説明

アミノ酸の製造方法

【課題】高純度のアミノ酸を効率良く得る方法を提供すること。
【解決手段】(1)下記数式1で示される条件下で、アミノ酸を含む溶液を脱水濃縮する工程
【数1】


(Xは脱水濃縮終了時の溶液中のアミノ酸の濃度(質量%)を示し、Yは脱水濃縮時の溶液の温度(℃)を示す。ただし、Yは0以上80以下である。)
(2)工程(1)で得られたアミノ酸を含む溶液からアミノ酸を析出させる工程
を含む、アミノ酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸及びアミノ酸アミドは医薬品等の合成中間体として有用な化合物である。アミノ酸の製造方法としては、化学的合成法、生物学的合成法とに分けることができる。例えば、光学活性を有するアミノ酸を所望する場合には、酵素反応(微生物)を用いてアミノ酸アミドを不斉加水分する方法が用いられている(特許文献1〜3)。
【0003】
上記生物学的方法では、所望する光学活性を有するアミノ酸とアミノ酸アミドの両方が生成されるので、両者を分離する必要がある。アミノ酸とアミノ酸アミドを分離する方法としては、アミノ酸アミドを溶媒抽出により除去した後、アミノ酸を等電点にて回収する方法(特許文献4)、エタノールを加えアミノ酸を優先的に晶析させる方法(特許文献5)、イオン交換樹脂を用いて吸着分離を行う方法(特許文献6)、又はα−アミノ酸アミドを陽イオン交換樹脂に吸着させた後、該イオン交換樹脂に酵素を接触させて立体特異的に加水分解反応を行い、反応と分離を同時に行う光学活性アミノ酸の製造方法(特許文献7)、アミノ酸及びアミノ酸アミド含有水溶液の溶媒を水から炭素数3以上のアルコール溶媒へと置換し、アミノ酸をアルコール溶液から優先的に取得する製造方法(特許文献8)などが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−159789号公報
【特許文献2】特開昭61−293394号公報
【特許文献3】特開平1−186850号公報
【特許文献4】特開昭58−209989号公報
【特許文献5】特開昭63−87998号公報
【特許文献6】特開平1−226482号公報
【特許文献7】特開平8−23996号公報
【特許文献8】特開2001−328970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4に記載された方法では、抽出に多量の溶媒を必要とするので、装置、コスト面で不利である。
【0006】
特許文献5に記載された方法では、反応液から水を除去した後にエタノールにより抽出を行っており、工業的な製法としては好ましくない。
【0007】
特許文献6および7に記載された方法では、吸着・脱離、回収と多くの工程を必要とし、設備投資の増加、回収効率の低下、不純物混入の可能性が増大するなどの問題があり工業的に好ましくない。
【0008】
特許文献に記載の方法8では、濃縮溶液の容積に対し数倍以上の量のエタノールを添加する必要あり、コスト増加の一因となる。また、アミノ酸及びアミノ酸アミド含有水溶液をアルコール溶媒に置換する方法は工業的な製造に適しているものの、溶媒置換を行うときの溶媒量や温度により析出するアミノ酸中にアミノ酸アミドが混入する問題がある。
【0009】
以上の理由から、いずれのアミノ酸の製造方法でも、簡便に又は効率良くアミノ酸を回収又は精製することができず、工業的に優位な方法となり得えなかった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、高純度のアミノ酸を効率良く得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、アミノ酸を含む溶液を脱水濃縮する際に、濃縮時の溶液の温度と濃縮終了時のアミノ酸の濃度とを調整することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、以下の工程を含むアミノ酸の製造方法に関する。
(1)下記数式1で示される条件下で、アミノ酸を含む溶液を脱水濃縮する工程
【数1】

【0013】
(Xは脱水濃縮終了時の溶液中のアミノ酸の濃度(質量%)を示し、Yは脱水濃縮時の溶液の温度(℃)を示す。ただし、Yは0以上80以下である。)
