アミノ酸誘導体およびその製造方法
【課題】高収率でかつ高い光学純度で製造できるアミノ酸誘導体及びその製法並びに当該アミノ酸誘導体の製造中間体及びその製法を提供する。
【解決手段】式:
(式中、R1、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基又は置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R7はそれぞれ独立して水素原子又は式:
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12のアリール基)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基)で表わされるアミノ酸誘導体及びその製法並びに当該アミノ酸誘導体の製造中間体及びその製法。
【解決手段】式:
(式中、R1、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基又は置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R7はそれぞれ独立して水素原子又は式:
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜12のアリール基)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基)で表わされるアミノ酸誘導体及びその製法並びに当該アミノ酸誘導体の製造中間体及びその製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸誘導体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、医薬、農薬などの原料、前記医薬、農薬などの製造中間体などに有用なアミノ酸誘導体およびその製造方法、ならびに当該アミノ酸誘導体の製造に有用な製造中間体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然型α−アミノ酸は、生命維持活動に重要な役割を果たすタンパク質の構成成分である。また、非天然型アミノ酸およびその誘導体のなかには、生体に対して生理活性を示す化合物が存在していることが知られている。そのため、新たな生理活性を有する非天然型アミノ酸またはその誘導体の開発や、かかる非天然型アミノ酸またはその誘導体を安価で、かつ効率よく製造する方法の開発が試みられている。
【0003】
非天然型アミノ酸またはその誘導体の製造方法として、例えば、不斉記憶型分子内共役付加反応によって四置換炭素を有する多置換含窒素複素環式化合物をエナンチオ選択的に合成する方法などが本発明者らによって報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
前記方法では、多置換含窒素複素環式化合物は、式:
【0005】
【化1】
【0006】
(式中、Phはフェニル基、Etはエチル基、BOCはtert−ブトキシカルボニル基、t−Buはtert−ブチル基、KHMDSはカリウムヘキサメチルジシラジド、dry DMF−THFは乾燥ジメチルホルムアミド−テトラヒドロキシフランを示す)
で表わされる反応によって生成する。かかる反応では、まず、中間体として、式:
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、Etはエチル基、Phはフェニル基、t−Buはtert−ブチル基を示す)
で表わされるキラルエノラートAが生成すると考えられる。また、このキラルエノラートAが最終生成物である多置換含窒素複素環式化合物に変換すると考えられる。したがって、前記方法では、キラル触媒、不斉補助基などの外部不斉源を用いなくても不斉誘導を行なうことができる。
【0009】
しかしながら、前記キラルエノラートAのラセミ化半減期が短いことから、前記方法では、キラルエノラートAがラセミ化するよりも前にキラルエノラートAを求電子剤と反応させることができなかった場合、所望の化合物の光学純度が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】川端猛夫(Kawabata,T.)ら,オーガニック・アンド・バイオモレキュラー・ケミストリー(Organic & Biomolecular Chemistry),2005年発行,第3巻,pp.1609−1611
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、高収率で、かつ高い光学純度で製造することができるアミノ酸誘導体およびその製造方法、ならびに前記アミノ酸誘導体の製造中間体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
(1) 式(I):
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4はそれぞれ独立して、式(II):
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体、
(2) 式(III):
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4は式(II):
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物を、式(IV):
MN(R6)2 (IV)
(式中、Mはアルカリ金属原子、R6は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜24のトリアルキルシリル基を示す)
で表わされる金属アミドの存在下で、式(V):
【0021】
【化7】
【0022】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R4はそれぞれ独立して、式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物と反応させることを特徴とする式(I):
【0023】
【化8】
【0024】
(式中、R1、R2、R3およびR4は前記と同じ)
で表わされるアミノ酸誘導体の製造方法、
(3) 式(VI):
【0025】
【化9】
【0026】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R7はそれぞれ独立して、水素原子または式(II):
【0027】
【化10】
【0028】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体、ならびに
(4) 式(I):
【0029】
【化11】
【0030】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4はそれぞれ独立して、式(II):
【0031】
【化12】
【0032】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体を、酸を含む非水系溶媒の溶液中で前記酸と反応させて環化させることを特徴とする式(VI):
【0033】
【化13】
【0034】
(式中、R1およびR2は前記と同じ、R7はそれぞれ独立して、水素原子または式(II):
【0035】
【化14】
【0036】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、高収率で、かつ高い光学純度で製造することができるアミノ酸誘導体およびその製造方法、ならびに前記アミノ酸誘導体の製造中間体およびその製造方法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(ジアステレオマー混合物3a/3b)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図2】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図5】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図7】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図8】実施例3で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図9】実施例4で得られたアミノ酸誘導体(化合物7)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図10】実施例5で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図11】実施例6で得られたアミノ酸誘導体(化合物10)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体およびその製造方法〕
本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体は、式(I):
【0040】
【化15】
【0041】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4はそれぞれ独立して、式(II):
【0042】
【化16】
【0043】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる。
【0044】
本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体は、例えば、式(III):
【0045】
【化17】
【0046】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4は式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物を、式(IV):
MN(R6)2 (IV)
(式中、Mはアルカリ金属原子、R6は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜24のトリアルキルシリル基を示す)
で表わされる金属アミドの存在下で、式(V):
【0047】
【化18】
【0048】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R4はそれぞれ独立して、式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物と反応させることにより、製造することができる。
【0049】
式(I)において、R1は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基である。R1は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルキニル基などが挙げられる。置換基としては、酸素原子;硫黄原子;アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基;メチルチオメチル基などのアルキル基の炭素数が1〜4のアルキルチオアルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0051】
置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、インドイル基、インドイルメチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0052】
R2は、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基である。置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基は、R1における置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基と同じである。
【0053】
式(I)において、R3は、炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基である。
【0054】
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜4のアルコキシ基のなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度を向上させる観点から、好ましくはメトキシ基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基のなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度を向上させる観点から、好ましくはメチル基である。アルコキシアルキル基の具体例としては、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−(n−プロピルオキシ)エチル基、2−イソプロピルオキシエチル基、2−(n−ブチルオキシ)エチル基、2−イソブチルオキシエチル基、2−(tert−ブチルオキシ)エチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の収率および光学純度を向上させる観点から、好ましくはメトキシメチル基である。
【0055】
