説明

アミノ基およびフェニル基で置換されたシクロアルカンならびに5員の複素環を含むスフィンゴシン=1−リン酸アゴニスト

本発明は、一種類以上のS1Pレセプター(特にS1P1レセプタータイプ)に対する強力で選択性のあるアゴニストであるスフィンゴシン=1-リン酸アナログを提供する。本発明に係る化合物には、リン酸部分を有する化合物、さらには、ホスホネート類、α-置換ホスホネートおよびホスホチオナート類などの加水分解耐性を持つリン酸サロゲート(phosphate surrogates)を有する化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連する出願へのクロスリファレンス〕
本出願は、Provisional Application Nos. 60/652,642(2005年2月14日出願)、および60/669,616(2005年4月8日出願)、ならびに60/692,760(2005年6月22日出願)の優先権を主張する。また、これらの出願を参照することによってその全体が本明細書に含まれる。
【0002】
〔政府からの資金提供〕
本明細書に記載された発明は、the National Institutes of Healthから与えられた助成金番号RO1 GM067958 およびRO1 GM052722による政府の補助の下になされたものである。米国政府は本発明についての一定の権利を有する。
【0003】
〔技術分野〕
本発明は、1種類以上のスフィンゴシン=1-リン酸レセプターに対しての活性を有する新規なスフィンゴシン=1-リン酸アナログに関する。
【背景技術】
【0004】
スフィンゴシン=1-リン酸(Sphingosine 1-phosphate (S1P))は、内皮細胞分化遺伝子(endothelial cell differentiation gene (EDG))レセプターファミリーのうちの5種類のものを刺激することによって様々な細胞の応答を引き起こすリゾリン脂質メディエータ(lysophospholipid mediator)である。EDGレセプターはGタンパク質共役レセプター(G-protein coupled receptors (GPCRs))であって、刺激を受けると、セカンドメッセンジャー信号を、ヘテロ三量体Gタンパクアルファ(Gα)サブユニットおよびGタンパクベータ−ガンマ(Gβγ)二量体を活性化させることによって伝達する。
【0005】
スフィンゴシン=1-リン酸(S1P)は、細胞や組織から様々な応答を引き起こす。中でも顕著なのは、アポトーシス抵抗性、細胞形態学上の変化、細胞移動、細胞分裂、血管新生、およびリンパ球輸送の変化(alterations lymphocyte trafficking)による免疫系の調整である。したがって、S1Pレセプターは、例えば、腫瘍性疾患、自己免疫疾患、および、組織同種移植片の拒絶(rejection of tissue allografts)などの治療のための標的である。スフィンゴシン=1-リン酸は、部分的に、S1P1、S1P2、S1P3、S1P4、およびS1P5と命名された一連のGタンパク質共役レセプターを介して細胞に信号を送る。これらのレセプターは、構造的に関連するリゾホスファチジン酸(LPA)に対する他の3種類のレセプター(LPA1、LPA2、およびLPA3)と50〜55%のアミノ酸およびクラスター(cluster)が同一である。
【0006】
リガンドがレセプターに結合するとGタンパク質共役レセプター(GPCR)の立体構造変化(conformational shift)が誘発され、GDPが結合したG-タンパク質のα-サブユニットにおいてのGTPでの置換、ならびに、その後のG-タンパク質の細胞質への放出の原因となる。そしてα-サブユニットがβγ-サブユニットから脱離して、それぞれのサブユニットが、細胞応答を引き起こす二次メッセンジャーを活性化させるエフェクタータンパク質と結合する可能性がある。ついには、GDP上のG-タンパク質は、GDPへと加水分解され、G-タンパク質のサブユニットは再度サブユニット同士で互いに結合し、レセプターと結合する。増幅は一般的なGPCR経路の主要な役割である。一分子のリガンドと一分子のレセプターの結合が、それぞれ多くのエフェクタータンパク質と結合することができて細胞応答を増幅する多くのG-タンパク質の活性化につながる。
【0007】
個々のレセプターは組織特異的且つ応答特異的であるため、S1Pレセプターは良好な薬剤標的(drug targets)である。一種類のレセプターに選択的なアゴニストもしくはアンタゴニストの開発が、そのレセプターを含み、望ましくない副作用を抑える組織への細胞の応答に集中しているため、S1Pレセプターの組織特異性(Tissue specificity)は望ましい。S1Pレセプターの応答特異性によって、他の応答を起こさせることなく、ある細胞応答を開始させるかもしくは抑制する、アゴニストもしくはアンタゴニストを開発することができるため、S1Pレセプターの応答特異性もまた、重要である。例えば、S1Pレセプターの応答特異性によって、S1P模倣薬(S1P mimetic)が細胞形態学上の変化を起こすことなく血小板凝集を開始させることが可能であると考えられる。
【0008】
スフィンゴシン=1-リン酸は、スフィンゴシンとスフィンゴシンキナーゼとの反応によって、スフィンゴシンの代謝物として生成される。また、スフィンゴシン=1-リン酸は、高濃度のスフィンゴシンキナーゼが存在し、S1Pリアーゼが存在しない血小板の凝集部分に大量に存在する。S1Pは血小板が凝集している間に放出され、また血清中に蓄積し、また悪性腹水(malignant ascites)中にも見られる。S1Pの可逆的生分解(Reversible biodegradation)はS1Pホスファターゼなどのエクトホスファターゼ(ectophosphatase)による加水分解に由来すると考えられ、S1PはS1Pリアーゼによって非可逆的に分解される。
【0009】
個々のS1Pレセプターを刺激する生理学的意義は、レセプタータイプ選択性のリガンドがないため、まだほとんど知られていない。S1Pレセプターに対する強力なアゴニスト活性もしくはアンタゴニスト活性を有するS1Pアナログの単離とキャラクタリゼーションは、S1Pアナログの溶解度が低いことによって合成が複雑であるため、制限されてきた。
【0010】
現在、S1Pレセプターのアゴニストである、新規で強力な選択的薬剤が求められている。また、S1Pレセプターに対するアゴニズムに関して、生理学的プロセスを、さらに研究するための薬理学的手段も求められている。
【0011】
〔概要〕
本発明は、一種類以上のS1Pレセプター(特にS1P1レセプタータイプ)に対する強力で選択性のあるアゴニストである、スフィンゴシン=1-リン酸アナログを提供する。本発明に係る化合物には、リン酸部分を有する化合物、さらには、ホスホネート類、α-置換ホスホネート(特にここでは、ハロゲンでα-置換されたもの)およびホスホチオナート類などの加水分解耐性のリン酸サロゲート(phosphate surrogates)を有する化合物を含む。さらに、本発明は、例えば、スフィンゴシンキナーゼ酵素(sphingosine kinase enzyme)(特にスフィンゴシンキナーゼ2型(sphingosine kinase type 2 (SPHK2))などで、生体外で活性化された化合物もしくは変換された(例えば、リン酸化)化合物を含む第一級アルコールなどのプロドラッグを提供する。
【0012】
本発明によると、構造式(I)もしくは構造式(II)の構造を有するスフィンゴシン=1-リン酸アナログ、あるいは、その薬学的に許容される塩、またはエステルが提供される。
【0013】
【化5】

