説明

アミド基還元用触媒および該触媒を用いたアミノメチル化合物の製造方法

【課題】
アミド化合物のアミド基の還元反応におけるアミノメチル化合物の製造において、アミノメチル化合物の収率とTOFの両方を向上させるアミド基還元用触媒を提供すること。
【解決手段】
ルテニウムと、周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素とが、担体に担持されたアミド基還元用触媒を用いる。また、前記ルテニウムのアミド基還元用触媒全量に対する存在割合が、金属換算で0.5〜20質量%であることが好ましく、且つ周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素のアミド基還元用触媒全量に対する存在割合が、金属換算で0.025〜30質量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウムと、周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素とが、担体に担持された触媒、および該触媒を用いたアミノメチル化合物の製造方法に関するものである。アミノメチル化合物は、例えば、各種イソシアネート、ポリアミド、界面活性剤、化粧品、医農薬品などの原料として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
各種カルボニル化合物の還元反応の中で、アミド化合物のアミド基を還元してアミノメチル基とする反応は、活性・選択性の両面で最も難易度が高い反応であり、高温・高圧の過酷な反応条件が必要であることが知られている(例えば、非特許文献1〜3参照)。その還元の難易度は、高い方からアミド化合物のカルボニル基>カルボン酸化合物のカルボニル基>エステル化合物のカルボニル基>酸無水物のカルボニル基の順であることが知られている(例えば、非特許文献1〜2参照)。
【0003】
従来、アミド基還元用触媒としては、例えば、下記に挙げるようなものが知られている。
(1)Ru/AlとMo(CO)の混合物(Mo/Ruモル比=0.13)を触媒(例えば、特許文献1参照)。
(2)配位子としてTriphos(1,1,1−tris(diphenylphosphinomethyl)ethane)を有するルテニウム触媒(例えば、非特許文献4参照)。
(3)Ru(CO)12とMo(CO)との物理的混合物(例えば、非特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−241222号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Chem.Soc.C,1969,p2425−2435
【非特許文献2】Tetrahedron Letters,1996,vol.37,37,p6749
【非特許文献3】comprehensive organometallic chemistry,1995,vol.2,p248
【非特許文献4】Chem.Commun,2007,p3154,
【非特許文献5】Adv.Synth.Catal.,2010,vol.352,p869
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記、特許文献1、非特許文献4及び非特許文献5の触媒では、触媒反応速度の指標となるターンオーバー頻度(以下ではTOFと記載する。算出方法は下記式参照)が低いという問題がある。このような問題点を解決するために、ルテニウムに配位子あるいは第2金属成分を添加することで性能改良が図られているが、アミノメチル化合物の収率とTOFの両方を向上させている触媒は現在まで得られていなかった。従って、アミノメチル化合物の収率とTOFの両方を向上させるアミド基還元用触媒の開発が望まれていた。
【0007】
【数1】

【0008】
本発明の課題は、即ち、アミド化合物のアミド基の還元反応におけるアミノメチル化合物の製造において、アミノメチル化合物の収率とTOFの両方を向上させるアミド基還元用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、アミド化合物からアミノメチル化合物を製造するに際して、以下に示されるアミド基還元用触媒により、前記の課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、以下の通りである。
(1)ルテニウムと、周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素とが、担体に担持されたアミド基還元用触媒。
(2)前記ルテニウムのアミド基還元用触媒全量に対する存在割合が、金属換算で0.5〜20質量%であり、且つ周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素のアミド基還元用触媒全量に対する存在割合が、金属換算で0.025〜30質量%である、前記(1)のアミド基還元用触媒。
(3)前記担体が塩基性表面を有する固体である、前記(1)のアミド基還元用触媒。
(4)前記担体が塩基性表面を有する金属酸化物である、前記(3)のアミド基還元用触媒。
(5)前記、ルテニウムと、周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素とを担体に含浸させた後、この含浸物を乾燥処理し、次いで焼成処理するアミド基還元用触媒の調製方法。
