説明

アミノベンズアルデヒド化合物及びその製造方法並びにアミノ安息香酸化合物の製造方法

【課題】2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)安息香酸の工業的に有利な製造方法を提供すること。
【解決手段】一般式(4)で表されるベンゾイルアミノ安息香酸は、医薬品の合成中間体として有用な化合物であるが、対応するベンゾイルアミノベンズアルデヒドを酸化することにより製造することが出来る。


[式中、R1は、ハロゲン原子、低級アルキル基等を示す。R2は、水素原子、低級アルキル基等を示す。R3は、ハロゲン原子、低級アルキル基等を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノベンズアルデヒド化合物及びその製造方法並びにアミノ安息香酸化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(A)
【0003】
【化1】

【0004】
で表されるベンゾアゼピン化合物(トルバプタン)は、バソプレシン拮抗作用を有し、低ナトリウム血症、心不全等の治療薬として広く知られている。
【0005】
トルバプタンは、下記反応式−1に示すように、式(B)で表される2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)安息香酸と式(C)で表される7−クロロ−5−ヒドロキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンゾアベピンとを反応させることにより製造され得る(特許文献1)。
【0006】
【化2】

【0007】
このため、2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)安息香酸は、トルバプタンの製造原料として重要な化合物である。
【0008】
特許文献2には、2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)安息香酸は、例えば、下記反応式−2に示すように、メタトルイジンから製造されることが開示されている。
【0009】
【化3】

【0010】
反応式−2に示す方法では、メタトルイジンから二通りの方法で2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)安息香酸を製造できるが、いずれの方法によっても反応途中でフリーデル−クラフト反応を経由することが必須である。このフリーデル−クラフト反応工程では、大量にアルミニウム化合物が生成する。しかも、反応式−2に示す方法では、メタトルイジンから多くの工程を経なければならず、反応操作が煩雑となる。
【特許文献1】特開平4−154765号公報
【特許文献2】特開2007−91738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)安息香酸の工業的に有利な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けて来た。その結果、文献未記載の新規化合物を合成することに成功し、該化合物から2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)安息香酸を工業的に有利に製造できることを見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0013】
本発明は、下記項1〜7に係るベンズアルデヒド、その製造方法及びアミノ安息香酸の製造方法を提供する。
項1.一般式(1)
【0014】
【化4】

【0015】
[式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フェニル低級アルコキシ基、低級アルカノイルオキシ基、低級アルキルチオ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基を有することのあるアミノ基、カルバモイル置換低級アルコキシ基、置換基として低級アルキル基を有することのあるアミノ置換低級アルコキシ基、フェニル環上に置換基としてハロゲン原子を有することのあるベンゾイル基、フェニル基、シクロアルキル基、低級アルカノイルオキシ置換低級アルコキシ基、カルボキシ置換低級アルコキシ基、ハロゲン置換低級アルコキシ基、水酸基置換低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル置換低級アルコキシ基、フタルイミド置換低級アルコキシ基又は置換基として低級アルキル基を有するアミノカルボニル低級アルコキシ基を示す。
【0016】
2は、水素原子、低級アルキル基、低級アルカノイル基又はフェニル環上に置換基としてハロゲン原子を有することのあるベンゾイル基を示す。
【0017】
3は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フェニル低級アルコキシ基、低級アルカノイルオキシ基、低級アルキルチオ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基を有することのあるアミノ基、カルバモイル置換低級アルコキシ基、置換基として低級アルキル基を有することのあるアミノ置換低級アルコキシ基、フェニル環上に置換基としてハロゲン原子を有することのあるベンゾイル基、フェニル基、シクロアルキル基、低級アルカノイルオキシ置換低級アルコキシ基、カルボキシ置換低級アルコキシ基、ハロゲン置換低級アルコキシ基、水酸基置換低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル置換低級アルコキシ基、フタルイミド置換低級アルコキシ基又は置換基として低級アルキル基を有するアミノカルボニル低級アルコキシ基を示す。]
で表されるベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩。
項2.一般式(1)において、R1がハロゲン原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、R2が水素原子または低級アルキル基であり、R3がハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基である、項1に記載のベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩。
項3.一般式(1)で表されるベンゾイルアミノベンズアルデヒド化合物が2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンズアルデヒドである、項2に記載のベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩。
項4.一般式(1)
【0018】
【化5】

【0019】
[式中、R1、R2及びR3は、前記に同じ。]
で表されるベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩の製造方法であって、一般式(2)
【0020】
【化6】

【0021】
[式中、R1及びR2は、前記に同じ。]
で表される化合物又はその塩と一般式(3)
【0022】
【化7】

【0023】
[式中、R3は、前記に同じ。]
で表される化合物もしくはそのカルボキシル基における反応性誘導体又はそれらの塩を反応させる、
ベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩の製造方法。
項5.一般式(4)
【0024】
【化8】

【0025】
[式中、R1、R2及びR3は、前記に同じ。]
で表されるベンゾイルアミノ安息香酸又はその塩の製造方法であって、
一般式(1)
【0026】
【化9】

【0027】
[式中、R1、R2及びR3は、前記に同じ。]
で表されるベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩を酸化する、
ベンゾイルアミノ安息香酸又はその塩の製造方法。
項6.一般式(5)
【0028】
【化10】