式(I)において、R4は、それぞれ独立して、式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基である。それぞれのR4は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。式(II)において、R5は、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基である。
【0056】
炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基は、R3における炭素数1〜4のアルキル基と同じである。炭素数2〜4のアルケニル基としては、例えば、炭素数2〜4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0057】
炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0058】
R4の具体例としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度を向上させる観点から、好ましくはtert−ブトキシカルボニル基である。
【0059】
式(III)で表わされる化合物は、例えば、出発原料として天然型α−アミノ酸を用いて容易に得ることができる。式(III)におけるR1、R2、R3およびR4は、式(I)におけるR1、R2、R3およびR4と同じである。
【0060】
式(IV)において、Mは、アルカリ金属原子である。前記アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子などが挙げられる。これらのアルカリ金属原子のなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体を高収率で製造する観点から、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子が好ましく、ナトリウム原子またはカリウム原子がより好ましく、カリウム原子がさらに好ましい。
【0061】
式(IV)において、R6は、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜24のトリアルキルシリル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体を高収率かつ高い光学純度で製造する観点から、イソプロピル基が好ましい。炭素数3〜24のトリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体を高収率かつ高い光学純度で製造する観点から、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基またはtert−ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基がより好ましい。
【0062】
式(IV)で表わされる金属アミドの具体例としては、例えば、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムジイソプロピルアミド、カリウムジイソプロピルアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体を高収率かつ高い光学純度で製造する観点から、ナトリウムヘキサメチルジシラジドおよびカリウムヘキサメチルジシラジドが好ましく、カリウムヘキサメチルジシラジドがより好ましい。
【0063】
式(V)において、R1およびR4は、式(I)におけるR1およびR4と同じである。式(V)において、R4は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応は、不活性ガス雰囲気下に式(IV)で表わされる金属アミドを含む溶液中で行なうことができる。
【0065】
前記溶液に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記溶媒は、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体を高収率かつ高い光学純度で製造する観点から、好ましくはトルエンとテトラヒドロフランとの混合溶媒である。トルエンとテトラヒドロフランとの混合溶媒において、トルエン/テトラヒドロフラン(体積比)は、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度を向上させる観点から、好ましくは1/10〜1/1、より好ましくは1/5〜1/3である。
【0066】
前記溶液における金属アミドの濃度は、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の光学純度を向上させる観点から、好ましくは0.3〜2.0体積モル濃度、より好ましくは0.4〜0.6体積モル濃度である。
【0067】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応に際して、式(III)で表わされる化合物に対する式(V)で表わされる化合物の量は、反応時間の短縮、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度の向上、精製の容易性の確保などの観点から、式(III)で表わされる化合物1モルあたり、好ましくは1.5〜5モル、より好ましくは1.5〜2.5モルである。
【0068】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応に際して、用いられる金属アミドの量は、反応時間の短縮、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度の向上、精製の容易性の確保などの観点から、式(III)で表わされる化合物1モルあたり、好ましくは1〜3モル、より好ましくは1〜1.5モルである。
【0069】
不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、窒素ガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0070】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応に際して、反応温度は、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率及び光学純度の向上の観点から、好ましくは−100〜−60℃、より好ましくは−90〜−70℃である。
【0071】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応に際して、反応時間は、式(III)で表わされる化合物、式(V)で表わされる化合物、金属アミド、および前記溶液に用いられる溶媒それぞれの種類などによって異なるので、一概には決定することができないことから、通常、反応完了までに要する時間であればよい。
【0072】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応は、式(III)で表わされる化合物および式(V)で表わされる化合物を、式(IV)で表わされる金属アミドを含む溶液に添加することによって行なうことができる。このとき、金属アミドを含む溶液への式(III)で表わされる化合物および式(V)で表わされる化合物の添加は、金属アミドを含む溶液の温度が前記反応温度に維持しながら行なうことが好ましい。
【0073】
前記反応では、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体の製造中間体は、2種類のジアステレオマーの混合物として得ることができる。また、前記反応では、式(III)で表される化合物の三置換炭素(不斉炭素)の立体配置が維持されたまま進行する。したがって、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)の四置換炭素(不斉炭素)の立体配置は、式(III)で表わされる化合物の三置換炭素(不斉炭素)の立体配置と同じになる。
【0074】
〔アミノ酸誘導体およびその製造方法〕
本発明のアミノ酸誘導体は、式(VI):
【0075】
【化19】
【0076】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R7はそれぞれ独立して、水素原子または式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされる。
【0077】
本発明のアミノ酸誘導体は、例えば、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)を、酸を含む非水系溶媒の溶液中で前記酸と反応させて環化させることによって製造することができる。
【0078】
式(VI)において、R1は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基である。式(VI)において、R1は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基は、式(I)のR1における置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基と同じである。
【0079】
式(VI)において、R2は、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基である。置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基は、式(I)のR2における置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基と同じである。
【0080】
式(VI)において、R7は、それぞれ独立して、水素原子または式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基である。それぞれのR7は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0081】
式(VI)において、R8は炭素数1〜4のアルキレン基である。炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの直鎖アルキレン基;イソプロピレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基などの分枝鎖アルキレン基などが挙げられる。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造が容易であることから、好ましくはメチレン基である。
【0082】
酸を含む非水系溶媒の溶液において、酸としては、例えば、塩化水素、硫酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。かかる酸のなかでは、本発明のアミノ酸誘導体を高収率で、かつ高い光学純度で製造する観点から、好ましくは塩化水素である。非水系溶媒は、本発明の目的を阻害しないものであればよい。非水系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。非水系溶媒のなかでは、留去が容易であることから、好ましくは酢酸エチルである。酸を含む非水系溶媒の溶液の具体例としては、例えば、塩化水素の酢酸エチル溶液、塩化水素のジオキサン溶液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。酸を含む非水系溶媒の溶液において、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応を迅速に進める観点から、酸は、溶液中において飽和状態となっていることが好ましい。
【0083】
式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応に際して、用いられる酸の量は、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)および酸それぞれの種類などによって異なるので、一概には決定することができないことから、通常、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)が環化するに十分な量であればよい。
【0084】
式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応に際して、反応温度は、通常、0〜80℃であればよい。式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応は、通常、室温で行なうことができる。
【0085】
式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応に際して、反応時間は、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)および酸の種類などによって異なるので、一概には決定することができないことから、通常、反応完了までに要する時間であればよい。
【0086】
