説明

アミノベンズイミダゾール誘導体

式(I)(R1、R1'、L、Y、mおよびpは、請求項1で示した意味を有する)の新規な化合物は、チロシンキナーゼ、特にTIE−2およびRafキナーゼの阻害剤であり、腫瘍の治療に使用することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴重な特性を有する新規な化合物、特に医薬品の調製に使用できる化合物を見出すことを目的とした。
【0002】
本発明は、キナーゼシグナル伝達、特にチロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼシグナル伝達の阻害、調整および/または調節が役割を果たす化合物、さらにこれらの化合物を含む薬剤組成物、ならびにチロシンキナーゼ誘導型疾患を治療する化合物の使用に関する。
【0003】
特に、本発明は、チロシンキナーゼシグナル伝達を阻害、調整および/または調節する化合物、これらの化合物を含む組成物、ならびに哺乳動物におけるチロシンキナーゼ誘導型疾患および状態、例えば血管新生、癌、腫瘍増殖、動脈硬化症、加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、炎症性疾患などを治療するためのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
チロシンキナーゼは、タンパク質基質のチロシン残基へのアデノシン三リン酸の末端リン酸の転移を触媒する、ある種の酵素である。チロシンキナーゼは、基質リン酸化を介して、多くの細胞機能のためのシグナル伝達において重要な役割を果たしていると思われる。シグナル伝達の正確な機序はまだ明らかでないが、チロシンキナーゼは、細胞増殖、発癌および細胞分化において重要な要因であることが示されている。
【0005】
チロシンキナーゼは、受容体型チロシンキナーゼまたは非受容体型チロシンキナーゼとして分類することができる。受容体型チロシンキナーゼは、細胞外部分、膜貫通部分および細胞内部分を有し、一方、非受容体型チロシンキナーゼは、すべて細胞内のみに存在する。受容体型チロシンキナーゼは、異なる生物学的活性を有する多くの膜貫通型受容体からなる。それゆえ、受容体型チロシンキナーゼの約20種の異なるサブファミリーが同定されている。HERサブファミリーとして知られている1つのチロシンキナーゼサブファミリーは、EGFR、HER2、HER3およびHER4からなる。このサブファミリーの受容体からのリガンドには、上皮成長因子、TGF−α、アンフィレグリン、HB−EGF、ベータセルリンおよびヘレグリンが含まれる。これらの受容体型チロシンキナーゼの別のサブファミリーは、INS−R、IGF−IRおよびIR−Rを含むインスリンサブファミリーである。PDGFサブファミリーには、PDGF−αおよび−β受容体、CSFIR、c−kit、ならびにFLK−IIが含まれる。さらに、FLKファミリーがあり、これはキナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、胎児肝臓キナーゼ−1(FLK−1)、胎児肝臓キナーゼ−4(FLK−4)およびfmsチロシンキナーゼ−1(flt−1)からなる。PDGFおよびFLKファミリーは、その2種のグループ間の類似性のために通常一緒に議論される。受容体型チロシンキナーゼの詳細な考察については、参照により本明細書に援用するPlowmanら、DN&P 7(6):334〜339、1994を参照されたい。
【0006】
同様に非受容体型チロシンキナーゼは、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、AckおよびLIMKを含む多くのサブファミリーからなる。これらのサブファミリーのそれぞれは、異なる受容体にさらに細かく分けられる。例えば、Srcファミリーは最大のサブファミリーの1種である。これは、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、FgrおよびYrkを含む。Srcサブファミリーの酵素は腫瘍形成に関連付けられてきた。非受容体型チロシンキナーゼのより詳細な考察については、参照により本明細書に援用するBolen Oncogene、8:2025〜2031(1993)を参照されたい。受容体型チロシンキナーゼも非受容体型チロシンキナーゼも、癌、乾癬および過剰免疫応答を含む多数の発病状態をもたらす細胞シグナリング経路に関与している。
【0007】
種々の受容体型チロシンキナーゼおよびそれらに結合する増殖因子は血管新生において役割を果たすことが示されてきたが、いくつかは血管新生を間接的に促進することがある(MustonenおよびAlitalo、J.Cell Biol.129:895〜898、1995)。これらの受容体型チロシンキナーゼの1つは、FLK−1とも呼ばれる胎児肝臓キナーゼ1である。FLK−1のヒトでの類似体はキナーゼ挿入ドメイン含有受容体KDRであり、これは、VEGFに高親和性で結合することから、血管内皮細胞増殖因子受容体2またはVEGFR−2としても知られている。最後に、この受容体のネズミバージョンはまた、NYKと呼ばれる(Oelrichsら、Oncogene 8(1):11〜15、1993)。VEGFおよびKDRは、血管内皮細胞の増殖、ならびに血管形成および血管新生とそれぞれ呼ばれる、血管の形成および発芽において重要な役割を果たすリガンド−受容体対である。
【0008】
血管新生は、血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰な活性によって特徴付けられる。VEGFは実質的にリガンドのファミリーからなる(KlagsburnおよびD’Amore、Cytokine&Growth Factor Reviews 7:259〜270、1996)。VEGFは、高親和性膜貫通チロシンキナーゼ受容体KDR、およびFlt−1または血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR−1)としても知られる関連のfmsチロシンキナーゼ−1に結合する。細胞培養および遺伝子ノックアウト実験は、各受容体が血管新生の異なる局面に寄与していることを示す。KDRはVEGFの細胞分裂機能を仲介し、一方、Flt−1は、細胞接着に関係する機能など、非細胞分裂機能を調節するようである。したがって、KDRの阻害は、細胞分裂VEGF活性のレベルを調節する。実際、腫瘍増殖は、VEGF受容体アンタゴニストの抗血管新生作用の影響を受けやすいことが示されている(Kimら、Nature 362、841〜844頁、1993)。
【0009】
VEGFRの3つのPTK(タンパク質チロシンキナーゼ)受容体が同定されている:VEGFR−1(Flt−1);VEGRF−2(Flk−1またはKDR)およびVEGFR−3(Flt−4)。VEGFR−2は特に興味深い。
【0010】
したがって、充実性腫瘍はチロシンキナーゼ阻害剤で治療することができる。なぜなら、これらの腫瘍は、その増殖を支えるのに必要な血管を形成する血管新生に依存しているからである。これらの充実性腫瘍には、単球性白血病や、脳、尿生殖路、リンパ系、胃および喉頭における癌、ならびに肺腺癌および小細胞肺癌を含む肺の癌が含まれる。さらなる例には、Raf活性化癌遺伝子(例えば、K−ras、erb−B)の過剰発現または活性化が観察される癌が含まれる。このような癌には、膵臓癌および乳癌が含まれる。したがって、これらのチロシンキナーゼの阻害剤は、それらの酵素によって引き起こされる増殖性疾患の予防および治療に適している。
【0011】
VEGFの血管新生活性は、腫瘍に限定されない。VEGFは、糖尿病性網膜症において網膜または網膜の近くで生じる血管新生活性の原因となる。網膜でのこの血管増殖は、結果的に失明となる視覚退化につながる。眼のVEGF mRNAおよびタンパク質レベルは、新血管形成につながる、霊長類での網膜静脈閉塞症およびマウスでのpO2レベルの低下などの状態によって上昇する。抗VEGFモノクローナル抗体またはVEGF受容体免疫融合体(immunofusion)の眼内注射は、霊長類および齧歯類の両方のモデルで眼の新血管形成を阻害する。ヒトの糖尿病性網膜症におけるVEGF誘導の原因に拘りなく、眼のVEGFの阻害はこの疾患を治療するのに適している。
【0012】
VEGFの発現は、壊死の領域に隣接した動物およびヒトの腫瘍の低酸素領域でもかなり増大している。さらに、VEGFは、癌遺伝子Ras、Raf、Srcおよび突然変異p53(いずれも癌治療に関連する)の発現によってアップレギュレートされる。抗VEGFモノクローナル抗体は、ヌードマウスにおいてヒト腫瘍の増殖を阻害する。同じ腫瘍細胞は培養においてVEGFを発現し続けるが、その抗体は分裂速度を低下させない。したがって、腫瘍由来VEGFは、自己分泌分裂促進因子として機能しない。したがって、VEGFは、その傍分泌性の血管内皮細胞の走化性および細胞分裂活性を介して血管新生を促進することにより、in vivoでの腫瘍増殖に寄与している。これらのモノクローナル抗体はまた、無胸腺マウスにおいて典型的にあまり血管形成されていないヒト結腸癌の増殖を阻害し、接種された細胞から生じる腫瘍の数を減少させる。
【0013】
Flk−1およびFlt−1のVEGF結合構造物、ならびに細胞質チロシンキナーゼドメインは除去するように切断されているが、膜アンカーは保持しているマウスのKDR受容体相同体のウイルスによる発現は、おそらく膜貫通型の内皮細胞VEGF受容体とのヘテロダイマー形成による優性阻害機序により、マウスにおいて移植性グリア芽細胞腫の増殖を実質的に止める。
【0014】
ヌードマウスで充実性腫瘍として普通に増殖する胚幹細胞は、VEGF対立遺伝子が両方共ノックアウトされていると、検出可能な腫瘍を生じない。これらのデータを合わせると、充実性腫瘍の増殖におけるVEGFの役割を示している。KDRまたはFlt−1の阻害は病的血管新生に関与しており、これらの受容体は、血管新生が全般的な病理の一部である疾患、例えば炎症、糖尿病性網膜血管形成、ならびに種々の形態の癌の治療に適している。なぜなら、腫瘍増殖は血管新生に依存していることが知られているからである(Weidnerら、N.Engl.J.Med.、324、1〜8頁、1991)。
【0015】
内皮特異的受容体型チロシンキナーゼTIE−2のリガンドであるアンジオポイエチン1(Ang1)は、新規な血管新生因子である(Davisら、Cell、1996、87:1161〜1169;Partanenら、Mol.Cell Biol.、12:1698〜1707(1992);米国特許第5521073号;同第5879672号;同第5877020号;および同第6030831号)。略語TIEは、「IgおよびEGF相同ドメインを有するチロシンキナーゼ」を表す。TIEは、血管内皮細胞および初期の造血細胞のみに発現するあるクラスの受容体型チロシンキナーゼの同定に使用される。TIE受容体キナーゼは、EGF様ドメインおよび鎖間のジスルフィド架橋結合によって安定化した細胞外フォールド単位からなる免疫グロブリン(Ig)様ドメインの存在によって典型的に特徴付けられる(Partanenら、Curr.Topics Microbiol.Immunol.、1999、237:159〜172)。その機能を血管発生の初期段階で発揮するVEGFと対照的に、Ang1およびその受容体TIE−2は、血管発生の後期段階、即ち血管転換(転換は血管内腔の形成に関連する)および成熟中(Yancopoulosら、Cell、1998、93:661〜664;Peters,K.G.、Circ.Res.、1998、83(3):342〜3;Suriら、Cell 87、1171〜1180(1996))に作用する。
【0016】
したがって、TIE−2の阻害は血管新生によって開始した新たな血管系の転換および成熟化を中断するはずであり、したがって血管新生プロセスを中断するはずであると予想することができる。さらに、VEGFR−2のキナーゼドメイン結合部位での阻害は、チロシン残基のリン酸化をブロックし、血管新生の開始を中断する働きをするであろう。したがって、TIE−2および/またはVEGFR−2の阻害は、腫瘍の血管新生を妨げ、腫瘍増殖を減速させるか、完全になくすはずであると想定すべきである。
【0017】
よって、癌および不適切な血管新生に関係するその他の疾患の治療を提供することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、調節されていないまたは障害のあるTIE−2活性に関係する疾患を予防および/または治療するための、TIE−2の調整、調節または阻害方法を対象とする。特に、本発明による化合物は、ある形態の癌の治療にも使用できる。本発明による化合物はさらに、ある種の既存の癌化学療法に追加のもしくは相乗的な効果を提供するために使用でき、ならびに/またはある種の既存の癌化学療法および放射線治療の有効性を回復させるために使用できる。
【0019】
本発明は、調節されていないまたは障害のあるVEGFR−2活性に関係する疾患を予防および/または治療するための、VEGFR−2の調整、調節または阻害方法を対象とする。本発明による化合物は、TIE−2および/またはVEGFR−2キナーゼ活性のアミノベンズイミダゾール誘導体である。
【0020】
本発明はさらに、Rafキナーゼの阻害剤としての化合物に関する。
【0021】
タンパク質のリン酸化は、細胞機能の調節の基本的なプロセスである。タンパク質キナーゼおよびホスファターゼの両方の協調的な作用は、リン酸化の程度、したがって特異的標的タンパク質の活性を制御する。タンパク質リン酸化の顕著な役割の1つはシグナル伝達であり、ここで細胞外シグナルは、例えばp21ras/Raf経路のように、タンパク質リン酸化および脱リン酸化事象のカスケードによって増幅され、伝播される。
【0022】
p21ras遺伝子は、Harvey(H−Ras)およびKirsten(K−Ras)ラット肉腫ウイルスの癌遺伝子として発見された。ヒトでは、細胞Ras遺伝子(c−Ras)の特徴的な突然変異は、多くの異なるタイプの癌と関連していた。Rasを構成的に活性化する、これらの変異対立遺伝子は、培養において細胞、例えばネズミ細胞系NIH3T3をトランスフォームさせることが示されている。
【0023】
p21ras癌遺伝子は、ヒト充実性癌の発生および進行の主要な一因であり、ヒトの癌すべての30%で突然変異している(Boltonら(1994)Ann.Rep.Med.Chem.、29、165〜74;Bos.(1989)Cancer Res.、49、4682〜9)。その通常の突然変異していない形態では、Rasタンパク質は、殆どすべての組織の増殖因子受容体によって導かれるシグナル伝達カスケードの重要な要素である(Avruchら(1994)Trends Biochem.Sci.、19、279〜83)。
【0024】
生化学的に、Rasはグアニンヌクレオチド結合タンパク質であり、GTP結合活性化型とGDP結合静止型との間の循環は、Ras内因性GTPアーゼ活性およびその他の調節タンパク質により厳密に制御されている。Ras遺伝子産物は、グアニン三リン酸(GTP)およびグアニン二リン酸(GDP)に結合し、GTPをGDPに加水分解する。RasはGTP結合状態で活性である。癌細胞のRas突然変異体では、内因性GTPアーゼ活性が減少し、その結果タンパク質は構成的増殖シグナルを下流エフェクター、例えば酵素Rafキナーゼに伝達する。これは、これらの突然変異体をもつ細胞の癌性増殖につながる(Magnusonら(1994)Semin.Cancer Biol、5、247〜53)。Ras癌原遺伝子は、高等真核生物の受容体型および非受容体型チロシンキナーゼによって開始された増殖および分化シグナルを伝達するために、機能的に無傷のC−Raf−1癌原遺伝子が必要である。
【0025】
C−Raf−1癌原遺伝子の活性化には活性化したRasが必要だが、RasがRaf−1タンパク質(Ser/Thr)キナーゼを活性化する生化学的ステップは現在よく特徴付けられている。不活性抗体をRafキナーゼに加えること、またはドミナントネガティブRafキナーゼもしくはドミナントネガティブMEK(MAPKK)(MEKはRafキナーゼの基質である)、を共発現することによりRafキナーゼシグナル伝達経路を阻害することによって、活性Rasの効果を阻害することは、トランスフォームした細胞の正常な増殖表現型への復帰を導くことになる:Daumら(1994)Trends Biochem.Sci.、19、474〜80;Fridmanら(1994)J Biol.Chem.、269、30105〜8、Kolchら(1991)Nature、349、426〜28および概論として、Weinstein−Oppenheimerら、Pharm.&Therap.(2000)、88、229〜279を参照されたい。
【0026】
同様に、Rafキナーゼの阻害(アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドによる)は、種々のヒトの腫瘍タイプの増殖の阻害にin vitroおよびin vivoで関連している(Moniaら、Nat.Med.1996、2、668〜75)。
【0027】
Rafセリンおよびスレオニン特異的タンパク質キナーゼは、種々の細胞系で細胞増殖を刺激する細胞質内酵素である(Rapp,U.R.ら(1988)、The Oncogene Handbook;T.Curran、E.P.ReddyおよびA.Skalka(編)Elsevier Science Publishers;オランダ国、213〜253頁;Rapp,U.R.ら(1988)Cold Spring Harbor Sym.Quant.Biol.53:173〜184;Rapp、U.R.ら(1990)Inv Curr.Top.Microbiol.Immunol.PotterおよびMelchers(編)、Berlin、Springer−Verlag 166:129〜139)。
【0028】
3種のアイソザイムの特徴が明らかにされている:C−Raf(Raf−1)(Bonner,T.I.ら(1986)Nucleic Acids Res.14:1009〜1015)、A−Raf(Beck,T.W.ら(1987)Nucleic Acids Res.15:595〜609)およびB−Raf(Qkawa,S.ら(1998)Mol.Cell.Biol.8:2651〜2654;Sithanandam,G.ら(1990)Oncogene:1775)。これらの酵素は、種々の組織における発現が異なる。Raf−1は実験したすべての器官およびすべての細胞系で発現し、A−RafおよびB−Rafはそれぞれ、尿生殖路および脳組織で発現する(Storm,S.M.(1990)Oncogene 5:345〜351)。
