説明

アミノ酸の分散方法

コーティングされたタンパク性物質は、タンパク性物質を20%未満のトリグリセリドを含む脱油されたリン脂質、又はその混合物と接触させることによって製造することができる。脱油されたレシチンのコーティングはタンパク性物質の合計の0.1〜1.5重量%である。タンパク性物質は疎水性で、特に1.0kJ/molより高い疎水性を有するアミノ酸である。具体的には、アミノ酸はロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、トリプトファン及び/又はメチオニンである。コーティングされたアミノ酸は食品や薬剤に組み込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸及びペプチドをコーティングする方法及び分散性のアミノ酸とペプチド製剤を製造する方法に関する。本発明はまた、このように製造されたコーティングされた物質及びかかるコーティングされた物質を含む栄養製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の障害又は疾患に苦しむ患者に与えるための栄養組成物は、特定のアミノ酸又はペプチドを使用し、栄養価を高める必要が頻繁にある。例えば、ロイシンは筋肉組織に活力を与えるよう意図された組成物において重要な成分である。例として、国際公開第01/58284号を参照されたい。英国特許出願公開第2,292,522号は、とりわけメチオニン、バリン、ロイシン、トレオニン、フェニルアラニン、リジン、イソロイシン及びトリプトファンを含む、免疫システムを支持するための調製物を開示している。国際公開第2004/103383号は慢性的な創傷治療のためのロイシン及びグリシンの使用を開示している。
【0003】
しかしながら、アミノ酸のいくつかは不十分な溶解性、湿潤性、沈下性又は分散性を有したり、又は味が悪かったり、或いはそれらが組み合わさっている。このことは特に、ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン及びトリプトファン等の大型の中性(疎水性)アミノ酸、並びにメチオニン及びシステイン(又はシスチン)等の含硫アミノ酸に当てはまる。結果として、そのような組成物の製造は溶解の問題に妨げられ、その組成物は味が悪いという理由により受け入れられにくい。
【0004】
この問題を克服するために開発された先行技術における方法は、かかるアミノ酸のカプセル化を含む。例として、任意にレシチンと混合した油又は他の比較的疎水性の物質の使用がある。
【0005】
特開平2−042967号は、界面活性剤としてグリセロールアセテート又はレシチンのエタノール溶液又はアセトン溶液によりアミノ酸又は薬剤をコーティングし、その後、油及び再度界面活性剤によるアミノ酸又は薬剤のコーティングについて記載している。米国特許第6,506,422号はフェニールケトン尿症患者のための、チラミンを含む遊離アミノ酸と共にタンパク源としてカゼイングリコマクロペプチドを含有する栄養処方を開示する。かかるアミノ酸は、水素化されたヤシ油等の食用脂でカプセル化できる。欧州特許出願公開第363,879号は、糖果とでんぷん又はゴム等のゲル化剤とを混合することで遊離アミノ酸の味をマスキングすることを提案している。米国特許出願公開第2004/0148013号は、有機亜鉛塩及び高融点脂肪を使用して、アミノ酸等の食品材料をコーティングすることを教示している。欧州特許出願公開第388,237号は約55%の砂糖、約40%の硬化脂肪及び約0.6%のレシチンを含むアミノ酸のコーティングを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第01/58284号
【特許文献2】英国特許出願公開第2,292,522号
【特許文献3】国際公開第2004/103383号
【特許文献4】特開平2−042967号
【特許文献5】米国特許第6,506,422号
【特許文献6】欧州特許出願公開第363,879号
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0148013号
【特許文献8】欧州特許出願公開第388,237号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、疎水性のアミノ酸又はペプチドのアミノ酸調製物の改良された製造方法を提供し、結果として、アミノ酸及びペプチドのより良い分散性を導き、結果として生じた食品がより良く受け入れられている。トリグリセリドの低比率は、より効果的な粒子の湿潤性及び溶解性をもたらす。増加された分散性及び随伴効果はまた、プロセス中の貴重な物質の損失の削減にも繋がる。
【0008】