式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応は、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)の四置換炭素(不斉炭素)の絶対立体配置が維持されたまま進行する。したがって、式(VI)で表わされるアミノ酸誘導体の四置換炭素(不斉炭素)の絶対立体配置は、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)の四置換炭素(不斉炭素)の絶対立体配置と同じになる。
【0087】
以上のように、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)を環化させることによって式(VI)で表わされる本発明のアミノ酸誘導体が得られる。得られた本発明のアミノ酸誘導体には、通常、2種類のジアステレオマーが含まれている。本発明のアミノ酸誘導体は、2種類のジアステレオマーが含まれている状態で使用してもよい。また、本発明のアミノ酸誘導体は、必要により、2種類のジアステレオマーをそれぞれ分離して用いてもよい。2種類のジアステレオマーそれぞれの分離は、例えば、分取薄層クロマトグラフィーなどによって容易に行なうことができる。また、本発明のアミノ酸誘導体は、エステルの状態で使用してもよく、必要により、脱エステル化させて用いてもよい。さらに、本発明のアミノ酸誘導体は、必要により、式(VI)で表わされるアミノ酸誘導体のアルコキシカルボニル基を除去して用いてもよい。以上のようにして得られる本発明のアミノ酸誘導体は、医薬、農薬などの原料、前記医薬、農薬などの製造中間体などに使用することが期待されるものである。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、得られた化合物の物性を測定する際に使用した機器は、以下のとおりである。
【0089】
〔1H-NMRおよび13C-NMR〕
核磁気共鳴装置〔日本電子(株)製、JMN−ECX 400P型〕
〔赤外吸収(IR)〕
赤外吸収装置〔日本分光(株)製、商品名:FT/IR−4200〕
【0090】
実施例1
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)の調製〕
以下に示す化合物1および2を出発物質として用い、式:
【0091】
【化20】
【0092】
(式中、Bnはベンジル基、BOCはtert−ブトキシカルボニル基、MOMはメトキシメチル基、Etはエチル基、KHMDSはカリウムヘキサメチルジシラジド、THFはテトラヒドロキシフランを示す)
で表わされるように、アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)を調製した。
【0093】
アルゴンガス雰囲気下、液温が−78℃に保たれた0.47Mのカリウムヘキサメチルジシラジドのトルエン溶液(0.24mmol)0.51mLに、化合物1(65mg、0.2mmol)と化合物2(140mg、0.4mmol)とを含む無水テトラヒドロキシフラン溶液2.0mLを、45分間かけて滴下した。つぎに、得られた混合物を−78℃にて15分間撹拌した後、得られた反応物を飽和塩化アンモニア水溶液に添加し、酢酸エチルで抽出した。得られた抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過した。得られた濾液から、減圧下に溶媒を留去することによって得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー〔展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(体積比)=7/3〕に供し、アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)からなるジアステレオマー混合物3a/3b(127.8mg、変換後のジアステレオマー比=1/1)を無色油状物質として得た。なお、化合物3aおよび3bを後述のアミノ酸誘導体(化合物4aおよび4b)に導いた後、それぞれを分離し、化合物3aおよび3bそれぞれの物性および光学純度を決定した。
【0094】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(ジアステレオマー混合物3a/3b)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:19.4℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ:1.22 (t, J=7.1 Hz, 3/2H), 1.23 (t, J=7.3 Hz, 3/2H), 1.39-1.60 (m), 2.23-2.36 (m, 1/2H), 2.90-3.40 (m, 5H), 4.12-4.16 (m, 2H), 4.70 (d, J=12.4 Hz, 1/2H), 4.80 (d, J=11.9 Hz, 1/2H), 4.94-5.24 (m, 3H), 7.16-7.37 (m, 5H).
【0095】
実施例1で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(ジアステレオマー混合物3a/3b)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図1に示す。
【0096】
実施例2
〔アミノ酸誘導体(化合物4aおよび4b)の調製〕
実施例1で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)を用いて式:
【0097】
【化21】
【0098】
(式中、Bnはベンジル基、BOCはtert−ブトキシカルボニル基、MOMはメトキシメチル基、Etはエチル基、4N HCl/AcOEtは4N塩化水素の酢酸エチル溶液、Meはメチル基を示す)
に示されるように、アミノ酸誘導体(化合物4aおよび4b)を調製した。
【0099】
実施例1で得られたジアステレオマー混合物3a/3b(45mg、0.07mmol)の酢酸エチル溶液0.6mLに4N塩化水素の酢酸エチル溶液2.0mLを室温にて添加した。得られた混合物を室温にて30分間撹拌した後、得られた反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に添加し、酢酸エチルで抽出した。得られた抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過した。得られた濾液から、減圧下に溶媒を留去することによって得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー〔展開溶媒メタノール/クロロホルム(体積比)=1/9〕に供し、アミノ酸誘導体である化合物4a(10.6mg、収率:50%)および化合物4b(10.7mg、収率:50%、光学純度83%ee)それぞれを無色油状物質として得た。化合物4aおよび4bの物性を決定した。
【0100】
〔アミノ酸誘導体(化合物4a)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:19.1℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:1.27 (t, J=7.4 Hz, 3H), 1.50 (s, 3H), 1.63 (dd, J=12.8, 11.4 Hz, 1H), 1.79 (br s, 2H), 2.00 (dd, J=12.8, 3.6 Hz, 1H), 3.73 (dd, J=11.4, 3.7 Hz, 1H), 3.85 (d, J=13.3 Hz, 1H), 4.01 (d, J=13.3 Hz, 1H), 4.13-4.22 (m, 2H), 5.14 (d, J=12.4 Hz, 1H), 5.20 (d, J=12.4 Hz, 1H), 7.31-7.39 (m, 5H)
【0101】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図2に示す。
【0102】
〔アミノ酸誘導体(化合物4a)の13C-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:重クロロホルム(77ppm)
測定温度:19.1℃
共鳴周波数:100MHz
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)δ:14.1, 20.3, 37.2, 53.5, 55.5, 56.8, 61.2, 67.1, 128.1, 128.4, 128.6, 135.4, 172.8, 175.0.
【0103】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の13C-NMRスペクトルの測定結果を図3に示す。
【0104】
〔アミノ酸誘導体(化合物4a)の赤外吸収〕
<測定条件>
測定法:液膜法
測定温度:20℃
IR (neat) cm-1: 3316, 2963, 2924, 1738, 1456, 1373, 1258, 1132, 1033.
【0105】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の赤外吸収スペクトルの測定結果を図4に示す。
【0106】
〔アミノ酸誘導体(化合物4b)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:18.7℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:1.28 (t, J=7.3 Hz, 3H), 1.31 (s, 3H), 1.36 (dd, J=12.8, 12.8 Hz, 1H), 1.86 (br s, 2H), 2.54 (dd, J=12.8, 3.2 Hz, 1H), 3.45 (dd, J=12.4, 3.2 Hz, 1H), 3.62 (d, J=12.4 Hz, 1H), 3.90 (d, J=12.4 Hz, 1H), 4.15-4.22 (m, 2H), 5.20 (d, J=12.4 Hz, 1H), 5.24 (d, J=12.4 Hz, 1H), 7.31-7.41 (m, 5H).
【0107】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図5に示す。
【0108】
〔アミノ酸誘導体(化合物4b)の13C-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:重クロロホルム(77ppm)
測定温度:19℃
共鳴周波数:100MHz
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)δ:14.1, 28.2, 38.1, 55.6, 58.6, 58.9, 61.1, 67.0, 128.2, 128.4, 128.6, 135.6, 172.4, 175.1.
【0109】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の13C-NMRスペクトルの測定結果を図6に示す。
【0110】
〔アミノ酸誘導体(化合物4b)の赤外吸収〕
<測定条件>
測定法:液膜法
測定温度:20℃
IR (neat) cm-1: 3322, 2966, 2925, 1735, 1455, 1374, 1287, 1263, 1191, 1149, 1097, 1040.
【0111】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の赤外吸収スペクトルの測定結果を図7に示す。
【0112】
実施例3
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)の調製〕
実施例1において、化合物1の代わりに、以下に示す化合物5を用いたことおよび混合物を−78℃にて15分間撹拌する代わりに、混合物を−78℃にて30分間撹拌したことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、式:
【0113】
【化22】
【0114】
(式中、Phはフェニル基、Bnはベンジル基、BOCはtert−ブトキシカルボニル基、MOMはメトキシメチル基、Etはエチル基、KHMDSはカリウムヘキサメチルジシラジド、THFはテトラヒドロキシフランを示す)
に示されるように、アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)を得た。
【0115】
アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)を後述のアミノ酸誘導体(化合物7)に導いた後、それぞれを分離し、アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)の物性を決定した。
【0116】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:19.2℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:1.26 (t, J=7.3 Hz, 3H), 1.44-1.50 (m, 27 H), 2.82 (br s, 1H), 3.03 (br s, 3H), 3.11-3.70 (m, 3H), 4.13-4.21 (m, 2H), 4.50-4.53 (m, 1H), 4.97 (d, J=12.0 Hz, 1H), 5.06-5.30 (m, 3H), 7.08-7.35 (m, 10H).
