説明

アミノアルコール誘導体の製造方法およびその(1R,4S)−4−[(2−アミノ−6−クロロ−5−ホルムアミド−4−ピリミジニル)アミノ−2−シクロペンテニル−1−メタノ−ル

【課題】式Iのアミノアルコールのラセミ体または光学活性体を製造する新規な方法、対応するアシル誘導体へ転化させる方法、およびアミノアルコールの光学活性体を用いて(1S,4R)−または(1R,4S)−4−(2−アミノ−6−クロロ−9−H−プリン−9−イル)−2−シクロペンテニル−1−メタノールへと転化させる方法の提供。


【解決手段】2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンから出発して式Iのラセミ体アミノアルコールを合成し、続いて光学活性な酒石酸で光学分割し、得られた2種の光学活性なアミノアルコールに対し、それぞれN−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)ホルムアミドと反応させ、さらに分子内環化することにより(1S,4R)−または(1R,4S)−4−(2−アミノ−6−クロロ−9−H−プリン−9−イル)−2−シクロペンテニル−1−メタノールとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記の式の(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンもしくはその塩に関し、
【化1】

【0002】
また、そのD−またはL−酒石酸水素塩に関し、さらにそれを転化して、(1S,4R)−または(1R,4S)−4−(2−アミノ−6−クロロ−9−H−プリン−9−イル)−2−シクロペンテンとする方法に関する。式IVの(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンは、カルボキシル系のヌクレオサイドたとえばカルボビルCarbovir(R)製造の、重要な中間体である(Campbell et al., J. Org. Chem. 1995, 60, 4602-4616)。
【背景技術】
【0003】
(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンを製造する方法は、たとえば、キャンベルら(前掲書)、パークおよびラポポート(K.H. Park, H. Rapoport, J. Org. Chem. 1994, 59, 394-399)に記述されている。それらの方法においては、出発物質はどちらもD−グルコノ−δ−ラクトンまたはD−セリンであり、おおよそ15の段階を踏んで(1R,4S)−N−tert-ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシメチル−2−シクロペンテンに到達し、ついで保護基を取り除いて(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンに至る。
【0004】
これらの方法はともにコストが高く、複雑であって、工業的な実施には適さない。WO93/17020には(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造方法が記載されていて、そこでは(1R,4S)−4−アミノ−2−シクロペンテン−1−カルボン酸を、リチウムアルミニウムハイドライドを使用して還元し、所望の生成物にする。
【0005】
この方法の不利な点は、第一に、シクロペンテン環の二重結合もまた還元されることと、リチウムアルミニウムハイドライドの取り扱い難さであり、第二に、あまりにコストがかかることである。
【0006】
テイラーら(S.J.Taylor et al., Tetrahetron: Asymmetry vol.4, No.6, 1993, 1117-1128)は、(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンを原料とし、これから出発する(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造方法を開示している。この方法は、出発物質を、シュードモナス・ソラナセアルムPseudomonas solanacearum種またはシュードモナス・フルオレッセンスP. fluorescens種の微生物を使用して、(1R,4S)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンに変換し、これをついでジ−tert-ブチルジカーボネートと反応させて(1R,4S)−N−tert-ブトキシカルボニル−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンとし、これをナトリウムボロハイドライドおよびトリフルオロ酢酸を用いて還元し、所望の化合物にする。この方法もまた、あまりにコスト高である。
【0007】
このほか、マルチネら(Martinez et al., J. Org. Chem. 1996, 61, 7963-7966)は、ジエチルジアルキルマロネートから出発する10工程の(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造方法を開示している。この方法もまた、複雑であって工業的な実施には適しないという欠点がある。
【0008】
N−置換−(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンは、電子吸引性の置換基を有するから、金属水素化物を使用して還元し、対応するアミノアルコールに変換できるということも知られている(Katagiri etal., Tetrahedron Letters, 1989, 30, 1645-1648; Taylor et al., 前掲書)。
【0009】
これと反対に、下記の式の置換されていない(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンが、
【化2】

【0010】
リチウムアルミニウムハイドライドにより還元されて、(±)−2−アザビシクロ[2.2.2]オクテンを与えることが知られており(Malpass & Tweedle, J. Chem. Soc., Perkin Trans 1, 1977, 874-884)、また今日まで、(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンを直接還元して対応するアミノアルコールにすることは、不可能であることが知られていた。(Katagiri et al., 前掲書; Taylor et al., 前掲書)
さらに、ラセミ体の1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンを、(−)−ジベンジル酒石酸を使用して光学分割することも知られている(US−A5034394)。この反応は、一方で(−)−ジベンジル酒石酸が高価であること、および他方で、正確に配合されたアセトニトリルとエタノ−ルとの混合物の存在下に分割を行なわなければならない、という欠点がある。この溶媒混合物は分離できず、従って焼却処理するほかない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの、簡単で経済的であり、コスト的に効率のよい方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、下記の式をもつ(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの、ラセミ体または光学活性体のひとつの形であるものが、
【化3】

【0013】
金属水素化物によって還元されて、下記の式をもつアミノアルコールの、ラセミ体または光学活性体のひとつの形であるものが、簡単に与えられることがわかった。ラセミ体の cis−アミノアルコールが好適に得られる。
【化4】

【0014】
当業者は承知しているとおり、式Iのアミノアルコールは、酸を用いて対応する塩、たとえばハロゲン化水素酸塩にすることができる。適切なハロゲン化水素酸塩は、臭化水素酸塩および塩化水素酸塩である。
【0015】
出発原料である(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンは、EP−A0508352に記載の方法によって製造することができる。
【0016】
使用することのできる金属水素化物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化物、ならびにホウ素およびアルミニウム族の二元系または錯体の金属水素化物、たとえばアルカリ金属またはアルカリ土類金属のボロハイドライドである。適切なアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水素化物は、LiH,NaH,KH,BeH2,MgH2またはCaH2である。
【0017】
使用することのできるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の二元系ボロハイドライドは、NaBH4,LiBH4,KBH4,NaAlH4,LiAlH4,KAlH4,Mg(BH4)2,Ca(BH4)2,Mg(AlH4)2、およびCa(AlH4)2である。ホウ素およびアルミニウム族の錯体の金属水素化物は、一般式M12nmを有し、ここでnは1ないし4の整数であり、mは1ないし4マイナス対応するnの整数であり、M1はアルカリ金属原子、M2はホウ素またはアルミニウムであり、LはC1-4アルキル、C1-4アルケニル、C1-4アルコキシ、CNまたはアミンであり、あるいはまた、錯体である金属水素化物は、一般式M2opを有し、ここでM2は前記した意味を有し、oは0ないし3の整数であり、pは3ないし3マイナス対応するpの整数である。可能なM12nmの化合物は、LiBH(C25)3,LiBHx(OCH3)4-x,LiAlH(OC(CH3)3)3,NaAlH2(OC24OCH3)2,NaAlH2(C25)2およびNaBH3CNである。好ましくは、還元は金属ボロハイドライドを使用して行なう。当業技術に通じた者は知っているとおり、上記した金属ハイドライドたとえばLiBH4もまた、その場で(in situ)製造することができる。LiBH4の常用されている製造方法は、たとえば、アルカリ金属ボロハイドライドとハロゲン化リチウムとの反応(H. C. Brown et al., Inorg. Chem. 20, 1981, 4456-4457)、LiHとB23との反応(EP−A0512895)、さらにLiHと(H52)OBF3との反応(DE−A947702)およびLiHとB(OCH3)3との反応である(US−A2,534,533)。
【0018】
金属水素化物は、(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの1モルあたり、1ないし5モルの比で使用することが好都合である。
【0019】
金属水素化物、とくにNaBH4は、リチウム塩を添加剤とし、これとともに使用することが好ましい。使用できるリチウム塩は、LiCl,LiF,LiBr,LiI,Li2SO4,LiHSO4,Li2CO3,LiOCH3およびLiCO3である。
【0020】
還元は、不活性ガス、たとえばアルゴンガスまたは窒素ガスの雰囲気下に行なうことが好都合である。
【0021】
還元は、−20ないし200℃の温度において行なうことができ、好ましい温度は60ないし150℃である。
【0022】
適切な溶媒は、アプロティックな、またはプロティックな有機溶媒である。適切なアプロティックな有機溶媒は、エーテルまたはグリコールエーテル、たとえばジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、モノグライム、ダイグライムおよびホルムアルデヒドジメチルアセタールである。適切なプロティックな有機溶媒は、C1-6アルコール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、tert−アミルアルコールまたはヘキサノールであり、また、これらと水との混合物である。適切なプロティックな有機溶媒はまた、上記のエーテルまたはグリコールエーテルと、水または上記のアルコールのいずれかとの混合物でもある。例を挙げれば、C1-6アルコールとエーテルまたはグリコールエーテルとの混合物、とりわけメタノール、エタノールまたは水と、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライムまたはダイグライムとの混合物である。好ましいのは、プロティックな有機溶媒であって、たとえば、C1-6アルコールまたは水とエーテルまたはグリコールエーテルとの混合物である。
【0023】
好ましい態様においては、還元は添加剤の存在下に、たとえば水またはモノ−もしくはポリ−C1-6アルコールのような添加剤の存在下に行なう。モノ−C1-6アルコールは、メタノール、エタノール、メトキシエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ブタノールであってもよい。ポリ−C1-6アルコールは、ブタンジオールのようなジオールであってもよいし、グリセロールのようなトリオールであってもよい。とくに、低級脂肪族アルコールはメタノールまたはエタノールである。本発明で、低級脂肪族アルコールは、(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの1モル当たり、2ないし15モルの比率で使用することが好都合である。
【0024】
反応を上記のアルコールの存在下に実施する場合、対応するアミノ酸エステルは、その場で(中間体として)生成させることができる。すなわち、使用する出発物質が(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンである場合、本発明によれば、対応する(±)−アミノ酸エステルが形成されるであろう。もし使用する出発物質が(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンであるならば、本発明によれば、これに対応して、(−)−アミノ酸エステルが中間体として形成されるであろう。
【0025】
驚くべきことに、下記の一般式をもつシクロペンテン誘導体の、
【化5】

