説明

アミド化合物およびその製造方法

【課題】医農薬や機能性材料の原料として有用な3,3,3−トリフルオロプロピオン酸製造のための重要な中間体であるアミド化合物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)


で表されるアミド化合物を、特定のN−ビニルアミド化合物をスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物、水および場合によっては酸の存在下に、一般式Rf−X(4)[式中、Rfは、炭素数1から6のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と反応させて製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬や機能性材料の原料として有用な3,3,3−トリフルオロプロピオン酸製造のための重要な中間体であるアミド化合物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明のアミド化合物は新規であり、その製造方法についても全く報告例はない。本発明の化合物と類似する化合物して、N−(3,3,3−トリフルオロ−1−メトキシ)プロピルアセトアミドが知られているが、1位置換基がヒドロキシ基ではなく、アルコキシ基である点で本発明の化合物とは異なる(非特許文献1)。
【0003】
本発明のアミド化合物の3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル基は、通常の脱水条件により、3,3,3−トリフルオロプロペニル基へと変換することができ(参考例参照)、さらに加水分解することにより、医農薬や機能性材料の原料として有用な3,3,3−トリフルオロプロピオン酸へと誘導することができる(特許文献1)。
【非特許文献1】Chemische Berichte,101巻,923ページ,1968年.
【特許文献1】公開特許広報2006−124282号報.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、医農薬や機能性材料の原料として有用な3,3,3−トリフルオロプロピオン酸製造中間体として有用なアミド化合物およびその簡便で効率の良い製造方法を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、先の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、スルホキシド類、過酸化物、鉄化合物、水および場合によっては酸の存在下、ハロゲン化パーフルオロアルキル類により、N−ビニルアミド化合物から一段で窒素原子が1−ヒドロキシ−2−(パーフルオロアルキル)エチル基で置換されたアミド化合物が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、一般式(1)
【0006】
【化7】

【0007】
[式中、RおよびRは、炭素数1から4のアルキル基、または、RとRが一体となって炭素数3から10のポリメチレン基を示す。]で表されることを特徴とするアミド化合物に関するものである。
【0008】
また本発明は、一般式(2)
【0009】
【化8】

【0010】
[式中、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]で表されるN−ビニルアミド化合物を、一般式R3aS(=O)R3b(3)[式中、R3aおよびR3bは、各々独立に炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。]で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物、水および場合によっては酸の存在下に、一般式Rf−X(4)[式中、Rfは、炭素数1から6のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と反応させることを特徴とする、一般式(1)
【0011】
【化9】

【0012】
[式中、Rf、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]のアミド化合物の製造方法に関するものである。
【0013】
さらに本発明は、一般式(2)
【0014】
【化10】

【0015】
[式中、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]で表されるN−ビニルアミド化合物を、一般式R3aS(=O)R3b(3)[式中、R3aおよびR3bは、前記と同じ内容を示す。]で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物、水および場合によっては酸の存在下に、一般式Rf−X(4)[式中、Rfは、前記と同じ内容を示す。]で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と反応させることを特徴とする、一般式(1)
【0016】
【化11】

【0017】
[式中、Rf、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]のアミド化合物と一般式(5)
【0018】
【化12】

