説明

アミノ基を有する無機粉体の製造方法

【課題】 アミノ基が強固に導入された無機粉体を、凝集粒子の発生等のシランカップリング剤を用いて官能基を導入した場合に生じる問題を起こすことなく効率的に製造する。
【解決手段】 下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rはメチル基、エチル基等の炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、nは3〜18、好ましくは6〜15の整数である)
で表されるジシロキサン化合物を、シリカ等の表面に水酸基を有する無機粉体と80℃以上の温度で接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基を有する無機粉体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表面に水酸基を有する無機粉体(以下、単に「無機粉体」とも略する)の表面を種々の物質で処理して機能性を付与することが行われている。例えば、シリカや酸化チタン等の無機粉体の表面を、様々な官能基を有するシランカップリング剤により表面処理し、無機粉体の用途や目的に応じて、分散性や混和性を向上させたり、重合性基やイオン交換性基を導入したりすることが行われている。
【0003】
こうした中、機能性の官能基の一つである、アミノ基を有する無機粉体は、該基に由来して塩基性を発現し、DNA固定化担体、ドラッグデリバリーシステム(DDS)担体やアフィニティクロマトグラフィ用担体といった生体関連物質用の担体、またはカラム充填材や、吸着材として利用されるため注目されている。
【0004】
このようなアミノ基を無機粉体に導入する方法としては、アミノ基を有するシランカップリング剤を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、シランカップリング処理は、シランカップリング剤による表面処理時にシランカップリング剤同士が加水分解による架橋反応を起こしてしまい、無機粒子間の凝集を起こしてしまう欠点があった。また、シランカップリング剤の加水分解が不十分で、粒子表面で結合に寄与していない加水分解性基が残存して凝集が進行したり、加水分解により生成する塩素やアルコールによる品質の経時変化が起こるといった問題も指摘されていた。
【0005】
一方、表面に水酸基を有する無機粉体に官能基を付与する表面処理方法としては、オルガノポリシロキサン化合物を利用する方法もあり、水酸基やアルコキシ基等の官能基を有する該化合物が種々使用されている。しかして、アミノ基を有するオルガノポリシロキサン化合物としては、ポリイミド樹脂に可とう性を付与する改質剤等として利用されているビスアミノアルキルテトラアルキルジシロキサン化合物が公知であり(例えば、特許文献2)、この化合物を、上記アミノ基を有する無機粉体を製造するための表面処理剤として応用することも考えられる。
【0006】
【特許文献1】特公昭53−22447号公報
【特許文献2】特開昭61−180792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般に、オルガノポリシロキサン化合物は反応性が低く、この化合物を用いた表面処理では、該化合物は、無機粉体の表面に分子間力で弱く結合するに留まるのが普通であった。このため、該方法で官能基が導入された無機粉体は、官能基が脱離し易く、例えば、これを溶媒中で使用される用途に用いた場合には、ほとんどが直ぐに流出してしまい、持続して期待した性能が得られないことが多かった。したがって、前記ビスアミノアルキルテトラアルキルジシロキサン化合物を表面処理剤として用いた場合においても、これを常温或いは常温を少し上回る程度で普通に無機粉体に処理したのでは、上記と同様の結果しか得られず、導入されたアミノ基は簡単に脱離してしまうものであった。
【0008】
以上から、アミノ基が強固に導入された無機粉体を、凝集粒子の発生等のシランカップリング剤を用いて官能基を導入した場合の問題を生じさせることなく効率的に製造する方法を開発することが大きな課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ってきた。その結果、ジシロキサン化合物は一般にジシラザン化合物等と反応性の高いケイ素化合物と比較すると反応性が低いとされているが、上記ビスアミノアルキルテトラアルキルジシロキサン化合物においては、分子内にアミノ基を持っているため、そのアミノ基が自己触媒的に作用し、無機粉体の表面水酸基を基点にして分子内のジシロキサン結合の開裂が生じやすく、80℃以上に加熱すると、この開裂により発生した生成物が無機粉体の表面水酸基に結合する特有の現象が生じることを発見した。そして、この反応は、無機粉体の表面水酸基が少ない場合においても十分な処理が行われるだけでなく、無機粉体表面に均一に分散するため、粒子間の凝集が発生し難く、また粉体の細孔内まで処理され易く、それにより官能基を粉体表面全体に均一に強固に導入、処理することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、nは3〜18の整数である)
