添加時に温度は、20〜45℃で維持した。晶出した粗生成物を濾過し、水で3回洗浄した。6-ニトロ-アントラニル酸を、収率70%で得た。
【0171】
本発明は更に、式IVの化合物の調製のプロセスに関し:
【化39】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)、これは:
a)式IIの化合物:
【化40】

(式中、R1及びR2は、式IVで定義されたものである)を、少なくとも1種の還元剤と反応させ、式IIIの化合物を形成する工程:
【化41】

(式中、R1及びR2は、式IVで定義されたものである);並びに
(b)その化合物を、少なくとも1種の還元剤により、式IVの化合物へ転換する工程:を含む。
【0172】
式IVの化合物を調製するための本発明のそのプロセスにおいて、サブ-工程(a) (式IIIの化合物の調製)及びサブ-工程(b)(式IVの化合物の調製)は、先に説明されたように実行される。
【0173】
同じく式IVの化合物を調製するための本発明のプロセスにおいて、反応工程a)に関する好適な反応条件の選択により、反応工程a)で得られた式IIIの化合物は、例えば先に説明された様式で、完全な水素化により、中間体を単離することなく、反応し、式IVの化合物を直接形成することができる。
【0174】
本発明は更に、式Iの化合物を調製するプロセスに関し:
【化42】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルであり、そしてR3は、CF3又はCF2Hである)、これは:
aa)6-ニトロ-アントラニル酸を、亜硝酸イソアミル及び亜硝酸tert-ブチルから選択された亜硝酸塩と、及び式Cの化合物:
【化43】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)と反応させ、式IIの化合物を形成する工程:
【化44】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
a)その化合物を還元剤と反応させ、式IIIの化合物を形成する工程:
【化45】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
(b)その化合物を、還元剤と反応させ、式IVの化合物を形成する工程:
【化46】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
(c)その化合物を、式Vの化合物との反応により、式Iの化合物へ転換する工程:
【化47】

(式中、Qは、塩素、臭素、ヨウ素、又はヒドロキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである):を含む。
【0175】
式Iの化合物の調製のためのそのプロセスにおいて、反応工程(a)、(b)及び(c)は、先に説明された方式で実行される。反応工程(aa)に関する好適な非プロトン性溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジクロロメタン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、2-ブタノン又はジメトキシエタンである。反応工程(aa)に関する好適な反応温度は、周囲温度〜100℃、好ましくは35〜80℃である。
【0176】
そのプロセスの特に好ましい実施態様は、R1及びR2がメチルであり、及びR3がCF2Hである式Iの化合物を調製するためのプロセスであり、これは:
(aa)6-ニトロ-アントラニル酸を、亜硝酸tert-ブチル、及び式Cの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)と反応させ、式IIの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)を形成する工程;並びに
a)その化合物を、ロジウム/炭素触媒の存在下で水素と反応させ、式IIIの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)を形成する工程;並びに
(b)その化合物を、ラネーニッケル触媒の存在下で水素と反応させ、式IVの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)を形成する工程;並びに
(c)その化合物を、活性化剤の存在下、好ましくはビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)-ホスフィン酸クロリドの存在下で、式Vの化合物(式中、Qはヒドロキシであり、そしてR3はCF2Hである)との反応により、式Iの化合物へ転換し、この反応が塩基の存在下、好ましくはトリエチルアミンの存在下で実行される工程:を含む。
【0177】
そのプロセスの極めて特に好ましい実施態様は、R1及びR2がメチルであり、及びR3がCF2Hである式Iの化合物を調製するためのプロセスであり、これは:
(aa)溶媒としてジメトキシエタンが使用される、6-ニトロ-アントラニル酸を、亜硝酸tert-ブチル、及び式Cの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)と反応させ、式IIの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)を形成する工程;並びに
a)その化合物を、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ロジウム/炭素触媒の存在下で水素と反応させ、式IIIの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)を形成する工程;並びに
(b)その化合物を、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ラネーニッケル触媒の存在下で水素と反応させ、式IVの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)を形成する工程;並びに
(c)その化合物を、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)-ホスフィン酸クロリドの存在下で、式Vの化合物(式中、Qはヒドロキシであり、そしてR3はCF2Hである)との反応により、式Iの化合物へ転換し、この反応がトリエチルアミンの存在下で実行される工程:を含む。
【0178】
式IIの化合物:
【化48】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)は、新規であり、かつ具体的には本発明のプロセスの実行のために開発されている。従って本発明は、式IIの化合物(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)にも関する。特に好ましいのは、R1及びR2はメチルである、式IIの化合物である。
【0179】
一部の式IIIの化合物:
【化49】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)は、新規であり、かつ具体的には本発明のプロセスの実行のために開発されている。従って本発明は、9-イソプロピリデン-5-アミノ-ベンゾノルボルネンを除く、式IIの化合物(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)にも関する。
【0180】
一部の式IVの化合物:
【化50】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)は、新規であり、かつ具体的には本発明のプロセスの実行のために開発されている。従って本発明は、9-イソプロピリデン-5-アミノ-ベンゾノルボルネンを除く、式IVの化合物(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)にも関する。
【0181】
式IIAの化合物:
【化51】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)は、新規であり、かつ具体的には本発明のプロセスの実行のために開発されている。従って本発明は、式IIAの化合物(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)にも関する。特に好ましいのは、R1及びR2がメチルである、式IIAの化合物である。
【0182】
更に、式Iの化合物:
【化52】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルであり、そしてR3は、CF3又はCF2Hである)は同じく、式VIの化合物:
【化53】

