説明

アミノ基含有ポリジエンの製造方法、ブロック共重合体の製造方法、アミノ基含有ポリジエン、およびブロック共重合体

【課題】低コストながらもアミノ基の導入率が高いアミノ基含有ポリジエンとその製造方法を提供するとともに、生体適合性や物理的強度に優れたA−B−A型ブロック共重合体とその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、1,3−ビス(ジフェニルエテニル)ベンゼン又はその誘導体と有機リチウム化合物との反応生成物と、共役ジエン化合物とを反応させて共役ジエン化合物の重合体であるポリジエンを得る工程(1)と、得られたポリジエンと所定の変性剤とを反応させる工程(2)とを有するアミノ基含有ポリジエンの製造方法である。本発明のアミノ基含有ポリジエンの製造方法は、工程(1)および工程(2)から選ばれる1以上の工程を所定の化合物の存在下に行うことを特徴とする。また、本発明は前記アミノ基含有ポリジエンを用いたポリアミノ酸ブロックとポリジエンブロックとを有するブロック共重合体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基含有ポリジエンとその製造方法および、ブロック共重合体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミノ酸ブロック(A)とポリジエンブロック(B)とから構成される、A−B−A型ブロック共重合体は、ポリアミノ酸ブロックが生体適合性に優れ、かつポリジエンブロックが破断・伸び等の物理的性質を向上させることから、医療材料等への応用が検討されている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献1には、A−B−A型ブロック共重合体の合成方法としては、ポリジエンとしてポリイソプレンを用いる方法が記載されている。具体的には、両末端にアミノ基が導入されたポリイソプレン誘導体と、γ−ベンジル−L−グルタミン酸−N−カルボキシアミノ酸無水物(以下、「BLG−NCA」ともいう)等のアミノ酸−N−カルボキシ無水物とを反応させ、ポリイソプレン誘導体の両アミノ末端をポリアミノ酸ブロックとして伸張する方法が提案されている。
【0004】
A−B−A型ブロック共重合体の合成に用いる両末端にアミノ基が導入されたポリイソプレン誘導体は、ポリイソプレン末端のカルバニオンに対し、これとカップリング反応する化合物(例えば、2,2,5,5−テトラメチル−1−(3−ブロモプロピル)−アザ−2,5−ジシラシクロペンタンなど)を反応させ、更にアミノ基上の保護基を脱離させることで合成することができる(例えば、特許文献2を参照)。
このカップリング剤を用いた反応では、ポリイソプレン末端へのアミノ基の導入率(変性率ともいう)が低く、20〜30%にとどまってしまうことが問題であった。この問題を解決するものとして、非特許文献1においては、ポリイソプレンの末端にアミノ基を導入するための変性剤としてN−(トリメチルシリル)ベンズアルジミンに代表されるイミン化合物を用いることでイソプレンブロックの末端に対して平均して90%近くのアミノ基を導入することができることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−317403号公報
【特許文献2】特開平7−80057号公報
【非特許文献1】Iwakazu Hattori他、Makromol.Chem.184.1355−1362(1983)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のイミン化合物は、酸素や水分に対して極めて不安定であることからその取扱いが難しい上に、高価であるので、変性剤として用いると高コストになるという欠点を有している。
そこで、安価な変性剤として、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシランに代表されるシランカップリング剤を見出した。しかしながら、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシランを公知の方法により作製したポリイソプレンの変性剤として用いると、イソプレンブロックの末端に対するアミノ基の導入率(変性率)は平均しても、高々80%程度であり、A−B−A型ブロック共重合体を製造する材料としては十分ではなかった(詳細は比較例1を参照)。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低コストながらもアミノ基の導入率が高い(変性率が高い)アミノ基含有ポリジエンおよびその製造方法、ならびに、それを用いた生体適合性や物理的強度に優れたポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体および当該ブロック共重合体を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定の化合物の存在下に共役ジエン化合物を重合させることにより得られる共役ジエン重合体(ポリジエン)を用い、このポリジエンの末端にアミノ基を導入するための変性剤として上記の安価なシランカップリング剤を用いれば、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される化合物と一般式RLi(Rは炭素数1〜16のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基を示す)で表される化合物(2)との反応生成物(a)と、共役ジエン化合物とを反応させて、前記共役ジエン化合物の重合体を得る工程(1)と、前記共役ジエン化合物の重合体と下記一般式(5)で表される化合物とを反応させる工程(2)とを有し、前記工程(1)および前記工程(2)から選ばれる1以上の工程を、下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物から選ばれる一種以上の化合物の存在下で行うことを特徴とするアミノ基含有ポリジエンの製造方法である。
【0010】
【化15】

[前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ1〜5の整数を示す。mが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。nが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。]
【0011】
【化16】

[前記一般式(3)中、R、R、R、R9´、R10およびR11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基を示し、pは1〜5の整数を示す。]
【0012】
【化17】

[前記一般式(4)中、R12、R13、R14およびR15は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基を示し、XおよびXは炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリロキシル基、硫黄原子を含む官能基、リン原子を含む官能基を示す。]
【0013】
【化18】

[前記一般式(5)中、R及びRは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又はオルガノシロキシ基を示し、Xは、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリロキシル基、又はハロゲン原子を示し、Rは、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、又は炭素数2〜20のアルキリデン基を示す。
及びRは、それぞれが独立した基であってもよく、相互に結合して環状構造を形成していてもよい。R及びRが相互に結合していない場合には、R及びRは両方ともトリアルキルシリル基を示し、当該トリアルキルシリル基の珪素に結合する3つのアルキル基は相互に独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。RとRが相互に結合して環状構造を形成する場合には、当該環状構造は、RおよびRが結合する窒素原子を含め、少なくとも2個の珪素原子、及び1〜10個の炭素原子で構成される。]
【0014】
本発明者らはポリジエンブロック末端へのアミノ基の導入率を向上させるべく鋭意検討したところ、以下に示す(i)および(ii)の知見を得た。
(i)共役ジエンの重合体(ポリジエン)として、前記一般式(3)で表される化合物および前記一般式(4)で表される化合物から選ばれる化合物(以下、「化合物D」ともいう)の存在下に、反応生成物(a)と共役ジエン化合物とを反応させて得られたものを用い、変性剤として前記一般式(5)で表される化合物を用いると、ポリジエンブロック末端へのアミノ基の導入率(変性率)が向上する。
(ii)前記一般式(5)で表される化合物と、共役ジエン重合体[前記(i)の方法で得られるものを含む]とを、化合物Dの存在下に反応させると、ポリジエン構造において、側鎖に二重結合を有する1,2付加構造に比べ、通常、エラストマー特性に優れる1,4付加構造の割合が増加する。
【0015】
ポリジエンブロック末端へのアミノ基の導入率を向上させるメカニズムについての詳細は不明であるが、化合物Dが作用して、活性リチウム末端の分散性が改善されたためではないかと推測される。
従って、本発明によれば、アミノ基の導入率の高いアミノ基含有ポリジエン重合体を得ることができる。さらに、本発明で使用する前記一般式(5)で表される化合物は、安価であるので低コストである
【0016】
また、本発明は、下記一般式(6)で表される化合物、下記一般式(7)で表される化合物、および下記一般式(8)で表される化合物から選ばれる一種以上の化合物と、請求項1の製造方法により得られるアミノ基含有ポリジエンとを反応させることにより、ポリアミノ酸ブロック(A)とポリジエンブロック(B)とを有するブロック共重合体を得ることを特徴とするブロック共重合体の製造方法である。
【0017】
【化19】

