説明

アミノ酸および植物を含む調製物およびアルコール解毒におけるその活性

本発明は、いくつかのアミノ酸および植物エキスを含有する調製物、ならびにそのアルコール解毒活性に関する。この調製物中の成分(a)は、2以上のアミノ酸またはその誘導体の混合物を含有し、この調製物中の成分(b)は、植物由来の3つ以上のエキスの混合物を含有する。朝鮮人参の根のエキス、イチョウ葉のエキス、シリビニンのエキス、バーバリークコの実のエキスおよび茶ポリフェノールなどのいくつかの植物エキスが本発明で使用される。また、本発明は、この調製物の生物活性、例えば、化学性外傷からの肝臓の保護、低酸素への耐性の亢進および血中アルコール含有量の排除までの迅速な減少に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養補助食品、フードサプリメントまたは医療目的のための調製物に、より具体的には、アミノ酸およびいくつかの植物エキスを含む調製物または組成物ならびにアルコール解毒におけるその活性に関する。本発明の組成物は、化学性肝損傷からの保護において、低酸素耐性の亢進において、インビボエタノール含有量の急速除去および無酸素環境における還元および生存能の亢進において使用することができる。
【背景技術】
【0002】
L−オルニチンおよびシトルリンは、人体における少なくとも3つの重要な環状の代謝経路に関与するということが知られている。これら3つの代謝経路は、それぞれ、尿素循環、クエン酸循環および一酸化窒素循環である。L−オルニチンおよびシトルリンを摂取することにより、内因性の生体分子メッセンジャーである一酸化窒素(NO)が、関連する代謝経路を通して得られうる。人体の血液循環系は、NOの血管拡張機能なしでは機能できず、内因性のNOは、複数の生理学的機能に対する調整機能および制御機能を有し、例えば、神経のシナプス間のエネルギーを調整することができ、学習および記銘プロセスを調整することができる、などがある。
【0003】
人体における内因性のNOは、L−アルギニン(L−Arg)が一酸化窒素シンテターゼ(NOS)によって分解されるように触媒することにより生成される。L−Argは、人体おいて重要な物質であり、NO生成およびタンパク質合成への関与に加えて、L−Argは、尿素、プラリン(praline)、アグマチン、ポリアミンなどの前駆体でもあり、オーキシンおよびインスリンなどのホルモンの分泌を刺激して、人体の健康に直接影響を及ぼすことができる。人体が特別のストレス状態のもと、例えば低酸素症条件下にあるとき、人体の中の内因性のNOは不十分になり、これは、高所反応または高山病を引き起こす可能性がある。
【0004】
高所反応および虚血−再灌流傷害の予防および処置ならびに心臓−脳−脈管系および免疫系の保護という効果のほかに、L−Argは、マウス強制水泳時間を延ばし、そして嫌気性解糖によって引き起こされる乳酸の蓄積を低下させることができ、それゆえ疲労抑制機能を発揮することができる。
【0005】
しかしながら、摂取されたL−アルギニン(L−Arg)の半減期は非常に短いので(およそ1時間にすぎない)、アルギニンの直接の補充では、血液および細胞の中のアルギニン濃度を効果的に高めることはできない。
【0006】
L−シトルリン(L−cit)は非タンパク質アミノ酸であり、フリーラジカル除去、血管拡張および血圧安定化などの複数の重要な生理学的機能を有し、さらに、内在性のアルギニン(L−Arg)およびNOは、人体の中のL−cit−NO循環を通して継続的に生成されることができ、体内の(endosomatic)アルギニンレベルが明らかに高められることを確実にし、そして同時により高い基礎レベルに維持することができ、このようにして、生物の低酸素症耐性が亢進されるということが知られている。
【0007】
L−オルニチンは組織および細胞の中に存在する重要な非タンパク質アミノ酸であり、アルギニン、シトルリンおよび他のアミノ酸の代謝についての前駆体物質でもある。L−オルニチンは、尿素回路活性化およびアンモニア毒素中和のプロセス全体にほとんど関与し、カルバミルリン酸シンテターゼおよびグルタミンの合成を容易にし、肝臓の毒素中和機能を高める。それゆえ、L−オルニチンは、人体においては、肝細胞にとって重要である。
【0008】
朝鮮人参乾燥エキスは、オタネニンジン(Panax ginseng C.A.Mey.)の、乾燥した人参の根(root)および根(radix)および根茎(rhizomea)、または紅参(radix and rhizomea ginseng rubra)パナキソシドから得られる。主な有効成分である、朝鮮人参エキスは、明らかに、化学性外傷から肝細胞を保護することができ、動物実験は、パナキソシドが、脳細胞を虚血−再灌流傷害から保護することもでき、動物の化学性の学習および記銘機能の障害に対する明らかな改善効果をも有するということを証明した。
【0009】
イチョウ乾燥エキスは、ginkgo biloba L.の葉イチョウから得られる。このイチョウ乾燥エキスは、Ca2+レベルを低下させることによりNOの異常な代謝を防止することができ、グルタミン酸の神経毒性から保護し、血小板活性化因子に拮抗し、低酸素性虚血性脳障害を有する脳組織に対する保護機能を有し、肝臓を保護し、トランスアミナーゼ減少効果を有する。
【0010】
シリバム・マリアナム(Silybum marianum(L.))の種子に由来するシリビニンは、強力なフリーラジカルスカベンジャーであり、かつ肝臓に対する保護効果、治癒効果および解毒効果を有する脂質過酸化の阻害剤である。酵素の増強および肝細胞の膜安定化に対するシリビニンの活性は、アルコール、高脂肪食、タバコの消費および多くの処方薬が引き起こす可能性がある肝臓に対する損傷を低下させることおよび修復することを助ける。
【0011】
クコシ(fructus lycii)のエキスは、ナガバクコ(Lycium barbarum L.)のタイソウ(Fructus jujubae)から得られる。クコシは、肝臓および腎臓の補益(tonification)のための通常の伝統的な漢方薬であり、色は紅色であり、香味は甘い。現代の医学研究は、クコシが、ベタイン、多糖、粗脂肪、粗タンパク質、カロチン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、カルシウム(C)、リン(P)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、リノール酸および他の栄養成分を含有するということを明らかにした。クコシのエキスは、造血機能を促進し、抗加齢、抗変異、抗腫瘍性、抗脂肪肝および血糖値低下の機能を有する。薬草医は、肝臓および腎臓の陰虚、ひりひりする痛みならびに腰およびひざの脱力、眩暈、病的なもの忘れ、視朦、低酸素症および涙の溢流、渇きの癒し、精液漏および他の疾病症候を処置するためにクコシを使用することが多い。腎不全を有する人々にとっては、クコシは、間違いなく、一種の医療用の栄養分である。クコシは、太古から現代まで健康維持のための最適の選択物であり、寿命を延ばす機能を有する。
【0012】
茶ポリフェノールは、フラバノール類、アントシアニン類、アントキサンチン類、フラボノール類、フェノール酸類などを含めた、茶葉に含有されるポリフェノール物質の一般用語であり、このフラバノール物質(カテキン)が最も重要である。茶ポリフェノールは、茶タンニド(tea tannide)または茶タンニンとも呼ばれ、これは茶葉の色、臭いおよび香味を形成する主成分であり、茶葉の中のヘルスケア機能を有する主成分でもある。茶ポリフェノールは、解毒効果および放射線抵抗性効果を有し、放射性物質が骨髄を侵襲するのを効果的にブロックすることができ、ストロンチウム(Sr)90およびコバルト(Co)60を素早く体内から排出させることができ、それゆえ茶ポリフェノールは放射線に負けない物質(Radiation Invincible Opponent)として扱われており、人の健康のために放射線損傷に対して抵抗するための防衛線を作り上げている。茶ポリフェノールは、脳卒中の予防、腸および胃の緊張の軽減ならびに消化支援の機能を有し、人体の中の過剰なフリーラジカルを取り除くことができ、脂質の過酸化を阻害することができ、免疫機能を亢進することができ、老衰を遅らせることができる。
【0013】
薬草および/または他の天然物質を含むいくつかの組成物が、先行技術からすでに公知であり、これには、例えば、非特許文献1、または非特許文献2、ならびに特許文献1、または非特許文献3に記載される組成物が含まれる。いくつかの他の組成物が、非特許文献4、および特許文献2;非特許文献5および特許文献3、または非特許文献6に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/019427(A1)号明細書
【特許文献2】国際公開第99/61038(A1)号パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第19929993(A1)号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Youmao Qi、「A pharmaceutical composition,and its usage」、DATABASE TCM [オンライン] SIPO;2003年10月29日(2003−10−29)、XP002585364 データベース受け入れ番号 CN 1451426
【非特許文献2】Yiguo Liuら、「A kind of rubber seed jelly」、DATABASE TCM [オンライン] SIPO;2004年10月13日(2004−10−13)、XP002585369 データベース受け入れ番号 CN1 535617
【非特許文献3】Jinxue Cheng、「Oral functional Chinese medicine intensified by snake, bee, macroelement and microelement and its preparation」、DATABASE TCM [オンライン] SIPO;2005年1月26日(2005−01−26)、XP002585371 データベース受け入れ番号 CN 1569123
【非特許文献4】Yimin Lin、「A product used for relieving alcoholic intoxication and protecting liver and its preparation method」、DATABASE TCM [オンライン] SIPO;2005年11月23日(2005−11−23)、XP002585357 データベース受け入れ番号 CN 1698879
【非特許文献5】Xiaolin Xia、「Composite of zinc containing compound and glutaminase/A pharmaceutical composition for the treatment of peptic ulcer」、DATABASE TCM [オンライン] 1997年12月3日(1997−12−03)、XP002585373 データベース受け入れ番号 CN 1166320
【非特許文献6】Dahan Industry Corp.、「Hepatoprotective wine and process for preparation thereof」、DATABASE TCM [オンライン] 1998年7月29日(1998−07−29)、XP002585383 データベース受け入れ番号 CN 1188800
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、アルコール中毒の処置または緩和のための効果的かつ安全な組成物についてのニーズがまだある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
出願人らは、驚くべきことに、本発明に係る調製物が、アルコール解毒において興味深い可能性を示すということを見出した。この安全な天然の調製物は、化学性外傷からの肝臓保護、低酸素症の耐性亢進および血中アルコール含有量の排除までの迅速な減少において特に有望である。
【0018】