【0029】
Raf遺伝子は癌原遺伝子であり、特異的に改変された形態で発現した場合に細胞の悪性トランスフォーメーションを開始させることができる。発癌活性につながる遺伝的変化は、タンパク質のN末端の負の調節ドメインを除去することまたは妨げることによって構成的に活性なタンパク質キナーゼを生じる(Heidecker,G.ら(1990)Mol.Cell.Biol.10:2503〜2512;Rapp,U.R.ら(1987)、Oncogenes and Cancer;S.A.Aaronson、J.Bishop、T.Sugimura、M.Terada、K.ToyoshimaおよびP.K.Vogt(編)Japan Scientific Press、東京)。NIH3T3細胞に、大腸菌発現ベクターで調製した腫瘍形成的に活性化しているが野生型でないバージョンのRafタンパク質をマイクロインジェクションすると、形態学的にトランスフォーメーションし、DNA合成を刺激する(Rapp,U.R.ら(1987)、Oncogenes and Cancer;S.A.Aaronson、J.Bishop、T.Sugimura、M.Terada、K.ToyoshimaおよびP.K.Vogt(編)Japan Scientific Press、東京;Smith、M.R.ら(1990)Mol.Cell.Biol.10:3828〜3833)。
【0030】
結果として、活性化したRaf−1は細胞増殖の細胞内アクチベーターである。Raf−1タンパク質セリンキナーゼは、マイトジェンシグナル伝達の下流エフェクターの候補である。なぜなら、Raf癌遺伝子は、細胞の突然変異(Ras復帰細胞)または抗Ras抗体のマイクロインジェクションのいずれかによる細胞のRas活性のブロックの結果である増殖の停止を克服するからである(Rapp,U.R.ら(1988)、The Oncogene Handbook、T.Curran、E.P.ReddyおよびA.Skalka(編)、Elsevier Science Publishers;The オランダ国、213〜253頁;Smith,M.R.ら(1986)Nature(London)320:540〜543)。
【0031】
種々の膜結合型癌遺伝子によるトランスフォーメーションおよび血清に含まれるマイトジェンによる増殖刺激には、C−Raf機能が必要である(Smith,M.R.ら(1986)Nature(London)320:540〜543)。Raf−1タンパク質セリンキナーゼ活性は、マイトジェンによってリン酸化を介して調整され(Morrison,D.K.ら(1989)Cell 58:648〜657)、これはまた細胞内分布にも影響を与える(Olah,Z.ら(1991)Exp.Brain Res.84:403;Rapp,U.R.ら(1988)Cold Spring Harbor Sym.Quant.Biol.53:173〜184)。Raf−1活性増殖因子には、血小板由来増殖因子(PDGF)(Morrison,D.K.ら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8855〜8859)、コロニー刺激因子(Baccarini,M.ら(1990)EMBO J.9:3649〜3657)、インスリン(Blackshear,P.J.ら(1990)J.Biol.Chem.265:12115〜12118)、表皮増殖因子(EGF)(Morrison,R.K.ら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8855〜8859)、インターロイキン−2(Turner,B.C.ら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1227)およびインターロイキン−3および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Carroll,M.P.ら(1990)J.Biol.Chem.265:19812〜19817)が含まれる。
【0032】
細胞をマイトジェン処理した後、一時的に活性化したRaf−1タンパク質セリンキナーゼは核周囲領域および核に移動する(Olah,Z.ら(1991)Exp.Brain Res.84:403;Rapp,U.R.ら(1988)Cold Spring Harbor Sym.Quant.Biol.53:173〜184)。活性化したRafを含有する細胞は、それらの遺伝子発現のパターンに変わり(Heidecker,G.ら(1989)、Genes and signal transduction in multistage carcinogenesis、N.Colbum(編)、Marcel Dekker,Inc.、New York、339〜374頁)、Raf癌遺伝子は、一時的なトランスフェクションアッセイにおいてAp−1/PEA3依存性プロモーターからの転写を活性化する(Jamal,S.ら(1990)Science 344:463〜466;Kaibuchi,K.ら(1989)J.Biol.Chem.264:20855〜20858;Wasylyk,C.ら(1989)Mol.Cell.Biol.9:2247〜2250)。
【0033】
細胞外マイトジェンによるRaf−1活性化には少なくとも2つの独立した経路がある:タンパク質キナーゼC(KC)が関与するもの、およびタンパク質チロシンキナーゼによって開始される第2のものである(Blackshear,P.J.ら(1990)J.Biol.Chem.265:12131〜12134;Kovacina,K.S.ら(1990)J.Biol.Chem.265:12115〜12118;Morrison,D.K.ら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8855〜8859;Siegel、J.N.ら(1990)J.Biol.Chem.265:18472〜18480;Turner,B.C.ら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1227)。いずれの場合も、活性化はRaf−1タンパク質のリン酸化を伴う。Raf−1リン酸化は、自己リン酸化で増幅されたキナーゼカスケードの結果であるか、またはジアシルグリセロールによるPKC活性化に類似した、推定の活性リガンドのRaf−1調整ドメインへの結合で開始した自己リン酸化によって完全に引き起こされている可能性がある(Nishizuka,Y.(1986)Science 233:305〜312)。
【0034】
細胞調整が行われる主要な機序の1つは、膜を介した細胞外シグナルの伝達、それに続く細胞内の生化学経路の調節によるものである。タンパク質のリン酸化は、細胞内シグナルを分子から分子に伝播して、最後には細胞応答にする1つの経過を示す。これらのシグナル伝達カスケードは、高度に調整され、多くのタンパク質キナーゼならびにホスファターゼの存在から分かるように、しばしば重複する。タンパク質のリン酸化は、主にセリン、スレオニンまたはチロシン残基で生じ、したがってタンパク質キナーゼはリン酸化部位の特異性によって、即ちセリン/スレオニンキナーゼおよびチロシンキナーゼに分類されてきた。リン酸化は細胞内にそのように偏在するプロセスなので、かつ細胞の表現型はこれらの経路の活性によって大きく影響されるので、多くの疾患状態および/または疾患は、キナーゼカスケードの分子成分における異常な活性化または機能的突然変異のいずれかに起因すると現在のところ考えられている。その結果、これらのタンパク質、およびそれらの活性を調節できる化合物の特徴を明らかにすることに、かなりの注意が向けられてきた(概論として、Weinstein−Oppenheimerら、Pharma.&.Therap.、2000、88、229〜279参照)。
【0035】
したがって、チロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼのシグナル伝達を特異的に阻害、調整および/または調節する低分子化合物の同定が望ましく、それが本発明の目的である。
【0036】
本発明による化合物およびその塩は、非常に貴重な薬理学的特性を有しながら、よく耐容されることが見出された。特に、それらはチロシンキナーゼ阻害特性を示す。
【0037】
さらに、本発明による化合物は、酵素Rafキナーゼの阻害剤であることが見出された。この酵素はp21rasの下流エフェクターなので、その阻害剤は、例えばRafキナーゼで仲介される腫瘍および/または癌性細胞増殖の治療において、Rafキナーゼ経路の阻害を示唆するヒトまたは動物用の薬として使用する薬剤組成物に適することが分かっている。特に、これらの化合物はヒトおよび動物の充実性癌、例えばマウスの癌の治療に適している。なぜなら、これらの癌の進行はRasタンパク質シグナル伝達カスケードに依存しており、したがってカスケードの中断、即ちRafキナーゼの阻害による治療の影響を受けやすいからである。よって、本発明による化合物または薬剤として許容されるその塩は、Rafキナーゼ経路によって仲介される疾患、特に充実性癌を含む癌、例えば癌腫(例えば、肺、膵臓、甲状腺、膀胱または結腸の癌腫)、骨髄疾患(例えば、骨髄性白血病)または腺腫(例えば、絨毛結腸腺腫)、病的血管新生および転移性細胞移動を治療するために投与される。さらにこれらの化合物は、補体活性化依存性の慢性炎症(Niculescuら(2002)Immunol.Res.、24:191〜199)およびHIV−1(ヒト免疫不全ウイルスタイプ1)誘発性の免疫不全(Popikら(1998)J Virol、72:6406〜6413)の治療に適している。
【0038】
意外にも、本発明による化合物は、シグナル伝達経路、特に本明細書で記載のシグナル伝達経路、好ましくはRafキナーゼシグナル伝達経路と相互作用できることが見出された。本発明による化合物は、好ましくは、酵素に基づくアッセイ、例えば本明細書で記載のアッセイで容易に明らかにされる有利な生物学的活性を示す。そのような酵素に基づくアッセイでは、本発明による化合物は、適切な範囲、好ましくはマイクロモル範囲、より好ましくはナノモル範囲のIC50で通常立証される効果、好ましくは阻害効果を示す。
【0039】
本明細書で論じた通り、これらのシグナル伝達経路は種々の疾患に関連している。よって、本発明による化合物は、前記シグナル伝達経路の1つまたは複数と相互作用することにより前記シグナル伝達経路に依存する疾患を予防および/または治療するのに適している。
【0040】
したがって、本発明は、本明細書で記載のシグナル伝達経路の促進剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による化合物に関する。したがって、本発明は、好ましくはRafキナーゼ経路の促進剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による化合物に関する。したがって、本発明は、好ましくはRafキナーゼの促進剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による誘導体に関する。本発明はさらに好ましくは、A−Raf、B−RafおよびC−Raf−1からなる群から選択される1種または複数のRafキナーゼの促進剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による化合物に関する。本発明は特に好ましくは、C−Raf−1の促進剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による化合物に関する。
【0041】
さらに、本発明は、Rafキナーゼによって引き起こされ、仲介され、かつ/または進行する疾患、好ましくは本明細書に記載の疾患、特に、A−Raf、B−RafおよびC−Raf−1からなる群から選択されるRafキナーゼによって引き起こされ、仲介され、かつ/または進行する疾患の治療および/または予防における本発明による1種または複数の化合物の使用に関する。本明細書で論じる疾患は、過剰増殖性疾患および非過剰増殖性疾患の2つの群に通常分けられる。これに関して、乾癬、関節炎、炎症、子宮内膜症、瘢痕化、良性前立腺肥大、免疫疾患、自己免疫疾患および免疫不全疾患は非癌性疾患とみなし、そのうち関節炎、炎症、免疫疾患、自己免疫疾患および免疫不全疾患は非過剰増殖性疾患と通常みなす。これに関して、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸直腸癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、食道癌、婦人科癌、甲状腺癌、リンパ腫、慢性白血病および急性白血病は癌性疾患とみなし、それらはすべて過剰増殖性疾患と通常みなす。特に癌性細胞増殖、特にRafキナーゼによって仲介される癌性細胞増殖は本発明が対象とする疾患である。したがって、本発明は、前記疾患の治療および/または予防における医薬品および/または医薬活性成分としての本発明による化合物と、ならびに前記疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための本発明による化合物の使用と、ならびに本発明による1種または複数の化合物をそのような投与が必要な患者に投与することを含む、前記疾患を治療するための方法とに関する。
【0042】
本発明による化合物は、異種移植腫瘍モデルにおいて、in vivoの抗増殖活性を有することを示すことができる。本発明による化合物は、過剰増殖性疾患を有する患者に、例えば腫瘍増殖を阻害するため、リンパ増殖性疾患に付随する炎症を低減するため、移植片拒絶反応または組織修復による神経障害を抑制するためなどに投与する。本発明化合物は、予防または治療目的に適している。本明細書では、用語「治療」は、疾患の予防および既存状態の治療の両方を指すように使用する。増殖の予防は、本発明による化合物を顕性疾患が発症する前に投与することによって達成し、例えば腫瘍の増殖を予防し、転移性増殖を予防し、心臓血管手術に付随する再狭窄を減少させたりする。あるいは、これらの化合物は、患者の臨床症状を安定化または改善することにより、進行中の疾患を治療するために使用する。
【0043】
受容者または患者は、任意の哺乳動物種、例えば霊長類種、特にヒト;マウス、ラットおよびハムスターを含む齧歯類;ウサギ;ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属することができる。動物モデルは実験的研究のために重要であり、ヒトの疾患の治療用モデルを提供する。
【0044】
本発明による化合物での治療に対する特定の細胞の感受性は、in vitro試験で判定できる。典型的には、細胞の培養は、種々の濃度で活性剤が細胞死を誘発するか移動を阻害するのに十分な時間、通常約1時間から1週間、本発明による化合物と合わせる。in vitro試験は、生検試料からの培養細胞を使用して実施することができる。次いで、処理後に残った生細胞を計数する。
【0045】
用量は、使用する特定の化合物、特定の疾患、患者の状態などに依存して変化する。治療用量は、典型的に、患者の生存力は維持されるが、標的組織の望ましくない細胞集団を減少させるのにかなり十分な量である。治療は一般に、かなりの減少、例えば細胞の負担が少なくとも約50%減少するまで続けられ、望ましくない細胞が体内で本質的にもはや検出されなくなるまで続けてもよい。
【0046】
キナーゼ阻害剤を同定するために、種々のアッセイ系が利用できる。シンチレーション近接アッセイ(Sorgら、J.of.Biomolecular Screening、2002、7、11〜19)およびフラッシュプレートアッセイでは、基質としてのタンパク質またはペプチドのγATPによる放射性リン酸化を測定する。阻害化合物の存在下では、低下した放射性信号が検出されるか、または全く検出されない。さらに、ホモジニアス時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(HTR−FRET)および蛍光偏光(FP)技術は、アッセイ方法として適している(Sillsら、J.of Biomolecular Screening、2002、191〜214)。
【0047】
その他の非放射性ELISAアッセイ方法は、特異的ホスホ(phospho)−抗体(ホスホ−AB)を使用する。ホスホ−ABは、リン酸化した基質のみに結合する。この結合は、第2のペルオキシダーゼ標識抗ヒツジ抗体を使用する化学発光で検出することができる(Rossら、2002、Biochem.J.、間もなく出版予定、原稿BJ20020786)。
【0048】
細胞増殖および細胞死(アポトーシス)の脱制御に関連した多くの疾患がある。重要な状態には以下のものを含むが、これらだけに限定されない。本発明による化合物は、平滑筋細胞および/または炎症細胞が増殖および/または血管の内膜層に移動して、例えば新生内膜閉塞病変の場合など、その血管を通る血流が制限される、多くの状態の治療に適している。重要な閉塞性血管疾患には、アテローム性動脈硬化症、移植後の移植片冠血管疾患、静脈移植片狭窄、人工装具性吻合周辺再狭窄、血管形成術またはステント留置後の再狭窄などが含まれる。
【0049】
本発明による化合物は、p38キナーゼ阻害剤としても適している。
【0050】
p38キナーゼを阻害するその他のヘテロアリール尿素はWO02/85859に記載されている。
【0051】
(従来技術)
WO02/44156は、TIE−2および/またはVEGFR2阻害剤の他にベンズイミダゾール誘導体を記載している。WO99/32436は、Rafキナーゼ阻害剤としての置換フェニル尿素を開示している。WO02/062763およびWO02/085857は、Rafキナーゼ阻害剤としてのキノリル尿素誘導体、イソキノリル尿素誘導体およびピリジル尿素誘導体を開示している。p38キナーゼ阻害剤としてのヘテロアリール尿素はWO02/85859に記載されている。ω−カルボキシアリールジフェニル尿素はWO00/42012にRafキナーゼ阻害剤として、WO00/41698にp38キナーゼ阻害剤として記載されている。その他のアリール置換およびヘテロアリール置換複素環尿素はWO99/32455にRafキナーゼ阻害剤として、WO99/32110にp38キナーゼ阻害剤として開示されている。その他のジフェニル尿素誘導体はWO99/32463から既知である。p38キナーゼ阻害剤としての置換複素環尿素誘導体はWO99/32111に開示されている。
【0052】
(発明の概要)
本発明は、式Iの化合物
【0053】
【化1】

