説明

アミド化合物、硼素化アミド化合物、潤滑油用添加剤および潤滑油組成物

【課題】高温安定性、高温清浄性、塩基価維持性に優れ、かつ微粒子分散性を有する無灰系清浄分散剤として有用なアミド化合物、硼素化アミド化合物、当該化合物を含有する潤滑油用添加剤および当該添加剤を配合してなる潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】本発明のアミド化合物は、(A)炭化水素置換基が2以上であるサリチル酸誘導体のモル数がサリチル酸誘導体全体のモル数に対して25%以上である炭化水素置換サリチル酸誘導体と、(B)ポリアルキレンポリアミンとを反応させて得られたアミド化合物であり、前記(A)成分の該炭化水素置換基の炭素数が6以上40以下であり、前記(B)成分の窒素数が2以上10以下であり、かつ、アルキレン基の炭素数が1以上6以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド化合物および硼素化アミド化合物、該化合物を含有する潤滑油用添加剤、並びに該添加剤を配合してなる潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無灰系の清浄分散剤として、コハク酸イミド系およびヒドロキシベンジルアミン系等の化合物が用いられているが、高温における清浄性、安定性が十分でない。
そこで、特許文献1や特許文献2では、サリチル酸系アミド化合物からなる無灰系清浄分散剤が提案されている。さらに、特許文献3では、アルキル置換サリチル酸誘導体および脂肪酸との混合物に対してポリアルキレンポリアミンを反応させて得られる混合酸アミド化合物からなる無灰系清浄分散剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−88165号公報
【特許文献2】米国特許第4090971号明細書
【特許文献3】特開2005−290150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されたアミド化合物は、その片末端が1級アミンであるため、高温清浄性に劣る。また、当該アミド化合物のサリチル酸部位に置換されているアルキル基の数が、多くの場合、1つであるため、鉱油への溶解性が劣る。さらに、特許文献1や特許文献2では、塩基価維持性に関する記載も無い。
また、特許文献3では、潤滑油基油への溶解性を確保すべく、置換基が1つ又は2つのアルキル置換サリチル酸誘導体と脂肪酸との混合物に対してポリアルキレンポリアミンを反応させているが、溶解性が確保される一方で、堆積物の量を増やすこととなり、微粒子分散性が悪化するだけでなく、高温清浄性や高温安定性も確保することができない。
【0005】
本発明は、高温安定性、高温清浄性、塩基価維持性に優れ、かつ微粒子分散性を有する無灰系清浄分散剤として有用なアミド化合物、硼素化アミド化合物、該化合物を含有する潤滑油用添加剤および該添加剤を配合してなる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下に示すアミド化合物および硼素化アミド化合物、当該化合物を含有する潤滑油用添加剤、並びに当該添加剤を配合してなる潤滑油組成物を提供するものである。
【0007】
〔1〕(A)炭化水素置換基が2以上であるサリチル酸誘導体のモル数がサリチル酸誘導体全体のモル数に対して25%以上である炭化水素置換サリチル酸誘導体と、(B)ポリアルキレンポリアミンとを反応させて得られたアミド化合物であり、前記(A)成分の該炭化水素置換基の炭素数が6以上40以下であり、前記(B)成分の窒素数が2以上10以下であり、かつ、アルキレン基の炭素数が1以上6以下であるアミド化合物。
〔2〕上述の〔1〕に記載のアミド化合物において、該アミド化合物が2級アミンおよび3級アミンの少なくともいずれかであることを特徴とするアミド化合物。
〔3〕上述の〔1〕又は〔2〕に記載のアミド化合物において、前記(A)成分の総モル数と前記(B)成分の総モル数との比が0.7:1から7:1までの割合であることを特徴とするアミド化合物。
〔4〕上述の〔1〕から〔3〕までのいずれか1項に記載のアミド化合物がさらに硼素を含有することを特徴とする硼素化アミド化合物。
〔5〕上述の〔1〕から〔3〕までのいずれか1項に記載のアミド化合物および上述の〔4〕に記載の硼素化アミド化合物の少なくともいずれかを含有することを特徴とする潤滑油用添加剤。
〔6〕上述の〔5〕に記載の潤滑油用添加剤が清浄分散剤であることを特徴とする潤滑油用添加剤。
〔7〕上述の〔5〕又は〔6〕に記載の潤滑油用添加剤を配合してなる潤滑油組成物。