本発明に係る調製物の複数の機能および効果は、同時に高められて強化される。本発明の調製物は、アルコール性肝損傷を回避することができ、人体の中のエタノール含有量を素早く低下させることができる。今日では、飲酒は一種の社会的手段であり、一種の伝統的な生活習慣でもあり、長期の飲酒または過剰な飲酒から生じる脂肪肝または肝硬変を有する人々がますます多くなり、同時に、中毒になって後の運転は一種の危険行動である。対応する時期に本発明の調製物が経口投与された後には、飲酒後の現象および酩酊現象を軽減するための驚くべき医療効果を得ることができる。
【0019】
加えて、本発明の調製物のすべての成分の相互の相乗作用のため、体力不足、易疲労感、感情の不安定性、老化および不眠症という現象は、効果的に克服することができ、環境汚染、激しい競争、緊張感のある生活のテンポ、過度に脳を働かせること、バランスが崩れた食構造および他の態様への適合性が強化される。
【0020】
本発明の1つの態様では、任意に適切な賦形剤とともに、シトルリンおよびオルニチン塩酸塩および/またはこれらの誘導体からなるアミノ酸を含有する組成物(a)と、朝鮮人参または朝鮮人参エキス、イチョウ葉エキスおよびシリビニンエキスの混合物を含有する組成物(b)との組み合わせを含む調製物が提供される。
【0021】
別の態様では、本発明は、本発明の調製物を含む栄養補助食品またはフードサプリメント、食品調製物、飲料、および医薬を提供する。
【0022】
さらなる態様では、本発明の調製物は、アルコール中毒の処置または予防のために提供される。
【0023】
なおさらなる態様では、本発明は、アルコール中毒、化学性肝損傷、低酸素耐性、インビボエタノール含有量ならびに無酸素環境における還元および生存能の亢進を処置または予防する方法であって、処置または予防を必要とする対象に、有効量の、本発明の調製物または医薬を投与することを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願明細書に記載される方法および物質と類似のまたは等価な方法および物質を本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および物質が下記に記載される。本願明細書中で言及されるすべての公開公報、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体を援用したものとする。本願明細書で論じられる公開公報および出願は、本願の出願日に先立つそれらの開示についてのみ、与えられる。本願明細書中の何事も、本発明は、先行発明という理由でそのような公開公報に先行する権利があるとは言えないということを認める、と解釈されるべきではない。加えて、物質、方法、および実施例は、例示的であるに過ぎず、限定的であることは意図されていない。
【0025】
矛盾する場合、本願明細書(定義を含む)が優先することになる。特段の記載がない限り、本願明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の主題が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本発明の理解を容易にするために、本願明細書で使用する場合、以下の定義が与えられる。
【0026】
用語「comprise(含む)」は、一般に、「include(含む、包含する)」の意味で使用される。つまり、1以上の特徴または成分の存在を許容する。
【0027】
本願明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a、an(1つの)」および「the(その、当該、前記)」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて、複数の参照対象を包含する。
【0028】
用語「エキス」は、本願明細書で使用する場合、抽出方法を使用して植物、果実または野菜から得られる任意の調製物を包含する。
【0029】
用語「食品調製物」は、一般に、植物もしくは動物のいずれか由来の物質、または合成の供給源由来の物質であって、成長、修復、および生命維持に必要なプロセスを持続させるため、ならびにエネルギーを供給するために生物の身体の中で使用される必須栄養素(炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルなど)を含有する物質を指す。
【0030】
「栄養補助食品またはフードサプリメント」は、ビタミン、ミネラル、食品、植物性物質、アミノ酸などの物質を含有し、かつこれらの物質の通常の摂取を補助することが意図されている製品を指す。栄養補助食品は丸剤、錠剤、カプセル剤、粉末または液体形態で見出され、口によって摂取されることが意図されている。
【0031】
用語「機能性食品」は、食品または食品の一部でありかつ医学的な利益または健康上の利益(疾患の予防および処置を含む)をもたらす任意の物質を指す。このような製品は、単離された栄養素、栄養補助食品および特定の食事から、遺伝子改変のデザイナーフーズ、ハーブ製品、ならびに加工食品(シリアル、スープおよび飲料など)の範囲に及びうる。機能性食品は、食品から単離または精製された製品であって、かつ通常は食品とは関係付けられないが、生理的な利益を有するかまたは例えば慢性疾患などの疾患に対する防御をもたらすことが実証されている医薬品の形態で一般に販売される製品をも指す。
【0032】
用語「飲料」は、飲用の液体を意味し、これは、水、フレーバーウォーター、ソフトドリンク、アルコール飲料、ドリンク剤であってもよいし、または乳製品(ミルク)もしくはフルーツジュースに基づくもののような強化ドリンク(enriched drink)であってもよい。
【0033】
「薬学的に許容できる賦形剤または担体」は、有効成分の薬理活性に干渉しないか、または有効成分が投与されうる対象の身体の機能を低下させないが、剤形の製作または当該組成物の投与を容易にする任意の物質である。薬学的に許容できる賦形剤の例としては、マルトデキストリン、リン酸カルシウム、および溶融シリカが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容できる賦形剤は、香料、ならびに種々の添加物(他のビタミンおよびミネラル、すべての溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤および吸収遅延剤、甘味料など)、無毒な助剤物質(湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など(例えば、酢酸ナトリウムなど、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなど))、および不有効成分(錠剤、カプセルおよび他の剤形の製造における標準的な賦形剤であるタルクおよびステアリン酸マグネシウムなど)も包含する。
【0034】
本願明細書で使用する場合、用語「対象」または「患者」は、当該技術分野で十分に認識されており、本願明細書中ではほとんど同義で使用されて、イヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダ、およびヒト(最も好ましい)を含めた哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、この対象は、処置を必要とする対象または疾患もしくは障害を有する対象である。しかしながら、他の実施形態では、この対象は、正常な対象であることができる。この用語は、特定の年齢または性別を意味しない。従って、成人および新生児の対象は、雄性であろうとまたは雌性であろうと、包含されることが意図されている。
【0035】
用語「有効量」は、生理的効果を得るために必要な量を指す。この生理的効果は、1回服用用量または反復服用によって成し遂げられてもよい。投与される投与量は、当然、特定の組成物の生理的特徴;対象の年齢、健康および体重;症候の性質および程度;併用療法の種類;処置の頻度;ならびに所望の効果などの既知の要因によって変わる可能性があり、当業者はそれを調整することができる。
【0036】
本出願人らは、特定の植物およびいくつかのアミノ酸ならびにアルコール解毒におけるそれらの応用の可能性を研究してきた。驚くべきことに、本発明に係る調製物の投与は、予想しなかった生物活性の中でもとりわけ、体内の血中アルコール含有量を劇的に低下させるということが見出された。
【0037】
本発明に係る調製物の相乗作用は、いずれの他の薬理作用とも別に起こるようである(実施例を参照)。
【0038】
本発明は、任意に適切な賦形剤とともに、シトルリンおよびオルニチン塩酸塩および/またはこれらの誘導体からなるアミノ酸を含有する組成物(a)と、朝鮮人参または朝鮮人参エキス、イチョウ葉エキスおよびシリビニンエキスの混合物を含有する組成物(b)との組み合わせを含む調製物を提供する。
【0039】
本発明によれば、シトルリンおよび/またはオルニチン塩酸塩「誘導体」は、それらのいずれかの構造上の誘導体および機能上の誘導体を意図する。それらの誘導体は、例えば上記アミノ酸の前駆体、およびそれらの副生成物(分解生成物としても定義される)であってもよい。
【0040】
「アミノ酸の前駆体」は、解糖、TCA回路(トリカルボン酸回路)またはペントースリン酸経路などの代謝経路に由来する代謝産物である。より具体的には、これらの前駆体としては、α−ケトグルタル酸、3−ホスホグリセリン酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸およびエリトロース−4−リン酸、リボース5−リン酸およびこれらの代謝前駆体につながる経路の上流または下流のいずれかの他の分子が挙げられる。
【0041】
「アミノ酸の分解生成物」は、アミノ基転移または酸化のいずれかによってアミノ基を除去する初期分解を受ける可能性があるアミノ酸である。アンモニウムイオンが回収され、別のアミノ酸を形成するために再利用されるか、または排出される。また、アミン基の除去後に得られる炭素骨格は、対応するアミノ酸を合成するために、または炭水化物の合成のための前駆体として(アミノ酸グリコフォームの場合)回収されてもよく、または脂肪酸合成のためのアセチル−CoA(すなわちケトン体を産生する脂肪酸)へと変換されてもよい。
【0042】
用語「シトルリンおよび/またはオルニチン塩酸塩の誘導体」の定義には、その薬学的に許容できる塩も包含される。本発明によれば、薬学的に許容できる塩は、酸性の無機化合物または有機化合物、または塩基性の無機化合物または有機化合物から生成される。本願明細書で使用する場合、語句「薬学的に許容できる塩」は、特定の化合物の遊離の酸および塩基の生物学的有効性を保持し、かつ生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない塩を指す。本発明に係るアミノ酸の薬学的に許容できる塩は、薬学的に許容できる酸との酸付加塩である。
【0043】
所望の塩は、遊離塩基を塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸で、またはギ酸、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸などの有機酸;グルクロン酸またはガラクツロン酸などのピラノシジル酸(pyranosidyl acid);クエン酸または酒石酸などのα−ヒドロキシ酸;アスパラギン酸またはグルタミン酸などのアミノ酸;安息香酸またはケイ皮酸などの芳香族酸;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸などのスルホン酸、などで処理することを含めた、当該技術分野で公知のいずれの適切な方法によって調製されてもよい。
【0044】
本発明では、好ましいアンモニウム塩は、塩化水素酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、硝酸、およびリン酸またはコハク酸から誘導される。
【0045】
一般に、塩は、適切な溶媒または溶媒の種々の組み合わせの中で、遊離塩基を化学量論量のまたは過剰の、所望の塩を形成する無機酸または有機酸と反応させることにより調製される。例えば、遊離塩基は、適切な酸の混合水溶液に溶解させてよく、塩は、標準的な手法によって、例えばその溶液のエバポレーションによって回収することができる。あるいは、遊離塩基を、低級アルカノール、2〜10個の炭素原子を含有する対称エーテルもしくは非対称エーテル、アルキルエステル、またはこれらの混合物などの有機溶媒に加えることができ、次いでこの遊離塩基は適切な酸で処理され、対応する塩が形成される。この塩は、標準的な回収手法によって、例えば混合物からの所望の塩の濾過によって回収されるか、またはこの塩を、その塩が不溶である溶媒の添加によって沈殿させて、そこから回収することができる。