【0026】
(式中、RはC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アリールまたはアリロキシである。)
ラセミ体または光学活性体のひとつの形であるものを、アルカリ金属水酸化物を用いて加水分解することにより、下記の式のアミノアルコールの、
【化6】

【0027】
ラセミ体または光学活性体のひとつの形であるものが、単純な工程で得られることがわかった。
【0028】
1-4アルキルは、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。この明細書で、置換されたC1-4アルキルの語は、1個または2個以上のハロゲン原子で置換されたC1-4アルキルを意味する。ハロゲン原子は、F,Cl,BrまたはIである。C1-4アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソプロピル、クロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチルおよびジブロモメチルである。C1-4アルキルは、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチルまたはクロロメチルである。
【0029】
使用するC1-4アルコキシは、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシである。使用するアリールは、たとえば、フェニルまたはベンジルであり、置換されているものも、置換されていないものも含む。この明細書において、置換されたフェニルおよびベンジルの語は、1個または2個以上のハロゲン原子で置換されたもの、たとえばクロロベンジル、ジクロロベンジル、ブロモフェニルまたはジブロモフェニルを意味する。使用されるアリロキシは、たとえば、ベンジロキシまたはフェノキシであって、置換されているものも、置換されていないものも含む。
【0030】
使用されるアルカリ金属水酸化物は、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物である。
【0031】
プロセスの変形として、一般式IIIのシクロペンテン誘導体は、好ましくは,下記の一般式の
【化7】

【0032】
(式中、Rは前記したとおりである。)
対応するアシル−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの、ラセミ体または光学活性体のひとつの形であるものから、すでに記述した金属水素化物を使用して、無水の溶媒中で製造する。
【0033】
無水の溶媒は、プロティックまたはアプロティックな有機溶媒であればよく、とくに、無水のプロティックな有機溶媒たとえば第三級アルコールである。第三級アルコールは、tert−ブチルアルコールまたはtert−アミルアルコールであることができる。
【0034】
すでに上述したように、本発明の還元は、好ましくは、添加剤の存在下に、たとえばメタノールのようなC1-6アルコールの存在下、ことに、アシル−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン(式IV)1モル当たり2モルのメタノールの存在下に行なう。
【0035】
反応は、好都合には0ないし50℃、好ましくは15ないし30℃の温度で実施する。
【0036】
式Iのアミノアルコールのラセミ体、好ましくは cis−アミノアルコールのラセミ体は、ついで本発明に従って、光学活性な酒石酸を用いた化学的な手法によるか、または加水分解酵素を用いたバイオテクノロジー的な手法により、アシル化剤の存在下に転化して、次式の(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン
【化8】

【0037】
もしくはその塩、および(または)次式の(1S,4R)−もしくは(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン誘導体
【化9】