[前記一般式(6)中、R16は、水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示す。]
【0018】
【化20】

[前記一般式(7)中、R17は、水素原子または電子吸引性基を示し、R18は水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示し、rは1〜5の整数を示し、rが2以上の整数である場合には、複数のR17は相互に同一であっても異なっていてもよい。]
【0019】
【化21】

[前記一般式(8)中、R19は、水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示す。]
【0020】
本発明によれば、末端アミノ基の導入率の高いアミノ基含有ポリジエンを用いるから、物理的強度に優れたポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を製造することができる。
【0021】
前記ブロック共重合体の製造方法においては、前記ブロック共重合体が、ポリアミノ酸ブロック(A)−ポリジエンブロック(B)−ポリアミノ酸ブロック(A)型のトリブロック共重合体であってもよい。
上記態様により得られるA−B−A型トリブロック共重合体は、生体適合性に優れ、かつ、物理的強度に優れているので好ましい。
【0022】
また、本発明は、下記一般式(9)で表されるアミノ基含有ポリジエンである。
【0023】
【化22】

[前記一般式(9)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ1〜5の整数を示す。mが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。nが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。
A、A´は共役ジエン化合物をモノマー単位とするポリジエン重合鎖を示し、Y、Y´は水素または下記一般式(10)で示される官能基を示し、YおよびY´の少なくとも一方は下記一般式(10)で示される官能基である。]
【0024】
【化23】

[前記一般式(10)中、R及びRは、炭素数1〜20のアルキル鎖基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又はオルガノシロキシ基を示し、Rは、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、又は炭素数2〜20のアルキリデン基を示す。]
【0025】
本発明のアミノ基含有ポリジエンは、例えば、前記一般式(1)で表される化合物とsec−ブチルリチウム[化合物(2)]との反応生成物と、共役ジエン化合物とを化合物Dの存在下に重合させ、この重合反応により得られたポリジエンに前記一般式(5)で表される化合物を反応させることにより得ることができる。
すなわち、本発明のアミノ基含有ポリジエンは、反応性が高く入手容易なブチルリチウムを用いて、安価な一般式(5)で表される化合物を用いて製造可能であるうえに、アミノ基の導入率が高いので、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を製造する材料として好適である。
【0026】
また、本発明は、前記アミノ基含有ポリジエンと、下記一般式(6)で表される化合物、下記一般式(7)で表される化合物、および下記一般式(8)で表される化合物から選ばれる化合物とを重合させて得られるポリアミノ酸ブロック(A)とポリジエンブロック(B)とを有する下記一般式(11)で表されるブロック共重合体である。
【0027】
【化24】

[前記一般式(6)中、R16は、水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示す。]
【0028】
【化25】

[前記一般式(7)中、R17は、水素原子または電子吸引性基を示し、R18は水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示し、rは1〜5の整数を示し、rが2以上の整数である場合には、複数のR17は相互に同一であっても異なっていてもよい。]
【0029】
【化26】

[前記一般式(8)中、R19は、水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示す。]
【0030】
【化27】

[前記一般式(11)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ1〜5の整数を示す。mが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。nが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。Buはブチル基を示す。
A、A´は共役ジエン化合物をモノマー単位とするポリジエン重合鎖を示し、Z、Z´は水素または前記一般式(10)で示される官能基に由来する基、または下記一般式(12)で示されるポリアミノ酸重合鎖を示し、ZおよびZ´の少なくとも一方は下記一般式(12)で示されるポリアミノ酸重合鎖である。]
【0031】
【化28】