【0029】
[式中、R1及びR2は、前記に同じ。]
で表されるアミノ安息香酸又はその塩の製造方法であって、
一般式(2)
【0030】
【化11】

【0031】
[式中、R1及びR2は、前記に同じ。]
で表されるアミノベンズアルデヒド又はその塩を酸化する、
アミノ安息香酸又はその塩の製造方法。
項7.一般式(2)におけるR1がメチル基、R2が水素原子又はアセチル基である項6に記載のアミノ安息香酸又はその塩の製造方法。
【0032】
ベンゾイルアミノベンズアルデヒド化合物
本発明のベンゾイルアミノベンズアルデヒド化合物及びその塩は、文献未記載の新規化合物であって、上記一般式(1)で表される。
【0033】
一般式(1)において、R1がハロゲン原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、R2が水素原子または低級アルキル基であり、R3がハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基である、ベンゾイルアミノベンズアルデヒド化合物及びその塩が好ましい。特に好ましい化合物は、2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンズアルデヒド及びその塩である。
【0034】
本明細書において示される各基は、具体的には以下の通りである。
【0035】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0036】
低級アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基を挙げることができる。
【0037】
低級アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基が挙げられる。
【0038】
フェニル低級アルコキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ、2−フェニルエトキシ、1−フェニルエトキシ、3−フェニルプロポキシ、4−フェニルブトキシ、5−フェニルペンチルオキシ、6−フェニルヘキシルオキシ、1,1−ジメチル−2−フェニルエトキシ、2−メチル−3−フェニルプロポキシ基等のアルコキシ部分の炭素数が1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基であるフェニルアルコキシ基が挙げられる。
【0039】
低級アルカノイルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、イソブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、ヘキサノイルオキシ基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状のアルカノイルオキシ基が挙げられる。
【0040】
低級アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、n−ペンチルチオ、n−ヘキシルチオ基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキルチオ基が挙げられる。
【0041】
低級アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0042】
低級アルキル基を有することのあるアミノ基としては、例えば、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、n−ペンチルアミノ、n−ヘキシルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、ジ−n−ブチルアミノ、ジ−n−ペンチルアミノ、ジ−n−ヘキシルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ、N−エチル−N−(n−プロピル)アミノ、N−メチル−N−(n−ブチル)アミノ、N−メチル−N−(n−ヘキシル)アミノ基等の置換基として炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基を1〜2個有することのあるアミノ基が挙げられる。
【0043】
カルバモイル置換低級アルコキシ基としては、例えば、カルバモイルメトキシ、2−カルバモイルエトキシ、1−カルバモイルエトキシ、3−カルバモイルプロポキシ、4−カルバモイルブトキシ、5−カルバモイルペンチルオキシ、6−カルバモイルヘキシルオキシ、1,1−ジメチル−2−カルバモイルエトキシ、2−メチル−3−カルバモイルプロポキシ基等のアルコキシ部分が炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基であるカルバモイルアルコキシ基が挙げられる。
【0044】
置換基として低級アルキル基を有することのあるアミノ置換低級アルコキシ基としては、例えば、アミノメトキシ、2−アミノエトキシ、1−アミノエトキシ、3−アミノプロポキシ、4−アミノブトキシ、5−アミノペンチルオキシ、6−アミノヘキシルオキシ、1,1−ジメチル−2−アミノエトキシ、2−メチル−3−アミノプロポキシ、メチルアミノメトキシ、1−エチルアミノエトキシ、2−(n−プロピルアミノ)エトキシ、3−イソプロピアミノプロポキシ、4−(n−ブチルアミノ)ブトキシ、5−(n−ペンチルアミノ)ペンチルオキシ、6−(n−ヘキシルアミノ)ヘキシルオキシ、ジメチルアミノメトキシ、[N−メチル−N−(n−プロピル)アミノ]メトキシ、2−[N−メチル−N−(n−ヘキシル)アミノ]エトキシ等の置換基として炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基を1〜2個有することのあるアミノ基が置換した炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基を挙げることができる。
【0045】
フェニル環上に置換基としてハロゲン原子を有することのあるベンゾイル基としては、例えば、ベンゾイル、2−クロロベンゾイル、3−クロロベンゾイル、4−クロロベンゾイル、2−フルオロベンゾイル、3−フルオロベンゾイル、4−フルオロベンゾイル、2−ブロモベンゾイル、3−ブロモベンゾイル、4−ブロモベンゾイル、2−ヨードベンゾイル、3−ヨードベンゾイル、4−ヨードベンゾイル、3,4−ジクロロベンゾイル、3,5−ジクロロベンゾイル、2,6−ジクロロベンゾイル、2,3−ジクロロベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイル、3,4−ジフルオロベンゾイル、3,5−ジブロモベンゾイル、3,4,5−トリクロロベンゾイル基等のフェニル環上に置換基としてハロゲン原子を1〜3個有することのあるベンゾイル基が挙げられる。
【0046】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基が挙げられる。
【0047】
低級アルカノイルオキシ置換低級アルコキシ基としては、例えば、アセチルオキシメトキシ、2−プロピオニルオキシエトキシ、1−ブチリルオキシエトキシ、3−アセチルオキシプロポキシ、4−アセチルオキシブトキシ、4−イソブチリルオキシブトキシ、5−ペンタノイルオキシペンチルオキシ、6−アセチルオキシヘキシルオキシ、6−tert−ブチルカルボニルオキシヘキシルオキシ、1,1−ジメチル−2−ヘキサノイルオキシエトキシ、2−メチル−3−アセチルオキシプロポキシ基等の炭素数2〜6の直鎖又は分枝鎖状アルカノイルオキシ基が置換した炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基が挙げられる。
【0048】
カルボキシ置換低級アルコキシ基としては、例えば、カルボキシメトキシ、2−カルボキシエトキシ、1−カルボキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシ、4−カルボキシブトキシ、5−カルボキシペンチルオキシ、6−カルボキシヘキシルオキシ、1,1−ジメチル−2−カルボキシエトキシ、2−メチル−3−カルボキシプロポキシ基等のアルコキシ部分が炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基であるカルボキシアルコキシ基が挙げられる。
【0049】
ハロゲン置換低級アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ、トリクロロメトキシ、クロロメトキシ、ブロモメトキシ、フルオロメトキシ、ヨードメトキシ、ジフルオロメトキシ、ジブロモメトキシ、2−クロロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、2,2,2−トリクロロエトキシ、3−クロロプロポキシ、2,3−ジクロロプロポキシ、4,4,4−トリクロロブトキシ、4−フルオロブトキシ、5−クロロペンチルオキシ、3−クロロ−2−メチルプロポキシ、6−ブロモヘキシルオキシ、5,6−ジクロロヘキシルオキシ基等のハロゲン原子を1〜3個有する炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基が挙げられる。
【0050】
水酸基置換低級アルコキシ基としては、例えば、ヒドロキシメトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、1−ヒドロキシエトキシ、3−ヒドロキシプロポキシ、2,3−ジヒドロキシプロポキシ、4−ヒドロキシブトキシ、3,4−ジヒドロキシブトキシ、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエトキシ、5−ヒドロキシペンチルオキシ、6−ヒドロキシヘキシルオキシ、2−メチル−3−ヒドロキシプロポキシ、2,3,4−トリヒドロキシブトキシ基等の水酸基を1〜3個有する炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基が挙げられる。
【0051】
低級アルコキシカルボニル置換低級アルコキシ基としては、例えば、メトキシカルボニルメトキシ、3−メトキシカルボニルプロポキシ、エトキシカルボニルメトキシ、3−エトキシカルボニルプロポキシ、4−エトキシカルボニルブトキシ、5−イソプロポキシカルボニルペンチルオキシ、6−プロポキシカルボニルヘキシルオキシ、1,1−ジメチル−2−ブトキシカルボニルエトキシ、2−メチル−3−tert−ブトキシカルボニルプロポキシ、2−ペンチルオキシカルボニルエトキシ、ヘキシルオキシカルボニルメトキシ基等の2つのアルコキシ部分がそれぞれ炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基であるアルコキシカルボニルアルコキシ基を挙げることができる。
【0052】
フタルイミド置換低級アルコキシ基としては、例えば、フタルイミドメトキシ、2−フタルイミドエトキシ、1−フタルイミドエトキシ、3−フタルイミドプロポキシ、4−フタルイミドブトキシ、5−フタルイミドペンチルオキシ、6−フタルイミドヘキシルオキシ、1,1−ジメチル−2−フタルイミドエトキシ、2−メチル−3−フタルイミドプロポキシ基等のアルコキシ部分が炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基であるフタルイミド置換アルコキシ基が挙げられる。
【0053】
置換基として低級アルキル基を有するアミノカルボニル低級アルコキシ基としては、例えば、メチルアミノカルボニルメトキシ、1−エチルアミノカルボニルエトキシ、2−(n−プロピル)アミノカルボニルエトキシ、3−イソプロピルアミノカルボニルプロポキシ、4−(n−ブチル)アミノカルボニルブトキシ、5−(n−ペンチル)アミノカルボニルペンチルオキシ、6−(n−ヘキシル)アミノカルボニルヘキシルオキシ、ジメチルアミノカルボニルメトキシ、3−ジエチルアミノカルボニルプロポキシ、ジエチルアミノカルボニルメトキシ、[N−エチル−N−(n−プロピル)アミノ]カルボニルメトキシ、2−[N−メチル−N−(n−ヘキシル)アミノ]カルボニルエトキシ基等の置換基として炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基を1〜2個有するアミノカルボニル基が置換した炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルコキシ基が挙げられる。
【0054】
低級アルカノイル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ペンタノイル、tert−ブチルカルボニル、ヘキサノイル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルカノイル基が挙げられる。
【0055】
本発明の一般式(1)で表される化合物又はその塩は、立体異性体、光学異性体及び溶媒和物(水和物、エタノレート等)を包含する。
【0056】
本発明の一般式(1)で表される化合物は、医薬的に許容される酸を作用させることにより容易に酸付加塩とすることができ、本発明はこの酸付加塩をも包含する。上記において、酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、蟻酸塩、トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩、又はアミノ酸塩(例えば、アルギニン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)等を挙げることができる。
【0057】
また、本発明の一般式(1)で表わされる化合物のうち酸性基を有する化合物は、医薬的に許容される塩基性化合物を作用させることにより容易に塩を形成させることができる。それらの塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)及びアルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩;アンモニウム塩;有機塩基塩(例えば トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N、N'−ジベンジルエチレンジアミン塩等)等を挙げることができる。該塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム等を挙げることができる。
【0058】
ベンゾイルアミノベンズアルデヒド化合物の製造方法
本発明の一般式(1)で表されるベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩は、下記反応式−3に示すように、一般式(2)で表される化合物又はその塩と一般式(3)で表される化合物もしくはそのカルボキシル基における反応性誘導体又はその塩とを反応させることにより製造される。
【0059】
【化12】

