説明

アミド化合物

【課題】17βHSD type 5の関与する疾患の治療用医薬組成物の有効成分として有用な化合物を提供する。
【解決手段】本発明者らは、17βHSD type 5の関与する疾患の治療剤について検討し、環状アミノ基上にヒドロキシアルキル基を有するアミド化合物が強力な17βHSD type 5阻害活性を有することを確認し、本発明を完成した。本発明のアミド化合物は、前立腺肥大症及び前立腺癌等の17βHSD type 5の関与する疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物の有効成分として使用しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物、例えば前立腺肥大症や前立腺癌治療用医薬組成物の有効成分として有用なアミド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺肥大症(Benign Prostatic Hyperplasia:BPH)は主に50歳以上の高齢男性に出現する排尿障害を伴う疾患であり、加齢と共に発症頻度が増加する。日本におけるBPH患者数は、人口構成の急速な高齢化に伴い、近年増加の一途をたどっている。BPHは、その排尿障害により高齢男性の生活の質を著しく低下させ、また泌尿器診療において最も多く診断・治療されることから医療経済的にも重要な疾患である。
BPHに伴う排尿障害の原因として、前立腺の肥大による直接的な尿道圧迫(機械的閉塞)と、交感神経を介した前立腺平滑筋の過剰収縮による尿道内圧の上昇(機能的閉塞)の2つの要因が同時に関与することが明らかになっている。薬物療法はその両方の機序に対応可能であり、機械的閉塞には5α還元酵素阻害薬、機能的閉塞にはα1交感神経遮断薬(α1遮断薬)が主に用いられている。5α還元酵素阻害薬は、5α還元酵素によるテストステロンからより強力なアンドロゲンである5αデヒドロテストステロン(DHT)への変換抑制に基づく抗アンドロゲン作用により、前立腺を退縮させる。しかし退縮するのは前立腺上皮のみであり、薬効発現までに長期間(数週間から数ヶ月)を必要とする。一方α1遮断薬は投与後速やかに薬効が発揮され、安全性にも優れていることから、現在はα1遮断薬がBPH治療の第一選択薬となっている。しかし長期の臨床試験の結果、5α還元酵素阻害薬はα1遮断薬単独の場合に比べて侵襲的治療への移行を有意に遅延させたことなどから(The New England Journal of Medicine, 2003, 349, 2387-2398)、近年5α還元酵素阻害薬の有用性が再認識されつつある。
【0003】
前立腺内のDHTは、精巣で産生されて内分泌的に前立腺へ供給されたテストステロンから5α還元酵素により生成されると考えられてきた。しかし近年、前立腺内のDHT及びその前駆体であるテストステロンの約半分は、前立腺の細胞内で副腎由来ステロイドのデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)から合成されていることが報告されている(Frontier in Neuroendocrinology, 2001, 22, 185-212)。このような性ホルモン標的臓器の細胞内における性ホルモン産生系はintracrinologyと呼ばれている。
5α還元酵素阻害薬では、この前立腺局所におけるテストステロン合成(intracrineなテストステロン合成)を阻害することは困難である。例えば5α還元酵素阻害薬であるフィナステリド(finasteride)投与後のBPH患者において、前立腺内DHT濃度は投与前の約20%に低下したのに対して、前駆体である前立腺内テストステロン濃度は4倍に上昇したという報告がある(The Journal of Urology, 1999, 161, 332-337)。つまり5α還元酵素阻害薬は前立腺内DHT濃度抑制効果を有するが、前立腺内テストステロン濃度抑制効果はなく、逆に濃度を上昇させてしまう。テストステロンはDHTの半分程度のアンドロゲン受容体結合活性を有するため、この前立腺局所におけるテストステロン濃度上昇が、フィナステリドのBPHに対する不十分な薬効の一因とも考えられている。
【0004】
前立腺癌においても、外科的去勢術や性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬による抗アンドロゲン療法が用いられている。これらの抗アンドロゲン療法によっても、前立腺内のテストステロン濃度抑制効果は不十分であることが報告されている。例えば上記の抗アンドロゲン療法を行った前立腺癌患者において、血中テストステロン濃度は治療前の約10%程度に低下したのに対して、前立腺内DHT濃度は半分程度残存していた(The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, 1995, 80, 1066-1071)。これはすなわち前立腺内テストステロン濃度も十分に低下していないことを示唆している。また抗アンドロゲン療法後に再燃した前立腺癌(Hormone Refractory Prostate Cancer)においても、アンドロゲン受容体は核に局在しており、再燃前立腺癌組織のテストステロン濃度と正常前立腺のテストステロン濃度の間には有意な差が見られなかった(Clinical Cancer Research, 2004, 10, 440-448)。これらの報告は、再燃前立腺癌治療において既存の治療法では前立腺内テストステロン濃度低下作用はまったく不十分であり、前立腺内テストステロン合成機構、すなわち前立腺のintracrineなテストステロン合成の抑制が前立腺癌治療の新たな標的となりうることを強く示唆している。
上記の公知技術より、前立腺のintracrineなテストステロン合成阻害剤は、前立腺内テストステロン濃度低下作用を有し、かつ血中テストステロン濃度低下作用がないことから、(1)前立腺内のテストステロン濃度のみならずDHT濃度も低下させ、(2)精巣由来である血中テストステロン濃度の抑制による副作用を回避出来る、非常に魅力的なBPH治療薬及び/又は前立腺癌治療薬となることが期待される。
【0005】
テストステロンの生合成において、17β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素(17β-hydroxysteroid dehydrogenase:17βHSD)は必須である。17βHSDにはいくつかのサブタイプが存在するが、ヒト前立腺では17βHSDタイプ5(17βHSD type 5)が高発現しており、前立腺癌及び再燃前立腺癌での発現上昇も報告されている(Steroids, 2004, 69, 795-801;Cancer Research, 2006, 66, 2815-2825)。一方血中のテストステロンは、そのほぼ全てが精巣で17βHSDタイプ3(17βHSD type 3)により生成されており、17βHSD type 3は前立腺を含む他の組織での発現がほとんど見られない(Nature Genetics, 1994, 7, 34-39)。したがって前立腺のintracrineなテストステロン合成は17βHSD type 5が担っていると考えられ、17βHSD type 5選択的阻害剤により前立腺のintracrineなテストステロン合成が選択的に抑制されることが期待される。また、乳腺などエストロゲン依存性組織においても17βHSD type 5の寄与は指摘されており、乳癌などエストロゲン依存性疾患においても効果が期待される(Endocrine Reviews, 2003, 24, 152-182)。また、アルド−ケトリダクターゼ(AKR)のサブタイプであるAKR1C3(17βHSD type 5の別名)が、Polycyclic Aromatic Hydrocarbon(PAH)を代謝して活性酸素種(ROS)を産生すること(The Journal of Biological Chemistry, 2002, 277 (27), 24799-24808)、酸化ストレスに関連するAKR1C3遺伝子の1塩基多型(SNP)が肺癌のリスクと相関すること(Carcinogenesis, 2004, 25 (11), 2177-2181)が報告されている。すなわち肺におけるAKR1C3の活性は、PAHからのROSの生成を介して肺癌のリスクを高めることが示唆され、17βHSD type 5の選択的阻害剤は、肺癌に対しても効果が期待される。
【0006】
17βHSD type 5阻害剤としては、ステロイド誘導体(特許文献1)やFlufenamic acidやインドメタシン等のNSAIDs(Non-steroidal Anti-Inflammatory Drugs)(非特許文献1)、桂皮酸誘導体(非特許文献2)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO99/046279号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cancer Research, 2004, 64, 1802-1810
【非特許文献2】Molecular and Cellular Endocrinology, 2006, 248, 233-235
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、医薬組成物、例えば17βHSD type 5の関与する疾患の治療剤として有用な化合物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、17βHSD type 5の関与する疾患の治療剤として有用な化合物について鋭意検討した結果、環状アミノ基上にヒドロキシアルキル基を有するアミド化合物が、強力な17βHSD type 5阻害活性を有すること、並びに、テストステロン減少による副作用を伴わない、前立腺肥大症及び前立腺癌等の17βHSD type 5の関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤となりうることを知見して本発明を完成した。
即ち、本発明は、式(I)の化合物又はその塩、並びに、式(I)の化合物又はその塩、及び賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【0011】
【化1】

