説明

アミノ酸の製造方法

【課題】きのこを栽培する培地からアミノ酸あるいはアミノ酸を含有する食品を効率的に入手するための製造方法を提供する。
【解決手段】タンパク質素材を含有する培地できのこ菌糸を培養した後、乳酸菌を接種して発酵させ、アミノ酸を生成するアミノ酸の製造方法であり、タンパク質素材が、玄米、大豆、麦、蕎麦、米糠、おから、粟、きび、胡麻、及び、種子からなる群から選ばれる1又は2種以上であること、きのこ菌糸が、エノキタケ(Flammulina)属、シロタモギタケ(Hypsizygus)属、ヒラタケ(Pleurotus)属、サンゴハリタケ(Hericium)属、マイタケ(Grifola)属、シイタケ(Lentinula)属、ハラタケ(Agaricus)属、スギタケ(Pholiota)属、キコブタケ(Phellinus)属、及び、ハナビラタケ(Sparassis)属に属する一種又は二種以上のきのこの菌糸である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質素材を含有する培地できのこ菌糸を培養した後、乳酸菌を接種して発酵させることにより、培地からアミノ酸を生成するためのアミノ酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シイタケ、エノキタケ、ハタケシメジ等の食用きのこには、おが屑等の空隙確保と水分保持のための培地支持資材に、米糠、小麦フスマ、コーンブラン等の栄養源となる資材を混合して調製した培地により栽培する人工栽培法が確立されているが、このような栽培法においては、きのこ(子実体)の収穫を終えると、培地はきのこ菌糸とともに廃棄物として処理される。
【0003】
また、このような廃棄物を有効利用する方法としては、きのこ(子実体)を収穫した後に家畜の飼料として利用できる培地(特許文献1)や、再びきのこ栽培の培地として再生する方法(特許文献2)などが開発され、廃棄物として処理されるべき培地の有効利用が図られてきたが、これらの方法では付加価値の高い製品として再利用することが困難であり、再生することによるメリットを十分に享受できるまでには至っていなかった。
【0004】
一方、アミノ酸は人体を構成する成分として重要であり、きのこの培地から、アミノ酸あるいはアミノ酸を高濃度に含有する食品を得ることができれば、付加価値の高い食品を安価に入手することができ、広く食品にアミノ酸を配合することができるとともに、これにより新しい機能を有する食品等の開発が期待できることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−237744号公報
【特許文献2】特開2008−54510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、きのこを栽培する培地からアミノ酸あるいはアミノ酸を含有する食品を効率的に入手するための製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明者らが検討を行った結果、タンパク質素材を配合した培地できのこ菌糸を培養した後、培地に乳酸菌を接種して発酵させることにより、高濃度のアミノ酸が生成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、タンパク質素材を含有する培地できのこ菌糸を培養した後、乳酸菌を接種して発酵させることにより、アミノ酸を生成することを特徴とするアミノ酸の製造方法である。
【0009】
さらに本発明は、タンパク質素材が、玄米、大豆、麦、蕎麦、米糠、おから、粟、きび、胡麻、及び、種子からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするアミノ酸の製造方法である。
【0010】
さらに本発明は、きのこ菌糸が、エノキタケ(Flammulina)属、シロタモギタケ(Hypsizygus)属 、ヒラタケ(Pleurotus)属、サンゴハリタケ(Hericium)属、マイタケ(Grifola)属、シイタケ(Lentinula)属、ハラタケ(Agaricus)属、スギタケ(Pholiota)属、キコブタケ(Phellinus)属、及び、ハナビラタケ(Sparassis)属からなる群から選ばれる1種又は2種以上のきのこ菌糸であることを特徴とするアミノ酸の製造方法である。
【0011】
さらに本発明は、乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、テトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、及び、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、からなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳酸菌であることを特徴とするアミノ酸の製造方法である。
