説明

アミド化合物の製造方法とその触媒

【課題】比較的マイルドな条件で、高い選択性及び高い転化率をもって、一級アルコールと一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種とからアミド化合物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】架橋性官能基を含む側鎖を有するスチレン系高分子の該架橋性官能基を架橋させてなる担体と、該担体に担持されたナノサイズクラスター及びカーボンブラックとを有する触媒の存在下、一級アルコールと一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種とからアミド化合物を得る工程を備え、前記ナノサイズクラスターが、金からなるナノサイズクラスター並びに金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするアミド化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一級アルコールと一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種とからアミド化合物を製造する方法、並びに当該製造方法に好適に使用される触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
金ナノサイズクラスターを触媒として用いる酸素酸化反応は、1989年Harutaらによって、低温一酸化炭素酸化反応において非常に高活性であると報告された(非特許文献1)。
【0003】
一方、酸素を酸化剤として用いた金属触媒によるアルコールのアルデヒド、ケトン、カルボン酸への酸化反応は、ルテニウムやパラジウム触媒等を用いる例が、均一系触媒、固相触媒ともに多数報告されている。また、近年、金クラスターを触媒として用いる例も多数報告されている(非特許文献2)。
【0004】
本願発明者らは、マイクロカプセル化法を用いてスチレン系高分子に遷移金属ナノサイズクラスターを担持することにより、パラジウムや白金に於いて非常に高活性な触媒の製造ができることを見出してきた(非特許文献3〜4、特許文献1,3)。
【0005】
また、金触媒についても、酸化反応でカルボニル化合物が生成することが報告されている(特許文献2)。
【0006】
またアルコール(エステル)とアミンとから脱水素を伴って(ポリ)アミドを合成する方法も知られており、主としてルテニウム触媒が使用されている(非特許文献5,6)。
【0007】
上記と同様な反応で、ルテニウム触媒でアルコールとアミンとから脱水素を伴ってイミンを合成する方法も報告されている(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2005/085307
【特許文献2】特開2007−237116号公報
【特許文献3】特開2010−207773号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Catal.1989,115,301−309.
【非特許文献2】Chem.Rev.2004,104,3037−3058.
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.2005,127,2125−2135.
【非特許文献4】Synlett 2005,813−816.
【非特許文献5】J.Am.Chem.Soc.,2011,133,1682.
【非特許文献6】J.Am.Chem.Soc.,2011,133,1159.
【非特許文献7】Angew.Chem.Int.Ed.,2010,49,1468.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これまでアルコールとアミンとからのアミド化反応についてはルテニウム触媒を用いた例が報告されているが、いずれの方法においても、トルエンリフラックス条件などの、比較的高温を必要とし、また24時間以上の反応時間を必要とする。
【0011】
また、ルテニウム触媒を用いる場合は、選択性の点でも改善の余地がある。すなわち、反応基質が不飽和アルコールや不飽和アミンであると、ルテニウム触媒が水素化触媒として機能し、脱水素反応に伴って発生する水素によって上記の反応基質又は反応生成物の水素化反応が進行してしまう。
【0012】
本発明は、比較的マイルドな条件で、高い選択性及び高い転化率をもって、一級アルコールと一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種とからアミド化合物を製造する方法、並びに、当該製造方法に好適に使用される触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、架橋性官能基を含む側鎖を有するスチレン系高分子の該架橋性官能基を架橋させてなる担体と、該担体に担持されたナノサイズクラスター及びカーボンブラックとを有する触媒の存在下、一級アルコールと一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種とからアミド化合物を得る工程を備え、前記ナノサイズクラスターが、金からなるナノサイズクラスター並びに金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするアミド化合物の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、架橋性官能基を含む側鎖を有するスチレン系高分子の該架橋性官能基を架橋させてなる担体と、該担体に担持されたナノサイズクラスター及びカーボンブラックとを有し、前記ナノサイズクラスターが、金からなるナノサイズクラスター並びに金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする触媒を提供する。
【0015】
なお、本発明の触媒において、担体には、金からなるナノサイズクラスター又は金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターの他に、鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属のナノサイズクラスターが担持されていてもよい。
【0016】
本発明においては、上記スチレン系高分子が架橋性官能基としてエポキシ基及び水酸基を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、比較的マイルドな条件で、高い選択性及び高い転化率をもって一級アルコールと一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種とからアミド化合物を製造する方法、並びに、当該製造方法に好適に使用される触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1で得られたN−ベンジル−4−メチルベンズアミドのH−NMRチャートである。
【図2】実施例1で得られたN−ベンジル−4−メチルベンズアミドの13C−NMRチャートである。
【図3】実施例4で得られたN−ベンジル−3−フェニルプロパンアミドのH−NMRチャートである。
【図4】実施例4で得られたN−ベンジル−3−フェニルプロパンアミドの13C−NMRチャートである。
【図5】実施例5で得られたパラメトキシ安息香酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図6】実施例5で得られたパラメトキシ安息香酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図7】実施例6で得られたパラニトロ安息香酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図8】実施例6で得られたパラニトロ安息香酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図9】実施例7で得られた1−ナフタレン酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図10】実施例7で得られた1−ナフタレン酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図11】実施例8で得られた2−フランカルボン酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図12】実施例8で得られた2−フランカルボン酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図13】実施例9で得られたピコリン酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図14】実施例9で得られたピコリン酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図15】実施例10で得られたけい皮酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図16】実施例10で得られたけい皮酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図17】実施例11で得られたアクリル酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図18】実施例11で得られたアクリル酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図19】実施例12で得られた酢酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図20】実施例12で得られた酢酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図21】実施例13で得られた酢酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図22】実施例13で得られた酢酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図23】実施例14で得られたシクロヘキサン酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図24】実施例14で得られたシクロヘキサン酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図25】実施例15で得られた安息香酸ベンジルアミドのH−NMRチャートである。
【図26】実施例15で得られた安息香酸ベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図27】実施例16で得られた安息香酸ヘキシルアミドのH−NMRチャートである。
【図28】実施例16で得られた安息香酸ヘキシルアミドの13C−NMRチャートである。
【図29】実施例17で得られた安息香酸オクチルアミドのH−NMRチャートである。
【図30】実施例17で得られた安息香酸オクチルアミドの13C−NMRチャートである。
【図31】実施例18で得られた安息香酸アリルアミドのH−NMRチャートである。
【図32】実施例18で得られた安息香酸アリルアミドの13C−NMRチャートである。
【図33】実施例19で得られた安息香酸イソペンチルアミドのH−NMRチャートである。
【図34】実施例19で得られた安息香酸イソペンチルアミドの13C−NMRチャートである。
【図35】実施例20で得られた安息香酸メタクロロアニリドのH−NMRチャートである。
