説明

アミノ基含有水溶性共重合体

【課題】キレート性能及びクレー分散能に優れるアミノ基含有水溶性共重合体、及び、アミノ基含有水溶性共重合体を効率よく、生産性よく製造する方法を提供するものである。
【解決手段】アミノ基含有単量体単位を必須とする水溶性重合体であって、該水溶性重合体は、分子量分布が12以下である水溶性重合体、及び、上記水溶性重合体を製造する方法であって、該製造方法は、重金属イオンと、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素とを必須とする開始剤を用いてアミノ基含有アリル系単量体を重合する工程を含む水溶性重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基を有する水溶性共重合体に関する。より詳しくは、液体や粉体の洗剤用ビルダー、水処理剤、繊維処理剤やその他の分散剤等に好適であり、例えば、洗剤用ビルダーとして活性剤と共に用いると、高い洗浄力を発揮する水溶性共重合体、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ基含有水溶性共重合体は、アミノ基や水溶性を発現する基等に起因する特性により、例えば、高分子系ビルダーとして作用することができるものである。このような重合体を含む洗剤においては、クレー分散能等に起因する洗浄力や漂白剤の安定化能を有すること、また、液体洗剤を構成する成分として用いる場合には、液体洗剤中に溶けるという性質を有することが求められることになる。その他の水溶性共重合体が用いられる技術分野において、例えば、水処理剤、繊維処理剤や各種分散剤等の分野において処理能力等の基本性能の向上が求められている。
【0003】
従来のアミノ基を有する重合体としては、洗剤用ビルダー及びそれを含有する洗剤組成物(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。
またアミノ基含有水溶性共重合体を漂白や染色等に用いることについて、例えば、漂白剤組成物及び漂白方法(例えば、特許文献2参照。)、木材パルプの漂白処理方法(例えば、特許文献3参照。)、セルロース系遷移の染色方法(例えば、特許文献4参照。)、クラフトパルプ製造工程における蒸解釜内の付着防止方法(例えば、特許文献5参照。)が開示されている。
これらの洗剤組成物や、漂白や染色等に用いることができる重合体は、イミノ基含有化合物とアリルグリシジルエーテルとを重合させる方法により製造されたものであり、側鎖に水酸基等の官能基と側鎖の末端にアミノ基とを有することになるが、このような重合体の分子量分布は、比較的大きく、特定の範囲に制御されたものではなかった。
【0004】
しかしながらこれらの重合体は、アミノ基含水溶性重合体が有する特性、すなわち、アミノ基や水溶性を発現する基等に起因する特性をより効果的に発揮するために、例えば、洗浄力や漂白剤に対する安定化能を向上せさて、洗浄用ビルダー、水処理剤、繊維処理剤等の用途により好適に適用できるようにするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開平5−311194号公報
【特許文献2】特開平5−302289号公報
【特許文献3】特開平5−302288号公報
【特許文献4】特開平5−287685号公報
【特許文献5】特開平5−287690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、キレート性能及びクレー分散能に優れるアミノ基含有水溶性共重合体、及び、アミノ基含有水溶性共重合体を効率よく、生産性よく製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、アミノ基含有水溶性共重合体について種々検討したところ、従来のアミノ基含有水溶性共重合体としては分子量及び分子量分布が大きく、しかも重合体純分が低いものが開示されているが、分子量分布(=重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)の値を特定値以下とすると、重合体のキレート能及び分散能が向上し、それにともなって、金属成分の捕捉及び洗浄力が向上することを見いだした。また、アミノ基含有水溶性共重合体を製造する方法として、特定の開始剤を用いてアミノ基含有アリル系単量体を重合することにより、得られる重合体の分子量分布を特定値以下とできるだけでなく、最終固形分濃度が40%以上の高濃度重合であり、また、含まれる残存モノマーの総濃度が15000ppm以下とすることができることも見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。更に、アミノ基含有水溶性共重合体は、洗浄用ビルダー、水処理剤、繊維処理剤等の様々な用途に好適に適用できることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、アミノ基含有単量体単位を必須とする水溶性重合体であって、上記水溶性重合体は、分子量分布が12以下の水溶性重合体である。
本発明はまた、上記水溶性重合体を製造する方法であって、上記製造方法は、重金属イオンと、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素とを必須とする開始剤を用いてアミノ基含有アリル系単量体を重合する工程を含む水溶性重合体の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の水溶性重合体は、分子量分布が12以下のものであり、このような範囲とすることで従来のものと比較してクレー分散能や、漂白剤の安定化能に優れたものとすることができる。分子量分布が12より大きいと、漂白剤の安定化能、及び、洗浄力が充分なものとならず、例えば、洗浄用ビルダー、水処理剤、繊維処理剤用途において優れた性能を発揮させることはできない。分子量分布として、好ましくは、12以下であり、更に好ましくは、9以下である。範囲として好ましくは、4〜12であり、より好ましくは、4〜9であり、更に好ましくは、4〜6である。
なお、本発明における分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であり、Mw/Mnで表されるものである。
【0009】
上記水溶性重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、上記分子量分布との関連で適宜設定できるものであり、特に限定されない。
上記重量平均分子量としては、例えば、1000〜100000であることが好ましい。1000未満であると、水溶性重合体の分散性能が低下するおそれがあり、100000を超えると、水溶性重合体の分散性能が低下し、液体洗剤として用いる場合の相溶性が低下するおそれがある。
上記重量平均分子量の下限値としては、5000以上がより好ましく、8000以上が更に好ましく、10000以上が特に好ましい。上限値としては、60000以下がより好ましく、40000以下が更に好ましく、20000以下が特に好ましい。
また上記水溶性重合体の数平均分子量は、500〜6000であることが好ましい。より好ましくは、1000〜5000であり、更に好ましくは、2000〜4000である。
上記水溶性重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ともにGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)による測定値である。なお、測定条件、装置等を例示すれば、以下の通りである。
【0010】
(1)GPCのカラム;昭和電工製のGF−7MHQ(商品名)が挙げられる。
