説明

アミノシロキサンの水中油型エマルションおよびその使用

【課題】アミノシロキサンの水中油型エマルションおよびその使用を提供する。
【解決手段】水中油型エマルションは、
(i)少なくとも0.1mequiv/ポリジメチルシロキサン(P)gのアミン価を有し、一般式I
SiO(4−a−b/2) (I)
[式中、R、R、R、R、R、R、aおよびbは請求項1に記載したものを表す]の単位から構成される、アミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサン(P)100質量部、
(ii)プロトン化剤、
(iii)水および
(iv)最大で5質量部の乳化剤
を含有する。
【効果】支持体の疎水化処理のための、従来の欠点を有していない水中油型エマルションが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサンの水中油型エマルションおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ官能性のポリジメチルシロキサンをベースとし、たとえば撥水性の手入れ剤として使用される溶液型の組成物は公知である。
【0003】
US6596060、Atofina、P.Michaudは、実質的に、アミン化された基を少なくとも1つ有するオルガノポリシロキサン少なくとも1種と、イソプロパノール85〜99質量%とからなる撥水性組成物を記載している。(アミノ官能性の)オルガノポリシロキサンをベースとする溶液型組成物は一般に、種々の支持体上での極めて良好な疎水化作用により優れているが、しかし、揮発性有機化合物(VOC)に関して環境に対する意識が高まっている時代には、および健康上の観点からもはや時代に即していない。従って水性組成物が将来的には全般的にますます溶液型の系と入れ替わる。
【0004】
アミノ官能性オルガノポリシロキサンを含有する水性組成物は公知である。このような組成物はたとえば天然および/または合成のテキスタイル繊維を疎水化処理するために、建築材料を疎水化処理するために、手入れ剤の成分として、および化粧用調製物の成分として使用される。アミノ官能性オルガノポリシロキサンを含有する従来の水性組成物は、いわゆる水中油型もしくは油中水型エマルションの形で当業者に公知である。これらのエマルションはいわゆるマクロエマルションまたはミクロエマルションの形で存在していてもよい。これらのエマルションは通常、従来の非イオノゲン、アニオン性、カチオン性もしくは両性の乳化剤またはシリコーン−ポリエーテル−コポリマー乳化剤により安定化されている。DE4328917、Wacker−Chemie社、M.Geckは、アミノ官能性オルガノポリシロキサンをベースとするミクロエマルションの製造方法を記載しており、この場合、成分であるオルガノポリシロキサン、従来の乳化剤、水、場合により補助界面活性剤(Cotensid)および場合により酸を任意の順序で添加し、かつ混合している。
【0005】
しかし非イオン性、アニオン性、カチオン性もしくは両性の乳化剤が、アミノ官能性オルガノポリシロキサンを含有するこの水性組成物中に存在することは、適用におけるこのようなエマルションの疎水化特性を著しく低下させ、それも時により劇的に低下させる。
【0006】
アミノ官能性オルガノポリシロキサンを含有し、かつ上記の従来の乳化剤の使用を断念した水性組成物は公知である。
【0007】
GB1199501は、イソプロパノール、水およびヒドロキシ末端基を有する塩基性の窒素含有オルガノポリシロキサンと有機酸もしくは無機酸との反応生成物を含有する、特にガラス表面のための疎水化剤を記載している。しかしこの疎水化剤の水性希釈液は十分な作用物質安定性を有していない。
【0008】
EP1008616Aは、アミノ官能性オルガノポリシロキサンを含有するw/o型エマルションを記載している。このようなエマルションは、規定された組成を有し、かつ水により希釈することができないという欠点を有する。
【0009】
EP1031593Aは、水溶性の、アミノ官能性で、かつ実質的にアルコキシ基不含のケイ素化合物、水、場合によりアルコールおよび場合により酸の混合物からなる組成物を記載している。水溶性アミノシランの使用される水溶性(部分)縮合物に基づいて、該組成物の疎水化作用は著しく制限されている。
【0010】
EP186265AならびにEP68671Aには、(1)(A)少なくとも1つのアミノ基ならびに少なくとも1つの反応性の基−OX(その際、Xは水素原子、アルキル基またはアルコキシアルキル基を表す)を有するオルガノポリシロキサンの塩と、(B)(2)中で可溶性の、少なくとも2つの反応性の基−OXを有する有機ケイ素化合物との混合物、および(2)水溶性の溶剤、を含有する組成物を記載している。この組成物の水性希釈液は十分な作用物質安定性を有していない。