(式中、LはC1-C6アルキレン鎖であり、そしてR3は式Iで定義されたものである)を使用し、
d)式Vaの化合物:
【化54】

(式中、Qは、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、又はC1-C6アルコキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)を、式VIIの化合物:
HO-L-OH (VII)
(式中、Lは式VIで定義されたものである)と反応させ、式VIの化合物を形成する工程;並びに
e)その化合物を式VIの化合物:
【化55】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)との反応により、式Iの化合物へ転換する工程:により調製されてよい。そのプロセスにおいて、式IVの化合物は、先に説明された方式で調製されてよい。本発明は、式VIの化合物を使用し、プロセス工程(d)及び(e)を実行する、式Iの化合物の調製にも関する。
【0183】
式VIの化合物の置換基の定義におけるアルキレン鎖は、線状もしくは分枝してよく、並びに例えば、メチレン鎖もしくはエチレン鎖、又は線状もしくは分枝したC3-C6アルキレン鎖、例えば直鎖C3アルキレンとしての-CH2-CH2-CH2-、もしくは分枝鎖C5アルキレンとしての-CH2-C(CH3)2-CH2-である。
【0184】
プロセス工程d)
プロセス工程d)における使用に特に好適であるのは、式Vaの化合物(式中、Q1は、塩素、フッ素、臭素、又はヨウ素であり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)である。極めて特に好ましいのは、式Vaの化合物(式中、Q1は、塩素であり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)である。
【0185】
プロセス工程d)における使用に特に好適であるのは、式VIIの化合物(式中、Lはエチレン鎖である)である。
【0186】
本発明の反応において、式Vaの化合物は、例えば、式VIIの化合物に対し等モル量又は過剰量で、好ましくは最大4-倍過剰量で、特に好ましくは2-倍〜4-倍過剰量で、極めて特に好ましくは2-倍過剰量で使用される。
【0187】
この反応は好ましくは、不活性溶媒の存在下で実行される。好適な溶媒は、例えば、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ブチルメチルエーテル又は水、及びそれらの混合物であり、特に好ましいのはクロロベンゼンである。
この反応は好ましくは、塩基の存在下で実行される。
【0188】
好適な塩基は、例えば、トリエチルアミンもしくはピリジンなどの、アミン塩基;又は、炭酸塩、例えばK2CO3もしくはNa2CO3、又は水酸化物、例えばNaOHもしくはKOHの、無機塩基であり、好ましいのは、トリアルキルアミン、特に好ましいのはトリエチルアミンである。
【0189】
この反応に関する塩基の好適な量は、例えば、1〜最大1.5当量、特に1〜最大1.2当量である。
【0190】
温度は一般に、0℃〜150℃であり、好ましいのは50℃〜100℃の範囲、特に好ましいのは60℃〜100℃の範囲である。
【0191】
この反応は、大気圧又は加圧で行われ、好ましいのは大気圧である。
【0192】
その反応の反応時間は一般に、1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。
【0193】
式VIIの化合物は、市販されているか、又は公知のプロセスに従い調製することができる。
【0194】
プロセス工程e)
本発明の反応において、式IVの化合物は、例えば、式VIの化合物に対し、等モル量又は過剰量で、好ましくは最大4-倍過剰量で、特に好ましくは2-倍〜4-倍過剰量で、極めて特に好ましくは2-倍過剰量で使用される。
【0195】
この反応は、不活性溶媒の存在下で実行されてもよい。好適な溶媒は、例えば、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、又はブチルメチルエーテル、及びそれらの混合物であり、特に好ましいのはクロロベンゼンである。
【0196】
この反応は、溶媒の非存在下で実行されてもよい。
【0197】
この反応は好ましくは、塩基の存在下で実行される。
【0198】
好適な塩基は、例えば、トリエチルアミンもしくはピリジンなどの、アミン塩基;又は、炭酸塩、例えばK2CO3もしくはNa2CO3、又は水酸化物、例えばNaOHもしくはKOHなどの、無機塩基;又は、カリウムtert-ブトキシドなどの、アルコキシドで、好ましいのは例えばカリウムtert-ブトキシドである。
【0199】
この反応に関する塩基の好適な量は、例えば、1〜最大1.5当量、特に1〜最大1.2当量である。
【0200】
温度は一般に、0℃〜150℃であり、好ましいのは50℃〜100℃の範囲、特に好ましいのは80〜120℃の範囲である。
【0201】
この反応は、大気圧又は加圧で行われ、好ましいのは大気圧である。
【0202】
その反応の反応時間は一般に、1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。
【0203】
同じく本発明が関連する前述のプロセスは、下記実施例を参照し説明される:
【0204】
実施例P12:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸2-(3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルオキシ)-エチルエステル(化合物番号Z4.02)の調製
【化56】

エチレングリコール6.2g(0.1mol, 0.5当量)、トリエチルアミン22.2g(0.22mmol, 1.1当量)及びクロロベンゼン50mlを、クロロベンゼン中の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-塩化カルボニル38.9g(0.2mol)の49%溶液へ周囲温度で添加した。反応混合物を、80℃で5時間攪拌した。水を添加し、有機相をメチルイソブチルケトンで抽出した。活性炭素7gを添加し、反応混合液を濾過した。有機相を濃縮した。3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸2-(3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルオキシ)-エチルエステル35.9g(収率:95%)を得た。1H-NMR (CDCl3), ppm: 7.91 (s, 2H), 7.06 (t, 2H), 4.55 (s, 4H), 3.96 (s, 6H)。
【0205】
実施例P13:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド(化合物番号A.11)の調製
【化57】

9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン6.9g(化合物番号Z3.11, syn/anti比90:10;32.8mmol, 2.05当量)及びカリウムtert-ブトキシド1.9g(16mmol, 1当量)を、クロロベンゼン60ml中の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸 2-(3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルオキシ)-エチルエステル(化合物番号Z4.02、実施例P12に従い調製された)6g(16mmol)の溶液に添加した。反応混合液を95℃に加熱し、溶媒クロロベンゼンを真空中で完全に除去した。反応混合液を120℃に加熱し、20時間攪拌した。その後クロロベンゼン30mlを添加した。有機相を、最初に低pH、その後高pHの水で2回抽出した。有機相を、クロロベンゼンの蒸留により濃縮した。3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸 (9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド8gを、茶色油状物の形(粗収率:51%)で得た。
式VIの好ましい化合物を、下記表に列挙する。
【0206】
表6:式VIの化合物
【化58】