【0014】
(ここで、R4およびR7は独立に、CHもしくはCH2であり、R5はC、CH、もしくはNであり、R6はCH、CH2、O、SもしくはNR3であり、さらにここで、R3は水素もしくはアルキル基で、
Xは、ヒドロキシル基(-OH)、リン酸(-OPO3H2)、ホスホネート(-CH2PO3H2)、α-置換ホスホネートから選択され、
R1は、水素、ハロ基、トリフルオロメチル基、(C1-C10)アルキル基、ならびに、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、もしくはシアノ基で置換された(C1-C10)アルキル基から成る群から選択され、
R2は(C1-C20)アルキル基、シクロアルキル置換されたアルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、アリール基、アルキル置換されたアリール基、アリールアルキル基、および、アリール置換されたアリールアルキル基から成る群から選択され、さらにここで、R2基の1原子以上の炭素原子が独立に、過酸化物ではない酸素(non-peroxide oxygen)、硫黄、もしくはNR8で、ここで、R8は、水素もしくは (C1-C10)アルキル基で、
ここで、R2のアルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基は、任意にオキソ基と置換され、nは0、1、2、もしくは3であり、破線の丸は、オプションとして二重結合が1、2、もしくは3箇所あることを示す)
【0015】
本発明はまた、構造式(I)もしくは構造式(II)の構造を有する任意の化合物のエステル(リン酸エステルなど)もまた提供する。ここで、エステル基は経口利用能(oral availability)を向上させるためにプロドラッグを形成するために加えることができる。
【0016】
本発明は、また、構造式(I)もしくは構造式(II)の構造を有する任意の化合物の薬物療法のための使用方法も提供する。
【0017】
他の実施形態として、本発明は、以下のものも提供する。
プロドラッグである可能性がある本発明に係る化合物。すなわち、それらは例えば一級アルコールを、モノリン酸化(mono-phosphorylated)アナログを形成するために投与した後に被験者の中で、リン酸化によって活性化される可能性がある。活性型では本発明にかかる、ある化合物は、S1P 1型レセプター(S1P type 1 receptor)のアゴニストであり、動物の体内に導入されると、約7日までかそれ以上の間、リンパ球の減少を引き起こす。
S1P1、S1P4、およびS1P5レセプターに対して選択的なアゴニストである本発明に係る化合物で、例えばFTY-720(フィンゴリモド、fingolimod)よりも長い長期反応(long duration of action)を有するもの。
化合物(I)、(II)もしくはそれらの混合物、または、薬学的に許容される塩、あるいはそれらのエステルおよび薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、および、特に、多発性硬化症
などの自己免疫疾患を予防もしくは処置するための方法であって、そのような処置を必要とする哺乳類(例えばヒト)に、有効量の構造式(I)もしくは構造式(II)の化合物、または、その薬学的に許容される塩。
進行性認知症もしくは脳の変性疾患を予防または処置する方法。
同種移植片生着(同種移植としては例えば、臓器移植、臓器片対宿主病の処置、骨髄移植などがある)を延長する方法としてのリンパ球輸送の変更。
autotaxinを抑制することによる(例えば、腫瘍中の血管新生を予防し、もしくは、抑制することでの)癌の進行の予防。
自己免疫疾患もしくは哺乳類(ヒトなど)の腫瘍の中の血管新生を、予防または処置するのに有効な薬剤を調製するための、構造式(I)もしくは構造式(II)の化合物、それらの薬学的に許容される塩の使用。
【0018】
本明細書は、構造式(I)もしくは構造式(II)の化合物を調製するのに有用な、一般的な中間体および特異的な中間体、さらには本明細書の図表、実施例に示した方法を含む、新規な中間体、および本明細書中に開示した方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔略語〕
本明細書中では以下の略語を用いる。 S1P スフィンゴシン=1-リン酸、GPCR Gタンパク質共役レセプター、SAR 構造活性相関、EDG 内皮細胞分化遺伝子、EAE 実験的自己免疫性脳脊髄炎、NOD 非肥満性糖尿病、TNFα 腫瘍壊死因子α、HDL 高比重リポタンパク質、および、RT-PCR 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
【0020】
特に定義しない限り、本明細書中で用いられている全ての技術用語、および、科学的用語は、この発明が属する技術の分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似しているか、もしくは均等である全ての方法および物質は、本発明の実施もしくは試験に用いられる可能性があるが、好ましい方法、および物質は本明細書に記載されたものである。本明細書中では、個々の以下の用語がこのセクションと関連する意味を有している。
【0021】
本発明の記述および特許請求の範囲において、以下の専門用語は以下に説明している定義に従って用いられる。
【0022】
本発明を記述するために、本明細書中では、「ある」(”a”および”an”)という冠詞は「一種の」もしくは「一種以上の(すなわち、少なくとも一種の)」について言及する文法的な冠詞である。一例として、「ある元素」("an element")は一種類の元素もしくは複数種類の元素の意味である。
【0023】
本明細書中では、化学物質の「アナログ」(“analog”)は、他の化合物に構造が類似している化合物であるが異性体である必要がないのようなものである(例えば、5-フルオロウラシルはチミンのアナログである)。
【0024】
「対照」の細胞、組織、試料、もしくは被験者(“control” cell, tissue, sample, or subject)は、試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者と同じタイプの細胞、組織、試料、もしくは被験者である。対照は例えば試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者の試験を行うときと正確に同じか、ほとんど同じときに試験を行う。対照は、また、対照は、試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者の試験を行ったときから時間を隔てて、試験されることもある。対照の試験結果は、試験用の細胞、組織、試料、もしくは被験者の試験と比較できるように記録されることがある。試験用試料が試験を行おうとしている疾病もしくは疾患にかかっている疑いがある被験者から採取された場合には、対照は、
試験群(test group)もしくは試験用被験者(test subject)とは異なる出所もしくは類似した出所から採取されることもある。
【0025】
「試験用の」細胞、組織、試料、もしくは被験者(“test” cell, tissue, sample, or subject)は、試験をされる対象である。
【0026】
「病状を示している」細胞、組織、もしくは試料(“pathoindicative” cell, tissue, or sample)は、その細胞、組織、もしくは試料が存在していた動物が(または、組織を採取された動物が)疾患もしくは疾病に罹患しているものである。一例として、転移性乳がんに罹患している徴候を示す動物の、1つ以上の肺組織中の胸の細胞が挙げられる。
【0027】
疾患もしくは疾病に罹患していない動物の組織に1つ以上の細胞が存在すれば、組織は、細胞から、「正常に構成される」(“normally comprises”)。
【0028】
本明細書中では、「誘導体」(“derivative”)の語は、水素をアルキル基、アシル基、もしくはアミノ基で置換するように、構造が類似している他の化合物から1ステップ以上で生成されることがある化学物質のことを指す。
【0029】
「検出する」(“detect”)という語およびその文法上の変異形を用いたときは、化学種を定量せずに測定することを指す。一方、「定量する」(“determine”)もしくは「測定する」(“measure”)という語およびそれらの文法上の変異形を用いたときは、化学種を定量しながら測定することを指す。「検出する」(“detect”)の語と「同定する」(“identify”)の語とは、本明細書中では同義である。
【0030】
本明細書中では、「検出可能なマーカー」(“detectable marker”)もしくは「レポーター分子」(“reporter molecule”)は、マーカーを有さない類似の化合物が存在する中で、マーカーを含む化合物の特異的な検出を可能にする原子もしくは分子である。検出可能なマーカーもしくはレポート分子には、放射性同位体、抗原決定基、酵素、ハイブリダイゼーションに用いることができる核酸、発色団、フルオロフォア、化学発光分子、電気化学的に検出可能な分子、ならびに、蛍光偏光もしくは光散乱を変化させる分子が含まれるが、これらに限られるわけではない。
【0031】
本明細書中では、「有効量」("effective amount")は選択された効果を示すのに十分な量を意味する。「治療上有効量」("therapeutically effective amount")の化合物は、前記化合物が投与される前記被験者に対して有益な効果を示すのに十分な化合物の量である。
【0032】
本明細書中では、「説明書」("instructional material")には、刊行物、記録物、図解、もしくは、本発明に係る組成物の指定された用途への有用性を伝えるのに有用な、その他の表現可能な媒体を含む。本発明にかかるキットの説明書に、例えば本発明にかかる組成物を含む容器を加えることもでき、もしくは前記組成物を含む容器とともに出荷することもできる。あるいは、この説明書を容器とは別に分けて、受領者がこの説明書と組成物を併せて使うことを意図して出荷することもできる。
【0033】
本明細書中では、「精製された」("purified")という語およびそれに類する語は、天然での分子もしくは化合物に普通は関連する他の成分と比べて、その分子もしくは化合物が濃縮されることを指す。「精製された」("purified")という語は、必ずしもある過程において特定の分子が完全に純粋となったことを示すものではない。本明細書中では、「高度に精製された」("highly purified")化合物とは90%よりも高い純度のものである。
【0034】
本明細書中では、「薬学的に許容されるキャリアー」("pharmaceutically acceptable
carrier")には、リン酸緩衝された生理食塩水、水、油/水エマルジョンもしくは水/油エマルジョンなどのエマルジョン、およびさまざまなタイプの湿潤剤などの、全ての標準的な薬学的キャリアーが含まれる。この語は、監督官庁たる米国連邦政府(US Federal government)に認可された全ての薬剤、もしくは米国薬局方(US Pharmacopeia)にヒトを含む動物へ使用できる薬剤として記載された全ての薬剤を含む。
【0035】
本明細書中で「試料」(“sample”)とは、好ましくは被験者から採取した生物学的試料を指し、正常組織試料(normal tissue samples)、患部組織試料(diseased tissue samples)、生検試料、血液、唾液、排泄物、精液、涙液、および、尿が含まれるが、これらに限られるわけではない。試料はまた、特定の細胞、組織、もしくは関連する体液を含む、被験者から得られる物質についての、任意の他の源である可能性もある。試料は、細胞培養もしくは組織培養からも得ることができる。
【0036】
本明細書中では「標準」(“standard”)とは、比較をするために用いるものを指す。例えば、標準は、投与され、もしくは対照試料に添加された既知の標準物質もしくは既知の標準化合物であって、その化合物を試験用試料中で測定したときの結果と比較するために用いるものである可能性もある。標準は、試料に既知量を加えて、試料の処理をするときまたは、精製過程もしくは抽出過程の前に目的物質のマーカーが測定されるときに、加えたものの純度もしくは回収率を決定する薬剤もしくは化合物などの、内部標準(“internal standard”)のことを指す可能性もある。
【0037】
分析、診断、もしくは処置の「被験者」(“subject”)は動物である。このような被験者には哺乳類が含まれ、好ましくはヒトである。
【0038】
診断もしくは治療の対象となる「被験者」("subject")は、ヒトを含む哺乳類である。
【0039】
「治療上の」("therapeutic")処置とは、疾病の症状を示している被験者にそれらの症状を軽減し、もしくは除去する目的で施す処置である。
【0040】
「治療上有効量」("therapeutically effective amount")の化合物は、その化合物が投与される被験者に対して有益な効果を示すのに十分な化合物の量である。
【0041】
本明細書中では、「処置」("treating")の語は、特定の疾患もしくは状態の予防、または特定の疾患もしくは状態に伴う症状の軽減、および/または前記症状を予防し、もしくは除去することを含む。「予防としての」("prophylactic")処置は、疾病の症状を示していない、もしくは疾病の兆候のみしか示していない被験者に、前記疾病による症状が重くならないようにする目的で施す治療である。
【0042】
本明細書中では、「レセプターアゴニスト」(“receptor agonists”)とは、S1Pのレセプターと活性が類似している物質であるが、強度および/または効力において異なる化合物であると定義される。
【0043】
本明細書中では、「薬学的に許容されるキャリアー」("pharmaceutically acceptable
carrier")の語は、リン酸緩衝された生理食塩水、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン類(hydroxypropyl beta-cyclodextrin)(HO-プロピルベータシクロデキストリン類)、水、油/水エマルジョンもしくは水/油エマルジョンなどのエマルジョン、およびさまざまなタイプの湿潤剤などの、全ての標準的な薬学的キャリアーが含まれる。この語は、監督官庁たる米国連邦政府(US Federal government)に認可された全ての薬剤
、もしくは米国薬局方(US Pharmacopeia)にヒトを含む動物へ使用できる薬剤として記載された全ての薬剤を含む。
【0044】
「薬剤的に許容される塩」("pharmaceutically-acceptable salt")の語は、本発明にかかる化合物の生物学的な有効性、および特質を有している塩であって、生物学的に望ましくないことがない塩である。アミノ基、および/もしくは、カルボキシル基もしくは、その他の類似した置換基があるために、多くの場合には、本発明にかかる化合物は、酸性、および/もしくは、塩基性の塩をつくることができる。
【0045】
本明細書中では、「処置」("treating")の語は、特定の疾病、疾患もしくは状態の予防、または特定の疾病、疾患もしくは状態に伴う症状の軽減、および/または前記症状を予防し、もしくは除去することを含む。
【0046】
本明細書中では、「有効量」("effective amount")は選択された効果を示すのに十分な量を意味する。例えば、有効量のS1Pレセプターアゴニストは、S1Pレセプターの細胞のシグナリング活性を減少させるのに十分な量である。
【0047】
本明細書中では、「説明書」("instructional material")には、刊行物、記録物、図解、もしくは、本発明に係る組成物の指定された用途への有用性を伝えるのに有用な、その他の表現可能な媒体を含む。本発明にかかるキットの説明書に、例えば本発明にかかる組成物を含む容器を加え、もしくは前記組成物を含む容器とともに出荷することもできる。あるいは、この説明書を容器とは別に分けて、受領者がこの説明書と組成物を併せて使うことを意図して出荷することもできる。
【0048】
本発明に係る方法は、本発明で同定された阻害剤、ならびに、その阻害剤もしくは阻害剤を含む組成物の細胞または動物への投与について記載した説明書を含んだキットを含む。これは、本発明に係る組成物を細胞または動物に投与する前に、その組成物を溶解するもしくは分散するための適切な溶媒(好ましくは無菌である)を含むキットのように、当業者に知られている他の実施例のキットも含むと解されるべきである。好ましくは、その動物はヒトである。
【0049】
本発明に係る化合物にキラル中心が存在することがあること、および、本発明に係る化合物は任意に光学異性体およびラセミ体の形で単離されることが当業者によって理解される。いくつかの化合物は多形(polymorphism)となることがある。本発明には、本明細書に記載した有用な特性を有する、本発明に係る化合物の任意のラセミ体、光学活性体、多形体、もしくは、立体異性体、またはそれらの混合物が含まれることが理解される。また、当業者には光学活性体の調製法(例えば、再結晶法によるラセミ体の光学分割、光学活性な出発物質からの合成、キラル合成、もしくは、キラル固定相(chiral stationary phase)を用いたクロマトグラフィーによる分離などによる)、ならびに、S1Pアンタゴニスト活性の決定法(本明細所に記載した標準的なテストを用いるか、もしくは、本発明の属する分野において既知の他の同様のテストを用いる)も良く知られている。
【0050】
化合物が酸性塩もしくは塩基性塩(acid or base salts)を形成するのに十分に塩基性または酸性である場合には、その化合物を塩として用いるのが適切であることがある。許容される塩の例は、生理学的に許容されるアニオン(例えばトシレート、メタンスルホン酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、マロン酸イオン、酒石酸イオン、コハク酸イオン、安息香酸イオン、アスコルビン酸イオン、α-ケトグルタル酸イオン、および、α-グリセロリン酸イオンなど)を形成する酸とで形成された有機酸の付加塩(organic acid addition salt)である。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩、および炭酸塩を含む、適切な無機塩も形成できる。
【0051】
「薬剤的に許容される酸の付加塩」(Pharmaceutically acceptable acid addition salts)は無機酸、もしくは有機酸から調製できる。塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを含む無機酸から調製できる。塩は酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などを含む有機酸から調製できる。
【0052】
「薬剤的に許容される塩基の付加塩」(Pharmaceutically-acceptable base addition salts)は無機塩基、もしくは有機塩基から調製できる。無機塩基からつくることができる塩には、ほんの一例として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が含まれる。有機塩基からつくることができる塩には、アルキルアミン類、ジアルキルアミン類、トリアルキルアミン類、置換アルキルアミン類、ジ(置換アルキル)アミン類、トリ(置換アルキル)アミン類、アルケニルアミン類、ジアルケニルアミン類、トリアルケニルアミン類、置換アルケニルアミン類、ジ(置換アルケニル)アミン類、トリ(置換アルケニル)アミン類、シクロアルキルアミン類、ジ(シクロアルキル)アミン類、トリ(シクロアルキル)アミン類、置換シクロアルキルアミン類、二置換シクロアルキルアミン類、三置換シクロアルキルアミン類、シクロアルケニルアミン類、ジ(シクロアルケニル)アミン類、トリ(シクロアルケニル)アミン類、置換シクロアルケニルアミン類、二置換シクロアルケニルアミン類、三置換シクロアルケニルアミン類、アリールアミン類、ジアリールアミン類、トリアリールアミン類、ヘテロアリールアミン類、ジヘテロアリールアミン類、トリヘテロアリールアミン類、複素環アミン類、ジ複素環アミン類、トリ複素環アミン類、少なくとも2箇所以上のアミンの置換基が異なっていて、それらの置換基がアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、複素環式置換基などからなる群から選択されたジ-アミン類とトリ-アミン類の混合物、などの一級アミン、二級アミン、および三級アミンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。また、2箇所もしくは3箇所の置換基がアミノ基の窒素とともに複素環もしくはヘテロアリール基を構成しているアミンも含まれる。適したアミンの例としては、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n-プロピル)アミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N-アルキルグルカミン類、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、モルフォリン、N-エチルピペリジンなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。例えば、カルボキサミド類、低級アルキルカルボキサミド類、ジアルキルカルボキサミド類、などのカルボン酸アミド類や、その他のカルボン酸誘導体も本発明の実施をするにあたっておそらく有用であろうことも理解する必要がある。
【0053】
許容される塩は、例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物を、生理学的に許容されるアニオンを与える適切な酸と反応させるなどの、当業者によって知られている通常の方法を用いて得られることがある。アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、もしくはリチウム)、またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)との有機酸塩(例えばカルボン酸塩など)も調製することができる。
【0054】
構造式(I)、構造式(II)の化合物を調製する方法、または、構造式(I)もしくは構造式(II)の化合物を調製するのに有用な中間体が、本発明にかかる更なる実施例として提供される。構造式(I)もしくは構造式(II)の化合物を調製するのに有用な中間体もまた、本発明にかかる更なる実施例として提供される。
【0055】
〔化学的定義〕
本明細書中では「ハロゲン」もしくは「ハロ基」の語には、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基、およびヨード基が含まれる。
【0056】
本明細書中では「ハロアルキル」("haloalkyl")という語は、少なくとも1箇所以上がハロゲンに置換されているアルキルラジカル、例えば、クロロメチル基、フルオロエチル基、もしくはトリフルオフロメチル基等を意味する。
【0057】
本明細書中では「アルキル基」もしくは「C1-C10アルキル基」("C1-C10alkyl")は1原子から6原子までの炭素原子を有する、枝分かれした、もしくは直鎖のアルキル基を表す。典型例として、C1-C10アルキル基には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などを含むがそれらに限定されるわけではない。
【0058】
本明細書中では「アルケニル基」もしくは「C2-C10アルケニル基」("C2-C10alkenyl")は2原子から10原子までの数の炭素原子、および少なくとも1箇所以上の二重結合を有する、枝分かれした、もしくは直鎖の、オレフィン状の不飽和の基を表す。このような基の例としては、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1,3-ブタジエニル基、1-ブテニル基、ヘキセニル基、ペンテニル基などを含むがそれらに限定されるわけではない。
【0059】
本明細書中では「アルキニル基」もしくは「C2-C10アルキニル基」("C2-C10 alkynyl")は2原子から10原子までの数の炭素原子、および少なくとも1箇所以上の三重結合を有する、枝分かれした、もしくは直鎖の、不飽和の基を表す。このような基の例としては、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、1-ペンチニル基などを含むがそれらに限定されるわけではない。
【0060】
「C3-C8シクロアルキル基」("C3-C8 cycloalkyl")はシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基などを表す。
【0061】
本明細書中では「任意に置換された」("optionally substituted")の語は、0から4箇所が、それぞれ独立に選ばれた置換基で置換されたものを表す。それぞれ独立に選ばれた置換基は、他の置換基と同じであっても、異なっていてもよい。
【0062】
本明細書中では、「アリール基」("aryl")の語は、1もしくは2の芳香環を有する、単環式炭化水素系もしくは二環式のC5-C10環状炭化水素系(mono or bicyclic C5-C10 carbocyclic ring system)を表し、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基(tetrahydronaphthyl)、インダニル基(indanyl)、インデニル基(indenyl)、などを含むがそれらに限定されない。
【0063】
本明細書中では、「任意に置換されたアリール基」("optionally substituted aryl")は、0から4箇所が置換されたアリール化合物を含む。また置換されたアリール基には1〜3の置換基を有するアリール化合物を含む。ここで、その置換基には、例えば、アルキル置換基、ハロ置換基、もしくはアミノ置換基などの基が含まれる。
【0064】
「アリールアルキル」(“arylalkyl”)の語は、アリール(C1-C8 アルキル)基のように、アルキル基によって親部分に結合している任意のアリール基を表す。したがって、(C5-C6アリール)(C5-C8アルキル)とは、C5-C8アルキル基によって親部分に結合している、5員もしくは6員の芳香族環のことを指す。
【0065】
「複素環式」("heterocyclic group")の語は、任意に置換された1から3個のヘテロ原子を含む単環式炭化水素基、もしくは二環式炭化水素基である。ヘテロ原子は酸素、硫黄、および窒素からなる群から選択される。
【0066】
本明細書中では、「ヘテロアリール基」("heteroaryl")は1から3個のヘテロ原子を含んだ1もしくは2の芳香環を有する、任意に置換された、単環式炭化水素基、もしくは二環式炭化水素基を表す。フリル基、チエニル基、ピリジル基などを含むがそれらに限定されない。
【0067】
「二環式」("bicyclic")の語は、飽和の、もしくは不飽和の、安定な、7原子から12原子が架橋した、もしくは縮合した二環式炭化水素を表す。その二環式炭化水素は安定した構造を作ることができる炭素原子であればそのいずれにも結合しうる。この語には、ナフチル基、ジシクロヘキシル基、ジシクロヘキセニル基などが含まれるがそれらに限定されない。
【0068】
本発明にかかる化合物は分子内に1箇所以上の不斉中心を有する。本発明において、その立体化学が指定されていない化合物については、そのラセミ体だけでなく、さまざまな光学異性体の全てについても包括的に含んでいると理解されたい。
【0069】
本発明にかかる化合物は、互変異性体として存在する可能性があり、本発明では異性体の混合物および個々の互変体を含む。例えば、以下の構造では、
【0070】
【化6】