【0117】
実施例3で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図8に示す。
【0118】
実施例4
〔アミノ酸誘導体(化合物7)の調製〕
実施例2において、実施例1で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)の代わりに実施例3で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)を用いたことを除き、実施例2と同様の操作を行ない、式:
【0119】
【化23】
【0120】
(式中、Bnはベンジル基、Phはフェニル基、およびEtはエチル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体(化合物7)を得た(収率:87%、光学純度:94%ee)。アミノ酸誘導体(化合物7)の物性を決定した。
【0121】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物7)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:19.2℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:1.28 (t, J=6.9 Hz, 3H), 1.49 (t, J=12.4 Hz, 1H), 1.76 (br s, 2H), 2.55 (dd, J=2.8, 12.8 Hz, 1H), 2.83 (d, J=13.3 Hz, 1H), 2.96 (d, J=13.3 Hz, 1H), 3.38 (dd, J=2.8, 12.8 Hz, 1H), 3.63 (d, J=12.4 Hz, 1H), 3.89 (d, J=12.4 Hz, 1H), 4.10-4.26 (m, 2H), 5.13 (s, 2H), 7.00-7.02 (m, 2H), 7.22-7.37 (m, 8H).
【0122】
実施例4で得られたアミノ酸誘導体(化合物7)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図9に示す。
【0123】
実施例5
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)の調製〕
実施例1において、化合物1の代わりに、以下に示す化合物8を用いたことおよび混合物を−78℃にて15分間撹拌する代わりに、混合物を−78℃にて150分間撹拌したことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、式:
【0124】
【化24】
【0125】
(式中、Bnはベンジル基、BOCはtert−ブトキシカルボニル基、MOMはメトキシメチル基、Etはエチル基、KHMDSはカリウムヘキサメチルジシラジド、THFはテトラヒドロキシフランを示す)
に示されるように、アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)を得た。
【0126】
なお、化合物8を後述のアミノ酸誘導体(化合物9)に導いた後、それぞれを分離し、化合物9の物性を決定した。
【0127】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:18.7℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:1.31 (t, J=6.9 Hz, 3H), 1.44-1.51 (m, 36H), 2.26-2.61 (m, 3H), 3.18-3.25 (m, 3H), 4.07-4.20 (m, 2H), 4.50-4.60 (m, 1H), 4.90-5.20 (m, 4H), 7.24-7.40 (m, 5H).
【0128】
実施例5で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図10に示す。
【0129】
実施例6
〔アミノ酸誘導体(化合物10)の調製〕
実施例2において、実施例1で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)の代わりに実施例5で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)を用いたことを除き、実施例2と同様の操作を行ない、
【0130】
【化25】
【0131】
(式中、Bnはベンジル基、およびEtはエチル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体(化合物10)を得た(収率:30%、光学純度:99%ee)。化合物10の物性を決定した。
【0132】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物10)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:19.5℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:0.85 (d, J=6.9 Hz, 3H), 0.90 (d, J=6.9 Hz, 3H), 1.29 (t, J=7.4 Hz, 3H), 1.38 (t, J=12.4 Hz, 1H), 1.59 (br s, 2H), 1.80 (m, 1H), 2.42 (dd, J=3.2, 12.4 Hz, 1H), 3.45 (dd, J=2.8, 12.4 Hz, 1H), 3.61 (d, J=12.4 Hz, 1H), 3.92 (d, J=12.4 Hz, 1H), 4.14-4.24 (m, 2H), 5.18 (d, J=12.4 Hz, 1H), 5.25 (d, J=12.4 H, 1H), 7.32-7.40 (m, 5H).
【0133】
実施例6で得られたアミノ酸誘導体(化合物10)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図11に示す。
【0134】
以上の結果から、入手が容易なアミノ酸から得られる式(III)で表わされる化合物を、式(IV)で表わされる金属アミドの存在下で、式(V)で表わされる化合物と反応させることによって式(I)で表わされるアミノ酸誘導体の製造中間体を調製し、得られた製造中間体を、酸を含む非水系溶媒中で環化させることにより、高収率で、かつ高い光学純度でアミノ酸誘導体を製造することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明のアミノ酸誘導体は、医薬、農薬などの製造などにおけるキラルビルディングブロックとして重要な役割を果たすことが期待される。また、本発明のアミノ酸誘導体の製造方法によれば、高収率で、かつ高い光学純度でアミノ酸誘導体を得ることができる。一般的に、生体に対して生理活性を発現する生理活性物質は、不斉中心を有する光学活性化合物である場合が多いことから、当該生理活性物質の立体配置が、その生理活性の発現に影響を及ぼすと考えられる。したがって、本発明のアミノ酸誘導体、その製造中間体、およびそれらの製造方法は、医薬、農薬などの原料、前記医薬、農薬などの製造中間体などの開発に有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸誘導体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、医薬、農薬などの原料、前記医薬、農薬などの製造中間体などに有用なアミノ酸誘導体およびその製造方法、ならびに当該アミノ酸誘導体の製造に有用な製造中間体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然型α−アミノ酸は、生命維持活動に重要な役割を果たすタンパク質の構成成分である。また、非天然型アミノ酸およびその誘導体のなかには、生体に対して生理活性を示す化合物が存在していることが知られている。そのため、新たな生理活性を有する非天然型アミノ酸またはその誘導体の開発や、かかる非天然型アミノ酸またはその誘導体を安価で、かつ効率よく製造する方法の開発が試みられている。
【0003】
非天然型アミノ酸またはその誘導体の製造方法として、例えば、不斉記憶型分子内共役付加反応によって四置換炭素を有する多置換含窒素複素環式化合物をエナンチオ選択的に合成する方法などが本発明者らによって報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
前記方法では、多置換含窒素複素環式化合物は、式:
【0005】
【化1】
【0006】
(式中、Phはフェニル基、Etはエチル基、BOCはtert−ブトキシカルボニル基、t−Buはtert−ブチル基、KHMDSはカリウムヘキサメチルジシラジド、dry DMF−THFは乾燥ジメチルホルムアミド−テトラヒドロキシフランを示す)
で表わされる反応によって生成する。かかる反応では、まず、中間体として、式:
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、Etはエチル基、Phはフェニル基、t−Buはtert−ブチル基を示す)
で表わされるキラルエノラートAが生成すると考えられる。また、このキラルエノラートAが最終生成物である多置換含窒素複素環式化合物に変換すると考えられる。したがって、前記方法では、キラル触媒、不斉補助基などの外部不斉源を用いなくても不斉誘導を行なうことができる。
【0009】
しかしながら、前記キラルエノラートAのラセミ化半減期が短いことから、前記方法では、キラルエノラートAがラセミ化するよりも前にキラルエノラートAを求電子剤と反応させることができなかった場合、所望の化合物の光学純度が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】川端猛夫(Kawabata,T.)ら,オーガニック・アンド・バイオモレキュラー・ケミストリー(Organic & Biomolecular Chemistry),2005年発行,第3巻,pp.1609−1611
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、高収率で、かつ高い光学純度で製造することができるアミノ酸誘導体およびその製造方法、ならびに前記アミノ酸誘導体の製造中間体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
(1) 式(I):
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4はそれぞれ独立して、式(II):
【0015】
【化4】
【0016】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体、
(2) 式(III):
【0017】
【化5】
【0018】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4は式(II):
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物を、式(IV):
MN(R6)2 (IV)
(式中、Mはアルカリ金属原子、R6は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜24のトリアルキルシリル基を示す)
で表わされる金属アミドの存在下で、式(V):
【0021】
【化7】
【0022】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R4はそれぞれ独立して、式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物と反応させることを特徴とする式(I):
【0023】
【化8】
【0024】
(式中、R1、R2、R3およびR4は前記と同じ)
で表わされるアミノ酸誘導体の製造方法、
(3) 式(VI):
【0025】
【化9】
【0026】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R7はそれぞれ独立して、水素原子または式(II):
【0027】
【化10】
【0028】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体、ならびに
(4) 式(I):
【0029】
【化11】
【0030】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4はそれぞれ独立して、式(II):
【0031】
【化12】