【0207】
【表9】

【0208】
式VIの化合物は、入手の容易さ及び良好な取り扱い特性により特徴付けられ、更に妥当な価格である。
【0209】
式VIの化合物:
【化59】

(式中、LはC1-C6アルキレン鎖であり、そしてR3はCF3又はCF2Hである)は、新規であり、かつ具体的には本発明のプロセスの実行のために開発されている。従って本発明は、式VIの化合物(式中、LはC1-C6アルキレン鎖であり、そしてR3はCF3又はCF2Hである)にも関する。好ましいのは、式VIの化合物(式中、Lはエチレン鎖である)である。好ましいのは、式VIの化合物(式中、R3はCF2Hである)である。特に好ましいのは、式VIの化合物(式中、Lはエチレン鎖であり、そしてR3はCF2Hである)である。
【0210】
より良い概観に関して、前述の反応は、スキーム4にまとめられる。
【化60】

【0211】
前述のように、本発明は、様々な態様、とりわけ以下に関する:
(1)工程a)、b)及びc)を使用する、式IIの化合物から出発する式Iの化合物の調製;
(2)工程a2)、b)及びc)を使用する、式IIの化合物から出発する式Iの化合物の調製;
(3)工程a)及びb)を使用する、式IIの化合物から出発する式IVの化合物の調製;
(4)工程a2)及びb)を使用する、式IIの化合物から出発する式IVの化合物の調製;
(5)工程aa)、a)、b)及びc)を使用する、式Aの化合物から出発する式Iの化合物の調製;
(6)工程aa)、a2)、b)及びc)を使用する、式Aの化合物から出発する式Iの化合物の調製;
(7)工程a)、b)、d)及びe)を使用する、式IIの化合物から出発する式Iの化合物の調製;並びに
(8)工程a2)、b)、d)及びe)を使用する、式IIの化合物から出発する式Iの化合物の調製。
【0212】
本発明は、前記プロセスにおいて使用するための中間体にも関する。
【0213】
本発明は更に、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの新規結晶変態、これを含有する組成物、及び栽培された植物の真菌蔓延の制御におけるそれらの使用に関する。
【0214】
3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド(化合物番号A.11)は、植物病原性真菌により引き起こされた多くの病害に対して有効である。このアミドは、式A.11(syn1)、A.11(syn2)、A.11(anti1)及びA.11(anti2)のエナンチオマーとして示された、4種の立体異性体の形で生じるキラル分子である:
【化61】

【0215】
本発明に従い、「syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド」は、式A.11(syn1)の化合物及び式A.11(syn2)の化合物のラセミ混合物を意味する。
【0216】
単独の融点110-112℃を有するsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶性物質(ジアステレオマー純度:90%)は、国際公開公報第04/035589号において開示されている。この結晶性物質は、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの「結晶変態A」と定義される。
【0217】
化学的化合物の様々な結晶変態は、非常に異なる物理特性を示すことができ、このことはこれらの化合物の技術的調製及びプロセス時の予見不可能な問題点につながり得る。結晶変態の特徴は、例えば、医薬用及び農業用の活性化合物の分離能(濾過)、攪拌能(結晶容積)、表面活性(発泡)、乾燥速度、溶解度、品質、配合能及び貯蔵安定性及び生体有効性に対し、決定的影響を有することが多い。例えば、生成物の摩砕特性及び配合特性(例えば、造粒)は、各々の結晶変態に応じて完全に異なることがある。想定される配合プロセスに応じ、それぞれの生成物の異なる物理特性が重要であるので、それぞれの配合プロセスに最適に適した結晶形を見つけることは特に有利である。
【0218】
更に、変態は、ある熱力学的条件下で、別の望ましくない変態へ突然変換することができる。多形状態の数は、予測不可能である。溶液からの新たな結晶の形成速度は極めて遅いので、最も安定した高分子状態は形成されない。
【0219】
従って本発明の目的は、活性成分の製剤及びその貯蔵可能性に関し良好な特性を伴う、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの新規結晶変態を特別に提供することである。
【0220】
本発明は、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bに関し、ここで該結晶変態は、面間隔d及び相対強度に関して表された、粉末X-線回折パターンにより特徴付けられ、ここで該粉末X-線回折パターンは、13.42Å(強)、9.76Å(中)、6.93Å(中)、6.74Å(中)、4.79Å(中)、4.73Å(中)、及び3.66Å(中)の特性線を含む。粉末X-線回折パターンは、Bruker-AXS D8 Advanced Powder X-線回折計、線源:CuKα1を用いて得た。
【0221】
結晶変態Bは、熱力学安定性、物理的パラメータ、例えばIRスペクトル及びラマンスペクトルの吸収パターン、並びにX-線構造試験及びそれらの水又は農芸化学用製剤において常用の液体担体への溶解度などの点が、結晶変態Aとは異なる。
変態Bは、変態Aと比べ、著しい利点がある。従って例えば、DSC、溶解度試験及び他の実験は、驚くべきことに変態Bは、実質的に変態Aよりもより良い熱力学的安定性を有することを示している。
【0222】
例えば、変態Bの水溶解度は、関連する温度範囲にわたり、変態Aの水溶解度よりも低い。水性分散剤において、最低の溶解度を持つ多形は、最も安定している。周囲の水相は、より安定した多形に対し過度に飽和されるので、比較的高い溶解度を持つ多形は不安定であり、より不安定な多形の溶液及びより安定した多形の結晶化に繋がる。得られた粒子サイズの変化は、配合された分散体の安定性の変化に繋がるであろう。
【0223】
その農芸化学用製剤の長期にわたる高度の再現可能な安定性を確実にすることは、殺真菌剤について特に重要である。これらの前提条件は、結晶変態Aと比べその高い熱力学的安定性のために、結晶変態Bの化合物syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの組込みにより満たされる。特にこれは、固形農芸化学剤形において発揮される。活性成分が転換プロセスに供される場合は、これは固形製剤の安定性に容易に影響するであろう。
【0224】
従って、新規活性成分の開発に関する主な関心がある農芸化学用の活性成分又はそれらの多形型は、高い安定性を示すが、前述の欠点は有さないものである。結晶変態Bは、これらの前提条件を満たす。
【0225】
結晶変態Bは、実施例P5、P6及びP14に説明したように調製した。結晶変態Aは、実施例A4に説明したように調製した。結晶変態Bは、メタノール/水混合液からの種結晶化によっても調製することができ;典型的には、10%種晶負荷が使用される。例えば、結晶変態Bは、20%水/メタノールからの種結晶化によっても調製することができる。
【0226】
変態Bは、格子面間隔(d値Å)13.42Å(強)、9.76Å(中)、6.93Å(中)、6.74Å(中)、4.79Å(中)、4.73Å(中)、及び3.66Å(中)である特性線を伴うX-線粉末パターンを有する(表7又は図1参照)。対照的に、変態Aは、格子面間隔(d値)21.98Å(中)、10.81Å(弱)、8.79Å(弱)、6.51Å(弱)、4.65Å(中)及び4.20Å(中)である特性線を伴う粉末X-線パターンを有する(表8又は図2参照)。粉末X-線回折パターンは、Bruker-AXS D8 Advanced Powder X-線回折計、線源:CuKα1を用いて得た。
【0227】
表7:変態Bの特徴(粉末X-線パターン)
【表10】

