説明

アミノ基を有する有機ケイ素化合物及びその製造方法

【解決手段】下記一般式(1)


(式中、R1は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、ヘテロ原子を含んでもよい。R2及びR3は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基で、各々同一又は異なっていてもよい。nは、0〜2の整数である。)
で示されるアミノ基を有する有機ケイ素化合物。
【効果】本発明によれば、上記アミノ基を有する有機ケイ素化合物を用いることにより、使用時に発生する揮発性有機化合物を抑制し、かつ、該化合物を利用した高分子材料に高い機械的特性や耐熱性を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランカップリング剤、表面処理剤、繊維処理剤、接着剤、塗料添加剤、高分子変性剤などに有用なアミノ基を有する有機ケイ素化合物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アミノ基を有する有機ケイ素化合物はシランカップリング剤、表面処理剤、繊維処理剤、接着剤、塗料添加剤などに有用であることが知られている。特に、高分子材料の機械的特性や耐熱性を向上させる目的で無機材料(例えば、ガラス繊維、金属、酸化物充填剤)を添加する場合、上記有機ケイ素化合物を用いることで、高分子材料と無機材料との密着性向上や無機材料の分散状態がよくなることが知られており、期待される添加効果がより高くなることが知られている。
【0003】
上記のような有機ケイ素化合物を含め、シランカップリング剤は使用する際の混合プロセス中には、相当量のアルコールが発生することは公知である。近年、地球温暖化や健康問題などに関係の深い環境問題において、揮発性有機化合物の削減が大きなテーマとして挙げられており、シランカップリング剤から発生するアルコール量を削減することで揮発性有機化合物の削減に取り組む開発が行われている。例えば、アルコキシシランのアルコキシル基の一部を不揮発性の長鎖アルキルポリエーテル基に交換したり(特許文献1:特開2006−249069号公報)、アルコキシシランを一部にアルコキシル基を残したまま部分的に加水分解・縮合したシロキサンオリゴマーとした場合(特許文献2:特許第2962934号公報、特許文献3:特開2002−226490号公報)、使用時に発生するアルコール量を低減できることが知られている。
【0004】
しかしながら、上記のアルコール削減法では、目的とする化合物の蒸留による精製ができないため高純度化できず、また、目的物が混合物となるために使用した際に物性が安定しないといった問題が発生する。よって、アミノ基を有し、蒸留による精製が可能で、かつ、使用時に発生するアルコール量を削減できる有機ケイ素化合物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−249069号公報
【特許文献2】特許第2962934号公報
【特許文献3】特開2002−226490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、アミノ基を有し、蒸留精製が可能で、発生するアルコール量を削減することができる有機ケイ素化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、後述する方法で得られる下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、ヘテロ原子を含んでもよい。R2及びR3は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基で、各々同一又は異なっていてもよい。nは、0〜2の整数である。)
で示されるアミノ基を有する有機ケイ素化合物は、蒸留による精製が可能で、かつ、使用時に発生するアルコール量を削減できることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は下記有機ケイ素化合物及びその製造方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)
【化2】

(式中、R1は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、ヘテロ原子を含んでもよい。R2及びR3は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基で、各々同一又は異なっていてもよい。nは、0〜2の整数である。)
で示されるアミノ基を有する有機ケイ素化合物。
請求項2:
下記一般式(2)
【化3】

(式中、R1は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、ヘテロ原子を含んでもよい。)
で示されるアミン化合物と下記一般式(3)
【化4】

(式中、R2及びR3は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基で、各々同一又は異なっていてもよい。nは、0〜2の整数である。)
で示されるγ−グリシドキシプロピルアルコキシシランを反応させて得られる反応混合物を蒸留することを特徴とする請求項1記載のアミノ基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記アミノ基を有する有機ケイ素化合物を用いることにより、使用時に発生する揮発性有機化合物を抑制し、かつ、該化合物を利用した高分子材料に高い機械的特性や耐熱性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で得られた有機ケイ素化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られた有機ケイ素化合物のIRスペクトルである。
【図3】実施例2で得られた有機ケイ素化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図4】実施例2で得られた有機ケイ素化合物のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のアミノ基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式(2)
【化5】

(式中、R1は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、ヘテロ原子を含んでもよい。)
で示されるアミン化合物と下記一般式(3)
【化6】

(式中、R2及びR3は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基で、各々同一又は異なっていてもよい。nは、0〜2の整数である。)
で示されるγ−グリシドキシプロピルアルコキシシランを反応して得られた反応混合物を蒸留することにより得られる下記一般式(1)
【化7】