したがって、本発明は、トリグリセリド等の疎水性物質の含有量が低いリン脂質組成物を使用して粒子をコーティングすることでタンパク性物質の分散性及び/又は湿潤性を増加させる方法、及び/又はタンパク性物質の粘着性を減少させる方法に関する。
【0009】
本発明はまた、本発明の方法を使用して得られるコーティングされたタンパク性物質に関する。
【0010】
さらに、本発明は添加されたタンパク性物質、特にアミノ酸を含有する栄養組成物の製造の方法に関し、その方法において、コーティングされたアミノ酸又はタンパク質が、例えば、脂質、炭水化物、タンパク質、ビタミン、ミネラル及び任意でさらなる活性成分を含む他の食物成分と混合される。また、本発明は前記コーティングされたアミノ酸又はタンパク質を含有する栄養製品に関する。
【0011】
[本発明の詳細な説明]
疎水性のタンパク性物質のコーティングされた粒子を製造する本発明の方法は、タンパク性物質を脱油されたリン脂質組成物と接触させる特徴がある。本発明の方法及び製品の好ましい実施態様は添付の特許請求の範囲に要約され、以下にさらに詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
なし
【0013】
[タンパク性物質]
本明細書における「タンパク性物質(proteinaceous material)」は、あらゆるタンパク質、ペプチド、アミノ酸及びアミノ酸エステルと理解され、パルミチン酸、ミリスチン酸、炭水化物等と共役したタンパク質等の糖化タンパク質及びリポタンパク質等の、さらに少量の他の物質(例えば25重量%未満、好ましくは5重量%未満)を含むことができる。かかる他の物質は、タンパク性部分のみがタンパク性物質として見なされる。好ましくは、かかるタンパク性物質は10個以下のアミノ酸残基の長さの鎖を有する遊離アミノ酸及び/又はペプチドを少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%を含有する。すなわち、アミノ酸残基が10個を超えるペプチド及びタンパク質が20重量%未満、好ましくは10重量%未満である。より好ましくは、遊離アミノ酸及びジペプチドの合計の少なくとも60重量%、特には少なくとも80重量%、さらに少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%である。特別な実施態様においては、タンパク性物質は遊離アミノ酸を少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは95重量%含む。特には、原則的に遊離アミノ酸のみを含む。コーティング前には、タンパク性物質が結晶形を有していることが好ましい。
【0014】
ここでは、「遊離アミノ酸」はアミノ酸自体、それらの塩若しくはエステル、又はN−アセチルシステイン又はN,N−ジメチルグリシン等のそれらのN−アシル化誘導体若しくはN−メチル化誘導体を意味する。好ましくは、遊離アミノ酸はそれ自体又はそれらの塩として使用される。
【0015】
かかるアミノ酸は、特に疎水性のアミノ酸である。すなわち、Eisenburg et al.(Faraday Symp. Chem. Soc. 17:109-120(1982) )の分類によれば、アミノ酸は正値を有する疎水性側鎖(SCH)を有する。Eisenburg et al.による疎水性側鎖を下記表に示す。単位はkJ/molである。
【0016】
【表1】

【0017】
本発明において、使用に特に適しているのは1.0より高いSCHを有する疎水性のアミノ酸である。すなわち、メチオニン、トリプトファン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン及びイソロイシンである。これらは120秒より長い湿潤時間を有するため、他の食物成分への溶解又は分散を特に困難にしている。湿潤性(湿潤時間)は国際IDFスタンダード87:1979法を用いて測定することができる。
【0018】
したがって、本発明によるとコーティングされるタンパク性物質は1.0kJ/molより高い疎水性を有することが好ましい。これはアミノ酸自体又はジペプチドとして、又はもし存在するのであればそれ以上のアミノ酸がペプチド結合したペプチド等の全てのアミノ酸のSCH平均(数値)が1.0であることを意味している。より好ましくは、SCH平均が少なくとも1.2である。特に、タンパク性物質は、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン及びバリン及び/又は前記アミノ酸を数で少なくとも50%含むペプチドから選択されるアミノ酸をタンパク質成分の合計に対して少なくとも25重量%含む。代替案として又は追加で、タンパク性物質内に存在する全てのアミノ酸の好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも60%が、1.0より高いSCHを有するアミノ酸、及び/又はタンパク性物質内に存在する全てのアミノ酸の少なくとも40%、特に好ましくは少なくとも50%が、2.0より高いSCHを有するアミノ酸である。