〔8〕上述の〔7〕に記載の潤滑油組成物が内燃機関用潤滑油であることを特徴とする潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温安定性、高温清浄性、塩基価維持性に優れ、かつ微粒子分散性を有する無灰系清浄分散剤としてのアミド化合物および硼素化アミド化合物、該化合物を含有する潤滑油用添加剤、並びに該添加剤を配合してなる潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアミド化合物は、(A)炭化水素置換基が2以上であるサリチル酸誘導体のモル数がサリチル酸誘導体全体のモル数に対して25%以上である炭化水素置換サリチル酸誘導体と、(B)ポリアルキレンポリアミンとを反応させて得られたアミド化合物であり、前記(A)成分の該炭化水素置換基の炭素数が6以上40以下であり、前記(B)成分の窒素数が2以上10以下であり、かつ、アルキレン基の炭素数が1以上6以下であることを特徴とする。以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
(A)成分に含まれる炭化水素置換基が2以上であるサリチル酸誘導体のモル数は、サリチル酸誘導体全体のモル数に対して25%以上100%以下であり、30%以上100%以下であることが好ましい。また本発明では、サリチル酸誘導体に脂肪酸が実質的に混合されていないことが好ましい。脂肪酸がサリチル酸誘導体に混合されていると、堆積物の量を増やすこととなり、微粒子分散性が悪化するだけでなく、高温清浄性や高温安定性も確保できないおそれがある。
このようなサリチル酸誘導体の割合とすることで、脂肪酸が混合されていなくても、得られるアミド化合物の潤滑油基油に対する溶解性が確保されるとともに、堆積物の量が抑制される。炭化水素置換基が2以上であるサリチル酸誘導体のモル数が25%より小さいと、アミド化合物が潤滑油基油などに十分溶解しないことがある。また、それによって、微粒子分散性が担保できないだけでなく、高温安定性および高温清浄性も不十分であり、潤滑油組成物としての機能を発揮できない。
【0011】
炭化水素基としては、炭素数6以上40以下の炭化水素基が好ましく、飽和でも不飽和でもよく、直線状でも分岐鎖状でも環状でもよい。炭素数が6より小さいとアミド化合物が潤滑油基油などに十分溶解しないことがあり、炭素数が40より大きいと高塩基価の化合物が得られなくなることがある。さらに好ましい炭化水素基の炭素数は、6以上30以下である。このような炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が挙げられ、具体的には、ヘキシル、ヘキセニル、オクチル、オクテニル、デシル、デセニル、ドデシル、ドデセニル、テトラデシル、テトラデセニル、ヘキサデシル、ヘキサデセニル、オクタデシル、オクタデセニル、イソステアリル、デセントリマー、ポリブテン基などが挙げられる。
炭化水素置換サリチル酸誘導体としては、アルキルエステル、遊離の酸などが含まれる。
【0012】
(B)成分のポリアルキレンポリアミンの窒素数は、窒素数が2以上10以下であり、かつ、アルキレン基の炭素数が1以上6以下である。窒素数が1であると、高温清浄性や塩基価維持性が低下するので好ましくない。窒素数が10を超えると、潤滑油基油などに十分溶解しないので好ましくない。アルキレン基の炭素数が6を超えると反応性が低下し、目的物が得られ難くなり、高温清浄性や塩基価維持性が低下するので、好ましくない。
ポリアルキレンポリアミンの例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のようなポリアルキレンポリアミン、あるいはアミノエチルピペラジン、1、4−ビスアミノプロピルピペラジンのように環状のアルキレンアミンを有するポリアルキレンポリアミンを挙げることができる。
【0013】
本発明のアミド化合物は、(A)成分の炭化水素置換サリチル酸誘導体と(B)成分のポリアルキレンポリアミンとを反応させて得られたアミド化合物である。
このアミド化合物が2級アミンおよび3級アミンの少なくともいずれかであることが好ましい。アミド化合物が1級アミンのものに比べて、高温清浄性に優れるためである。
また、前記(A)成分の総モル数と前記(B)成分の総モル数との比が、0.7:1から7:1までの割合であることが好ましく、0.8:1から6:1までの割合であることがより好ましく、1:1から5:1までの割合であることがさらに好ましい。このような範囲内の割合とすることで、高温清浄性、高温安定性、塩基価維持性に優れ、かつ微粒子分散性が優れる潤滑油添加剤となる。
反応温度については、およそ50℃から250℃程度、好ましくは100℃から200℃程度、反応圧力については、特に制限はないが、好ましくは通常常圧から1MPa程度である。反応時間については、反応温度や原料の種類などにより左右され、一概に定めることはできないが、一般的には1時間から10時間程度で充分である。
