説明

アミノ含有生物活性剤のトリアルキルロック促進性重合体プロドラッグ

【課題】親化合物の溶解性とプロドラッグの循環半減期が十分に増加した、重合体に基づく輸送体を含有する二重プロドラッグの提供。
【解決手段】式(I)


(式中、Bは例えばアミンまたはヒドロキシル含有薬効成分の残基;L1およびL2は二官能性連結部分;Y2はOまたはS;R2はアルキル等;R9、R10およびR13は、独立して水素、等;Arは、多置換芳香族炭化水素または多置換ヘテロ環式基を形成する部分;(m)は0または1;およびR11はポリエチレングリコールを含む重合体残基)の重合体化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重プロドラッグ(double prodrug)に関する。特に、本発明は、化合物および生物学的に活性な物質(例えば、酵素、タンパク質など)のアミノまたはヒドロキシル部分を含む可逆的連結を有する、重合体に基づく二重プロドラッグに関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、生物学的に有効な物質を哺乳動物に投与するためのいくつかの方法が提案されてきた。多数の医薬物質は水溶性塩として入手可能であり、比較的容易に医薬製剤中に含有されうる。所望の医薬物質が水性流体に不溶性であるか又はin vivoで急速に分解する場合には、問題が生じる。例えば、アルカロイドは可溶化が特に困難な場合が多い。
【0003】
医薬物質を可溶化するための1つの方法は、それらを可溶性プロドラッグの一部として含有させることである。プロドラッグは、生物学的に活性な親化合物の化学的誘導体を含み、これは、投与されると、最終的に親化合物をin vivoで遊離する。プロドラッグは、ある物質のin vivoにおける作用の発現および/または持続時間を当業者が変更するのを可能にし、体内での薬物の輸送、分布または溶解性を変更しうる。さらに、プロドラッグ製剤は、しばしば、毒性を弱め、および/または、医薬製剤を投与する場合に遭遇する問題点を克服する。プロドラッグの典型例には、アルコールもしくはチオアルコールのエステルまたは有機ホスファートが含まれる。非特許文献1を参照されたい(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)。
【0004】
プロドラッグは、しばしば、親もしくは活性化合物の生物学的に不活性な又は実質的に不活性な形態である。活性薬物の放出速度、すなわち加水分解速度は、いくつかの要因に影響されるが、特に、親薬物を修飾因子に連結する結合のタイプに影響される。十分な量の親化合物の加水分解が生じる前に腎臓または網内系などを介して排泄されるプロドラッグの調製を避けるように注意しなければならない。プロドラッグの一部として重合体を含めることにより、該薬物の循環半減期を増加させることができる。
【0005】
プロドラッグに基づくデリバリーシステムの前記概念は多くの場合に有用であることが判明しているが、それにもかかわらず、その他の方法が望ましい場合がある。例えば、非特許文献2(その内容を参照により本明細書に組み入れることとする)中の“The Double Prodrug Concept and Its Applications”においてBundgaardは、十分なin vitro安定性とin vivoで親薬物を再生する高い感受性との適切な組合せを有するプロドラッグを得ることは多くの場合に困難であると指摘している。Bundgaardが指摘しているとおり、これまでに遭遇した問題点のいくつかを克服するための有望な手段は、カスケード潜在化(cascade latentiation)または「プロ-プロドラッグ(pro-prodrugs)」の使用を含む。そのような系では、一連の加水分解反応は、通常は酵素的切断である第1工程を含み、第2工程は、第1工程が生じた後でしか起こらない非酵素的加水分解を含む。重合体に基づく輸送系をカスケード潜在化技術の一部として用いることは開示されていない。
【0006】
最近、Shan, Dらは、アミン含有薬物のプロドラッグの製造に関連した問題に注目している(“Prodrug Strategies Based on Intramolecular Cyclization Reactions” 非特許文献3;その内容を参照により本明細書に組み入れることとする)。アミド結合が相対的に安定になることを避けるために、該著者らは、親薬物を放出するよう分子内環化反応を受けうる種々の部分を含むプロドラッグを開示している。該環化反応を開始する化学的または生物学的な誘発メカニズムは、アミド結合の加水分解を介して元の薬物を放出するのに要求されるものには依存しない。ここでもまた、非重合体に基づく系が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第16版, A. Osol編(1980)
【非特許文献2】Advanced Drug Delivery Reviews, 3 (1989) 39-65
【非特許文献3】J. Pharm. Sci. 1997年7月, Vol. 86, No 7, 765-767
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
二重プロドラッグの分野における報告されている成果にもかかわらず、いくつかの具体的な問題が十分には検討されていないと考えられる。例えば、既に報告されている技術においては、多数の親化合物の溶解性の問題が十分には検討されていない。また、プロドラッグの循環半減期が十分に増加するよう設計するという課題も、十分には検討されていない。したがって、二重プロドラッグの概念から得られる追加的なプロドラッグ形成技術を提供することが依然として必要とされている。例えば、生物学的効果を調節するような輸送担体結合のための代替的な技術を当業者に提供することができれば好都合であろう。さらに、親化合物がアミノ残基および/またはヒドロキシル残基を含むことに関連した問題を検討し、生理的pHにおける親化合物からの該輸送体の過度に速い又は遅い加水分解を避けるための追加的な技術を得ることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の概要)
本発明は、前記の課題に向けられている。本発明の1つの態様においては、式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、
BはH、OH、OSiR13、アミン含有標的成分の残基、またはヒドロキシル含有成分の残基である;
L1は二官能性連結部分、例えば、
【化2】

である;
L2は二官能性連結部分、例えば、
【化3】

である;
Gは
【化4】

またはCH2である;
Y1-2は、独立して、OまたはSである;
MはXまたはQである;
Xは電子吸引性基であり、
Qは、C(=Y2)から3〜6番目の原子に位置するフリーの電子対(free electron pair)を含有する部分である;
R1、R2およびR4は、独立して、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アルアルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシの1つである;
R7、R8、R9、R10およびR13は、独立して、水素またはR1、R2およびR4の定義の群のメンバーである;
Arは、式(I)に含まれる場合には、多置換芳香族炭化水素または多置換ヘテロ環式基を形成する部分である;
(m)は0または1である;
(n)は0または正の整数である;
(p)は0、1または2である;
(q)は3または4である;および
R11は重合体残基、例えば、水溶性ポリアルキレンオキシドである)
で表される化合物を提供する。
【0012】
ある好ましい態様においては、Arはジアルキル置換フェニル(例えば、ジメチルフェニル)であり、および/または、Bは脱離基、例えば、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシフタルイミジル、ハロゲン、p-ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、チアゾリジルチオンまたは他の活性化基である。あるいは、Bは、水溶性の改善、抗原性の減少、プロドラッグおよび/または制御放出性デリバリーの1以上が望まれる任意のアミノ含有またはヒドロキシル含有化合物の残基である。例えば、Bは、酵素、タンパク質または有機化合物(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、p-アミノアニリンマスタード、カンプトテシン、パクリタクセル、アラCなど)の残基であってもよい。
【0013】
本発明の目的においては、「残基」なる語は、ヒドロキシルまたはアミノ基の修飾により該プロドラッグ担体部分を結合させる反応を受けた後に残存する生物学的に活性な化合物の部分を意味すると理解されるものとする。
【0014】
本発明の目的においては、「アルキル」なる語は、直鎖、分枝、置換C1-12アルキル(アルコキシ、C3-8シクロアルキルまたは置換シクロアルキルなどを含む)を含むと理解されるものとする。
【0015】
このように、本発明の二重プロドラッグは独特のデリバリーシステムである。好ましくは、まず、重合体部分が加水分解またはエステラーゼ活性により遊離され、ついで、生じた「第2プロドラッグ」部分が環化反応を受けて、アミン含有またはヒドロキシル含有親(すなわち生物活性)化合物をin vivoで再生する。
【0016】
本発明の二重プロドラッグ化合物の主な利点のいくつかとしては、それがアミン含有またはヒドロキシル含有化合物を可溶化し、天然体または更には「第2」プロドラッグ対応物と比べてその半減期を延長しうる点が挙げられる。また、重合体部分は、抗原性を弱める効果を親化合物にもたらしうる。本発明の系のもう1つの利点としては、重合体部分と「第2プロドラッグ」化合物(前記のとおり)との間の連結が、増加した溶解性および循環半減期を該化合物が保有するのを可能にする速度で加水分解または切断されるように設計されている点が挙げられる。しかしながら、該天然薬物は、この時点ではまだ遊離されない。「第2プロドラッグ」が比較的速いトリアルキルロック(trialkyl lock)ラクトン化反応を受けてはじめて、所望の天然または親分子が遊離されることになる。本発明のこの二重プロドラッグアプローチが、天然または未修飾分子の循環半減期および溶解性を増加させる特有かつ予想外の特徴を与えることが、容易に認められる。
【0017】
本明細書に記載の化合物およびコンジュゲートの製造方法および使用方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の二重プロドラッグを形成させる2つの方法を図式的に例示する。
【図2】図2は、本発明の二重プロドラッグを形成させる2つの方法を図式的に例示する。
【図3】図3は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図4】図4は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図5】図5は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図6】図6は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図7】図7は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図8】図8は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図9】図9は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図10】図10は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図11】図11は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図12】図12は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図13】図13は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図14】図14は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図15】図15は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【図16】図16は、実施例に関連した反応スキームを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な記載
A.式(I)
本発明の1つの態様においては、式(I):
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、
BはH、OH、OSiR13、アミン含有標的成分の残基、またはヒドロキシル含有成分の残基である;
L1は二官能性連結部分、例えば、
【化6】