【0060】
[式中、R1、R2及びR3は、前記に同じ。]
一般式(2)で表される化合物又はその塩と一般式(3)で表される化合物もしくはそのカルボキシル基における反応性誘導体又はその塩との反応は、公知のアミド結合反応の反応条件を広く適用することができる。カルボキシル基における反応誘導体としては、例えば、酸クロライド等の酸ハライド、活性エステル、活性アミド、酸無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
この反応は、通常、適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下で行われる。ここで使用される溶媒としては、反応に影響を与えないものをいずれも使用でき、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;n−ヘキサン、n−ペプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、水、ジメチルスルホキシド、及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。塩基性化合物としては、公知の塩基性化合物をいずれも使用することができる。かかる塩基性化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、テトラメチルエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)等の有機塩基及び炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。これらの塩基性化合物は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0062】
化合物(3)は、化合物(2)1モルに対して、通常1〜5モル程度、好ましくは1〜2モル程度使用される。
【0063】
該反応は、用いられる溶媒により異なり一概には言えないが、好ましくは、−20℃〜溶媒の沸点付近の温度条件下、5分〜36時間程度で行われる。
【0064】
本反応によって得られた一般式(1)で表される化合物又はその塩は、公知の分離及び精製手段、例えば蒸留法、カラムクロマトグラフィー、溶媒抽出、濾過、再結晶、吸着剤の添加等により、反応混合物から容易に単離され、精製される。
【0065】
反応式−3において、出発原料として用いられる化合物(3)は、入手が容易な公知の化合物である。また化合物(2)は、例えば、公知の式
【0066】
【化13】

【0067】
[式中、R1は、前記に同じ。]で表される化合物(6)からZinin反応によって1段階の反応で容易に製造される。
【0068】
ベンゾイルアミノ安息香酸化合物又はその塩の製造方法
一般式(4)で表されるベンゾイルアミノ安息香酸又はその塩(2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)安息香酸を含む)は、下記反応式−4に示すように、本発明の一般式(1)で表される化合物又はその塩を酸化することにより製造される。
【0069】
【化14】

【0070】
[式中、R1、R2及びR3は、前記に同じ。]
上記反応は、通常、適当な溶媒中、酸化剤、必要に応じて酸及び/又は捕捉剤の存在下で行われる。
【0071】
ここで使用される溶媒としては、反応に影響を与えないものをいずれも使用でき、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、n−ヘキサン、n−ペプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類、水、ジメチルスルホキシド、及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
【0072】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、次亜塩素酸及びその金属塩、亜塩素酸及びその金属塩、塩素酸及びその金属塩、過塩素酸及びその金属塩、酸素、過マンガン酸カリウム、二酸化マンガン、クロム酸及びクロム酸塩(PCC、PCD等)、酸化銀、過ホウ酸ナトリウム、オキソン、超過酸化カリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。金属塩は、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩である。これらの酸化剤の中では、亜塩素酸及びその金属塩が好ましい。
【0073】
酸化剤は、化合物(1)1モルに対して、通常1〜20モル程度、好ましくは1〜5モル程度使用される。
【0074】
本反応の反応系内には、酸を添加することができる。酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、リン酸水素ナトリウム、過塩素酸等を用いることができる。
【0075】
また、本反応中に副生成物が発生する場合は、それらの捕捉剤を反応系内に添加することができ、例えば、次亜塩素酸、塩素及び二酸化塩素が発生する場合の捕捉剤としては、過酸化水素、アミレン、スルファミン酸、ジメチルスルホキシド、レゾルシノール等が挙げられる。
【0076】
上記反応は、冷却ないし室温下、好ましくは−20〜60℃程度で行われ、反応時間は一般に1〜36時間程度である。
【0077】
Journal of Organic Chemistry,1986,51,567-569には、亜塩素酸ナトリウムを酸化剤に、過酸化水素を捕捉剤に用いてアルデヒドを対応する安息香酸に酸化する方法が記載されている。しかしながら、この文献には、アミノベンズアルデヒドを無保護で直接酸化したところ、アミノベンズ安息香酸を得ることができず、タールが生成したことが開示されているに過ぎない。本発明の一般式(1)で表される化合物又はその塩を無保護で直接酸化することにより、一般式(4)で表されるベンゾイルアミノ安息香酸又はその塩が得られることは、本発明者らが初めて見い出した事項である。
【0078】
一般式(4)で表されるベンゾイルアミノ安息香酸又はその塩は、下記反応式−5に示す方法により、一般式(2)で表される化合物又はその塩から製造される。
【0079】
【化15】

