説明

アミノシクロヘキサン誘導体及びシクロデキストリンの複合体を含む医薬組成物

本発明は、1-アミノシクロヘキサン誘導体とシクロデキストリンとを含む医薬組成物であって、有利な安全性、利便性及び投薬特徴を示す組成物に関する。本発明の組成物は、アルツハイマー病などの認知機能障害又は認知症を伴う疾患及び状態を含む、CNSのさまざまな疾患及び状態の処置に応用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-アミノシクロヘキサン誘導体とシクロデキストリンとを含む医薬組成物であって、有利な安全性、利便性及び投薬特徴を示す組成物に関する。本発明の組成物は、アルツハイマー病などの認知機能障害又は認知症を伴う疾患及び状態を含む、CNSのさまざまな疾患及び状態の処置に応用される。
【背景技術】
【0002】
認知症は、一般に、日常生活動作を遂行する能力が妨げられるほど重篤な、知的機能及び他の認知技能の慢性的劣化と定義される。アルツハイマー病は、「進行性の容赦ない認知機能の喪失であって、大脳皮質及び皮質下灰白質中に過剰な数の老人斑を伴い、そこにはβ-アミロイドと、タウタンパク質からなる神経原線維変化も含まれる」(Merck Manual 2004)ことを特徴とする認知症の一形態である。アルツハイマー病は女性では男性の約2倍多く、高齢者における認知症症例の>65%を占める。症例の約15%では血管性認知症とアルツハイマー病とが共存する。
【0003】
アルツハイマー病は医学的死因の第4位であると考えられている。この疾患の罹患率は65歳以降、5年ごとに2倍になる(National Institute on Aging: Prevalence and costs of Alzheimer's disease. Progress Report on Alzheimer's Disease, NIH Publication No. 99 3616, November 1998;Polvikoski et al., Neurology, 2001, 56:1690-1696)。アルツハイマー病は現在、世界中で約1500万人(全ての人種及び民族を含む)を冒しており、人口に占める高齢者の相対的増加ゆえに、その罹患率は今後20年〜30年にわたって増加すると思われる。
【0004】
現時点ではアルツハイマー病を治すことはできない。すなわちその症状及び進行を効果的に逆戻りさせる処置はない。しかし、いくつかの薬物は、この疾患に関連する一定の症状を緩和し、介護依存度を軽減する。アルツハイマー病の処置に承認された最初の薬物には、コリンエステラーゼ阻害剤のクラスに属するメンバー、例えばドネペジル、ガランタミン、及びタクリンなどがある。
【0005】
1-アミノシクロヘキサン類、例えばネラメキサン及び薬学的に許容し得るその塩は、さまざまな疾患の治療に、とりわけアルツハイマー病を含む一定の神経学的疾患において、役立つことが見いだされている。ネラメキサン(1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン)及び薬学的に許容し得るその塩などの1-アミノシクロヘキサン類は、例えば米国特許第6,034,134号及び同第6,071,966号に開示されており、グルタミン酸(これは、学習と記憶に関連する神経路において不可欠な役割を果たす神経伝達物質であり、アルツハイマー病にも関与すると考えられている)の異常伝達に関連する興奮毒性効果を選択的に遮断すると考えられる低〜中アフィニティの非競合的NMDA受容体アンタゴニストと特徴づけられている。
【0006】
経口錠剤又は経口カプセル剤は最も一般的な経口投与用の剤形である。通例、それらは水などの液体と共に嚥下される。その製剤設計によっては、咀嚼される場合、又は投与前に液体に分散させる場合もある。錠剤及びカプセル剤は、とりわけ便利であり、費用効果が高いと考えられる。
【0007】
経口用の半固形及び液状調製物には、柔軟な投薬が可能であり、嚥下しやすいという特別な利点がある。どちらの側面もアルツハイマー治療においては重要である。多くの高齢アルツハイマー病患者にとって、錠剤の嚥下は困難である。アルツハイマー病治療の初期相においては柔軟な投薬が推奨される場合があり、錠剤投与の場合、用量削減を達成するには、錠剤を半分、4分の1又はそれ以上に細かく分割しなければならず、一部の患者にとってそれは困難であるだろう。
【0008】
液状製剤は欠点もいくつか有し得る。液状製剤は薬物を既に溶解された形で含むので、例えばフィルムコート錠のような固形剤形の場合よりも、化合物の味及び匂いに気付きやすくなる。原薬の味がとりわけ良くない場合、例えば苦かったり、口腔粘膜に対して収斂効果又は麻酔効果を持ったりする場合は、薬物を液状製剤として製剤化すると、薬物をフィルムコート錠又はカプセル剤として製剤化した場合よりも、患者は、通常、それらの望ましくない性質を強く感じる。その上、固形剤形ではカプセル封入が一般的な味マスキング(taste-masking)技法であるのに対して、液状製剤中の原薬をカプセル封入することは(実質的水溶性を有する化合物の場合は特に)技術的に極めて困難である。同様に、不快な匂いを有する化合物も、口当たりの良い(palatable)液状調製物に製剤化することは困難であるだろう。化合物の味及び/又は匂いの強さによっては、甘味料(sweetener)及び矯味矯臭剤(flavouring agent)の混合に頼るだけでは許容し得る水性又は半固形製剤を開発できない場合もある。
【0009】
同様に、そのまま嚥下するのではなく、水又は唾液などの液体に分散させることが意図された固形製剤も、味又は匂いの良くない活性化合物では、容易に製剤化することができない。
【0010】
従来の水性液状製剤は、例えば加水分解によって原薬の化学的分解が強化され、それが医薬製品の貯蔵寿命の短縮につながる可能性があるなど、他にも欠点を有し得る。その上、水性液状製剤の微生物学的安定性は、通例、錠剤やカプセル剤などの固形剤形よりも劣っているので、多くの場合、水性液状製剤には保存剤を混合する必要がある。
【0011】
ネラメキサン及び薬学的に許容し得るその塩などの1-アミノシクロヘキサン類は、問題のある味及び匂い特性を示し、それが従来の液状又は半固形製剤の許容度を制限するので、その他の点では液状製剤の使用によって利益が得られるであろう患者も、一部は、これらの薬物を錠剤の形で服用することを好むだろう。
【0012】
したがって、ネラメキサン及び薬学的に許容し得るその塩などの1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む液状及び/又は半固形製剤であって、匂い及び味などの官能特性が改善されているものが必要とされている。
【0013】
本発明者らは、1-アミノシクロヘキサン誘導体(ネラメキサン及び薬学的に許容し得るその塩を含む)と、1つ又はそれ以上の薬学的に許容し得るシクロデキストリンとを含む組成物が、水性液状剤形に通例付随する欠点を示さないこと、及びそのような組成物は、その改善された官能特性ゆえに、口当たりが良く、より多くの患者に許容され得ることを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,034,134号明細書
【特許文献2】米国特許第6,071,966号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Merck Manual, 2004
【非特許文献2】National Institute on Aging: Prevalence and costs of Alzheimer's disease. Progress Report on Alzheimer's Disease, NIH Publication No. 99 3616, November 1998
【非特許文献3】Polvikoski et al., Neurology, 2001, 56:1690-1696
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、ネラメキサン及び薬学的に許容し得るその塩などの1-アミノシクロヘキサン誘導体と、薬学的に許容し得るシクロデキストリン又は複数の薬学的に許容し得るシクロデキストリンの組合せとを含む組成物であって、ニュートラルな味又は甘味を示し、不快な匂いをほとんど又は全く示さず、著しく口当たりの良い組成物を提供することである。本発明のもう一つの目的は、ネラメキサン及び薬学的に許容し得るその塩などの1-アミノシクロヘキサン誘導体と薬学的に許容し得るシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体との水溶性複合体であって、化学的及び微生物学的に安定であり、且つ高度な口当たりの良さを有する、固形、半固形又はとりわけ液状の経口投与用製剤へと混合することができる複合体を提供することである。本発明のさらにもう一つの目的は、そのような組成物を、アルツハイマー病を含むCNS障害の処置に使用することである。さらなる目的は以下に明記され、それ以外の目的も当業者には明白になるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、式(I)
【化1】

(式中、
R*は-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9であり、