である;
L2は二官能性連結部分、例えば、
【化7】

である;
Gは
【化8】

またはCH2である;
Y1-2は、独立して、OまたはSである;
MはXまたはQである;
Xは電子吸引性基であり、
Qは、C(=Y2)から3〜6番目の原子に位置するフリーの電子対を含有する部分である;
R1、R2およびR4は、独立して、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アルアルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシの1つである;
R7、R8、R9、R10およびR13は、独立して、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アルアルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシの1つである;
Arは、式(I)に含まれる場合には、多置換芳香族炭化水素または多置換ヘテロ環式基を形成する部分である;
(m)は0または1である;
(n)は0または正の整数である;
(p)は0、1または2である;
(q)は3または4である;および
R11は重合体残基である)
で表される化合物を提供する。
【0022】
B.Ar部分の説明
式(I)を参照すると、Ar部分は、式(I)に含まれる場合には、多置換芳香族炭化水素または多置換ヘテロ環式基を形成する部分であることがわかる。主な特徴は、該Ar部分が実際に芳香族性であることである。一般には、芳香族性となるためには、環状分子平面の上側および下側の両方の「電子雲」内にπ電子が共有されなければならない。さらに、π電子の数はヒュッケル則(4n+2)を満足しなければならない。当業者は、無数の部分が式(I)の部分の芳香族性の要件を満足し、したがって本発明での使用に適していると認識するであろう。
【0023】
好ましい芳香族炭化水素部分には、
【化9】

(式中、JはO、SまたはNR14であり、EおよびZは、独立して、CR14またはNR14であり、R14は、式(I)におけるR9の定義と同じ群(例えば、水素、C1-6アルキルなど)から選ばれる)が含まれるが、これらに限定されるものではない。該5および6員環の異性体も意図され、ベンゾおよびジベンゾ系ならびにそれらの関連同族体も意図される。また、ヒュッケル則が守られる限り、該芳香族環は、所望により、ヘテロ原子(例えば、O、S、NR14など)で置換されていてもよいと当業者に理解されるであろう。さらに、該芳香族またはヘテロ環構造は、所望により、ハロゲンおよび/または側鎖(それらの用語は、当技術分野で一般に理解されているとおりである)で置換されていてもよい。しかしながら、以下に示すとおり、本発明のAr部分に適したすべての構造は、L2およびR2部分が同一平面内でオルト配置となるのを可能にしうる:
【化10】

(式中、L2およびR2は、式(I)についての前記の定義と同じであり、R3、R5およびR6は、独立して、R9の定義の群またはシアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、置換アシル、カルボキシアルキルから選ばれる)。
【0024】
本発明の好ましい態様においては、R2はC1-6アルキルである。より好ましくは、R2はメチルである。さらに、R1およびR4は、好ましくはアルキル、例えばメチルである。Y1-2は、好ましくはOであり、(p)は、好ましくは1である。
【0025】
本発明の目的においては、置換アルキルには、カルボキシルアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルおよびメルカプトアルキルが含まれる。置換シクロアルキルには、4-クロロシクロヘキシルなどの基が含まれる。アリールには、ナフチルなどの基が含まれる。置換アリールには、3-ブロモフェニルなどの基が含まれる。アルアルキルには、トルイルなどの基が含まれる。ヘテロアルキルには、エチルチオフェンなどの基が含まれる。置換ヘテロアルキルには、3-メトキシ-チオフェンなどの基が含まれる。アルコキシには、メトキシなどの基が含まれる。フェノキシには、3-ニトロフェノキシなどの基が含まれる。ハロはフルオロ、クロロ、ヨードおよびブロモを包含する意である。
【0026】
C.リンカー部分L1およびL2
前記のとおり、本発明は、二官能性連結部分L1およびL2を含み、L1はR11とC(=Y2)とを連結するように働き、L2はAr部分とBとを連結するように働く。好ましい実施形態においては、L1は、電子吸引性基(本発明ではXと称される)である部分(M)、またはC(=Y2)から3〜6番目の原子に位置するフリーの電子対を含有する部分(本発明ではQと称される)である部分(M)を含む。また、L1およびL2は、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキルなどの二官能性部分を含みうる。
【0027】
D.二重プロドラッグ連結タンパク質
L1
【化11】

に連結する、二重プロドラッグ系の第1の不安定連結は、投与後の適当な時間のうちに十分な量の「第2」プロドラッグ化合物を生成する速度でエステラーゼ触媒性加水分解などによりin vivoで加水分解されるよう、選択される。本発明の目的においては、「十分な量」なる語は、後にin vivoで十分なトリアルキルロックラクトン化を受けて、天然化合物を遊離し、所望の効果を達成しうる量を意味するものとする。(n)は、L1の一部として存在する場合には、好ましくは1または2である。
【0028】
1.電子吸引性基X
L1がMを含む式(I)の態様においては、該部分は、本発明ではXと称される電子吸引性基であってもよい。特に、Xは、O、NR12
【化12】

S、SO、およびSO2(Y3はY1と同義であり、R12はR9と同義、すなわち、H、C1-6アルキルなどであり、R12はR9と同義、すなわち、H、C1-6アルキル、分枝アルキルなどである)などの部分であってもよい。しかしながら、好ましくは、XがNR12である場合、R12はHである。XはOまたはNR12であるのが好ましい。
【0029】
2.リンカーのQ部分
あるいは、L1がQ(これは、C(=Y2)部分から3〜6番目の原子に位置するフリーの電子対を含有する部分である)を含む場合、重合体R11は、好ましくは、酸素などのヘテロ原子を介してQに結合している。好ましい実施形態においては、該フリーの電子対は、この酸素からの5個の原子である。Qは、C2-4アルキルまたはC3-8シクロアルキル、アリールまたはアルアルキル基(これは、O、SおよびNR12よりなる群のメンバーで置換されている)から選ばれうる(これらに限定されるものではない)。該フリーの電子対と該酸素との間に一定の間隔が維持される限り、該フリーの電子対は、Q部分に添ったいずれの位置にあってもよい。
【0030】
これらの実施形態においては、R11は、NR12、OまたはSを介してQに結合している。したがって、Qは、隣接基関与により該プロドラッグ連結の加水分解を助ける。なぜなら、該フリーの電子対部分は、好ましくはエステル結合の加水分解の際に3〜6員環(好ましくは5員環)の副産物を生成しうるからである。
【0031】
また、Qは、C2-4アルキル、シクロアルキル、アリール、アルアルキル基(これらは、NH、O、S、-CH2-C(=C)-NH-よりなる群のメンバーで置換されている)およびオルト置換フェニル、例えば、
【化13】

よりなる群から選ばれうる。
【0032】
3.プロドラッグの加水分解を介した薬物の生成
本発明のプロドラッグ化合物は、(加水分解のt1/2)<(血漿中の消失のt1/2)となるように設計する。
【0033】
該化合物中に含まれる連結は、治療する哺乳動物の血漿中で、消失前に十分な量の親化合物(すなわち、アミノまたはヒドロキシル含有生物活性化合物)が遊離されるのを可能にするのに十分な程度に速い加水分解速度を有する。本発明の好ましい化合物のいくつか(すなわち、(n)が1である化合物)は、血漿中での加水分解に関して約5分間〜約12時間のt1/2を有する。好ましくは、該組成物は、約0.5〜約8時間、最も好ましくは、約1〜6時間の血漿t1/2加水分解を有する。
【0034】
4.ラクトン化および天然薬物の再生
該二重プロドラッグの第1エステル加水分解が通常はエステラーゼ活性またはpH調整活性または環化反応によりin vivoで生じたら、該重合体残基が切断され、生じた第2プロドラッグ部分が残る。ついでこの単一のプロドラッグ体は、独立した更なるラクトン化反応をin vivoで受けて、所望の天然または親化合物を生成する。この自発的反応は、律速段階である第1加水分解工程の後で生じ、芳香族性中間体の単純なプロトン除去により開始され、それによりラクトン化反応および親分子の遊離が生じる。該反応を以下に示す。
【0035】
【化14】

ヒドロキシル含有親化合物の遊離は、同様にして生じるであろう。
【0036】
E.実質的に非抗原性である重合体
本発明の「二重プロドラッグ」組成物は水溶性重合体R11を含む。本発明の好ましい態様においては、R11は、キャッピング(capping)基Aを含み、これは、水素、C1-6アルキル部分、カルボキシアルキル、ジアルキルアシル尿素アルキル、またはビス系を形成する式(II):
【化15】