【0080】
[式中、R1、R2及びR3は、前記に同じ。R4は、低級アルキル基を示す。]
反応式−5によれば、本発明の一般式(4)で表される化合物又はその塩は、一般式(2)で表される化合物又はその塩を酸化し、次いでベンゾイル化するか、又は一般式(2)をアシル化して得られる一般式(7)で表される化合物又はその塩を得、次いで該化合物を酸化し、加水分解し、ベンゾイル化することにより製造される。
【0081】
化合物(2)又は化合物(7)の酸化は、前記反応式−4における化合物(1)の酸化と同様の反応条件下で行われる。ベンゾイル化は、前記反応式−3における化合物(2)と化合物(3)との反応と同様の反応条件下で行われる。また、アシル化及び加水分解には、公知のアシル化及び加水分解の反応条件をいずれも適用できる。
【0082】
本反応によって得られた一般式(4)の化合物又はその塩は、公知の分離及び精製手段、例えば蒸留法、カラムクロマトグラフィー、溶媒抽出、濾過、再結晶、吸着剤の添加等により、反応混合物から容易に単離され、精製される。
【0083】
ベンゾアゼピン化合物又はその塩の製造方法
バソプレシン拮抗作用を有し、低ナトリウム血症、心不全等の治療薬として有用な一般式(9)で表されるベンゾアゼピン化合物は、下記反応式−6に示すように、一般式(4)で表される化合物又はその塩と一般式(8)で表されるベンゾアゼピン化合物とを反応させることにより製造される。
【0084】
【化16】