【0019】
[式中、Rf,RおよびRは、前記と同じ内容を示し、Rは、炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。]で表される化合物を併産する方法に関するものである。以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
一般式(1)および(2)のRおよびRで示される炭素数1から4のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基等が例示できる。
【0021】
とRが一体となって形成される炭素数3から10のポリメチレン基は、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基を例示することができる。
【0022】
一般式(3)のR3aおよびR3bは、収率が良い点でメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、フェニル基またはp−トリル基が望ましい。すなわち、一般式(3)で表されるスルホキシド類としては具体的には、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ジイソプロピルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、ジ−sec−ブチルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、(R)−(+)−メチル−p−トリルスルホキシド、(S)−(−)−メチル−p−トリルスルホキシドまたはジフェニルスルホキシド等が例示できる。収率が良く、また安価である点で、ジメチルスルホキシドがさらに望ましい。
【0023】
一般式(4)のRfで示される炭素数1から6のパーフルオロアルキル基として具体的には、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロシクロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ−sec−ブチル基、パーフルオロ−tert−ブチル基、パーフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロプロピルメチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロ−1,1−ジメチルプロピル基、パーフルオロ−1,2−ジメチルプロピル基、パーフルオロネオペンチル基、パーフルオロ−1−メチルブチル基、パーフルオロ−2−メチルブチル基、パーフルオロ−3−メチルブチル基、パーフルオロシクロブチルメチル基、パーフルオロ−2−シクロプロピルエチル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロ−1−メチルペンチル基、パーフルオロ−2−メチルペンチル基、パーフルオロ−3−メチルペンチル基、パーフルオロイソヘキシル基、パーフルオロ−1,1−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1,2−ジメチルブチル基、パーフルオロ−2,2−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−2,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−3,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1−エチルブチル基、パーフルオロ−2−エチルブチル基、パーフルオロ−1,1,2−トリメチルプロピル基、パーフルオロ−1,2,2−トリメチルプロピル基、パーフルオロ−1−エチル−1−メチルプロピル基、パーフルオロ−1−エチル−2−メチルプロピル基またはパーフルオロシクロヘキシル基等が例示できる。収率が良い点で、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ−sec−ブチル基、パーフルオロ−tert−ブチル基またはパーフルオロヘキシル基が望ましく、医農薬中間体として有用な点でトリフルオロメチル基がさらに望ましい。
【0024】
一般式(4)のXは、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が望ましく、収率が良い点でヨウ素原子がさらに望ましい。
【0025】
一般式(5)のRは、収率が良い点でメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、フェニル基またはp−トリル基が例示できる。
【0026】
次に、本発明の製造方法について、詳細に述べる。
【0027】
本発明は、スルホキシド類(3)をそのまま溶媒として用いても良いが、反応に害を及ぼさない溶媒を用いることもできる。具体的には、水、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、トリフルオロ酢酸、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルアルコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、トリフルオロエタノール、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素またはN,N’−ジメチルプロピレン尿素等が挙げることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。収率が良い点で、水、スルホキシド類(3)または水とスルホキシド類(3)の混合溶媒を用いることが望ましい。
【0028】
N−ビニルアミド化合物(2)とスルホキシド類(3)とのモル比は、1:1から1:200が望ましく、収率が良い点で1:10から1:100がさらに望ましい。
【0029】
N−ビニルアミド化合物(2)とハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)とのモル比は、1:1から1:100が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:10がさらに望ましい。
【0030】
過酸化物は例えば、過酸化水素、過酸化水素−尿素複合体、tert−ブチルペルオキシドまたは過酢酸等を例示することができ、これらを必要に応じて組み合わせて用いても良い。収率が良い点で過酸化水素または過酸化水素−尿素複合体が望ましい。
【0031】
過酸化水素は、水で希釈して用いても良い。その際の濃度は、3から70重量%であれば良いが、市販の35重量%をそのまま用いても良い。収率が良くかつ安全な点で、水で希釈して10から30重量%とすることがさらに望ましい。
【0032】
N−ビニルアミド化合物(2)と過酸化物のモル比は、1:0.1から1:10が望ましく、収率が良い点で1:1.5から1:3がさらに望ましい。
【0033】