(2)移動相;リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5g及びリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(いずれも試薬特級)濃縮乾燥機に純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45μmのメンブランフィルターでろ過した水溶液を用いる。
(3)検出器;ウォーターズ製のモデル481型を用い、検出波長UV214nmとする。
(4)ポンプ;株式会社日立製作所製のL−7110(商品名)を用いる。
(5)移動相の流量;0.5ml/分とし、温度は35℃とする。検量線は、創和科学製のポリアクリル酸ナトリウム標準サンプルを用いて作成する。
【0011】
上記水溶性重合体は、アミノ基含有単量体単位を必須とするものであり、このようなアミノ基含有単量体単位は、下記一般式(1);
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は有機基を表す。)で表されることが好ましい。なお、上記一般式(1)におけるアミノ基は、4級化していてもよい。
上記有機基は、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状炭化水素を示す。好ましくは、炭素数1〜20であり、より好ましくは、1〜12である。
【0014】
また上記アミノ基含有単量体単位は、一般式(1)におけるR及びRが、同一若しくは異なって、
(I)水素原子、
(II)カルボン酸基又はその塩形態の基を有する有機基、
(III)スルホン酸基又はその塩形態の基を有する有機基、
(IV)水酸基を有する有機基、並びに、
(V)アミノ基を有する有機基
からなる群より選ばれるいずれかの基を表すものであることが好ましい。
【0015】
上記一般式(1)におけるR及びRの好ましい形態としては、両方が有機基である場合であるが、R及びRが同時に水素原子となる形態であってもよいし、好ましくは、R及びRの何れか一方が水素原子であり、他方が他の基を有してもよい。
上記(II)のカルボン酸基又は(III)のスルホン酸基が、−COOM又は−SOで表される塩の形態であってもよく、Mとしては、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニア、有機アミン等が好ましい。
上記アルカリ金属原子としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が好適であり、アルカリ土類金属原子としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が好適である。有機アミンとしては、例えば、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のポリアミン等が好適である。
【0016】
上記(II)〜(V)における有機基としては、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状炭化水素であることが好ましい。このような有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0017】
上記アミノ基含有単量体単位におけるR及びRは、同一若しくは異なって、下記一般式(2)〜(10);
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、X〜Xは、互いに独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表し、R及びRはそれぞれ、R及びRと同じであるか、又は、炭素数1〜12のアルキル基、若しくは、アリール基を表す。)からなる群より選ばれるいずれかの基を表すことが好ましい。
上記X〜Xにおいて、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基又は有機アミン基である場合、上記一般式(2)〜(10)は、塩を表すこととなる。なお、上記一般式(7)におけるアミノ基は、4級化していてもよい。
【0020】
本発明はまた、上記水溶性重合体を製造する方法であって、上記製造方法は、重金属イオンと、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素とを必須とする開始剤を用いてアミノ基含有アリル系単量体を重合する工程を含む水溶性重合体の製造方法でもある。
上記(重合)開始剤を用いることにより、重合反応により得られる水溶性重合体の分子量分布を12以下とすることができ、クレー分散性やキレート性能に優れた水溶性重合体とすることができる。なお、本発明における水溶性重合体の製造方法としては、上記方法によることが好ましいが、上記水溶性重合体の分子量分布が12以下となる方法であれば、特に限定されず、他の方法であってもよい。
【0021】
上記水溶性重合体は、上記一般式(1)で表されるアミノ基含有単量体単位を必須とするものであることが好ましく、例えば、上記アミノ基含有単量体単位に相当する単量体を重合して製造する方法が好適である。重合方法としては、溶液重合や塊状重合等の方法により行うことができ、特に限定されるものではない。
上記アミノ基含有単量体単位に相当する単量体としては、例えば、下記一般式(11);
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、R及びRは、上記一般式(1)のR及びRと同じであるか、又は、炭素数1〜12のアルキル基、若しくは、アリール基を表す。)で表されるアミノ基含有アリル系単量体が挙げられる。
上記アミノ基含有アリル系単量体における好適なR及びRとしては、上述の水溶性重合体の必須成分であるアミノ基含有単量体単位におけるR及びRと同様である。
【0024】
上記アミノ基含有アリル系単量体としては、R及びRを製造する水溶性重合体に応じて適宜選択することができる。これらの中でも、下記一般式(12);
【0025】
【化4】

【0026】
で表されるアリルグリシジルエーテル(AGE)にイミノ二酢酸(IDA)のようなアミン化合物を付加させて得られるアミノ基含有アリル系単量体が特に好ましい。
【0027】
本発明の水溶性重合体を構成することができる単量体としては、その他の単量体を含んでいてもよく、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系等の不飽和カルボン酸系単量体;スチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体;ビニルアルコール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の水酸基含有不飽和炭化水素;ビニルピロリドン等の窒素原子含有不飽和単量体等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。その他の単量体は、不飽和カルボン酸系単量体、スチレン系単量体、水酸基含有不飽和炭化水素、及び窒素原子含有不飽和単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、不飽和カルボン酸系単量体を必須とすることであり、更に好ましくは、不飽和モノカルボン酸系単量体を必須とすることであり、最も好ましくは、(メタ)アクリル酸を必須とすることである。
上記アミノ基含有アリル系単量体と不飽和カルボン酸系単量体とを含む単量体成分を共重合して得られる共重合体を、ポリカルボン酸系共重合体ともいう。
【0028】
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、重合性不飽和基とカルボキシル基とを有する単量体であればよいが、不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体等が好適である。