【0012】
また本発明は、前記のアミノ酸の製造方法により、アミノ酸が生成した培地を粉砕し粉末状又はペースト状に加工したアミノ酸含有加工食品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアミノ酸の製造方法によれば、きのこ菌糸の培養が完了した培地(菌廻りが完了した培地)に乳酸菌を接種することによりアミノ酸を効率的に生成することができる。
【0014】
培地からアミノ酸を抽出し、アミノ酸抽出物を食品等に添加して利用することもできるが、アミノ酸が生成した培地を粉砕し、粉末状あるいはペースト状に加工することにより、培地からアミノ酸を含有する加工食品を製造することができ、この加工食品をあらゆる食品等に添加して摂取することができる。
【0015】
本発明の製造方法において、菌糸を培養する工程は、きのこを人工栽培するための従来の設備を利用することができ、乳酸菌による発酵工程では、低温で短期に発酵熟成することができることから、複雑な作業を要することなく、製造コストを安価に抑えながらアミノ酸を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】アミノ酸の製造方法を示す概念図
【図2】アミノ酸の製造工程を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0017】
従来、きのこの栽培に用いられる培地としては、おが屑に米糠又はフスマ或はトウモロコシ糠等を栄養添加剤として適宜加えたものが用いられており、本発明の製造方法においても従来の培地を使用することが可能ではあるが、より効率的に高濃度のアミノ酸を生成することを可能とし、また、アミノ酸が生成した培地を粉砕し、粉状あるいはペースト状に加工することで、アミノ酸を含有した加工食品を製造可能とするために、培地は、食用原料で構成することが好ましい。
【0018】
本発明のアミノ酸の製造方法は、タンパク質素材をきのこ菌糸が分解吸収し、乳酸菌でこれを発酵分解することによりアミノ酸を生成するものである(図1)。したがって、培地に配合されるタンパク質素材は、タンパク質成分を多く含有しながら菌糸の培養に適するものが好ましく、玄米、大豆、麦、蕎麦、米糠、おから、粟、きび、胡麻、及び、種子(ひまわりの種子、菜種等)のいずれか、あるいはこれらを組み合わせて使用することが好ましい。また、これらのタンパク質素材は、食用原料でもあるため、アミノ酸が生成した培地を粉砕し、粉状あるいはペースト状に加工することにより、アミノ酸を含有する食品添加物を得ることが可能である。
【0019】
培地は、水分含有率が約50〜70%となるように水を添加して撹拌し、きのこ培養用容器に均一に詰めて滅菌を行う。容器は、その形状、大きさ、材料など制限されるものではないが、滅菌処理に耐えるものであることが好ましい。きのこ栽培で最も一般的に用いられる容量800mL、口径58mmのビンを使用してもよいし、他の菌床栽培用容器、例えば袋栽培用の袋を使用することもできる。
【0020】
培地を充填した容器の滅菌は、当業者に周知の方法および条件で行うことができる。滅菌方法の一例としては、容器を蒸気滅菌釜に入れ、100℃以上で10時間放置することにより滅菌を行い、培地に含有する害菌や培養阻害物質を取り除く。但し、滅菌の方法および条件は、これに限定されるものではなく、培地(培養用容器)の大きさ等により、温度、時間等を適宜選定して行う。
【0021】
培地に接種する菌糸は、培地による人工栽培が可能な食用きのこの菌糸であれば特に限定されない。培養可能な食用きのこの菌糸としては、例えば、エノキタケ(Flammulina)属、シロタモギタケ(Hypsizygus)属 、ヒラタケ(Pleurotus)属、サンゴハリタケ(Hericium)属、マイタケ(Grifola)属、シイタケ(Lentinula)属、ハラタケ(Agaricus)属、スギタケ(Pholiota)属、キコブタケ(Phellinus)属、ハナビラタケ(Sparassis)属、オオイチョウタケ(Leucopaxillus)属、フミヅキタケ(Agrocybe)属、キシメジ(Tricholoma)属、シメジ(Lyophyllum)属、ササクレヒトヨタケ(Coprinus)属、アントロディア属(Antrodia)等に属するきのこの菌糸があり、これらを用いることができる。
【0022】