【0019】
図1は、アミノ酸の湿潤性に対する本発明のコーティング方法の著しい効果を示している。チロシン、グリシン及びアラニンを使用した結果(図の左側)は、十分な親水性を有するアミノ酸は湿潤時間が短く、コーティングの湿潤時間に対する影響はないか、ほんのわずかであることを示し、メチオニン、トリプトファン、ロイシン、バリン、フェニルアラニン及びイソロイシンを使用した結果(図の右側)は、これら疎水性のアミノ酸のコーティングにより約120秒から50秒未満にまで湿潤時間が大幅に短縮されることを示している。
【0020】
表に記載されたアミノ酸に加え、メチルグリシン又はジメチルグリシン等の他の疎水性のアミノ酸も同様に本発明の方法によって成功裏にコーティングすることができる。本発明の方法を使用してコーティングされるペプチドは、アミノ酸のアミノ酸残基数の少なくとも2/3が正値であるSCH、特に1.0より大きいSCHを有するものからなる。
【0021】
コーティングされるタンパク性物質は単一成分、例えば、単結晶の疎水性アミノ酸であってもよい。また、かかる成分の混合物であってもよい。さらに、かかる疎水性成分と高極性成分との混合物を本発明にしたがってコーティングすることができる。特に、50〜90重量%の疎水性アミノ酸と、50〜10重量%の、グルコース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、マルトース又はマルトデキストリン等の炭水化物、より好ましくはスクロース又はトレハロース等の非還元の炭水化物のうちの1つとの混合物をコーティングすることができる。他の実施態様では、極性成分が10%未満であると測定された極性成分が実質的に欠如している状況下で、疎水性のタンパク性成分をコーティングすることが好ましい。
【0022】
[リン脂質組成物]
本明細書中で使用される「リン脂質組成物」は、次に規定される、例えば少なくとも40重量%又は具体的には少なくとも50重量%のかなり大きな割合のリン脂質を含むあらゆる組成物である。かかるリン脂質組成物は、さらにリン脂質以外の脂質、例えば、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、脂肪酸、糖脂質、炭水化物、水等を含んでもよい。しかしながら、重量%が示されている箇所では、無水ベースで示されており、すなわち水の不在下であることを仮定して示されている。リン脂質組成物の実例はレシチンである。中性脂肪(トリグリセリド等)と水は、通常レシチンのアセトン可溶性部分の一部であるが、極性脂質(リン脂質、糖脂質)は通常アセトン不溶性である。リン脂質組成物は好ましくは水に分散させて使用される。
【0023】
「脱油されたリン脂質組成物」は、脂質の割合が低減された部分を有するリン脂質組成物であり、具体的にはトリグリセリドである。好ましくは、中性脂肪、すなわちトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド及び脂肪酸、の脱油されたリン脂質組成物に対する含有量が30重量%未満、より好ましくは20重量%未満、最も好ましくは10重量%未満である。かかるトリグリセリドの含有量は、脱油されたリン脂質組成物に対して好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満である。かかるリン脂質組成物はまた炭水化物を含んでいてもよいが、脱油されたリン脂質組成物に対して好ましくは20重量%以下であり、具体的には2〜10重量%である。さらに、リン脂質組成物は以下に規定する糖脂質を含んでいてもよい。例えば、脱油されたリン脂質組成物に対して1〜50重量%、特に5〜35重量%である。本発明で使用される脱油されたリン脂質組成物におけるリン脂質の含有量は、好ましくは少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%である。また、かかる組成物が以下に規定する糖脂質を含有する場合、リン脂質の割合はより低くてもよく、例えば、少なくとも45重量%又は特に55〜75重量%である;その場合には、リン脂質及び糖脂質の合計の割合は好ましくは70〜98重量%、より好ましくは80〜95重量%である。
【0024】
存在するかもしれない炭水化物を無視し、もし糖脂質が存在しなければ、脱油されたリン脂質組成物は好ましくは少なくとも68重量%のリン脂質、より好ましくは少なくとも78重量%のリン脂質を含む。代替案として、全ての炭水化物を無視すると、リン脂質及び糖脂質の合計の割合が好ましくは73〜99重量%であり、より好ましくは83〜96重量%である。後者の場合、糖脂質の含有量が脱油されたリン脂質組成物(リン脂質、糖脂質及び中性脂肪)に対して1〜52重量%であってもよく、具体的には5〜37重量%がよい。トリグリセリド含有量は好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、特には5重量%未満である。組み合わされた中性脂肪含有量は各々31重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満である。