(6)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のアミド基還元用触媒の存在下、一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、nは、1〜5の整数、R、R及びRは、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で示されるアミド化合物と還元性ガスとを反応させる一般式(2)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、n、R、R及びRは、前記と同義である。)
で示されるアミノメチル化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、アミド化合物のアミド基の還元反応におけるアミノメチル化合物の製造において、アミノメチル化合物の収率とTOFの両方を向上させるアミド基還元用触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を詳細に説明する。
(1.アミド基還元用触媒について)
本発明のアミド基還元用触媒は、ルテニウムと、周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素(以下、第二金属元素と記載する)とが、担体に担持されたものである。
ここで周期律表による族番号は、IUPAC無機化学命名法改訂版(1989年)による長周期型周期律表に基づくものである。
【0017】
(1−1.ルテニウムの担持量について)
本発明のアミド基還元用触媒中のルテニウムの触媒全量に対する存在割合は、好ましくは金属換算で0.1〜30質量%であり、更に好ましくは0.5〜20質量%である。
【0018】
(1−2.第二金属元素について)
本発明のアミド基還元用触媒中の第二金属元素のうち周期律表第5族元素とは、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタルなどであり、周期律表第6族元素とは、例えば、クロム、モリブデン、タングステンなどである。これらの金属元素は単独又は二種以上を組み合わせて用いられるが、バナジウム、モリブデン又はこれらの混合物が好適に使用される。そして、この第二金属元素のアミド基還元用触媒全量に対する存在割合は、金属換算で好ましくは0.01〜40質量%であり、更に好ましくは0.025〜30質量%である。これら第二金属元素のルテニウムに対する割合は、原子比で好ましくは0.1〜7.0、更に好ましくは0.2〜6.0である。
【0019】
(1−3.触媒中の各成分の形態について)
本発明のアミド基還元用触媒中のルテニウムの形態は、特に限定はされないが、好ましくは金属である。また、第二金属元素の形態も、特に限定はされないが、例えば、金属、酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硫化物、アンモニウム塩又は炭化物などであり、好ましくは金属又は酸化物である。なお、単独又は二種類以上の形態が混在していても良い。
【0020】
(1−4.担体について)
本発明のアミド基還元用触媒における担体は、ルテニウムと第二金属元素を担持できる固体であれば、特に制限されず、例えば、活性炭、グラファイト、メスポーラス−カーボンなどの炭素質担体;SiO,Al,シリカアルミナ、MgO,Mg(OH),TiO,ZrO2、CeO,CaO,CsO,Sc,Y,La,Sm,Yb、シリカチタニア(例えば、チタノシリケートなど)、メソ多孔体(例えば、メソポーラス−アルミナ、メスポーラス−シリカなど)、ゼオライトなどの結晶性または非結晶性の金属酸化物;SiO−Al、MgO−SiOなどの複合酸化物;SiCなどの炭化物;Siなどの窒化物;モンモリオナイト、カオリナイト、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイトなどの層状化合物;ポリスチレン、ポリビニルピロリドンなどの有機高分子化合物などを用いることが出来る。なお、これらの担体は、単独又は二種類以上を混合して使用しても良い。
これらの中で、下記(1)及び/又は(2)の条件を満たす表面塩基性を示す固体が好適に使用される。
【0021】
(1)ハメット指示薬法でハメット関数H>7.0の領域に変色点を示す固体
(2)CO吸着法にてCOの化学吸着が観測される固体
【0022】
この表面塩基性を示す固体は、固体自体が、前記(1)及び/又は(2)の条件を満たす特性を有していても良いし、アルカリ金属成分などを表面に添加して表面状態を改質することで、前記の条件を満たすような表面塩基性を持たせた固体であっても良い。
【0023】
前記の固体自体が、(1)及び/又は(2)の条件を満たす表面塩基性を示す固体の具体例としては、例えば、MgO,Mg(OH),CeO,CaO、BaO、Sc,Y,La,Sm,Yb、MgO−SiO、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0024】
また前記のアルカリ金属成分などを表面に添加して、表面状態を改質し、前記(1)及び/又は(2)の条件を満たす表面塩基性を持たせた固体の具体例としては、例えば、Na/Al,K/Al又はこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
これらの担体は、触媒調製の前に焼成処理を行ってから使用しても良く、焼成温度は好ましくは100〜1000℃である。
【0026】
(1−5.調製法の種類について)