エノキタケ(Flammulina)属に属するきのことしては、例えば、エノキタケ(Flammulina velutipes(Curt.:Fr.)Sing)などが挙げられる。シロタモギタケ(Hypsizygus)属に属するきのことしては、例えば、ブナシメジ(Hypsizygus marmoreus)、シロタモギタケ(Hypsizygus ulmarius)などが挙げられる。ヒラタケ(Pleurotus)属に属するきのことしては、例えばヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eryngii)、バイリング(Pleurotus eryngii var.touliensis CJ.Mou)、アギタケ(Pleurotus jp takizawa)、ウスヒラタケ(Pleurotus pulmonarius)、タモギタケ(Pleurotus cornucopiae)、トキイロヒラタケ(Pleurotus salmoneo)、ヒマラヤヒラタケ(Pleurotus sajor-caju)などが挙げられる。サンゴハリタケ(Hericium)属に属するきのことしては、例えば、サンゴハリタケ(Hericium ramosum)、サンゴハリタケモドキ(Hericium clathroids)、ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)などが挙げられる。マイタケ(Grifola)属に属するきのことしては、例えば、マイタケ(Grifola frondosa)、シロマイタケ(Grifola albicans Imaz.)、アンニンコウ(Grifola gargal)などが挙げられる。シイタケ(Lentinula)属に属するきのことしては、例えば、シイタケ(Lentinula edodes)などが挙げられる。ハラタケ(Agaricus)属に属するきのことしては、例えば、アガリクス(Agaricus blazei Murrill)、ウスキモリノカサ(Agaricus abruptibulbus Peck)、ザラエノハラタケ(Agaricus subrutilescens)、ツクリタケ(Agaricus bisporus)、ヒメマツタケ(Agaricus blazei Murrill)などが挙げられる。スギタケ(Pholiota)属に属するきのことしては、例えば、ナメコ(Pholiota nameko)、スギタケ(Pholiota squarrosa)、スギタケモドキ(Pholiota squarrosoides)、ハナガサタケ(Pholiota flammans)、ヌメリスギタケモドキ(Pholiota aurivella)、アカツムタケ(Pholiota astragalina)、ヤケアトツムタケ(Pholiota highlandensis)、チャナメツムタケ(Pholiota lubrica)、シロナメツムタケ(Pholiota lenta)などが挙げられる。キコブタケ(Phellinus)属に属するきのことしては、例えば、メシマコブ(Phellinus linteus)などが挙げられる。ハナビラタケ(Sparassis)属に属するきのことしては、例えば、ハナビラタケ(Sparassis crispa)などが挙げられる。オオイチョウタケ(Leucopaxillus)属に属するきのことしては、例えば、オオイチョウタケ(Leucopaxillus giganteus)、ムレオオイチョウタケ(Leucopaxillus septentrionalis)などが挙げられる。フミヅキタケ(Agrocybe)属に属するきのことしては、例えば、コフミヅキタケ(Agrocybe paludosa)、フミヅキタケ(Agrocybe praecox)、ハタケキノコ(Agrocybe semiorbicularis)、タマムクエタケ(Agrocybe arvalis)、ツバナシフミヅキタケ(Agrocybe farinacea Hongo)、ツチナメコ(Agrocybe erebia)、ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)などが挙げられる。キシメジ(Tricholoma)属に属するきのことしては、例えば、ニオウシメジ(Tricholoma giganteum MASSEE)、ミドリシメジ(Tricholoma saponaceum)、ニオイキシメジ(Tricholoma sulphureum)、シロシメジ(Tricholoma japonicum)、シモコシ(Tricholoma auratum)、シモフリシメジ(Tricholoma portentosum)、ハエトリシメジ(Tricholoma muscarium)、クロゲシメジ(Tricholoma squarrulosum Bres)、ケショウシメジ(Tricholoma orirubens)、マツタケモドキ(Tricholoma robustum)、マツタケ(Tricholoma matsutake)などが挙げられる。シメジ(Lyophyllum)属に属するきのことしては、例えば、ハタケシメジ(Lyophyllum decastes)、シャカシメジ(Lyophyllum fumosum)、オシロイシメジ(Lyophyllum connatum)、ホンシメジ(Lyophyllum shimeji)、スミゾメシメジ(Lyophyllum semitale)などが挙げられる。ササクレヒトヨタケ(Coprinus)属に属するきのことしては、例えば、イヌセンボンタケ(Coprinus disseminatus)、ササクレヒトヨタケ(Coprinus comatus)、キララタケ(Coprinus micaceus)などが挙げられる。アントロディア属(Antrodia)に属するきのことしては、例えば、ミヤマサンゴタケなどが挙げられる。
