説明

アミド形成性化学結合

α−ケト酸またはその塩と、酸素、窒素およびイオウから選択された原子に共有結合した窒素を含むアミンまたはその塩とを脱カルボキシル縮合反応で反応させることによってアミドが形成される。アミド結合はケト酸のα−炭素とアミンの窒素との間に形成される。α−ケト酸は新規なイオウ試薬を使用して形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野はα−ケト酸とアミンとの脱カルボキシル縮合反応によるアミドの形成である。
【背景技術】
【0002】
アミド結合はその遍在性および重要性にもかかわらず、意外にも、反応メカニズムの明らかな製造方法がほとんど存在していない。分子間カップリングとしては活性化カルボキシレートにアミンを添加することによってほぼ画一的にアミドが合成される[1]。カルボン酸とアミンとを出発材料として使用するこの体系によって固相ペプチド合成方法の広汎な使用が可能になり、生物系におけるペプチド組立の基礎が築かれた。この縮合方法には官能基許容性および化学選択性が極めてよくないという問題があり、従って、水性条件下の非保護フラグメントによる直接アミド化という新しい解決方法が奨励されるようになった。これに関しては、N−末端システインまたは類縁誘導体とC−末端チオエステルとが化学選択的に結合できる天然型ペプチド結合反応が同定されたことが最近発表され[2,3]、これは、修飾されたタンパク質およびその他の複合アミド主体構造の合成方法の開発を劇的に推進した。このチオエステル結合方法は重要でありまた広く使用されているが、方法が遊離N−末端スルフヒドリルを含有する基質に限定されるという固有特性を有するので、より普遍的な代替方法が大いに要望されている[4,5]。
【0003】
理想的なペプチド結合では、慣用の直交反応性の官能基を含有する非保護前駆物質の水性条件下の直接カップリングが試薬、触媒または副生物の付随しないアミド結合を与えるであろう。我々はここに、α−ケト酸とアミン誘導体との直接カップリングによって、試薬非使用のゆるやかな条件下で、副生物として二酸化炭素と水またはアルコールしか生じることなく、天然型ペプチド結合を生じさせるという目標に到達したことを報告する。
【発明の開示】
【0004】
本発明の1つの態様は、脱カルボキシル縮合反応でα−ケト酸またはその塩と、酸素、窒素およびイオウから選択された原子に共有結合した窒素を含むアミンまたはその塩とを反応させ、これによりケト酸のα−炭素とアミンの窒素との間にアミド結合を形成させる段階を含むアミドの形成方法である。
【0005】
1つの実施形態では、α−ケト酸が式(1):
【0006】
【化13】

の構造を有しており、アミンが式(2):
【0007】
【化14】

の構造を有しており、アミドが式(3):
【0008】
【化15】

の構造を有しており、
式中の、
およびRは独立に、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアルケニルおよびヘテロアルケニル、置換または未置換のアルキニルおよびヘテロアルキニル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、炭水化物部分、アミノ酸部分、ペプチド部分、ヌクレオチド部分、ヌクレオシド部分ならびにペプチド核酸部分から選択され、
Xは、酸素原子、窒素原子およびイオウ原子から選択され、
は、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアルケニルおよびヘテロアルケニル、置換または未置換のアルキニルおよびヘテロアルキニル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、ならびに、XをRに連結して窒素原子と共に4から7原子の置換または未置換の複素環を形成する結合から選択され、
’は、Rであるか、または、Rが結合であるときはRの開環反応生成物である。
【0009】
1つの実施形態では、アミンが式(4):
【0010】
【化16】

の構造を有しており、
式中の
Xは、酸素原子、窒素原子およびイオウ原子から選択され、
Yは、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のオキシアルキル、置換または未置換のオキシアリールおよびヘテロオキシアリール、置換または未置換のチオアルキルおよびヘテロチオアルキル、置換または未置換のチオアリールおよびヘテロチオアリールから選択され、
からRは独立に、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、酸素、窒素、ならびに、前記RからRの異なる1つに連結して環を形成する結合から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、アミンがイソオキサゾリジン、N−アルキルヒドロキシルアミン、N,O−ジアルキルヒドロキシルアミン、N−アルキル,O−アシルヒドロキシルアミン、および、ペプチドヒドロキシルアミンから成る群から選択される。
【0012】
特定実施形態では、反応が追加の試薬または触媒に依存しない。いくつかの実施形態では、反応によって生成される主な副生物が水およびCO、または、アルコールおよびCOである。
【0013】
いくつかの実施形態では、反応が0℃から150℃、好ましくは25℃から75℃で生じる。
【0014】
別の実施形態では反応が固相で生じる。
【0015】
別の実施形態では、反応段階に先立って、式(5):
【0016】
【化17】

のカルボン酸を、式(6):
【0017】
【化18】

のイオウ試薬またはその塩と、式(7):
【0018】
【化19】

のイオウイリドを形成する反応条件下で化合させて、イオウイリドを酸化剤および水に接触させてα−ケト酸を形成させることによってα−ケト酸を合成する。式中のRは上記の定義と同義であり、
10は、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリールから選択され、
11は、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、ならびに、R10に連結して置換または未置換の4から7原子の複素環を形成する結合から選択される。
【0019】
特定実施形態では、イオウ試薬が式(8):
【0020】
【化20】

を有しており、イオウイリドが式(9):
【0021】
【化21】

を有している。
【0022】
本発明の別の態様は、式(10):
【0023】
【化22】

の化合物またはその塩である。式中のAは水素原子またはC(O)Rであり、R、R10およびR11は上記の定義と同義である。
【0024】
化合物の1つの実施形態では、R11が、R10に連結してチオランまたはチアン環を形成する結合である。
【0025】
別の実施形態では、Aが水素原子であり、R10がC5−C6アルキルであり、R11が、R10に連結してチオランまたはチアン環を形成する結合である。
【0026】
化合物の別の実施形態では、Aが水素原子であり、R10がC0−C6アルキルカルボン酸で置換されたC5−C6アルキルであり、R11が、R10に連結してC0−C6アルキルカルボン酸で置換されたチオランまたはチアン環を形成する結合である。
【0027】
別の実施形態では、化合物が固相に結合している。
【0028】
化合物の1つの実施形態では、Rがペプチド部分である。
【0029】
本発明の別の態様は、式中のAが水素原子を表す化合物の製造方法であり、方法は、チオエーテルをハロゲノニトリルと反応させて化合物を形成する段階と、化合物を回収する段階とを含む。好ましい実施形態では、ハロゲノニトリルが、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリルおよびヨードアセトニトリルから成る群から選択される。
【0030】
本発明の別の態様は、式(5):
【0031】
【化23】