n+m=0、1、又は2であり、
R1〜R7は、水素及びC1-6アルキルからなる群より独立して選択され、R8及びR9は、水素及びC1-6アルキルからなる群より独立して選択されるか、全体として低級アルキレン-(CH2)x-(式中、xは2〜5(両端を含む)である)を表す)
の化合物、並びにその光学異性体、エナンチオマー、水和物、溶媒和物、多形、及び薬学的に許容し得る塩から選択される1-アミノシクロヘキサン誘導体と、薬学的に許容し得るシクロデキストリン又は複数の薬学的に許容し得るシクロデキストリンの組合せとを含む組成物に関する。
【0018】
本発明のさらなる一態様は、薬学的に許容し得るシクロデキストリンが、薬学的に許容し得る水溶性の天然又は誘導体化シクロデキストリン、例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ランダムメチル化β-シクロデキストリン、2-O-メチル-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-(2,6-ジ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(ジメチル-β-シクロデキストリン)、アセチル化ジメチル-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-(2,3,6-トリ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(トリメチル-β-シクロデキストリン)、スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、O-カルボキシメチル-O-エチル-β-シクロデキストリン、グルクロニル-グルコシル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、硫酸β-シクロデキストリン、リン酸β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、及びヒドロキシアルキル修飾シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを含む)から選択される、上記組成物に関する。
【0019】
本発明のさらなる一態様は、シクロデキストリン対1-アミノシクロヘキサン誘導体のモル比が少なくとも約0.1:1である、上記組成物に関する。
【0020】
本発明のさらなる一態様は、シクロデキストリン対1-アミノシクロヘキサン誘導体のモル比が最大50:1(10:1、5:1、4:1、3:1、2:1、又は1:1の組成物を含む)であり、且つ少なくとも約0.1:1である、上記組成物に関する。
【0021】
本発明のさらなる一態様は、シクロデキストリン対1-アミノシクロヘキサン誘導体のモル比が3:1である、上記組成物に関する。
【0022】
本発明のさらなる一態様は、水性液状組成物の形態である上記組成物に関し、そのような組成物は、場合によっては、眼への局所外用及び/又は硝子体内適用に有用である。
【0023】
本発明のさらなる一態様は、固形組成物の形態である上記組成物に関する。
【0024】
本発明のさらなる一態様は、粉末、顆粒又は凍結乾燥物の形態をとってもよい、経口崩壊剤形又は再構成用製剤の形態である、上記組成物(水性溶媒による再構成、例えば粉末、顆粒又は凍結乾燥物の再構成が、水性液状組成物を与えるような上記組成物を含む)に関する。
【0025】
本発明のさらなる一態様は、速溶性又は超速溶性の固形組成物、例えば粉末、顆粒又は凍結乾燥物である、上記組成物に関する。
【0026】
本発明のさらなる一態様は、速溶性又は超速溶性の水溶性粉末、顆粒又は凍結乾燥物である、上記組成物に関する。
【0027】
本発明のさらなる一態様は、半固形組成物(許容される粘度を有するゲル、クリーム又は軟膏を含む)の形態である上記組成物に関し、そのような組成物は、場合によっては、眼への局所適用に有用である。
【0028】
本発明のさらなる一態様は、式(I)の化合物がネラメキサン又は薬学的に許容し得るその塩である、上記組成物に関する。
【0029】
本発明のさらなる一態様は、式(I)の化合物の濃度が約2mg/ml〜約100mg/mlの範囲にある、上記組成物に関する。
【0030】
本発明のさらなる一態様は、少なくとも1つの矯味矯臭剤又はシクロデキストリン以外の味マスキング剤(taste-masking agent)をさらに含む、上記組成物に関する。
【0031】
本発明のさらなる一態様は、保存剤を実質的に含まない、上記組成物に関する。
【0032】
本発明のさらなる一態様は、保存剤をさらに含み、その保存剤の濃度が等価なプラセボ組成物を効果的に保存するのに必要な濃度より低い、上記組成物に関する。
【0033】
本発明のさらなる一態様は、少なくとも1つの追加活性成分をさらに含む、上記組成物に関する。
【0034】
本発明のさらなる一態様は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤から選択される少なくとも1つの追加活性成分をさらに含む、上記組成物に関する。
【0035】
本発明のさらなる一態様は、薬学的に許容し得るシクロデキストリンが、薬学的に許容し得る水溶性の天然又は誘導体化シクロデキストリン、例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ランダムメチル化β-シクロデキストリン、2-O-メチル-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-(2,6-ジ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(ジメチル-β-シクロデキストリン)、アセチル化ジメチル-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-(2,3,6-トリ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(トリメチル-β-シクロデキストリン)、スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、O-カルボキシメチル-O-エチル-β-シクロデキストリン、グルクロニル-グルコシル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、硫酸β-シクロデキストリン、リン酸β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、及びヒドロキシアルキル修飾シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを含む)から選択される、上記組成物に関する。
【0036】
本発明のさらなる一態様は、1つ又はそれ以上の薬学的に許容し得る追加賦形剤と組み合わされた上述の組成物のいずれかを含む医薬組成物に関する。
【0037】
本発明のもう一つの態様は、固形組成物の形態である上記医薬組成物に関する。
【0038】
本発明のもう一つの態様は、水性液状組成物の形態である上記医薬組成物に関する。
【0039】
本発明のもう一つの態様は、半固形組成物の形態である上記医薬組成物に関する。
【0040】
本発明のさらなる一態様は、上述の組成物のいずれかを含む医薬に関する。
【0041】
本発明のさらなる一態様は、CNS障害、並びに低酸素、低血糖、肝性脳症、慢性神経変性疾患、認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、AIDS神経変性、AIDS関連認知症、オリーブ橋小脳萎縮症、トゥーレット症候群、運動ニューロン疾患、ミトコンドリア機能障害、コルサコフ症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性痛、急性痛、薬物耐性、依存及び嗜癖(例えばオピオイド、コカイン、ベンゾジアゼピン類、及びアルコール)、神経障害性痛、てんかん、うつ病、不安、統合失調症、痙縮、眼振、眼疾患、耳鳴り、肝性脳症、多発性硬化症、脳卒中、ジスキネジア、マラリア、及びC型肝炎ウイルスやボルナウイルスなどのウイルス感染、免疫調節薬を必要とする状態、嘔吐、薬物及びアルコール乱用障害、認知障害、小脳性振戦、及び食欲障害を含む他の障害の処置における、上述の組成物の使用に関する。
【0042】
本発明のさらなる一態様は、CNS障害、並びに低酸素、低血糖、肝性脳症、慢性神経変性疾患、認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、AIDS神経変性、AIDS関連認知症、オリーブ橋小脳萎縮症、トゥーレット症候群、運動ニューロン疾患、ミトコンドリア機能障害、コルサコフ症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性痛、急性痛、薬物耐性、依存及び嗜癖(例えばオピオイド、コカイン、ベンゾジアゼピン類、及びアルコール)、神経障害性痛、てんかん、うつ病、不安、統合失調症、痙縮、眼振、眼疾患、耳鳴り、肝性脳症、多発性硬化症、脳卒中、ジスキネジア、マラリア、及びC型肝炎ウイルスやボルナウイルスなどのウイルス感染、免疫調節薬を必要とする状態、嘔吐、薬物及びアルコール乱用障害、認知障害、小脳性振戦、及び食欲障害を含む他の障害を処置するための、上に定義した組成物に関する。