【0085】
[式中、R5はハロゲン原子、アミノ基又は低級アルコキシ基を示す、R6は、水素原子、低級アルキル基、置換基として水酸基を有することのある低級アルキル基、低級アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、水酸基、オキソ基、置換基としてハロゲン原子を有することのある低級アルカノイルオキシ基、置換基として低級アルキル基及び低級アルカノイル基なる群より選ばれた基を有することのあるアミノ低級アルキル基、低級アルカノイルオキシ置換低級アルキル基、低級アルキルスルホニルオキシ低級アルキル基又はアジド低級アルキル基を示す。R1、R2及びR3は、前記に同じ。]
上記反応式−6において、R6で示される置換基として水酸基を有することのある低級アルキル基としては、例えば、前記低級アルキル基に加えて、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシエチル、4−ヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、5−ヒドロキシペンチル、6−ヒドロキシヘキシル、2−メチル−3−ヒドロキシプロピル、2,3,4−トリヒドロキシブチル基等の置換基として水酸基を1〜3個有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基を例示できる。
【0086】
置換基としてハロゲン原子を有することのある低級アルカノイルオキシ基としては、例えば、前記低級アルカノイルオキシ基に加えて、2,2,2−トリフルオロアセチルオキシ、2,2,2−トリクロロアセチルオキシ、2−クロロアセチルオキシ、2−ブロモアセチルオキシ、2−フルオロアセチルオキシ、2−ヨードアセチルオキシ、2,2−ジフルオロアセチルオキシ、2,2−ジブロモアセチルオキシ、3,3,3−トリフルオロプロピオニルオキシ、3,3,3−トリクロロプロピオニルオキシ、3−クロロプロピオニルオキシ、2,3−ジクロロプロピオニルオキシ、4,4,4−トリクロロブチリルオキシ、4−フルオロブチリルオキシ、5−クロロペンタノイルオキシ、3−クロロ−2−メチルプロピオニルオキシ、6−ブロモヘキサノイルオキシ、5,6−ジブロモヘキサノイルオキシ基等の置換基としてハロゲン原子を1〜3個有することのある炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルカノイル基を挙げることができる。
【0087】
置換基として低級アルキル基及び低級アルカノイル基なる群より選ばれた基を有することのあるアミノ低級アルキル基としては、例えば、アミノメチル、2−アミノエチル、1−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブトキシ、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、1,1−ジメチル−2−アミノエチル、2−メチル−3−アミノプロピル、アセチルアミノメチル、1−アセチルアミノエチル、2−プロピオニルアミノエチル、3−イソプロピオニルアミノプロピル、4−ブチリルアミノブチル、5−ペンタノイルアミノペンチル、6−ヘキサノイルアミノヘキシル、ホルミルアミノメチル、メチルアミノメチル、1−エチルアミノエチル、2−プロピルアミノエチル、3−イソプロピルアミノプロピル、4−ブチルアミノブチル、5−ペンチルアミノペンチル、6−ヘキシルアミノヘキシル、ジメチルアミノメチル、(N−エチル−N−プロピルアミノ)メチル、2−(N−メチル−N−ヘキシルアミノ)エチル基等の置換基として炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基及び炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルカノイル基なる群より選ばれた基を1〜2個有することのあるアミノ基を有する炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基を例示できる。
【0088】
低級アルカノイルオキシ置換低級アルキル基としては、例えば、アセチルオキシメチル、2−プロピオニルオキシエチル、1−ブチリルオキシエチル、3−アセチルオキシプロピル、4−アセチルオキシブチル、4−イソブチリルオキシブチル、5−ペンタノイルオキシペンチル、6−アセチルオキシヘキシル、6−tert−ブチルカルボニルオキシヘキシル、1,1−ジメチル−2−ヘキサノイルオキシエチル、2−メチル−3−アセチルオキシプロピル基等の炭素数2〜6の直鎖又は分枝鎖状アルカノイルオキシ基置換炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基を例示できる。
【0089】
低級アルキルスルホニルオキシ低級アルキル基としては、例えば、メチルスルホニルオキシメチル、1−エチルスルホニルオキシエチル、2−プロピルスルホニルオキシエチル、3−イソプロピルスルホニルオキシプロピル、4−ブチルスルホニルオキシブチル、5−ペンチルスルホニルオキシペンチル、6−ヘキシルスルホニルオキシヘキシル、1,1−ジメチル−2−メチルスルホニルオキシエチル、2−メチル−3−エチルスルホニルオキシプロピル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキルスルホニルオキシ基置換炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基を例示できる。
【0090】
アジド低級アルキル基としては、例えば、アジドメチル、1−アジドエチル、2−アジドエチル、3−アジドプロピル、4−アジドブチル、5−アジドペンチル、6−アジドヘキシル、1,1−ジメチル−2−ア30 ジドエチル、2−メチル−3−アジドプロピル基等のアジド基置換炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状アルキル基を例示できる。
【0091】
一般式(9)で表されるベンゾアゼピン化合物又はその塩は、一般式(4)で表される化合物又はその塩と一般式(8)で表される化合物又はその塩とを、公知のアミド結合反応の条件、例えば特開平4−154765号公報に記載のアミド結合生成反応にて反応させることにより製造される。
【0092】
アミド結合生成反応としては、例えば、(A)一般式(4)で表される化合物又はその塩にアルキルハロカルボン酸を反応させて混合酸無水物とし、これに一般式(8)で表される化合物又はその塩を反応させる混合酸無水物法、(B)一般式(4)で表される化合物又はその塩をp−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシコハク酸イミドエステル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル等の活性エステルとし、これに一般式(8)で表される化合物又はその塩を反応させる活性エステル法、(C)一般式(4)で表される化合物又はその塩に一般式(8)で表される化合物又はその塩をジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボニルジイミダゾール等の活性化剤の存在下に縮合反応させるカルボジイミド法、(D)一般式(4)で表される化合物又はその塩を無水酢酸等の脱水剤によりカルボン酸無水物とし、これに一般式(8)で表される化合物又はその塩を反応させる方法、(E)一般式(4)で表される化合物又はその塩と低級アルコールから得られるエステルに一般式(8)で表される化合物又はその塩を高圧高温下に反応させる方法、(F)一般式(4)で表される化合物又はその塩の酸ハロゲン化物に一般式(8)で表される化合物又はその塩を反応させる方法等が挙げられる。