(式中、B’はBと同じであるか、またはBの定義の群の別のメンバーであり、残りの可変基は、式(I)に関して前記したとおりである)の化合物であってもよい。
【0037】
そのような重合体の適当な具体例には、ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレングリコール(好ましくは、実質的に非抗原性でもあるもの)が含まれる。PEGおよびその誘導体の一般式は、A’-O-(CH2CH2O)χ-(CH2)a-Aで表され、式中、(χ)は、重合度(すなわち、10〜2,300)または該重合体鎖内の反復単位の数を示し、該重合体の分子量に依存し、(n)は0または正の整数であり、Aは、本明細書で定義されるとおりのキャッピング基、すなわち、-H、アミノ、カルボキシ、ハロ、C1-6アルキルまたは他の活性化基であり、A’はAと同じであるか、または他のA部分である。また、ポリプロピレングリコール、分枝PEG誘導体、例えば、共通の譲受人の米国特許第5,643,575号に記載されているもの、「スターPEG(star-PEG)」およびマルチアームド(multi-armed)PEG、例えば、Shearwater Polymers, Inc.のカタログ“Polyethylene Glycol Derivatives 1997-1998”に記載されているものも有用である(それらの各開示を参照により本明細書に組み入れることとする)。該水溶性重合体は、M、XまたはQを介する連結部に対する結合のために官能基化されていると理解されるであろう。例えば、該プロドラッグのPEG部分は、以下の非限定的な化合物であってもよい:-C(=Y)-(CH2)n-O-(CH2CH2O)χ-A、-C(=Y)-Y-(CH2)n-O-(CH2CH2O)χ-Aおよび-C(=Y)-NR12-(CH2)n-O-(CH2CH2O)χ-A(式中、YはOまたはSであり、R12、(n)および(χ)は前記と同義である)。
【0038】
本発明の多数の態様においては、ポリエチレングリコール(PEG)、末端にC1-4アルキルを有するモノ活性化PAO、例えば、モノ-メチル末端ポリエチレングリコール(mPEG)が好ましい。
【0039】
所望の加水分解可能な連結を得るために、一または二酸活性化重合体、例えば、PEG酸またはPEG二酸、ならびにモノ-またはジ-PEGアミンおよびモノ-またはジ-PEGジオールを使用することができる。まず、mPEG-OHをエチルエステルに変換し、ついでけん化することにより、適当なPAO酸を合成することができる。また、Gehrhardt, Hら, Polymer Bulletin 18:487 (1987)およびVeronese, F.M.ら, J. Controlled Release 10:145(1989)も参照されたい。あるいは、mPEG-OHをt-ブチルエステルに変換し、ついで酸での切断に付すことにより、該PAO-酸を合成することができる。例えば、共通の譲受人の米国特許第5,605,976号を参照されたい。前記のそれぞれの開示を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0040】
PAOおよびPEGは実質的に数平均分子量の点で様々となりうるが、本発明の目的のためには、通常、約2,000〜約100,000の範囲の重合体が選択される。約5,000〜約50,000の分子量が好ましく、5,000〜約40,000の分子量が特に好ましい。「二重プロドラッグ」内に含有させるために選択される重合体の数平均分子量は、該リンカーの加水分解の前に「二重プロドラッグ」の十分な循環をもたらすのに十分なものでなければならない。化学療法剤および有機部分のためのいくつかの態様においては、前記の範囲内で少なくとも20,000の範囲の分子量範囲を有する重合体が好ましい。ある種のタンパク質、酵素などのいくつかの求核性物質の場合には、約2,000〜約20,000の分子量範囲を有する重合体が好ましい。
【0041】
本発明に含まれる重合体物質は、好ましくは、室温で水溶性である。そのような重合体の非限定的な一覧には、ポリアルキレンオキシド単独重合体、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらの共重合体、およびそれらのブロック共重合体(ただし、該ブロック共重合体の水溶性が維持される場合に限られる)が含まれる。
【0042】
PEGなどのPAOに関して本明細書に記載したのと同じタイプの活性化を用いる場合には、PAOに基づく重合体に代わるものとして、有効に非抗原性である物質、例えば、デキストラン、ポリビニルアルコール、炭水化物に基づく重合体、ポリアミノ酸ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HMPA)、およびそれらの共重合体などを使用することができる。前記の一覧は単なる例示にすぎず、本明細書に記載の性質を有するすべての重合体物質が意図されると当業者に認識されるであろう。本発明の目的においては、「有効に非抗原性(である)」は、容易に認められる免疫応答を哺乳動物において惹起せず無毒性であると当技術分野で理解されているすべての重合体物質を意味する。
【0043】
F.重合体二重プロドラッグ輸送系の合成
本発明の二重プロドラッグは、少なくとも2通りの方法で製造することができる。図1に図式的に示す1つの技術は以下の工程を含む:
a.中間体化合物(III)
【0044】
【化16】

【0045】
(式中、M2は切断可能または可逆的な保護基であり、B2は脱離基、例えばOHであり、他のすべての可変基は、式(I)に関して前記したとおりである)を準備し、
b.該中間体化合物(III)を強酸、例えばTFA(トリフルオロ酢酸)または他のトリハロ酢酸、HCl、硫酸など又は接触水素化により処理して、該保護基を除去し、
c.工程bで得た脱保護中間体化合物(III)を、L1と反応しうる成分、例えば活性化重合体 [すなわち、反応性官能基(図1ではR15で示されている)、例えばp-ニトロフェニルまたはスクシンイミジルカルボナート、カルボニルイミダゾール、チアゾリジニルチオンなど、および所望によりスペーサー基、すなわちCR9R10を有する重合体]と反応させて、式(IV):
【0046】
【化17】

【0047】
(式中、B2は脱離基であり、他のすべての可変基は、式(I)に関して前記したとおりである)で表される活性化二重プロドラッグ輸送形態を形成させ、所望により、
d.アミン含有またはヒドロキシル含有化合物との反応においてB2を置換することにより、アミン含有またはヒドロキシル含有化合物残基(例えば、輸送される薬物)を化合物(IV)に結合させる(図1を参照されたい)。他の芳香族性成分を出発物質として使用する場合、同様の技術を用いる。
【0048】
別法として、図2に示すとおり(アミン含有化合物は例示にすぎない)、該二重プロドラッグは、
a.アミン含有またはヒドロキシル含有化合物を該中間体化合物(III)に結合させ、
b.該保護基を除去し、
c.該脱保護中間体を活性化重合体と反応させて該二重プロドラッグを形成させることにより製造することができる。
【0049】
OH含有化合物に関する反応スキームは図2に示されていないが、該反応スキームは、図2において該輸送系と薬物残基との間にエステル結合が形成されるように進行するであろう。
【0050】
中間体化合物(III)は、標準的な有機合成技術を用いて製造することができる。例えば、保護されたジアルキルフェニルプロピオン酸誘導体、例えば、3-(2’-Boc-アラニル-4’,4’-ジメチルフェニル)-3,3-ジメチルプロピオン酸を、Binghe Wangら. Synthesis of a Novel Esterase-Sensitive Cyclic Prodrug System for Peptides That Utilizes a “Trimethyl Lock”-Facilitated Lactonization Reaction. J. Org. Chem. 1997, 62, 1363(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている方法により合成することができる。その他の芳香族性出発物質は、過度な実験をしなくても当業者に明らかであろう。
【0051】
当業者に公知のカップリング剤、例えば、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPG)、ジアルキルカルボジイミド、2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウムハロゲン化物、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスホン酸環状無水物(PPACA)およびジクロロリン酸フェニルを使用する標準的な有機合成技術を用いて、中間体化合物(III)または(IV)に対する親化合物の結合を行なうことができる。あるいは、Bが良好な脱離基(例えば、後記G.1で挙げるもの)である場合には、カップリング剤は必要ではなく、該反応は塩基の存在下で進行する。
【0052】
保護基の除去は、第1の方法で記載したのと同様にして行なわれる。
【0053】
G.脱離基または残基部分「B」
1.脱離基
Bが脱離基である態様における適当な脱離基には、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N-ヒドロキシフタルイミジル、p-ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、チアゾリジニルチオンなどの基、または当業者に明らかな他の良好な脱離基が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
「二重」プロドラッグ部分(すなわち、PEG部分)が形成された後、脱離基を該化合物のL2部分に結合させることができる。本明細書で使用され記載されている合成反応は、過度な実験を行なわなくても当業者に理解されるであろう。限定的でない例示として挙げると、一般には、該二重プロドラッグ輸送系の活性化体は、式(V):
【0055】
【化18】

