説明

アミド構造を有する新規ウラシル化合物又はその塩

【課題】優れたデオキシウリジントリホスファターゼ(dUTPase)の阻害活性を有し、抗腫瘍薬等として有用なウラシル化合物又はその塩の提供。
【解決手段】下式


〔式中、Xは、炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルケニレン基を示し、アミド構造に隣接する該アルキレン鎖のメチレン基が不飽和複素環基に置換されていてもよく;R1及びR2は、同一又は相異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を示すか、又は、隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環を示す。〕で表されるウラシル化合物又はその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたヒトデオキシウリジントリホスファターゼ阻害活性を有し、デオキシウリジントリホスファターゼに関連する疾患の治療剤、例えば抗腫瘍薬等として有用な新規ウラシル化合物又はその塩に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デオキシウリジントリホスファターゼ(以下、dUTPase (EC3.6.1.23)ともいう。)は、予防的なDNA修復酵素である。天然型核酸トリリン酸体の中でデオキシウリジントリホスフェート(以下、dUTP)のみを特異的に認識し、デオキシウリジンモノホスフェート(以下、dUMP)とピロリン酸に分解する酵素であり(非特許文献1)、(1)細胞内のdUTPプールの量を下げることで、チミンの代わりにウラシルがDNA中へと誤って組み込まれるのを避ける、(2)DNA中にチミンを供給するための重要なde novo経路を担うチミジル酸合成酵素の基質dUMPを供給する(非特許文献2)、という2つの反応を担っていると考えられている。
【0003】
dUTPaseは原核生物、真核生物両方で細胞の生存に必須であることが知られている。従って、本酵素は抗腫瘍薬(非特許文献3、4)、抗マラリア薬(特許文献1及び非特許文献5)、抗結核薬(非特許文献6)、抗ピロリ菌薬(特許文献2)、トリパノソーマやリーシュマニアなどの抗寄生虫薬(非特許文献7)、及びヒト単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、Epstein-Barrウイルスのようなヘルペスウイルス(非特許文献8)やワクシニアウイルス(非特許文献9)などの抗ウイルス薬の標的と成り得ることが示唆されている。
【0004】
以上のように、dUTPaseは各種疾患に対する治療剤の標的として注目されており、dUTPase阻害剤についても広く研究されている。
dUTPase阻害剤としては、例えば、トリリン酸ミミック型低分子化合物(例えば、特許文献3、非特許文献10など)、5'-O-置換フェニル-デオキシウリジン化合物(非特許文献11)が知られている。しかしながら、これらはいずれもヒトdUTPaseに対する阻害活性が十分ではなく、医薬品として用いられる化合物ではない。
従って、より優れたヒトdUTPase阻害活性を有し、dUTPaseに関連する疾患の治療剤、例えば抗腫瘍薬等として有用なdUTPase阻害剤の開発が強く望まれている。
【特許文献1】国際公開第2005/065689号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/089461号パンフレット
【特許文献3】国際公開第1995/15332号パンフレット
【非特許文献1】Structure, 4, 1077-1092 (1996)
【非特許文献2】Acta Biochim. Pol., 44, 159-171 (1997)
【非特許文献3】Cancer Reseach, 60, 3493-3503, July 1 (2000)
【非特許文献4】Curr. Protein Pept. Sci., 2, 361-370 (2001)
【非特許文献5】Structure, 13, 329-338 (2005)
【非特許文献6】J. Mol. Biol., 341, 503-517 (2004)
【非特許文献7】Bioorg. Med. Chem. Lett., 16, 3809-3812 (2006)
【非特許文献8】Curr. Protein Pept. Sci., 2, 3711-380 (2001)
【非特許文献9】Acta Crystallogr. D. Biol. Crystallogr, 63, 571-580 (2007)
【非特許文献10】Mol. Pharmacol., 29, 288-292 (1986)
【非特許文献11】Nucleosides Nucleotides & Nucleic acids, 20, 1691-1704 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れたdUTPase阻害活性を有し抗腫瘍薬等として有用な、アミド構造を有するウラシル化合物又はその塩を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ウラシル環N−1位にアミド構造を有するウラシル化合物又はその塩が、優れたdUTPase阻害活性を有し、抗腫瘍薬等の医薬品として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、下記式(I)
【0008】
【化1】

【0009】
〔一般式(I)中、Xは、炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルケニレン基を示し、アミド構造に隣接する該アルキレン鎖中のメチレン基が不飽和複素環基に置換されていてもよく;
1及びR2は、同一又は相異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基(但し、アラルキル基を構成する芳香族炭化水素基のα位炭素原子に結合する2つの置換基が、同時にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基又は飽和若しくは不飽和複素環基のいずれかである場合を除く。)を示すか、又は、隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環を示す。〕
で表されるウラシル化合物又はその塩を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、式(I)で表されるウラシル化合物又はその塩を含有する医薬組成物を提供するものである。
また、本発明は、式(I)で表されるウラシル化合物又はその塩を含有するヒトdUTPase阻害剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の新規ウラシル化合物又はその塩は、優れたヒトdUTPase阻害活性を有し、dUTPaseに関連する疾患、例えば抗腫瘍薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の新規ウラシル化合物は、前記一般式(I)で表され、ウラシル環N-1位置換基にアミド構造を有するという特徴を有する。
国際公開2005065689号公報(特許文献1)には、ウラシル環N-1位置換基にアミド構造を有し、かつウラシル環N-1位置換基の末端として、トリチル基、トリフェニルシリル基等の置換基(−E(R6)(R7)(R8)基)を有するウラシル化合物が開示され、dUTPase阻害活性を示し、抗マラリア薬として有用であることが記載されている。しかしながら、後述の試験例で示すように、ウラシル環N-1位置換基の末端としてトリチル基を有する化合物は、ヒトdUTPase阻害活性を殆ど示さなかった。
【0013】
本願明細書において「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、ハロゲノアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキル-アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基、シクロアルコキシ基、シクロアルキル-アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル-アルキルチオ基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、シクロアルキル-アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、オキソ基、飽和若しくは不飽和複素環基、芳香族炭化水素基、飽和複素環オキシ基等が挙げられ、前記置換基が存在する場合、その個数は典型的には1〜3個である。
【0014】
前記の置換基において、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
前記の置換基において、アルキル基、ハロゲノアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又はこれらのアルキル基に前記のハロゲン原子が置換した基を示し、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0015】
前記の置換基において、シクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜7のシクロアルキル基であり、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記の置換基において、シクロアルキル-アルキル基としては、好ましくは炭素数3〜7のシクロアルキルで置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基等が挙げられる。
【0016】
前記の置換基において、アラルキル基としては、好ましくは炭素数6〜14の芳香族炭化水素基で置換された炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基を示し、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
前記の置換基において、アルケニル基としては、炭素−炭素二重結合を含む、好ましくは炭素数2〜6の炭化水素基を示し、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
前記の置換基において、アルキニル基としては、炭素−炭素三重結合を含む、好ましくは炭素数2〜6の炭化水素基を示し、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
【0017】
前記の置換基において、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分枝状のアルコキシ基、又はこれらのアルコキシ基に前記のハロゲン原子が置換した基を示し、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、2−メチル−ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、ペンタン−2−イルオキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1,1−ジフルオロエトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ基、パーフルオロエトキシ基、3−フルオロ−2−(フルオロメチル)−プロポキシ基、1,3−ジフルオロプロパン−2−イルオキシ基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロポキシ基等が挙げられる。
【0018】
前記の置換基において、シクロアルコキシ基としては、好ましくは炭素数3〜7のシクロアルコキシ基であり、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
前記の置換基において、シクロアルキル-アルコキシ基としては、好ましくは炭素数3〜7のシクロアルキルで置換された炭素数1〜6のアルコキシ基であり、シクロプロピルメトキシ基、シクロプロピルエトキシ基、シクロブチルメトキシ基、シクロペンチルメトキシ基等が挙げられる。
前記の置換基において、アラルキルオキシ基としては、好ましくは、前記のアラルキル基を有するオキシ基を示し、ベンジルオキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルプロポキシ基、ナフチルメトキシ基、ナフチルエトキシ基等が挙げられる。
【0019】
前記の置換基において、モノ又はジアルキルアミノ基としては、前記のアルキル基によりモノ置換又はジ置換されたアミノ基を示し、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等が挙げられる。
前記の置換基において、シクロアルキル-アルキルアミノ基としては、前記のシクロアルキル基で置換されたアルキルアミノ基を示し、シクロプロピルメチルアミノ基、シクロブチルメチルアミノ基、シクロペンチルメチルアミノ基等が挙げられる。
前記の置換基において、アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、n−ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基などの直鎖又は分枝を有する炭素数1〜6のアシル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
前記の置換基において、アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、n−ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基などの直鎖又は分枝を有する炭素数1〜6のアシルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0020】
前記の置換基において、飽和若しくは不飽和複素環基としては、好ましくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子のいずれかの原子を、好ましくは1個又は2個有する単環性又は二環性の飽和又は不飽和複素環基を示し、例えばピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ホモピペリジニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピリル基、イミダゾリル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、メチレンジオキシフェニル基、エチレンジオキシフェニル基、ベンゾフラニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾリル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリル基等が挙げられる。
【0021】
前記の置換基において、芳香族炭化水素基としては、好ましくは炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を示し、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
前記の置換基において、飽和複素環オキシ基としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のいずれかの原子を1個又は2個有する単環性の飽和複素環基、例えばピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ホモピペリジニル基等を有するオキシ基を示し、テトラヒドロフリルオキシ基、テトラヒドロピリルオキシ基が挙げられる。
【0022】
一般式(I)中、Xで表される「炭素数1〜6のアルキレン基」としては、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ジメチルトリメチレン基、ジメチルテトラメチレン基、エチルトリメチレン基等が挙げられる。
【0023】
一般式(I)中、Xで表される、アミド構造に隣接する該アルキレン鎖中のメチレン基が置換されていてもよい「不飽和複素環基」としては、上記「置換基」と同様の不飽和複素環基が挙げられ、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のいずれかの原子を、1個又は2個有する単環性の不飽和複素環基が好ましく、ヒトdUTPase阻害作用の点で、フリル基、チアゾリル基がより好ましい。
【0024】
すなわち、Xが、「炭素数1〜6のアルキレン基」である場合は、Xは、ヒトdUTPase阻害作用の点で、トリメチレン基、テトラメチレン基、又はアミド構造に隣接する該アルキレン鎖中のメチレン基がフリル基若しくはチアゾリル基で置換されていてもよい炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、トリメチレン基、テトラメチレン基、又は下記式(II)
【0025】
【化2】