【0038】
(式中、XおよびYは、同一または異なるものであって、アシル基またはHであり、X=Y=Hを除く。)となる。
【0039】
使用される加水分分解酵素は、リパーゼ、プロテアーゼ、アミダーゼまたはエステラーゼであり、リパーゼが好ましく用いられる。
【0040】
この明細書において、塩の語は、ハロゲン化水素酸塩たとえば塩化水素酸塩、臭化水素酸塩または酒石酸塩を意味する。
【0041】
当業者は知っているとおり、加水分解酵素により触媒されたアシル化であって、光学的に活性な化合物が生成する反応は、適切なアシル化剤の存在下に実施される(Balkenhohl et al., 1997, J. Prakt. Chem. 339, 381-384; K. Faber,“Biotransformation in Organic Chemistry” 2nd ed., Berlin 1995, 270-305)。適切なアシル化剤は、一般にカルボン酸誘導体たとえばカルボキサミド、カルボン酸無水物またはカルボン酸エステルである。カルボン酸エステルは、たとえばつぎのようなものであることができる:アルコキシカルボン酸エステルたとえばエチルメトキシアセテートおよびイソプロピルメトキシアセテート;C1-6カルボン酸エステルたとえば酢酸ブチル、酪酸エチルおよびエチルヘキサノエート、グリセリルエステルたとえばトリブチリン(グリセリルトリブチレート)、グリコールエステルたとえばグリコールジブチレートおよびジエチルジグリコレート、ジカルボン酸エステルたとえばジエチルフマレートおよびマレエート、シアノカルボン酸エステルたとえばシアノアセテート、または環状エステルたとえば6−カプロラクトンである。
【0042】
したがって、式VIIおよびVIIIにおけるアシル基は、使用するカルボン酸誘導体の酸成分に対応する。
【0043】
使用できるリパーゼは、常用の市販のリパーゼたとえば、アスペルギルス・オリゼAspergillus oryzaeからのノボNovoリパーゼSP523(ノボチムNovozym398)、アスペルギルス・オリゼからのノボリパーゼSP524(リパーゼ=パラターゼPalatase 20000L、ノボ社)、カンジダ・アンタルクチカCandida antarcticaからのノボリパーゼSP525(リパーゼB=ノボチム435、固定化)、カンジダ・アンタルクチカからのノボリパーゼSP526(リパーゼA=ノボチム735、固定化)、フルカFluka社のリパーゼキット(1および2)、アマノPリパーゼ、シュードモナスPseudomonas spからのリパーゼ、カンジダ・キリンドケアC. cylindraceaからのリパーゼ、カンジダ・リポリチカC. lypolyticaからのリパーゼ、ムコール・ミーヘイMucor mieheiからのリパーゼ、アスペルギルス・ニガーAspergillus nigerからのリパーゼ、バチルス・テルモカテヌラツスBacillus thermocatenulatusからのリパーゼ、カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼ、リパーゼAH(アマノ、固定化)、リパーゼP(ナガセ)、カンジダ・ルゴサC. rugosaからのリパーゼAY、リパーゼG(アマノ50)、リパーゼF(アマノF−AP15)、リパーゼPS(アマノ)、リパーゼAH(アマノ)、リパーゼD(アマノ)、シュードモナス・フルオレセンスP.fluorescensからのリパーゼAK、シュードモナス・ケパキアP.cepaciaからのリパーゼPS、リゾープス・ニベウスRhizopus niveusからのニューラーゼnewlaseI、リパーゼPS−CI(シュードモナス・ケパキアからのリパーゼ、固定化)である。これらのリパーゼは、当業者は知っているとおり、細胞を含まない酵素エキスの形でも、また対応する微生物の細胞の中に存在する状態でも使用できる。
【0044】
プロテアーゼもまた市場で入手できる。たとえば、スブチリシンのようなセリンプロテアーゼである。このスブチリシンは、バチルスsp.からのサビナーゼsavinase、アルカラーゼalcalase、バチルス・リケニフォルミスB. licheniformisからのスブチリシンであってもよいし、またアスペルギルス、リゾープス、ストレプトミセスStreptomycesまたはバチルスsp.からのプロテアーゼであってもよい。
【0045】
バイオテクノロジーによるラセミ体の光学分割は、温度は10ないし80℃、pHは4ないし9で好都合に実施することができる。
【0046】
バイオテクノロジーによるラセミ体の光学分割は、プロティックな、またはアプロティックな有機溶媒の中で、好都合に実施することができる。適切なアプロティックな有機溶媒は、エーテルたとえばtert−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン、脂肪族炭化水素たとえばヘキサン、有機塩基たとえばピリジン、およびカルボン酸エステルたとえば酢酸エチルであり、適切なプロティックな有機溶媒は、すでに記述したC1-6アルコール、たとえばペンタノールである。
【0047】
本発明に従うラセミ体のバイオテクノロジー的な光学分割の間に生成する、一般式VIIおよびVIIIの(1S,4R)−または(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン誘導体は、所望する目的化合物(式VまたはVIのアミノアルコール)によって、化学的な手段で加水分解されて、式VまたはVIのアミノアルコールになる。化学的な加水分解は、水性の塩基溶液の中で、または塩基性のイオン交換体を使用して、好都合に実施することができる。水性の塩基溶液は、好ましくは、一般式IIIのシクロペンテン誘導体の加水分解に関して上述したように、アルカリ金属水酸化物のそれである。塩基性のイオン交換体は、たとえば、ダウエックスDowex 1×8(OH-)およびデュオライトDuolite A147である。
【0048】
ラセミ体の化学的な光学分割は、光学的に活性な酒石酸たとえばD−(−)−酒石酸またはL−(+)−酒石酸を使用して実施する。
【0049】
D−(−)−酒石酸を使用して実施するラセミ体の光学分割は、まずラセミ体の1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンをD−(−)−酒石酸と、C1-6アルコールの存在下に反応させることにより、好都合に実施できる。適切なC1-6アルコールは、上に記述したものと同じである。メタノールを使用することが好ましい。塩の形成に至る反応は、通常、温度が20℃から溶媒の還流温度まで、好ましくは還流温度において実施する。所望であれば、反応の間に生成した1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン・D−酒石酸を、C1-6アルコールたとえばメタノールから再結晶することにより精製する。
【0050】
L−(+)−酒石酸を使用するラセミ体の光学分割は、D−(−)−酒石酸を使用するそれと同様に実施する。すなわち、L−(+)−酒石酸を使用するラセミ体の光学分割は、低級脂肪族アルコールの存在下に、20℃から溶媒の還流温度までの温度において、好ましくは還流温度において実施する。冷却にしたがって、(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン・L−酒石酸水素が晶出する。
【0051】
(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン・L−酒石酸水素は、とくに、母液中に溶解した状態で存在する。
【0052】
(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの単離、さらなる精製(放出)および対応する塩への転換は、塩基処理およびそれに続く酸処理によって行なわれる。適切な塩基はアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、または、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物である。アルカリ金属アルコキシドは、ナトリウムまたはカリウムのアルコキシドでよい。アルカリ金属の炭酸塩は、ナトリウムまたはカリウムの炭酸塩、ナトリウムまたはカリウムの炭酸水素塩であり、アルカリ土類金属の炭酸塩は、マグシウムまたはカルシウムの炭酸塩である。アルカリ金属の水酸化物は、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物であり、アルカリ土類金属の水酸化物は、カルシウムの水酸化物である。対応する塩への転換は、通常、硫酸、塩酸またはリン酸のような鉱酸、好ましくは塩酸を使用して行なう。
【0053】
(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン−D−酒石酸水素塩および(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン−L−酒石酸水素塩は、文献未載の新規化合物であって、本発明によりはじめて提供されたものである。
【0054】
D−(+)−酒石酸を使用するラセミ体の化学的な光学分割の方が、より高い性能、技術的な容易さおよびより大きな分割効率の点で、有利である。
【0055】
アミノアルコールのラセミ体に関しては、光学的に活性な(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンを、D−(−)−またはL−(+)−酒石酸と反応させて、対応する酒石酸塩を得ることは、もちろん可能である。
【0056】
本発明のさらなる構成部分は、さらなる転化すなわち(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンをアシル化して、下記の一般式の(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン誘導体
【化10】

【0057】
とすることである。
【0058】
ここで、置換基Rは、一般式IIIのシクロペンテン誘導体に関して定義したとおりである。
【0059】
アシル化は、一般式
【化11】

【0060】
(式中、Xはハロゲン原子であり、Rは前記したとおりである。)のハロゲン化カルボニルを使用するか、または一般式
【化12】

【0061】
(式中、Rは前記したとおりである。)のカルボン酸無水物を使用して、実施することができる。ハロゲン原子XはF,Cl,BrまたはIである。ClおよびFが好ましい。
【0062】
ハロゲン化カルボニルの例は、アセチルクロライド、クロロアセチルクロライド、ブチリルクロライド、イソブチリルクロライド、フェニルアセチルクロライド、ベンジルクロロホルメート、プロピオニルクロライド、ベンゾイルクロライド、アルキルクロロホルメートまたはtert−ブチロキシカルボニルフルオライドである。
【0063】
カルボン酸無水物の例は、tert−ブトキシカルボニルアンハイドライド、ブチリックアンハイドライド、アセチックアンハイドライドまたはプロピオニックアンハイドライドである.アシル化は、カルボン酸無水物、とくにtert−ブトキシカルボニルアンハイドライドを使用して実施することが好ましい。
【0064】
アシル化は、溶媒なしでも、またアプロティックな有機溶媒を使用しても実施できる。アシル化を、アプロティックな有機溶媒中で行なうのが好都合である。適切なアプロティックな有機溶媒は、たとえば、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチレンクロライド、N−メチルピロリドン、トリエチルアミン、クロロホルム、エチルアセテート、無水酢酸およびこれらの混合物である。
【0065】
アシル化は、温度−20ないし100℃で好都合に実施することができ、好ましくは0ないし80℃で実施する。
【0066】
本発明にしたがう、(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン・D−またはL−酒石酸水素の、下記の式の(1S,4R)−または(1R,4S)−4−(2−アミノ−6−クロロ−9−H−プリン−9−イル)−2−シクロペンテニル−1−メタノールまたはその塩
【化13】

【0067】
への転換は、(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン・D−またはL−酒石酸水素を、下記の式のN−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)ホルムアミド
【化14】

【0068】
と反応させて、下記の式の(1S,4R)−または(1R,4S)−4−[(2−アミノ−6−クロロ−5−ホルムアミド−4−ピリミジニル)アミノ]−2−シクロペンテニル−1−メタノールとし、
【化15】

【0069】
ついで後者を既知の方法に従って環化し、式XIおよびXIIに従う化合物にすることによって実施する。
【0070】
N−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)ホルムアミドは、WO95/21161に開示の方法によって製造することができる。
【0071】
反応は、塩基の存在下に好都合に実施される。好適な塩基は、(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの、対応する酒石酸塩からの解放に関して記述したものと同じである。
【0072】
反応は、プロティックな溶媒中で好都合に実施できる。プロティックな溶媒の例は、C1-6アルコール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールまたはイソブタノールである。
【0073】
式XIVまたはXVの(1S,4R)−または(1R,4S)−4−[(2−アミノ−6−クロロ−5−ホルムアミド−4−ピリミジニル)アミノ]−2−シクロペンテニル−1−メタノールは、つぎに、WO95/21161に開示された既知の方法によって環化され、式XIまたはXIIの、最終生成物となる。
【0074】
この環化は、通常、オルト蟻酸トリアルキルに溶解した状態で、濃厚な水性の酸の存在下に実施する。使用するオルト蟻酸トリアルキルは、たとえば、オルト蟻酸トリメチルはたはトリエチルである。
【0075】
水性の酸は、たとえば、フッ化水素酸、硫酸またはメタンスルホン酸である。
【0076】
本発明のさらなる構成部分は、式XIIの(1S,4R)−4−(2−アミノ−6−クロロ−9−H−プリン−9−イル)−2−シクロペンテニル−1−メタノールまたはその塩を、下記の式の(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンまたは(−)−アシル−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン
【化16】

