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アミド化合物の還元によるアミン化合物の製造方法
説明

アミド化合物の還元によるアミン化合物の製造方法

【課題】 穏和な反応条件下でアミド化合物を還元し、反応生成物から触媒および還元剤残渣を容易に除去でき、さらに、目的とするアミン化合物を収率良く得られる方法を提供する。
【解決手段】 (1)アミド化合物を、遷移金属触媒の存在下で、分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも1つ有するポリマーによって還元し、この際に酸化された該ポリマーはゲル状乃至固体状物質となる工程、次いで、
(2)前記ゲル状乃至固体状物質を除去する工程、
を含むことを特徴とするアミン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン化合物の製造方法に関し、詳細には、分子中にケイ素原子に結合した水素原子を有するポリマーを用い、該ポリマーと触媒とを溶液から析出させることによって、目的アミン化合物を容易に単離することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミド化合物を還元してアミン化合物を得る方法としては、リチウムアルミニウムヒドリド、ボラン等の強力な還元剤を用いる方法が主に用いられている(非特許文献1)。しかしながら、これらの還元剤は発火性、禁水性物質であるため、不活性ガス雰囲気下に無水条件で使用しなければならず、取り扱い性に難がある。また、反応後のアルミニウム、あるいはホウ素化合物を目的物から除去する時にも取り扱いに注意が必要であり、操作性、安全性に欠点を有している。
【0003】
上記の発火性物質に代え、シラン化合物を還元剤として用いることによるアミド化合物からアミン化合物の合成方法が知られている(非特許文献2)。しかしながら、この方法ではアミド化合物が芳香族アミド類に限定され、汎用性に劣る。また、水に不安定で容易に塩酸を発生するトリクロロシランと過剰のアミンを必要とするため、操作性及び安全性に劣る。
【0004】
遷移金属触媒の存在下で、シラン化合物を還元剤として用いるアミド化合物からアミン化合物の合成方法も知られている。例えば、1)クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウムを触媒として用いる方法(非特許文献3)、2)クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム二量化物、およびトリフェニルホスフィンを触媒として用いる方法(非特許文献4)、3)第7〜10族遷移金属触媒を用いる方法(非特許文献5、および特許文献1)が知られている。
【0005】
しかしながら、1)、2)の方法では、還元剤がジフェニルジヒドロシラン、フェニルトリヒドロシラン化合物に限定される。これらは高活性な化合物であり、取り扱い時にこれら化合物が眼に入ると眼粘膜の損傷を引き起こすことがある。また、これらのシランを過剰に用いて反応させると、沸点が高いため未反応物を減圧除去できないこと、および、反応終了後の後処理時にケイ素生成物の加水分解が併発してオリゴシランの混合物が得られ、目的物であるアミン化合物の分離が困難となってしまう。また、3)の方法は反応温度が100℃と比較的高温であること、アミン化合物やハロゲン化アルキルなどの助触媒を必要とするため、目的物との沸点が近いときには蒸留精製工程が難しくなる。
【0006】
特許文献2には、トリアルキルシランを還元剤とし、ルテニウム触媒を用いてアミド化合物からアミン化合物を得る方法が開示されている。この方法によると、安全性と操作性が良く、しかも穏和な反応条件で還元反応を行うことができる。しかし、アミン化合物からケイ素含有副生成物を除去することは容易ではなく、蒸留及び/又はクロマトグラフィー処理を要する。非特許文献6記載の方法は、反応生成物に強酸処理、次いで強塩基処理を施した後に、蒸留するものであり、より複雑である。そこで、より容易に目的物を単離できる合成方法が望まれている。
【0007】
3級アミン化合物を合成する方法としては、1級あるいは2級アミン化合物とハロゲン化合物から得る方法が知られている(非特許文献7)。しかしながら、ハロゲン化合物は水に不溶であるため、アルコール溶媒や界面活性剤を使用することが必要となる。また、反応系が不均一であることが多く、攪拌等の条件により収率が変化してしまう。さらに、目的物である3級アミン化合物が、ハロゲン化合物とさらに反応することによって4級アンモニウム塩を副生する反応が生じるため、収率が低下し、目的物を単離することも困難となる。
【0008】
また、2級アミン化合物とアルコール化合物から3級アミン化合物を得る方法も知られている(非特許文献8〜11)。これらの方法は遷移金属触媒を用いているものの、還流条件下で長時間、あるいは100℃以上の温度条件下で行うことが必要となる。
【0009】
カルボニル化合物と2級アミン化合物から、還元的アミノ化反応によって合成する方法も知られている(非特許文献12〜20)。しかしながら、安全性や取り扱い性に難のある還元剤を使用しなければならないという問題がある。例えば、アルデヒド化合物は、毒性が高く、高価であり、カルボン酸又はエステルから合成しなければならない。NaBH3(CN)も、高価であり、毒性が高い。
【0010】
【特許文献1】特開2001−122833号公報
【特許文献2】特開2003−261578号公報
【非特許文献1】W.R.Brown, Organic Reactions, 6, 470(1941)
【非特許文献2】R.A.Benkeser, G.S.Li, E.C.Mozdzen, J. Organomet. Chem., 178, 21(1979)
【非特許文献3】R.Kuwano, M.Takahashi, Y.Ito, Tetrahedron Lett., 39, 1017(1988)
【非特許文献4】紙谷昌弘、道端嗣海、信友麻美、楠井啓介、太田哲男、古川功、第46回有機金属討論会、PB201
【非特許文献5】M.Igarashi, T.Fuchikami, Tetrahedron Lett., 42, 1945(2001)
【非特許文献6】松原公紀、永島英夫、有機合成化学協会誌、63, 122, (2005)
【非特許文献7】Spialter, L.; Pappalardo, J. A. The Acyclic Aliphatic Tertiary Amines; Macmillan: New York, 1965; P. 14
【非特許文献8】Rice, R. G.; Kohn, E. J. Org. Synth. 1963, IV, 283.
【非特許文献9】Baiker, A.; Richarz, W. Tetrahedron Lett. 1977, 1937; Synth. Commun. 1978, 8, 27.
【非特許文献10】Murahashi, S.-I.; Kondo, K.; Hakata, T. Tetrahedron Lett. 1982, 23, 229.
【非特許文献11】Fujita, K.-I.; Li, Z.; Ozeki, N.; Yamaguchi, R. Tetrahedron Lett. 2003, 44, 2687.
【非特許文献12】Hutchins, R. O.; Hutchins, M. K. In Comprehensive Organic Synthesis; Trost, B. M.; Fleming, I., Eds.; Pergamon: Oxford, 1991; Vol. 6, P. 724.
【非特許文献13】Baxter, E. W.; Reitz, A. B. Org. React. 2002, 59, 1.
【非特許文献14】Hutchins, R. O.; Natale, N. R. Org. Prep. Proced. Int. 1979, 11, 201.
【非特許文献15】Abdel-Magid, A. F.; Maryanoff, C. A.; Carson, K. G. Tetrahedron Lett. 1990, 31, 5595.
【非特許文献16】Abdel-Magid, A. F.; Carson, K. G.; Harris, B. D.; Maryanoff, C. A. J. Org. Chem. 1996, 61, 3848.
【非特許文献17】Kim, H.-O.; Carrol, B.; Lee, M. S. Synth. Commun. 1997, 27, 2505.
【非特許文献18】Pelter, A.; Rosser, R. M.; Mills, S. J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1 1984, 717.
【非特許文献19】Sato, S.; Sakamoto, T.; Miyazawa, E.; Kikugawa, Y. Tetrahedron 2004, 60, 7899.
【非特許文献20】Suwa, T.; Sugiyama, E.; Shibata, I.; Baba, A. Synlett 2000, 556; Synthesis 2000, 789.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、アミド化合物からアミン化合物を合成する方法において、取り扱い性の容易な還元剤により、穏和な反応条件下でアミド化合物を還元し、反応生成物から触媒および還元剤残渣を容易に除去でき、目的とするアミン化合物を収率良く得られる方法を提供することを目的とする。また、本発明は、取り扱い性の容易な還元剤により、穏和な反応条件下で、3級アミン化合物を収率良く得られる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明の第1の方法は、
(1)アミド化合物を、遷移金属触媒の存在下で、分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも1つ有するポリマーによって還元し、この際に酸化された該ポリマーはゲル状乃至固体状物質となる工程、次いで、
(2)前記ゲル状乃至固体状物質を除去する工程、
を含むことを特徴とするアミン化合物の製造方法である。
また、本発明の第2の方法は、
(1)下記式(7)で表されるアミド化合物を、遷移金属触媒の存在下で、分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも1つ有するポリマーによって還元し、下記式(8)で表される3級アミン化合物を合成し、この際に酸化された該ポリマーはゲル状乃至固体状物質となる工程、次いで、