【0023】
これらの中で、エノキタケ(Flammulina)属、シロタモギタケ(Hypsizygus)属 、ヒラタケ(Pleurotus)属、サンゴハリタケ(Hericium)属、マイタケ(Grifola)属、シイタケ(Lentinula)属、ハラタケ(Agaricus)属、スギタケ(Pholiota)属、キコブタケ(Phellinus)属、ハナビラタケ(Sparassis)属に属するきのこの菌糸は、菌糸の増殖が安定していることから、本発明のアミノ酸の製造方法においては、これらの菌糸の一種または二種以上用いることが好ましい。
【0024】
特に、エノキタケ、ブナシメジ、エリンギ、バイリング、アギタケ、タモギタケ、ヤマブシタケ、マイタケ、シイタケ、アガリクス、ヒメマツタケ、ナメコ、メシマコブ、ハナビラタケは、種菌の入手が容易であり、人工培養に優れることから好適である。培養に用いるきのこの種菌は、天然に生じる子実体から採取した菌糸または組織を培養して入手してもよいし、研究機関および寄託機関に保存されているものを培養して得てもよい。また、市販のものを使用することもできる。
【0025】
種菌の接種は、害菌の混入を防止するため、通常、クリーンルームで行う。そして培養により、菌糸を増殖させ、菌廻りを完了させる(「菌廻りの完了」とは、培地全体に菌糸が行き渡った状態をいう)。培養条件は、当業者に周知であり、きのこの菌糸が生育可能な条件であれば、特に限定されず、きのこの種類によって適宜選択される。菌廻りが完了した後、培地を取り出し、これに乳酸菌を混合する。本発明は、菌糸を培養した培地からアミノ酸を製造することを目的とするものであり、きのこ子実体の育成することを主目的とするものではない。したがって、菌廻りが完了した時点で培地に乳酸菌を混合しアミノ酸を生成する。
【0026】
菌廻りが完了した培地1kgに対して約0.6gの乳酸菌を混合し、加温室で約20時間発酵処理を行う。室内温度は35〜36℃に維持する。
【0027】
乳酸菌は、食品に添加し得るものであれば、特に限定されるものではなく、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、テトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ストレプトコッカス属(Streptococcus)等のいずれかの乳酸菌、あるいはこれらを組み合わせて使用することができ、例えば、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ヒルガルディー(Lactobacillus hilgardii)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)、テトラジェノコッカス・ハロフイルス(Tetragenococcus halophilus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaseus)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)等を使用することができる。
【0028】
これらの中でもラクトバチルス属やペディオコッカス(Pediococcus)属に属するものが好ましく、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaseus)等が好適である。
【0029】
発酵は培地のpHを測定しながら行い、発酵開始前に対してpH値が1以上、低下した時点を目安に発酵を終了する。
【0030】
発酵が終了した培地は、実施例で詳述するように高濃度のアミノ酸を生成しており、培地を乾燥、粉砕して粉状あるいはペースト状に加工することによりアミノ酸を高濃度に含有する食品を得ることができる。このような粉状(又はペースト状)の加工食品は、手軽に他の食品に添加することができ、幅広く利用することができる。また、培地からアミノ酸を抽出することもでき、得られたアミノ酸抽出物は食品あるいは医薬品分野など広い分野で活用することが可能である。
【0031】
尚、発酵段階において、エビや蟹等の甲殻類から得られるキトサン、桑や笹の葉、リンゴの皮、酒粕等を培地に適宜添加すれば、アミノ酸以外の栄養成分を生成させることもできる。
【実施例】
【0032】
本発明の製造方法によりアミノ酸の生成を行い、生成されるアミノ酸の量を測定した(図2)。
【0033】
「きのこ菌糸の培養」