【0056】
(式中、L2およびB2は前記と同義である)で表される化合物の芳香族ヒドロキシをアシル化し、ついで、得られたアシル化化合物を、標的に対するカップリングのための活性化基(例えば、クロロギ酸4-ニトロフェニル、ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、カルボニルジイミダゾール、チアゾリジンチオンなどの化合物)と反応させて、所望の誘導体を得ることにより製造することができる。
【0057】
該PEGプロドラッグの「活性化」体の準備が整ったら、それをアミン含有またはヒドロキシル含有化合物とのコンジュゲート化に使用することができる。いくつかの好ましい活性化輸送体を、以下に示す。
【0058】
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【0059】
2.アミン含有化合物の残基
例えば、プロドラッグ輸送体が形成された後でBがアミン含有化合物の残基である本発明の態様においては、そのような適当な化合物の非限定的な一覧には、残基を有する有機化合物、酵素、タンパク質、ポリペプチドなどが含まれる。有機化合物には、アントラサイクリン化合物、例えばダウノルビシン、ドキソルビシン;p-アミノアニリンマスタード、アラ-C(シトシンアラビノシド)および関連する代謝拮抗化合物、例えばゲムシタビンなどの成分が含まれるが、これらに限定されるものではない。あるいは、Bは、アミンを含有する心臓血管剤、抗腫瘍剤、抗感染剤、抗真菌剤、例えばナイスタチンおよびアンホテリシンB、抗不安剤、胃腸剤、中枢神経活性化剤、鎮痛剤、排卵誘発剤(fertility agent)、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、抗尿毒症(anti-urecemic)剤、血管拡張剤、血管収縮剤などの残基であってもよい。
【0060】
重合体の結合のための少なくとも1つの利用可能なアミノ基を有する適当なタンパク質、ポリペプチド、酵素、ペプチドなどには、生理的または薬理学的活性を有する物質、および有機溶媒中での反応を触媒しうる物質が含まれる。該アミン含有物質の他の唯一の要件は、プロドラッグ輸送部分が加水分解された後、該アミン含有物質が、未修飾のタンパク質、酵素、ペプチドなどに関連した活性の少なくとも一部を維持していることである。
【0061】
目的とされるタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドには、ヘモグロビン、血清タンパク質、例えば血液因子(因子VII、VIIIおよびIXを含む);免疫グロブリン、サイトカイン、例えばインターロイキン、すなわちIL-1〜IL-13、α-、β-およびγ-および共通インターフェロン、コロニー刺激因子(顆粒球コロニー刺激因子、血小板由来増殖因子およびホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)を含む)が含まれるが、これらに限定されるものではない。生物学的または治療的に一般に目的とされる他のタンパク質には、インスリン、植物タンパク質、例えばレクチンおよびリシン、腫瘍壊死因子および関連タンパク質、増殖因子、例えばトランスフォーミング増殖因子(例えばTGFαまたはTGFβおよび上皮増殖因子)、ホルモン、ソマトメジン、エリトロポエチン、色素性ホルモン、視床下部放出ホルモン、抗利尿ホルモン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲンアクチベーターなどが含まれる。目的とされる免疫グロブリンには、IgG、IgE、IgM、IgA、IgDおよびそれらのフラグメントが含まれる。
【0062】
インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子などのいくつかのタンパク質は、通常は組換え技術の使用の結果、非グリコシル化形態としても存在する。該非グリコシル化体も本発明のタンパク質に含まれる。
【0063】
目的とされる酵素には、炭水化物特異的酵素、タンパク質分解酵素、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼおよびリガーゼが含まれる。特定の酵素に限定されるものではないが、目的とされる酵素の具体例には、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシンジホスファターゼ、チロシナーゼおよびビリルビンオキシダーゼが含まれる。目的とされる炭水化物特異的酵素には、グルコースオキシダーゼ、グルコダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルコウロニダーゼなどが含まれる。
【0064】
本発明には、in vivoで生物活性を示すポリペプチドの任意の部分も含まれる。これには、アミノ酸配列、核酸(DNA、RNA)、ペプチド核酸(PNA)、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質(例えば、米国特許第4,946,778号を参照されたい;その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)、結合分子、例えば抗体またはフラグメントの融合体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および触媒抗体を含む。
【0065】
該タンパク質またはその一部は、当業者に公知の技術、例えば組織培養、動物起源からの抽出または組換えDNA法により製造または単離することができる。トランスジェニック由来の該タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸配列なども意図される。該タンパク質が乳、血液または組織内で発現される場合、そのような物質はトランスジェニック動物(すなわち、マウス、ブタ、ウシなど)から得られる。トランスジェニック昆虫およびバキュロウイルス発現系も、起源として意図される。さらに、タンパク質の突然変異体、例えば、突然変異インターフェロンも、本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
目的とされる他のタンパク質としては、アレルゲンタンパク質、例えばサワギク、抗原E、ミツバチ毒、ダニアレルゲンなどが挙げられる。以上は、本発明に適しているタンパク質の例示にすぎない。本明細書で定義されるタンパク質のうち、具体的には挙げられていないが、利用可能なアミノ基を有するものも意図され、本発明の範囲内に含まれると理解されるべきである。
【0067】
本発明の好ましい態様においては、該アミノ含有化合物は、動物(例えば、ヒトを含む哺乳動物)の治療における、そのような治療が望まれる状態に関する医学的または診断的用途に適した生物学的に活性な化合物である。前記の一覧は例示にすぎず、修飾されうる化合物を限定するものではない。過度な実験を行なわなくても、そのような他の化合物を同様に修飾することが可能であると当業者は認識するであろう。具体的には挙げられていないが適当なアミノ基を有するそれらの生物学的に活性な物質も意図され、本発明の範囲内に含まれると理解されるべきである。
【0068】
本発明に含まれるのに適したアミノ含有分子のタイプに関する唯一の制限は、担体部分と反応し結合しうる利用可能な少なくとも1つの(第1級または第2級)アミン含有位置が存在すること、および二重プロドラッグ系が親化合物を遊離し再生した後に生物活性の実質的な喪失がないことである。
【0069】
3.ヒドロキシル含有化合物の残基
a.カンプトテシンおよび関連トポイソメラーゼI阻害剤
カンプトテシンは、中国原産の樹木であるカンプトテカ・アクミナタ(Camptotheca accuminata)およびインド原産の樹木であるノタポジテス・フォエチダ(nothapodytes foetida)により産生される水不溶性細胞傷害性アルカロイドである。また、カンプトテシンならびに関連化合物および類似体は、潜在的な抗癌剤または抗腫瘍剤であることが公知であり、これらの活性をin vitroおよびin vivoで現すことが示されている。カンプトテシンおよび関連化合物はまた、本発明の二重プロドラッグへの変換のための候補体である。カンプトテシンおよび一定の関連類似体は、以下の構造を共有している。
【0070】
【化23】

【0071】
このコア構造から、いくつかの公知類似体が製造されている。例えば、A環は、10位および11位の一方または両方において、OHで置換されうる。A環はまた、9位において、直鎖または分枝C1-30アルキルまたはC1-17アルコキシ(これは、所望により、ヘテロ原子、すなわちOまたはSにより該環に結合していてもよい)で置換されていてもよい。B環は、7位において、直鎖または分枝C1-30アルキルまたは置換アルキル、C5-8シクロアルキル、C1-30アルコキシ、フェニルアルキルなど、アルキルカルバマート、アルキルカルバジド、フェニルヒドラジン誘導体、アミノ、アミノアルキル、アルアルキルなどで置換されうる。C、DおよびE環において、他の置換が可能である。例えば、米国特許第5,004,758号、第4,943,579号;Re 32,518(これらの内容を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。そのような誘導体は、過度な実験を行なうことなく公知の合成技術を用いて製造することができる。本発明で使用するための好ましいカンプトテシン誘導体には、本明細書に記載の重合体輸送系の活性化体と直接反応しうる、または後にPEGなどの重合体に結合する連結部中間体(例えば、イミノ二酢酸など)に反応しうる20-OHまたは別のOH部分を含むものが含まれる。本明細書におけるカンプトテシン類似体に関する記載は例示目的でなされており、限定的なものではない。
【0072】
b.タキサンおよびパクリタキセル誘導体
本発明の二重プロドラッグ組成物に含まれる化合物の1つのクラスとして、タキサンが挙げられる。本発明の目的においては、「タキサン」という用語には、テルペンのタキサンファミリー内のすべての化合物が含まれる。したがって、タキソール(パクリタキセル)、3’-置換tert-ブトキシ-カルボニル-アミン誘導体(タキソテレス)など、および標準的な有機化学技術を用いて容易に合成される又は、例えばSigma Chemical, St. Louis, Missouri)から市販されている他の類似体が、本発明の範囲内に含まれる。代表的なタキサンを以下に示す。
【0073】
【化24】

【0074】
これらの誘導体は有効な抗癌剤であることが判明している。該物質がいくつかの悪性疾患に対する活性を有することが、多数の研究により示されている。現在のところ、とりわけ、それらの供給不足、乏しい水溶性および過敏性のため、それらの使用は著しく制限されている。共通の譲受人の米国特許第5,622,986号および第5,547,981号に開示されている7-アリール-カルバマートおよび7-カルバザートを含む他のタキサンも、本発明の二重プロドラッグに含まれうると理解されるべきである。前記の米国特許の内容を参照により本明細書に組み入れることとする。該タキサンに関する唯一の制限は、それがヒドロキシルに基づく置換反応(例えば、2’位におけるもの)を受ける能力を有していなければならないことである。しかしながら、パクリタキセルが、好ましいタキサンである。
【0075】
c.追加的な生物学的に活性な部分
前記の分子に加えて、他の多数の化合物を使用して、本発明の二重プロドラッグ製剤を製造することができる。例えば、生物学的に活性な化合物、例えばゲムシタビン:
【化25】