で表されるジシロキサン化合物を、表面に水酸基を有する無機粉体と80℃以上の温度で接触させることを特徴とするアミノ基を有する無機粉体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記一般式(1)で示されるジシロキサン化合物のジシロキサン結合が開裂して発生した基が無機粉体の表面水酸基に化学結合することにより、アミノ基が無機粉体に導入されるため、該アミノ基は強固に同粉体に導入されている。したがって、該無機粉体を、生体関連物質用の担体、カラム充填材等の溶媒中で使用される用途に供しても、該アミノ基は粉体の表面から剥がれ難く、粉体の表面改質効果の低下や、むき出しになった粉体の活性点とその他成分とが反応して製品の劣化、品質の低下等を引き起こす恐れが少ない。
【0014】
また、シランカップリング剤を用いた場合のような従来公知のアミノ基を有する無機粉体の製造方法にあった、凝集、経時的な粉体の物性変化等も抑制され、効率よく該無機粉体を製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で用いられる表面に水酸基を有する無機粉体としては、公知のものが制限なく使用でき、例えばシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物やこれらの複合酸化物、カオリン、マイカなどの天然鉱物、さらには炭酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの無機塩があげられる。これらの中でも化学的に安定であることから、シリカ、酸化チタンが好ましく、シリカが最適である。表面水酸基の量は、0.01〜10個/nmが一般的であり、特に、0.01〜5個/nmの少ない場合においても十分な表面処理が行われ、本発明の効果が顕著に発揮されるため有利である。
【0016】
これら粉体の粒径は特に制限されず、使用目的にあわせて適宜選択すればよいが、一次粒子径は0.005〜300μmが好ましく、0.01〜200μmであることがより好ましい。比表面積は、0.5〜500m/gが好ましく、1〜400m/gであることがより好ましい。なお、形状についても特に制限されず、本発明の製造方法で製造する無機粉体の使用目的にあわせて適宜選択すればよく、例えば真球状、粒状、針状、鱗片状など様々なものをあげることができる。また、その表面形態は多孔質で微細孔を有しているものであっても使用することができる。
【0017】
本発明では、上記無機粉体を、下記式(1)
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、Rは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、nは3〜18の整数である)
で表されるジシロキサン化合物(以下、単に「アミノ基含有ジシロキサン化合物」とも略する)と80℃以上の温度で接触させることにより表面処理する。これにより、前記したとおり無機粉体の表面水酸基を基点にして分子内のジシロキサン結合の開裂が生じ、発生した生成物が無機粉体の表面水酸基に強固に結合する。この反応は、例えばヘキサメチルジシロキサン等の化合物では通常進行せず、上記アミノ基含有ジシロキサン化合物に特有のものであり、これは該化合物が分子内に有するアミノ基が自己触媒的に作用する結果生じるものと推察される。
【0020】
上記式(1)において、Rは炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。当該炭化水素基としては炭素数が1〜10であれば特に制限されるものではない。当該炭素数1〜10の炭化水素基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;フェニル基、トルイル基等のアリール基類が例示されるが、表面被覆の効率が良い点でアルキル基であることが好ましく、さらには商業的に大量に原料が入手できる点で、炭素数1〜3のアルキル基、特に、メチル基又はエチル基が最適である。
【0021】
上記式(1)において、nは3〜18の整数である。当該アルキレン基としては特に制限されないが、生体関連物質用の担体として使用する場合には、生体関連物質と相互作用しやすい点からnが6以上が好ましく、さらにはnが10以上がより好ましい。また、nの上限は15以下がより好ましい。
【0022】
このような構造を有するアミノ基含有ジシロキサン化合物の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の手法により製造すればよい。
【0023】