【0043】
本発明のさらなる一態様は、CNS障害、並びに低酸素、低血糖、肝性脳症、慢性神経変性疾患、認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、AIDS神経変性、AIDS関連認知症、オリーブ橋小脳萎縮症、トゥーレット症候群、運動ニューロン疾患、ミトコンドリア機能障害、コルサコフ症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性痛、急性痛、薬物耐性、依存及び嗜癖(例えばオピオイド、コカイン、ベンゾジアゼピン類、及びアルコール)、神経障害性痛、てんかん、うつ病、不安、統合失調症、痙縮、眼振、眼疾患、耳鳴り、肝性脳症、多発性硬化症、脳卒中、ジスキネジア、マラリア、及びC型肝炎ウイルスやボルナウイルスなどのウイルス感染、免疫調節薬を必要とする状態、嘔吐、薬物及びアルコール乱用障害、認知障害、小脳性振戦、及び食欲障害を含む他の障害の処置を必要とする対象における前記障害を処置する方法であって、上述の組成物の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0044】
本発明に従って使用される式(I)の1-アミノシクロヘキサン誘導体の限定でない例には、次に挙げるものがある:
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1(trans),3(trans),5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1(cis),3(cis),5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン(ネラメキサン)、
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-cis-3-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-(1S,5S)cis-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-trans-3-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-(1R,5S)trans-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン、
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサン、
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン、
3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルメチルアミン、
1-アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3,5(trans)-テトラメチルシクロヘキサン(アキシアルアミノ基)、
3-プロピル-1,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルアミン半水和物、
1-アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-プロピルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3(trans),5(trans)-トリメチル-3(cis)-プロピルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3-ジメチル-3-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、
cis-3-エチル-1(trans),3(trans),5-トリメチルシクロヘキサミン、
1-アミノ-1,3(trans)-ジメチルシクロヘキサン、
1,3,3-トリメチル-5,5-ジプロピルシクロヘキシルアミン、
1-アミノ-1-メチル-3(trans)-プロピルシクロヘキサン、
1-メチル-3(cis)-プロピルシクロヘキシルアミン、
1-アミノ-1-メチル-3(trans)-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(cis)-エチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3-トリメチル-5(trans)-エチルシクロヘキサン、
cis-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、
trans-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、
N-エチル-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシルアミン、
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5.5-ペンタメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1-メチルシクロヘキサン、
N,N-ジメチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、
2-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)エチルアミン、
2-メチル-1-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)プロピル-2-アミン、
2-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)-エチルアミン半水和物、
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)-ピロリジン、
1-アミノ-1,3(trans),5(trans)-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,3(cis),5(cis)-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-(1R,5S)trans-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-(1S,5S)cis-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3(cis)-イソプロピル-シクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3(trans)-イソプロピル-シクロヘキサン、
1-アミノ-1-メチル-3(cis)-エチル-シクロヘキサン、
1-アミノ-1-メチル-3(cis)-メチル-シクロヘキサン、
1-アミノ-5,5-ジエチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン、
1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、
1-アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン、
1-アミノ-l-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン、
N-エチル-l-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン、
N-(1,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-[1,3(trans),5(trans)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン、
N-[1,3(cis),5(cis)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,3-トリメチル-cis-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-[(1S,5S)cis-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,3-トリメチル-trans-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-[(1R,5S)trans-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン、
N-(1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン、
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン、