(2)前記ゲル状乃至固体状物質を除去する工程、
を含むことを特徴とする3級アミン化合物の製造方法である。
上記双方の方法において、好ましくは、前記ポリマーが、下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。

ここで、Meはメチル基を表し、c及びdは夫々5〜30の整数である。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の方法は、ケイ素原子に結合した水素原子(以下「SiH結合」という)を有するポリマーを還元剤として用いることを特徴とする。該ポリマーは酸化されて、ゲル状乃至固体状物(以下「ゲル状物」という)を形成する。その際、触媒が該ゲル状物質中に取り込まれて共に反応系外へと析出されるので、目的アミン化合物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の方法で使用する、分子中にSiH結合を少なくとも1つ有するポリマーとしては、酸化されてゲル状物質となりさえすればよく、オリゴマーであってもよい。ゲル状物質は、還元反応工程中に生成することが好ましいが、後述するように、本発明における還元反応工程は、約70℃迄の温度で、また、溶媒を用いて行うことができる。従って、ゲル状物質は、反応後の冷却により、又は、溶媒の除去によって析出するものであってもよい。
【0015】
該ポリマーの例には、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、及びSiH結合を少なくとも1つ有するポリマー、例えばポリオレフィン、ポリビニル、ポリスチレン、及びポリオキシアルキレン、及びこれらのポリマーとポリシロキサンとのコポリマーが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンについては公知の方法で得ることができる。ポリオレフィン、ポリビニル、ポリスチレン、及びポリオキシアルキレン等のポリマーへのSiH結合の導入は、ジアルキルクロロシランを反応させることによって得られる。また、前記コポリマーは、該ポリマーとアルキルハイドロジェンモノクロロポリシロキサンとの反応により作ることができる。あるいは両末端乃至は片末端に(メタ)アクリル基を持つメチルハイドロジェンポリシロキサンを、例えばアクリルモノマーやスチレンモノマーのような反応性ビニル基を有するモノマーと重合させて得られる。本反応では、好ましくは、アルキルハイドロジェンポリシロキサンが使用される。
【0016】
該アルキルハイドロジェンポリシロキサンは、一般式R5abSiO(4-a-b)/2で示すことができる。ここでR5はハロゲンで置換されていてよい、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基であり、a、bは4未満の数、好ましくは1.0≦a≦2.5、及び0.001≦b≦1.0、より好ましくは1.0≦a≦2.0、及び0.005≦b≦1.0である。
【0017】
5の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の飽和脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基等のアリール基;トリフロロプロピル基、ノナフロロヘキシル基、ヘプタデシルフロロデシル基等のフッ素置換アルキル基などを挙げることができる。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリフロロプロピル基である。
【0018】
アルキルハイドロジェンポリシロキサンの構造は、式(1)で表されるような直鎖状、式(2)で表されるような環状、式(3)で表されるような分岐状の何れであっても良い。