[前記一般式(12)中、R及びRは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又はオルガノシロキシ基を示し、Rは、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、又は炭素数2〜20のアルキリデン基を示し、R22は水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示し、xは1〜500の整数を表す。]
【0032】
本発明においては、アミノ基導入率の高いアミノ基含有ポリジエンと、前記一般式(6)で表される化合物、前記一般式(7)で表される化合物、および前記一般式(8)で表される化合物から選ばれる化合物(以下、化合物Eともいう)とを反応させるから、生体適合性と物理的強度に優れたA−B−A型ブロック共重合体を製造することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、アミノ基の導入率が高いアミノ基含有ポリジエンおよびその製造方法、ならびに、生体適合性や物理的強度に優れたポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体および当該ブロック共重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明のポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体(ブロック共重合体ともいう)は、たとえば、アミノ基を末端に有するポリジエン(アミノ基含有ポリジエン)の存在下に、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物を重縮合させることにより作製することができる。
まず、ブロック共重合体の原料となるアミノ基含有ポリジエンの製造方法について説明する。
【0035】
[アミノ基含有ポリジエンの製造方法]
アミノ基含有共役ポリジエンは、前記一般式(1)で表される化合物[化合物(1)という]と化合物(2)との反応生成物(a)と、共役ジエン化合物とを反応させて、前記共役ジエン化合物の重合体を得る工程(1)と、前記共役ジエン化合物の重合体と下記一般式(5)で表される化合物とを反応させる工程(2)とを経て作製される。本発明では、工程(1)および工程(2)から選ばれる1以上の工程において、前記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物から選ばれる一種以上の化合物が使用される。
【0036】
<工程(1)>
工程(1)では、化合物(1)と化合物(2)との反応生成物(a)を、共役ジエン化合物と反応させることにより共役ジエン重合体(ポリジエン)が得られる。
<化合物(1)>
工程(1)で用いる化合物(1)は、二以上の反応性官能基を有する化合物であり、前記一般式(1)で表される化学構造を有するものである。
前記一般式(1)中、Rは、水素、又は炭素数1〜16のアルキル基を示す。mおよびnはそれぞれ1〜5の整数を示し、mが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。nが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。
上記のRのうち、水素又は炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、水素又は炭素数1〜4のアルキル基であることが更に好ましい。
【0037】
化合物(1)の具体例としては、1,3−ジ(1−フェニルエテニル)ベンゼン、1,3−ビス[(4−メチルフェニル)エテニル]ベンゼン、1,3−ビス[(2,3−ジメチルフェニル)エテニル]ベンゼン、1,3−ビス[(4−エチルフェニル)エテニル]ベンゼン、1,3−ビス[(4−tert−ブチルフェニル)エテニル]ベンゼン、1,3−ビス[(4−ドデシルフェニル)エテニル]ベンゼン等を挙げることができる。なかでも、1,3−ジ(1−フェニルエテニル)ベンゼン、1,3−ビス[(4−メチルフェニル)エテニル]ベンゼンが好ましい。
【0038】
<化合物(2):有機リチウム化合物>
工程(1)で用いる化合物(2)は、前述の化合物(1)と反応してアニオン重合開始剤を生成し得る化合物であり、その化学構造が一般式:RLi(Rは、炭素数1〜16のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基を示す)で表される有機リチウム化合物である。
【0039】
前記一般式:RLi中のRは、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基であることが好ましい。化合物(2)の具体例としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、i−プロピルリチウム、n−プロピルリチウム、メチルリチウム、エチルリチウム、フェニルリチウム等を挙げることができる。なかでも、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムが好ましい。
【0040】
<反応生成物(a)>
化合物(1)と化合物(2)との反応により得られる反応生成物(a)は、共役ジエン化合物との反応の際に二官能性のアニオン重合開始剤として作用する。
化合物(1)と化合物(2)との反応は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、化合物(1)と化合物(2)とを非極性溶媒中で反応させることにより、反応生成物(a)を作製することができる。
【0041】
化合物(1)と化合物(2)との反応に用いることのできる非極性溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン等の飽和炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の環状炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素を挙げることができる。なお、これらの非極性溶媒は単独でも二種以上を組み合わせても用いることができる。
【0042】
化合物(1)と化合物(2)との反応条件は特に限定されないが、通常、−10℃〜120℃、好ましくは0℃〜100℃の温度条件の下で、通常0.5時間〜50時間、好ましくは1時間〜10時間反応させればよい。
【0043】
上記反応に用いられる化合物(1)に対する化合物(2)のモル当量としては、1.5〜2.5、好ましくは1.8〜2.2である。化合物(1)と化合物(2)の比が上記範囲外であると二官能開始剤に対する一官能開始剤の過不足が顕著となることから、製造したポリジエンに含まれる両末端変性体の割合が低下し、これを用いて製造したブロック共重合体の強度を低下させる恐れがある。
【0044】
<共役ジエン化合物>
工程(1)において反応生成物(a)と反応させる共役ジエン化合物は、その分子構造中に共役ジエン結合を有するものであれば特に限定されない。共役ジエン化合物の具体例としては、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等を挙げることができる。なかでも、イソプレン、及びブタジエンが好ましい。
【0045】
共役ジエン化合物と反応生成物(a)とを重合反応させる際に用いる溶媒は特に限定されないが、通常、ペンタン、ヘキサン等の飽和炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン等の環状炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素をはじめとする各種の非極性溶媒、及びこれらの複数を混合した混合溶媒を用いることができる。重合条件は特に限定されないが、通常、−10℃〜150℃、好ましくは0℃〜120℃の温度条件下、通常1分〜30時間、好ましくは5分〜5時間重合させればよい。
【0046】
上記反応に用いられる反応生成物(a)に対する共役ジエン化合物のモル当量は、目的とするポリジエンの分子量により適宜変更することができるが、設計する分子量により、通常7〜15,000、好ましくは35〜1,5000、さらに好ましくは95〜1,100である。
【0047】
さて、本発明において、上述した工程(1)および後述する工程(2)から選ばれる1以上の工程は、前記一般式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)ともいう)および前記一般式(4)で表される化合物(以下、化合物(4)ともいう)から選ばれる一種以上の化合物Dの存在下に行われる。以下、化合物Dについて説明する。
【0048】
<化合物(3):オキソラニル化合物>
前記一般式(3)中の、R、R、R、R9'、R10およびR11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基を示し、pは1〜5の整数を示す。
前記一般式(3)で表されるオキソラニル化合物(化合物(3))の具体例としては、ビス(2−オキソラニル)メタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)ブタン、2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパン、トリマー性2,5−ビス(2−オキソラニル−2−プロピル)オキソラン等を挙げることができる。これらのうち、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンが好ましい。
【0049】
<化合物(4)>
前記一般式(4)中、R12、R13、R14およびR15は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基を示し、XおよびXは炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリロキシル基、硫黄原子を含む官能基、リン原子を含む官能基を示す。
【0050】
化合物(4)の具体例としてはエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のポリアルキレングリコールのエーテル誘導体等、並びに3,6−ジチアオクタン等のアルキル、又はアリール置換されたジチオエーテル誘導体等、ジホスフィノエタン、ジホスフィノプロパン等のホスフィン化合物等、またはこれらのヘテロ原子が組み合わさったものを挙げることができる。これらのうち、プロピレングリコールエチルプロピルエーテルあるいはプロピレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0051】
工程(1)において化合物Dを用いる場合には、例えば化合物Dとして一般式(3)の化合物を用いた場合、通常化合物(2)に対して0.01〜15モル当量、好ましくは0.02〜10モル当量である。化合物(3)が上記範囲内で用いられるとポリジエン末端の変性効率の点で好ましい。
【0052】
<工程(2)>
工程(2)では、上述の工程(1)で得られたポリジエンと、一般式(5)で表される化合物(以下、化合物(5)ともいう)とを反応させる。
ポリジエンと化合物(5)との反応により、通常、末端アミノ基に化合物(5)の構造の一部が保護基として結合した形の、3級アミノ基含有ポリジエンが生成する。その後、上記生成物である3級アミノ基含有ポリジエンの3級アミノ基を脱保護して1級アミノ基とし、両末端に1級アミノ基を有するアミノ基含有ポリジエンを得る。
【0053】
<化合物(5)>
化合物(5)は、ポリジエンを変性させることが可能であるとともに、3級アミノ基含有ポリジエンを調製可能なもの(いわゆる、変性剤)であり、前記一般式(5)で表される化合物である。
【0054】
前記一般式(5)中、R及びRは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又はオルガノシロキシ基を示し、Xは、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリロキシル基、又はハロゲン原子を示し、Rは、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、又は炭素数2〜20のアルキリデン基を示す。R及びRは、それぞれが独立した基であってもよく、相互に結合して環状構造を形成していてもよい。R及びRが相互に結合していない場合には、R及びRは両方ともトリアルキルシリル基を示し、当該トリアルキルシリル基の珪素に結合する3つのアルキル基は相互に独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。RとRが相互に結合して環状構造を形成する場合には、当該環状構造は、RおよびRが結合する窒素原子を含め、少なくとも2個の珪素原子、及び1〜10個の炭素原子で構成される。
【0055】
化合物(5)の具体例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルクロロシラン、3−(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンチル)プロピルジメチルメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルフェノキシシラン、3−(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンチル)プロピルジメチルクロロシラン、3−(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンチル)プロピルジメチルエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルジメチルメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルジメチルエトキシシラン等を挙げることができる。なかでも、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルクロロシラン、3−(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンチル)プロピルジメチルメトキシシランが好ましい。
【0056】
ポリジエンと化合物(5)との反応(ポリジエンの変性)は、ポリジエンを重合系から単離することなく、重合系に化合物(5)を添加することにより行うことができる。化合物(5)によるポリジエンの変性条件は特に限定されないが、通常、0℃〜150℃、好ましくは30℃〜100℃の温度条件下、通常1分〜30時間、好ましくは5分〜5時間変性させればよい。なお、変性反応の停止処理、過剰な有機リチウム化合物の失活等を目的として、反応時間経過後に、通常、メタノールを添加する。
【0057】
上述したように、本発明においては、工程(2)において、化合物Dを用いる場合がある。例えば工程(2)において、化合物Dとして一般式(3)の化合物を用いる場合、通常、反応生成物(a)のモル数に対して0.02〜30倍当量が用いられ、好ましくは0.04〜20倍当量である。化合物(3)が上記範囲内で用いられるとポリジエン末端の変性効率の点で好ましい。
【0058】
上記工程(2)において化合物Dとして化合物(3)および化合物(4)から選ばれる一種を用いる場合には、金属アルコキシド、好ましくはアルカリ金属アルコキシド、更に好ましくは炭素数2〜16のリチウムアルコキシドの存在下に工程(1)を行うことが好ましい。このような金属アルコキシドを添加することで、エラストマー特性に優れる1,4付加構造の割合が高く、かつ、金属アルコキシドを加えない場合に比べて、単一の分子量分布を有するポリジエンを得ることができるからである。なお、金属アルコキシドを加えない場合には、リチウムの会合により単一の分子量分布を与えず、両側のポリジエン鎖末端にアミノ基を導入することが困難となり、ブロック共重合体の強度が低下する恐れがある。
【0059】
工程(2)においては、化合物(5)を用いてポリジエンを変性させることにより、その両末端に3級アミノ基を有するポリジエンが形成される。変性に用いられる化合物(5)の量は、化合物(2)に対して、通常0.8〜10モル当量、好ましくは0.9〜7モル当量、特に好ましくは1〜5モル当量の範囲である。上記範囲内では、ポリジエン末端の変性効率の向上と、未反応変性剤の精製除去が容易になり、化合物(5)とポリジエンとの反応により得られるアミノ基含有ポリジエンから製造されるブロック共重合体の強度を安定させる点で好ましい。
形成された3級アミノ基含有ポリジエンを脱保護させることにより、その両末端に1級アミノ基を有するアミノ基含有ポリジエンを得ることができる。
【0060】
脱保護反応は、化合物(5)の種類により、変性反応の停止処理とともに反応が起こる場合と、変性反応停止後に処理を行って脱保護反応させる必要がある場合とがある。変性反応停止後の処理としては、3級アミノ基を有する共役ジエン重合体を適当な酸又は塩基で処理すればよい。酸又は塩基による処理の条件は特に限定されず、通常、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜70℃の温度条件下、通常1分〜10時間、好ましくは5分〜5時間処理すればよい。また、脱保護の後、必要に応じて再結晶等の処理を行うことも好ましい。
【0061】
反応生成物(a)とポリジエンとの重合反応、及び、化合物(5)による共役ジエン重合体の変性を経由して得られる本発明のアミノ基含有ポリジエンの数平均分子量は1H−NMRを用いて、反応生成物(a)由来のシグナルとポリジエン由来のシグナルとの積分比から算出される。こうして算出されたアミノ基含有ポリジエンの数平均分子量は通常1,000〜1,000,000、好ましくは3,000〜100,000であり、さらに好ましくは7,000〜70,000である。ポリジエンの数平均分子量が1,000未満であると、得られるポリアミノ酸−ポリジエンブロック共重合体の破断伸び等の物理的性質が劣るという場合がある。一方、ポリジエンの数平均分子量が1,000,000超であると、得られるポリアミノ酸−ポリジエン共重合体の生体適合性が劣るという場合がある。また、上述の方法で得られるアミノ基含有ポリジエンは、比較的狭い分子量分布を有する。具体的には、本発明のアミノ基含有共役ジエン重合体の製造方法によって得られるアミノ基含有共役ジエン重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.0〜2.5、好ましくは1.0〜2.0、更に好ましくは1.0〜1.6である。
【0062】
また、本発明のアミノ基含有ポリジエンの変性率は1H−NMRを用いて、反応生成物(a)由来のシグナルと変性剤由来のシグナルとの積分比か、あるいは酸による滴定法を用いて求められる。本発明のアミノ基含有ポリジエンの製造方法によれば、極めて高い変性率(1級アミノ基の導入率)で1級アミノ基が導入されたアミノ基含有ポリジエンを得ることができる。具体的には、本発明の製造方法によって得られるアミノ基含有ポリジエンの変性率は、通常、60%〜100%、好ましくは70〜100%、更に好ましくは80〜100%である。
【0063】
本発明の製造方法により得られるアミノ基含有ポリジエンとしては、具体的には、前記一般式(9)で表されるアミノ基含有ポリジエンが好ましい。一般式(9)で表されるアミノ基含有ポリジエンは、反応性が高く入手容易なブチルリチウムを用いて、安価な一般式(5)で表される化合物を用いて製造可能であるうえに、アミノ基の導入率が高いので後述するポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を製造する材料として好適だからである。
次に本発明のアミノ基含有ポリジエンを用いたブロック共重合体の製造方法について説明する。
【0064】
[ブロック共重合体の製造方法]
本発明のブロック共重合体の製造方法においては、上述した方法により得られたアミノ基含有ポリジエンと、前記一般式(6)で表される化合物、前記一般式(7)で表される化合物、および前記一般式(8)で表される化合物から選ばれる一種以上の化合物(以下、「化合物E」ともいう)とを反応させることにより、たとえば、前記一般式(11)で示すような、アミノ酸ブロック(A)及びポリジエンブロック(B)を有するブロック共重合体が得られる。
すなわちアミノ基含有ポリジエンと、化合物Eとを混合し加熱すると、アミノ基含有ポリジエンが重合開始剤として作用して、二酸化炭素を脱離して、アミド結合(ペプチド結合)を生成しながら、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体が作製される。
以下、ブロック共重合体の製造方法において用いる化合物について説明する。
【0065】
<一般式(6)で表される化合物:化合物(6)>
前記一般式(6)中、R16は、水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示し、R16としては、炭素数3〜20の炭化水素基、及び、エステル構造を有する一価の有機基が好ましく、特に、−R20−COO−R21(式中、R20はメチレン基、又は炭素数2〜10のアルキレン基を示し、R21は炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜20の芳香環含有炭化水素基を示す)で表される基が好ましい。
【0066】
前記一般式(6)で表される化合物(6)の具体例としては、γ−ベンジル−L−グルタミン酸N−カルボン酸無水物、β−ベンジル−L−アスパラギン酸N−カルボン酸無水物、L−ロイシンN−カルボン酸無水物、フェニルアラニンN−カルボン酸無水物、L−プロリンN−カルボン酸無水物、O−ベンジル−L−チロシンN−カルボン酸無水物、γ−ベンジル−L−グルタミン酸N−カルボン酸無水物、β−ベンジル−L−アスパラギン酸N−カルボン酸無水物、L−ロイシンN−カルボン酸無水物、L−フェニルアラニンN−カルボン酸無水物、L−プロリンN−カルボン酸無水物、O−ベンジル−L−チロシンN−カルボン酸無水物等が挙げられる。なかでも、γ−ベンジル−L−グルタミン酸N−カルボン酸無水物(BLG−NCA)、β−ベンジル−L−アスパラギン酸N−カルボン酸無水物、O−ベンジル−L−チロシンN−カルボン酸無水物が好ましい。
【0067】
<一般式(7)で表される化合物:化合物(7)>
前記一般式(7)中、R17は、水素原子または電子吸引性基を示し、R18は水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示し、rは1〜5の整数を示し、rが2以上の整数である場合には、複数のR17は相互に同一であっても異なっていてもよい。
17の電子吸引性基としては、具体的には、例えば、ニトロ基、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、パーフルオロアルキル基及びパークロロアルキル基などを挙げることができ、なかでもニトロ基が特に好ましい。R18としては炭素数3〜20の炭化水素基、及び、エステル構造を有する一価の有機基が好ましく、特に、−R20−COO−R21(式中、R20はメチレン基、又は炭素数2〜10のアルキレン基を示し、R21は炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜20の芳香環含有炭化水素基を示す)で表される基が好ましい。
【0068】
前記一般式(7)で表される化合物(7)の具体例としては、N−(フェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(フェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(フェノキシカルボニル)−L−ロイシン、N−(フェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(フェノキシカルボニル)−L−プロリン、N−(フェノキシカルボニル)−O−ベンジル−L−チロシン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−ロイシン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−プロリン、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−O−ベンジル−L−チロシン等が挙げられる。なかでも、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート(Np−BLG)、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−O−ベンジル−L−チロシンが好ましい。
【0069】
<一般式(8)で表される化合物:化合物(8)>
前記一般式(8)中、R19は、水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示す。R19の一価の有機基としては、炭素数3〜20の炭化水素基、及び、エステル構造を有する一価の有機基が好ましく、−R20−COO−R21(式中、R20はメチレン基、又は炭素数2〜10のアルキレン基を示し、R21は炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜20の芳香環含有炭化水素基を示す)で表される基が特に好ましい。
前記一般式(8)で表される化合物(8)の具体例としては、N−(N´−サクシンイミジロキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(N´−サクシンイミジロキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(N´−サクシンイミジロキシカルボニル)−L−ロイシン、N−(N´−サクシンイミジロキシカルボニル)−L−フェニルアラニン、N−(N´−サクシンイミジロキシカルボニル)−L−プロリン、N−(N´−サクシンイミジロキシカルボニル)−O−ベンジル−L−チロシン等が挙げられる。なかでも、N−(N´−サクシンイミジロキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(N´−サクシンイミジロキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(N´−サクシンイミジロキシカルボニル)−O−ベンジル−L−チロシンが好ましい。
【0070】
アミノ基含有ポリジエンと化合物Eとの共重合反応は、適当な溶媒の存在下で行えばよい。溶媒の具体例としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、シクロペンタンモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒等を挙げることができる。
【0071】
アミノ基含有ポリジエンと化合物Eの共重合反応の反応条件は特に限定されず、通常、−20℃〜120℃、好ましくは0℃〜80℃の温度条件下、通常1時間〜100時間、好ましくは5時間〜20時間]反応させればよい。
【0072】
[ブロック共重合体]
本発明のブロック共重合体としては、生体適合性に優れかつ物理的強度に優れているという観点からA−B−A型トリブロック共重合体が好ましい。
本発明においては、アミノ基含有ポリジエンとして前記一般式(9)で表されるアミノ基含有ポリジエンを用いて、これを化合物Eと重合させると、高収率でブロック共重合体が得られるので好ましい。
【0073】
本発明のポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体のポリアミノ酸(A)とポリジエン(B)との質量比は、通常、95:5〜10:90であり、70:30〜40:60の範囲内であることが好ましい。この範囲外では生体適合性が低下する。また(A)の比率が高すぎる場合にはブロック共重合体が樹脂状となり十分な伸びが得られず、(A)の比率が高すぎる場合には物理的強度が低下する。ポリアミノ酸−ポリジエンブロック共重合体のポリアミノ酸ブロック(A)とポリジエンブロック(B)との質量比は、N−カルボキシ−α−アミノ酸無水物と開始剤の仕込みモル比により、容易に調整することができる。
【0074】
本発明のブロック共重合体には、さらに、酸化防止剤としてジエン部位の酸化防止に有効な2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等を添加すると保存安定性に優れたポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を得ることができる。
酸化防止剤の添加量は、ブロック共重合体の全質量に対して通常0.4〜0.6%である。
【0075】
<ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体の成形方法>
本発明により得られるポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体は、溶液流延法、押出成形法、カレンダー法などの従来公知の方法により成形することが可能であるが、これに限定されるものではない。特に加熱加工法にあっては、老化防止剤のような熱安定剤を付与することによって、加熱による物性低下を緩和することが可能である。
【0076】
<ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体の成膜>
上述の成形法のうち、本発明により得られるポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を用いた成膜の作製方法としては、例えば、溶液流延法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
溶液流延法による成膜において、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を調製するのに用いられる溶媒は、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、両ブロックに対して良溶媒であることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ベンゼン、トリフルオロエタノール等が挙げられる。
【0077】
溶液流延法においては、一般に、ガラスや金属等の板上に、ポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体溶液を流延して、高圧環境下等で溶媒を留去する。流延の際の、溶液濃度は、通常0.1質量%〜5質量%である。溶液濃度が5質量%を超えると、均一な厚さで成膜することが困難だったり、操作性が悪くなったりする場合がある。一方、溶液濃度が0.1質量%未満であると、十分な厚さの膜を得るのが困難になる場合がある。また、溶媒の除去方法は特に限定されないが、通常、室温で溶媒を揮散させた後、減圧下で十分に乾燥させる。
【0078】
上記方法などにより得られるポリアミノ酸ブロック−ポリジエンブロック共重合体の成膜は、生体親和性と柔軟性に優れるという特性を有することから、生体に接触する医療用の材料、例えば、絆創膏などの創傷被覆材、結腸栄養チューブ、高カロリー輸液カテーテルなどのカテーテル類、人工肺などの体外循環回路、人工補填物、および人工血管などに使用することが可能である。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
<試験法および評価方法>
実施の際に用いた試薬、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0080】
[有機リチウム化合物]
sec−ブチルリチウム(s−BuLi)のシクロヘキサン溶液(1.3mol/l)は、公知の技術であるGilmanの二重滴定法(Gilman.H他、J.Am.Chem.Soc.66.1515−1516(1944))を用いることにより、有効リチウム濃度1.1mol/lと算出されたものを用いた。
【0081】
[数平均分子量(Mn)、変性率]
400MHz核磁気共鳴スペクトル分析装置(商品名「ECX−400」、日本電子社製)を使用し、乾燥したアミノ基含有ポリジエン100mgを重クロロホルム0.75mlに溶解して得た測定用試料を分析することにより、数平均分子量(Mn(g/mol))、及び1級アミノ基の導入率(変性率(%))を測定した。これらの値はそれぞれ、反応生成物(a)の芳香族C−Hに由来するシグナルに対して、数平均分子量はポリイソプレンの不飽和C−H由来のシグナル、1級アミノ基は脱保護後の末端変性基上のSi(珪素)に結合したメチル基由来のシグナルとの積分比からそれぞれ算出した。
【0082】
[引張試験]
クロロホルム100部にブロック共重合体3部を溶解して得た溶液をガラス板上に流延した後、室温でクロロホルムを揮散させ、減圧下で十分に乾燥させることで、厚さ約30μmのフィルムを得た。得られたフィルムを用いてJIS K−7113−1981に準拠して引張試験を行い、引張強度(MPa)及び伸び(%)を測定した。引張強度が10MPa以上であれば物理的強度に優れると判断した。
【0083】
<合成例1:重合開始剤溶液(反応生成物(a))の調製>
脱水したシクロヘキサン/ヘプタン混合溶剤100mlに、1,3−ジ(1−フェニルエテニル)ベンゼン(DPEB)3.00gを溶解させた溶液を、内容積300mlのガラス製反応容器に入れた。乾燥窒素雰囲気下、前記反応容器にsec−ブチルリチウム(s−BuLi)のシクロヘキサン溶液(有効リチウム濃度:1.1mol/l)18.5mlを添加し、50℃で3時間撹拌することにより重合開始剤溶液a1を調製した。なお、重合開示剤溶液a1中のLi濃度は0.17mol/lである。
【0084】
(実施例1)
内容積500mlの耐圧ガラス製反応容器に、脱水したシクロヘキサン/ヘプタン混合溶剤332mlと、添加剤として2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン(BTHFP、比重1.00g/ml、FW=184.27)0.11ml(0.601mmol)を入れ、乾燥窒素雰囲気下、合成例1で調製した重合開始剤溶液a1を数滴添加した。反応液が黄色になることを確認した後、重合開始剤溶液a1を13.8ml(Li量2.40mmol)と脱水したイソプレン36.0gとを更に添加し、50℃で30分振とうして重合反応を行った。
重合反応後の反応液に、変性剤として、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン0.98gを添加した後、75℃以上で3時間振とうして変性反応を行った。次いで、メタノール2mlを添加して変性反応を終了させた。
変性反応終了後の上澄み液を回収して濃縮した後、シクロヘキサン50mlとメタノール200mlを用いた再沈殿操作を3回繰り返した。次いで、シクロヘキサン100mlとメタノール100mlの混合溶媒中、酢酸11.3gを用いてpHを3−4とし、室温下で3時間撹拌した後、水酸化ナトリウム水溶液(4.0mol/l)47.1gを用いて中和し、メタノール500mlを用いて重合体を沈殿させた。シクロヘキサン50mlとメタノール200mlを用いた再沈殿操作を5回繰り返した後、減圧下で溶剤を留去した。
真空下、60℃で十分に乾燥することで、その両末端に1級アミノ基を有するポリイソプレン(本発明のアミノ基含有ポリイソプレン)31.0gを得た。得られたアミノ基含有ポリイソプレンの数平均分子量(Mn)は32000、イソプレン単位の数は432個、及び変性率は90%であった。
【0085】
(実施例2)
シクロヘキサン/ヘプタン混合溶剤の量を262mlとし、BTHFPの量を0.67ml(3.65mmol)とし、反応液が黄色になることを確認した後に添加する重合開始剤溶液a1の量を83.9ml(Li量:14.6mmol)としたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして30.5gの本発明のアミノ基含有ポリイソプレンを得た。得られたアミノ基含有ポリイソプレンのMnは5400、イソプレン単位の数は79個、及び変性率は86%であった。
【0086】
(比較例1)
シクロヘキサン/ヘプタン混合溶剤の量を323mlとし、BTHFP0.11mlに代えて添加剤としてテトラヒドロフラン(THF、比重0.888g/ml、FW=72.11)を9.1ml(112mmol)用いたこと以外は、前述の実施例1の場合と同様にして29.8gのアミノ基含有ポリイソプレンを得た。得られたアミノ基含有ポリイソプレンのMnは30000、イソプレン単位の数は440個、及び変性率は80%であった。
表1に、実施例1〜2および比較例1で得られたポリイソプレンのMn(千単位)、添加剤の種類、モノマー(共役ジエン化合物)、変性剤、添加剤とリチウムのモル比率[添加剤(mol)/Li(mol)]、変性率、収量、および収率を示した。表1中、メトキシシランとは、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルジメチルメトキシシランを示す(表4においても同様)。
なおモル比率の算出にあたり以下の式により添加剤(mol)およびLi(mol)を算出した。
添加剤(mol)=添加剤使用量(ml)×比重(g/ml)/FW(式量)
Li(mol)=
重合開始剤a1の使用量(ml)×重合開始剤a1中のLi濃度(0.17mol/l)
【0087】
【表1】