鉄化合物は、収率が良い点で鉄(II)塩が望ましく、例えば、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)またはヨウ化鉄(II)等の無機酸塩や、酢酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ビスアセチルアセトナト鉄(II)、フェロセンまたはビス(η−ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄等の有機金属化合物を例示することができ、これらを適宜組み合わせて用いても良い。また、鉄粉、鉄(0)塩または鉄(I)塩と過酸化物のような酸化試薬を組み合わせて、系内で鉄(II)塩を発生させて用いることもできる。その際、反応に用いる過酸化水素をそのまま酸化試薬として用いることもできる。収率が良い点で硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、テトラフルオロホウ酸鉄(II)、フェロセンまたは鉄粉を用いることが望ましく、硫酸鉄(II)またはフェロセンがさらに望ましい。
【0034】
これらの鉄化合物は、固体のまま用いても良いが、溶液として用いることもできる。溶液として用いる場合、溶媒としては上記の溶媒のいずれでも良いが、中でも水が望ましい。その際の鉄化合物溶液の濃度は、収率が良い点で、0.1から10mol/Lが望ましく、0.5から5mol/Lがさらに望ましい。
N−ビニルアミド化合物(2)と鉄化合物のモル比は、1:0.01から1:10が望ましく、収率が良い点で1:0.1から1:1がさらに望ましい。
【0035】
反応温度は20℃から100℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で20℃から70℃が望ましい。
反応を密閉系で行う場合、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができるが、大気圧でも反応は充分に進行する。また、反応の際の雰囲気は、アルゴン、窒素等の不活性ガスでも良いが、空気中でも充分に進行する。
【0036】
一般式(4)のハロゲン化パーフルオロアルキル類が、室温で気体の場合は、気体のまま用いても良い。その際、アルゴン、窒素、空気、ヘリウム、酸素等の気体で希釈して混合気体としても良く、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)のモル分率が1から100%の気体として用いることができる。密閉系で反応を実施する場合、ハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)または混合気体を反応雰囲気として用いることができる。その際の圧力は、大気圧(0.1MPa)から1.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができるが、大気圧でも反応は充分に進行する。また、開放系でハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)または混合気体をバブリングして反応溶液中に導入しても良い。その際のハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)または混合気体の導入速度は、反応のスケール、触媒量、反応温度、混合気体のハロゲン化パーフルオロアルキル類(4)のモル分率にもよるが、毎分1mLから200mLの範囲から選ばれた速度で良い。
【0037】
本法では、酸を添加して良く、具体的には、硫酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸またはテトラフルホロホウ酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸等の有機酸を用いることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。これらの酸は、希釈して用いても良い。その際の溶媒は上記の溶媒であれば良く、中でも水またはスルホキシド類(3)が望ましい。また、硫酸の酸性塩を用いても良い。酸性塩としては、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸水素テトラエチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、硫酸水素テトラフェニルホスホニウム等を例示できる。酸または硫酸塩の添加無しでも反応は十分に進行する。
【0038】
N−ビニルアミド化合物(2)と酸のモル比は、1:0.001から1:5が望ましく、収率が良い点で1:0.01から1:2がさらに望ましい。
【0039】
本反応では、水が必須である。水は、溶媒として供給しても良いが、別途添加しても良い。N−ビニルアミド化合物(2)と水のモル比は、1:3から1:300が望ましく、収率が良い点で1:5から1:50がさらに望ましい。
【0040】
反応後の溶液から目的物であるアミド化合物(1)を単離する方法に特に限定はないが、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
本反応系では、一般式(5)の化合物が併産される場合がある。一般式(2)の化合物で、RとRが一体となって炭素数3から10のポリメチレン基である場合、触媒としてフェロセンを用いると一般式(5)の化合物は併産されない傾向にある。また、RおよびRが炭素数1から4のアルキル基の場合は、いずれの鉄化合物を用いても一般式(5)の化合物が併産される。
【0041】
一般式(5)の化合物は、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法でアミド化合物(1)と分離し、単離することができる。
また一般式(5)の化合物は、前記のスルホキシド類(3)、過酸化物、鉄化合物および場合によっては酸の存在下に化合物(1)を処理することにより、製造することもできる。
【0042】
本発明のアミド化合物(1)は、通常の方法で容易に脱水し、1−ヒドロキシ−2−(パーフルオロアルキル)エチル基は2−(パーフルオロアルキル)ビニル基へと変換できる。その際、トランス体およびシス体のいずれもが生成し、条件によって、一方の異性体のみを選択的に製造することもできる。
その際に用いる脱水用試薬として、塩化チオニル、五酸化二リン、ヨウ素、三フッ化ホウ素−ジエチルエーテル、無水フタル酸等を例示することができる。
【0043】
脱水反応に用いることのできる溶媒としては、ジクロロメタン、エーテル、テトラヒドロフラン、トルエン等を例示することができる。
【0044】
脱水反応の際の温度は、0から200℃が望ましく、室温から100℃がさらに望ましい。
【発明の効果】
【0045】
本発明は、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の合成原料として期待されるアミド化合物(1)とその製造方法として有効である。
【0046】
次に本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
【0048】
【化13】