本発明における、前記アミノ基含有ジシロキサン化合物と無機粉体との処理方法としては、例えばヘンシェルミキサー等の高速攪拌装置の中で無機粉体を攪拌しながら、アミノ基含有ジシロキサン化合物を添加して無機粉体と混合し、所定の温度で加熱する方法が挙げられるが、特に制限されるものではない。アミノ基含有ジシロキサン化合物の添加方法としては、液体状もしくは気体状のいずれでもよく、滴下もしくはスプレーノズルを用いた噴霧によって導入してもよい。
【0024】
使用するアミノ基含有ジシロキサン化合物の量は、導入すべきアミノ基の量や、無機粉体の比表面積等に応じて適宜設定すればよい。一般に、アミノ基含有ジシロキサン化合物の量が多いほうが、より多量のアミノ基を導入可能となるが、あまりに多いと無機粉体の処理に関与しないジシロキサンが生じることとなる。最適な使用量は使用するアミノ基含有ジシロキサン化合物の種類や、無機粉体の種類および比表面積や粒径、またその用途に関連し、一律に決めることはできないが、一般的には、無機粉体100質量部に対するアミノ基含有ジシロキサン化合物の量は5〜120質量部が好ましく、10〜80質量部がさらに好ましい。
【0025】
該接触の際の温度として、アミノ基含有ジシロキサン化合物におけるシロキサン結合を開裂させ、無機粉体の有する表面水酸基と効率よく反応させるため、80℃以上とすることが必要であり、より好ましくは100℃以上であり、最も好ましくは150℃以上である。80℃未満の温度では、シロキサン結合の開裂が生じ難く、アミノ基含有ジシロキサン化合物は無機粉体の表面に分子間力で弱く付着するものになり、アミノ基は粉体の表面から脱離し易くなる。なお、反応は、アミノ基含有ジシロキサン化合物の分解温度以下であれば特に制限されないが、一般には400℃以下、より好適には300℃以下で行うことが好ましい。なお、反応容器内の圧力は特に制限されず、常圧でもよいし、加圧でもよい。加圧する場合は、0.005〜0.5MPa程度が一般的である。
【0026】
また、反応時間は、十分に表面処理を行うために、0.5〜20時間が好ましく、より好ましくは1時間〜5時間である。
【0027】
アミノ基含有ジシロキサン化合物の接触時の雰囲気は、水分を遮断した条件であることが好ましく、特に窒素、アルゴン等の不活性ガスの条件下にて処理を行うことが望ましい。このようにして無機粉体をアミノ基含有ジシロキサンにより処理した後、必要に応じて減圧下で加熱することにより、未反応のアミノ基含有ジシロキサン化合物やその分解物を除去することができる。
【0028】
以上の方法により得られたアミノ基を有する無機粉体については、そのアミノ基の塩基性を利用して広い用途に使用できる。例えばDNA固定化担体、DDS担体、バイオリアクターまたはアフィニティクロマトグラフィーなどの生体関連物質用の担体、固相合成用担体、プラスチックやゴム等の充填材、塗料用添加材、化粧品、吸着剤、トナーの外添剤、抗菌剤、消臭剤、水処理用、金属回収剤、触媒等の分野で好適に使用することができる。このうち、生体関連物質用の担体、カラム充填材、塗料用添加材等の溶剤中で使用される用途に使用した場合において、アミノ基が強固に導入され脱離し難い効果が顕著に発揮され最も好適である。
【実施例】
【0029】
本発明を更に詳細に説明するため、以下実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各例における無機粉体の平均粒子径、比表面積、表面水酸基量、炭素量、窒素量、アミノ基量、アミノ基密度は以下の方法によって測定したものである。
【0030】
〔平均粒子径〕 無機粉体をエタノールに分散して超音波をかけながら、光散乱回折式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製:コールターLS230)により粒度分布を測定し、体積基準算術平均径D50の値を平均粒子径とした。
【0031】
〔比表面積〕 比表面積測定装置(島津製作所製:フローソーブ2−2300型)を用いて、BET法により求めた。
【0032】
〔表面水酸基量〕 無機粉体を200℃で3時間加熱し、この時の重量をW1とする。その後、さらに1000℃で1時間加熱した時の重量をW2とする。W2とW1の差を脱離した水の重量とし、W1、W2及び比表面積から単位面積あたりの水酸基量を算出した。
【0033】
〔炭素量〕 無機粉体を酸素雰囲気中で1350℃に加熱し、微量炭素分析装置(株式会社堀場製作所製:EMIA−511型)によって炭素含有量を測定した。
【0034】
〔窒素量〕 表面処理した無機粉体を酸素雰囲気中で950℃に加熱し、CHN分析装置(柳本製作所製:CHNコーダーMT−5)によって窒素含有量を測定した。
【0035】
〔アミノ基量〕 100ml三角フラスコに表面処理した無機粉体1gと0.01N塩酸水溶液100mlを加えて1時間かくはんした後、ろ過したろ液を0.1N水酸化ナトリウム水溶液で逆滴定し、粉体1gに対するアミノ基導入量を算出した。
【0036】
〔アミノ基密度〕 算出したアミノ基量を、表面処理した無機粉体の比表面積の値で割り、アミノ基密度とした。
【0037】
実施例1