【0054】
[式中、
1、R1'は、それぞれ互いに独立に、Hal、A、OH、OA、CN、COOH、COOA、CONH2、CONHAまたはCONA2を表し、
Lは、CH2、CH2CH2、O、S、SO、SO2、NH、NA、C=OまたはCHOHを表し、
Yは、以下のリストから選択される複素環を表し、
【0055】
【化2】

【0056】
2は、Hal、A、OH、OA、CN、COOH、COOA、CONH2、CONHAまたはCONA2を表し、
3は、H、A、NH2、COOH、COOA、CONH2、CONHA、CONA2またはNHCOOAを表し、
Xは、S、O、NH、NAまたはCH2を表し、
Zは、−CH=、CH2、NH、−N=またはC=Oを表し、
Z’は、SまたはOを表し、
Aは、C原子1〜10個を有する非分枝状、分枝状または環状のアルキルを表し、ここでさらに、H原子1〜7個はFおよび/または塩素で置換されていてもよく、
Halは、F、Cl、BrまたはIを表し、
m、p、qは、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3または4を表し、
nは、1、2または3を表す]、
ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体に関する。
【0057】
本発明は、これらの化合物の光学活性形態(立体異性体)、鏡像異性体、ラセミ化合物、ジアステレオマー、水和物、および溶媒和物にも関する。化合物の溶媒和物という用語は、不活性な溶媒分子が、相互引力によって形成している化合物に付加していることを意味するものとする。溶媒和物は、例えば一水和物または二水和物またはアルコキシドである。
【0058】
薬剤として使用可能な誘導体という用語は、例えば本発明による化合物の塩およびいわゆるプロドラッグ化合物を意味するものとする。
【0059】
プロドラッグ誘導体という用語は、例えばアルキルまたはアシル基、糖またはオリゴペプチドによって修飾され、生物内で迅速に開裂して本発明による有効な化合物を形成する、式Iの化合物を意味するものとする。
【0060】
これらはまた、例えばInt.J.Pharm.115、61〜67(1995)に記載の通り、本発明による化合物の生分解性ポリマー誘導体を含む。
【0061】
「有効量」という表現は、組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば研究者または医師が求めるまたは所望する生物学的または医学的応答を引き起こす医薬品または医薬活性成分の量を表す。
【0062】
さらに、「治療有効量」という表現は、この量を与えられていない対応する対象と比較して、以下の結果を有する量を表す:
治療の改善、治癒、あるいは疾患、症候群、病状、愁訴および障害の予防もしくは除去、副作用の予防、またはさらに疾患の進行、愁訴、障害もしくは副作用の軽減、またはさらに疾患の進行、愁訴もしくは障害の軽減。
【0063】
「治療有効量」という表現はまた、正常な生理学的機能を増大するのに有効な量を包含する。
【0064】
本発明はまた、本発明による式Iの化合物の混合物、例えば2種のジアステレオマーの、例えば1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000の比の混合物に関する。これらは特に好ましくは、立体異性体化合物の混合物である。
【0065】
例えばR1など、1回を超えて出現するすべての基について、それらの意味は、互いに独立している。
【0066】
上記および下記において、基またはパラメータR1、L、Y、mおよびpは、別段の記載がない限り、式Iに示した意味を有する。
【0067】
Aはアルキルを表し、非分枝状(直鎖状)または分枝状であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のC原子を有する。Aは好ましくは、メチル、さらにエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−もしくは4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−もしくは3,3−ジメチルブチル、1−もしくは2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−もしくは1,2,2−トリメチルプロピル、さらに好ましくは、例えばトリフルオロメチルを表す。
Aは非常に特に好ましくは、1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは1,1,1−トリフルオロエチルを表す。Aはまた、シクロアルキルを表す。
シクロアルキルは好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを表す。
1は好ましくは、AまたはHal、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチル、フッ素または塩素を表し;特に好ましくは、トリフルオロメチル、FまたはBrである。
1'は好ましくは、AまたはHal、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、1,1,1−トリフルオロエチル、フッ素または臭素;非常に特に好ましくは、メチル、エチル、プロピル、フッ素または臭素を表す。
Lは好ましくは、O、SまたはCH2、特に好ましくは、Oを表す。
2は好ましくは、A、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル;COOA、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル;またはCONH2を表す。
3は好ましくは、H、NH2またはCOOA、例えば、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルを表す。
mは好ましくは、1、2または3を表す。
pは好ましくは、0または1を表す。
qは好ましくは、0または1を表す。
Yの意味において、
【0068】
【化3】

【0069】
基R2および結合−}は、二環系または三環系の任意の位置を選ぶことができ、式に示した環に限定されない。
【0070】
【化4】

【0071】
において、点は単結合または二重結合のいずれかがここに存在することを意味する。
【0072】
式Iの化合物は1個または複数のキラル中心を有することができ、したがって種々の立体異性体の形態で存在する。式Iは、これらの形態すべてを包含する。
【0073】
したがって、本発明は特に、前記基の少なくとも1個が上記の好ましい意味の1つを有する式Iの化合物に関する。化合物のいくつかの好ましい群は、以下の部分式IaからIgによって表すことができ、これらは式Iに一致し、より詳しく指定されていない基は式Iに示した意味を有するが、式中
Iaでは、R1は、AまたはHalを表し、mは、1、2または3を表し;
Ibでは、R1は、CF3、FまたはBrを表し、mは、1、2または3を表し;
Icでは、R1'は、HalまたはAを表し、pは、0または1を表し;
Idでは、Lは、O、SまたはCH2を表し;
Ieでは、R2は、A、COOAまたはCONH2を表し、qは、0、1または2を表し;
Ifでは、R3は、H、NH2またはCOOAを表し;
Igでは、R1は、AまたはHalを表し、mは、1、2または3を表し、R1'は、HalまたはAを表し、pは、0または1を表し、Lは、O、SまたはCH2を表し、Yは、以下のリストから選択される複素環を表し、
【0074】
【化5】

【0075】
2は、A、COOAまたはCONH2を表し、qは、0、1または2を表し、R3は、H、NH2またはCOOAを表し、nは、1、2または3を表し;
ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体である。
【0076】
本発明は、式Iの化合物およびその塩に関し、かつ
式IIの化合物
【0077】
【化6】