【0077】
(式中、Rは前記した意味を有する。)から出発して、これを金属水素化物で還元し、式
【化17】

【0078】
のアミノアルコールとするか、または一般式
【化18】

【0079】
(式中、Rは前記した意味を有する。)のシクロペンテン誘導体とし、ついで、これらを対応するハロゲン化水素酸塩にし、さらに下記の式のN−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)−ホルムアミド
【化19】

【0080】
と反応させて、下記の式の(1S,4R)−4−[(2−アミノ−6−クロロ−5−ホルムアミド−4−ピリミジニル)アミノ]−2−シクロペンテニル−1−メタノール
【化20】

【0081】
とし、最後にこれを既知の方法で環化して、下記の式の化合物にする、総括的なプロセスである。
【化21】

【0082】
このプロセスの変更態様は、その中で生成するハロゲン化水素酸塩が、式XIIの化合物の生成における粗混合物として使用できるという利益がある。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0083】
アシル−または置換されていない−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの還元
1.1
cis−(±)−アセチル−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの、無水プロティック有機溶媒中におけるナトリウムボロハイドライドを用いた還元
2−メチル−2−ブタノール(アミルアルコール)280gおよびナトリウムボロハイドライド15.2g(0.4mol)を、スルホン化フラスコに、20℃で装入した。その結果生じた懸濁液に、(±)−アセチル−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン907g(0.6mol)とメタノール37.5g((±)−アセチル−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン基準で2当量)との混合物を、2時間にわたって、20℃で計り入れた。反応混合物をさらに3時間、20℃で攪拌した。溶剤をできるだけ蒸発させ除去した(40℃)。メタノール280gおよび蟻酸27.2gを入れ、混合物を25〜30℃に温め、この温度(130〜80mbar)においてホウ酸メチル/メタノールの共沸混合物を蒸留除去することによって、ホウ素を除去した。沈殿した蟻酸ナトリウムを濾過により分離し、濾液を蒸発により減容して、93.4gの粗生成物を、透明でねばい油状物として得た。粗生成物の収率:約84〜85%。
【0084】
1.2
cis−(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3 −オン(10.00g,91.6mmol)とリチウムボロハイドライド(4.00g,183.7mmol)との乾燥ジオキサン(100ml)中の懸濁液を、不活性ガス(アルゴン)雰囲気下に4時間、還流温度より低い110℃に加熱した。この反応時間をへて、約20〜25%の出発物質が反応し、生成物となった。(反応混合物の処理後、ベンゾフェノンを内部標準とするGC分析による。処理は、0.05mlの反応混合物を1M−HClの0.1mlでクエンチし、ただちに1M−NaOHを用いてアルカリ性にすることにより行なった。)生成物の構造の確認は、H−NMR、GCおよびGC−MSにより行なった。
【0085】
1.3
cis−(+)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造容量25mlの丸底フラスコ内で、(+)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン1.0g(9.2mmol)およびリチウムボロハイドライド0.4g(18.4mmol)を、不活性ガス雰囲気下にジオキサン10ml中に入れ、混合物を3時間、110℃において還流させた。約5mlの半濃塩酸を加えて(pHを3に調整)、過剰の還元剤を破壊した。この混合物に直ちに約1mlのNaHCO3溶液を加えて、緩衝した(pH8)。GC分析の結果は、目的物が生成したことを示していた。全体の反応混合物を蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィーによって精製した。(勾配:ヘキサン/酢酸エチル/MeOH=1:1:1→MeOH) このようにして cis−(+)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンおよび対応する(+)−アミノアルコールが得られた。
【0086】
1.4
cis−(−)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造容量25mlの丸底フラスコ内で、(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン1.0g(9.2mmol)およびリチウムボロハイドライド0.4g(18.4mmol)を、不活性ガス雰囲気下にジオキサン10ml中に入れ、混合物を3時間、110℃において還流させた。約5mlの半濃塩酸を加えて(pHを3に調整)、過剰の還元剤を破壊した。この混合物に直ちに約1mlのNaHCO3溶液を加えて、緩衝した(pH8)。GC分析の結果は、目的物が18%の収率で(GC標準はベンゾフェノン)生成したことを示していた。全体の反応混合物を蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィーによって精製した。(勾配:ヘキサン/酢酸エチル/MeOH=1:1:1→MeOH) このようにして0.43g(43%)の cis−(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンが単離され、0.04g(4%)の対応する(−)−アミノアルコールが得られた。
【0087】
HPLCによれば、アミノアルコールの(−)−エナンチオマーだけが検出可能であった。生成物のeeは、このようなわけで、98%以上であった。
【0088】
1.5cis
−(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのアルコール中における製造電磁攪拌機をそなえた容量100mlの丸底フラスコ内で、(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン3.0g(27.5mmol)およびリチウムボロハイドライド1.2g(28.3mmol)を、不活性ガス雰囲気下に2−ブタノール35g中に入れ、混合物を3時間、60℃において攪拌した。サンプルのGC分析(処理:0.1gのサンプルをとり、0.2mlの1M−HClを用いて酸性にし、ついで速やかに0.1mlの飽和NaHCO3を加えてアルカリ性にする)の結果は、この時点で目的物が12%の収率をもって生成していたことを示していた(GC標準はベンゾフェノン)。
【0089】
1.6
cis−(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのアルコール/エーテル混合物中における製造容量10mlの丸底フラスコに、(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン0.5g(4.6mmol)およびメタノール0.59g(18.4mmol)のジオキサン(無水)7.5ml中の溶液を、不活性ガス雰囲気下に入れた。リチウムボロハイドライド0.21g(9.2mmol)を添加し、混合物を4時間、60℃に加熱した。ついで混合物を、氷浴を用いて5℃に冷却し、約10mlの半濃塩酸を反応混合物に注意深く加えた(激しい反応が起こって、ガスが発生)ところ、黄色味がかった透明な溶液が形成された。この溶液を直接、定量的イオンクロマトグラフィー法により分析した。反応溶液は、(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン0.60mmol(13.1%、対応するアミノ酸、すなわち cis−(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの酸加水分解生成物の塩酸塩として定量)および、目的生成物であるアミノアルコール3.06mmolが、66.8%の収率で得られた。
【0090】
1.7
cis−(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの、添加物、たとえば水または種々のアルコールの存在下における製造容量10mlの丸底フラスコに、(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン0.50g(4.66mmol)およびリチウムボロハイドライド0.30g(13.7mmol)の無水ジオキサン7.5ml中の溶液を入れ、混合物を60℃に加熱した。
【0091】
この温度において、30分間にわたって、X mmolの添加剤Y(アルコールまたは水)を、注入器を用いて滴下して加えた。ついで混合物を2時間、60℃に加熱したのち、約20℃に冷却し、約10mlの半濃塩酸の上に注いだ。目的物の生成量を直接、定量的イオンクロマトグラフィー法により分析し、その結果を表1に示した。
【表1】

【0092】
1.8cis
−(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの種々のメタノール量の下における製造実施例1.7で述べた条件と同じ条件の下に、ただし添加剤Yの変更に代えて、メタノール濃度を変化させ、反応を実施した。結果を、表2に示す。
【表2】

【0093】
1.9
cis−(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの種々の溶媒中における製造実施例1.7で述べた条件と同じ条件の下に、ただし添加剤Yとして11gのメタノールを用い、ジオキサンそのほかの種々の溶媒(7.5ml)中において反応を実施し、生成物の含有量を測定した。結果を、表3に示す。
【表3】

【0094】
1.10
cis−(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの種々のLiBH4添加量における製造実施例1.7で述べた条件と同じ条件の下に、ただし添加剤Yとして2.5モルのメタノールを使用し、種々のLiBH4濃度において反応を実施し、生成物の含有量を測定した。結果を、表4に示す。
【表4】

【0095】
1.11
cis−(+)−または(−)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの、種々の溶媒中における、各種アルコールの存在下および水の存在下での製造電磁攪拌機を備えた容量10mlの丸底フラスコに、(+)−または(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン0.50g(4.6mmol)と、リチウムボロハイドライド0.30g(13.7mmol)の種々の溶媒6ml中の溶液とを入れ、混合物を60℃に加熱した。この温度において、30分間にわたって、34.3 mmolの添加剤Yを、注入器を用いて滴下して加えた。ついで混合物を2時間、60℃に加熱した後、約20℃に冷却し、約10mlの半濃塩酸上に注いだ。
【0096】
目的物の生成量を直接、定量的イオンクロマトグラフィー法によって分析した(表5を参照)
【表5】

