説明

アミロイドーシスを治療するためのアミジン誘導体

本発明は、アミロイド関連疾患の治療におけるアミジン化合物に使用に関する。特に、本発明は、被験者に治療量のアミジン化合物を投与する段階を含む、被験者においてアミロイド関連疾患を治療または予防する方法に関する。本発明により使用される化合物には、以下の化学式(I)によるものがあり、投与されると、アミロイド原線維の形成、神経変性、または細胞毒性が、減少または阻害される:化学式(I)。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願はPCT特許出願公開番号WO2003/017,994号に関連する。
【0002】
アミロイドーシスはアミロイド原線維の存在を特徴とする病理学的状態を示す。アミロイドは多くの異なる疾患において見られる多様な、しかし特定の蛋白質沈着物(細胞内または細胞外)の一群を示す一般的な用語である。それらの発現は多様であるが、アミロイド沈着物は全て共通の形態特性を有し、特定の色素(例えば、コンゴ赤)で染色し、および染色後偏光において特徴的な赤-緑の複屈折が出現する。アミロイド沈着物は全て共通の超微細構造特徴ならびに共通のX線回折および赤外スペクトルを有する。
【0003】
アミロイド関連疾患は、1つの器官に限定されることもあり、またはいくつかの器官に広がることもある。最初の例は「限局性アミロイドーシス」と呼ばれ、第2の例は「全身性アミロイドーシス」と呼ばれる。
【0004】
幾つかのアミロイドーシス病は突発性であるが、これらの疾患のほとんどが前に存在する疾患の合併症として現れる。例えば、原発性アミロイドーシスは他の病状無しに生じることがあり、またはプラズマ細胞疾患もしくは多発性骨髄腫の結果生じることがある。
【0005】
二次アミロイドーシスは通常、慢性感染症(例えば結核)または慢性炎症(例えば関節リウマチ)と関係すると考えられる。家族性型の二次アミロイドーシスはまた家族性地中海熱(FMF)において見られる。この家族性型のアミロイドーシスは他の型の家族性アミロイドーシスの1つとして、遺伝的に継承され、特定の集団において見出される。一次および二次アミロイドーシスの両方において、幾つかの器官で沈着物が見出され、そのため全身性アミロイド病と考えられる。
【0006】
他の型の全身性アミロイドーシスは、長期血液透析患者において見出される。これらの症例のそれぞれにおいて、異なるアミロイド生成性蛋白質がアミロイド沈着に関係する。
【0007】
「限局性アミロイドーシス」は単一の器官系が関係する傾向のあるものである。異なるアミロイドはまた、沈着物中に存在する蛋白質の型により特徴づけられる。例えば、スクレイピー、牛海綿状脳症、クロイツフェルト-ヤコブ病、などの神経変性疾患は中枢神経系におけるプロテアーゼ抵抗型のプリオン蛋白質(AScrまたはPrP-27と呼ばれる)の出現および蓄積により特徴づけられる。同様に、他の神経変性病であるアルツハイマー病は老人斑および神経原線維変化により特徴づけられる。この症例では、斑および血管アミロイドは線維状Aβアミロイド蛋白質の沈着により形成される。成人発症の糖尿病(II型糖尿病)などの他の疾患は膵臓におけるアミロイドの局所的な蓄積により特徴づけられる。
【0008】
一旦これらのアミロイドが形成されると、アミロイド沈着物をインサイチューで有意に溶解するまたはさらなるアミロイド沈着を予防する広く許容された治療または処置は知られていない。アミロイド沈着の発生を予防する広く公知のまたは許容された治療もしくは処置もまた存在しない。
【0009】
各アミロイド生成性蛋白質は組織化してβ-シートとなり、細胞外または細胞内に沈着しうる不溶性原線維を形成することがある。各アミロイド生成性蛋白質は、アミノ酸配列が異なっているが、原線維を形成し、プロテオグリカン、アミロイドPおよび補体成分などの他の要素に結合するという同じ特性を有する。さらに、各アミロイド生成性蛋白質は、異なっているが、プロテオグリカンのグリコサミノグリカン(GAG)部分に結合することができる領域(GAG結合部位と呼ばれる)およびβ-シート形成を促進する他の領域など類似性を示すアミノ酸配列を有する。
【0010】
特定の症例では、アミロイド原線維は、一旦沈着すると、周囲の細胞にとって有毒となりうる。例えば、老人斑として組織化されたAβ原線維はアルツハイマー病患者の死んだ神経細胞および小膠細胞症と関係することが示されている。インビトロで試験すると、オリゴマーならびに原線維Aβペプチドが小膠細胞(脳マクロファージ)の活性化過程を誘発することができることが示された。これにより、アルツハイマー病患者の脳内で見出される小膠細胞症および脳の炎症の存在が説明されると思われる。オリゴマーおよび原線維の両方のAβペプチドがインビトロで神経細胞死を誘発しうる。
【0011】
II型糖尿病患者において見られる他の型のアミロイドーシスでは、アミロイド生成性蛋白質IAPPが、そのオリゴマー形においてまたは原線維に組織化された場合に、インビトロでβ-島細胞毒性を誘発することがわかっている。このため、II型糖尿病患者の膵臓においてIAPP原線維が出現するとβ島細胞(ランゲルハンス)の損失および臓器機能不全の原因となる。最近の発見はオリゴマーIAPPもまた毒性でありうることを示唆する。
【0012】
アルツハイマー病患者は、成人期に進行性痴呆を発症し、脳内で3つの主な構造変化を伴う:脳の複数の部分でのニューロンの広範な損失;神経原線維変化と呼ばれる細胞内蛋白質沈着物の蓄積;および不格好な神経終末(ジストロフィー神経突起)により取り囲まれたアミロイド斑または老人斑と呼ばれる細胞外蛋白質沈着物の蓄積。これらのアミロイド斑の主成分はβ-アミロイド前駆体蛋白質(APP)の開裂により生成するアミロイド-βペプチド(Aβ)、39〜43アミノ酸蛋白質である。
【0013】
ADにおけるAβ沈着の関連性について、広範な調査が実施されている(D.J.Selkoe、Trends in Cell Biology 8, 447-53(1998)(非特許文献1))。Aβは本来、小胞体(「ER」)、ゴルジ体、またはエンドソーム-リソソーム経路におけるアミロイド前駆体蛋白質(「APP」)の代謝処理に由来し、ほとんどが通常、40(「Aβ1-40」)または42(「Aβ1-42」)アミノ酸ペプチドとして分泌される(D.J.Selkoe, Annu. Rev. Cell Biol. 10, 373-403(1994)(非特許文献2))。ADの主因としてのAβの役割は、アルツハイマー病(「AD」)の老人斑中の細胞外アミロイドβペプチド(「Aβ」)沈着物、突然変異AD関連遺伝子、例えば、アミロイド前駆体蛋白質、プレセニリンIおよびプレセニリンIIを有する細胞におけるAβ産生の増加;細胞外原線維Aβの培養細胞への毒性(D.J.Selkoe、Trends in Cell Biology 8, 447-453(1998)(非特許文献1)によりレビューされている);およびオリゴマー非原線維Aβの毒性(例えば、F. Gervais, European Biopharmaceutical Review, 40-42, Autumn 2001(非特許文献3); May, P.C., DDT, 6:459-462,2001(非特許文献4)参照のこと)により支持される。アルツハイマー病に対しては対症療法が存在するが、現時点ではこの疾患は予防することも、治療することもできない。
【0014】
【非特許文献1】D.J.Selkoe、Trends in Cell Biology 8, 447-53(1998)
【非特許文献2】D.J.Selkoe, Annu. Rev. Cell Biol. 10, 373-403(1994)
【非特許文献3】F. Gervais, European Biopharmaceutical Review, 40-42, Autumn 2001
【非特許文献4】May, P.C., DDT, 6:459-462,2001
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明は、アミロイド関連疾患の治療におけるアミジン化合物の使用に関する。特に、本発明は被験者に治療量のアミジン化合物を投与する段階を含む、被験者のアミロイド関連疾患を治療または予防する方法に関する。本発明において使用する化合物は、下記化学式に従うものであり、そのため、投与されると、アミロイド原線維の形成、神経変性、または細胞毒性が軽減され、または阻止される。

【0016】
1つの態様では、本明細書で開示したアミジン化合物はアミロイド蛋白質集合体が、インビボで、様々な器官に沈着する不溶性原線維になるのを予防または阻止し、またはすでに沈着のある被験者では沈着を逆行させ、または減速させる。別の態様では、アミジン化合物は、アミロイド蛋白質が細胞表面へ結合または付着し、細胞損傷または毒性を引き起こすのを阻止してもよい。さらに別の態様では、化合物はアミロイド誘発細胞毒性またはミクログリア活性化を遮断してもよい。別の態様では、アミジン化合物はアミロイド誘発神経毒性を遮断してもよい。
【0017】
本発明のアミジン化合物を、治療的または予防的に投与し、アミロイド-β原線維形成、凝集または沈着に関連する疾患を治療してもよい。本発明の化合物は、下記機序(このリストは例示にすぎず、制限するものではない)のいずれかを使用してアミロイド-β関連疾患の経過を寛解させるように作用する可能性がある:アミロイド-β原線維形成または沈着の速度の減速;アミロイド-β沈着の程度の低下;アミロイド-β原線維形成の阻止、減少、または予防;アミロイド-βにより誘発される神経変性または細胞毒性の阻止;アミロイド-βに誘発される炎症の阻止;またはアミロイド-βの脳からのクリアランスの増強。「アミロイド-β疾患」(または「アミロイド-β関連疾患」、本明細書で使用されるこれらの用語は同義語である)は軽度認識障害、血管性認知症;散発性(非遺伝性)アルツハイマー病および家族性(遺伝性)アルツハイマー病を含むアルツハイマー病;脳アミロイド血管症または遺伝性脳溢血;老年性認知症;ダウン症候群;封入体筋炎;または加齢黄斑変性症としてもよい。
【0018】
本発明の治療化合物は、(血液脳関門の浸透後)脳内へ侵入後、または末梢からの、アミロイド-β沈着の制御に有効である可能性がある。末梢から作用する場合、化合物は脳と血漿間でのAβの平衡を変化させ、脳からAβが出て行くのに有利に働く。脳から出て行くAβが増加すると、Aβ脳濃度が減少し、そのため、Aβ沈着の減少に有利に働く。また、脳に浸透する化合物は、直接脳Aβに作用することにより、例えば脳Aβを非原線維形態で維持することにより、または脳Aβの脳からのクリアランスに有利に働くことにより、沈着を制御することができる。これらの化合物はまた、脳中のAβが細胞表面と相互作用しないようにすることができ、そのため、神経毒性または炎症が阻止される。
【0019】
別の態様では、本方法を使用してアルツハイマー病(例えば、散発性または家族性アルツハイマー病)を治療する。
【0020】
さらに、筋線維中でのAPPおよびアミロイド-β蛋白質の異常な蓄積が、散発性封入体筋炎(IBM)の病態に関与している(Askanas, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 1314-1319(1996); Askanas, et al.,Current Opinion in Rheumatology 7, 486-496(1995))。従って、本発明の化合物を予防的または治療的に、アミロイド-β蛋白質が非神経部位に異常に沈着する疾患の治療、例えば、本化合物を筋線維に送達させることによるIBMの治療に使用することができる。
【0021】
さらに、Aβは、ドルーゼとして公知の、加齢黄斑変性症(「AMD」)を患う個人の網膜色素上皮の基底面に沿って蓄積する異常な細胞外沈着と関連することとが示されている。AMDは老人における不可逆失明の原因である。Aβ沈着は網膜色素上皮の萎縮、ドルーゼ生合成、およびAMDの発病の原因となる局所炎症現象の重要な構成要素であると考えられる(Johnson, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(18), 11830-5(2002))。
【0022】
本発明はまた、新規化合物およびこれらの化合物を含む薬学的組成物に関する。本発明はまた、アミロイド関連疾患の治療のための薬学的組成物に関する。いくつかの態様では、薬学的組成物は、アミロイド-β原線維形成、神経変性、または細胞毒性を予防または阻止する本明細書で記述した化合物を含む。
【0023】
そのため、本発明は、とりわけ、アルツハイマー病、軽度認識障害、脳アミロイド血管症、封入体筋炎、ダウン症候群、黄斑変性症、およびII型糖尿病を含むアミロイド関連疾患の予防または治療におけるアミジン化合物の使用に関する。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明はアミロイド関連疾患の治療におけるアミジン化合物の使用に関する。例えば、本発明は、被験者に本明細書で記述した治療量の化合物を投与する段階を含み、これにより、アミロイド原線維形成もしくは沈着、神経変性、または細胞毒性を減少させまたは阻止する、被験者(例えば、ヒト)におけるアミロイド関連疾患を治療または予防する方法に関する。別の態様では、本発明は、被験者に本明細書で記述した治療量の化合物を投与する段階を含み、これにより、認知機能を改善もしくは安定化させ、または脳アミロイドーシス、例えばアルツハイマー病または脳アミロイド血管症患者において、認知機能の更なる悪化を予防、減速または停止させる、被験者(例えば、ヒト)におけるアミロイド関連疾患を治療または予防する方法に関する。便宜上、本明細書で言及する用語のいくつかの定義を下記で示す
【0025】
アミロイド関連疾患
AA(反応性)アミロイドーシス
一般に、AAアミロイドーシスは持続性急性期応答を誘発する多くの疾患の症状である。そのような疾患としては、慢性炎症障害、慢性局限性または全身性細菌感染、および悪性新生物が挙げられる。
【0026】
AA原線維は一般に、循環アポリポ蛋白質(一旦分泌されるとHDLと複合化し、およびIL-1、IL-6およびTNFなどのサイトカインに応答して肝細胞で合成される)である血清アミロイドA蛋白質(ApoSAA)の蛋白質分解性開裂により形成された8,000ダルトンの断片(AAペプチドまたは蛋白質)から構成される。沈着は体内で広がることがあり、実質臓器が選択される。脾臓は通常沈着部位であり、腎臓もまた影響されることがある。沈着はまた心臓および消化管でも普通である。
【0027】
AAアミロイド疾患としては、関節リウマチ、若年性慢性関節炎、硬直性脊椎炎、乾癬、乾癬関節症、ライター症候群、成人期スティル病、ベーチェット病、およびクローン病などの炎症性疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではない。AA沈着物はまた、ハンセン病、結核、気管支拡張症、床ずれ、慢性腎盂腎炎、骨髄炎、およびホイップル病などの慢性細菌感染の結果として生じることもある。ある一定の悪性新生物もまた、AA原線維アミロイド沈着物となりうる。そのようなものとしては、ホジキンリンパ腫、腎臓癌、腸、肺および尿生殖路の癌、基底細胞癌、および毛様細胞白血病などの状態が挙げられる。
【0028】
ALアミロイドーシス
ALアミロイド沈着は一般に、プラズマ細胞の悪性腫瘍(多発性骨髄腫)から良性単クローン性免疫グロブリン血症におよぶBリンパ球系統のほとんど全ての悪液質と関連する。時には、アミロイド沈着物の存在が潜在的な悪液質の主な指標となることがある。
【0029】
ALアミロイド沈着物の原線維はモノクローナル免疫グロブリン軽鎖またはその断片から構成される。より特定的には、断片は軽鎖(κまたはλ)のN末端領域に由来し、その可変領域(VL)の全てまたは一部を含む。沈着は一般に間葉組織で生じ、末梢性神経障害および自律性神経障害、手根管症候群、巨大舌、拘束型心筋症、大関節の関節症、免疫性悪液質、骨髄腫、ならびに不顕性悪液質を引き起こす。しかしながら、ほとんど全ての組織、特に心臓などの内臓器官が関係することがあることに注意すべきである。
【0030】
遺伝性の全身性アミロイドーシス
多くの型の遺伝性の全身性アミロイドーシスが存在する。比較的希有な状態であるが、症状の成人期の発症および継承パターン(通常、常染色体優性)により一般群でそのような疾患の永続性に至る。一般に、症候群は、変異アミロイド生成性ペプチドまたは蛋白質の生成にいたる前駆体蛋白質の点突然変異に起因する。表1はこれらの疾患の例示的な型の原線維組成をまとめたものである。
【0031】
表1
例示的なアミロイド関連疾患の原線維組成