【0078】
(式中、R1およびmは、請求項1に示した意味を有する)
を、式IIIの化合物
【0079】
【化7】

【0080】
(式中、R1'、L、Yおよびpは、請求項1に示した意味を有する)
と反応させること、および/または式Iの塩基もしくは酸をその塩の1つに変換すること
を特徴とする請求項1〜10に記載の式Iの化合物、ならびに薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の調製方法に関する。
【0081】
さらに、本発明による化合物およびまたその調製の出発材料は、文献(例えばHouben−Weyl、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgartなどの標準的な著作物)に記載の通りにそれ自体知られた方法で、既知でありかつ前記の反応に適切な反応条件下で正確に調製する。ここでは、それ自体知られているが、ここではより詳細に言及しない変形も使用することができる。
【0082】
所望により、出発材料はまた、反応混合物から分離することなく、代わりに本発明による化合物に速やかに変換されるように、その場で形成することができる。
【0083】
式Iの化合物は、好ましくは、式IIの化合物を式IIIの化合物と反応させることによって得る。
【0084】
反応は、不活性溶媒中、例えばN,N’−ジイソプロピルカルボジイミドなどのカップリング試薬の存在下で一般に行う。使用する条件に応じて、反応時間は数分と14日の間であり、反応温度は約0°と150°との間、普通は20°と130°との間である。
【0085】
適切な不活性溶媒の例としては、ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンまたはシキレンなどの炭化水素;トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロメタン、クロロホルムまたはジクロロメタンなどの塩素化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールまたはtert−ブタノールなどのアルコール;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテルまたはエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)などのグリコールエーテル;アセトンまたはブタノンなどのケトン;アセトアミド、ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド;アセトニトリルなどのニトリル;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド;二硫化炭素;ギ酸または酢酸などのカルボン酸;ニトロメタンまたはニトロベンゼンなどのニトロ化合物;酢酸エチルなどのエステル;あるいは前記溶媒の混合物がある。
【0086】
出発化合物は一般に既知である。しかし、それらが新規である場合は、それ自体既知の方法で調製できる。
【0087】
式IIIのチオイソシアネートは好ましくは、例えば1,1’−チオカルボニルジイミダゾールとの反応による対応するアニリン誘導体からのものである。
【0088】
本発明による化合物の塩基は、酸を使用して、例えば同当量の塩基と酸とをエタノールなどの不活性溶媒中で反応させ、次いで蒸発させることによって、対応する酸付加塩に変換することができる。この反応に適した酸は、特に、生理学的に許容される塩を与えるものである。したがって、無機酸、例えば硫酸、硝酸、ハロゲン化水素酸、例えば塩酸または臭化水素酸、リン酸、例えばオルトリン酸またはスルファミン酸、さらに有機酸、特に脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式の一塩基性または多塩基性カルボン酸、スルホン酸または硫酸、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ピバリン酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタン−もしくはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノ−および−ジスルホン酸、およびラウリル硫酸を使用することが可能である。生理学的に許容されない酸との塩、例えばピクリン酸塩は、本発明による化合物の分離および/または精製に使用できる。
【0089】
さらに、本発明は、特に非化学的方法によって医薬品(薬剤組成物)を調製するための化合物および/または生理学的に許容されるそれらの塩の使用に関する。それらは、少なくとも1種の固体、液体および/もしくは半液体賦形剤またはアジュバントと共に、ならびに所望により1種または複数のさらなる活性成分と組み合わせて、ここで適切な剤形に変換することができる。
【0090】
さらに、本発明は、本発明による化合物、ならびに/またはすべての割合のその混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、溶媒和物および立体異性体の少なくとも1種、ならびに任意選択で賦形剤および/もしくはアジュバントを含む医薬品に関する。
【0091】
医薬製剤は、投与量1単位当たり所定量の活性成分を含む投与量単位の形態で投与することができる。そのような単位は、治療する疾患の状態、投与方法、ならびに患者の年齢、体重および状態に応じて、本発明による化合物を、例えば0.5mgから1g、好ましくは1mgから700mg、特に好ましくは5mgから100mg含むことができ、あるいは医薬製剤は、投与量1単位当たり所定量の活性成分を含む投与量単位の形態で投与することができる。好ましい投与量単位製剤は、上記の1日用量もしくは部分用量、または活性成分に対応する一部分を含むものである。さらに、このタイプの医薬製剤は、製薬分野で一般に知られている方法を使用して調製することができる。
【0092】
医薬製剤は、任意の所望の適切な方法で、例えば経口(口腔内または舌下を含む)、直腸、経鼻、局所(口腔内、舌下または経皮を含む)、経膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を含む)方法によって投与するように適合させることができる。そのような製剤は、例えば活性成分を賦形剤またはアジュバントと組み合わせて、製薬分野で知られた方法すべてを使用して調製することができる。
【0093】
経口投与に適合させた医薬製剤は、別個の単位、例えばカプセル剤または錠剤;散剤または顆粒剤;水性または非水性の液体中の溶液または懸濁液;可食性の発泡体または泡状食品;あるいは水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンなどとして投与することができる。
【0094】
したがって、例えば錠剤またはカプセル剤の形態で経口投与する場合、活性成分構成要素は、経口の非毒性かつ薬剤として許容される不活性賦形剤、例えば、エタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。散剤は化合物を適切な細かいサイズに粉砕し、それを同様に粉砕した薬剤賦形剤、例えば可食性炭水化物、例えば澱粉またはマンニトールと混合することによって調製する。香味剤、防腐剤、分散剤および色素も同様に存在してよい。
【0095】
カプセル剤は、上記の通りに粉末混合物を調製し、成形したゼラチンシェルに充填することによって製造する。充填作業の前に、流動剤および滑剤、例えば高度に分散したケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固体形態のポリエチレングリコールを粉末混合物に加えることができる。崩壊剤または可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムを同様に加えて、カプセル剤を服用した後の医薬品のアベイラビリティーを向上させてもよい。
【0096】
さらに、所望によりまたは必要ならば、適切な結合剤、滑剤および崩壊剤、ならびに色素を同様に混合物に入れることができる。適切な結合剤には、澱粉、ゼラチン、例えばグルコースまたはβ−ラクトース、とうもろこしから作られた甘味料などの天然糖、例えばアカシア、トラガカントなどの天然および合成ゴム、またはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの剤形で使用する滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、これらだけに限定するものではないが、澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、その混合物を顆粒化または乾燥押圧し、滑剤および崩壊剤を加え、混合物全体を押圧して錠剤を得ることによって製剤する。粉末混合物は、適切な方法で粉砕した化合物を上記の通りの希釈剤または基剤と、場合により、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチンまたはポリビニルピロリドンなどの結合剤、例えばパラフィンなどの溶解遅延剤、例えば第4級塩などの吸収促進剤、および/または例えばベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムなどの吸収剤、と混合することによって調製する。粉末混合物は、それを例えばシロップ、澱粉糊、粘性アカディア(acadia mucilage)またはセルロースもしくはポリマー材料の溶液などの結合剤で湿潤させ、押圧して篩に通すことによって顆粒化することができる。顆粒化の代替法として、粉末混合物を打錠機にかけ、崩れて顆粒を形成する不均一な形状の塊を得ることができる。顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を加えて潤滑化して、錠剤鋳型に付くのを防ぐことができる。次いで、潤滑化した混合物を押圧して錠剤を得る。本発明による化合物はまた、流動性不活性賦形剤と合わせ、次いで直接押圧して、顆粒化または乾燥押圧ステップを実施することなく錠剤を得ることができる。シェラック密封層、糖またはポリマー材料の層およびワックスの光沢層からなる透明または不透明な保護層が存在してもよい。これらのコーティングに色素を加えて、異なる投与量単位同士を区別することができる。
【0097】
例えば溶液、シロップおよびエリキシルなどの経口用液体は、所与の量が予め規定された量の化合物を含むように投与量単位の形態で調製できる。シロップは、適切な香味料を含む水溶液に化合物を溶解させることによって調製でき、エリキシルは非毒性のアルコール媒体を使用して調製する。懸濁液は、化合物を非毒性の媒体に分散させることによって製剤できる。可溶化剤および乳化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなど、防腐剤、香味添加物、例えばペパーミント油もしくは天然甘味料またはサッカリンなど、あるいはその他の人工甘味料なども同様に加えることができる。
【0098】
経口投与用投与量単位製剤は、所望によりマイクロカプセルに封入できる。製剤はまた、例えば、微粒子材料をポリマー、ワックスなどにコーティングまたは埋め込むことによって放出が延長または遅延されるように調製することができる。
【0099】
本発明による化合物、ならびにその塩、溶媒和物および生理学的に機能性の誘導体は、例えば小単層ベシクル、大単層ベシクルおよび多層ベシクルなどのリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの種々のリン脂質から形成できる。
【0100】
本発明による化合物、ならびにその塩、溶媒和物および生理学的に機能性の誘導体は、化合物分子がカップリングする個々の担体としてのモノクローナル抗体を使用して送達することもできる。これらの化合物は、標的医薬品担体としての可溶性ポリマーにカップリングすることもできる。このようなポリマーは、パルミトイル基で置換されている、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノールまたはポリエチレンオキシドポリリジンを包含してもよい。さらに、化合物は、医薬品の制御放出を達成するのに適したあるクラスの生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリレートおよびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーにカップリングしていてもよい。
【0101】
経皮投与に適合した医薬製剤は、受容者の表皮に広く(extendedに)密接に接触する独立したプラスターとして施用することができる。したがって例えば、活性成分は硬膏剤からイオン導入によって、Pharmaceutical Research、3(6)、318(1986)で一般的に記載されている通りに送達することができる。
【0102】
局所施用に適合した薬剤化合物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、パウダー、溶液、ペースト剤、ゲル、スプレー、エアゾルまたは油として製剤化することができる。
【0103】
眼または例えば口および皮膚などのその他の外部組織を治療するために、製剤は局所軟膏またはクリームとして施用するのが好ましい。軟膏を与える製剤の場合、活性成分は、パラフィン系または水混和性クリーム基剤のいずれかと共に使用することができる。あるいは、活性成分は、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤を有するクリームを与えるように製剤できる。
【0104】
眼への局所施用に適合した医薬製剤としては、活性成分が適切な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁した点眼液がある。
【0105】
口内での局所施用に適合した医薬製剤は、ロゼンジ、トローチおよびマウスウォッシュを包含する。
【0106】
直腸投与に適合した医薬製剤は、坐剤または浣腸の形態で投与できる。
【0107】
担体物質が固体である経鼻施用に適合した医薬製剤は、粒子径が、例えば20〜500ミクロンの範囲にあり、嗅ぐこと、即ち、鼻に近接して保持された粉末を含有する容器から鼻腔を介して素早く吸入することによる方法で施用する粗い粉末を含む。液体を担体物質として有する鼻スプレーまたは点鼻液としての施用に適した製剤は、水または油中の活性成分溶液を含む。
【0108】
吸入による施用に適合した医薬製剤は、噴霧器、ネブライザーまたは吸入器を備えた種々のタイプの加圧ディスペンサーにより生成できる微粒子粉末またはミストを包含する。
【0109】
膣施用に適合した医薬製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト剤、泡剤またはスプレー製剤として施用できる。
【0110】
非経口投与に適合した医薬製剤には、これにより製剤は治療する受容者の血液と等張になる、酸化防止剤、バッファ、静菌剤および溶質を含む水性および非水性滅菌注射剤と;ならびに懸濁液媒体および増粘剤を含んでもよい、水性および非水性滅菌懸濁液とが含まれる。これらの製剤は、単回用量容器または多回用量容器、例えば密封アンプルおよびバイアルで投与することができ、凍結乾燥(freeze−dried)(凍結乾燥(lyophilised))状態で貯蔵できるので、必要なことは、滅菌担体液体、例えば注射用水を使用の直前に加えることのみである。
【0111】
この製法に従って調製した注射溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製できる。
【0112】
上記で特に言及した構成物質に加えて、製剤が、特定のタイプの製剤に関して、当技術分野で通常のその他の物質を含んでもよいのは当然であり、したがって例えば、経口投与に適した製剤が香味剤を含んでもよい。
【0113】
本発明の化合物の治療有効量は、例えば動物の年齢および体重、治療を必要とする正確な疾患の状態、その重篤度、製剤の特性および投与方法を含む多くの要因によって決まり、治療する医師または獣医が最終的に決定する。しかし、例えば直腸癌または乳癌などの腫瘍性増殖を治療するための本発明による化合物の有効量は、一般に、1日当たり受容者(哺乳動物)の体重1kg当たり0.1から100mgの範囲、特に典型的には、1日当たり体重1kg当たり1から10mgの範囲である。したがって、体重70kgの成体哺乳動物の1日当たりの実際量は、通常70と700mgとの間であり、この量は総1日量が同じになるように、1日当たりの単回用量として、または通常1日当たりの一連の部分用量(例えば、2、3、4、5または6回)として投与できる。本発明による化合物の塩もしくは溶媒和物または生理学的に機能性を有するその誘導体の有効量は、本発明による化合物自体の有効量の一部分として決定することができる。同様の用量が、上記のその他の状態の治療に適していると推定できる。
【0114】
さらに本発明は、本発明による化合物、ならびに/またはあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、溶媒和物および立体異性体、の少なくとも1種と、ならびに少なくとも1種のさらなる医薬活性成分を含む医薬品に関する。
【0115】
本発明は、
(a)有効量の本発明による化合物、ならびに/またはあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体と、ならびに
(b)有効量のさらなる医薬活性成分と、
の別個のパックからなるセット(キット)に関する。
【0116】
このセットは、適切な容器、例えば箱、個々のボトル、袋またはアンプルなどを含む。このセットは、例えば、別個のアンプルを含んでもよく、それぞれのアンプルは有効量の本発明による化合物、ならびに/またはあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体と、ならびに溶解形態または凍結乾燥形態の有効量のさらなる医薬品活性成分とを含有する。
【0117】
(使用)
本発明化合物は、哺乳動物、特にヒトのチロシンキナーゼ誘導型疾患の治療における医薬活性成分として適している。これらの疾患には、腫瘍細胞の増殖、充実性腫瘍の増殖を促進する病理学的新血管形成(または血管新生)、眼の血管新成(糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性など)および炎症(乾癬、関節リウマチなど)が含まれる。
【0118】
本発明は、癌を治療または予防する医薬品を調製するための、請求項1に記載の本発明による化合物、ならびに/または生理学的に許容されるその塩および溶媒和物の使用を包含する。治療に好ましい癌腫は、脳腫瘍、尿生殖路癌、リンパ系の癌腫、胃癌、喉頭癌および肺癌の群に由来する。癌の好ましい形態のさらなる群は、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫および乳癌である。
【0119】
さらに、血管新生が関与する疾患を治療または予防する医薬品を調製するための、請求項1に記載の式Iの化合物、ならびに/または生理学的に許容されるその塩および溶媒和物の使用も包含される。血管新生が関与するそのような疾患は、眼疾患、例えば網膜血管形成、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性などである。
【0120】
炎症性疾患を治療または予防する医薬品を調製するための、請求項1に記載の本発明による化合物、ならびに/または生理学的に許容されるその塩および溶媒和物の使用も、本発明の範囲内である。そのような炎症性疾患の例には、関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎および遅延性過敏反応などが含まれる。
【0121】
さらに、哺乳動物におけるチロシンキナーゼ誘導型疾患またはチロシンキナーゼ誘導型状態を治療または予防する医薬品を調製するための、請求項1に記載の本発明による化合物、ならびに/または生理学的に許容されるその塩および溶媒和物の使用であり、その使用では、治療有効量の本発明による化合物を、そのような治療が必要な病気の哺乳動物に投与する使用も含まれる。治療量は特定の疾患によって変化し、当業者は過度な努力をせずに決定することができる。
【0122】
本発明はまた、網膜血管形成を治療または予防する医薬品を調製するための、請求項1に記載の本発明による化合物、ならびに/または生理学的に許容されるその塩および溶媒和物の使用も包含する。
【0123】
例えば糖尿病性網膜症および加齢性黄斑変性などの眼疾患の治療または予防方法も同様に、本発明の一部である。例えば関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎および遅延性過敏反応などの炎症性疾患の治療または予防、ならびに骨肉腫、変形性関節症およびくる病の群に由来する骨の異常の治療または予防のための使用も同様に本発明の範囲内である。
【0124】
用語「チロシンキナーゼ誘導型疾患または状態」は、1種または複数のチロシンキナーゼの活性に依存する病的状態を指す。チロシンキナーゼは、増殖、接着および移動および分化を含む種々の細胞活性のシグナル伝達経路に、直接的または間接的のいずれかで関与している。チロシンキナーゼ活性が関係する疾患には、腫瘍細胞の増殖、充実性腫瘍の増殖を促進する病理学的新血管形成、眼の新血管形成(糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性など)および炎症(乾癬、関節リウマチなど)が含まれる。
【0125】
請求項1に記載の本発明による化合物は、癌を治療するために患者に投与することができる。本発明の化合物は、腫瘍血管新生を阻害し、それによって腫瘍の増殖に影響を与える(J.Rakら、Cancer Research、55:4575〜4580、1995)。請求項1に記載の本発明による本発明化合物の血管新生阻害特性はまた、網膜新血管形成に関連する失明のある種の形態の治療に適している。
【0126】
請求項1に記載の化合物はまた、例えば骨肉腫、変形性関節症および発癌性骨軟化症としても知られる、くる病などのある種の骨の異常の治療に適している(Hasegawaら、Skeletal Radiol.28、41〜45頁、1999;Gerberら、Nature Medicine、第5巻、第6号、623〜628頁、1999年6月)。VEGFは、成熟破骨細胞で発現したKDR/Flk−1を通して破骨細胞の骨吸収を直接的に促進するので(FEBS Let.473:161〜164(2000);Endocrinology、141:1667(2000))、本発明化合物はまた、例えば骨粗鬆症およびパジェット病などの骨吸収に関連する状態の治療および予防に適している。この化合物はまた、脳浮腫、組織損傷および虚血後の再潅流傷害を軽減することによって、例えば脳卒中などの脳虚血事象の後に生じる組織損傷の軽減または予防に使用することができる(Drug News Perspect 11:265〜270(1998);J.Clin.Invest.104:1613〜1620(1999))。
【0127】
したがって、本発明は、キナーゼシグナル伝達の阻害、調整(regulation)および/または調節(modulation)が役割を果たす疾患を治療する医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の使用に関する。
【0128】
ここで好ましいのは、チロシンキナーゼおよびRafキナーゼからなる群から選択されるキナーゼである。
【0129】
チロシンキナーゼは好ましくは、TIE−2である。
【0130】
好ましいのは、請求項1に記載の化合物でチロシンキナーゼを阻害することによって影響を受ける疾患を治療する医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の使用である。
【0131】
特に好ましいのは、請求項1に記載の化合物でTIE−2を阻害することによって影響を受ける疾患を治療する医薬品を調製するための使用である。
【0132】
特に好ましいのは、充実性腫瘍である疾患を治療するための使用である。
【0133】
充実性腫瘍は好ましくは、脳腫瘍、尿生殖器の腫瘍、リンパ系の腫瘍、胃腫瘍、喉頭腫瘍および肺腫瘍からなる群から選択される。
【0134】
充実性腫瘍はさらに好ましくは、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫および乳癌からなる群から選択される。
