説明

アミノアルコール化合物の製造方法

【課題】アミノアルコール化合物の新たな製造方法を提供する。
【解決手段】希土類元素化合物の存在下、式(1)の化合物とアンモニアとを反応させる工程を含むことを特徴とする式(2)で示されるアミノアルコール化合物の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルコール化合物の製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
式(2)

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表す。)
で示されるアミノアルコール化合物(以下、アミノアルコール化合物(2)と記すことがある)の代表的な化合物である2−アミノ−3−ブテン−1−オールは、機能性高分子用モノマーや医農薬等の製造原料として重要な化合物である。
【0003】
アミノアルコール化合物(2)の製造方法として、例えば、非特許文献1には、1,2−エポキシブテンとアンモニア水とを混合して、1,2−エポキシブテンをアンモノリシスすることにより、2−アミノ−3−ブテン−1−オールを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Amer.Chem.Soc.,vol.79,4792〜4796ページ(1950年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アミノアルコール化合物(2)を製造できる新たな方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、アミノアルコール化合物(2)の製造方法を鋭意検討したところ、本発明に至った。
【0007】
即ち本発明は、以下のとおりである。
〔1〕 希土類元素化合物の存在下、式(1)

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表す。)
で示される化合物とアンモニアとを反応させる工程を含むことを特徴とする式(2)

(式中、R、R及びRはそれぞれ上記と同じ意味を表す。)
で示されるアミノアルコール化合物の製造方法。
〔2〕 前記工程が、式(1)で示される化合物とアンモニアとを、10℃〜50℃の範囲から選択される温度で反応させる工程である〔2〕記載の製造方法。
〔3〕 希土類元素化合物が、スカンジウム化合物、イットリウム化合物及びセリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である〔1〕又は〔2〕記載の製造方法。
〔4〕 式(1)で示される化合物が1,2−エポキシ−3−ブテンであり、式(2)で示されるアミノアルコール化合物が2−アミノ−3−ブテン−1−オールである〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アミノアルコール化合物(2)を製造できる新たな方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアミノアルコール化合物(2)製造方法は、希土類元素化合物の存在下、式(1)で示される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある)とアンモニアとを反応させる工程を含むことを特徴とする。
【0010】
式(1)及び式(2)におけるR、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表す。
【0011】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。かかるアルキル基は、例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられ、炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられる。置換基を有するアルキル基としては、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基及びベンジル基が挙げられる。
【0012】
アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。かかるアリール基は、上記したアルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の置換基を有していてもよい。
【0013】
化合物(1)としては、
、R及びRが水素原子である化合物(1)、
が炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基であり、R及びRが水素原子である化合物(1)、