【0026】
若しくは下記式(III)
【0027】
【化3】

【0028】
で表される基がより好ましい。
【0029】
Xで表される「炭素数2〜6のアルケニレン基」としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブタジエニレン基等が例示され、プロペニレン基が好ましい。
【0030】
上記、Xで表される「炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルケニレン基」としては、ヒトdUTPase阻害作用の点で、トリメチレン基が特に好ましい。
【0031】
1及びR2で表される「炭素数1〜6のアルキル基」としては、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。このうち、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、イソプロピル基がより好ましい。
【0032】
1及びR2で表される「置換基を有していてもよいアラルキル基」の「アラルキル基」としては、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基で置換された炭素数1〜6の直鎖状又は分枝状のアルキル基が好ましく、具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられ、フェニルエチル基が好ましい。
【0033】
また、R1及びR2が、「同一又は相異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基(但し、アラルキル基を構成する芳香族炭化水素基のα位炭素原子に結合する2つの置換基が、同時にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基又は飽和若しくは不飽和複素環基のいずれかである場合を除く。)」を示す場合は、R1としては、ヒトdUTPase阻害作用の点で、水素原子;メチル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。また、R2としては、ヒトdUTPase阻害作用の点で、下記式(IV)
【0034】
【化4】

【0035】
〔式(IV)中、R3及びR4は、同一又は相異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を示し、
5及びR6は、同一又は相異なって、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示すか(但し、R5及びR6が、同時に炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である場合を除く。)、又は、隣接する炭素原子と一緒になって、シクロアルキリデン構造を示し、
1及びY2は、同一又は相異なって、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。〕
で表される置換フェニルエチル基が特に好ましい。
【0036】
式(IV)中、R3及びR4で表される「炭素数1〜6のアルキル基」としては、上記「置換基」と同様のアルキル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
すなわち、R3及びR4としては、ヒトdUTPase阻害作用の点で、水素原子及びメチル基が特に好ましい。
【0037】
5及びR6で表される「炭素数1〜6のアルキル基」としては、上記「置換基」と同様のアルキル基が挙げられ、エチル基が好ましい。
5及びR6で表される「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の「芳香族炭化水素基」としては、上記「置換基」と同様の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
5及びR6で表される「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の「置換基」としては、上記と同様の置換基が挙げられるが、メトキシ基等のアルキルオキシ基、シクロプロピル-メトキシ基等のシクロアルキル-アルコキシ基が好ましい。
【0038】
すなわち、R5及びR6が、同一又は相異なって、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す(但し、R5及びR6が、同時に炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である場合を除く。)場合は、当該R5及びR6としては、ヒトdUTPase阻害作用の点で、ヒドロキシル基、エチル基、メトキシフェニル基、シクロプロピルメトキシフェニル基、フェニル基が特に好ましい。
【0039】
5及びR6で形成していてもよい「シクロアルキリデン構造」としては、炭素数3〜6のシクロアルキリデン構造が好ましく、具体的には、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデンが挙げられ、ヒトdUTPase阻害作用の点で、シクロプロピリデン、シクロペンチリデンが好ましい。
【0040】
1及びY2で表される「ハロゲン原子」としては、上記「置換基」と同様のハロゲン原子が挙げられ、塩素原子、フッ素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
1及びY2で表される「置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基」の「炭素数1〜6のアルコキシ基」としては、上記「置換基」と同様のアルコキシ基が挙げられ、メトキシ基が好ましい。
1及びY2で表される「置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基」の「置換基」としては、上記「置換基」と同様の置換基が挙げられ、炭素数3〜7のシクロアルキル基が好ましく、シクロプロピル基がより好ましい。
【0041】
一般式(I)において、「置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環」の「含窒素飽和複素環」としては、隣接する窒素原子の他に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のいずれかの原子を1個又は2個有してもよい5〜7員環の単環性飽和複素環が好ましく、例えばピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ヘキサメチレンイミノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、ホモピペリジニル基等が挙げられ、ピロリジニル基が好ましい。
すなわち、一般式(I)において、「置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環」としては、置換基を有していてもよいピロリジニル基が好ましい。また、このうち、下記式(IV)
【0042】
【化5】

【0043】
〔式(V)中、R7、R8及びR9は、同一又は相異なって、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい不飽和複素環基を示す。〕
で表されるピロリジニル基が好ましい。
【0044】
7、R8及びR9で表される「ハロゲン原子」としては、上記「置換基」と同様のハロゲン原子が挙げられ、ヒトdUTPase阻害作用の点で、フッ素原子が好ましい。
7、R8及びR9で表される「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の「芳香族複素環基」としては、上記「置換基」と同様の芳香族複素環基が挙げられ、ヒトdUTPase阻害作用の点で、フェニル基が好ましい。
7、R8及びR9で表される「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」の「置換基」としては、上記「置換基」と同様の置換基が挙げられ、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、ヒトdUTPase阻害作用の点で、塩素原子、フッ素原子、メトキシ基がより好ましい。
7、R8及びR9で表される「置換基を有していてもよい不飽和複素環基」の「不飽和複素環基」としては、上記「置換基」と同様の不飽和複素環基が挙げられ、ヒトdUTPase阻害作用の点で、チエニル基が好ましい。
7、R8及びR9で表される「置換基を有していてもよい不飽和複素環基」の「置換基」としては、上記「置換基」と同様の置換基が挙げられ、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、ヒトdUTPase阻害作用の点で、メチル基がより好ましい。
【0045】
本発明のウラシルN-1位化合物は、下記反応工程式に従い製造することが出来る。
〔工程A〕
【0046】
【化6】