【0135】
本発明はさらに、血管新生が関与する疾患を治療するための本発明による化合物の使用に関する。
【0136】
この疾患は好ましくは、眼疾患である。
【0137】
本発明はさらに、網膜血管形成、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性および/または炎症性疾患を治療するための使用に関する。
【0138】
炎症性疾患は好ましくは、関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎および遅延性過敏反応からなる群から選択される。
【0139】
本発明はさらに、骨の異常が骨肉腫、変形性関節症およびくる病の群に由来する骨の異常を治療するための本発明による化合物の使用に関する。
【0140】
請求項1に記載の式Iの化合物は、A−Raf、B−RafおよびRaf−1からなる群から選択されるRafキナーゼによって引き起こされ、仲介され、かつ/または進行する疾患を治療する医薬品を調製するのに適している。好ましくは、疾患、好ましくは過剰増殖性および非過剰増殖性疾患の群からの疾患を治療するための使用である。これらは癌性疾患または非癌性疾患である。非癌性疾患は、乾癬、関節炎、炎症、子宮内膜症、瘢痕化、良性前立腺肥大、免疫疾患、自己免疫疾患および免疫不全疾患からなる群から選択される。
【0141】
癌性疾患は、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸直腸癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、食道癌、婦人科癌、甲状腺癌、リンパ腫、慢性白血病および急性白血病からなる群から選択される。
【0142】
本発明による化合物は、治療する状態に対して特に有用なために選択されたその他のよく知られた治療剤と同時に投与してもよい。例えば、骨疾患の場合に好ましい組合せには、例えばアレンドロネートおよびリセドロネートなどの再吸収を阻害するビスホスホネート;例えばαvβ3アンタゴニストなどのインテグリン遮断薬(以下でさらに定義する);例えばPrempro(登録商標)、Premarin(登録商標)およびEndometrion(登録商標)などのホルモン補充療法で使用するコンジュゲートしたエストロゲン;例えばラロキシフェン、ドロロキシフェン、CP−336.156(Pfizer)およびラソフォキシフェンなどの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);カテプシンK阻害剤;およびATPプロトンポンプ阻害剤;などとの組合せがある。
【0143】
本発明化合物は、既知の抗癌剤との組合せにも適している。これらの既知の抗癌剤には、以下のものがある:エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性薬、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤およびその他の血管新生阻害剤。本発明化合物は、放射線治療と同時に投与するのに特に適している。放射線治療との組合せでVEGFを阻害する相乗作用は、当技術分野で記載されている(WO00/61186参照)。
【0144】
「エストロゲン受容体モジュレータ」は、機序に拘らず、エストロゲンの受容体への結合を妨げるまたは阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体モジュレータの例には、これらだけに限定するものではないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンおよびSH646が含まれる。
【0145】
「アンドロゲン受容体モジュレータ」は、機序に拘らず、アンドロゲンの受容体への結合を妨げるまたは阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体モジュレータの例には、フィナステリドおよびその他の5αレダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾールおよび酢酸アビラテロンが含まれる。
【0146】
「レチノイド受容体モジュレータ」は、機序に拘らず、レチノイドの受容体への結合を妨げるまたは阻害する化合物を指す。そのようなレチノイド受容体モジュレータの例には、ベキサロテン、トレチノイン、13−cis−レチノイン酸、9−cis−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、trans−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチンアミドおよびN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが含まれる。
【0147】
「細胞毒性薬」は、主に細胞機能への直接の作用を通して細胞死に至る、あるいは細胞の減数分裂を阻害するまたは妨げる化合物を指し、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレーター、マイクロチューブリン阻害剤およびトポイソメラーゼ阻害剤がある。
【0148】
細胞毒性薬の例としては、これらだけに限定するものではないが、チラパジミン(tirapazimine)、セルテネフ、カケクチン、イフォスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン(prednimustine)、ジブロモダルシトール(dibromodulcitol)、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン(heptaplatin)、エストラムスチン、イムプロスルファントシレート(improsulfan tosylate)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ(pumitepa)、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン(profiromycin)、シスプラチン、イロフルベン、デキシフォスファミド(dexifosfamide)、cis−アミンジクロロ(2−メチルピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルフォスファミド、GPX100、(trans,trans,trans)ビス−μ−(ヘキサン−1,6−ジアミン)μ−[ジアミン白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリシジニルスペルミン(diarisidinylspermine)、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン(zorubicin)、イダルビシン、ダウノルビシン、ビスアントレン(bisantrene)、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド(pinafide)、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン(annamycin)、ガラルビシン(galarubicin)、エリナフィド、MEN10755および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニルダウノルビシン(WO00/50032参照)が含まれる。
【0149】
マイクロチューブリン阻害剤の例としては、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、ミボブリンイセチオネート、アウリスタチン(auristatin)、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリトフィシン(cryptophycin)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−1−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258およびBMS188797が含まれる。
【0150】
トポイソメラーゼ阻害剤のいくつかの例は、トポテカン、ヒカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソベンジリデン−カルトレウシン(chartreusin)、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]インドリジノ[1,2b]キノリン−10.13(9H,15H)ジオン、ルルトテカン(lurtotecan)、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)−カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシエトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン(asulacrine)、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]フェナンスリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン−5.10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7.10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2−(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オンおよびジメスナである。
【0151】
「抗増殖剤」としては、アンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド、例えばG3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231およびINX3001、ならびに代謝拮抗剤、例えばエノシタビン、カルモフル(carmofur)、テガフル(tegafur)、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキセート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクフォスフェート、フォステアビン(fosteabine)ナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド(paltitrexed)、エミテフル、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−1−グリセロ−B−L−マンノヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナスシジン(ecteinascidin)、トロキサシタビン(troxacitabine)、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b]−1,4−チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−1−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1.11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デキシラゾキサン(dexrazoxane)、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシンおよび3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾンが含まれる。「抗増殖剤」にはまた、例えばトラスツズマブなどの「血管新生阻害剤」として挙げたもの以外の増殖因子に対するモノクローナル抗体、および例えば組換えウイルス媒介遺伝子移動を介して送達できるp53などの腫瘍抑制遺伝子が含まれる(例えば、米国特許第6069134号参照)。
【0152】
本発明はさらに、血管新生における障害を特徴とする疾患を治療する医薬品を調製するための本発明による化合物の使用に関する。
【0153】
この疾患は好ましくは、癌疾患である。
【0154】
血管新生における障害は好ましくは、VEGFR−1、VEGFR−2および/またはVEGFR−3活性における障害の結果である。
【0155】
したがって、また特に好ましいのは、VEGFR−2活性を阻害する医薬品を調製するための本発明による化合物の使用である。
【0156】
(アッセイ)
実施例に記載した本発明による化合物は、以下に記載のアッセイで試験し、キナーゼ阻害活性を有することが見出された。その他のアッセイは文献から既知であり、当業者は容易に実施できるであろう(例えば、Dhanabalら、Cancer Res.59:189〜197;Xinら、J.Biol.Chem.274:9116〜9121;Sheuら、Anticancer Res.18:4435〜4441;Ausprunkら、Dev.Biol.38:237〜248;Gimbroneら、J.Natl.Cancer Inst.52:413〜427;Nicosiaら、In Vitro 18:538〜549参照)。
【0157】
VEGF受容体キナーゼアッセイ
VEGF受容体キナーゼ活性は、放射標識リン酸を4:1のポリグルタミン酸/チロシン基質(pEY)に取り込ませることによって測定する。リン酸化pEY生成物をフィルター膜上に捕捉し、放射標識リン酸の取込みはシンチレーション計数によって定量化する。
【0158】
材料
VEGF受容体キナーゼ
ヒトKDRの細胞内チロシンキナーゼドメイン(Terman,B.I.ら、Oncogene(1991)、第6巻、1677〜1683頁)およびFlt−1(Shibuya,M.ら、Oncogene(1990)、第5巻、519〜524頁)をグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子融合タンパク質としてクローニングした。これは、KDRキナーゼの細胞質ドメインをフレーム内融合物としてGST遺伝子のカルボキシル末端でクローニングすることによって達成した。可溶性組換えGST−キナーゼドメイン融合タンパク質は、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf21)昆虫細胞(Invitrogen)で、バキュロウイルス発現ベクター(pAcG2T、Pharmingen)を使用して発現した。
【0159】
溶解バッファ
50mMのTris pH7.4、0.5MのNaCl、5mMのDTT、1mMのEDTA、0.5%トリトンX−100、10%グリセロール、各10mg/mlのロイペプチン、ペプスタチンおよびアプロチニン、ならびに1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル(すべてSigma)。
【0160】
洗浄バッファ
50mMのTris pH7.4、0.5MのNaCl、5mMのDTT、1mMのEDTA、0.05%トリトンX−100、10%グリセロール、各10mg/mlのロイペプチン、ペプスタチンおよびアプロチニン、ならびに1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル。
【0161】
透析バッファ
50mMのTris pH7.4、0.5MのNaCl、5mMのDTT、1mMのEDTA、0.05%トリトンX−100、50%グリセロール、各10mg/mlのロイペプチン、ペプスタチンおよびアプロチニン、ならびに1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル。
【0162】
10×反応バッファ
200mMのトリス、pH7.4、1.0MのNaCl、50mMのMnCl2、10mMのDTTおよび5mg/mlのウシ血清アルブミン[BSA](Sigma)。
【0163】
酵素希釈バッファ
50mMのTris、pH7.4、0.1MのNaCl、1mMのDTT、10%グリセロール、100mg/mlのBSA。
【0164】
10×基質
750μg/mlのポリ(グルタミン酸/チロシン;4:1)(Sigma)。
【0165】
停止溶液
30%トリクロロ酢酸、0.2Mのピロリン酸ナトリウム(いずれもFisher)。
【0166】
洗浄溶液
15%トリクロロ酢酸、0.2Mのピロリン酸ナトリウム。
【0167】
フィルタープレート
Millipore #MAFC NOB、GF/Cグラスファイバー96ウェルプレート。
【0168】
方法A−タンパク質の精製
1.Sf21細胞を組換えウイルスに5個のウイルス粒子/細胞の多重感染で感染させ、27℃で48時間増殖させた。
2.すべてのステップは4℃で実施した。感染した細胞を1000×gの遠心分離で収集し、4℃で30分間、1/10容の溶解バッファで溶解し、次いで100.000×gで1時間遠心分離した。次に、溶解バッファで平衡化したグルタチオンセファロースカラム(Pharmacia)に上清を通し、5容の同じバッファ、次に5容の洗浄バッファで洗浄した。組換えGST−KDRタンパク質を洗浄バッファ/10mMの還元グルタチオン(Sigma)で溶離し、透析バッファで透析した。
【0169】
方法B−VEGF受容体キナーゼアッセイ
1.阻害剤または対照5μlを50%のDMSO中のアッセイに加える。
2.10×反応バッファ5μl、25mMのATP/10μCi[33P]ATP(Amersham)および10×基質5μlを含有する反応混合物35μlを加える。
3.酵素希釈バッファ中のKDR(25nM)10μlの添加によって反応を開始する。
4.混合し、室温で15分間インキュベートする。
5.停止溶液50μlの添加によって反応を停止させる。
6.15分間4℃でインキュベートする。
7.アリコート90μlをフィルタープレートに移す。
8.吸引し、洗浄溶液で3回洗浄する。
9.シンチレーションカクテル30μlを加え、プレートを密封し、Wallace Microbetaシンチレーションカウンターで計数する。
【0170】
ヒト臍静脈内皮細胞有糸分裂誘発アッセイ
細胞分裂誘起反応を増殖因子に仲介するVEGF受容体の発現は、血管内皮細胞に主として限定されている。培養物中のヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)は、VEGF治療に応答して増殖し、アッセイ系として使用して、VEGF刺激に対するKDRキナーゼの作用を定量化することができる。記載したアッセイでは、静止状態のHUVEC単層をビヒクルまたは試験化合物で処理し、2時間後にVEGFまたは塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を加える。VEGFまたはbFGFに対する分裂促進応答は、[3H]チミジンの細胞DNAへの取込みを測定することによって判定する。
【0171】
材料
HUVEC
初代培養分離物として冷凍したHUVECをClonetics Corp.から入手する。細胞を内皮増殖培地(EGM;Clonetics)に維持し、分裂促進アッセイに継代3〜7で使用する。
【0172】
培養皿
NUNCLON96ウェルポリスチレン組織培養皿(NUNC#167008)。
アッセイ培地
1g/mlのグルコース(低グルコースDMEM;Mediatech)プラス10%(v/v)のウシ胎児血清(Clonetics)を含有するイーグル培地のダルベッコ改良型。
【0173】
試験化合物
試験化合物の作業原液を100%のジメチルスルホキシド(DMSO)中で連続的に、その所望の最終濃度の400倍に希釈する。細胞に加える直前に、アッセイ培地で1×濃度への最終希釈を行った。
【0174】
10×増殖因子
ヒトVEGF165(500ng/ml;R&D Systems)およびbFGF(10ng/ml;R&D Systems)の溶液をアッセイ培地中で調製する。
【0175】
10×[3H]チミジン
[メチル−3H]チミジン(20Ci/mmol;Dupont−NEN)を低グルコースDMEM中で80μCi/mlに希釈する。
【0176】
細胞洗浄培地
1mg/mlのウシ血清アルブミン(Boehringer−Mannheim)を含有するハンクスの平衡塩溶液(Mediatech)。
【0177】
細胞溶解溶液
1NのNaOH、2%(w/v)のNa2CO3
【0178】
方法1
EGMに維持したHUVEC単層をトリプシン処理で収集し、96ウェルプレートのウェル1個当たりアッセイ培地100μl当たり4000個の細胞の濃度で平板培養する。24時間37℃で、5%のCO2を含有する湿気のある環境で細胞増殖を停止する。
【0179】
方法2
増殖停止培地を、ビヒクル(0.25%[v/v]のDMSO)または所望の最終濃度の試験化合物のいずれかを含有するアッセイ培地100μlで置き換える。すべての判定を3連で行う。次いで細胞を37℃/5%のCO2で2時間インキュベートして、試験化合物を細胞内に入れる。
【0180】
方法3
2時間の予備処理時間の後、アッセイ培地、10×VEGF溶液または10×bFGF溶液いずれかを10μl/ウェル加えることによって細胞を刺激する。次いで、細胞を37℃/5%のCO2でインキュベートする。
【0181】
方法4
増殖因子の存在下で24時間後、10×[3H]チミジン(10μl/ウェル)を加える。
【0182】
方法5
3H]チミジンを加えて3日後、培地を吸引除去し、細胞を細胞洗浄用培地で2回洗浄する(400μl/ウェル、次に200μl/ウェル)。次いで、洗浄した接着細胞を、細胞溶解溶液(100μl/ウェル)を加え、37℃に30分間加温することによって溶解する。細胞溶解物を、水150μlを含有する7mlのガラスシンチレーションバイアルに移す。シンチレーションカクテル(5ml/バイアル)を加え、細胞に結合した放射能を液体シンチレーション分光法で判定する。これらのアッセイによれば、式Iの化合物はVEGFの阻害剤であり、したがって眼疾患、例えば糖尿病性網膜症の治療においてなどの血管新生の阻害、および癌腫、例えば充実性腫瘍の治療に適している。本化合物は、IC50値0.01〜5.0μMの培地中で、ヒト血管内皮細胞のVEGF刺激による有糸分裂誘発を阻害する。これらの化合物はまた、関連のチロシンキナーゼに対して選択性を示す(例えば、FGFR1およびSrcファミリー;SrcキナーゼとVEGFRキナーゼとの間の関係については、Eliceiriら、Molecular Cell、第4巻、915〜924頁、1999年12月参照)。
【0183】
TIE−2試験は、例えば、WO02/44156に示された方法と同様に行うことができる。
【0184】
このアッセイは、放射性33P−ATPの存在下でのTie−2キナーゼによる基質ポリ(Glu、Tyr)のリン酸化における被検物質の阻害活性を判定する。リン酸化物質は、インキュベーション時間中に「フラッシュプレート」マイクロタイタープレートの表面に結合する。反応混合物を除去した後、マイクロタイタープレートを多数回洗浄し、その後、その表面の放射能を測定する。被測定物質の阻害作用は、障害を受けていない酵素反応と比較して低い放射能につながる。
【0185】
上記および下記では、すべての温度は℃である。以下の実施例において、「従来の後処理」は、必要ならば水を加え、最終生成物の構成に応じて必要ならばpHを2と10との間の値に調整し、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発し、生成物をシリカゲルクロマトグラフィーおよび/または結晶化によって精製することを意味する。シリカゲル;溶離液;酢酸エチル/メタノール9:1のRf値。
質量分析(MS):EI(electron impact ionisation:電子衝撃イオン化法)M+
FAB(fast atom bombardment:高速原子衝撃)(M+H)+
ESI(electrospray ionisation:電子スプレーイオン化法)(M+H)+
【0186】
(実施例)
実施例1
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル](4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン(「A1」)の調製を以下のスキームと同様に実施する:
【0187】
【化8】