【0097】
1.12
cis−(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの、ナトリウムボロハイドライドを使用しての、種々のアルコール中での製造実施例1.7の方法に従って、反応を、種々の添加剤(アルコールまたは水)の中で実施した。ただし、実施例1.7と違って、ナトリウムボロハイドライド(0.51g、13.7mmol)を還元剤として使用した。結果を、表6に示す。
【表6】

【0098】
1.13
cis−(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの、NaBH3CNを使用しての製造ジオキサン60ml、ナトリウムシアノボロハイドライド8.6g(137mmol)およびリチウムブロマイド11.9g(137mmol)を、15時間にわたって、110℃で、容量100mlのスルフォネーションフラスコ中で還流させた。ついで混合物を60℃に冷却し、(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン5.0g(45.8mmol)のメタノール15ml溶液を、30分間にわたって、滴下して加えた。白色の懸濁液を3時間、60℃で攪拌した後、約5℃に冷却し、約100mlの半濃塩酸上に注いだ。生成物の含有量を、直接、定量イオンクロマトグラフィー法により測定した。アミノアルコールの収率は約4%であった。
【実施例2】
【0099】
アセチル−(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのアルカリ加水分解
アセチル−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン(含有量77.2%)の88.9gを、70gの水の中に分散させた(一部は溶解した)。30%NaOHの84g(1.1当量)をこれに加え、溶液を3時間還流させた。TLCによれば、加水分解は完全であった。生成した酢酸塩を、電気透析により除去した。その結果得られた水性溶液を蒸発により減容し、ブタノールとの共沸により乾燥した。残さを、ラセミ体の光学分割のため、メタノールにとった。加水分解による(±)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの収率は90%であった。
【実施例3】
【0100】
(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造
3.1
加水分解酵素を使用したラセミ体の光学分割
3.1.1リパーゼ類を使用した(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造
3.1.1.1
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体25mMを、ノボチムNovozym435の1000単位のジオキサン5ml溶液中に、室温で分散させた。メトキシ酢酸エチル25mMを、アセチル化剤として添加した。N−メトキシアセチルアミノアルコールの生成が、不明瞭でなくTLCにより検出された。転化率は50%(TLCによる推定)であった。この反応で、(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが製造された。
【0101】
3.1.1.2
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体50mMを、ノボチム435の1000単位のテトラヒドロフラン5ml溶液中に分散させた。NaOHの50mMおよびメトキシ酢酸エチル50mMを添加し、混合物を、30℃で培養した。N−メトキシアセチルアミノアルコールが、TLCを用いて検出された。推定された転化率は、50%であった。この反応により、(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが製造された。
【0102】
3.1.1.3
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、メチル−tert−ブチルエーテル1ml、トリブチリン(グリセリルトリブチレート)0.06ml、およびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカCandida antarcticaからのリパーゼを固定化したもの)の20単位とともに、室温で攪拌した。3日後、HPLCによればエナンチオマー的に純粋な(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、43%の収率をもって得られた。
【0103】
3.1.1.4
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、メチル−tert−ブチルエーテル1ml、6−カプロラクトン0.02mlおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の20単位とともに、室温で攪拌した。4日後、87%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、49%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0104】
3.1.1.5
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体100mgを、ヘキサン1ml、トリブチリン0.3mlおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の20単位とともに、室温で攪拌した。1週間後、77%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、28%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0105】
3.1.1.6
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体100mgを、tert−ブタノール1ml、トリブチリン0.3mlおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の20単位とともに、30℃で攪拌した。1週間後、78%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、15%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0106】
3.1.1.7
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、メチル−tert−ブチルエーテル1ml、カプロン酸メチル0.2molおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の20単位とともに、室温で攪拌した。4日後、68%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、52%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0107】
3.1.1.8
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、メチル−tert−ブチルエーテル1ml、グリコールジブチレート0.2mmolおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の40単位とともに、室温で攪拌した。4日後、89%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、31%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0108】
3.1.1.9
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、メチル−tert−ブチルエーテル1ml、ジエチルフマレート0.2mmolおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の40単位とともに、室温で攪拌した。4日後、86%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、36%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0109】
3.1.1.10
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、メチル−tert−ブチルエーテル1ml、ジエチルマロネート0.2mmolおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の40単位とともに、室温で攪拌した。4日後、86%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、21%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0110】
3.1.1.11
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、ジイソプロピルエーテル1ml、トリブチリン0.2mmolおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の40単位とともに、室温で攪拌した。4日後、エナンチオマー的に純粋な(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、15%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0111】
3.1.1.12
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、ジイソプロピルエーテル1ml、ジエチルフマレート0.2mmolおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の40単位とともに、室温で攪拌した。4日後、88%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、24%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0112】
3.1.1.13
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、ジイソプロピルエーテル1ml、ジエチルマロネート0.2mmolおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の40単位とともに、室温で攪拌した。4日後、82%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、14%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0113】
3.1.1.14
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、ジイソプロピルエーテル1ml、ジエチルジグリコレート0.2mmolおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の40単位とともに、室温で攪拌した。4日後、88%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、7%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0114】
3.1.1.15
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、ジブチルエーテル1ml、トリブチリン0.2mmolおよびノボチム435(カンジダ・アンタルクチカからのリパーゼを固定化したもの)の40単位とともに、室温で攪拌した。4日後、95%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、13%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0115】
3.1.1.16
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、ピリジン1ml、2−メトキシ酢酸エチル0.02mmolおよびリパーゼAK(シュードモナス・フルオレッセンスPseudomonas fluorescensからのリパーゼ)の20mgとともに、室温で攪拌した。4日後、84%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、18%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0116】
3.1.1.17
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、メチル−tert−ブチルエーテル1ml、シアノ酢酸エチル0.2mmolおよびリパーゼPS(シュードモナス・ケパキアP. cepaciaからのリパーゼ)の10mgとともに、室温で攪拌した。4日後、67%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、40%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0117】
3.1.1.18
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、メチル−tert−ブチルエーテル1ml、ジエチルフマレート0.2mmolおよびリパーゼPS(シュードモナス・ケパキアからのリパーゼ)の10mgとともに、室温で攪拌した。4日後、86%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、18%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0118】
3.1.2