【0088】
(実施例3)
ジクロロメタン40g中に、実施例1で作製したアミノ基含有ポリイソプレン3200mg(0.1mmol)、及びγ−ベンジル−L−グルタミン酸N−カルボン酸無水物(BLG−NCA)2630mg(10mmol)を添加し、25℃で8時間重合した。反応溶液をメタノール1L(リットル)中に投入して生成した沈殿を、室温、減圧下で十分に乾燥させて乾燥物を得た。得られた乾燥物をジクロロメタンに溶解して得た溶液をヘキサン1L(リットル)中に投入して再沈殿処理を行い、室温、減圧下で十分に乾燥させて4.9gの本発明のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の引張強度及び伸びの測定結果を表2に示した。
【0089】
(実施例4)
実施例3で得たブロック共重合体2.0gに酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)を8.0mg添加して本発明のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の引張強度及び伸びの測定結果を表2に示した。
【0090】
(実施例5)
実施例1で得たアミノ基含有ポリイソプレンに代えて、実施例2で得たアミノ基含有ポリイソプレンを540mg(0.1mmol)用いたこと以外は、実施例3の場合と同様にして2.7gのブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の引張強度及び伸びの測定結果を表2に示した。
【0091】
(比較例2)
実施例1で得たアミノ基含有ポリイソプレンに代えて、比較例1で得たアミノ基含有ポリイソプレンを3400mg(0.1mmol)用いたこと以外は、実施例3の場合と同様にして5.0gのブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の引張強度及び伸びの測定結果を表2に示した。
表2には用いたアミノ基含有ポリジエン、得られたブロック共重合体の収量と収率を合わせて示した。表2中、M/Iとはモノマー(BLG−NCA)と、開始剤(アミノ基含有重合イソプレン)とのモル比を示す。
【0092】
【表2】