ここで、R6は水素原子または上述のR5であり、dが0のときはR6の少なくとも一方が水素原子である。cは0〜1000の整数、dは0〜1000の整数、c+dは1〜2000の整数、好ましくは、10〜500、より好ましくは20〜300、eは0〜8の整数、fは1〜8、の整数、e+fは3〜10の整数、gは0〜3の整数、hは1〜4の整数、g+hは4である。c+dが前記下限値未満であるとゲル状物が生成し難く、前記上限値を超えると、ポリマーの粘度が高く、取り扱いにくくなる。
【0019】
本発明において、反応過程で生成されるゲル状物の構造は、完全には明らかではないが、該ポリマーのSiH結合がアミドにより酸化されて、分子内又は分子間でシロキサン結合、即ちSi−O−Si、を形成するためであると考えられる。金属触媒は、該ゲル化の際に該ゲル中に取り込まれる。斯かる析出のためには、一分子中にSiH結合が所定数以上含まれていることが好ましく、上記式において、dは2〜100、fは2〜6、及びhは3〜4である。dが前記下限値未満であるとゲル化しにくくなり、前記上限値を超えると、脱水素反応等が起こりやすくなり,安定性が低下し取り扱いにくくなる。
【0020】
本発明の方法において、遷移金属触媒は還元反応の触媒である。好ましくは、周期表の第8属から第10属の後周期遷移金属の塩、もしくは錯体であり、なかでもSiH結合の活性化効果があるヒドロシリル化反応触媒が好ましい。該ヒドロシリル化反応触媒としては、例えば、B.Marciniec著のComprehensive Handbook on Hydrosilylation、米国特許第3159601号、同3159662号、同3775452号、特公昭33−9969号に記載されている、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、ビニルシロキサンと塩化白金酸との化合物、白金ホスフィン錯体(Pt(0),Pt(2))、白金アルケン錯体、白金(4)アルキル錯体、Ni(0)、Ni(2)ホスフィン錯体、Ni(0)カルボニル錯体、Ni(0)オレフィン錯体、Pd(0)、Pd(2)ホスフィン錯体、PdCl2(NCPh)2、RhX(PR33、RhX(CO)(PR32、Rh224、Rh(acac)3、Cp*RhCl4、CP*Rh(H)2(SiR32、RhCl3(アミン配位子)3、Ir(CO)Cl(PPh32、IrCl(COE)2、IrX(COD)2、CoH(X)2(PPh3)3、RuCl2(PPh33、RuHCl(PPh33、Fe(CO)5、Ru3(CO)12、Os3(CO)12、Co2(CO)8、Rh4(CO)12(ここで、Xはハロゲン原子、Phはフェニル基、NCPhはベンゾニトリル、Rはアルキル基またはアリール基、acacはアセチルアセトン、Cp*はペンタメチルシクロペンタジエニル基、COEはシクロオクテン、CODはシクロオクタジエンを示す)、が挙げられる。
【0021】
前記ヒドロシリル化触媒の他にも、金属の核数が1〜6、好ましくは2または3であり、配位子が、カルボニル基、芳香族炭化水素、不飽和炭化水素、不飽和基含有シロキサン、ヘテロ原子含有化合物から選択されるものを使用することができる。配位子の例として、アズレン、シクロオクタテトラエン等の二重結合含有炭化水素、アセチレン等の三重結合含有炭化水素、不飽和基含有シロキサン、例えばテトラメチルジビニルジシロキサン等のビニル基含有シロキサン、ヘテロ原子含有化合物、例えばアミン、ピリジン等の窒素原子含有化合物、スルフィド等のイオウ原子含有化合物、ホスフィン等のリン原子含有化合物が挙げられる。なお、金属の核は、互いに異種の金属であってもよい。
【0022】
好ましくは、本発明の第1の方法では、塩化白金酸、下記式(A)で示されるアセナフチレンが配位した3核ルテニウムカルボニル錯体、又は下記式(B)で示されるアズレンが配位した3核ルテニウムカルボニル錯体が使用される。また、本発明の第2の方法では、式(A)のルテニウムカルボニル錯体が好ましく使用される。


式(A)で示されるアセナフチレンが配位した3核ルテニウムカルボニル錯体であり、SiH結合を有するポリマーに、ほぼ100%取り込まれて析出する。
【0023】
本発明の第1の方法において使用することができるアミド化合物には、下記式(4)〜(6)で示される化合物が包含される。



ここで、R1は、互いに異なっていてよい、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてよい炭素数1〜30の1価アルキル基、アリール基、アラルキル基から選択される有機基であり、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基やベヘニル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の飽和脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基などのアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアラルキル基;トリフロロプロピル基、ノナフロロヘキシル基などのフッ素置換アルキル基などを挙げることができる。
【0024】
2は置換又は非置換のハロゲン原子で置換されていてよい炭素数3〜10の2価炭化水素基、2価のヘテロ原子含有炭化水素基から選択される有機基であり、ヘテロ原子としては、酸素、イオウ、窒素原子が挙げられる。例えば以下の化合物を挙げることができる。

【0025】
一般式(4)のアミド化合物を還元して得られるアミン化合物は一般式(4’)で示すことができ、同様に一般式(5)から得られる目的物は一般式(5’)、一般式(6)から得られる目的物は一般式(6’)で示すことができる。



