説明

アミノ酸誘導体

式(I)または式(II):


[式中、R1はカルボキシ、カルボキシエステルまたはカルボキシアミド基であり;R2は基-C(=O)-NR3R4または-S(=O)2-NR3R4であり;R3およびR4は、独立して、水素、任意に置換されていてもよいC1-C6アルキル、(C1-C5フルオロアルキル)-CH2-、-Qおよび-CH2Q(ここで、Qは3〜6の環原子を有し、任意に置換されていてもよい単環式の炭素環または複素環である)から選択されるか;またはR3およびR4は、それらが結合している窒素と一緒になって、3〜8の環原子を有し、任意に置換されていてもよい単環式のシクロアルキル環もしくは非芳香族複素環を形成し;R5は水素、またはペプチド結合を介して結合した天然もしくは非天然のα-アミノ酸の残基であり;R6は水素または基R7C(=O)-であり;そしてR7はC1-C6アルキル、C1-C6フルオロアルキルまたはシクロプロピルである]
の化合物は、ドーパミン作用性活性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換されたフェニルアラニン誘導体およびドーパミン欠乏の症状を軽減する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーパミンは、脳の基底神経節の神経により自然に産生される物質であり、随意運動の制御を円滑にし、調節するのを可能にする。脳におけるドーパミン−産生神経の、損失または障害は、パーキンソン病に関連し、パーキンソン−プラス(parkinson-plus)症候群に係わっている。これらの疾病は、またドーパミン置換療法にも応答している。他の疾病、例えば不穏下肢症候群(RLS)もまたドーパミン置換療法にも応答している。
【0003】
パーキンソン病は進行性神経疾患であり、中脳の黒質の神経細胞に影響する。それは60才を越えた人に、主として襲う加齢に伴う中枢神経系の障害である。およそ500人に1人がこの病気にかかり、60才を越えたおよそ100人に1人が発病する。上記のように、パーキンソン病はドーパミンの欠乏に起因すると考えられている。一般的な症状は、振戦、筋肉の凝り(または硬直)、動作の遅さ(運動緩徐)およびバランスの消失(体位機能障害)を含む。パーキンソン病は、最も一般的な神経変性病の一つである。この病気の自然な経過は、進行性であり、病気の兆候から10〜15年で殆どの患者に障害を引き起こす。
【0004】
パーキンソン病は、主として散発的であるが、実際は突発性であるといわれている。この病気の形態は、脈管に付随することに起因し、毒物暴露に起因することもある。またまれにこの病気には家族型もある。
【0005】
ジェームズ パーキンソンが、1817年に最初にこの疾病を記載してから多くの治療が試された。パーキンソン病のための現在の療法は、ドーパミン前駆体レボドパ(もしくはL−ドーパ)またはドーパミン作用性化合物の使用に基づくドーパミン置換療法に基づいている。L−ドーパは、この病気の運動症状を逆転するのにおいて極めて効果的であるが、慢性の治療と病気の進行を伴うのには、その有効性は低下する。薬物応答の持続時間は減少し、予測できない変動が、運動において生じる。処理は不随意運動(運動障害)と精神病を含む副作用を制限する療法に関連している。
【0006】
RLSは、知覚障害、睡眠障害、および殆どの場合、睡眠中の周期性四肢運動障害(PLMS)を伴う感覚運動性神経性疾患である。突発性の形態と尿毒症の形態の、2つのRLSの形態が存在するように見える。RLSは、(1)通常、感覚変化/知覚不全と関連する足を動かす欲求、(2)運動性不穏状態、(3)悪化または少なくとも活動による軽減を伴う安静時(すなわち、横臥、座ること)における症状の悪化または排他的な存在、および(4)晩または夜間の症状の悪化により特徴付けられる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ドーパミン作用性化合物として、またはドーパミン欠乏の症状を軽減する化合物として活性である化合物を提供する。
【0008】
本発明によれば、式(I)または式(II):
【化1】