【0047】
〔式中、X1は炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルケニレン基、Aは不飽和複素環基、Rbはカルボキシル基の保護基、Halはハロゲン原子、TMSはトリメチルシリル基を示す。〕
一般式(3)で表される化合物は、例えば、J. Med. Chem., 8, 187-189 (1965)に記載の方法、Russian Journal of Bioorganic Chemistry, 26, 662-668 (2005)に記載の方法に準じて容易に入手可能であるが、以下の〔A−1〕〔A−2〕の製造法により製造することもできる。
【0048】
〔A−1〕
本工程では、容易に入手可能な一般式(1)で表される化合物、例えばエチル-4-ブロモクロトネートと、Nucleosides & Nucleotides, 4, 565-585 (1985)に記載の方法で得られる2,4-ビス(トリメチルシリルオキシ)ピリミジンをヨウ素存在下反応させることにより、一般式(2)で表される化合物を製造できる。
【0049】
工程A−1において、反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、アセトン、テトラヒドロフラン (以下、THFともいう。)、ジアルキルエーテル (以下、アルキルとはエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル等の低級アルキルをいう。)、ジオキサン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、トルエン等が例示され、好ましくは1,2-ジクロロエタンである。2,4-ビス(トリメチルシリルオキシ)ピリミジンの当量数は0.8〜10当量であり、好ましくは0.9〜5.0当量である。ヨウ素の当量数は0.001〜1.0当量であり、好ましくは0.05〜0.5当量である。反応温度は20〜150℃であり 、好ましくは50〜100℃である。反応時間は0.1〜120時間であり、好ましくは0.5〜100時間である。
【0050】
〔A−2〕
本工程では、一般式(2)で表されるエステル化合物を通常公知の方法により加水分解することにより、一般式(3)で表される化合物を製造できる。
〔A−3〕
本工程では、容易に入手可能な一般式(4)で表される化合物に触媒存在下、2, 4-ビス(トリメチルシリルオキシ)ピリミジンを反応させることにより、一般式(5)で表される化合物を製造できる。
用いる反応溶媒としては反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トルエン、キシレン等が例示され、好ましくはジクロロエタンである。2, 4-ビス(トリメチルシリルオキシ)ピリミジンの当量数は0.8〜10当量であり、好ましくは1.0〜5.0当量である。触媒としてはヨウ素が好ましく、その当量数は0.001〜0.8当量であり、好ましくは0.05〜0.5当量である。反応温度は20〜150℃であり 、好ましくは50〜100℃である。反応時間は0.1〜120時間であり、好ましくは0.5〜100時間である。
〔A−4〕
本工程では、一般式(5)で表されるエステル化合物を通常公知の方法により加水分解することにより、一般式(6)で表される化合物を製造できる。
〔工程B〕
【0051】
【化7】

【0052】
〔式中、R3、R4、Rbは前記と同義、Ar1、Ar2は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は不飽和複素環基を示し、Raはアミノ基の保護基を示す。〕
【0053】
〔B−1〕
本工程では、容易に入手可能な一般式(7)で表される化合物に、対応するGrignard試薬を反応させることにより、一般式(8)で表される化合物(但し、Ar1とAr2は同一)を製造できる。
【0054】
工程B−1において、反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、THF、ジオキサン、ジアルキルエーテル、トルエン、ジクロロメタン等が例示され、好ましくはTHFである。Grignard試薬の当量数は2.0〜10当量であり、好ましくは4.0〜5.0当量である。反応温度は-90〜200℃であり 、好ましくは0〜90℃である。反応時間は0.5〜48時間であり、好ましくは2.0〜5.0時間である。
【0055】
〔B−2〕
本工程では、一般式(8)で表されるアミン化合物の保護基を、通常公知の方法で脱保護することにより、一般式(9)で表される化合物を製造できる。
【0056】
〔B−3〕
本工程では、例えば、文献 (J. Org. Chem., 70, 1188-1197 (2005)) 記載の方法に準じて得られる、一般式(10)で表される公知化合物を、通常公知の酸化反応条件で処理しアルデヒド化合物とした後、工程B−1と同様の方法により、Ar1MgHal(Halはハロゲン原子を示す。)で表されるGrignard試薬と反応することにより、一般式(11)で表される化合物を製造できる。
【0057】
上記の酸化反応としては、ジメチルスルホキシド (以下DMSOともいう。) と塩化オキザリルを用いるSwern酸化、DMSOとカルボジイミド類を用いる酸化、Dess-Martinペルヨージナンを用いるDess-Martin酸化等が例示され、好ましくはDMSOとカルボジイミド類を用いる酸化である。用いるカルボジイミド類としてはジシクロヘキシルカルボジイミド(以下DCCともいう。)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 (以下EDC・HClともいう。)等が例示され、好ましくはEDC・HClである。その当量数は1.0〜10当量であり、好ましくは1.1〜5.0当量である。反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、THF、ジオキサン、ジアルキルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル等が例示され、好ましくはトルエンである。反応温度は-78〜200℃であり 、好ましくは10〜30℃である。反応時間は0.1〜48時間であり、好ましくは0.5〜1.5時間である。
【0058】
〔B−4〕
本工程では、一般式(11)で表される化合物を、B−3と同様の方法によりケトン化合物とした後、B−1と同様の方法により、Ar2MgHal(Halはハロゲン原子を示す)で表されるGrignard試薬と反応し、さらにB−2と同様に通常公知の方法で脱保護することにより、一般式(9)で表される化合物を製造できる。
【0059】
〔B−5〕
本工程では、一般式(9)で表される化合物を塩基存在下、トリホスゲンと反応させることにより上記一般式(12)で表される化合物を製造できる。
用いる反応溶媒としては反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないがジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、THF、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が例示され、好ましくはTHFである。用いる塩基としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の無機塩基やトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、ルチジン、コリジン等の有機アミン類が例示され、好ましくはトリエチルアミンである。トリホスゲンの当量数は、0.8〜5.0当量であり、好ましくは1.0〜2.0当量である。反応温度は0℃〜100℃であり 、好ましくは0〜50℃である。反応時間は0.1〜24時間であり、好ましくは0.2〜6.0時間である。
【0060】
〔B−6〕
本工程では、一般式(12)で表される化合物を50-80%フッ化水素/ピリジンと反応させることにより一般式(13)で表される化合物を製造できる。
用いる反応溶媒としては反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トルエン、キシレン等が例示され、好ましくはジクロロメタンである。50-80%フッ化水素酸/ピリジンの当量数は、0.8〜100当量であり、好ましくは1.0〜50当量である。反応温度は-20℃〜100℃であり 、好ましくは0〜50℃である。反応時間は0.5〜48時間であり、好ましくは1.0〜24時間である。
【0061】
〔工程C〕
【0062】
【化8】

【0063】
〔式中、R1、R3、R4、Ar1、Rbは前記と同義、Rcはヒドロキシル基の保護基を示し、Msはメタンスルホニル基を示す。〕
【0064】
〔C−1〕
本工程では、容易に入手可能な化合物(14)のヒドロキシル基を、通常公知の方法で保護した後、B−1と同様の方法でGrignard試薬と反応させることにより、一般式(15)で表される化合物を製造できる。
【0065】
〔C−2〕
本工程では、一般式(15)で表される化合物のRcを通常公知の方法で脱保護した後、塩基存在下、塩化メタンスルホニルと反応させることにより、一般式(16)で表される化合物を製造できる。
【0066】
〔C−3〕
本工程では、一般式(16)で表される化合物を、メチルアミン等のアミン化合物(R1NH2)と反応させることにより、一般式(17)で表される化合物を製造できる。
【0067】
用いる反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、THF、ジオキサン、ジアルキルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、等が例示され、好ましくはTHFである。メチルアミンの当量数は0.1〜10000当量であり、好ましくは1.0〜1000当量である。反応温度は-90〜200℃であり 、好ましくは30〜90℃である。反応時間は0.5〜48時間であり、好ましくは1.0〜10時間である。
【0068】
〔工程D〕
【0069】
【化9】

【0070】
〔式中、R1、R5、R6、Ar1は前記と同義である。〕
【0071】
〔D−1〕
本工程では、容易に入手可能な化合物(18)に、塩基条件下でアミン化合物(R1NH2)を縮合させることにより、一般式(19)で表される化合物を製造できる。
【0072】
用いる反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、DMF、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル、THF等が例示され、好ましくはDMFである。用いる縮合剤としては、DCC、EDC・HCl、縮合補助剤としては、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール (以下HOBt) 等が例示され、好ましくはEDC・HCl、HOBtの組み合わせである。その当量数はそれぞれ0.8〜5.0当量であり、好ましくは1.0〜3.0当量である。アミン化合物(R1NH2)の当量数は0.8〜5.0当量であり、好ましくは1.0〜3.0当量である。用いる塩基としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、ルチジン、コリジン等の有機アミン類が例示され、好ましくはトリエチルアミンである。その当量数は0.8〜10当量であり、好ましくは1.0〜4.0当量である。反応温度は0〜100℃であり 、好ましくは10〜40℃である。反応時間は0.1〜24時間であり、好ましくは0.5〜4.0時間である。
【0073】
〔D−2〕
本工程では、一般式(19)で表される化合物を、通常公知の還元剤と反応させることにより、一般式(20)で表される化合物を製造できる。
【0074】
用いる反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、THF、ジオキサン、ジアルキルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、等が例示され、好ましくはTHFである。用いる還元剤としては水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム等が例示され、好ましくは水素化アルミニウムリチウムである。その当量数は0.1〜10当量であり、好ましくは1.0〜4.0当量である。反応温度は-90〜200℃であり 、好ましくは0〜90℃である。反応時間は0.5〜48時間であり、好ましくは2.0〜10時間である。
【0075】
〔工程E〕
【0076】
【化10】