【0049】
二口フラスコにフェロセン0.056g(0.3mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ここにN−ビニルピロリドン0.105mL、ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。酢酸エチルで抽出後、濃縮し、メタノール/ヘキサンで再結晶してN−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル)ピロリドンを白色結晶として得た(0.184g、収率93%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ2.06(m,2H),2.39(m,2H),2.59(m,2H),3.42(m,1H),3.54(m,1H),5.01(d,J=4.6Hz,1H),5.82(dt,J=6.3,4.6Hz,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ17.8,31.5,37.5(q,JCF=27.8Hz),41.3,69.7(q,JCF=3.8Hz),124.9(q,JCF=275.0Hz),175.7.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−64.4.
MS(m/z):197[M]
(実施例2)
【0050】
【化14】

【0051】
アルゴン置換した二口フラスコに、N−ビニルピロリドン105μL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mL、ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。酢酸エチルで抽出後、濃縮し、メタノール/ヘキサンで再結晶してN−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル)ピロリドンを白色結晶として(0.115g、収率58%)、N−(3,3,3−トリフルオロ−1−メチルスルホニルプロピル)ピロリドンを白色結晶として得た(0.039g、収率15%)。
N−(3,3,3−トリフルオロ−1−メチルスルホニル)プロピルピロリドン
H−NMR(重クロロホルム):δ2.14(m,2H),2.49(m,2H),2.82(brs,1H),2.91(s,3H),3.05(m,1H),3.52(m,1H),3.89(m,1H),5.52(brs,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ18.5,26.8(q,JCF=31.8Hz),38.8,43.0,64.9,124.9(q,JCF=275.8Hz),175.9.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−65.4.
MS(m/z):180[M−SOMe]
(実施例3)
二口フラスコ容器内にフェロセン2.8g(15mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ここにN−ビニルピロリドン5.25mL、ジメチルスルホキシド200mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液50mLおよび30%過酸化水素水10mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。酢酸エチルで抽出後、濃縮し、メタノール/ヘキサンで再結晶してN−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル)ピロリドンを白色結晶として得た(5.60g、収率57%)。
(実施例4)
【0052】
【化15】

【0053】
二口フラスコにフェロセン0.056g(0.3mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ここにN−ビニル−ε−カプロラクタム0.139g(1.0mmol)、ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。酢酸エチルで抽出後、濃縮し、メタノール/ヘキサンで再結晶してN−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル)−ε−カプロラクタムを白色固体として得た(0.191g、収率85%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ1.70(m,6H),2.50(m,4H),3.38(m,2H),5.07(d,J=6.2Hz,1H),5.97(dt,J=6.2,6.3Hz,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ23.0,29.0,29.8,37.5,38.3(q,JCF=27.5Hz),43.4,73.3,125.1(q,JCF=276.8Hz),177.0.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−64.1.
MS(m/z):208[M−OH]
(実施例5)
【0054】
【化16】

【0055】
アルゴン置換した二口フラスコに、N−ビニル−ε−カプロラクタム0.139g(1.0mmol)、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mL、ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。酢酸エチルで抽出後、濃縮し、メタノール/ヘキサンで再結晶してN−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル)−ε−カプロラクタムを白色固体として(0.155g、収率69%)、N−(3,3,3−トリフルオロ−1−メチルスルホニルプロピル)−ε−カプロラクタムを白色固体として得た(0.056g、収率19%)。
N−(3,3,3−トリフルオロ−1−メチルスルホニル)プロピル−ε−カプロラクタム
H−NMR(重クロロホルム):δ1.69−1.88(m,6H),2.58−2.72(m,3H),2.90(s,3H),3.01−3.12(m,1H),3.50−3.65(m,2H),6.21(dd,J=1.7,11.5Hz,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ22.8,27.4(q,JCF=30.6Hz),28.3,29.4,36.8,38.5,44.3,65.5(q,JCF=2.3Hz),125.0(q,JCF=277.6Hz),176.9.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−64.3.
MS(m/z):208[M−SOMe]
(実施例6)
二口フラスコ容器内にフェロセン1.4g(7.4mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ここにN−ビニル−ε−カプロラクタム3.48g(25mmol)、ジメチルスルホキシド100mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液40mLおよび30%過酸化水素水9.0mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。酢酸エチルで抽出後、濃縮し、メタノール/ヘキサンで再結晶してN−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル)−ε−カプロラクタムを白色結晶として得た(3.20g、収率57%)。
(実施例7)
【0056】
【化17】