【0009】
[式中、
R1はカルボキシ、カルボキシエステルまたはカルボキシアミド基であり;
R2は基-C(=O)-NR3R4または-S(=O)2-NR3R4であり;
R3およびR4は、独立して、水素、任意に置換されていてもよいC1-C6アルキル、(C1-C5フルオロアルキル)-CH2-、-Qおよび-CH2Q(ここで、Qは3〜6の環原子を有し、任意に置換されていてもよい単環式の炭素環または複素環である)から選択されるか;または
R3およびR4は、それらが結合している窒素と一緒になって、3〜8の環原子を有し、任意に置換されていてもよい単環式のシクロアルキル環もしくは非芳香族複素環を形成し;
【0010】
R5は水素、またはペプチド結合を介して結合した天然もしくは非天然のα-アミノ酸の残基であり;
R6は水素または基R7C(=O)-であり;そして
R7はC1-C6アルキル、C1-C6フルオロアルキルまたはシクロプロピルである]
の、置換されたフェニルアラニン化合物、またはその塩、水和物もしくは溶媒和物が提供される。
【0011】
本明細書で用いられているように、用語「(Ca-Cb)アルキル」(ここで、aおよびbは整数である)は、a〜bの炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルキル基を意味する。したがって、aが1であり、bが6である場合には、例えば、この用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシルを含む。
【0012】
本明細書で用いられているように、用語「(Ca-Cb)フルオロアルキル」(ここで、aおよびbは整数である)は、1以上の水素原子がフッ素で置換された(Ca-Cb)アルキルを意味する。したがって、aが1であり、bが3である場合には、例えば、この用語は、トリフルオロメチル、ジフルオロメチルおよびモノフルオロメチルを含む。
【0013】
本明細書で用いられているように、用語「(Ca-Cb)アルケニル」は、適用される「E」または「Z」立体化学のどちらかの少なくとも一つの二重結合を有するa〜bの炭素原子を有する直鎖または分枝鎖状アルケニル部分を意味する。したがって、aが2であり、bが6である場合には、この用語は、例えば、ビニル、アリル、1-および2-ブテニルならびに2-メチル-2-プロペニルを含む。
【0014】
本明細書で用いられているように、用語「C2-C6アルキニル」は、a〜bの炭素原子を有し、さらに1つの三重結合を有する直鎖または分枝鎖状炭化水素基を意味する。したがって、aが2であり、bが6である場合には、この用語は、例えば、エチニル、1-プロピニル、1-および2-ブチニル、2-メチル-2-プロピニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニルならびに5-ヘキシニルを含む。
【0015】
本明細書で用いられているように、制限のない用語「炭素環式」は、全てが炭素である16に至る環までの原子を有する単環、二環または三環式基を指し、アリールおよびシクロアリールを含む。
【0016】
本明細書で用いられているように、制限のない用語「シクロアルキル」は、3〜8の炭素原子を有する単環式の飽和炭素環式基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含む。
【0017】
本明細書で用いられているように、制限のない用語「アリール」は、単環、二環または三環式の炭素環式芳香族基を意味し、共有結合により直接結合している2つの単環式の炭素環式芳香族環を有する基を含む。そのような基の例証は、フェニル、ビフェニルおよびナフチルである。
【0018】
本明細書で用いられているように、制限のない用語「ヘテロアリール」は、S、NおよびOから選択される1以上のへテロ原子を含む単環、二環または三環式の芳香族基を意味し、共有結合により直接結合している、そのような単環式の2つの環か、もしくは1つのそのような単環式の環と1つの単環式のアリール環を有する基を含む。そのような基の例証は、チエニル、ベンズチエニル、フリル、ベンズフリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンズチアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、ベンズトリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリルおよびインダゾリルである。
【0019】
本明細書で用いられているように、制限のない用語「ヘテロシクリル」または「複素環式」は、上記で定義したような「ヘテロアリール」を含み、その中で非芳香族性が意味することは、S、NおよびOから選択される1以上のへテロ原子を含む、単環、二環または三環式の非芳香族基、ならびにもう一つのそのような基もしくは単環式の炭素環式基と共有結合している、1以上のそのようなヘテロ原子を含む単環式の非芳香族基からなる基に関連する。そのような基の例証は、ピロリル、フラニル、チエニル、ピペリジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピロリジニル、ピリミジニル、モルホリニル、ピペラジニル、インドリル、モルホリニル、ベンズフラニル、ピラニル、イソオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル、マレイミドおよびスクシンイミド基である。
【0020】
本明細書中、それが存在するところで別に明記しない限り、本文のいずれかの部分で適用されているように、用語「置換されている」は、4つに至るまでの互換性のある置換基で置換されていることを意味し、それらの各々は独立して、例えば、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C2-C6)アルキニル、(C1-C6)アルコキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル、(C1-C3)アルコキシ(C1-C3)アルキル、メルカプト、メルカプト(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルキルチオ、ハロ(フロロ、ブロモおよびクロロを含む)、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシおよびトリフルオロメチルチオのような、完全にまたは部分的にフッ素化された(C1-C3)アルキル、(C1-C3)アルコキシもしくは(C1-C3)アルキルチオ、ニトロ、ニトリル(-CN)、オキソ(=O)、フェニル、フェニル(C1-C3)アルキル-、フェノキシ、単環式のヘテロアリール、ヘテロアリール(C1-C3)アルキル-、または5もしく6の環原子を有するヘテロアリールオキシ、3〜6の環原子を有するシクロアルキル、-COORA、-CORA、-OCORA、-SO2RA、-CONRARB、-CONHNH2、-SO2NRARB、-NRARB、-NHNH2、-OCONRARB、-NRBCORA、-NRBCOORA、-NRBSO2ORAまたは-NRACONRARB(ここで、RAおよびRBは独立して、水素または(C1-C6)アルキル、ヒドロキシ(C1-C6)アルキルもしくは(C1-C3)アルコキシ(C1-C3)アルキル基であるか、またはRAおよびRBが同一のN原子に結合している場合には、RAおよびRBは該窒素原子と一緒になって、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニルのような環状アミノまたは4-メチル-ピペラジニルのような4-(C1-C6)アルキル-ピペラジニルを形成し得る。
【0021】
置換基がフェニル、フェニル(C1-C3)アルキル-、フェノキシまたは単環式の5もしくは6の環原子を有する、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1−C3)アルキル-である場合、それらの該フェニルもしくはヘテロアリールは、フェニル、フェニル(C1-C3)アルキル-、フェノキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C1-C3)アルキル-またはヘテロアリールオキシ以外の上記の置換基のいずれかでそれ自身置換され得る。「任意の置換基」または「置換基」は、上記で特定された基であり得る。
【0022】
本明細書で用いられているように、用語「塩」は、塩基添加塩、酸添加塩および第4級塩を含む。酸性である本発明の化合物は塩を形成でき、例えば水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウムおよび水酸化マグネシウムのようなアルカリ土類金属水酸化物:のような塩基との医薬的に許容される塩、例えば、N-メチル-D-グルカミン、コリン トリス(ヒドロキシメチル)アミノ-メタン、L-アルギニン、L-リジン、N-エチルピペリジン、ジベンジルアミンなどのような有機塩基との医薬的に許容される塩を含む。
【0023】
塩基性であるこれらの化合物(I)は塩を形成でき、塩酸もしくは臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸またはリン酸などの無機酸との医薬的に許容される塩、例えば、酢酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、グルタミン酸、乳酸およびマンデル酸などの有機酸との医薬的に許容される塩を含む。適当な塩の総説に対しては、StahlおよびWermuthによる、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use by (Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002)を参照されたし。
【0024】
本発明の化合物において、R1が結合している炭素原子は不斉であり、その中心における立体化学は、式(I)で示すとおりである。しかしながら、本発明の化合物は、複数の不斉炭素原子の存在のために1以上のさらなるキラル中心を含み得る、そして、それらは各々のキラル中心においてRまたはS立体化学を有するいくつものジアステレオ異性体として存在し得る。本発明はそのようなジアステレオ異性体およびそれらの混合物の全てを含む。
【0025】
用語「溶媒和物」は、本発明の化合物と1以上の医薬的に許容される溶媒分子、例えばエタノールの化学量論量を含む分子複合体を表すために本明細書で用いられる。用語「水和物」は、該溶媒が水の場合に用いられる。
【0026】
基R1
R1はカルボキシ基(-COOH)、カルボキシエステル基またはカルボキシアミド基であり得る。R1がカルボキシエステル基である化合物が、現在のところ、好ましい1つのサブクラスを形成する。
カルボシキエステル基R1の例は、式-COORC(ここで、RCは、メチル、エチルおよびn-もしくはイソ-プロピルのようなC1-C6アルキル基、またはアリルのようなC2-C6アルケニル基である)のものを含む。現在のところ好ましいカルボキシエステル基は、メチルエステル-COOCH3である。
【0027】
カルボキシアミド基R1は、式-CONRB(Alk)nRA
(式中、
Alkは、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH=CH-及び-C≡C-のような、任意に置換されていてもよい、2価のC1-C6アルキレンもしくはC2-C6アルケニレンもしくはC2-C6アルキニレン基であり;
nは0または1であり、
RBは、水素、またはメチルもしくはエチルのようなC1-C6アルキル基、またはアリルのようなC2-C6アルケニル基であり、
RAは、水素、ヒドロキシ、または任意に置換されていてもよい炭素環式もしくはヘテロシクリルであるか、または
RAおよびRBは、それらが結合している窒素と一緒になって、O、SおよびNから選択される1以上のさらなるヘテロ原子を任意に含んでいてもよいN-複素環を形成し、それは1以上の環Cまたは環N原子上で任意に置換されていてもよい)
のものを含む。
【0028】
したがって、式-CONRB(Alk)nRAのカルボキシ基R1において、Alkは任意に置換されていてもよい-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH=CH-または-CH2C≡CCH2-であり得;RBは水素、またはメチル、トリフルオロメチル、エチル、n-もしくはイソ-プロピルもしくはアリルであり得;RAはヒロドキシ、または任意に置換されていてもよいフェニル、3,4-メチレンジオキシフェニル、ピリジル、フリル、チエニル、N-ピペラジニルもしくはN-モルホリニルである得るか;またはRAおよびRBはそれらが結合している窒素と一緒になって、O、SおよびNから選択される1以上のさらなるヘテロ原子を任意に含んでいてもよいN-複素環を形成し、それは1以上の環Cまたは環N原子上で任意に置換されていてもよい。
現在のところ好ましいカルボキシアミド基R1は、-CONH2である。
【0029】
基R2
R2は、カルバメート基-C(=O)-NR3R4またはスルファメート基-S(=O)2-NR3R4
[ここで、R3およびR4は、独立して、
水素、
任意に置換されていてもよいC1-C6アルキル、例えばメチル、エチル、またはn-もしくはイソ-プロピル、
-CH2CF3のような(C1-C5フルオロアルキル)-CH2-;
-Qおよび-CH2Q(ここで、Qは3〜6の環原子を有し、任意に置換されていてもよい単環式の炭素環、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルもしくはフェニルであるか、または3〜6の環原子を有し、任意に置換されていてもよい複素環、例えばフリル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、ピラジニル、オキサゾリル、チアゾリル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルもしくはモルホリニルであるか、またはR3およびR4は、それらが結合している窒素と一緒になって、3〜8の環原子を有し、任意に置換されていてもよい単環式のシクロアルキル環もしくは非芳香族複素環、例えばピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニルもしくはモルホリニルである)
から選択される]
である。
現在のところ、R2がカルバメート基であるのが好ましい。
【0030】
本発明の1つのサブクラスにおいて、R3およびR4の一方は水素であり、他方は任意に置換されていてもよいC1-C3アルキル、特にメチルである。
本発明のもう1つのサブクラスにおいて、R3およびR4は、それらが結合している窒素と一緒になって、任意に置換されていてもよいピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルまたはピロリジニル環を形成する。
【0031】
R3およびR4に関して、前記のいずれかの任意の置換基は、トリフルオロメチル、メトキシのようなC1-C4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、-NH2、-NHRAまたは-NRARB(ここで、RAおよびRBは独立してメチルまたはエチルである)から選択され得る。
【0032】
基R5
R5は水素、またはペプチド結合を介して結合した天然もしくは非天然のα-アミノ酸の残基である。
したがって、本発明の化合物の1つの特異なサブクラスにおいて、R5は水素である。
【0033】
基R5が水素でないとき、本発明の化合物は、R5が式-C(=O)C(R8)(R9)NH2[式中、R8およびR9は、独立して、
(a) 水素;または
(b) 天然アミノ酸の側鎖、または
(c) 任意に置換されていてもよい、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、C2-C4アルケニル、C2-C4アルケニルオキシもしくはC2-C4アルキニル、または
(d) -CH2XCH3、-CH2CH2XCH3もしくは-CH2XCH2CH3[ここで、Xは-O-、Sまたは-NR10(ここで、R10は水素、メチルまたはエチルである)である];または
(e) -CH2QもしくはCH2OQ(ここで、Qは前記の式(I)もしくは(II)に関して定義されたとおりである)
であるか;または
【0034】
R8およびR9は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、3〜8の環原子を有し、任意に置換されていてもよいシクロアルキル環または複素環を形成し、それらの環は、第2の任意に置換されていてもよい炭素環または複素環と任意に縮合してもよい]
のαアミノ酸残基である化合物を含む。
【0035】
R5が式-C(=O)C(R8)(R9)NH2のαアミノ酸残基であるタイプの化合物において、 R8およびR9は独立して、任意に置換されていてもよい、C1−C4アルキル、フェニル、ベンジル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、ピリジル、ピリジルメチル、ピペリジニル、ピペラジニルまたはモルホリニルである。
【0036】
R5が-C(=O)C(R8)(R9)NH2のαアミノ酸残基である化合物の1つの特異なサブクラスにおいて、R8およびR9の一方は水素である。例えば、R8が水素であり、R9が-CH2Q(ここで、Qは、任意に置換されていてもよいフェニルであり、ここで任意の置換基はヒドロキシを含む)であり得る。
【0037】
R5が式-C(=O)C(R8)(R9)NH2のαアミノ酸残基である化合物のもう1つの特異なサブクラスにおいて、R8およびR9の一方は水素であり、他方は天然アミノ酸の側鎖である。
【0038】
具体的には、R5が式-C(=O)C(R8)(R9)NH2のαアミノ酸残基である化合物において、R8およびR9はそれぞれメチルであり、R6およびR7の一方は水素であり、他方はメチルであり得る。
【0039】
R5が式-C(=O)C(R8)(R9)NH2のαアミノ酸残基である化合物のさらにもう1つの特異なサブクラスにおいて、R8およびR9はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、任意にベンゼンと縮合していてもよいC1-C6シクロアルキル環を形成し得る。例えば、R8およびR9が、それらが結合している炭素原子と一緒になって、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル環を形成し得る。
【0040】
R5が-C(=O)C(R8)(R9)NH2のαアミノ酸残基であるタイプの化合物において、R8およびR9におけるいずれかの任意の置換基は、例えばメチル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、シクロプロピル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、-NH2、-NHRAもしくは-NRARB(ここで、RAおよびRBは独立してメチルまたはエチルである)から選択され得る。
【0041】
現在のところ、本発明の好ましい化合物は、前記で定義されて議論された式(I)または(II)の化合物を含み、ここで、R5は式(III):
【化2】

【0042】
(式中、(a) R11およびR12は、独立して、水素、式(I)または(II)に関して定義されて前記で議論された基R6、基-C(=O)OR13または基-C(=O)OR13(ここで、R13はC1-C3アルキルである)から選択されるか;または(b) R11およびR12の一方は水素であり、他方は式(I)または(II)に関して定義されて前記で議論された基R2である)の基である。式(III)において、R11およびR12はそれぞれ水素であり得る。
【0043】
本発明の化合物の現在のところ好ましいクラスは、式(IV)または式(V):
【化3】

【0044】
[式中、R1は基R14O(C=O)-であり;R2は基R15NH(C=O)-であり;そしてR6は水素または基R16(C=O)-(ここで、R14、R15およびR16は、独立して、C1-C6アルキル、C1-C6フルオロアルキルおよびシクロプロピルから選択される)である]
ならびにその塩、水和物および溶媒和物を有する。
【0045】
そのような化合物(IV)および(V)において、R14、R15およびR16はそれぞれ、好ましくはメチルまたはトリフルオロメチルから選択される。
本発明の具体的な化合物の構造の例は、本明細書の実施例のものを含む。
【0046】
合成経路
本発明に関する化合物(I)の合成のために複数の合成戦略があるが、全てが、合成有機化学者に知られている化学に依存する。式(I)による化合物は、標準的な文献に記載の方法であり、かつ当業者に周知の方法に従って合成できる。
【0047】
典型的な文献のソースは、"Advanced organic chemistry"、第4版(Wiley)、J March;"Comprehensive Organic Transformation"、第2版(Wiley)、R.C. Larock;"Handbook of Heterocyclic Chemistry"、第2版(Pergamon)、A.R. Katritzky;"Synthesis"、"Acc. Chem. Res."、"Chem. Rev"に見られるような総説であるか、または標準的なオンライン文献検索により特定された第一の文献ソースか、もしくは「サイファインダー」または「バイルシュタイン」のような第二のソースである。
【0048】
しばしば、本発明の化合物の合成において、特定の反応中心で反応を強制するために選択される反応性基を保護することが好都合である。反応性基の保護の方法は、一般的に、McOmieのProtective Groups in Organic Chemistry, Plenum Press, N.Y., 1973およびGreeneとWutz、Protecting Groups in Organic Synthesis, 第2版, John Wiley & Sons, N.Y., 1991に記載されている。
【0049】
一般的に、本発明の化合物は、本明細書の実施例と類似の方法により入手可能である。したがって、化合物(IA):
【化4】