【0025】
本発明の目的のために、「リン脂質」はリン酸基と少なくとも1つの長鎖炭化水素基、具体的には脂肪酸残基(長鎖は少なくとも15炭素原子を意味する)とを有するあらゆる化合物である。具体的には、リン脂質は、リン酸基の一方に、通常相互接続するグリセリル基とともに、1又は2つの長鎖炭化水素基を含み、任意でリン酸基の他方に極性基を含む。リン脂質は、好ましくは1又は複数のホスファチジルコイン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、任意でホスファチジン酸(PA)、植物糖脂質及びスフィンゴミエリンを含むスフィンゴリン脂質を含む。すなわち、リン脂質は、リン脂質内のジグリセリド残基がセラミドユニットにより置換され、リン酸基上にコリン基、イノシトール、その他の糖残基又はその他の極性基を有するリン脂質である。また、リゾリン脂質(加水分解されたリン脂質)、すなわち、1分子あたり1つだけ長鎖脂肪酸残基を有するリン脂質が適している。かかるリン脂質は、ホスファチジルコリン等の単一成分、又はより一般的には成分の混合物でもよい。
【0026】
(脱油された)リン脂質組成物に存在してもよい「糖脂質」は、少なくとも1つの長鎖炭化水素ユニットと、硫酸化されてもよい少なくとも1つの糖ユニット(「スルホ脂質」)とを含む化合物であると理解する。適した糖脂質は、ガラクトシルセラミド、グリコシルセラミド、ラクトシルセラミド等のグリコシル化されたセラミド、及びグリコシル残基鎖を有するより複雑なガングリオシドを含み、かかるグリコシル残基のうちの1又は複数はシアリル基を担持してもよい。
【0027】
アミノ酸又はペプチド及び/又はタンパク質をコーティングするのに使用されるリン脂質組成物及び脱油されたリン脂質組成物は、いかなる食品等級のリン脂質組成物又はレシチンであってもよい。適したリン脂質は、油(トリグリセリド又は他の疎水性物質)の含有量が低い大豆、ヒマワリ、菜種、卵、又は他のレシチンを含む。かかる油(中性脂肪)の含有量は、脱油されたリン脂質組成物の総重量に対して(すなわち、リン脂質、糖脂質、炭水化物及び中性脂肪の総重量に対して)好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満である。油含有量は、例えばアセトン可溶性物質に対して確定することができる。したがって、本発明において使用されるリン脂質組成物は、好ましくは、アセトン可溶性物質を少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%含む。さらに、使用されるリン脂質は、市販の乾燥粉末、粒状、又はワックス状形態での脱油されたリン脂質調製品でもよく、或いは水媒体中に分散されたリン脂質でもよい。
【0028】
コーティングされたタンパク性物質は、リン脂質のコーティングによって生じるリン含有量により特徴づけることができる。したがって、本発明のコーティングされたタンパク性物質は(リン元素に対して)0.001〜0.1重量%、好ましくは0.005〜0.05重量%のリン含有量を有する。
【0029】
[方法]
本発明の方法は、パンコーター(pan coater)、流動床コーター(fluid bed coater)等の従来機を使用して実施することができる。その後、アミノ酸又はペプチドの粉末を、適した溶剤中でレシチンの分散とに接触させる。適した溶剤は、任意で追加成分が溶解、分散されている水を含む。かかる追加の成分は、加工助剤、緩衝材、ミネラル、微量元素、一部のビタミン及びスクロース又は他の非還元糖等の炭水化物を含む。溶剤中のリン脂質の濃度は、例えば1重量%と臨界ミセル濃度との間であるべきで、それは追加される成分によって異なり、当業者には既知の方法によって決定することができる。好ましくは、リン脂質濃度が15重量%未満であり、特に好ましくは2〜10重量%である。
【0030】
分散は最終生産物又はアミノ酸に適用され、最終生産物に優れた湿潤性及び分散性をもたらす。本発明による方法によりコーティング又は造粒が生じることがある(製品にリン脂質を多く使用した場合)。最終生産物における脱油されたレシチンの含有量は、通常は0.05〜15重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。適用方法は噴霧、浸漬等を含んでもよい。接触温度は好ましくは20〜60℃、より好ましくは30〜50℃であり、好ましい接触時間は例えば5〜60分、より好ましくは10〜45分である。噴霧又は他の接触手段の後、好ましくは粒子を例えば空中で3〜30分、好ましくは6〜20分、温度は60〜100℃、好ましくは70〜90℃で乾燥する。その後、乾燥した粒子を調節し、食品の調製に使用する。