【0188】
1.1 4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニルアミン(「A2」)の調製:
ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−オール1.8gおよび4−フルオロニトロベンゼン1.3mlをDMF25mlに溶解し、炭酸セシウム3.9gを加える。この反応混合物を終夜85℃で撹拌する。
【0189】
後処理のために水を混合物に加え、これを酢酸エチルで抽出する。集めた有機相を無水硫酸ナトリウムを使用して乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターで蒸発させる。残渣をジエチルエーテルで磨砕し、5−(4−ニトロフェノキシ)ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール2.8gを得る;Rf(CH2Cl2)0.65;EI−MS(M+H)+274。
【0190】
ラネーニッケルを使用してニトロ化合物を水素化し、所望の化合物を得る。石油エーテル/酢酸エチルによるクロマトグラフィーで「A2」1.3gを得る;Rf(石油エーテル/酢酸エチル1/1)0.75、EI−MS(M+H)+ 244。
1.2 「A2」400mgおよび1,1’−チオカルボニルジイミダゾール352mgをジクロロメタン40mlに溶解し、終夜室温で撹拌する。
【0191】
後処理のために溶媒をロータベーパーで除去し、残渣をメタノールで磨砕する。固体物質を吸引濾去し、所望のチオイソシアネート421mgを得る(Rf CH2Cl2 0.67)。
1.3 さらなる反応のために、1−ブロモ−2,3−ジアミノ−5−トリフルオロメチルベンゼン89mgをジクロロメタン0.4mlに溶解する。次に、ジクロロメタン0.4ml中に調製したチオイソシアネート100mgを溶かした溶液、およびジクロロメタン0.3ml中にN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド0.05mlを溶かした溶液を逐次的に加える。この反応混合物を穏やかに加温しながら終夜撹拌する。
【0192】
後処理のために溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発させ、残渣をクロマトグラフィー処理(シリカゲルクロマトグラフィー石油エーテル/酢酸エチル8:2)して、「A1」60mgを得る;Rf(石油エーテル/酢酸エチル1:1)0.51;
EI−MS(M+H)+508。
【0193】
精製には、以下の条件を有する分取HPLCを使用できる:
カラム:RP18(7μm)Lichrosorb 250×25
溶離液:A:98H2O、2CH3CN、0.1%のTFA
B:10H2O、90CH3CN、0.1%のTFA
UV:225NM;流速:10ml/分。
【0194】
以下の化合物を、芳香族ジアミンと対応するチオイソシアネートとの反応によって同様に得る。
【0195】
【表1】