(2)工程(1)で得られたアミノ酸を含む溶液からアミノ酸を析出させる工程。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡便な操作により、高収率で(効率良く)アミノ酸を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のアミノ酸の製造方法は、アミノ酸アミドを含むアミノ酸を精製する必要がある場合において特に有効である。すなわち、アミノ酸アミドからアミノ酸を製造する方法において好適に用いることができる。以下に詳細に説明する。
【0016】
(1)アミノ酸
本発明に関わるアミノ酸は、下記一般式(1)で示されるアミノ酸である。
【0017】
【化1】

【0018】
一般式(1)中、Rは水素原子または任意の置換基を示す。任意の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基などが挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0019】
一般式(1)で示されるアミノ酸としては、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、t−ロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、セリン、システイン、チロシン、リジン、シクロヘキシルアラニン、2−アミノ酪酸、フェニルグリシン、及びそのアルコキシ誘導体などが挙げられる。
【0020】
これらのアミノ酸は、光学活性を有していてもよい。例えば、D体又はL体のどちらかが一方のみからなるアミノ酸であっても良いし、そのどちらか一方が過剰に含まれるアミノ酸であっても良いし、ラセミ体であっても良い。
【0021】
(2)アミノ酸の調製
アミノ酸の調製方法としては、例えばα−ケトカルボン酸のデヒドロゲナーゼ又は同活性を有する生体触媒用いた還元的不斉アミノ化反応、ラセミ体ヒダントインのヒダントイナーゼまたは同活性を有する生体触媒用いた立体選択的加水分解開環反応、ラセミ体N−アシル−アミノ酸のアシラーゼまたは同活性を有する生体触媒用いた立体選択的加水分解反応、ラセミ体アミノ酸エステルのエステラーゼまたは同活性を有する生体触媒用いた立体選択的加水分解反応、及びラセミ体アミノ酸アミドのアミダーゼを用いた立体選択的加水分解反応などの生体触媒反応が挙げられる。
【0022】
これらのうち、本発明にかかる光学活性アミノ酸の製造方法では、原料の汎用性、立体選択性などの観点から、ラセミ体アミノ酸アミドのアミダーゼ活性を有する生体触媒用いた立体選択的加水分解反応が好ましい。
【0023】
ラセミ体アミノ酸アミドのアミダーゼ活性を有する生体触媒を用いた立体選択的加水分解反応(以下、「アミダーゼによる立体選択的加水分解反応」とも称する)は、ラセミ体アミノ酸アミド水溶液にアミダーゼまたはアミダーゼ活性を有する生体触媒を加え、アミノ酸アミドに該触媒を作用させて行う。
【0024】
ラセミ体アミノ酸アミド水溶液中のアミノ酸アミドの濃度は、1〜70質量%とすることが好ましい。この範囲内であると光学活性アミノ酸の製造効率の点で好ましい。濃度は、5〜60質量%とすることがより好ましく、10〜50質量%とすることが特に好ましい。
【0025】
アミダーゼによる立体選択的加水分解反応の開始時、ラセミ体アミノ酸アミド水溶液のpHは、室温(具体的には20〜30℃付近)での測定値が5〜9.8となるように調整する。この範囲内であるとアミダーゼ活性を有する生体触媒の触媒活性、反応収率、光学活性アミノ酸蓄積濃度などの点で好ましい。
【0026】
pHは、5.5〜9.5とすることがより好ましく、6〜9とすることがさらに好ましい。ラセミ体アミノ酸アミド水溶液は通常塩基性を示すため、pH調整には酸を用いる。酸としてはリン酸、塩酸、硫酸などの鉱酸が挙げられ、この中で塩酸、硫酸を用いることがより好ましい。使用形態は、化合物そのもの若しくは水溶液の状態で用いることができる。
【0027】
pH調整後、ラセミ体アミノ酸アミド水溶液にアミダーゼ活性を有する生体触媒を加え(以下、単に「触媒」とも称する)、アミノ酸アミドの立体選択的加水分解反応を行う。触媒としては、水性媒体中でラセミ体アミノ酸アミドに立体特異的に作用し、光学活性アミノ酸と対応する光学特性を有するアミノ酸アミドを与える作用を有するものであれば、特に制限はなく使用することができる。