【0026】
本発明の第2の方法では、下記式(7)で表される1級または2級アミドが使用される。

式(7)でR1は上で述べたとおりである。該アミン化合物2分子から、下記反応により1分子の3級アミンが得られる。

公知の合成方法は何れも、異なる2種類の反応基質を反応させることによって、3級アミン化合物を合成する方法であり、このように同一の化合物2分子から1分子の3級アミンを選択的に合成する方法は、未だ知られていない。
【0027】
本発明の方法において、触媒はアミド化合物1モルに対して、0.0001〜0.1モル(0.01〜10モル%)の範囲で使用することが好ましい。触媒が前記下限値より少ないと反応時間が長くなりすぎ、一方、上限値を越えても反応時間がさらに短縮されることはない。好ましくは、0.001〜0.05モルの範囲である。
【0028】
SiH結合を含むポリマーは、アミド化合物1モルに対して、SiH結合が2.0〜100.0等量、好ましくは、2.0〜50.0等量、特に好ましくは、2.0〜10.0等量となる範囲で使用される。SiH結合の量が前記下限値より少ないと未反応アミド化合物が残留する場合があり、前記上限値を越えても、使用量に比例する収率の向上は期待できない。本発明の第2の方法では、SiH結合が2.0〜5.5当量となる範囲で使用されることが特に好ましい。
【0029】
反応溶媒は、使用する触媒及びポリマーに応じて適宜選択することが好ましい。典型的には、テトラヒドロピラン、トルエン、エーテルなどが使用される。また、反応温度は、使用する触媒に主として依存するが、室温〜70℃が好ましく、反応時間は1〜20時間であることが好ましい。
【0030】
反応後に、溶媒をエバポレーター等を用いて除去する。得られた残渣から、抽出溶媒を用いて、目的のアミン化合物を得る。該抽出溶媒としては、目的のアミン化合物が溶解し易い溶媒であれば特に限定されず、エーテル系、炭化水素系ならびに芳香族系溶媒が例示される。
【0031】
抽出物に、僅かなゲル状物が残存している場合には、これを綿による濾過等で除去し、蒸留精製し、又はカラムクロマトグラフィーに付することによって、純度の高いアミン化合物を得ることができる。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明を実施例によって更に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1:N,N-ジメチル-3-フェニルプロピオンアミドの還元
【化1】

20 mLのシュレンクチューブにセプタムを付け、磁気撹拌子を加えて0.05 Torrで減圧しながら加熱乾燥した後、フラスコ内をアルゴン雰囲気に置換した。触媒として[(acenaphthylene)Ru3(CO)7](前記式Aに示す化合物、以下「Ace Ru3(CO)7」と表す)(6.34 mg, 0.01 mmol)をフラスコに加え、0.05 Torrで約5分減圧乾燥した後、再びアルゴン雰囲気に置換した。テトラヒドロピラン(0.5 mL)をシリンジで加えて触媒を溶解した。この溶液に、メチルハイドロジェンポリシロキサン(前記一般式(1)で、R5、R6がメチル基、cが0、dが25であり、SiH結合が 4.4 mmolである)、(0.3 mL)をシリンジで加えて20 ℃で30分撹拌すると、濃橙色の溶液の色が多少うすく変化した。次に、N,N-ジメチル-3-フェニルプロピオンアミド(一般式(4)で、R1が2-フェニルプロピル基、R2がメチル基であるもの)(170 マイクロリットル, 1.0 mmol)をマイクロシリンジで加え、30 ℃で撹拌した。約1時間後に反応溶液は粘性が増し、その後すぐにゲル状物質が生成した。そのまま15時間反応させると、最終的にテトラヒドロピラン等液状物で膨潤された橙色のゲル状反応物が得られた。該反応物を5.0 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を2 mLのジエチルエーテルで7回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿で濾過して分離した。この抽出溶液をエバポレーターで濃縮した後、1Hの核磁気共鳴スペクトルによりN,N-ジメチル-3-フェニルプロピルアミンの収率(88%)を決定した。なお、粗生成物中の残存ルテニウム濃度はICP-MSで測定した(15 ppm)。
【0033】
得られたアミンは、1Hおよび13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認し、ガスクロマトグラフでその純度(99%)を確認した。1H NMR (600MHz,CDCl3) δ: 1.81 (tt, J = 7.8, 7.5 Hz, 2H, NCH2CH2), 2.24 (s, 6H, NCH3), 2.31 (t, J = 7.5 Hz, 2H, PhCH2), 2.65 (t, J = 7.8 Hz, 2H, NCH2), 7.19 (t, J = 7.6 Hz, 1H, para-Ph), 7.20 (d, J = 7.1 Hz, 2H, ortho-Ph), 7.29 (dd, J = 7.6, 7.1 Hz, 2H, meta-Ph)。 13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ: 29.5, 33.7, 45.5, 59.3, 125.7, 128.3, 128.4, 142.3. GLC (カラム:TC-WAX;0.25 mm x 30 m、カラム温度:120 oC、入力圧:60 kPa、保持時間:16.1 min)。
【0034】
上記反応において、反応開始時は反応物は溶液であるが、1時間後にゲル化が始まり、終了時には完全にゲル状になった。エーテル抽出・綿ろ過後はルテニウム金属の色が完全に消えており、橙色のゲル残渣が得られ、触媒が取り込まれていることが分かった。
また、図1に、ジエチルエーテルによる抽出後のゲル状残渣の29Si 核磁気共鳴スペクトルを示す。メチルハイドロジェンポリシロキサンの分子間及び/又は分子内でシロキサン結合を形成した架橋構造特有のシグナルが確認された(G. Engelhardt, H. Jancke, J. Organomet. Chem., 210, 295 (1981); N. Satyanarayana, H. Alper, Macromolecules, 28, 281 (1995))。
【0035】
実施例2〜5:金属種の効果
表1に示す各金属触媒(0.01 mmol)を用いたことを除き実施例1の手順を繰り返した。実験結果を表1に示す。収率は1H NMRで決定した。
【表1】

表1に示すように、実施例1で使用したAceRu3(CO)7及び塩化白金酸(H2PtCl6)が特に高い触媒活性を有する。
【0036】
実施例6〜9:反応溶媒の効果
表2に示す各反応溶媒(0.5 mL)を使用したことを除き実施例1の手順を繰り返した。なお、収率は1H NMRで決定し、粗生成物中の残存ルテニウム濃度はICP-MSで測定した。
【表2】

表2から、いずれの溶媒を用いても収率良く生成物が得られると共に、抽出後に得られる粗生成物中にはほとんどルテニウムが残存していないことがわかる。
【0037】
実施例10〜12:溶媒量(基質濃度)の効果
反応溶媒であるテトラヒドロピランの量を表3に示す各量に変えたことを除き、さらに実施例10では、触媒を溶解する工程及び反応物を5.0 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥する工程を省略したことを除き、実施例1の手順を繰り返した。実験結果を表3に示す。収率は1H NMRで決定し、粗生成物中の残存ルテニウム濃度はICP-MSで測定した。
【表3】