本発明のアミド基還元用触媒は、担体に金属を担持させる方法で調製することができる。担体に金属を担持させる方法は、特に制限はなく、例えば、含浸法、平衡吸着法、析出沈殿法、イオン交換法、混練法、スプレー法など担持触媒の調製に常用されている任意の方法で行うことができるが、好ましくは含浸法で行われる。含浸法によるときは、担持する金属成分の調製原料を水などの溶媒に溶解させて水溶液とし、ここへ担体を浸漬させることができる。
【0027】
(1−6.調製原料について)
ルテニウムの調製原料としては、特に限定されないが、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アセト酢酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、アセチルアセトン塩、水酸化物、酸化物、有機金属化合物又は錯塩などが挙げられるが、具体的には、塩化ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、ドデカカルボニルトリルテニウムなどが使用される。
【0028】
また、第二金属元素の調製原料としては、特に限定されないが、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アセト酢酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、アンモニウム塩、アセチルアセトン塩、水酸化物、酸化物、有機金属化合物や錯塩などが挙げられるが、具体的には、モリブデン酸アンモニウム4水和物、タングステン酸アンモニウムパラ5水和物、メタバナジン酸アンモニウムなどが使用される。
【0029】
(1−7.調製法の溶媒・種類)
溶媒としては、水以外にもメタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフランなど金属成分前駆体を溶解できる任意の溶媒を用いることができる。また、これら溶媒は単独で用いても混合して用いても良い。前記溶媒の量としては、担持させる担体の細孔容積と同量又はそれ以上の溶媒を用いることができる。なお、担体への浸漬時間は5分〜12時間の範囲で行うことができる。
【0030】
(1−8.調製手順の一例)
本発明のアミド基還元用触媒の調製法は、金属成分溶液を担体に浸漬させた後、必要に応じて溶媒を留去させ、次いで乾燥処理を行うことで金属成分の担体への担持が完了する。乾燥は好ましくは200℃以下の温度で保持することで行う。保持の際の雰囲気は、空気下、窒素・ヘリウムなどの不活性ガス下、または減圧下である。
【0031】
本発明のアミド基還元用触媒の調製法は、ルテニウムと、第二金属元素の金属成分を担持させる順序については特に制限はなく、複数の金属成分を同時、又は個別に担持することもできる。また、一種の成分を複数回に分けて担持することもできる。前記、金属成分の担持を複数回に分けて行う場合には、浸漬を行うごとに乾燥するのが好ましい。
【0032】
また、ルテニウムと、第二金属元素の金属成分は同一担体に担持させる必要は無く、下記に示す(1)又は(2)の状態で反応に用いてもよく、又、反応条件下で活性種を形成させてもよい。
(1)ルテニウムのみを担持させた触媒と第二金属元素の化合物を物理的に混合する
(2)ルテニウムのみを担持させた触媒と第二金属元素を担持させた触媒を物理混合する
【0033】
担体に金属成分を担持した後、以下の方法で活性化し触媒とする。活性化の操作として、「焼成後に還元を行なう」、「焼成なしで還元のみ行なう」、「焼成のみ行って還元を行なわない」、の3種類の方法があり、好ましくは「焼成なしで還元を行なう方法」である。
【0034】
触媒の活性化の操作における焼成は、好ましくは100℃〜700℃の温度で、酸素を含む混合ガス、例えば、空気などの存在下で行われる。また、酸素を含む混合ガスに代えて、不活性ガス、例えば、窒素ガスの存在下で行うこともできる。
【0035】
また、触媒の活性化の操作における還元は液相還元、気相還元いずれで行うこともできる。液相還元させる場合には、水等の溶媒を用い還元剤として、例えば、ギ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、メタノール、ヒドラジンなどを用いて、好ましくは20℃〜100℃、更に好ましくは50℃〜90℃で1〜12時間還元を行う。還元後は洗浄を行なって未反応の還元剤や生成したナトリウム塩等を除去し、乾燥させることで本発明の触媒が得られる。
【0036】
気相還元させる場合には水素ガスまたは不活性ガスで希釈した水素ガスを還元性ガスとして、好ましくは50〜700℃、更に好ましくは100〜500℃で行う。
【0037】
触媒の形状は、例えば、打錠、押し出し成形体、球状粒子、又は粉末などが挙げられ、必要に応じて、焼成又は還元前のいずれかの適当な時点で所定の形状及びサイズに成形することもできる。成形を行う場合は、常法に従って行うことができる。
【0038】
(1−9.担持金属の粒子径)
反応前及び反応中のアミド基還元用触媒におけるルテニウムは、金属微粒子として担体に高分散の状態で担持されている。このルテニウム金属微粒子の粒子径は、特に制限されないが、好ましくは、0.266〜20nmであり、更に好ましくは0.266〜10nmである。
【0039】