1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン4gをシリカ(比表面積200m/g、平均粒子径0.11μm、表面水酸基量:2.5個/nm)20gとジューサーミキサーで混合し、窒素ガス置換したオートクレーブ中で200℃にて2時間加熱処理した後、加熱したまま減圧して未反応のジシロキサン化合物を除去し、アミノ基を有するシリカを回収した。
【0038】
原料無機粉体、およびアミノ基を導入した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。なお、この無機粉体3gについて、500mlのフラスコに入れ、クロロホルム200mlに浸漬して24時間浸漬し、ろ過、クロロホルム洗浄して十分な乾燥を行った後、再度、アミノ基量を測定したが、測定値は、該処理前の値と実質的に同じであった。
【0039】
実施例2
1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの代わりに、1,3−ビス(6−アミノヘキシル)−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサンを4g用いた他は実施例1と同様にしてアミノ基を有するシリカを得た。
【0040】
これらの処理に用いた原料無機粉体、およびアミノ基を導入した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。また、この無機粉体について実施例1と同様にして、クロロホルムに浸漬後のアミノ基量を測定したが、測定値は、該処理前の値と実質的に同じであった。
【0041】
実施例3
1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの代わりに、1,3−ビス(10−アミノデシル)−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサンを4g用いた他は実施例1と同様にしてアミノ基を有するシリカを得た。
【0042】
原料無機粉体、およびアミノ基を導入した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。また、この無機粉体について実施例1と同様にして、クロロホルムに浸漬後のアミノ基量を測定したが、測定値は、該処理前の値と実質的に同じであった。
【0043】
実施例4
1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの代わりに、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラエチルジシロキサンを4g用いた他は実施例1と同様にしてアミノ基を有するシリカを得た。
【0044】
原料無機粉体、およびアミノ基を導入した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。また、この無機粉体について実施例1と同様にして、クロロホルムに浸漬後のアミノ基量を測定したが、測定値は、該処理前の値と実質的に同じであった。
【0045】
実施例5
実施例1で用いたシリカ(比表面積200m/g、平均粒子径0.11μm、表面水酸基量:2.5個/nm)に代えて、比表面積、粒子径および表面水酸基量の異なるシリカ(比表面積2.1m/g、平均粒子径4.5μm、表面水酸基量:2.2個/nm)を20g用いた他は実施例1と同様にしてアミノ基を有するシリカを得た。
【0046】
原料無機粉体、およびアミノ基を導入した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。また、この無機粉体について実施例1と同様にして、クロロホルムに浸漬後のアミノ基量を測定したが、測定値は、該処理前の値と実質的に同じであった。
【0047】
実施例6
実施例1で用いたシリカ(比表面積200m/g、平均粒子径0.11μm、表面水酸基量:2.5個/nm)に代えて、比表面積、粒子径および表面水酸基量の異なるシリカ(比表面積290m/g、平均粒子径6.8μm、表面水酸基量:4.5個/nm)を20g用いた他は実施例1と同様にしてアミノ基を有するシリカを得た。
【0048】
原料無機粉体、およびアミノ基を導入した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。また、この無機粉体について実施例1と同様にして、クロロホルムに浸漬後のアミノ基量を測定したが、測定値は、該処理前の値と実質的に同じであった。
【0049】
実施例7
実施例1で用いたシリカ(比表面積200m/g、平均粒子径0.11μm、表面水酸基量:2.5個/nm)に代えて、比表面積、粒子径および表面水酸基量の異なるシリカ(比表面積300m/g、平均粒子径0.10μm、表面水酸基量:2.6個/nm)を20g用いた他は実施例1と同様にしてアミノ基を有するシリカを得た。
【0050】