【0093】
(実施例6)
ジクロロメタン40g中に、実施例1で得たアミノ基含有ポリイソプレン3200mg(0.1mmol)、及びN−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−グルタミン酸−γ−ベンジル(Np−BLG)4025mg(10mmol)を添加し、25℃で8時間重合した。反応溶液をメタノール1L(リットル)中に投入して生成した沈殿を、室温、減圧下で十分に乾燥させて乾燥物を得た。得られた乾燥物をジクロロメタンに溶解して得た溶液をヘキサン1L(リットル)中に投入して再沈殿処理を行い、室温、減圧下で十分に乾燥させて6.0gの本発明のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の引張強度及び伸びの測定結果を表3に示した。
【0094】
(実施例7)
実施例1で得たアミノ基含有ポリイソプレンに代えて、実施例2で得たアミノ基含有ポリイソプレンを540mg(0.1mmol)用いたこと以外は、実施例6の場合と同様にして3.9gの本発明のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の引張強度及び伸びの測定結果を表3に示した。
【0095】
(比較例3)
実施例1で得たアミノ基含有ポリイソプレンに代えて、比較例1で得たアミノ基含有ポリイソプレンを3400mg(0.1mmol)用いたこと以外は、実施例6の場合と同様にして6.1gのブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の引張強度及び伸びの測定結果を表3に示した。
表3には用いたアミノ基含有ポリジエン、得られたブロック共重合体の収量と収率を合わせて示した。表3中、M/Iとはモノマー(Np−BLG)と、開始剤(アミノ基含有重合イソプレン)とのモル比を示す。
【0096】
【表3】