表1-続き

データはTan SY, Pepys MB. Amyloidosis. Histopathology, 25(5), 403-414(Nov 1994)に由来する。
【0032】
表1に示したデータは例示的なものであり、本発明の範囲を制限しようとするものではない。例えば、トランスサイレチン遺伝子において40を超える別個の点変異が記述されているが、これはすべて臨床的に同様の型の家族性アミロイド多発性神経障害を引き起こす。
【0033】
トランスサイレチン(TTR)は時としてプレアルブミンとも呼ばれる14キロダルトンの蛋白質である。トランスサイレチンは肝臓および脈絡叢で産生され、甲状腺ホルモンおよびビタミンAを輸送する際に機能する。それぞれ1つのアミノ酸変化により特徴づけられる少なくとも50の変異型の蛋白質が、様々な型の家族性アミロイド多発性神経障害の原因である。例えば、55位でロイシンをプロリンに置換すると、特に進行型の神経障害となる。111位でロイシンをメチオニンに置換するとデンマーク人患者において重篤な心臓病となる。
【0034】
全身性アミロイドーシス患者の心臓組織から単離したアミロイド沈着物から、沈着物がTTRおよびその断片の不均一混合物から構成されることが明らかになった。その断片は集合的にATTRと呼ばれ、その全長配列は特徴付けられている。ATTR原線維成分はそのような斑から抽出することができ、その構造および配列は当技術分野において周知の方法(例えば、Gustavsson, A.ら、Laboratory Invest. 73:703-708、1995;Kametani, F.ら、Biochem. Biophy. Res. Commun. 125:622-628、1984;Pras, M.ら、PNAS 80:539-42、1983)により決定することができる。
【0035】
分子アポリポ蛋白質A1において点変異(例えば、Gly→Arg26;Trp→Arg50;Leu→Arg60)を有するヒトは、蛋白質アポリポ蛋白質AIまたはその断片(AApoAI)の沈着物により特徴づけられるある型のアミロイドーシス(「オステルターク型」)を示す。これらの患者では高密度リポ蛋白質(HDL)のレベルが低く、末梢性神経障害または腎不全を示す。
【0036】
酵素リソザイムのα鎖の突然変異(例えば、Ile→Thr56またはAsp→His57)は、英国人家族において報告されているオステルターク型の非神経障害性遺伝性アミロイドの他の型の基本である。ここで、突然変異リソザイム蛋白質(Alys)の原線維が沈着し、患者は一般に腎機能障害を示す。この蛋白質は、本明細書で記述した大部分の原線維-形成蛋白質とは異なり、通常完全型(断片化されていない)で存在する(Benson, M. D.ら、CIBA Fdn. Symp. 199:104-131、1996)。
【0037】
β-アミロイドペプチド(Aβ)はβアミロイド前駆体蛋白質(βAPP)として周知の巨大蛋白質から蛋白質分解により得られる39〜43アミノ酸ペプチドである。βAPPの突然変異により、Aβ原線維および他の成分(下記でより詳細に記述する)から構成される斑の脳沈着を特徴とする家族型のアルツハイマー病、ダウン症候群、または老人性痴呆症となる。アルツハイマー病に関連するAPPの周知の突然変異はβまたはγ-セクレターゼの開裂部位の近傍、またはAβ内で起こる。例えば、717位はAβへのプロセシング中のAPPのγ-セクレターゼ開裂部位の近傍であり、670/671位はβ-セクレターゼ開裂の部位の近傍である。これらの残基のいずれで突然変異が起きてもアルツハイマー病となる可能性がある。おそらくAPPから発生する42/43アミノ酸型のAβの量が増大するからである。様々な長さのAβペプチドの構造および配列は当技術分野で周知である。そのようなペプチドは当技術分野において周知の方法により作成するか、または公知の方法により脳から抽出することができる(例えば、GlennerおよびWong、Biochem Biophys. Res. Comm. 129:885-890、1984;GlennerおよびWong、Biochem Biophys. Res. Comm. 122:1131-1135、1984)。さらに、様々な形態のペプチドが市販されている。
【0038】
本明細書で使用されているように、「βアミロイド」または「アミロイド-β」という用語は、特に記載がなければ、アミロイドβ蛋白質またはペプチド、アミロイドβ前駆体蛋白質またはペプチド、中間体、ならびにその変形および断片を示す。特に「Aβ」はAPP遺伝子産物の蛋白質分解処理により生成する任意のペプチド、特にアミロイド病理と関連するペプチド、例えば、Aβ1-39、Aβ1-40、Aβ1-41、Aβ1-42およびAβ1-43を示す。命名法の便宜上、「Aβ1-42」は本明細書では「Aβ(1-42)」または単純に「Aβ42」または「Aβ42」として示してもよい(および、本明細書で記述した任意の他のアミロイドペプチドに対しも同様である)。本明細書で使用するように、「βアミロイド」「アミロイド-β」および「Aβ」という用語は同義語である。特に記載がなければ、「アミロイド」という用語は、アミロイド生成性蛋白質、ペプチド、または、可溶性(例えばモノマー性またはオリゴマー)または不溶性(例えば、線維構造を有し、またはアミロイド斑内)とすることができるその断片を示す。例えば、MP Lambert, et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95, 6448-53 (1998)を参照のこと。
【0039】
本発明の一定の局面によれば、アミロイド-βは39〜43のアミノ酸を有するペプチドであり、またはアミロイド-βはβAPPから生成されるアミロイド生成性ペプチドである。本発明の主題であるアミロイド-β疾患としては、加齢認識衰退、軽度認識障害(「MCI」)において見られる初期アルツハイマー病、血管性認知症、またはアルツハイマー病(「AD」)が挙げられ、アルツハイマー病は散発性(非遺伝性)アルツハイマー病または家族性(遺伝性)アルツハイマー病であってもよい。アミロイド-β疾患はまた、脳アミロイド血管症(「CAA」)または遺伝性脳溢血であってもよい。アミロイド-β疾患はまた、老年性認知症、ダウン症候群、封入体筋炎(「IBM」)、または加齢黄斑変性症(「ARMD」)であってもよい。
【0040】
ゲルゾリンは断片およびアクチン断片に結合するカルシウム結合蛋白質である。蛋白質の187位での突然変異(例えば、Asp→Asn;Asp→Tyr)により、通常フィンランド出身の患者およびオランダまたは日本起源のヒトにおいて見出される、ある形態の遺伝性の全身性アミロイドーシスとなる。疾患に罹患したヒトでは、ゲルゾリン断片から形成された原線維(Agel)は通常173〜243のアミノ酸(68kDaのカルボキシ末端断片)から構成され、血管および規定膜内に沈着し、角膜異栄養症および末梢性神経障害に進行する脳神経障害、異栄養性皮膚変化および他の器官での沈着が起こる(Kangas、H.ら、Human Mol.Genet.5(9):1237-1243、1996)。
【0041】
他の変異蛋白質、例えばフィブリノーゲンの変異α鎖(AfibA)および変異シスタチンC(Acys)はまた、原線維を形成し特徴的な遺伝性疾患を発生させる。AfibA原線維は腎疾患を伴う非神経障害性の遺伝アミロイドを特徴とする沈着物を形成する;Acys沈着物はアイスランドで報告されている遺伝性の脳アミロイド血管障害を特徴とする(Isselbacher、「Harrison's Principles of Internal Medicine」、McGraw-Hill、San Francisco、1995;Bensonら)。少なくとも幾つかの症例では、脳アミロイド血管障害(CAA)患者はアミロイドβ蛋白質と共にシスタチンCの非変異型を含むアミロイド原線維を有することが示されている(Nagai、A.ら、Molec.Chem.Neuropathol.33:63-78、1998)。
【0042】
ある特定の型のプリオン病は現在、遺伝性であり、以前は本質的に大体感染性であると考えられていた症例の15%までを占めると考えられている。(Baldwinら、「Research Advances in Alzheimer's Disease and Related Disorders」、John Wiley and Sons、ニューヨーク、1995)。そのようなプリオン病では、患者は正常なプリオン蛋白質の異常イソ型(PrPSc)から構成される斑を発症する。
【0043】
主な突然変異イソ型PrPScはまた、AScrとも呼ばれ、正常な細胞蛋白質とは、プロテアーゼ分解に対する耐性、界面活性剤抽出後の不溶性、二次リソソーム内への沈着、翻訳後合成、および高β-プリーツシート量の点で異なっている。クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン-ストラウスラー-シェインカー症候群(GSS)、および致死性家族性不眠症(FFI)の原因となる少なくとも5つの突然変異に対し遺伝的連鎖が確立されている。(Baldwin、上記)。スクレイピー原線維から原線維ペプチドを抽出し、配列を決定し、そのようなペプチドを製造する方法は当技術分野では周知である(例えば、Beekes、M.ら、J. Gen. Virol. 76:2567-76、1995)。
【0044】
例えば、1つの形態のGSSはコドン102でのPrP突然変異と関連し、一方終脳GSSはコドン177での突然変異により分離する。コドン198および217での突然変異が、アルツハイマー病の特徴である老人斑がAβペプチドではなくPrPを含むある型のGSSの原因となる。一定の型の家族性CJDはコドン200および210での突然変異と関連し;コドン129および178での突然変異が家族性CJDおよびFFIの両方において見出されている。(Baldwin、上記)。
【0045】
老人性の全身性アミロイドーシス
アミロイド沈着は全身性または限局性のいずれかであり、年齢と共に増大する。例えば、野生型トランスサイレチン(TTR)の原線維は高齢者の心臓組織で普通に見られる。これらは無症候性であり、臨床的に無症状であり、または心不全となることがある。無症候性原線維限局性沈着は脳(Aβ)、前立腺のアミロイド小体(Aβ2ミクログロブリン)、関節および精嚢でも起こることがある。
【0046】
脳アミロイドーシス
アミロイドの局所沈着は脳で、特に高齢者において一般的である。脳内の最も頻度の高い型のアミロイドは主にAβペプチド原線維から構成され、痴呆または散発性(非遺伝的)アルツハイマー病の原因となる。実際、散在性アルツハイマー病の発生率は遺伝性と考えられる型を大きく超える。これらの斑を形成する原線維ペプチドは、アルツハイマー病(「AD」)の遺伝的型に関し、上記のものと非常に類似している。
【0047】
脳アミロイド血管障害(「CAA」)は、軟膜(レプトミンギアル:leptomingeal)および皮質動脈、細動脈の壁、ならびに毛細血管および静脈におけるアミロイド原線維の特定の沈着を示す。アルツハイマー病、ダウン症候群および正常な加齢、ならびに脳卒中または痴呆に関連する様々な家族性の症状と普通関係する(Frangioneら、Amyloid:J.Protein Folding Disord.8、Suupl.1,36-42(2001)を参照のこと)。CAAは散発的にまたは遺伝的に起こることがある。AβまたはAPP遺伝子のいずれかの複数の突然変異部位は同定されており、臨床的に痴呆または脳溢血のいずれかと関連する。例示的なCAA疾患としては、アイスランド型のアミロイドーシス(HCHWA-I);オランダ変異のHCHWA(HCHW-D;Aβの突然変異);Aβのフラマン突然変異;Aβの北極突然変異;Aβのイタリア突然変異;Aβのアイオワ突然変異;家族性イギリス痴呆;および家族性デンマーク痴呆を伴う遺伝性脳溢血が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
透析関連アミロイドーシス
β2ミクログロブリン(Aβ2M)原線維からなる斑は、長期血液透析または腹膜透析を受けている患者で普通発症する。β2ミクログロブリンは11.8キロダルトンのポリペプチドであり、クラスI MHC抗原の軽鎖であり、全ての有核細胞上に存在する。通常の環境下では、細胞膜から連続して排出され、通常腎臓により濾過される。腎機能障害の場合などのようにクリアランスに失敗すると、手根管および他の部位(主に関節のコラーゲンリッチの組織内)での沈着が起こる。他の原線維蛋白質とは異なり、Aβ2M分子は一般に原線維中に未断片化形態で存在する(Benson、上記)。
【0049】
島アミロイドポリペプチドおよび糖尿病
島ヒアリン症(アミロイド沈着)は、重篤な高血糖症患者の膵臓での線維状蛋白質凝集体の存在として1世紀以上も前に初めて記述されている(Opie, EL.、J Exp. Med. 5:397-428、1990)。今日、主に島アミロイドペプチド(IAPP)から構成される島アミロイド、またはアミリンが、II型糖尿病(非インスリン依存性糖尿病、NIDDMとしても周知)の全ての症例の90%以上において特徴的な病理組織学的マーカーである。これらの線維蓄積は、37アミノ酸ペプチドであり、pro-IAPPと呼ばれるより大きな前駆体ペプチドに由来する島アミロイドペプチド(IAPP)またはアミリンの凝集に起因する。
【0050】
IAPPは、β-細胞分泌促進剤に応答してインスリンと共に局在し、共に分泌される。この病理学的特徴はインスリン依存性(I型)糖尿病とは関連しておらず、NIDDM(II型糖尿病)と診断される不均一臨床表現型に対する統一特徴である。
【0051】
ネコでの長期的研究およびサルでの免疫細胞化学的調査により、島アミロイドの累進的な増加はインスリン分泌β-細胞の群の著しい減少および疾患の重篤度の増大と関連する。最近では、遺伝子導入研究によりIAPP斑形成とβ-細胞機能障害との間の関係が強調されており、アミロイド沈着がII型糖尿病の主な因子であることが示される。
【0052】
IAPPはまた、インビトロでβ-島細胞毒性を誘発することが示されており、II型またはI型糖尿病患者(移植後)の膵臓でのIAPP原線維の出現はβ島細胞(ランゲルハンス)の損失および器官機能障害の一因となることが示される。II型糖尿病患者では、膵臓IAPPの蓄積は不溶性線維沈着としてのIAPP-アミロイドの蓄積につながり、これは実際には島のインスリン産生β細胞にとって代わり、β細胞の減少および不足が生じる(Westermark、P.、Grimelius、L. Acta Path. Microbiol. Scand.、sect. A.81:291-300、1973;de Koning、EJP.ら、Diabetologia 36:378-384、1993;およびLorenzo、A.ら、Nature 368:756-760、1994)。
【0053】
特別な1つのまたは複数の型の細胞の死亡または機能障害により引き起こされる疾患は、該当する型の細胞の健康な細胞を患者に移植することにより治療することができる。このアプローチはI型糖尿病患者に対し使用されている。しばしば、移植前に膵臓島細胞をインビトロで培養し、その数を増加させる、単離手順後に回復させる、または免疫原性が減少する。しかしながら、多くの場合、移植細胞の死亡により島細胞移植は成功しない。この成功率が低い理由の1つが、原線維を形成しうる、インビトロの細胞に有毒なIAPPである。さらに、IAPP原線維は細胞が移植された後に増殖し続ける可能性が高く、細胞の死または機能不全を引き起こす。これは、細胞が健康なドナー由来のものであり、移植を受ける患者が原線維の存在により特徴付けられる疾患を有していない場合でさえ起こることがある。例えば、本発明の化合物は国際公開公報第01/03,680号において記述されている方法により移植するための組織または細胞を調製する際に使用してもよい。
【0054】
ホルモン由来のアミロイドーシス
内分泌器官はアミロイド沈着物を、特に高齢者で有することがある。ホルモンを分泌する腫瘍はまた、ホルモン由来のアミロイド斑を含むことがあり、その原線維はカルシトニン(甲状腺の髄様癌)などのポリペプチドホルモン、島アミロイドポリペプチド(アミリン;II型糖尿病患者のほとんどで生じる)、および心房性ナトリウム利尿ペプチド(単離された心房アミロイドーシス)から構成される。これらの蛋白質の配列および構造は当技術分野においてよく知られている。
【0055】
その他のアミロイドーシス
アミロイドの局所沈着として通常明らかな様々な他の型のアミロイド疾患が存在する。一般に、これらの疾患はおそらく、特定の原線維前駆体の局所産生もしくは異化不足または原線維沈着にための特別な組織(例えば関節)の素因に起因する。そのような特発性沈着の例としては、結節状ALアミロイド、皮膚アミロイド、内分泌アミロイド、および腫瘍関連アミロイドが挙げられる。
【0056】
本発明の化合物はアミロイド-β原線維形成、凝集または沈着に関連する疾患を治療するために治療的または予防的に投与してもよい。本発明の化合物は、以下の機序(このリストは例示的なものを意味し、限定するものではない)のいずれかを用いアミロイド-β関連疾患の経過を改善するように作用することができる:アミロイド-β原線維形成または沈着速度を遅くする;アミロイド-βの沈着の程度を低減する:アミロイド-β原線維形成を阻害、減少、または妨害する;アミロイド-βにより誘発される神経変性または細胞毒性を阻害する;アミロイド-βにより誘発される炎症を阻害する;または脳からのアミロイド-βのクリアランスを増強する。
【0057】
本発明の化合物は、脳内に侵入後(血液脳関門の浸透後)または周囲から、アミロイド-β沈着を制御するのに有効であるかもしれない。周囲から作用する場合、化合物は脳と血漿との間でのAβ平衡を変化させ、脳からAβが出て行くのを促進することができる。脳から出て行くAβが増大すると、脳内Aβ濃度が減少し、そのためAβ沈着の減少に有利となる。また、脳に浸透する化合物は直接脳Aβに作用することにより、例えば脳Aβを非線維型に維持することによりまたは脳からのクリアランスを促進することにより、沈着を制御することができる。
【0058】
ある態様では、アルツハイマー病(例えば、散発性または家族性AD)を治療するために本方法を使用する。本方法はまた、例えばダウン症候群患者、軽度認識障害患者、脳アミロイド血管障害(「CAA」)、または遺伝性脳溢血患者などにおいて、アミロイド-β沈着の他の臨床的な発生を治療するために予防的にまたは治療的に使用することができる。
【0059】
さらに、筋繊維中でのAPPおよびアミロイド-β蛋白質の異常な蓄積は、散発性封入体筋炎(IBM)の病理に関与する(Askanas、V.ら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:1314-1319;Askanas、V.ら(1995)Current Opinion in Rheumatology 7:486-496)。したがって、本発明の化合物はアミロイド-β蛋白質が神経でない位置で異常に沈着する障害の治療、例えば化合物を筋繊維に送達させることによるIBMの治療において予防的または治療的に使用することができる。
【0060】
さらに、Aβはドルーゼとして公知の、加齢黄斑変性症(「AMD」)を患う個人の網膜色素上皮の基底面に沿って蓄積する異常な細胞外沈着と関連することとが示されている。AMDは老人における不可逆失明の原因である。Aβ沈着は網膜色素上皮の萎縮、ドルーゼ生合成、およびAMDの発病の原因となる局所炎症現象の重要な構成要素であると考えられる(Johnson, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99(18), 11830-5(2002))
【0061】
そのため、本発明は、特にアルツハイマー病、軽度認識障害、脳アミロイド血管障害、封入体筋炎、ダウン症候群、およびII型糖尿病を含むアミロイド関連疾患の予防および治療におけるアミジン化合物の使用に関する。
【0062】
1つの態様では、本発明の化合物は少なくとも2つのアミジン部分(例えば、アリールアミジンまたはベンズアミジン)を有する。
【0063】
1つの特定の態様では、本発明は、米国特許第5,428,051号、同第4,963,589号、同第5,202,320号、同第5,935,982号、同第5,521,189号、同第5,686,456号、同第5,627,184号、同第5,622,955号、同第5,606,058号、同第5,668,167号、同第5,667,975号、同第6,025,398号、同第6,214,883号、同第5,817,687号、同第5,792,782号、同第5,939,440号、同第6,017,941号、同第5,972,969号、同第6,046,226号、同第6,294,565号(B1)、同第6,156,779号、同第6,326,395号、同第6,008,247号、同第6,127,554号、同第6,172,104号、同第4,940,723号、同第5,594,138号、同第5,602,172号、同第5,206,236号、同第5,843,980号、同第4,933,347号、同第5,668,166号、同第5,817,686号、同第5,723,495号、同第4,619,942号、同第5,792,782号、同第5,639,755号、同第5,643,935号、および同第5,578,631号に開示されているもののような、アミロイド関連疾患の予防または治療におけるアミジン化合物の新規使用に関する。これらの特許の各々は参照として全体が本明細書に組み入れられる。別の合成プロトコルはPCT特許出願公開番号WO2003/017,994号において見いだせる可能性がある。なおその上、追加の例および合成プロトコルが参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願公開番号2002/0161043号において見いだせる可能性がある。
【0064】
他の態様では、本発明は、被験者に下記化学式の化合物を治療量投与する段階を含み、これによりアミロイド原線維形成もしくは沈着、神経変性、または細胞毒性が減少または阻害される、被験者(例えば、ヒト)においてアミロイド関連疾患を治療または予防する方法に関する。他の態様では、本発明は、被験者に下記化学式の化合物を治療量投与する段階を含み、これにより脳アミロイドーシス、例えばアルツハイマー病または脳アミロイド血管障害に罹患した患者において認知機能が安定化され、または認知機能のさらなる低下が阻止、減速、または中止される、被験者(例えば、ヒト)においてアミロイド関連疾患を治療または予防する方法に関する:

式中、
Ra1、Rb1、Rc1、Ra2、Rb2およびRc2の各々は独立して水素、Z基であり、またはRa1およびRb1もしくはRa2およびRb2がそれらが結合している窒素原子と共に環構造を形成し;
Y1およびY2の各々は独立して直接結合または結合部分であり;
mおよびqの各々は独立して0〜5から選択される整数であり、
1≦m+q≦5であり、または他の態様では、2≦m+q≦5であり、または他の態様では
1≦m+q≦10であり、または他の態様では、2≦m+q≦10であり;および
Aは置換または未置換脂肪族および芳香族基、ならびにそれらの組み合わせから選択される担体部分であり;例えば、Y1およびY2部分が芳香族基に結合される。
【0065】
A基は二価の官能基(すなわち、m+q=2)、例えばアルキレン基(すなわち、-(CH2)k-およびその置換類似体(-CH2-部分が酸素原子により置換されている官能基を含む)、この場合kは1〜12(例えば、6〜9、または7〜9)、アルケニレン基(例えば、2〜12の炭素原子、または6〜9の炭素原子、1を超える二重結合を有する官能基を含む)、アルキニレン基(例えば、巧みに2〜12炭素原子、または6〜9炭素原子、1を超える三重結合を有する官能基を含む)、アルコキシアルキレン基、アルキルアミノアルキレン基、チオアルコキシアルキレン基、アリーレンジアルキレン基、ヘテロアリーレンジアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、オリゴエテリアル(oligoethereal)基、例えばオリゴ(アルキレンオキシド)基、またはアリーレン-ジ(オリゴアルキレンオキシド)基としてもよく、各々、(下記で規定されるZ基、例えばヒドロキシアルキレン基で)置換されてもよく、非置換でもよい。
【0066】
A基はまた、本明細書の化学式I〜IVの対応する部分、ならびに、本明細書の化合物において例示されている部分(およびアミロイド標的部分)を含み、表2の官能基が挙げられる。
【0067】
本発明のいくつかの例示的な局面では、本発明は、被験者に、治療量の、下記化学式およびそれらの薬学的に許容される塩のうちの1つによる化合物を投与する段階を含み、これによりアミロイド原線維形成または沈着、神経変性または細胞毒性を減少させ、または阻止する、被験者(例えば、ヒト)におけるアミロイド関連疾患を治療または予防する方法に関する。別の態様では、本発明は、被験者に、治療量の、下記化学式およびそれらの薬学的に許容される塩のうちの1つによる化合物を投与する段階を含み、これにより、認知機能を安定化させ、または脳アミロイドーシス、例えばアルツハイマー病または脳アミロイド血管症患者において、認知機能の更なる悪化を予防、減速または停止させる、被験者(例えば、ヒト)におけるアミロイド関連疾患を治療または予防する方法に関する:


式中、
Ra1、Rb1、Rc1、Ra2、Rb2、およびRc2はそれぞれ、独立して、水素、Z基であり、またはRa1およびRb1もしくはRa2およびRb2は共にそれらに結合している窒素原子と一緒になり環構造を形成し;
Y1およびY2はそれぞれ、独立して、直接結合または連結部分であり;
Aは置換または非置換脂肪族および芳香族基、ならびにそれらの組み合わせから選択される担体(carrier)部分であり;例えば、そのため、Y1およびY2は芳香族基に結合され;
R1およびR2はそれぞれ、独立して、水素もしくはZ基であり、または2つの隣接もしくは近接するR1およびR2基は、存在すれば(例えば、化学式II)対応するX1およびX2基と共に、それらに結合している環(例えば、フェニル環)と一緒になり、縮合環構造、例えば、芳香族または芳香族複素環(例えば、ベンゾフラン)構造、またはシクロアルキルもしくは複素環構造を形成し;
R3およびR4はそれぞれ、独立して、水素、置換または非置換直鎖もしくは分枝アルキル(例えば、C1〜C5)、シクロアルキル(例えば、C3〜C8)、炭素環、アリール(例えば、フェニル)、複素環、およびヘテロアリールからなる群より選択され;
R1*およびR2*はそれぞれ、独立して、置換または非置換直鎖もしくは分枝アルキル、シクロアルキル、複素環、アリール(フェニルを含む)、およびヘテロアリールからなる群より選択され;
X1およびX2はそれぞれ、独立して、直接結合、または酸素原子、NR'基(ここで、R'は水素(すなわち、NH)、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)、スルホンアミド基(すなわち、NHSO2またはSO2NH)、カルボニル、アミド(すなわち、NHCOまたはCONH)、C1〜C5アルキレン基(例えば、-CH2-)、C2〜C5アルケニレン基(例えば、EまたはZ-CH=CH-)、C2〜C5アルキニレン基、もしくは硫黄原子、またはそれらの組み合わせ(例えば、-OCH2-、-CH2O-、EまたはZ-OCH=CH-もしくは-CH=CHO-)であり;
Mは二価官能基例えば、アルキレン基、すなわち、-(CH2)k-およびその置換類似体(-CH2-部分が酸素原子により置換されている官能基を含む)、この場合kは1〜12(例えば、5〜10、または6〜9、またはさらに7〜8)、アルケニレン基(例えば、2〜12の炭素原子、または6〜9の炭素原子、1を超える二重結合を有する官能基を含む)、アルキニレン基(例えば、2〜12炭素原子、または6〜9炭素原子、1を超える三重結合を有する官能基を含む)、アルコキシアルキレン基、アルキルアミノアルキレン基、チオアルコキシアルキレン基、アリーレンジアルキレン基、アルキレンジアリーレン基、ヘテロアリーレンジアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、オリゴエテリアル基、例えばオリゴ(アルキレンオキシド)基、またはアリーレン-ジ(オリゴアルキレンオキシド)基であり、各々、(例えば、下記で規定されるZ基、例えば-(CH2)0〜6(CHOH)(CH2)0〜6-などのヒドロキシアルキレン基;または他のそのように置換された部分、例えば-(CH2)0〜6(CHCO2アルキル)(CH2)0〜6-を含む-(CH2)0〜6(CHZ)(CH2)0〜6-で)置換されてもよく、非置換でもよく;
Zは直鎖または分枝アルキル(例えば、C1〜C5)、シクロアルキル(例えば、C3〜C8)、アルコキシ(例えば、C1〜C6)、チオアルキル(例えば、C1〜C6)、アルケニル(例えば、C2〜C6)、アルキニル(例えば、C2〜C6)、複素環、炭素環、アリール(例えば、フェニル)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、アラルキル(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル(例えば、フェニルオキシアルキル)、アリールアセトアミドイル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、アルキルカルボニルおよびアリールカルボニルまたは他のそのようなアシル基、ヘテロアリールカルボニル、またはヘテロアリール基、

または、任意の天然アミノ酸の側鎖から選択される置換または非置換部分であり;
mおよびqはそれぞれ独立して0〜5から選択される整数であり;
化学式Iでは、mおよびqはそれぞれ独立して0〜4から選択される整数であり、ならびにnおよびpはそれぞれ独立して0〜4から選択される整数であり、そのため、m+n≦5およびp+q≦5であり、ここで、mまたはqのいずれかは少なくとも1であり;例えば、mおよびqは1であり;
化学式IIでは、mは1〜6から選択される整数であり、およびnは0〜5から選択される整数であり、そのためm+n≦6であり;
化学式IIIでは、m、n、pおよびqはそれぞれ独立して0〜3から選択される整数であり、m+n≦4、p+q≦4、およびm+q≧1(例えば、m=q=1)であり;
化学式IVおよびIVbでは、mおよびnはそれぞれ独立して0〜3から選択される整数であり、pおよびqはそれぞれ独立して0〜4から選択される整数であり、m+n≦4、p+q≦5、およびm+q≧1(例えば、m=q=1)であり;
ならびにその薬学的に許容される塩である。
【0068】
別の態様では、Zは、直鎖または分枝アルキル(例えば、C1〜C5)、シクロアルキル(例えば、C3〜C8)、アルコキシ(例えば、C1〜C6)、チオアルキル(例えば、C1〜C6)、アルケニル(例えば、C2〜C6)、アルキニル(例えば、C2〜C6)、複素環、炭素環、アリール(例えば、フェニル)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、アラルキル(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル(例えば、フェニルオキシアルキル)、アリールアセトアミドイル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、アルキルカルボニルおよびアリールカルボニルまたは他のそのようなアシル基、ヘテロアリールカルボニル、またはヘテロアリール基、

または、任意の天然アミノ酸の側鎖から選択される置換または非置換部分であり、ここで、R'およびR''はそれぞれ、独立して、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、もしくはアリール基であり、またはR'およびR''は一緒になり、ベンジリデン基もしくは-(CH2)2O(CH2)2-基となる。
【0069】
本明細書の化学構造は、当技術分野で公知の伝統的標準に従い描かれている。このように、描かれている炭素原子などの原子が、満たされていない原子価を有していると考えられると、その原子価は、水素原子が必ずしも明確に描かれなくても、水素原子により満たされると仮定される。本発明の化合物のいくつかの構造は不斉炭素原子を含む。そのような不斉性から生じる異性体(例えば、全ての鏡像体およびジアステレオマー)は、特に記載がなければ、本発明の範囲内に含まれることを理解すべきである。すなわち、特に記載がなければ、任意のキラル炭素中心は(R)-または(S)-立体化学のいずれかとしてもよい。そのような異性体は、古典的な分離技術により、および立体化学的に制御した合成により、実質的に純粋な形態で得ることができる。さらに、アルケン類は、必要に応じてE-またはZ-幾何学的配置を含むことができる。さらに、本発明の化合物は非溶媒和形態および許容される溶媒、例えば、水、THF、エタノールなどによる溶媒和形態で存在してもよい。一般に、溶媒和形態は、本発明の目的では非溶媒和形態と等価であると考えられる。化合物は典型的には合成され、単離、精製され均一にされてもよい。
【0070】
別の態様では、本発明は、本明細書で記述した新規化合物、およびそれらの新規使用方法に関し、これらは本発明で開示した化学式の範囲内であり、上記米国特許および特許出願では開示されていない。
【0071】
上記化学式中の官能基Ra1、Rb1、Rc1、Ra2、Rb2およびRc2は水素、または置換もしくは非置換C1〜C8アルキルもしくはC1〜C8アルコキシ基またはヒドロキシ基としてもよい。Ra1およびRa2基の例は、水素、ヒドロキシル、アルキルオキシ基(特に低級アルキルオキシ基、例えばメトキシ)、アリールオキシ、アシルオキシ、およびアロイルオキシ(すなわちR-(C=O)-O-、ここで、Rは脂肪族または芳香族である)である。
【0072】
「RaおよびRbはどちらもそれらに結合している窒素原子と一緒になり環構造を形成する」という句は、2つのRaおよびRb基が、複素環において2つの窒素原子を結合させる部分であることを意味し、例えば下記構造が挙げられ:

式中、rは0〜4の整数であり、

式中、rは0〜2の整数であり、

式中、rは0〜6の整数であり、

式中、rは0〜4の整数である。
【0073】
「薬学的に許容される」という用語は、信頼できる医学的判断の範囲内にあり、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適しており、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症がなく、妥当な恩典/危険比率に見合っている、材料、組成物または剤形を示す。
【0074】
「薬学的に許容される塩」という用語は、例えば、化合物の酸性または塩基性塩を作製することにより修飾した化合物の誘導体を含み、これらについては下記および本出願のいずれかでさらに記述する。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸塩;およびカルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、例えば、非毒性無機酸または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩または四級アンモニウム塩を含む。そのような従来の非毒性塩は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、および硝酸から誘導される塩;および有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルモイン酸(palmoic)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸およびイセチオン酸から調製した塩を含む。薬学的に許容される塩は、塩基性または酸性部分を含む親化合物から、従来の化学法により合成してもよい。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を化学量論量の適当な塩基または酸と、水もしくは有機溶媒、またはこの2つの混合物中で反応させることにより調製してもよい。
【0075】
本発明の別の態様では、例えば、化学式IIの化合物では、Ra1およびRb1またはRa2およびRb2はどちらもそれらに結合している窒素原子と一緒になり、非芳香族環、または脂環、または単環、または非縮合環である環構造を形成する。
【0076】
化学式IIのいくつかの態様では、例えば、Ra1、Rb1、Rc1、Ra2、Rb2およびRc2は水素、または置換もしくは非置換C1〜C8アルキル基であってもよく、ここでアルキル置換基は、上記Z基の任意のメンバーであるが、アリール(例えば、フェニル)またはアルキル基ではない。同様に、化学式IIの一定の態様では、R1は置換アリール(例えば、フェニル)またはヘテロアリール基以外の上記で規定したZ基から選択される部分である。
【0077】
R1およびR2は、水素、置換もしくは非置換C1〜C8アルキル基、置換もしくは非置換C2〜C8アルケニル基、ハロゲン(特に臭素)、置換もしくは非置換アリールあるいはヘテロアリール基、置換もしくは非置換アミノ基、ニトロ基、または置換もしくは非置換C1〜C8アルコキシ基(特にメトキシ)としてもよい。
【0078】
各Y基は、直接結合、または少なくとも2つの他の部分に共有結合される官能基である「結合部分」(もしくは「結合基」)としてもよく、および、例えば、1つの二価原子またはオリゴメチレン基としてもよい。直鎖炭素原子である結合部分は、置換されてもよく、または不飽和であってもよい。
【0079】
結合部分は、分子の残りに比べると比較的小さく、約250分子量未満、さらに75分子量未満であってもよい。結合部分の例は、-(CH2)n-(ここで、nは1、2、または3である)、-NR'-(ここで、R'は水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)、-S-、-O-、-NH-CH2-および-CH=CH-(EおよびZ配置の両方)、またはそれらの組み合わせである。結合部分はまた、(CRvRw)n、CRvORw(CRxRy)n、CRvSH(CRxRy)n、CRvNRwRx(CRyRz)n、(CRvRw)nO(CRxRy)nとしてもよく、ここで、各nは独立して0、1、2または3であり、Rv、Rw、Rx、RyおよびRzはそれぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換C1〜C5分枝もしくは直鎖アルキルまたはアルコキシ、C2〜C5分枝もしくは直鎖アルケニル、アリールオキシカルボニル、アリールアミノカルボニル、アリールアルキル、アシル、アリール、またはC3〜C8環官能基である。
【0080】
一定の態様では、Y1およびY2はそれぞれ独立して、直接結合、置換または非置換C1〜C8アルキレン基、および-NH-からなる群より選択される。
【0081】
アミロイド沈着の「阻止」は、アミロイド形成、例えば原線維形成の予防または停止、アミロイドーシス被験者、例えばアミロイド沈着をすでに有する被験者におけるさらなるアミロイド沈着の阻止または減速、およびアミロイドーシスが進行中の被験者におけるアミロイド原線維形成または沈着の軽減または逆行を含む。アミロイド沈着の阻止は、未治療被験者に対し、または治療被験者の治療前に対し決定され、例えば、糖尿病患者における膵臓機能の臨床的に測定可能な改善により決定され、または脳アミロイドーシス患者、例えばアルツハイマーまたは脳アミロイド血管症患者の場合、認知機能の安定化または認知機能のさらなる低下の阻止またはCAAによる脳出血の再発の阻止(例えば、疾患の進行を予防、減速、または停止させる)により決定される。アミロイド沈着の阻止はまた、被験者において、脳またはCSFおよび血漿中のアミロイド-βの相対レベルを治療前後で決定することによりモニタしてもよい。
【0082】
アミロイド沈着の「調節」という用語は、上記で規定したような阻止、およびアミロイド沈着または原線維形成の増強の両方を含む。そのため、「調節」という用語は、アミロイドの形成または蓄積の予防または停止、アミロイドーシスが進行中の被験者、例えはすでにアミロイド凝集体を有する被験者におけるさらなるアミロイド凝集の阻止または減速、およびアミロイドーシスが進行中の被験者におけるアミロイド凝集体の減少または逆行;ならびにアミド沈着の増強、例えばインビボまたはインビトロでのアミロイド沈着の速度または量の増大を含む。アミロイド増強化合物は、例えば、より短い期間での動物におけるアミロイド沈着の発症を可能とし、または選択した期間でのアミロイド沈着を増加させ、アミロイドーシスの動物モデルで有益である可能性がある。アミロイド増強化合物は、インビボでの、例えば動物モデルでのアミロイドーシスを阻止する化合物に対するスクリーニングアッセイ法で、細胞アッセイ法およびアミロイドーシスに対するインビトロアッセイ法で有益である可能性がある。そのような化合物を使用して、例えば、化合物に対するより速い、またはより感応性のアッセイ法を提供してもよい。いくつかの場合では、アミロイド増強化合物はまた、治療目的で、例えば脳血管の壁ではなく管腔内でのアミロイドの沈着を増強させCAAを阻止するために、投与してもよい。アミロイド凝集の調節は、未治療被験者に対し、また治療被験者の治療前に対し決定する。
【0083】
「被験者」という用語は、アミロイドーシスが起きることがある生命体を含む。被験者の例としては、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラットおよびそれらのトランスジェニック種が挙げられる。治療すべき被験者への本発明の組成物の投与は、公知の手順を用い、本明細書でさらに詳細に記述しているように被験者におけるアミロイド凝集を調節するのに効果的な用量および期間で、実施することができる。治療効果を達成するのに必要な治療化合物の有効量は、被験者の臨床部位ですでに沈着したアミロイドの量、被験者の年齢、性別、および体重、ならびに治療化合物の被験者でのアミロイド凝集を調節する能力などの因子によって変動する可能性がある。投与計画は最適治療応答を提供するように調整することができる。例えば、数回に分割した用量を毎日投与してもよく、または治療状況の危急度により示されるように用量を比例的に減少させてもよい。「調節」という用語は、アミロイド形成または蓄積の予防または停止、アミロイドーシスが進行中の被験者、例えばすでにアミロイド凝集体を有する被験者におけるさらなるアミロイド凝集の阻止または減速、およびアミロイドーシスが進行中の被験者におけるアミロイド凝集体の減少または逆行を含むものとする。アミロイド凝集の調節は、未治療被験者、または治療被験者の治療前に対し決定する。
【0084】
本発明の例示的な局面では、被験者はヒトである。例えば、被験者は約40歳を超えるヒト、または約50歳を超えるヒト、または約60歳を超えるヒト、または約70歳を超えるヒトであり、場合によっては、約80歳を超えるヒトである。被験者は女性のヒトであってもよく、ホルモン(エストロゲン)補充療法を受けている可能性のある閉経後の女性のヒトが含まれる。被験者は、男性のヒトであってもよい。被験者がダウン症候群を患うヒトである場合、年齢は約20歳を超えてもよく、または別の態様では、年齢は約40歳未満であってもよい。
【0085】
被験者はアルツハイマー病の危険性があるヒトであってもよく、例えば年齢が40歳を超え、アルツハイマー病に対する素因を有するものである。科学文献で識別または提案されているアルツハイマー病の素因としては、特に、被験者をアルツハイマー病にかかりやすくする遺伝子型;被験者をアルツハイマー病にかかりやすくする環境因子;被験者をアルツハイマー病にかかりやすくするウイルスおよび細菌病原体による感染の既往歴;および被験者をアルツハイマー病にかかりやすくする血管因子が挙げられる。被験者はまた、心血管疾患(例えば、冠状動脈のアテローム硬化症、狭心症、および心筋梗塞)または脳血管疾患(例えば、頭蓋内または頭蓋外動脈のアテローム硬化症、脳卒中、失神、および一過性虚血発作)に対する1または複数の危険因子、例えば、高コレステロール血症、高血圧、糖尿病、喫煙、冠動脈疾患の家族歴または既往歴、脳血管疾患、および心血管疾患を有する可能性がある。高コレステロール血症は典型的には、血清総コレステロール濃度が約5.2mmol/L(約200mg/dL)を超えるものと規定される。
【0086】
いくつかの遺伝子型が、被験者をアルツハイマー病にかかりやすくすると考えられている。これらの中には、家族性アルツハイマー病と関連するプレセニリン-1、プレセニリン-2およびアミロイド前駆体蛋白質(APP)ミスセンス突然変異、ならびにα-2-マクログロブリンおよびLRP-1遺伝子型、これらは散発性(遅発性)アルツハイマー病の危険性を増大させると考えられる、などの遺伝子型が含まれる。E.van Uden, et al., J. Neurosci. 22(21), 9298-304(2002); J.J.Goto, et al., J. Mol. Neurosci. 19(1-2), 37-41(2002)。アルツハイマー病発症に対する別の遺伝的危険因子は、低密度リポ蛋白質粒子の成分である、アポリポ蛋白質Eをコードする遺伝子(特にapoE4遺伝子型)であるApoE変異体である。WJ Strittmatter, et al., Annu. Rev. Neurosci. 19, 53-77(1996)。ApoE4アレルは、アミロイド-β沈着速度に影響し、脳内でのアミロイド-βのトラッピングに有利に働くことが示されており、これによりアミロイド-βのレベルが上昇し、原線維となる可能性がある。様々なApoEアレルによりアルツハイマー病を発症する可能性が変動する分子機構はわかっていないが、コレステロール代謝におけるApoEの役割は、コレステロール代謝をアルツハイマー病に結びつける証拠の成長体(growing body)と一致する。被験者をアルツハイマー病にかかりやすくするものとして環境因子が提案されており、アルミニウムへの曝露が含まれるが、疫学的証拠があいまいである。さらに、一定のウイルスまたは細菌病原体による以前の感染により被験者はアルツハイマー病にかかりやすくなる可能性があり、単純ヘルペスウイルスおよび肺炎クラミジアが含まれる。最後に、アルツハイマー病にかかりやすくする別の因子には、心血管または脳血管疾患に対する危険因子が含まれ、喫煙、高血圧および糖尿病が挙げられる。「アルツハイマー病の危険」という用語にはまた、上記で列挙されておらず、いまだ識別されていない任意の他の素因が含まれ、頭部損傷、薬剤、食事、または生活様式により引き起こされるアルツハイマー病に対する危険性の増大が含まれる。
【0087】
本発明の方法を下記の1または複数のために使用することができる:アルツハイマー病の予防、アルツハイマー病の治療、またはアルツハイマー病の症状の寛解、アミロイド-β(Aβ)ペプチドの産生またはそのレベルの調節。1つの別の態様では、ヒトはβ-アミロイド前駆体蛋白質、プレセニリン-1またはプレセニリン-2をコードする遺伝子において1または複数の突然変異を有している。別の態様では、ヒトはアポリポ蛋白質ε4遺伝子を有している。別の態様では、ヒトはアルツハイマー病または認知症の家族歴を有する。別の態様では、ヒトはトリソミー21(ダウン症候群)を有する。別の態様では、被験者は正常な、または低い血清総血液コレステロールレベルを有する。別の態様では、血清総血液コレステロールレベルは約200mg/dL未満、または約180未満であり、約150〜約200mg/dLの範囲とすることができる。別の態様では、総LDLコレステロールレベルは約100mg/dL未満、または約90mg/dL未満であり、約30〜約100mg/dLの範囲とすることができる。血清総血液コレステロールおよび総LDLコレステロールを測定する方法は当業者には周知であり、例えば、WO99/38498のp.11で開示されているものが含まれ、これは参照により本明細書に組み入れられる。血清中の他のステロールのレベルを決定する方法が、H.Gylling, et al., 「Serum Sterols During Stanol Ester Feeding in a Mildly Hypercholesterolemic Polupation」, J. Lipid Res. 40:593-600(1999)で開示されている。
【0088】
別の態様では、被験者は上昇した血清総血液コレステロールレベルを有する。別の態様では、血清総コレステロールレベルは少なくとも約200mg/dL、または少なくとも約220mg/dLであり、約200〜約1000mg/dLの範囲とすることができる。別の態様では、被験者は上昇した総LDLコレステロールレベルを有する。別の態様では、総LDLコレステロールレベルは約100mg/dLを超え、または約110mg/dLさえも超え、約100〜約1000mg/dLの範囲とすることができる。
【0089】
別の態様では、ヒトは少なくとも約40歳である。別の態様では、ヒトは少なくとも約60歳である。別の態様では、ヒトは少なくとも約70歳である。さらに別の態様では、ヒトは少なくとも約80歳である。1つの態様では、ヒトは約60〜約100歳の間である。
【0090】
さらに別の態様では、被験者は診断的脳撮像技術、例えば、脳の活動、プラーク沈着または脳萎縮症を測定する技術により危険があることが示されている。例えば、ポジトロン放出断層撮影(「PET」)を使用して、脳の活動およびプラーク沈着を測定してもよく、一方、磁気共鳴画像法(「MRI」)を使用して被験者の脳体積を測定してもよい。
【0091】
別の態様では、被験者はアルツハイマー病の症状を示さない。別の態様では、被験者は少なくとも40歳で、アルツハイマー病の症状を示さないヒトである。別の態様では、被験者は少なくとも40歳で、アルツハイマー病の1または複数の症状を示すヒトである。
【0092】
別の態様では、被験者は軽度認知障害(「MCI」)を有し、これは、思考力に軽度であるが測定可能な障害がある状態により特徴づけられる症状であるが、必ずしも認知症の存在と関連しない。MCIはしばしばアルツハイマー病に先行するが、必ずしもそうではない。しばしば軽度記憶障害と関連すると診断されるが、他の思考力、例えば言語能力または計画能力の軽度障害により特徴づけられることがある。しかしながら、一般にMCIを患う個人では、その年齢または教育背景の誰かに対し予測されるものより、著しい記憶力の衰えが見られる。症状が進行するにつれ、当業者にはよく理解されるように、医者は軽-中度認知障害、またはアルツハイマー病へと診断を変更する可能性がある。
【0093】
本発明の方法を使用することにより、被験者の脳または血液中のアミロイドβペプチドのレベルを、治療前のレベルから約10%〜約100%、または約50%〜約100%さえも減少させることができる。また、被験者の血液または血漿中のアミロイド-βペプチドのβは、例えば“シンク(sink)”効果により(すなわち、脳からのアミロイド-βのクリアランスを促進することにより)、治療前のレベルから増加させてもよい。
【0094】
別の態様では、被験者は、本発明の方法による治療前の血液およびCSFにおいて、約10pg/mLを超える、または約20pg/mLを超える、または約35pg/mLを超える、または約40pg/mLさえも超える、上昇したアミロイドAβ40およびAβ42ペプチドレベルを有することができる。別の態様では、アミロイドAβ42ペプチドの上昇したレベルは約30pg/mL〜約200pg/mL、またはさらに約500pg/mLまでの範囲とすることができる。当業者であれば、アルツハイマー病が進行するにつれ、CSF中のアミロイドβ-ペプチドの測定可能なレベルは、疾患の発症前の上昇レベルよりもわずかに減少する場合があることを理解すると考えられる。この効果は沈着の上昇によるものであり、すなわち、脳からCSF中に正常なクリアランスが起きる代わりに、脳でのAβペプチドのトラッピングが起きるからである。
【0095】
別の態様では、被験者は、本発明の方法による治療前の血液およびCSFにおいて、約5pg/mLを超える、または約50pg/mLを超える、または約400pg/mLを超える上昇したアミロイドAβ40ペプチドレベルを有することができる。別の態様では、上昇したアミロイドAβ40ペプチドレベルは約200pg/mL〜約800pg/mL、またはさらに約1000pg/mLまでの範囲とすることができる。
【0096】
別の態様では、被験者は、本発明の方法による治療前のCSFにおいて、約5pg/mLを超える、または約10pg/mLを超える、または約200pg/mLを超える、または約500pg/mLを超える上昇したアミロイドAβ40ペプチドレベルを有することができる。別の態様では、アミロイドβペプチドレベルは約10pg/mL〜約1,000pg/mL、または約100pg/mL〜約1,000pg/mLの範囲とすることができる。
【0097】
別の態様では、被験者は、本発明の方法による治療前のCSFにおいて、約10pg/mLを超える、または約50pg/mLを超える、または約100pg/mLさえも超える上昇したアミロイドAβ40ペプチドレベルを有することができる。別の態様では、アミロイドβペプチドレベルは約10pg/mL〜約1,000pg/mLの範囲とすることができる。
【0098】
被験者の脳または血液中のアミロイドβペプチドの量は、酵素結合免疫吸着測定法(「ELISA」)または定量的免疫ブロット試験法または定量的SELDI-TOFにより評価することができ、これらの方法は当業者に周知であり、例えば、Zhang, et al., J. Biol. Chem. 274, 8966-72(1999)およびZhang, et al., Biochemistry 40, 5049-55(2001)により開示されている。また、A.K.Vehmas, et al., DNA Cell Biol. 20(11), 713-21(2001), P.Lewczuk, et al., Rapid Commun. Mass Spectrom. 17(12), 1291-96(2003); B.M.Austen, et al., J. Peptide Sci. 6, 459-69(2000);およびH.Davies, et al., BioTechniques 27, 1258-62(1999)も参照のこと。これらの試験は、当業者に周知の様式で調製した脳または血液試料に対し実施する。アミロイドβペプチドのレベルを測定するための有益な方法の別の例は、ユウロピウム免疫測定法(EIA)によるものである。例えば、WO99/38498 p.11を参照のこと。
【0099】
別の態様では、被験者の血流または脳中の総ApoEの量は、治療前のレベルから、約5%〜約75%、または別の態様では、約5%〜約50%減少させることができる。総ApoEの量は当業者に周知の様式で、例えば、Organon Teknicaから入手可能なApo-Tek ApoE試験キットなどのELISA試験キットを使用して測定することができる。
【0100】
本発明の方法は、アルツハイマー病または認知症を患う被験者に対する治療法として適用してもよく、または本発明の方法は、アルツハイマー病または認知症の素因のある被験者、例えばAPP遺伝子、ApoE遺伝子、またはプレセニリン遺伝子のゲノム突然変異を有する被験者においてそれらに対する予防として適用してもよい。被験者は血管性認知症、または老年性認知症、または軽度認知障害を有する場合がある(またはそれらを発症しやすい場合がある、またはそれらの疑いがある場合がある)。アルツハイマー病の他に、被験者は別のアミロイド-β関連疾患、例えば脳アミロイド血管症を有する場合があり、または被験者は脳にアミロイド沈着、特にアミロイド-βアミロイド沈着を有する場合がある。
【0101】
認知症の本質的な特徴は、記憶障害および下記のうちの少なくとも1つを含む多発性認知障害である:失語症、行動不能症、失認症、または実行機能(抽象的な思考能力ならびに複雑な行動の計画、開始、順序づけ、モニタおよび停止能力)の障害。認知障害および関連する症状の発症順序または相対的な卓越性は、下記で記述するように、認知症の特定の型により変動する。
【0102】
記憶障害は一般に顕著な初期症状である。認知症を患う個人は新しい材料を学ぶことが困難であり、貴重品、例えば財布および鍵を紛失し、またはコンロでの料理を忘れてしまう場合がある。より重篤な認知症では、個人は、愛するものの名前を含む前に学んだ材料をも忘れてしまう。認知症を患う個人は、空間課題、例えば家の周辺またはごく近所を案内すること(ここでは、記憶障害が重要である可能性は低い)が困難になる場合がある。判断および洞察がうまくいかないことが同様に共通している。個人は記憶喪失または他の認知異常にほとんど、または全く気付いていない場合がある。個人は自分の能力について非現実的な評価をし、欠陥および予後と適合しない計画を立てる(例えば、新規ビジネスを開始しようとする)場合がある。個人は活動(例えば、運転)に関連する危険を過小評価する可能性がある。
【0103】
認知症の診断をするためには、認知障害が十分重篤で職業的機能または社会的機能の障害が引き起こされなければならず、前の機能レベルからの衰退を示さなければならない。障害の性質および程度は変化しやすく、しばしば個人の特別な社会的環境に依存する。例えば、軽度認知障害は、個人の、要求の低い仕事ではなく複雑な仕事を実施する能力を著しく損なうものである可能性がある。
【0104】
認知力障害または退行性脳障害は、臨床的には、徐々に深刻な精神機能低下および最終的には死にいたる記憶、認知、推理、判断および感情的安定性の進行性の喪失により特徴づけられる。疾患は始まってから、アルツハイマー病の初期徴候である軽度の認知変化で明らかになるまで何年もかかると一般に考えられている。「アルツハイマー型の認知症」は徐々に始まり、通常、他の特定の原因が除外された後に診断される。アルツハイマー型の認知症の診断基準は、記憶障害(順行性または逆行性、すなわち、新規情報を学ぶ能力または以前に学んだ情報を思い出す能力の低下)および下記認知障害うちの少なくとも1つの両方により明らかにされる多発性認知障害の発症を含む:失語症(言語障害)、行動不能症(運動機能が正常であるにも関わらず運動活動を実施する能力が低下する)、失認症(感覚機能が正常であるにも関わらず物体を認識または識別することができない)、または実行機能(すなわち、計画、組織化、順序づけ、および抽出)の障害。ここで、これらの認知障害はそれぞれ、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こし、前の機能レベルより著しい低下を示す。経過は、認識衰退の段階的な発症および連続性により特徴づけられ、認知障害は記憶および認知の進行性の衰退を引き起こす別の状態(例えば、脳血管疾患、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、ビタミンBまたは葉酸欠乏症、ナイアシン欠乏症、高カルシウム血症、神経梅毒、HIV感染症、または化学品曝露)によるものではない。認知障害の後、行動障害、例えば、放浪、攻撃、もしくは興奮、または精神的混乱、例えばうつ病もしくは精神疾患を生じる場合がある。American Psychiatric Association(2000)による「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Diorders」, 4th Ed., Text Revisionを参照のこと。例えば、神経疾患および伝達疾患ならびに脳卒中-アルツハイマー病およびアルツハイマー病ならびに関連疾患の国立研究所(National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke-Alzheimer's Disease and the Alzheimer's Disease and Related Disorders Association(NINCDS-ADRDA)基準を使用して、アルツハイマー病を診断することができる(McKhann et al. 1984 Neurology 34:939-944)。患者の認知機能はアルツハイマー病評価スケール-認知サブスケールにより評価することができる(ADAS-cog; Rosen, et al., 1984, Am. J. Psychiatry 141:1356-1364)。
【0105】
アルツハイマー病は皮質変性疾患のプロトタイプである。主症状の主な要素は、通常、記憶困難、言語障害、総合運動障害の主観的症状であり、この時点では、診断は主に、認知症に対する他の可能な病因の除外に基づく。身体検査または研究室評価の特徴はいずれも、アルツハイマー型の認知症に対し特徴的なものではない。いくつかの研究により、アルツハイマー型の認知症患者が、EEG、MRIおよびSPECTなどの技術を用いることにより、他の病因の認知症患者および正常な対照から明らかに区別されているが、これらの研究は一貫して再現することが困難であり、現在のところ、他の識別可能な原因を排除するために、脳画像研究が最もよく使用されている。
【0106】
様々な診断試験がアルツハイマー病に対し開発されている。臨床基準は、剖検研究で先を見越して証明されており、特異性は高いが感度が中程度にすぎないことがわかっている。基準の実施には、情報提供者に基づく病歴、神経学的検査、神経心理試験、ならびに研究室および神経画像データを含む広範囲の検査が必要である。アルツハイマー病は、大脳皮質の全般性萎縮症により、ならびに神経原線維変化、神経(アミロイド)斑、および顆粒空胞変性により、病理学的に特徴づけられる。斑およびもつれはアルツハイマー病ではない老人の脳において検出される場合があるが、認知症患者では数がより多い。アルツハイマー病ではない個人由来の斑を有する脳が「正常バリエーション」であるのか、初期疾患の初期病的徴候であるのかについては論争が続いている。
【0107】
被験者の「治療」は、本発明の組成物の被験者への塗布もしくは投与、または本発明の組成物の被験者由来の細胞もしくは組織への塗布または投与を含み、被験者は、アミロイド-β関連疾患または状態を有し、そのような疾患もしくは状態の徴候を有し、またはそのような疾患もしくは状態の危険(または感受性)があり、目的は、疾患もしくは状態、疾患もしくは状態の徴候、または疾患もしくは状態の危険(もしくは感受性)の回復、治癒、緩和、軽減、変化、修正、寛解、改善、またはそれらへの影響である。「治療する」の用語は、例えば、下記の任意の客観的および主観的パラメータを含む、傷害、病状または状態の治療または寛解における何らかの成功を示す:軽減;鎮静;徴候の低減、または傷害、病状もしくは病態を被験者にとってより耐えられるものとする;変性または低下速度の減速;変性の最終点をより衰弱化していないものとする;被験者の身体的もしくは精神的健康の改善;または、場合によっては、認知症の発症の阻止。徴候の治療または寛解は、下記を含む客観的または主観的パラメータを基本とすることができる:身体検査または精神鑑定の結果。例えば、本発明の方法は、認識衰退の速度または程度を減速させることにより被験者の認知症の治療に成功している。
【0108】
「アルキル」という用語は飽和脂肪族基を含み、例えば直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分枝アルキル基(イソプロピル、tert-ブチル、イソブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基が挙げられる。特に記載がなければ、アルキルという用語には、炭化水素骨格の1個または複数の炭素と置換する酸素、窒素、硫黄またはリン原子をさらに含むことができるアルキル基がさらに含まれる。
【0109】
ある一定の態様では、直鎖または分枝鎖アルキルは骨格に6個またはそれ以下の炭素原子を含み(例えば、直鎖ではC1〜C6、分枝鎖ではC3〜C6)、または4個もしくはそれ以下の炭素原子を含む。同様に、シクロアルキルは環構造に3〜8個の炭素原子を有してもよく、または環構造に5個もしくは6個の炭素を有する。C1〜C6という用語は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を含む。「アルキレン」基は対応するアルキル基から誘導された二価部分である。
【0110】
さらに、特に記載がなければ、アルキルという用語は「未置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含み、後者は炭化水素骨格の1個または複数の炭素上の1個または複数の水素と置換する置換基を有するアルキル部分を示す。そのような置換基としては、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくは複素環式芳香族部分が挙げられる。シクロアルキルは、例えば上記置換基により、さらに置換してもよい。
【0111】
「アリールアルキル」部分は、アリール(例えば、フェニルメチル(すなわちベンジル))により置換されたアルキル基である。「アルキルアリール」部分は、アルキル基(例えば、p-メチルフェニル(すなわち、p-トリル))基により置換されたアリール基である。「n-アルキル」という用語は、直鎖(すなわち、未分枝)未置換アルキル基を意味する。
【0112】
「アルケニル」という用語は、上記アルキルと長さおよび可能な置換性が類似しているが、少なくとも1つの二重結合を有する不飽和脂肪族基を含む。例えば、「アルケニル」という用語は、直鎖アルケニル基(例えば、エチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニルなど)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、など)、アルキルまたはアルケニル置換シクロアルケニル基、およびシクロアルキル、またはシクロアルケニル置換アルケニル基を含む。アルケニルという用語は、炭化水素骨格の1個または複数の炭素と置換する酸素、窒素、硫黄またはリン原子を有するアルケニル基をさらに含んでもよい。
【0113】
ある態様では、直鎖または分枝鎖アルケニル基は骨格に、6個またはそれ以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖ではC2〜C6、分枝鎖ではC3〜C6)。同様に、シクロアルケニル基は環構造に3〜8個の炭素原子を有し、または環構造に5個もしくは6個の炭素を有する。C2〜C6という用語は2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基を含む。「アルケニレン」基は対応するアルケニル基から誘導された二価部分である。
【0114】
さらに、特に記載がなければ、アルケニルという用語は「未置換アルケニル」および「置換アルケニル」の両方を含み、後者は炭化水素骨格の1個または複数の炭素上の1個または複数の水素と置換する置換基を有するアルケニル部分を示す。そのような置換基としては、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート(およびその低級アルキルエステル)、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくは複素環式芳香族部分が挙げられる。
【0115】
「アルキニル」という用語は、上記アルキルと長さおよび可能な置換性が類似しているが、少なくとも1つの三重結合を有する不飽和脂肪族基を含む。例えば、「アルキニル」という用語は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなど)、分枝鎖アルキニル基、およびシクロアルキルまたはシクロアルケニル置換アルキニル基を含む。特に記載がなければ、アルキニルという用語は、炭化水素骨格の1個または複数の炭素と置換する酸素、窒素、硫黄またはリン原子を有するアルキニル基をさらに含む。ある態様では、直鎖または分枝鎖アルキニル基は骨格に6個またはそれ以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖ではC2〜C6、分枝鎖ではC3〜C6)。C2〜C6という用語は2〜6個の炭素原子を有するアルキニル基を含む。「アルキニレン」基は対応するアルキニル基から誘導された二価部分である。
【0116】
さらに、特に記載がなければ、アルキニルという用語は「未置換アルキニル」および「置換アルキニル」の両方を含み、後者は炭化水素骨格の1個または複数の炭素上の1個または複数の水素と置換する置換基を有するアルキニル部分を示す。
【0117】
そのような置換基としては、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくは複素環式芳香族部分が挙げられる。
【0118】
炭素数が特に指定されていなければ、本明細書で使用されるように「低級アルキル」は上記で規定されるような、しかし骨格構造に1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は、例えば2〜5個の炭素原子の鎖長を有する。
【0119】
「アシル」という用語は、カルボニル基であって、その炭素原子を介して水素に結合されているもの(すなわち、ホルミル)、脂肪族基に結合されているもの(例えば、アセチル)、芳香族基に結合されているもの(例えば、ベンゾイル)などを示す。「置換アシル」という用語は、1個または複数の炭素原子上の1個または複数の水素原子が、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくは複素環式芳香族部分により置換されているアシル基を含む。
【0120】
「アシルアミノ」という用語は、アミノ部分がアシル基に結合された部分を含む。例えば、アシルアミノ基はアルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイド基を含む。
【0121】
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」、および「チオアルコキシアルキル」は、上記のような、しかし炭化水素骨格の1個または複数の炭素と置換する酸素、窒素、または硫黄原子をさらに有するアルキル基を含む。
【0122】
「アルコキシ」または「アルキルオキシ」という用語は、酸素原子に共有結合した置換および未置換アルキル、アルケニル、およびアルキニル基を含む。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびペントキシ基が挙げられる。置換アルコキシ基の例としてはハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。
【0123】
アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくは複素環式芳香族部分などの官能基により置換することができる。ハロゲン置換されたアルコキシ基の例としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシなど、および過ハロゲン化アルキルオキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
「アミン」または「アミノ」という用語は、窒素原子が少なくとも1つの炭素またはヘテロ原子に共有結合された化合物または部分を含む。「アルキルアミノ」という用語は、窒素が少なくとも1つのアルキル基に結合された官能基を含む。「ジアルキルアミノ」という用語は窒素原子が少なくとも2つのアルキル基に結合された官能基を含む。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」という用語は、それぞれ窒素が少なくとも1つまたは2つのアリール基に結合された官能基を含む。「アルキルアリールアミノ」という用語は、少なくとも1つのアルキル基および少なくとも1つのアリール基に結合されたアミノ基を示す。「アルカミノアルキル」という用語は、アルキルアミノ基により置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を示す。「アミド」または「アミノカルボニル」という用語は、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合された窒素原子を含む化合物または部分を含む。
【0125】
「カルボニル」または「カルボキシ」という用語は、二重結合により酸素原子に結合された炭素を含む化合物および部分を含む。カルボニルを含む部分の例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物などが挙げられる。
【0126】
「エーテル」または「エテリアル」という用語は、2個の炭素原子に結合された酸素を有する化合物または部分を含む。例えば、エーテルまたはエテリアル基は、アルコキシ基で置換されたアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を示す「アルコキシアルキル」を含む。
【0127】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語は、官能基-OHまたは-O-(適当な対イオンと共に存在する)を含む。
【0128】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。「過ハロゲン化」という用語は、一般に、全ての水素がハロゲン原子により置換された部分を示す。
【0129】
アリーレンジアルキレンまたはアリーレンジアルキル基は、2つの他のアルキレン基、これらは同じであっても異なってもよい、が結合したアリーレン基を有する官能基であり、その2つのアルキレン基は次に、他の部分に結合する。アリーレンジアルキレンまたはアリーレンジアルキル基の例としては下記が挙げられる:

式中、各R基は独立して水素であり、または上記で規定したZ基から選択され、1≦f≦8、1≦g≦8、0≦h≦4である。
【0130】
アルキレンジアリーレン基は、2つの他のアリーレン基、これらは同じであっても異なってもよい、が結合しているアルキレン(またはシクロアルキレン)基を有する官能基を含み、その2つのアルキレン基は次に、他の部分に結合する。アルキレンジアリーレン基の例としては下記が挙げられる:

式中、各R基は独立して水素であり、または上記で規定したZ基から選択され、1≦y≦10(例えば、1≦y≦4)、1≦f≦8、1≦g≦8、0≦h≦4および0≦i≦4である。
【0131】
ヘテロアリーレンジアルキレンまたはヘテロアリーレンジアルキル基は、2つの他のアルキレン基、これらは同じであっても異なってもよい、が結合しているヘテロアリーレン基を有する官能基を含み、その2つのアルキレン基は次に、他の部分に結合する。ヘテロアリーレンジアルキレンまたはヘテロアリーレンジアルキル基の例としては下記が挙げられる:

式中、0≦h≦3および0≦i≦3であり、ならびにX=NR'(ここで、R'は水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)、O、またはSであり、1≦f≦8、1≦g≦8であり、

式中、0≦h≦2であり、およびX=NR'(ここで、R'は水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)、O、またはSであり、1≦f≦8、1≦g≦8であり、