【0014】
本発明の硼素化アミド化合物は、本発明のアミド化合物がさらに硼素を含有するものである。この硼素化アミド化合物は、前記のようにして得られたアミド化合物を硼素化したものである。具体的には、当該アミド化合物のモル数の比と硼素化アミド化合物のモル数の比を、1:0.01から1:10までの割合で反応させることが好ましく、1:0.05から1:8までの割合で反応させることがより好ましく、1:0.05から1:7までの割合で反応させることがさらに好ましい。このような範囲内の割合とすることで、高温清浄性、高温安定性、塩基価維持性に優れ、かつ微粒子分散性が優れる潤滑油添加剤となる。
反応温度については、およそ50℃から250℃程度、好ましくは100℃から200℃程度である。その反応を行うに際して溶剤、例えば炭化水素油等の有機溶剤を使用することもできる。硼素化合物としては、酸化硼素、ハロゲン化硼素、硼酸、硼酸無水物、硼酸エステルなどが挙げられる。
【0015】
前記アミド化合物又はその硼素化アミド化合物は、一般に、塩基価(塩酸法)30mgKOH/g以上を有し、清浄分散剤として機能する。
【0016】
本発明の潤滑油用添加剤としては、
(a)前記アミド化合物を含むもの、
(b)前記硼素化アミド化合物を含むもの、
(c)前記アミド化合物および硼素化アミド化合物を含むもの
が挙げられる。さらに、潤滑油用添加剤組成物として、
(d)前記潤滑油用添加剤(a)〜(c)にアルキル置換ヒドロキシ芳香族エステル誘導体(以下(C)成分とも称する。)をさらに含むものが挙げられる。
本発明の潤滑油用添加剤又は潤滑油用添加剤組成物は、清浄分散剤として好適である。
【0017】
潤滑油用添加剤の構成例(c)においては、アミド化合物と硼素化アミド化合物の配合割合は、質量比で1:99から99:1まで、好ましくは10:90から90:10までの範囲にあるのが望ましい。このような範囲内の割合とすることで、高温清浄性、高温安定性、塩基価維持性に優れ、かつ微粒子分散性が優れる潤滑油組成物となる。
潤滑油用添加剤組成物の構成例(d)においては、アミド化合物又は硼素化アミド化合物とアルキル置換ヒドロキシ芳香族エステル誘導体との配合割合は、質量比で1:99から99:1まで、好ましくは10:90から90:10までの範囲にあるのが望ましい。さらに、前記構成例(c)に(C)成分が配合される場合の配合割合は、アミド化合物と硼素化アミド化合物の合計質量とアルキル置換ヒドロキシ芳香族エステル誘導体の質量との比で1:99から99:1まで、好ましくは10:90から90:10までの範囲にあるのが望ましい。硼素化アミド化合物にアルキル置換ヒドロキシ芳香族エステル誘導体を混合すると、高温清浄性が向上する。しかし、アルキル置換ヒドロキシ芳香族エステル誘導体には塩基価が無いので、その配合比が大きくなると添加剤の塩基価が低下する。そのため、このような範囲内の割合とすることで、高温清浄性、高温安定性、塩基価維持性に優れ、かつ微粒子分散性が優れる潤滑油組成物となる。
【0018】
この(C)成分に係るアルキル置換ヒドロキシ芳香族エステル誘導体としては、特に限定されないが、例えば、特開2005−290150号公報の明細書に記載されたものが挙げられる。
【0019】
本発明の潤滑油用添加剤又は潤滑油用添加剤組成物には、前記アミド化合物又はその硼素化合物の効果を阻害しない範囲で潤滑油に通常配合される酸化防止剤、耐摩耗剤、他の清浄分散剤、粘度指数向上剤、流動性向上剤およびその他の添加剤を添加してもよい。
【0020】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油に前記潤滑油用添加剤、あるいは前記潤滑油用添加剤組成物が配合されて調製される。
この潤滑油組成物における前記潤滑油用添加剤あるいは前記潤滑油用添加剤組成物の配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で設定される。
また、前記潤滑油用添加剤あるいは前記潤滑油用添加剤組成物を燃料油である炭化水素油に加えることもできる。その際好ましい配合量は、燃料油との合計量基準で、0.001質量%以上1質量%以下の範囲である。
【0021】
潤滑油基油については、一般に潤滑油の基油として用いられるものであればよく、特に制限はないが、100℃における動粘度が1mm2/s以上50mm2/s以下の範囲にあるものが好ましく、2mm2/s以上20mm2/s以下の範囲にあるものがより好ましい。また、この基油の低温流動性の指標である流動点については特に制限はないが、通常−10℃以下であることが好ましい。
このような潤滑油基油としては、例えば、炭化水素油や合成油が挙げられる。