【0077】
〔式中、Y1、Y2、R5は前記と同義である。〕
【0078】
〔E−1〕
本工程では、一般式(21)で表される化合物とN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩を、D−1と同様の方法で塩基存在下縮合することにより、一般式(22)で表される化合物を製造できる。
【0079】
〔E−2〕
本工程では、一般式(22)で表される化合物を、B−2と同様の方法でR5MgHalで表されるGrignard試薬と反応させることにより、一般式(23)で表される化合物を合成することができる。
【0080】
〔E−3〕
本工程では、一般式(23)で表される化合物を、塩基性条件下、メチルトリフェニルホスホニウムブロミドと反応させることにより、一般式(24)で表される化合物を製造できる。
【0081】
用いる反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、DMF、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル、THF等が例示され、好ましくはTHFである。用いる塩基としては、ビス(トリメチルシリル)アミド ナトリウム塩 (以下NaHMDS)、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物塩等が例示され、好ましくはNaHMDSである。その当量数は0.8〜2.0当量であり、好ましくは1.0〜1.5当量である。メチルトリフェニルホスホニウムブロミドの当量数は0.9〜5.0当量であり、好ましくは1.0〜1.5当量である。反応温度は-100〜100℃であり 、好ましくは-78〜40℃である。反応時間は0.5〜24時間であり、好ましくは1.0〜5.0時間である。
【0082】
〔E−4〕
本工程では、一般式(24)表される化合物を、AD-mix又は四酸化オスミウムと反応させることで、一般式(25)で表される化合物を製造できる。
用いる反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、DMF、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル、THF、水、アルキルアルコール等が例示され、好ましくはtert-ブタノール/水 (1/1) 溶液である。反応温度は0〜100℃であり 、好ましくは0〜10℃である。反応時間は0.5〜24時間であり、好ましくは1.0〜5.0時間である。
【0083】
〔E−5〕
本工程では、一般式(25)で表される化合物を、通常公知の方法によりメタンスルホニル化した後、通常公知のアジド化試薬と反応させることで、一般式(26)で表される化合物を製造できる。
【0084】
アジド化に用いる反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、DMF、THF、ジオキサン、アセトニトリル、トルエン、ジクロロメタン等が例示され、好ましくはDMFである。用いるアジド化試薬としては、アジ化ナトリウム、アジ化リチウム等が例示され、好ましくはアジ化ナトリウムである。その当量数は1.0〜10当量であり、好ましくは1.2〜6.0当量である。反応温度は10〜120℃であり、好ましくは50〜100℃である。反応時間は1.0〜24時間であり、好ましくは1.5〜12時間である。
【0085】
〔E−6〕
本工程では、一般式(26)で表される化合物を水素雰囲気下、金属触媒を用いて還元反応を行うことで、一般式(27)表される化合物を製造できる。
用いる反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、THF、メタノール、エタノール、酢酸エチル等が例示され、好ましくは酢酸エチルである。用いる金属触媒として種々のパラジウム触媒、ロジウム触媒等が例示されるが、好ましくはパラジウム-炭素である。反応温度は0〜100℃であり 、好ましくは10〜30℃である。反応時間は、0.1〜10時間であり、好ましくは0.5〜1.0時間である。
【0086】
〔E−7〕
本工程では、一般式(27)で表される化合物をクロロギ酸アルキルと塩基性条件下反応させることで、一般式(28)で表される化合物を製造できる。
用いる反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、THF、ジオキサン、ジアルキルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、アセトニトリル等が例示され、好ましくはアセトニトリルである。用いる塩基としてはトリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ルチジン、コリジン等の有機アミン類が例示され、好ましくはトリエチルアミンである。その当量数は1.0〜10当量であり、好ましくは1.1〜2.0当量である。クロロギ酸メチルの当量数は0.8〜10当量であり、好ましくは0.9〜1.3当量である。反応温度は-90〜200℃であり 、好ましくは10〜30℃である。反応時間は0.5〜48時間であり、好ましくは1.0〜5.0時間である。
【0087】
〔E−8〕
本工程では、一般式(28)で表される化合物を、通常公知の還元剤と反応させることで、一般式(29)表される化合物を製造できる。
用いる反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、THF、ジオキサン、ジアルキルエーテル、トルエン、ジクロロメタン、等が例示され、好ましくはTHFである。用いる還元剤としては水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウムリチウム等が例示され、好ましくは水素化アルミニウムリチウムである。その当量数は0.1〜10当量であり、好ましくは1.0〜4.0当量である。反応温度は-90〜200℃であり 、好ましくは0〜90℃である。反応時間は0.5〜48時間であり、好ましくは2.0〜10時間である。
【0088】
〔工程F〕
【0089】
【化11】

【0090】
〔式中、R1、R2、A、X1、Xは前記と同義である。〕
【0091】
〔F−1〕
本工程では、一般式(3)、又は一般式(6)で表される化合物に、アミン化合物(一般式(9)、(13)、(17)、(20)、(29)で表される化合物、又は容易に入手可能なアミン化合物)をD−1と同様の方法で縮合反応させることにより、一般式(I)で表される化合物を製造できる。
【0092】
以上、このように製造された本発明化合物及び合成中間体は、通常、公知の分離精製手段例えば、再結晶、晶出、蒸留、カラムクロマトグラフィー等により単離し、精製することができる。本発明化合物及び合成中間体は、通常、公知の方法でその薬理学的に許容される塩の形成が可能であり、また、相互に変換可能である。
【0093】
後述の実施例に示すとおり、本発明のウラシル化合物又はその塩は、優れたヒトdUTPase阻害活性を有するため、抗腫瘍薬等に代表される医薬品として有用である。
【0094】
本発明のウラシル化合物又はその塩を医薬組成物に含有せしめる場合、必要に応じて薬学的担体と配合し、予防又は治療目的に応じて各種の投与形態を採用可能であり、該形態としては、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられるが、経口剤が好ましい。これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
【0095】
薬学的担体は、製剤素材として慣用の各種有機或いは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、安定化剤等の製剤添加物を用いることもできる。
経口用固形製剤を調製する場合は、本発明化合物に賦形剤、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。
【0096】
賦形剤としては、乳糖、白糖、D−マンニトール、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、無水ケイ酸等が挙げられる。
結合剤としては、水、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、α−デンプン液、ゼラチン液、D−マンニトール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0097】
崩壊剤としては、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。
【0098】
滑沢剤としては、精製タルク、ステアリン酸塩ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
着色剤としては、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
矯味・矯臭剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0099】
経口用液体製剤を調製する場合は、本発明化合物に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。この場合矯味・矯臭剤としては、前記に挙げられたものでよく、緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム等が、安定剤としては、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。必要により、腸溶性コーティング又は、効果の持続を目的として、経口製剤に公知の方法により、コーティングを施すこともできる。このようなコーティング剤にはヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、Tween80(登録商標)等が挙げられる。
【0100】
注射剤を調製する場合は、本発明化合物にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製造することができる。この場合のpH調節剤及び緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。局所麻酔剤としては、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖、D−マンニトール、グリセリン等が挙げられる。
【0101】
坐剤を調製する場合は、本発明化合物に当業界において公知の製剤用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセリド等を、さらに必要に応じてTween80(登録商標)のような界面活性剤等を加えた後、常法により製造することができる。
【0102】
軟膏剤を調製する場合は、本発明化合物に通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。基剤としては、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。保存剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0103】
貼付剤を調製する場合は、通常の支持体に前記軟膏、クリーム、ゲル、ペースト等を常法により塗布すればよい。支持体としては、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布や軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルム或いは発泡体シートが適当である。
【0104】
前記の各投与単位形態中に配合されるべき本発明化合物の量は、これを適用すべき患者の症状により、或いはその剤形等により一定ではないが、一般に投与単位形態あたり、経口剤では約0.05〜1000mg、注射剤では約0.01〜500mg、坐剤では約1〜1000mg程度である。
また、前記投与形態を有する薬剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、通常成人(体重50kg)1日あたり約0.05〜5000mg程度であり、0.1〜1000mgが好ましく、これを1日1回又は2〜3回程度に分けて投与するのが好ましい。
【0105】
本発明化合物を含有する薬剤を投与することにより治療できる疾病としては、悪性腫瘍、マラリア、結核等が挙げられ、例えば悪性腫瘍の場合、頭頚部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、子宮体癌、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍、骨・軟部肉腫、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、皮膚癌、脳腫瘍等が挙げられる。
【実施例】
【0106】
以下に参考例、実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0107】
実施例に示すウラシル化合物の製造方法の原料は、例えば、下記の参考例1〜8により、製造できる。
参考例1
(E)-4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロミリミジン-1(2H)-イル)ブト-2-エノイックアシッドの合成
【0108】
【化12】