【0071】
は、以下の構造群の混合物を表している、と解釈される。
【0072】
【化7】

【0073】
16:0炭化水素、18:0炭化水素、18:1炭化水素、20:4炭化水素、もしくは 22:6炭化水素(16:0, 18:0, 18:1, 20:4 or 22:6 hydrocarbon)の語は、分鎖もしくは直鎖のアルキル基、またはアルケニル基のことを指す。ここで最初の整数は、その基の中に存在する炭素原子の総数であり、また2番目の整数は基の中にある二重結合の数を表す。
【0074】
本明細書中では、「S1P調節剤」(“S1P modulating agent”)は、生体内もしくは生体外でのS1Pレセプター活性に検出可能な変化(例えば、当業者に知られており、実施例に記載したようなバイオアッセイなどで測定されるS1P活性の少なくとも10%の増加、もしくは減少)をもたらす化合物もしくは組成物のことである。本明細書中では、「S1Pレセプター」(“S1P receptor”)は、特定のサブタイプが指定されていない限り、全ての
S1Pレセプターサブタイプ(例えば、S1P1、S1P2、S1P3、S1P4、および S1P5のS1Pレセプター)のことを指す。
【0075】
本明細書中で、「薬剤のEC50値」(“EC50 of an agent”)とは、所定の活性(スフィンゴシンもしくはS1Pレセプターの他のリガンドの結合、および/または、S1Pレセプターの機能的活性(シグナリング活性など))が、S1Pレセプターに対して50%となる際の薬剤の濃度のことである。言い換えると、EC50値は、100%の活性をリガンド/アゴニストを加えてもそれ以上に活性が増加しないS1Pレセプターの活性値とし、また0%をリガンド/アゴニストが存在しない状況で行ったアッセイでの活性の値であるとしたときに、50%の活性を与える濃度のことである。
【0076】
本明細書中では「リン酸アナログ」(“phosphate analog”)および「ホスホネートアナログ」(“phosphonate analog”)という語は、リン原子が+5の酸化数をとっていて、1箇所以上の酸素原子が、酸素ではない部分(non-oxygen moiety)と置換しているリン酸アナログ、およびホスホネートアナログを含むものであって、例えば、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ホスホロジチオエート(phosphoro-dithioate)、ホスホロセレノエート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノエート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニリデート(phosphoranilidate)、ホスホラミデート(phosphoramidate)、ボロノホスフェート(boronophosphates)などのリン酸アナログなどを含み、さらに水素、NH4、Naなどの会合する対イオンが存在する場合には、これらの対イオンをも含む。
【0077】
本発明は、1種類以上のS1Pレセプター、特にS1P1レセプタータイプ、S1P4レセプタータイプ、および、S1P5レセプタータイプ、に対して活性を有するスフィンゴシン=1-リン酸(S1P)アナログに関する。本発明は、リン酸部分を有する化合物と、ホスホネート類、α-置換ホスホネート(特にここで、ハロゲンでα-置換されたもの)およびホスホチオナート類などの加水分解耐性のリン酸サロゲート(phosphate surrogates)を有する化合物との両方を含む。
【0078】
ある実施例において、S1Pアゴニストは以下の一般的構造(IIA)を有するか
【0079】
【化8】