【図36】実施例20で得られた安息香酸メタクロロアニリドの13C−NMRチャートである。
【図37】実施例21で得られた安息香酸ネオペンチルアミドのH−NMRチャートである。
【図38】実施例21で得られた安息香酸ネオペンチルアミドの13C−NMRチャートである。
【図39】実施例22で得られた安息香酸シクロペンチルアミドのH−NMRチャートである。
【図40】実施例22で得られた安息香酸シクロペンチルアミドの13C−NMRチャートである。
【図41】実施例23で得られた(R)−N−(1−フェニルエチル)ベンズアミドのH−NMRチャートである。
【図42】実施例23で得られた(R)−N−(1−フェニルエチル)ベンズアミドの13C−NMRチャートである。
【図43】実施例24で得られた安息香酸アミドのH−NMRチャートである。
【図44】実施例24で得られた安息香酸アミドの13C−NMRチャートである。
【図45】実施例25で得られた安息香酸N−メチルベンジルアミドのH−NMRチャートをである。
【図46】実施例25で得られた安息香酸N−メチルベンジルアミドの13C−NMRチャートである。
【図47】実施例26で得られたベンゾイルモルフォリンのH−NMRチャートである。
【図48】実施例26で得られたベンゾイルモルフォリンの13C−NMRチャートである。
【図49】実施例27で得られた安息香酸−N−ブチル−N−メチルアミドのH−NMRチャートである。
【図50】実施例27で得られた安息香酸−N−ブチル−N−メチルアミドの13C−NMRチャートである。
【図51】実施例28で得られた安息香酸ピペリジンアミドのH−NMRチャートである。
【図52】実施例28で得られた安息香酸ピペリジンアミドの13C−NMRチャートである。
【図53】実施例29で得られたN−ベンゾイル−L−アラニンのH−NMRチャートである。
【図54】実施例29で得られたN−ベンゾイル−L−アラニンの13C−NMRチャートである。
【図55】実施例29で行った、光学活性カラムを用いた液体クロマトグラフィーのチャートである。
【図56】実施例29で行った、光学活性カラムを用いた液体クロマトグラフィーのチャートである。
【図57】実施例30で得られたベンゾイルグリシンのH−NMRチャートである。
【図58】実施例30で得られたベンゾイルグリシンの13C−NMRチャートである。
【図59】実施例31で得られた1−(N−ベンゾイル−L−アラニル)−ピペリジンのH−NMRチャートである。
【図60】実施例32で得られた1−(N−ベンゾイル−L−アラニル)−ピペリジンの13C−NMRチャートである。
【図61】実施例29で行った、光学活性カラムを用いた液体クロマトグラフィーのチャートである。
【図62】実施例29で行った、光学活性カラムを用いた液体クロマトグラフィーのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態;触媒]
本発明の第1実施形態に係る触媒は、架橋性官能基を含む側鎖を有するスチレン系高分子の該架橋性官能基を架橋させてなる担体と、該担体に担持されたナノサイズクラスター及びカーボンブラックとを有するものであり、前記ナノサイズクラスターは、金からなるナノサイズクラスター並びに金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターから選ばれる少なくとも1種である。なお、本実施形態に係る触媒において、担体には、金からなるナノサイズクラスター又は金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターの他に、鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属のナノサイズクラスターが担持されていてもよい。
【0020】
ナノサイズクラスターが金からなるナノサイズクラスターである場合、本実施形態に係る触媒は、以下の(A−1)〜(A−3)工程を経て得ることができる。
(A−1)工程:1価又は3価の金化合物を、架橋性官能基を含む側鎖を有するスチレン系高分子及びカーボンブラック等を含む溶液中で還元剤により還元する。
(A−2)工程:上記溶液に上記スチレン系高分子に対する貧溶媒を加えて相分離させることにより、金からなるナノサイズクラスターを形成させ、該ナノサイズクラスター及び上記カーボンブラックをスチレン系高分子に担持する。
(A−3)工程:上記スチレン系高分子の上記架橋性官能基を架橋させる。
【0021】
ナノサイズクラスターが金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターである場合、本実施形態に係る触媒は、以下の(B−1)〜(B−3)工程を経て得ることができる。
(B−1)工程:1価又は3価の金化合物並びに任意の価数の鉄化合物、コバルト化合物及びニッケル化合物から選ばれる少なくとも1種を、架橋性官能基を含む側鎖を有するスチレン系高分子及びカーボンブラックを含む溶液中で還元剤により還元する。
(B−2)工程:上記溶液に上記スチレン系高分子に対する貧溶媒を加えて相分離させることにより、金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる8族金属とのナノサイズクラスターを形成させ、該ナノサイズクラスター及び上記カーボンブラックをスチレン系高分子に担持する。
(B−3)工程:上記スチレン系高分子の上記架橋性官能基を架橋させる。
【0022】
上記(A−1)及び(A−2)工程における金からなるナノサイズクラスター及びカーボンブラックのスチレン系高分子への担持、並びに上記(B−1)及び(B−2)工程における金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる8族金属とのナノサイズクラスター及びカーボンブラックのスチレン系高分子への担持は、金化合物あるいは更に上記所定の8属化合物と、スチレン系高分子と、カーボンブラックとを、a)適当な極性の良溶媒に溶解し還元剤と混合した後適当な非極性の貧溶媒で凝集させる、又はb)適当な非極性又は低極性の良溶媒に溶解し還元剤と混合した後適当な極性の貧溶媒で凝集させることにより行われる。金からなるナノサイズクラスター並びに金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる8族金属とのナノサイズクラスターはスチレン系高分子の芳香環との相互作用により担持される。
【0023】
尚、極性の良溶媒としてはテトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などがあり、非極性又は低極性の良溶媒としてはトルエン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが使用できる。極性の貧溶媒としてはメタノール、エタノール、ブタノール、アミルアルコールなどがあり、非極性の貧溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが使用できる。
【0024】
金からなるナノサイズクラスター又は金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる8族金属とのナノサイズクラスターを架橋性ポリマーに担持する際のポリマーの濃度は、用いる溶媒やポリマーの分子量によっても異なるが、約5.0〜200mg/mL、好ましくは10〜100mg/mlである。1価又は3価の金化合物は、ポリマー1gに対して、0.01〜0.5mmol、好ましくは0.03〜0.2mmol使用する。鉄化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物は、ポリマー1gに対して、0.01〜0.5mmol、好ましくは0.05〜0.2mmol使用する。還元剤は、還元に必要な量の1〜10当量使用するが、例えば1価の金化合物及び4価の白金化合物を、水素化ホウ素ナトリウムで還元する場合の水素化ホウ素ナトリウムは、金化合物及び鉄、コバルト、ニッケル化合物の0.5〜5倍モルが好適である。還元に必要な温度および時間は金化合物、鉄、コバルト、ニッケル化合物及び還元剤の種類によるが、通常は0℃〜50℃の間、好ましくは室温で、1〜24時間で行われる。相分離する際の貧溶媒は、良溶媒に対して1〜10(v/v)倍量、好ましくは2〜5倍量使用し、0.5〜5時間程度で滴下する。
【0025】
本実施形態に使用する1価又は3価の金化合物としては、ハロゲン化金や、ハロゲン化金のトリフェニルホスフィン錯体が好ましい。特に、AuCl(PPh)が好ましい。
【0026】
本実施形態に使用する鉄化合物は特に限定されることなく、鉄を含む化合物であれば使用可能である。強いて挙げれば、ハロゲン化鉄、鉄錯体が好ましく使用できる。具体的にはフッ化鉄(II)、フッ化鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化鉄(III)、フェロシアン化カリウム、フェリシアン化カリウムなどが挙げられ、この中でも塩化鉄が好ましく使用される。
【0027】
コバルト化合物は特に限定されることなく、コバルトを含む化合物であれば使用可能である。ハロゲン化コバルト、アミン錯体、シアノ錯体などが好ましく使用できる。具体的にはフッ化コバルト(II)、フッ化コバルト(III)、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III)、臭化コバルト(II)、臭化コバルト(III)、ヨウ化コバルト(II)、ヨウ化コバルト(III)などが挙げられ、さらにこれらにアンモニア分子がついたコバルトアンミン錯体も同様に好ましく使用できる。
【0028】
ニッケル化合物としては特に限定をすることなく、ニッケルを含む化合物であれば使用可能である。ハロゲン化コバルト、アミン錯体、シアノ錯体などが好ましく使用できる。具体的にはフッ化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ヨウ化ニッケル(II)などが好ましく使用できる。
【0029】
金化合物並びに鉄化合物、ニッケル化合物及びコバルト化合物から選ばれる少なくとも1種を還元する際に使用する還元剤は、水素化ホウ素化合物、ボラン、水素化アルミニウム化合物又は水素化ケイ素化合物であることが好ましい。
【0030】
カーボンブラックとしては、特に限定はなくファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラックなどが使用できる。なかでも、粒径、表面積から)ケッチェンブラックが好ましく使用できる。
【0031】
スチレン系高分子は、架橋性官能基を含む側鎖を有する。上記架橋性官能基としてエポキシ基及び水酸基を含むことが好ましい。架橋性官能基を含む側鎖としては、架橋性官能基のみから成るものであっても、二価の基に架橋性官能基が結合したものでもよい。
【0032】
上記二価の基としては、比較的短いアルキレン基、例えば、炭素数が1〜6程度のアルキレン基であってもよいが、−R(OR−、−R(COOR−、又は−R(COOR(OR−(式中、Rは共有結合又は炭素数1〜6、好ましくは共有結合又は炭素数1〜2のアルキレン基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数2〜4、好ましくは炭素数2のアルキレン基を表し、w、x及びzは1〜10の整数、yは1又は2を表す。)で表される主鎖をもつものが親水性であるため好ましい。このような好ましい二価の基として、−CH(OC−や−CO(OC−等が挙げられる。
【0033】
スチレン系高分子としては、下記一般式(1)で表される重合性単量体と、下記一般式(2)で表される重合性単量体と、下記一般式(3)で表される重合性単量体との重合体が特に好ましい。
【化1】