上記不飽和モノカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基とカルボキシル基とを1つずつ有する単量体であればよく、好ましい形態としては、下記一般式(13)で表される化合物である。
【0029】
【化5】

【0030】
上記一般式(13)中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Mは、水素原子、又は、金属原子、アンモニア、有機アミンを表す。
上記一般式(13)のMにおける金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等が好適である。また、有機アミンとしては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、トリエチルアミン等が好適である。更に、アンモニウムであってもよい。このような不飽和モノカルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等;これらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が好適である。これらの中でも、洗剤ビルダーとして用いる場合としては、分散性能の向上の面から、(メタ)アクリル酸、その一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等を用いることが好ましく、不飽和カルボン酸系単量体として好適である。
【0031】
上記不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボキシル基を2つとを有する単量体であればよいが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アンモニウム塩(有機アミン塩)等、又は、それらの無水物が好適である。
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、これらの他にも、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸類と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル、マレアミド酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミド等が好適である。
【0032】
本発明における水溶性重合体としては、アリルグリシジルエーテル(AGE)にイミノ二酢酸(IDA)のようなアミン化合物を付加させて得られるアミノ基含有アリル系単量体と(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体が好適に用いられる。
【0033】
上記その他の単量体としては、以下のものを用いてもよい。
1,3−ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;ヘキセン、ヘプテン、デセン等のα−オレフィン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類等。
【0034】
上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのジエステル、上記不飽和ジカルボン酸類と炭素数1〜22のアミンとのジアミド、上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4のグリコールとのジエステル。
【0035】
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アンモニウム塩(有機アミン塩)。
【0036】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;アリルアルコール等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル又はアリルエーテル類。
【0037】
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチルエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物類。
【0038】
本発明の水溶性重合体において、重合体を形成する各単量体の組成比としては、全単量体に対して、アミノ基含有アリル系単量体が1〜50モル%、その他の単量体が50〜1モル%であることが好ましい。これらの単量体の重量割合が上記範囲を外れると、アミノ基量の低下又は分子量の低下のため、本発明の作用効果を充分に発現することができないこととなる。より好ましくは、アミノ基含有アリル系単量体が5〜40モル%、その他の単量体が95〜60モル%である。
【0039】
上記その他の単量体の割合が多過ぎると、共重合体の調製においてゲル化や架橋反応が起こり、共重合体の水溶性が低下するおそれがある。アミノ基含有アリル系単量体を得る際に用いる不飽和化合物の量を調整することにより、共重合体一分子あたりのその他の単量体により形成される繰り返し単位の数を少なくしたり、その他の単量体の量を調整することにより繰り返し単位の重合度を低くしたりして、水溶性の低下を防ぐことができる。
【0040】
上記水溶性重合体が、不飽和カルボン酸系単量体からなる成分を含む場合の重合体(ポリカルボン酸系共重合体)を形成する各単量体の組成比は、全単量体に対して、アミノ基含有アリル系単量体が1〜50モル%、不飽和カルボン酸系単量体が50〜99モル%であることが好ましい。更にこれらと共重合可能な上記その他の単量体を含んでもよい。より好ましくは、アミノ基含有アリル系単量体が5〜40モル%、不飽和カルボン酸系単量体が95〜60モル%であり、更に好ましくは、アミノ基含有アリル系単量体が10〜30モル%、不飽和カルボン酸系単量体が90〜70モル%である。なお、不飽和カルボン酸系単量体としては、前述のように、(メタ)アクリル酸(塩)が特に好ましい。
【0041】
上記製造方法における開始剤としては、重金属イオンと、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素とを必須として含むことが好ましい。
上記開始剤は、重金属イオンを必須成分とし、これともう1種の必須成分として、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素とを組み合わせたものであればよく、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素は、1種又は2種以上が含まれていればよい。このような組み合わせとしては、重金属イオン及び亜硫酸(塩)、重金属イオン及び亜硫酸水素塩、重金属イオン及び過酸化水素等が好適である。
上記(重合)開始剤としては、必須成分を含み、得られる重合体の分子量分布を特定値以下にできるものであればその種類や添加量は特に限定されるものではないが、以下のものを好適に用いることができる。
【0042】
上記開始剤に必須として含まれる金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。
上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
【0043】
上記重金属イオンは、開始剤にイオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いる方法を用いると、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであればよく、用いる開始剤に応じて決定することができる。