が炭素数1〜4のアルキル基であり、R及びRのうちの一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜4のアルキル基である化合物(1)、及び、
が水素原子であり、R及びRのうちの一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である化合物(1)が挙げられる。
【0014】
化合物(1)としては、例えば1,2−エポキシ−3−ブテン、1,2−エポキシ−3−メチル−3−ブテン、1,2−エポキシ−3,4−ジメチル−3−ブテン、1,2−エポキシ−4−メチル−3−ブテン、1,2−エポキシ−3−フェニル−3−ブテン、1,2−エポキシ−4−フェニル−3−ブテンが挙げられる。
【0015】
化合物(1)は、例えば、銀含有触媒の存在下にジエン化合物を酸素で酸化する方法(例えば、特許第2854059号公報参照。)等の公知の方法により製造することができる。
【0016】
希土類元素化合物は、希土類元素を含有する化合物であれば限定されない。希土類元素としては、周期表第3族元素及びランタノイド元素からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素が挙げられる。周期表第3族元素としては、スカンジウム、イットリウム及びランタンが挙げられ、ランタノイド元素としては、セリウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム及びイッテルビウムが挙げられる。希土類元素は、好ましくは、スカンジウム、イットリウム及びセリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、より好ましくは、スカンジウム及びセリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0017】
周期表第3族元素を含有する化合物としては、酸化スカンジウム、スカンジウムトリフラート、酢酸スカンジウム、塩化スカンジウム、硫酸スカンジウム、硝酸スカンジウム、スカンジウムアセチルアセトン等のスカンジウム化合物;酸化イットリウム、イットリウムトリフラート、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、硫酸イットリウム、硝酸イットリウム等のイットリウム化合物;及び酸化ランタニウム、ランタニウムトリフラート、酢酸ランタニウム、塩化ランタニウム、硫酸ランタニウム、硝酸ランタニウム等のランタニウム化合物が挙げられる。
【0018】
ランタノイド元素を含有する化合物としては、酸化セリウム、セリウムトリフラート、酢酸セリウム、塩化セリウム、硫酸セリウム、硝酸セリウム等のセリウム化合物;酸化サマリウム、サマリウムトリフラート、酢酸サマリウム、塩化サマリウム、硫酸サマリウム、硝酸サマリウム等のサマリウム化合物;酸化ユウロピウム、ユウロピウムトリフラート、酢酸ユーロピウム、塩化ユウロピウム、硫酸ユウロピウム、硝酸ユウロピウム等のユウロピウム化合物;酸化ガドリニウム、ガドリニウムトリフラート、酢酸ガドリニウム、塩化ガドリニウム、硫酸ガドリニウム、硝酸ガドリニウム等のガドリニウム化合物;及び酸化イッテルビウム、イッテルビウムトリフラート、酢酸イッテルビウム、塩化イッテルビウム、硫酸イッテルビウム、硝酸イッテルビウム等のイッテルビウム化合物が挙げられる。
【0019】
希土類元素化合物は、一種であってもよいし、二種以上を併用してもよい。また、希土類元素化合物のなかには、水和物が存在するものがあるが、水和物を用いてもよいし、無水物を用いてもよい。
【0020】
希土類元素化合物は、担体に担持されていてもよい。担体としては、活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト、珪藻土及び酸化ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。かかる担体の表面積は、反応活性を向上させる点で広い方が好ましい。担体に担持された希土類元素化合物は、市販品であってもよいし、例えば、上記した元素の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物及び酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を、担体に共沈法若しくは含浸法により担持させた後、焼成することにより調製したものであってもよい。
【0021】
希土類元素化合物は、スカンジウム化合物、イットリウム化合物及びセリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、セリウム化合物及びスカンジウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。