またはエトポシド:
【化26】

またはトリアゾールに基づく抗真菌剤、例えばフルコナゾール:
【化27】

またはシクロピロックス:
【化28】

を使用することができる。
【0076】
本発明の、重合体に基づく二重プロドラッグは、水に不溶性の化合物の送達に特に良く適合するが、二重プロドラッグ形態用に選択される親化合物は、本質的に水に不溶性である必要はない。他の有用な親化合物には、例えば、生物学的に活性な或る種の低分子量タンパク質、酵素およびペプチド、例えばペプチドグリカン、および他の抗腫瘍剤;心臓血管剤、例えばフォルスコリン;抗腫瘍剤、例えばコンブレタスタチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、アラ-C、メイタンシンなど;抗感染症剤、例えばバンコマイシン、エリスロマイシンなど;抗真菌剤、例えばナイスタチン、アンホテリシンB、トリアゾール、パプロカンジン、ニューモカンジン、エキノカンジン、ポリオキシン、ニッコウマイシン、プラジミシン、ベナノミシンなど(例えば、“Antibiotics That Inhibit Fungal Cell Wall Development” Annu. Rev. Microbiol. 1994, 48:471-97を参照されたい;その内容を参照により本明細書に組み入れることとする);抗不安剤、胃腸剤、中枢神経系活性化剤、鎮痛剤、排卵誘発または避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、抗尿毒症剤、心臓血管剤、血管拡張剤、血管収縮剤などが含まれる。
【0077】
本発明の二重プロドラッグ組成物に含有させるのに適した親化合物自体は、該連結組成物からの加水分解遊離の後には活性でないが更なる化学的処理/反応を受けた後に活性となる物質/化合物であってもよいことが注目される。例えば、二重プロドラッグ輸送系により血流に運搬される抗癌薬は、癌または腫瘍細胞に進入するまでは不活性のままであってもよく、ついで、それは癌または腫瘍細胞の化学的作用(例えば、その細胞に特有の酵素反応)により活性化されうる。
【0078】
コンジュゲート化の後に残存したアミン含有またはヒドロキシル含有化合物は、未コンジュゲート化化合物の残留物とみなされる。
【0079】
4.重合体ハイブリッド
本発明のもう1つの態様においては、本明細書に記載の重合体二重プロドラッグ系のハイブリッドタイプを提供する。特に、該ハイブリッド系には、可逆的二重プロドラッグ系だけでなく、より永久的なタイプの連結に基づく第2の重合体系も含まれる。該ハイブリッドは、少なくとも2通りの方法により製造することができる。例えば、まず、トリアルキルロックに基づく二重プロドラッグタンパク質コンジュゲートを合成し、ついで当技術分野で認識されている任意の活性化重合体(例えば、チアゾリジニルチオンまたはスクシンイミジルカルボナートで活性化されたPEG)を使用してPEG化(PEGylated)する。あるいは、まず、より永久的なコンジュゲート化反応を行なうことができ(すなわち、親化合物がPEG化される)、得られたコンジュゲートを使用して、本明細書に記載のトリアルキルロック二重プロドラッグコンジュゲートを形成させることができる。該ハイブリッド系は、重合体プロドラッグの結合に複数のアミノ基、またはアミノ基とヒドロキシル基との組合せが利用可能なタンパク質、酵素などに、より適合すると理解されるであろう。本発明の目的においては、「活性化重合体」は、酵素、タンパク質など及び合成的に製造された有機化合物において見出される1以上のα-アミノ基、ε-アミノ基、ヒスチジン窒素、カルボキシル基、スルフヒドリル基などと反応しうる、1以上の末端基を含有する重合体を含むと理解されるであろう。
【0080】
該活性化末端部分は、本発明の二重プロドラッグ輸送系が合成される前または合成された後に該重合体と生物学的に活性な物質(すなわち、タンパク質、酵素など)とのコンジュゲート化を促進するいずれの基であってもよい。例えば、米国特許第4,179,337号(その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。そのような活性基は、以下から選ばれる部分であってもよい。
【0081】
I.アミノ基と反応しうる機能性基、例えば、
a)カルボナート、例えば、p-ニトロフェニルまたはスクシンイミジル(例えば、米国特許第5,122,614号を参照されたい;その開示を参照により本明細書に組み入れることとする);
b)カルボニルイミダゾール;
c)アズラクトン(例えば、米国特許第5,321,095号を参照されたい;その開示を参照により本明細書に組み入れることとする);
d)環状イミドチオン(例えば、米国特許第5,349,001号を参照されたい;その開示を参照により本明細書に組み入れることとする);または
e)イソシアナートまたはイソチオシアナート;
f)活性エステル、例えば、N-ヒドロキシ-スクシンイミジルまたはN-ヒドロキシベンゾトリアゾリル。
【0082】
II.カルボン酸基および反応性カルボニル基と反応しうる機能性基、例えば、
a)第1級アミンまたは
b)ヒドラジンおよびヒドラジド機能性基、例えば、アシル、ヒドラジド、カルバザート、セミカルバマート、チオカルバザートなど。
【0083】
III.メルカプトまたはスルフヒドリル基と反応しうる機能性基、例えば、マレイミド(例えば、Shearwater Polymers Catalog “Polyethylene Glycol Derivatives 1997-1998”を参照されたい;その開示を参照により本明細書に組み入れることとする)。
【0084】
IV.ヒドロキシ基と反応しうる機能性基、例えば、(カルボン)酸、または求電子中心と反応しうる他の求核性試薬、例えば、イソシアナート、活性化エステルまたはカルボナート、環状イミド、チオンなど。
【0085】
また、該活性化部分は、該重合体の近くに位置するスペーサー部分を含みうる。該スペーサー部分は、18個以下の炭素原子を含有するヘテロアルキル、アルコキシ、アルキル、または更には追加的な重合体鎖であってもよい。該スペーサー部分は、標準的な合成技術を用いて付加することができる。
【0086】
H.治療方法
本発明のもう1つの態様においては、哺乳動物における種々の医学的症状の治療方法を提供する。該方法は、そのような治療を要する哺乳動物に、本明細書に記載の本発明の組成物(例えば、ドキソルビシンの二重プロドラッグ)の有効量を投与することを含む。該プロドラッグ組成物は、とりわけ、親化合物で治療されるのと同様の疾患の治療(例えば、哺乳動物における酵素置換療法、新生物疾患、腫瘍の苦痛の軽減、新生物の転移の予防、および腫瘍/新生物の増殖の再発の予防)に有用である。
【0087】
投与するプロドラッグの量は、それに含まれる親分子の量に左右されるであろう。一般には、治療方法において使用するプロドラッグの量は、哺乳動物において所望の治療成果を有効に達成する量である。もちろん、種々のプロドラッグ化合物の投与量は、親化合物、in vivoでの加水分解の速度、重合体の分子量などに応じて或る程度は異なるであろう。一般には、ナイトロジェンマスタード誘導体の二重プロドラッグ重合体誘導体は、1日当たり約5〜約500mg/m2の量で投与する。前記の範囲は例示にすぎず、当業者は、臨床経験および治療的指標に基づいて選択される該プロドラッグの最適な用量を決定するであろう。実際の投与量は、過度な実験を行なわなくても当業者に明らかであろう。
【0088】
本発明の組成物(プロドラッグを含む)は、哺乳動物に投与するための1種類以上の適当な医薬組成物中に含有させることができる。該医薬組成物は、当技術分野で周知の方法に従って製造される液剤、懸濁剤、錠剤、カプセル剤などの形態であってもよい。また、そのような組成物の投与は、当業者の必要性に応じて経口および/または非経口経路であってもよいと意図される。該組成物の液剤および/または懸濁剤は、例えば、該組成物の注射または浸透のための担体ビヒクルとして、当技術分野で公知の任意の方法(例えば、静脈内、筋肉内、皮下注射など)により使用することができる。
【0089】
また、そのような投与は、体腔または腔内への注入ならびに吸入および/または鼻腔内経路によるものであってもよい。しかしながら、本発明の好ましい態様においては、該プロドラッグは、その投与を要する哺乳動物に非経口的に投与される。
【実施例】
【0090】
以下の実施例は、本発明の理解を更に深めるためのものであり、本発明の有効な範囲を何ら限定するものではない。実施例中に列挙する下線付き又は太字の番号は、図面中に示す番号に対応している。
【0091】
実施例1
化合物2:3-(2’-ヒドロキシ-4’,6’-ジメチルフェニル)-3,3-ジメチルプロピオン酸のアラニンエステルのトリフルオロ酢酸塩
3-(2’-ヒドロキシ-4’,6’-ジメチルフェニル)-3,3-ジメチルプロピオン酸1(J. Org. Chem. 1997, 62, 1363の方法を用いて合成した)のt-Boc-アラニンエステル1g(2.54mmol)を、20mLのTFA-CH2Cl2(1:1, v/v)中、室温で2時間攪拌した。溶媒を真空中で除去し、エーテルを該残渣に加えて2(0.6873g, 67%)を沈殿させた。


【0092】
実施例2
化合物42とSC PEG(5kDa)3とのカップリング
2g(0.39mmol)のSC PEG(5kDa)3を、40mLの無水ジクロロメタン(DCM)中の175.8mg(0.6mmol)の2と280μL(1.5mmol)のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)との混合物に加えた。該反応混合物を室温で一晩攪拌した。該溶媒を除去し、該生成物を80mLの2-プロパノールから結晶化して1.86g(93%)の4を白色固体として得た。

【0093】
実施例3
化合物64と塩酸ダウノルビシン5とのカップリング
38.4mg(0.2mmol)の1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を、10mLの無水DCM中の0.5g(0.1mmol)の4、84.6mg(0.15mmol)の塩酸ダウノルビシン5、40.4mg(0.4mmol)のN-メチルモルホリン(NMM)および20.3mg(0.2mmol)の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBT)の0℃の混合物に加えた。該反応混合物を室温で一晩攪拌し、濾過した。該濾液を真空中で濃縮し、該残渣を20mLの2-プロパノールから再結晶して、0.44g(88%)の6を得た。UVアッセイは0.7当量(70%のカップリング収率)の5を示した。

【0094】
実施例4
化合物82とmPEG(5kDa)チアゾリジンチオン7とのカップリング
0.5g(0.1mmol)のmPEG(5kDa)チアゾリジンチオンを、10mLの無水DCM中の44mg(0.15mmol)の2と70μL(0.4mmol)のDIPEAとの混合物に室温で加えた。該反応混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、該残渣を2-プロパノールから再結晶して0.44g(88%)の生成物を白色固体として得た。