また、同条件下での第二金属元素も、金属の微粒子、酸化物の微粒子、水酸化物の微粒子、塩化物の微粒子、硫酸塩の微粒子、硫化物の微粒子、アンモニウム塩の微粒子、炭化物の微粒子又はこれらが混在した状態として担体に高分散の状態で担持されている。この第二金属元素のサイズは、特に制限されないが、第二金属元素が金属である場合、好ましくは原子1個の大きさ〜粒子径が20nmの金属、更に好ましくは原子1〜5個の大きさであり、第二金属元素が酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硫化物、アンモニウム塩又は炭化物である場合、好ましくは、分子1個の大きさ〜粒子径が20nmの粒子、更に好ましくは分子1〜5個の大きさである。
【0040】
なお、粒子径についてはX線解回折(以下、XRDと記載する)の回折線の半値幅を用いたシェラー式による算出、走査透過電子顕微鏡(以下、STEMと記載する)写真、COあるはH吸着量の測定、等により評価できる。
【0041】
(2.アミド化合物からアミノメチル化合物の製造方法)
本発明のアミド基還元用触媒は、アミド化合物からアミノメチル化合物製造用の触媒である。
下記の式に示すように、本発明のアミド基還元用触媒の存在下、アミド化合物と還元性ガスとを反応させてアミノメチル化合物を製造することができる。
【0042】
【化3】

【0043】
(式中、nは、1〜5の整数、R、R及びRは、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
【0044】
以下に、本発明のアミド基還元用触媒を用い、アミド化合物と還元性ガスとを反応させてアミノメチル化合物を製造する方法を説明する。
【0045】
(2−1.原料について)
原料として用いるアミド化合物は、前記一般式(1)で示される。その一般式(1)において、nは、1〜5の整数を示すが、好ましくは、nが1、又は2である。
【0046】
一般式(1)において、R、R及びRは、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、具体的には、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、シクロへキシレン基などのアルキレン基;フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基などのアリール基が挙げられるが、好ましくは、Rが炭素数1〜10のアルキル基、アルキレン基またはアリール基、R及びRが水素原子である。なお、これらの基は各種異性体を含む。
【0047】
前記一般式(1)で示されるアミド化合物の具体例としては、例えば、シュウ酸アミド、プロパンジ酸アミド、マロン酸ジアミド、コハク酸アミド、マレイン酸アミド、4−アミノブタン酸アミド、グルタル酸アミド、カプロン酸アミド、アジポアミド、ピメリン酸アミド、スベリン酸アミド、アゼライン酸アミド、セバシン酸アミド、ドデカン二酸アミド、フタル酸アミド、テレフタル酸アミド、イソフタル酸アミド等が挙げられる。
【0048】
還元性ガスとは、水素ガスもしくは水素ガスを含む混合ガスのことである。混合ガスの場合、水素ガス以外のガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、アンモニア、が挙げられるが、水素ガスとアンモニアの混合ガスが好適に使用される。
【0049】
(2−2.反応形態、反応方式について)
本発明の反応は、アミド基還元用触媒の存在下、還元性ガスで加圧し、液相または気相で行われる。反応方式は連続、回分のいずれで行っても良く、また反応型式としては液相方式なら、例えば、懸濁床方式、懸濁気泡塔、固定床流通反応(トリクルベット方式、アップフロー方式)、反応蒸留方式、気相方式なら、例えば、固定床流通方式、流動床のいずれも採用することができる。液相方式なら懸濁床方式、トリクルベット方式が、気相方式なら固定床流通方式が好ましい。以下に、それぞれの方式の具体例を挙げて説明する。
【0050】
本発明の反応を、例えば、懸濁床方式で行う場合、加圧反応器に溶媒とアミド化合物とアミド基還元用触媒を加え、雰囲気を還元性ガスとし、加圧した後、撹拌しながら必要な温度まで昇温し反応を開始させる。なお、溶媒を使用せずに実施することもできる。
【0051】
本発明の反応において使用する触媒量は、特に制限されないが、原料として用いるアミド化合物に対し、好ましくは0.1〜30質量%、更に好ましくは1〜25質量%である。
【0052】
還元性ガスの圧力は好ましくは、0.1〜30MPaであり、更に好ましくは3〜20MPaである。水素ガスとアンモニアとの混合ガスを使用する場合、アンモニアの分圧は0.05〜1MPa、好ましくは0.1〜0.8MPaである。又、反応温度は好ましくは50〜350℃、更に好ましくは50〜250℃である。
【0053】
本発明の反応において使用する溶媒としては、例えば、水;アンモニア水;メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール化合物;アンモニアメタノール溶液、アンモニア−2−プロパノール溶液、アンモニアエタノール溶液などのアンモニアアルコール溶液;ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル化合物;ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素化合物;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン化合物;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどの有機塩素系化合物;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル化合物であり、これらは単独あるいは二種類以上を混合して用いることができる。前記溶媒の使用量は、アミド化合物1gに対して、好ましくは0〜199g、更に好ましくは0〜19gである。