(式中、
環Aは、
【化2】

から選択され、さらに、G群から選択される1〜4個の基で置換されていてもよく、
G群は、R0、O-R0、OH、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、オキソ、O-R00-シクロアルキル、CO-R0、CO-シクロアルキル、NH2、NHR0、N(R0)2、R00-NH2、R00-NHR0、R00-N(R0)2、O-R00-NH2、O-R00-NHR0、O-R00-N(R0)2、或いは、それぞれ環上にP群から選択される1〜5個の基を有していてもよい、アリール、CH2CH2-アリール、CH=CH-アリール、CH2-O-アリール、CO-アリール、CO-R00-アリール、O-R00-アリール、ヘテロアリール、CH2CH2-ヘテロアリール、CH=CH-ヘテロアリール、CH2-O-ヘテロアリール、CO-ヘテロアリール、CO-R00-ヘテロアリール、又は、O-R00-ヘテロアリール;
P群は、R0、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、O-R0、OH、O-ハロゲノ低級アルキル、S-ハロゲノ低級アルキル、O-R00-アリール、CN、NH2、NHR0、N(R0)2、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、O-CH2-O及びO-(CH2)2-Oであり;
R1、R2、及びR3は、同一又は互いに異なって、H又はR0;或いは、R1とR2が一体となってC2-5アルキレンを形成してもよく;
R0は、低級アルキルであり;
R00は、低級アルキレンであり;
Xは、R00又はO-R00であり;
Yは、単結合又は-CH=CH-であり;
nは、1〜5の整数を示す。)
なお、特に記載がない限り、本明細書中のある化学式中の記号が他の化学式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
【0012】
また、本発明は式(I)の化合物又はその塩を含有する17βHSD type 5の関与する疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物に関する。なお、この医薬組成物は式(I)の化合物又はその塩を含有する17βHSD type 5の関与する疾患の予防又は治療剤を包含する。
また、本発明は17βHSD type 5の関与する疾患を治療及び/又は予防するための医薬組成物を製造するための式(I)の化合物又はその塩の使用に関する。更に、本発明は17βHSD type 5の関与する疾患を治療及び/又は予防するため使用される式(I)の化合物又はその塩にも関する。
また、本発明は式(I)の化合物又はその塩の有効量を対象に投与することからなる、17βHSD type 5の関与する疾患の治療及び/又は予防方法に関する。なお、「対象」とは、その予防又は治療を必要とするヒト又はその他の動物であり、ある態様としては、その予防又は治療を必要とするヒトである。
【0013】
また、本発明は式(I)の化合物又はその塩を含有する17βHSD type 5の阻害剤に関する。
また、本発明は式(I)の化合物若しくはその塩、及び製薬学的に許容される担体、溶剤、若しくは賦形剤を混合する工程を含む、17βHSD type 5の関与する疾患の予防若しくは治療用医薬組成物を生産する方法に関する。
また、本発明は式(I)の化合物又はその塩を含有する医薬組成物、及び、式(I)の化合物又はその塩が、17βHSD type 5の関与する疾患の治療及び/又は予防するために使用され得る又は使用されるべき旨の記載を含むコマーシャルパッケージに関する。
【発明の効果】
【0014】
式(I)の化合物は、17βHSD type 5阻害活性を有し、17βHSD type 5の関与する疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物の有効成分として使用しうる。例えば、アンドロゲンに関連する疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物の有効成分として使用しうる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「アルキル」及び「アルキレン」とは、特に断らない限り、直鎖又は分枝状の炭化水素鎖を意味する。
「低級アルキル」とは、直鎖又は分枝状の炭素数が1から6(以後、C1-6と略す)のアルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等である。別の態様としては、C1-4アルキルであり、更に別の態様としては、C1-3アルキルであり、また更に別の態様としては、メチルである。
「低級アルキレン」とは、直鎖又は分枝状のC1-6のアルキレン、例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、プロピレン、メチルメチレン、エチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、1,1,2,2-テトラメチルエチレン等である。別の態様としては、C1-4アルキレンであり、さらに別の態様としては、メチレン、エチレンであり、またさらに別の態様としては、メチレンである。
【0016】
「ハロゲン」は、F、Cl、Br、Iを意味する。
「ハロゲノ低級アルキル」とは、1個以上のハロゲンで置換された、C1-6アルキルである。別の態様としては、1〜5個のハロゲンで置換された低級アルキルであり、さらに別の態様としては、1〜5個のFで置換されたC1-3アルキルであり、またさらに別の態様としては、トリフルオロメチルである。
「シクロアルキル」とは、C3-10の飽和炭化水素環基であり、架橋を有していてもよい。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル等である。別の態様としては、C3-8シクロアルキルであり、さらに別の態様としては、C3-6シクロアルキルであり、またさらに別の態様としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルである。
「アリール」とは、C6-14の単環〜三環式芳香族炭化水素環基であり、C5-8シクロアルケンとその二重結合部位で縮合した環基を包含する。例えば、フェニル、ナフチル、1-テトラヒドロナフチル、5-テトラヒドロナフチル、1-インダニル、4-インデニル、1-フルオレニル等である。別の態様としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニルであり、さらに別の態様としては、フェニルである。
【0017】
「ヘテロ環」として以下の態様が挙げられる。
(1)単環式飽和へテロ環
(a)1〜4個の窒素原子を含むもの、例えば、アゼパニル、ジアゼパニル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジル、ピラゾリジニル、ピペラジニル、アゾカニル等;
(b)1〜3個の窒素原子、ならびに1〜2個の硫黄原子および/または1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、チオモルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル等;
(c)1〜2個の硫黄原子を含むもの、例えば、テトラヒドロチオピラニル等;
(d)1〜2個の硫黄原子および1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、オキサチオラニル等;
(e)1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、オキシラニル、オキセタニル、ジオキソラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、1,4-ジオキサニル等;
【0018】
(2)単環式不飽和へテロ環基
(a)1〜4個の窒素原子を含むもの、例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジ二ル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、ジヒドロトリアジニル、アゼピニル等;
(b)1〜3個の窒素原子、ならびに1〜2個の硫黄原子および/または1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ジヒドロチアジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサジニル等;
(c)1〜2個の硫黄原子を含むもの、例えば、チエニル、チエピニル、ジヒドロジチオピラニル、ジヒドロジチオニル等;
(d)1〜2個の硫黄原子および1〜2個の酸素原子を含むもの、具体的には、ジヒドロオキサチオピラニル等;
(e)1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、フリル、ピラニル、オキセピニル、ジオキソリル等;
【0019】
(3)縮合多環式飽和へテロ環基
(a)1〜5個の窒素原子を含むもの、例えば、キヌクリジニル、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、3-アザビシクロ[3.2.2]ノナニル等;
(b)1〜4個の窒素原子、ならびに1〜3個の硫黄原子および/または1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、トリチアジアザインデニル、ジオキソロイミダゾリジニル等;
(c)1〜3個の硫黄原子および/または1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、2,6-ジオキサビシクロ[3.2.2]オクト-7-イル等;
【0020】
(4)縮合多環式不飽和へテロ環基
(a)1〜5個の窒素原子を含むもの、例えば、インドリル、イソインドリル、テトラヒドロインドリル、インドリニル、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、テトラヒゾロベンゾイミダゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ベンゾピラゾリル、テトラヒドロベンゾピラゾリル、ピロロピリジル、インダゾリル、イミダゾピリジル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル、カルバゾリル、アクリジニル、キノキサリニル、ジヒドロキノキサリニル、テトラヒドロキノキサリニル、フタラジニル、ジヒドロインダゾリル、ベンゾピリミジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、シンノリニル等;
(b)1〜4個の窒素原子、ならびに1〜3個の硫黄原子および/または1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、ベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イミダゾチアゾリル、イミダゾチアジアゾリル、フロピロリル、チエノピロリル、ベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル等;
(c)1〜3個の硫黄原子を含むもの、例えば、ベンゾチエニル、ベンゾジチオピラニル、ジベンゾ[b,d]チエニル等;
(d)1〜3個の硫黄原子および1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、ベンゾオキサチオピラニル、フェノキサジニル等;
(e)1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロマニル、クロメニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル等;
など。
【0021】
「含窒素へテロ環」とは、上記の「へテロ環」のうち、(1)(a)、(1)(b)、(2)(a)、(2)(b)、(3)(a)、(3)(b)、(4)(a)及び(4)(b)等のように、少なくとも1個の窒素原子を含んでいるものをいう。
「ヘテロアリール」とは、上記の「へテロ環」の(2)及び(4)のうち、芳香族性を有するヘテロ環基であり、例えば、ピリジル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、テトラゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チエニル、フリル等の単環式ヘテロアリール、インドリル、イソインドリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジニル等の二環式ヘテロアリール、カルバゾリル、ジベンゾ[b,d]フラニル、ジベンゾ[b,d]チエニル等の三環式ヘテロアリールであり、別の態様としては、ピリジル、ピロリル、ピラゾリル、チエニル、フリル、インドリル、3,4-ジヒドロ-2H-1,4-ベンゾキサジニルである。