【0028】
例えば、以下に例示する(組換)微生物が産生するアミダーゼが好適に使用される。
・エンテロバクタ−・クロアッセイ N−7901(FERM BP−873)
・バチルス・ステアロサーモフィラス NCIMB8923
・サーマス・アクアティカ NCIMB11243
・サーマス属 O−3−1株(FERM BP−8139)
・オクロバクテリウム・アントロピ NCIB40321
・クレブシェラ属 NCIB40322株
・E.coli JM109/pLA205(FERM BP−7132)
・E.coli JM109/pM501KN。
【0029】
これらの微生物は、菌体をそのまま又は菌体処理物(洗浄菌体、乾燥菌体、菌体破砕物、菌体抽出物、粗又は精製酵素、及びこれらの固定化物)として反応に使用される。
【0030】
菌体又は菌体処理物の濃度は、その活性量により異なるがアミノ酸アミド質量に対し1/10000〜1質量、好ましくは1/1000〜1/10質量である。この範囲内であると反応時間や触媒除去操作性が容易であるなどの点で好ましい。
【0031】
反応温度は5〜70℃の範囲が好ましい。この範囲内であると、反応時間、反応収率などの点で好ましい。15〜60℃がさらに好ましく、25〜45℃が特に好ましい。
【0032】
反応中、水溶液のpHを調整するため、適宜酸または無機塩基化合物を添加しても良い。この場合、pHは、20〜30℃での測定値が、5〜9.8となるように調整することが好ましく、5.5〜9.5とすることがより好ましく、6〜9とすることがさらに好ましい。
【0033】
反応時間は、触媒量、ラセミ体アミノ酸アミドの種類により異なるが、通常5〜60時間である。この範囲内であると反応収率、製造工程の操作効率などの点で好ましい。
【0034】
アミダーゼによる立体選択的加水分解反応の反応終了は、触媒や原料アミノ酸アミドの種類により異なるため一概ではないが、例えば下式で定義される原料変換率を高速液体クロマトグラフィーの分析値から算出し、原料変換率が90%以上消費された時点で反応終了とすることが好ましく、95%以上とすることがより好ましく、99%以上とすることが特に好ましい。この範囲内であると、光学活性アミノ酸の収率が向上する。
原料変換率(%)=((目的とする鏡像体の光学活性アミノ酸mol量)×200)/((目的とする鏡像体の光学活性アミノ酸mol量)+(残アミノ酸アミドmol量))。
【0035】
(3)脱水濃縮
光学活性アミノ酸及び光学活性アミノ酸アミド含有水溶液を脱水濃縮する前に触媒を除去する。除去方法は特に限定しないが例えば、遠心分離、ろ過等の方法を用いて行うことができる。
【0036】
本発明では、「脱水濃縮」とは、溶媒を水からアルコール等の有機溶媒に置換してそれを濃縮することを含む。必要に応じて、有機溶媒を添加する前に水(溶媒)の量を減少させる(濃縮する)こともできる。水への溶解度が高いアミノ酸及びアミノ酸アミドをアルコール系溶媒に置換することで、アルコール系溶媒への溶解度の低いアミノ酸を結晶として析出させ、これらを固液分離することで回収することができる。
【0037】
得られた反応液又は濃縮液中の水を炭素数3以上の直鎖、分岐、あるいは環状アルコールの中から選ばれた少なくとも1種類以上の溶媒に置換する。好ましくは炭素数3〜8のアルコール、より好ましくは炭素数3〜6のアルコールである。
【0038】
このようなアルコールとしてはイソプロピルアルコール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、シクロペンタノール、n−ヘキシルアルコール、シクロヘキサノール、n−オクタノールなどが挙げられる。これら溶媒は収率、操作効率などの点から好ましい。イソプロピルアルコール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、シクロヘキサノールを用いることがより好ましく、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、i−ブタノール、n−アミルアルコール、シクロヘキサノールを用いることが特に好ましい。