【0093】
上記反応によって得られた一般式(9)の化合物又はその塩は、公知の分離及び精製手段、例えば蒸留法、カラムクロマトグラフィー、溶媒抽出、濾過、再結晶、吸着剤の添加等により、反応混合物から容易に単離され、精製される。
【0094】
前記反応式−3〜6における化合物(2)〜(9)の塩としては、化合物(1)と同様な塩を挙げることができる。
【発明の効果】
【0095】
本発明の一般式(1)で表されるベンゾイルアミノベンズアルデヒド及びその塩は、文献未記載の新規化合物であって、トルバプタン等の医薬品の製造原料として重要な一般式(4)で表されるベンゾイルアミノ安息香酸の合成中間体として有用な化合物である。
【0096】
本発明のベンゾイルアミノベンズアルデヒド及びその塩を経由する方法では、フリーデル−クラフト反応を経由することが必要がなく、廃棄物であるアルミニウム化合物が大量に生成することを回避できる。そのため、環境保護が叫ばれている今日において、本発明の製造方法は工業的製造法に極めて適している。しかも、本発明の方法では、公知の化合物からの反応工程数も少なく、反応操作が簡便であり、目的化合物を収率よく製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
以下に実施例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0098】
実施例1
2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンズアルデヒドの製造
4−アミノ−2−メチルベンズアルデヒド4.00g(純度93.0%、29.6ミリモル)にテトラヒドロフラン24ml、トルエン8ml及び25%水酸化ナトリウム水5.2mlを加えて撹拌し、50℃でオルトメチルトルオイルクロライド6.18gを滴下し、同温度で1時間撹拌した。この反応混合物を減圧濃縮し、2−プロパノール24mlを加え、50℃で撹拌し、25%水酸化ナトリウム水5mlを加え、更に水56mlを50℃で加えた後に10℃まで冷却した。粗結晶を濾過し、2−プロパノール及び水の混合液で洗浄後、50℃で真空乾燥した。これをトルエン45ml及び2−プロパノール1.5mlを用いてスラリー洗浄し、濾過した結晶を50℃で真空乾燥した。得られた乾燥結晶をジメチルホルムアミド18ml及び2−プロパノール4mlに溶解し、水24mlを加えて結晶を析出させ、冷却後に結晶を濾過し、水20mlで洗浄後、50℃で真空乾燥して2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンズアルデヒドの淡黄色粉末結晶6.89g(27.2ミリモル、収率91.9%)を得た。
【0099】
得られた化合物の融点と核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定結果を以下に示す。
融点:164〜166℃
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS)δppm:
10.64(1H,brs,NH),10.13(1H,s,CHO),7.77−7.83(2H,m,C6,5−H),7.75(1H,s,C3−H),7.49(1H,d,J= 7.6Hz,C6'−H),7.42(1H,m),7.30−7.34(2H,m),2.61(3H,s,CH3),2.39(3H,s,CH3)。
【0100】
実施例2
4−(2−クロロベンゾイルアミノ)−2−メチルベンズアルデヒドの製造
4−アミノ−2−メチルベンズアルデヒド1.00g(7.4ミリモル)にテトラヒドロフラン10ml及びトリエチルアミン1.50gを加えて撹拌し、氷冷下、2−クロロベンゾイルクロライド1.94gを滴下し、同温度で1時間撹拌した。得られた反応混合物を減圧濃縮した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を減圧濃縮し、残渣にトルエンを加えて熱時スラリー洗浄した。スラリーを濾過し、真空乾燥して4−(2−クロロベンゾイルアミノ)−2−メチルベンズアルデヒドの淡黄色結晶性粉末1.61g(5.9ミリモル、79.5%)を得た。得られた化合物の融点及び核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定結果を以下に示す。
融点:156〜158℃
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS)δppm:
10.84(1H,brs,NH),10.14(1H,s,CHO),7.74−7.84(2H,m,C6,5−H),7.71(1H,s,C3−H),7.46−7.63(4H,m),2.61(3H,s,CH3)。
【0101】
実施例3
4−(3−メトキシベンゾイルアミノ)−2−メチルベンズアルデヒドの製造
3−メトキシベンゾイルクロライドを用い、実施例2と同様にして4−(3−メトキシベンゾイルアミノ)−2−メチルベンズアルデヒドの淡黄色結晶性粉末を高収率で得た。得られた化合物の融点及び核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定結果を以下に示す。
融点:103〜105℃
1H−NMR(400mHz,DMSO−d6,TMS)δppm:
10.49(1H,brs,NH),10.13(1H,s,CHO),7.81−7.88(2H,m,C6,5−H),7.78(1H,s,C3−H),7.45−7.56(3H,m),7.19(1H,dd,J=8.2,2.6Hz,C4'−H),3.85(3H,s,OCH3),2.62(3H,s,CH3
実施例4
4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−2−メチル安息香酸の製造
実施例1で得られた4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−2−メチルベンズアルデヒド5.00g(19.7ミリモル)に、メタノール75ml及びりん酸二水素ナトリウム二水和物1.18gを水3.6mlに溶解させた溶液を加え、氷冷下、35%過酸化水素水溶液2.48mlを加え、続いて亜塩素酸ナトリウム4.46gを水19.6mlで溶解した溶液を20分要して滴下し、反応混合液を室温で一夜撹拌した。反応液に22%亜硫酸ナトリウム水22mlを加えて反応を停止した後、減圧濃縮して固形分を得た。これに水35ml及び25%水酸化ナトリウム水を加えて固形分を溶解させ、トルエン5ml及び酢酸エチル5mlの混合溶媒で数回洗浄した。この水溶液に濃塩酸を加えて酸性とし、析出した結晶を濾過後、水15mlで洗浄した。得られた粗湿結晶をメタノール120ml及び水20mlで再結晶を行い、冷却後に結晶を濾過し、メタノール及び水の混合液で洗浄後、50℃で真空乾燥して4−(2−メチルベンゾイルアミノ)−2−メチル安息香酸の白色粉末結晶4.27g(15.9ミリモル、80.3%)を得た。得られた化合物の融点及び核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定結果を以下に示す。
融点:233〜235℃
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS)δppm:
12.61(1H,brs,COOH),10.50(1H,s,NH),7.87(1H,d,J=8.3Hz,C6−H),7.67−7.70(2H,m,C6,5−H),7.47(1H,d,J=7.3Hz,C6'−H),7.39−7.43(1H,m),7.29−7.33(2H,m),2.54(3H,s,CH3),2.39(3H,s,CH3)。