【0038】
表3から、溶媒量にかかわらず収率良く生成物が回収されると共に、抽出後に得られる粗生成物中にはほとんど触媒が残存していないことがわかる。即ち、本発明の方法において、反応温度において反応物が一旦均一系、即ち液状になりさえすればよく、反応物が溶媒を兼ねるのであれば、溶媒は使用しなくてもよい。
【0039】
実施例13〜15:抽出溶媒の効果
抽出溶媒(2 mL x 7)として、表4に示す各溶媒を用いたことを除き、実施例1の手順を繰り返した。収率は1H NMRで決定し、粗生成物中の残存ルテニウム濃度はICP-MSで測定した。
【表4】

表4から、いずれの抽出溶媒を用いても収率良く生成物が回収さられると共に、抽出後に得られる粗生成物中にはほとんどルテニウムが残存していないことがわかる。
【0040】
実施例16:温度効果
N,N-ジメチル-3-フェニルプロピオンアミドを加えた後に温度を70℃にしたことを除き、実施例1の手順を繰り返した。該アミドを加えて約5分後に反応溶液は粘性が増し、その後すぐに反応溶液はゲル化した。そのまま1時間反応させると、最終的に反応物は橙色のゲルとなった。1Hの核磁気共鳴スペクトルにより求めたN,N-ジメチル-3-フェニルプロピルアミンの収率は80%であり、ICP-MSで測定した粗生成物中の残存ルテニウム濃度は7 ppmであった。
この結果から、反応温度を高くすることで、より短時間で反応が終了することが理解できる。
【0041】
実施例17〜19:大量合成
300 mLの2口フラスコの片方に三方コック、もう一方にセプタムを付け、磁気撹拌子を加えて0.05 Torrで減圧しながら加熱乾燥した後、フラスコ内をアルゴン雰囲気に置換した。AceRu3(CO)7(365 mg, 0.557 mmol)をフラスコに加え、0.05 Torrで約5分減圧乾燥した後、再びアルゴン雰囲気に置換した。テトラヒドロピラン(25 mL)をシリンジで加えて錯体を溶解した。この錯体溶液に、実施例1と同様のメチルハイドロジェンポリシロキサン(16 mL, Si-H = 236 mmol)をシリンジで加えて20 ℃で30分撹拌すると、濃橙色の溶液の色が多少うすく変化した。次に、N,N-ジメチル-3-フェニルプロピオンアミド(10 mL, 56 mmol)をシリンジで加え、30 ℃で撹拌した。約1時間後に反応溶液は粘性が増し、その後すぐにゲル状物質が生成した。そのまま15時間反応させると、最終的にテトラヒドロピラン等液状物で膨潤された橙色のゲル状反応物が得られた。該反応物を6.0 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を100 mLのジエチルエーテルで7回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿で濾過して分離した。この抽出溶液をエバポレーターで濃縮した後、蒸留(100℃ / 0.1 Torr)することにより、N,N-ジメチル-3-フェニルプロピルアミン(6.42 g, 70%)を得た。他のスケールで行なった実験結果も併せて表5に示す。
得られたアミンは、1Hおよび13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認し、ガスクロマトグラフでその純度 (99%) を確認した。
【表5】

【0042】
実施例20:N,N−ジメチルベンズアミドの還元
【化2】

50 mLの2口フラスコの片方に三方コック、もう一方にセプタムを付け、磁気撹拌子を加えて0.05 Torrで減圧しながら加熱乾燥した後、フラスコ内をアルゴン雰囲気に置換した。AceRu3(CO)7(32.1 mg, 0.05 mmol)をフラスコに加え、0.05 Torrで約5分減圧乾燥した後、再びアルゴン雰囲気に置換した。テトラヒドロピラン(2.5 mL)をシリンジで加えて錯体を溶解した。この錯体溶液に、実施例1と同様のメチルハイドロジェンポリシロキサン(1.50 mL, Si-H = 22 mmol)をシリンジで加えて20 ℃で30分撹拌すると、濃橙色の溶液の色が多少うすく変化した。次に、N,N−ジメチルベンズアミド(一般式(4)で、R1がフェニル基、R2がメチル基であるもの)(746 mg, 5.0 mmol)をマイクロシリンジで加え、40 ℃で撹拌した。約1時間後に反応溶液は粘性が増し、ゲル状物質が生成した。そのまま15時間反応させると、最終的にテトラヒドロピラン等液状物で膨潤された橙色のゲル状反応物が得られた。該反応物を5.0 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を10 mLのジエチルエーテルで7回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿で濾過して分離した。この抽出溶液をエバポレーターで濃縮した後、クーゲルロールで蒸留(100℃ / 6.0 Torr)することにより、N,N−ジメチルベンジルアミン(520 mg, 77%)を得た。
得られたアミンは、1Hおよび13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認し、ガスクロマトグラフでその純度 (>99%) を確認した。1H NMR (396 MHz, CDCl3) δ: 2.19 (s, 6H), 3.37 (s, 2H), 7.18-7.31 (m, 5H). 13C NMR (99 MHz, CDCl3) δ: 45.4, 64.4, 127.0, 128.2, 129.1, 138.9. GLC (カラム:TC-WAX;0.25 mm x 30 m、カラム温度:150 ℃、入力圧:60 kPa、保持時間:5.4 min)。
【0043】
実施例21:N−ベンジル−N−メチルホルムアミドの還元
【化3】