炭化水素油としては、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、芳香族系鉱油などの潤滑油又はガソリン、灯油、軽油などの燃料油の留分のいずれでもよく、溶剤精製、水素化精製又は水素化分解などのいかなる精製方法を経たものが挙げられる。
合成油としては、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル油、グリコール系又はポリオレフィン系合成油などが挙げられる。
【0022】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、潤滑油に通常配合される酸化防止剤、耐摩耗剤、他の清浄分散剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、あるいはその他の添加剤を併用してもよい。
【0023】
本発明のアミド化合物や硼素化アミド化合物を含む潤滑油用添加剤を配合してなる潤滑油組成物は、上述した効果を奏するため、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンおよび2サイクルエンジンのような内燃機関用の潤滑油として好適に用いられるが、さらに、ギヤ油、軸受油、変速機油、ショックアブソーバー油あるいは工業用潤滑油としても好適である。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0025】
<アミド化合物の調製>
〔実施例1〕
100mlのフラスコに、ドデシルサリチル酸メチル7.87g(24.6mmol),ジドデシルサリチル酸メチル12g(24.6mmol)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)4.65g(24.6mmol)、トルエン10mlを入れた。170℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、溶媒を留去し、ヘキサン400mlに溶解して水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去し目的物を得た。得られた目的物(アミド化合物)の収量は、22.1gであった。
【0026】
〔実施例2〕
100mlのフラスコに、ドデシルサリチル酸メチル6.03g(18.8mmol),ジドデシルサリチル酸メチル6.13g(12.6mmol)、TEPA2.95g(15.7mmol)、トルエン10mlを入れた。170℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、溶媒を留去し、ヘキサン300mlに溶解して水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去し目的物を得た。得られた目的物(アミド化合物)の収量は、14.0gであった。
【0027】
〔実施例3〕
100mlのフラスコに、ドデシルサリチル酸メチル7.03g(22.0mmol),ジドデシルサリチル酸メチル4.6g(9.42mmol)、TEPA2.95g(15.7mmol)、トルエン10mlを入れた。170℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、溶媒を留去し、ヘキサン300mlに溶解して水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去し目的物を得た。得られた目的物(アミド化合物)の収量は13.0gであった。
【0028】
〔実施例4〕
200mlのフラスコに、ドデシルサリチル酸メチル22.46g(70.2mmol),ジドデシルサリチル酸メチル11.42g(23.4mmol)、TEPA8.85g(46.8mmol)、トルエン15mlを入れた。170℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、溶媒を留去し、ヘキサン400mlに溶解して水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去し目的物を得た。得られた目的物(アミド化合物)の収量は40.0gであった。
【0029】
〔実施例5〕
100mlのフラスコに、ドデシルサリチル酸メチル9.45g(29.5mmol),ジドデシルサリチル酸メチル12g(24.6mmol)、TEPA4.65g(24.6mmol)、トルエン10mlを入れた。170℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、溶媒を留去し、ヘキサン400mlに溶解して水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去し目的物を得た。得られた目的物(アミド化合物)の収量は23.1gであった。