【0046】
種々の反応を実施するための適切な無機溶媒および有機溶媒の例としては、反応物質または得られた生成物に悪影響を及ぼさないいずれかの無機溶媒または有機溶媒が挙げられ、例としては、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化溶媒、ジエチルエーテルなどのエーテル溶媒、および他の溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、シクロオクタン、ベンゼンまたはトルエン、ヘプタン、シクロヘキサン、脂肪族系およびシクロ脂肪族系および芳香族系の炭化水素溶媒、水、酸性にされた水溶液、有機溶液および無機溶液の混合物、酢酸エチル、酢酸プロピルならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
酸性プロドラッグ、例えばリン酸基、および塩基性の無機化合物または有機化合物から形成される塩も本発明に包含される。この塩に含まれる好ましい無機のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛およびマンガンである。リン酸塩の生成は、例えばG.R.Pettitら、Anti−Cancer Design、2001年、第16巻、185−193頁に記載されている。
【0048】
通常、塩には、酸性プロドラッグおよび有機アミン(イミダゾールおよびモルホリンが挙げられるが、これらに限定されない)から形成される塩も含まれる。塩基性アミノ酸塩も使用してよい。
【0049】
本発明に係る好ましい塩は、例えば、アミノ酸であるシトルリンと有機塩であるリンゴ酸塩との組み合わせであるシトルリンリンゴ酸塩:L−シトルリン DL−リンゴ酸塩、ならびに(R)−2−アミノ−5−ウレイドペンタン酸としても知られるD−シトルリン(1)、(±)−2−アミノ−5−ウレイドペンタン酸、DL−2−アミノ−5−ウレイド吉草酸としても知られるDL−シトルリン(1);L−シトルリン 4−メチル−7−クマリニルアミド臭化水素酸塩としても知られるL−シトルリン(3) L−シトルリン 7−アミド−4−メチルクマリン臭化水素酸塩(1);L−シトルリン−4,4,5,5−d4(1);N−2,4−DNP−DL−シトルリン(1);チオ−L−シトルリン(2)またはL−シトルリン一塩酸塩である。α−ケトイソカプロン酸オルニチン、α−ケトグルタル酸オルニチン(O α KG)、オルニチン塩酸塩などのオルニチンの薬学的塩も企図される。
【0050】
用語「シトルリンおよび/またはオルニチン塩酸塩誘導体」は、本発明によれば、特に天然に存在する[α]−アミノ酸を指すが、さらにそれらの同族体、異性体、類似体も包含し、すべてのこれらの用語は、上記の誘導体の定義に該当する。鏡像異性体は、異性体の一例として挙げることができる。類似体は、例えば、保護基を有するアミノ酸であることができる。
【0051】
さらには、天然のプロテアーゼによる分解は(L体の)未変性のペプチドに関する固有の問題であるので、本発明のアミノ酸は、D体および/またはその「レトロ−インバルソ(retro−inverso)異性体」を含むように調製されてもよい。未変性のプロテイナーゼによる分解から保護されているため、レトロ−インバルソ含有アミノ酸については、非レトロ−インバルソ含有類似体と比べて、より高い生物活性が予測される。さらには、レトロ−インバルソ含有アミノ酸は、高められた安定性およびより低い免疫原性を呈することが示されている[Sela M.およびZisman E.、「Different roles of D−amino acids in immune phenomena」、FASEB J.、1997年、第11巻、449頁]。レトロ−インバルソアミノ酸は、例えばSelaおよびZisman(1997)に記載されているようにして調製される。
【0052】
「シトルリンおよび/またはオルニチン塩酸塩」の修飾、例えばインビボまたはインビトロでの化学的誘導体化、例えば、アセチル化またはカルボキシル化も、誘導体の定義に包含される。グリコシル化の修飾、例えば、アミノ酸のグリコシル化パターンを、そのアミノ酸の合成および処理の際に、またはさらなる処理工程、例えば哺乳類のグリコシル化酵素または脱グリコシル化酵素において修飾することによって行われる修飾も含まれる。リン酸化されたアミノ酸残基、例えばリン酸化チロシン、リン酸化セリン、またはリン酸化トレオニン、を有する配列も含まれる。
【0053】
本発明に係る調製物では、担体も薬学的に許容できる担体も適切な賦形剤も、加えられる必要がないことが多い。しかしながら、適切な賦形剤を、任意に加えてもよい。
【0054】
本発明の適切な賦形剤の例としては、付着防止剤(anti−adherents)、結合剤(例えば、大粒結晶セルロース、ガムトラガント、もしくはゼラチン)、コーティング、崩壊剤、充填剤、希釈剤、軟化剤、乳化剤、矯味矯臭剤、着色剤、アジュバント、滑沢剤、機能性剤(functional agents)(例えば、栄養素)、粘度調整剤、増量剤、滑剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)表面活性剤、浸透圧剤、希釈剤、または任意の他の非有効成分、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
例えば、本発明の調製物は、炭酸カルシウム、着色剤、増白剤、防腐剤、および香料、トリアセチン、ステアリン酸マグネシウム、ステロート(sterotes)、天然香料もしくは人工香料、精油、植物エキス、フルーツエッセンス、ゼラチン、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される賦形剤物質を含んでもよい。
【0056】
任意に、本発明の調製物は、他の人工甘味料もしくは天然甘味料、増量甘味料、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。増量甘味料は、カロリー化合物およびノンカロリー化合物の両方を含む。増量甘味料の非限定的な例としては、スクロース、デキストロース、マルトース、デキストリン、乾燥転化糖、フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、果糖、ガラクトース、コーンシロップ固形物、タガトース、ポリオール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、エリスリトール、およびマルチトール)、水素化デンプン加水分解物、イソマルト、トレハロース、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
本発明に係る調製物の中の活性物質、例えばアミノ酸または植物エキスの濃度は、広い範囲内で変わることができる。1つの活性物質の重量が、当該調製物中の活性物質のすべての重量の1%〜90%にあたることが有利である。
【0058】
好ましくは、アミノ酸を含有する組成物(a)は、シトルリン、およびオルニチン塩酸塩、および/またはこれらの誘導体をそれぞれ0.1%〜99%:99%〜0.1%の重量比で有する。
【0059】
それぞれ、組成物(b)は、好ましくは、朝鮮人参または朝鮮人参エキス、イチョウ葉エキスおよびシリビニンエキスを、それぞれ0.01%〜99%、0.01%〜99%および0.01%〜99%の重量比で有する。
【0060】
本発明の特定の実施形態では、アミノ酸を含有する組成物(a)は、アルギニン、オルニチン、トレオニン、トリプトファンもしくは5−ヒドロキシトリプトファンおよび/またはこれらの誘導体(上で定義されたとおり)から選択されるさらなるアミノ酸をさらに含む。
【0061】
好ましくは、上記加えられたアミノ酸と、シトルリンおよびオルニチン塩酸塩および/またはこれらの誘導体からなるアミノ酸を含有する組成物(a)との重量比は、それぞれ0.0001%〜50%:99.9999%〜50%である。
【0062】
本発明のより特定の実施形態では、組成物(b)は、バーバリークコの実(barbury wolfberry fruit)エキスおよび茶ポリフェノールから選択されるさらなる植物エキスをさらに含む。
【0063】
この上記の実施形態では、本発明の調製物の重量比は、好ましくは、それぞれ
朝鮮人参または朝鮮人参エキスの混合物、0.001%〜99%、
イチョウ葉エキス、0.001%〜99%、
シリビニンエキス、0.001%〜99%、
バーバリークコの実エキス、0.0001%〜70%、および
茶ポリフェノール、0.0001%〜60%
を含む。
【0064】
本発明に係る調製物は、カプセルもしくは錠剤などの固体製剤の形態、または液体または油性溶液の形態にあってもよい。本発明で記載される調製物の製剤は、医療食品または薬理学の分野のいずれかの公知の方法を通して調製することができる。
【0065】
当業者によく知られたいずれの方法も採用でき、つまり、アミノ酸および植物エキスによって調製される当該組成物は、カプセルおよび錠剤などの固体製剤、または適切な担体系を用いてもしくは用いずに投与されることになる経口用液体および油性溶液などの液体製剤へと製造される。
【0066】
好ましくは、各製造されたカプセル剤または錠剤は、投薬単位あたり、下記のものを含有してもよい:
80mg〜816mgのシトルリンまたは同一量のその誘導体、
50mg〜512mgのオルニチンまたは同一量のその塩もしくは誘導体、
0.0001mg〜430mgのアルギニンまたは同一量のその誘導体、
0.0001mg〜310mgのトリプトファンまたは同一量のその誘導体、
0.0001mg〜450mgの5−ヒドロキシトリプトファンまたは同一量のその誘導体、
0001mg〜500mgのトレオニンまたは同一量のその誘導体、
1mg〜500mgの朝鮮人参エキス、イチョウ葉のエキス、シリビニンのエキスまたはバーバリークコの実エキス、および
0.0001mg〜250mgの茶ポリフェノール。
【0067】
ヒトに対する経口投与については、本発明の推奨される投与量は、例えば、投薬単位あたり250mg、500mg、1000mg、1500mgまたは2000mgの調製物を含有してもよく、この調製物は、1日あたり2回または3回摂取されてもよく、そしてこの投与量は、使用者の年齢および体重に従って調整することができる。
【0068】
医薬の場合は、適切な賦形剤または担体系は、薬学的に許容できる賦形剤であることもできる。適切な担体系は、微粉末ケイ素ゲルおよびコーンスターチなどの流動助剤を含み、これらは、圧縮率を高めることができ、かつ固着することを防止することができる。例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、種々の澱粉(amylum)誘導体、二酸化ケイ素、ならびに崩壊を容易にする機能を有するいずれかの他の崩壊剤、例えばチロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、種々のデンプン(starch)誘導体。
【0069】
加えて、適切な担体系は、耐湿性能を高めるために役立つ白化防止剤(anti−blushing agent)、例えばベヘン酸グリセリルも含んでもよい。
【0070】
さらには、適切な担体系は、潤滑機能を有する潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、フレンチホワイト(French white)なども含んでもよい。
【0071】
好ましくは、適切な担体は、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、種々の澱粉(amylum)誘導体、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、フレンチホワイト、ベヘン酸グリセリルおよび白化防止剤から選択される。
【0072】
本発明は、本発明の調製物を含む、食品調製物、栄養補助食品またはフードサプリメント、機能性食品、飲料および医薬をさらに提供する。上記のとおり、当該医薬は、薬学的に許容できる賦形剤をさらに含んでもよい。