【0054】
本発明の反応を、例えば、トリクルベット方式で行う場合は、原料として用いるアミド化合物はLHSV(液空間速度)を好ましくは0.01〜10g/ml・h、更に好ましくは0.1〜5g/ml・hで供給し、還元性ガスはGHSV(ガス空間速度)を好ましくは10〜10000/hr、更に好ましくは100〜3000/hrで供給する。
還元性ガス圧力は、好ましくは1〜30MPa、更に好ましくは5〜20MPa、反応温度は好ましくは80〜300℃、更に好ましくは100〜250℃で行われる。ここでアミド基還元用触媒は、必要に応じて水素還元前処理を行ってもよい。アミド基還元用触媒の充填量は、先述のLHSV、GHSVを満たす範囲で任意の量を使用することができる。反応は溶媒の存在下又は非存在下で行うことができ、溶媒を用いる場合は、懸濁床方式と同じ溶媒を使用することができる。
【0055】
また、本発明の反応を、例えば、気相の固定床流通方式で行う場合には、原料として用いるアミド化合物はGHSVを好ましくは1〜10000/hr、更に好ましくは10〜3000/hrで供給し、還元性ガスはGHSVを好ましくは10〜10000/hr、更に好ましくは100〜3000/hrで供給する。還元性ガスの圧力は好ましくは0.1〜30MPa、更に好ましくは0.5〜20MPa、反応温度は好ましくは80〜500℃、更に好ましくは100〜450℃で行われる。ここでアミド基還元用触媒は必要によって水素還元前処理を行ってもよい。触媒充填量は先述のLHSV、GHSVを満たす範囲で任意の量を使用することができる。反応は溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒を用いる場合は、懸濁床方式と同じ溶媒を使用できる。
【0056】
(2−2.生成物の精製、回収)
本発明のアミド基還元用触媒を用いたアミド還元反応により得られたアミノメチル化合物は、反応終了後、例えば、ろ過、分液・抽出、濃縮等の後処理を行った後、蒸留やカラムクロマトグラフィー、再結晶等により単離・精製することができる。
【実施例】
【0057】
以下に本発明を実施例によって説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって
限定されるものではない。
【0058】
[実施例1][MgOの調製]
Mg(OH)(和光純薬製1級、0.6μm)を400℃で3時間(昇温速度10℃/min)焼成した物を用いた。表面積:205m/g, 平均細孔径:5.26nm, 細孔容積:0.269ml/gであった。
【0059】
[5質量%Ru−1.3質量%V/MgO触媒(V/Ru原子比=0.5)の調製]
バナジウム前駆体としてNHVO 0.087gを常温の精製水4.8gに無水シュウ酸0.089g(バナジウムの1.35モル倍量)を添加することで溶かした。この溶液に前記方法で調製したMgOを3.0g添加し、室温下で1時間静置・含浸させた。エバポレーターで水を留去し、空気中にて100℃で24時間乾燥させた後、500℃で1.5時間焼成した(昇温速度:500℃/2h)。
調製した1.3質量%V/MgO 2.15gに、Ru(acac) 0.41gをアセトン12gに溶解した溶液を添加し室温下で1h撹拌・含浸させた。エバポレーターでアセトン留去、空気中100℃で24時間乾燥させた後、水素ガス気流下にて300℃で1h還元処理を行ない標記触媒を得た。STEMにエネルギー分散型X線分光(以下、EDSと記載する)を組み合わせたSTEM−EDSで担持金属の粒子径を評価すると、平均粒子径は5.6nmであった。
【0060】
[カプロン酸アミドの還元反応]
【0061】
【化4】

【0062】
50mlオートクレーブに前記方法で調製した触媒0.1g、カプロン酸アミド0.2g、ジメトキシエタン1.5gを加え磁器回転子を入れた後、系内を水素ガスで充分に置換して水素圧7MPaとした。このオートクレーブを200℃のオイルバスに浸し、攪拌回転数1000rpmで0.5時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを冷却し常圧に戻して、反応溶液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ヘキシルアミンの収率は22.0%、TOFは16mol/Ru−mol・hであった。
【0063】
[実施例2]
[5質量%Ru−3.8質量%V/MgO触媒(V/Ru原子比=1.5)の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
NHVO の量を0.261gに変えた以外は、実施例1と同様の方法で標記触媒を得た。STEM−EDS測定により、平均粒子径は3.5nmであった。
【0064】
実施例1と同様の方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は40.5%、TOFは29mol/Ru−mol・hであった。
【0065】
[実施例3]
[5質量%Ru−8.8質量%V/MgO触媒(V/Ru原子比=3.5)の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