プロテアーゼ類を使用した(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造
3.1.2.1
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、2−メチル−2−ブタノール1ml、ジエチルマレエート0.2mmolおよびアルカラーゼAlcalase(バチルス・リチェニフォルミスBacillus licheniformisからのプロテアーゼ)の40mgとともに、室温で攪拌した。4日後、28%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、39%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0119】
3.1.2.2
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、2−メチル−2−ブタノール1ml、ジエチルフマレート0.2mmolおよびサビナーゼSavinase(バチルスsp. Bacillus sp.からのプロテアーゼ)の40mgとともに、室温で攪拌した。4日後、32%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、42%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0120】
3.1.2.3
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、2−メチル−2−ブタノール1ml、トリブチリン0.06mlおよびサビナーゼ(バチルスsp.からのプロテアーゼ)の20mgとともに、室温で攪拌した。4日後、22%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、39%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0121】
3.1.2.4
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、2−メチル−2−ブタノール1ml、トリブチリン0.06mlおよびスブチリシンsubtilisin(バチルス・リチェニフォルミスからのプロテアーゼ)の20mgとともに、室温で攪拌した。4日後、23%のee値をもつ(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、36%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0122】
3.1.3
プロテアーゼ類を使用した(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造
3.1.3.1
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、ヘキサン1ml、トリブチリン0.06mlおよびサビナーゼ(バチルスsp.からのプロテアーゼ)の120単位とともに、室温で攪拌した。3〜6日後、44%のee値をもつ(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、46%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0123】
3.1.3.2
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、ヘキサン1ml、トリブチリン0.06mlおよびアルカラーゼAlcalase(バチルス・リチェニフォルミスからのプロテアーゼ)の20mgとともに、室温で攪拌した。3〜6日後、44%のee値をもつ(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、35%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0124】
3.1.4
リパーゼ類を使用した(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造
3.1.4.1
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、2−メチル−2−ブタノール1ml、酪酸エチル0.03mlおよびニューラーゼNewlase F(リゾープス・ニベウスRhizopus niveusからのリパーゼ)の20mgとともに、室温で攪拌した。1週間後、39%のee値をもつ(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、37%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0125】
3.1.4.2
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、ピリジン1ml、トリブチリン0.06mlおよびリパーゼAK(シュードモナス・フルオレッセンスからのリパーゼ)の20mgとともに、室温で攪拌した。1週間後、30%のee値をもつ(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、10%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0126】
3.1.4.3
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、2−メチル−2−ブタノール1ml、トリブチリン0.06mlおよびリパーゼAY(カンジダ・ルゴサCandida rugosaからのリパーゼ)20mgとともに、室温で攪拌した。1週間後、32%のee値をもつ(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、13%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0127】
3.1.4.4
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、メチル−tert−ブチルエーテル1ml、トリブチリン0.06mlおよびリパーゼPS−CI(シュードモナス・ケパキアからのリパーゼを固定化したもの)20mgとともに、室温で攪拌した。1週間後、29%のee値をもつ(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、16%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0128】
3.1.4.5
cis−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体11mgを、メチル−tert−ブチルエーテル1ml、トリブチリン0.06mlおよびリパーゼPS(シュードモナス・ケパキアからのリパーゼ)20mgとともに、室温で攪拌した。1週間後、24%のee値をもつ(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンが、22%の収率(HPLC)をもって得られた。
【0129】
3.2
D−(−)−酒石酸を使用したラセミ体の光学分割
3.2.1
1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体8g(70.6mmol)と、メタノール186g中のD−(−)−酒石酸10.6g(70.6mmol)との混合物を、還流温度で溶解した。ついで混合物を、2時間かけて20℃に冷却した。43℃において、純粋な(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン・D−酒石酸水素塩の種結晶を加えた。結晶化した生成物を濾過分離し、乾燥した。収量:(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン・D−酒石酸水素塩8.49g(出発物質のラセミ体を基準とする収率45.6%) ee値:91.1%。
【0130】
精製のため、上記酒石酸水素塩8.49g(32.25mmol)をメタノール30ml中に懸濁させ、2当量の30%ナトリウムメトキシドを添加した。酒石酸ナトリウムを濾過分離し、メタノールを蒸留除去した。
【0131】
残さを35mlのペンタノールにとった。55℃において、1.5gのHClを導入し、溶液をゆっくりと冷却した。40℃において、溶液に(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン塩酸塩を接種した。ついで45mlのアセトンを計り入れ、懸濁液をゆっくりと0℃に冷却して濾過し、固体分を乾燥した。(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン塩酸塩のee値>98%のものが得られた。これは、使用したラセミ体の(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンを基準にした収率37%に相当する。
【0132】
3.2.2
1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体64g(0.5mol)と、メタノール1330g中のD−(−)−酒石酸75.2gとの混合物を、還流温度で溶解し、ついで混合物を、2時間かけて20℃に冷却した。43℃において、純粋な(1R,4S)−エナンチオマーの種結晶を加えた。結晶化した生成物を濾過分離し、乾燥した。収量:(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン酒石酸水素塩63.2g(出発物質の1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体基準で収率48.0%) ee値:91.1% 母液中の化合物のee値は76.0%であった。
【0133】
3.2.3
(1R,4S)−(4−アミノ−2−シクロペンテン−1−イル)メタノール・D−酒石酸水素の再結晶(1R,4S)−(4−アミノ−2−シクロペンテン−1−イル)メタノール・D−酒石酸水素61.84g(0.235mol、ee値91.1%)を、メタノール752g中に、還流下に溶解した。その溶液を90分以内に20℃に冷却し、生成物を濾過分離して、64gの冷メタノールで洗浄した。乾燥して、(1R,4S)−(4−アミノ−2−シクロペンテン−1−イル)メタノール・D−酒石酸水素54.56gを得た。ee値:99.4% 収率:88.2%(1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体基準では42.3%)。これは、そのまま、クロロプリン合成に使用した。
【0134】
3.2.4
実施例3.3.2の手順に従い、ただしメタノール223gを使用し、かつ50℃で接種を行ない、ラセミ体を分離した。収量は7.98g(使用した(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体基準の収率は42.9%)。
【0135】
3.3
L−(+)−酒石酸を用いたラセミ体の光学分割
3.3.1
1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンのラセミ体8g(70.6mmol)とL−(+)−酒石酸10.6g(70.6mmol)との、メタノール186g中の混合物を、還流温度で溶解した。ついで混合物を、2時間かけて20℃に冷却した。43℃において、純粋な(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン・L−酒石酸水素塩の種結晶を加えた。結晶化した(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン・L−酒石酸水素塩を濾過分離し、乾燥した。(ee値:91.1%)。
【0136】
ナトリウムメトキシドの30%メタノール溶液14gを母液に添加し、そこからメタノールを蒸発させた。残さを35mlのイソブタノールにとり、不溶性の酒石酸ナトリウムを濾過により分離した。55℃において、濾液中にガス状のHClを2g導入した。ついで38mlのアセトンを添加し、混合物を1時間かけて10℃に冷却した。1時間後、(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン塩酸塩を吸引濾過により分離し、8mlのアセトンで洗浄した。減圧下に乾燥し、(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン塩酸塩の、ee値>98%のものを、収量34g、1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン基準の収率31.6%で得た。
【実施例4】
【0137】
(1R,4S)−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン塩酸塩の製造
4.1(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの還元N2ガスで不活性にした2リットルのオートクレーブ(ステンレス製、タイプV4A)に、純度97.5%のナトリウムボロハイドライド61.4g(1.623mol)、純度98.5%の塩化リチウム70.2g(1.656mol)、セライトCelite13.2gおよびテトラヒドロフラン1410gを入れた.オートクレーブを閉じて内部温度130℃まで加熱し、内容物を4.5時間この温度で攪拌した(最大8気圧)。
【0138】
オートクレーブを約60℃に冷却したのち、テトラヒドロフランに不溶なナトリウム塩(NaCl,NaBH4)を濾過により分離した。これらはテトラヒドロフラン353gで洗浄し、一体にした濾液を、攪拌されている1リットルのガラス容器内で大気圧下に蒸留することにより、約半分に減容した(留出物1:約710gのテトラヒドロフラン)。さらに蒸留を続け、全体で936gのジオキサンを分割して加えることにより、溶媒の交換を完了した(留出物2:約1289gのテトラヒドロフラン/ジオキサン)。
【0139】
このLiBH4懸濁液を約60℃に冷却し、(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン56.7g(97.5%)を添加した。