【0030】
〔実施例6〕
200mlのフラスコに、ドデシルサリチル酸メチル8.99g(28.1mmol),ジドデシルサリチル酸メチル32g(65.5mmol)、TEPA8.85g(46.8mmol)、トルエン15mlを入れた。170℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、溶媒を留去し、ヘキサン400mlに溶解して水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去し目的物を得た。得られた目的物の収量(アミド化合物)は47.3gであった。
【0031】
〔実施例7〕
100mlのフラスコに、ジドデシルサリチル酸メチル20g(41mmol)、TEPA3.88g(20.5mmol)、トルエン15mlを入れた。170℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、溶媒を留去し、ヘキサン400mlに溶解して水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去し目的物を得た。得られた目的物(アミド化合物)の収量は22.0gであった。
【0032】
〔実施例8〕
200mlのフラスコに、ドデシルサリチル酸メチル20.0g(62.4mmol),ジドデシルサリチル酸メチル30.4g(62.4mmol)、トリエチレンテトラミン(TETA)9.2g(62.4mmol)、トルエン15mlを入れた。170℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、溶媒を留去し、ヘキサン400mlに溶解して水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去し目的物を得た。得られた目的物(アミド化合物)の収量は55.8gであった。
【0033】
〔実施例9〕
100mlのフラスコに、ドデシルサリチル酸メチル5.0g(15.6mmol),ジドデシルサリチル酸メチル7.6g(15.6mmol)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)3.62g(15.6mmol)、トルエン10mlを入れた。170℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、溶媒を留去し、ヘキサン400mlに溶解して水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去し目的物を得た。得られた目的物(アミド化合物)の収量は13.8gであった。
【0034】
〔実施例10〕
200mlのフラスコに、ジドデシルサリチル酸メチル50.0g(100mmol),アミノエチルピペラジン(Aep)13.2g(100mmol)、トルエン15mlを入れた。170℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、溶媒を留去し、ヘキサン400mlに溶解して水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、ヘキサンを留去し目的物(アミド化合物)を得た。得られた目的物の収量は60.8gであった。
【0035】
<硼素化アミド化合物の調製>
〔実施例11〕
100mLのセパラブルフラスコ中に,実施例1で得られたドデシルサリチル酸メチル、ジドデシルサリチル酸メチルとTEPAのアミド化合物7gと150ニュートラル留分の鉱油3g、硼酸0.93gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化アミド化合物)を得た。
【0036】
〔実施例12〕
硼酸の使用量を1.39gに変更した以外は、実施例11と同様に反応を行った。
【0037】
〔実施例13〕
硼酸の使用量を2.33gに変更した以外は、実施例11と同様に反応を行った。
【0038】
〔実施例14〕
100mLのセパラブルフラスコ中に,実施例2で得られたドデシルサリチル酸メチル、ジドデシルサリチル酸メチルとTEPAのアミド化合物7gと150ニュートラル留分の鉱油3g、硼酸1.2gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化アミド化合物)を得た。
【0039】
〔実施例15〕
硼酸の使用量を2.41gに変更した以外は、実施例14と同様に反応を行った。
【0040】
〔実施例16〕
100mLのセパラブルフラスコ中に,実施例3で得られたドデシルサリチル酸メチル、ジドデシルサリチル酸メチルとTEPAのアミド化合物7gと150ニュートラル留分の鉱油3g、硼酸1.5gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化アミド化合物)を得た。