【0095】
実施例5
化合物985とのカップリング
39mg(0.2mmol)のEDCを、10mLの無水DCM中の0.5g(0.1mmol)の8、85mg(0.15mmol)の5、40mg(0.4mmol)のNMMおよび20mg(0.2mmol)のHOBTの0℃の混合物に加えた。該反応混合物を室温で一晩攪拌し、濾過した。該濾液を真空中で濃縮し、該残渣を20mLの2-プロパノールから再結晶して、0.45g(90%)の9を得た。
【0096】
実施例6
化合物112とPEG(40kDa)ジチアゾリジンチオン10とのカップリング
1g(0.025mmol)のPEG(40kDa)ジチアゾリジンチオン10を、15mLの無水DCM中の29mg(0.099mmol)の2と36.6μL(0.20mmol)のDIPEAとの混合物に加えた。該混合物を室温で一晩攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、該残渣を2-プロパノールから再結晶して0.8g(80%)の11を白色固体として得た。

【0097】
実施例7
化合物12115とのカップリング
94.5mg(0.492mmol)のEDCを、50mLの無水DCM中の2.5g(0.0615mmol)の11(40kDa)、208mg(0.3688mmol)の5、99.4mg(0.984mmol)のNMMおよび49.8mg(0.369mmol)のHOBTの0℃の混合物に加えた。該反応混合物を室温で一晩攪拌し、濾過した。該濾液を真空中で濃縮し、該残渣を2-プロパノール(200mL)から再結晶して、2.3g(92%)の12を得た。UVアッセイは1.9当量(95%のカップリング収率)の5を示した。

【0098】
実施例8
化合物1411とp-アミノ-(N,N-ジ-2-クロロエチル)アニリン塩酸塩13とのカップリング
37.8mg(0.20mmol)のEDCを、20mLの無水DCM中の1.0g(0.025mmol)の4(40kDa)、39.8mg(0.15mmol)のp-アミノ-(N,N-ジ-2-クロロエチル)アニリン塩酸塩13(Edwardら, Cytotoxic Compounds. Part XVII. o-, m- and p-(Bis-2-chloroethylamino)phenol, p-[N-(2-Chloethyl)methylamino]phenol, N,N-Bis-2-chloroethyl-p-phenylenediamine, and N,N-Bis-2-chloroethyl-N’-methyl-p-phenylenediamine as Sources of Biologically Active Carbamates. JCS Perkin I, 1973, 2379の変法を用いて合成した)、39.7mg(0.39mmol)のNMMおよび19.9mg(0.15mmol)のHOBTの0℃の混合物に加えた。該反応混合物を室温で一晩攪拌し、濾過した。該濾液を真空中で濃縮し、該残渣を2-プロパノール(100mL)から再結晶して、0.8g(80%)の14を得た。UVアッセイは1.5当量(75%のカップリング収率)の該芳香族ナイトロジェンマスタードを示した。

【0099】
実施例9
化合物1511と2-メルカプトチアゾリンとのカップリング
20mLのトルエンの2時間の蒸留により3g(0.074mmol)の11を60mLのトルエン中で共沸させた。該溶液を35℃に冷却し、47mg(0.37mmol)の塩化オキサリルおよび2μLのDMFを加えた。該溶液を35〜40℃で4時間攪拌し、ついで53mg(0.44mmol)の2-メルカプトチオゾリンおよび32mg(0.44mmol)のDIPEAを加えた。該混合物を一晩還流し、真空中で濃縮した。該残渣を250mLの2-プロパノールから再結晶して、15(2.72g, 90%)を白色固体として得た。

【0100】
実施例10
化合物1711または15と塩酸ドキソルビシン16とのカップリング
11とドキソルビシン16とのカップリング:15mLの無水DCM中の1.25g(0.031mmol)の11、105mg(0.18mmol)のドキソルビシンHCl 16、50mg(0.50mmol)のNMM、25mg(0.18mmol)のHOBTおよび50mg(0.25mmol)のEDCの混合物を室温で一晩攪拌した。該溶媒を真空中で除去し、該残渣を2-プロパノールから再結晶して、850mg(68%)の17を得た。UVアッセイは1.64当量(82%のカップリング収率)の16を得た。
【0101】
15とドキソルビシン16とのカップリング:10mLの無水DCM中の0.25g(0.006mmol)の15、40mg(0.07mol)の16および25mg(0.20mmol)のジメチルアミノピリジン(DMAP)の混合物を一晩還流した。該溶媒を真空中で除去し、該残渣を2-プロパノールから再結晶して、0.23g(92%)の17を得た。UVアッセイは1.82当量(91%のカップリング収率)の16を得た。

【0102】
実施例11
化合物188とN-ヒドロキシスクシンイミドとのカップリング
2.5g(0.47mmol)の8および108mg(0.94mmol)のN-ヒドロキシスクシンイミドを40mLの無水DCMに0℃で溶解した。114mg(0.94mmol)のDMAPおよび118mg(0.94mmol)のDIPCを該混合物に加えた。該反応混合物を外界温度で一晩攪拌した。該溶媒を真空中で除去し、該残渣を2-プロパノールから再結晶して、2.1g(84%)の18を白色固体で得た。

【0103】
実施例12
化合物20:(L)-アスパラギナーゼに対する18のコンジュゲート化
450mg(0.083mmol, 317当量)のPEGリンカー18を、3mLのリン酸ナトリウムバッファー(0.1M, pH7.8)中の37.5mg(416μL, 0.00027mmol)の天然(L)-アスパラギナーゼ19に穏やかに攪拌しながら加えた。該溶液を30℃で30分間攪拌した。PEGのコンジュゲート化をモニターするためにGPCカラム(Zorbax GF-450)を使用した。該PEG-Aspコンジュゲートは8.5分の保持時間を有する。該反応の終了時(天然酵素の不存在により示される)に、該混合物を12mLの製剤化バッファー(0.05Mリン酸ナトリウム, 0.85%塩化ナトリウム, pH7.3)で希釈し、50,000ダルトンの分子量カットオフを有するCentriprep濃縮器(Amicon)によるダイアフィルトレーションに付して、未反応のPEGを除去した。必要に応じて、等量の濾液と0.1% PMA(0.1M HCl中のポリメタクリル酸)とを混合することによりそれ以上の遊離PEGが検出されなくなるまでダイアフィルトレーションを4℃で継続する。
【0104】
該生成物20は、塩基性バッファー溶液中、長時間は安定でない。したがって該溶液を凍結乾燥し、20を冷凍庫(-20℃)中で保存する。このようにして15日間保存した後、GPC分析は0.8%未満の分解を示す。新たに調製した20の比活性は137IU/mgであることが判明する(天然アスパラギナーゼ=217IU/mg)。前記米国特許第4,179,337号に記載の方法に対応する方法を用いるSS-PEG(永久的リンカー)でのアスパラギナーゼのタンパク質修飾は、同程度の活性(120IU/mg)を与える。該タンパク質の修飾の割合(%)を計算するためにTNBSアッセイを用い、該タンパク質濃度を調べるためにビウレットアッセイを用いる。
【0105】
実施例13
ラット血漿およびバッファー中での20の加水分解の速度論
GPCカラム(Zorbax GF-450)を使用してラット血漿中の20の加水分解の速度を測定し、それが<2時間の半減期を有することが判明する。リン酸バッファー(pH7.4)中での半減期は>>2時間と測定される。
【0106】
実施例14
化合物20A:タンパク質ハイブリッド:SS-PEG(永久的リンカー)を用いた20のコンジュゲート化
393mg(0.073mmol, 70当量)の18を、実施例14に記載のとおり、30mLのリン酸ナトリウムバッファー(0.1M, pH7.8)中、150mg(1.664mL, 0.00106mmol)の天然(L)-アスパラギナーゼ19と30℃で15分間反応させて、20の溶液を得、ついで1.272g(0.245mmol, 230当量)のSS-PEGを加える。該反応溶液を更に15分間攪拌する。該反応混合物のpHを0.5M水酸化ナトリウムで7.8に維持する。該反応混合物を30mLの無菌水で希釈し、50,000ダルトンの分子量カットオフを有するCentriprep濃縮器(Amicon)によるダイアフィルトレーションに付して、未反応のPEGを除去する。必要に応じて、等量の濾液と0.1% PMA(0.1M HCl中のポリメタクリル酸)とを混合することによりそれ以上の遊離PEGが検出されなくなるまでダイアフィルトレーションを4℃で継続する。GPCカラム(Zorbax GF-450)を使用して、該反応の経過を追跡する。生成物20Aの最終溶液を凍結乾燥し、冷凍庫中に保存する。
【0107】
実施例15
化合物20B:ハイブリッド20Aからの可逆的PEGリンカーの選択的除去の立証:永久的に修飾されたアスパラギナーゼ20Bの作製
リンカーで修飾されたハイブリッドアスパラギナーゼ20A(100mg)をpH7.8のリン酸バッファー30mLに溶解し、30℃で一晩攪拌する。この溶液を30mLの無菌水で希釈し、50,000ダルトンの分子量カットオフを有するCentriprep濃縮器(Amicon)によるダイアフィルトレーションに付して、該コンジュゲートからの可逆的PEGリンカー8の選択的切断により形成される遊離PEGを除去する。該溶液は今度は、SS-PEGコンジュゲート化アスパラギナーゼ20Bのみを含有する。したがって、該可逆的リンカーは加水分解されて、アスパラギナーゼに比較的に永久的に結合したPEGだけが残る。
【0108】
実施例16
化合物22:1-O-t-ブチルジメチルシリル-3-(2'-ヒドロキシ-4',6'-ジメチルフェニル)-3,3-ジメチルプロパノール 21
392mg(3.11mmol)のDIPCを、15mLの無水DCM中の0.5g(1.55mmol)の1-O-t-ブチルジメチルシリル-3-(2’-ヒドロキシ-4’,6’-ジメチルフェニル)-3,3-ジメチルプロパノール21(R.T. Borchardtら, Amine Prodrugs Which Utilize Hydroxy Amide Lactonization. II. A Potential Esterase-Sensitive Amide Prodrug. Pharmaceu. Res. 1991, 8, 455の方法を用いて合成した)、568mg(4.66mmol)のDMAPおよび668mg(3.11mmol)のt-Boc-プロリン-OHの0℃の混合物に加えた。該混合物を室温で一晩攪拌し、濾過し、濃縮した。該残渣をシリカゲル(酢酸エチル-ヘキサン=3:7, v/v)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製して、700mg(87%)の22を得た。