・タンパク質素材として、玄米、大豆、押麦、そば粉、米ヌカ、乾燥オカラを所定の割合で混合し、水分を全体の57%となるように調整して加え、撹拌混合して、これを培地として瓶に詰め込み通気性のある蓋をする。
・殺菌釜に入れ、120℃にて10時間殺菌した後、放冷する。
・きのこ(エノキタケ)の種菌を接種する。
・培養室にて、15℃から16℃で30日間、菌糸を増殖育成(菌糸培養)する。
・菌糸を培養した培地(菌糸体培地)を培養室から取り出す。
【0034】
培地(試験1区及び2区)の組成を、表1、2に示す。培地は、タンパク質素材である、玄米、大豆、押麦、そば粉、米ヌカ、乾燥オカラを所定量配合し、水を添加し水分量が一定の割合(約57%)となるように調製した。このように調製した培地1区、2区は、ともに菌糸の培養に適したものであり、菌糸を増殖させ、菌廻りを完了させることができた。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
「乳酸菌による発酵」
菌糸培養された菌糸体培地を瓶から掻き出して、発酵機に送り込む。
・発酵機にて30分撹拌した後、乳酸菌(ラクトバチルス属のファーメンタムとブレビス)を投入し撹拌混合する。
・発酵は、密閉型発酵機を使用し、嫌気性発酵条件にて行う。
・発酵温度は35〜36℃に制御し、24時間発酵させる。
・発酵機から取り出し、熟成庫に搬入して10日間熟成させる(pH値5〜6)。
・乾燥機に送入して50〜60℃にて乾燥する。
・篩により粉末を精製しアミノ酸含有の粉末状食品とする。
【0038】
培地100g中に含まれるアミノ酸量を定量した結果を表3、4に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
表3は、タンパク質を構成する標準アミノ酸20種について、試験開始前(菌糸培養前)、菌糸培養後及び乳酸発酵後の培地に含まれるアミノ酸の量を定量分析した結果である。表3に示すように、すべての標準アミノ酸について著しい増加が認められ、乳酸発酵後の標準アミノ酸含有量は試験開始前に比べて、1区で約20倍、2区で16倍もの増量が確認された。
【0042】
表4は、非標準アミノ酸9種について同様に定量分析した結果である。表4に示すように、一部を除く殆どのアミノ酸で著しい増加が認められ、乳酸発酵後の非標準アミノ酸含有量は試験開始前に比べて、1区で約15倍、2区で約12倍もの増量が確認された。
【0043】
【表5】

【0044】
尚、試験1区と2区に含まれるタンパク質、脂質等の成分量は、表5に示すように、大きな変化は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質素材を含有する培地できのこ菌糸を培養した後、乳酸菌を接種して発酵させることにより、アミノ酸を生成することを特徴とするアミノ酸の製造方法。
【請求項2】
タンパク質素材が、玄米、大豆、麦、蕎麦、米糠、おから、粟、きび、胡麻、及び、種子からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載のアミノ酸の製造方法。
【請求項3】
きのこ菌糸が、エノキタケ(Flammulina)属、シロタモギタケ(Hypsizygus)属 、ヒラタケ(Pleurotus)属、サンゴハリタケ(Hericium)属、マイタケ(Grifola)属、シイタケ(Lentinula)属、ハラタケ(Agaricus)属、スギタケ(Pholiota)属、キコブタケ(Phellinus)属、及び、ハナビラタケ(Sparassis)属からなる群から選ばれる1種又は2種以上のきのこ菌糸であることを特徴とする請求項1又は2記載のアミノ酸の製造方法。
【請求項4】
乳酸菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、テトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、及び、ストレプトコッカス(Streptococcus)属からなる群から選ばれる1種又は2種以上の乳酸菌であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアミノ酸の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のアミノ酸の製造方法により、アミノ酸が生成した培地を粉砕し粉末状又はペースト状に加工したアミノ酸含有加工食品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−21966(P2013−21966A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159305(P2011−159305)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(504054066)
【出願人】(594113458)
【Fターム(参考)】