【0041】
〔実施例17〕
100mLのセパラブルフラスコ中に,実施例4で得られたドデシルサリチル酸メチル、ジドデシルサリチル酸メチルとTEPAのアミド化合物7gと150ニュートラル留分の鉱油3g、硼酸1.2gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化アミド化合物)を得た。
【0042】
〔実施例18〕
100mLのセパラブルフラスコ中に,実施例5で得られたドデシルサリチル酸メチル、ジドデシルサリチル酸メチルとTEPAのアミド化合物7gと150ニュートラル留分の鉱油3g、硼酸2.16gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化アミド化合物)を得た。
【0043】
〔実施例19〕
100mLのセパラブルフラスコ中に,実施例6で得られたドデシルサリチル酸メチル、ジドデシルサリチル酸メチルとTEPAのアミド化合物7gと150ニュートラル留分の鉱油3g、硼酸1.2gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化アミド化合物)を得た。
【0044】
〔実施例20〕
100mLのセパラブルフラスコ中に,実施例7で得られたジドデシルサリチル酸メチルとTEPAのアミド化合物10gと150ニュートラル留分の鉱油4.3g、硼酸1.69gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化アミド化合物)を得た。
【0045】
〔実施例21〕
100mLのセパラブルフラスコ中に,実施例8で得られたドデシルサリチル酸メチル、ジドデシルサリチル酸メチルとTETAのアミド化合物7gと150ニュートラル留分の鉱油3g、硼酸1.2gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化アミド化合物)を得た。
【0046】
〔実施例22〕
100mLのセパラブルフラスコ中に,実施例9で得られたドデシルサリチル酸メチル、ジドデシルサリチル酸メチルとPEHAのアミド化合物11.18gと150ニュートラル留分の鉱油4.79g、硼酸2.8gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化アミド化合物)を得た。
【0047】
〔実施例23〕
100mLのセパラブルフラスコ中に,実施例10で得られたジドデシルサリチル酸メチルとAepのアミド化合物7gと150ニュートラル留分の鉱油3g、硼酸1.48gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化アミド化合物)を得た。
【0048】
<比較となる化合物の調製>
〔比較例1〕
2Lオートクレーブ中に、ポリブテン(Mw:987)1,100g、臭化セチル6.4g(0.021mol)、無水マレイン酸115g(1.2mol)を入れ、窒素置換し、240℃で5時間反応させた。その後、215℃に降温し、未反応の無水マレイン酸と臭化セチルを減圧留去し、140℃に降温して濾過した。得られたポリブテニルコハク酸無水物の収量は1,100gであった。2Lセパラブルフラスコ中に、得られたポリブテニルコハク酸無水物500g、トリエチレンテトラミン(TETA)49.5g(0.34mol)、150ニュートラル留分の鉱油250gを入れ、窒素気流下150℃で2時間反応させた。その後、200℃に昇温し未反応のTETAと生成水を減圧留去し、140℃に降温して濾過した。得られたポリブテニルコハク酸イミドの収量は765gであった。
【0049】
〔比較例2〕
300mlのセパラブルフラスコに、TETA20g(0.11mol)を入れ、窒素置換した。それにジドデシルサリチル酸メチルを約30質量%含むドデシルサリチル酸メチル21g、イソステアリン酸56g(0.2mol)を加え窒素気流下200℃で5時間反応させた後、内容物を取り出した。得られた目的物(アミド化合物)の収量は88gであった。
【0050】
<比較となる硼素化化合物の調製>
〔比較例3〕
200mLのセパラブルフラスコ中に,比較例1で得られたポリブテニルコハク酸イミド50gと硼酸5.8gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化化合物)を得た。
【0051】
〔比較例4〕
200mlのセパラブルフラスコ中に、比較例2で得られたアミド化合物28gと150ニュートラル留分の鉱油12g、硼酸5.2gを入れ,窒素気流下150℃で4時間反応させた。その後、150℃で生成水を減圧留去し,さらに濾過して、目的物(硼素化化合物)を得た。
【0052】