(ここで、P1はtert-ブトキシカルボニルアミノ基のような保護基であり、P2はベンジルオキシ基のような保護されたヒドロキシ基であり、R1はエステル基である)
は、前駆体(IB):
【0050】
【化5】

のフェニル環の3-ヒドロキシ基上への所望のR2基を縮合することにより製造され得る。
例えば、イソシアネート、カルバモイルクロライドおよびスルファモイルクロライドがそのような縮合に対して適した試薬である。
【0051】
同様に、式(IIA)の化合物:
【化6】

(ここで、P1はtert-ブトキシカルボニルアミノ基のような保護基であり、P2はベンジルオキシ基のような保護されたヒドロキシ基であり、R1はエステル基である)
は、前駆体(IIB):
【0052】
【化7】

のフェニル環の3-ヒドロキシ基上への所望のR2基を縮合することにより製造され得る。
例えば、そのような縮合に適した試薬は、活性化されたカルバメートおよびスルファメートである。従って、N-スクシンイミジル N-メチルカルバメートがR2基-CONHCH3を導入する。
【0053】
次いで、化合物(IA)および(IIA)は、P1からの保護基の除去により修飾され、次いで、P2からの保護基の除去の前に、得られた遊離のアミノ基は、所望のR5置換基を導入するために修飾され得る。
【0054】
化合物(IA)および(IIA)は、カルボキシ基を形成するためにエステル基R1の加水分解によっても修飾され、次いで、それはカルボキシアミド基を形成するために任意にアミド化され得る。次いで、P1から保護基が除去され、得られた遊離のアミノ基は、P2からの保護基の除去の前に、所望のR5置換基を導入するために任意に修飾され得る。
【0055】
R5がペプチド結合により連結された天然または非天然のαアミノ酸残基である化合物(I)および(II)は、対応する適当に保護されたR5が水素である化合物(IA)および(IB)から、ペプチド合成の標準的な方法により製造され得る。言うまでもなく、ペプチド合成の方法は、非常によく知られており、M. BodanskyおよびA. Bodanskyによる“The practice of peptide synthesis”, 第2版, Springer-Verlag, New York. XVIIIを参照されたし。
【0056】
医薬的有用性
上記のように、本発明の化合物は、ドーパミン作用性化合物として、またはドーパミン欠乏の症状を軽減する化合物として活性である。そのような活性のいくらかまたは全ては、イン ビボで本化合物がL−ドーパに変換することに起因し得る。すなわち、そのような化合物はL−ドーパの完全なまたは不完全な(partial)プロドラッグとして作用する。本発明の化合物のイン ビボでの変換は、特に、本発明の化合物のR5基が前記の式(III)を有するとき、L−ドーパ自身の投与より、L−ドーパに対してより長い全身の曝露および/またはより高いピーク濃度の曝露を招き得る。
【0057】
本発明の化合物は、損なわれたドーパミン作用性信号伝達の障害を低減させるのに有効な化合物の量を患者に投与することを含む、損なわれたドーパミン作用性信号伝達を伴う患者の疾病の治療方法に有益である。本化合物は、また損なわれたドーパミン作用性信号伝達を伴う疾病を治療するための組成物の製造に有益でもある。そのような疾病の例は、パーキンソン病または不穏下肢症候群ばかりでなく、トゥーレット症候群、注意欠陥過活動性障害、下垂体腫瘍の発生、パーキンソン−プラス症候群、レボドパ応答失調症、運動障害、睡眠中の周期運動、嚥下障害または神経遮断薬性悪性症候群を含む。
【0058】
本発明の化合物で治療され得るパーキンソン病の典型的な例は、散発性のパーキンソン病、家族型パーキンソン病および脳炎後のパーキンソン症候群を含む。
本発明の化合物で治療され得るパーキンソン−プラス症候群の典型的な例は、進行性核上性麻痺および多系統萎縮症を含む。
典型的には、運動障害は、L−ドーパ−誘発性運動障害である。
【0059】
本発明の化合物は、様々な投与形態で投与され得る。したがって、それらは経口的に、例えば錠剤、カプセル剤、トローチ剤、口内錠、水性または油性懸濁剤、分散性の散剤または顆粒剤で投与され得る。本化合物は、舌下の剤形、例えばバッカル剤の形態で投与され得る。本発明の化合物は、また非経口かまたは皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内(intrasternally)、経皮、吸入(鼻腔内)または注入術により投与され得る。本化合物は、また坐剤としても投与され得る。したがって、本発明の化合物は、経口的にまたは吸入(もしくは鼻腔内)により投与されるが、好ましくは、本発明の化合物は、経口的に投与され、さらに好ましくは、本発明の化合物は、錠剤またはカプセル剤として投与される。後者に関して、硬ゼラチンカプセルの形態、または当該技術で公知の多くの徐放性製剤の1つでの本化合物の投与がしばしば好ましいであろう。
【0060】
本発明は、本発明の化合物、または前記で定義されたような医薬的に許容されるその塩および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を、さらに提供する。
【0061】
本発明の化合物は、典型的には医薬的に許容される担体または希釈剤とともに投与のために製剤化される。例えば、固体の経口形態は、活性化合物とともに希釈剤、例えば乳糖、デキストロース、ショ糖、セルロース、トウモロコシ澱粉または馬鈴薯澱粉;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコール類;結合剤;例えば、澱粉、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カーボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;分散剤、例えば澱粉、アルギン酸、アルギネートまたは澱粉グリコール酸ナトリウム;発泡性混合物; 染料;甘味料;レシチン、ポリソルベート、ラウリルサルフェートのような湿潤剤;および、一般に、非毒性で医薬製剤に用いられる薬理学的に不活性な物質を含み得る。そのような医薬製剤は、公知の手法、例えば混合、顆粒化、錠剤化、糖衣、またはフィルム被覆工程を用いて製造される。
【0062】
経口投与のための液分散体は、シロップ剤、エマルジョンおよび懸濁液であり得る。シロップ剤は、担体として、例えばショ糖またはグリセリンとショ糖および/またはマンニトールおよび/またはソルビトールを含み得る。懸濁液およびエマルジョンは、担体として、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カーボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含み得る。懸濁液または筋肉内注射のための液剤は、活性化合物とともに、医薬的に許容される担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール類、例えばポリプロピレングリコール、および所望であれば塩酸リドカインの適当な量を含み得る。
【0063】
本発明の化合物は、経口投与されるのが好ましいので、本発明は、本発明の化合物または前記で定義されたよう医薬的に許容されるその塩および医薬的に許容な担体を、カプセル剤または錠剤の形態中に含む医薬組成物をさらに提供する。
【0064】
注射剤または輸液のための液剤は、担体として、例えば滅菌水を含み得るか、または好ましくはそれらは、無菌であり、水性であり、等張食塩水液の形態にあり得る。
【0065】
本発明の化合物は、L−ドーパ治療に役に立つことが以前に示されているその他の化合物とともにも投与され得、それはL−ドーパ自身とともに投与もされ得る。例えば、L−ドーパは、末梢性デカルボキシラーゼ阻害剤とともに、およびカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤とともに以前に一緒に投与されている。それゆえ、本発明は、本発明の化合物または前記で定義されたような医薬的に許容されるその塩、末梢性デカルボキシラーゼ阻害剤および/またはCOMT阻害剤、ならびに医薬的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物を提供する。好適なデカルボキシラーゼ阻害剤はカルビドパまたはベンセラジドである。好ましくは、末梢性デカルボキシラーゼはカルビドパである。好適なCOMT阻害剤はエンタカポンである。
【0066】
ヒトまたは動物体の治療における同時分離使用または逐次使用のために、(a) 本発明の化合物または前記で定義されたような医薬的に許容されるその塩および(b) 末梢性デカルボキシラーゼ阻害剤および/または(c) COMT阻害剤を含む薬剤も提供される。
【0067】
あらゆる特殊な患者に対する特定の投与量レベルは、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、複合薬および治療を受ける特定の疾患の重篤さを含む様々な因子に依存するであろうと解される。最適な投与量レベルおよび投薬頻度は、当該技術分野で要求されるように、臨床試験により決定されるであろう。しかしながら、典型的な投与量は、体重kg当たり約0.001〜50mgの範囲内であろうと予想される。
【実施例】
【0068】
以下の実施例は、本発明を例証する:
略語:
DMA N,N-ジメチルアセトアミド
DMAP 4-N,N-ジメチルアミノピリジン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
EDCI 3-ジメチルアミノプロピル-N-エチルカルボジイミド塩酸塩
HBTU ベンゾトリアゾリル N,N,N,N-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
HOBT N-ヒドロキシベンゾトリアゾール
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
TFA トリフルオロ酢酸
【0069】
HPLC/MS方法
方法A
HPLC/MSデータは、陽イオンモードで操作するWaters Micromass ZMD質量分析計と組み合わされたHP1100 LCを用いて得られた。Genesis 4マイクロ C18 カラムを用いて、試料は、2溶媒:0.1% 水性ギ酸と0.1%ギ酸/アセトニトリルから構成された勾配で溶出された。勾配は、7分間かけて、5% アセトニトリル〜95% アセトニトリルまで上昇し、3分間95%を維持し、その後4分間かけて5% に落とした。
【0070】
方法B
HPLC/MSデータは、Thermo Finnegan LCQ DECA XP イオントラップ質量分析計と直接連結されたThermo Finnegan Surveyor LC システムで得られた。Alltech Prevail 3マイクロ C18 カラムを用いて、試料は、溶媒A (0.1% ギ酸/水中の10mM 酢酸アンモニウム) 溶媒B (0.1% ギ酸/アセトニトリル中の50mLの溶媒A)から構成された勾配で溶出された。勾配は、6分間かけて、5% 溶媒B〜95% 溶媒Bまで上昇し、2分間95%を維持し、その後0.5分間かけて5%に落とした。
【0071】
HPLC方法
HPLCデータは、Waters Alliance HPLC 機器 (2695 分離モジュール)を用いて得られた。Kromasil 5μm (250 mm×4.6 mm) C18 カラムを用いて、試料は、3溶媒:溶媒A (水)、溶媒B (アセトニトリル)および溶媒C (水中2% TFA)から構成された勾配で溶出された。用いられた勾配は次の勾配表に要約される。
【0072】
【表1】