【0022】
アンモニアは、ガス状のアンモニア、液化したアンモニア及びアンモニア溶液のいずれの形態であってもよい。アンモニア溶液としては、メタノール等の極性有機溶媒にアンモニアが溶解した溶液であってもよいし、水にアンモニアが溶解したアンモニア水溶液であってもよい。アンモニア溶液は、市販品であってもよいし、アンモニアを極性有機溶媒又は水に溶解させて調製したものであってもよい。アンモニアは、好ましくは、ガス状のアンモニア、液化したアンモニア又はアンモニア水溶液であり、より好ましくはアンモニア水溶液である。
【0023】
化合物(1)とアンモニアとの反応は、溶媒の存在下で行ってもよいし、溶媒の非存在下で行ってもよい。溶媒としては、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;及び水が挙げられ、好ましくは水である。
【0024】
化合物(1)とアンモニアとの反応は、常圧条件下で行ってもよいし、加圧条件下で行ってもよい。反応を加圧条件下で行う場合、0.3MPa程度〜2MPa程度の圧力で反応を行うことが好ましい。反応温度は、通常−20℃程度〜150℃程度の範囲から選択され、好ましくは0℃程度〜100℃程度の範囲から選択され、より好ましくは10℃〜50℃の範囲から選択される。反応温度が150℃程度よりも高い場合は、副反応により生じる副生物が増加する傾向にあり、反応温度が−20℃程度より低い場合は、反応性が低下する傾向にある。
【0025】
化合物(1)とアンモニアとの反応は、通常、化合物(1)、アンモニア、希土類元素化合物及び必要に応じて溶媒を接触、混合することにより行うことができ、それら混合順序は制限されず、例えば、以下の(a)〜(e)のいずれかの方法により行うことができる。
【0026】
(a)アンモニア、希土類元素化合物及び必要に応じて溶媒を混合し、得られた混合物に所定の反応温度で化合物(1)を添加する方法;
(b)化合物(1)、アンモニア、希土類元素化合物及び必要に応じて溶媒を混合し、得られた混合物を所定の反応温度に調整する方法;
(c)化合物(1)、アンモニア及び必要に応じて溶媒を混合し、得られた混合物に所定の反応温度で希土類元素化合物を添加する方法;
(d)化合物(1)、希土類元素化合物及び必要に応じて溶媒を混合し、得られた混合物に所定の反応温度でアンモニアを添加する方法;並びに
(e)アンモニア及び溶媒を混合し、得られた混合物に所定の反応温度で化合物(1)、希土類元素化合物及び必要に応じて溶媒を添加する方法。
【0027】
反応は、生成するアミノアルコール化合物(2)がさらに化合物(1)と反応することを抑制する点で、(a)又は(e)記載の方法により行うことが好ましく、(a)記載の方法により行うことがより好ましい。例えば、(d)記載の方法において、反応を加圧条件下で行う場合、アンモニアを加圧注入する方法を採用することができる。
【0028】
希土類元素化合物の使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは0.001モル以上である。希土類元素化合物の使用量の上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、化合物(1)1モルに対して0.5モル以下である。
【0029】
アンモニアの使用量は、化合物(1)1モルに対して、通常1モル以上である。アンモニアは、生成するアミノアルコール化合物(2)がさらに化合物(1)と反応することを抑制する点で、好ましくは、化合物(1)に対して過剰量用いられる。上述の(b)〜(d)のいずれか記載の方法により反応を行う場合、アンモニアの使用量は、化合物(1)1モルに対して10モル以上が好ましく、アンモニアの使用量の上限は制限されないが、生産効率等を考慮すると、実用的には100モル以下である。上述の(a)又は(e)記載の方法により反応を行う場合、アンモニアの使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは5モル以上であり、より好ましくは10モル以上であり、アンモニアの使用量の上限は制限されないが、生産効率等を考慮すると、実用的には100モル以下である。
【0030】
反応を溶媒の存在下で行う場合、溶媒の使用量は制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には化合物(1)1重量部に対して、100重量部以下である。
【0031】
反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の通常の分析手段により確認することができる。