表8:変態Aの特徴(粉末X-線パターン)
【表11】

【0228】
ラマンスペクトルにおいて、変態Bは、多くのバンドの形状及び相対強度が、変態Aと異なる(図3及び4参照)。例えば、各ラマンスペクトルの読取りには、装置Thermo Electron Almega Raman Microscope(785nm、高解像度設定)を使用することができる。
【0229】
変態Bの特徴は、同じくDSC(示差走査熱量測定、図5参照)におけるサーモグラムである。これは、純度に応じ、120℃〜128℃の範囲で、吸熱ピークを有する。例えば、純粋な形の結晶変態Bは、ピーク温度128℃、90J/g辺りに吸熱シグナルを有する。このサーモグラムは、変態Aのサーモグラムと特徴的に異なり(図6参照)、これは吸熱ピークを約112℃に及び吸熱シグナルを76J/gに有する。この測定は、Metier Toledo 820 DSCにおいて閉鎖された容器(pan)内で、加熱速度10K/分で実行される。典型的試料定量は、約5mgである。
【0230】
本発明は好ましくは、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bに関し、ここで該結晶変態は、面間隔d及び相対強度に関して表された、粉末X-線回折パターンにより特徴付けられ、ここで該粉末X-線回折パターンは、以下の特性線を有する:13.42Å(強)、9.76Å(中)、6.93Å(中)、6.74Å(中)、6.23Å(弱)、5.66Å(中)、4.84Å(中)、4.79Å(中)、4.73Å(中)、3.98Å(中)、3.81Å(中)及び3.66Å(中)。
【0231】
本発明は好ましくは、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bに関し、ここで該結晶変態は、図1に示された粉末X-線回折パターンを有することを特徴とする。
【0232】
本発明は好ましくは、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bに関し、ここで該結晶変態は、示差走査熱量測定のサーモグラムにおいて、120℃〜128℃の範囲にピークがある吸熱シグナルを有することを特徴としている。
【0233】
本発明は好ましくは、実質的に純粋な形のsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bに関する。本発明での「実質的に純粋」とは、好ましくはsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド)の結晶変態Bが少なくとも75質量%、より好ましくは少なくとも80質量%であることを意味する。
【0234】
本発明は好ましくは、純粋な形のsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bに関する。本発明での「純粋」とは、好ましくはsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bが少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、更により好ましくは少なくとも98質量%であることを意味する。
【0235】
本発明は好ましくは、高度に純粋な形のsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bに関する。本発明での「高度に純粋」とは、実質的に均質なsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bであることを意味する。
【0236】
syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bは、有用な植物において病害を引き起こす微生物に対し、特に植物病原性真菌に対し使用することができる。結晶変態Bは、以下の綱の植物病原性真菌に対し、特に有効である:子嚢菌(例えば、Venturia、Podosphaera、Erysiphe、Monilinia、Mycosphaerella、Uncinula);担子菌(例えば、Hemileia、Rhizoctonia、Phakopsora、Puccinia、Ustilago、Tilletiaの属);不完全な真菌(不完全菌としても公知;例えば、Botrytis、Helminthosporium、Rhynchosporium、Fusarium、Septoria、Cercospora、Alternaria、Pyricularia、及びPseudocercosporella);卵菌(例えば、Phytophthora、Peronospora、Pseudoperonospora、Albugo、Bremia, Pythium、Pseudosclerospora、Plasmopara)。
【0237】
本発明に従い、「有用な植物」は典型的には、以下の植物種を含む:仁果;核果;ブドウ;イチゴ;トマト;ジャガイモ;コショウ;レタス;テンサイ;ピーナツ;コムギ;ライムギ;オオムギ;ライコムギ;エンバク;コメ;トウモロコシ;綿;ダイズ;アブラナ;マメ科作物;ヒマワリ;コーヒー;茶;サトウキビ;バナナ;野菜、例えばキュウリ、ビーン及びカボチャ;タバコ;果実及び園芸用観葉植物及びワイン用ブドウ栽培;ターフ及び芝生。
【0238】
用語「有用な植物」は、(1)ブロモキシニルのような除草剤、又は繁殖もしくは遺伝子操作の常法の結果としての除草剤の種類に耐性をもたらす植物;(2)例えば、毒素産生菌、特にバシラス属のものに由来することがわかっているような、選択的に作用する毒素を1種又は複数合成することが可能である、組換えDNA技術の使用により形質転換された植物;(3)例えば、いわゆる「病原性-関連タンパク質」のような選択作用を有する抗病原性物質の合成が可能であるように、組換えDNA技術の使用により形質転換されている、植物;並びに、(4)例えば、オレイン酸及び/又はステアリン酸の変更されたレベルを提供する、植物/種子の脂肪酸組成を変更する形質、又は例えば医薬品(抗体を含む)及び更には産業用酵素(例えば、フィターゼ、キシラナーゼ、グルカナーゼ)などの産業用製品を提供する形質のような、1種又は複数の「出力(output)形質」(増強された製品品質を提供する形質)も含む、植物:も含むことは理解されるべきである。
【0239】
結晶変態Bは、植物及び/又は動物起源の天然物質、それらの処理された形の防御、又は真菌の攻撃に対する技術的材料に対しても効果がある。
適用される結晶変態Bの量は、様々な要因、例えば植物、土壌又は種子のような処理の対象;噴霧、散粉、又は種子粉衣などの処理の形;例えば予防的又は治療的などの、処理の目的;制御される真菌の種類、及び適用時間などに応じて左右されるであろう。
【0240】
結晶変態Bは、更なる殺真菌剤、殺菌剤、除草剤、殺虫剤、殺線虫剤、軟体動物駆除剤、又はいくつかのそれらの活性成分の混合物と一緒に使用することもできる。結晶変態Bは、例えば、懸濁剤(SC)、乳剤(EC)、又は種子処理用フロアブル製剤(FS)などの、任意の通常の形で使用することもできる。結晶変態Bが使用される場合、有用な植物、それらの場所、又はそれらの繁殖体へ、典型的には先に説明された組成物(通常の形)で適用される。
【0241】
結晶変態Bは、真菌、有用な植物、それらの場所、又はそれらの繁殖体を、結晶変態Bで処理することにより、適用される。結晶変態Bは、有用な植物又はそれらの繁殖体の真菌による感染の前又は後に適用されてよい。本明細書において使用される用語有用な植物の「場所」とは、有用な植物が生育する区域、有用な植物の植物繁殖体が植え付けられた区域、又は有用な植物の植物繁殖体が土壌へ配置されるであろう区域を包含することが意図されている。そのような場所の例は、作物植物が生育される圃場である。用語「植物繁殖体」は、植物の増殖に使用され得る種子のような植物の生殖部分、並びに挿し木及びジャガイモなどの塊茎のような栄養物質を意味すると理解され;好ましくは、「植物繁殖体」は種子を意味する。