アミドとして、N−ベンジル−N−メチルホルムアミド(一般式1で、R1が水素、R2がベンジル基とメチル基であるもの)(730 マイクロリットル, 745 mg, 5.0 mmol)をマイクロシリンジで加え30 ℃で撹拌したことを除き、実施例20の反応手順を繰り返した。アミドを加えた後、約1時間後に反応溶液は粘性が増し、その後すぐにゲル状物質が生成した。そのまま15時間反応させると、最終的にテトラヒドロピラン等液状物で膨潤された橙色のゲル状反応物が得られた。反応物を5.0 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を10 mLのジエチルエーテルで7回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿で濾過して分離した。この抽出溶液をエバポレーターで濃縮した後、クーゲルロールで蒸留(100℃ / 6.0 Torr)することにより、N,N−ジメチルベンジルアミン(547 mg, 81%)を得た。
得られたアミンは、1Hおよび13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認し、ガスクロマトグラフでその純度 (>99%) を確認した。1H NMR (396 MHz, CDCl3) δ: 2.19 (s, 6H), 3.37 (s, 2H), 7.18-7.31 (m, 5H). 13C NMR (99 MHz, CDCl3) δ: 45.4, 64.4, 127.0, 128.2, 129.1, 138.9. GLC (カラム:TC-WAX;0.25 mm x 30 m、カラム温度:150 ℃、入力圧:60 kPa、保持時間:5.4 min)。
【0044】
実施例22: 1-(3-フェニルプロピオニル)ピペリジンの還元
【化4】

アミドとして、1-(3-フェニルプロピオニル)ピペリジン(一般式2で、R1が2-フェニルプロピル基、R2が炭素数5の2価炭化水素基であるもの)(1025 マイクロリットル, 1087 mg, 5.0 mmol)をマイクロシリンジで加え、30 ℃で撹拌したことを除き実施例20の反応手順を繰り返した。約1時間後に反応溶液は粘性が増し、その後すぐにゲル状物質が生成した。そのまま15時間反応させると、最終的にテトラヒドロピラン等液状物で膨潤された橙色のゲル状反応物が得られた。反応物を5.0 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を10 mLのジエチルエーテルで7回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿で濾過して分離した。この抽出溶液をエバポレーターで濃縮した後、クーゲルロールで蒸留(150℃ / 0.1 Torr)することにより、1-(3-フェニルプロピル)ピペリジン(753 mg, 74%)を得た。
得られたアミンは、1Hおよび13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認し、ガスクロマトグラフでその純度 (>98%) を確認した。1H NMR (396 MHz, CDCl3) δ: 1.44 (m, 2H), 1.60 (m, 4H), 1.84 (tt, J = 7.7, 6.3 Hz, 2H), 2.29-2.45 (m, 6H), 2.63 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 7.18 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 7.19 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 7.27 (t, J = 7.3 Hz, 2H). 13C NMR (99 MHz, CDCl3) δ: 24.4, 25.9, 28.5, 33.7, 54.4, 58.3, 125.5, 128.0, 128.2, 142.1. GLC (カラム:TC-WAX;0.25 mm x 30 m、カラム温度:200 ℃、入力圧:60 kPa、保持時間:9.4 min)。
【0045】
実施例23:1-(3-フェニルプロピル)アゼパン−2−オンの還元
【化5】

アミドとして、1-(3-フェニルプロピル)アゼパン−2−オン(一般式3で、R1が3-フェニルプロピル基、R2が炭素数5の2価炭化水素基であるもの)(1124 マイクロリットル, 1156 mg, 5.0 mmol)をマイクロシリンジで加えたことを除き実施例20の反応手順を繰り返した。約1時間後に反応溶液は粘性が増し、ゲル状物質が生成した。そのまま15時間反応させると、最終的にテトラヒドロピラン等液状物で膨潤された橙色のゲル状反応物が得られた。反応物を5.0 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を10 mLのジエチルエーテルで7回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿で濾過して分離した。この抽出溶液をエバポレーターで濃縮した後、クーゲルロールで蒸留(150℃ / 0.05 Torr)することにより、1-(3-フェニルプロピル)アゼパン(864 mg, 80%)を得た。
得られたアミンは、1Hおよび13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認し、ガスクロマトグラフでその純度 (>98%) を確認した。1H NMR (396 MHz, CDCl3) δ: 1.55-1.71 (m, 8H), 1.81 (tt, J = 7.5, 6.3 Hz, 2H), 2.51 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.57-2.70 (m, 6H), 7.18 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.20 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.28 (dd, J = 7.7, 7.2 Hz, 2H). 13C NMR (99 MHz, CDCl3) δ: 26.9, 28.1, 29.4, 33.6, 55.4, 57.6, 125.5, 128.1, 128.3, 142.4. GLC (カラム:TC-WAX;0.25 mm x 30 m、カラム温度:250 oC、入力圧:60 kPa、保持時間:7.0 min)。
【0046】
実施例24:重合度の異なるメチルハイドロジェンポリシロキサンによる還元

メチルハイドロジェンポリシロキサン(式4で示される化合物、R5、R6がメチル基、cが0、dが10であるもの)(0.457g, Si-H = 6.0 mmol)を使用したことを除き実施例1の反応手順を繰り返した。N,N-ジメチル-3-フェニルプロピオンアミドをマイクロシリンジで加えた約40分後に、反応溶液は粘性が増し、その後すぐにゲル状物質が生成した。そのまま15時間反応させると、最終的にテトラヒドロピラン等液状物で膨潤された橙色のゲル状反応物が得られた。反応物を5.0 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を2 mLのジエチルエーテルで7回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿で濾過して分離した。この抽出溶液をエバポレーターで濃縮した後、1Hの核磁気共鳴スペクトルによりN,N-ジメチル-3-フェニルプロピルアミンの収率(84%)を決定した。
【0047】
実施例25:ハイドロジェンジメチルポリシロキサンによる還元

メチルハイドロジェンポリシロキサン(式1で示される化合物で、R5、R6がメチル基、cが20、dが20であるもの)(0.625g, Si-H = 4.4 mmol)を用いたことを除き、実施例1の手順を繰り返した。1Hの核磁気共鳴スペクトルによりN,N-ジメチル-3-フェニルプロピルアミンの収率(84%)を決定した。
【0048】
比較例1:ジメチルエチルシランによる還元