のカルボン酸を式(6):
【0032】
【化24】

のイオウ試薬またはその塩と、式(7):
【0033】
【化25】

のイオウイリドを形成する反応条件下で化合させて、該イオウイリドを酸化剤および水に接触させて式(1):
【0034】
【化26】

のα−ケト酸を形成する段階を含むα−ケト酸の合成方法である。式中のR、R10およびR11は上記の定義と同義である。
【0035】
本発明の特定実施形態の詳細な説明
本発明の1つの態様はα−ケト酸とアミン誘導体との新規な脱カルボキシル縮合反応であり、該方法は有機または水性条件下に無試薬で行うアミドの直接合成方法を提供し、追加の試薬または触媒は不要である。方法は、α−ケト酸またはその塩をアミンまたはその塩と反応させる段階を含み、該アミンは、酸素、窒素またはイオウ原子に共有結合した窒素原子を含み、ケト酸のα−炭素とアミンの窒素との間にアミド結合が形成される。
【0036】
1つの実施形態で、α−ケト酸は式(1):
【0037】
【化27】

の構造を有しており、アミンは式(2):
【0038】
【化28】

の構造を有しており、アミドは式(3):
【0039】
【化29】

の構造を有している。
【0040】
上記構造中で、RおよびRは独立に、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアルケニルおよびヘテロアルケニル、置換または未置換のアルキニルおよびヘテロアルキニル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、炭水化物部分、アミノ酸部分、ペプチド部分、ヌクレオチド部分、ヌクレオシド部分ならびにペプチド核酸部分から選択され、
Xは、酸素、窒素およびイオウから選択され、
は、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアルケニルおよびヘテロアルケニル、置換または未置換のアルキニルおよびヘテロアルキニル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、ならびに、XをRに連結し窒素原子と共に置換または未置換の4から7原子の複素環を形成する結合から選択され、
’は、Rであるか、または、Rが結合であるときはRの開環反応生成物である。Rの開環反応生成物の一例は、アミンが式15のイソオキサゾリジンを表す後出の反応スキームで示される。
【0041】
本文中に使用した“ヘテロ原子”という用語は、酸素(O)、窒素(N)、イオウ(S)およびケイ素(Si)を含む。
【0042】
単独でまたは別の置換基の一部として使用した“アルキル”という用語は、異なる記述がない限り、指定数の炭素原子(すなわち、C1−C8は、1から8個の炭素を意味する)を有している完全飽和した直鎖状または分枝状または環状の炭化水素基またはその組合せを意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えばn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどの同族体および異性体を含む。
【0043】
単独でまたは別の置換基の一部として使用した“アルケニル”という用語は、指定数の炭素原子(すなわち、C2−C8は、2から8個の炭素を意味する)と1つ以上の二重結合とを有しているモノ−またはポリ不飽和の直鎖状または分枝状または環状の炭化水素基またはその組合せを意味する。アルケニル基の例は、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、ならびに、より高級なそれらの同族体および異性体である。
【0044】
単独でまたは別の置換基の一部として使用した“アルキニル”という用語は、指定数の炭素原子(すなわち、C2−C8は、2から8個の炭素を意味する)と1つ以上の三重結合とを有しているモノ−またはポリ不飽和の直鎖状または分枝状の炭化水素基またはその組合せを意味する。アルキニル基の例は、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、ならびに、より高級なそれらの同族体および異性体である。
【0045】
単独でまたは別の置換基の一部として使用した“アルキレン”という用語は、−CH2−CH2−CH2−CH2−によって例示されるようなアルキル由来の二価の基を意味する。典型的にはアルキル(またはアルキレン)基は1から24個の炭素原子を有するであろうが、本発明では10以下の炭素原子を有している基が好ましい。“低級アルキル”または“低級アルキレン”は一般に8以下の炭素原子を有している短鎖のアルキルまたはアルキレン基である。
【0046】
“アルコキシ”、“アルキルアミノ”および“アルキルチオ”(またはチオアルコキシ)という用語は、それらの慣用の意味で使用されており、それぞれ酸素原子、アミノ基またはイオウ原子を介して分子の残りの部分に結合したアルキル基を表す。
【0047】
単独でまたは別の用語と組合せて使用された“ヘテロアルキル”という用語は、異なる記述がないならば、記述された数の炭素原子とO、N、SiおよびSから成る群から選択された1から3個のヘテロ原子とから構成された安定な直鎖状または分枝状または環状の炭化水素基を意味する。上記の窒素原子およびイオウ原子は場合によっては第四級化され得る。ヘテロ原子O、NおよびSはヘテロアルキル基のいずれかの内部位置に配置され得る。ヘテロ原子Siは、アルキル基が分子の残りの部分に結合している位置も含めたヘテロアルキル基のいずれかの位置に配置されることができ、まれる。実例は、−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−CH2−N(CH3)−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2、−S(O)−CH3、−CH2−CH2−S(O)2−CH3、−CH=CH−O−CH3−Si(CH3)3、−CH2−CH=N−OCH3および−CH=CH−N(CH3)−CH3を含む。例えば−CH2−NH−OCH3および−CH2−O−Si(CH3)3のように2つ以下のヘテロ原子が連続してもよい。
【0048】
同様に、単独でまたは別の置換基の一部として使用した“ヘテロアルキレン”という用語は、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−および−CH2−S−CH2−CH2−NH−CH2−によって例示されるようなヘテロアルキルに由来の二価の基を意味する。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子は、一方または双方の鎖末端の位置を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ、など)。また、アルキレンおよびヘテロアルキレン結合基については結合基の配向は考慮に入れない。
【0049】
単独でまたは別の用語と組合せて使用された“シクロアルキル”および“ヘテロシクロアルキル”という用語は、異なる記述がないならば、それぞれ“アルキル”および“シクロアルキル”の環状形態を表す。従って、シクロアルキル基は、指定数の炭素原子を有しており(すなわち、C3−C8は3から8個の炭素を意味する)、また、1または2個の二重結合を有している。ヘテロシクロアルキル基は、指定数の炭素原子と、O、N、SiおよびSから成る群から選択された1から3個のヘテロ原子とから構成され、上記の窒素およびイオウ原子は場合によっては酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は場合によっては第四級化されてもよい。さらにヘテロシクルアルキルの場合、ヘテロ原子は複素環が分子の残りの部分に結合している位置に存在できる。シクロアルキルの例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、2−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどを含む。ヘテロシクロアルキルの例は、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリド−イル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどを含む。