式中、0≦h≦3、1≦f≦8、1≦g≦8であり、または、

式中、0≦h≦2であり、ここで、各Rは独立して水素であり、または上記で規定したZ基から選択され、1≦f≦8、1≦g≦8であり、hおよびiは示した通りである。
【0132】
アリーレン基は、他の置換基に少なくとも2つの位置を介して共有結合させることができる芳香族基であり、下記例が含まれる:

式中、各Rは独立して水素であり、または上記で規定したZ基から選択され、0≦h≦4であり;例えば、下記である。

【0133】
ヘテロアリーレン基は、他の置換基に少なくとも2つの位置を介して共有結合させることができる芳香族複素環基であり、下記例が含まれる:

式中、0≦h≦3および0≦i≦3であり、ならびにX=NR'(ここで、R'は水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)、O、またはSであり、

式中、0≦h≦2であり、およびX=NR'(ここで、R'は水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)、O、またはSであり、

式中、0≦h≦3であり、または

式中、0≦h≦2であり、ここで、各R基は独立して水素であり、または上記で規定したZ基から選択され、hおよびiは示した通りであり;例えば、下記官能基である。

【0134】
同様に、本発明は下記ヘテロアリーレン基に関する:

式中、X=NR'(ここで、R'は水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)、O、またはSであり;0≦f≦8、0≦g≦8であり;および、各R基は独立して水素であり、または上記で規定したZ基から選択される。
【0135】
一般に、「アリール」という用語は、0〜4のヘテロ原子を含んでもよい5および6員単環芳香族基を含む官能基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン由来の官能基、などを含む。
【0136】
さらに、「アリール」という用語は、多環式アリール基、例えば、三環、二環、例えば、ナフタレン、ベンゾキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジン由来の官能基を含む。
【0137】
環構造中にヘテロ原子を有するそれらのアリール基はまた、「アリール複素環」、「複素環」、「ヘテロアリール」または「芳香族複素環」とも呼ばれる。
【0138】
芳香族環は、1または複数の環位で、上記で記述したような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル(例えば、トリル)、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノアカルボニル、アリールアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくは芳香族複素環部分により置換することができる。
【0139】
アリール基はまた、芳香族ではない脂環式もしくは複素環と縮合または架橋させ、多環(例えば、テトラリン)を形成させることができる。
【0140】
「複素環式」または「複素環」という用語は、ヘテロアリールならびにヘテロ原子または炭素ではない原子を組み入れるように形成された任意の環を含む。環は飽和であっても不飽和であってもよく、1または複数の二重結合を含んでもよい。複素環基の例としてはピリジル、フラニル、チオフェニル、モルホリニル、およびインドリル基が挙げられる。「ヘテロ原子」という用語は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を含む。ヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄およびリンとしてもよい。
【0141】
「アリーレン」基はアリール基から誘導した二価部分である。
【0142】
複素環の例としては、下記が挙げられるが、それらに限定されない:アクリジニル;アゾシニル;ベンズイミダゾリル;ベンゾフラニル;ベンゾチオフラニル;ベンゾチオフェニル;ベンゾキサゾリル;ベンズチアゾリル;ベンズトリアゾリル;ベンズテトラゾリル;ベンズイソキサゾリル;ベンズイソチアゾリル;ベンズイミダゾリニル;カルバゾリル;4aH-カルバゾリル;カルボリニル;クロマニル;クロメニル;シノリニル;デカヒドロキノリニル;2H,6H-1,5,2-ジチアジニル;ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン;フラニル;フラザニル;イミダゾリジニル;イミダゾリニル;イミダゾリル;1H-インダゾリル;インドレニル;インドリニル;インドリジニル;インドリル;3H-インドリル;イソベンゾフラニル;イソクロマニル;イソインダゾリル;イソインドリニル;イソインドリル;イソキノリニル;イソチアゾリル;イソキサゾリル;メチレンジオキシフェニル;モルホリニル;ナフチリジニル;オクタヒドロイソキノリニル;オキサジアゾリル;1,2,3-オキサジアゾリル;1,2,4-オキサジアゾリル;1,2,5-オキサジアゾリル;1,3,4-オキサジアゾリル;オキサゾリジニル;オキサゾリル;オキサゾリジニル;ピリミジニル;フェナントリジニル;フェナントロリニル;フェナジニル;フェノチアジニル;フェノキサチイニル;フェノキサジニル;フタラジニル;ピペラジニル;ピペリジニル;ピペリドニル;4-ピペリドニル;ピペロニル;プテリジニル;プリニル;ピラニル;ピラジニル;ピラゾリジニル;ピラゾリニル;ピラゾリル;ピリダジニル;ピリドオキサゾール;ピリドイミダゾール;ピリドチアゾール;ピリジニル;ピリジル;ピリミジニル;ピロリジニル;ピロリニル;2H-ピロリル;ピロリル;キナゾリニル;キノリニル;4H-キノリジニル;キノキサリニル;キヌクリジニル;テトラヒドロフラニル;テトラヒドロイソキノリニル;テトラヒドロキノリニル;テトラゾリル;6H-1,2,5-チアジアジニル;1,2,3-チアジアゾリル;1,2,4-チアジアゾリル;1,2,5-チアジアゾリル;1,3,4-チアジアゾリル;チアントレニル;チアゾリル;チエニル;チエノチアゾリル;チエノオキサゾリル;チエノイミダゾリル;チオフェニル;トリアジニル;1,2,3-トリアゾリル;1,2,4-トリアゾリル;1,2,5-トリアゾリル;1,3,4-トリアゾリル;およびキサンテニル。複素環としては下記が挙げられるが、それらに限定されない:ピリジニル;フラニル;チエニル;ピロリル;ピラゾリル;ピロリジニル;イミダゾリル;インドリル;ベンズイミダゾリル;1H-インダゾリル;オキサゾリジニル;ベンゾトリアゾリル;ベンズイソキサゾリル;オキシインドリル;ベンゾキサゾリニル;およびイサチノイル基。例えば、上記複素環を含む縮合環およびスピロ化合物も含まれる。
【0143】
オリゴエテリアル基、例えばオリゴ(アルキレンオキシド)基としては、ポリエチレングリコール(PEG)および-[(CR2)sO]t(CR2)s-を含むその短鎖類似体が挙げられ、式中、1≦t≦6および1≦s≦6であり、各R基は独立して水素であり、または上記で規定されたZ基から選択される。
【0144】
アリーレン-ジ(オリゴアルキレンオキシド)基は、2つのオリゴアルキレンオキシド基が結合されたアリール基であり、これらの2つのオリゴアルキレンオキシド基は次に他の部分に結合され、下記例が挙げられる:

式中、「アリール」はアリーレン部分であり、1≦t≦6、0≦s≦6であり、各R基は独立して水素であり、または上記で規定されたZ基から選択される。アリーレン-ジ(オリゴアルキレンオキシド)基の例としては下記が挙げられる:

式中、1≦t≦6、0≦s≦6、0≦h≦4であり、各R基は独立して水素であり、または上記で規定されたZ基から選択される。
【0145】
「置換」または「で置換された」という用語は、そのような置換は、置換された原子および置換基の許容される原子価に従うこと、および置換により安定な化合物、例えば、再配列、環化、脱離などの変換を自然に受けない化合物が得られるという暗黙の条件を含むことは理解されると思われる。本明細書で使用されるように、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むものとする。広範な局面では、許容される置換基は、有機化合物の非環式および環状、分枝および非分枝、炭素環および複素環、芳香族および非芳香族置換基を含む。許容される置換基は適当な有機化合物に対し1または複数とすることができ、同じであっても異なってもよい。
【0146】
いくつかの態様では、「置換基」は、例えば、ハロゲノ、トリフルオロメチル、ニトロ、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C1〜C6アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロシクリル、アラルキル、およびアリール(ヘテロアリールを含む)基からなる群より選択してもよい。
【0147】
「置換」または「で置換された」という用語は、そのような置換は、置換された原子および置換基の許容される原子価に従うこと、および置換により安定な化合物、例えば、再配列、環化、脱離などの変換を自然に受けない化合物が得られるという暗黙の条件を含むことは理解されると思われる。本明細書で使用されるように、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むものとする。広範な局面では、許容される置換基は、有機化合物の非環式および環状、分枝および非分枝、炭素環および複素環、芳香族および非芳香族置換基を含む。許容される置換基は適当な有機化合物に対し1または複数とすることができ、同じであっても異なってもよい。
【0148】
いくつかの態様では、「置換基」は、例えば、ハロゲノ、トリフルオロメチル、ニトロ、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C1〜C6アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロシクリル、アラルキル、およびアリール(ヘテロアリールを含む)基からなる群より選択してもよい。
【0149】
いくつかの態様では、「置換された」という用語は、部分が、その部分上に配置された水素以外の置換基を有し、これにより分子は対象とする機能を実施することができることを意味する。置換基の例としては、直鎖または分枝アルキル(例えば、C1〜C5)、シクロアルキル(例えば、C3〜C8)、アルコキシ(例えば、C1〜C6)、チオアルキル(例えば、C1〜C6)、アルケニル(例えば、C2〜C6)、アルキニル(例えば、C2〜C6)、複素環、炭素環、アリール(例えば、フェニル)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、アラルキル(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル(例えば、フェニルオキシアルキル)、アリールアセトアミドイル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、アルキルカルボニルおよびアリールカルボニルまたは他のそのようなアシル基、ヘテロアリールカルボニル、またはヘテロアリール基、

または任意の天然アミノ酸の側鎖から選択される部分が挙げられ、ここで、R'およびR''はそれぞれ独立して、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、もしくはアリール基であり、またはR'およびR''は一緒になりベンジリデン基もしくは-(CH2)2O(CH2)2-基となる。例えば、置換により、本発明の化合物のその対象とする機能を実施する能力、例えば、アミロイド沈着物の形成の阻止が増強される。いくつかの態様では、Z基はこの段落で規定される置換基であってもよい。
【0150】
本発明の化合物の1例の群では、m=1およびn=0、1または2である。化学式Iの化合物では、例えば、p=0、1または2であり、q=1である。化学式Iによる分子は対照であってもよく、このためRa1=Ra2、Rb1=Rb2、Rc1=Rc2、m=q、n=pおよびY1=Y2である。同様に、R1=R2およびX1=X2は化学式Iの分子の例である。
【0151】
本発明の化合物の1つの群は化学式Iaの化合物であり:

式中、Mは下記であり:

式中、1つの局面では、Ra1およびRb1は共に、またはRa2およびRb2は共に、C2〜C3アルキレンを示し;Rc1およびRc2はHであり;およびRh1はHであり;Rh2はOCH3またはO(C6H4)Rであり、ここでRはHまたは低級アルキルであり、およびXはO、NR'(ここでR'は水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)、またはSである。
【0152】
化学式Iaの化合物の別の群では、Ra1およびRb1は共に、またはRa2およびRb2は共に、C2直鎖飽和アルキレンを示し;Rc1およびRc2は-(低級アルキル)-OHであり;Rh1およびRh2はそれぞれHである。Rc1およびRc2の「低級アルキル」基はエチレンであってもよい。
【0153】
化学式Iaの化合物のさらに別の群では、Ra1およびRb1は共に、またはRa2およびRb2は共に、C4アルキレンを示し;Rc1およびRc2は、H、低級アルキル、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシアルキル、アミノアルキルまたはアルキルアミノアルキルであり;Rh1およびRh1は、H、低級アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシまたはアリールアルコキシからなる群より独立して選択される。
【0154】
化学式Iaの化合物のさらに別の群では、Ra1、Ra2、Rb1およびRb2はHであり;Rc1およびRc2は、イソプロピルまたは-(CH2)3N(CH3)2であり;ならびにRh1およびRh2はHである。
【0155】
化学式Iaの化合物の別の群では、Ra1およびRb1は共に、またはRa2およびRb2は共に、3までの-CONHRdNReRf基で置換されてもよいフェニレン基を示し、ここで、Rdは低級アルキルであり、ReおよびRfはそれぞれ独立して、Hまたは低級アルキルからなる群より選択され;ならびにRc1、Rc2、Rh1およびRh2は、Hである。
【0156】
化学式Iaの例示的な化合物では、Rh1、Rh2、Rb1、Rc1、Rb2およびRc2はHであり、Ra1およびRa2基はヒドロキシまたはメトキシである。
【0157】
化合物の別の群は化学式Ibの化合物であり:

式中、Mは下記であり:

式中、XはO、NR'(ここでR'は水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)、またはSであり;Rh1およびRh2はそれぞれ独立して、H、低級アルキル、アリール、アルキルアリール、アミノアルキル、アミノアリール、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、またはオキシアリールアルキルからなる群より選択され;R1およびR2はそれぞれ独立して、H、低級アルキル、アルコキシ、アルキルアリール、アリール、アリールオキシ、アミノアルキル、アミノアリール、またはハロゲンからなる群より選択され;および各Ra1、Ra2、Rb1およびRb2基は独立して、H、低級アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシ、またはアルキルアリールからなる群より選択され;またはRa1およびRb1は共に、もしくはRa2およびRb2は共に、C2〜C10アルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルキレンを示し;ならびに各Rc1およびRc2基は、独立して、H、ヒドロキシ、低級アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、シクロアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、アルコキシシクロアルキル、アリール、またはアルキルアリールである。
【0158】
化合物の別の群は化学式Icの化合物であり:

式中、Mは下記であり:

式中、XはS、OまたはNR'(ここでR'は水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)であり;Rb1、Rb2、Rc1およびRc2基はそれぞれ独立して、H、低級アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アリール、ヒドロキシアルキル、アミノアルキルまたはアルキルアミノアルキルからなる群より選択され;R1およびR2は、H、低級アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル、アリール、アミノアルキル、アルキルアミノアルキルまたはハロゲンであり;Ra1およびRa2は-OYであり、またはRa1およびRb1は共に、もしくはRa2およびRb2は共に下記を示し:

式中、R5は下記であり:

YはHまたは低級アルキルであり;X1およびX2はそれぞれ、-(CH2)n-であり、ここで、nは0〜2の整数であり;ならびに、Rh1およびRh2はそれぞれ独立して、H、低級アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、またはオキシアリールアルキルからなる群より選択される。
【0159】
化合物のさらに別の群は化学式Icの化合物であり、式中、Mは-(CH2)n-であり、ここで、nは2〜16(または2〜12、もしくは2〜10)の整数であり;X1およびX2はそれぞれO、NH、またはSであり;Ra1、Ra2、Rb1およびRb2はHであり;またはRa1およびRb1は共に、もしくはRa2およびRb2は共に-(CH2)m-を示し、ここで、mは2、3、または4であり;R1およびR2はそれぞれ、H、OCH3、NO2またはNH2であり;Rc1およびRc2は、H、CH3またはCH2CH3である。別の態様では、X1がOまたはSである場合、R1およびRc1は両方ともHとすることはできず;ならびにX2がOまたはSである場合、R2およびRc2は両方ともHとすることはできない。
【0160】
化合物の別の群は化学式Idの化合物であり:

式中、Ra1、Ra2、Rb1およびRb2はそれぞれ独立して、H、低級アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアルキルアリールからなる群より選択され;または2つのRa1およびRb1は共に、もしくはRa2およびRb2は共に、C2〜C10アルキレンを示し;Rc1およびRc2は独立して、H、ヒドロキシ、低級アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、シクロアルキル、アリール、またはアルキルアリールであり;R'は、H、低級アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、シクロアルキル、アリール、またはアルキルアリールである。
【0161】
化合物の別の群は化学式Ieの化合物であり:

式中、Mはアルキレン基(例えば、C2〜C16)、ならびにX1およびX2は酸素である。
【0162】
化学式Ieの化合物の別の群では、Ra1およびRb1は共に、もしくはRa2およびRb2は共に、C2直鎖飽和アルキレンを示し;Rc1およびRc2はHである。
【0163】
本発明の化合物の別の群は化学式IIaの化合物であり:

式中、Eは下記であり:

式中、Y1、Y2、ZおよびR1は上記で規定した通りであり;nは0〜4であり;Y2基の例はO、NH、S、置換もしくは非置換メチレン基、または直接結合であり;Zは水素原子であってもよく、またはZはアルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、置換もしくは非置換アミノ、ニトロ、スルホ、またはハロゲン基であり;Ra1、Rb1およびRc1は独立して水素、低級アルキル、芳香族、ヒドロキシル、またはアルコキシであり;Bは直接結合または1〜16の炭素原子を含む置換もしくは非置換アルキレン基、またはビフェニレン基、またはビフェニレン-アルキレン基の組み合わせ、-[(CH2)nO]m(CH2)n-基、ここでmは1〜6およびnは2〜6である、または複素環である。
【0164】
化学式IIbの化合物または本発明の範囲内であり:

式中、n=2、3、4、5、6、7、8、9、または10であり;Rは水素、ヒドロキシ、ハロゲン、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、またはアリールオキシである。
【0165】
化合物の別の群は化学式IIIaの化合物であり:

式中、Mは下記であり:

式中、XはS、OまたはNR'(ここでR'は水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、またはアリール基である)であり;Ra1、Ra2、Rb1およびRb2はそれぞれ独立してH、低級アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、またはアルキルアミノアルキルからなる群より選択され;またはRa1およびRb1は共に、もしくはRa2およびRb2は共に、C2〜C10アルキル、ヒドロキシアルキル、またはアルキレンを示し;またはRa1およびRb1は共に、もしくはRa2およびRb2は共に、下記となり:

式中、nは1〜3の数であり、およびR10はHまたは-CONHR11NR15R16であり、ここで、R11は低級アルキルであり、R15およびR16はそれぞれ独立してHおよび低級アルキルからなる群より選択され;ならびにRc1およびRc2はH、ヒドロキシ、低級アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、アルコキシシクロアルコキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキルまたはアルキルアミノアルキルであり;ならびにRh1およびRh2はそれぞれ独立して、H、低級アルキル、ハロゲン、アリール、アリールアルキル、アミノアルキル、アミノアリール、アルコキシ、アリールオキシ、またはオキシアリールアルキルからなる群より選択される。
【0166】
化合物のさらに別の群は化学式IIIbの化合物であり:

式中、Ra1およびRb1ならびにRa2およびRb2の各対は共に-(CH2)m-を示し、ここでmは2〜4であり;Rc1およびRc2は独立してHまたは低級アルキルであり;ならびにMは、低級アルキル基で置換されてもよく、-CH=CH-CH2-CH2-、-CH2-CH=CH-CH2-、および-CH=CH-CH=CH-からなる群より選択される。
【0167】
化合物の別の群は化学式IIIcの化合物であり:

式中、R1およびR1は独立してHまたは-CONHR5NR6R7であり、ここで、R5は低級アルキルであり、R6およびR7はそれぞれ独立してHおよび低級アルキルからなる群より選択され;Ra1、Ra2、Rb1およびRb2は独立してH、低級アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、シクロアルキル、アリール、もしくはアルキルアリールからなる群より選択され、またはRa1およびRb1は共に、もしくはRa2およびRb2は共に、C2〜C10アルキレンを示し;Rc1およびRc2は独立して、H、ヒドロキシ、低級アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、シクロアルキル、アリール、またはアルキルアリールであり;Rc3およびRc4は独立してH、ヒドロキシ、低級アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、シクロアルキル、アリール、またはアルキルアリールであり;ならびにR'はH、低級アルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、またはハロゲンである。
【0168】
別の態様では、本発明は、アミロイド関連疾患の治療のための、本明細書の化学式のいずれかによる化合物を含む薬学的組成物に関する。本発明はまた、薬学的組成物の製造における化合物の使用、ならびにそのような薬学的組成物の製造方法に関する。そのような薬学的組成物はアミロイド関連疾患の治療または予防に有益である可能性がある。
【0169】
本発明の組成物は適当な溶媒を用いた溶液形態または溶媒を含まない形態(例えば、凍結乾燥)で提供してもよい。本発明の別の局面では、本発明の方法を実施するために必要な薬剤および緩衝剤を、キットとしてパッケージしてもよい。キットは本明細書で記述した方法に従い商業的に使用してもよく、本発明の方法において使用するための取扱説明書を含んでもよい。追加のキット構成要素としては酸、塩基、緩衝剤、無機塩、溶媒、抗酸化剤、保存剤、または金属キレート剤が挙げられる。追加のキット構成要素は純粋組成物として、または1または複数の追加のキット構成要素を含む水溶液もしくは有機溶液として存在する。キット構成要素のいずれかまたは全ては任意で、さらに緩衝剤を含む。
【0170】
本発明の組成物は、治療的または予防的に投与してもよく、アミロイド-β原線維形成、凝集、または沈着に関連する疾患が治療される。本発明の組成物は様々な機序によりアミロイド-β関連疾患の経過を寛解させるように作用してもよい。1つの態様では、本明細書で開示した薬学的組成物は、アミロイド蛋白質集合体(アセンブリ:assembly)が、インビボでは様々な器官で沈着する不溶原線維となるのを予防または阻止し、すでに沈着を有する被験者ではプラークのクリアランスに有利に働き、もしくは沈着を減速させる。別の態様では、薬学的組成物は、可溶性オリゴマー形態または原線維形態のアミロイド蛋白質が細胞表面に結合もしくは付着し、細胞損傷または毒性を引き起こすのを阻止してもよい。さらに別の態様では、薬学的組成物はアミロイド毒性を遮断してもよい。別の態様では、化合物は、アミロイド-β原線維形成または沈着の速度を減速させることにより作用してもよい。さらに別の態様では、化合物はアミロイド-β沈着の程度を低下させてもよい。さらに別の例は、アミロイド-β原線維形成を阻止、軽減、または予防すること;アミロイド-βにより誘発される神経変性または細胞毒性を阻止すること;アミロイド-β誘発性炎症を阻止すること;または脳からのアミロイド-βのクリアランスを増強させること、もしくはその脳または末梢器官での分解速度を増強させることを含む。
【0171】
本発明の化合物はインビボで適当に分布するように製剤化することができる。例えば、血液脳関門(BBB)は多くの高親水性化合物を排除する。本発明のより多くの親水性治療用化合物がBBBを確実に通過するためには、そのような化合物を例えばリポソーム内で製剤化することができる。リポソームの製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811号、同第5,374,548号および同第5,399,331号を参照のこと。リポソームは特定の細胞または器官(「標的部分」)に選択的に輸送される1個または複数の部分を含み、これにより標的薬物送達が提供される(例えば、V. V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照のこと)。
【0172】
例示的な標的部位としては、葉酸またはビオチン(例えば、Lowらの米国特許第5,416,016号を参照のこと);マンノシド(Umezawaら (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038);抗体(P. G. Bloemanら (1995) FEBS Lett. 357:140;M. Owaisら (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180);表面蛋白質A受容体(Briscoeら (1995) Am. J. Physiol. 1233:134);gp 120(Schreierら (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が挙げられる;K. Keinanen;M. L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123;J. J. Killion;I. J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273をも参照のこと。ある態様では、本発明の治療用化合物はリポソーム内で製剤化され、別の態様では、リポソームは標的部分を含む。
【0173】
本発明の化合物がBBBを確実に通過するには、BBB運搬ベクターに結合してもよい(BBB運搬ベクターおよび機序を再検討するには、BickelらAdv.Drug.Delivery Reviews、vol.46、pp.247-279、2001を参照のこと)。例示的な運搬ベクターとしては、陽イオン化アルブミンまたはトランスフェリン受容体に対するOX26モノクローナル抗体が挙げられ、これらの蛋白質はそれぞれ、BBBを介する、吸収および受容体を介したトランスサイトーシスを受ける。
【0174】
脳内への受容体を介した輸送システムを対象とする他のBBB運搬ベクターの例としては、インスリン、インスリン様成長因子(IGF-I、IGF-II)、アンジオテンシンII、心房性および脳ナトリウム利尿ペプチド(ANP、BNP)、インターロイキン(IL-1)、およびトランスフェリンなどの因子が挙げられる。これらの因子に結合する受容体に対するモノクローナル抗体もまたBBB運搬ベクターとして使用することができる。吸収を介したトランスサイトーシスに対する機序を対象とするBBB運搬ベクターとしては、陽イオン化LDL、ポリリシンと結合したアルブミンもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼ、陽イオン化アルブミン、または陽イオン化免疫グロブリンなどの陽イオン部分が挙げられる。ダイノルフィン類似体E-2078およびACTH類似体エビラチドなどの小さな塩基性オリゴペプチドもまた吸収を介したトランスサイトーシスを介して脳を横切ることができ、運搬ベクターとして可能性がある。
【0175】
他のBBB運搬ベクターは脳内へ栄養を輸送するためのシステムを標的とする。そのようなBBB運搬ベクターの例としては、ヘキソース部分、例えば、グルコース、モノカルボン酸、例えば乳酸、中性アミノ酸、例えばフェニルアラニン、アミン、例えばコリン、塩基性アミノ酸、例えばアルギニン、ヌクレオシド、例えばアデノシン、プリン塩基、例えばアデニン、および甲状腺ホルモン、例えばトリヨードチリジンが挙げられる。栄養トランスポーターの細胞外領域に対する抗体も運搬ベクターとして使用することができる。他の可能なベクターとしてはアンジオテンシンIIおよびANPが挙げられ、これらはBBB透過性の調節に関係する可能性がある。
【0176】
いくつかの場合では、治療用化合物を運搬ベクターに結びつける結合は脳内に輸送された後に開裂し、生物学的に活性な化合物が放出されてもよい。例示的なリンカーとしては、ジスルフィド結合、エステルを基本とする結合、チオエーテル結合、アミド結合、酸に不安定な結合、およびシッフ塩基結合が挙げられる。アビジン/ビオチンリンカー(この場合、アビジンはBBB薬物運搬ベクターに共有結合される)を使用してもよい。アビジン自体も薬物運搬ベクターとなることができる。
【0177】
治療用化合物を非経口投与以外により投与するために、化合物の不活性化を阻止する物質で化合物をコートする、またはそのような物質と共に化合物を投与する必要がありうる。例えば、治療用化合物は適当な担体、例えばリポソームまたは希釈剤に溶解して被験者に投与してもよい。薬学的に許容される希釈剤としては生理食塩水および緩衝水溶液が挙げられる。リポソームとしては水中油中水CGF乳剤および従来のリポソームが挙げられる(Strejanら、(1984)J.Neuroimmunol.7:27)。
【0178】
治療用化合物はまた、非経口、腹腔内、髄腔内、または大脳内投与してもよい。分散液はグリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中で調製することができる。保存および使用の通常の条件下では、これらの調製物は微生物の増殖を阻止するために保存薬を含んでもよい。
【0179】
注射可能な用途に適した薬学的組成物としては滅菌水溶液(この場合水溶性)または分散物、および注射可能な滅菌溶液または分散物の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、組成物は滅菌されなければならず、容易に注入することができる程度の流体でなければならない。製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および菌類などの微生物の汚染作用に逆らって保存されなければならない。
【0180】
ビヒクルは例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適した混合物、および植物油を含む溶媒または分散物媒質とすることができる。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより、分散物の場合必要な粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤を使用することにより、適した流動性を維持することができる。様々な抗菌および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより微生物の作用を阻止することができる。多くの場合において、等張薬、例えば、糖、塩化ナトリウム、またはマンニトールおよびソルビトールなどのポリアルコールを組成物中に含有させることが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物に含有させることにより達成することができる。
【0181】
滅菌注射液は、必要量の治療用化合物を、上記成分の1つまたは組み合わせを有する適当な溶媒中に組み入れ、必要とされる通り、その後に濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散物は治療用化合物を、基本の分散媒質および上記成分からの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に組み入れることにより調製される。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、活性成分(すなわち、治療用化合物)+前の滅菌濾過溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。
【0182】
治療用化合物は、例えば不活性希釈剤または同化可能な食用担体を共に経口投与することができる。治療用化合物および他の成分はハードまたはソフト殻ゼラチンカプセルに封入してもよく、圧縮して錠剤としてもよく、被験者の食事に直接組み込んでもよい。経口治療投与では、治療用化合物は賦形剤と組み合わせてもよく、内服可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形態で使用してもよい。組成物および調製物中の治療用化合物の割合は、もちろん変化させることができる。そのような治療上有効な組成物中の治療用化合物の量は適した投薬量が得られるようなものである。
【0183】
投与の容易さおよび投薬量の均一性のためには、単位投薬量形態で非経口組成物を製剤化すると特に好都合である。本明細書で使用されるように単位投薬量形態は、治療すべき被験者に対する単位投薬量として適した物理的に別個の単位をいう。各単位は、必要な薬学的ビヒクルと共に所望の治療的効果を生み出すように計算された予め決められた量の治療用化合物を含む。本発明の単位投薬量形態の詳細は、(a)治療用化合物の特有の性質および達成される特定の治療効果、および(b)被験者のアミロイド沈着を治療するためにそのような治療用化合物を合成する技術分野に特有の制限により決定され、それらに直接依存する。
【0184】
そのため、本発明は、エアロゾル、経口および非経口投与のための薬学的に許容される担体に溶解した、本明細書で記述した化学式の化合物、および薬学的に許容されるその塩を含む薬学的製剤を含む。また、本発明は、凍結乾燥され、戻すと静脈内、筋内または皮下注射などにより投与するための薬学的に許容される製剤を形成することができるそのような化合物、またはその塩を含む。
【0185】
本発明によれば、本明細書で記述した化学式の化合物、および薬学的に許容されるその塩は、経口でまたは固体として吸入により投与してもよく、または溶液、懸濁液もしくはエマルジョンとして筋内または静脈内投与してもよい。また、化合物もしくは塩はまた、リポソーム懸濁液として吸入により投与してもよく、静脈内もしくは筋内投与してもよい。
【0186】
吸入により、エアロゾルとして投与するのに適した薬学的製剤もまた提供される。これらの製剤は本明細書中の任意の化学式の所望の化合物、またはその塩の溶液もしくは懸濁液、またはその化合物もしくは塩の複数の固体粒子を含む。所望の製剤を小さなチャンバ内に入れ、噴霧させてもよい。噴霧は圧縮空気によりまたは超音波エネルギーにより化合物または塩を含む複数の液滴または固体粒子を形成することにより達成してもよい。液滴または固体粒子は約0.5μm〜約5μmの範囲の粒子サイズを有するべきである。固体粒子は、本明細書中の任意の化学式の固体化合物、または塩を微粉化などの当技術分野で周知の任意の適した様式において処理することにより得ることができる。最も好ましくは、固体粒子または滴のサイズは約1μm〜約2μmであると思われる。この点で、市販の噴霧器を使用しこの目的を達成することができる。
【0187】
好ましくは、エアロゾルとして投与するのに適した薬学的製剤が液体の形態である場合、製剤は、水を含む担体に溶解した、本明細書中で記述した任意の化学式の水溶性化合物、またはその塩を含む。噴霧される時に所望のサイズの範囲内の滴が形成されるように、製剤の表面張力を十分低下させる界面活性剤が存在してもよい。
【0188】
活性化合物を、被験者のアミロイド沈着を阻止するのに十分な治療的有効用量で投与する。「治療的有効」用量は好ましくは、未治療被験者に対し少なくとも約20%、または少なくとも約40%、またはさらには少なくとも約60%、または少なくとも約80%アミロイド沈着を阻止する。アルツハイマー病患者の場合、「治療的有効」用量により認知機能が安定化し、または認知機能のさらなる低下が予防される(すなわち、疾患の進行が予防、減速、または停止される)。したがって本発明は治療薬を提供する。「治療薬」または「薬物」は、生存しているヒトまたは非ヒト動物における特定の疾患または状態に対し有益な寛解または予防効果を有する薬剤を意味する。
【0189】
さらに、活性化合物を、アミロイド蛋白質、例えばAβ40またはAβ42の被験者における沈着を減少させるのに十分な治療的有効用量で投与する。治療的有効量は、未治療被験者に対し、例えば、少なくとも約15%、または少なくとも約40%、またはさらには少なくとも約60%、または少なくとも約80%アミロイド沈着を阻止する。
【0190】
別の態様では、活性化合物を、被験者の血漿またはCSF中のアミロイド蛋白質レベル、例えばAβ40またはAβ42を増大または増強させるのに十分な治療的有効用量で投与する。治療的有効量は、未治療被験者に対し、例えば、少なくとも約15%、または少なくとも約40%、またはさらには少なくとも約60%、または少なくとも約80%、濃度を増加させる。
【0191】
別の態様では、活性化合物を、被験者の血漿またはCSF中のアミロイド蛋白質レベル、例えばAβ40またはAβ42を減少または低下させるのに十分な治療的有効用量で投与する。治療的有効量は、未治療被験者に対し、例えば、少なくとも約15%、または少なくとも約40%、またはさらには少なくとも約60%、または少なくとも約80%、濃度を減少させる。
【0192】
さらに別の態様では、活性化合物は、ADAS-cog(アルツハイマー病評価スケール・認知サブスケール)試験のスコアを、未治療被験者に対し、例えば、少なくとも約1ポイント、少なくとも約2ポイント、少なくとも約3ポイント、少なくとも約4ポイント、少なくとも約5ポイント、少なくとも約10ポイント、少なくとも約12ポイント、少なくとも約15ポイント、または少なくとも約20ポイント改善するのに十分な治療的有効用量で投与する。(ADAS-cog;Rosen, et al., 1984, Am, J. Psychiatry 141:1356-1364)。
【0193】
アミロイド沈着を阻害する化合物の能力は、ヒトAPPを発現するトランスジェニックマウスまたはAβ沈着が見られる他の関連動物モデルなど、ヒトの疾患におけるアミロイド沈着を阻害する効果を予測することができる動物モデルシステムで評価することができる。同様にモデルシステムにおける認知障害を阻止または減少する化合物の能力は、ヒトにおける効果を示す可能性がある。また、化合物の能力は、例えば、WO 2003/017,994に例えば記載されている、ThT、CDまたはEMアッセイ法を含む原線維形成アッセイ法を用いて、インビトロでのアミロイド原線維形成を阻害する化合物の能力を調べることにより評価することができる。
【0194】
本発明はまた本明細書で開示した化学式の化合物のプロドラッグに関する。プロドラックはインビトロで活性型に変換される化合物である(例えば、R.B.Silverman、1992、「The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action」、Academic Press、Chp.8を参照のこと)。プロドラッグを使用して特別な化合物に対する体内分布(例えば、プロテアーゼの反応部位には典型的に入らない化合物を許容する)または薬物動態を変化させることができる。例えば、カルボン酸基は、例えばメチル基またはエチル基によりエステル化されエステルとなる。エステルが被験者に投与されると、エステルは酵素的にもしくは非酵素的に、還元的に、酸化的に、または加水分解により開裂し、陰イオン基が現れる。陰イオン基は開裂して中間化合物が現れ、その後に分解して活性化合物が得られる部分(例えば、アシルオキシメチルエステル)によりエステル化することができる。プロドラッグ部分はインビボでエステラーゼにより、または他の機序により代謝しカルボン酸としてもよい。
【0195】
プロドラッグおよびその使用の例は当技術分野ではよく知られている(例えば、Bergeら、(1977)「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.66:1-19を参照のこと)。プロドラッグは化合物の最終単離および精製中にインサイチューで、または遊離酸型の精製化合物を適した誘導体化剤と共に別個に反応させることにより調製することができる。カルボン酸は触媒の存在下、アルコールと処理することによりエステルに変換することができる。
【0196】
開裂可能なカルボン酸プロドラッグ部分の例としては、置換および未置換、分枝または無分枝低級アルキルエステル部分(例えば、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、シクロペンチルエステル、ヘキシルエステル、シクロヘキシルエステル)、低級アルケニルエステル、ジ低級アルキル-アミノ低級-アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール-低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、置換(たとえば、メチル、ハロ、またはメトキシ置換基により)アリールおよびアリール-低級アルキルエステル、アミド、低級-アルキルアミド、ジ低級アルキルアミド、およびヒドロキシアミドが挙げられる。
【0197】
本発明の化合物のある態様は、塩基性官能基、例えばアミノまたはアルキルアミノを含むことができ、このため、薬学的に許容される酸と共に薬学的に許容される塩を形成することができる。この点で「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の比較的毒性のない、無機および有機酸付加塩を示す。これらの塩は本発明の化合物の最終単離および精製中にインサイチューで、または遊離塩基型の本発明の精製化合物を適した有機または無機酸と共に別個に反応させ、およびこのようにして得られた塩を単離することにより調製することができる。
【0198】
代表的な塩としてはハロゲン化水素酸塩(臭化水素酸塩および塩酸塩を含む)、硫酸塩、二流酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナプチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸、2-ヒドロキシエチルスホン塩、およびラウリルスルホン酸塩などが挙げられる(例えば、Bergeら(1977)「Pharmaceutical Salts」、J.Phar.Sci.66:1-19を参照のこと)。
【0199】
他の場合では、本発明の化合物は1個または複数の酸性官能基を含んでもよく、このため薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの例において「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の化合物の比較的毒性のない、無機および有機塩基付加塩を示す。
【0200】
これらの塩は同様に、化合物の最終単離および精製中にインサイチューで、または遊離酸型の精製化合物を適した塩基、例えば薬学的に許容される金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩と共に、アンモニアと共に、または薬学的に許容される有機第一、第二もしくは第三アミンと共に別個に反応させることにより調製することができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩を形成すのに有益な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる。
【0201】
本発明のいくつかの選択した化合物を、下記表2に示す。特別な塩(例えば、塩酸塩)を示したが、遊離塩基または非塩形態ならびに他の薬学的に許容される塩も本発明の範囲内にある。
【0202】
当業者であれば、本明細書で記述した特定の態様および方法に対する多くの等価物を認識すると思われ、またはルーチンを超えない実験を用いて確認することができる。そのような等価物は、添付の請求の範囲に含まれるものである。本明細書で引用した全ての特許、特許出願、および文献は参照により全体が本明細書に明確に組み入れられる。本発明についてはさらに、下記実施例より説明するが、これらの実施例は制限するものと解釈すべきではない。
【0203】
実施例
本発明のアミジン化合物の合成は米国特許第