【0080】
(ここで、nは0、1、2、もしくは3であり、Xは、ヒドロキシル基(-OH)、リン酸(-OPO3H2)、ホスホネート(-CH2PO3H2)、α-置換ホスホネート(CHFPO3H2、-CF2PO3H2、-CHOHPO3H2、-C=OPO3H2を含む)から選択され、
ここで、R1は、水素、ハロゲン(ここでFもしくはClが好ましいハロゲンである)、 (C1-C6)アルキル基(メチル基、エチル基、およびプロピル基など)、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、もしくはシアノ基で置換された(C1-C10)アルキル基(トリフルオロメチル基など)から成る群から選択される。
R2基はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキル置換されたアリール基、アルキル置換されたシクロアルキル基、アリールアルキル基、および、アリールアルキル置換されたアリール基から成る群から選択される。R2中の鎖長は5〜8炭素原子であることが好ましい)、
あるいは、これらの薬学的に許容される塩である。
【0081】
また本発明は、構造式(II)の任意の化合物のエステル(リン酸エステルなど)を提供する。ここで、エステル基は、プロドラッグを形成して経口利用能を向上させるために加えることができる。
【0082】
好ましい実施例において、構造式(II)の化合物は、H、ハロ基(FもしくはClが好ましい)、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、プロピル基、もしくは、その他の低級(C1-C6)アルキル基、または、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、もしくはシアノ基で置換された低級アルキル基から成る群から選択されるR1を有する可能性があり、また、R2は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、オプションとしてアリール置換されたアルキル基、オプションとしてシクロアルキル置換されたアルキル基、アリールアルキル基、および、オプションとしてアリール置換されたアリールアルキル基から成る群から選択され、5〜8炭素原子の鎖長であることが好ましい。
【0083】
S1Pレセプターアゴニストプロドラッグ類(好ましくは、S1Pレセプタータイプ選択性アゴニスト)の潜在的な用途には、以下のものが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0084】
ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、および、特に、多発性硬化症などの自己免疫疾患を処置するための方法としてのリンパ球輸送の変化。多発性硬化症の「処置」には、再発寛解型多発性硬化症(relapsing-remitting)、慢性進行性(chronic
progressive)多発性硬化症などの様々な形態の疾患が含まれ、また、S1Pレセプターアゴニストを単独で、もしくは、他の薬剤と組み合わせて使用することで、こうした疾患に伴う症状の除去、さらには、その予防が可能である。
【0085】
さらに、本発明に係る化合物は、臓器移植、臓器片対宿主病の処置、骨髄移植などの同種移植片生着を延長する方法としてのリンパ球輸送の変更に用いることができる。
【0086】
さらに、本発明に係る化合物は、autotaxinの抑制に用いることができる。血漿ホスホジエステラーゼ(plasma phosphodiesterase)であるautotaxinは、最終生成物の抑制を示すことが知られている。autotaxinはいくつかの基質を加水分解して、リゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid)とスフィンゴシン=1-リン酸を得るが、これは腫瘍の進行と腫瘍中の血管新生に関わるものである。したがって、VPC01091のようなS1Pレセプターアゴニストは、autotaxinの抑制に用いることができる。S1Pレセプターに対するアゴニズムと、この活性が相まっていることがあるし、このような活性とは独立したものであることもある。
【0087】
さらに、本発明に係る化合物は、S1Pリアーゼの抑制に用いることができる。S1Pリアーゼは、S1Pを非可逆的に分解する細胞内酵素である。S1Pリアーゼの抑制は、随伴性リンパ球減少症(concomitant lymphopenia)によって、リンパ球輸送を崩壊させる。したがって、S1Pリアーゼ阻害剤は、免疫系の機能を調整するのに用いることができる。そこで、VPC01091のようなプロドラッグは、S1Pリアーゼの抑制に用いることができる。S1Pレセプター活性と、この抑制が相まっていることがあるし、この抑制が、いかなるS1Pレセプターの活性からも独立したものであることもある。
【0088】
多発性硬化症の「処置」には、再発寛解型多発性硬化症(relapsing-remitting)、慢性進行性(chronic progressive)多発性硬化症などの様々な形態の疾患が含まれ、また、S1Pレセプターアゴニストを単独で、もしくは、他の薬剤と組み合わせて使用することで、こうした疾患に伴う症状の除去、さらには、その予防が可能である。
【0089】
本発明は、本発明にかかる化合物を含む薬学的組成物も含む。さらに詳しくは、このような化合物は、当業者に知られている薬学的に許容されるキャリアー、充填剤、可溶化剤、および安定剤を用いて薬学的組成物を構成する可能性がある。例えば、本発明にかかる化合物、またはアナログ、誘導体、もしくはその修飾物を含む薬学的組成物は、本明細書で述べているように、被験者に対して適切な化合物を投与するのに用いられている。
【0090】
本発明にかかる化合物は、処置を必要とする被験者に、治療上許容される量の構造式(I)の化合物、または、治療上有効量の構造式(I)の化合物および薬学的に許容されるキャリアーを含む薬学的組成物を投与するステップを含む、疾病もしくは疾患を処置する方法に有用である。
【0091】
低級アルキル基は、具体的には、エチル基もしくはプロピル基である。
【0092】
ハロ基は、具体的には、フッ素もしくは塩素である。
【0093】
Xは具体的には、ヒドロキシル基、もしくはOPO3H2である。
【0094】
アルファ-置換ホスホネートには、-CHFPO3H2、-CF2PO3H2、-CHOHPO3H2、-C=OPO3H2もしくは 、チオホスホネート(-OPO2SH2)が含まれる。
【0095】
R1は具体的には、水素である。
【0096】
R2は具体的には、5〜8原子の鎖長を有するアルキル基である。
【0097】
R2はさらに具体的には、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、-O-ヘプチル基、-C(=O)ヘプチル基、もしくは、CH3-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-である。
【0098】
R2はさらに具体的には、オクチル基、もしくは、-O-ヘプチル基である。
【0099】
R2はさらに具体的には、オクチル基である。
【0100】
具体的なnの値は1もしくは2である。
【0101】
二重結合を有するシクロアルキル基には、具体的には以下のものが含まれる。
【0102】
【化9】

【0103】
本発明に係る特定の化合物では、R2が、シクロアルキル環に対してパラ位にある。
【0104】
本発明に係る特定の化合物では、R1基がR2に対してオルト位、もしくはパラ位にある。
【0105】
本発明に係る特定の化合物では、R2基が、ベンジルシクロアルキル基(benzylic cycloalkyl group)に対してパラ位にある(すなわち、1,4)。
【0106】
本発明に係る化合物のうちのエステルについての、限定となることのない実施例としては、X基が以下のものである化合物が含まれる。
【0107】
【化10】

【0108】
ここで、Yは、O、CH2、CHOH、CHF、CF2、および、
【0109】
【化11】

から成る群から選択され、
R9およびR10は、独立に、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、
【0110】
【化12】

から成る群から選択され、
ここで、R11は、C1-C4アルキル基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基から成る群から選択され、オプションとしてアリール置換される。特に好ましくは、R9およびR10は、アルコキシ基、
【0111】
【化13】

である。
【0112】
VPC01091 および VPC01211(VPC01091 and to VPC01211)を調製するための合成ルートを、図1のスキームで示す。構造式(I)もしくは構造式(II)に係る付加的な化合物は、スキーム、および、本明細書中の具体的な詳細な記載から得られる方法に、当業者が既知の修正を行うことで調製できる。
【0113】
構造式(II)の本発明に係る化合物は、VPC01091であり、ここで、XはOHで、R1は水素、R2はオクタン(C8H17)、nは2で、R2基はフェニル環に対してパラ位にある。その構造は以下のとおりである。
【0114】
【化14】

【0115】
構造式(II)の本発明に係る化合物は、VPC02162であり、ここで、XはOHで、R1は水素、R2はオクタン(C8H17)、nは2で、R2基はフェニル環に対してメタ位にある。その構造は以下のとおりである。
【0116】
【化15】

【0117】
本発明は、以下に示すような異性体をも含む。
【0118】
【化16】

【0119】
これらの化合物は混合物として調製して、クロマトグラフィーで分離することができる。分離するのに好ましい条件は、以下のとおりである。カラム:Chiralpak AD 4.6 mmID x 250 mm、移動相:Hex/EtOH/MeOH/DEA = 95/2.5/2.5/0.03、流速:1 mL/分、検出:UV 220 nm、カラム温度:40℃、もしくは、カラム温度:25℃。分離した後には、生体外でSPHK2酵素によってリン酸化されない、二種類の異性体が見出された。しかしながら、テスト前にリン酸化すると、リン酸化された化合物はS1Pレセプターのアゴニストとして作用することが見出された。
【0120】
構造式(II)の本発明に係る他の化合物は、VPC01211であり、ここで、XはOPO3H2で、R1は水素、R2はオクタン(C8H17)、nは2で、R2基はフェニル環に対してパラ位にある。その構造は以下のとおりである。
【0121】
【化17】

【0122】
構造式(II)の本発明に係る他の化合物は、VPC02164であり、ここで、XはOPO3H2で、R1は水素、R2はオクタン(C8H17)、nは2で、R2基はフェニル環に対してメタ位にある。そ
の構造は以下のとおりである。
【0123】
【化18】

【0124】
シクロアルキル環の中にヘテロ原子(N、S、Oなど)および/または二重結合を含む、本発明に係る化合物についての付加的な実施例としては、以下の構造のものが含まれる。
【0125】
【化19】


【0126】
構造式(I)もしくは(II)の付加的な化合物は、以下に図示するような一般的構造式(III)を有する。有用な特定の化合物を表1に示す。
【0127】
【化20】