【0050】
単独でまたは別の置換基の一部として使用された“ハロ”および“ハロゲン”という用語は、異なる記述がないならば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。さらに、“ハロアルキル”のような用語は、1から(2m’+1)の範囲の数の同じまたは異なるハロゲン原子で置換されたアルキルを含意しており、ここにm’はアルキル基中の炭素原子の総数を表す。例えば、“ハロ(C1−C4)アルキル”という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含む。従って“ハロアルキル”という用語は、モノハロアルキル(1個のハロゲン原子で置換されたアルキル)およびポリハロアルキル(2から(2m’+1)の範囲の数のハロゲン原子で置換されたアルキル、ここにm’はアルキル基中の炭素原子の総数を表す)を包含する。“ペルハロアルキル”という用語は、異なる記述がないならば、(2m’+1)個のハロゲン原子で置換されたアルキルを意味しており、ここにm’はアルキル基中の炭素原子の総数を表す。例えば、“ペルハロ(C1−C4)アルキル”という用語は、トリフルオロメチル、ペンタクロロエチル、1,1,1−トリフルオロ−2−ブロモ−2−クロロエチルなどを含む。
【0051】
“アシル”という用語は、有機酸のヒドロキシ部分の除去によって得られる有機酸由来の基を表す。従って、アシルは、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、デカノイル、ピバロイル、ベンゾイルなどを含む。アシル基は一般式R−C(=O)Yを有しており、式中のRは結合であるかまたは1から12C原子のアルキルであり、Yは水素原子(アルデヒド)、アルキル(ケトン)、NHまたはN−アルキル(アミド)、O−アルキル(エステル)、OH(カルボン酸)、OCO−アルキル(無水物)およびハロゲン(アシルハロゲン化物)から選択される。
【0052】
“アリール”という用語は、異なる記述がないならば、単環式または互いに融合もしくは共有結合した多環式(三環以下)の、典型的には芳香族のポリ不飽和炭化水素置換基を意味する。アリール基の非限定例は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、インドリル、インダニルおよびインデニルを含む。
【0053】
“ヘテロアリール”という用語は、N、OおよびSから選択された0から4個のヘテロ原子を含有しているアリール基(または環)を表す。これらの窒素原子およびイオウ原子は場合により酸化され、窒素ヘテロ原子は場合により第四級化されている。ヘテロアリール基はヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合できる。ヘテロアリール基の非限定例は、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリルおよび6−キノリルを含む。
【0054】
他の用語と組合せて使用されたときの“アリール”という用語(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)は、上記に定義のアリール環およびヘテロアリール環の双方を包含する。従って、“アリールアルキル”という用語は、アルキル基にアリール基が結合した基(例えばベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含意し、このアルキル基の炭素原子が例えば酸素原子によって置換された場合(例えばメチレン基)も含む(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシプロピルなど)。
【0055】
上記用語(例えば、“アルキル”、“ヘテロアルキル”、“アリール”および“ヘテロアリール”)のおのおのは、記述した基の置換形態および未置換形態の双方を含意する。各種基の好ましい置換基を以下に提示する。
【0056】
アルキルおよびヘテロアリール基(ならびに、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルと表される基)の好ましい置換基は、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R''、≡N、=S、−SR’、ハロゲン、−SiR’R''R'''、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R''、−OC(O)NR’R''、−NR''C(O)R’、−NR’−C(O)NR''R'''、−NR’−SO2NR'''、−NR''CO2R’、−NH−C(NH2)=NH、−NR’C(NH2)=NH、−NH−C(NH2)=NR’、−S(O)R’、−SO2R’、−SO2NR’R''、−NR''SO2R、−CNおよび−NO2から選択される0から3個の範囲の様々な基であり、0、1または2つの置換基を有する基が特に好ましい。R’、R''およびR'''のおのおのは独立に、水素、未置換の(C1−C8)アルキルおよびヘテロアルキル、未置換アリール、1から3個のハロゲンで置換されたアリール、未置換のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または、アリール−(C1−C4)アルキル基を表す。R’とR''とが同じ窒素原子に結合しているとき、それらは窒素原子と共に5−、6−または7−員の環を形成する。例えば、−NR’R''は、1−ピロリジニルおよび4−モルホリニルを含意する。典型的には、アルキルまたはヘテロアルキル基が0から3個の置換基を含むであろうが、本発明では2個以下の置換基を有している基が好ましい。より好ましくは、アルキルまたはヘテロアルキル基が未置換であるかまたはモノ置換であろう。最も好ましくはアルキルまたはヘテロアルキル基が未置換であろう。置換基に関する上記の論議から、“アルキル”という用語がトリハロアルキル基(例えば、−CF3および−CH2CF3)を含意することは当業者に理解されよう。
【0057】
同様に、アリール基およびヘテロアリール基の置換基は多様であり、ハロゲン、−OR’、−OC(O)R’、−NR’R''、−SR’、−R’、−CN、−NO2、−CO2R’、−CONR’R''、−C(O)R’、−OC(O)NR’R''、−NR''C(O)R’、−NR''CO2R’、−NR’−C(O)NR''R'''、−NR’−SO2NR''R'''、−NH−C(NH2)=NH、−NR’C(NH2)=NH、−NH−C(NH2)=NR’、−S(O)R’、−SO2R’、−SO2NR’R''、−NR''SO2R、−N3、−CH(Ph)2、ペルフルオロ(Cl−C4)aアルコキシおよびペルフルオロ(Cl−C4)アルキルから選択され、その数は0から芳香環系の開原子価の総数までの範囲である。これらのR’、R''およびR'''は独立に、水素、(C1−C8)アルキルおよびヘテロアルキル、未置換のアリールおよびヘテロアリール、(未置換アリール)−(C1−C4)アルキルおよび(未置換アリール)オキシ−(C1−C4)アルキルから選択される。典型的には、アリールまたはヘテロアリール基が0から3個までの置換基を有するであろうが、2個以下の置換基を有する基が好ましい。本発明の1つの実施形態で、アリールまたはヘテロアリール基は未置換またはモノ置換であろう。
【0058】
XおよびR−基は反応適合性であり、場合によっては有機合成に常用の保護基を含む(参照:例えば、Spivey & Maddaford,Annu.Rep.Prog.Chem.,Sect.B,1999,95:83−95)。例えば、Rおよび/またはRがアミノ酸またはペプチド部分である場合、アミノ酸は場合によっては側鎖保護基(例えば、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、t−ブチル(tBu)など)を有し得る。結合反応は保護および非保護の双方のペプチド部分に行うことができ、標準保護基は結合化学を妨害しない。
【0059】
がXをRに連結する結合を表すアミンの特定実施形態では、複素環が5から6原子を有している。式(4)の構造の代表例は、
【0060】
【化30】