(式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、nは0〜5の整数を示す。)
【化2】


(式(2)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し、mは0〜4の整数である。
【化3】


(式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を示し,R3〜Rは各々独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示し、mは0〜4の整数を示し、pは1〜30の整数を示す。)
【0034】
一般式(1)で表される重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンが好ましい。さらに、スチレン(Rが水素原子)又はα−メチルスチレン(Rがメチル基)が、重合反応性の高さから特に好ましい。
【0035】
一般式(2)で表される重合性単量体としては、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル(R=水素原子、m=0)、4−イソプロペニルベンジルグリシジルエーテル(R=メチル基、m=0)が好ましい。スチレン部位の炭素炭素二重結合のパラ位にグリシジルエーテル基を配置させることが、金属の担持能力を向上させるため好ましい。
【0036】
一般式(3)で表される重合性単量体において、pは1〜30の整数を示すが、原料の入手しやすさ、水溶性と油溶性とのバランスの点から、pは1〜6の整数であることが好ましい。
【0037】
一般式(3)で表される重合性単量体としては、4−ビニルベンジルアルコール、4−イソプロペニルベンジルアルコール、2−(4−ビニルベンジルオキシ)エトキシ)エタノール、2−(4−イソプロペニルベンジルオキシ)エトキシ)エタノール、2−(2−(4−ビニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール、2−(2−(4−イソプロペニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール、2−(2−(2−(4−ビニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール、2−(2−(2−(4−イソプロペニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール、2−(2−(2−(2−(4−ビニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール、2−(2−(2−(2−(4−イソプロペニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール、2−(2−(2−(2−(2−(4−ビニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール、2−(2−(2−(2−(2−(4−イソプロペニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール、2−(2−(2−(2−(2−(2−(4−ビニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール、2−(2−(2−(2−(2−(2−(4−イソプロペニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノールが好ましい。スチレン部位の炭素炭素二重結合のパラ位にアルコールを配置させることが、金属の担持能力を向上させるため好ましい。
【0038】
また、上記一般式(2)で表される重合性単量体としては、式中のRが水素原子又はメチル基であるものが好ましいく、Rが水素原子であるもの(下記式(4)で表される重合性単量体)が特に好ましい。
【化4】