【0073】
1H NMR方法
1H NMRデータはBruker AMX400、Bruker Avance 400またはJeol ECA 500 MHz装置で得られた。
MS方法
質量分析データは、ThermoFinnigan Surveyor LCシステムに直接連結されたThermoFinnigan LCQ DECA XPを用いて得られた。
【0074】
実施例1
【化8】

(S)-2-(3-エチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
【0075】
工程1
(S)-3-(3-ベンジルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステルおよび(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル
(S)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル(14.5 g)をアセトン(340 ml)中に溶解した。炭酸カリウム(19.3 g)およびヨウ化ナトリウム(1.05 g)、続いてベンジルクロライド(5.58 ml; 1.04当量)を加えた。反応混合物を、窒素下、室温で15分間撹拌し、次いで10時間加熱還流した。沈殿した固体を濾過により除き、濾液を蒸発乾固し、褐色の油状物を得た。粗生成物を、酢酸エチル-ヘキサン(5%〜25% 酢酸エチル)の勾配で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。
【0076】
最初に溶出した異性体は、(S)-3-(3-ベンジルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル、1.62 gであった。
Rf 0.16 (25% 酢酸エチル-ヘキサン); NMR (500 MHz, d6 DMSO) 1.42 (9H, s), 2.95-3.05 (2H, m), 3.67 (3H, s), 4.53-4.54 (1H, m), 4.95-4.97 (1H, m), 5.07 (2H, s), 5.56 (1H, s), 6.63 (1H, br d J 8), 6.71 (1H, br s), 6.85 (1H, d J8), 7.3-7.4 (5H, m); HPLC/MS 保持時間 5.99分, m/z 402 (MH+).
【0077】
2番目に溶出した異性体は、(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル、4.15 gであった。
Rf 0.14 (25%酢酸エチル-ヘキサン); NMR (500 MHz, d6 DMSO) 1.42 (9H, s), 2.97-2.99 (2H, m), 3.72 (3H, s), 4.52-4.54 (1H, m), 4.96-4.97 (1H, m), 5.07 (2H, s), 5.61 (1H, s), 6.58 (1H, dd J 8, 2), 6.71 (1H, d J 約2), 6.84 (1H, d J 8), 7.35-7.41 (5H, m); HPLC/MS 保持時間 6.05分, m/z 402 (MH+).
【0078】
工程2
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-エチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル(2.8 g)をジクロロメタン(60 ml)に溶解し、触媒量のDMAPを加えた。エチルイソシアネート(0.8 ml)を加え、その溶液を60℃で4時間加熱撹拌した。反応をHPLC/MSでモニターし、さらなる量のエチルイソシアネートを加え、反応が完結するまで加熱し続けた。
【0079】
反応混合物を蒸発乾固し、粗生成物を酢酸エチル-ヘキサンから再結晶した。(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-エチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステルを白色の固体、2.2 gとして得た。
NMR (500 MHz, CDCl3) 1.15 (3H, t J 7.2), 1.42 (9H, s), 2.97-3.02 (2H, m), 3.28 (2H, dq J 7, 6.6), 3.70 (3H, s), 4.5-4.55 (2H, br), 4.95-5.0 (2H, br), 5.06 (2H, s), 6.88-6.92 (3H, m), 7.28-7.42 (5H, m); HPLC/MS 保持時間 6.19分, m/z 473 (MH+).
【0080】
工程3
(S)-2-(3-エチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-エチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル(220 mg)をジオキサン中の4M HCl(3 ml)に溶解し、その溶液を約2時間室温で放置した。溶媒を蒸発し白色の固体を得、それをメタノール(5 ml)に再溶解し、5% パラジウム-炭(44 mg)上、1気圧の水素ガスで水素化した。室温で一晩撹拌後、触媒を濾過で除き、メタノールで洗浄した。濾液を蒸発しゴム状物質を得、それをメタノール-エーテルから結晶化した。(S)-2-(3-エチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライドを白色の固体、110 mgとして得た。
NMR (500 MHz, d6 DMSO) 1.07 (3H, t J 7), 2.94-3.09 (4H, m), 3.67 (3H, s), 4.18 (1H, t J 6), 6.84 (3H, br s), 7.56 (1H, t J 5.5), 8.43 (約3H, br s), 9.55 (1H, s); HPLC/MS 保持時間 3.41分, m/z 283 (MH+).
【0081】
実施例2
【化9】

(S)-2-(3-ジメチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
【0082】
工程1
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ジメチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル(401 mg)をジクロロメタン(8 ml)に溶解し、N,N-ジメチルカルバモイル クロライド(0.092 ml, 1当量)を加えた。トリエチルアミン(0.14 ml, 1当量)を加え、混合物を還流下に加熱撹拌した。反応HPLC/MSでモニターし、反応を完結するために、さらなる量のN,N-ジメチルカルバモイル クロライドおよびトリエチルアミンを加えた。合計8時間の還流後、反応混合物を蒸発乾固し、シリカゲルに吸着した。酢酸エチル-ヘキサンの混液で溶出するクロマトグラフィーにより(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ジメチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステルを油状物、315 mgとして得た。Rf 0.14 (酢酸エチル-ヘキサン 1:3); HPLC/MS 保持時間 3.89分, m/z 473 (MH+).
【0083】
酢酸エチル-ヘキサンから結晶化し、(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ジメチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステルを白色の固体、126 mgとして得た。
NMR (500 MHz, CDCl3) 1.42 (9H, s), 2.95 (3H, s), 2.98-3.04 (5H, m), 3.70 (3H, s), 4.52-4.54 (約1H, m), 4.97-5.00 (約1H, br d), 5.05 (2H, s), 6.88-6.92 (3H, m), 7.28-7.40 (5H, m).
【0084】
工程2
(S)-2-(3-ジメチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ジメチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tertブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル(122 mg)をジオキサン中の4M HCl (2 ml)に溶解し、その溶液を室温で放置した。1時間後、溶媒を蒸発して白色の固体を得、それをメタノール(5 ml)に再溶解し、5% パラジウム-炭 (20 mg)上、1気圧の水素ガスで水素化した。室温で1時間撹拌後、触媒を濾過により除き、メタノールで洗浄した。濾液を蒸発し、ゴム状物質を得、それをメタノール-エーテルで摩砕して結晶化した。(S)-2-(3-ジメチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライドを白色の固体、77 mgとして得た。
HPLC/MS 保持時間 3.85分, m/z 283 (MH+); NMR (500 MHz, d6 DMSO) 2.89 (3H, s), 2.95-3.02 (2H, m)重複3.03 (3H, s), 3.67 (3H, s), 4.19 (1H, t J 7), 6.83-6.88 (3H, m), 8.40 (約3H, br D2O交換), 9.56 (1H, s, D2O交換).
【0085】
実施例3
【化10】

(S)-2-(3-ジメチルスルファモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
【0086】
工程1
(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(4-ベンジルオキシ-3-ジメチルスルファモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル
(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル(575 mg) (L. HunterおよびC. Hutton, Aust. J. Chem., 2003, 56, 1095-1098)をジクロロメタン(12 ml)に溶解し、N,N-ジメチルスルファモイル クロライド(0.17 ml)を加えた。トリエチルアミン(0.36 ml)を滴下し、続いて触媒量のDMAPを加えた。混合物を55℃で一晩加熱撹拌した。反応をHPLC/MSでモニターし、さらなる量のN,N-ジメチルスルファモイル クロライド(0.08 ml)およびトリエチルアミン(0.18 ml)を加え、55℃で24時間加熱を続けた。
【0087】
反応混合物をジクロロメタンで希釈し、希HCl、重炭酸ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄した。乾燥(MgSO4)および蒸発して、粗生成物を得た。酢酸エチル-ヘキサンの混液で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより、(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(4-ベンジルオキシ-3-ジメチルスルファモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステルを無色のゴム状物質、615 mgとして得た。
Rf 0.37 (酢酸エチル-ヘキサン 1:1); HPLC/MS 保持時間 7.03分, m/z 507 (MH+).
【0088】
工程2
(S)-2-(3-ジメチルスルファモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(4-ベンジルオキシ-3-ジメチルスルファモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル(615 mg)を、ベンジルクロライド(180 mg)および5% パラジウム-炭(60 mg)を含むメタノール (30 ml)に溶解した。混合物を水素ガス雰囲気下で一晩撹拌した。触媒を濾過により除き、メタノールで洗浄した。濾液を蒸発して、ゴム状物質を得、それをエーテルで摩砕して結晶化した。(S)-2-(3-ジメチルスルファモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライドをオフホワイト色の固体、320 mgとして得た。
NMR (500 MHz, d6 DMSO) 2.89 (3H, s), 2.97 (1H, dd J 14, 8), 3.01-3.08 (4H, m), 3.67 (3H, s), 4.19 (1H, t J 7), 6.84-6.88 (3H, m), 8.54 (約3H, br D2O交換), 9.58 (1H, s, D2O交換); HPLC/MS 保持時間 2.68分, m/z 283 (MH+).
【0089】
実施例4
【化11】