であり、式中のYは、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のオキシアルキル、置換または未置換のオキシアリール、置換または未置換のチオアルキル、ならびに、置換または未置換のチオアリールから選択され、RからRは独立に、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、酸素、窒素、ならびに、上記のRからRの異なるひとつに連結して環を形成する結合から選択される。
【0061】
アミンが式4の構造を有している好ましい実施形態では、Rがアミノ酸側鎖基であるかまたはアミノ酸側鎖基に連結したアルキルであり(例えば、以下の構造12参照)、RからRが水素原子であり、Yがオキシアルキル基であり、Rがエステル基である。この構造を有している代表的なアミンは、以下のイソオキサゾリジン(化合物11−13)を含み、われわれはこれらをニトロン環状付加によって鏡像異性的に純粋な形態で合成した:
【0062】
【化31】

【0063】
イソオキサゾリジン基質を使用する代表的な反応を以下に示す:
【0064】
【化32】

【0065】
別の実施形態では、方法に使用するアミンを、N−アルキルヒドロキシルアミン、N,O−ジアルキルヒドロキシルアミン、N−アルキル,O−アシルヒドロキシルアミン、および、ペプチドヒドロキシルアミンから選択する。また別の好ましいアミンの実施形態では、Rがピラノースまたはフラノースのような炭水化物部分である。代表的なアミンの製造は実施例3に示す。
【0066】
われわれの脱カルボキシル縮合反応においては、α−ケト酸およびアミンが追加の試薬または触媒を使用しないゆるやかな条件下で直接結合して天然型ペプチド結合を生じることができるので、反応によって生じる主な副生物は、使用するアミン反応体次第で水とCOまたはアルコールとCOである。反応は典型的には0℃から150℃の温度範囲、より典型的には25℃から75℃の温度範囲で生じ得る。様々な適正反応条件を実施例1、表1に詳細に示す。
【0067】
1つの実施形態では反応を固相で行わせる。例えば、アミン樹脂のような固相に結合したイオウイリド試薬を使用してα−ケト酸を製造できる(後出の構造19参照)。
【0068】
本発明の別の態様は、上述のアミド形成方法に反応体として使用できるα−ケト酸の合成方法である。α−ケト酸の合成方法は、式(5):
【0069】
【化33】

のカルボン酸を式(6):
【0070】
【化34】

のイオウ試薬、またはその塩と、式(7):
【0071】
【化35】

のイオウイリドが形成される反応条件下で化合させる段階と、イオウイリドを酸化剤および水に接触させて式(1):
【0072】
【化36】

のα−ケト酸を形成する段階とを含む。
【0073】
式中のRは上記の記載と同義であり、R10は、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリールから選択され、R11は、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、ならびに、R10に連結して置換または未置換の4から7原子の複素環を形成する結合から選択される。
【0074】
反応に使用できる適当な酸化剤は、DupontのOxone(R)、mCPBA、ジメチルジオキサラン(DMDO)、オゾン、ブリーチ(NaOCl)、第三級アミンオキシド、マグネシウムモノペルフタレート、過酸化水素などである。α−ケト酸合成の代表的な反応条件は実施例2に詳述する。特定実施形態ではRがジ−、トリ−またはテトラ−ペプチドである。
【0075】
特定実施形態で、イオウ試薬は式(8):
【0076】
【化37】

を有しているかまたはその塩であり、イオウイリドは式(9):
【0077】
【化38】

を有している。
【0078】
本発明の別の態様は、上述のようなイオウ試薬またはイオウイリドまたはその塩であり、これらは上位概念的に式(10):
【0079】
【化39】

によって表される。
【0080】
式中の、Aは水素原子またはC(O)Rであり、R、R10およびR11は上記と同義である。いくつかの好ましい実施形態では、Rがペプチド部分である。特定実施形態では、R11がR10に連結してチオランまたはチアン環を形成する結合である。別の実施形態では、Aが水素原子であり、R10がC5−C6アルキルであり、R11がR10に連結してチオランまたはチアン環を形成する結合である。1つの実施形態では化合物が固相に結合している。C0−C6アルキルカルボン酸で置換されたチオラン環またはチアン環が固相結合に特に適している。特定実施形態では、Aが水素原子であり、R10がC0−C6アルキルカルボン酸で置換されたC5−C6アルキルであり、R11が、R10に連結してC0−C6アルキルカルボン酸で置換されたチオランまたはチアン環を形成する結合である。一般式10を有している具体的なイオウ試薬は以下を含む:
【0081】
【化40】

【0082】
化合物17および18は固相合成に使用するための代表的構造である(n=0−6):
【0083】
【化41】

【0084】
これらの構造は、例えば構造19に示すようなアミン樹脂に結合させることによって既存の樹脂を修飾するためのリンカーとして容易に使用できる。その後、アミン樹脂を酸化してα−ケト酸とし、固相アミド合成に使用できる:
【0085】
【化42】

【0086】
イオウ試薬は、対応するチオエーテルをハロゲノニトリルと反応させて化合物を形成し、該化合物を回収することによって製造できる。好ましいハロゲノニトリルは、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリルおよびヨードアセトニトリルである。イオウ試薬を合成するための代表的な反応条件は実施例2に詳述する。上述のイオウ試薬の塩は、正電荷をもつイオウ原子(およびイオウ原子をアセトニトリル基に連結する単結合)と対イオン(例えば、Br、Cl、I、TfO、ClO、BF、AcO、CF、PFなど)とを有している。
【実施例1】
【0087】
α−ケト酸とN−アルキルヒドロキシルアミンとの脱カルボキシル縮合
われわれは、試薬非使用のゆるやかな条件下のα−ケト酸とN−アルキルヒドロキシルアミンとの直接カップリングが天然型ペプチド結合を形成し、副生物として水と二酸化炭素しか生じないことを示す(反応方程式1)。
【0088】
【化43】