【0102】
実施例5
4−アミノ−2−メチル安息香酸の製造
4−アミノ−2−メチルベンズアルデヒド10.00g(純度93.4%、69.10ミリモル)にジメチルスルホキシド20mlを加えて溶解後、10%塩酸水150mlを加えた。これに亜塩素酸ナトリウム12.55gを水80mlに溶解した溶液を内温30〜40℃で滴下した。反応液を30〜40℃で1.5時間撹拌した後、亜硫酸水素ナトリウム10.0gを加えて反応を停止した。この反応混合液を苛性ソーダでpH4〜5に調整した。晶析液を氷浴下で1.5時間撹拌後に結晶を濾過後、水50mlで洗浄した。湿結晶を50℃で真空乾燥し、淡黄色粉末結晶の4−アミノ−2−メチル安息香酸9.93g(純度97.1%、63.76ミリモル、92.3%)を得た。濾洗液ロスを合わせると反応率は99.0%であった。得られた化合物の融点及び核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定結果を以下に示す。
融点(分解):160〜162℃(文献値:165℃)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS)δppm:
11.79(1H,brs,COOH),7.63(1H,dd,J=9.2,2.8Hz,C6−H),6.38(2H,m,C3,5−H),2.41(3H,s,CH3)。
【0103】
実施例6
4−アセチルアミノ−2−メチル安息香酸の製造
4−アミノ−2−メチルベンズアルデヒド2.50g(純度85.2%、15.76ミリモル)に無水酢酸7.5mlを加え、室温で一夜撹拌した。この反応混合物に水75mlを加え、還流下にて析出した結晶を溶解し、更に2−プロパノール15mlを熱時に加えた後に冷却した。析出した結晶を濾過し、水50ml、飽和重曹水50ml及び水50mlで順次洗浄し、粗結晶を得た。これを水35ml及び2−プロパノール5mlを用いて再結晶を行い、冷却後に結晶を濾過し、水50mlで洗浄した。これを50℃で真空乾燥し、淡黄色粉末結晶の4−アセチルアミノ−2−メチルベンズアルデヒド2.53g(14.28ミリモル、90.6%)を得た。得られた化合物の融点及び核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定結果を以下に示す。
融点:102〜104℃(文献値:112.5〜113.5℃)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS)δppm:
10.28(1H,brs,NH),10.08(1H,s,CHO),7.76(1H,d,J=8.4Hz,C6−H),7.63(1H,dd,J=8.4,2.0Hz,C5−H),7.53(1H,brd,J=2.0Hz,C3−H),2.58(3H,s,アセチル基のCH3),2.09(3H,s,CH3)。
【0104】
上記で得られた4−アセチルアミノ−2−メチルベンズアルデヒド1.00g(5.64ミリモル)にメタノール25ml、りん酸二水素ナトリウム二水和物0.19g及び水2.4mlを加え、更に35%過酸化水素水溶液612μlを加えた。この混合物を氷浴下で冷却後、亜塩素酸ナトリウム0.96gを水8.5mlで溶解した溶液を1時間要して滴下した。反応混合液を氷浴下で1時間撹拌後に室温でメタノール10mlを追加して更に一夜撹拌した。これに亜硫酸ナトリウム0.05gを加えて反応を停止した後、濃塩酸200μl及び水20mlを加えて反応液を酸性とした。晶析液を氷冷下1時間撹拌し、結晶を濾過後、水25mlで洗浄した。湿結晶を真空乾燥し、淡黄色粉末結晶の4−アセチルアミノ−2−メチル安息香酸0.88g(4.55ミリモル、80.7%)を得た。得られた化合物の融点及び核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定結果を以下に示す。
融点(分解):248〜250℃(文献値:249℃)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6,TMS)δppm:
12.53(1H,brs,COOH),10.12(1H,s,NH),7.81(1H,d,J=8.2Hz,C6−H),7.51(1H,dd,J=8.2,1.7Hz,C5−H),7.48(1H,brd,J=1.7Hz,C3−H),2.50(3H,s,アセチル基のCH3),2.06(3H,s,CH3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フェニル低級アルコキシ基、低級アルカノイルオキシ基、低級アルキルチオ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基を有することのあるアミノ基、カルバモイル置換低級アルコキシ基、置換基として低級アルキル基を有することのあるアミノ置換低級アルコキシ基、フェニル環上に置換基としてハロゲン原子を有することのあるベンゾイル基、フェニル基、シクロアルキル基、低級アルカノイルオキシ置換低級アルコキシ基、カルボキシ置換低級アルコキシ基、ハロゲン置換低級アルコキシ基、水酸基置換低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル置換低級アルコキシ基、フタルイミド置換低級アルコキシ基又は置換基として低級アルキル基を有するアミノカルボニル低級アルコキシ基を示す。
2は、水素原子、低級アルキル基、低級アルカノイル基又はフェニル環上に置換基としてハロゲン原子を有することのあるベンゾイル基を示す。
3は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フェニル低級アルコキシ基、低級アルカノイルオキシ基、低級アルキルチオ基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキル基を有することのあるアミノ基、カルバモイル置換低級アルコキシ基、置換基として低級アルキル基を有することのあるアミノ置換低級アルコキシ基、フェニル環上に置換基としてハロゲン原子を有することのあるベンゾイル基、フェニル基、シクロアルキル基、低級アルカノイルオキシ置換低級アルコキシ基、カルボキシ置換低級アルコキシ基、ハロゲン置換低級アルコキシ基、水酸基置換低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル置換低級アルコキシ基、フタルイミド置換低級アルコキシ基又は置換基として低級アルキル基を有するアミノカルボニル低級アルコキシ基を示す。]
で表されるベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩。
【請求項2】
一般式(1)において、R1がハロゲン原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、R2が水素原子または低級アルキル基であり、R3がハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基である、請求項1に記載のベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩。
【請求項3】
一般式(1)で表されるベンゾイルアミノベンズアルデヒド化合物が2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンズアルデヒドである、請求項2に記載のベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩。
【請求項4】
一般式(1)
【化2】