NHVO の量を0.60gに変えた以外は実施例1と同様の方法で標記触媒を得た。STEM−EDS測定により、平均粒子径は3.3nmであった。
【0066】
実施例1と同様の方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は62.9%、TOFは45mol/Ru−mol・hであった。
【0067】
[比較例1]
[5質量%Ru/MgO触媒(V/Ru原子比=0)の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
実施例1でV/MgOを調製せず、代わりに実施例1と同様の方法で調製したMgOを用いた以外は実施例1と同様の方法で標記触媒を得た。STEM測定により平均粒子径は3.3nmであった。実施例1と同様の方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は6.0%、TOFは4mol/Ru−mol・hであった。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例1〜3及び比較例1の結果から、ルテニウム担持触媒に周期律表第5族元素のバナジウムを添加することでアミノメチル化合物収率とTOFの両方が向上すること、バナジウム担持量を1.3質量%から8.8質量%まで増やすことで収率とTOFはさらに向上することが分かった。
【0070】
[実施例4]
[5質量%Ru−2.4質量%Mo/MgO(還元処理なし。Mo/Ru原子比=0.5)の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
Ru(acac)(Aldrich製)0.675gをアセトン20gに溶かし、そこへ調製したMgO:2.0gを加え、室温下1h撹拌・含浸させた。エバポレーターでアセトン留去後、100℃で一晩乾燥させてRu(acac)/MgOを調製した。次に(NHMoO24・4HO:0.0437gを精製水:4.5gに溶かし、この溶液にRu(acac)/MgOを1.2g添加し、室温下で1h撹拌・含浸させた。そしてエバポレーターで水を留去し、空気中で80℃で24時間乾燥させた後、500℃で1.5時間焼成して標記触媒を得た。なお、還元処理は行わなかった。
得られた触媒を用いて実施例1の反応時間を3時間にした以外は同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は27.2%、TOFは3mol/Ru−mol・hであった。
【0071】
[実施例5]
[5質量%Ru−1.3質量%V/MgO(還元処理なし。V/Ru原子比=0.5) の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
バナジウム前駆体としてNHVO 0.0298gを常温の精製水5.7gにシュウ酸0.030g(バナジウムの1.35倍モル)を添加することで溶かした。この溶液に実施例4と同じ方法で調製したRu(acac)/MgOを1.2g添加し、室温下で1時間撹拌・含浸させた。エバポレーターで水留去、空気中で80℃で24時間乾燥させた後、500℃で1.5時間焼成して標記触媒を得た。なお、還元処理は行わなかった。
得られた触媒を用いて実施例4と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は、46.9%、TOFは、6mol/Ru−mol・hであった。
【0072】
[比較例2]
[5質量%Ru/MgO(還元処理なし)の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
実施例4でモリブデンを添加しなかった以外は実施例4と同様の方法で調製し標記触媒を得た。得られた触媒を用いて実施例4と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は15.0%、TOFは2mol/Ru−mol・hであった。
【0073】
[比較例3]
[5質量%Ru−0.34質量%Li/MgO(還元処理なし、Li/Ru原子比=0.5)の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
Li(OAc)・2HO 0.013gを常温の精製水1.5gに溶かした。この溶液に実施例4と同じ方法で調製したRu(acac)/MgOを0.67g添加し、室温下で1時間撹拌・含浸させた。エバポレーターで水を留去し、空気中で80℃で24時間乾燥させた後、500℃で1.5時間焼成して標記触媒を得た。なお、還元処理は行わなかった。得られた触媒を用いて実施例4と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は7.3%、TOFは1mol/Ru−mol・hであった。
【0074】
[比較例4]
[5質量%Ru−1.7質量%Li/MgO(還元処理なし、Zn/Ru原子比=0.5) の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
Zn(OAc)・2HO 0.027gを常温の精製水1.5gに溶かした。この溶液に実施例4と同じ方法で調製したRu(acac)/MgOを0.54g添加し、室温下で1h撹拌・含浸させた。エバポレーターで水を留去し、空気中で80℃で24時間乾燥させた後、500℃で1.5時間焼成して標記触媒を得た。なお、還元処理は行わなかった。
得られた触媒を用いて実施例4と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は4.9%、TOFは1mol/Ru−mol・hであった。