【0032】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体を、酸を含む非水系溶媒の溶液中で前記酸と反応させて環化させることを特徴とする式(VI):
【0033】
【化13】
【0034】
(式中、R1およびR2は前記と同じ、R7はそれぞれ独立して、水素原子または式(II):
【0035】
【化14】
【0036】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、高収率で、かつ高い光学純度で製造することができるアミノ酸誘導体およびその製造方法、ならびに前記アミノ酸誘導体の製造中間体およびその製造方法を提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(ジアステレオマー混合物3a/3b)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図2】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図5】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図6】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の13C-NMRスペクトルを示す図である。
【図7】実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図8】実施例3で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図9】実施例4で得られたアミノ酸誘導体(化合物7)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図10】実施例5で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図11】実施例6で得られたアミノ酸誘導体(化合物10)の1H-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体およびその製造方法〕
本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体は、式(I):
【0040】
【化15】
【0041】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4はそれぞれ独立して、式(II):
【0042】
【化16】
【0043】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる。
【0044】
本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体は、例えば、式(III):
【0045】
【化17】
【0046】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4は式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物を、式(IV):
MN(R6)2 (IV)
(式中、Mはアルカリ金属原子、R6は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜24のトリアルキルシリル基を示す)
で表わされる金属アミドの存在下で、式(V):
【0047】
【化18】
【0048】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R4はそれぞれ独立して、式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物と反応させることにより、製造することができる。
【0049】
式(I)において、R1は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基である。R1は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルケニル基、置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルキニル基などが挙げられる。置換基としては、酸素原子;硫黄原子;アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などの炭素数1〜4のアルコキシ基;メチルチオメチル基などのアルキル基の炭素数が1〜4のアルキルチオアルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0051】
置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、チオフェニル基、フリル基、インドイル基、インドイルメチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0052】
R2は、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基である。置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基は、R1における置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基と同じである。
【0053】
式(I)において、R3は、炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基である。
【0054】
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。炭素数1〜4のアルコキシ基のなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度を向上させる観点から、好ましくはメトキシ基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基のなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度を向上させる観点から、好ましくはメチル基である。アルコキシアルキル基の具体例としては、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−(n−プロピルオキシ)エチル基、2−イソプロピルオキシエチル基、2−(n−ブチルオキシ)エチル基、2−イソブチルオキシエチル基、2−(tert−ブチルオキシ)エチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の収率および光学純度を向上させる観点から、好ましくはメトキシメチル基である。
【0055】
式(I)において、R4は、それぞれ独立して、式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基である。それぞれのR4は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。式(II)において、R5は、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基である。
【0056】
炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、炭素数2〜4のアルキニル基などが挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基は、R3における炭素数1〜4のアルキル基と同じである。炭素数2〜4のアルケニル基としては、例えば、炭素数2〜4のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基を有してもよい炭素数2〜4のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0057】
炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0058】
R4の具体例としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度を向上させる観点から、好ましくはtert−ブトキシカルボニル基である。
【0059】
式(III)で表わされる化合物は、例えば、出発原料として天然型α−アミノ酸を用いて容易に得ることができる。式(III)におけるR1、R2、R3およびR4は、式(I)におけるR1、R2、R3およびR4と同じである。
【0060】
式(IV)において、Mは、アルカリ金属原子である。前記アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子などが挙げられる。これらのアルカリ金属原子のなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体を高収率で製造する観点から、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子が好ましく、ナトリウム原子またはカリウム原子がより好ましく、カリウム原子がさらに好ましい。
【0061】
式(IV)において、R6は、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜24のトリアルキルシリル基である。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体を高収率かつ高い光学純度で製造する観点から、イソプロピル基が好ましい。炭素数3〜24のトリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体を高収率かつ高い光学純度で製造する観点から、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基またはtert−ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基がより好ましい。
【0062】
式(IV)で表わされる金属アミドの具体例としては、例えば、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムジイソプロピルアミド、カリウムジイソプロピルアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体を高収率かつ高い光学純度で製造する観点から、ナトリウムヘキサメチルジシラジドおよびカリウムヘキサメチルジシラジドが好ましく、カリウムヘキサメチルジシラジドがより好ましい。
【0063】
式(V)において、R1およびR4は、式(I)におけるR1およびR4と同じである。式(V)において、R4は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応は、不活性ガス雰囲気下に式(IV)で表わされる金属アミドを含む溶液中で行なうことができる。
【0065】
前記溶液に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記溶媒は、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体を高収率かつ高い光学純度で製造する観点から、好ましくはトルエンとテトラヒドロフランとの混合溶媒である。トルエンとテトラヒドロフランとの混合溶媒において、トルエン/テトラヒドロフラン(体積比)は、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度を向上させる観点から、好ましくは1/10〜1/1、より好ましくは1/5〜1/3である。
【0066】
前記溶液における金属アミドの濃度は、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の光学純度を向上させる観点から、好ましくは0.3〜2.0体積モル濃度、より好ましくは0.4〜0.6体積モル濃度である。
【0067】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応に際して、式(III)で表わされる化合物に対する式(V)で表わされる化合物の量は、反応時間の短縮、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度の向上、精製の容易性の確保などの観点から、式(III)で表わされる化合物1モルあたり、好ましくは1.5〜5モル、より好ましくは1.5〜2.5モルである。