【0073】
好ましくは、本発明の医薬、機能性食品または栄養補助食品は、1日あたり0.1mg/kg〜1日あたり1g/kgの投与量で投与される。
【0074】
本発明に係る調製物は、以下の場合に使用することができる:
化学性肝損傷からの保護、
低酸素耐性の亢進、
インビボエタノール含有量の急速除去、ならびに
無酸素環境における還元および生存能の亢進。
【0075】
特に本発明の医薬は、アルコール中毒、ならびに化学性肝損傷、低酸素耐性、インビボエタノール含有量ならびに無酸素環境における還元および生存能の亢進の処置または予防のために使用することができる。
【0076】
本発明は、アルコール中毒、ならびに化学性肝損傷、低酸素耐性、インビボエタノール含有量ならびに無酸素環境における還元および生存能の亢進を処置または予防する方法であって、処置または予防を必要とする対象に、有効量の、本発明の調製物または医薬を投与することを含む方法も提供する。処置または予防を必要とする対象は哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0077】
当該調製物または医薬は、経口投与、非経口投与または局所投与される。
【0078】
経口投与のために意図される場合、本発明の医薬は、例えば錠剤、カプレット、丸剤、硬カプセル剤もしくは軟カプセル剤、トローチ剤、カシェ剤、分注可能な粉末(dispensable powder)、顆粒、懸濁液、エリキシル剤、分散液、液体の形態、またはこのような投与に対して合理的に適合している任意の他の形態にあることができる。非経口投与のために意図される場合、本発明の医薬は、例えば、静脈注射、筋肉内注射または皮下注射用の溶液の形態にあることができる。
【0079】
本発明に係る局所用調製物は、クリーム、パッチ、ゲル、軟膏剤、ローション剤、チンキ剤、スプレー、ムース、クレンジング組成物(cleansing composition)または泡沫であることができるが、これらに限定されない。本発明の局所用調製物は、溶媒または脂肪物質中の懸濁液または分散液の形態で、あるいはエマルションまたはマイクロエマルション、PETエマルション、多相エマルション、ビッカーリングエマルション(bickering emulsion)、ヒドロゲル、アルコールゲル、リポゲル(lipogel)、一相溶液もしくは多相溶液または小胞分散液、ならびにペンによって、マスクとしてもしくはスプレーとして付与することもできる他の通常の組成物の形態であることもできる。このエマルションは、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤または両性界面活性剤も含有することができる。
【0080】
驚くべきことに、本発明の調製物は頭痛または片頭痛の処置または予防においても有効であるということが観察された。
【0081】
頭痛を患っている人は、頭皮にわたって広がる神経のネットワークならびに顔、口、および咽頭の中にある特定の神経を含めた、頭部のいくつかの領域で疼痛を経験する可能性がある。頭部の筋肉ならびに脳の表面に沿っておよび脳の基部で見られる血管は、疼痛に敏感でもある。なぜなら、それらは繊細な神経繊維を含有するからである。頭蓋骨および脳自体の組織は痛みを感じる神経繊維を欠くので、これらは痛まない。侵害受容器と呼ばれる、これらの痛みを感じる神経の末端は、ストレス、筋張力、拡張した血管、および他の頭痛誘因によって刺激される可能性がある。血管性頭痛(例えば片頭痛など)は、脳の血管または脈管系の異常な機能を伴うと考えられ、筋収縮性頭痛は、顔面筋および頸筋の拘縮または緊張化を伴うようであるが、他方で、牽引性頭痛および炎症性頭痛は、脳腫瘍から発作または副鼻腔感染症までに及ぶ他の障害の症候である。いくつかのタイプの頭痛は、下記の、より重篤な障害のシグナルである:突然の重篤な頭痛;痙攣に伴う頭痛;錯乱または意識消失に付随する頭痛;頭部の打撃の後の頭痛;眼または耳の疼痛に伴う頭痛;以前は無頭痛であった人における持続性頭痛;小児における再発性頭痛;発熱に伴う頭痛;普通の生活を妨げる頭痛。
【0082】
頭痛は、血管性頭痛、筋収縮性頭痛(緊張性頭痛)、牽引性頭痛または炎症性頭痛として診断される。
【0083】
最も一般的なタイプの血管性頭痛は片頭痛である。片頭痛は、先進国では最も一般的な神経学的状態である。片頭痛は人口の約10%を冒し、糖尿病、癲癇および混合型喘息よりも蔓延している。片頭痛はただ単なる頭痛ではない。片頭痛は、患者およびその家族の生活の質にかなりの影響を及ぼす衰弱性の状態となりうる。発作は、完全に身体障害性で、患者に、最長で3日間、毎日の活動をあきらめることを余儀なくさせる可能性がある。無症候のときでさえ、患者は、次の発作を恐れて生活する可能性がある。片頭痛の疼痛は、頭部の1つの領域における強烈なパルス状または拍動性の疼痛として記述されることが多い。片頭痛の疼痛には、光および音に対する極度の感度、吐き気、および嘔吐が付随することが多い。片頭痛は、女性においては男性よりも3倍一般的である。一部の個体は、片頭痛の発症を予測することができる。なぜなら、片頭痛の発症の前に、閃光灯、ジグザグの線または視力の一時的喪失として現れる「前兆」の視覚障害が起こるからである。片頭痛をもつ人々は、食物もしくは睡眠の不足、光への露出またはホルモンの異常(女性においてのみ)によって誘発される再発性の発作を抱える傾向がある。不安、ストレスまたはストレス後のリラクゼーションも引き金を引きうる。長年、科学者は、片頭痛は頭部の中の血管の拡張および収縮に結びついていると考えていた。研究者は、今では、片頭痛は、脳の中の特定の細胞集団の活性を制御する遺伝子の遺伝的異常によって引き起こされると考えている。薬物を用いた片頭痛の処置に対処するために2つの方法がある:発作の予防または発作の際の症候の軽減。片頭痛をもつ多くの人々は、もともと癲癇およびうつのために開発された薬物を服用して将来の発作を予防すること、および発作が起こるときの発作を、疼痛を軽減し機能を回復するトリプタンと呼ばれる薬物で処置することにより、両方のアプローチを使用する。
【0084】
片頭痛の後、最も一般的なタイプの血管性頭痛は、発熱によって生じる中毒性頭痛(toxic headache)である。肺炎、麻疹、流行性耳下腺炎、および扁桃炎は、重篤な中毒性の血管性頭痛を引き起こす可能性がある疾患の例である。
【0085】
中毒性頭痛は、体内に外来の化学物質が存在することからも生じる可能性がある。
【0086】
他の種類の血管性頭痛としては、強烈な疼痛の反復的な出現を引き起こす「群発性頭痛」、および血圧の上昇から生じる頭痛が挙げられる。数週間または数ヶ月にわたって日中または夜間のほぼ同じ時期にまとまって起こる反復的な発生に因んで名付けられた群発性頭痛は、一方の眼の周りのごく軽度の疼痛として始まり、最終的には顔のうちのその眼の側に広がる。この疼痛はすぐに強まり、患者に、例えば、室内をうろうろ歩き回るかまたは椅子の中で揺られていることを余儀なくさせる。他の症候としては、鼻詰まりおよび鼻水ならびに充血した涙目を覆う眼瞼下垂が挙げられる。群発性頭痛は30〜45分間持続するが、人々が発作の最後に感じる安堵感は、通常は恐怖と混じっている。なぜなら、そのような人々は再発を予想しているからである。群発性頭痛は、不思議なことに、数ヶ月または数年の間、消える可能性がある。多くの人々は、春と秋の間に群発性発作を経験する。最悪の場合、慢性の群発性頭痛は、連続的に数年間持続する可能性がある。群発性発作は、いずれの年齢でも襲う可能性があるが、通常は、20〜40歳の間で始まる。片頭痛とは異なり、群発性頭痛は男性においてより一般的であり、家族内発症はしない。逆説的ではあるが、ニコチン(これは動脈を収縮させる)、およびアルコール(これは動脈を拡張する)の両方が、群発性頭痛を誘発する。これらの物質と群発性発作との間の正確な関連は知られていない。本発明の1つの実施形態では、皮質拡延性抑制(CSD)の抑制は報告されたことがない。
【0087】
従って、本発明は、頭痛、とりわけ片頭痛などの慢性頭痛の予防、緩和または/および処置のための、本発明に係る調製物の使用に関する。さらに、本発明は、CSDに伴うかまたは/かつCSDによって引き起こされるすべてのタイプの有痛性の状態、例えば、発作または心血管の外科手術の際の脳虚血、例えば、外傷性脳損傷、くも膜下出血または一過性全健忘(これらに限定されない)の予防、緩和または/および処置のための本発明に係る調製物の使用に関する。好ましい(しかし、これらに限定されない)ものは、CSDに伴うかまたは/かつCSDによって引き起こされる慢性頭痛、例えば片頭痛または他の形態の中枢性および末梢性の両方の慢性頭痛、例えば群発性頭痛、緊張性頭痛、または例えば薬物の過剰使用、頭部神経痛、脳外傷および血管障害もしくは代謝障害に伴う二次性頭痛(しかし、これらに限定されない)の予防、緩和または/および処置のための本発明の調製物の使用である。とりわけ、急性片頭痛の処置は好ましい。
【0088】
当業者は、本願明細書に記載される本発明は、具体的に記載されたもの以外の変更および改変を受けうるということはわかるであろう。本発明は、本発明の趣旨または本質的な特徴から逸脱しないすべてのそのような変更および改変を包含するということを理解されたい。また本発明は、個々にまたは合わせて、本願明細書中で参照されまたは示される工程、特徴、組成物および化合物のすべて、ならびにこれらの工程または特徴のいずれかの組み合わせおよびすべての組み合わせまたはいずれか2以上も包含する。それゆえ本開示は、すべての態様において例示として示されていると考えられるべきであり限定的であると考えられるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって示されており、均等の意味および範囲の中に入るすべての変更態様は本発明の中に包含されることが意図されている。
【0089】
種々の参考文献が本願明細書全体を通して引用され、それらの各々は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0090】
上記の記載は、以下の実施例を参照して、より十分に理解されるであろう。しかしながらそのような実施例は、本発明を実施する方法を例示するものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0091】
以下の実施例では、朝鮮人参エキス、イチョウ葉のエキス、バーバリークコの実エキスおよびシリビニンのエキスを、以下の方法に従って調製することができる。
【0092】
朝鮮人参エキス:紅参を破砕し、この紅参の8倍量の70%のエタノールを加え、逆抽出を2回実施し、各抽出を3時間持続させ、抽出した溶液を合わせ、この抽出した溶液を濃縮した後に噴霧乾燥を実施する。黄色がかった白色粉末が得られる;全体の朝鮮人参ジンセノサイド含有量は、UV分光測光によって測定したところによれば、80%未満ではありえない。
【0093】
イチョウ葉のエキス:イチョウ葉のエキスは、中国薬局方(2005年版)に明記されている調製方法に従って製造され、中国薬局方品質基準(Chinese Pharmacopoeia Quality Standard)(2005年版)に適合する。
【0094】
バーバリークコの実エキス:クコシを加熱した後に水で抽出し、次いで濃縮し、アルコールで沈殿させて沈殿物を得て、脱脂、除タンパク、脱色および乾燥の後に、バーバリークコの実エキスを得る。抽出率は1:10、1:15、1:20または1:30である。
【0095】
シリバム・マリアナムの種皮を、超音波抽出のために3時間、酢酸エチルとインキュベーションし、その後、抽出した溶液を除去し、そしてこの手順を3回繰り返す。濃縮物を2回、エタノールを用いて結晶化し、その後、アセトン−石油エーテル(90:10)を用いて再結晶し、シリビニンを80〜90%の濃度で得る。
【0096】
実施例1
異なる製剤を通しての、マウスの急性脳虚血低酸素症生存時間を提供する。
投与量:一群あたり、1日あたり800mg/kg。再蒸留水によって試験試料を調製し、7日間連続的に、口を通して胃の中へと流し込む。
【0097】
試験方法:マウスを、それぞれ、最後の胃への流し込みの1時間後に犠牲にし、マウスの犠牲の時からマウスが口を通してあえぐのを止める時までの時間を、秒計測器を用いて記録する。
【表1】