並びにその光学異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、水和物、それらの薬学的に許容し得る塩、及び混合物。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書において使用する水性液状組成物という用語は、主要な液状構成要素が水である液状調製物を意味する。場合により、水性液状組成物はさらに他の液状構成要素、例えば薬学的に許容し得る有機溶媒及び共溶媒を含んでもよい。そのような他の液状構成要素の例は、例えばエタノール、グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールである。そのような水混和性の有機溶媒及び共溶媒は、例えば、水溶性の低い成分(親油性物質など)を可溶化するために、混合することができる。
【0046】
液状製剤という用語は、溶液及び分散液、例えばエマルション及び懸濁液を包含する。
【0047】
本明細書において使用する半固形組成物という用語は、水を主要な液状構成要素とする低粘度の調製物を意味する。場合によっては、半固形組成物はさらに他の液状構成要素、例えば薬学的に許容し得る有機溶媒、共溶媒、粘度調節ポリマー、及び乳化剤を含んでもよい。そのような他の液状構成要素の例は、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールである。そのような水混和性の有機溶媒は、例えば、水溶性の低い成分(親油性物質など)を可溶化するために、混合することができる。
【0048】
半固形組成物という用語はゲル、クリーム及び軟膏を包含する。液状組成物と比較してこれらの製剤は易流動性ではない。半固形組成物の粘度は、アラビアゴム及びその誘導体、アルギン酸及びその誘導体、カルボマー及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、カラギーナン及びその誘導体、クロスカルメロース及びその誘導体、クロスポビドン及びその誘導体、デキストリン及びその誘導体、エチルセルロース及びその誘導体、ゼラチン及びその誘導体、グアーガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース及びその誘導体、ヒプロメロース及びその誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその誘導体、レシチン及びその誘導体、マルトデキストリン及びその誘導体、メチルセルロース及びその誘導体、ポロキサマー及びその誘導体、ポリエチレングリコール及びその誘導体、ポリメタクリレート及びその誘導体、ポリオキシエチルアルキルエーテル及びその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、二酸化ケイ素及びその誘導体、グリコール酸デンプンナトリウム及びその誘導体、ソルビトール及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、アルファ化デンプン及びその誘導体、トラガカント及びその誘導体並びにキサンタンゴム及びその誘導体のようなポリマーの一つによって、又は複数のそれらポリマーの組合せによって、制御することができる。
【0049】
本明細書において使用する固形組成物という用語は、硬カプセル剤、軟カプセル剤、錠剤、コート錠、口中錠、ウエハ(wafer)、顆粒、粉末、凍結乾燥物などを包含する。
【0050】
式(I)の1-アミノシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン、1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン)は、米国特許第6,034,134号及び同第6,071,966号に開示されている。式(I)の化合物(例えばネラメキサン)は、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、及びプロドラッグのどの形態でも、本発明に従って使用することができ、本明細書における式(I)の化合物(例えばネラメキサン)への言及はいずれも、そのような塩、溶媒和物、異性体、コンジュゲート、及びプロドラッグへの言及でもあると理解すべきである。
【0051】
「類似体」又は「誘導体」という用語は、本明細書においては、従来の医薬的意味で、基準分子(例えばネラメキサン)に構造的に似ているが、基準分子の一つ以上の特定置換基を代替置換基で置き換えることによって基準分子に構造的に類似する分子が生じるように、標的を絞った制御された方法で修飾された分子を指すために用いられる。改善された特質又は偏った特質(例えば、特異的標的受容体タイプにおける力価及び/又は選択性の向上、哺乳動物の血液脳関門を通り抜ける能力の増大、副作用の低減など)を有し得る、既知化合物のわずかに修飾された異形を同定するために行われる、類似体の合成及びスクリーニング(例えば構造解析及び/又は生化学的解析を使用するもの)は、薬化学においては周知のドラッグデザインアプローチである。
【0052】
薬学的に許容し得る塩には、酸付加塩、例えば塩酸、メチルスルホン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、炭酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、及び2-アセトキシ安息香酸を使って製造されるものが含まれるが、これらに限るわけではない。これらの塩(又は他の類似する塩)は全て、従来の手段によって製造することができる。塩の性質は、それが無毒性であり、且つ所望の薬学的活性を実質的に妨害しない限り、決定的な問題ではない。
【0053】
シクロデキストリンはグルコピラノース単位から構成されるオリゴ糖である。主要な無置換又は天然シクロデキストリンは、通常、デンプンの酵素的分解によって製造される。それらは、剛直な構造と中央に空洞とを有する円錐状のドーナツ型分子であり、そのサイズはシクロデキストリンのタイプによって異なる。シクロデキストリンの内部空洞は疎水性が高くなっていて、親油性分子と親水性分子の両方を包接複合体の形で収容する能力を有するので、例えば水性媒質に溶けにくい薬物の可溶化などを可能にする。シクロデキストリンが関わる他のタイプの複合体も最近、同定されている。
【0054】
本明細書にいう複合体とは、非共有結合的相互作用による分子の会合を意味する。溶液中で起こる複合体形成は、通例、平衡過程である。しかし複合体は固体状態でも起こり得る。包接複合体は、ゲスト分子がより大きなホスト分子の空洞内に部分的に又は完全に包含されている構造物である。
【0055】
薬学的に許容し得るシクロデキストリンの3つの主要タイプは、それぞれ6、7及び8個のグルコピラノース単位を含むα-、β-及びγ-シクロデキストリンである。また、化学修飾シクロデキストリンが、大部分は、水溶性を増大させ、可溶化賦形剤としてのそれらの有用性を拡大したいという動機により、数多く開発されている。そのような誘導体の例には、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ランダムメチル化β-シクロデキストリン、2-O-メチル-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-(2,6-ジ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(ジメチル-β-シクロデキストリン)、アセチル化ジメチル-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-(2,3,6-トリ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(トリメチル-β-シクロデキストリン)、スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、O-カルボキシメチル-O-エチル-β-シクロデキストリン、グルクロニル-グルコシル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、硫酸β-シクロデキストリン、リン酸β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBEBCD)、及びヒドロキシアルキル修飾シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)、又はヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、例えば2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(HPGCD)を含む)などがある。本明細書において使用する用語「シクロデキストリン」には、天然シクロデキストリンのこのような修飾型が包含される。
【0056】