上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらの重金属化合物を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れることになる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明の水溶性重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであればよい。
【0044】
上記重金属イオンは、本発明における重合工程において、触媒量含まれていることが好ましい。本明細書でいう触媒量とは、触媒として、最終目的物にとりこまれるものでなく作用するものであり、具体的には、100ppm以下であり、好ましくは、10ppm以下であり、より好ましくは5ppm以下である。
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が充分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である重合体を洗剤ビルダーとして用いる場合に、洗剤用ビルダーの汚れの原因となるおそれがあり、スケール防止剤として用いる場合に添加する重合体のスケールが増加するおそれがある。
なお上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体がアルカリ成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
【0045】
上記亜硫酸(塩)としては、亜硫酸又はその塩をいい、亜硫酸が塩である形態が好適である。亜硫酸が塩である場合、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。
上記金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等の塩が好ましい。また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、トリエチルアミン等が好適である。更に、アンモニウムであってもよい。これらの中でも、ナトリウム塩が好ましい。
上記亜硫酸水素塩を用いる場合の塩の形態としては、上記の塩が好適である。
亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素を用いる量としては、単量体1molに対して20g以下であることが好ましい。より好ましくは、15g以下であり、更に好ましくは、10g以下である。
【0046】
上記開始剤としては、重金属イオンと、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素とを必須とする開始剤を必須とするものであり、これらに加えて過硫酸(塩)を併用する形態も好ましい形態の一つである。
上記過硫酸(塩)としては、過硫酸又はその塩をいい、過硫酸が塩である形態が好適である。過硫酸が塩である場合、上記の金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。
上記過硫酸(塩)を併用する場合、その用いる量としては、単量体1molに対して10g以下であることが好ましい。
上記開始剤としては、例えば、過酸化水素(H)/過硫酸ナトリウム(NaPS)/Fe、過酸化水素(H)/Fe、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)/Fe、SBS/酸素/Fe等の形態が好ましい。より好ましくは、過酸化水素(H)/過硫酸ナトリウム(NaPS)/Fe、過酸化水素/Fe、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)/Feであり、更に好ましくは、H/NaPS/Feである。
【0047】
上記(重合)開始剤としては、上記の他に公知のものを併用することができ、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等の重亜硫酸塩;ピロ亜硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤は、上述の重金属イオンと、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素とを必須とする開始剤とともに1種又は2種以上を併用してもよい。このような場合、重金属イオンと、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素とを必須とする開始剤に対する公知の重合開始剤の割合としては、10質量%以下が好ましい。
【0048】
上記公知の重合開始剤としては、過硫酸塩と重亜硫酸塩とをそれぞれ1種以上用いることが好ましい。この場合、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸塩を0.5〜5質量部用いることが好ましい。より好ましくは、1質量部以上であり、更に好ましくは、2質量部以上である。また、より好ましくは、4質量部以下であり、更に好ましくは、3質量部以下である。重亜硫酸塩が0.5質量部未満であると、低分子量化する際に開始剤総量が増加するおそれがあり、5質量部を超えると、副反応が増加し、それによる不純物が増加するおそれがある。
【0049】
上記開始剤(必要に応じて、上記公知の開始剤を含む開始剤)の使用量は、単量体1molに対して、2〜20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、アミノ基含有水溶性重合体を効率よく生産することができ、また、水溶性重合体の分子量分布を低いものとすることができる。より好ましくは、4〜18gであり、更に好ましくは、6〜15gである。
【0050】
上記共重合方法においては、連鎖移動剤も必要に応じて使用することができる。このような連鎖移動剤としては、公知のものを1種又は2種以上使用できる。
【0051】
上記重合開始剤及び連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入してもよく、単量体成分を構成するアミノ基含有アリル系単量体やその他の単量体、溶媒等とあらかじめ混同しておいてもよい。
【0052】
上記共重合方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法、反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、洗剤ビルダーとして用いる場合の分散性を向上することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。
【0053】
上記共重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。また、共重合の際、必要に応じて使用される溶媒としては、公知のものを使用でき、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;グリセリン;ポリエチレングリコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、単量体成分及び得られる共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。
【0054】