「ヘテロシクロアルキル」とは、上記の「へテロ環」の(1)及び(3)のように、環原子間の結合が単結合のみからなるヘテロ環基であり、例えば、ピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニルであり、別の態様としてはモルホリニルである。
【0022】
「17βHSD type 5阻害」のある態様としては「17βHSD type 5選択的阻害」である。「17βHSD type 5選択的阻害」とは、17βHSD type 5に対する阻害活性が17βHSD type 3に対する阻害活性よりも強いことを意味し、ある態様としては、IC50値において3倍以上、好ましくは10倍以上、更に好ましくは100倍以上の差異があることを意味する。
本明細書において、「置換されていてもよい」とは、無置換、若しくは1〜5個の同一又は異なる置換基で置換されていることを意味する。なお、複数個の置換基がある場合、それらの置換基は同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0023】
本発明のある態様を以下に示す。
(1)環Aのある態様としては置換基を有していてもよい単環基であり、別の態様としては置換基を有していてもよい二環基である。
ここに、環Aが単環のとき、環Aのある態様としては(i)それぞれ環上にP群から選択される1〜5個の基を有していてもよい、アリール、CO-アリール、CO-R00-アリール、O-R00-アリール、ヘテロアリール、CO-ヘテロアリール、CO-R00-ヘテロアリール、及び、O-R00-ヘテロアリールから選択される基を1個有し、更に、R0、O-R0、ハロゲン、オキソ、O-R00-シクロアルキル、CO-R0及びCO-シクロアルキルから選択される1〜3個の基を有してもよい環基であり;別の態様としては(ii)それぞれ環上にP群から選択される1〜3個の基を有していてもよい、アリール、CO-アリール、CO-R00-アリール、及び、ヘテロアリールから選択される基を1個有し、更に、R0、O-R0、ハロゲン、オキソ、O-R00-シクロアルキル、CO-R0及びCO-シクロアルキルから選択される1〜3個の基を有してもよい環基であり;更に別の態様としては(iii)それぞれ環上にP群から選択される1〜3個の基を有していてもよい、アリール、及び、ヘテロアリールから選択される基を1個有し、更に、R0、O-R0、ハロゲン、O-R00-シクロアルキル、CO-R0及びCO-シクロアルキルから選択される1〜3個の基を有してもよい環基である。単環である環Aとしては、例えば、ピリジル、ピロリル、ピラゾリル、チエニル、フェニルが挙げられる。
また、環Aが二環基のとき、環Aのある態様としては(i)R0、O-R0、OH、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、オキソ、O-R00-シクロアルキル、CO-R0、CO-シクロアルキル、並びに、それぞれ環上にP群から選択される1〜5個の基を有していてもよい、CH2CH2-アリール、CH=CH-アリール、CH2-O-アリール、CO-アリール、CO-R00-アリール、O-R00-アリール、CH2CH2-ヘテロアリール、CH=CH-ヘテロアリール、CH2-O-ヘテロアリール、CO-ヘテロアリール、CO-R00-ヘテロアリール、及び、O-R00-ヘテロアリールから選択される1〜4個の基で置換されていてもよい環基であり;別の態様としては(ii)R0、O-R0、OH、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、オキソ、O-R00-シクロアルキル、CO-R0、及び、CO-シクロアルキルから選択される1〜4個の基で置換されていてもよい環基であり;更に別の態様としては(iii)R0、O-R0、ハロゲン、オキソ、O-R00-シクロアルキル、CO-R0、及び、CO-シクロアルキルから選択される1〜4個の基で置換されていてもよい環基である。二環である環Aとしては、例えば、インドリル、テトラヒドロインドリル、インドリニル、ベンゾイミダゾリル、イソキノリル、テトラヒドロベンゾピラゾリル、ピロロピリジル、フロピロリル、チエノピロリルが挙げられる。
P群のある態様としては、R0、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、O-R0、O-ハロゲノ低級アルキル、S-ハロゲノ低級アルキル、CN、N(R0)2、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、O-CH2-O及びO-(CH2)2-Oである。
【0024】
(2)R1及びR2のある態様としては、同一又は互いに異なって、H又はR0であり、別の態様としては、H又はC1-3アルキルであり、更に別の態様としては、C1-3アルキルであり、更に別の態様としては、メチル又はエチルである。
(3)R3のある態様としては、H又はC1-3アルキルであり、更に別の態様としては、Hである。
(4)nのある態様としては、2〜4であり、別の態様としては3であり、更に別の態様としては1である。また、nが3〜4のとき、R1〜R3を有する基は、当該nを含む環のN原子に対し、4位に置換するのが好ましく、nが1又は2のときは3位に置換するのが好ましい。
(5)Xのある態様としては、メチレン、エチレン又はO-CH2であり、別の態様としてはメチレン又はO-CH2であり、更に別の態様としてはメチレンである。
(6)Yのある態様としては、単結合であり、別の態様としては-CH=CH-である。
【0025】
本発明の式(I)の化合物のある態様としては、上記(1)〜(6)に記載の基の態様の1以上の組合せからなる化合物であり、具体的には、例えば以下の組合せが挙げられる。
(7)R3がHであり、Yが単結合である化合物。
(8)nが1であり、XがO-CH2である(7)に記載の化合物。
(9)nが3であり、Xがメチレンである(7)に記載の化合物。
(10)nが3であり、Xがエチレンである(7)に記載の化合物。
(11)環Aが置換基を有していてもよい単環基である(7)〜(10)に記載の化合物。
(12)環Aがそれぞれ置換基を有していてもよい、イミダゾリル、ピロリル及びピラゾリルから選択される基である(11)に記載の化合物。
(13)環Aが置換基を有していてもよい二環基である(7)〜(10)に記載の化合物。
(14)環Aがそれぞれ置換基を有していてもよい、テトラヒドロインドリル、インドリニル、ベンゾイミダゾリル、テトラヒドロベンゾピラゾリル、ピロロピリジル、フロピロリル及びチエノピロリルから選択される基である(13)に記載の化合物。
(15)R1及びR2がメチルである(7)〜(14)に記載の化合物。
(16)R1及びR2がエチルである(7)〜(14)に記載の化合物。
【0026】
本発明に包含される具体的化合物の例として、以下の化合物が挙げられる。
1-[1-(1H-ベンズイミダゾール-2-イルカルボニル)ピペリジン-4-イル]-2-メチルプロパン-2-オール、
2-メチル-1-[1-(1H-ピロロ[3,2-c]ピリジン-2-イルカルボニル)ピペリジン-4-イル]プロパン-2-オール、
1-{1-[(5-エトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)カルボニル]ピペリジン-4-イル}-2-メチルプロパン-2-オール、
1-{1-[(5-メトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)カルボニル]ピペリジン-4-イル}-2-メチルプロパン-2-オール、
1-{1-[(2-クロロ-4H-フロ[3,2-b]ピロール-5-イル)カルボニル]ピペリジン-4-イル}-2-メチルプロパン-2-オール、
1-(1-{[5-(シクロプロピルメトキシ)-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-2-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)-2-メチルプロパン-2-オール、
2-[1-(1H-ベンズイミダゾール-2-イルカルボニル)ピペリジン-4-イル]エタノール、
1-{1-[(5-クロロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)カルボニル]ピペリジン-4-イル}-2-メチルプロパン-2-オール、
(5-{[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)ピペリジン-1-イル]カルボニル}-1H-ピロール-3-イル)(フェニル)メタノン、
1-(1-{[3-(4-フルオロフェニルl)-1H-ピラゾール-5-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)-2-メチルプロパン-2-オール、
2-メチル-1-[1-({3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1H-ピラゾール-5-イル}カルボニル)ピペリジン-4-イル]プロパン-2-オール、
1-{1-[(3-ビフェニル-4-イル-1H-ピラゾール-5-イル)カルボニル]ピペリジン-4-イル}-2-メチルプロパン-2-オール、及び
2-メチル-1-[1-({3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1H-ピラゾール-5-イル}カルボニル)ピペリジン-4-イル]プロパン-2-オール。
【0027】
式(I)の化合物のいくつかは、置換基の種類によって、互変異性体や幾何異性体が存在しうる。本明細書中、式(I)の化合物が異性体の一形態のみで記載されることがあるが、本発明は、それ以外の異性体も包含し、異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
また、式(I)の化合物のいくつかは、不斉炭素原子や軸不斉を有する場合があり、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明は、式(I)の化合物の光学異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
【0028】
さらに、本発明は、式(I)で示される化合物の製薬学的に許容されるプロドラッグも包含する。製薬学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等に変換されうる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161(1985)や、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0029】
また、式(I)の化合物の塩とは、式(I)の化合物の製薬学的に許容される塩であり、置換基の種類によって、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合がある。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩、アセチルロイシン等の各種アミノ酸又はアミノ酸誘導体との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
【0030】
さらに、本発明は、式(I)の化合物及びその塩の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質も包含する。また、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
【0031】
(製造法)
式(I)の化合物及びその塩は、その基本構造あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料から中間体へ至る段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)で保護しておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような保護基としては、例えば、ウッツ(P. G. M. Wuts)及びグリーン(T. W. Greene)著、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis (第4版、2006年)」に記載の保護基等を挙げることができ、反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行ったあと、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を製造することができる。
また、式(I)の化合物のプロドラッグは、上記保護基と同様、原料から中間体へ至る段階で特定の基を導入、あるいは得られた式(I)の化合物を用いてさらに反応を行うことで製造することができる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者に公知の方法を適用することにより行うことができる。
以下、式(I)の化合物の代表的な製造法を説明する。各製法は、当該説明に付した参考文献を参照して行うこともできる。なお、本発明の製造法は以下に示した例には限定されない。
【0032】
(第1製法)
【化3】