【0039】
上記一般式(1)で表される重合性単量体と、上記一般式(2)で表される重合性単量体と、上記一般式(3)で表される重合性単量体とを共重合させる方法は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれでも構わないが、架橋性官能基をより確実に維持する点から、ラジカル重合が好適に用いられる。
【0040】
ラジカル重合に用いられるラジカル開始剤は、特に制限されず、アゾビスジイソブチロニトリルなどの脱窒素を伴うラジカル発生剤、有機過酸化物が好適に使用される。
【0041】
上記一般式(1)で表される重合性単量体と、上記一般式(2)で表される重合性単量体と、上記一般式(3)で表される重合性単量体とを共重合させる場合、上記一般式(1)で表される重合性単量体/上記一般式(2)で表される重合性単量体/上記一般式(3)で表される重合性単量体のモル比は、好ましくは1〜99/1〜80/1〜80、より好ましくは1〜99/5〜60/10〜60、さらに好ましくは1〜99/10〜50/20〜50である。各重合性単量体の割合を上記の好ましい範囲内とすることで、親水性と疎水性とのバランスを良好に保ち、金属を好適に分散させることができる。
【0042】
スチレン系高分子の重量平均分子量は、1万から15万であることが好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。スチレン系高分子の重量平均分子量が1万〜15万であることが好ましい。
【0043】
上記(A−1)又は(B−1)工程において、スチレン系高分子、カーボンブラック、金化合物、あるいは更に鉄化合物、コバルト化合物及びニッケル化合物から選ばれる少なくとも1種の8属金属化合物を、上記のような適当な溶媒に還元剤と共に溶解すると、金化合物あるいは更に8属金属化合物がまず還元を受ける。金化合物又は8属金属化合物に配位子が結合していた場合は、その際に配位子が脱離する。還元された金及び8属金属はクラスターとして高分子の疎水性部分に取り込まれ、高分子の芳香環から電子供与を受け微小な状態でも安定化される。その後、高分子に対する貧溶媒を加えることにより、金からなるナノサイズクラスター又は金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターと、カーボンブラックと、が担持されたスチレン系高分子を相分離させることができる。
【0044】
本実施形態に係る触媒においては、金からなるナノサイズクラスター又は金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターの大部分、あるいは更に鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属のナノサイズクラスターの大部分が、ミセルの疎水性部分(スチレン系高分子の芳香環)に均一に分散して存在していると考えられる。このように金属が微小なクラスター(微小金属塊)となっているため、高い触媒活性を示すことができる。カーボンブラックと共にスチレン系高分子に担持されているクラスター1個の平均径は20nm以下、好ましくは0.3〜20nm、より好ましくは0.3〜10nm、更に好ましくは0.3〜5nm、より更に好ましくは0.3〜2nm、最も好ましいのは0.3〜1nmである。
【0045】
金からなるナノサイズクラスター又は金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターの径及び価数等の周辺環境は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は拡張X線吸収微細構造(EXAFS)で測定することができる。
【0046】
上記(A−3)及び(B−3)工程では、金からなるナノサイズクラスター又は金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターと、カーボンブラックと、を担持したスチレン系高分子の架橋性官能基を架橋させる。金からなるナノサイズクラスター又は金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターは、架橋により安定化すると共に、種々の溶剤に対して不溶化する。したがって、本実施形態に係る触媒においては、上記のクラスターの漏れを十分に防止することができる。架橋反応により、上記のクラスターを担持した高分子鎖同士を結合させることや、架橋基を有する材料など適当な担体に結合させることもできる。
【0047】
架橋反応は、無溶媒条件で、加熱や紫外線照射、好ましくは加熱により架橋性官能基を反応させることにより行う。架橋反応はこれらの方法以外にも、使用する直鎖型有機高分子化合物を架橋するための従来公知の方法である、例えば架橋剤を用いる方法、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合触媒を用いる方法、酸又は塩基を添加して加熱する方法、例えばカルボジイミド類のような脱水縮合剤と適当な架橋剤を組み合わせて反応させる方法等に準じても行うことができる。上記(A−3)又は(B−3)工程においては、上記スチレン系高分子の上記架橋性官能基を加熱により架橋させることが好ましい。
【0048】
架橋性官能基を加熱により架橋させる際の温度は、通常50〜200℃、好ましくは70〜180℃、より好ましくは100〜160℃である。加熱架橋反応させる際の反応時間は、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜10時間である。
【0049】
なお、本実施形態に係る触媒の使用形態は特に制限されない。例えば、上記の様にして製造した高分子担持クラスターを、塊や膜としてもよく、また、担体に固定することもできる。ガラス、シリカゲル、樹脂などの担体表面の架橋性官能基(例えば、水酸基やアミノ基など)と金、金と鉄および/またはコバルトおよび/またはニッケル含有ポリマーの架橋性官能基とを架橋反応させると、高分子担持金、金と鉄および/またはコバルトおよび/またはニッケルクラスターは担体表面に強固に固定される。また適当な樹脂やガラスで出来た反応容器の表面に、ミセルの架橋性官能基を使用して高分子担持金、金と鉄および/またはコバルトおよび/またはニッケルクラスター組成物を固定化してやれば、より再使用が簡便な触媒担持反応容器として使用できる。
【0050】
このようにして得られた触媒において、架橋型クラスター含有ポリマーミセルは多くの空孔を有しており、適当な溶剤で膨潤して表面積を拡大する。また担持された金あるいは更に鉄、コバルト、ニッケルは数ナノメートル以下の非常に小さいクラスターを形成する。
【0051】
[第2実施形態;アミド化合物の製造方法]
本発明の第2実施形態に係るアミド化合物の製造方法は、架橋性官能基を含む側鎖を有するスチレン系高分子の該架橋性官能基を架橋させてなる担体と、該担体に担持された金からなるナノサイズクラスター並びに金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターから選ばれる少なくとも1種のナノサイズクラスターと、前記担体に担持されたカーボンブラックとを有する触媒の存在下、一級アルコールと一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種とからアミド化合物を得る工程を備える。
【0052】
上記製造方法を用いると、高い選択性及び高い転化率をもって、一級アルコールと一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種とからアミド化合物を製造することができる。
【0053】
なお、本実施形態における触媒は、上記第1実施形態に係る触媒と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0054】
基質である一級アルコールは、一級アルコールであればいかなるものでも使用でき、例えば芳香族基を含むものでも、オレフィン基を含むものでもよい。より具体的には、一級アルコールをRCHOHで表す場合、Rは水素原子、鎖式脂肪族基、脂環式脂肪族基、芳香族基、又はこれらの基にヘテロ原子が含まれるものを示す。また、Rが鎖式脂肪族基や脂環式脂肪族基の場合、これらの基には不飽和結合が含まれていてもよい。
【0055】
また、基質である一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体も特に制限されない。例えば一級アミンをRNHで表す場合のR、並びに二級アミンをRNHで表す場合のR、Rは、それぞれ水素原子、鎖式脂肪族基、脂環式脂肪族基、芳香族基、又はこれらの基にヘテロ原子が含まれるものを示す。R、R、Rが鎖式脂肪族基や脂環式脂肪族基の場合、これらの基に不飽和結合が含まれていてもよい。また、一級アミン又は二級アミンの誘導体としては、上記一級アミン又は二級アミンと無機酸又は有機酸との塩などが挙げられる。
【0056】
本実施形態においては、一級アルコール及び/又は一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体に不斉炭素が含まれていても、ラセミ化することなく、対応するアミドが生成する。
【0057】
本実施形態に係るアミド化合物の製造方法においては、酸化剤を使用することができる。酸化剤としては、酸素ガス、又は空気を用いることができる。
反応溶媒としては、高分子を膨潤させ且つ基質アルコールを溶解するものが好適である。反応溶媒は単一溶媒でも混合溶媒でもよい。水と有機溶媒の混合溶媒が有効な場合もある。有機溶媒としてはベンゾトリフルオリド(BTF)や、メチルエチルケトンなどが挙げられる。混合溶媒を用いる場合、水と有機溶媒の混合比は1:1〜1:10(容積比)であることが好ましい。触媒量は、基質に対して、金として0.1〜10%(mol/mol)、鉄、コバルト、ニッケルとして0.1〜10%(mol/mol)であることが好ましい。基質の濃度は、0.01〜1mmol/ml、好ましくは0.05〜0.5mmol/mlである。反応温度は、0〜80℃、好ましくは室温〜60℃であり、反応時間は、1〜50時間である。
【0058】
その他、反応の際の添加剤として、塩基を加えてもよい。このような場合は、アルカリ金属炭酸塩や水酸化物塩の水溶液の使用が好適である。塩基の量は、基質に対して0.05〜3当量用いることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
また、以下の実施例において、4−ビニルベンジルグリシジルエーテルは特許文献1に記載の方法に従って合成した。他の化合物は市販品を必要に応じて精製して使用した。酸化反応で得られたカルボニル化合物の収率は内部標準を用いたガスクロマトグラフィーで定量した。ガスクロマトグラフとして、島津製作所(株)製GC−17Aを用いた。
【0060】
<2−(2−(2−(2−(4−ビニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノールの合成>
150mLのTHFにソジウムハイドライド(60% in mineral oil、3.34g、83.54mmol)を加え、0℃にてその反応液にテトラエチレングリコール(14.4ml、83.54mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後1−クロロメチル−4−ビニルベンゼン(7.9ml、55.69mmol)を加え、さらに12時間撹拌を続けた。反応液を200mlの酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液(140ml)を加え、反応を停止した。水相を酢酸エチルで抽出した後(100ml×3回)、併せた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧下留去した。得られた残さをフラッシュクロマトグラフィーにて精製し、テトラエチレングリコールモノ−2−フェニル−2−プロペニルエーテルを得た(13.7g、78%収率)。
HNMR(CDCl)δ2.55−2.59(m,1H),3.59−3.73(m,16H),4.55(s,2H),5.25(d,1H,J=6.4Hz),5.53(d,1H,J=18Hz),6.71(dd,1H,J=11.0,17.9Hz),7.22−7.27(m,3H),7.31−7.39(m,2H);13CNMRδ61.8,69.5,70.5,70.69,70.74,72.6,73.0,113.8,126.3,128.0,136.0,137.1,138.0.
【0061】
<スチレン系高分子の合成>
スチレン(3g、28.80mmol)、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル(5.50g、28.80mmol)、2−(2−(2−(2−(4−ビニルベンジルオキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エタノール(8.95g、28.80mmol)、及び2,2’−アゾビス(4−エトキシ)−2,4−ジメチルバレロニトリル(0.864mmol)をクロロホルム(18ml)に溶解させ、室温にて72時間撹拌して重合反応を行った。ポリマー溶液をゆっくりとエーテルに注ぎ込み、上澄み液を分離し、不溶物は再びTHFに溶解させた。このポリマー溶液を再びゆっくりとエーテルに注ぎ込み、上澄み液を分離し、不溶物を再びTHFに溶解させた。この操作を3度繰り返し、沈殿したポリマーをかき集め、エーテルで7回洗浄した。その後は減圧乾燥することで、下記式(5)で表される構造単位を有する共重合体1(10.52g、63%収率)を得た。共重合体1のプロトンNMR分析により、x:y:z=34:32:34でと決定した。
【化5】