【0140】
約60℃から出発して、メタノール132.5gを、温度範囲58〜62℃が維持できるような速度で、きっかり1時間で計り入れた。この混合物を、さらに1時間、60℃で反応するに任せた。さらに397gのメタノールを加え、(サンプルの分析値は、収率70.5%を示していた)、ついで攪拌下にある容器の内容物を0℃に冷却した。この温度において、90gのHClを反応混合物中に導入し(わずかに発熱的)、攪拌をさらに1時間、約0℃で継続した。大気圧下に蒸留し(塔頂の温度が75℃に達するまで)て低沸点留分(メタノール、ホウ酸塩)およびジオキサンの約70%を除去した(留出物3:約1093g)。減圧(約30mbar)下の蒸留および全部で282gの1−ペンタノールを分割して添加することにより、溶媒交換を完了した(留出物4:約240gのジオキサン/ペンタノール)。
【0141】
さらに302gの1−ペンタノールを添加し、混合物を1時間、50℃で攪拌した。沈殿した塩、湿潤重量39gを濾過により分離し、200gの1−ペンタノールで洗浄した。一体にした濾液を減圧下(約20mbar)の再蒸留により減容した(留出物5:235gの1−ペンタノール)。ついで、約50℃において、236gのアセトンを計り入れ、反応混合物に、(1R,4S)−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの結晶数個を接種した。混合物を約1時間かけて5℃に冷却した。結晶化は、混合物をさらに6時間、5℃で攪拌を続けることにより完了した。
【0142】
この結晶を濾過分離し、63gのアセトンで洗浄し、最高温度50℃で、真空乾燥キャビネット(10mbar)内で乾燥した。これにより、粗生成物83.5g(純度56.5%)を得た。これは、使用した(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン基準の収率61.4%に相当する。
【0143】
4.2
(±)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの還元
2ガスで不活性にした2リットルのオートクレーブ(ステンレス製、タイプV4A)に、純度97.5%のナトリウムボロハイドライド41.56g(1.071mol)、純度98.5%の塩化リチウム51.48g(1.196mol)、セライトCelite9.30gおよびテトラヒドロフラン955gを入れた.オートクレーブを閉じて内部温度130℃まで加熱し、内容物を6時間この温度で攪拌した(最大6.3気圧)。
【0144】
オートクレーブを約60℃に冷却したのち、テトラヒドロフランに不溶なナトリウム塩(NaCl,NaBH4)を濾過により分離した。これらはテトラヒドロフラン239.0gで洗浄し、一体にした濾液を、攪拌されている1リットルのガラス容器内で大気圧下に蒸留することにより、約半分に減容した(留出物1:約590gのTHF)。さらに蒸留を続け、全体で661.0gのジオキサンを分割して加えることにより、溶媒の交換を完了した(留出物2:約685gのテトラヒドロフラン/ジオキサン)。
【0145】
このLiBH4懸濁液を約60℃に冷却し、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン36.0g(97.5%)を添加した。
【0146】
約60℃から出発して、メタノール77.6gを、温度範囲58〜62℃が維持できるような速度で、きっかり1時間で計り入れた。この混合物を、さらに1時間、60℃で反応するに任せた。さらに233.0gのメタノールを加え、ついで攪拌下にある容器の内容物を0℃に冷却した。この温度において、52.9gのHClを反応混合物中に導入し(わずかに発熱した)、攪拌をさらに1時間、約0℃で継続した。大気圧下に蒸留して(塔頂の温度が75℃に達するまで)低沸点留分(メタノール、ホウ酸塩)およびジオキサンの約70%を除去した(留出物3:約700g)。減圧(約30mbar)下に蒸留し、かつ全部で169.4gの1−ペンタノールを分割して添加することにより、溶媒交換を完了した(留出物4:約183gのジオキサン/ペンタノール混合物)。さらに127.1gの1−ペンタノールを添加し、混合物を1時間、50℃で攪拌した。沈殿した塩、湿潤重量約41gを濾過により分離し、63.5gの1−ペンタノールで洗浄した.一体にした濾液を減圧下(約20mbar)の再蒸留により減容した(留出物5:235gの1−ペンタノール)。ついで、約50℃において、238.0gのアセトンを計り入れ、反応混合物に、アミノアルコール塩酸塩の結晶数個を接種した。約1時間かけて、混合物を5℃に冷却した。結晶化は、混合物をさらに6時間、5℃で攪拌を続けることにより完了した。
【0147】
この結晶を濾過分離し、61.0gのアセトンで洗浄し、最高温度50℃で、真空乾燥キャビネット(10mbar)内で乾燥した。これにより、粗生成物50.0gを得た(純度:アミノアルコール塩酸塩として約50%)。これは、使用した 2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン基準で52.0%の収率に相当する。
【実施例5】
【0148】
アシル化アミノアルコールの製造
5.1
(1R,4S)−N−BOC−1―アミノ―4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造(BOC=tert−ブトキシカルボニル)
(1R,4S)−1―アミノ―4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの溶液75gを、濃度30%のNaOH溶液を用いてpH8に調節し、この混合物にNaHCO3を6g添加した。混合物を52℃に加熱した。混合物を十分に攪拌しながら、ジイソプロピルエーテル60mlを添加し、ついで2時間かけて、BOCアンハイドライド11.12gのジイソプロピルエーテル18.2ml中の溶液を計り入れた。混合物をセライトで濾過し、二層を分けた。水性層を65mlのジイソプルピルエーテルで抽出した。一体にした有機層を45mlの水で洗浄し、ついで蒸発させて37.5gに減量し、50℃に加熱した。この溶液に、n−ヘキサン31mlを滴下して加えた。混合物をゆっくりと(2時間)0℃に冷却し、表題の化合物を濾別して、n−ヘキサン/ジイソプロピルエーテルの1/1混合液12mlで洗浄し、乾燥した。6.75gの生成物を得た.収率は71%であった。
【0149】
5.2(1R,4S)−N−アセチル−1―アミノ―4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造
(1R,4S)−1―アミノ―4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン塩酸塩25gを、無水酢酸182mlに溶解し、0℃において、トリエチルアミン18.25gの無水酢酸60ml中の溶液をこれに添加した。混合物を3時間、80℃において攪拌した後、室温まで冷却した。トリエチルアミン塩酸塩を濾過分離し、n−ヘキサン120mlで洗浄した。濾液は蒸発させて濃縮した。トルエン300mlを残さに加え、混合物を、活性炭5.2gおよびセライト13gの存在下に、室温で20分間攪拌した。混合物を濾過し、フィルターケークを洗浄し(トルエン3×40ml)、溶媒を完全に蒸発させた。メタノール180mlおよびK2CO315.5gを残さに加え、混合物を室温で10時間攪拌した。懸濁液を蒸発させ、濾液を蒸発させ濃縮した。残さを酢酸イソプロピル750mlに懸濁させ、活性炭0.5gの存在下に沸騰させ、1.5時間還流させた。活性炭の濾過(70〜80℃)による除去に続いて、濾液を0℃に一夜冷却した。表題の化合物を濾別し、冷酢酸イソプロピル80mlで洗浄してから、減圧下に乾燥することにより、製品17.2gを得た。収率は66%であった。
【0150】
5.3
(1R,4S)−N−ブチリル−1―アミノ―4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンの製造
(1R,4S)−1―アミノ―4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン塩酸塩34.7gおよびN,N−4−ジメチル−アミノピリジン2gを、メチレンクロライド600mlに溶解した。溶液を0℃に冷却した。トリエチルアミン52gを、これに滴下して(5分間)加えた。混合物を、さらに30分間攪拌した。0℃において、ブチリルクロライド35.2gのメチレンクロライド60ml中の溶液を、この混合物に1時間かけて計り入れた。混合物をさらに1.5時間、0℃から20℃の間の温度で攪拌し、ついで水600mlをこれに加えた。相分離に続いて、水性層をメチレンクロライド600mlで抽出した。一体にした有機層を、濃度10%NaOHの3×500mlで洗浄した後、溶媒を完全に蒸発させた。乾燥した固体を、メタノール120mlに溶解した。この溶液にK2CO35gを加え、混合物をさらに2時間、室温で攪拌した。無機塩を濾過分離し、メタノール20mlで洗浄した。濾液を2N−HClで中和した。懸濁液を濾過し、フィルターケークをメタノール20mlで洗浄した。濾液は完全に蒸発させた。固体の残さを乾燥し、トルエン150mlから再結晶させて、表題化合物28.5gを得た。収率は67%であった。
【実施例6】
【0151】
[4(R)−(2−アミノ−6−クロロプリン−9−イル)シクロペント−2−エン−1(S)−イル]メタノールの製造
6.1
(1R,4S)−(4−アミノ−2−シクロペンテン−1−イル)メタノールD−酒石酸水素から出発する[4(R)−(2−アミノ−6−クロロプリン−9−イル)シクロペント−2−エン−1(S)−イル]メタノールの製造
(1R,4S)−(4−アミノ−2−シクロペンテン−1−イル)メタノール・D−酒石酸水素47.4g(0.18mol、ee値>98%)のエタノール200ml中の溶液を、まず反応器に導入した。室温において、NaHCO354.6g(0.65mol)およびN−(2−アミノ−4,6−ジクロロ−4−ピリミジル)−ホルムアミド37.3g(0.18mol)を添加し、還流下に9時間沸騰させたのち、室温に冷却した。塩を濾過分離し、エタノール50mlで洗浄した。濾液を、ロータリーエバポレーターで蒸発させて280gにした。その結果得られた濃縮溶液に、HClガスを18.4g、T<25℃で導入し、ついでオルト蟻酸トリメチル95.5g(0.9mol)を添加し、全体を40℃に加熱した(10分間)。この温度において、混合物にクロロプリンハイドロクロライドを接種した。2時間後、42℃において、生成物が結晶化した。懸濁液を15℃に冷却した。製品を濾過し、エタノール3×50mlで洗浄したのち、50℃において減圧下に乾燥した。収量は41.9g(75.8%)であった。ベージュ色の粉末。純度:95%(HPLC)。
【0152】
6.2
(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンから出発する[4(R)−(2−アミノ−6−クロロプリン−9−イル)シクロペント−2−エン−1(S)−イル]メタノールの製造
2ガスで不活性にした2リットルのオートクレーブ(ステンレス製、タイプV4A)に、純度97.5%のナトリウムボロハイドライド61.4g(1.623mol)、純度98.5%の塩化リチウム70.2g(1.656mol)、セライト13.2gおよびテトラヒドロフラン1410gを入れた。オートクレーブを閉じて内部温度が130℃に至るまで加熱し、内容物を4.5時間この温度で攪拌した(最大8.0気圧)。オートクレーブを約60℃に冷却したのち、テトラヒドロフランに不溶なナトリウム塩(NaCl,NaBH4)を濾過により分離した。これらはテトラヒドロフラン353gで洗浄し、一体にした濾液を、攪拌されている1リットルのガラス容器内で大気圧下に蒸留して、約半分に減容した(留出物1:約710gのテトラヒドロフラン)。さらに蒸留を続け、全体で936gのジオキサンを分割して加えることにより、溶媒の交換を完了した(留出物2:約1289gのテトラヒドロフラン/ジオキサン)。
【0153】
このLiBH4懸濁液を約60℃に冷却し、(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン56.7g(97.5%、0.507mol)を添加した。
【0154】
約60℃から出発して、メタノール132.5gを、温度範囲58〜62℃が維持できるような速度で、きっかり1時間で計り入れた。この混合物を、さらに1時間、60℃で反応するに任せた。さらに397.0gのメタノールを加え(サンプルを分析した結果、収率70.5%であった)、ついで攪拌下にある容器の内容物を0℃に冷却した。この温度において、90.0gのHClを反応混合物中に導入し(わずかに発熱)、攪拌をさらに1時間、約0℃で継続した。溶液をロータリーエバポレーター中、50℃において減圧下に濃縮し、メタノール200mlを添加し、またこのメタノールを除去(ホウ酸メチルの吸引濾過により)した。この処理を、メタノールのさらに200mlを用いて繰り返した。得られた油状物(253.4gで、3.16%のアミノアルコールを含む。これは0.360molに相当する)にエタノール250mlを加えて、混合物を1リットルのニ重ジャケット付き攪拌容器に注いだ。室温で、NaHCO372.6g(0.86mol)およびN−(2−アミノ−4,6−ジクロロ−4−ピリミジル)ホルムアミド74.6g(0.360mol)を加え、混合物を9時間還流させた後、室温まで冷却し、塩を濾過分離してエタノール100mlで洗浄した。ロータリーエバポレータ上の濾液を560gに濃縮した。その結果得られた溶液にHClガス63.4gを、T<25℃で導入し、オルト蟻酸トリメチル191.0g(1.80mol)を添加し、混合物を40℃に加熱した(10分間)。この温度において、混合物にクロロプリンハイドロクロライドを接種し、2時間、42℃において、結晶化するに任せた。この懸濁液を15℃に冷却した。生成物を濾過し、エタノール3×50mlで洗浄し、50℃で減圧下に乾燥した。収量は66.0g(59.7%)であった。ベージュ色の粉末。純度:89.3%(HPLC)。これは、使用したビンスVinceラクタム基準で42.4%の収率に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式のアミノアルコールを、ラセミ体または光学活性体のひとつの形で製造する方法であって、
【化1】