本発明化合物(I)は、化合物(1)と化合物(2)との反応により得ることができる。
この反応では、化合物(1)と化合物(2)とを等量若しくは一方を過剰量用い、これらの混合物を、縮合剤の存在下、反応に不活性な溶媒中、冷却下から加熱下、好ましくは-20℃〜60℃において、通常0.1時間〜5日間撹拌する。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン若しくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、アセトニトリル又は水、及びこれらの混合物が挙げられる。縮合剤の例としては、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1,1'-カルボニルジイミダゾール、ジフェニルリン酸アジド、オキシ塩化リンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。添加剤(例えば1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)を用いることが反応に好ましい場合がある。トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン若しくはN-メチルモルホリン等の有機塩基、又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム若しくは水酸化カリウム等の無機塩基の存在下で反応を行うことが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
また、カルボン酸(1)を反応性誘導体へ変換した後にアミン(2)と反応させる方法も用いることができる。カルボン酸の反応性誘導体の例としては、オキシ塩化リン、塩化チオニル等のハロゲン化剤と反応して得られる酸ハロゲン化物、クロロギ酸イソブチル等と反応して得られる混合酸無水物、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等と縮合して得られる活性エステル等が挙げられる。これらの反応性誘導体と化合物(2)との反応は、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類等の反応に不活性な溶媒中、冷却下〜加熱下、好ましくは、-20℃〜60℃で行うことができる。
【0033】
(第2製法)
【化4】