【0242】
結晶変態Bは、有用な植物での以下の植物病害の制御に有用である:果実及び野菜におけるAltemaria種;マメ科作物におけるAscochyta種;イチゴ、トマト、ヒマワリ、マメ科作物、野菜及びブドウにおけるBotrytis cinerea、例えばブドウにおけるBotrytis cinereaなど;ピーナツにおけるCercospora arachidicola;穀物におけるCochliobolus sativus;マメ科作物におけるColletotrichum種;穀物におけるErysiphe種;コムギにおけるErysiphe graminis及びオオムギにおけるErysiphe graminisなど;カボチャにおけるErysiphe cichoracearum及びSphaerotheca fuliginea;穀物及びトウモロコシにおけるFusarium種;穀物及び芝生におけるGaumannomyces graminis;トウモロコシ、コメ及びジャガイモにおけるHelminthosporium種;コーヒーにおけるHemileia vastatrix;コムギ及びライムギにおけるMicrodochium種;バナナにおけるMycosphaerella fijiensis;ダイズにおけるPhakopsora種、例えばダイズにおけるPhakopsora pachyriziなど;穀物、広葉作物及び多年性植物におけるPuccinia種;例えば、コムギにおけるPuccinia recondita、コムギにおけるPuccinia striiformis、及びオオムギにおけるPuccinia reconditaなど;穀物におけるPseudocercosporella種、例えばコムギにおけるPseudocercosporella herpotrichoidesなど;バラにおけるPhragmidium mucronatum;果実におけるPodosphaera種;オオムギにおけるPyrenophora種、例えば、オオムギにおけるPyrenophora teresなど;コメにおけるPyricularia oryzae;オオムギにおけるRamularia collo-cygni;綿、ダイズ、穀物、トウモロコシ、ジャガイモ、コメ及び芝生におけるRhizoctonia種、例えばジャガイモ、コメ、ターフ及び綿におけるRhizoctonia solaniなど;オオムギにおけるRhynchosporium secalis、ライムギにおけるRhynchosporium secalis;芝生、レタス、野菜及びアブラナにおけるSclerotinia種、例えばアブラナにおけるSclerotinia sclerotiorum、及びターフにおけるSclerotinia homeocarpaなど;穀物、ダイズ、及び野菜におけるSeptoria種、例えば、コムギにおけるSeptoria tritici、コムギにおけるSeptoria nodorum、及びダイズにおけるSeptoria glycineなど;トウモロコシにおけるSphacelotheca reilliana;穀物におけるTilletia種;ワイン用ブドウにおけるUncinula necator、Guignardia bidwellii、及びPhomopsis viticola;ライ麦におけるUrocystis occulta;ビーンにおけるUromyces種;穀物及びトウモロコシにおけるUstilago種;果実におけるVenturia種、例えば、リンゴにおけるVenturia inequalisなど;果実におけるMonilinia種;及び/又は、シトラス及びリンゴにおけるPenicillium種。
【0243】
有用な植物へ適用される場合、結晶変態Bは、5〜2000g a.i./ha、特に10〜1000g a.i./ha、例えば50、75、100又は200g a.i/haの割合で適用され;組成物の形で適用される場合は、適用の割合は、典型的には総組成物20〜4000g/ヘクタールの範囲である。種子の処理に使用される場合は、結晶変態Bの0.001〜50g/kg種子、好ましくは0.01〜10g/kg種子の割合で一般に十分である。
【0244】
更に本発明は、好適な担体と一緒に殺真菌に有効な量のsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bを活性成分として含有する、殺真菌組成物に関する。
【0245】
これらの本発明の組成物は、例えば、ツインパックの形、懸濁剤(SC)、サスポリマーエマルション製剤(SE)、顆粒水和剤(WG)、乳化可能な粒剤(EG)、油性分散剤(OD)、油混和用流動体(OF)、超低容量懸濁剤(SU)、水和剤(WP)、テクニカルコンセントレート(TK)、分散性濃縮物(DC)、乾燥種子処理用ダスト剤(DS)、種子処理用流動性濃縮物(FS)、種子処理用水分散性粉剤(WS)又は農業上許容できる補助剤と組み合わせた任意の技術的に実現可能な製剤などの、任意の通常の形で使用され得る。
【0246】
このような組成物は、例えば、活性成分を又は活性成分を、適当な製剤用不活性物質(formulation inert)(希釈剤、溶媒、充填剤、及び任意に他の製剤用成分、例えば界面活性剤、殺生物剤、凍結防止剤、付着剤、増粘剤及び補助作用を提供する化合物)などと混合することによるような、通常の様式で製造することができる。水分散性濃縮物(例えば、SC、DC、SEなど)、水和剤及び粒剤などの噴霧形式で適用される特定の製剤は、湿潤剤及び分ダスト剤のような界面活性剤、並びに例えば、ホルムアルデヒドのスルホン酸ナフタレン、スルホン酸アルキルアリール、スルホン酸リグニン、脂肪族硫酸アルキル、及びエトキシル化されたアルキルフェノール及びエトキシル化された脂肪族アルコールとの縮合生成物のような補助作用を提供する他の化合物を含有することができる。これらの組成物は、更に農薬、例えば、殺真菌剤、殺虫剤又は除草剤などを含有することもできる。
【0247】
種子粉衣製剤は、例えば、種子への良好な接着性を有する、水性懸濁液又は乾燥粉剤の形で、好適な種子粉衣剤形中で本発明の組成物及び希釈剤を使用し、それ自身公知の様式で種子へ適用される。このような種子粉衣製剤は、当該技術分野において公知である。
【0248】
一般に、これらの製剤は、活性物質を0.01〜90質量%、農業に許容できる界面活性剤を0〜20%、及び固形又は液体の製剤用不活性物質及び補助剤(複数)を10〜99.99%含有し、この活性物質は、少なくとも結晶変態Bであり、及び任意に他の活性物質を含有する。濃縮された形の組成物は一般に、約2〜80%、好ましくは約5〜70質量%の活性物質を含有する。塗布形の組成物は、例えば、0.01〜20質量%、好ましくは0.01〜5質量%の活性物質を含有してよい。市販の製品は好ましくは濃縮物として製剤されるのに対し、末端使用者は、通常希釈された製剤を使用するであろう。
【0249】
更に本発明は、有用な植物又はそれらの繁殖体において、植物病原性病害を制御する方法に関し、これは有用な植物、それらの場所、又はそれらの繁殖体へ、殺真菌に有効な量の活性成分syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bを好適な担体と共に含有する組成物を適用することを含む。
【0250】
変態Bの調製は、例えば、下記実施態様に説明されたように実行される。
【0251】
実施例P14:変態Bにおけるsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド(純度:>99%)の調製