【0089】
本発明の脱カルボキシルアミド化という着想は、カルボン酸とアミンとの縮合によるアミドの形成は速度論的にも熱力学的にも効率がよくないが類縁のカルボニルとN−アルキルヒドロキシルアミンとの縮合によるニトロンの形成は一般に効率的なプロセスであるという認識から生まれた。ケトンがヒドロキシルアミンとゆるやかな条件下で縮合して対応するニトロンを形成することはめったになく、むしろ準安定ヘミアミナールが形成される[6]。われわれは、N−アルキルヒドロキシルアミンとα−ケト酸との反応が上記反応スキームでAを生成し、これが脱カルボキシル化脱水を生じて所望のアミド生成物に到達すると推論した。α−ケト酸の酸化性脱カルボキシル化による他のカルボン酸誘導体の合成は以前にも記載されている[7]。
【0090】
試薬、触媒、脱水用試薬または添加剤は全く不要である。反応の進行は明らかなアミド生成物形成を示し、反応は一般に15時間以内に完了する。反応溶媒としてはDMSO、CHCN、NMPおよびMeOHのような他の極性溶媒がDMFと同等に有効であった。さらに、アミド結合形成は、純HOもしくは水性バッファ中の懸濁液を使用する水性条件下またはHOもしくはバッファと助溶媒となるDMSOもしくはDMFとの可溶性混合物中で生じた。われわれは典型的には結合反応を水性DMSOまたはDMF中、0.1M濃度で行ったが、0.001Mという低い反応体濃度も有効であり反応時間中の不利益な反応低下はない。遊離ケト酸およびヒドロキシルアミンまたはそれらの対応する塩が適当な出発材料であることも好都合である。
【0091】
2つの代表的基質、フェニルピルビン酸(20)およびN−フェネチルヒドロキシルアミン(21)のカップリングはこのプロセスの容易性を証明する(反応方程式1a)。
【0092】
【化44】

【0093】
【表1】

【0094】
これらの化合物の溶液を単に加温するだけで15時間後に待望のアミド(18)が70%の収率で直接的に得られる。反応スクリーニング中のわれわれの懸念は、遊離塩基形態のヒドロキシルアミンの製造および取扱いが難しいことであった。従って、ヒドロキシルアミンの塩がアミド化反応で同等の、場合によってはより高い効率を示すという知見はわれわれを歓喜させ、高度に結晶質の安定なヒドロキシアミンモノオキサレートを実際の基質として選択した(試験番号2)。同様に、プロトン付加ケト酸またはそれらのカルボキシレート塩も適当な反応体である(試験番号3)。DMSO、MeOHおよびNMPのような他の極性溶媒も適格であった(試験番号4−7)。さらに、アミド結合形成は、純HOもしくは水性バッファ中の懸濁液を使用する水性条件下、または、HOと助溶媒となるDMAとの可溶性混合物中で生じた。反応は典型的には1.0当量のケト酸、1.2当量のヒドロキシルアミンオキサレートを使用し、40℃、0.1Mで行ったが、もっと低い濃度(0.01M、0.005M)およびその他の反応体化学量論でも有効であった。逆相HPLCによる反応のモニターは明らかな生成物形成を示した。
【0095】
ケト酸−ヒドロキシルアミン結合がポリペプチドフラグメントからの天然型ペプチド結合の合成を強化する能力をもつことに注目し、われわれは2つの重要な問題の解決を図った。第一に、基質をエピマーおよびエナンチオ濃縮の双方の形態で製造することによって反応進行中のα−ケト酸の立体配置安定性を確立した。ケト酸(23)(1H NMRで>15:1 dr)と(S)−N−ヒドロキシアラニンtert−ブチルエステル(24)とのカップリングは待望のアミド(25)を62%の単離収率で生成した(スキーム1)。
【0096】
【化45】

【0097】
このようにして得られた(25)を従来のカップリング試薬主体の方法またはケト酸−ヒドロキシルアミンカップリングによってrac−Pheから合成した真正エピマー混合物に比較すると、有意なエピマー化を伴うことなく結合反応が進行することが確認された(HPLCで19:1 dr)。α−ケト酸が反応条件下で立体配置的に安定であることが普通に観察され、われわれは、本来の立体化学特性を損なうことなく多くのケト酸−ヒドロキシルアミン結合を行った。α−ケト酸の立体配置の安定性は従来の知見に一致している[8]。
【0098】
第二に、われわれは、遊離アミン、カルボン酸、アジドおよび複素環のような反応性官能基に対するこの方法の高い許容度を確認した。われわれは先ず保護ヒドロキシルアミンを使用し、該アミンと遊離リシンおよびアスパラギン酸側鎖のような常用の官能基を含有するα−ケト酸との反応の試みに成功した(スキーム2;表2)。
【0099】
【化46】

【0100】
【表2】

【0101】
われわれはまた、この反応がAla−Ala、Phe−Ala、Val−Gly、Ala−PheおよびPro−Alaを含む様々なカップリング部位でペプチド結合を形成できることを証明した。ケト酸、および、グリシン以外のアミノ酸に由来のヒドロキシルアミンを使用することは、双方の反応パートナーの選択範囲が極めて広いこと、および、既存の方法を補う立体障害許容性をもつことが証明された点で特に重要である。この方法は、他の多くの結合部位および基質に適している。
【0102】
重要視すべきは、完全非保護ヒドロキシルアミンおよびケト酸もカップリングによって待望のペプチド結合生成物を与えたことである(スキーム3)。すなわち、HN−Lys−Ala−Phe−COOH(32)は、湿性DMF(0.05M)中、40℃でHONH−Ala−Asp−Phe−OH(33)と反応し、分取逆相HPLCによれば75%の単離収率でペプチド(34)を形成した。pH5の酢酸バッファ中で同じ実験を行うと、反応速度は遅かったが等しい生成物が得られた。
【0103】
【化47】