【0196】
【表2】

【0197】
【表3】

【0198】
【表4】

【0199】
【表5】

【0200】
【表6】

【0201】
【表7】

【0202】
【表8】

【0203】
【表9】

【0204】
【表10】

【0205】
【表11】

【0206】
【表12】

【0207】
【表13】

【0208】
以下の実施例は、医薬製剤に関する。
【0209】
実施例A:注射バイアル
本発明による活性成分100gおよびリン酸水素二ナトリウム5gを含む再蒸留水3lの溶液を、2Nの塩酸を使用してpH6.5に調整し、滅菌濾過し、注射バイアルに移し、滅菌条件下で凍結乾燥し、滅菌条件下で密封する。各注射バイアルは活性成分5mgを含有する。
【0210】
実施例B:坐薬
本発明による活性成分20gと、ならびに大豆レシチン100gおよびカカオ脂1400gとの混合物を融解し、型に注ぎ、冷却させる。各坐薬は活性成分20mgを含有する。
【0211】
実施例C:溶液
本発明による活性成分1g、NaH2PO4・2H2O9.38g、Na2HPO4・12H2O28.48gおよび塩化ベンズアルコニウム0.1gを含む再蒸留水940mlから溶液を調製する。pHを6.8に調整し、溶液を1lにし、照射で殺菌する。この溶液は点眼液の形態で使用できる。
【0212】
実施例D:軟膏
本発明による活性成分500mgを、ワセリン99.5gと無菌状態で混合する。
【0213】
実施例E:錠剤
本発明による活性成分1kg、ラクトース4kg、馬鈴薯澱粉1.2kg、タルク0.2kgおよびステアリン酸マグネシウム0.1kgの混合物を押圧して、各錠剤が活性成分10mgを含有するように従来方法で錠剤を得る。
【0214】
実施例F:コーティング錠剤
錠剤を実施例Eと同様に押圧し、次いでスクロース、馬鈴薯澱粉、タルク、トラガカントおよび色素のコーティングにより従来方法で被覆する。
【0215】
実施例G:カプセル剤
本発明による活性成分2kgを、各カプセル剤が活性成分20mgを含有するように従来方法でハードゼラチンカプセルに入れる。
【0216】
実施例H:アンプル剤
本発明による活性成分1kgを含む再蒸留水60lの溶液を滅菌濾過し、アンプルに移し、滅菌条件下で凍結乾燥し、滅菌条件下で密封する。各アンプルは活性成分10mgを含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