【0128】
【表1】

【0129】
本発明はまた、構造式(I)もしくは構造式(II)の構造を有する化合物のエステルもまた提供する。ここで、エステルを形成することにより、投与しやすくする(経口利用能の向上など)ために、化合物をプロドラッグに変換することができる。さらに、本発明は、構造式(I)もしくは構造式(II)の化合物の薬学的に許容される塩をも提供する。さらに、構造式(I)もしくは構造式(II)の構造によって記述される、すべての可能な異性体を提供する。ここで、nが1である(シクロブタン)である場合には、化合物は対称であって、キラル中心が存在しないが、シス体とトランス体が存在することに留意されたい。
【0130】
本発明にかかる化合物を含む薬学的組成物は、処置を必要とする被験者に対して、局所的、口腔、頬側、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所的、舌下、膣、眼、肺、もしくは直腸を含むがそれらには限定されない、さまざまな経路で投与されている。経口投与は本発明にかかる化合物が必要とされているほとんどの状況下で、たいてい用いることができる。急性期治療においては、静脈注射か輸液によって投与するのが好ましい。維持のための療法であれば、経口、または、例えば筋肉内もしくは皮下のような非経口的な経路が好ましい。
【0131】
ある実施例では、本発明にかかる化合物、またはアナログ、誘導体、もしくはその修飾物、およびアルブミンを含む組成物、さらに詳しくは、本発明にかかる化合物、薬学的に許容されるキャリアー、および0.1から1.0%のアルブミンを含む組成物が投与された。アルブミンはバッファーとして機能し、化合物の溶解度を向上させる。一形態においてはアルブミンを加えない。
【0132】
一形態において、1ng/kg/dayから100mg/kg/dayの量を届けるために、本発明の実施に有用な薬学的組成物が投与される可能性がある。他の形態において、1ng/kg/dayから100g/kg/dayの量を届けるために、本発明の実施に有用な薬学的組成物が投与される可能性がある。
【0133】
有用な薬学的に許容されるキャリアーは、グリセリン、水、生理食塩水、エタノール、ならびに、その他のリン酸塩および有機酸塩などの薬学的に許容される塩の溶液を含むがそれらに限定されない。これらの例および、他の薬学的に許容されるキャリアーはReming
ton's Pharmaceutical Sciences (1991, Mack Publication Co., New Jersey)に記載されている。
【0134】
薬学的組成物は、無菌の注射用の水性もしくは油性の懸濁液または溶液の形式で調製され、包装され、もしくは販売される可能性がある。この懸濁液または溶液は既知の技術にしたがって処方されると考えられ、有効成分に加えて、本明細書で記載されている予製剤(dispersing agents)、湿潤剤、もしくは懸濁剤などの付加的な成分を含む可能性がある。このような無菌の注射用処方製剤は、例えば水や1,3-ブタンジオールのような、毒性がなく非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒を用いて調製されると考えられる。その他の許容される希釈剤もしくは溶媒には、リンゲル液、生理食塩水、および合成したモノグリセリドもしくはジグリセリドのような不揮発性油を含むがそれらに限定されない。
【0135】
本明細書に述べた方法を用いて同定された化合物は、本明細書に記載した、いずれかの疾病および疾患の処置をするために、被験者に処方されおよび投与される可能性がある。しかしながら、本発明にかかる化合物の用途は、本明細書に記載された疾病および疾患のみが含まれると解釈すべきではない。好ましくは、被験者はヒトである。
【0136】
本明細書に記載した薬学的組成物の処方製剤は、既知の方法、もしくは薬理学の技術分野において今後、開発される方法の、任意の方法を用いて調製される可能性がある。一般的には、かかる調製方法は有効成分をキャリアーもしくは1種類以上の付加的成分に加えるステップを含み、その後に、もし必要であるか、もしくは望ましければ、前記ステップで得られた生成物を整形もしくは包装して、一回分以上の投与量のユニットにする。
【0137】
本明細書で与えられた薬学的組成物は、基本的にはヒトに対する要指示薬品(ethical administration)に適した薬学的組成物を対象としたものではあるが、これらの組成物は一般的に、あらゆる種類の動物への投与にも適していることが、当該分野に精通した技術者によって理解されるであろう。
【0138】
薬学的組成物をさまざまな動物へ投与するのに適したものを与えるための、ヒトへの投与に適している薬学的組成物の修飾は、よく知られており、通常の熟練した獣医薬理学者が、当然のものとして、適宜実験をして、かかる修飾の計画および実行をすることができる。本発明にかかる薬学的組成物を投与される被験者には、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、およびイヌのような、取引されている哺乳類を予期しているが、これらに限定されるわけではない。
【0139】
本発明にかかる薬学的組成物は、一回分の投与用ユニットとしてもしくは複数の一回分の投与用ユニットとして、調製され、梱包され、もしくは大量に販売される可能性がある。本明細書中では、「単位用量」("unit dose")は、あらかじめ定められた量の有効成分を含む個々の薬学的組成物の量である。有効成分の量は、有効成分が被験者に投与される量、あるいは例えばそのような投与量の半分もしくは3分の1などの扱い易い量と一般に同じである。
【0140】
本発明にかかる薬学的組成物中の有効成分、薬学的に許容されるキャリアー、および全ての付加的成分の相対量は、処置される被験者の独自性、大きさ、および体調、ならびにさらには組成物が投与される経路によってさまざまである。一例として、組成物は0.1%から100%(w/w)の有効成分を含む可能性がある。
【0141】
有効成分に加えて、本発明にかかる薬学的組成物はさらに1種類以上の付加的な薬学的効果を有する薬品を含む可能性がある。特に、制吐剤、ならびにシアン化物スカベンジャ
ー、および、シアン酸スカベンジャーなどのスカベンジャーを含む付加的薬剤が意図されている。
【0142】
本発明にかかる薬学的組成物の、コントロールリリース薬剤(controlled-release formulations)、もしくは徐放性薬剤は、従来の技術を用いて調製することができる。
【0143】
ある場合には、例えばハイドロプロピルメチルセルロース、他の高分子マトリックス、ゲル、隔膜、浸透系、多層コーティング、微粒子、リポソーム、もしくはミクロスフェア類もしくは、望ましい放出特性を得るためのさまざまな割合でのこれらの組み合わせなど、用いられている剤形によっては1種類以上の有用成分について徐放性、もしくはコントロールリリース性を与えることができる。当業者に知られている適切なコントロールリリース薬剤は、本明細書に記載したものも含めて、本発明にかかる薬学的組成物の使用をするのに容易に選択できる。従って、錠剤、カプセル、ジェルキャップ、およびコントロールリリースに対応しているカプレットなどの、経口投与に適した剤形は、本発明に含まれる。
【0144】
ほとんどのコントロールリリース薬剤は、最初に、望ましい治療上の効果がすぐに得られる、一定の量の薬剤を放出して、その治療上の効果の水準を長期間にわたって維持するために、徐々にそして継続的に、異なる量の薬剤を放出するように設計されている。体内で薬剤の、この一定濃度を保つために、薬剤は剤形から一定の速度となるよう放出される必要があり、言い換えればこの速度とは、薬剤が体内から代謝され、および排泄されることになる量のことである。
【0145】
ある有効成分のコントロールリリースは、例えばpH、温度、酵素、水、またはその他の生理学的状態もしくは化合物によってさまざまに促進される。
【0146】
粉末状もしくは粒状の、本発明にかかる医薬品は、既知の方法によって調製できる。例えば、錠剤を形成し、もしくはカプセルに詰め、または、そこへ水性もしくは油性の賦活剤を加えて、水性懸濁液もしくは油性の懸濁液もしくは溶液を調製したような剤形を用いて、被験者に直接投与されうる。それぞれの剤形は1種類以上の予製剤、湿潤剤、懸濁剤、もしくは保存剤をさらに含んでいる。充填剤、および甘味剤、香料添加剤、もしくは着色剤などの付加的な賦形剤もこれらの剤形に含まれる可能性がある。
【0147】
本明細書中では「油性の」("oily")液体とは、炭素を含んだ液体分子を含み、水に比べて極性が小さいものをいう。
【0148】
経口投与に適している本発明にかかる薬学的組成物の剤形は、調製され、梱包され、または、あらかじめ定められた量の有効成分を含む錠剤、ハードカプセル、もしくはソフトカプセル、カプセル、トローチもしくはトローチ剤を含むがそれらに限定されない、それぞれ、個々の投与用単位の形で販売される可能性がある。経口投与に適しているその他の剤形には、粉末状もしくは粒状の製剤、水性もしくは油性の懸濁液、水性もしくは油性の溶液、ペースト、ゲル、練り歯磨き、口内洗浄薬、塗付剤、含嗽剤、懸濁液を含むがこれらに限定されるわけではない。「含嗽」(oral rinse)という語と、「口内洗浄」(mouthwash)という語は、本明細書中では互換可能である。
【0149】
錠剤は有効成分を含み、有効成分を例えば圧縮もしくは整形して作られる可能性があり、オプションとして1種類以上の付加的成分を含む。圧縮された錠剤は、粉末状もしくは粒状の形状が定まっていない有効成分を、オプションとして1種類以上の結合剤、潤滑剤、賦形剤、界面活性剤、分散剤などと混合して、適した装置で圧縮することにより調製できる。整形させた錠剤は、有効成分、薬学的に許容されるキャリアー、および少なくとも
混合物を湿らせるのに十分な液体の混合物を適した装置で整形することにより製造できる。錠剤を製造するのに用いられる薬学的に許容される賦形剤には、不活性希釈剤、整粒剤、および崩壊剤、結合剤、および滑沢剤を含むがそれらに限定されない。既知の分散剤としては、ジャガイモデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycollate)を含むがそれらに限定されない。既知の界面活性剤としては、ラウリル硫酸塩ナトリウムが含まれるが、それに限定されない。既知の希釈剤には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、およびリン酸ナトリウムを含むがそれらに限定されない。既知の整粒剤および崩壊剤は、コーンスターチ、およびアルギン酸を含むがそれらに限定されない。既知の結合剤は、ゼラチン、アラビアゴム、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、およびヒドロキシプロピル-メチルセルロースを含むがそれらに限定されない。既知の滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリカ(silica)、およびタルク(talc)を含むがそれらに限定されない。
【0150】
錠剤はコーティングされない可能性があり、あるいは被験者の消化管で分解するのを遅らせることによって持続的な薬剤の放出および有効成分の吸収をさせるために、既知の方法を用いてコーティングされる可能性がある。一例として、モノステアリン酸グリセリン、もしくはジステアリン酸グリセリンのような物質が、錠剤のコーティングに用いられる可能性がある。さらに一例として、浸透性のコントロールリリース錠剤(osmotically-controlled release tablet)を製造するために、錠剤は、米国特許4,256,108、4,160,452、および4,265,874に記載された方法によってコーティングされることがある。錠剤はさらに、薬学的に優れ、口当たりよく調製するために、甘味剤、香料、着色剤、保存剤、もしくはこれらの混合物を含むことがある。
【0151】
ハードカプセルは有効成分を含み、ゼラチンなどの生理学的に分解可能な成分を用いて作られる可能性がある。このようなハードカプセルは有効成分を含み、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、もしくはカオリン等の不活性希釈剤のような付加的成分をさらに含む可能性がある。
【0152】
ソフトゼラチンカプセル(soft gelatin capsule)は有効成分を含み、ゼラチンなどの生理学的に分解可能な成分を用いて作られる可能性がある。このようなソフトゼラチンカプセルには、水、またはピーナッツオイル、流動パラフィン、もしくはオリーブオイルのような油媒体と混ぜられた有効成分が含まれている。
【0153】
経口投与に適している本発明にかかる薬学的組成物の液状の剤形は調製され、梱包され、液体の状態もしくは、用いる前に、水、もしくは他の適切な賦形剤によって調整することを意図して、乾いた化合物の状態で、販売される可能性がある。
【0154】
注射可能な剤形は、アンプル中の場合のように投与量単位にして、もしくは保存剤を含んで複数回分の投与量を容器に入れるようにして、調製され、梱包され、または販売されることがある。非経口投与のための剤形には、懸濁液、溶液、油性のもしくは水性の賦形剤中のエマルジョン、ペースト、および移植可能な徐放性の剤形、もしくは、生分解性の剤形を含むがそれらに限定されない。このような剤形は、懸濁剤、安定剤、もしくは分散剤を含むがこれらに限定されない付加的成分を、さらに1種類以上、含む可能性がある。非経口的な投与のための剤形についての、ある実施例においては、有効成分は乾いた状態(例えば、粉末状もしくは粒状)で与えられ、適切な賦形剤(例えば、無菌でありパイロジェンが含まれていない水)によって非経口投与をする前に組成物を再調製している。
【0155】
本発明にかかる薬学的組成物は、頬側からの投与に適した剤形に調製され、梱包され、もしくは販売される可能性がある。かかる剤形には、例えば、従来技術を用いて製造され
た錠剤もしくはトローチ剤があり、例えば、0.1から20%(w/w)の有効成分、その残余分だけの経口的に溶解可能もしくは分解可能な化合物、およびオプションとして本明細書に記載した1種類以上の付加的成分を含む可能性がある。頬側からの投与に適した剤形は、粉末状にした、もしくはエアロゾル化された、もしくは微粒化された溶液、または懸濁液のいずれかに含まれた有効成分を含む。かかる粉末化、エアロゾル化、もしくはエアロゾル化された剤形は、分散させるとき、好ましくは平均的な粒子もしくは液滴の大きさが0.1から200ナノメーターの範囲であり、さらに、本明細書に記載した1種類以上の付加的成分を含む可能性がある。
【0156】
本明細書中では、「付加的成分」("additional ingredients")は、1種類以上の以下の賦形剤、すなわち、界面活性剤、分散剤、不活性希釈剤、整粒剤、および崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、香料、着色剤、保存剤、ゼラチンのように生理学的に分解可能な組成物、水溶性の賦形剤および溶媒、油性の賦形剤および溶媒、懸濁剤、分散剤もしくは湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、バッファー、塩、増粘剤、注入剤、乳化剤、酸化防止剤、抗生物質、抗真菌物質、安定剤、および薬学的に許容される高分子もしくは疎水性の物質を含むがそれらに限定されない。Genaro, ed., 1985, Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PAを参考のこと(この参照により本開示に含まれる)。
【0157】
化合物は被験者にしばしば一日に数回投与される可能性があり、または一日に一度、一週間に一度、二週間に一度、一月に一度のように頻度をより低く、または数ヶ月に一度、もしくは一年に一回以下のように、さらに低い頻度で投与されることもある。投薬の頻度は熟練した技術者に容易に理解されるであろうし、例えば、以下に限定されるわけではないが、処置をする疾患の種類や重傷度、ならびに、被験者の種類や年齢などの多くの因子に依存することになる。
【0158】
本発明は、1種類以上の本発明にかかる薬学的な組成物の成分を詰めた1種類以上の容器を含む、薬学的なパック商品やキットも提供する。ある実施例により、キットは免疫調整のための処置を必要とする被験者に提供される。好ましくは、被験者はヒトである。ある実施例においてそのキットは、1種類以上の本発明にかかるS1Pアナログを含み、1種類以上の既知の免疫阻害剤を含むこともある。これらの調合薬は、例えばバイアル瓶、管、マイクロタイターのウェルプレート(microtiter well plate)、瓶、などのさまざまな容器に詰められることがある。例えば、陽性対照サンプル(positive control sample)、陰性対照サンプル(negative control sample)、バッファー、細胞培地などの、その他の薬剤は別の容器に入れられて、キットと一緒に提供されることがある。好ましくは、キットには説明書も含まれる。
【0159】
本明細書に記載したものと同様であるかもしくは等価であるすべての方法および物を、本発明の実施もしくは試験に用いることが可能であるが、ここに記載したのは好ましい方法と物である。
【0160】
当業者は、本発明は目的を達成する上で適切であり、その目的に備わっている目標物と利点が得られると、容易に正しく理解することができる。本発明の本質から外れることなく、他の特定の形態として実施することができる。従って、本発明を、その本質もしくは本態性から外れること無く、他の具体例として具現化することが可能である。
【0161】
〔実施例〕
これから、下記の実施例に関連して本発明の記載をする。これらの実施例は説明のためだけに与えられるものであって、決して本発明がそれらの実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に記載した結果として明らかになった、ありとあらゆるバリエーションが含まれると解釈すべきである。
【0162】
〔実施例1:(1-アミノ-3-(4-オクチルフェニル)シクロペンチル)メタノール (6)〕
{A. 3-(4-ヨードフェニル)シクロペンタノン (1)}
酢酸パラジウム(II) 0.23g(0.1当量)および、塩化アンチモン(III) 0.23g(0.1当量)を、0.82gの2-シクロペンテン-1-オン(10 mmol)、2.48gの4-ヨードフェニルボロン酸(4-iodophenylboronic acid)(10 mmol)、および、1.6gの酢酸ナトリウム(20 mmol)の酢酸溶液80mL に、N2雰囲気下で加えた。25℃で24時間、撹拌した後、黒色沈殿をろ別し、ろ液を250mLの食塩水で希釈し、50mLの塩化メチレン中に二回抽出した。有機相を飽和NaHCO3溶液と30分間、撹拌し、食塩水で洗浄して、MgSO4で脱水した。溶媒を除去した結果、黄色の油状物質が得られ、さらにフラッシュカラム(flash column)(クロロホルム)によって精製を行った結果、1.92g(67%)の生成物が白色固体として得られた。J. Org. Chem., 1995, 60, 883-888。
【0163】
1H NMR (CDCl3) d 7.63 (d, 2H, ArH), 7.00 (d, 2H, ArH), 3.35 (m, 1H, ArCHCC), 2.7-1.8 (m, 6H, シクロペンチル)。
【0164】
13C NMR (CDCl3) d 218, 143, 138, 129, 95, 46, 42, 39, 31。
【0165】
{B. 3-(4-(オクタ-1-イニル)フェニル)シクロペンタノン (2)}
1.43g(5 mmol)の(1)のTHF溶液10mLを入れ加熱乾燥した(flame dried)25mLフラスコに、1.1gの1-オクチン(10 mmol)を加えた。30分間、脱気した後、2mLのトリエチルアミン、5mgのCuI、および10mgのPd(PPh3)4をN2保護下で加えた。反応は6時間で終了し、溶媒および揮発性の試薬を除去した後、混合物をクロロホルムと共にカラムクロマトグラフィーで精製した(columned)結果、1.34g (99%)の黄色の油状物質が得られた。
【0166】
1H NMR (CDCl3) d 7.35 (d, 2H, ArH), 7.15 (d, 2H, ArH), 3.37 (m, 1H, ArCHCC), 2.7-2.2 (m, 6H, シクロペンチル), 1.95 (m, 2H, CCCH2CH2), 1.6-1.2 (m, 8H, CH2), 0.89 (t, J=6Hz, 2H, CH3)
【0167】
13C NMR (CDCl3) d 220, 143, 132, 127, 122, 91, 80, 46, 42, 39, 32, 31, 29, 29,
23, 20, 14。
【0168】
{C. 3-(4-(オクチルフェニル)シクロペンタノン (3)}
数滴のギ酸および触媒量の5% Pd/Cを、10mLのメタノールおよび1.34g(5 mmol)の(2)を入れた25mLフラスコに加えた。反応容器は、3回H2でガス置換し、H2を封入した風船を被せた。2日間、水素化分解した後、シリカをつめた洗浄フィルター上に溶質(the solute on wash filter through a pad of silica)が得られ、濃縮して黄色の油状物質が得られた。1.32g (98%)の生成物が得られた。
【0169】
1H NMR (CDCl3) d 7.18 (s, 4H, ArH), 3.38 (m, 1H, ArCHCC), 2.60 (t, 2H, CCCH2CH2), 2.45-1.91 (m, 6H, シクロペンチル), 1.64-1.15 (m, 12H, CH2), 0.90 (t, 3H, CH3)。
【0170】
13C NMR (CDCl3) d 220, 142, 140, 129, 127, 46, 42, 39, 36, 32, 32, 32, 30, 30,
29, 23, 14。
【0171】
{D. 1-アミノ-3-(4-オクチルフェニル)シクロペンタンカルボニトリル(4)}
3.20g(11.8 mmol)、1.15g(23.5 mmol)のシアン化ナトリウム、1.25g (23.5 mmol)の塩化アンモニウムを、20mLの水酸化アンモニウムに加えた。混合物を一晩激しく撹拌した後、10mLの塩化メチレンで二回抽出した。有機相を脱水して濃縮し、3.30gの黄色油