【0104】
ペプチドヒドロキシルアミンは、Fukuyamaの方法[10]によってN−末端アミンから容易に製造される公知の化合物である[9]。得られた側鎖保護ペプチドヒドロキシルアミンを標準条件下で脱保護できる。代表的なヒドロキシルアミンの製造を実施例3に詳述する。
【0105】
既存のC−末端ケト酸製造方法[11]は単純基質の製造に適しており、実施例2に詳述したわれわれの新規なα−ケト酸合成方法は、ケト酸−ヒドロキシルアミン結合を得るための、より大きく完全非保護の鏡像異性的に純粋なC−末端ケト酸基質の製造を可能にする。
【0106】
α−ケト酸とヒドロキシルアミンとのカップリングは、反応性官能基の存在下で進行し、副生物として水とCOだけが生成する強力な化学選択的アミド結合形成である。この反応は非保護分子のカップリングに有用であり、タンデム結合戦略に有用である[12]。アミド結合形成のために試薬を必要としないその独特の処理体系はさらに、鋳型特異的合成にも用途を有している。
【実施例2】
【0107】
新規なイオウ試薬およびα−ケト酸を製造するためのその使用
われわれは、新規なイオウ試薬を使用する新規なα−ケト酸の合成方法を開発した。方法は、ケト酸−ヒドロキシルアミン結合用のより大きく完全非保護の鏡像異性的に純粋なC−末端ケト酸の製造を可能にする。
【0108】
イオウ試薬の製造:
【0109】
【化48】

【0110】
アセトン(スルフィドに対して2ml/g)の撹拌溶液にテトラヒドロチオフェン(35)を添加し、次いで、ブロモアセトニトリル(36)(1.1当量)を添加する。混合物を36から48時間撹拌する。形成された白色固体(38)をフィルターに収集し、アセトンで洗浄し、次いで真空下で乾燥する。以後の反応にこの塩を直接使用できる。
【0111】
イオウイリドの形成
【0112】
【化49】

【0113】
塩をCHCl(2ml)に懸濁させる。次に、KCO(1.13mlの飽和水溶液)およびNaOH(0.22ml,12N)を添加する。混合物を室温で45分間撹拌し、次いでセライトで濾過し、NaSOで乾燥し、濾過し、真空下で溶媒を除去する。得られたイオウ試薬(39)を以後の反応に最適に直接使用できる。
【0114】
イオウイリドとカルボン酸とのカップリング手順
【0115】
【化50】

【0116】
DCM(0.2M)中のカルボン酸(5)の溶液にHOBT(1.3当量)およびEDCI(l.l当量)を0℃で添加する。得られた混合物を0℃で30分間撹拌し、次いで試薬(8)のDCM溶液を一回で(2.5当量)添加し、得られた溶液を0℃で5分間撹拌し、次に室温に加温し、完了まで撹拌を継続する(通常は15分から1時間)。粗混合物を分離漏斗に移し、HCl(1N)を添加する。得られた層を分配し、分離する。水層をDCMで3回抽出し、得られた有機抽出物を集めてNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮し、シリカゲルで精製すると、所望のイオウイリド生成物(9)が得られる。これらの化合物は極めて極性である。生成物をカラムから回収するためにはEtOAc/アセトン/MeOHの混成溶媒およびDCMが適当である。
【0117】
化合物40は
【0118】
【化51】

で表される。
【0119】
加えて、以下の化合物も製造した:
【0120】
【化52】

【0121】
α−ケト酸の製造
【0122】
【化53】

【0123】
THFおよび水(2:1)中のイオウイリド(9)の溶液に、オキソン(2.0当量)を添加する。混合物を完了まで撹拌する。反応時間は一定でない。しかしながら、大抵の基質は1−1.5時間以内に完全に酸化する。遊離アミンが存在しないならば、次に粗反応混合物を分離漏斗に入れる。次に希HCl、EtOAcを順次に加える。水層をEtOAcで3回抽出し、集めた有機抽出物をNaSOで乾燥し、濾過し、溶媒を最少量まで除去した時点で、選択溶媒(DMSO、DMF、HO)を添加し、残りの揮発性溶媒を除去する。得られた溶液は、以後の反応に直接使用できる所望のケト酸(1)を含有している。基質が遊離アミン基を含有しているならば、次に粗混合物を直接にC18カラムに充填することによって精製する。
【0124】
注:完全保護基質には0.1M溶液の処理が最良である。遊離アミンが存在するならば、0.01Mが最適である。酸化が良好でない様子ならば、酸化が完了するまでオキソンを一回に0.2当量ずつ添加する。反応は逆相HPLCでモニターするのが最良である。
【0125】
代表的な反応および生成物:
【0126】
【化54】

【0127】
われわれはまた、イオウイリドが安定であり、Fmoc脱保護され付加アミノ酸にカップリングできることを証明した(スキーム5)。この方法は酸不安定側鎖が保護されたFmoc化学によって基質を製造するときに極めて有効である。結合反応は保護および非保護の双方のペプチドフラグメントに行うことができ、標準保護基は結合化学を妨害しない。われわれの研究は、α−ケト酸が結合段階中にエピマー化しないことを示した。おそらく、反応メカニズム、および、結合反応に用いる弱酸性媒体の双方がその理由であろう。他のケト酸製造方法は劣等である。例えば、ワッセルマンのリンイリド方法では広汎なエピマー化が生じる(J.Org.Chem.(1994)59:4364−4366)。
【0128】
【化55】

【0129】
この方法によってかなりの数のジ−、トリ−およびテトラペプチドケト酸を製造した。選択した基質は
【0130】
【化56】

を含む。
【実施例3】
【0131】
アミン試薬の製造
O−未置換ヒドロキシルアミン
O−未置換ヒドロキシルアミンは、完全保護(側鎖およびC−末端)N−末端アミノ酸またはペプチドからFukuyama法[10]によって製造する。得られた保護ヒドロキシルアミンは酸性条件下(すなわちTFA)で完全に脱保護できる。われわれはまた、成長ペプチド鎖のN−末端にカップリングさせるための適当なN−BocおよびN−Fmoc保護N−ヒドロキシルアミンの合成にFukuyamaの手順を使用した。N−ヒドロキシペプチドが公知化合物であることに注目されたい(参照:Chem.Rev.1986,86,697−707)。この方法で製造した選択ヒドロキシルアミンを以下に示す:
【0132】
【化57】