【0032】
反応終了後、例えば、過剰に使用したアンモニアを、必要に応じて、例えば、気化させて回収した後、反応混合物を濾過処理し、得られた濾液を濃縮処理、分液処理、晶析処理等に付すことにより、アミノアルコール化合物(2)を取り出すことができる。反応に用いた希土類元素化合物は、例えば、上述の濾過処理により固体として回収することもできるし、また、上述の分液処理により溶液として回収することもできる。アミノアルコール化合物(2)は、例えば、シュウ酸との塩として結晶化させて精製した後、シュウ酸との塩を分解することにより、精製することができる(例えばJ.Amer.Chem.Soc.,vol.79,4792〜4796ページ(1950年)参照。)。アミノアルコール化合物(2)は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の手段により精製してもよい。化合物(2)は、例えば、精留塔を用いる精留により精製することもできる。
【0033】
かくして得られるアミノアルコール化合物(2)としては、例えば、3−ブテン−2−アミノ−1−オール、3−メチル−3−ブテン−2−アミノ−1−オール、3,4−ジメチル−3−ブテン−2−アミノ−1−オール、4−メチル−3−ブテン−2−アミノ−1−オール、3−フェニル−3−ブテン−2−アミノ−1−オールおよび4−フェニル−3−ブテン−2−アミノ−1−オールが挙げられる。
【0034】
反応終了後、例えば固体として回収した希土類元素化合物は、そのまま若しくは必要に応じて精製した後、反応に再使用することができる。また、反応終了後、溶液として回収した希土類元素化合物は、必要に応じて濃縮し、そのまま若しくは必要に応じて精製した後、反応に再使用することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0036】
実施例1
<2−アミノ−3−ブテン−1−オール(アミノアルコール化合物(2))の製造>
磁気回転子を付したステンレス製の100mL反応管に、3−ブテン−1,2−エポキシド200mg、28%アンモニア水10g及びスカンジウムトリフラート14mgを加え、得られた混合物を、内温30℃で6時間攪拌し、3−ブテン−1,2−エポキシドとアンモニアとを反応させた。反応時の反応管内の圧力は、0.3MPa〜0.4MPaであった。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、アンモニアを気化させて反応混合物からアンモニアを除去して反応管内の圧力を常圧とした後、得られた反応混合物中の2−アミノ−3−ブテン−1−オールとその位置異性体である1−アミノ−3−ブテン−2−オールとを合計した含量及び3−ブテン−1,2−エポキシド含量をガスクロマトグラフィ(GC)分析(内部標準法)により求めた。また、2−アミノ−3−ブテン−1−オールと1−アミノ−3−ブテン−2−オールとの比率を、酢酸クロライドとピリジンとを用いて、それぞれをジアシル化誘導体に変換して求め、以下の収率を算出した。
2−アミノ−3−ブテン−1−オール 収率:55%
1−アミノ−3−ブテン−2−オール 収率:43%
原料3−ブテン−1,2−エポキシド回収率:0%
【0037】
実施例2
<2−アミノ−3−ブテン−1−オール(アミノアルコール化合物(2))の製造>
磁気回転子を付したステンレス製の100mL反応管に、3−ブテン−1,2−エポキシド200mg、28%アンモニア水10g及び硝酸スカンジウム10mgを加え、得られた混合物を、内温40℃で7時間攪拌し、3−ブテン−1,2−エポキシドとアンモニアとを反応させた。反応時の反応管内の圧力は、0.3MPa〜0.4MPaであった。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、アンモニアを気化させて反応混合物からアンモニアを除去して反応管内の圧力を常圧とした後、得られた反応混合物中の2−アミノ−3−ブテン−1−オールとその位置異性体である1−アミノ−3−ブテン−2−オールとを合計した含量及び3−ブテン−1,2−エポキシド含量をGC分析(内部標準法)により求めた。また、2−アミノ−3−ブテン−1−オールと1−アミノ−3−ブテン−2−オールとの比率を、酢酸クロライドとピリジンとを用いて、それぞれをジアシル化誘導体に変換して求め、以下の収率を算出した。
2−アミノ−3−ブテン−1−オール 収率:60%
1−アミノ−3−ブテン−2−オール 収率:38%
原料3−ブテン−1,2−エポキシド回収率:0%
【0038】
実施例3
<2−アミノ−3−ブテン−1−オール(アミノアルコール化合物(2))の製造>