【0062】
<高分子担持触媒の合成例1:金−鉄クラスター触媒>
(PI/CB−Au−Feの合成)
共重合体1(500mg)をジグライム(和光純薬工業株式会社製・特級)32mlに溶解し、この溶液にカーボンブラック(ケッチェンブラック・インターナショナル社製、カーボンECP)500mgを加えた。この混合物中に、水素化ホウ素ナトリウム(96.4mg)をゆっくり加え10分攪拌した。さらにAuCl(PPh)(和光純薬工業株式会社製・特級)(140mg)及びFeCl(36mg)のジグライム溶液(10ml)をゆっくり加え、0℃で一晩攪拌した。0度から室温へ昇温した後、ジエチルエーテル120mlを室温にて滴下した。得られた固体をろ過により回収後、ジエチルエーテルで数回洗浄し、室温にて乾燥した。固形物を撹拌せずに150℃、4時間加熱した。固形物を室温に戻して水、THF、ジクロロメタンで洗浄し、170℃、4時間過熱して、黒色固体が得られた(以下、「PI/CB−Au−Fe」と呼ぶ。)。
IPC分析を行ったところ、金、および鉄の担持量は0.211mmol/mg、0.198mmol/mgであった。
【0063】
<高分子担持触媒の合成例2:金−コバルトクラスター触媒>
(PI/CB−Au−Coの合成)
FeClの代わりに、CoCl(36.8mg)を使用すること以外は、PI/CB−Au−Fe合成と同様に行った。
得られた黒色固体は以下、「PI/CB−Au−Co」と呼ぶ。IPC分析を行ったところ、金、およびコバルトの担持量は0.279mmol/mg、0.267mmol/mgであった。
【0064】
<高分子担持触媒の合成例3:金−ニッケルクラスター触媒>
(PI/CB−Au−Niの合成)
FeClの代わりに、NiF(27.4mg)を使用すること以外は、PI/CB−Au−Fe合成と同様に行った。
得られた黒色固体は以下、「PI/CB−Au−Ni」と呼ぶ。IPC分析を行ったところ、金、およびニッケルの担持量は0.260mmol/mg、0.251mmol/mgであった。
【0065】
<高分子担持触媒の合成例4:金クラスター触媒>
(PI/CB−Auの合成)
共重合体1(500mg)をジグライム(和光純薬工業株式会社製・特級)32mlに溶解し、この溶液にカーボンブラック(ケッチェンブラック・インターナショナル社製、カーボンECP)500mgを加えた。この混合物中に、水素化ホウ素ナトリウム(32.1mg)をゆっくり加え10分攪拌した。さらにAuCl(PPh)(和光純薬工業株式会社製・特級)(140mg)のジグライム溶液(10ml)をゆっくり加え、0℃で一晩攪拌した。0℃から室温へ昇温した後、ジエチルエーテル160mlを室温にて滴下した。得られた固体をろ過により回収後、ジエチルエーテルで数回洗浄し、室温にて乾燥した。固形物を撹拌せずに150℃、4時間加熱した。固形物を室温に戻して水、THF、ジクロロメタンで洗浄し、170℃、4時間過熱して、黒色固体が得られた(以下、「PI/CB−Au−Fe」と呼ぶ。)。
IPC分析を行ったところ、金の担持量は0.251mmol/mgであった。
【0066】
[実施例1]
4−メチルベンジルアルコール(0.368mmol)、ベンジルアミン(0.368mmol)、合成例1で得たPI/CB−Au−Fe(0.0037mmol、1mol%)、水酸化ナトリウム(0.368mmol)、テトラヒドロフラン/水(0.5ml、THF/HO=19/1)を混合し、常圧の酸素雰囲気下、25℃で12時間攪拌した。反応終了後は触媒をろ過して、触媒層をジクロロメタン(DCM)で洗浄し、有機層と水層とに分離した。水層には飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)を加え、ジクロロメタンで抽出した(20ml×3回)。先の有機層とジクロロメタン抽出液とを混合し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。残留物を分取用薄層クロマトグラフィーで分離して、下記式(6)で表されるN−ベンジル−4−メチルベンズアミドを収率95%で得た。なお、式(6)中のPhはフェニル基を示す。得られたN−ベンジル−4−メチルベンズアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図1及び図2に示す。
【化6】