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの適切な等級(grade)の例は、無定形のランダム置換ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンで、置換度DSが約4.5(すなわち約4〜5)の範囲にあるもの、例えばKleptose(商標)HPB(Roquette)として販売されている製品である。本明細書で使用するDS値は、シクロデキストリン分子あたりではなく、無水グルコースあたりの置換ヒドロキシル基の平均数を規定するものであることに注意されたい。有用な等級の他の例は、ランダム置換ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンで、置換度DSがそれぞれ約5.6の範囲、又は2〜4の範囲、又は5の範囲、又は6.5の範囲にあるものである。ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンの適切な等級の例は、Cavasol(商標)W8 HP(Wacker Chemie)として販売されている製品である。
【0057】
組成物中のシクロデキストリンの量は、シクロデキストリンのタイプ及び達成しようとする活性成分の濃度を考慮して選択することができる。活性成分の濃度は少なくとも約1mg/mlであることができる。活性成分がネラメキサン塩基、塩酸ネラメキサン又はメシル酸ネラメキサンなどのネラメキサン化合物である場合、濃度は約2〜約100mg/mlの範囲にあることができる。或いは、医薬組成物は、2〜50mg/mlの範囲のネラメキサン又は薬学的に許容し得るその塩を含み得る。例えば、5〜10mg/mlという濃度のネラメキサン又は薬学的に許容し得るその塩を、上述の組成物に製剤化することができる。
【0058】
本発明によれば、シクロデキストリン対活性物質のモル比が少なくとも約0.5:1から最大100:1までになるようにシクロデキストリンの量を選択すると、口当たりの良い組成物(例えば液状、半固形又は固形組成物)を得ることができる。もう一つの実施形態は少なくとも約1:1のシクロデキストリン対活性物質比を含み得る。別の実施形態は約0.75:1〜50:1(5:1、10:1、及び25:1)の比を含み得る。約1:1〜約10:1、例えば約2:1〜約10:1、例えば約2:1、3:1、又は約6:1、又は約7:1、又は約8:1、又は約9:1のシクロデキストリン対原薬のモル比も、それぞれ製剤化することができる。
【0059】
そのような比は、著しく高度な味マスキングをもたらすことがわかった。これは、シクロデキストリン分子と原薬と可溶性複合体の自発的形成に関連すると思われる。その上、活性化合物の不快な匂いも、特にネラメキサン化合物の場合は、実質的に軽減される。この味マスキング度は、活性化合物の高い水溶性を考えると、特にメシル酸ネラメキサンなどの易溶性塩型の場合は、驚くべきことである。複合体形成が、水性溶媒に溶解しているという原薬の状態に起因すると考えられる原薬の他の性質を排除することなく、効果的な味マスキングを達成することも、驚くべきことである。例えば経口投与後に、活性化合物は組成物から迅速に吸収されて、遅滞なく生物学的に利用可能になる。
【0060】
シクロデキストリン対活性化合物のモル比を、実質的ではあるが完全ではない味マスキング(これは、上述した範囲のうち、低値側の比(例えば1:1の比)を選択した場合に起こり得る)が得られるように選択した場合は、製剤の口当たりの良さを改善するために、1つ又はそれ以上のさらなる賦形剤を加えることも考えられる。これは、好ましい薬物濃度範囲のメシル酸ネラメキサン溶液には、特に当てはまる。例えば1つ又はそれ以上の甘味料を混合することができる。さらにまた、フレーバー(flavour)、フレーバー強化剤(flavour enhancer)、及び味マスキング剤(ただしこの味マスキング剤はシクロデキストリン類からは選択されないものとする)の群から選択される1つ又はそれ以上の賦形剤を加えてもよい。
【0061】
本明細書にいう甘味料は、甘味を有し、生理学的に許容される、天然又は合成化合物である。天然甘味料の例として、一般的な糖類及び糖アルコール類、例えばスクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、及びソルビトールなどが挙げられる。糖アルコール、例えばソルビトールは、本発明の組成物のフレーバーを改善するために使用することができる。ソルビトール又は他の糖類及び糖アルコール類の有用な濃度範囲は約5%(w/v)〜約25%(w/v)であり、10%(w/v)も使用することができる。
【0062】
もう一つの実施形態では、天然甘味料の他にも、又は天然甘味料の代わりに、人工甘味料を組成物に混合する。有用な人工甘味料として、サッカリン-ナトリウム、サッカリン、シクラミン酸ナトリウム、アスサルフェームK、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、及びアスパルテーム、並びにヒトに使用した時の安全性が確証されている他の任意の甘味料が挙げられる。適当な濃度は、選択した個々の甘味料に依存するだけでなく、選択した具体的シクロデキストリンにも依存する。例えばヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンはかなりの甘味を既に備えているので、甘味剤を加えても製剤の口当たりの良さはそれ以上増加しない場合がある。
【0063】
アミノシクロヘキサン誘導体(ネラメキサン及び薬学的に許容し得るその塩を含む)のシクロデキストリン含有水性組成物の味をさらに改善し得る適切なフレーバーとしては、グレープ、オレンジ、ペパーミント、スペアミント、サクランボ、カンゾウ、及びアニスシードが挙げられる。特にペパーミントフレーバーは本発明の組成物の重要構成要素と物理化学的及び官能検査的によく適合し、口当たりの良い製剤をもたらし得る。
【0064】
油状の矯味矯臭構成要素(ペパーミント油など)を使用する場合は、水相における油の可溶化に寄与することができる賦形剤も加えることが必要又は有用であるだろう。この目的には、例えば界面活性剤又は水混和性有機共溶媒を使用することができる。ペパーミント油又は他のペパーミント矯味矯臭製品の場合、可溶化はプロピレングリコールの混合によって達成することができる。
【0065】
液状組成物の場合は、本発明の複合体が、活性成分の保存効果を阻害せずに、強い味マスキング効果をもたらすことが、有用であるだろう。原薬の抗微生物効果が保たれる結果として、保存剤を一切追加しないで、本発明の組成物を製剤化することが可能になり得る。したがって実施形態の一つにおいては、本発明の組成物が、実際に、保存剤を実質的に含まない。これに関連して、用語「実質的に」とは、保存剤が組成物中に検出できないこと、又は保存効果に関して無意味だと一般に考えられる濃度でしか検出されないことを意味する。
【0066】
液状組成物は、場合により、少なくとも1つの保存剤を、等価なプラセボ組成物を効果的に保存するには不十分な濃度で含んでもよい。本明細書にいう等価なプラセボ組成物は、活性成分を実質的に含まない組成物であって、その性質及び他の成分が、薬物を含有する基準組成物とおおむね同じであるものと定義される。
【0067】
組成物が効果的に保存されるかどうかは、例えば5つの負荷生物を製品カテゴリーに応じて所定の時間間隔で試験組成物に加える保存抗力試験(USP<51>)など、当業者に知られる試験で決定することができる。それら適当な一連の試験を行うことにより、所与の組成物について、例えば本発明の組成物と等価な薬物非含有組成物について、ある具体的保存剤の最小有効濃度を決定することもできる。例えば、特定のプラセボ組成物をソルビン酸で効果的に保存するには、この保存剤が、少なくとも約0.1%(w/v)の濃度で存在しなければならないことが見いだされる可能性がある。この場合、1-アミノシクロヘキサン誘導体を含む基準組成物は、ソルビン酸を、実質的にそれより低い濃度で、例えば約0.05%(w/v)又はそれ以下の濃度で含有することができる。もう一つの実施形態では、保存剤の濃度が、等価なプラセボ組成物を効果的に保存するのに必要な濃度の約5分の1を上回らない濃度(約10分の1を上回らない濃度を含む)になるように選択される。
【0068】
再現性のある製品品質及び信頼できる安定性が得られるように、生理学的に許容される酸、塩基、並びに酸性塩及びアルカリ性塩からなる群より選択される1つ又はそれ以上の適当な添加物を混合することによって、組成物を特別なpHに調節することができる。例えば、組成物のpHを約pH4〜約pH10の範囲で選択される値に緩衝化するには、クエン酸とクエン酸ナトリウムとの組合せを使用することができる。特に、pHは、クエン酸緩衝液などの薬学的に許容し得る緩衝剤又は緩衝混合物を使って、約pH4.5〜約pH8の値に調節することができる。
【0069】
特定の薬物候補の具体的要件に合わせて、又は具体的用途若しくはターゲット集団に合わせて、組成物を調節するために適当であると考え得る場合は、医薬製剤に日常的に使用されるさらなる賦形剤を混合することができる。潜在的に適切な賦形剤の例は、カラギーナンを含む可溶性ゴム、アルギナート、キサンタン、及び可溶性セルロースエステルなどの増粘剤;着色剤;酸化防止剤又は結晶化阻害剤などの安定剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、又はポリビニルピロリドンである。
【0070】