状物質を得た。この粗生成物を、更なる精製を行わずに次のステップに用いた。J. Med. Chem., 1986, 29, 1988-1995。
【0172】
{E. 1-アミノ-3-(4-オクチルフェニル)シクロペンタンカルボン酸(5)}
3.3g (11.2 mmol)および50mLの濃塩酸を70℃まで加熱し、一晩撹拌した。得られた透明な水溶液を蒸発乾固した。10mLの水を加えて、再び蒸発させた。このステップを数回繰り返した。粗生成物を水とアセトンで洗浄し、白色の微細粉末が得られた。収率は1.7g (45%)であった。
【0173】
1H NMR (d6-DMSO) d 7.25-7.06 (m, 4H, ArH), 3.21 (m, 1H, ArCHCC), 2.38-1.62 (m,
6H, シクロペンチル), 1.49-1.20 (m, 14H, CH2), 0.81 (t, J=6Hz, 3H, CH3)。
【0174】
13C NMR (d6-DMSO) d 175, 141, 140, 64, 51, 46, 45, 44, 36, 35, 35, 34, 32, 32,
29, 29, 23, 15。
【0175】
{F. (1-アミノ-3-(4-オクチルフェニル)シクロペンチル)メタノール (6)}
63.4 mg(0.2 mmol)の(5)および27 mg(0.6 mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを3mLのTHFに溶解させた。その溶液を0℃まで冷却した後、1mLのTHFに溶解させた51 mg(0.2 mmol)の I2を、滴下した。その後、反応容器に冷却管を取り付け、反応混合物をN2下で5時間、還流させた。過剰量のNaBH4をメタノールで処理した。溶媒を除去した後、2mLの水と5mLの塩化メチレンを加え、混合物を約1時間、有機相が透明になるまで撹拌した。有機相を分取し、水相をさらに二回、塩化メチレンで抽出した。得られた有機相を混合して、脱水して濃縮し、43 mg(71%)の粗生成物が得られた。更なる精製は、TLCでメタノール/クロロホルム(5:95)で行い、13mgの透明な油状物質を得た。J. Org. Chem., 1993, 58,
3568-3571。
【0176】
1H NMR (CD3OD) d 7.11 (m, 4H, ArH), 3.80 (t, J=7.5Hz, 1H, c-pentyl-CH2O), 3.67
(t, J=7.5Hz, 1H, c-pentyl-CH2O), 3.01 (m, 1H, ArCHCC), 2.55 (t, J=7.5Hz, 2H, ArCH2), 2.29-1.69 (m, 6H, シクロペンチル), 1.57 (m, 2H, ArCH2CH2), 1.38-1.28 (m, 10H, CH2), 0.89 (t, J=7.5Hz, 3H, CH3)。
【0177】
13C NMR (CD3COCD3) d 141, 128, 127, 96, 45, 44, 43, 35, 35, 33, 33, 32, 32, 29, 29, 29, 23, 13。
【0178】
〔実施例2: リン酸二水素(1-アミノ-3-(4-オクチルフェニル)シクロペンチル)メチル
((1-amino-3-(4-octylphenyl)cyclopentyl)methyl dihydrogen phosphate)(7)〕
{リン酸二水素(1-アミノ-3-(4-オクチルフェニル)シクロペンチル)メチル(7)}
1mLの85% H3PO4をゆっくりと0.5g の P2O5に滴下し、その後、その酸−無水物混合物を、1時間、N2保護下で100℃まで加熱した。さらに0.5g のP2O5および30mgの(6)をポリリン酸に加え、5時間、100℃まで加熱した。室温まで冷却した後、10mLの氷冷水(icy cold water)を反応混合物に加えた。生成物が白色固体として沈殿した。その生成物を採集し、水で洗浄した。減圧乾燥後、31mg(82%)の緑色の生成物が得られた。MSでは、M+1=384.4 および304.4(加水分解されて(6)へと戻ったもの)の2本のピークしか見られなかった。
【0179】
〔実施例3: GTPγS-35結合アッセイ(GTPgS-35 binding Assay)〕
このアッセイは、単離されているGタンパク質結合レセプター類(GPCRs)のアゴニスト活性を例証する。このアッセイは、組み換え型GPCR(例えばS1P1-5レセプターなど)に付随する発現、および、HEK293T 細胞中の3種類のサブユニット(典型的には、アルファ2型、ベータ1型、ガンマ2型)のヘテロ三量体Gタンパク質の発現を、その細胞へのそれぞれ
のタンパク質をコードした4種類のプラスミドDNAの形質移入により、起こさせる。形質移入した約60時間後に細胞を採取して破壊し、細胞核を取り除いた。そうして残余分から粗ミクロソーム(crude microsome)を調製することができた。ミクロソームに対するレセプター−Gタンパク質複合体のアゴニスト(S1Pなど)刺激の結果、投与量に依存してGTPがアルファサブユニットでGDPに交換された。GDP-結合アルファサブユニットを検出するために、我々は、放射性同位体ラベル(硫黄-35)をしたホスホチオネートであってGDPへ加水分解しない、GTPアナログ(GTPgS-35)を用いる。Gタンパク質が付着したミクロソーム(The microsomes with the adherent G proteins)を、ろ別して採集し、結合したGTPgS-35を液体シンチレーションカウンターで測定した。アッセイでは相対的効力(relative potency、EC50値)および最大効力(効果、Emax)が得られる。アンタゴニスト活性は、固定した量のアンタゴニスト存在下でのアゴニスト投与量依存曲線の右側シフトとして検出される。もしそのアンタゴニストが競合的にふるまうならば、レセプター/アンタゴニスト対の親和力(Ki)が決定される。
【0180】
VPC01091のすべての異性体のリン酸化型、および、リン酸化されたVPC01091自身(VPC01211, CA5-P)は、このアッセイにおいて、S1P3レセプターに対してアゴニスト活性を示さないか、逆アゴニスト(inverse)であり、またS1P1レセプターに対しては、S1Pに比べて部分的アゴニスト(すなわち、十分に効力がない)である。逆アゴニストはアンタゴニストである。すなわち、それらはアゴニストリガンドの結合を妨げはするが、レセプターの活性を生じさせることはない。
【0181】
VPC01211 (CA5-P)、さらには、シクロヘキシル(CA6-P)アナログは、S1P1レセプターに対して部分的アゴニスト(図6)で、S1P2レセプター(図7および図8)、および、S1P3レセプター(図9)に対しては不活性である。これらの化合物は、S1P4レセプターに対しては完全なアゴニスト(full agonists)で(図10)、S1P5レセプターに対しては部分的アゴニスト(図11)である。シクロブチル化合物(CA4-P)は、ほとんどアゴニスト活性を示さなかったが、ほかの活性はシクロペンチル化合物およびシクロヘキシル化合物と同様であった。
【0182】
スフィンゴシン=1-リン酸(S1P)、VPC01211(リン酸化されたVPC01091)、およびVPC01211の4種類の構造異性体を、組み換え型ヒトS1Pタイプ1(S1P1)レセプターに対して評価を行った(図16)。このアッセイは、Davis, M. D., J. J. Clemens, T. L. Macdonald and K. R. Lynch (2005) “S1P Analogs as Receptor Antagonists,” Journal of Biological Chemistry, vol. 280, pp. 9833-9841に記載されたとおりに行った。本実験での化合物の効力(EC50値)の大きさの順番は、異性体1>異性体3>異性体4>異性体2>S1P>VPC01211であった。異性体はVPC01091の個々の異性体のリン酸化によって調製した。
【0183】
スフィンゴシン=1-リン酸(S1P)、VPC01211(リン酸化されたVPC01091)、およびVPC01211の4種類の構造異性体を、組み換え型ヒトS1Pタイプ3(S1P3)レセプターに対して評価を行った(図17)。このアッセイは、Davis, M. D., J. J. Clemens, T. L. Macdonald and K. R. Lynch (2005) “S1P Analogs as Receptor Antagonists,” Journal of Biological Chemistry, vol. 280, pp. 9833-9841に記載されたとおりに行った。本実験での化合物の効力(EC50値)の大きさの順番は、S1P>異性体2>VPC01211>異性体4>異性体1>異性体3であった。異性体はVPC01091の個々の異性体のリン酸化によって調製した。
【0184】
〔実施例4: リンパ球減少症アッセイ(Lymphopenia Assay)〕
プロドラッグ化合物(すなわち、VPC01091などの第一級アルコール)を、2%ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンに溶解し、マウスに、体重に対して0.01〜30mg/kgの投与量で経口胃管投与した。24時間後(または、その何倍か後)に、マウスに軽く麻酔をかけ、約0.1mlの血液を眼窩(orbital sinus)から採取した。リンパ細胞の数(血液1
マイクロリットル当たりの数を1000個単位で表す、通常は4〜11)を、Hemavet blood analyzerを用いて決定した。VPC01091の4種類の異性体についてのヒストグラムを示しており、ここでは、媒体(vehicle)で処置したマウスの100%値は、24時間後で7.5、96時間後では5であった。グループにつき三匹のマウスとし、種族をsv129 x C57BL/6のように掛け合わせた。活性化合物(VPC01211など)を、酸性化したDMSOに溶解して20mM にし、2% ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン水溶液と1:20で混合して希釈する。この溶液をマウスに体重に対して0.01〜10mg/kgの投与量で、腹腔内(intraperitoneal、i.p.)注射によって導入する。
【0185】
2%ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン水溶液(媒体)に溶解するとき、マウスに経口(胃管)投与し、VPC01091では、非常に長期間のリンパ球減少症がみられる(図3)。図3は、一回の投与分のVPC01091もしくは媒体を投与したときの血中のリンパ球の総数を示している。一回のED95投与量(A single ED95 dose)は一週間以上のリンパ球減少症の原因となる可能性がある。ひとつのグループごとに、5匹の、雄、10〜11週、種族sv129/C57Bl6マウスを用いた。
【0186】
リンパ球減少症アッセイにおける、VPC01091に対しての投与量依存曲線を図4に示す。図4は、2%ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン中のVPC01091の経口(胃管栄養)投与を3匹ずつのマウスのグループに行った結果を、グラフを用いてまとめたものである(図3に示したものと同じ種族)。
【0187】
これらの化合物のリン酸化は、生体内で、マウスのSPHK2遺伝子にコードされているスフィンゴシンキナーゼ2型(SPHK2)によって、触媒されると考えられる。VPC01091が有効なSPHK2遺伝子を有さないマウスに導入されると、リンパ球減少症が見られなかった(図5)。
【0188】
図18では、4種類のVPC01091の異性体をリン酸化するSPHK2酵素の能力が説明されている。
【0189】
図19では、リン酸化したVPC01091の異性体を経口胃管投与したアッセイの結果が説明されている。リン酸化したVPC01091の異性体をマウスにIV投与した24時間後、および96時間後における、リンパ球の総数(k/μl)が報告されている。
【0190】
〔実施例5: スフィンゴシンキナーゼアッセイ〕
組み換え型スフィンゴシンキナーゼ2型(SPHK2)は、それぞれのプラスミドDNAのHEK293Tへの形質移入によって、マウスもしくはヒトの組み換え酵素を発現させることにより調製する。約60時間後、細胞を採集し、破壊して、ミクロソームではない(すなわち可溶な)破片を保持する。組み換え遺伝子を含む、破壊された細胞の上澄みを試験化合物(VPC01091、スフィンゴシン、等)(5〜50micromolar)、および、ガンマ-32P-ATPに混合し、0.5〜2.0時間、37℃でインキュベートする。反応混合物の脂質を有機溶媒中に抽出し、順相薄層クロマトグラフィー(normal phase thin layer chromatography)で展開する。放射性同位体ラベルをしたバンドがオートラジオグラフィーで検出され、プレートからこそげとってからシンチレーションカウンティングにより定量する。ヒストグラムで示したものでは、スフィンゴシンが15μM、VPC01091およびその異性体が50μM存在し、インキュベーション時間は0.5時間であった。
【0191】
〔実施例6: 細胞内のカルシウム動員アッセイ〕
ハムスターCHOK1細胞にヒトS1P2レセプターDNAかヒトS1P3レセプターDNAを形質移入し、レセプターの異所性発現を示したクローン群が単離され、拡張された。アゴニスト刺激に応答するときのカルシウム動員を測定するために、細胞を96ウェルプレートに蒔き、カ
ルシウムに反応する色素であるFluo-4AMを取り込ませ、様々な濃度のアゴニストに3〜5分、曝した。細胞内のカルシウム動員に関係した蛍光の変化はFlexStation fluorimeterを用いて観測した。それぞれのアゴニスト濃度について、3重に試験を行った。このプロトコルは、Davis, M. D., J. J. Clemens, T. L. Macdonald and K. R. Lynch., Sphingosine 1-phosphate analogs as receptor antagonists., J. Biological Chemistry 280, 9833-9841 (2005)に詳細に記載されている。結果を図7および図9に示す。
【0192】
図7:ヒトS1P2レセプターDNAを形質移入したハムスターCHOK1細胞。
【0193】
図9:ヒトS1P3レセプターDNAを形質移入したハムスターCHOK1細胞。
【0194】
〔実施例7: 心拍数アッセイ(Heart Rate Assay)〕
マウスに、VPC01091(静脈投与、3 mg/kg)もしくは、媒体(2%ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン)を投与し、投与後の指標時間における心拍を測定した。抑制をしていない、意識のある動物についての心拍数を、the ECGenie(登録商標)systemに記録した。
【0195】
結果を図2に示す。
【0196】
本明細書中の表題はあるセクションが位置する場所の表示とそれを探すための助けとして含まれている。これらの表題は、本明細書に記載された概念の範囲を限定するものではなく、これらの概念は本明細書全体に亘りほかのセクションの記載にもあてはまる。
【0197】
本明細書に記載されていないが用いられる他の方法は公知であり、臨床、化学、細胞学、組織化学、生化学、分子生物学、細菌学、および、組み換えDNA技術に関するいずれかの分野の当業者の能力の範囲内のものである。
【0198】
本明細書で用いられている略語は、化学分野および生物学的分野におけるそれらの通常の意味である。本明細書で参照した全ての刊行物、特許、および特許文書は、あたかも個々に参照されているかのように、参照することによって本明細書に含まれる。矛盾が生じている場合においては、本明細書で開示されている定義を含む、本明細書の記載が有効である。本発明は様々な具体的および好ましい実施例および技術に関連して記載されている。しかしながら、本発明の本質から外れることなく、さまざまな変更および修正が可能である、ということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】図1は、VPC01091 (6)およびVPC01211 (7)の合成ルートを提供する。
【図2】図2は、化合物VPC01091がマウスの心拍数に影響を与えないというアッセイの結果をグラフで示している。このアッセイにおいては、試験化合物は静脈投与され、媒体は2%シクロデキストリンであった。
【図3】図3は、一回の投与分のVPC01091もしくは媒体をマウスに投与した後の血中のリンパ球の総数をグラフによって示している。ひとつのグループごとに、5匹の、雄、10〜11週、種族sv129 x C57B1/6マウスを用いた。縦座標はk/μlあたりのリンパ球を示す。横座標は日数を示す。
【図4】図4は、2%ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン中の様々の濃度(媒体対照、0.1、0.3、1.0および3.0mg/kg)のVPC01091の経口(胃管栄養)投与を各3匹ずつのマウスのグループに与えた24時間後(各グループの左の棒)、および48時間後(各グループの右の棒)のリンパ球減少症アッセイの結果を、グラフを用いて説明するものである(図3に示したものと同じ種族)。
【図5】図5は、一回の投与分のVPC01091をヘテロ接合の(SPHK2+/tr)マウスおよびホモ接合の(SPHK2tr/tr)マウスに経口投与し、野生型のマウスが媒体(ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン)のみを投与された場合のリンパ球の総数をグラフによって示している。SPHK2遺伝子は両方の対立遺伝子にエクソントラップを挿入することによって破壊した。
【図6】図6は、ヒトS1P1レセプター、試験対象のS1Pおよび3種類の他の化合物に対しての破壊細胞GTPg35S結合アッセイ(broken cell GTPg35S binding assay)の結果をグラフで説明するものである。化合物「CA5-P」はVPC01211である。化合物VPC01214(CA6-P)およびVPC01222 (CA4-P)は、対応するシクロヘキシル化合物およびシクロブチル化合物である。縦座標は、GTPg35S結合であり、横座標は脂質のモル濃度の対数(log)を示す。
【図7】図7は、ヒトS1P2レセプターを発現させたCHO-K1細胞を用いてカルシウム動員アッセイを行った結果をグラフで説明したものである。化合物「CA5-P」はVPC01211である。化合物CA6-PおよびCA4-Pは、対応するシクロヘキシル化合物およびシクロブチル化合物である。縦座標は、最大のカルシウム動員で、横座標は脂質のモル濃度の対数(log)を示す。
【図8】図8は、ヒトS1P2レセプターに対しての破壊細胞GTPg35S結合アッセイの結果をグラフで説明するものである。化合物「CA5-P」はVPC01211である。化合物CA6-PおよびCA4-Pは、対応するシクロヘキシル化合物およびシクロブチルである。縦座標は、GTPg35S結合で、横座標は脂質のモル濃度の対数(log)を示す。
【図9】図9は、ヒトS1P3レセプターを発現させたCHO-K1細胞を用いてカルシウム動員アッセイを行った結果をグラフで説明したものである。化合物「CA5-P」はVPC01211である。化合物CA6-PおよびCA4-Pは、対応するシクロヘキシル化合物およびシクロブチル化合物である。
【図10】図10は、ヒトS1P4レセプターに対しての破壊細胞GTPg35S結合アッセイの結果をグラフで説明するものである。化合物「CA5-P」はVPC01211である。化合物CA6-PおよびCA4-Pは、対応するシクロヘキシル化合物およびシクロブチル化合物である。
【図11】図11は、ヒトS1P5レセプターに対しての破壊細胞GTPg35S結合アッセイの結果をグラフで説明するものである。化合物「CA5-P」はVPC01211である。化合物CA6-PおよびCA4-Pは、対応するシクロヘキシル化合物およびシクロブチル化合物である。
【図12】図12は、ヒトS1P3レセプターでのS1P投与量依存曲線の結果のSchild プロットの図説であり、試験化合物VPC01222の濃度を示した。S1P投与量依存曲線の右方向のシフトは、VPC01222がこのレセプタータイプに対して克服可能なアンタゴニスト(surmountable antagonist)であることを示す。
【図13】図13は、ヒトS1P3レセプターでのS1P投与量依存曲線の結果のSchild プロットの図説であり、試験化合物VPC01211の濃度を示した。S1P投与量依存曲線の右方向のシフトは、VPC01211がこのレセプタータイプに対して克服可能なアンタゴニストであることを示す。
【図14】図14は、ヒトS1P3レセプターでのS1P投与量依存曲線の結果のSchild プロットの図説であり、試験化合物VPC01214の濃度を示した。S1P投与量依存曲線の右方向のシフトは、VPC01214がこのレセプタータイプに対して克服可能なアンタゴニストであることを示す。
【図15】図15は、ヒトS1P3レセプターを過剰発現させたT24細胞中での、S1Pおよび10μMのVPC01211存在下のS1Pに応答するカルシウム動員アッセイの結果を図説したものである。右方向のシフトは、S1P3レセプターにおけるVPC01211の克服可能なアンタゴニズムを示す。
【図16】図16は、リン酸化された異性体VPC01211(リン酸化されたVPC01091)のS1P1レセプターに作用する能力を図説したものである。
【図17】図17は、リン酸化された異性体VPC01211(リン酸化されたVPC01091)のS1P3レセプターに作用する能力を図説したものである。
【図18】図18は、4種類のVPC01091の異性体のSPHK2活性を図説したものである。
【図19】図19は、VPC01091の異性体をマウスに経口投与した24時間後(各グループの左の棒)、および48時間後(各グループの右の棒)のリンパ球の総数(k/μl)をグラフで図説したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造の化合物、あるいは、その薬学的に許容される塩、またはエステル。
【化1】