【0133】
ここでは上記化合物73の製造を詳述する。撹拌棒を備えた10ml容の丸底フラスコをアルゴン下に維持して、FmocAlaPheAlaAsp(Otbu)Ile(Otbu)(869mg,1.01mmol)、DMF(5ml)およびモルホリン(2ml)を導入した。混合物を室温で2時間撹拌した。完了後、減圧下に溶媒を除去した。次いで残留物にメタノールを添加し、白色沈殿物を濾別し、メタノール(100ml)で洗浄した。得られた溶液を減圧下に維持してメタノールを除去し、次いでトルエンを添加し、真空下に除去すると粗アミンが得られた。得られた残留物を撹拌棒を備えた25ml容の丸底フラスコにアルゴン下で移した。残留物にアセトニトリル(10ml)およびDIEA(0.86ml)を添加した。混合物を室温で5分間撹拌し、この時点でブロモアセトニトリル(75μl)を添加した。混合物を70℃で4時間加熱した。完了後、減圧下で溶媒を除去した。得られた残留物にCHCl(50ml)および飽和NaHCO(50ml)を添加した。次いで溶液有機層を分離し、得られた水層をCHCl(50ml)でさらに2回抽出した。集めた有機抽出物を次にブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた残留物を、シリカゲル上でEtOAc/Hex,70:30で溶出させることによって精製すると、所望の生成物(74)が収率83%で得られた。
【0134】
【化58】

【0135】
撹拌棒を備えた25ml容の丸底フラスコをアルゴン下に維持して化合物74(315mg,0.46mmol)およびCHCl(5ml)を導入した。溶液を0℃に冷却し、MCPBAを6回に分けて5分毎に添加した(毎回48mg,0.15mmol)。次に混合物を室温に昇温させ、さらに30分間撹拌し、次いで0℃に冷却し、水(1ml)および飽和NaHCO(2ml)に入れたNa(145mg,0.92mmol)を添加した。混合物が均質になるまで撹拌を継続し、この時点でCHCl(30ml)を添加し、また、NaHCO(20ml)を添加した。2つの相に分離し、水相をCHCl(30ml)で3回抽出した。集めた有機抽出物を次にブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。残留物をシリカゲル上でEtOAc/Hex,80/20で溶出させることによって精製すると、所望生成物(75)が収率89%で得られた。
【0136】
【化59】

【0137】
25ml容の丸底フラスコに化合物42(280mg,0.4mmol)およびMeOH(10ml)を導入した。次にこの溶液にヒドロキシルアミン塩酸塩(138mg,2.0mmol)を添加した。溶液を50℃で8時間加熱し、次いで室温に冷却した。冷却後、CHCl(10ml)を添加し、撹拌をさらに5分間継続した。得られた溶液に飽和NaHCOを添加し、水層をCHClで3回抽出した。集めた有機抽出物をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で溶媒を除去した。残留物にMeOH(1ml)中のシュウ酸(100mg,0.80mmol)を添加した。残留物にEtOを加えて生成物を結晶化させると、240mgの化合物73が得られた(80%)。
【0138】
O−置換ヒドロキシルアミン
われわれは、アルファ−ブロモアセチル末端をもつペプチド鎖と市販のO−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩との反応によってN−メトキシペプチドを製造した(反応方程式6)。
【0139】
【化60】

【0140】
イソオキサゾリジン
われわれは、以下のスキーム6に要約した方法を使用してベータ−ペプチド合成に使用できるイソオキサゾリジンを合成した。
【0141】
【化61】

【0142】
このスキームを使用して、メチル5−メトキシ−3−p−トリルイソオキサゾリジン5−カルボキシレート(80)を以下に詳述する手順で製造した。
【0143】
段階1:化合物76(3g,25mmol,1当量)をベンゼン(64mL)に溶解した。この溶液にp−トルアルデヒド(3mL,25mmol,1当量)およびジブチルスズオキシド(0.32g,1.1mmol,0.05当量)を添加した。反応混合物をディーン・スタークトラップで95℃で1日間還流させた。溶媒を回転蒸発させ、生成物をカラムクロマトグラフィー(3:1のヘキサン/EtOAc)によって精製すると、78(3.3g,58.8%)が粘性黄色液体として得られた。
【0144】
【化62】

【0145】
段階2:78(3g,13.6mmol,1当量)のトルエン(150mL)溶液に77(1.58g,13.6mmol,1当量)を添加した。反応混合物を95℃で2日間還流させた。溶媒を回転蒸発させ、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(5:1のヘキサン/EtOAc)によって精製すると、79(1.7g,5.07mmol,37.3%)が粘性黄色液体として得られた。
【0146】
【化63】

注:段階2と3とを合せて同一反応容器で行ってもよい。
【0147】
段階3:79(1.2g,3.58mmol,1当量)のMeOH(50mL)溶液にHClO(0.75g,7.47 mmol,2当量)を添加した。反応混合物を65℃で4時間還流させた。次にDI HO(50mL)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)を反応混合物に添加した。EtOAc(3×50mL)を使用して溶液を抽出した。集めた有機層をブラインで洗浄し、次いでNaSOで乾燥した。溶媒を回転蒸発させ、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(3:1のヘキサン/EtOAc)によって精製すると、80(0.65g,2.6mmol,72%)が粘性黄色液体として得られた。
【0148】
【化64】

【0149】
この手順には様々な変更が可能である。われわれはしばしばすべての材料を混合することによって段階1と2を同時に行う。ジブチルスズオキシド触媒の使用は必須ではない。また、NaSOもしくはMgSOのような他の試薬またはモレキュラーシーブを代替使用してもよい。上記手順ではニトロンの合成にアキラルなヒドロキシルアミンを使用する。われわれはまた、D−マンノースまたはL−リボースに由来のキラルなヒドロキシルアミンも使用した。これらのニトロンの使用は他の研究者も報告しているが、これらの特定化合物の合成を目的とはしていない。選択参考文献として、Vasella,A.Helv.Chim.Acta.1977,60,1273;およびKasahara,K.;Iida,H.;Kibayashi,C.J.Org.Chem.1989,54,2225−2233を参照するとよい。
【0150】
その他のアミン試薬:
様々なアミン試薬のいずれかをα−ケト酸との脱カルボキシル縮合反応に使用できる。非限定例を以下に示す。
【0151】
【化65】

式中のR基(すなわち、R、R’およびR1−9)は独立に、水素、アルキル(特に、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、ベンジル)、芳香族基、アシル、オキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキルおよびアルキルシロキサンから選択される。
【0152】
上記実施例および詳細な記載は例示目的であり限定目的でない。本明細書に引用したすべての刊行物および特許出願は参照によって本発明に組込まれる。すなわち、個々の刊行物または特許出願のおのおのが特定的および個別的に参照によって組込まれると指示されたものとする。明瞭な理解のために代表的実施例によって上記発明をある程度詳細に説明したが、本発明の教示に基づいて特許請求の範囲の要旨または範囲を逸脱しないいくつかの変更および修正が可能であることは当業者に容易に理解されよう。
【0153】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミドの形成方法であり、
脱カルボキシル縮合反応でα−ケト酸またはその塩と、酸素、窒素およびイオウから選択された原子に共有結合した窒素を含むアミンまたはその塩とを反応させ、これによりケト酸のα−炭素とアミンの窒素との間にアミド結合を形成させる段階を含む、方法。
【請求項2】
α−ケト酸が式(1):
【化1】