上記溶媒の使用量としては、単量体成分100質量%に対して40〜200質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。また、より好ましくは、180質量%以下であり、更に好ましくは、150質量%以下である。溶媒の使用量が10質量%未満であると、得られる共重合体の分子量が高くなるおそれがあり、200質量%を超えると、得られる共重合体の濃度が低くなり、溶媒除去が必要となるおそれがある。なお、溶媒は、重合初期に一部又は全量を反応容器内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部を重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよいし、単量体成分や開始剤等を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよい。
【0055】
上記共重合方法において、共重合温度等の共重合条件としては、用いられる共重合方法、溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、共重合温度としては、通常、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。
【0056】
上記共重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0057】
上記共重合時間としては、30〜300分であることが好ましい。より好ましくは、60〜240分であり、更に好ましくは、120〜180分である。
【0058】
上記共重合方法における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れであってもよいが、得られる共重合体の分子量の点で、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うのが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点で、常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。
反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0059】
上記共重合における重合中のpHは、酸性が好ましい。特に、上記開始剤として、過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、酸性条件下で行うことが好ましい。酸性条件下で行うことによって、重合反応系の水溶液の粘度の上昇を抑制し、共重合体を良好に製造することができる。また、高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるので、製造効率を大幅に上昇することができ、最終固形分濃度が40%以上の高濃度重合とすることができ、含まれる残存モノマーの総濃度が15000ppm以下のものを得ることができる。更に、アミノ基含有単量体の重合性を向上することができる。
上記酸性条件としては、重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6であることが好ましい。より好ましくは、5以下であり、更に好ましくは、3以下である。
上記共重合方法により得られる共重合体は、そのままでも洗剤ビルダーの主成分等として用いることができるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アンモニウム(有機アミン)等を用いることが好ましい。
【0060】
共重合を行う際の中和率は、開始剤によって適宜変更できる。例えば、過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、上記その他の単量体が塩を形成し得るものである場合、その他の単量体の中和率を0〜60mol%として単量体成分の共重合を行うことが好ましい。その他の単量体の中和率は、その他の単量体の全モル数を100mol%としたときに、塩を形成しているその他の単量体のmol%で表されることになる。その他の単量体の中和率が60mol%を超えると、共重合工程における重合率が上がらず、得られる共重合体の分子量が低下したり、製造効率が低下したりするおそれがある。より好ましくは、50mol%以下であり、更に好ましくは、40mol%以下、特に好ましくは、30mol%以下であり、より特に好ましくは、20mol%以下であり、最も好ましくは、10mol%以下である。
【0061】
上記その他の単量体の中和率を0〜60mol%として共重合を行う方法としては、例えば、その他の単量体が不飽和カルボン酸系単量体である場合、全て酸型である不飽和カルボン酸系単量体、すなわち全ての不飽和カルボン酸系単量体において上記一般式(13)におけるMが水素原子であるものを中和せずに共重合に付することにより行う方法や、不飽和カルボン酸系単量体をアルカリ性物質を用いてナトリウム塩やアンモニウム塩等の塩の形態に中和するときに中和率を0〜60mol%としたものを共重合に付することにより行う方法等が好適である。
【0062】
上記水溶性重合体は、洗浄用ビルダー、水処理剤、又は、繊維処理剤に用いられるものであることが好ましい。このように、上記アミノ基含有単量体単位を必須とする水溶性重合体を含んで構成される洗浄用ビルダー、水処理剤、又は、繊維処理剤もまた、本発明の好ましい実施形態の一つである。
上記洗浄用ビルダーは、液体洗剤用ビルダーも含むものであり、洗浄中の衣類等に汚れが再付着するのを防止するための作用を発揮するものである。水溶性重合体が汚れの再付着を防止する場合、分子量分がシャープであることに起因して、高い分散性を示し、他の単量体により形成される立体構造に起因する反発作用とともに、その他の単量体に由来する疎水性基を有するときには汚れとの親和性を低下させる作用を発揮し、その他の単量体に由来する親水性基を有するときには汚れの分散作用が発揮されることになる。その他、アニオン性、カチオン性といったイオン性によっても、汚れに対する相互作用は変化する。
【0063】
上記洗剤用ビルダーは、界面活性剤との相溶性に優れ、得られる洗剤が高濃縮の液体洗剤となる点から、液体洗剤用ビルダーとして好適に用いることができる。界面活性剤との相溶性に優れることにより、液体洗剤に用いた場合の透明性が良好となり、濁りが原因として起こる液体洗剤の分離の問題を防ぐことができる。また、相溶性が優れることにより、高濃縮の液体洗剤とすることができ、液体洗剤の洗浄能力を向上することができる。
上記洗剤ビルダーは、再汚染防止能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤ビルダーとすることができる。
【0064】
本発明の水溶性重合体を洗剤用ビルダーとして用いる場合、再汚染防止能が、73%以上であることが好ましい。なお、上記再汚染防止能は、以下の方法により求めることができる。
【0065】
<再汚染防止能>
(1)試料として用いる綿布、綿/ポリエステル混紡布の白布の白色度を予め反射率にて測定する。反射率測定には、測色色差計ND−1001DP型(日本電色工業社製)等を用いることができる。
(2)塩化カルシウム2水和物1.47gに純水を加えて10kgとし、硬水を調製する。
(3)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(AES)4.8g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(AE)0.6g、ホウ酸ナトリウム0.6g、クエン酸0.9g、プロピレングリコール2.4gに純水を加えて全体で80gとする。水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.2に調整した後に純水を加えて全体で100gとし、界面活性剤水溶液を調製する。
(4)ターゴットメーターを27℃にセットし、硬水1000mL、JIS11種クレー0.5gをポットに入れ、100rpmで1分間攪拌する。