下記の式の2−アザビシクロ−[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの、ラセミ体または光学活性体のひとつの形であるものを、金属水素化物を用いて還元することからなるアミノアルコールの製造方法。
【化2】

【請求項2】
使用する金属水素化物が金属ボロハイドライドであることを特徴とする請求項1の製造方法。
【請求項3】
還元を、−20ないし200℃の温度において行なうことを特徴とする請求項1または2の製造方法。
【請求項4】
還元を、アプロティックな、またはプロティックな有機溶媒の中で、または対応する溶媒混合物の中で行なうことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの製造方法。
【請求項5】
還元を、水またはモノ−もしくはポリ−C1-6アルコールのような添加剤の存在下に行なうことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの製造方法。
【請求項6】
下記の式のアミノアルコールを、ラセミ体または光学活性体のひとつの形で製造する方法であって、
【化3】

下記の一般式をもつシクロペンテン誘導体の、ラセミ体または光学活性体のひとつの形であるものを、
【化4】

(式中、RはC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アリールまたはアリロキシである。)
アルカリ金属水酸化物を用いて加水分解することからなるアミノアルコールの製造方法。
【請求項7】
請求項6のアミノアルコールの製造方法において、下記の一般式をもつシクロペンテン誘導体の、ラセミ体または光学活性体のひとつの形であるものを、
【化5】

(式中、Rは前記したとおりである。)
下記の式のアシル−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの、ラセミ体または光学活性体のひとつの形であるものから、
【化6】

(式中、Rは前記したとおりである。)
その金属水素化物を用いて、無水の溶媒中で還元することにより製造することを特徴とする製造方法。
【請求項8】
下記の式の、(1S,4R)−または(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンまたはその塩、
【化7】

および(または)下記の一般式の、(1S,4R)−または(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン誘導体またはその塩
【化8】

(式中、XおよびYは、同一または異なるものであって、アシル基またはHであり、X=Y=Hを除く。)の製造方法であって、下記の式
【化9】

のアミノアルコールのラセミ体の溶液を、光学活性な酒石酸を用いる化学的方法によるか、またはアシル化剤の存在下における加水分解酵素を使用したバイオテクノロジー的方法によって、光学分割することからなる製造方法。
【請求項9】
請求項8のシクロペンテン誘導体の製造方法において、バイオテクノロジー的な光学分割をリパーゼを使用して行なうか、または化学的な光学分割をD−(−)−またはL−(+)−酒石酸を使用して行なう製造方法。
【請求項10】
下記の式の、(1S,4R)−または(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンまたはその塩を製造する方法であって、
【化10】

下記の一般式の、(1S,4R)−または(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン誘導体
【化11】

(式中、XおよびYは、上記したとおりである。)を化学的に加水分解することからなる製造方法。
【請求項11】
下記の式の、(1R,4S)−または(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン誘導体を製造する方法であって、
【化12】

(式中、RはC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アリールまたはアリロキシである。)
第一工程において、下式の(±)−2−アザビシクロ−[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンの、
【化13】

ラセミ体または光学活性体のひとつの形であるものを、金属水素化物を用いて還元し、下記の式のアミノアルコールとし、
【化14】

第二工程において、アシル化剤の存在下における加水分解酵素を用いたバイオテクノロジー的な方法によって、または光学活性な酒石酸を使用した化学的な方法によって、式VまたはVIの(1S,4R)−または(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテンとし、これをアシル化して式IXまたはXの製品とすることを特徴とする製造方法。
【請求項12】
下記の式の、(1S,4R)−または(1R,4S)−4−(2−アミノ−6−クロロ−9−H−プリン−9−イル)−2−シクロペンテニル−1−メタノールまたはその塩を製造する方法であって

【化15】

(1S、4R)−または(1R、4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン−D−またはL−酒石酸水素塩を、下記の式のN−(2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)ホルムアミド
【化16】

と反応させ、下記の式の(1S,4R)−または(1R,4S)−4−[(2−アミノ−6−クロロ−5−ホルムアミド−4−ピリミジニル)アミノ]−2−シクロペンテニル−1−メタノールとし、
【化17】

これを既知の手段で環化して、式XIまたはXIIの化合物とすることを特徴とする製造方法。
【請求項13】
下記の式の、(1S,4R)−4−(2−アミノ−6−クロロ−9−H−プリン−9−イル)−2−シクロペンテニル−1−メタノールまたはその塩を製造する方法であって、
【化18】

下記の式の(−)−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オン、または(−)−アシル−2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−3−オンを、
【化19】

(式中、Rは上記したとおりである。)
金属ハイドライドを用いて、下記の式のアミノアルコールとするか、
【化20】

または下記の式のシクロペンテン誘導体とし、
【化21】

(式中、Rは上記したとおりである。)
これを対応するハロゲン化水素酸塩に転化し、ついで、下記の式のN−(2−アミノー4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)ホルムアミドと反応させて
【化22】

下記の式の(1S,4R)−4−[(2−アミノ−6−クロロ−5−ホルムアミド−4−ピリミジニル)アミノ]−2−シクロペンテニル−1−メタノールとし
【化23】

これを既知の方法により環化して、式XIIの化合物とすることを特徴とする製造方法。
【請求項14】
(1R,4S)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン−D−またはL−酒石酸水素塩。
【請求項15】
(1S,4R)−1−アミノ−4−(ヒドロキシメチル)−2−シクロペンテン−L−またはD−酒石酸水素塩。

【公開番号】特開2009−227685(P2009−227685A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125244(P2009−125244)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【分割の表示】特願平10−337437の分割
【原出願日】平成10年11月27日(1998.11.27)
【出願人】(391003864)ロンザ リミテッド (36)
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
【Fターム(参考)】