[式中、R1、R2及びR3は、請求項1におけるそれらと同じ。]
で表されるベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩の製造方法であって、一般式(2)
【化3】

[式中、R1及びR2は、前記に同じ。]
で表される化合物又はその塩と一般式(3)
【化4】

[式中、R3は、前記に同じ。]
で表される化合物もしくはそのカルボキシル基における反応性誘導体又はそれらの塩を反応させる、
ベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩の製造方法。
【請求項5】
一般式(4)
【化5】

[式中、R1、R2及びR3は、請求項1におけるそれらと同じ。]
で表されるベンゾイルアミノ安息香酸又はその塩の製造方法であって、
一般式(1)
【化6】

[式中、R1、R2及びR3は、前記に同じ。]
で表されるベンゾイルアミノベンズアルデヒド又はその塩を酸化する、
ベンゾイルアミノ安息香酸又はその塩の製造方法。
【請求項6】
一般式(5)
【化7】

[式中、R1及びR2は、請求項1におけるそれらと同じ。]
で表されるアミノ安息香酸又はその塩の製造方法であって、
一般式(2)
【化8】

[式中、R1及びR2は、前記に同じ。]
で表されるアミノベンズアルデヒド又はその塩を酸化する、
アミノ安息香酸又はその塩の製造方法。
【請求項7】
一般式(2)におけるR1がメチル基、R2が水素原子又はアセチル基である請求項6に記載のアミノ安息香酸又はその塩の製造方法。

【公開番号】特開2009−107972(P2009−107972A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282274(P2007−282274)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(390011877)富士化学工業株式会社 (53)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】