(5)重合体水溶液(濃度0.28%)5mL、(3)で調製した界面活性剤水溶液4.8mL、白布5.2〜5.4gをポットに入れ、100rpmで10分間攪拌する。
(6)手で白布の水を切り、硬水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間攪拌する。
(7)(4)〜(6)の操作を3回繰り返す。
(8)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、測色色差計にて、再度、白布の白色度を反射率にて測定する。
(9)この測定結果から下式により再汚染防止能を求める。
再汚染防止能(%)=(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)×100
【0066】
上記洗剤ビルダー中における水溶性重合体の含有割合としては、例えば、洗剤ビルダー100質量%に対して、0.1〜80質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、洗浄剤組成物として用いた場合の洗浄力が不充分になるおそれがあり、80質量%を超えると、不経済になるおそれがある。水溶性重合体の量は、より好ましくは、1質量%以上、更に好ましくは、5質量%以上である。また、より好ましくは、70質量%以下であり、更に好ましくは、65質量%以下である。
【0067】
上記洗剤ビルダーにおける水溶性重合体以外の他の組成成分や配合比率としては、従来公知の洗剤ビルダーに用いることができる各種成分、及び、その配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0068】
上記水溶性重合体はまた、各種の用途において、分散性等の性能を発揮することができるものであり、例えば、水処理剤、分散剤、繊維処理剤、スケール防止剤(スケール抑制剤)、セメント添加剤、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー等のその他の用途においても好適に用いることが可能である。
【0069】
上記水処理剤は、例えば、冷却水系、ボイラー水系等の水系に添加されることになる。この場合、水溶性重合体をそのまま添加してもよく、水溶性重合体以外のその他の成分を含むものを添加してもよい。水処理剤における水溶性重合体以外の他の組成成分や配合比率としては、従来公知の水処理剤に用いることができる各種成分、及び、その配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0070】
上記分散剤は、水系の分散剤であればよく、例えば、顔料分散剤、セメント分散剤、炭酸カルシウムの分散剤、カオリンの分散剤等が好適である。このような分散剤は、水溶性重合体が本来有する極めて優れた分散能を発現することができる。また、長期間保存しても性能低下や低温保持時の不純物析出等も生じることのない極めて高品質高性能で安定性に優れた分散剤とすることができる。分散剤における水溶性重合体以外の他の組成成分や配合比率としては、従来公知の分散剤に用いることができる各種成分、及び、その配合比率に基づき、本発明の作用効果を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0071】
本発明の水溶性重合体を洗剤ビルダーとして用いる場合に、洗剤ビルダーを含む洗浄剤組成物としては、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。上記洗浄剤組成物には、上記洗剤ビルダー以外に、通常、洗剤に用いられる添加剤を用いることができる。上記添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等のよごれ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0072】
上記洗剤ビルダーの配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜20質量%が好ましい。より好ましくは、0.2質量%以上、15質量%以下であり、更に好ましくは、0.3質量%以上、10質量%以下であり、特に好ましくは、0.4質量%以上、8質量%以下であり、最も好ましくは、0.5質量%以上、5質量%以下である。洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できなくなるおそれがあり、20質量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0073】
上記洗浄剤組成物における上記水溶性重合体の配合形態は、液状、固形状等のいずれであってもよく、洗剤の販売時の形態(例えば、液状物又は固形物)に応じて決定することができる。重合後の水溶液の形態で配合してもよいし、水溶液の水分をある程度減少させて濃縮した状態で配合してもよいし、乾燥固化した状態で配合してもよい。
なお、上記洗浄剤組成物は、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含む。本発明の水溶性重合体は、キレート能に優れるため、微量金属を捕捉することにより、過酸化水素を安定でき、漂白剤の安定化能に優れることから、好適に用いることができる。
【0074】
上記界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であり、これらの界面活性剤は1種又は2種以上を使用することができる。2種以上使用する場合、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを合わせた使用量は、全界面活性剤100質量%に対して50質量%以上が好ましい。より好ましくは、60質量%以上であり、更に好ましくは、70質量%以上であり、特に好ましくは、80質量%以上である。
【0075】
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。
上記アニオン系界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0076】
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。上記ノニオン系界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
上記カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。
上記両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。
上記カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0077】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して10〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは、15質量%以上、50質量%以下であり、更に好ましくは、20質量%以上、45質量%以下であり、特に好ましくは、25質量%以上、40質量%以下である。界面活性剤の配合割合が10質量%未満であると、充分な洗浄力を発揮できなくなるおそれがあり、60質量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0078】