【0075】
【表2】

【0076】
実施例4〜5及び比較例2〜4の結果から、還元処理を行なってないルテニウム担持触媒においても、周期律表第5族元素のバナジウム、第6族元素のモリブデンを添加することでアミノメチル化合物収率とTOFの両方が向上することが分かった。一方、周期律表第5族又は6族以外の元素を添加すると収率とTOFが低下することも分かった。
【0077】
[実施例6]
[5質量%Ru−2.4%質量Mo/Al (還元処理なし、Mo/Ru原子比=0.5) の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
(NHMoO24・4HOを45℃で加熱しながら精製水に溶かした。この溶液に5質量%Ru/Al (和光純薬製)を添加し、45℃水浴で1時間撹拌・含浸させた。45℃で6時間減圧乾燥させた後、500℃で2時間焼成して標記触媒を得た。
【0078】
得られた触媒を用いて温度を180℃に変えた以外は実施例4と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は7.1%、TOFは0.8mol/Ru−mol・hであった。
【0079】
[実施例7]
[5質量%Ru−1.3%質量V/Al(還元処理なし、V/Ru原子比=0.5) の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
バナジウム前駆体としてNHVO 0.10gを常温の精製水2.8gにシュウ酸0.105g(バナジウムの1.35モル倍量)を添加することで溶かした。この溶液に5質量%Ru/Al (和光純薬):3.5gを添加し、室温下で1時間撹拌・含浸させた。空気中で100℃で一晩乾燥させた後、500℃で2時間焼成して標記触媒を得た。
得られた触媒を用いて実施例6と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は6.4%、TOFは0.8mol/Ru−mol・hであった。
【0080】
[比較例5]
[5質量%Ru/Al(還元処理なし) の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
5質量%Ru/Al (和光純薬製)を500℃で2時間焼成して標記触媒を得た。得られた触媒を用いて実施例6と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は1.9%、TOFは0.2mol/Ru−mol・hであった。
【0081】
[実施例8]
[5質量%Ru−4.6質量%W/Al (還元処理なし)の調製とカプロン酸アミドの還元反応]
タングステン前駆体として(NH101241・5HO 0.226gに精製水10gを加え、70℃で加熱撹拌させて溶かした。ここへ5質量%Ru/Al (和光純薬製):3.5gを添加し、45℃下で1時間撹拌・含浸させた。空気中100℃で一晩乾燥させた後、500℃で2時間焼成して標記触媒を得た。
実施例6と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は3.1%、TOFは0.4mol/Ru−mol・hであった。
【0082】
【表3】

【0083】
実施例6〜8及び比較例5の結果から、担体として塩基性表面を部分的に有する(酸点と塩基点の両方を有するが、一般的には酸性担体である)Alを用いても周期律表第5族又は6族元素の添加による収率とTOFの両方が向上した。
【0084】
[実施例9]
[5質量%Ru−1.3質量%V/MgO触媒(V/Ru原子比=0.5、300℃還元)によるカプロン酸アミドの還元反応]
実施例1に記載の方法で標記触媒を調製した。反応時間を1時間に変えた以外は実施例1と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は43.9%、TOFは16mol/Ru−mol・hであった。
【0085】
[実施例10]
[5質量%Ru−1.3質量%V/MgO触媒(V/Ru原子比=0.5、400℃還元)によるカプロン酸アミドの還元反応]
還元温度を400℃に変えた以外は実施例1と同じ方法で標記触媒を調製した。実施例8と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は38.2%、TOFは14mol/Ru−mol・hであった。
【0086】
[実施例11]
[5質量%Ru−1.3質量%V/MgO触媒(V/Ru原子比=0.5、600℃還元)によるカプロン酸アミドの還元反応]
還元温度を600℃に変えた以外は実施例1と同じ方法で標記触媒を調製した。実施例8と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は38.9%、TOFは14mol/Ru−mol・hであった。
【0087】
[実施例12]
[5質量%Ru−2.4質量%Mo/MgO(Mo/Ru原子比=0.5、300℃還元) によるカプロン酸アミドの還元反応]
バナジウム前駆体としてNHVO 0.087gを常温の精製水4.8gに無水シュウ酸0.089g(バナジウムの1.35倍モル)を添加することで溶かした。この溶液に前記方法で調製したMgOを3.0g添加し、室温下で1時間静置・含浸させた。エバポレーターで水を留去し、空気中で100℃で、24時間乾燥させた後、500℃で1.5時間焼成した(昇温速度:500℃/2h)。