R1がOHである本発明化合物(I-a)は、対応するエステル化合物(3)より得ることができる。即ち、エステル化合物(3)を還元することによりR2及びR3がHである化合物が、エステル化合物(3)をGrignard反応に付すことによりR2及びR3が低級アルキルである化合物が製造できる。
この反応では、化合物(3)に対し還元剤又はGrignard試薬を等量若しくは過剰量用い、反応に不活性な溶媒中、冷却下から加熱下、好ましくは-20℃〜室温下において、通常0.1時間〜5日間撹拌する。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、及びこれらの混合物が挙げられる。還元剤の例としては、水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウムナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化リチウム トリ-tert-ブトキシアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。またGrignard試薬の例としては、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミドプロピルマグネシウムブロミド等が挙げられ、例えばSynthesis 1983, 12, 1030-1031に記載の方法が適用できる。
【0034】
(その他の製法)
種々の本発明化合物(I)は、本発明化合物(I)を原料として、当業者が通常行う、アミド化、酸化、還元、加水分解、アルキル化、縮合反応、置換反応等を用いて適宜製造することができる。
例えば、R1がOR0である化合物は、R1がOHである化合物をO-アルキル化反応に付すことにより製造できる。
【0035】
(原料合成)
原料化合物(1)は公知の反応により容易に製造できる。例えば、下記反応が適用できる。
【0036】
【化5】

化合物(1a)のエステル体(6)は、化合物(4)をカリウム t-ブトキシド等の塩基存在下、シュウ酸ジエチル等と縮合し、得られた化合物のニトロ基を還元することにより得られる。ニトロ基の還元は、ラネーニッケルやパラジウム炭素等の触媒存在での接触還元、または鉄を用いた還元が適用できる。
【0037】
【化6】

化合物(1b)のエステル体(9)は、化合物(7)をエチルアジドアセテート等と縮合反応に付すことにより得られる。
【0038】
【化7】

化合物(1c)は、アセトフェノン(9)にシュウ酸ジエチル等を縮合させた後、含水ヒドラジンを加熱下作用させ、生じたエステル体を加水分解することにより得られる。
【0039】
【化8】

原料化合物(3)は、原料化合物(10)及び(1)の反応により製造できる。反応条件は前記第1製法に準じて行うことができる。
【0040】
【化9】

(式中、P1はアミノ基の保護基を示す。)
原料化合物(2a)は、化合物(11)の還元又はGrignard反応により得られる化合物(12)の脱保護により得ることができる。また、化合物(11)を脱保護することにより化合物(10)が得られる。
【0041】
式(I)の化合物は、遊離化合物、その塩、水和物、溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として単離され、精製される。式(I)の化合物の塩は、常法の造塩反応に付すことにより製造することもできる。
単離、精製は、抽出、分別結晶化、各種分画クロマトグラフィー等、通常の化学操作を適用して行われる。
各種の異性体は、適当な原料化合物を選択することにより製造でき、あるいは異性体間の物理化学的性質の差を利用して分離することができる。例えば、光学異性体は、ラセミ体の一般的な光学分割法(例えば、光学活性な塩基又は酸とのジアステレオマー塩に導く分別結晶化や、キラルカラム等を用いたクロマトグラフィー等)により得られ、また、適当な光学活性な原料化合物から製造することもできる。
【0042】
試験例
本発明化合物のヒト17βHSD type 5の阻害活性及び17βHSD type 3阻害活性は、以下に示す試験方法により確認した。詳細な試験手順は、Maniatis,T.ら、Molecular Cloning-A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory, NY (1982)等を参考にすることができる。また、下記1及び2に記載のヒト17βHSD type 5及びtype 3をコードする遺伝子及び17βHSD type 5及びtype 3は、Molecular Endocrinology 1997, 11 (13), 1971-1984に記載の方法によっても得ることができる。
【0043】
1.ヒト17βHSD type 5をコードする遺伝子の単離及び酵素精製
本発明の薬理試験に用いるヒト17βHSD type 5をコードする全長cDNAは、ヒト肺癌由来細胞株のA549細胞由来のcDNAをテンプレートとしてPCR法により取得した。得られたcDNAの塩基配列はジデオキシターミネーター法により解析し、公知のヒト17βHSD type 5配列(GenBank accession No.NM_003739)と合致したクローンを選択した。これらを含むプラスミドにて、大腸菌BL21を形質転換させた後に大量培養し、当該蛋白質をGSTrapFFカラム(アマシャム社製)とPreScissionProtease(アマシャム社製)を用いて精製した。精製法はGSTrapFFカラムに添付された説明書に従った。
【0044】
2.ヒト17βHSD type 3をコードする遺伝子の単離及び酵素精製
本発明の薬理試験に用いるヒト17βHSD type 3をコードする全長cDNAは、ヒト精巣由来のcDNAをテンプレートとしてPCR法により取得した。得られたcDNAの塩基配列はジデオキシターミネーター法により解析し、公知のヒト17βHSD type 3配列(GenBank accession No.BC034281)と合致したクローンを選択した。その後これらを含むプラスミドにてヒト胎児腎由来細胞株の293細胞を形質転換させ、24時間後に細胞を回収した。次に回収した細胞を、5%グリセロールを含むリン酸緩衝液(100 mm-dish1枚当たり500μlの5%グリセロールを含むリン酸緩衝液(pH7.4, 200 mM))中で破砕し、遠心分離(16000rpm, 5 min, 4℃)後その上清を酵素源とした。
【0045】
3.ヒト17βHSD type 5及びtype 3の酵素活性の測定
酵素活性の測定は、Trevor M. PenningらBiochem. J., 2000, 351, 67-77を参考にして行った。具体的には、100 mMリン酸カリウムバッファー(pH6.0)を用いて、(1)最終濃度が10μg/mlとなる量の上記1で精製した酵素、(2)最終濃度が300 nMとなる量のアンドロステンジオン、(3)最終濃度が200μMとなるNADPH、及び(4)試験物質とを混和して室温にて2時間反応後、産生されたテストステロン量をDELFIA(登録商標)Testosterone Reagents R050-201(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。測定法は添付の説明書に従った。酵素未添加時のテストステロン量を0%、化合物未添加時のテストステロン産生量を100%として、化合物添加時におけるテストステロン産生の減少量を相対値として求めた。次いで、IC50値をロジスティック(Logistic)回帰法により算出した。
本発明化合物に含まれる幾つかの実施例化合物のヒト17βHSD type 5の阻害活性のIC50値を表1に示す。Exは後記実施例化合物番号を示す。
【0046】
【表1】