(S)-2-(3-エチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチル-アンモニウムクロライド
【0090】
工程1
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-エチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル(実施例1, 工程2) (1.42 g)をメタノール(40 ml)に溶解し、2M 水酸化リチウム(1.5 ml)を加えた。30分後、第2の量の水酸化リチウム(1.6 ml)を加え、その溶液を2日間放置した。水酸化リチウム(2M, 0.2 ml)を加え、その溶液をさらに7日間室温において置いた。
【0091】
溶液を濃縮し、水で希釈し、希HClで酸性にし、酢酸エチルで抽出した。抽出物を水および食塩水で洗浄した。乾燥(MgSO4)および蒸発により粗生成物を得た。エーテルで摩砕し、(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸を白色の固体、980 mgとして得た。
NMR (500 MHz, d6 DMSO) 1.33 (9H, s), 2.67 (1H, dd J 13.5, 10), 2.84 (1H, dd J 13.3 4.5), 3.97-4.01 (1H, m),5.05 (2H, s), 6.56 (1H, dd J 8, 2), 6.69 (1H, d J 2), 6.85 (1H, d J 8), 6.97 (1H, br d J 8), 7.29-7.46 (5H, m), 8.88 (1H, s D2O交換), 12.5 (1H br D2O交換); HPLC/MS 保持時間 5.37分, m/z 388 (MH+).
【0092】
工程2
[(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステル
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸(1.23 mmol)をDMF(5ml)に溶解した。EDCI(2 mmol)、続いてHOBT(1 mmol)およびメチルアミン塩酸塩(2 mmol)を加えた。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2 mmol)を加え、その溶液を室温で5時間撹拌した。その溶液を水と酢酸エチルで希釈した。酢酸エチル抽出物を希HCl、水および食塩水で洗浄した。乾燥(MgSO4)および蒸発して、粗生成物を得、それを酢酸エチル-ヘキサン(1:1)から結晶化した。[(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステルを白色の固体、348 mgとして得た。
HPLC/MS 保持時間 5.22分, m/z 401 (MH+).
【0093】
工程3
[(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-エチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステル
[(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステル(348 mg)を、乾燥ジクロロメタン(2 ml)に溶解し、エチルイソシアネート(0.31 ml)を加え、続いて触媒量のDMAPを加えた。溶液を50℃で5時間加熱し、白色の固体が形成した。その混合物を酢酸エチルで希釈し、粗生成物を濾別し、酢酸エチルで洗浄した。メタノールから再結晶し、[(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-エチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステル、253 mgを得た。
HPLC/MS 保持時間 5.49分, m/z 472 (MH+).
【0094】
工程4
(S)-2-(3-エチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチル-アンモニウムクロライド
[(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-エチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチル]-カルバミン酸 tert-ブチルエステル(243 mg)を4M HCl-ジオキサン(5ml)に懸濁し、室温で1時間撹拌した。清澄な溶液を蒸発乾固し油状物を得、それをメタノール(5 ml)に再溶解した。5% Pd-炭(50 mg)を加え、混合物を水素ガス雰囲気下、室温で2時間撹拌した。触媒を濾過により除き、メタノールで洗浄した。濾液を蒸発し、粗生成物を油状物として得た。エーテルで摩砕し、(S)-2-(3-エチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチル-アンモニウムクロライドを灰色の固体、150 mgとして得た。
NMR (500 MHz, d6 DMSO) 1.07 (3H, t J 7), 2.59 (3H, d J 4.5 D2Oでsに崩壊), 2.82-2.95 (2H, m), 3.03-3.10 (2H, m), 3.83 (1H, t J 7), 6.81-6.85 (3H, m), 7.55 (1H, t J 5.5), 8.19 (3H, br D2O交換), 8.37 (1H, br q D2O交換), 9.5 (1H, s, D2O交換); HPLC/MS 保持時間 2.9分, m/z 282 (MH+).
【0095】
実施例5
【化12】

(S)-2-(3-エチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-(1-メトキシカルボニル-1-メチル-エチルカルバモイル)-エチル-アンモニウムクロライド
【0096】
工程1
2-[(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオニルアミノ]-2-メチル-プロピオン酸 メチルエステル
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 (465 mg)を無水DMA(5ml)に溶解し、HBTU(910 mg)を少しずつ加え、続いてメチル 2-アミノイソブチレート塩酸(366 mg)を加えた。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.4 ml)を加え、その溶液を室温で3日間撹拌した。混合物を水および酢酸エチルで希釈した。水相を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機抽出物を希HCl、重炭酸ナトリウム水溶液、水および食塩水で洗浄した。溶媒を乾燥(MgSO4)および蒸発して、粗2-[(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオニルアミノ]-2-メチル-プロピオン酸 メチルエステルを、ゴム状物質、690 mgとして得た。
HPLC/MS 保持時間 5.77分, m/z 487.
【0097】
工程2
2-[(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-エチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオニルアミノ]-2-メチル-プロピオン酸 メチルエステル
2-[(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオニルアミノ]-2-メチル-プロピオン酸 メチルエステル(1.2 mmol)をジクロロメタン(5 ml)に溶解し、エチルイソシアネート(0.31 ml)を加えた。触媒量のDMAPを加え、溶液を50℃で7時間加熱した。反応混合物を蒸発乾固し、粗生成物を酢酸エチル-ヘキサンの混液で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。2-[(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-エチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノプロピロニル-アミノ]-2-メチル-プロピオン酸 メチルエステルを、白色の結晶固体、410 mgとして得た。
【0098】
Rf 0.29 (酢酸エチル-ヘキサン 1:1); NMR (500 MHz, CDCl3) 1.39 (約3H, s), 1.41 (約3H, s), 1.43 (約9H, s), 2.86 (1H, dd J 14, 8), 3.08 (1H, dd J 14, 5), 3.25-3.32 (2H, m), 3.70 (3H, s), 4.23(1H, br), 5.00 (1H, br t J 5), 5.07 (2H, s), 6.15 (1H, s), 6.91 (1H, d J 8), 6.99-7.02 (2H, m), 7.28-7.42 (約5H, m); HPLC/MS 保持時間 5.98分, m/z 558 (MH+).
【0099】
工程3
(S)-2-(3-エチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-(1-メトキシカルボニル-1-メチル-エチルカルバモイル)-エチル-アンモニウムクロライド
2-[(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-エチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオニルアミノ]-2-メチル-プロピオン酸 メチルエステル(380 mg)を4M HCl-ジオキサン(10 ml)に溶解し、室温で1時間撹拌した。その溶液を蒸発乾固し、得られたゴム状物質を5% Pd-炭(60 mg)を含むメタノール(10 ml)に再溶解した。その混合物を水素の雰囲気下で2時間撹拌した。触媒を濾過により除き、濾液を蒸発乾固し、ゴム状物質を得た。エーテルで繰り返し摩砕し(S)-2-(3-エチルカルバモイルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-1-(1-メトキシカルボニル-1-メチル-エチルカルバモイル)-エチル-アンモニウムクロライドを白色の固体、240 mgとして得た。
NMR (500 MHz, d6 DMSO) 1.07 (約3H, t J 7), 1.32 (3H, s), 1.38 (3H, s), 2.85 (1H, dd J 14, 7), 2.98 (1H, dd J 14, 5), 3.05-3.09 (2H, m), 3.58 (3H, s), 3.91 (1H, br t), 6.83 (1H, d J 8), 6.91 (1H, dd J 8, 2), 6.94 (1H, d J 2), 7.55 (1H, br t), 8.15 (3H, br s D2O交換), 8.82 (1H, s D2O交換), 9.51 (1H, s, D2O交換); HPLC/MS 保持時間 4.29分, m/z 368 (MH+).
【0100】
実施例6
【化13】

(S)-2-[4-ヒドロキシ-3-(ピロリジン-1-カルボニルオキシ)-フェニル]-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
【0101】
工程1
ピロリジン-1-カルボン酸 2-ベンジルオキシ-5-((S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-メトキシカルボニル-エチル)-フェニルエステル
(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル(434 mg)をジクロロメタン(7 ml)に溶解し、ジクロロメタン(2 ml)中の1-ピロリジニルカルボニル クロライド(200 mg)の溶液を加えた。トリエチルアミン(0.22 ml)を滴下し、続いて触媒量のDMAPを加えた。その混合物を40℃で一晩撹拌した。反応をHPLC/MSでモニターし、さらなる量の1-ピロリジニルカルボニル クロライド(400 mg)およびトリエチルアミン(0.4 ml)を加え、55℃で48時間加熱を続けた。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、希HCl、重炭酸ナトリウム水溶液および食塩水で洗浄した。乾燥(MgSO4)および蒸発して、粗生成物を得た。酢酸エチル-ヘキサンの混液で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより、ピロリジン-1-カルボン酸 2-ベンジルオキシ-5-((S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-メトキシカルボニル-エチル)-フェニルエステルを、無色のゴム状物質、364 mgとして得た。
Rf 0.3 (酢酸エチル-ヘキサン 1:1); HPLC/MS 保持時間 7.31分, m/z 533 (MH+).
【0102】
工程2
(S)-2-[4-ヒドロキシ-3-(ピロリジン-1-カルボニルオキシ)-フェニル]-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
ピロリジン-1-カルボン酸 2-ベンジルオキシ-5-((S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-2-メトキシカルボニル-エチル)-フェニルエステル(364 mg)を、ベンジルクロライド(95 mg)と5% パラジウム-炭(50 mg)を含むメタノール(15 ml)に溶解した。その混合物を水素ガス雰囲気下で3時間撹拌した。触媒を濾過により除き、メタノールで洗浄した。濾液を蒸発して、ゴム状物質を得、それをエーテルで摩砕して結晶化した。(S)-2-[4-ヒドロキシ-3-(ピロリジン-1-カルボニルオキシ)-フェニル]-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライドを白色の固体、212 mgとして得た。
NMR (500 MHz, d6 DMSO) 1.82-1.92 (4H, m), 2.97 (1H, dd J 14, 7), 3.05 (1H, dd J 14, 6), 3.31 (2H, t J 7), 3.49 (2H, t J 7), 3.67 (3H, s), 4.19 (1H, t J 約6), 6.85-6.88 (3H, m), 8.54 (3H, br s D2O交換), 9.54 (1H, s, D2O交換); HPLC/MS 保持時間 3.04分, m/z 309 (MH+).
【0103】
実施例7
【化14】

(S)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
【0104】
工程1
(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル
メチルイソシアネート(260 mg)を含むフラスコに、ジクロロメタン(4 ml)中の(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル(664 mg)および触媒量のDMAPの溶液を加えた。その溶液を40℃で一晩加熱撹拌した。反応をHPLC/MSでモニターし、さらなる量のメチルイソシアネート(240 mg)を加え、40℃で24時間加熱を続けた。反応混合物を蒸発し、粗生成物を得、それを酢酸エチル-ヘキサンの混液で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステルを白色の固体、437 mgとして得た。
Rf 0.23 (酢酸エチル-ヘキサン 1:1); HPLC/MS 保持時間 6.55分, m/z 493 (MH+).
【0105】
工程2
(S)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル(427 mg)を、5% Pd-C (46 mg)とベンジルクロライド(140 mg)を含むメタノール(40 ml)に溶解した。その混合物を水素雰囲気下で4時間撹拌した。触媒を濾過により除き、メタノールで洗浄した。濾液を蒸発乾固し、ゴム状物質を得、それをエーテルで摩砕した。(S)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライドを白色の固体、239 mgとして得た。
NMR (500 MHz, d6 DMSO) 2.64 (約3H, d J 5), 2.97 (1H, dd J 14.5, 7), 3.04 (1H, dd J 14.5, 6), 3.67 (3H, s), 4.19 (1H, t J 6.5), 6.82-6.88 (3H, m), 7.44 (1H, q J 5 s D2O交換), 8.52 (3H, br s D2O交換), 9.57 (1H, s, D2O交換); HPLC/MS 保持時間 3.04分, m/z 309 (MH+).
【0106】
実施例8
【化15】