実施例P6に説明されたように、9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(syn/anti比90:10)から出発して調製された結晶性3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド(純度:97.6%;syn/anti比94:6)240gを、メタノール560gと、温度60℃で混合した。この混合物を65℃に加熱し、結晶性物質が溶解するまで攪拌した。この溶液を、20分間かけて、温度40℃まで冷却し、その後2時間かけて25℃まで冷却した。その期間に、沈殿が形成された。沈殿を25℃で濾過し、真空下で60℃で乾燥した。純粋なsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド(純度:>99%、m.p.128℃、収率:47%)113gを得た。この結晶性物質を、示差走査熱量測定及びx-線回折により分析し、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bとして同定し、変態Aの存在は検出されなかった(図1、3及び5参照)。
【0252】
実施例A4:変態Aでのsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの調製
結晶性syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミド(syn/anti-化合物の純度:94.1%;syn/anti比84:16)を、9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネン(syn/anti比87:13)から出発して、実施例P6に説明されたように調製した。この結晶性物質を、示差走査熱量測定、ラマン分光分析、及びx-線回折により分析し、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Aとして同定し、変態Bの存在は検出されなかった(図2、4及び6参照)。
【0253】
製剤実施例
下記の実施例を、本発明を例証するために使用し、「活性成分」は、syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bを意味する。
【0254】
懸濁剤
活性成分 40%
プロピレングリコール 10%
ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル
(エチレンオキシド15mol) 6%
リグノスルホン酸ナトリウム 10%
カルボキシメチルセルロース 1%
シリコーン油(水中75%乳剤の形で) 1%
水 32%
【0255】
細かく粉砕された活性成分は、補助剤と緊密に混合し、懸濁液濃縮物を生じ、これから任意の所望の希釈の懸濁液を、水による希釈により得ることができる。このような希釈物を使用し、噴霧、注水又は含浸により、生存植物に加え植物繁殖体を、微生物の蔓延に対し処理及び保護することができる。
【0256】
水和剤 a) b) c)
活性成分 25% 50% 75%
リグノスルホン酸ナトリウム 5% 5% −
ラウリル硫酸ナトリウム 3% − 5%
ジイソブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム − 6% 10%
フェノールポリエチレングリコールエーテル − 2% −
(エチレンオキシド7〜8mol)
高分散性ケイ酸 5% 10% 10%
カオリン 62% 27%
【0257】
活性成分は、補助剤と完全に混合し、この混合物を好適なミル内で完全に粉砕し、水和剤を得、これは水で希釈し、所望の濃度の懸濁液を生じる。
【0258】
乾燥種子処理用粉末 a) b) c)
活性成分 25% 50% 75%
軽質鉱油 5% 5% 5%
高分散性ケイ酸 5% 5% −
カオリン 65% 40% −
タルク − 20
【0259】
活性成分を、補助剤と完全に混合し、この混合物を好適なミル内で完全に粉砕し、粉末を得、これは直接種子処理に使用することができる。
【0260】
粉剤 a) b) c)
活性成分 5% 6% 4%
タルク 95%
カオリン − 94%
無機充填剤 − − 96%
【0261】
そのまま使用できる粉剤は、活性成分を担体と混合し、及び混合物を好適なミル内で粉砕することにより得た。このような粉末は、種子のための乾燥粉衣としても使用することができる。
【0262】
押出粒剤
活性成分 15%
リグノスルホン酸ナトリウム 2%
カルボキシメチルセルロース 1%
カオリン 82%
【0263】
活性成分を、補助剤と混合し、粉砕し、この混合物を水で湿潤した。この混合物を押出し、次に空気流れ内で乾燥した。
【0264】
コーティングされた粒剤
活性成分 8%
ポリエチレングリコール(分子量200) 3%
カオリン 89%
【0265】
細かく粉砕した活性成分を、ミキサー内で、ポリエチレングリコールで湿潤したカオリンに均一に塗布した。この様式で、非-粉のコーティングされた粒剤を得た。
【0266】
種子処理用フロアブル製剤
活性成分 40%
プロピレングリコール 5%
ブタノールPO/EOコポリマー 2%
10-20モルEOとのトリスチレンフェノール 2%
1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(水中20%溶液の形で) 0.5%
モノアゾ-顔料カルシウム塩 5%
シリコーン油(水中75%乳液の形で) 0.2%
水 45.3%
【0267】
細かく粉砕した活性成分を、補助剤と緊密に混合し、懸濁液濃縮物を生じ、これから任意の所望の希釈の懸濁液を、水による希釈により得ることができる。このような希釈物を使用し、噴霧、注水又は含浸により、生存植物に加え植物繁殖体を、微生物の蔓延に対し処理及び保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】図1は、実施例P14において調製された結晶変態Bのx-線パターンを示す。
【図2】図2は、実施例A4において調製された結晶変態Aのx-線パターンを示す。
【図3】図3は、実施例P14において調製された結晶変態Bのラマンスペクトルを示す。
【図4】図4は、実施例A4において調製された結晶変態Aのラマンスペクトルを示す。
【図5】図5は、実施例P14において調製された結晶変態BのDSCプロットを示す。
【図6】図6は、実施例A4において調製された結晶変態AのDSCプロットを示す。
【図7】図7は、実施例P5で調製された結晶変態Bのx-線パターンを示す。
【図8】図8は、実施例P6で調製された結晶変態BのDSCプロットを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物を調製するための方法であって:
【化1】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルであり、そしてR3は、CF3又はCF2Hである);
a)式IIの化合物:
【化2】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)を、少なくとも1種の還元剤と反応させ、式IIIの化合物を形成する工程:
【化3】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
(b)該化合物を、少なくとも1種の還元剤と反応させ、式IVの化合物を形成する工程:
【化4】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
(c)該化合物を、式Vの化合物との反応により、式Iの化合物へ転換する工程:
【化5】