場合により、本組成物は、アミノシクロヘキサン誘導体ではないもう一つの活性成分を、さらに含んでもよい。本明細書にいう活性成分は、ある症状、疾患、又は状態の診断、予防、又は処置に役立つ薬学的に許容し得る化合物、又はそのような化合物の混合物である。「活性化合物」「活性成分」「薬物」及び「原薬」という用語は、互換的に使用することができる。追加活性成分には、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、例えばドネペジル、リバスチグミン、タクリン、ガランタミン、フィソスチグミン、フペルジンA、ザナペジル、ガンスチグミン、フェンセリン、フェネチルノルシムセリン(PENC)、シムセリン、チアシムセリン(thiacymserine)、SPH1371(ガランタミン・プラス(galantamine plus))、ER127528、RS1259、及びF3796などがある。
【0071】
驚いたことに、ネラメキサン及びその薬学的に許容し得る塩と、1つのシクロデキストリン又は複数のシクロデキストリンの組合せとの複合体が、水性媒質中で自発的に形成されることが見いだされた。この複合体形成は、β-及びγ-シクロデキストリン並びにヒドロキシプロピル-β-又はヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを含む、あらゆるタイプの天然シクロデキストリン及びシクロデキストリン誘導体で起こる。
【0072】
この複合体形成は、通常の室温において、水溶液中で自発的に起こる。これは、その製造に加熱及び/又は極めて長い撹拌時間を必要とする多くの他の既知シクロデキストリン複合体とは対照的である。したがって本組成物の製造は、技術的に容易であり、迅速であり、且つ費用効率が高い。ほとんどの場合、単に構成要素を秤量し、計量した水又は共溶媒と合わせた後、溶解が起こるまで撹拌する。混合物をかき混ぜ且つ/又は加熱してもよい。残存する粒子を除去するために濾過又は遠心分離によって、溶液をさらに処理してもよい。固形複合体が望ましい場合は、その溶液を、例えば噴霧乾燥又は凍結乾燥などによって乾燥することができる。
【0073】
複合体形成は、極めて限られた量の水性媒質又は有機溶媒又は共溶媒又はそれらの混合物だけを使って、従来のワンポット湿式造粒プロセス又は流動床造粒プロセスで達成することもできる。複合体はネラメキサンシクロデキストリン溶液を噴霧乾燥することによって形成させることもできる。従来の造粒プロセスの場合は、ネラメキサンとシクロデキストリンとを均一に配合してから、水性溶液又は共溶媒を含有する水性溶液を使って造粒することができる。造粒プロセスは、ネラメキサンがシクロデキストリン溶液を使って造粒されるような方法、又はシクロデキストリン粉末がネラメキサン溶液を使って造粒されるような方法で行うこともできる。水不溶性成分を加える場合に限り、まず最初にその賦形剤を少量の界面活性剤又は共溶媒に溶解してから、それを残りの構成要素と合わせることが有用であるだろう。
【0074】
一般に、上述のシクロデキストリン/薬物複合体を形成させるには、溶液法、共沈法、スラリー法、混練法及び粉砕法など、さまざまな方法を使用することができる(T Loftsson, Pharmaceutical Technology 12, 41-50, 1999)。スラリー法及び混練法が、水溶性の低い化合物の複合体形成に、より多く使用されるのに対し、溶液法及び沈殿法は水溶性化合物と難溶性化合物のどちらにも容易に使用することができる。
【0075】
本発明の液状及び半固形組成物は、複数回分の用量を収容できる容器に充填することができる。適当な容器は約5ml又は5g〜約1,000ml又は1,000gの範囲の体積を収容できるだろう。また他の容器は約10ml(又はg)〜約500ml(又はg)を収容できるだろう。体積は、具体的製剤の強度及びその製品の使用期間を考慮して選択される。例えば、数日分、数週間分又は数ヶ月分の医薬品に対応できるように、容器を選択することができる。好ましい実施形態の一つでは、少なくとも約4週間分の十分な医薬品を収容できるように、容器が選択される。もう一つの実施形態では、約50ml(又はg)、約100ml(又はg)、約200ml(又はg)、約250ml(又はg)、又は約500ml(又はg)を収容できるように、容器が選択される。
【0076】
適当な容器は、ガラス製であるか、適切なプラスチック製、例えばポリプロピレン製又はポリエチレン製であることができ、通常は再封可能な蓋(closure)を有するだろう。場合により、その蓋システム(closure system)はチャイルドプルーフである。
【0077】
容器は、所定の用量の組成物を計量及び/又は分配するための手段を、さらに含むことができる。従来の計量手段は、例えば点滴器(dropper)、すなわちゴム球が取り付けられたガラス管であって、蓋と一体化していて、容器を開ける時に取り外されるものである。或いは、取り外し不可能な点滴器を瓶の首に組み入れることもできる。
【0078】
容器又は容器システムは、最も一般的な用量について服用されるべき液体の量を示す印が入っている投薬用カップ(dosing cup)も含むことができる。例えば印は、約0.5ml〜約10mlの範囲、及び約1ml〜約5mlの範囲にわたることができ、或いは体積の代わりに製剤のグラム数又は原薬のmg数で用量を示してもよい。計量カップは、蓋システムの一部であってもよいし、提供する際に容器を入れる二次包装内に、別個の器具として用意してもよい。
【0079】
本発明の組成物は固形組成物であることができる。さらにまた、1-アミノシクロヘキサン誘導体及びシクロデキストリンは、その固形組成物中に、既に複合体を形成した形で存在してもよいし、組成物は、両構成要素を複合体を形成していない形で含んでいて、その組成物が水性環境で使用される時に、複合体が自発的に形成されるものであってもよい。
【0080】
本発明の組成物は、再構成用の調製物、例えば、経口投与にすぐに使用できる液状又は半固形製剤を調製するための粉末、顆粒、錠剤、ウエハ又は凍結乾燥物などといった形態であることができる。この場合、組成物の構成は、それが液体を含まない点を除けば、同じ効果及び同じ利点という観点から、液状組成物に関して上に述べたものと同様であることができる。これらの製品は、液体を含まない代わりに、投与前に水又は水と共溶媒との混合物などといった液体と混和されるように意図されている。既製の液状組成物と比較して、これら再構成用の固形組成物は、潜在的に安定性が高く、より長い貯蔵寿命を示し得る。また、軽く、輸送及び貯蔵のコストも低いが、投与前に製剤を操作する必要が無いことを望む患者にとっては、既製の液状製剤の方が便利だろう。
【0081】
再構成用の固形組成物は、通常の医薬的加工ステップで製造することができる。例えば、上述の液状組成物と同様に製造した後、それを例えば凍結乾燥又は噴霧乾燥などによって乾燥させることができる。
【0082】
或いは、再構成することなく、そのまま経口投与するために、固形組成物を設計し、製剤化することもできる。この場合、経口投与には、口腔内投与及び経口的(peroral)投与を含むあらゆる形態の経口使用が含まれると解釈される。口腔内投与用の剤形の例は、胃液よりもむしろ口内で崩壊する製剤であり、これらは経口崩壊剤形、急速溶解(fast-melt)錠剤及び経口ウエハとも呼ばれている。経口的投与用の製剤の例には、従来の硬又は軟カプセル剤及び錠剤が含まれる。
【0083】
本発明の組成物に関して本明細書で使用する「速溶性(rapidly dissolving)」という用語は、パドル(50rpm)又はバスケット(100rpm)装置を使って約37℃の温度及び約900mlの体積で決定した場合に、30分以内に少なくとも85%の1-アミノシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は薬学的に許容し得るその塩)の放出が起こることを意味し、「超速溶性(very rapidly dissolving)」という用語は、パドル(50rpm)又はバスケット(100rpm)装置を使って約37℃の温度及び約900mlの体積で決定した場合に、30分以内に少なくとも85%の1-アミノシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン又は薬学的に許容し得るその塩)の放出が起こることを意味する。
【0084】
本明細書において使用する医薬という用語は、医薬製品を包含し、これは、組成物そのものを表すか、容器又は他の包装手段、投薬器具、再構成用の液体と組み合わされた組成物、又はキット若しくは同梱包装物(combination package)の形態でもう一つの原薬含有組成物と組み合わされた組成物を表し得る。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、1-アミノシクロヘキサン誘導体(例えばネラメキサン及び薬学的に許容し得るその塩)を含む組成物の、それを必要とする個体への投与に関する。例えば、本発明の組成物は、CNS障害並びに他の障害、例えば低酸素、低血糖、肝性脳症、慢性神経変性疾患、認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、AIDS神経変性、AIDS関連認知症、オリーブ橋小脳萎縮症、トゥーレット症候群、運動ニューロン疾患、ミトコンドリア機能障害、コルサコフ症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性痛、急性痛、薬物耐性、依存及び嗜癖(例えばオピオイド、コカイン、ベンゾジアゼピン類、及びアルコール)、神経障害性痛、てんかん、うつ病、不安、統合失調症、痙縮、眼振、眼疾患、耳鳴り、肝性脳症、多発性硬化症、脳卒中、ジスキネジア、マラリア、及びC型肝炎ウイルスやボルナウイルスなどのウイルス感染、免疫調節薬を必要とする状態、嘔吐、薬物及びアルコール乱用障害、認知障害、小脳性振戦、及び食欲障害などの処置に適している。