の構造を有しており、アミンが式(2):
【化2】

の構造を有しており、アミドが式(3):
【化3】

の構造を有しており、
式中の、
およびRは独立に、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアルケニルおよびヘテロアルケニル、置換または未置換のアルキニルおよびヘテロアルキニル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、炭水化物部分、アミノ酸部分、ペプチド部分、ヌクレオチド部分、ヌクレオシド部分ならびにペプチド核酸部分から選択され、
Xは、酸素原子、窒素原子およびイオウ原子から選択され、
は、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアルケニルおよびヘテロアルケニル、置換または未置換のアルキニルおよびヘテロアルキニル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、ならびに、XをRに連結して窒素原子と共に4から7原子の置換または未置換の複素環を形成する結合から選択され、
’は、Rであるか、または、Rが結合であるときはRの開環反応生成物である請求項1の方法。
【請求項3】
アミンが式(4):
【化4】

の構造を有しており、
式中の
Xは、酸素原子、窒素原子およびイオウ原子から選択され、
Yは、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のオキシアルキル、置換または未置換のオキシアリールおよびヘテロオキシアリール、置換または未置換のチオアルキルおよびヘテロチオアルキル、置換または未置換のチオアリールおよびヘテロチオアリールから選択され、ならびに
からRは独立に、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、酸素、窒素、ならびに、前記RからRの異なる1つに連結して環を形成する結合から選択される請求項1の方法。
【請求項4】
アミンがイソオキサゾリジンである請求項1の方法。
【請求項5】
アミンが、N−アルキルヒドロキシルアミン、N,O−ジアルキルヒドロキシルアミン、N−アルキル,O−アシルヒドロキシルアミン、および、ペプチドヒドロキシルアミンから成る群から選択される請求項1の方法。
【請求項6】
反応が追加の試薬または触媒に依存しない請求項1の方法。
【請求項7】
反応によって生成される主な副生物が水およびCOである請求項1の方法。
【請求項8】
反応によって生成される主な副生物がアルコールおよびCOである請求項1の方法。
【請求項9】
反応が0℃から150℃で生じる請求項1の方法。
【請求項10】
反応が25℃から75℃で生じる請求項1の方法。
【請求項11】
反応が固相で生じる請求項1の方法。
【請求項12】
反応段階に先立って、式(5):
【化5】

のカルボン酸を、式(6):
【化6】

のイオウ試薬またはその塩と、式(7):
【化7】

[式中、
は、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアルケニルおよびヘテロアルケニル、置換または未置換のアルキニルおよびヘテロアルキニル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、炭水化物部分、アミノ酸部分、ペプチド部分、ヌクレオチド部分、ヌクレオシド部分ならびにペプチド核酸部分から選択され、
10は、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリールから選択され、
11は、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、ならびに、R10に連結して置換または未置換の4から7原子の複素環を形成する結合から選択される]
のイオウイリドを形成する反応条件下で化合させ、ならびに
イオウイリドを酸化剤および水に接触させてα−ケト酸を形成させることによってα−ケト酸を合成する請求項1の方法。
【請求項13】
式(10)の化合物
【化8】

[式中、
Aは水素原子またはC(O)Rであり、
は、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアルケニルおよびヘテロアルケニル、置換または未置換のアルキニルおよびヘテロアルキニル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、炭水化物部分、置換または未置換のアシル基、アミノ酸部分、ペプチド部分、ヌクレオチド部分、ヌクレオシド部分ならびにペプチド核酸部分から選択され、
10は、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリールから選択され、ならびに
11は、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、ならびに、R10に連結して置換または未置換の4から7原子の複素環を形成する結合から選択される]
またはその塩。
【請求項14】
11が、R10に連結してチオランまたはチアン環を形成する結合である請求項13の化合物。
【請求項15】
Aが水素原子であり、R10がC5−C6アルキルであり、およびR11が、R10に連結してチオランまたはチアン環を形成する結合である請求項13の化合物。
【請求項16】
Aが水素原子であり、R10がC0−C6アルキルカルボン酸で置換されたC5−C6アルキルであり、およびR11が、R10に連結してC0−C6アルキルカルボン酸で置換されたチオランまたはチアン環を形成する結合である請求項13の化合物。
【請求項17】
固相に結合した請求項13の化合物。
【請求項18】
がペプチド部分である請求項13の化合物。
【請求項19】
Aが水素である請求項13の化合物の製造方法であり、チオエーテルをハロゲノニトリルと反応させて化合物を形成する段階および化合物を回収する段階を含む、方法。
【請求項20】
α−ケト酸の合成方法であり、
式(5):
【化9】

のカルボン酸を式(6):
【化10】

のイオウ試薬またはその塩と、式(7):
【化11】

[式中、
は、水素、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアルケニルおよびヘテロアルケニル、置換または未置換のアルキニルおよびヘテロアルキニル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、置換または未置換のアリールアルキルおよびヘテロアリールアルキル、置換または未置換のアシルおよびヘテロアシル、炭水化物部分、置換または未置換のアシル基、アミノ酸部分、ペプチド部分、ヌクレオチド部分、ヌクレオシド部分ならびにペプチド核酸部分から選択され、
10は、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、ならびに置換または未置換のアリールおよびヘテロアリールから選択され、ならびに
11は、置換または未置換のアルキルおよびヘテロアルキル、置換または未置換のアリールおよびヘテロアリール、ならびに、R10に連結して置換または未置換の4から7原子の複素環を形成する結合から選択される]
のイオウイリドを形成する反応条件下で化合させ、ならびに
イオウイリドを酸化剤および水に接触させて式(1):
【化12】

のα−ケト酸を形成する段階を含む、方法。

【公表番号】特表2009−511430(P2009−511430A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531108(P2008−531108)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/031572
【国際公開番号】WO2007/037812
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(506235281)リージエンツ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・カリフオルニア (2)
【Fターム(参考)】