三方コックを付け、攪拌子を入れた2つ口の30 mLナス型フラスコを窒素置換した後、触媒AceRu3(CO)7を6.40 mg (9.8 x 10-3 mmol)と1,4−ジオキサン0.18 mL、ジメチルエチルシラン0.32 mL (2.4 mmol)を加えた。室温で30分間攪拌して触媒を溶解させた後、N,N-ジメチル-3-フェニルプロピオンアミド(0.168 mL (0.99 mmol)を加えた。溶液を6時間攪拌させた後、反応液をガスクロマトグラフィー分析したところ、未反応ジメチルエチルシランと、副生成物であるテトラメチルジエチルジシロキサンが検出された。そのため、これらの成分を除去するために、目的物と不純物との比が最大になるように還流比を取りながら蒸留を行なったが、得られたN,N-ジメチル-3-フェニルプロピルアミン121.0 mg の収率は75%(0.74 mmol)に留まった。
【0049】
比較例2:ジメチルフェニルシランによる還元

ジメチルエチルシランに代えて、ジメチルフェニルシラン0.326g(2.4mmol)を用いたことを除き、比較例1の反応手順を繰り返した。
6時間攪拌させた後、反応液をガスクロマトグラフィー分析したところ、未反応ジメチルフェニルシランと、副生成物であるテトラメチルジフェニルジシロキサン、ジメチルフェニルシラノールが検出された。これらは沸点が高く、しかも目的のアミンと沸点が近いため、蒸留によって目的物を得ることは困難であった。そのため、酢酸エチルを展開溶媒として用いて、シリカゲル充填カラムクロマトグラフィーを行なうことによって、目的物であるN,N-ジメチル-3-フェニルプロピルアミン121.0 mg (0.74 mmol, 75%)を得た。
【0050】
実施例26:メチルビス(3−フェニルプロピル)アミンの合成
【化6】

20 mLのシュレンクチューブにセプタムを付け、磁気攪拌子を加えて0.05 Torrで減圧しながら加熱乾燥した後、フラスコ内をアルゴン雰囲気に置換した。触媒として[(acenaphthylene)Ru3(CO)7] (前記式Aに示す化合物)(6.3 mg, 0.01mmol)をフラスコに加え、0.05 Torrで約5分減圧乾燥した後、再びアルゴン雰囲気に置換した。テトラヒドロピラン (0.7mL) をシリンジで加えて触媒を溶解した。この溶液にメチルハイドロジェンポリシロキサン(前記一般式(1)で、R5、R6がメチル基、cが0、dが25であり、Si-H = 4.4 mmol)(0.3 mL) をシリンジで加えて20 ℃で30分攪拌すると、濃橙色の溶液の色が多少うすく変化した。次にN-メチル‐3‐フェニルプロピオンアミド (163 mg, 1 mmol)を加えて30 ℃で攪拌した。基質を加えた直後発泡を生じた。約7時間後に反応溶液は粘性が増し、その後すぐに反応溶液はゲル化した。そのまま18時間反応させると、最終的には反応物は橙色のゲルとなった。反応物を5 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を2 mLのジエチルエーテルで10回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿でろ過して分離した。この抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、アルミナカラムクロマトグラフフィーで精製することにより、メチルビス(3−フェニルプロピル)アミン(63%)を得た。
得られたアミンは、1H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.85 (tt, J = 7.8, 7.6 Hz, 4H, PhCH2CH2), 2.29 (s, 3H, NCH3), 2.43 (t, J = 7.6 Hz, 4H, PhCH2), 2.69 (t, J = 7.8 Hz, 4H, NCH2), 7.20-4.40 (m, 10H, Ph). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 29.2, 33.8, 42.3, 57.3, 125.8, 128.4, 128.5, 142.5。
【0051】
実施例27:エチルビス(3−フェニルプロピル)アミンの合成
【化7】

アミドとして、N-エチル‐3‐フェニルプロピオンアミド(177 mg, 1 mmol)を加えたことを除き、実施例1の反応手順を繰り返した。基質を加えた直後発泡を生じた。約7時間後に反応溶液は粘性が増し、その後すぐに反応溶液はゲル化した。そのまま18時間反応させると、最終的には反応物は橙色のゲルとなった。反応物を5 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を2 mLのジエチルエーテルで10回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿でろ過して分離した。この抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、アルミナカラムクロマトグラフフィーで精製することにより、エチルビス(3−フェニルプロピル)アミン(64%)を得た。
得られたアミンは、1H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認した。1H NMR (396 MHz, CDCl3) δ: 0.99 (J = 7.2 Hz, 3H, NCH2CH3), 1.76 (tt, J = 7.7, 7.5 Hz, 4H, PhCH2CH2), 2.47 (t, J = 7.5 Hz, 4H, PhCH2CH2), 2.53 (q, J = 7.2 Hz, 2H, NCH2CH3), 2.62 (t, J = 7.7 Hz, 4H, PhCH2CH2CH2N), 7.14-7.32 (m, 10H, Ph). 13C NMR (99 MHz, CDCl3) δ: 11.8, 28.9, 33.9, 47.5, 53.1, 125.7, 128.3, 128.5, 142.5.
【0052】
実施例28:メチルビス(ベンジル)アミンの合成
【化8】

アミドとして、N-メチル‐ベンズアミド(135 mg, 1 mmol)を加え、70 ℃で反応したことを除き、実施例1の反応手順を繰り返した。基質を加えた直後発泡を生じた。約2時間後に反応溶液は粘性が増し、その後すぐに反応溶液はゲル化した。そのまま18時間反応させると、最終的には反応物は橙色のゲルとなった。反応物を5 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を2 mLのジエチルエーテルで10回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿でろ過して分離した。この抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、アルミナカラムクロマトグラフフィーで精製することにより、メチルビス(ベンジル)アミン(64%)を得た。
得られたアミンは、1H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認した。1H NMR (396 MHz, CDCl3) δ: 2.13 (s, 3H, NCH3), 3.47 (s, 4H, NCH2), 7.15-7.34 (m, 10H, Ph). 13C NMR (99 MHz, CDCl3) δ: 42.3, 62.0, 127.0, 128.3, 129.0, 139.4.
【0053】
実施例29:ベンジルビス(3−フェニルプロピル)アミンの合成
【化9】