【0011】
EP242798Aは、乳化剤として、水溶性の有機酸もしくは無機酸と、他のシロキサン単位に加えて、ポリシロキサンの質量に対して塩基性窒素少なくとも0.5質量%の量で塩基性の窒素を有する一価のSiC結合した基を有するシロキサン単位を有するポリシロキサンの塩を含有する水性エマルションを記載している。公知のとおり、このようなエマルションは長期間にわたって希釈安定性ではない。
【0012】
EP556740Aは、水溶性の有機酸または無機酸と、塩基性の窒素を有する少なくとも1つのSiC結合した有機基を有するオルガノポリシロキサンとからなる塩を含有するオルガノポリシロキサン組成物を記載している。このような組成物は希釈液中で作用物質安定性であるが、しかしその疎水化作用において十分ではない。
【0013】
US2004/0029981Aには乳化剤不含のアミノ官能性シリコーン油のエマルションによる繊維の処理が記載されている。
【特許文献1】US6596060
【特許文献2】DE4328917
【特許文献3】GB1199501
【特許文献4】EP1008616A
【特許文献5】EP1031593A
【特許文献6】EP186265A
【特許文献7】EP242798A
【特許文献8】EP556740A
【特許文献9】US2004/0029981
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、上記の欠点を有していない水性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の対象は、
(i)少なくとも0.1mequiv/ポリジメチルシロキサン(P)gのアミン価を有し、一般式I
SiO(4−a−b/2) (I)
[式中、
は、置換されていないか、またはハロゲンにより置換されており、1〜40の炭素原子を有するアルキル基、基−ORまたは−OHであり、
Rは、置換されていないか、またはハロゲンにより置換されており、1〜40の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、一般式II
−R−NR (II)
のアミノアルキル基であり、
は、1〜40の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、
は、1〜40の炭素原子を有する一価の炭化水素基であるか、またはHであり、
は、一般式III
−(R−NR (III)
の基であり、
は、一般式IV
−(CR−) (IV)
の二価の基であり、
xは、0の値であるか、または1〜40の値であり、
yは、1または2の値であり、
aは、0、1、2または3の値であり、
bは、0、1、2または3の値であり、かつ
a+bは、平均して1.5〜2.5の値であり、
その際、基Rの最大で9モル%はOHまたはORである]の単位から構成される、アミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサン(P)100質量部、
(ii)プロトン化剤、
(iii)水および
(iv)最大で5質量部の乳化剤
を含有する、水中油型エマルションである。
【0016】
該エマルションはその他の安定化成分、たとえば乳化剤またはシリコーン−ポリエーテル−コポリマー乳化剤をさらに添加しなくても安定しており、かつ希釈安定性である。該エマルションは有利には最大で3質量部、特に有利には最大で1質量部、特に最大で0.1質量部の乳化剤を含有する。
【0017】
アルキル基RおよびRは線状、環式、分枝鎖状、飽和または不飽和であってよい。有利にはアルキル基RおよびRは1〜8の炭素原子を有し、特に1〜6の炭素原子を有し、特に有利にはメチル基またはエチル基である。有利なハロゲン置換基はフッ素および塩素である。特に有利な基Rはメチル基、メトキシ基、エトキシ基または−OHである。
【0018】
二価の炭化水素基Rはハロゲン置換されているか、線状、環式、分枝鎖状、芳香族、飽和または不飽和であってよい。有利には基Rは1〜6の炭素原子を有し、特に有利にはアルキレン基であり、とりわけプロピレンである。有利なハロゲン置換基はフッ素および塩素である。
【0019】
一価の炭化水素基Rはハロゲン置換されているか、線状、環式、分枝鎖状、芳香族、飽和または不飽和であってよい。有利には基Rは1〜6の炭素原子を有し、特に有利にはアルキル基である。有利なハロゲン置換基はフッ素および塩素である。特に有利な置換基Rはメチル、エチル、シクロヘキシルおよびHである。
【0020】
有利にはbは0または1の値である。有利にはa+bは1.9〜2.2の平均値である。