【0086】
「処置する」という用語は、本明細書では、対象における疾患の少なくとも1つの症状を軽減又は緩和することを意味するために用いられる。本発明においては、「処置する」という用語が、発症を阻止すること、発症を遅延させること(すなわち疾患の臨床症状発現前の期間)、及び/又は疾患が進行若しくは悪化するリスクを低下させることも表す。
【0087】
用量又は量に適用される「治療(的に)有効」という用語は、それを必要とする哺乳動物への投与後に所望の活性をもたらすのに十分な化合物又は医薬組成物の分量を指す。
【0088】
本明細書において使用する「眼振」という用語は、先天型及び後天型の眼振を、そのサブタイプを含めて包含する。さらに、眼振という用語は、病的眼振、及び毒性又は代謝性の原因に起因する眼振を、そのサブタイプを含めて包含する。眼振という用語は、眼球振戦又は動揺視も包含する。さらにまた、眼振は下向性眼振、上向性眼振、シーソー眼振、周期交代性眼振、及び後天性振子様眼振も包含する。「先天性眼振」というカテゴリーに該当するとされるべき状態/疾患には、特発性疾患、白皮症、無虹彩、レーバー先天性黒内障、両側視神経低形成、両側先天性白内障、杆体一色型色覚、視神経疾患又は黄斑疾患、水晶体血管膜遺残、潜伏眼振及び眼振遮断症候群が含まれるが、これらに限るわけではない。「病的眼振」という定義に該当する疾患/状態の例には、末梢性眼振、頭位眼振、注視誘発眼振、頭振り後眼振、自発眼振並びに中枢性眼振が含まれるが、これらに限るわけではない。「後天性眼振」という定義に該当する状態/障害には、良性発作性頭位眩暈、頭部外傷、脳卒中、メニエール病及び他の平衡障害、多発性硬化症、脳腫瘍、ウェルニッケ-コルサコフ症候群、脳症、延髄外側症候群、視神経低形成、ヌーナン症候群、ペリツェウス・メルツバッヘル病、上半規管裂隙症候群、トュリオ現象、ホルネル症候群が含まれるが、これらに限るわけではない。「毒性又は代謝性の原因に起因する眼振」という定義に該当する状態/障害には、アルコール、リチウム、バルビツレート類、フェニトイン、サリチレート類、ベンゾジアゼピン類、LSD、フェンシクリジン、アミノグリコシド類、抗痙攣薬、鎮静薬、メチレンジオキシメタンフェタミンによる中毒、ウェルニッケ脳症、チアミン不足が含まれるが、これらに限るわけではない。
【0089】
本明細書において使用される「眼疾患」という用語には、高眼圧、緑内障、低眼圧緑内障、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性黄斑浮腫、虚血性視神経症、視神経外傷、視神経炎、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞、網膜浮腫、網膜虚血、例えば光凝固及び偶発的レーザー傷害などによって引き起こされる網膜の損傷が含まれる。
【0090】
本発明の組成物に関連して使用される「薬学的に許容し得る」という用語は、哺乳動物(例えばヒト)に投与された場合に生理学的に認容でき、不都合な反応を典型的には生じない、当該組成物の分子的実体及び他の成分を指す。「薬学的に許容し得る」という用語は、哺乳動物(より具体的にはヒト)における使用に関して、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されていること、又は米国薬局方若しくは他の広く認識されている薬局方に記載されていることも意味する。
【0091】
「約」又は「およそ」という用語は、与えられた値又は範囲の20%以内、或いは10%以内(5%以内を含む)を意味する。或いは、とりわけ生物系においては、「約」という用語は、与えられた値の約1log(すなわち一桁)以内(2分の1〜2倍以内を含む)を意味する。
【0092】
本発明の組成物は、上述した障害の少なくとも1つを処置するための医薬の製造に使用することができ、その場合、医薬は、本明細書に開示する具体的投与(例えば1日1回投与、1日2回投与、又は1日3回投与)に適合するか、又はそのような投与に合わせて適切に製造される。この目的のために、添付文書及び/又は患者向け医薬品情報は、対応する情報を含む。
【実施例】
【0093】
以下に実施例を挙げて本発明を例示するが、これは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0094】
メシル酸ネラメキサンとヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD;等級:Kleptose(商標)HPB)又はヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(HPGCD;等級:Cavasol(商標)W8 HP Pharma)との複合体を形成させて、等温滴定熱量測定(ITC)で調べる。実験はMicrocal MCS-ITC計器で行う。手順は、試験溶液(ここではメシル酸ネラメキサン溶液)を、動力付きマイクロリットルシリンジから、熱量計中に置かれた受容体溶液(ここではシクロデキストリン溶液)に、少量ずつ繰り返し加えることからなる。複合体が形成されると、複合体形成そのものだけでなく、希釈熱又は(脱)プロトン化熱をも含む、あらゆる熱事象の総和を表す発熱又は吸熱シグナルが生じる。滴定曲線を、Microcal OriginソフトウェアV2.9により、その滴定熱量測定評価用のオリジナルデータ評価モジュールで、評価する。
【0095】
実験は溶媒としてpH6の水性リン酸緩衝液を使って行う。さまざまな濃度のメシル酸ネラメキサン、HPBCD、及びHPGCDの溶液を調製し、1.25〜5の範囲にわたる異なる最大モル比のネラメキサン対シクロデキストリン(原薬の完全な添加後)を使って、いくつかの滴定を行う。複合体形成曲線を補正するためのベースラインデータとして使用することができる希釈熱を示す曲線を得るために、溶媒溶液のみによる滴定、及びシクロデキストリン溶液と組み合わせた滴定を行う。
【0096】
いずれの場合も、複合体形成は自発的に起こる。HPBCDの場合、それは発熱事象であるが、HPGCDの場合は吸熱的である。さらにまた、結合の化学量論及び算出される平衡定数は、ネラメキサン対シクロデキストリンの最終(最大)モル比に依存する。HPBCDの場合、例えば5という最終モル比では、(シクロデキストリン1分子あたりのネラメキサンの)結合の化学量論が0.84であり、平衡定数は788M-1であるのに対して、1.25という最終モル比では、化学量論が0.4、平衡定数は413M-1である。HPGCDを使って1.8の最終モル比で得られる結果の一例は、0.93の化学量論と、112M-1の平衡定数をもたらす。
【実施例2】
【0097】
等モル量のメシル酸ネラメキサンとヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD;等級:Kleptose(商標)HPB)、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(HPGCD;等級:Cavasol(商標)W8 HP Pharma)又は無置換β-シクロデキストリン(BCD;等級:Kleptose(商標))のいずれか一つとを一緒に水に溶解してから、Rotavapor装置での減圧蒸発によって乾燥する。得られた物質の試料を固体NMR(核磁気共鳴)分光法によって分析し、一部についてはXRD(X線回折)でも分析した。要約すると、NMR分光法によって、試料が実際に原薬とシクロデキストリンとの真の複合体を含むことを示すことができ、XRDによって、HPBCDとの複合体は無定形であるが、BCDとの複合体は結晶性であることが証明される。
【0098】
NMR実験は一次元及び二次元固体NMRとして行われ、二次元技法はSP Brown及びHW Spiess(「Advanced solid-state NMR methods for the elucidation of structure and dynamics of molecular, macromolecular, and supramolecular systems」Chemical Reviews 101, 4125-4155, 2001)に記載されている二重量子/単一量子相関分光法(double-quantum/single-quantum correlation spectroscopy)である。一連の実験において、a.m.試料を、メシル酸ネラメキサンと各シクロデキストリンとの物理的混合物と比較する。スペクトルを2つの二重量子励起時間(22及び44μs)で測定する。試験試料(ネラメキサン/シクロデキストリン溶液を乾燥することによって得られるもの)の場合は、明瞭なクロスピークが観察され、これは、メシル酸ネラメキサンのメチルプロトンの少なくとも一部(1.1ppm)がシクロデキストリンのプロトンの一部(例えばBCDの場合、4.2ppm)に対して極めて近い位置にあるはずであることを示す。ネラメキサン-BCD複合体の場合、これらのクロスピークは、単一量子次元では1ppm付近にあり、二重量子次元ではどちらの励起時間についても5ppm付近にある。これに対し、各物理混合物の対応するスペクトルは、より長い励起時間でさえ、クロスピークの証拠を示さない。したがって複合体のクロスピークは、ブロードピークのオーバーラップによるアーチファクトではなく、真の複合体形成を示す。