調製した1.3質量%V/MgO 2.15gにRu(acac) 0.41gをアセトン12gに溶かした溶液を添加し室温下で1h撹拌・含浸させた。エバポレーターでアセトンを留去し、空気中で100℃で、24時間乾燥させた後、水素ガス気流下300℃で1h還元処理を行ない標記触媒を得た。
実施例8と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は47.9%、TOFは17mol/Ru−mol・hであった。
【0088】
[比較例6]
[5質量%Ru/MgO触媒(V/Ru原子比=0)によるカプロン酸アミドの還元反応]
比較例1と同様の方法で調製した触媒を用いた以外は、実施例9と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は11.0%、TOFは4mol/Ru−mol・hであった。
【0089】
【表4】

【0090】
実施例9〜12及び比較例6の結果から、触媒の還元温度が、300℃においては、バナジウム又はモリブデンを添加した系の方が、添加しなかった系より収率及びTOFが向上することが分かった。また、触媒の還元温度が300〜600℃の範囲では、収率及びTOFに差は無いことが分かった。
【0091】
[実施例13]
[1質量%Ru−1.3質量%V/MgO(V/Ru原子比=2.5) によるカプロン酸アミドの還元反応]
使用するRu(acac) 量を0.082gに変えた以外は実施例1と同様の方法により標記触媒を調製した。
触媒仕込み量をルテニウム基準で合わせるために触媒濃度を実施例8の5倍に変えた以外は実施例8と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は28.1%、TOFは10mol/Ru−mol・hであった。
【0092】
【表5】

【0093】
実施例9、13及び比較例6の結果から、本発明記載の触媒のルテニウム担持量は1〜5質量%の範囲において収率とTOFの向上効果が認められることが分かった。
【0094】
[実施例14]
[5質量%Ru/MgOと1.3質量%V/MgOの物理混合触媒によるカプロン酸アミドの還元反応]
5質量%Ru/MgOは比較例1で調製した物を用い、1.3質量%V/MgOは実施例1でルテニウム担持前までと同じ方法にて調製した。
触媒として5質量%Ru/MgO 0.1gと1.3質量%V/MgO 0.1gの混合物を用いた以外は実施例8と同じ方法でカプロン酸アミドの還元反応を行ったところ、ヘキシルアミンの収率は12.8%、TOFは5mol/Ru−mol・hであった。
【0095】
【表6】

【0096】
実施例14及び比較例6の結果から、ルテニウムと第2金属元素は同一担体に担持してなくても、物理混合でも効果があることが分かった。
【0097】
以上の結果から本発明のアミド基還元用触媒が、カプロン酸アミドの還元反応によるヘキシルアミンの製造において、高い収率と高いTOFを示すことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、ルテニウムと、周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素とが、担体に担持された触媒、およびこの触媒を用いたアミノメチル化合物の製造方法に関するものである。アミノメチル化合物は、例えば、各種イソシアネート、ポリアミド、界面活性剤、化粧品、医農薬品などの原料として有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウムと、周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素とが、担体に担持されたアミド基還元用触媒。
【請求項2】
ルテニウムのアミド基還元用触媒全量に対する存在割合が、金属換算で0.5〜20質量%であり、且つ周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素のアミド基還元用触媒全量に対する存在割合が、金属換算で0.025〜30質量%である、請求項1に記載のアミド基還元用触媒。
【請求項3】
担体が塩基性表面を有する固体である、請求項1に記載のアミド基還元用触媒。
【請求項4】
担体が塩基性表面を有する金属酸化物である、請求項3に記載のアミド基還元用触媒。
【請求項5】
ルテニウムと、周期律表第5族元素及び周期律表第6族元素からなる群より選択された少なくとも一種の金属元素とを担体に含浸させた後、この含浸物を乾燥処理し、次いで焼成処理するアミド基還元用触媒の調製方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアミド基還元用触媒の存在下、一般式(1)
【化1】

(式中、nは、1〜5の整数、R、R及びRは、水素原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。)
で示されるアミド化合物と還元性ガスとを反応させる一般式(2)
【化2】

(式中、n、R、R及びRは、前記と同義である。)
で示されるアミノメチル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−143719(P2012−143719A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4803(P2011−4803)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】