(S)-2-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-1-[(S)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルカルバモイル]-エチル-アンモニウムクロライド
【0107】
工程1
(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル
アセトニトリル(15ml)中の(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル(1.1 g, 2.74 mmol)の溶液に、N-スクシンイミジル N-メチルカルバメート(1.89 g, 11 mmol)を加えた。その混合物を4日間還流した。溶媒を除去後、残渣を酢酸エチル/ヘキサン(2:3)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステルを白色の固体、0.83 gとして得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) 1.42 (s, 9H), 2.86 (d, J = 4.9Hz, 3H), 3.01 (m, 2H), 3.70 (s, 3H), 4.53 (m, 1H), 5.00 (m, 2H), 5.07 (s, 2H), 6.89 (m, 3H), 7.29-7.42 (m, 5H).
【0108】
工程2
(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
ジクロロメタン(10ml)中の(S)-3-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル(0.80 g)の溶液に、HCl溶液(ジオキサン中4M, 4 ml)を0℃で加えた。その混合物をこの温度で2時間撹拌した。ジエチルエーテルを加え、白色の固体が沈殿した。濾過により(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライドを、白色の固体、0.654 gとして得た。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) 2.65 (d, 3H), 3.01-3.14 (m, 2H), 3.67 (s, 3H), 4.24 (m, 1H), 5.10 (s, 2H), 7.01-7.11 (m, 3H), 7.30-7.44 (m, 5H), 7.61 (m, 1H), 8.64 (br, 3H).
【0109】
工程3
(S)-2-[(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-プロピオニルアミノ]-3-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル
ジクロロメタン(20 ml)に(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド(0.2 g, 0.506 mmol)を懸濁し、次いで、トリエチルアミン(0.068 g, 0.678 mmol)を加え、続いて(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-プロピオン酸(0.31 g, 0.678 mmol)[ドイツ特許DE 2121187参照]とHOBt(0.092 g, 0.678 mmol)を加えた。その混合物を室温で20分間撹拌した。EDC(0.130 g, 0.678 mmol)を加えた。撹拌を一晩続けた。混合物を重炭酸ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去し、残渣を酢酸エチル/ジクロロメタン(1:2)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。(S)-2-[(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-プロピオニルアミノ]-3-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステルを白色の固体、0.43gとして得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) 2.62 (d, J = 4.6Hz, 3H), 2.88-3.00 (m, 3H), 3.35 (s, 1H), 3.56 (s, 3H), 4.24-4.30 (m, 1H), 4.43-4.49 (m, 1H), 4.95 (m, 2H), 5.06 (m, 6H), 6.80 (m, 1H), 6.92-7.09 (m, 5H), 7.23-7.45 (m, 21H), 7.59 (m, 1H), 8.46 (d, J=7.3Hz, 1H).
【0110】
工程4
(S)-1-[(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルカルバモイル]-2-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-エチル-アンモニウムクロライド
(S)-2-[(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-プロピオニルアミノ]-3-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル(0.95 g, 1.115 mmol)を酢酸エチル(20 ml)およびメタノール(20ml)に懸濁した。Pd/C (5%, 0.19 g)およびベンジルクロライド(0.155 g, 1.226 mmol)を加えた。水素化を30 psiの水素下で3時間行った。濾過および溶媒の除去後、残渣をメタノール(3 ml)に再溶解し、ジエチルエーテルを加え、白色の固体が沈殿した。濾過により(S)-1-[(S)-2-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルカルバモイル]-2-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-エチル-アンモニウムクロライドを白色の固体、0.52gとして得た。
【0111】
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) 2.63 (d, 3H), 2.73 (m, 1H), 2.82-3.01 (m, 3H), 3.61 (s, 3H), 3.92 (m, 1H), 4.46 (m, 1H), 6.52 (m, 1H), 6.68 (m, 2H), 6.83-6.91 (m, 3H), 7.50 (m, 1H), 8.11 (br, 3H), 8.87 (s, 1H), 8.97 (s, 1H), 9.10 (d, J=7.6Hz, 1H), 9.57 (s, 1H). m/z 448 (MH+). HPLC/MS (方法B) 保持時間 4.58分, m/z 448 (MH+).
【0112】
実施例9
【化16】

(S)-2-(3-ヒドロキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルアンモニウムクロライド
【0113】
工程1
(S)-3-(3-ベンジルオキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル
アセトニトリル(15 mL)中の(S)-3-(3-ベンジルオキシ-4-ヒドロキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル(1.15 g, 2.87 mmol)およびN-スクシンイミジル N-メチルカルバメート(1.975 g, 11.47 mmol)の混合物を4日間還流した。溶媒を除去後、残渣を溶出液としてEtOAc/ヘキサン(1:1.5)を用いるクロマトグラフィーで精製し、(S)-3-(3-ベンジルオキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステルを白色の固体、0.83gとして得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) 1.43 (s, 9H), 2.86 (d, 3H), 3.03 (m, 2H), 3.66 (s, 3H), 4.56 (m, 1H), 4.98 (m, 2H), 5.05 (s, 2H), 6.70-6.90 (m, 2H), 7.03 (m, 1H), 7.29-7.43 (m, 5H).
【0114】
工程2
(S)-2-(3-ベンジルオキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
氷浴中で冷却した、ジクロロメタン(12 ml)中の(S)-3-(3-ベンジルオキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-2-tert-ブトキシカルボニルアミノ-プロピオン酸 メチルエステル(0.90 g)の溶液に、ジオキサン中の4M HCl(6 ml)を加えた。その混合物を0℃で2時間撹拌した。ジエチルエーテルを加え、白色の固体が沈殿した。濾過により(S)-2-(3-ベンジルオキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライドを白色の固体、0.83 gとして得た。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) 2.64 (s, 3H), 3.10 (m, 2H), 3.68 (s, 3H), 4.33 (m, 1H), 5.10 (s, 2H), 6.79(m, 1H), 7.04-7.12 (m, 2H), 7.32-7.45 (m, 5H), 7.60 (m, 1H), 8.64 (s, 3H).
【0115】
工程3
(S)-2-(3-ヒドロキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルアンモニウムクロライド
(S)-2-(3-ベンジルオキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルアンモニウムクロライド(0.5 g)をメタノール(30 mL)に溶解し、続いてPd/C(5%)(0.96 g)を加えた。水素化を30 psiの水素下、室温で2時間行った。濾過後、濾液を真空下に濃縮し、残渣をジエチルエーテルで洗浄した。(S)-2-(3-ヒドロキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルアンモニウムクロライドを白色の固体、0.35 gとして得た。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) 2.63 (d, 3H), 2.96-3.09 (m, 2H), 3.70 (s, 3H), 4.22 (m, 1H), 6.61(m, 1H), 6.74 (m, 1H), 6.91 (m, 1H), 7.46 (m, 1H), 8.60 (s, 3H), 9.65 (s, 1H). MS m/z (MH+) 269. HPLC/MS (方法B) 保持時間 4.03分, m/z 269 (MH+).
【0116】
実施例10
【化17】

(S)-2-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-1-[(S)-2-(3-ヒドロキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルカルバモイル]-エチル-アンモニウムクロライド
【0117】
工程1
(S)-2-[(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-プロピオニルアミノ]-3-(3-ベンジルオキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル
(S)-2-(3-ベンジルオキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライドをジクロロメタン(20 ml)に懸濁し、次いでトリエチルアミン(0.18 g)、続いて(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-プロピオン酸(0.85 g)[ドイツ特許DE 2121187参照]およびHOBt(0.25 g)を加えた。その混合物を室温で20分間撹拌した。EDC(0.35 g)を加え、撹拌を一晩続けた。混合物を重炭酸ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去後、残渣を酢酸エチル/ジクロロメタン(1:2)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。(S)-2-[(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-プロピオニルアミノ]-3-(3-ベンジルオキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステルを白色の固体、1.25 gとして得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) 2.63 (d, J = 4.6Hz, 3H), 2.87-3.06 (m, 4H), 3.56 (s, 3H), 4.28-4.34 (m, 1H), 4.53-4.58 (m, 1H), 4.86-5.09 (m, 8H), 6.78 (m, 2H), 6.95 (m, 2H), 7.09 (m, 2H), 7.20-7.54 (m, 22H), 8.51 (m,1H).
【0118】
工程2
(S)-2-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-1-[(S)-2-(3-ヒドロキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルカルバモイル]-エチル-アンモニウムクロライド
(S)-2-[(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-プロピオニルアミノ]-3-(3-ベンジルオキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル(0.40 g, 0.470 mmol)を酢酸エチル(20 ml)とメタノール(20 ml)に懸濁した。Pd/C(5%, 0.10 g)およびベンジルクロライド(0.065 g, 0.517 mmol)を加えた。水素化を30 psiの水素下で3時間行った。濾過および溶媒の除去後、残渣をメタノール(2 ml)に再溶解した。ジエチルエーテルを加え、白色の固体が沈殿した。濾過により、(S)-2-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-1-[(S)-2-(3-ヒドロキシ-4-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルカルバモイル]-エチル-アンモニウムクロライドを白色の固体、0.22 gとして得た。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) 2.63 (d, 3H), 2.72 (m, 1H), 2.83-3.02 (m, 3H), 3.64 (s, 3H), 3.93 (m, 1H), 4.50 (m, 1H), 6.52 (m, 1H), 6.65 (m, 3H), 6.85 (m, 2H), 7.46 (m, 1H), 8.11 (s, 3H), 8.87 (s, 1H), 8.96 (s, 1H), 9.13 (m, 1H), 9.61 (s, 1H). m/z 448 (MH+).
【0119】
実施例11
【化18】

(S)-2-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-1-[(S)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルカルバモイル]-エチル-アンモニウム;(1S,4R)-2-オキソ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-スルホネート
【0120】
磁気撹拌子を有する200 mLのガラスオートクレーブに、(S)-2-[(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-プロピオニルアミノ]-3-(4-ベンジルオキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 メチルエステル(10.0 g, 11.7 mmol)、10% パラジウム炭(湿潤)(500 mg)、(1R)-(-)-10-カンファースルホン酸(2.76 g, 11.9 mmol)および乾燥メタノール(100 mL)を装填した。容器を窒素でパージし、次いで水素ガスで6バールまで装填し、その懸濁液を室温で激しく撹拌した。1時間後、容器内の圧力が2バールに減少し、容器を水素ガスで7バールまで再装填し、撹拌を続けた。合計18時間後、混合物をガラスマイクロ繊維フィルターペーパー(GF/Fグレード)により濾過し、濾液を減圧下に素早く蒸発した(1 Lの蒸発フラスコを用い、45℃に設定した水浴を用い、最高速度で回転した)。10分後、固体発泡体が形成し、それを粉砕し、ロータリーエバポレーターで45℃で2時間乾燥した。(S)-2-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-1-[(S)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルカルバモイル]-エチル-アンモニウム;(1S,4R)-2-オキソ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-スルホネートを、流動性の白色固体(8.0 g)として得た。
1H NMR (400MHz, d6-DMSO) 0.75 (s, 3H), 1.03 (s, 3H), 1.27 (m, 2H), 1.86 (m, 1H), 1.94 (t, 1H), 2.24 (m, 1H), 2.64 (m, 3H), 2.69-2.76 (m, 2H), 2.73 (m, 1H), 2.81-2.97 (m, 3H), 3.64 (s, 3H), 3.86 (m, 1H), 4.49 (m, 1H), 6.49 (m, 1H), 6.67 (m, 2H), 6.79-6.83 (m, 3H), 7.45 (m, 1H), 7.77 (br, 3H), 8.85 (m, 1H), 8.87 (s, 1H), 8.79 (2, 1H), 9.38 (s, 1H). HPLC 保持時間 8.70分
【0121】
実施例12
【化19】