【0031】
[栄養製品]
コーティングされた粒子は包装され、製品として使用することができる。製品は摂取前に摂取者が、単独、或いは他の成分と組合わせて、食品又は飲料に溶解又は懸濁することができる。
【0032】
粒子はまた、プレミックスを製造するために、非疎水性のアミノ酸、炭水化物、粉ミルク、ホエー粉末、ビタミン、ミネラル等を含むタンパク質等の他の粉末状の成分と混合することもできる。かかるプレミックスは包装され、摂取者によりすぐに摂取可能な食品や飲料の調製に使用される。プレミックスはまた、商業規模での溶液又は分散液の製造に使用することができ、噴霧乾燥することができる、即座に使用可能な液体又はスラリーの製造に使用することができる。即座に使用できる液体の製造方法は当業者には知られるところであり、他の成分と混合する新たなステップ、均一化及び熱処理を行うステップを含んでもいい。液体の噴霧乾燥の方法もまた当該技術において既知である。
【0033】
コーティングされた粒子は容易に分散及び可湿され、室温で、暗所での通常の湿度及び標準の気圧の下での保存は、非常に安定している。コーティングされた粒子は、沈降性が改善した(浮遊に対する耐性又は分散からの沈下)。窒素下での包装及び大気湿度の低減等の当業者には既知の方法を適用することにより、この安定性をさらに改良することができる。
【0034】
コーティングされたアミノ酸は、複雑な食品である臨床栄養の強化に殊に適している。したがって、本発明はまた、炭水化物、タンパク質、ビタミン及び/又はミネラルを含み、上記のコーティングされたタンパク性物質の、炭水化物、タンパク質(タンパク性物質の総称)及び脂質の合計に対して0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%、より好ましくは2.5〜25重量%をさらに含む栄養組成物に関連する。好ましくは、かかる組成物は少なくとも炭水化物を含み、好ましくは、かかる組成物のカロリー量の少なくとも10%、特にカロリー量の25〜70%の炭水化物を含む。コーティングされたタンパク性物質が1又は数個のアミノ酸しか含有しない場合は、さらにタンパク性物質が存在することがしばしば好まれるであろう。(アミノ酸を含む)総タンパク量が、好ましくはかかる組成物のカロリー量の少なくとも5%であり、より好ましくはカロリー量の10〜40%である。脂質の含有量は低いか又はゼロではあることが多いが、脂質の存在もまた可能であり、特にカロリー量の5〜35%である。組成物は液体組成物であってもよいが、乾燥組成物が好ましい。粉末製品は本発明の好ましい実施態様である。
【0035】
コーティングされた粒子及びそれらを含む製品は、医薬、健康食品、又はサプリメントとして使用することができ、特に、基本的タンパク質組成物(遊離アミノ酸又はインタクトなタンパク質よりむしろ小さなペプチドを含む)の投与を必要とする、或いは特定のアミノ酸の補給を必要とする疾患の治療に使用することができる。食品又はサプリメントに2以上のアミノ酸を包含する場合には、少なくとも1つの疎水性のアミノ酸が本発明によるコーティングされた形で含まれる。他のアミノ酸、特に非疎水性のものは、そのまま又は従来の例えば炭水化物を使用したコーティングをして、添加することができる。代替案として、全てのアミノ酸をコーティング前に混合し、その後本発明にしたがってコーティングすることもできる。
【0036】
例えば、フェニールケトン尿症(PKU)患者に対するサプリメントは、アミノ酸の混合物、好ましくはフェニルアラニンを除く全てのアミノ酸を含む。疎水性のアミノ酸のうちの少なくとも1つ、好ましくはイソロイシン、ロイシン、バリン、トリプトファン及びメチオニンの全てが脱油されたレシチンのコーティングが施されて取込まれる一方、他のアミノ酸はそのまま添加される。代替案として、全てのアミノ酸(フェニルアラニンを除く)は本発明の方法によってコーティングされ、サプリメントに組み込まれる。
[実施例]
【実施例1】
【0037】
[原料として使用される、改良された分散性を有するアミノ酸]
96%を超えるアセトン不溶性物質を含む脱油された大豆レシチン(Cargill Texturizing Solutions社製)を最終濃度が5.9重量%になるまで水に分散した。99%純ロイシン50kg(Rexim社製)を流動床造粒機(Aeromatic AG、Niro Inc.社製)に配置した。流動化を床温34℃にて開始し、0.143l/分の速度で分散されたレシチンを30分間噴霧した。その後、粉末を熱風(70℃)に10分間くぐらせることで乾燥させ、その後26℃まで冷却した。その後、造粒機を停止し、粉末を2000μmメッシュの篩を使用して篩過し、袋詰めにした。