上記洗浄剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物100質量%に対して0.1〜75質量%が好ましい。より好ましくは、0.2質量%以上、70質量%以下であり、更に好ましくは、0.5質量%以上、65質量%以下であり、特に好ましくは、0.7質量%以上、60質量%以下であり、より特に好ましくは、1質量%以上、55質量%以下であり、最も好ましくは、1.5質量%以上、50質量%以下である。
【0079】
上記液体洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましい。より好ましくは、150mg/L以下であり、更に好ましくは、120mg/L以下であり、特に好ましくは、100mg/L以下であり、最も好ましくは、50mg/L以下である。
また、本発明の水溶性重合体を洗剤ビルダーとして液体洗剤組成物に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、500mg/L以下が好ましい。より好ましくは、400mg/L以下であり、更に好ましくは、300mg/L以下であり、特に好ましくは、200mg/L以下であり、最も好ましくは、100mg/L以下である。カオリン濁度は、例えば、後述のカオリン濁度の測定方法により測定することができる。
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に撹拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのカオリン濁度(Tubidity、mg/L)を測定する。
【0080】
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
【0081】
上記アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。上記キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、三リン酸塩、トリポリリン酸ナトリウム、クエン酸等が好適である。本発明における共重合体以外のその他の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを用いてもよい。
【0082】
上記洗浄剤組成物は、分散能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤とすることができる。
【発明の効果】
【0083】
本発明のアミノ基含有水溶性共重合体は、上述の構成よりなり、キレート性能及びクレー分散能に優れる。また、本発明のアミノ基含有水溶性共重合体を効率よく、生産性よく製造する方法は、洗浄用ビルダー(液体洗剤用ビルダーも含む)、水処理剤、繊維処理剤等の用途に好適に用いることができるものである。また、本発明の水溶性重合体を含む洗剤ビルダーは、液体洗剤への相溶性に優れるとともに、再汚染防止能、洗浄率等の点で高い基本性能を発揮することができ、例えば、活性剤と共に用いることにより、洗浄剤として有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0085】
〔アミノ基含有アリル系単量体の合成〕
アミノ基含有アリル系単量体の合成例として、アリルグリシジルエーテルのイミノ二酢酸(AGE−IDA)誘導体モノマーの合成法を以下に述べる。
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、純水500.0g、イミノ二酢酸(IDA)399.3g及び48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHと略す。)500.0gを仕込み、攪拌しながら、液温を55℃に調整した。次に、55℃に保持された反応系中に、攪拌しながら、アリルグリシジルエーテル(AGE)342.4gをゆっくりと2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に、1時間、反応液を55℃に熟成して、AGE−IDAの50%水溶液(以下、50%AGE−IDAと略す。)を得た。
【0086】
実施例1
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、表1に示す割合で、純水68.0g、AGE−IDAの50%水溶液を58.2g、及び、モール塩0.0127gを仕込み、攪拌しながら、沸点まで昇温させた。
次に、沸点に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、80%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと略す。)144.0g、50%AGE−IDAを174.6g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと略す。)26.7g、及び、35%過酸化水素水(以下、35%Hと略す。)17.1gを、別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAと35%Hについては120分間、50%AGE−IDAにつては80分間、15%NaPSについては130分間とした。滴下は連続的に行われ、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。なお、表1〜3において、AGE−IDAとAAの仕込み比(モル比)をAGE−IDA/AAで示した。
【0087】
滴下終了後、更に30分間、重合反応液で熟成して、重合を完結させた。重合完結後、重合体混合物を含む水溶液である重合反応液を放冷し、113.3gの48%NaOHを、攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。中和後の重合反応液における固形分濃度は45質量%であった。得られた重合体1の重量平均分子量は405000、分子量分布は11.3、総残存モノマー濃度は1300ppmであった。結果を表4に示す。
【0088】
実施例2〜9
表1に示す条件にて実施例1と同様に行い、重合体2〜重合体9を得た。結果を表1及び4に示す。
実施例10
還元剤として35%亜硫酸水素ナトリウム(35%SBS)を使用した以外は実施例1と同様にして表2に示す条件にて行い、重合体10を得た。結果を表2及び4に示す。
【0089】
比較例1
表3に示す条件にて実施例1と同様に反応を行い、比較重合体を得た。結果を表3及び4に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
上記実施例及び比較例で得られた重合体を、以下の方法にて、分子量、総残存モノマー濃度、クレー分散能、過酸化水素安定化能及び再汚染防止能を測定した。結果を表4に示す。
【0094】
≪分子量測定≫
アクリル酸(塩)系重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ともにGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定した。なお、測定条件、装置等を例示すれば、以下の通りである。
【0095】
(1)GPCのカラム;昭和電工製のGF−7MHQ(商品名)が挙げられる。
(2)移動相;リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5g及びリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(いずれも試薬特級)濃縮乾燥機に純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45μmのメンブランフィルターでろ過した水溶液を用いる。
(3)検出器;ウォーターズ製のモデル481型を用い、検出波長UV214nmとする。
(4)ポンプ;株式会社日立製作所製のL−7110(商品名)を用いる。