ここで、R4およびR7は独立に、CHもしくはCH2であり、R5はC、CH、もしくはNであり、R6はCH、CH2、O、SもしくはNR3であり、さらにここで、R3は水素もしくは (C1-C10)アルキル基で、
Xは、ヒドロキシル基、リン酸、ホスホネート、α-置換ホスホネートから選択され、
R1は、水素、ハロ基、トリフルオロメチル基、(C1-C10)アルキル基、ハロ基、ヒドロキシル基、(C1-C10)アルコキシ基、もしくはシアノ基で置換された(C1-C10)アルキル基から成る群から選択され、
R2は(C1-C20)アルキル基、シクロアルキル置換されたアルキル基、(C2-C20)アルケニル基、(C2-C20)アルキニル基、アリール基、アルキル置換されたアリール基、アリールアルキル基、および、アリール置換されたアリールアルキル基から成る群から選択され、さらにここで、R2基の1原子以上の炭素原子を独立に、過酸化物ではない酸素、硫黄、もしくはNR8で置き換えることができ、ここで、R8は、水素もしくは (C1-C10)アルキル基であり、
ここで、R2中のアルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基は、任意にオキソ基で置換され、nは0、1、2、もしくは3であり、破線の丸は、1、2、もしくは3箇所のオプションとしての二重結合を表す。
【請求項2】
構造(II)を有する、請求項1記載の化合物、あるいは、その薬学的に許容される塩。
【化2】