磁気回転子を付したステンレス製の100mL反応管に、3−ブテン−1,2−エポキシド200mg、28%アンモニア水10g及びスカンジウムアセチルアセトン10mgを加え、得られた混合物を、内温40℃で7時間攪拌し、3−ブテン−1,2−エポキシドとアンモニアとを反応させた。反応時の反応管内の圧力は、0.3MPa〜0.4MPaであった。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、アンモニアを気化させて反応混合物からアンモニアを除去して反応管内の圧力を常圧とした後、得られた反応混合物中の2−アミノ−3−ブテン−1−オールとその位置異性体である1−アミノ−3−ブテン−2−オールとを合計した含量及び3−ブテン−1,2−エポキシド含量をGC分析(内部標準法)により求めた。また、2−アミノ−3−ブテン−1−オールと1−アミノ−3−ブテン−2−オールとの比率を、酢酸クロライドとピリジンとを用いて、それぞれをジアシル化誘導体に変換して求め、以下の収率を算出した。
2−アミノ−3−ブテン−1−オール 収率:53%
1−アミノ−3−ブテン−2−オール 収率:42%
原料3−ブテン−1,2−エポキシド回収率:0%
【0039】
実施例4
<2−アミノ−3−ブテン−1−オール(アミノアルコール化合物(2))の製造>
磁気回転子を付したステンレス製の100mL反応管に、3−ブテン−1,2−エポキシド200mg、28%アンモニア水10g及び硫酸スカンジウム10mgを加え、得られた混合物を、内温40℃で7時間攪拌し、3−ブテン−1,2−エポキシドとアンモニアとを反応させた。反応時の反応管内の圧力は、0.3MPa〜0.4MPaであった。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、アンモニアを気化させて反応混合物からアンモニアを除去して反応管内の圧力を常圧とした後、得られた反応混合物中の2−アミノ−3−ブテン−1−オールとその位置異性体である1−アミノ−3−ブテン−2−オールとを合計した含量及び3−ブテン−1,2−エポキシド含量をGC分析(内部標準法)により求めた。また、2−アミノ−3−ブテン−1−オールと1−アミノ−3−ブテン−2−オールとの比率を、酢酸クロライドとピリジンとを用いて、それぞれをジアシル化誘導体に変換して求め、以下の収率を算出した。
2−アミノ−3−ブテン−1−オール 収率:52%
1−アミノ−3−ブテン−2−オール 収率:43%
原料3−ブテン−1,2−エポキシド回収率:0%
【0040】
実施例5
<2−アミノ−3−ブテン−1−オール(アミノアルコール化合物(2))の製造>
磁気回転子を付したステンレス製の100mL反応管に、3−ブテン−1,2−エポキシド200mg、28%アンモニア水10g及び塩化セリウム10mgを加え、得られた混合物を、内温40℃で7時間攪拌し、3−ブテン−1,2−エポキシドとアンモニアとを反応させた。反応時の反応管内の圧力は、0.3MPa〜0.4MPaであった。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、アンモニアを気化させて反応混合物からアンモニアを除去して反応管内の圧力を常圧とした後、得られた反応混合物中の2−アミノ−3−ブテン−1−オールとその位置異性体である1−アミノ−3−ブテン−2−オールとを合計した含量及び3−ブテン−1,2−エポキシド含量をGC分析(内部標準法)により求めた。また、2−アミノ−3−ブテン−1−オールと1−アミノ−3−ブテン−2−オールとの比率を、酢酸クロライドとピリジンとを用いて、それぞれをジアシル化誘導体に変換して求め、以下の収率を算出した。
2−アミノ−3−ブテン−1−オール 収率:57%
1−アミノ−3−ブテン−2−オール 収率:41%
原料3−ブテン−1,2−エポキシド回収率:0%
【0041】
実施例6
<2−アミノ−3−ブテン−1−オール(アミノアルコール化合物(2))の製造>
磁気回転子を付した300mLシュレンク管に、28%アンモニア水100g及びスカンジウムトリフラート100mgを加え、内温0℃で攪拌した。得られた混合物に、3−ブテン−1,2−エポキシド10gを、1時間掛けて滴下した。その後、得られた混合物を内温25℃で4時間攪拌し、3−ブテン−1,2−エポキシドとアンモニアとを反応させた。得られた反応混合物からアンモニア水及び未反応の3−ブテン−1,2−エポキシドを留去し、無色オイル12.2gを得た。得られた無色オイル中の2−アミノ−3−ブテン−1−オールとその位置異性体である1−アミノ−3−ブテン−2−オールとを合計した含量及び3−ブテン−1,2−エポキシド含量をGC分析(内部標準法)により求めた。また、2−アミノ−3−ブテン−1−オールと1−アミノ−3−ブテン−2−オールとの比率を、酢酸クロライドとピリジンとを用いて、それぞれをジアシル化誘導体に変換して求め、以下の収率を算出した。
2−アミノ−3−ブテン−1−オール 収率:48%