また、より生体に近いin vitroモデルとして、上記酵素活性はヒト17βHSD type 5等を発現させた細胞を用いて測定することもできる。
【0047】
4.ヒト17βHSD type 5発現LNCaP細胞の作製
上記1で選択したクローンを含むプラスミドにてヒト前立腺癌由来細胞株のLNCaP細胞を形質転換させ、安定発現細胞株を得た
【0048】
5.ヒト17βHSD type 5発現LNCaP細胞を用いた細胞増殖能の測定
上記4で得られた形質転換細胞を96穴プレートに5000細胞/穴になるように播種して一晩培養した後、試験化合物とともに最終濃度5 nMとなるようにAndrostenedioneを添加して5日間培養した。培養後に細胞数をCellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社)を用いて測定した。CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assayは、細胞内ATP量をルシフェラーゼによる発光強度でモニターすることにより細胞数を測定する試薬である。なお実験操作は添付の説明書に従った。Androstenedione未添加時の細胞数を増殖0%、Androstenedione添加、試験化合物未添加時の細胞数を増殖100%として、試験化合物添加時における細胞増殖抑制活性を相対値として求めた。次いで、IC50値をロジスティック(Logistic)回帰法により算出した。
【0049】
上記試験結果から明らかなように、式(I)の化合物はヒト17βHSD type 5阻害活性を有することが確認された。
従って、式(I)の化合物は、17βHSD type 5の関与する疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物の有効成分として使用しうる。例えば17βHSD type 5の阻害によりアンドロゲン合成やエストロゲン合成が抑制されるので、アンドロゲンやエストロゲンの関与する疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物の有効成分として使用しうる。
【0050】
17βHSD type 5の関与する疾患、即ち、アンドロゲンもしくはエストロゲンの関与する疾患のある態様としては、前立腺癌、前立腺肥大、アクネ、脂漏症、多毛症、禿頭症、脱毛症、性早熟症、副腎肥大、多嚢胞性卵巣症候群、乳癌、子宮内膜症及び平滑筋腫等が挙げられ、別の態様としては前立腺癌であり、更に別の態様としては前立腺肥大である。また、更に別の態様としては肺癌等の酸化ストレスに関連する疾患である。例えば、前立腺のintracrineなアンドロゲン合成は17βHSD type 5が担っていると考えられることから、特に前立腺においてアンドロゲンの関与する疾患である前立腺癌や前立腺肥大症の予防及び/又は治療に有用である。
【0051】
また本発明のある態様であるヒト17βHSD type 3阻害活性が弱い化合物は、精巣におけるヒト17βHSD type 3由来のテストステロン生合成への影響を与えることなく、17βHSD type 5選択的阻害作用により前立腺のintracrineなテストステロン合成を選択的に抑制することが期待できる。即ち式(I)の化合物は血中テストステロン濃度に対して影響を及ぼさないことから、血中テストステロン濃度の抑制による性機能障害などの副作用を伴わない前立腺肥大症や前立腺癌の治療及び/又は予防に使用しうる。
【0052】
式(I)の化合物又はその塩の1種又はそれ以上を有効成分として含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている賦形剤、即ち、薬剤用賦形剤や薬剤用担体等を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
【0053】
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又はそれ以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えば滑沢剤や崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0054】
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばエタノールのようなアルコール類がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
【0055】
外用剤としては、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゼリー剤、パップ剤、噴霧剤、ローション剤、点眼剤、眼軟膏等を包含する。一般に用いられる軟膏基剤、ローション基剤、水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤等を含有する。
【0056】
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体又は半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知の賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
【0057】
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり約0.001〜100 mg/kg、好ましくは0.1〜30 mg/kg、更に好ましくは0.1〜10 mg/kgが適当であり、これを1回であるいは2回〜4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001〜10 mg/kgが適当で、1日1回〜複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001〜100 mg/kgを1日1回〜複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
【0058】
式(I)の化合物は、前述の式(I)の化合物が有効性を示すと考えられる疾患の種々の治療剤又は予防剤と併用することができる。当該併用は、同時投与、或いは別個に連続して、若しくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与製剤は、別個に製剤化されていても、前述の式(I)の化合物が有効性を示すと考えられる疾患の種々の治療剤又は予防剤と式(I)の化合物とを含む医薬組成物であってもよい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づき、式(I)の化合物の製造法をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また、原料化合物の製法を製造例に、公知化合物の製造を参考例にそれぞれ示す。また、式(I)の化合物の製造法は、以下に示される具体的実施例の製造法のみに限定されるものではなく、式(I)の化合物はこれらの製造法の組み合わせ、あるいは当業者に自明である方法によっても製造されうる。
【0060】
また、実施例及び製造例中において、以下の略号を用いることがある。
Ex:実施例番号、Pre:製造例番号、No:化合物番号、mp:融点、Dat:物理化学的データ(FAB+:FAB-MS(M+H)+、ESI+:ESI-MS(M+H)+、APCI+:APCI-MS(M+H)+、APCI/ESI-:APCI/ESI-MS(M-H)-、EI:EI-MS(M)+、CI+:CI-MS(M+H)+)、NMR:DMSO-d6中の1H NMRにおけるピークのδ(ppm))、NMR2:CDCl3中の1H NMRにおけるピークのδ(ppm)、RT:HPLCでの保持時間(分))、Str:構造式、Syn:同様の方法で製造した実施例番号、DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、THF:テトラヒドロフラン、MeCN:アセトニトリル、MeOH:メタノール、EtOH:エタノール、Me:メチル、Et:エチル、iPr:2-プロピル、cPr:シクロプロピル、nPr:1-プロピル、nBu:1-ブチル、tBu:tert-ブチル、Bn:ベンジル、Ac:アセチル。
RTを求めるために行ったHPLCの条件
カラム:Wakosil-II 5C18AR(登録商標)(粒径:5μm 内径:2.0 mm 長さ:30 mm);流速:1.2 ml/min;検出波長:254 nm;カラム温度:35.0℃;注入量:5μl
移動相 A液:5 mMトリフルオロ酢酸水溶液;B液:メタノール
【表2】