[式中、
1、R1'は、それぞれ互いに独立に、Hal、A、OH、OA、CN、COOH、COOA、CONH2、CONHAまたはCONA2を表し、
Lは、CH2、CH2CH2、O、S、SO、SO2、NH、NA、C=OまたはCHOHを表し、
Yは、以下のリストから選択される複素環を表し、
【化2】

2は、Hal、A、OH、OA、CN、COOH、COOA、CONH2、CONHAまたはCONA2を表し、
3は、H、A、NH2、COOH、COOA、CONH2、CONHA、CONA2またはNHCOOAを表し、
Xは、S、O、NH、NAまたはCH2を表し、
Zは、−CH=、CH2、NH、−N=またはC=Oを表し、
Z’は、SまたはOを表し、
Aは、C原子1〜10個を有する非分枝状、分枝状または環状のアルキルを表し、ここでさらに、H原子1〜7個はFおよび/または塩素で置換されてもよく、
Halは、F、Cl、BrまたはIを表し、
m、p、qは、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3または4を表し、
nは、1、2または3を表す]、
ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体。
【請求項2】
1が、AまたはHalを表し、
mが、1、2または3を表す、
請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体。
【請求項3】
1が、CF3、FまたはBrを表し、
mが、1、2または3を表す、
請求項1または2に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体。
【請求項4】
1'が、HalまたはAを表し、
pが、0または1を表す、
請求項1から3の一項または複数項に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体。
【請求項5】
Lが、O、SまたはCH2を表す、
請求項1から4の一項または複数項に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体。
【請求項6】
2が、A、COOAまたはCONH2を表し、
qが、0、1または2を表す、
請求項1から5の一項または複数項に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体。
【請求項7】
3が、H、NH2またはCOOAを表す、
請求項1から6の一項または複数項に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体。
【請求項8】
1は、AまたはHalを表し、
mは、1、2または3を表し、
1'は、HalまたはAを表し、
pは、0または1を表し、
Lは、O、SまたはCH2を表し、
Yは、以下のリストから選択される複素環を表し、
【化3】

2は、A、COOAまたはCONH2を表し、
qは、0、1または2を表し、
3は、H、NH2またはCOOAを表し、
nは、1、2または3を表す、
請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体。
【請求項9】
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルオキシ)フェニル]−(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−4−イルオキシ)フェニル]−(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(イミダゾ[1,2−a]キノリン−9−イルオキシ)フェニル]アミン、
(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(イミダゾ[1,2−a]キノリン−9−イルオキシ)フェニル]アミン、
(7−ブロモ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(2−ブチルイミダゾ[4,5−b]ピリジン−4−イルメチル)フェニル]アミン、
[4−(2−ブチルイミダゾ[4,5−b]ピリジン−4−イルメチル)フェニル]−(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(1H−インドール−6−イルオキシ)フェニル]アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−4−イルオキシ)フェニル]−(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(1H−インドール−5−イルオキシ)フェニル]アミン、
(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(1H−インドール−5−イルオキシ)フェニル]アミン、
(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(1H−インドール−6−イルオキシ)フェニル]アミン、
(7−ブロモ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−(4−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イルメチルフェニル)アミン、
(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−(4−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−3−イルメチルフェニル)アミン、
(7−ブロモ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ピリド[3,2,1−ij]キノリン−8−イルオキシ)フェニル]アミン、
(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ピリド[3,2,1−ij]キノリン−8−イルオキシ)フェニル]アミン、
エチル5−[4−(7−ブロモ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]−1H−インドール−2−カルボキシレート、
エチル5−[4−(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]−1H−インドール−2−カルボキシレート、
メチル7−[4−(7−ブロモ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]ベンゾフラン−2−カルボキシレート、
メチル7−[4−(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]ベンゾフラン−2−カルボキシレート、
[4−(ベンゾ−1,2,5−オキサジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
7−[4−(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]ベンゾフラン−2−カルボキサミド、
7−[4−(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]ベンゾフラン−2−カルボキサミド、
[4−(ベンゾ−1,2,5−オキサジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(4−フルオロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−4−イルオキシ)フェニル]−(4−フルオロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルオキシ)フェニル]−(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(3−メチル−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミン、
6−[4−(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]−4,7−ジメチルベンゾチアゾール−2−イルアミン、
(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イルオキシ)フェニル]アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(4−フルオロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(4,6−ジフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[2−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルオキシ)フェニル]アミン、
4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(4,5−ジフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(5,6−ジフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[2−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルオキシ)フェニル]アミン、
6−[4−(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]ベンゾチアゾール−2−イルアミン、
(6,7−ジフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(3−メチル−3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミン、
(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(2−メチルベンゾチアゾール−5−イルオキシ)フェニル]アミン、
(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(2−メチルベンゾチアゾール−5−イルオキシ)フェニル]アミン、
[2−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(7−ブロモ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イルオキシ)フェニル]アミン、
[2−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルオキシ)フェニル]アミン、
(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルオキシ)フェニル]アミン、
[2−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−4−イルオキシ)フェニル]−(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[2−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−4−イルオキシ)フェニル]−(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(1−メチル−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−(7−ブロモ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−3−メチルフェニル]−(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−2−メチルフェニル]−(7−ブロモ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−2−メチルフェニル]−(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−5−イルオキシ)フェニル]アミン、
(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−5−イルオキシ)フェニル]アミン、
[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−4−イルオキシ)フェニル]−(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−4−イルオキシ)フェニル]−(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルオキシ)フェニル]−(4,5−ジフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルオキシ)フェニル]−(5−フルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルオキシ)フェニル]−(4,6−ジフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(5−フルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)フェニル]−(4,5,6−トリフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(6−クロロ−4−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[2−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルオキシ)フェニル]アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルスルファニル)フェニル]−(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルスルファニル)フェニル]−(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(インダン−5−イルオキシ)フェニル]アミン、
5−[4−(6−フルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]インダン−1−オン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−3−フルオロフェニル]−(7−ブロモ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
[4−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルオキシ)−3−フルオロフェニル]−(7−クロロ−5−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(6,7−ジフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(インダン−5−イルオキシ)フェニル]アミン、
(6−フルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(インダン−5−イルオキシ)フェニル]アミン、
[4−(インダン−5−イルオキシ)フェニル]−(5,6,7−トリフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)アミン、
(5,7−ジフルオロ−1H−ベンズイミダゾール−2−イル)−[4−(インダン−5−イルオキシ)フェニル]アミン、
エチル5−[4−(4−ブロモ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]ベンゾフラン−2−カルボキシレート、
エチル5−[4−(4−クロロ−6−トリフルオロメチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]ベンゾフラン−2−カルボキシレート
の群から選択される請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体。
【請求項10】
請求項1から9に記載の式Iの化合物、ならびに薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の調製方法であって、
式IIの化合物
【化4】

[式中、R1およびmは、請求項1で示した意味を有する]
を、式IIIの化合物
【化5】

[式中、R1'、L、Yおよびpは、請求項1で示した意味を有する]
と反応させること、
および/または式Iの塩基もしくは酸をその塩の1つに変換すること
を特徴とする調製方法。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体、の少なくとも1種と、ならびに場合により賦形剤および/またはアジュバントとを含む医薬品。
【請求項12】
キナーゼシグナル伝達の阻害、調整および/または調節が役割を果たす疾患を治療する医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の使用。
【請求項13】
キナーゼが、チロシンキナーゼおよびRafキナーゼの群から選択される請求項12に記載の使用。
【請求項14】
チロシンキナーゼがTIE−2である請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物によるチロシンキナーゼの阻害によって影響を受ける疾患を治療する医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の請求項12に記載の使用。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物によるTIE−2の阻害によって影響を受ける疾患を治療する医薬品を調製するための請求項15に記載の使用。
【請求項17】
治療する疾患が充実性腫瘍である請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
充実性腫瘍が、脳腫瘍、尿生殖器の腫瘍、リンパ系の腫瘍、胃腫瘍、喉頭腫瘍および肺腫瘍の群に由来する請求項17に記載の使用。
【請求項19】
充実性腫瘍が、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫および乳癌の群に由来する請求項17に記載の使用。
【請求項20】
血管新生が関係する疾患を治療するための請求項15または16に記載の使用。
【請求項21】
疾患が眼疾患である請求項20に記載の使用。
【請求項22】
網膜血管形成、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性および/または炎症性疾患を治療するための請求項15または16に記載の使用。
【請求項23】
炎症性疾患が、関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎および遅延性過敏反応の群に由来する請求項22に記載の使用。
【請求項24】
骨肉腫、変形性関節症およびくる病の群に由来する骨の異常を治療するための請求項15または16に記載の使用。
【請求項25】
請求項1に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体、の少なくとも1種と、少なくとも1種のさらなる医薬活性成分とを含む医薬品。
【請求項26】
(a)有効量の請求項1に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体と、ならびに
(b)有効量のさらなる医薬活性成分と、
の別個のパックからなるセット(キット)。
【請求項27】
充実性腫瘍を治療する医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびに/または生理学的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用であって、請求項1に記載の化合物の治療有効量を、1)エストロゲン受容体モジュレータ、2)アンドロゲン受容体モジュレータ、3)レチノイド受容体モジュレータ、4)細胞毒性剤、5)抗増殖剤、6)プレニル‐タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、8)HIVプロテアーゼ阻害剤、9)逆転写酵素阻害剤および10)さらなる血管新生阻害剤の群からの化合物と組み合わせて投与する使用。
【請求項28】
充実性腫瘍を治療する医薬品を調製するための、請求項1に記載の化合物、ならびに/または生理学的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用であって、請求項1に記載の化合物の治療有効量を、放射線治療、ならびに1)エストロゲン受容体モジュレータ、2)アンドロゲン受容体モジュレータ、3)レチノイド受容体モジュレータ、4)細胞毒性剤、5)抗増殖剤、6)プレニル‐タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、8)HIVプロテアーゼ阻害剤、9)逆転写酵素阻害剤および10)さらなる血管新生阻害剤の群からの化合物と組み合わせて投与される使用。
【請求項29】
TIE−2の活性障害に基づく疾患を治療する医薬品を調製するための請求項12、13または14に記載の使用であって、
請求項1に記載の化合物の治療有効量が、増殖因子受容体阻害剤と組み合わせて投与される使用。
【請求項30】
Rafキナーゼによって引き起こされ、仲介され、および/または進行する疾患を治療する医薬品を調製するための、
請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる割合のそれらの混合物を含む、薬剤として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体の請求項12または13に記載の使用。
【請求項31】
Rafキナーゼが、A−Raf、B−RafおよびRaf−1からなる群から選択される請求項30に記載の使用。
【請求項32】
疾患が、過剰増殖性および非過剰増殖性疾患の群から選択される請求項30に記載の使用。
【請求項33】
疾患が癌である請求項30または32に記載の使用。
【請求項34】
疾患が非癌性である請求項30または32に記載の使用。
【請求項35】
非癌性疾患が、乾癬、関節炎、炎症、子宮内膜症、瘢痕化、良性前立腺肥大、免疫疾患、自己免疫疾患および免疫不全疾患からなる群から選択される請求項30、32または34に記載の使用。
【請求項36】
疾患が、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸直腸癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、食道癌、婦人科癌、甲状腺癌、リンパ腫、慢性白血病および急性白血病からなる群から選択される請求項30、32または33の一項に記載の使用。

【公表番号】特表2007−502786(P2007−502786A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523546(P2006−523546)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008042
【国際公開番号】WO2005/019216
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】