【0068】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応に際して、用いられる金属アミドの量は、反応時間の短縮、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率および光学純度の向上、精製の容易性の確保などの観点から、式(III)で表わされる化合物1モルあたり、好ましくは1〜3モル、より好ましくは1〜1.5モルである。
【0069】
不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、窒素ガスなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0070】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応に際して、反応温度は、本発明のアミノ酸誘導体の製造中間体の収率及び光学純度の向上の観点から、好ましくは−100〜−60℃、より好ましくは−90〜−70℃である。
【0071】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応に際して、反応時間は、式(III)で表わされる化合物、式(V)で表わされる化合物、金属アミド、および前記溶液に用いられる溶媒それぞれの種類などによって異なるので、一概には決定することができないことから、通常、反応完了までに要する時間であればよい。
【0072】
式(III)で表わされる化合物と式(V)で表わされる化合物との反応は、式(III)で表わされる化合物および式(V)で表わされる化合物を、式(IV)で表わされる金属アミドを含む溶液に添加することによって行なうことができる。このとき、金属アミドを含む溶液への式(III)で表わされる化合物および式(V)で表わされる化合物の添加は、金属アミドを含む溶液の温度が前記反応温度に維持しながら行なうことが好ましい。
【0073】
前記反応では、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体の製造中間体は、2種類のジアステレオマーの混合物として得ることができる。また、前記反応では、式(III)で表される化合物の三置換炭素(不斉炭素)の立体配置が維持されたまま進行する。したがって、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)の四置換炭素(不斉炭素)の立体配置は、式(III)で表わされる化合物の三置換炭素(不斉炭素)の立体配置と同じになる。
【0074】
〔アミノ酸誘導体およびその製造方法〕
本発明のアミノ酸誘導体は、式(VI):
【0075】
【化19】
【0076】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R7はそれぞれ独立して、水素原子または式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされる。
【0077】
本発明のアミノ酸誘導体は、例えば、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)を、酸を含む非水系溶媒の溶液中で前記酸と反応させて環化させることによって製造することができる。
【0078】
式(VI)において、R1は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基である。式(VI)において、R1は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基は、式(I)のR1における置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基と同じである。
【0079】
式(VI)において、R2は、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基である。置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基は、式(I)のR2における置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基および置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基と同じである。
【0080】
式(VI)において、R7は、それぞれ独立して、水素原子または式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基である。それぞれのR7は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0081】
式(VI)において、R8は炭素数1〜4のアルキレン基である。炭素数1〜4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの直鎖アルキレン基;イソプロピレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基などの分枝鎖アルキレン基などが挙げられる。これらのなかでは、本発明のアミノ酸誘導体の製造が容易であることから、好ましくはメチレン基である。
【0082】
酸を含む非水系溶媒の溶液において、酸としては、例えば、塩化水素、硫酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。かかる酸のなかでは、本発明のアミノ酸誘導体を高収率で、かつ高い光学純度で製造する観点から、好ましくは塩化水素である。非水系溶媒は、本発明の目的を阻害しないものであればよい。非水系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。非水系溶媒のなかでは、留去が容易であることから、好ましくは酢酸エチルである。酸を含む非水系溶媒の溶液の具体例としては、例えば、塩化水素の酢酸エチル溶液、塩化水素のジオキサン溶液などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。酸を含む非水系溶媒の溶液において、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応を迅速に進める観点から、酸は、溶液中において飽和状態となっていることが好ましい。
【0083】
式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応に際して、用いられる酸の量は、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)および酸それぞれの種類などによって異なるので、一概には決定することができないことから、通常、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)が環化するに十分な量であればよい。
【0084】
式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応に際して、反応温度は、通常、0〜80℃であればよい。式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応は、通常、室温で行なうことができる。
【0085】
式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応に際して、反応時間は、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)および酸の種類などによって異なるので、一概には決定することができないことから、通常、反応完了までに要する時間であればよい。
【0086】
式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)と酸との反応は、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)の四置換炭素(不斉炭素)の絶対立体配置が維持されたまま進行する。したがって、式(VI)で表わされるアミノ酸誘導体の四置換炭素(不斉炭素)の絶対立体配置は、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)の四置換炭素(不斉炭素)の絶対立体配置と同じになる。
【0087】
以上のように、式(I)で表わされるアミノ酸誘導体(製造中間体)を環化させることによって式(VI)で表わされる本発明のアミノ酸誘導体が得られる。得られた本発明のアミノ酸誘導体には、通常、2種類のジアステレオマーが含まれている。本発明のアミノ酸誘導体は、2種類のジアステレオマーが含まれている状態で使用してもよい。また、本発明のアミノ酸誘導体は、必要により、2種類のジアステレオマーをそれぞれ分離して用いてもよい。2種類のジアステレオマーそれぞれの分離は、例えば、分取薄層クロマトグラフィーなどによって容易に行なうことができる。また、本発明のアミノ酸誘導体は、エステルの状態で使用してもよく、必要により、脱エステル化させて用いてもよい。さらに、本発明のアミノ酸誘導体は、必要により、式(VI)で表わされるアミノ酸誘導体のアルコキシカルボニル基を除去して用いてもよい。以上のようにして得られる本発明のアミノ酸誘導体は、医薬、農薬などの原料、前記医薬、農薬などの製造中間体などに使用することが期待されるものである。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、得られた化合物の物性を測定する際に使用した機器は、以下のとおりである。
【0089】
〔1H-NMRおよび13C-NMR〕
核磁気共鳴装置〔日本電子(株)製、JMN−ECX 400P型〕
〔赤外吸収(IR)〕
赤外吸収装置〔日本分光(株)製、商品名:FT/IR−4200〕
【0090】
実施例1
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)の調製〕
以下に示す化合物1および2を出発物質として用い、式:
【0091】
【化20】
【0092】
(式中、Bnはベンジル基、BOCはtert−ブトキシカルボニル基、MOMはメトキシメチル基、Etはエチル基、KHMDSはカリウムヘキサメチルジシラジド、THFはテトラヒドロキシフランを示す)
で表わされるように、アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)を調製した。
【0093】
アルゴンガス雰囲気下、液温が−78℃に保たれた0.47Mのカリウムヘキサメチルジシラジドのトルエン溶液(0.24mmol)0.51mLに、化合物1(65mg、0.2mmol)と化合物2(140mg、0.4mmol)とを含む無水テトラヒドロキシフラン溶液2.0mLを、45分間かけて滴下した。つぎに、得られた混合物を−78℃にて15分間撹拌した後、得られた反応物を飽和塩化アンモニア水溶液に添加し、酢酸エチルで抽出した。得られた抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過した。得られた濾液から、減圧下に溶媒を留去することによって得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー〔展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル(体積比)=7/3〕に供し、アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)からなるジアステレオマー混合物3a/3b(127.8mg、変換後のジアステレオマー比=1/1)を無色油状物質として得た。なお、化合物3aおよび3bを後述のアミノ酸誘導体(化合物4aおよび4b)に導いた後、それぞれを分離し、化合物3aおよび3bそれぞれの物性および光学純度を決定した。
【0094】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(ジアステレオマー混合物3a/3b)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:19.4℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400MHz, CDCl3)δ:1.22 (t, J=7.1 Hz, 3/2H), 1.23 (t, J=7.3 Hz, 3/2H), 1.39-1.60 (m), 2.23-2.36 (m, 1/2H), 2.90-3.40 (m, 5H), 4.12-4.16 (m, 2H), 4.70 (d, J=12.4 Hz, 1/2H), 4.80 (d, J=11.9 Hz, 1/2H), 4.94-5.24 (m, 3H), 7.16-7.37 (m, 5H).