【0061】
製造例1
ピペリジン-4-イル酢酸エチル 5 gのジオキサン50 ml及び水50 ml溶液に、0℃にて炭酸水素ナトリウム 3 gを加えた後、クロロギ酸ベンジル 4.6 mlを滴下し、室温にて3日間攪拌した。反応液を減圧下半量まで濃縮した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮して、ベンジル 4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)ピペリジン-1-カルボシレート 8.9 gを無色油状物として得た。
製造例2
ベンジル 4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)ピペリジン-1-カルボシレート 8.9 gのTHF 100 ml溶液に、0℃にて1.4 Mメチルマグネシウムブロミドのトルエン-THF溶液 46 mlを加え、室温にて3時間攪拌した。反応液に1 M塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を併せて飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮して、ベンジル 4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)ピペリジン-1-カルボキシレート 8.5 gを無色油状物として得た。
【0062】
製造例3
ベンジル 4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)ピペリジン-1-カルボキシレート 8.5 gのメタノール 120 ml溶液に、10%パラジウム炭素500 mgを加え、水素雰囲気下、室温にて1日間攪拌した。不溶物をセライトを用いて濾去し、濾液を減圧下濃縮して、2-メチル-1-(ピペリジン-4-イル)-2-プロパノール 5.6 gを白色固体として得た。
製造例4
6-メチル-5-ニトロピリジン-2-オール 1 g、炭酸銀(I) 2.68 g及びトルエン 10 ml の混合物に、ブロモメチルシクロプロパン 1.31 g を加え、100℃で3時間撹拌した。不溶物をセライトを用いて濾去した後、濾液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び酢酸エチルを加え分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜80:20)にて精製して、6-(シクロプロピルメトキシ)-2-メチル-3-ニトロピリジン 928 mg を黄色油状物として得た。
【0063】
製造例5
カリウム tert-ブトキシド 441 mg、シュウ酸ジエチル 2.37 ml及びTHF 15 mlの混合物に、加熱還流下、6-(シクロプロピルメトキシ)-2-メチル-3-ニトロピリジン 728 mg のTHF 5 ml溶液を滴下し、同条件で1時間撹拌した。反応液を室温に冷却後、氷水に注ぎ、1M 塩酸 5 ml 及び酢酸エチルを加え分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜70:30)にて精製し、3-[6-(シクロプロピルメトキシ)-3-ニトロピリジン-2-イル]-2-オキソプロパン酸エチル 339 mgを黄色固体として得た。
製造例6
3-[6-(シクロプロピルメトキシ)-3-ニトロピリジン-2-イル]-2-オキソプロパン酸エチル 339 mg、酢酸 0.629 ml及びEtOH 10 mlの混合物に、70℃で、鉄 614 mgを加え、加熱還流下、3時間撹拌した。反応液を室温に冷却後、氷水に注ぎ、酢酸エチルを加え分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜70:30)にて精製し、5-(シクロプロピルメトキシ)-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-2-カルボン酸エチル 246 mgを淡黄色固体として得た。
【0064】
製造例7
5-(シクロプロピルメトキシ)-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-2-カルボン酸エチル 246 mgのMeOH 10 mlの溶液に、1 M水酸化ナトリウム水溶液 3 mlを加え、60℃にて2時間撹拌した。反応液を室温に冷却後、水を加え、酢酸エチルで洗浄した。水層に1M 塩酸 3 ml及び酢酸エチルを加え、有機層を分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、5-(シクロプロピルメトキシ)-1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン-2-カルボン酸226 mgを白色固体として得た。
製造例8
20%ナトリウムメトキシドエタノール溶液 42.09g及びEtOH 60mlの混合物に、0℃で5-(ヒドロキシメチル)-2-フルアルデヒド 5.2g、アジド酢酸エチル 15.97g及びEtOH 100 ml の混合物を30分間かけて滴下し、室温で1時間撹拌した。反応液を0℃に冷却後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、EtOHを減圧留去した。残った溶液に酢酸エチルを加えて分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜65:35)にて精製し、黄色油状物を得た。この油状物にトルエンを加え、混合物を加熱還流下、1時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜50:50)にて精製し、2-(ヒドロキシメチル)-4H-フロ[3,2-b]ピロール-5-カルボン酸エチル 2.76 gを茶色固体として得た。
【0065】
製造例9
2-(ヒドロキシメチル)-4H-フロ[3,2-b]ピロール-5-カルボン酸エチル 200 mg、N,N,N',N'-テトラメチルナフタレン-1,8-ジアミン 410 mg及びジクロロメタン 4 ml の混合物に、室温にてトリメチルオキソニウム テトラフルオロボレート 283 mgを加え、30分間撹拌した。析出固体を濾去した後、濾液に10%クエン酸水溶液、水、クロロホルムを加え分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0〜50:50)にて精製し、2-(メトキシメチル)-4H-フロ[3,2-b]ピロール-5-カルボン酸エチル 185 mgを白色固体として得た。
製造例10
2-(メトキシメチル)-4H-フロ[3,2-b]ピロール-5-カルボン酸エチル 185 mgのMeOH 10 ml 溶液に、4 M水酸化リチウム水溶液 1 mlを加え、60℃で終夜撹拌した。反応液を室温に冷却後、1 M塩酸 4 ml及びトルエンを加えた後、減圧下濃縮し、2-(メトキシメチル)-4H-フロ[3,2-b]ピロール-5-カルボン酸162 mg を茶色固体として得た。
【0066】
製造例化合物の構造及び物理化学的データを後記表に示す。
【0067】
実施例1
6-クロロ-1H-ベンズイミダゾール-2-カルボン酸 157 mg及び2-メチル-1-(ピペリジン-4-イル)-2-プロパノール 138 mg のDMF 5 ml溶液に、1-エチル-3-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 184 mg 及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール 54 mg を加え、室温にて2時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び酢酸エチルを加え分液した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール = 1:0-96:4)にて精製し、ヘキサン/酢酸エチル(5/3, 8 ml)から粉末化して、1-{1-[(5-クロロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)カルボニル]ピペリジン-4-イル}-2-メチル-2-プロパノール 181 mg をベージュ色粉末として得た。
実施例2
2-メチル-1-(ピペリジン-4-イル)-2-プロパノール 4.7 mg、3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボン酸 7.4 mg、トリエチルアミン 0.0042 ml、及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール 4.0 mg の DMF 0.5 ml 溶液に室温にてPS-カルボジイミド(PS-Carbodiimide:アルゴノートテクノロジー社) 100 mg を加え終夜撹拌した。反応液に室温にてMP-カルボナート(MP-Carbonate:アルゴノートテクノロジー社) 50 mg、及びPS-イソシアナート(PS-Isocyanate:アルゴノートテクノロジー社) 50 mg を加え2時間攪拌し、不溶物を濾去した。濾液を減圧下濃縮し 1-(1-{[3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1H-ピラゾール-5-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)-2-メチルプロパン-2-オール 9.7 mg を得た。
【0068】
実施例3
3-アセチルベンゾニトリル 29 mg 及びシュウ酸ジエチル 44 mg の DMF 0.3 ml 溶液にカリウム tert-ブトキシド 27 mg を加え室温にて終夜撹拌した。反応液に 1 M塩酸 1 ml を加え、減圧下濃縮した。得られた残渣にヒドラジン水和物 0.015 ml及び EtOH 0.5 mlを加え、60℃にて5時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却後、減圧下濃縮した。残渣に THF 0.25 ml、EtOH 0.25 ml及び1 M水酸化ナトリウム水溶液 0.5 mlを加え、混合物を60℃にて終夜撹拌した。反応液に室温にて 1 M塩酸 1 ml を加え、減圧下濃縮した。残渣をHPLC(カラム:サンファイア(SunFire;登録商標) C18 5μm 19 mmx100 mm、溶媒:MeOH/0.1% HCOOH-H2O=10/90 (0 min) - 10/90 (1 min) -95/5 (9 min) - 95/5 (12 min)、流速:25 ml/min)にて精製を行い油状物6.4 mg を得た。
得られた油状物 6.4 mg、2-メチル-1-(ピペリジン-4-イル)-2-プロパノール 4.7 mg、トリエチルアミン 0.0042 ml、及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール 3.4 ml の DMF 0.5 ml 溶液に室温にてPS-カルボジイミド(PS-Carbodiimide:アルゴノートテクノロジー社) 100 mg を加え終夜撹拌した。反応液に室温にてMP-カルボナート(MP-Carbonate:アルゴノートテクノロジー社) 50 mg、及びPS-イソシアナート(PS-Isocyanate:アルゴノートテクノロジー社) 50 mg を加え2時間攪拌し、不溶物を濾去した。濾液を減圧下濃縮して、残渣をHPLC(カラム:サンファイア(SunFire;登録商標) C18 5μm 19 mm x 100 mm、溶媒:MeOH/0.1% HCOOH-H2O=10/90 (0 min) - 10/90 (1 min) -95/5 (9 min) - 95/5 (12 min)、流速:25 mL/min)にて精製を行い3-(5-{[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)ピペリジン-1-イル]カルボニル}-1H-ピラゾール-3-イル)ベンゾニトリル 4.2 mg を得た。
【0069】
上記実施例の方法と同様にして、後記表に示す実施例化合物を製造した。実施例化合物の構造、物理化学的データ及び製造法を後記表に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
【表8】