【0021】
有利にはxは0の値を有するか、または1〜18の値、特に有利には1〜6の値を有する。
【0022】
特に有利な基Rは−CHN(R、−(CHN(R、−(CHN(R)(CHN(Rである。
【0023】
有利にはポリジメチルシロキサン(P)は少なくとも3、特に少なくとも10の一般式Iの単位から構成されている。
【0024】
a対bの比は、ポリジメチルシロキサン(P)が0.1mequiv/gポリシロキサン(P)のアミン価、有利には少なくとも0.6mequiv/gポリシロキサン(P)のアミン価を有する。ポリジメチルシロキサン(P)のアミン価は有利には最大で7mequiv/gポリシロキサン(P)である。
【0025】
ポリジメチルシロキサン(P)の粘度は25℃で有利には1〜100000mPas、特に10〜10000mPasである。
【0026】
有利にはエマルションは、0.10MPaで最高で260℃の沸点または沸点範囲を有するモノアルコールまたはポリアルコールおよびこれらのエーテルから選択される助剤を含有する。
【0027】
プロトン化剤は有利には1プロトンもしくは多プロトンの、水溶性もしくは水不溶性の、有機もしくは無機の酸、特に有利にはギ酸、酢酸、硫酸、塩酸またはクエン酸である。プロトン化剤は基Rの塩基性窒素原子1モルあたり、有利にはプロトン0.05〜2モルの量で添加する。
【0028】
水は完全脱塩水または塩を含有する水であり、有利には完全脱塩水である。
【0029】
有利な実施態様ではエマルションはMQケイ素樹脂を含有する。有利にはMQケイ素樹脂は少なくとも80モル%、有利には少なくとも95モル%の一般式VおよびVI:
SiO1/2 (V)
SiO4/2 (VI)
[式中、
は、場合によりハロゲンにより置換された、1〜40の炭素原子を有する炭化水素基、基H、−ORまたは−OHを表す]の単位を有し、一般式VおよびVIの単位の比は0.5〜2.0、有利には0.5〜1.5であり、かつ最大で3質量%、有利には最大で2.5質量%の基Rは−ORおよび−OHである。
【0030】
MQケイ素樹脂の残りの単位は有利には一般式VIIおよびVIII:
SiO2/2 (VII)
SiO3/2 (VIII)
の単位である。
【0031】
一価の炭化水素基Rはハロゲン置換されているか、線状、環式、分枝鎖状、芳香族、飽和または不飽和であってよい。有利には基Rは1〜6の炭素原子を有し、特に有利にはアルキル基およびフェニル基である。有利なハロゲン置換基はフッ素および塩素である。特に有利な置換基Rはメチル、エチル、フェニルおよびHである。有利にはエマルションは1〜200質量部、特に有利には5〜100質量部のMQケイ素樹脂を含有する。
【0032】
エマルションは、個々の成分を任意の順序で添加し、かつ混合することにより容易に製造することができる。
【0033】
本発明のもう1つの対象は、多孔質であるか、または多孔質でない、吸収性の、または吸収性でない支持体の、有利にはセルロース、紙、天然および/または合成のテキスタイル繊維、鉱物質の建築材料、石、タイル、大理石、金属、塗装された金属、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、プラスチック、塗装されたプラスチック、木材、積層体、コルク、ゴム、人工皮革および皮革の処理のため、および有利には疎水化処理のための該エマルションの使用である。特に有利であるのは、紙のサイジングおよび石膏ボードの被覆のため、および手入れ剤としてのエマルションの使用である。
【0034】
前記の式の全ての前記の記号はそのつど相互に無関係にその意味を有する。全ての式中でケイ素原子は四価である。
【0035】
以下の実施例において、そのつどその他の指示がなければ、全ての量およびパーセントの記載は質量に対するものであり、全ての圧力は0.10MPa(絶対)であり、かつ全ての温度は20℃である。
【実施例】
【0036】
パートA
1.本発明によるエマルションの利点を証明するために、該エマルションを乳化剤を含有する水性組成物および溶液型の組成物と比較して、その疎水化作用に関して、そのつど同一の作用物質に基づいて試験した。
【0037】
多孔質の支持体に関して、木材(ブナおよびトウヒ)および未処理の皮革上で含浸作用を試験した。
【0038】
多孔質でない支持体に関して、自動車塗装上で撥水性を接触角により試験した。
【0039】
試験例で使用した、官能基−(CHNH(CHNHを有するアミノ官能性オルガノポリシロキサンは、20℃で約1000mm/sの粘度および0.6mequiv/gオルガノポリシロキサンのアミン価を有する。このオルガノポリシロキサンを以下では単にアミン油とよぶ。
【0040】
種々の組成物の製造:
本発明による水性組成物A:
アミン油17gを室温で撹拌しながら水6g、エチレングリコールモノブチルエーテル6gおよび酢酸0.16gに添加し、引き続きさらに水70.84gを撹拌混合した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用試験のために該エマルションを完全脱塩水により作用物質含有率5%に希釈した。
【0041】
比較例1:乳化剤を含有する水性組成物B:
アミン油17gを室温で撹拌下に水6g、乳化剤(約6のEOを有する脂肪アルコールエトキシレート)6gおよび酢酸0.16gに添加し、引き続きさらに水70.84gを撹拌導入した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用試験のために、該エマルションを完全脱塩水により作用物質含有率5%に希釈した。
【0042】
比較例2:ベンジン組成物C:
アミン油5gを室温で撹拌下にベンジン100/140゜ 95g中に溶解した。清澄な溶液が得られた。
【0043】
本発明による水性組成物A1:
アミン油13.6gおよびMQケイ素樹脂3.4gからなる混合物17gを室温で撹拌下に水7g、エチレングリコールモノブチルエーテル7gおよび酢酸0.13gに添加し、引き続きさらに水68.87gを撹拌導入した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用試験のために該エマルションを完全脱塩水により作用物質含有率5%に希釈した。
【0044】
比較例3:乳化剤を含有する水性の組成物B1:
アミン油13.6gおよびMQケイ素樹脂3.4gからなる混合物17gを室温で撹拌下に水7g、乳化剤(約5のEOを有する脂肪アルコールエトキシレート)7gおよび酢酸0.13gに添加し、引き続きさらに水68.87gを撹拌導入した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用試験のために該エマルションを完全脱塩水により作用物質含有率5%に希釈した。
【0045】
1.1.多孔質表面上での試験
1.1.1.木材(ブナ、トウヒ)上での適用
試験のために一辺の長さが30mmのサイコロ状の木材を使用した。これらを前面の5mmの深さまで相応する調製物中へ1分間浸漬した。室温(22℃)で14日間の乾燥時間後に試験を実施した。撥水作用を2つの異なった方法、つまり第一に、処理面(ブナおよびトウヒ)上の水滴の接触角を測定することにより、および第二に水中への浸漬の際の質量増加(ブナ)を秤量することにより測定した。
【0046】
1.1.1.1.水滴の接触角の測定
処理したサイコロ状の木材の前面に0.04mlの大きさの水滴を置き、かつ水滴の接触角[゜]を測定した。3回の測定からそのつど平均値を決定した。その結果は第1表を参照されたい:
【0047】
【表1】

【0048】
1.1.1.2.質量の増加の測定
室温(22℃)で14日間の乾燥時間後、ブナのサイコロを秤量し(g1)、引き続き処理面を3mmの深さで水中に30分間浸漬し、かつ質量(g2)を改めて測定した。質量の増加がわずかであるほど、木材は良好に含浸されている。その結果は第2表および第3表を参照のこと:
質量増加の計算[%]:
Δg=(g2−g1)/g2×100
【0049】
【表2】

【0050】
意外なことに両方の試験法により、本発明による組成物Aは従来の組成物Bよりも明らかに優れており、かつ含浸作用に関してはベンジン性組成物Cに匹敵することが判明した。
【0051】
【表3】

【0052】
本発明による組成物A1は疎水化作用に関して従来の組成物B1よりも明らかに優れている。
【0053】
1.1.2.皮革上での適用
皮革上での含浸作用を試験するために、皮革繊維原料を使用した。というのも、この材料は天然の皮革よりも均一な表面を有しているからである。
【0054】
試験液(5%)をピペットにより、斜め(約45゜)に設置した試験体上に表面が濡れるまで流した。引き続き該試験体を室温で一夜乾燥させた。平坦に設置した試験体上にそのつど0.04mlの大きさの水滴を設置し、かつ水滴の蒸発が測定に影響を与えないようガラスで覆った。滴が完全に吸収されるまでの時間を測定した。そのつど2重に値を測定した。
【0055】
疎水化処理された皮革に関する結果として、滴の浸透時間を記載した。第4表および第5表を参照されたい。
【0056】
【表4】

【0057】
本発明による組成物Aは従来の組成物Bよりも明らかに優れており、ベンジン性溶液(組成物C)のみが若干高い水浸透時間を有していた。
【0058】
【表5】

【0059】
本発明による組成物A1は、水浸透時間に関して従来の組成物B1よりも明らかに優れていた。