1−アミノ−3−ブテン−2−オール 収率:49%
原料3−ブテン−1,2−エポキシド回収率:0%
【0042】
参考例1
<2−アミノ−3−ブテン−1−オール(アミノアルコール化合物(2))の精製>
100mLフラスコに、実施例6で得た無色オイル5.0gとエタノール10gとを加え、溶液を得た。得られた溶液に、シュウ酸5.0gをエタノール20gに溶解した溶液を加えた後、バス温30℃のロータリーエバポレーターで、わずかに結晶が析出するまで、得られた溶液からエタノールを留去した。得られた濃縮液を氷水で1時間冷却した後、析出した結晶(1番晶)を濾過し、乾燥して、結晶(1番晶)4.4gを得た。この結晶を水酸化ナトリウム水溶液と混合することにより塩分解したのち、クロロホルムで抽出した2−アミノ−3−ブテン−1−オールと1−アミノ−3−ブテン−2−オールとの比率を、酢酸クロライドとピリジンを用いて、それぞれをジアシル化誘導体に変換して求めた。
2−アミノ−3−ブテン−1−オール :22%
1−アミノ−3−ブテン−2−オール :78%
【0043】
1番晶を濾過した際に得られた濾液を濃縮し、析出した結晶(2番晶)を濾過し、乾燥して、結晶(2番晶)1.8gを得た。2番晶を濾過した際に得られた濾液を10%水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性にした後、ジエチルエーテル10mLで2回抽出し、得られたジエチルエーテル層を濃縮し、無色オイル1.87gを得た。得られた無色オイル中の2−アミノ−3−ブテン−1−オールと1−アミノ−3−ブテン−2−オールとの比率を、酢酸クロライドとピリジンを用いて、ジアシル化誘導体に変換して求めた。
3−ブテン−2−アミノ−1−オール:93%
3−ブテン−1−アミノ−2−オール:7%
【0044】
実施例7
<2−アミノ−3−ブテン−1−オール(アミノアルコール化合物(2))の製造>
磁気回転子を付した100mLシュレンク管に、28%アンモニア水10g及びイットリウムトリフラート5mgを加え、内温0℃で攪拌した。得られた混合物に、3−ブテン−1,2−エポキシド200mgを加えた。その後、得られた混合物を内温30℃で6時間攪拌し、3−ブテン−1,2−エポキシドとアンモニアとを反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却した後、濃縮した後、得られた反応混合物中に含まれる2−アミノ−3−ブテン−1−オールとその位置異性体である1−アミノ−3−ブテン−2−オールとを合計した含量及び3−ブテン−1,2−エポキシド含量をGC分析(内部標準法)により求めた。また、2−アミノ−3−ブテン−1−オールと1−アミノ−3−ブテン−2−オールとの比率を、酢酸クロライドとピリジンとを用いて、それぞれをジアシル化誘導体に変換して求め、以下の収率を算出した。
2−アミノ−3−ブテン−1−オール 収率:48%
1−アミノ−3−ブテン−2−オール 収率:48%
原料3−ブテン−1,2−エポキシド回収率:0%
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、アミノアルコール化合物(2)を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素化合物の存在下、式(1)

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表す。)
で示される化合物とアンモニアとを反応させる工程を含むことを特徴とする式(2)

(式中、R、R及びRはそれぞれ上記と同じ意味を表す。)
で示されるアミノアルコール化合物の製造方法。
【請求項2】
前記工程が、式(1)で示される化合物とアンモニアとを、10℃〜50℃の範囲から選択される温度で反応させる工程である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
希土類元素化合物が、スカンジウム化合物、イットリウム化合物及びセリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
式(1)で示される化合物が1,2−エポキシ−3−ブテンであり、式(2)で示されるアミノアルコール化合物が2−アミノ−3−ブテン−1−オールである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−28590(P2013−28590A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−134499(P2012−134499)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】