図2は、本実施例によりコーティングされたロイシンの粉末の電子顕微鏡像(200倍)を示す。湿潤時間は120秒よりも長かった。国際IDFスタンダード87:1979法を用いた測定によれば、粉末は水において良好な分散性を有した。
【実施例2】
【0038】
[代謝異常児童を治療するための乾燥した混合粉末]
粉末のサプリメントがフェニールケトン尿症及び高フェニルアラニン血症の食事管理のために調製された。サプリメントは栄養的に完全ではない。100gあたり以下を含む:
【0039】
【表2】



【0040】
かかる製品は安定し、室温の水の中で容易に分散し、良好な味であった。
【実施例3】
【0041】
[乾燥した混合アミノ酸を混入し、栄養的に完備した製品]
悪液質に羅患したリスクを有するがん患者の治療のために栄養的に完備した製品を調整した。100gあたり以下を含む:
【0042】
【表3】

【0043】
他の成分のエマルジョンを噴霧乾燥後、ロイシンを粉末と混合して乾燥した。かかる製品は安定し、室温の水の中で容易に分散し、比較的良好な味であった。


【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離アミノ酸とジペプチドとの合計の少なくとも60重量%を含む疎水性のタンパク性物質のコーティングされた粒子の製造方法であって、前記タンパク性物質を、脱油されたリン脂質組成物の全乾燥重量に対し20%未満のトリグリセリドを含む脱油されたリン脂質組成物と接触させることを含む方法。
【請求項2】
タンパク性物質が1.0kJ/molより高い疎水性を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タンパク性物質が、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン及びバリンから選択されるアミノ酸を総タンパク量に対して少なくとも25重量%、及び/又は上記アミノ酸を数で少なくとも50%含むペプチドを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
タンパク性物質が、総タンパク量に対して、遊離アミノ酸又はそれらの塩を少なくとも75重量%含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
脱油されたリン脂質組成物が、トリグリセリドを10重量%未満含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
脱油されたリン脂質組成物が、リン脂質を少なくとも65重量%含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
脱油されたリン脂質組成物が、リン脂質と糖脂質とを合わせて少なくとも70重量%含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
遊離アミノ酸及びジペプチドの合計の少なくとも60重量%を含むコーティングされたタンパク性物質であって、タンパク性物質の合計の0.1〜1.5重量%の脱油されたリン脂質組成物のコーティングを有し、前記脱油されたリン脂質組成物が乾燥重量での20%未満のトリグリセリドを含むことを特徴とする物質。
【請求項9】
0.001〜0.1重量%のリン含有量を有する、請求項8に記載のコーティングされたタンパク性物質。
【請求項10】
1又は複数の炭水化物、タンパク質、ビタミン及びミネラルから選択される食物成分と、請求項8又は9に記載のコーティングされたタンパク性物質、又は請求項1〜7のいずれかに記載の方法で得られた、コーティングされたタンパク性物質とを組み合わせることを含む、栄養組成物の製造方法。
【請求項11】
炭水化物、タンパク質、ビタミン及び/又はミネラルを含む栄養組成物であって、さらに請求項8又は9に記載のコーティングされたタンパク性物質を炭水化物、タンパク質及び任意の脂質の合計に対して、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%含む栄養組成物。


【公表番号】特表2010−524463(P2010−524463A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504007(P2010−504007)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050231
【国際公開番号】WO2008/130236
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(505296821)エヌ.ブイ.・ヌートリシア (32)
【Fターム(参考)】