【0097】
表2および表3に示す結果から、本発明によって得られるアミノ基含有ポリジエンを用いて、本発明の方法によりブロック共重合体を作製すれば、物理的強度に優れたブロック共重合体を得ることができるということがわかった。
また、分子量の大きいアミノ基含有ポリジエンを用いると、伸びの大きいブロック共重合体が得られるということがわかった。
【0098】
(実施例8)
内容積500mlの耐圧ガラス製反応容器に、脱水したシクロヘキサン/ヘプタン混合溶剤331mlと、添加剤としてイソプロパノール(IPA、比重0.79g/ml、FW=60.09)0.129ml(1.68mmol)、sec−ブチルリチウム(s−BuLi)のシクロヘキサン溶液(有効リチウム濃度:1.1mol/l)1.52ml(Li(mol):1.672mmol)を入れ、乾燥窒素雰囲気下、合成例1で調製した重合開始剤溶液a1を数滴添加した。反応液が黄色になることを確認した後、重合開始剤溶液a1を13.8ml(Li量2.40mmol)と脱水したイソプレン36.0gとを更に添加し、50℃で30分振とうして重合反応を行った。
【0099】
重合反応後の反応液に、BTHFP(比重1.00g/ml、FW=184.27)0.11ml(0.601mmol)を添加し、変性剤として、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン0.98gを添加した後、75℃以上で3時間振とうして変性反応を行った。次いで、メタノール2mlを添加して変性反応を終了させた。
変性反応終了後の処理を実施例1と同様に行い、真空下、60℃で十分に乾燥することで、その両末端に1級アミノ基を有するポリイソプレン(本発明のアミノ基含有ポリイソプレン)29.5gを得た。得られたアミノ基含有ポリイソプレンの分子量分布(Mw/Mn)は1.19、数平均分子量(Mn)は32000、イソプレン単位の数は470個、及び変性率は91%であった。
また、イソプレン単位どうしの全ての結合中、1,4−結合含有率は89%、1,2−結合含有率は0%、及び3,4−結合含有率は10%であった。
【0100】
【表4】