【0098】
実施例2
混合物調製の前に、原料、増量剤および助剤物質を、それぞれ、80メッシュのふるいを用いて篩過した。配合割合に従って、シトルリン、オルニチン塩酸塩、朝鮮人参エキス、イチョウ葉のエキスおよびナツメ(ziziphus jujube)のエキスなどの原料、ならびにベヘン酸グリセリルおよびヒドロキシプロピルセルロースなどの助剤物質を、配合比の半分の量を秤量して、10〜15分間混合し、柔らかい物質を調製するために80%のエタノール溶液を加える。この柔らかい物質を、16メッシュのふるいを通して粒子へと製造する。この粒子を60〜65度の温度で乾燥する。この粒子を対照し、流動助剤である微粉末ケイ素ゲル、潤滑剤であるステアリン酸マグネシウムおよび残りの崩壊剤ヒドロキシプロピルセルロースを充填し、次いでこの混合物を均一に混合し、圧力をかけて錠剤にし、コーティングする。
【0099】
コーティング物質としては、Shanghai Lekang Coating Technology Co.,Ltdによって供給されているコーティング粉末85G60997を採用する。調製方法は以下の工程を採用する:1000mlの脱イオン水をきれいな、蓋なしのビーカーに加え、撹拌装置を起動させ、回転速度を、100〜300rpmであるように確保する。一定の撹拌速度の条件下で、180gのコーティング物質を、5分間のうちに、ゆっくり最後まで加える。添加後、もとの撹拌速度を維持し、さらに45分間撹拌した後に必要なコーティング液が得られる。
【0100】
各錠剤は600mgの重さであり、272mgのシトルリン、128mgのオルニチン塩酸塩、朝鮮人参エキス、イチョウ葉のエキス、シリビニンのエキスなどを含有する(表2を参照)。
【表2】