(S)-1-[(S)-2-(4-アセトキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチルカルバモイル]-2-(3,4-ジヒドロキシ-フェニル)-エチル-アンモニウム トリフルオロアセテート
【0122】
工程1
(S)-2-(4-アセトキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド
(S)-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルカルバモイルオキシフェニル)-1-メトキシカルボニルエチルアンモニウムクロライド(1.68 g, 6.26 mM)を、酢酸(25 ml)に溶解した。その反応混合物にHCl(g)を5分間バブルし、アセチルクロライド(4.45 ml, 62.6 mM)を滴下した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を最初の反応容積の約半分まで濃縮した。ジエチルエーテルを加え、固体を得た。溶媒を蒸発し、残渣をジエチルエーテルで摩砕した。濾過により生成物を回収し、一定重量になるまで真空下に乾燥し、(S)-2-(4-アセトキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライドを固体、1.55 gとして得た。
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ = 2.23 (s, 3H), 2.65 (d, J=4.6 Hz, 3H), 3.08-3.11 (m, J = 14.35 Hz, 7.1 Hz, 1H), 3.14-3.17 (m, J = 14.15 Hz, 5.9 Hz, 1H), 3.68 (s, 3H), 4.28 (t, 1H, CH), 7.10-7.17 (m, 3H), 7.70 (q, J = 4.55 Hz, 1H), 8.59 (s, 3H). HPLC/MS (方法A) 保持時間 2.85分, m/z 311 (MH+).
【0123】
工程2
(S)-3-(4-アセトキシ-3-メチルカルバモイルオキシフェニル)-2-[(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシフェニル)-プロピオニルアミノ]-プロピオン酸 メチルエステル
(S)-2-(4-アセトキシ-3-メチルカルバモイルオキシ-フェニル)-1-メトキシカルボニル-エチル-アンモニウムクロライド(3.13 g, 9.03 mM)、(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシ-フェニル)-プロピオン酸 (4.62 g, 9.03 mM)およびEDCI(2.07 g, 10.83 mM)を、DMF(25 ml)に溶解した。ジ-イソプロピルエチルアミン(2.43 g, 3.28 ml, 18.83 mM)を加え、反応混合物を室温で4時間撹拌した。酢酸エチル(200 ml)を加え、混合物を水(3×250ml)で洗浄した。有機層を乾燥(MgSO4)し、濾過し、蒸発乾固して、褐色の固体(6.93 g)を得た。粗生成物をCH2Cl2/EtOAc(100%CH2Cl2〜CH2Cl2/酢酸エチル(0%酢酸エチル〜7:3)勾配)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(S)-3-(4-アセトキシ-3-メチルカルバモイルオキシフェニル)-2-[(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシフェニル)-プロピオニルアミノ]-プロピオン酸 メチルエステルを白色の固体、4.57 gとして得た。
【0124】
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ = 2.23 (s, 3H), 2.69 (sbr, 3H), 2.87(sbr, 1H), 2.95 (dd, J=13.95Hz, 6.50Hz, 1H), 3.02 (dd, J = 14.1 Hz, 5.70 Hz, 1H), 3.11(dd, J = 13.9 Hz, 5.50Hz,1H), 3.33 (s, 3H), 4.43-4.44 (m, 1H), 4.84-4.85 (m, 1H), 5.00-5.08(m, 6H,),5.79 (d, J=7.25Hz, 1H), 6.49 (d, J= 6.85Hz, 1H), 6.73 (dd, J = 8.25 Hz, 1.75 Hz, 1H), 6.80-6.82 (m, J=8.2, 4H), 6.98-7.00 (m, 1H), 7.27-7.35 (m, 12H), 7.41-7.42 (m, 4H). HPLC/MS (方法A) 保持時間 7.14分, m/z 805 (MH+).
【0125】
工程3
(S)-1-[(S)-2-(4-アセトキシ-3-メチルカルバモイルオキシフェニル)-1-メトキシカルボニルエチルカルバモイル]-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチルアンモニウム トリフルオロアセテート
丸底フラスコを(S)-3-(4-アセトキシ-3-メチルカルバモイルオキシフェニル)-2-[(S)-2-ベンジルオキシカルボニルアミノ-3-(3,4-ビス-ベンジルオキシフェニル)-プロピオニルアミノ]-プロピオン酸 メチルエステル(1.00 g, 1.24 mM)およびジオキサン/メタノール[3:1](40ml)で装填し、濁った溶液を得た。その混合物を窒素でパージし、10% Pd/C(250 mg)、続いてTFA(213 mg, 0.147 ml, 1.86 mM)を少しずつ加えた。フラスコを水素でパージし、水素バルーンを用いて密封した。反応を室温で撹拌し、LCMSでモニターした。3時間後、触媒を除去し、メタノール(2×10 mL)で洗浄した。合わせた濾液を真空下に濃縮(水浴温度30℃)し、無色の油状物を得た。その油状物をジエチルエーテルで摩砕し、白色の固体を得た。上澄み液をデカントし、ジエチルエーテルで摩砕を繰り返した。得られた白色の固体を一定の重量になるまで30℃で真空下に乾燥し、(S)-1-[(S)-2-(4-アセトキシ-3-メチルカルバモイルオキシフェニル)-1-メトキシカルボニルエチルカルバモイル]-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチルアンモニウム トリフルオロアセテートを白色の流動性の粉末、719 mgとして得た。
【0126】
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ = 2.22 (s, 3H), 2.65 (d, J = 4.6 Hz, 3H), 2.67-2.73 (m, 1H), 2.94-2.98 (m, 2H), 3.08 (dd, J = 14.15 Hz, 5.55 Hz, 1H), 3.64 (s, 3H),3.90 (sbr, 1H), 4.55-4.58 (m, 1H), 6.51 (dd, J = 8.05 Hz, 1.95 Hz, 1H), 6.66-6.68 (m, 2H), 7.09 (dd, J = 8.25 Hz, 1.95 Hz, 1H), 7.11-7.15 (m, 2H), 7.71 (q, J = 4.55 Hz, 1H), 7.99 (br, 3H), 8.81 (sbr, 1H), 8.90 (sbr, 1H), 8.97 (d, J = 7.65, 1H). HPLC/MS (方法A) 保持時間 3.20分, m/z 490 (MH+).
【0127】
実施例13
【化20】

(S)-1-[(S)-1-カルバモイル-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルカルバモイルオキシフェニル)-エチルカルバモイル]-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-エチルアンモニウムクロライド
【0128】
【化21】