(式中、Qは、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、又はC1-C6アルコキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである):を含む、方法。
【請求項2】
式Iの化合物において、R1及びR2はメチルであり、そしてR3はCF2Hである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
方法工程c)において、式IVの化合物を、式Vの化合物(式中、Qは、塩素、フッ素、又は臭素であり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)と反応させる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
方法工程c)において、式IVの化合物を、式Vの化合物(式中、Qは、塩素、臭素、ヨウ素、又はヒドロキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)と反応させる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
単独の還元剤が、方法工程a)において使用される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
方法工程a)において得られた式IIIの化合物を、中間体の単離を伴わずに、直接式IVの化合物を形成するように反応させる、請求項4記載の方法。
【請求項7】
方法工程c)において、式IVの化合物を、式Vの化合物(式中、Qは、ヒドロキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)と反応させる、請求項4記載の方法。
【請求項8】
式Iの化合物において、R1及びR2がメチルであり、そしてR3がCF2Hである、請求項4記載の方法。
【請求項9】
方法工程b)において、ロジウム触媒の存在下で水素が還元剤として使用され、そして式IIIの化合物:
【化6】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)を、式IVの化合物を形成するように反応させ:
【化7】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)、ここで、式IVa(syn)の化合物:
【化8】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)の、式IVb(anti)の化合物:
【化9】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)に対する比が、90:10よりも大きい、請求項4記載の方法。
【請求項10】
式IVの化合物であり:
【化10】