原料無機粉体、およびアミノ基を導入した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。また、この無機粉体について実施例1と同様にして、クロロホルムに浸漬後のアミノ基量を測定したが、測定値は、該処理前の値と実質的に同じであった。
【0051】
実施例8
実施例1で用いたシリカ(比表面積200m/g、平均粒子径0.11μm、表面水酸基量:2.5個/nm)に代えて、比表面積、粒子径および表面水酸基量の異なるシリカ(比表面積140m/g、平均粒子径0.13μm、表面水酸基量:2.4個/nm)を20g用いた他は実施例1と同様にしてアミノ基を有するシリカを得た。
【0052】
原料無機粉体、およびアミノ基を導入した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。また、この無機粉体について実施例1と同様にして、クロロホルムに浸漬後のアミノ基量を測定したが、測定値は、該処理前の値と実質的に同じであった。
【0053】
実施例9
実施例1における反応温度を100℃、反応時間を4時間に代えた他は実施例1と同様にしてアミノ基を有するシリカを得た。
【0054】
原料無機粉体、およびアミノ基を導入した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。また、この無機粉体について実施例1と同様にして、クロロホルムに浸漬後のアミノ基量を測定したが、測定値は、該処理前の値と実質的に同じであった。
【0055】
比較例1
市販のシランカップリング剤であるγ−アミノプロピルトリメトキシシラン4gをシリカ(比表面積200m/g、平均粒子径0.11μm、表面水酸基量:2.5個/nm)10gと混合し、200℃にて2時間オートクレーブ中で加熱処理し、アミノ基を有するシリカを得た。
【0056】
原料無機粉体、およびアミノ基を導入した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。
【0057】
比較例2
1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン4gをシリカ(比表面積200m/g、平均粒子径0.11μm、表面水酸基量:2.5個/nm)20gとジューサーミキサーで混合し、窒素ガス置換したオートクレーブ中で70℃にて4時間加熱処理した後冷却してアミノ基を有するシリカを回収した。
【0058】
この無機粉体について実施例1と同様の操作により、クロロホルムに浸漬処理した。原料無機粉体、およびアミノ基を導入し且つクロロホルムに浸漬した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。
【0059】
比較例3
市販のジシロキサンであるヘキサメチルジシロキサン4gをシリカ(比表面積200m/g、平均粒子径0.11μm、表面水酸基量:2.5個/nm)10gと混合し、200℃にて2時間オートクレーブ中で加熱処理した後冷却して、表面処理シリカを得た。
【0060】
この無機粉体について実施例1と同様の操作により、クロロホルムに浸漬処理した。原料無機粉体、および表面処理し且つクロロホルムに浸漬した後の無機粉体の各種物性を表1に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1〜9においては、いずれも粒子形状に大きな変化なくアミノ基を導入できることがわかった。他方、比較例1では、シランカップリング剤で表面処理を行った例であるが、この粉末の平均粒子径は19μmであった。このように凝集が進行していたことから、アミノ基含有ジシロキサン化合物を用いて処理したシリカと比べ、被覆の均一性が劣ることがわかった。
【0063】
また、比較例2では、反応温度70℃で行った例であるが、クロロホルム浸漬後この粉末に残存したアミノ基量は0.06mmol/gと少ないものであることがわかる。
【0064】
また、比較例3では、アミノ基を有さないジシロキサン化合物を用いて処理した例であるが、クロロホルム浸漬後この粉末に残存したトリメチルシリル基量は0.08mmol/gと少ないものであることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、nは3〜18の整数である)
で表されるジシロキサン化合物を、表面に水酸基を有する無機粉体と80℃以上の温度で接触させることを特徴とするアミノ基を有する無機粉体の製造方法。
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるジシロキサン化合物からなり、80℃以上の温度で表面処理に用いられる、表面に水酸基を有する無機粉体の表面処理剤。

【公開番号】特開2006−321844(P2006−321844A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144129(P2005−144129)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】