【0101】
実施例3
マウスの不均衡実験を実施し、3分以内にロータロッドから落下しなかったマウスを任意に対照群および試験群へと分ける。試験群については、1200mg/kgの本発明の組成物が胃への流し込みとして投与され、他方で、対照群については、1200mg/kgの生理食塩水が胃への流し込みとして投与される。15分後、対照群および試験群のマウスに、胃への流し込みとして56%の白酒(Chinese distillate spirits)を流し込み、胃への流し込みの投与量は8ml/kgである。対照群および試験群のマウスを、エタノールを投与されてから10分、30分、90分および120分後に、15rpmの速度のロータロッド型疲労度測定器に、各測定器について1匹のマウスとしてそれぞれ配置し、3分以内にロータロッドから落下しなかったマウスの数を記録する。
【0102】
結論:2つの群の間で有意差が認められ、組成物摂取後にロータロッドから落下しなかったマウスの数は、驚くべきことに、対照群の数よりも高い。
【表3】

【0103】
実施例4
マウスの自発的活動実験を実施する。マウスを、任意に投与群およびモデル群に分ける。800mg/kgの当該組成物および9.0g/Lの塩化ナトリウム注射液をそれぞれマウスの胃へと流し込む。15分後、すべてのマウスに、胃への流し込みとして18ml/kgの56%の白酒を流し込み、20分、90分および120分後に、自発的活動測定器に、各測定器について1匹のマウスとして配置し、1分間の順応を置いて、5分間のうちの活動時間を自発的活動指数として記録する。
【0104】
結論:2つの群は明確な差を有し、投与群の中の当該組成物を投与されたマウスの自発的活動は、驚くべきことに、モデル群の自発的活動よりも高い。
【表4】

【0105】
実施例5
マウスの中毒抑制および中毒処置実験を実施する。中毒抑制実験:20匹のマウス(雄および雌が半分半分)を3日間飼育し、各群に10匹のマウスとして投与群およびモデル群へと分ける。各群の中のマウスは、6時間飲食が禁じられ、投与群については800mg/kgの当該組成物が胃への流し込みとして投与され、他方で、モデル群については同一量の9.0g/Lの塩化ナトリウム注射液を経口で流し込む。15分後、2つの群のすべてのマウスに、胃への流し込みとして18ml/kgの56%の白酒を流し込み、マウスの正向反射の喪失から正向反射の回復までに要する時間を記録する。
【0106】
中毒処置実験:マウスの数、群分けおよび実験方法は上記の実験と同一であるが、しかしながら、医薬の流し込み時間および酒の流し込み時間を入れ替え、マウスの正向反射喪失から正向反射回復までに要する時間を記録する。
【0107】
結論:2つの群は明確な差を有し、投与群は、驚くべきことに、モデル群よりも良好である。
【表5】

【0108】
実施例6
マウスの全血エタノール濃度を測定する。20匹のマウスを、各群に10匹のマウスとしてモデル群および投与群へと分ける。最初に、モデル群の中のマウスに対し、処置群の量と同一量の9.0g/Lの塩化ナトリウム注射液を用いて胃への流し込みを実施し、投与群の中のマウスに、1200mg/kgの当該組成物を流し込む。60分後、2つの群のマウスすべてに、16ml/kgの56%の白酒を流し込む。0.1mlのヘパリンナトリウムを5mlの各ヘッドスペースバイアルに加え、酒の流し込みの120分後、2つの群のマウスを、血液を採取するために犠牲にし、0.6mlの血液を正確に抜き取り、液体移動用銃(liquid−transferring gun)を用いて上記ヘッドスペースバイアルへと移動し、5μlのノルマルブチルアルコールを内部標準として加え、キャッピング装置によって血液を素早く密封し、均一に振盪し、80度の一定温度の水浴の中で20分間揮発させ、ヘッドスペースバイアルの中の上層の空気を1mlのガラスシリンジで抜き取り、ガスクロマトグラフに注入し、エタノール含有量を検出する。
【0109】
ガスクロマトグラフの条件:RTX−5 クロマトグラフィーカラム、膜厚0.25μm、カラム長さ30m、内径0.25nm、カラム温度40℃、試料注入温度140℃、検出器温度200℃、支持ガスN2、カラム流量2ml/分、スプリット比1:9.0、H2圧力 50kPaおよび空気圧力 50kPa。
【0110】
結論:2つの群は明確な差を有し、投与群における全血中の平均エタノール含有量は、驚くべきことに、モデル群の全血中の平均エタノール含有量よりも低い。
【表6】