【0060】
1.1.3.コルク上での適用
試験液(5%)をピペットにより、斜め(約45゜)に設置した試験体上に表面が濡れるまで流した。引き続き該試験体を室温で一夜乾燥させた。処理面上で0.04mlの大きさの水滴の接触角を測定することにより撥水作用を測定した。3回の測定からそのつど平均値を決定した。第6表を参照されたい。
【0061】
【表6】

【0062】
本発明による組成物Aは撥水作用においてベンジン性調製物Cよりもさらに優れていたが、これに対して乳化剤を含有する調製物Bは10分後には実質的に未処理のコルクのレベルにまで達した。
【0063】
1.2.多孔質でない表面上での試験
接触角の測定による疎水性の測定:
接触角の測定を次のように実施した:試験すべき表面上に高さ15mmから0.01mlの体積を有する水滴を施与し、かつゴニオメーター(Rame−Hart Inc.社のタイプ100−10、New Jersey、USA)を用いて接触角を測定した。測定を4回繰り返し、かつ5回の測定から平均値を出した。本発明による組成物により処理されていない支持体上での接触角の測定を以下ではブラインド値(Blindwert)とよぶ。
【0064】
組成物A、BおよびCをクロスを用いて66゜のブラインド値で塗装した板上に施与し、かつ摩擦した。室温で15分間放置した後、接触角(R1)を測定した。引き続き、処理した支持体を同様に室温で4回、そのつど支持体100cmあたり、約10℃の温度の水道水10lで、20cmの距離から散水した。そのつど15分の散水後に、あらためて接触角(R2、R3、R4、R5)を測定した。接触角の測定の結果は第7表および第8表に記載されている:
【0065】
【表7】

【0066】
明らかに組成物Bの場合、実質的により劣った初期接触角を認識することができ、これは調製物中に含有されている乳化剤に起因する。これに対して本発明による組成物Aおよびベンジン性組成物Cは同一の高いレベルで変動する。
【0067】
【表8】

【0068】
本発明による組成物A1は水に対する接触角に関して、乳化剤を含有する組成物B1よりもわずかに優れている。
【0069】
パートB
本発明による組成物を紙のサイジングおよび石膏ボードの被覆において使用するための例:
請求の範囲に記載されてる、紙のサイジングおよび石膏ボードの疎水化のための水性組成物の利点を証明するために、これらを乳化剤を含有する水性組成物と比較してそのつどサイズ剤または疎水化剤としてのその作用に関して同一の作用に基づいて試験した。
【0070】
溶液型(溶剤ベース)の組成物は比較のために使用しなかった。というのも、上記の水性の適用のためのその使用は問題にならないからである。
【0071】
使用されるアミノ官能性のオルガノポリシロキサン:
アミン油1:
25℃で約1000mm/sの粘度、官能基−(CHNH(CHNHおよび0.6mequiv./オルガノポリシロキサンgのアミン価を有する。さらにオルガノポリシロキサンは末端基として反応性OMe/OH基を約0.75モル%有する。
【0072】
アミン油2:
25℃で約1000mm/sの粘度、官能基−(CHNH(CHNHおよび0.6mequiv./オルガノポリシロキサンgのアミン価を有する。末端基はこの場合、MeSiO基である。
【0073】
アミン油3:
25℃で約230mm/sの粘度、官能基−(CHNH(CHNHおよび2.6mequiv./オルガノポリシロキサンgのアミン価を有する。末端基はこのアミン油の場合、同様にMeSiO基である。
【0074】
アミン油4:
US2004/0029981A1の例5に従って製造した。この方法により製造されたアミン油は25℃で約1000mm/sの粘度、官能基−(CHNH(CHNHおよび0.6mequiv./オルガノポリシロキサンgのアミン価を有する。末端基はこの場合、MeSiO基である。
【0075】
種々の組成物の製造:
本発明による水性組成物A1:
16gのアミン油1を室温で撹拌下に水6g、エチレングリコールモノブチルエーテル6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0076】
乳化剤を含有する水性の比較例B1:
16gのアミン油1を室温で撹拌下に水6g、有機乳化剤(約6のEOを有する脂肪アルコールエトキシレート)6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0077】
本発明による水性組成物A2:
アミン油1 11.1gおよびMQ樹脂4.9gからなる混合物16gを室温で撹拌下に水6g、エチレングリコールモノブチルエーテル6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0078】