【0067】
[実施例2]
合成例1で得たPI/CB−Au−Feを使用しない代わりに、合成例2で得たPI/CB−Au−Co(0.0037mmol、1mol%)を使用する以外は実施例1と同様に行った。N−ベンジル−4−メチルベンズアミドを収率95%で得た。
【0068】
[実施例3]
合成例1で得たPI/CB−Au−Feを使用しない代わりに、合成例3で得たPI/CB−Au−Ni(0.0037mmol、1mol%)を使用する以外は実施例1と同様に行った。N−ベンジル−4−メチルベンズアミドを収率87%で得た。
【0069】
[実施例4]
3−フェニル−1−プロパノールエチルアルコール(0.368mmol)、ベンジルアミン(0.368mmol)、合成例4で得たPI/CB−Au(0.0037mmol、1mol%)、水酸化ナトリウム(0.368mmol)、テトラヒドロフラン/水(0.5ml、THF/HO=19/1)を混合し、常圧の酸素雰囲気下、45℃で12時間攪拌した。反応終了後は触媒をろ過して、触媒層をジクロロメタン(DCM)で洗浄し、有機層と水層とに分離した。水層には飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)を加え、ジクロロメタンで抽出した(20ml×3回)。先の有機層とジクロロメタン抽出液とを混合し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。残留物を分取用薄層クロマトグラフィーで分離して、下記式(7)で表されるN−ベンジル−3−フェニルプロパンアミドを収率85%で得た。なお、式(7)中のPhはフェニル基を示す。得られたN−ベンジル−3−フェニルプロパンアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図3及び図4に示す。
【化7】

【0070】
[比較例1]
合成例1の触媒を使用しないこと以外は実施例1と同様に行った。生成物として目的のアミド化合物は得られず、原料がそのまま回収された。
【0071】
[比較例2]
合成例4の触媒を使用しないこと以外は実施例4と同様に行った。生成物として目的のアミド化合物は得られず、原料がそのまま回収された。
【0072】
次に、下記の条件A又は条件Bの下、種々のアルコールとベンジルアミンとの組合せ、又はベンジルアルコールと種々のアミンとの組合せで、アミド化反応を行った例を示す。
【0073】
条件A:触媒として合成例2で得たPI/CB−Au−Co(0.0037mmol、10mol%)、アルコール(0.368mmol)、アミン(0.368mmol)、水酸化ナトリウム(0.368mmol)、テトラヒドロフラン/水(0.5ml、THF/HO=19/1)を混合し、常圧の酸素雰囲気下、25℃で12時間攪拌した。反応終了後は触媒をろ過して、触媒層をジクロロメタン(DCM)で洗浄し、有機層と水層とに分離した。水層には飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)を加え、ジクロロメタンで抽出した(20ml×3回)。先の有機層とジクロロメタン抽出液とを混合し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。残留物は分取用薄層クロマトグラフィー、あるいは再結晶で精製し、対応するアミド化合物を単離し、H−NMR及び13C−NMRにて同定した。特に光学活性化合物を用いた場合には、光学活性カラムを用いた液体クロマトグラフィーで光学純度も測定した。
【0074】
条件B:触媒として合成例4で得たPI/CB−Au(0.0037mmol、10mol%)、アルコール(0.368mmol)、アミン(0.368mmol)、水酸化ナトリウム(0.368mmol)、テトラヒドロフラン/水(0.5ml、THF/HO=19/1)を混合し、常圧の酸素雰囲気下、45℃で12時間攪拌した。反応終了後は触媒をろ過して、触媒層をジクロロメタン(DCM)で洗浄し、有機層と水層とに分離した。水層には飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)を加え、ジクロロメタンで抽出した(20ml×3回)。先の有機層とジクロロメタン抽出液とを混合し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。残留物は分取用薄層クロマトグラフィー、あるいは再結晶で精製し、対応するアミド化合物を単離し、H−NMR及び13C−NMRにて同定した。特に光学活性化合物を用いた場合には、光学活性カラムを用いた液体クロマトグラフィーで光学純度も測定した。
【0075】
[実施例5]
条件Aにおいて、パラメトキシベンジルアルコール、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(8)で表されるパラメトキシ安息香酸ベンジルアミドが収率87%で得られた。なお、式(8)中のMeOはメトキシ基を示し、Phはフェニル基を示す。得られたパラメトキシ安息香酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図5及び図6に示す。
【化8】