実施例11〜実施例23の硼素化アミド化合物、および比較例3〜4の硼素化化合物中の硼素量について、表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
<潤滑油組成物の調製>
〔実施例24〜36および比較例5〜6〕
500ニュートラル留分の鉱油に実施例11〜23の硼素化アミド化合物、比較例3で得られた硼素化コハク酸イミド系化合物、および比較例4で得られた硼素化アミド化合物を、潤滑油組成物全量に基づき、10質量%を配合し、評価用の潤滑油組成物(供試油)を調製した。硼素化化合物と潤滑油組成物との対応関係は表2に示すとおりである。
また、これらの潤滑油組成物の性能を、下記に示す条件でホットチューブ試験および塩基価維持性評価試験により評価した。その結果を第2表に示す。
【0055】
〔ホットチューブ試験〕
内径2mmのガラス管中に前記供試油0.3ミリリットル/hr、空気10ミリリットル/minをガラス管の温度を270℃に保ちながら16時間流し続けた。ガラス管中に付着したラッカーと色見本とを比較し、透明の場合は10点、黒の場合は0点として評点を付けるとともに、ガラス管に付着した堆積物としてのラッカーの質量を測定した。評点が高いほど、また、ラッカー質量が少ないほど高性能であることを示す。
【0056】
〔塩基価維持性評価試験〕
前述のホットチューブ試験後の試験油を回収し、塩酸法により塩基価(残存塩基価)を測定した。この残存塩基価と試験前の供試油の塩基価(初期塩基価)を比較し、残存塩基価率(%)をもとにして、塩基価維持性能を評価した。残存塩基価率が高いほど、塩基価維持性能が高いことを示す。算出式は、以下の通りである。
残存塩基価率=(残存塩基価/初期塩基価)×100
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示す結果より、硼素化アミド化合物を含有する実施例24〜36の潤滑油組成物は、ホットチューブ試験における評点が優れ、ラッカー質量が小さく、残存塩基価率が大きかったことから、高温安定性、高温清浄性および塩基価維持性能に優れ、かつ微粒子分散性を有することがわかった。
一方、比較例5の潤滑油組成物は、ホットチューブ試験における評点が極めて低く、残存塩基価率も極めて小さかった。また、比較例6の潤滑油組成物は、ラッカー質量が極めて大きかった。すなわち、比較例5や比較例6の潤滑油組成物は、高温における安定性、高温における清浄性、塩基価維持性能および微粒子分散性を兼ね備えていないことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭化水素置換基が2以上であるサリチル酸誘導体のモル数がサリチル酸誘導体全体のモル数に対して25%以上である炭化水素置換サリチル酸誘導体と、(B)ポリアルキレンポリアミンとを反応させて得られたアミド化合物であり、
前記(A)成分の該炭化水素置換基の炭素数が6以上40以下であり、
前記(B)成分の窒素数が2以上10以下であり、かつ、アルキレン基の炭素数が1以上6以下であるアミド化合物。
【請求項2】
請求項1に記載のアミド化合物において、
該アミド化合物が2級アミンおよび3級アミンの少なくともいずれかである
ことを特徴とするアミド化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアミド化合物において、
前記(A)成分の総モル数と前記(B)成分の総モル数との比が0.7:1から7:1までの割合である
ことを特徴とするアミド化合物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアミド化合物がさらに硼素を含有する
ことを特徴とする硼素化アミド化合物。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のアミド化合物および請求項4に記載の硼素化アミド化合物の少なくともいずれかを含有する
ことを特徴とする潤滑油用添加剤。
【請求項6】
請求項5に記載の潤滑油用添加剤が清浄分散剤である
ことを特徴とする潤滑油用添加剤。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の潤滑油用添加剤を配合してなる潤滑油組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の潤滑油組成物が内燃機関用潤滑油である
ことを特徴とする潤滑油組成物。

【公開番号】特開2012−106944(P2012−106944A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256331(P2010−256331)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】