【0057】
アルゴン置換した二口フラスコに、N−メチル−N−ビニルアセトアミド0.105mL、ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mL、1.0mol/L硫酸鉄(II)水溶液0.3mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。カラムクロマトグラフィーによりN−メチル−N−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル)アセトアミドを黄色固体として(0.013g、収率12%)、N−メチル−N−(3,3,3−トリフルオロ−1−メチルスルホニルプロピル)アセトアミドを黄色固体として得た(0.028g、収率11%)。
N−メチル−N−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル)アセトアミド
H−NMR(重クロロホルム):δ2.09(s,3H),2.59(m,2H),2.98(s,3H),4.50(d,J=7.5Hz,1H),5.80(m,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ21.9,29.0,37.5(q,JCF=27.7Hz),71.7(q,JCF=3.3Hz),125.0(q,JCF=276.6Hz),171.9.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−64.4.
MS(m/z):185[M]
N−メチル−N−(3,3,3−トリフルオロ−1−メチルスルホニルプロピル)アセトアミド
H−NMR(重クロロホルム):δ2.23(s,3H),2.28(m,2H),2.88(s,3H),3.15(s,3H),6.21(m,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ21.8,26.9(q,JCF=30.8Hz),31.0,38.8,65.0(q,JCF=2.3Hz),124.9(q,JCF=277.4Hz),172.2.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−64.7.
MS(m/z):168[M−SOMe]
(実施例8)
二口フラスコ容器内にフェロセン0.056g(0.3mmol)を量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ここにN−メチル−N−ビニルアセトアミド0.105mL、ジメチルスルホキシド4.0mL、ヨウ化トリフルオロメチルの3.0mol/Lジメチルスルホキシド溶液1.0mLおよび30%過酸化水素水0.2mLを加えた。40から50℃で20分間撹拌した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応液の19F−NMRにより、N−メチル−N−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル)アセトアミドの生成率が34%、N−メチル−N−(3,3,3−トリフルオロ−1−メチルスルホニルプロピル)アセトアミドの生成率が30%であることを確認した。
(参考例1)
【0058】
【化18】

【0059】
二つ口フラスコ容器内にN−(3,3,3−トリフルオロ−1−ヒドロキシプロピル)ピロリドン300mgを量り取り、容器内をアルゴンで置換した。ここにジクロロメタン5.0mLおよび塩化チオニル1.06mLを加えた。40℃で1時間還流し、その後反応溶液を室温まで冷却した。溶媒を除去し、その後、トルエンを加えて過剰の塩化チオニルを共沸させた。カラムクロマトグラフィーと再結晶によりtrans−N−(3,3,3−トリフルオロプロペニル)ピロリドンを白色固体として得た(0.247g、収率61%)。
H−NMR(重クロロホルム):δ2.19(tt,J=7.3,8.0,2H),2.55(t,J=8.0Hz,2H),3.54(t,J=7.3Hz,2H),5.01(dq,J=14.4Hz,JHF=6.3Hz,1H),7.63(dq,J=14.4Hz,JHF=1.8Hz,1H).
13C−NMR(重クロロホルム):δ17.4,30.8,44.8,98.4(q,JCF=34.8Hz),124.3(q,JCF=265.6Hz),131.1(q,JCF=7.4Hz),174.1.
19F−NMR(重クロロホルム):δ−60.7.
MS(m/z):179[M]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、RおよびRは、炭素数1から4のアルキル基、または、RとRが一体となって炭素数3から10のポリメチレン基を示す。]で表されることを特徴とするアミド化合物。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

[式中、RおよびRは、炭素数1から4のアルキル基、または、RとRが一体となって炭素数3から10のポリメチレン基を示す。]で表されるN−ビニルアミド化合物を、一般式R3aS(=O)R3b(3)[式中、R3aおよびR3bは、各々独立に炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。]で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物、水および場合によっては酸の存在下に、一般式Rf−X(4)[式中、Rfは、炭素数1から6のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と反応させることを特徴とする、一般式(1)
【化3】

[式中、Rf、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]のアミド化合物の製造方法。
【請求項3】
一般式(2)
【化4】

[式中、RおよびRは、炭素数1から4のアルキル基、または、RとRが一体となって炭素数3から10のポリメチレン基を示す。]で表されるN−ビニルアミド化合物を、一般式R3aS(=O)R3b(3)[式中、R3aおよびR3bは、各々独立に炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。]で表されるスルホキシド類、過酸化物、鉄化合物、水および場合によっては酸の存在下に、一般式Rf−X(4)[Rfは、炭素数1から6のパーフルオロアルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。]で表されるハロゲン化パーフルオロアルキル類と反応させることを特徴とする、一般式(1)
【化5】

[式中、Rf、RおよびRは、前記と同じ内容を示す。]のアミド化合物と一般式(5)
【化6】

[式中、Rf,RおよびRは、前記と同じ内容を示し、Rは、炭素数1から12のアルキル基または置換されていても良いフェニル基を示す。]で表される化合物を併産する方法。
【請求項4】
Xがヨウ素原子または臭素原子である請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
Rfがトリフルオロメチル基またはパーフルオロエチル基である請求項2または3のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−231040(P2008−231040A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73965(P2007−73965)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(591180358)東ソ−・エフテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】