【実施例3】
【0099】
秤量した活性化合物とシクロデキストリンとを計量した滅菌水に溶解することにより、メシル酸ネラメキサンとヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD、等級:Kleptose(商標)HPB)とを含む水性液状組成物を調製する。次に、残りの賦形剤を撹拌しながら加える。次に滅菌水を最終体積に達するまで加える。それらの溶液を5mlガラス瓶に充填する。また、比較のために、シクロデキストリンを含まない溶液も調製する。表1に試験溶液の組成を示す。量の単位はいずれも、別段の表示がない限り、gである。
【0100】
試験溶液Aは1:1のシクロデキストリン/ネラメキサンモル比を示し、試験溶液Bは2:1の比を示す。
【表1】

【実施例4】
【0101】
実施例3で調製した試験溶液の試料を盲検化し、それらを18人により、口当たりの良さについて試験する。1〜6(1が最も良い等級)の尺度で採点すると、溶液Aの味に関する平均等級は3.0、溶液Bは2.7である。味は、かすかに苦い又は全く苦くないと表現される。匂いは一般にほとんどニュートラルであることがわかる。これに対し、溶液Cの平均等級は3.9であり、極めて苦く刺激があると表現される。
【実施例5】
【0102】
実施例3で調製した試験溶液の試料を、その微生物学的性質に関して評価する。この目的のために、欧州薬局方IV「Efficacy of antimicrobial preservation(抗微生物保存効力)」(5.1.3.)の試験を行う。この試験では、試料を、実質的量の5つの主要微生物汚染物(大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger))で汚染させ、それぞれ14日及び28日にわたってインキュベートした後、同じ微生物について分析する。結果として、試験溶液はいずれも、経口製剤の効率のよい保存のための基準を満たす。
【0103】
本発明は、本明細書に記載する具体的実施形態によってその範囲を限定されるものではない。実際、上述の説明から当業者には、本明細書に記載する実施形態の他に、本発明のさまざまな変更実施形態が明白になるだろう。そのような変更実施形態は添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0104】
本明細書で言及する特許、特許出願、刊行物、試験方法、文献、及び他の資料は全て、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、
R*は-(CH2)n-(CR6R7)m-NR8R9であり、
n+m=0、1、又は2であり、
R1〜R7は、水素及びC1-6アルキルからなる群より独立して選択され、R8及びR9は、水素及びC1-6アルキルからなる群より独立して選択されるか、全体として低級アルキレン-(CH2)x-(式中、xは2〜5(両端を含む)である)を表す)
の化合物、並びにその光学異性体、エナンチオマー、水和物、溶媒和物、多形、及び薬学的に許容し得る塩から選択される化合物と、薬学的に許容し得るシクロデキストリン又は複数の薬学的に許容し得るシクロデキストリンの組合せとを含む組成物。
【請求項2】
水性液状組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
半固形組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
固形組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
薬学的に許容し得るシクロデキストリンが、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ランダムメチル化β-シクロデキストリン、2-O-メチル-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-(2,6-ジ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(ジメチル-β-シクロデキストリン)、アセチル化ジメチル-β-シクロデキストリン、ヘプタキス-(2,3,6-トリ-O-メチル)-β-シクロデキストリン(トリメチル-β-シクロデキストリン)、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、O-カルボキシメチル-O-エチル-β-シクロデキストリン、グルクロニル-グルコシル-β-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、硫酸β-シクロデキストリン、リン酸β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、スルホアルキルエーテル-β-シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
薬学的に許容し得るシクロデキストリンがヒドロキシアルキル置換されていてもよいβ-及びγ-シクロデキストリンから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)の化合物がネラメキサン又は薬学的に許容し得るその塩である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
シクロデキストリン対式(I)の化合物のモル比が少なくとも約0.1:1である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
式(I)の化合物の濃度が約2mg/ml〜約100mg/mlの範囲にある、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
粉末、顆粒又は凍結乾燥物の形態をとってもよい、経口崩壊剤形又は再構成用製剤の形態である、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
水性溶媒による再構成が水性液状組成物を与える、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物を含む医薬。
【請求項13】
CNS障害、又は低酸素、低血糖、肝性脳症、慢性神経変性疾患、認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、AIDS神経変性、AIDS関連認知症、オリーブ橋小脳萎縮症、トゥーレット症候群、運動ニューロン疾患、ミトコンドリア機能障害、コルサコフ症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性痛、急性痛、薬物耐性、依存及び嗜癖(例えばオピオイド、コカイン、ベンゾジアゼピン類、及びアルコール)、神経障害性痛、てんかん、うつ病、不安、統合失調症、痙縮、眼振、眼疾患、耳鳴り、肝性脳症、多発性硬化症、脳卒中、ジスキネジア、マラリア、及びC型肝炎ウイルスやボルナウイルスなどのウイルス感染、免疫調節薬を必要とする状態、嘔吐、薬物及びアルコール乱用障害、認知障害、小脳性振戦、及び食欲障害から選択される状態を処置するための医薬を製造するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
CNS障害、又は低酸素、低血糖、肝性脳症、慢性神経変性疾患、認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、AIDS神経変性、AIDS関連認知症、オリーブ橋小脳萎縮症、トゥーレット症候群、運動ニューロン疾患、ミトコンドリア機能障害、コルサコフ症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、慢性痛、急性痛、薬物耐性、依存及び嗜癖(例えばオピオイド、コカイン、ベンゾジアゼピン類、及びアルコール)、神経障害性痛、てんかん、うつ病、不安、統合失調症、痙縮、眼振、眼疾患、耳鳴り、肝性脳症、多発性硬化症、脳卒中、ジスキネジア、マラリア、及びC型肝炎ウイルスやボルナウイルスなどのウイルス感染、免疫調節薬を必要とする状態、嘔吐、薬物及びアルコール乱用障害、認知障害、小脳性振戦、及び食欲障害から選択される状態を処置するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−525513(P2011−525513A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515209(P2011−515209)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004599
【国際公開番号】WO2009/156160
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(397045220)メルツ・ファルマ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクティーン (31)
【Fターム(参考)】