【0101】
(実施例9)
ジクロロメタン40g中に、実施例8で作製したアミノ基含有ポリイソプレン3200mg(0.1mmol)、及びγ−ベンジル−L−グルタミン酸N−カルボン酸無水物(BLG−NCA)2630mg(10mmol)を添加し、25℃で8時間重合した。反応溶液をメタノール1L(リットル)中に投入して生成した沈殿を、室温、減圧下で十分に乾燥させて乾燥物を得た。得られた乾燥物をジクロロメタンに溶解して得た溶液をヘキサン1L(リットル)中に投入して再沈殿処理を行い、室温、減圧下で十分に乾燥させて5.2gのブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の引張強度及び伸びの結果を表5に示した。
【0102】
(実施例10)
ジクロロメタン40g中に、実施例8で作製したアミノ基含有ポリイソプレン3200mg(0.1mmol)、及びN−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−L−グルタミン酸−γ−ベンジル(Np−BLG)4025mg(10mmol)を添加し、25℃で8時間重合した。反応溶液をメタノール1L(リットル)中に投入して生成した沈殿を、室温、減圧下で十分に乾燥させて乾燥物を得た。得られた乾燥物をジクロロメタンに溶解して得た溶液をヘキサン1L(リットル)中に投入して再沈殿処理を行い、室温、減圧下で十分に乾燥させて6.2gのブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の引張強度引張強度及び伸びの結果を表5に示した。
【0103】
【表5】