【0095】
実施例1で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(ジアステレオマー混合物3a/3b)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図1に示す。
【0096】
実施例2
〔アミノ酸誘導体(化合物4aおよび4b)の調製〕
実施例1で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)を用いて式:
【0097】
【化21】
【0098】
(式中、Bnはベンジル基、BOCはtert−ブトキシカルボニル基、MOMはメトキシメチル基、Etはエチル基、4N HCl/AcOEtは4N塩化水素の酢酸エチル溶液、Meはメチル基を示す)
に示されるように、アミノ酸誘導体(化合物4aおよび4b)を調製した。
【0099】
実施例1で得られたジアステレオマー混合物3a/3b(45mg、0.07mmol)の酢酸エチル溶液0.6mLに4N塩化水素の酢酸エチル溶液2.0mLを室温にて添加した。得られた混合物を室温にて30分間撹拌した後、得られた反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に添加し、酢酸エチルで抽出した。得られた抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過した。得られた濾液から、減圧下に溶媒を留去することによって得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー〔展開溶媒メタノール/クロロホルム(体積比)=1/9〕に供し、アミノ酸誘導体である化合物4a(10.6mg、収率:50%)および化合物4b(10.7mg、収率:50%、光学純度83%ee)それぞれを無色油状物質として得た。化合物4aおよび4bの物性を決定した。
【0100】
〔アミノ酸誘導体(化合物4a)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:19.1℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:1.27 (t, J=7.4 Hz, 3H), 1.50 (s, 3H), 1.63 (dd, J=12.8, 11.4 Hz, 1H), 1.79 (br s, 2H), 2.00 (dd, J=12.8, 3.6 Hz, 1H), 3.73 (dd, J=11.4, 3.7 Hz, 1H), 3.85 (d, J=13.3 Hz, 1H), 4.01 (d, J=13.3 Hz, 1H), 4.13-4.22 (m, 2H), 5.14 (d, J=12.4 Hz, 1H), 5.20 (d, J=12.4 Hz, 1H), 7.31-7.39 (m, 5H)
【0101】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図2に示す。
【0102】
〔アミノ酸誘導体(化合物4a)の13C-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:重クロロホルム(77ppm)
測定温度:19.1℃
共鳴周波数:100MHz
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)δ:14.1, 20.3, 37.2, 53.5, 55.5, 56.8, 61.2, 67.1, 128.1, 128.4, 128.6, 135.4, 172.8, 175.0.
【0103】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の13C-NMRスペクトルの測定結果を図3に示す。
【0104】
〔アミノ酸誘導体(化合物4a)の赤外吸収〕
<測定条件>
測定法:液膜法
測定温度:20℃
IR (neat) cm-1: 3316, 2963, 2924, 1738, 1456, 1373, 1258, 1132, 1033.
【0105】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4a)の赤外吸収スペクトルの測定結果を図4に示す。
【0106】
〔アミノ酸誘導体(化合物4b)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:18.7℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:1.28 (t, J=7.3 Hz, 3H), 1.31 (s, 3H), 1.36 (dd, J=12.8, 12.8 Hz, 1H), 1.86 (br s, 2H), 2.54 (dd, J=12.8, 3.2 Hz, 1H), 3.45 (dd, J=12.4, 3.2 Hz, 1H), 3.62 (d, J=12.4 Hz, 1H), 3.90 (d, J=12.4 Hz, 1H), 4.15-4.22 (m, 2H), 5.20 (d, J=12.4 Hz, 1H), 5.24 (d, J=12.4 Hz, 1H), 7.31-7.41 (m, 5H).
【0107】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図5に示す。
【0108】
〔アミノ酸誘導体(化合物4b)の13C-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:重クロロホルム(77ppm)
測定温度:19℃
共鳴周波数:100MHz
13C-NMR (100 MHz, CDCl3)δ:14.1, 28.2, 38.1, 55.6, 58.6, 58.9, 61.1, 67.0, 128.2, 128.4, 128.6, 135.6, 172.4, 175.1.
【0109】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の13C-NMRスペクトルの測定結果を図6に示す。
【0110】
〔アミノ酸誘導体(化合物4b)の赤外吸収〕
<測定条件>
測定法:液膜法
測定温度:20℃
IR (neat) cm-1: 3322, 2966, 2925, 1735, 1455, 1374, 1287, 1263, 1191, 1149, 1097, 1040.
【0111】
実施例2で得られたアミノ酸誘導体(化合物4b)の赤外吸収スペクトルの測定結果を図7に示す。
【0112】
実施例3
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)の調製〕
実施例1において、化合物1の代わりに、以下に示す化合物5を用いたことおよび混合物を−78℃にて15分間撹拌する代わりに、混合物を−78℃にて30分間撹拌したことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、式:
【0113】
【化22】
【0114】
(式中、Phはフェニル基、Bnはベンジル基、BOCはtert−ブトキシカルボニル基、MOMはメトキシメチル基、Etはエチル基、KHMDSはカリウムヘキサメチルジシラジド、THFはテトラヒドロキシフランを示す)
に示されるように、アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)を得た。
【0115】
アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)を後述のアミノ酸誘導体(化合物7)に導いた後、それぞれを分離し、アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)の物性を決定した。
【0116】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:19.2℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:1.26 (t, J=7.3 Hz, 3H), 1.44-1.50 (m, 27 H), 2.82 (br s, 1H), 3.03 (br s, 3H), 3.11-3.70 (m, 3H), 4.13-4.21 (m, 2H), 4.50-4.53 (m, 1H), 4.97 (d, J=12.0 Hz, 1H), 5.06-5.30 (m, 3H), 7.08-7.35 (m, 10H).
【0117】
実施例3で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図8に示す。
【0118】
実施例4
〔アミノ酸誘導体(化合物7)の調製〕
実施例2において、実施例1で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)の代わりに実施例3で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物6)を用いたことを除き、実施例2と同様の操作を行ない、式:
【0119】
【化23】
【0120】
(式中、Bnはベンジル基、Phはフェニル基、およびEtはエチル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体(化合物7)を得た(収率:87%、光学純度:94%ee)。アミノ酸誘導体(化合物7)の物性を決定した。
【0121】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物7)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:19.2℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:1.28 (t, J=6.9 Hz, 3H), 1.49 (t, J=12.4 Hz, 1H), 1.76 (br s, 2H), 2.55 (dd, J=2.8, 12.8 Hz, 1H), 2.83 (d, J=13.3 Hz, 1H), 2.96 (d, J=13.3 Hz, 1H), 3.38 (dd, J=2.8, 12.8 Hz, 1H), 3.63 (d, J=12.4 Hz, 1H), 3.89 (d, J=12.4 Hz, 1H), 4.10-4.26 (m, 2H), 5.13 (s, 2H), 7.00-7.02 (m, 2H), 7.22-7.37 (m, 8H).