アミドとして、N-ベンジル‐3‐フェニルプロピオンアミド(239 mg, 1 mmol)を加えたことを除き、実施例1の反応手順を繰り返した。基質を加えた直後発泡を生じた。約5時間後に反応溶液は粘性が増し、その後すぐに反応溶液はゲル化した。そのまま18時間反応させると、最終的には反応物は橙色のゲルとなった。反応物を5 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を2 mLのジエチルエーテルで10回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿でろ過して分離した。この抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、アルミナカラムクロマトグラフフィーで精製することにより、ベンジルビス(3−フェニルプロピル)アミン(73%)を得た。
得られたアミンは、1H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認した。1H NMR (396 MHz, CDCl3) δ: 1.79 (tt, J = 7.7, 7.2 Hz, 4H, PhCH2CH2), 2.48 (t, J = 7.2 Hz, 4H, PhCH2CH2), 2.61 (t, J = 7.7 Hz, 4H, PhCH2CH2CH2N), 3.57 (s, 2H, NCH2Ph), 7.09-7.39 (m, 15H, Ph). 13C NMR (99 MHz, CDCl3) δ: 29.1, 33.8, 53.5, 58.8, 125.7, 126.8, 128.2, 128.3, 128.5, 129.0, 140.2, 142.7.
【0054】
実施例30:メチルビス(シクロヘキシルメチル)アミンの合成
【化10】

アミドとして、N-メチル‐シクロヘキサンカルボアミド(155 mg, 1 mmol)を加え、60 ℃で反応したことを除き、実施例1の反応手順を繰り返した。基質を加えた直後発泡を生じた。約2時間後に反応溶液は粘性が増し、その後すぐに反応溶液はゲル化した。そのまま18時間反応させると、最終的には反応物は橙色のゲルとなった。反応物を5 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を2 mLのジエチルエーテルで10回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿でろ過して分離した。この抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、アルミナカラムクロマトグラフフィーで精製することにより、メチルビス(シクロヘキシルメチル)アミン(60%)を得た。
得られたアミンは、1H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認した。1H NMR (396 MHz, CDCl3) δ: 0.74-1.30 (m, 4H, Cy-CH2), 1.09-1.30 (m, 6H, Cy-CH2), 1.42 (m, 2H, NCH2CH2Cy), 1.60-1.84 (m, 10H, Cy-CH2), 2.03 (d, J = 6.8 Hz, 4H, NCH2), 2.12 (s, 3H, NCH3). 13C NMR (99 MHz, CDCl3) δ: 26.2, 27.0, 31.9, 35.9, 43.7, 65.7.
【0055】
実施例31:ベンジルジエチルアミンの合成
【化11】

アミドとして、N-ベンジル‐アセトアミド(149 mg, 1 mmol)を加えたことを除き、実施例1の反応手順を繰り返した。基質を加えた直後発泡を生じた。そのまま18時間反応させると、最終的には反応物は橙色のゲルとなった。反応物を5 Torrの減圧下で15分濃縮乾燥した。得られた固形残渣に含まれる生成物を2 mLのジエチルエーテルで10回抽出し、その抽出液に少量含まれる架橋した細かいゲル状物質を除く為に、綿でろ過して分離した。この抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮した後、アルミナカラムクロマトグラフフィーで精製することにより、メチルビス(シクロヘキシルメチル)アミン(70%)を得た。
得られたアミンは、1H及び13Cの核磁気共鳴スペクトルによりその構造を確認した。1H NMR (396 MHz, CDCl3) δ: 1.05 (t, J = 7.2 Hz, 6H, NCH2CH3), 2.53 (q, J = 7.2 Hz, 4H, NCH2CH3), 3.57 (s, 2H, NCH2Ph), 7.20-7.39 (m, 5H, Ph). 13C NMR (99 MHz, CDCl3) δ: 11.8, 46.8, 57.6, 126.7, 128.2, 129.0, 140.1.
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の方法によれば、還元剤と触媒とを同時に且つ容易に除去することができ、穏和な反応条件下で、高純度の目的物を簡便に且つ高収率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1で生成されたゲル状物の29Si NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)アミド化合物を、遷移金属触媒の存在下で、分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも1つ有するポリマーによって還元し、この際に酸化された該ポリマーはゲル状乃至固体状物質となる工程、次いで、
(2)前記ゲル状乃至固体状物質を除去する工程、
を含むことを特徴とするアミン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)で溶媒が使用され、前記工程(2)が、
(2−1)前記溶媒を除去する工程、次いで、
(2−2)残留物からアミン化合物を溶媒抽出する工程、
を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(2−2)の後に、
(2−3)工程(2−2)で得られた抽出溶液を濾過する工程、次いで、
(2−4)濾液から抽出溶媒を除去する工程、
をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマーが、下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の方法

ここで、Meはメチル基を表し、c及びdは夫々5〜30の整数である。
【請求項5】
遷移金属触媒が、下記式(A)または下記式(B)で示されるルテニウムカルボニル錯体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。


【請求項6】
(1)下記式(7)で表されるアミド化合物を、遷移金属触媒の存在下で、分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも1つ有するポリマーによって還元し、下記式(8)で表される3級アミン化合物を合成し、この際に酸化された該ポリマーはゲル状乃至固体状物質となる工程、次いで、


(2)前記ゲル状乃至固体状物質を除去する工程、
を含むことを特徴とする3級アミン化合物の製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)で溶媒が使用され、前記工程(2)が、
(2−1)前記溶媒を除去する工程、次いで、
(2−2)残留物からアミン化合物を溶媒抽出する工程、
を含むことを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記工程(2−2)の後に、
(2−3)工程(2−2)で得られた溶液を濾過し、又はカラムクロマトグラフィーに付する工程、次いで、
(2−4)濾液又は溶出液から溶媒を除去する工程、
をさらに含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項記載の方法

ここで、Meはメチル基を表し、c及びdは夫々5〜30の整数である。
【請求項10】
遷移金属触媒が、下記式(A)で示されるルテニウムカルボニル錯体であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項記載の方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−282651(P2006−282651A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267569(P2005−267569)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】