【0109】
実施例17
化合物23:3-(2’-ヒドロキシ-4’,6’-ジメチルフェニル)-3,3-ジメチルプロパノールのt-Boc-プロリンエステル
10mLのテトラヒドロフラン、10mLのH2Oおよび30mLの氷酢酸中の2.82g(5.43mmol)の23の溶液を室温で1時間攪拌した。該溶媒を真空中で除去して、粗生成物23を無色油状物として得、これを更に精製することなく次工程で使用した。

【0110】
実施例18
化合物24:3-(2’-ヒドロキシ-4’,6’-ジメチルフェニル)-3,3-ジメチルプロパノールのt-Boc-プロリンエステル23の酸化
125mLの無水塩化メチレンに2.5g(6.2mmol)の23を溶かした溶液を、125mLの無水DCMに2.88g(13.4mmol)のクロロクロム酸ピリジニウムを溶かした溶液に加えた。該混合物を室温で1時間攪拌し、ついでセライトで濾過した。該溶媒を真空中で除去し、該残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/へキサン=3:7, v/v)により精製した。該生成物(アルデヒド)を25mLのアセトンに溶解し、25mLのアセトン-H2O(1:1, v/v)に1g(6.3mmol)のKMnO4を溶かした溶液に加えた。該混合物を室温で一晩攪拌した。40mLのH2Oを加え、アセトンを真空中で除去した後、セライトで濾過した。該水溶液を1N HClでpH=3.0に調節し、ついで酢酸エチル(30mL x 2)で抽出した。溶媒を減圧下で除去し、ヘキサンを加えて24(550mg, 23から21%)を沈殿させた。

【0111】
実施例19
化合物25:3-(2’-ヒドロキシ-4’,6’-ジメチルフェニル)-3,3-ジメチルプロピオン酸のプロリンエステルのトリフルオロ酢酸塩
3-(2’-ヒドロキシ-4’,4’-ジメチルフェニル)-3,3-ジメチルプロピオン酸のt-Boc-プロリンエステル24の0.55g(1.31mmol)を10mLのTFA-CH2Cl2(1:1, v/v)中で室温で1時間攪拌した。溶媒を真空中で完全に除去して、25を黄色泡状固体(0.436g, 77%)として得た。

【0112】
実施例20
化合物2625とPEG(40kDa)ジチアゾリジンチオン10とのカップリング
52.6mg(0.41mmol)のDIPEAを、15mLの無水DCMに65mg(0.15mmol)の25と1g(0.025mmol)の10を溶かした溶液に加えた。該混合物を室温で一晩攪拌した。該溶媒を真空中で除去し、該残渣を2-プロパノールから再結晶して0.85g(85%)の26を白色固体として得た。

【0113】
実施例21
化合物27265とのカップリング
13.2mg(0.07mmol)のEDCを、20mLの無水DCM中の0.35g(0.01mmol)の26、29mg(0.05mmol)の5、13.9mg(0.14mmol)のNMMおよび6.97mg(0.05mmol)のHOBTの混合物に0℃で加えた。該反応混合物を室温で一晩攪拌し、濾過した。該濾液を真空中で濃縮し、該残渣を2-プロパノール(50mL)から再結晶して、0.35mg(84%)の27を得た。UVアッセイは2.0当量(100%のカップリング収率)の5を示した。
【0114】
実施例22
化合物29
実施例16に記載の方法を用いて化合物28を調製した。したがって、15mLの無水DCM中の500mg(1.55mmol)の21、587.6mg(3.11mmol)のt-Boc-β-アラニン-OH、474μL(3.11mmol)のDIPCおよび568mg(4.66mmol)のDMAPを反応させて、580mg(76%)の28を得た。

【0115】
22から27への変換について記載したのと同じ方法を用いて(実施例17〜21)、化合物29を調製した。
【0116】
実施例23
化合物31
実施例16に記載の方法を用いて化合物30を調製した。25mLの無水DCM中の化合物21、150mg(0.47mmol)、189.4mg(0.93mmol)のt-Boc-α-アミノイソ酪酸、117.4mg(0.93mmol)のDIPCおよび113.7mg(0.93mmol)のDMAPを反応させ、精製後、76mg(32%)の30を得た。

【0117】
化合物30を実施例17〜21の方法に付して、化合物31を得た。
【0118】
実施例24
化合物338とアラ-C 32とのカップリング
無水ピリジンに300mg(0.056mmol)の8、68.3mg(0.28mmol)のアラ-C 32および65mg(0.34mmol)のEDCを溶かした溶液を室温で一晩攪拌した。エチルエーテルを該反応溶液に加えて、該粗生成物を沈殿させ、それを2-プロパノールから再結晶して、180mg(53%)の33を得た。

【0119】
実施例25
化合物34
化合物34は、11から32とのカップリングにより、あるいは1から32とのカップリングおよびそれに続く脱保護および10とのカップリング(実施例26〜28のとおり)により調製することができる。
【0120】
1132とのカップリング:10mLの無水ピリジンに1g(0.025mmol)の11、120mg(0.50mmol)の32および57mg(0.30mmol)のEDCを溶かした溶液を室温で3日間攪拌した。該溶媒を真空中で除去し、該残渣をIPAから再結晶して、640mg(64%)の34を得た。UVアッセイは1.67当量(84%のカップリング収率)の32を示した。

【0121】
実施例26
化合物35132とのカップリング
50mLの無水ピリジン中の700mg(1.78mmol)の1、1.73g(7.12mmol)の32、0.96g(7.12mmol)のHOBTおよび2.73g(14.25mmol)のEDCの混合物を室温で2時間攪拌し、ついで40℃で一晩攪拌した。該溶媒を除去し、50mLのDCMを使用して該混合物を溶解し、ついで水(3 x 30mL)および0.1N HCl(2 x 30mL)で洗浄した。該有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、該溶媒を真空中で除去して、粗生成物を得、これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM中の5〜10%メタノール)により精製して、638.8mg(52%)の35を白色固体として得た。

【0122】
実施例27
化合物3635の脱保護
化合物35(638.8mg, 1.03mmol)を、6mLの無水DCMおよび4mLのTFA中、室温で2時間攪拌した。エチルエーテルを該溶液に加えて、該粗生成物を沈殿させ、これを濾過し、エーテルで洗浄して、36を白色固体(534.5mg, 82%)として得た。

【0123】
実施例28
1036とのカップリングによる化合物34
10mLの無水DCMに778mg(0.019mmol)の10、40mg(0.077mmol)の36および20mg(0.15mmol)のDIPEAを溶かした溶液を室温で一晩攪拌した。該溶媒を真空中で除去し、該残渣を2-プロパノールから再結晶して650mg(収率84%)の34を白色固体として得た。該NMRデータは実施例25の生成物のものと一致した。
【0124】
実施例29
化合物381とゲムシタビン37とのカップリング
25mLの無水ピリジン中の359mg(0.91mmol)の1、960mg(3.65mmol)のゲムシタビン、492mg(3.65mmol)のHOBT、737mg(7.29mmol)のNMMおよび390mg(2.04mmol)のEDCの混合物を室温で3日間攪拌した。該混合物を真空中で濃縮し、該残渣をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)により精製して、280mg(48%)の38を得た。

【0125】
実施例30
化合物3938の脱保護
化合物38(280mg, 0.44mmol)を、5mLのTFAおよび5mLの無水DCM中、室温で1時間攪拌した。該溶媒を真空中で除去し、エチルエーテルを加えて該生成物を沈殿させ、これを濾取し、エチルエーテルで洗浄して、250mg(87%)の39を得た。