【0122】
実施例4で得られたアミノ酸誘導体(化合物7)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図9に示す。
【0123】
実施例5
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)の調製〕
実施例1において、化合物1の代わりに、以下に示す化合物8を用いたことおよび混合物を−78℃にて15分間撹拌する代わりに、混合物を−78℃にて150分間撹拌したことを除き、実施例1と同様の操作を行ない、式:
【0124】
【化24】
【0125】
(式中、Bnはベンジル基、BOCはtert−ブトキシカルボニル基、MOMはメトキシメチル基、Etはエチル基、KHMDSはカリウムヘキサメチルジシラジド、THFはテトラヒドロキシフランを示す)
に示されるように、アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)を得た。
【0126】
なお、化合物8を後述のアミノ酸誘導体(化合物9)に導いた後、それぞれを分離し、化合物9の物性を決定した。
【0127】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:18.7℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:1.31 (t, J=6.9 Hz, 3H), 1.44-1.51 (m, 36H), 2.26-2.61 (m, 3H), 3.18-3.25 (m, 3H), 4.07-4.20 (m, 2H), 4.50-4.60 (m, 1H), 4.90-5.20 (m, 4H), 7.24-7.40 (m, 5H).
【0128】
実施例5で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図10に示す。
【0129】
実施例6
〔アミノ酸誘導体(化合物10)の調製〕
実施例2において、実施例1で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物3aおよび3b)の代わりに実施例5で得られたアミノ酸誘導体の製造中間体(化合物9)を用いたことを除き、実施例2と同様の操作を行ない、
【0130】
【化25】
【0131】
(式中、Bnはベンジル基、およびEtはエチル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体(化合物10)を得た(収率:30%、光学純度:99%ee)。化合物10の物性を決定した。
【0132】
〔アミノ酸誘導体の製造中間体(化合物10)の1H-NMR〕
<測定条件>
溶媒:重クロロホルム(CDCl3)
内部標準:テトラメチルシラン(0ppm)
測定温度:19.5℃
共鳴周波数:400MHz
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ:0.85 (d, J=6.9 Hz, 3H), 0.90 (d, J=6.9 Hz, 3H), 1.29 (t, J=7.4 Hz, 3H), 1.38 (t, J=12.4 Hz, 1H), 1.59 (br s, 2H), 1.80 (m, 1H), 2.42 (dd, J=3.2, 12.4 Hz, 1H), 3.45 (dd, J=2.8, 12.4 Hz, 1H), 3.61 (d, J=12.4 Hz, 1H), 3.92 (d, J=12.4 Hz, 1H), 4.14-4.24 (m, 2H), 5.18 (d, J=12.4 Hz, 1H), 5.25 (d, J=12.4 H, 1H), 7.32-7.40 (m, 5H).
【0133】
実施例6で得られたアミノ酸誘導体(化合物10)の1H-NMRスペクトルの測定結果を図11に示す。
【0134】
以上の結果から、入手が容易なアミノ酸から得られる式(III)で表わされる化合物を、式(IV)で表わされる金属アミドの存在下で、式(V)で表わされる化合物と反応させることによって式(I)で表わされるアミノ酸誘導体の製造中間体を調製し、得られた製造中間体を、酸を含む非水系溶媒中で環化させることにより、高収率で、かつ高い光学純度でアミノ酸誘導体を製造することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明のアミノ酸誘導体は、医薬、農薬などの製造などにおけるキラルビルディングブロックとして重要な役割を果たすことが期待される。また、本発明のアミノ酸誘導体の製造方法によれば、高収率で、かつ高い光学純度でアミノ酸誘導体を得ることができる。一般的に、生体に対して生理活性を発現する生理活性物質は、不斉中心を有する光学活性化合物である場合が多いことから、当該生理活性物質の立体配置が、その生理活性の発現に影響を及ぼすと考えられる。したがって、本発明のアミノ酸誘導体、その製造中間体、およびそれらの製造方法は、医薬、農薬などの原料、前記医薬、農薬などの製造中間体などの開発に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4はそれぞれ独立して、式(II):
【化2】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体。
【請求項2】
式(III):
【化3】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4は式(II):
【化4】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物を、式(IV):
MN(R6)2 (IV)
(式中、Mはアルカリ金属原子、R6は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜24のトリアルキルシリル基を示す)
で表わされる金属アミドの存在下で、式(V):
【化5】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R4はそれぞれ独立して、式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物と反応させることを特徴とする式(I):
【化6】
(式中、R1、R2、R3およびR4は前記と同じ)
で表わされるアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項3】
式(VI):
【化7】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R7はそれぞれ独立して、水素原子または式(II):
【化8】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体。
【請求項4】
式(I):
【化9】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4はそれぞれ独立して、式(II):
【化10】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体を、酸を含む非水系溶媒の溶液中で前記酸と反応させて環化させることを特徴とする式(VI):
【化11】
(式中、R1およびR2は前記と同じ、R7はそれぞれ独立して、水素原子または式(II):
【化12】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4はそれぞれ独立して、式(II):
【化2】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体。
【請求項2】
式(III):
【化3】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4は式(II):
【化4】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物を、式(IV):
MN(R6)2 (IV)
(式中、Mはアルカリ金属原子、R6は炭素数1〜4のアルキル基または炭素数3〜24のトリアルキルシリル基を示す)
で表わされる金属アミドの存在下で、式(V):
【化5】
(式中、R1は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R4はそれぞれ独立して、式(II)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされる化合物と反応させることを特徴とする式(I):
【化6】
(式中、R1、R2、R3およびR4は前記と同じ)
で表わされるアミノ酸誘導体の製造方法。
【請求項3】
式(VI):
【化7】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R7はそれぞれ独立して、水素原子または式(II):
【化8】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体。
【請求項4】
式(I):
【化9】
(式中、R1はそれぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R2は置換基を有してもよい炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、R3は炭素数1〜4のアルコキシ基と炭素数1〜4のアルキル基とを有するアルコキシアルキル基、R4はそれぞれ独立して、式(II):
【化10】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体を、酸を含む非水系溶媒の溶液中で前記酸と反応させて環化させることを特徴とする式(VI):
【化11】
(式中、R1およびR2は前記と同じ、R7はそれぞれ独立して、水素原子または式(II):
【化12】
(式中、R5は炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜12のアリール基を示す)で表わされるアルコキシカルボニル基、R8は炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノ酸誘導体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−28573(P2013−28573A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167310(P2011−167310)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載年月日:2011年2月1日 掲載アドレス: http://nenkai.pharm.or.jp/131/web/ http://nenkai.pharm.or.jp/131/pc/imulti_result.asp http://nenkai.pharm.or.jp/131/pc/ipdfview.asp?i=2669
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載年月日:2011年2月1日 掲載アドレス: http://nenkai.pharm.or.jp/131/web/ http://nenkai.pharm.or.jp/131/pc/imulti_result.asp http://nenkai.pharm.or.jp/131/pc/ipdfview.asp?i=2669
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
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