【0111】
実施例7:
肝臓および胃のADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)の測定
20匹のマウスを、各群に10匹のマウスとして処置群およびモデル群へと分ける。各群の中のマウスは、16時間飲食が禁じられる。処置群のマウスに800mg/kgの当該組成物を流し込み、対照群の中のマウスに、同一量の9.0g/Lの塩化ナトリウム注射液を流し込む。15分後、2つの群のマウスの胃に、16ml/kgの56%の白酒を流し込む。120分後、マウスの肝臓および胃を取り出し、関連する試薬を、ADH KitおよびCoomassie Brilliant Blue Protein Kitの取扱説明書に従って調製し、マウスの肝臓および胃の質量を、秤を用いて1000分の1の精度で正確に秤量し、9.0g/Lの塩化ナトリウム注射液を、1:10の対質量の体積に従って加え、ガラスホモジナイザーによって100g/Lの組織ホモジネートへと調製し、2500r/分の速度で10分間遠心分離し、上清液を、微量添加試料注入装置(micro−adding sample injector)によって吸引する。この上清液を2つの部分に分け、1つは1:9の割合に従って9.0g/Lの塩化ナトリウム注射液によって組織ホモジネートへと希釈し、この上清液の中のADH活性(1mgあたりのホモジネートタンパク質のユニットの数(ユニット))を、7520型紫外分光光度計を用いて測定し、他方は、肝臓および胃の中のタンパク質含有量を測定するために使用する。
【0112】
結論:2つの群は明確な差を有し、投与群のADH活性は、驚くべきことに、モデル群のADH活性よりも低い。
【表7】

【0113】
実施例8:
人体アルコール濃度試験 − 空気吹き込み方法
20〜29歳の男性群の中に10人の男性がおり、20〜29歳の女性群の中に10人の女性がおり、アルコール濃度試験を、当該組成物を摂取しない、飲酒の15分前に当該組成物を摂取する、および飲酒直後に当該組成物を摂取するに関して3回実施し、摂取されるべき当該組成物の投与量は各回とも1人あたり1200mgである。各人は、各回、50mlの56%の白酒を摂取し、各人から吐き出される空気を、飲酒後15分、30分、45分、60分、90分および120分にアルコール濃度試験器によって測定する。
【0114】
結論:当該組成物を摂取した後の人のアルコール濃度は、驚くべきことに、当該組成物を摂取しない人のアルコール濃度よりも低く、男性群と女性群との間の差は大きくなく、飲酒前の投与の効果は、飲酒後の投与の効果よりも良好である。
【表8】

【表9】

【0115】
実施例9:
本発明の組成物による動物の標準圧力低酸素症耐性機能亢進実験。
【0116】
実験動物:144匹の、ICR種のセカンドグレードの健康な雌マウスを選択し、体重に従って、各群に12匹のマウスとして、任意に4つの群へと分ける。
【0117】
投与量設計:400mg/kg/d(体重1キログラムあたり、1日あたりの成体について推奨される摂取量の10倍に等しい)、800mg/kg/dおよび1200mg/kg/dの投与量の3投与量群を設計し、同時に正常対照群を手配する。試験試料を再蒸留水によって調製し、20ml/kgb wtの投与量を、1日あたり1回、各群のマウスの胃に連続30日間流し込む。同一量の再蒸留水を、正常対照群のマウスの胃へと流し込む。
【0118】
実験方法:マウスを、それぞれ、最後の胃への流し込みの1時間後、5gのソーダ石灰を入れた250ml(±1mlの容積誤差)のすりガラスの共栓付きの瓶の中に配置し、この瓶の口を、ミネラルバター(mineral butter)を塗布することにより密封し、計時をすぐに実施し、呼吸停止を指標として捉え、マウスの標準圧力下での低酸素症耐性および生存時間を観察して記録し、初期データの等分散性をSPSS統計ソフトウェアによって実施し、分散が等しいとき、多くの実験群および対照群の間の平均数をとることによる対比較統計を実施する。
【0119】
実験結果:この実験の前後での各群の動物の体重および生存時間を表10に示す。この実験の前後での動物の体重に関しては差がない(P>0.05)ことがわかる。対照群と比較して、高投与量群の動物の低酸素症耐性生存時間は、対照群の低酸素症耐性生存時間よりも高く、これにより顕著な差がある(P<0.01)。
【表10】

【0120】
実施例10:
本発明の組成物による動物亜硝酸ナトリウム中毒生存亢進実験。
【0121】
投与量設計:400mg/kg/d(体重1キログラムあたり、1日あたりの成体について推奨される摂取量の10倍に等しい)、800mg/kg/dおよび1200mg/kg/dの投与量の3投与量群を設計し、同時に正常対照群を手配する。試験試料を再蒸留水によって調製し、20ml/kgb wtの投与量を、1日あたり1回、各群のマウスの胃に連続30日間流し込む。同一量の再蒸留水を、正常対照群のマウスの胃へと流し込む。
【0122】
実験方法:最後の胃への流し込みの1時間後、亜硝酸ナトリウム(0.1ml/10g(体重)の注入量)を、それぞれ220mg/kg bwの投与量に従って各群のマウスの腹腔に注入し、計時をすぐに実施し、呼吸停止を指標として捉え、マウスの生存時間を記録する。
【0123】
実験結果:この実験の前後での各群の動物の体重および生存時間を表11に示す。対照群と比較して、この実験の前後での2つの群の動物の体重に関しては差がなく(P>0.05)、各投与量群のマウスの生存時間は延びているが有意差はない(P>0.05)。
【表11】

【0124】
実施例11:
当該組成物による、動物急性脳虚血低酸素症生存時間延長実験。
【0125】
投与量設計:400mg/kg/d(体重1キログラムあたり、1日あたりの成体について推奨される摂取量の10倍に等しい)、800mg/kg/dおよび1200mg/kg/dの投与量の3投与量群を設計し、同時に正常対照群を手配する。試験試料を再蒸留水によって調製し、20ml/kgb wtの投与量を、1日あたり1回、各群のマウスの胃に連続30日間流し込む。同一量の再蒸留水を、正常対照群のマウスの胃へと流し込む。
【0126】
実験方法:各群のマウスを、それぞれ、最後の胃への流し込みの1時間後に犠牲にし、マウスの犠牲の時からマウスが口を通してあえぐのを止める時までの時間を、秒計測器を用いて記録する。
【0127】
この実験の前後の動物の体重およびマウスの犠牲の時からマウスが口を通してあえぐのを止める時までの時間を表12に示す。この実験の前後での2つの群の動物の体重に関しては差はない(P>0.05)。すべての他の投与量群と比較して、対照群の動物の犠牲の時から動物が口を通してあえぐのを止める時までの時間は長くなり、中投与量群および高投与量群のあいだの動物のあえぎ停止時間は、非常に驚くべき差を有している(P<0.01)。
【表12】