(5)移動相の流量;0.5ml/分とし、温度は35℃とする。検量線は、創和科学製のポリアクリル酸ナトリウム標準サンプルを用いて作成する。
【0096】
<総残存モノマー濃度>
最終的に得られた共重合体水溶液に含まれる、重合せずに残存したアリル系単量体と(メタ)アクリル酸の総濃度。HPLCにより定量。
カラム:東ソー社製 G−3000PWXL
移動相:リン酸(試薬特級)5mlに純水を加えて5000gとし、その後0.45μmのメンブランフィルターでろ過した水溶液を用いた。
検出器:日立製作所製 モデルL−4000Hを用い、検出波長UV220nmとした。
ポンプ:日立製作所製 モデルL−6000を用いた。
移動相の流量は1ml/分とし、温度は35℃とした。
【0097】
<高硬度水でのクレー分散能>
(1)まず、グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、1mol/lのNaOH水溶液60mlにイオン交換水を加えて600gとしたグリシン緩衝溶液を調整した。
(2)塩化カルシウム2水和物を0.3268g、(1)の調整液60gを取って、純水を加えて1000gとし、分散液を調整した。また、固形分換算で0.1%の重合体水溶液を調整した。
【0098】
(3)約30ccの実験に用いる一般的な試験管に、JIS試験用粉体I,8種(関東ローム,微粒:日本粉体工業技術協会)のクレー0.3gを入れ、(2)で調整した分散液27gと固形分換算で0.1%の重合体水溶液3gを添加した。この時、試験液のカルシウム濃度は炭酸カルシウム換算200ppmとなっている。
(4)試験管をパラフィルムで密封した後、クレーが全体に分散するように軽く振り、さらに上下に20回振った。この試験管を直射日光の当たらないところに20時間静置した後、分散液の上澄みをホールピペットで5ml採取した。
(5)この液をUV分光器を用いて、波長380nmの条件で、1cmのセルで吸光度(ABS)を測定し、この値を高硬度水でのクレー分散能値とした。
【0099】
<過酸化水素安定化能>
(1)250mlポリビンの内ブタにピンホールを開けた。
(2)2.5%ポリマー水溶液を10g調製した。
(3)0.106%モール塩、及び0.0197%硫酸銅の重金属イオン混合水溶液を100g調製した。
(4)0.1%硫酸マグネシウム水溶液を調製した。
(5)48%水酸化ナトリウム、35%過酸化水素水を用意した。
【0100】
(6)次に以下の順に250mlポリビンに加えた。
(i)重金属イオン混合水溶液……1ml
(ii)2.5%ポリマー水溶液……4ml
(iii)純水……80g
(iv)0.1%硫酸マグネシウム水溶液……10ml
(v)48%水酸化ナトリウム……2ml
(vi)35%過酸化水素水……3ml
(7)50℃の恒温槽中に2時間静置した後、溶液中の過酸化水素濃度を酸化還元滴定法により測定した。この値を過酸化水素安定化能とした。
【0101】
<再汚染防止能>
(1)試料として用いる綿布、綿/ポリエステル混合布の白布の白色度をあらかじめ反射率にて測定する。反射率測定には、測色色差計ND−1001DP型(日本電色工業社製)などを用いることができる。
(2)塩化カルシウム2水和物1.47gに純水を加えて10kgとし、硬水を調製する。
(3)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(AES)4.8g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(AE)0.6g、ホウ酸ナトリウム0.6g、クエン酸0.9g、プロピレングリコール2.4gに純水を加えて全体で80gとする。水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.2に調整した後に純水を加えて全体で100gとし、界面活性剤水溶液を調製する。
【0102】
(4)ターゴットメーターを27℃にセットし、硬水1000mL、JIS11種クレー0.5gをポットに入れ、100rpmで1分間攪拌する。
(5)重合体水溶液(濃度0.28%)5mL、(3)で調製した界面活性剤水溶液4.8mL、白布5.2〜5.4gをポットに入れ、100rpmで10分間攪拌する。
(6)手で白布の水を切り、硬水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間攪拌する。
(7)(4)〜(6)の操件を3回繰り返す。
【0103】
(8)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、測色色差計にて、再度、白布の白色度を反射率にて測定する。
(9)この測定結果から下式により再汚染防止能を求める。
再汚染防止能(%)=(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)×100
【0104】
【表4】

【0105】
表4より、分子量分布12以下において、良好な過酸化水素安定化能、再汚染防止能が得られることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基含有単量体単位を必須とする水溶性重合体であって、
該水溶性重合体は、分子量分布が12以下であることを特徴とする水溶性重合体。
【請求項2】
前記アミノ基含有単量体単位は、下記一般式(1);
【化1】

(式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は有機基を表す。)で表されることを特徴とする請求項1記載の水溶性重合体。
【請求項3】
前記アミノ基含有単量体単位は、一般式(1)におけるR及びRが、同一若しくは異なって、
(I)水素原子、
(II)カルボン酸基又はその塩形態の基を有する有機基、
(III)スルホン酸基又はその塩形態の基を有する有機基、
(IV)水酸基を有する有機基、並びに、
(V)アミノ基を有する有機基
からなる群より選ばれるいずれかの基を表すものであることを特徴とする請求項2記載の水溶性重合体。
【請求項4】
前記アミノ基含有単量体単位は、一般式(1)におけるR及びRが、同一若しくは異なって、下記一般式(2)〜(10);
【化2】

(式中、X〜Xは、互いに独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表し、R及びRはそれぞれ、R及びRと同じであるか、又は、炭素数1〜12のアルキル基、若しくは、アリール基を表す。)からなる群より選ばれるいずれかの基を表すものであることを特徴とする請求項2又は3記載の水溶性重合体。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の水溶性重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、重金属イオンと、亜硫酸(塩)、亜硫酸水素塩又は過酸化水素とを必須とする開始剤を用いてアミノ基含有アリル系単量体を重合する工程を含むことを特徴とする水溶性重合体の製造方法。
【請求項6】
前記水溶性重合体は、洗浄用ビルダー、水処理剤、又は、繊維処理剤に用いられることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の水溶性重合体。

【公表番号】特表2008−523162(P2008−523162A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527214(P2006−527214)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/JP2005/023211
【国際公開番号】WO2006/064940
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】