【0039】
脱水濃縮は共沸等の操作によって行なわれ、触媒による立体選択的加水分解反応後得られる光学活性アミノ酸及び光学活性アミノ酸アミド含有水溶液に含まれる水を90質量%以上までアルコール溶媒へと置換する。90質量%以上とすることにより、光学活性アミノ酸の収率が高くなるので好ましい。
【0040】
脱水濃縮後の溶媒の水分含量は10質量%以下とするのが好ましい。10質量%以下とすることにより、析出すべきアミノ酸が母液へ溶解することにより収率が低下するのを防ぐことができる。5質量%以下とするのがより好ましく、2質量%以下とするのが更に好ましい。
【0041】
本発明における脱水濃縮の条件は、下記数式1を満たす条件である。当該条件を満たすことにより、得られるアミノ酸中に含まれるアミノ酸アミドを抑制する(減少させる)ことができる。従って、純度の高いアミノ酸を高収率で得ることができる。
【数1】

【0042】
ここで、Yは脱水濃縮時の溶液の温度(℃)を示す。ただし、Yは0以上80以下、好ましくは10以上60以下である。80℃以下とすることにより、アミノ酸及びアミノ酸アミドの分解を避けることができる。0℃以上とすることにより、アミノ酸アミドの溶解度が低下して結晶として回収するアミノ酸中に混入することを避けることができる。
【0043】
Xは脱水濃縮終了時の溶液中のアミノ酸の濃度(質量%)、すなわち、脱水濃縮により所望するアミノ酸濃度を示す。Xの数値範囲は、Yに応じて適宜選択すればよい。例えば、10〜50(質量%)であることが好ましく、20〜40(質量%)であることがより好ましい。50以下とすることにより、脱水濃縮中にアミノ酸及びアミノ酸アミドの塩が十分に解離せず、複合塩として結晶であるアミノ酸中に混入することを避けることができる。一方、10以上とすることにより、使用する溶媒量が増大して生産効率が悪くなるのを避けることができる。
【0044】
この時、光学活性アミノ酸及び/又は光学活性アミノ酸アミド結晶は析出していても、析出していなくてもどちらでもよい。
【0045】
(4)アミノ酸の析出(回収)
次に、上述のごとく調製した光学活性アミノ酸及び光学活性アミノ酸アミドを含むアルコール溶媒溶液を冷却して結晶を析出させる。この時純度向上や結晶晶径改善を目的に、冷却前にアルコール溶媒溶液を30〜80℃の範囲で加温しても良い。
【0046】
冷却速度は、結晶成長、結晶純度などの点から60℃/hr以下とすることが好ましい。また、50℃/hr以下とすることがより好ましく、40℃/hr以下とすることが特に好ましい。
【0047】
光学活性アミノ酸結晶の単離は、ろ過又は遠心分離等により行うことができる。単離温度は、収率及び純度が高い結晶が得られれば特には限定されない。例えば、−10〜40℃とすることが好ましい。この範囲内であると結晶の収率及び純度が高い点で好ましい。0〜30℃とすることがより好ましい。
【0048】
上述のようにして、(光学活性)アミノ酸及び(光学活性)アミノ酸アミド含有水溶液から高選択的に光学活性アミノ酸の結晶を単離することができる。通常、結晶中の光学活性アミノ酸アミドの含有量は、光学活性アミノ酸に対し1質量%未満である。この値以下であると、例えば、本発明で得られたアミノ酸をN−アルコキシカルボニルアミノ酸類の製造に使用した場合、収率、製品N−アルコキシカルボニルアミノ酸類の化学純度が高くなるという点でも好ましい。
【0049】
結晶は固液分離により採取することができる。固液分離方法は、例えば、加圧ろ過、自然ろ過、加熱ろ過又は遠心分離等が挙げられる。真空乾燥などの溶媒除去操作を行っても良い。これらの条件は限定されず、アミノ酸の分解が促進されない条件等により適宜選択することができる。
【0050】
また、アルコール溶媒溶液として回収された光学活性アミノ酸アミドは、例えば、公知の方法によってラセミ化し、アミダーゼによる立体選択的加水分解反応の原料に再利用することができる。通常、ラセミ化反応は該アルコール溶媒溶液に強塩基化合物を加え加熱して行うことができる。ラセミ化反応後、公知の方法、例えば晶析操作によってラセミ体アミノ酸アミドを回収し、アミダーゼによる立体選択的加水分解反応の原料に再利用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を製造例、実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