【0109】
容易に入手可能な(E)-エチル4-ブロモブト-2-エノエート (541 μL) を1,2-ジクロロエタン (以下DCE, 10 mL) に溶解し、文献 (Nucleosides & Nucleotides, 4, 565-585 (1985)) 記載の方法で得られた2,4-ビス(トリメチルシリルオキシ)ピリミジン (1.0 g) とヨウ素 (102 mg) を加え93℃で3時間加熱還流した。反応液を放冷後、水 (10 mL)、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液 (1.0 mL) を加え、10%メタノール/クロロホルム (20 mL) で抽出した。有機層を飽和食塩水 (20 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (2%メタノール/クロロホルム) で精製した。得られた化合物を水酸化ナトリウム水溶液 (2.0 M, 4.0 mL)に溶解し、50℃で3時間撹拌した。反応液を放冷後、強酸性陽イオン交換樹脂 (ダイアイオンPK212, H+ form) をpHが2.0になるまで加えた後、樹脂を濾別し、水 (100 mL x 2)、メタノール (100 mL x 2) で洗浄し、合一した濾液を減圧濃縮した。残渣をエタノール (20 mL x 3) で共沸することで、標記化合物 (310 mg) を白色固体として得た。
【0110】
参考例2
2-アミノ-1,1-ビス(3-メトキシフェニル)-2-メチルプロパン-1-オール塩酸塩の合成
【0111】
【化13】

【0112】
文献 (Bioorg. Med. Chem. Lett., 17, 2456-2458 (2007))記載の方法で得られたメチル 2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-2-メチルプロパノエート (500 mg) をテトラヒドロフラン (以下THF, 10 mL) に溶解し、臭化3-メトキシフェニルマグネシウムのTHF溶液 (1.0 M, 10 mL) を氷冷下滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液 (10 mL) 加え、分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (33%酢酸エチル/ヘキサン) で精製した。得られた化合物を塩酸-ジオキサン溶液 (4.0 M, 10 mL) に溶解し、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をトルエン (20 mL x 3) で共沸することで、標記化合物 (118 mg) を白色固体として得た。
【0113】
参考例3
(S)-2-(3-(シクロプロピルメトキシ)-4-フルオロフェニル)-1-(メチルアミノ)ブタン-2-オールの合成
【0114】
【化14】

【0115】
容易に入手可能な4-フルオロ-3-ヒドロキシ安息香酸 (4.7 g) をエタノール (80 mL) に溶解し、硫酸 (1.0 mL) を加え90℃で2時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮し、水 (10 mL) を加え炭酸水素ナトリウムで中和した。酢酸エチル (50 mL)を加え分液し、有機層を飽和食塩水 (20 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をN,N-ジメチルホルムアミド (以下DMF, 30 mL) に溶解し、炭酸カリウム (8.0 g) 、クロロメチルシクロプロパン (2.9 mL)、ヨウ化ナトリウム (432 mg) を加え、90℃で4時間撹拌した。反応液にトルエン (20 mL)、水 (20 mL)を加え分液し、有機層を水 (20 mL)、水酸化ナトリウム水溶液 (1.0 M, 20 mL)、飽和食塩水 (20 mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮した。得られた残渣をエタノール (10 mL)、水 (10 mL)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液 (4.0 M, 22 mL) を加え50℃で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮後、希塩酸 (1.0 M, 100 ml) で酸性にし、酢酸エチル (50 mL) で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をDMF (80 mL) に溶解し、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩 (以下EDC・HCl, 8.0 g)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール (以下HOBt, 5.0 g)、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩 (3.3 g)、及びトリエチルアミン (4.9 mL) を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に水 (50 mL) を加え、トルエン (50 mL) で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (33%酢酸エチル/ヘキサン) で精製した。得られた化合物をTHF (70 mL) に溶解し、0℃で臭化エチルマグネシウムのTHF溶液 (1.0 M, 60 mL) を滴下し、同温度で2時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液 (100 mL) を加え分液し、有機層を飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (5%酢酸エチル/ヘキサン) で精製し、ケトン体を (4.98 g) 得た。
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド (10.8 g) をTHF (80 mL) に懸濁し、0 ℃でビス(トリメチルシリル)アミドナトリウム塩 (以下NaHMDS) のTHF溶液 (1.0 M, 30 mL) を加え、同温度で30分撹拌した。-78℃に冷却し、前反応で得られたケトン体 (4.98 g) を加え、室温で3時間撹拌した。反応液に酢酸 (2.0 mL) 加え、減圧濃縮した。残渣を10%酢酸エチル/ヘキサン溶液に懸濁し、不溶物を濾別し、10%酢酸エチル/ヘキサン溶液 (50 ml) で洗浄後、合一した濾液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (2%酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。得られた化合物をtert-ブタノール (90 mL)、水 (90 mL) に溶解し、0℃でAD-mixα (30 g) を加え、同温度で3時間撹拌した。反応液に0℃で飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液を不溶物がなくなるまで加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を飽和食塩水 (50 ml) で洗浄後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (33%酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。得られたジオール体 (5.2 g の内、1.77 g) をジクロロメタン (30 mL) に溶解し、トリエチルアミン (1.4 mL)、塩化メタンスルホニル (579 μL) を加え室温30分撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (30 mL) を加え分液し、有機層を水 (30 mL)、飽和食塩水 (30 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をDMF (30 mL) に溶解し、アジ化ナトリウム (2.2 g) を加え80℃で12時間撹拌した。反応液に水 (30 mL) を加え、酢酸エチル (30 mL)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (10%酢酸エチル/ヘキサン) で精製した。得られた化合物をメタノール (20 mL) に溶解し、10 %パラジウム-炭素 (2.0 g) を加え、水素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。不溶物をセライトを用いて濾別し、メタノール (30 ml)で洗浄後、合一した濾液を減圧濃縮した。残渣をアセトニトリル (20 mL) に溶解し、トリエチルアミン (1.25 mL)、クロロギ酸メチル (348 μL) を加え、3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水 (20 mL) を加え、酢酸エチル (20 mL) で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (50%酢酸エチル/ヘキサン) で精製した。
水素化リチウムアルミニウム (以下LAH) のTHF溶液 (2.4 M, 3.37 mL) をTHF (6.0 mL) に溶解し、氷冷下、前反応で得られたカーバメート体 (1.1 gの内、840 mg) のTHF (2.0 mL) 溶液を滴下し、80℃で10時間加熱還流した。室温で少量の水をゆっくり加え、生じた固体を濾別し、THF (50 ml) で洗浄後、合一した濾液を減圧濃縮することで、標記化合物 (650 mg) を無色油状物質として得た。
【0116】
参考例4
N-メチル-1-(1-フェニルシクロプロピル)メタンアミンの合成
【0117】
【化15】

【0118】
容易に入手可能な1-フェニルシクロプロパンカルボン酸 (2.95 g) をDMF (120 mL) に溶解し、EDC・HCl (5.2 g)、HOBt (3.2 g)、メチルアミンのメタノール溶液 (40%, 1.94 mL) を加え、室温で5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (50%酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。得られたアミド体 (2.9 gの内、1.1 g) をTHF (60 mL) に溶解し、0℃でLAHのTHF溶液 (2.4 M, 7.9 mL) を滴下し、80℃で12時間加熱還流した。反応液に0℃で水 (4.0 mL) をゆっくり滴下した。生じた析出物を濾別し、THF (60 mL) で洗浄後、合一した濾液を減圧濃縮することで、標記化合物 (1.0 g) を無色油状物質として得た。
【0119】
参考例5
N-((1-フェニルシクロプロピル)メチル)プロパン-2-アミンの合成
【0120】
【化16】