(式中、R1は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、ヘテロ原子を含んでもよい。R2及びR3は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基で、各々同一又は異なっていてもよい。nは、0〜2の整数である。)
で示されるアミノ基を有する有機ケイ素化合物である。
【0012】
上記一般式(1)及び(2)中、R1は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、ヘテロ原子を含んでもよい。具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、メチルフェネチル基、フェニルベンジル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0013】
また、式(1)及び(3)において、R2及びR3は、炭素数1〜10、好ましくは1〜6の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基、フェニル基等が挙げられる。
【0014】
一般式(3)で示される化合物としては、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0015】
一般式(1)で示される化合物としては、具体的には、3−N−メチルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−エチルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−n−プロピルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−i−プロピルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−n−ブチルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−i−ブチルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−tert−ブチルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−シクロヘキシルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−フェニルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−メチルアミノメチル−1,1−ジエトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−エチルアミノメチル−1,1−ジエトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−n−プロピルアミノメチル−1,1−ジエトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−i−プロピルアミノメチル−1,1−ジエトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−n−ブチルアミノメチル−1,1−ジエトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−i−ブチルアミノメチル−1,1−ジエトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−tert−ブチルアミノメチル−1,1−ジエトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−シクロヘキシルアミノメチル−1,1−ジエトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−フェニルアミノメチル−1,1−ジエトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−メチルアミノメチル−1−メチル−1−メトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−エチルアミノメチル−1−メチル−1−メトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−n−プロピルアミノメチル−1−メチル−1−メトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−i−プロピルアミノメチル−1−メチル−1−メトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−n−ブチルアミノメチル−1−メチル−1−メトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−i−ブチルアミノメチル−1−メチル−1−メトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−tert−ブチルアミノメチル−1−メチル−1−メトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−シクロヘキシルアミノメチル−1−メチル−1−メトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−フェニルアミノメチル−1−メチル−1−メトキシ−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−メチルアミノメチル−1−メチル−1−エトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−エチルアミノメチル−1−メチル−1−エトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−n−プロピルアミノメチル−1−メチル−1−エトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−i−プロピルアミノメチル−1−メチル−1−エトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−n−ブチルアミノメチル−1−メチル−1−エトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−i−ブチルアミノメチル−1−メチル−1−エトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−tert−ブチルアミノメチル−1−メチル−1−エトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−シクロヘキシルアミノメチル−1−メチル−1−エトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン、3−N−フェニルアミノメチル−1−メチル−1−エトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタン等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(2)のアミン化合物と一般式(3)のγ−グリシドキシプロピルアルコキシシラン化合物を反応させる場合、一般式(2)で示されるアミン化合物と、一般式(3)で示されるγ−グリシドキシプロピルアルコキシシラン化合物の配合比は特に限定されないが、反応性、選択性の点から、一般式(3)で示されるシラン化合物1モルに対し、一般式(2)で示されるアミン化合物0.5〜10モル、特に0.8〜5モルの範囲が好ましい。
【0017】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、50〜200℃、特に70〜140℃が好ましく、反応時間は1〜20時間、特に1〜10時間が好ましい。
【0018】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0019】
上記式(2)のアミン化合物と式(3)のγ−グリシドキシプロピルアルコキシシランの反応により反応混合物が得られるが、この反応混合物から一般式(1)で示される有機ケイ素化合物を蒸留やカラム分離などの精製方法により単離することが可能であり、特に蒸留による単離が高純度化できるため好ましい。蒸留の条件は、特に制限はないが、沸点を下げるため減圧にて行うことが好ましい。
【0020】
ここで、上記反応混合物は、下記一般式(4)
【化8】