【0129】
(S)-1-[(S)-1-カルバモイル-2-(4-ヒドロキシ-3-メチルカルバモイルオキシフェニル)-エチルカルバモイル]-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-エチルアンモニウム;クロライドをスキーム1に示した経路により製造し、生成物を無色の固体、0.111 gとして得た。
1H-NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ = 2.64 (d, J = 4.6 Hz, 3H), 2.63-2.76 (m, 1H), 2.89-3.07 (m, 3H), 3.87 (m, 1H), 4.38-4.43 (m, 1H), 6.51-6-94 (m, 6H), 7.14 (m, 1H), 7.43-7.56 (m, 2H), 7.98 (b, 3H), 8.73-8.92 (m, 3H), 9.45 (s, 1H). MS m/z 433 (MH+).
【0130】
生物学的結果
A. 薬物動態分析
薬物動態投薬プロトコル
Naive雄性Wistarラット(体重 = 250-500 g)を薬物動態研究のために用いた。動物を一晩絶食した。興味のある化合物を0.9 % 生理食塩水に溶解し、分子量で12.5 mg/kgのL-ドーパと等価の用量のベンセラジド(10 mg/kg)と共に投薬した。血液サンプルは、外側の尾静脈に設置されたバタフライ針から採取し、抗凝血剤としてヘパリンを含むサンプルチューブに集めた。血液サンプルを5000 rpmで10分間遠心分離し、上清血漿を除き、-80℃で保管した。
【0131】
サンプルの調製と標準溶液
10 mM L-ドーパとワルファリンの保存溶液を20 % TFA、10 mMメタ重亜硫酸ナトリウムおよびDMSO中でそれぞれ調製した。
標準曲線および品質管理(QC)サンプルは、コントロールのラット血漿をL-ドーパでスパイクすること(spiking)により調製し、50μMの初期濃度を達成した。この溶液をラットの血漿で連続希釈し、25、6.25、3.125、1.56、0.78および0.39 μM L-ドーパを有する溶液を得た。
1容積のサンプル血漿、標準サンプル血漿およびQCサンプル血漿を、各サンプルバイアルから96ウエルプレートに移した。内部標準、0.5μMでワルファリン含む10 mMのメタ重亜硫酸ナトリウム中の20 % TFAの1容積を添加することにより血漿から化合物を抽出した。サンプルを渦巻き(vortex)混合し、4500 rpmで4分間遠心分離し、血漿蛋白質を沈殿させた。各ウエルに1容積の水を加え、蛋白質ペレットを再懸濁した。サンプルを再度渦巻き混合し、4500 rpmで9分間遠心分離し、血漿タンパク質を沈殿させた。
上清液を次に詳述するようにして分析した。
【0132】
LC-MS/MS分析
LC-MS/MS系は、Agilent 1100 シリーズグラジエントHPLCポンプ(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)、CTC HTS PAL オートサンプラー(CTC Analytics, Zwingen, Switzerland)およびターボイオンスプレーインターフェースを備え、陽エレクトロスプレーモードで操作されるApplied Biosystems/MDS Sciex API 3000トリプル四重極質量分析計 (Applied Biosystems, Foster City, CA) から構成される。インキュベーション混合物中の分析物を、Phenomenex Sphereclone ODS 2カラム (150×4.6 mm, 3 μm, Phenomenex, Torrance, CA)を用いる逆相HPLCにより分離した。
【0133】
勾配(グラジエント)溶出プログラムは、水/0.1 % ギ酸中のアセトニトリル/0.1% ギ酸(5 % v/v)からなる移動相を1 ml/分の流速で用い、1.5分間送り出し、その後、アセトニトリル濃度を0.5分間かけて95%に増加し、元に戻す前に4分間95 %を維持し、残りの2分間5 %に戻した。注入容積は20μlであった。溶出液の約10%を質量分析計ソース(source)へ導入した。質量分析計のソース温度は450℃に維持され、他のソースパラメータ(例えば、衝突エネルギー、クラスタ分離ポテンシャル、カーテンガス圧力等)は、最大の感度を達成するために分析の日で最適化された。L-ドーパおよびワルファリンの定量化は、それぞれm/z = 198.075 / 152.1およびm/z = 369.069 / 163の遷移をモニターすることにより行なわれた。
【0134】
曲線下面積(AUC)を決定するために、個々の動物プロファイルで、非コンパートメント分析が、WinNonlinソフトウエア(v 5.2 Professionalバージョン, Pharsight corporation, Mountain View, California)を用いて行なわれた。数値は平均値 +/- 標準偏差として記録された。
上記アッセイにおいて、本発明の全ての実施例化合物は、イン ビボで、種々の程度および種々の時間でL-ドーパに変換されることが示された。
【0135】
B. 6−OHDA−障害ラットにおける活性の評価
動物: 雄性ウィスター系ラット、200-225g、Harlan Ltd.
飼育室: 動物は、動物(科学的方法)条例1996当社規則に従って、湿度50%および21±2℃の温度の環境の中、12時間の明−暗サイクルで、4つのグループで飼育した。ラットは、餌と水に無制限に近づけた。
認可: 本研究において用いられた全ての動物は、英国1986動物(科学的方法)条例に従って扱われた。
【0136】
方法
外科処置: 雄性ウィスター系ラットを、イソフルオラン(95%のO2中1〜2%、5%のCO2搬送ガス)を用いる誘導室中で麻酔し、ケップフ(Kopf)定位固定フレームにセットし、0.5〜1.0%のイソフルオランを用いて麻酔を維持した。頭皮を切開し、座標AP:−0.26 mm L:+2.0 mm (全ての座標はブレグマから測定した)における頭蓋骨に直径0.8 mmの穴を作った。神経毒6−ヒドロキシドーパミン(6-OHDA) (0.05%のアスコルビン酸を含んでいる0.9%の生理食塩水4μL中の遊離塩基8μg)を、硬膜の下に−8mmまで降ろした10μLハミルトン注射器を用い4分にわたって左正中前脳塊中に、一定速度(1μl/分)で注射した。針を取り除く前に、更に4分間残しておき、傷をきれいにして縫合した。カルプロフェン(皮下に5 mg/kg)を、鎮痛のために投与し、そして麻酔からの回復前に、0.9%の生理食塩水中の5%のブドウ糖の再水和処置(最高5mlまで、腹腔内)をした。
【0137】
行動 評価
障害の確認
手術後少なくとも2週で、障害の程度を評価するために、塩酸アポモルヒネ(0.05%のアスコルビン酸を含む0.9%の生理食塩水中、0.5mg/kgを皮下注射)の投与に応じる回旋行動(以下を参照)に対して動物を試験した。最盛期の活動において、>6回旋/分を示したラットのみを、今後の試験に用いた。
【0138】
試験化合物による回旋活動の誘発の評価
アポモルヒネ投与の少なくとも1週間後に、試験薬またはL-ドーパのどちらかを用いる回旋活動に対して、ラット(処置当たりn=4〜8)を試験した。これらは、腹膜内(ip)ルートを通して、または、強制飼養による経口的(po)のいずれかにより投与された。動物を、定常活動を測定するために、最高30分まで、ロトメータ(rotometers) (Med Associates)に置いた。次いで、それらを、試験化合物またはL-ドーパ (63.4μmole/kg ipまたはpo)と併用してベンセラジド (10 mg/kg)で処置した。試験薬/L-ドーパ投与後、最高6時間まで回転挙動を評価した。動物は、比較の目的で、一連の化合物で典型的な処置をした。各々の処置は、少なくとも1日隔てて施した。
【0139】
データ分析
6時間の間にわたり、10分当たりの回転数を測定した。それらが10分当たり>10回転、回転したならば、動物は活発であるとみなした。このデータから、以下のパラメータを測定した:
A 全活動(AUC活動、(ここで、AUC=自発運動/時間 曲線下の面積))
B 最盛期の活動
C 活動の継続時間
値はL-ドーパが誘発した効果を%として引用した。
【0140】
例証として、p.o.投与された前記の実施例8の化合物は、220分当たり928(±161)のAUC(自発運動)、10分当たり92(±20)回転での最盛期の活動および142(±7)分の自発運動の継続時間を有し、ベースラインと比較して増加した自発運動を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)または式(II):
【化1】

[式中、
R1はカルボキシ、カルボキシエステルまたはカルボキシアミド基であり;
R2は基-C(=O)-NR3R4または-S(=O)2-NR3R4であり;
R3およびR4は、独立して、水素、任意に置換されていてもよいC1-C6アルキル、(C1-C5フルオロアルキル)-CH2-、-Qおよび-CH2Q(ここで、Qは3〜6の環原子を有し、任意に置換されていてもよい単環式の炭素環または複素環である)から選択されるか;または
R3およびR4は、それらが結合している窒素と一緒になって、3〜8の環原子を有し、任意に置換されていてもよい単環式のシクロアルキル環もしくは非芳香族複素環を形成し;
R5は水素、またはペプチド結合を介して結合した天然もしくは非天然のα-アミノ酸の残基であり;
R6は水素または基R7C(=O)-であり;そして
R7はC1-C6アルキル、C1-C6フルオロアルキルまたはシクロプロピルである]
の、置換されたフェニルアラニン化合物、またはその塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項2】
R6が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R6がCH3C(=O)-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R2が基-C(=O)-NR3R4である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項5】
R3およびR4の一方が水素であり、他方がC1-C3アルキルである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項6】
R3が水素であり、R4がメチルである、請求項1〜5のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項7】
R3およびR4が、それらが結合している窒素と一緒になって、任意に置換されていてもよい、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルまたはピロリジニル環を形成する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項8】
任意の置換基が、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、-NH2、-NHRAおよび-NRARB(ここで、RAおよびRBは独立して、メチルまたはエチルである)から選択される、請求項1〜7のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項9】
R1がカルボキシ基である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項10】
R1が式-COORC(ここで、RCはC1-C6アルキルである)のカルボキシエステル基である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項11】
RCがメチルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
R1が-CONH2である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項13】
R5が水素である、請求項1〜12のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項14】
R5が式-C(=O)C(R8)(R9)NH2(ここで、R8およびR9は、独立して、
(a) 水素;または
(b) 天然アミノ酸の側鎖、または
(c) 任意に置換されていてもよい、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシ、C2-C4アルケニル、C2-C4アルケニルオキシもしくはC2-C4アルキニル、または
(d) -CH2XCH3、-CH2CH2XCH3もしくは-CH2XCH2CH3[ここで、Xは-O-、Sまたは-NR10(ここで、R10は水素、メチルまたはエチルである)である];または
(e) -CH2QもしくはCH2OQ(ここで、Qは請求項1で定義されたとおりである)であるか;または
R8およびR9は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、3〜8の環原子を有し、任意に置換されていてもよいシクロアルキル環もしくは複素環を形成し、それらの環は、第2の任意に置換されていてもよい炭素環もしくは複素環と任意に縮合していてもよい)
のαアミノ酸残基である、請求項1〜12のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項15】
R8およびR9の一方が水素であり、他方がグリシン以外の天然アミノ酸の側鎖である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
R8およびR9が独立して、任意に置換されていてもよい、C1-C4アルキル、フェニル、ベンジル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、ピリジル、ピリジルメチル、ピペリジニル、ピペラジニルもしくはモルホリニルである、請求項14または15に記載の化合物。
【請求項17】
R8およびR9の一方がメチルである、請求項15または16に記載の化合物。
【請求項18】
R8およびR9がそれぞれメチルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項19】
R8およびR9が、それらが結合している炭素原子と一緒になって、任意にベンゼンと縮合していてもよいC1-C6シクロアルキル環を形成する、請求項14に記載の化合物。
【請求項20】
R8およびR9が、それらが結合している炭素原子と一緒になって、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル環を形成する、請求項14に記載の化合物。
【請求項21】
任意の置換基が、メチル、トリフルオロメチル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、シクロプロピル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、-NH2、-NHRAまたは-NRARB(ここで、RAおよびRBは独立してメチルまたはエチルである)から選択される、請求項14〜20のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項22】
R5が式(III):
【化2】

(式中、(a) R11およびR12は、独立して、水素、請求項1で定義された基R6、基-C(=O)OR13または基-C(=O)OR13(ここで、R13はC1-C3アルキルである)から選択されるか;または(b) R11およびR12の一方は水素であり、他方が請求項1で定義された基R2である)の基である、請求項1〜12のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項23】
R11およびR12がそれぞれ水素である、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
式(IV)または式(V):
【化3】

[式中、R1は基R14O(C=O)-であり;R2は基R15NH(C=O)-であり;そしてR6は水素または基R16(C=O)-(ここで、R14、R15およびR16は、独立して、C1-C6アルキル、C1-C6フルオロアルキルおよびシクロプロピルから選択される)である]
の化合物、またはその塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項25】
R14、R15およびR16がそれぞれメチルである、請求項25に記載の化合物。
【請求項26】
実施例で得られる構造式(I)または(II)を有する請求項1に記載の化合物、またはその塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1つに記載の化合物を医薬的に許容される担体とともに含む医薬組成物。
【請求項28】
損なわれたドーパミン作用性信号伝達を伴う疾病を治療するための組成物の製造における、請求項1〜26のいずれか1つに記載の化合物の使用。
【請求項29】
ドーパミン作用性信号伝達の障害を低減させるために、請求項1〜26のいずれか1つに記載の化合物の有効量を患者に投与することを含む、損なわれたドーパミン作用性信号伝達を伴う患者の疾病の治療方法。
【請求項30】
疾病が、パーキンソン病または不穏下肢症候群である、請求項28に記載の使用、または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
疾病が、トゥーレット症候群、注意欠陥過活動性障害、下垂体腫瘍の発生、パーキンソン−プラス症候群、レボドパ応答失調症、運動障害、睡眠中の周期運動、嚥下障害または神経遮断薬性悪性症候群である、請求項28に記載の使用、または請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2010−532751(P2010−532751A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514127(P2010−514127)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002313
【国際公開番号】WO2009/007696
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(507277930)プロキシマジェン エルティーディー (10)
【氏名又は名称原語表記】PROXIMAGEN LTD.
【住所又は居所原語表記】Hodgkin Building,Guy’s Campus,King’s College London,London SE1 1UL,United Kingdom
【Fターム(参考)】