【0076】
[実施例6]
条件Aにおいて、パラニトロベンジルアルコール、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(9)で表されるパラニトロ安息香酸ベンジルアミドが収率95%で得られた。なお、式(9)中のPhはフェニル基を示す。得られたパラニトロ安息香酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図7及び図8に示す。
【化9】

【0077】
[実施例7]
条件Aにおいて、1−ナフチルメタノール、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(10)で表される1−ナフタレン酸ベンジルアミドが収率85%で得られた。なお、式(10)中のPhはフェニル基を示す。得られた1−ナフタレン酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図9及び図10に示す。
【化10】

【0078】
[実施例8]
条件Aにおいて、フルフリルアルコール、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(11)で表される2−フランカルボン酸ベンジルアミドが収率89%で得られた。なお、式(11)中のPhはフェニル基を示す。得られた2−フランカルボン酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図11及び図12に示す。
【化11】

【0079】
[実施例9]
条件Aにおいて、2−ピリジンメタノール、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(12)で表されるピコリン酸ベンジルアミドが収率92%で得られた。なお、式(12)中のPhはフェニル基を示す。得られたピコリン酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図13及び図14に示す。
【化12】

【0080】
[実施例10]
条件Aにおいて、けい皮アルコール、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(13)で表されるけい皮酸ベンジルアミドが収率65%で得られた。なお、式(13)中のPhはフェニル基を示す。また、実施例10において、けい皮酸部位の水素化物は得られなかった。得られたけい皮酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図15及び図16に示す。
【化13】

【0081】
[実施例11]
条件Aにおいて、アルコールとしてアリルアルコール(0.758mmol)を用い、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(14)で表されるアクリル酸ベンジルアミドが収率60%で得られた。なお、式(14)中のPhはフェニル基を示す。また、実施例11において、アクリル酸部位の水素化物は得られなかった。得られたアクリル酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図17及び図18に示す。
【化14】

【0082】
[実施例12]
条件Bにおいて、エタノール、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製することなく、下記式(15)で表される酢酸ベンジルアミドが収率95%で得られた。なお、式(15)中のPhはフェニル基を示す。得られた酢酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図19及び図20に示す。
【化15】

【0083】
[実施例13]
条件Bにおいて、ノルマルヘプタノール、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(16)で表されるヘプタン酸ベンジルアミドが収率89%で得られた。なお、式(16)中のPhはフェニル基を示す。得られた酢酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図21及び図22に示す。
【化16】

【0084】
[実施例14]
条件Bにおいて、シクロヘキシルメタノール、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(17)で表されるシクロヘキサン酸ベンジルアミドが収率71%で得られた。なお、式(17)中のPhはフェニル基を示す。得られたシクロヘキサン酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図23及び図24に示す。
【化17】

【0085】
[実施例15]
条件Aにおいて、ベンジルアルコール、ベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(18)で表される安息香酸ベンジルアミドが収率93%で得られた。なお、式(18)中のPhはフェニル基を示す。得られた安息香酸ベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図25及び図26に示す。
【化18】

【0086】
[実施例16]
条件Aにおいて、ベンジルアルコール、ノルマルヘキシルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(19)で表される安息香酸ヘキシルアミドが収率93%で得られた。なお、式(19)中のPhはフェニル基を示す。得られた安息香酸ヘキシルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図27及び図28に示す。
【化19】

【0087】
[実施例17]
条件Aにおいて、ベンジルアルコール、ノルマルオクチルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(20)で表される安息香酸オクチルアミドが収率96%で得られた。なお、式(20)中のPhはフェニル基を示す。得られた安息香酸オクチルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図29及び図30に示す。
【化20】

【0088】
[実施例18]
条件Aにおいて、ベンジルアルコール、アリルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(21)で表される安息香酸アリルアミドが収率97%で得られた。なお、式(21)中のPhはフェニル基を示す。また、実施例18においては、アリル基のオレフィンは水素化されなかった。得られた安息香酸アリルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図31及び図32に示す。
【化21】

【0089】
[実施例19]
条件Aにおいて、ベンジルアルコール、3−メチルブチル−1−アミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(22)で表される安息香酸イソペンチルアミドが収率96%で得られた。なお、式(22)中のPhはフェニル基を示す。得られた安息香酸イソペンチルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図33及び図34に示す。
【化22】

【0090】
[実施例20]
条件Aにおいて、ベンジルアルコール、メタクロロアニリンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(23)で表される安息香酸メタクロロアニリドが収率75%で得られた。なお、式(23)中のPhはフェニル基を示す。得られた安息香酸メタクロロアニリドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図35及び図36に示す。
【化23】

【0091】
[実施例21]
条件Aにおいて、ベンジルアルコール、ネオペンチルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(24)で表される安息香酸ネオペンチルアミドが収率93%で得られた。なお、式(24)中のPhはフェニル基を示す。得られた安息香酸ネオペンチルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図37及び図38に示す。
【化24】

【0092】
[実施例22]
条件Aにおいて、ベンジルアルコール、シクロペンチルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(25)で表される安息香酸シクロペンチルアミドが収率79%で得られた。なお、式(25)中のPhはフェニル基を示す。得られた安息香酸シクロペンチルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図39及び図40に示す。
【化25】

【0093】
[実施例23]
条件Aにおいて、ベンジルアルコール、(R)−1−フェニルエタンアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(26)で表される(R)−N−(1−フェニルエチル)ベンズアミドが収率68%で得られた。なお、式(26)中のPhはフェニル基を示す。また、生成物アミドの光学純度は完全に維持されていた。得られた(R)−N−(1−フェニルエチル)ベンズアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図41及び図42に示す。
【化26】