【0121】
容易に入手可能な1-フェニルシクロプロパンカルボン酸 (2 .0 g) とイソプロピルアミン (1.2 mL) から参考例4の方法に準じて合成することで、標記化合物 (900 mg) を無色油状物質として得た。
【0122】
参考例6
N-メチル-1-(1-フェニルシクロペンチル)メタンアミンの合成
【0123】
【化17】

【0124】
容易に入手可能な1-フェニルシクロペンタンカルボン酸 (2.0 g)から参考例4の方法に準じて合成することで、標記化合物 (800 mg) を無色油状物質として得た。
【0125】
参考例7
2-アミノ-1-(3-(シクロプロピルメトキシ)フェニル)-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オール塩酸塩の合成
【0126】
【化18】

【0127】
文献 (J. Org. Chem., 70, 1188-1197 (2005))記載の方法で得られたtert-ブチル 1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-2-イルカーバメート (800 mg) をトルエン (7.7 mL)、ジメチルスルホキシド (11.5 mL) に溶解し、EDC・HCl (2.43 g)、ピリジン (0.31 mL)、トリフルオロ酢酸 (0.16 mL) を加え、室温で30分攪拌した。反応液に水 (30 mL) を加え、酢酸エチル (30 mL)で抽出した。有機層を水 (20 mL)、飽和食塩水 (20 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をトルエン (10 mL) で3回共沸し、THF (10 mL) に溶解した。臭化フェニルマグネシウム (1.0 M, 10.6 mL) を氷冷下で滴下し、室温で2時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液 (10 mL) を加え分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (30%酢酸エチル/ヘキサン) で精製した。得られた化合物をトルエン (5.1 mL)、ジメチルスルホキシド (7.6 mL) に溶解し、EDC・HCl (1.63 g)、ピリジン (0.21 mL)、トリフルオロ酢酸 (0.10 mL) を加え、室温で30分攪拌した。反応液に水 (30 mL) を加え、酢酸エチル (30 mL) で抽出した。有機層を水 (20 mL)、飽和食塩水 (20 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をトルエン (10 mL) で3回共沸した。
マグネシウム (166 mg) をTHF (3.0 mL) に懸濁し、ヨウ素 (2.0 mg) を加え、容易に入手可能な3-ブロモフェノールから文献 (Eur. J. org. Chem., 4, 916-923 (2006))記載の方法に準じて得られた3-ブロモ-シクロプロピルメトキシベンゼン (773 mg) のTHF (3.0 mL) 溶液を滴下し、室温で1時間攪拌した。その上澄み液を前反応で得られたケトン体の THF (6.0 mL) 溶液に氷冷下で滴下し、室温で2時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液 (10 mL) を加え分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (30%酢酸エチル/ヘキサン) で精製した。得られた化合物を塩化水素のジオキサン溶液 (4.0 M、5.0 mL) に溶解し、室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をトルエン (10 mL x 3) で共沸することで、標記化合物 (50 mg) を白色固体として得た。
【0128】
参考例8
(R)-2-(メチルアミノ)-1,1-ジフェニルプロパン-1-オールの合成
【0129】
【化19】

【0130】
容易に入手可能なメチル D-ラクテート (1.0 g) をDMF (30 mL) に溶解し、イミダゾール (980 mg)、tert-ブチルジメチルシリルクロリド (1.73 g) を加え、室温で2時間攪拌した。反応液に水 (100 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を水 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (10%酢酸エチル/ヘキサン) で精製した。得られた化合物をTHF (30 mL) に溶解し、臭化フェニルマグネシウムのTHF溶液 (1.0 M、 24.6 mL) を氷冷下で滴下し、室温で2時間攪拌した。反応液に塩化アンモニウム水溶液 (30 mL) を加え分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (20%酢酸エチル/ヘキサン) で精製した。得られた化合物をTHF (10 mL) に溶解し、テトラブチルアンモニウムフルオリド THF溶液 (1.0 M、20 mL) を加え、室温で2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (30%ヘキサン/酢酸エチル) で精製した。得られたジオール体 (1.0 g の内、250 mg) をジクロロメタン (5.0 mL) に溶解し、トリエチルアミン (228 μL)、塩化メタンスルホニル(102 μL) を加え室温30分攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (10 mL) を加え分液し、有機層を水 (10 mL)、飽和食塩水 (10 mL) で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をTHF (4.0 mL) に溶解し、40%メチルアミン水溶液 (4.0 mL) を加えガラス封管中、60℃で4時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をトルエン (10 mL x 3) で共沸することで、標記化合物の粗精製物 (200 mg)を無色油状物質として得た。
【0131】
参考例9
(R)-2-アミノ-1,1-ビス(4-フルオロフェニル)-3-メチルブタン-1-オールの合成
【0132】
【化20】

【0133】
容易に入手可能なL-バリンエチルエステル塩酸塩 (1.0 g) を臭化4-フルオロフェニルマグネシウムのTHF溶液 (1.0 M, 45 mL) に0℃で加え80℃で15時間加熱還流した。反応液に0℃で飽和塩化アンモニウム水溶液 (10 mL) を加え、酢酸エチル (20 mL x 2) で抽出した。有機層を飽和食塩水 (20 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー (30%酢酸エチル/ヘキサン) で精製することで標記化合物 (255 mg) を得た。
【0134】
参考例10
(R)-1-フルオロ-1,1-ビス(4-フルオロフェニル)-3-メチルブタン-2-アミンの合成
【0135】
【化21】

【0136】
参考例9により得られた(R)-2-アミノ-1,1-ビス(4-フルオロフェニル)-3-メチルブタン-1-オール (366 mg) をTHF (6.0 mL) に溶解し、トリエチルアミン (388 μL) 及びトリホスゲン (436 mg) の THF溶液 (4.0 mL) を0℃で加え室温で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー (10%メタノール/クロロホルム) で精製した。得られた化合物をジクロロメタン (1.0 mL) に溶解し、フッ化水素-ピリジン(70%, 8.0 mL) に0℃で加え室温で24時間撹拌した。反応液に0℃でアンモニア水 (2.0 M, 10 mL) を加え、ジクロロメタン (20 mL x 2) で抽出した。有機層を飽和食塩水 (10 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー (10%酢酸エチル/ヘキサン) で精製することで標記化合物 (295 mg) を得た
【0137】
参考例11
2-アミノ-2-メチル-1,1-ジ(チオフェン-2-イル)プロパン-1-オールの合成
【0138】
【化22】

【0139】
容易に入手可能な 2-アミノイソブチリックアシッド メチルエステル塩酸塩 (500 mg) 及び臭化2-チエニルマグネシウム(18 mL) から、参考例9の方法に準じて合成することで、標記化合物 (75 mg) を白色固体として得た。
【0140】
参考例12
5-((2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)メチル)フラン-2-カルボン酸の合成
【0141】
【化23】

【0142】
容易に入手可能なメチル 5-(クロロメチル)-1-フロエート (1.2 g) をDCE (5.0 mL) に溶解し、文献(Nucleosides & Nucleotides, 4, 565-585 (1985))記載の方法で得られた2,4-ビス(トリメチルシリルオキシ)ピリミジン (2.6 g)、ヨウ化テトラn-ブチルアンモニム (500 mg) 及びヨウ素 (300 mg) を加え95℃で15時間加熱還流した。反応液を放冷後、水 (50 mL) を加え、酢酸エチル (30 mL x 5) で抽出した。有機層を飽和食塩水 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (100%酢酸エチル)で精製した。得られた化合物を水酸化ナトリウム水溶液 (1.0 M, 10 mL) に溶解し、室温で1時間撹拌した。反応液にダイヤイオン PK212 (H+ form) を反応液のpHが2.0になるまで加えた後、樹脂を濾去し、水 (100 mL x 2)、メタノール (100 mL x 2) で洗浄し、合一した濾液を減圧濃縮した。残渣をエタノール (20 mL x 3) で共沸することで標記化合物 (560 mg) を得た。
【0143】
参考例13
4-((2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)メチル)チアゾール-2-カルボン酸の合成
【0144】
【化24】