【0128】
実施例12:
当該組成物による、アルコール性肝損傷の補助的保護機能実験
人体についての当該組成物の摂取量は、毎日、1人あたり2400mgである。
【0129】
実験動物:50匹の、体重18〜22gのICR種の健康なセカンドグレードの雌マウスを選択し、体重に従って、各群に10匹のマウスとして、任意に5つの群へと分ける。
【0130】
投与量設計:200mg/kg/d、400mg/kg/d(体重1キログラムあたり、1日あたりの成体について推奨される摂取量の10倍に等しい)、および1200mg/kg/dの投与量の3つの試料投与量群、ブランク対照群およびモデル対照群を設計する。試料投与量群における試験対象を再蒸留水を用いて調製し、ブランク対照群およびモデル対照群における試験対象を再蒸留水を用いて投与し、20ml/kgb wtの投与量を、それぞれ1日あたり1回、各群のマウスの胃に連続30日間流し込む。10ml/kg b.wtの65%のエタノールを、試験対象が最後に投与されたあと2時間後に、それぞれモデル対照群および試料投与量群のマウスの胃に流し込み、再蒸留水をブランク対照群のマウスに投与し、6時間絶食させた後に、動物を、種々の生化学的指標測定および肝臓の病理学的組織学的検査のために犠牲にする。
【0131】
実験方法
生化学的指標の測定:0.2gの肝臓組織を採取し、肝臓ホモジネートへと処理する。この肝臓ホモジネートを3000rpmの速度で10分間遠心分離し、次いで上清液を除去する。このホモジネートの上清液の中のTG含有量を、生化学測定器を用いて測定し、このホモジネートの上清液の中のMDA、GSHおよびタンパク質レベルを、試薬キットに与えられた方法に従って、手作業で測定する。
【0132】
肝臓の病理学的組織学的検査:肝臓左葉を採取し、4%のホルムアルデヒドを用いて固定し、この肝臓を、パラフィンおよび氷を介して小片に切断し、HEおよびSudan IIIによって染色し、顕微鏡を通して検査し、等級付けした。
【0133】
データ処置:マウスの体重、TG、MDA、GSHおよび他のデータがすべての測定データであり、正規性検定および分散の均一性検定(homogeneity test for variance)をSPSS統計ソフトウェアによって初期データに対して実施し、MDAおよびTGのデータを、そのデータが等分散性の必要条件を満たすことを確実にするように対数変換し、次に、ソルベント分析を一元配置分散分析(ANOVA)の方法によって実施し、データ(Pが0.05よりも大きい)に対する統計処理を、多くの実験群と対照群との間の平均数をとることにより、対比較統計によって実施する。病理学的組織学的検査の結果を、順位和検定によって統計処理する。
【0134】
実験結果:動物の体重に対する組成物の影響を表14.1に示す。すべての群において、この実験の前後でのマウスの体重に関しては、真の差はない(P>0.05)。これは、当該組成物はマウスの体重増加に対して特に影響を与えないということを示す。
【0135】
表14.2は、マウスの肝臓ホモジネートの中のマロンジアルデヒド(MDA)含有量に対する当該組成物の影響を示す。この表に示すように、モデル対照群のマウスの肝臓ホモジネート中のMDA含有量は増加し、ブランク対照群と比較して有意差を有し(P<0.01)、これは、モデリングが成功しているということを示す。当該組成物では、モデル対照群と比較して、高投与量群のマウスの肝臓ホモジネート中のMDAは減少し、重大な差を有し(P<0.05)、これは、高投与量群のアルコール性肝損傷を有するマウスの肝臓ホモジネート中のMDA含有量は、本発明の組成物を採用することにより低下させることができるということを示す。
【0136】
表14.3は、マウスの肝臓ホモジネート中の還元型グルタチオン(GSH)含有量に対する本発明に係る組成物の影響を示す。実際、モデル対照群のマウスの肝臓ホモジネート中のGSH含有量は低下し、ブランク対照群と比較して有意差を有し(P<0.01)、これはモデリングが成功しているということを示す。モデル対照群と比較して、すべての投与量群のマウスの肝臓ホモジネート中のGSH含有量は本発明の組成物を採用することにより高められ、差はそれぞれ有意である(P<0.05、P<0.01)。これは、本発明の組成物がアルコール性肝損傷を有するマウスの肝臓組織の中のGSH含有量を高めることができるということを示す。
【0137】
表14.4は、マウスの肝臓ホモジネート中のグリセリントリラウレート(YG)含有量に対する本発明に係る組成物の影響を示す。
【0138】
表14.4に示すように、モデル対照群のマウスの肝臓ホモジネート中のTG含有量は上昇し、ブランク対照群と比較して有意差を有し(P<0.01)、これは、モデリングが成功しているということを示す。モデル対照群と比較して、高投与量群のマウスの肝臓ホモジネート中のTG含有量は当該組成物を採用することにより低下し、有意差を有し(P<0.01)、これは、当該組成物は、高投与量群のアルコール性肝損傷を有するマウスの肝臓ホモジネート中のTG含有量を低下させることができるということを示す。
【0139】
表14.5は、マウスの肝臓組織の病理的変化に対する本発明に係る組成物の影響を示す。マウスの、異なる程度の肝細胞脂肪変性がモデル対照群で生成し、ブランク対照群と比較して有意差を示し(P<0.01)、これは、モデリングが成功しているということを示す。モデル対照群と比較して、すべての投与量群のマウスの肝細胞脂肪変性度は、本発明の組成物を採用することにより低下し、有意差を有する(P<0.01)。これは、当該組成物は、すべての投与量群のアルコール性肝損傷を有するマウスの肝細胞脂肪変性度を低下させることができるということを示す。
【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【0140】
実験結果をまとめると、肝臓MDA、GSHおよびTG含有量および病理学的組織学的検査という4つの指標は、本発明の組成物を採用することにより、改善する。これは、本発明の組成物がアルコール性肝損傷の補助的保護機能を提供するということを確認する。
【0141】
実施例13:
本発明に係る組成物を、再発性の片頭痛を患う8人のボランティアにおいても試験し、当該組成物を毎日3ヶ月間摂取した後の対象によって報告されたところによると、本発明に係る組成物は、片頭痛の出現の頻度、強度および継続期間を低下させることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に適切な賦形剤とともに、シトルリンおよびオルニチン塩酸塩および/またはこれらの誘導体からなるアミノ酸を含有する組成物(a)と、朝鮮人参または朝鮮人参エキス、イチョウ葉エキスおよびシリビニンエキスの混合物を含有する組成物(b)との組み合わせを含む、調製物。
【請求項2】
アミノ酸を含有する組成物(a)は、シトルリン、およびオルニチン塩酸塩、および/またはこれらの誘導体をそれぞれ0.1%〜99%:99%〜0.1%の重量比で有する、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
組成物(b)は、朝鮮人参または朝鮮人参エキス、イチョウ葉エキスおよびシリビニンエキスを、それぞれ0.01%〜99%、0.01%〜99%および0.01%〜99%の重量比で有する、請求項1に記載の調製物。
【請求項4】
アミノ酸を含有する組成物(a)は、アルギニン、オルニチン、トレオニン、トリプトファンもしくは5−ヒドロキシトリプトファンおよび/またはこれらの誘導体から選択されるさらなるアミノ酸をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項5】
前記加えられたアミノ酸と、シトルリンおよびオルニチン塩酸塩および/またはこれらの誘導体からなるアミノ酸を含有する組成物(a)との間の重量比は、それぞれ0.0001%〜50%: 99.9999%〜50%である、請求項4に記載の調製物。
【請求項6】
組成物(b)は、バーバリークコの実エキスおよび茶ポリフェノールから選択されるさらなる植物エキスをさらに含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項7】
重量比は、それぞれ
前記朝鮮人参または朝鮮人参エキスの混合物は0.001%〜99%であり、
前記イチョウ葉エキスは0.001%〜99%であり、
前記シリビニンエキスは0.001%〜99%であり、
前記バーバリークコの実エキスは0.0001%〜70%であり、
前記茶ポリフェノールは0.0001%〜60%である、
請求項6に記載の調製物。
【請求項8】
前記適切な賦形剤は薬学的に許容できる賦形剤である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項9】
前記薬学的に許容できる賦形剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、種々の澱粉誘導体、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、フレンチホワイト、ベヘン酸グリセリルおよび白化防止剤から選択される、請求項8に記載の調製物。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の調製物を含む食品調製物。
【請求項11】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の調製物を含む栄養補助食品。
【請求項12】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の調製物を含む機能性食品。
【請求項13】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の調製物を含む飲料。
【請求項14】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物を含む医薬。
【請求項15】
前記医薬または栄養補助食品は、1日あたり0.1mg/kg〜1日あたり1g/kgの投与量で投与される、請求項14に記載の医薬または請求項11に記載の栄養補助食品。
【請求項16】
化学性肝損傷からの保護、
低酸素耐性の亢進、
インビボエタノール含有量の急速除去、および
無酸素環境における還元および生存能の亢進
における請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の調製物の使用。
【請求項17】
アルコール中毒を処置または予防する方法における使用のための請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項18】
アルコール中毒、化学性肝損傷、低酸素耐性、インビボエタノール含有量および無酸素環境における還元および生存能の亢進を処置または予防する方法であって、処置または予防を必要とする対象に、有効量の、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物または請求項14に記載の医薬を投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記調製物または前記医薬は経口投与、非経口投与または局所投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物または請求項14に記載の医薬は、1日あたり0.1mg/kg〜1日あたり1g/kgの投与量で投与される、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
処置または予防を必要とする前記対象は哺乳動物、好ましくはヒトである、請求項18から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
カプセルもしくは錠剤などの固体製剤の形態、または液体もしくは油性溶液の形態にある、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項23】
製造されたカプセル剤または錠剤は、投薬単位あたり、
80mg〜816mgのシトルリンまたは同一量のその誘導体、
50mg〜512mgのオルニチンまたは同一量のその塩もしくは誘導体、
0.0001mg〜430mgのアルギニンまたは同一量のその誘導体、
0.0001mg〜310mgのトリプトファンまたは同一量のその誘導体、
0.0001mg〜450mgの5−ヒドロキシトリプトファンまたは同一量のその誘導体、
0001mg〜500mgのトレオニンまたは同一量のその誘導体、
1mg〜500mgの朝鮮人参エキス、イチョウ葉のエキス、シリビニンのエキスまたはバーバリークコの実エキス、および
0.0001mg〜250mgの茶ポリフェノール
を含む、請求項22に記載の調製物。
【請求項24】
頭痛もしくは片頭痛を処置または予防する方法における使用のための請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物。

【公表番号】特表2013−509395(P2013−509395A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535998(P2012−535998)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054885
【国際公開番号】WO2011/051900
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512110754)モデュテック エス.エー. (1)
【出願人】(512110765)ハンジョウ アダメルク ファームラブス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】