【0126】
実施例31
化合物403910とのカップリング
10mLの無水DCMに778mg(0.019mmol)の10、50mg(0.077mmol)の39および20mg(0.15mmol)のDIPEAを溶かした溶液を室温で一晩攪拌する。該溶媒を真空中で除去し、該残渣を2-プロパノールから再結晶して40を得る。
【0127】
実施例32
化合物4211とメルファラン41とのカップリング
10mLの無水DCM中の1.0g(0.025mmol)の11、13.7mg(0.10mmol)のp-ニトロフェノール、12.4mg(0.10mmol)のDIPCおよび12.0mg(0.10mmol)のDMAPの混合物を0℃〜室温で一晩攪拌した。該溶液を濃縮し、エチルエーテルを使用して固体を沈殿させ、これを更に精製することなく次工程で使用した。11のp-ニトロフェノールを、10mLの無水N,N-ジメチルホルムアミド中、51mg(0.40mmol)のDIPEAの存在下、45mg(0.15mmol)のメルファランと室温で一晩反応させた。エチルエーテルを加えて該粗生成物を沈殿させ、これを2-プロパノールから再結晶して、700mg(70%)の生成物を得た。

【0128】
実施例33
化合物46
報告されている方法(L.A. Cohenら, J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 9158)を用いて、2,5-ジメチルフェノール43から化合物44を調製した。
【0129】
参照文献と同様にして化合物1の調製に使用した方法により、化合物44を化合物45へ変換する。化合物45を実施例29〜31の方法に付して化合物46を得る。
【0130】
本出願において挙げた種々の刊行物、特許、特許出願および公開された出願を、参照により本明細書に組み入れることとする。
【0131】
本発明の好ましい実施形態であると現時点で考えられるものを記載してきたが、本発明の精神から逸脱することなく変更および修飾を施すことができると当業者に認識されるであろう。そのようなすべての変更および修飾も本発明の真の範囲内に含まれるものとして特許請求するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
BはH、OH、脱離基、またはアミン含有もしくはヒドロキシル含有生物学的活性成分の残基である;
L1は二官能性連結部分である;
L2
【化2】

(式中、
Gは
【化3】

であり、ここでY1はOまたはSである;
(p)は0、1または2である)
である;
Y2はOまたはSである;
R1、R2およびR4は、独立して、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシよりなる群から選ばれる;
R9、R10およびR13は、独立して、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシの1つである;
Arは、
【化4】

(式中、
JはO、SまたはNR14である;
EおよびZは、独立して、CR14またはNR14である;
R14は、独立して、R9の定義の群から選ばれる)
よりなる群から選ばれる;
(m)は0または1である;および
R11は非抗原性および水溶性の重合体である)
の化合物。
【請求項2】
L1が、
【化5】

(式中、
MはXまたはQである;
XはO、NR12
【化6】

S、SOおよびSO2よりなる群から選ばれ、
QはO、SおよびNR12よりなる群のメンバーで置換されているC2-4アルキル、C3-8シクロアルキル、アリールまたはアラルキルよりなる群から選択される;
(n)は0または1〜12の正の整数である;
(q)は3または4である;
Y3はY1の定義の群と同じである;および
R7、R8およびR12は、独立して、R9の定義の群から選ばれる)
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arが、
【化7】

(式中、R3、R5およびR6は、独立して、R9の定義の群またはシアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、置換アシル、もしくはカルボキシアルキルから選ばれる)
である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R2およびR5が、独立して、C1-6アルキルよりなる群から選ばれる、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
R2およびR5がメチルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R3およびR6が水素である、請求項3〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
R11がキャッピング基を更に含む、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
Aが、水素、CO2H、C1-6アルキル部分、ジアルキルアシル尿素アルキルおよび
【化8】

(式中、B’はBと同じであるか、またはBの定義の群の別のメンバーである)
よりなる群から選ばれる、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
R1およびR4が、独立して、CH3およびCH2CH3よりなる群から選ばれる、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
XがNR12(R12は、水素およびC1-6アルキルよりなる群から選ばれる)である、請求項2に記載の化合物。
【請求項11】
Xが、OおよびNR12よりなる群から選ばれる、請求項2に記載の化合物。
【請求項12】
QがNHおよびOよりなる群のメンバーで置換されているC2-4アルキル基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項13】
(n)が0、1、または2である、請求項2および10〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
(n)が1または2である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
(m)が0である、請求項1〜14のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
(p)が1である、請求項1〜15のいずれかに記載の化合物。
【請求項17】
Y1-2が共にOである、請求項1〜16のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
R11がポリアルキレンオキシドを含む、請求項1〜17のいずれかに記載の化合物。
【請求項19】
該ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコールを含む、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
該非抗原性および水溶性の重合体が約2,000〜約100,000の分子量を有する、請求項1〜19のいずれかに記載の化合物。
【請求項21】
該非抗原性および水溶性の重合体が約5,000〜約40,000の分子量を有する、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
R11が、-C(=Y)-(CH2)a-O-(CH2CH2O)χ-A、-C(=Y)-Y-(CH2)a-O-(CH2CH2O)χ-Aおよび-C(=Y)-NR12-(CH2)a-O-(CH2CH2O)χ-A(式中、(a)は0または正の整数であり、YはOまたはSであり、Aはキャッピング基であり、(χ)は10〜2,300の正の整数である)よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
Bが、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N-ヒドロキシフタルイミジル、p-ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、およびチアゾリジニルチオンよりなる群から選ばれる脱離基である、請求項1〜22のいずれかに記載の化合物。
【請求項24】
Bが、アントラサイクリン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、p-ヒドロキシアニリンマスタード、アラ-C、シトシンアラビノシドおよびゲムシタビンよりなる群のメンバーの残基である、請求項1〜22のいずれかに記載の化合物。
【請求項25】
Bが、酵素、タンパク質、ペプチド、または心臓血管剤、抗腫瘍剤、抗感染剤、抗真菌剤、抗不安剤、胃腸剤、中枢神経系活性化剤、鎮痛剤、排卵誘発剤、避妊剤、抗炎症剤、ステロイド剤、抗尿毒症剤(anti-urecemic agents)、血管拡張剤および血管収縮剤よりなる群から選ばれるアミン含有化合物の残基である、請求項1〜22のいずれかに記載の化合物。
【請求項26】
第2の重合体がBに結合している、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
【化9】




(式中、
JはO、SまたはNR14である;
R14はR9の定義の群から選ばれる;
R3、R5およびR6は、独立して、R9の定義の群またはシアノ、ニトロ、カルボキシル、アシル、置換アシル、もしくはカルボキシアルキルから選ばれる)
よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
a.中間体化合物(III)
【化10】

(式中、
M2は切断可能または可逆的な保護基であり、
L1は二官能性連結部分であり、
L2
【化11】

(式中、
Gは
【化12】

であり、ここでY1はOまたはSである;
(p)は0、1または2である)
であり、
B2は脱離基であり、
Y2はOまたはSであり、
R1、R2およびR4は、独立して、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシよりなる群から選ばれ、
Arは、
【化13】

(式中、
JはO、SまたはNR14である;
EおよびZは、独立して、CR14またはNR14である;
R14は、独立して、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシよりなる群から選ばれる)
よりなる群から選ばれる)を準備し、
b.該中間体化合物(III)を酸または接触水素化により処理して、該保護基を除去し、
c.該脱保護中間体化合物(III)を、L1と反応しうる成分と反応させて式(IV)の化合物を形成する(ここで、該L1と反応しうる成分は活性化重合体であり、式(IV)の化合物は以下の構造を有する:
【化14】

(式中、
R9およびR10は、独立して、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシの1つである;
(m)は0または1である;および
R11は非抗原性および水溶性の重合体である))
ことを含んでなる、式(IV)の化合物の製造方法。
【請求項29】
さらに、
d.工程c)で得られた化合物をアミン含有またはヒドロキシル含有生物学的活性成分と反応させてコンジュゲートを形成させる工程を含む、請求項28に記載の製造方法。
【請求項30】
a.中間体化合物(III)
【化15】

(式中、
M2は切断可能または可逆的な保護基であり、
L1は二官能性連結部分であり、
L2
【化16】

(式中、
Gは
【化17】

であり、ここでY1はOまたはSである;
(p)は0、1または2である)
であり、
B2は脱離基であり、
Y2はOまたはSであり、
R1、R2およびR4は、独立して、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシよりなる群から選ばれ、
Arは、
【化18】

(式中、
JはO、SまたはNR14である;
EおよびZは、独立して、CR14またはNR14である;
R14は、独立して、水素、C1-6アルキル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシよりなる群から選ばれる)
よりなる群から選ばれる)を準備し、
b.該中間体化合物(III)をアミン含有またはヒドロキシル含有生物学的活性成分にカップリングさせて、第2中間体を形成させ、
c.該第2中間体を酸で脱保護し、
d.該脱保護第2中間体を非抗原性および水溶性の活性化重合体と反応させる
ことを含んでなる、プロドラッグ輸送体の製造方法。
【請求項31】
請求項30に記載のプロドラッグ輸送体を活性化重合体と反応させてハイブリッド輸送系を形成させることを更に含む、請求項30に記載の製造方法。
【請求項32】
Bがアミン含有またはヒドロキシル含有治療用成分の残基である、請求項1〜22および27のいずれかに記載の化合物を含む、哺乳動物を治療するための組成物。
【請求項33】
R11が直線状、分枝状または多分枝状のポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項34】
R2およびR5が共にメチルであり、R3およびR6が共に水素であり、Y1-2が共にOである、請求項3〜22のいずれかに記載の化合物。
【請求項35】
(n)が0、1、または2である、請求項2〜22および34のいずれかに記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−235624(P2010−235624A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142924(P2010−142924)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【分割の表示】特願2000−526236(P2000−526236)の分割
【原出願日】平成10年12月29日(1998.12.29)
【出願人】(596124151)エンゾン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】