なお、実施例及び比較例中の化合物の分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行った。
<分析条件>
カラム Inertsil ODS−3V(GLサイエンス社製)
溶離液 0.1%リン酸水溶液
流速 1.0mL/min
検出 UV 210nm。
【0053】
[参考例1] アミダーゼ活性を有する酵素の調製
WO2000/063354号記載の方法に従い、E.coli JM109/pLA205(FERM BP−7132)の培養を行った。培養液1Lを遠心分離し、次いで湿潤菌体を蒸留水に懸濁した。さらに菌体懸濁液を破砕した後に、遠心分離し、粗酵素溶液20gを調製した。
【0054】
[製造例1] アミノ酸及びアミノ酸アミド水溶液の調整
攪拌機及び温度計を付した1000mL三口フラスコに、t−ロイシンアミド200.0g(1.54mol)を秤量し、純水600mLを加えて溶解した。この水溶液のpHを98%硫酸25.3gで添加して、11.3から8.0(40℃)に調整した。
【0055】
この溶液に、上記参考例1で得られたアミダーゼ活性を有する酵素溶液20gを添加し、反応温度を38〜42℃で制御した。24時間後のL−t−ロイシンアミドの転化率は99%以上であり、L−t−ロイシン101.0g(0.77mol)が生成した。
【0056】
[実施例1]
製造例で合成した水溶液を攪拌機及び温度計を付した1500mL三口フラスコに移し、内温を60〜80℃の範囲でL−t−ロイシンアミドの濃度が30質量%となるまで減圧濃縮した。次に、この濃縮液へn−ブタノールを250g添加し、内温を20〜25℃の範囲で水分含量が1質量%以下、かつt−ロイシンアミドの濃度が20質量%になるまで減圧濃縮した。この濃縮液を20℃で1時間熟成させた後に、吸引ろ過により結晶を回収した。結晶の回収率は99%であり、結晶中のt−ロイシンアミドは検出下限値以下であった。
【0057】
[実施例2]
n−ブタノール添加後の濃縮温度を30〜35℃、t−ロイシンアミドの濃度を25質量%とした以外は実施例1と同等の方法で行った。結晶の回収率は99%であり、結晶中のt−ロイシンアミドは検出下限値以下であった。
【0058】
[実施例3]
n−ブタノール添加後の濃縮温度を40〜45℃、t−ロイシンアミドの濃度を30質量%とした以外は実施例1と同等の方法で行った。結晶の回収率は99%であり、結晶中のt−ロイシンアミドは検出下限値以下であった。
【0059】
[比較例1]
n−ブタノール添加後の濃縮温度を20〜25℃、t−ロイシンアミドの濃度を25質量%とした以外は実施例1と同等の方法で行った。結晶の回収率は99%であったが、結晶中のt−ロイシンアミドは4.3質量%であった。
【0060】
[比較例2]
n−ブタノール添加後の濃縮温度を30〜35℃、t−ロイシンアミドの濃度を30質量%とした以外は実施例1と同等の方法で行った。結晶の回収率は99%であったが、結晶中のt−ロイシンアミドは7.3質量%であった。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)下記数式1で示される条件下で、アミノ酸を含む溶液を脱水濃縮する工程
【数1】

(Xは脱水濃縮終了時の溶液中のアミノ酸の濃度(質量%)を示し、Yは脱水濃縮時の溶液の温度(℃)を示す。ただし、Yは0以上80以下である。)
(2)工程(1)で得られたアミノ酸を含む溶液からアミノ酸を析出させる工程
を含む、アミノ酸の製造方法。
【請求項2】
アミノ酸がアミノ酸アミドを酵素反応により加水分解して得られたものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法で得られる、アミノ酸アミドの含量が1質量%以下であるアミノ酸。

【公開番号】特開2012−193135(P2012−193135A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57123(P2011−57123)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】