【0094】
[実施例24]
条件Aにおいて、ベンジルアルコール、アンモニア水(28%、2.20mmol)を用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(27)で表される安息香酸アミドが収率89%で得られた。得られた安息香酸アミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図43及び図44に示す。
【化27】

【0095】
[実施例25]
条件Bにおいて、ベンジルアルコール、N−メチルベンジルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(28)で表される安息香酸N−メチルベンジルアミドが収率70%で得られた。なお、式(28)中のPhはフェニル基を示す。得られた安息香酸N−メチルベンジルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図45及び図46に示す。
【化28】

【0096】
[実施例26]
条件Bにおいて、ベンジルアルコール、モルフォリンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(29)で表されるベンゾイルモルフォリンが収率84%で得られた。なお、式(29)中のPhはフェニル基を示す。得られたベンゾイルモルフォリンのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図47及び図48に示す。
【化29】

【0097】
[実施例27]
条件Bにおいて、ベンジルアルコール、N−ブチル−N−メチルアミンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(30)で表される安息香酸−N−ブチル−N−メチルアミドが収率66%で得られた。なお、式(30)中のPhはフェニル基を示す。得られた安息香酸−N−ブチル−N−メチルアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図49及び図50に示す。
【化30】

【0098】
[実施例28]
条件Bにおいて、ベンジルアルコール、ピペリジンを用いた。薄層クロマトグラフィーで精製し、下記式(31)で表される安息香酸ピペリジンアミドが収率72%で得られた。なお、式(31)中のPhはフェニル基を示す。得られた安息香酸ピペリジンアミドのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図51及び図52に示す。
【化31】

【0099】
[実施例29]
触媒として合成例4で得たPI/CB−Au(0.0076mmol、2mol%)、ベンジルアルコール(0.368mmol)、L−アラニン(0.368mmol)、水酸化ナトリウム(0.759mmol)、テトラヒドロフラン/水(0.5ml、THF/HO=19/1)を混合し、常圧の酸素雰囲気下、25℃で12時間攪拌した。反応終了後は触媒をろ過して、触媒層をジクロロメタン(DCM)で洗浄した。有機層と水層とを分離し、水層に1N−HCl(10ml)を加え、水層を酢酸エチルで抽出した(20ml×3回)。先の有機層と酢酸エチル抽出液とを混合し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。残留物は分取用薄層クロマトグラフィー精製し、下記式(32)で表されるN−ベンゾイル−L−アラニンが収率73%で得られた。なお、式(32)中のPhはフェニル基を示す。また、キラルカラムを用いて光学純度を測定したが、100%eeであった。得られたN−ベンゾイル−L−アラニンのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図53及び図54に示す。また、光学活性カラムを用いた液体クロマトグラフィーのチャートを図55(別途合成したラセミ体)及び図56(本実施例29で合成したもの)に示す。
【化32】

【0100】
[実施例30]
触媒として合成例4で得たPI/CB−Au(0.0076mmol、2mol%)、ベンジルアルコール(0.368mmol)、グリシン(0.368mmol)、水酸化ナトリウム(0.759mmol)、テトラヒドロフラン/水(0.5ml、THF/HO=19/1)を混合し、常圧の酸素雰囲気下、25℃で12時間攪拌した。反応終了後は触媒をろ過して、触媒層をジクロロメタン(DCM)で洗浄した。有機層と水層とを分離し、水層に1N−HCl(10ml)を加え、水層を酢酸エチルで抽出した(20ml×3回)。先の有機層と酢酸エチル抽出液とを混合し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。残留物は分取用薄層クロマトグラフィー精製し、下記式(33)で表されるベンゾイルグリシンが収率87%で得られた。なお、式(32)中のPhはフェニル基を示す。得られたベンゾイルグリシンのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図57及び図58に示す。
【化33】

【0101】
[実施例31]
触媒として合成例2で得たPI/CB−Au−Co(0.0076mmol、2mol%)、ベンジルアルコール(0.368mmol)、(2S)−2−アミノ−1−ピペリジン−1−イル−1−オン(0.368mmol)、水酸化ナトリウム(0.759mmol)、テトラヒドロフラン/水(0.5ml、THF/HO=19/1)を混合し、常圧の酸素雰囲気下、25℃で12時間攪拌した。反応終了後は触媒をろ過して、触媒層をジクロロメタン(DCM)で洗浄した。有機層と水層とを分離し、水層に1N−HCl(10ml)を加え、水層を酢酸エチルで抽出した(20ml×3回)。先の有機層と酢酸エチル抽出液とを混合し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で留去した。残留物は分取用薄層クロマトグラフィー精製し、下記式(34)で表される1−(N−ベンゾイル−L−アラニル)−ピペリジンが収率69%で得られた。なお、式(34)中のPhはフェニル基を示す。また、キラルカラムを用いて光学純度を測定したが、100%eeであった。得られた1−(N−ベンゾイル−L−アラニル)−ピペリジンのH−NMRチャート及び13C−NMRチャートをそれぞれ図59及び図60に示す。また、光学活性カラムを用いた液体クロマトグラフィーのチャートを図61(別途合成したラセミ体)及び図62(本実施例31で合成したもの)に示す。
【化34】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性官能基を含む側鎖を有するスチレン系高分子の該架橋性官能基を架橋させてなる担体と、該担体に担持されたナノサイズクラスター及びカーボンブラックとを有する触媒の存在下、一級アルコールと一級アミン、二級アミン及びそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種とからアミド化合物を得る工程を備え、
前記ナノサイズクラスターが、金からなるナノサイズクラスター並びに金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするアミド化合物の製造方法。
【請求項2】
前記スチレン系高分子が前記架橋性官能基としてエポキシ基及び水酸基を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアミド化合物の製造方法。
【請求項3】
架橋性官能基を含む側鎖を有するスチレン系高分子の該架橋性官能基を架橋させてなる担体と、該担体に担持されたナノサイズクラスター及びカーボンブラックとを有し、
前記ナノサイズクラスターが、金からなるナノサイズクラスター並びに金と鉄、コバルト及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の8属金属とのナノサイズクラスターから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする触媒。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【公開番号】特開2013−67576(P2013−67576A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206366(P2011−206366)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】