ここで、Xは、ヒドロキシル基、リン酸、ホスホネート、α-置換ホスホネートから選択され、
R1は、水素、ハロゲン、 (C1-C6)アルキル基、ならびに、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、もしくはシアノ基で置換された(C1-C6)アルキル基から成る群から選択され、
R2はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキル置換されたアリール基、アルキル置換されたシクロアルキル基、アリールアルキル基、および、アリールアルキル置換
されたアリール基から成る群から選択され、
nは0、1、2、もしくは3である。
【請求項3】
R1が、フッ素もしくは塩素であることを特徴とする、請求項1もしくは2記載の化合物。
【請求項4】
Xがヒドロキシル基、もしくはOPO3H2であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
XがOPO3H2であることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Xがヒドロキシル基であることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
α-置換ホスホネートが、-CHFPO3H2、-CF2PO3H2、-CHOHPO3H2、-C=OPO3H2もしくは -OPO2SH2であることを特徴とする、請求項1もしくは2記載の化合物。
【請求項8】
α-置換ホスホネートが、-CHFPO3H2、-CF2PO3H2、-CHOHPO3H2、もしくは -C=OPO3H2であることを特徴とする、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
R1が水素であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
R2が5原子、6原子、7原子、もしくは8原子の炭素原子を有するアルキル基であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
R2がヘプチル基、オクチル基、ノニル基、もしくは、-O-ヘプチル基であることを特徴とする、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
R2がオクチル基であることを特徴とする、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
nが1もしくは2であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
R2が、前記シクロアルキル環に対してパラ位にあることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
前記シクロアルキル基が、以下の構造であることを特徴とする、請求項1もしくは2記載の化合物。
【化3】

【請求項16】
R1基がR2に対してオルト位、もしくはメタ位にあることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の化合物。
【請求項17】
前記R2基が前記ベンジルシクロアルキル基(benzylic cycloalkyl group)に対してパラ位にあることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
以下の構造を有することを特徴とする、請求項1もしくは2記載の化合物。
【化4】

【請求項19】
スフィンゴシン=1-リン酸レセプターの活性と関連し且つこうした活性のアゴニズムが望まれるような哺乳類の病態もしくは症状を予防または処置する方法であって、
前記哺乳類に請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の有効量を投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記病態が自己免疫疾患であることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記自己免疫疾患が、ブドウ膜炎、I型糖尿病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、もしくは多発性硬化症であることを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記自己免疫疾患が多発性硬化症であることを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記病態がリンパ球輸送の変化(altering lymphocyte trafficking)であることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記処置が、リンパ球輸送を変化させることを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項25】
リンパ球輸送が同種移植片生着を延長することを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記同種移植片は移植用であることを特徴とする、請求項23記載の方法。
【請求項27】
S1Pリアーゼの活性と関連し且つS1Pリアーゼの抑制が望まれるような哺乳類の病態もしくは症状を予防または処置する方法であって、
前記哺乳類に請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の有効量を投与するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の薬物療法のための使用。
【請求項29】
スフィンゴシン=1-リン酸レセプターの活性と関連する哺乳類の病態もしくは症状を予防または処置するのに有効な薬剤を調製するための、請求項1〜18のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項30】
前記薬剤は液体のキャリアーを含むことを特徴とする、請求項28記載の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2008−530135(P2008−530135A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555356(P2007−555356)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/005304
【国際公開番号】WO2006/088944
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(501038296)ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファンデーション (17)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF VIRGINIA PATENT FOUNDATION
【Fターム(参考)】