(式中、R1及びR2は、請求項1記載の式Iで定義されたものである)、ここで、式IVa(syn)の化合物:
【化11】

(式中、R1及びR2は、請求項1記載の式Iで定義されたものである)の、式IVb(anti)の化合物:
【化12】

(式中、R1及びR2は、請求項1記載の式Iで定義されたものである)に対する比が、90:10〜99:1である、化合物。
【請求項11】
請求項1記載の式Iの化合物の調製法における、式IVの化合物の使用であり:
【化13】

(式中、R1及びR2は、請求項1記載の式Iで定義されたものである)、ここで、式IVa(syn)の化合物:
【化14】

(式中、R1及びR2は、請求項1記載の式Iで定義されたものである)の、式IVb(anti)の化合物:
【化15】

(式中、R1及びR2は、請求項1記載の式Iで定義されたものである)に対する比が、90:10〜99:1である、使用。
【請求項12】
請求項1記載の方法に従い調製される、式IVの化合物:
【化16】

(式中、R1及びR2は、請求項1記載の式Iで定義されたものである)。
【請求項13】
式IVの化合物を調製するための方法であり:
【化17】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである);
a)式IIの化合物:
【化18】

(式中、R1及びR2は、式IVで定義されたものである)を、少なくとも1種の還元剤と反応させ、式IIIの化合物を形成する工程:
【化19】

(式中、R1及びR2は、式IVで定義されたものである);並びに
(b)該化合物を、少なくとも1種の還元剤と反応させ、式IVの化合物へ転換する工程:を含む、方法。
【請求項14】
式Iの化合物を調製するための方法であり:
【化20】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルであり、そしてR3は、CF3又はCF2Hである);
aa)6-ニトロ-アントラニル酸を、亜硝酸イソアミル及び亜硝酸tert-ブチルから選択された亜硝酸塩、及び式Cの化合物:
【化21】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)と反応させ、式IIの化合物を形成する工程:
【化22】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
a)該化合物を還元剤と反応させ、式IIIの化合物を形成する工程:
【化23】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
(b)該化合物を、還元剤と反応させ、式IVの化合物を形成する工程:
【化24】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
(c)その化合物を、式Vの化合物との反応により、式Iの化合物へ転換する工程:
【化25】

(式中、Qは、塩素、臭素、ヨウ素、又はヒドロキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである);を含む、方法。
【請求項15】
R1及びR2がメチルであり、そしてR3がCF2Hである式Iの化合物を調製するための、請求項14記載の方法であり;
(aa)6-ニトロ-アントラニル酸を、亜硝酸tert-ブチル、及び式Cの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)と反応させ、式IIの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)を形成する工程;並びに
a)該化合物を、ロジウム/炭素触媒の存在下で水素と反応させ、式IIIの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)を形成する工程;並びに
(b)該化合物を、ラネーニッケル触媒の存在下で水素と反応させ、式IVの化合物(式中、R1及びR2はメチルである)を形成する工程;並びに
(c)該化合物を、活性化剤の存在下で、式Vの化合物(式中、Qはヒドロキシであり、そしてR3はCF2Hである)との反応により、式Iの化合物へ転換し、該反応が塩基の存在下で実行される工程:を含む、方法。
【請求項16】
式IIの化合物:
【化26】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)。
【請求項17】
請求項14記載の式Iの化合物の調製における、式IIの化合物の使用。
【請求項18】
9-イソプロピリデン-5-アミノ-ベンゾノルボルネンを除く、式IIIの化合物:
【化27】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)。
【請求項19】
9-イソプロピル-5-アミノ-ベンゾノルボルネンを除く、式IVの化合物:
【化28】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)。
【請求項20】
式IIAの化合物:
【化29】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルである)。
【請求項21】
式VIの化合物:
【化30】

(式中、LはC1-C6アルキレン鎖であり、そしてR3はCF3又はCF2Hである)。
【請求項22】
Lがエチレン鎖であり、そしてR3がCF2Hである、請求項21記載の式VIの化合物。
【請求項23】
式Iの化合物の調製における、請求項21記載の式VIの化合物の使用:
【化31】

(式中、R1、R2、そしてR3は、請求項1記載のものである)。
【請求項24】
式Iの化合物を調製する方法であり:
【化32】

(式中、R1及びR2は、各々他方から独立して水素又はC1-C5アルキルであり、そしてR3は、CF3又はCF2Hである);
a)式IIの化合物:
【化33】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである)を、還元剤と反応させ、式IIIの化合物を形成する工程:
【化34】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
b)その化合物を、還元剤と反応させ、式IVの化合物を形成する工程:
【化35】

(式中、R1及びR2は、式Iで定義されたものである);並びに
d)式Vaの化合物を:
【化36】

(式中、Qは、塩素、臭素、ヨウ素、又はC1-C6アルコキシであり、そしてR3は、式Iで定義されたものである)、式VIIの化合物
HO-L-OH (VII)
(式中、Lは、式VIで定義されたものである)
と反応させ、式VIの化合物:
【化37】

(式中、LはC1-C6アルキレン鎖であり、そしてR3は式Iに定義されたものである)を形成する工程;並びに
e)式VIの化合物を、式IVの化合物との反応により、式Iの化合物へ転換する工程:を含む、方法。
【請求項25】
syn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bであり、ここで該結晶変態が、面間隔d及び相対強度に関して表された、粉末X-線回折パターンにより特徴付けられ、ここで該粉末X-線回折パターンが、13.42Å(強)、9.76Å(中)、6.93Å(中)、6.74Å(中)、4.79Å(中)、4.73Å(中)、及び3.66Å(中)の特性線を含む、結晶変態。
【請求項26】
図1に示された粉末X-線回折パターンを有することを更に特徴とする、請求項25記載の結晶変態。
【請求項27】
示差走査熱量測定におけるサーモグラムにおいて、120℃〜128℃の範囲にピークを伴う吸熱シグナルを有する、請求項25記載の結晶変態。
【請求項28】
実質的に純粋な形である、請求項25記載の結晶変態。
【請求項29】
慣習的に不活性の製剤補助剤に加え、活性成分として少なくともsyn-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(9-イソプロピル-1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノ-ナフタレン-5-イル)-アミドの結晶変態Bを殺真菌的に有効な量において含んで成る、有用な植物又はそれらの繁殖体において植物病原体により引き起こされた病害を制御するための組成物。
【請求項30】
有用な植物、それらの場所又はそれらの繁殖体に対して、請求項29記載の組成物を適用することを含んで成る、有用な植物又はそれらの繁殖体において植物病原体により引き起こされた病害を制御する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−509935(P2009−509935A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530418(P2008−530418)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008982
【国際公開番号】WO2007/031323
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】