【0104】
表4および表5に示す結果から、工程(2)で化合物(3)を添加すると、側鎖に二重結合を有する1,2付加構造に比べ、1,4付加構造の割合が多いポリジエンが得られ、このポリジエンを用いると、伸びの値が大きいブロック共重合体が得られるということがわかった。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記合成例においては、化合物(1)として1,3−ジ(1−フェニルエテニル)ベンゼンを用い、化合物(2)としてsec−ブチルリチウムを用いたが、化合物(1)として1,3−ビス[(4−メチルフェニル)エテニル]ベンゼンなどの他の化合物を用い、化合物(2)としてn−ブチルリチウムやtert−ブチルリチウムなどを用いてもよい。
【0105】
(2)上記実施例においては、重合反応の際の添加剤としてBTHFPを用いたが、これに代えて、あるいはこれとともに、プロピレングリコールエチルプロピルエーテルなどの化合物(4)を用いてもよい。
【0106】
(3)上記実施例においては、共役ジエンとしてイソプレンを用いたが、ブタジエンなどを用いてもよい。
【0107】
(4)上記実施例においては、変性剤としてN,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルジメチルメトキシシランを用いたが、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルクロロシラン、3−(2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンチル)プロピルジメチルメトキシシランなどの変性剤を用いてもよい。
【0108】
(5)上記実施例においては、ブロック共重合体を得るためのアミノ基含有ポリイソプレンと反応させる化合物として、BLG−NCAとNp−BLGとを示したが、アミノ基含有ポリイソプレンと反応させる化合物として、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−γ−ベンジル−L−グルタメート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−β−ベンジル−L−アスパルテート、N−(4−ニトロフェノキシカルボニル)−O−ベンジル−L−チロシンなどを用いてもよい。
【0109】
(6)上記実施例においては、工程(1)において2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン(化合物D)を用いたもの、工程(2)において2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン(化合物D)を用いたものをそれぞれ示したが、工程(1)と工程(2)とで用いてもよい。工程(2)で化合物Dを用いると、側鎖に二重結合を有する1,2付加構造に比べ、通常、エラストマー特性により優れる1,4付加構造の割合が増加したポリジエンが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物と一般式RLi(Rは炭素数1〜16のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基を示す)で表される化合物(2)との反応生成物(a)と、共役ジエン化合物とを反応させて、前記共役ジエン化合物の重合体を得る工程(1)と、
前記共役ジエン化合物の重合体と下記一般式(5)で表される化合物とを反応させる工程(2)とを有し、
前記工程(1)および前記工程(2)から選ばれる1以上の工程を、下記一般式(3)で表される化合物および下記一般式(4)で表される化合物から選ばれる一種以上の化合物の存在下で行うことを特徴とするアミノ基含有ポリジエンの製造方法。
【化1】

[前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ1〜5の整数を示す。mが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。nが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。]
【化2】

[前記一般式(3)中、R、R、R、R9´、R10およびR11は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基を示し、pは1〜5の整数を示す。]
【化3】

[前記一般式(4)中、R12、R13、R14およびR15は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、または炭素数6〜20のアリール基を示し、XおよびXは炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリロキシル基、硫黄原子を含む官能基、リン原子を含む官能基を示す。]
【化4】

[前記一般式(5)中、R及びRは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又はオルガノシロキシ基を示し、Xは、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリロキシル基、又はハロゲン原子を示し、Rは、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、又は炭素数2〜20のアルキリデン基を示す。
及びRは、それぞれが独立した基であってもよく、相互に結合して環状構造を形成していてもよい。R及びRが相互に結合していない場合には、R及びRは、両方ともトリアルキルシリル基を示し、当該トリアルキルシリル基の珪素に結合する3つのアルキル基は相互に独立に炭素数1〜6のアルキル基を示す。RとRが相互に結合して環状構造を形成する場合には、当該環状構造は、RおよびRが結合する窒素原子を含め、少なくとも2個の珪素原子、及び1〜10個の炭素原子で構成される。]
【請求項2】
下記一般式(6)で表される化合物、下記一般式(7)で表される化合物、および下記一般式(8)で表される化合物から選ばれる一種以上の化合物と、請求項1の製造方法により得られるアミノ基含有ポリジエンとを反応させることにより、ポリアミノ酸ブロック(A)とポリジエンブロック(B)とを有するブロック共重合体を得ることを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
【化5】

[前記一般式(6)中、R16は、水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示す。]
【化6】

[前記一般式(7)中、R17は、水素原子または電子吸引性基を示し、R18は水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示し、rは1〜5の整数を示し、rが2以上の整数である場合には、複数のR17は相互に同一であっても異なっていてもよい。]
【化7】

[前記一般式(8)中、R19は、水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示す。]
【請求項3】
前記ブロック共重合体が、ポリアミノ酸ブロック(A)−ポリジエンブロック(B)−ポリアミノ酸ブロック(A)型のトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項2に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(9)で表されるアミノ基含有ポリジエン。
【化8】

[前記一般式(9)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ1〜5の整数を示す。mが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。nが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。Buはブチル基を示す。
A、A´は共役ジエン化合物をモノマー単位とするポリジエン重合鎖を示し、Y、Y´は水素または下記一般式(10)で示される官能基を示し、YおよびY´の少なくとも一方は下記一般式(10)で示される官能基である。]
【化9】

[前記一般式(10)中、R及びRは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又はオルガノシロキシ基を示し、Rは、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、又は炭素数2〜20のアルキリデン基を示す。]
【請求項5】
請求項4に記載のアミノ基含有ポリジエンと、下記一般式(6)で表される化合物、下記一般式(7)で表される化合物、および下記一般式(8)で表される化合物から選ばれる化合物とを重合させて得られるポリアミノ酸ブロック(A)とポリジエンブロック(B)とを有する下記一般式(11)で表されるブロック共重合体。
【化10】

[前記一般式(6)中、R16は、水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示す。]
【化11】

[前記一般式(7)中、R17は、水素原子または電子吸引性基を示し、R18は水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示し、rは1〜5の整数を示し、rが2以上の整数である場合には、複数のR17は相互に同一であっても異なっていてもよい。]
【化12】

[前記一般式(8)中、R19は、水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示す。]
【化13】

[前記一般式(11)中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜16のアルキル基を示し、mおよびnはそれぞれ1〜5の整数を示す。mが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。nが2以上の整数である場合には、Rは相互に同一であっても異なっていてもよい。Buはブチル基を示す。
A、A´は共役ジエン化合物をモノマー単位とするポリジエン重合鎖を示し、Z、Z´は水素または前記一般式(10)で示される官能基に由来する基、または下記一般式(12)で示されるポリアミノ酸重合鎖を示し、ZおよびZ´の少なくとも一方は下記一般式(12)で示されるポリアミノ酸重合鎖である。]
【化14】

[前記一般式(12)中、R及びRは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又はオルガノシロキシ基を示し、Rは、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、又は炭素数2〜20のアルキリデン基を示し、R22は水素原子又は炭素数1以上の一価の有機基を示し、xは1〜500の整数を表す。]

【公開番号】特開2009−256566(P2009−256566A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204622(P2008−204622)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】