【0145】
文献 (J. Am. Chem. Soc. 123, 5249-5259. (2001)) 記載の方法に準じて得られた4-(クロロメチル)チアゾール-2-カルボン酸エチルエステル (1.14 g) から、参考例12の方法に準じて合成することで、標記化合物 (530 mg) を得た。
【0146】
実施例1
(S)-1-(4-(2-(ヒドロキシジフェニルメチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの合成
【0147】
【化25】

【0148】
文献 (J. Med. Chem., 8, 187-189 (1965)) 記載の方法により得られた4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)ブタノイックアシッド (40 mg) をDMF (2.0 mL) に溶解し、EDC・HCl (56 mg)、HOBt (35 mg)、及び容易に入手可能な(S)-ジフェニル(ピロリジン-2-イル)メタノール (56 mg) を加え室温で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (2%メタノール/クロロホルム)で精製することで、標記化合物 (62 mg、収率65 %) を泡状物質として得た。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm):1.00-1.09 (1H, m), 1.54-1.65 (1H, m), 1.90-2.09 (4H, m), 2.19-2.40 (2H, m), 3.01-3.11 (1H, m), 3.35-3.44 (1H, m), 3.50-3.60 (1H, m), 3.67-3.77 (1H, m), 5.13 (1H, dd, J = 8.4, 5.7 Hz), 5.69 (1H, dd, J = 7.8 Hz, 1.9 Hz), 6.70 (1H, s), 7.14 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.21-7.42 (10H, m), 8.68 (1H, brs)
【0149】
実施例2〜19
以下の化合物は文献 (J. Med. Chem., 8, 187-189 (1965))記載の方法により得られた4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)ブタノイックアシッドと各々のアミンから、実施例1の方法に準じて合成した (なお実施例2、8においてはトリエチルアミン (40 μL)を添加した)。結果を以下の表に示す。
【0150】
実施例2
(S)-1-(4-(2-ベンズヒドリルピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
【0151】
実施例3
(S)-1-(4-(2-(フルオロジフェニルメチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
【0152】
実施例4
4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-N-(1-ヒドロキシ-1,1-ビス(3-メトキシフェニル)-2-メチルプロパン-2-イル)ブタンアミド
【0153】
実施例5
4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-N-メチル-N-((1-フェニルシクロプロピル)メチル)ブタンアミド
【0154】
実施例6
4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-N-イソプロピル-N-((1-フェニルシクロプロピル)メチル)ブタンアミド
【0155】
実施例7
4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-N-メチル-N-((1-フェニルシクロペンチル)メチル)ブタンアミド
【0156】
実施例8
N-(1-(3-(シクロプロピルメトキシ)フェニル)-1-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-2-イル)-4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)ブタンアミド
【0157】
実施例9
(R)-4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-N-(1-ヒドロキシ-1,1-ジフェニルプロパン-2-イル)-N-メチルブタンアミド
【0158】
実施例10
(S)-N-(2-(3-(シクロプロピルメトキシ)-4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシブチル)-4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-N-メチルブタンアミド
【0159】
実施例11
(S)-1-(4-(2-(ビス(4-フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
【0160】
実施例12
(S)-1-(4-(2-(ビス(4-クロロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
【0161】
実施例13
(S)-1-(4-(2-(ヒドロキシビス(3-メチルチオフェン-2-イル)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
【0162】
実施例14
(S)-1-(4-(2-(ヒドロキシビス(3-メトキシフェニル)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
【0163】
実施例15
(S)-1-(4-(2-(ヒドロキシジチオフェン-3-イルメチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
【0164】
実施例16
(S)-1-(4-(2-(ビス(3-フルオロフェニル)(ヒドロキシ)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
【0165】
実施例17
(S)-1-(4-(2-(ヒドロキシビス(2-メトキシフェニル)メチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
【0166】
実施例18
4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-N-(2,2-ジフェニルエチル)-N-メチルブタンアミド
【0167】
実施例19
4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-N-(1-ヒドロキシ-2-メチル-1,1-ジフェニルプロパン-2-イル)ブタンアミド
【0168】
実施例20
(S)-1-(4-(2-(ヒドロキシジフェニルメチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
【0169】
【表1】

【0170】
【表2】

【0171】
【表3】

【0172】
【表4】

【0173】
【表5】

【0174】
【表6】

【0175】
【表7】

【0176】
なお前記表中、実施例2〜3、20で用いたアミンは容易に入手可能であり、実施例4〜10で用いたアミンはそれぞれ参考例2〜8により得た。また実施例11〜17は文献 (Tetrahedron Asymmetry, 14(1), 95-100 (2003)) 記載の方法、実施例18は文献(J. Med. Chem., 67, 5028-5031 (2002))記載の方法、実施例19は文献 (J. Am. Chem. Soc., 75, 2959-2962 (1953))記載の方法に準じて得られたアミンを用いた。
【0177】
実施例21
(S)-N-(2-(3-(シクロプロピルメトキシ)-4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシブチル)-5-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-N-メチルペンタンアミドの合成
【0178】
【化26】

【0179】
文献 (Russian Journal of Bioorganic Chemistry, 26, 662-668 (2005))記載の方法により得られた5-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)ペンタノイックアシッド (100 mg) と参考例3により得られた(S)-2-(3-(シクロプロピルメトキシ)-4-フルオロフェニル)-1-(メチルアミノ)ブタン-2-オール(126 mg)から実施例1の方法に準じて合成し、標記化合物 (120 mg、収率 55 %) をガム状物質として得た。
【0180】
1H-NMR (DMSO-d6) δ (ppm):0.30-0,34 (2H, m), 0.55-0.67 (5H, m), 1.11-2.00 (7H, m), 2.22 (2H, t, J = 6.8 Hz), 2.63 (1H, s), 2.80 (2H, s), 3.40-3.80 (4H, m), 3.87 (2H, d, J = 7.0 Hz), 5.36 (1H, brs), 5.54 (1H, d, J = 7.8 Hz), 6.91-7.19 (3H, m), 7.58-7.63 (1H, m), 11.2 (1H, brs)
【0181】
実施例22
(S,E)-1-(4-(2-(ヒドロキシジフェニルメチル)ピロリジン-1-イル)-4-オキソブト-2-エニル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンの合成
【0182】
【化27】

【0183】
参考例1により得られた4-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)ブタノイックアシッド (50 mg) と容易に入手可能な(S)-2-(フルオロジフェニルメチル)ピロリジン (70 mg) から実施例1の方法に準じて合成し、標記化合物 (74 mg、収率 69 %) を白色泡状物質として得た。
【0184】
1H-NMR (CDCl3) δ(ppm):0.79-0.89 (1H, m), 1.51-1.56 (1H, m), 1.97-2.15 (2H, m), 2.98-3.07 (1H, m), 3.37-3.46 (1H, m), 4.48 (2H, d, J = 5.1 Hz), 5.25 (1H, dd, J = 3.8, 8.4 Hz), 5.74 (1H, d, J = 6.5 Hz), 6.20 (1H, d, J = 15 Hz), 6.82 (1H, m), 7.11 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.20-7.39 (10H, m), 8.48 (1H, brs)
【0185】
実施例23
(R)-N-(1,1-ビス (4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-3-メチルブタン-2-イル)-5-((2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)メチル)フラン-2-カルボキサミドの合成
【0186】
【化28】

【0187】
参考例12により得られた5-((2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)メチル)フラン-2-カルボン酸 (30 mg) をジクロロメタン (2.0 mL) に懸濁し、EDC・HCl (37 mg)、HOBt (26 mg) 及び参考例9により得られた(R)-2-アミノ-1,1-ビス(4-フルオロフェニル)-3-メチルブタン-1-オール (43.7 mg) を室温で加え、10時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (100%酢酸エチル) で精製することで、標記化合物 (24 mg, 収率37%) を得た。
【0188】
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm):0.88 (3H, d, J = 6.8 Hz), 0.95 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.85-1.94 (2H, m), 3.76 (1H, brs), 4.76 (2H, s), 5.02 (1H, dd, J = 10.3, 2.2 Hz), 5.64 (1H, d, J = 7.8 Hz), 6.40 (1H, d, J = 3.5 Hz), 6.81-6.97 (5H, m), 7.12 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.40-7.48 (4H, m)
【0189】
実施例24
(R)-5-((2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)メチル)-N-[1-フルオロ-1,1-ビス(4-フルオロフェニル)-3-メチルブタン-2-イル]フラン-2-カルボキサミドの合成
【0190】
【化29】