乳化剤を含有する水性の比較例B2:
アミン油1 11.1gおよびMQ樹脂4.9gからなる混合物16gを室温で撹拌下に水6g、有機乳化剤(約6のEOを有する脂肪アルコールエトキシレート)6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0079】
本発明による水性組成物C1:
16gのアミン油2を室温で撹拌下に水6gおよびエチレングリコールモノブチルエーテル6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0080】
乳化剤を含有する水性の比較例D1:
16gのアミン油2を室温で撹拌下に水6g、有機乳化剤(約6のEOを有する脂肪アルコールエトキシレート)6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0081】
本発明による水性組成物C2:
アミン油2 11.1gおよびMQ樹脂4.9gからなる混合物16gを室温で撹拌下に水6g、エチレングリコールモノブチルエーテル6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0082】
乳化剤を含有する水性の比較例D2:
アミン油2 11.1gおよびMQ樹脂4.9gからなる混合物16gを室温で撹拌下に水6g、有機乳化剤(約6のEOを有する脂肪アルコールエトキシレート)6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0083】
本発明による水性組成物E1:
16gのアミン油3を室温で撹拌下に水6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0084】
乳化剤を含有する、水性の比較例F1:
16gのアミン油3を室温で撹拌下に水6g、有機乳化剤(約6のEOを有する脂肪アルコールエトキシレート)6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0085】
本発明による水性組成物E2:
アミン油3 11.1gおよびMQ樹脂4.9gからなる混合物16gを室温で撹拌下に水6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0086】
乳化剤を含有する、水性の比較例F2:
アミン油3 11.1gおよびMQ樹脂4.9gからなる混合物16gを室温で撹拌下に水6g、有機乳化剤(約6のEOを有する脂肪アルコールエトキシレート)6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0087】
水性の比較例G1:
16gのアミン油4を室温で撹拌下に水6gおよびエチレングリコールモノブチルエーテル6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0088】
水性の比較例G2:
アミン油4 11.1gおよびMQ樹脂4.9gからなる混合物16gを室温で撹拌下に水6g、エチレングリコールモノブチルエーテル6gおよび酢酸0.17gに添加し、引き続きさらに合計質量100gになるまで水を添加した。乳状の不透明なエマルションが得られた。適用に応じて完全脱塩水により作用物質含有率4%または0.2%に希釈した。
【0089】
紙上でのサイジング作用の試験
サイジング処理がされてない紙の処理:
実験室中で貯蔵した、サイジング処理されていない試験紙を2回、そのつど5秒(前面および裏面をそれぞれ5秒)作用物質含有率0.2%に希釈したサイジング浴上に置き、これにより試験紙は完全にサイジング浴で浸漬されていた。その後、サイジング浴中に浸漬した紙を2つのゴムローラの間を移動させて過剰のサイジング溶液を絞り出した。その直後に絞って湿った紙を再度秤量し、かつ質量差(Differenzmasse)からサイジング浴または作用物質の塗布量を計算した。換気乾燥室中150℃で3分間乾燥させ、かつ紙の光沢のために商品名Rowenta (R)のアイロンによりレベル2.5で紙にアイロン掛けした。
【0090】
サイジングの試験:
アイロン後に紙を室温で2日間貯蔵した後、サイジングの試験をした。このためにサイジング処理した紙から、8×8cmの紙片を切り出し、その端部を高く折り曲げ、かつ引き続きインキ液(高濃度の緑色の筆記具用インキ)の上においた。次いでストップウォッチで試験紙の表面の5%までが、浸透した試験インキにより覆われるまでの時間を測定した。時間が長いほど、紙のサイジングは良好である。以下の表の値に関して、紙の質量に対して作用物質(アミン油プラス場合によりMQ樹脂)0.22質量%を記載した。
【0091】
石膏ボードの疎水化の試験