【0076】
【表9】

【0077】
【表10】

【0078】
【表11】

【0079】
【表12】

【0080】
【表13】

【0081】
【表14】

【0082】
【表15】

【0083】
【表16】

【0084】
【表17】

【0085】
【表18】

【0086】
【表19】

【0087】
【表20】

【0088】
【表21】

【0089】
【表22】

【0090】
【表23】

【0091】
【表24】

【0092】
【表25】

【0093】
【表26】

【0094】
また、後記表に、式(I)の化合物のその他の態様を示す。これらの化合物は、上記の製造法や実施例に記載の方法、及び当業者にとって自明である方法、又はこれらの変法を用いることにより、容易に製造することができる。
【0095】
【表27】

【0096】
【表28】

【0097】
【表29】

【産業上の利用可能性】
【0098】
式(I)の化合物は、17βHSD type 5阻害活性を有し、17βHSD type 5の関与する疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物の有効成分として使用しうる。例えば、アンドロゲンに関連する疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物の有効成分として使用しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその塩。
【化10】

(式中、
環Aは、
【化11】

から選択され、さらに、G群から選択される1〜4個の基で置換されていてもよく、
G群は、R0、O-R0、OH、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、オキソ、O-R00-シクロアルキル、CO-R0、CO-シクロアルキル、NH2、NHR0、N(R0)2、R00-NH2、R00-NHR0、R00-N(R0)2、O-R00-NH2、O-R00-NHR0、O-R00-N(R0)2、或いは、それぞれ環上にP群から選択される1〜5個の基を有していてもよい、アリール、CH2CH2-アリール、CH=CH-アリール、CH2-O-アリール、CO-アリール、CO-R00-アリール、O-R00-アリール、ヘテロアリール、CH2CH2-ヘテロアリール、CH=CH-ヘテロアリール、CH2-O-ヘテロアリール、CO-ヘテロアリール、CO-R00-ヘテロアリール、又は、O-R00-ヘテロアリール;
P群は、R0、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、O-R0、OH、O-ハロゲノ低級アルキル、S-ハロゲノ低級アルキル、O-R00-アリール、CN、NH2、NHR0、N(R0)2、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、O-CH2-O及びO-(CH2)2-Oであり;
R1、R2、及びR3は、同一又は互いに異なって、H又はR0;或いは、R1とR2が一体となってC2-5アルキレンを形成してもよく;
R0は、低級アルキルであり;
R00は、低級アルキレンであり;
Xは、R00又はO-R00であり;
Yは、単結合又は-CH=CH-であり;
nは、0〜5の整数を示す。)

【公開番号】特開2012−102018(P2012−102018A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49025(P2009−49025)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】