【0191】
参考例12により得られた5-((2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)メチル)フラン-2-カルボン酸 (40 mg) と参考例10により得られた(R)-1-フルオロ -1,1-ビス(4-フルオロフェニル)-3-メチルブタン-2-アミン (60 mg) から実施例23の方法に準じて合成することで、標記化合物 (52 mg, 収率59%) を得た。
【0192】
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm): 0.90-1.02 (6H, m), 1.89-2.02 (1H, m), 3.42-3.51 (1H, m), 4.89 (2H, s), 5.05-5.23 (1H, m), 5.73 (1H, d, J = 8.1 Hz), 6.42-6.46 (2H, m), 6.94-7.10 (4H, m), 7.18 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.36-7.48 (3H, m)
【0193】
実施例25
(R)-N-(1,1-ビス(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-3-メチルブタン-2-イル)-4-((2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)メチル)チアゾール-2-カルボキサミドの合成
【0194】
【化30】

【0195】
参考例13により得られた4-((2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)メチル)チアゾール-2-カルボン酸 (40 mg)と参考例9により得られた(R)-2-アミノ-1,1-ビス(4-フルオロフェニル)-3-メチルブタン-1-オール (56 mg) から実施例23の方法に準じて合成することで、標記化合物 (34 mg, 収率40%) を得た。
【0196】
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm): 0.86 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.95 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.85-1.94 (1H, m), 4.93 (2H, s), 4.98 (1H, dd, J = 10.5, 2.4 Hz), 5.67 (1H, d, J = 7.6 Hz), 6.84-7.06 (5H, m), 7.32 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.39-7.63 (4H, m)
【0197】
実施例26
5-((2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)メチル)-N-(1-ヒドロキシ-2-メチル-1,1-ジ(チオフェン-2-イル)プロパン-2-イル)フラン-2-カルボキサミドの合成
【0198】
【化31】

【0199】
参考例12により得られた5-((2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)メチル)フラン-2-カルボン酸 (15 mg) と参考例11により得られた2-アミノ-2-メチル-1,1-ジ(チオフェン-2-イル)プロパン-1-オール (43 mg)から実施例23の方法に準じて合成することで、標記化合物 (20 mg, 収率66%) を得た。
【0200】
1H-NMR (CD3OD) δ (ppm): 1.54 (6H, s), 4.99 (2H, s), 5.70 (1H, d, J = 8.1 Hz), 6.64 (1H, d, J = 3.5 Hz), 6.96-7.02 (3H, m), 7.21-7.23 (2H, m), 7.30-7.33 (2H, m), 7.64 (1H, d, J = 8.1 Hz)
【0201】
比較例1
1-((2-トリチルオキシ)エトキシ)メチル)ピリミジン-2,4-(1H,3H)-ジオン
【0202】
【化32】

【0203】
前記化合物は国際公開2005-065689号に、最もヒトデオキシウリジントリホスファターゼ(以下、dUTPase)阻害活性の強い化合物として記載されており、本発明化合物と活性の比較をするため国際公開WO2005-065689号記載の方法で合成した。
【0204】
試験例1 ヒトdUTPase阻害作用
本発明化合物のヒトdUTPaseに対する阻害活性を、下記方法により[5-3H]デオキシウリジントリホスフェート(以下、[5-3H]dUTP)からの[5-3H]デオキシウリジンモノホスフェート (以下、[5-3H]dUMP)の生成を測定することにより求めた。
すなわち、1 μM dUTP(588 Bq/mLの[5-3H]dUTPを含む)0.02 mL、0.2 M トリス緩衝液(pH7.4)0.05 mL、16 mM塩化マグネシウム0.05 mL、20 mM 2-メルカプトエタノール0.02 mL、1%ウシ胎児血清由来アルブミン水溶液0.02 mL、種々濃度の被検化合物溶液又は対照として純水0.02 mL及び大腸菌を用いて発現させ精製したヒトdUTPase溶液0.02 mLの計0.2 mLを37℃で15分間反応させた。反応後直ちに100℃の水浴中で1分間加熱して反応を停止させ、15000 rpmで2分間遠心分離した。遠心分離後、得られた上清の一部(150 μL)をAtlantis dC18カラム(Waters社製、4.6×250 mm)を用いて高速液体クロマトグラフ(島津製作所製、Prominence)にて分析した。流速0.8 mL/minで移動相A(10 mMリン酸二水素カリウム(pH 6.7)、10 mMテトラブチルアンモニウム、0.25%メタノール)と移動相B(50 mMリン酸二水素カリウム(pH 6.7)、5.6 mMテトラブチルアンモニウム、30%メタノール)の4:6混液から移動相Bへの30分間濃度勾配により溶離した。溶離液に1:2の比率でシンチレーター(パーキンエルマー社製、Ultima-Flo AP)を混和し、Radiomatic Flow Scintillation Analyzer(パーキンエルマー社製、525TR)にて生成した[5-3H] dUMP(RT 10.2 min)の放射活性を測定した。
被検化合物の阻害活性は次式により求め、ヒトdUTPaseによって生成する[5-3H] dUMPの量を50%阻害する被検液の濃度をIC50(μM)として表8に示した。
【0205】
【数1】

【0206】
以下の表にヒトdUTPase阻害活性データを示す。
【0207】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

〔一般式(I)中、Xは、炭素数1〜6のアルキレン基又は炭素数2〜6のアルケニレン基を示し、アミド構造に隣接する該アルキレン鎖中のメチレン基が不飽和複素環基に置換されていてもよく;
1及びR2は、同一又は相異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有していてもよいアラルキル基(但し、アラルキル基を構成する芳香族炭化水素基のα位炭素原子に結合する2つの置換基が、同時にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基又は飽和若しくは不飽和複素環基のいずれかである場合を除く。)を示すか、又は、隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい含窒素飽和複素環を示す。〕
で表されるウラシル化合物又はその塩。
【請求項2】
Xが、炭素数2〜4のアルキレン基又はプロペニレン基を示し、アミド構造に隣接する該アルキレン鎖中のメチレン基がフリル基若しくはチアゾリル基に置換されていてもよく;
1が、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し;
2が、置換基を有していてもよいアラルキル基(但し、アラルキル基を構成する芳香族炭化水素基のα位炭素原子に結合する2つの置換基が、同時にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基又は飽和若しくは不飽和複素環基のいずれかである場合を除く。)を示すか;又は、R1及びR2が、隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよいピロリジニル基を示す請求項1に記載のウラシル化合物又はその塩。
【請求項3】
Xが、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロペニレン基、又は下記式(II)
【化2】

若しくは下記式(III)
【化3】

で表される基を示し、
1が、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示し;
2が、下記式(IV)
【化4】

〔式(IV)中、R3及びR4は、同一又は相異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示し;
5及びR6は、同一又は相異なって、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示すか(但し、R5及びR6が、同時に炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である場合を除く。)、又は、隣接する炭素原子と一緒になって、シクロアルキリデン構造を有し、
1及びY2は、同一又は相異なって、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基を示す。〕で表される置換フェニルエチル基を示すか;又は、
1及びR2が、隣接する窒素原子と一緒になって、下記式(V)
【化5】

〔式(V)中、R7、R8及びR9は、同一又は相異なって、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい不飽和複素環基を示す。〕
で表される置換ピロリジニル基を示す請求項1又は2に記載のウラシル化合物又はその塩。
【請求項4】
1が、水素原子、メチル基又はイソプロピル基を示す請求項1〜3のいずれか1項記載のウラシル化合物又はその塩。
【請求項5】
3及びR4が、同一又は相異なって、水素原子又はメチル基を示し;
5及びR6が、同一又は相異なって、水素原子、ヒドロキシル基、エチル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を有していてもよいフェニル基を示すか;又は、隣接する炭素原子と一緒になって、炭素数3〜7のシクロアルキリデン構造を示し;
1及びY2が、同一又は相異なって、水素原子、塩素原子、フッ素原子又は炭素数3〜7のシクロアルキル基を有していてもよいメトキシ基を示し;
7、R8及びR9は、同一又は相異なって、水素原子、ヒドロキシル基、フッ素原子、置換基としてハロゲン原子若しくは炭素数1〜6のアルコキシ基を有していてもよいフェニル基又は炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよいチエニル基を示す請求項3又は4に記載のウラシル化合物又はその塩。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のウラシル化合物又はその塩を含有する医薬組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のウラシル化合物又はその塩を含有するヒトdUTPase阻害剤。

【公開番号】特開2011−195452(P2011−195452A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187169(P2008−187169)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000207827)大鵬薬品工業株式会社 (52)
【Fターム(参考)】