石膏ボードの処理:
石膏ボードをドクターバーにより作用物質含有率4%に希釈したエマルションにより均一に被覆した。塗布量はドクターバーの層厚さにより制御することができる。被覆後にボードのストリップを再度秤量し、かつ質量差から処理エマルションもしくは作用物質の量を測定した。引き続き換気乾燥室中120℃で15分間乾燥を行った。
【0092】
疎水化の試験:
室温で2日間貯蔵後、テンプレートを用いて12×12cmの試験ストリップを切り出し、かつ吸水量をコッブ(DIN20535)により測定した。コッブによる吸水量の測定は製紙工業における標準法である。コッブ180は、水を180秒作用させた後にボードが吸収した、ボードmあたりの水の質量をgで表示するものである。コッブ値が低いほど、所望の疎水化は良好である(低減された吸水量)。以下の表に記載されている値に関して常に作用物質1g/石膏ボードm(作用物質=アミン油プラス場合によりMQ樹脂)を記載した。結果は第9表を参照のこと。
【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも0.1mequiv/ポリジメチルシロキサン(P)gのアミン価を有し、一般式I
SiO(4−a−b/2) (I)
[式中、
は、置換されていないか、またはハロゲンにより置換されており、1〜40の炭素原子を有するアルキル基、基−ORまたは−OHであり、
Rは、置換されていないか、またはハロゲンにより置換されており、1〜40の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、一般式II
−R−NR (II)
のアミノアルキル基であり、
は、1〜40の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、
は、1〜40の炭素原子を有する一価の炭化水素基であるか、またはHであり、
は、一般式III
−(R−NR (III)
の基であり、
は、一般式IV
−(CR−) (IV)
の二価の基であり、
xは、0の値であるか、または1〜40の値であり、
yは、1または2の値であり、
aは、0、1、2または3の値であり、
bは、0、1、2または3の値であり、かつ
a+bは、平均して1.5〜2.5の値であり、
その際、基Rの最大で9モル%はOHまたはORである]の単位から構成される、アミノアルキル基を有するポリジメチルシロキサン(P)100質量部、
(ii)プロトン化剤、
(iii)水および
(iv)最大で5質量部の乳化剤
を含有する、水中油型エマルション。
【請求項2】
が、1〜6の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1記載のエマルション。
【請求項3】
基Rが、−CHN(R、−(CHN(Rおよび−(CHN(R)(CHN(Rから選択される、請求項1または2記載のエマルション。
【請求項4】
0.10MPaで最高260℃の沸点または沸点範囲を有するモノアルコールまたはポリアルコールおよびこれらのエーテルから選択される助剤を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のエマルション。
【請求項5】
プロトン化剤がギ酸、酢酸、硫酸、塩酸およびクエン酸から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載のエマルション。
【請求項6】
MQケイ素樹脂を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のエマルション。
【請求項7】
MQケイ素樹脂を1〜200質量部含有する、請求項6記載のエマルション。
【請求項8】
多孔質の、または多孔質でない、吸収性の、または吸収性でない支持体を疎水化処理するための請求項1から7までのいずれか1項記載のエマルションの使用。
【請求項9】
紙のサイジング、石膏ボードの被覆および手入れ剤としての請求項8記載の使用。

【公開番号】特開2006−57095(P2006−57095A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239193(P2005−239193)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(390008969)ワツカー−ケミー ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker−Chemie GmbH
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, BRD
【Fターム(参考)】