(式中、R1、R2、R3及びnは、一般式(1)で定義した通りである。)
で示される有機ケイ素化合物とその脱アルコール縮合物である下記一般式(1)
【化9】

(式中、R1、R2、R3及びnは、上記で定義した通りである。)
で示される有機ケイ素化合物、下記一般式(5)
【化10】

(式中、R1、R2、R3及びnは、一般式(1)で定義した通りである。)
で示される有機ケイ素化合物及び下記一般式(6)
【化11】

(式中、R1、R2及びR3は、一般式(1)で定義した通りである。mは、0又は1である。)
で示される化合物の混合組成物として得られる。
【0021】
一般式(1)及び(4)〜(6)で示される縮合物の、R1、R2、R3及びnは、上記と同様である。
【0022】
一般式(1)及び(4)〜(6)で示される縮合物としてR2及びR3は、具体的には、特にメチル基又はエチル基が好ましく、nが0のときは、mは0であり、nが1のときは、mは1であり、nが2のときは、一般式(6)の化合物は存在せず、mも存在しない。
【0023】
反応組成物の混合質量比としては、特に限定されないが、一般に、一般式(1):一般式(4):一般式(5):一般式(6)=(1〜80):(1〜70):(0〜40):(0〜20)である。好ましくは、式(1):式(4):式(5):式(6)=(30〜80):(30〜70):(0〜30):(0〜20)である。
【0024】
本発明の有機ケイ素化合物は、そのまま使用しても問題ないが、通常のシランカップリング剤と同様に溶媒に希釈して用いたほうが簡便で好ましい。溶媒としては、水、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示され、特に水、アルコール溶液が好ましい。用いる濃度としては、有機ケイ素化合物が、0.001〜50質量%となるように希釈して用いるとよい。また、溶液中に酸、アルカリを添加することでpHを調節して用いてもよい。
【0025】
本発明の有機ケイ素化合物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、顔料、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、pH調節剤、フィルム形成剤、帯電防止剤、抗菌剤、界面活性剤、染料等から選択される他の添加剤の1種以上を含有するものであってもよい。
【0026】
本発明の有機ケイ素化合物の用途は特に限定されるものではないが、具体的には、無機充填剤の表面処理、液状封止剤、鋳物用鋳型、樹脂の表面改質、高分子変性剤及び水系塗料の添加剤等を挙げることができる。
【0027】
本発明の有機ケイ素化合物を用いることで、無機充填剤の表面処理をすることが可能である。無機充填剤としては、ガラス繊維、粉末シリカ、粉末アルミナ、粉末タルク、粉末炭酸カルシウム等が挙げられる。また、該ガラス繊維の材料としては、Eガラス、Cガラスなどの一般的に用いられる種類のガラスを用いることができる。該ガラス繊維は、その製品形態に限定されない。ガラス繊維製品は多岐にわたるが、例えば、繊維径が3〜30μmのガラス糸(フィラメント)の繊維束、撚糸、織物を挙げることができる。
【0028】
無機充填剤を前記の有機ケイ素化合物を用いて処理する方法としては、一般的に用いられる方法が採用できる。すなわち、本発明の表面処理剤をそのままもしくは希釈して用い、これに前記無機充填剤を浸漬させた後、無機充填剤を引き上げて乾燥する方法や、この表面処理剤をそのままもしくは希釈したものを無機充填剤表面にスプレーした後、無機充填剤を乾燥する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例において、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。
【0030】
[実施例1] 3−N−シクロヘキシルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、シクロヘキシルアミン89g(0.90モル)を仕込み、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン71g(0.30モル)を85〜95℃で6時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌して、透明な組成物を得た。得られた組成物を蒸留することで、沸点138〜139℃/0.3kPaの無色透明な留分17gを得た。
【0031】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルを測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図1には1H−NMRスペクトルのチャート、図2にはIRスペクトルのチャートを示す。
質量スペクトル
m/z 303,272,228,149,112
以上の結果より、得られた化合物は下記式(7)であることが確認された。
【0032】
【化12】

【0033】
[実施例2] 3−N−n−ブチルアミノメチル−1,1−ジメトキシ−2,5−ジオキサ−1−シラシクロオクタンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、n−ブチルアミン66g(0.90モル)を仕込み、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン71g(0.30モル)を78〜95℃で7時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌して、透明な組成物を得た。得られた組成物を蒸留することで、沸点112〜113℃/0.2kPaの無色透明な留分29gを得た。
【0034】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)、IRスペクトルを測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図3には1H−NMRスペクトルのチャート、図4にはIRスペクトルのチャートを示す。
質量スペクトル
m/z 277,234,202,149,107,86
以上の結果より、得られた化合物は下記式(8)であることが確認された。
【0035】
【化13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、ヘテロ原子を含んでもよい。R2及びR3は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基で、各々同一又は異なっていてもよい。nは、0〜2の整数である。)
で示されるアミノ基を有する有機ケイ素化合物。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】

(式中、R1は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であって、ヘテロ原子を含んでもよい。)
で示されるアミン化合物と下記一般式(3)
【化3】

(式中、R2及びR3は、炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基で、各々同一又は異なっていてもよい。nは、0〜2の整数である。)
で示されるγ−グリシドキシプロピルアルコキシシランを反応させて得られる反応混合物を蒸留することを特徴とする請求項1記載のアミノ基を有する有機ケイ素化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−285406(P2010−285406A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142133(P2009−142133)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】