において記述されている。別の合成プロトコルはPCT特許出願公開番号WO2003/017,994号において見いだせる可能性がある。化合物の多くはSigma-Aldrich Co.(Milwaukee, USA)から購入してもよい。化合物はまた当技術分野で公知の技術により合成してもよい。
【0204】
一般に、本発明の化合物は、例えば、下記で記述されるような一般反応スキームで説明されている方法により、またはこれらの改良により、容易に入手可能な開始材料、試薬および従来の合成手順を用いて調製してもよい。これらの反応において、それ自体公知であるが、ここでは言及しない変形物もまた使用することができる。本明細書で記述した化合物の機能的および構造的等価物は同じ一般特性(例えば、抗アミロイド化合物として機能する)を有し、ここで、化合物の本質または有用性に悪影響を与えない置換基の1または複数の単純な変形物が製造される。
【0205】
本発明の化合物は、提供した特定の手順で説明されるように、本明細書で記述した合成スキームおよびプロトコルに従い、容易に調製される可能性がある。しかしながら、当業者であれば、本発明の化合物を形成するための他の合成経路を使用してもよいこと、下記は例示のためだけに示したものであり、本発明を制限するものではないことを理解すると考えられる。例えば、R.Larock, VCH Publishers(1989)による「Comprehensive Organic Transformations」を参照のこと。さらに、当技術分野では標準となっている様々な保護および脱保護戦略が使用されることは認識されるであろう(例えば、Geene and Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」を参照のこと)。関連分野の当業者であれば、任意の特別な保護基(例えば、アミンおよびカルボキシル保護基)の選択は、その後の反応条件に対する保護される部分の安定性に依存することを認識し、適した選択を理解すると思われる。
【0206】
広範な化学文献の下記サンプリングは、当業者の知識をさらに説明する: 「Chemistry of Amino Acids」 by J.P. Greenstein and M.Winitz, John Wiley & Sons,Inc., New York(1961);「Comprehensive Organic Transformations」by R.Larock, VCH Publishers(1989); T.D. Ocain, et al., J. Med. Chem. 31, 2193-99(1988); E.M. Gorden, et al., J. Med. Chem.31, 2199-10(1988);「Practice of Peptide Synthesis」by M. Bodansky and A. Bodanszky, Springer-Verlag, New York(1984);「Protective Groups in Organic Synthesis」by T. Greene and P. Wuts(1991);「Asymmetric Synthesis: Construction of Chiral Molecules Using Amino Acids」by G.M. Coppola and H.F. Schuster, John Wiley & Sons, Inc., New York(1987);「The Chemical Synthesis of Peptides」by J. Jones, Oxford University Press, New York(1991);および「Introduction of Peptide Chemistry」by P.D.Bailey, John Wiley & Sons, Inc., New York(1992)。
【0207】
試験化合物は商業的供給源から購入し、または合成し、および質量分析(「MS」)アッセイ法によりスクリーニングし、これにより、化合物のアミロイド蛋白質への結合能力に関するデータが得られた。
【0208】
試料は20%エタノール、200μMの試験化合物および20μMの可溶化Aβ40を含む水溶液として調製した。各試料のpH値は、0.1%水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより7.4(±0.2)に調整した。その後、溶液をエレクトロスプレーイオン化質量分析により、Waters ZQ 4000質量分析計を用いて分析した。試料は、調製後2時間以内に、直接注入により流速25μL/分で導入した。供給源温度を70℃に維持し、コーン電圧は全ての分析に対し20Vとした。データをMasslynx 3.5ソフトウエアを用いて処理した。MSアッセイ法により、化合物のAβに結合する能力に関するデータが得られ、一方、ThT、EMおよびCDアッセイ法により原線維形成の阻止に対するデータが得られる。
【0209】
本発明のいくつかの選択した化合物を下記表2に示す。特別な塩(例えば、塩酸塩)を示したが、遊離塩基および他の薬学的に許容される塩、ならびに非塩形態も本発明の範囲内にある。
表2
可溶性Aβアッセイ法における本発明のいくつかの化合物の構造および活性

表2-続き

表2-続き

表2-続き

示した各アッセイ法において、「+」=活性、「-」=不活性、「nd」=決定せず、である。
【0210】
本発明はまた、新規化合物およびその合成に関する。したがって、下記実施例は、それらの化合物のいくつかがどのように調製できるのかを説明するために示したものである。
【0211】
一般的局面
化学薬品はAldrichから購入した。当技術分野で周知の方法に従い化合物を識別し、特徴づけ、本明細書で示した化学構造はそれらの結果と一致する。分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)をシリカゲル60 F254プラスチック塗布プレート上で実施した。溶媒は特に記載がなければ、試薬グレードとした。1H(500MHz)および13C(125MHz)をVarian Inova 500で記録した。化学シフトは、100万分の1(ppm)のδスケールで報告する。赤外(IR)スペクトルを、Perkin-Elmer Spectra One分光計で実施した(NaClプレート上の純粋化合物)。
【0212】
化合物#145、#146、#150、および#151のための開始材料の調製

エタノール(25mL)に溶解した4-ブロモベンゾニトリル(1g、5.5mmol)の冷溶液(0℃)を乾燥HCl(g)で飽和させた。その後、混合物を室温で18時間撹拌し、その後、FT-IRにより、ニトリルの完全な消失が示された。溶液を濃縮乾燥させ、さらに真空で乾燥させた。このようにして得られたエチル4-ブロモベンズイミデートハイドロクロライドを化合物145、146、150および151の合成において使用した。
【0213】
化合物#145および146

エタノール(10mL)に溶解した1,7-ジアミノヘプタン(257mg、1.97mmol)の溶液をエチル4-ブロモベンズイミデートハイドロクロライド(1.21g、4.57mmol)のエタノール(5mL)懸濁液に添加した。混合物を室温で24時間撹拌した。混合物を濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により分離すると、化合物#145が蝋状固体として(29.2mg、0.054mmol、収率3%)、化合物#146が蝋状固体として(18.7mg、0.031mmol、収率1.6%)が得られた。
【0214】
化合物#147

80%エタノール(10mL)に溶解した9-(4-シアノフェノキシ)ヘプチルブロミド(181mg、0.5mmol)、炭酸ナトリウム(180mg、1.7mmol)およびヒドロキシルアミンハイドロクロライド(280mg、4mmol)の混合物を還流しながら2時間加熱した。混合物を室温まで冷却した。固体が沈澱し、これを濾過により除去した。濾液を減圧下濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製し、凍結乾燥させると、標題化合物が透明油として得られた(48.8mg、0.091mmol、収率18%)。
【0215】
化合物#148

段階1:DMF(8mL)に溶解した1,7-ジアミノペンタン(248mg、1.9mmol)およびトリエチルアミン(0.65mL、4.6mmol)の冷溶液(0℃)に、4-シアノベンゾイルクロリド(685mg、4.1mmol)を添加した。混合物を一晩中室温で撹拌し、その後水で希釈した。沈澱したベージュの固体を濾過により収集し、真空乾燥させると、対応するアミドが得られた(0.64g、1.65mmol、収率87%)。
【0216】

段階2:無水エタノール(12mL)および1,4-ジオキサン(16mL)の混合物に懸濁させた、1,7-ビス-(4-シアノベンズアミド)ヘプタン(389mg、1mmol)の懸濁液を0℃まで冷却し、乾燥HClで飽和させ、得られた混合物を4日間室温で撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。茶色がかった固体が得られた。エタノール(25mL)に溶解したこの固体および炭酸アンモニウム(2g、20mmol)の混合物を一晩中室温で撹拌した。その後、混合物を濾過した。濾液を濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製し、凍結乾燥させると、標題化合物が白色固体として得られた(79.9mg、0.141mmol、収率14%)。
【0217】
化合物#149

段階1:DMF(8mL)に溶解した1,9-ジアミノノナン(296mg、1.9mmol)およびトリエチルアミン(0.65mL、4.6mmol)の冷溶液(0℃)に、4-シアノベンゾイルクロリド(685mg、4.1mmol)を添加した。混合物を一晩中室温で撹拌し、その後、水で希釈した。沈澱したベージュの固体を濾過により収集し、真空乾燥させると、対応するアミドが得られた(0.64g、1.54mmol、収率81%)。
【0218】

段階2:無水エタノール(12mL)および1,4-ジオキサン(16mL)の混合物に懸濁させた、1,9-ビス-(4-シアノベンズアミド)ノナン(417mg、1mmol)の懸濁液を0℃まで冷却し、乾燥HClで飽和させ、得られた混合物を4日間室温で撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。茶色がかった固体が得られた。エタノール(25mL)に溶解したこの固体および炭酸アンモニウム(2g、20mmol)の混合物を一晩中室温で撹拌した。その後、混合物を濾過した。濾液を濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製し、凍結乾燥させると、標題化合物が白色固体として得られた(96.5mg、0.132mmol、収率16%)。
【0219】
化合物#150

炭酸ナトリウム(1.3g)を乾燥25mL丸底フラスコに入れた。1,5-ジアミノペンタン(0.65mmol、0.077mL)を添加し、続いてエチル4-ブロモベンズイミデートハイドロクロライド(465mg、1.7mmol)、最後にエタノール(10mL)を添加した。混合物を室温で22時間激しく撹拌し、その後、濾過して固体を除去した。固体をメタノール(20mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製し、凍結乾燥させると、標題化合物が白色固体として得られた(246.6mg、0.355mmol、収率54%)。
【0220】
化合物#151

炭酸ナトリウム(1.3g)を乾燥25mL丸底フラスコに入れた。1,9-ジアミノノナタン(0.68mmol、108mg)を添加し、続いてエチル4-ブロモベンズイミデートハイドロクロライド(500mg、1.89mmol)、最後にエタノール(14mL)を添加した。混合物を室温で22時間激しく撹拌し、その後、濾過して固体を除去した。固体をメタノール(20mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製し、凍結乾燥させると、標題化合物が白色固体として得られた(231.3mg、0.308mmol、収率47%)。
【0221】
化合物#152、#153および#154のための開始材料の調製

エタノール(30mL)に溶解した4-メトキシベンゾニトリル(1.29g、9.59mmol)の冷溶液(0℃)を乾燥HCl(g)で飽和させた。その後、混合物を室温で2日間撹拌し、その後、FT-IRにより、ニトリルの完全な消失が示された。溶液を濃縮乾燥させ、さらに真空で乾燥させた。このようにして得られたエチル4-メトキシベンズイミデートハイドロクロライドを化合物152、153および154の合成において使用した。
【0222】
化合物#152

炭酸ナトリウム(1.50g)を乾燥25mL丸底フラスコに入れた。1,7-ジアミノヘプタン(1mmol、159mg)を添加し、続いてエチル4-メトキシベンズイミデートハイドロクロライド(550mg、2.50mmol)、最後にエタノール(10mL)を添加した。混合物を室温で1日激しく撹拌し、その後、濾過して固体を除去した。固体をメタノール(20mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製し、凍結乾燥させると、標題化合物が白色固体として得られた(249.3mg、0.382mmol、収率38%)。
【0223】
化合物#153

炭酸ナトリウム(1.45g)を乾燥25mL丸底フラスコに入れた。ジエチレントリアミン(1mmol、0.090mL)を添加し、続いてエチル4-メトキシベンズイミデートハイドロクロライド(430mg、2.0mmol)、最後にエタノール(10mL)を添加した。混合物を室温で1日激しく撹拌し、その後、濾過して固体を除去した。固体をメタノール(20mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製し、凍結乾燥させると、標題化合物が白色固体として得られた(177.4mg、0.306mmol、収率31%)。
【0224】
化合物#154

炭酸ナトリウム(1.45g)を乾燥25mL丸底フラスコに入れた。1,5-ジアミノペンタン(0.84mmol、0.10mL)を添加し、続いてエチル4-メトキシベンズイミデートハイドロクロライド(400mg、2.23mmol)、最後にエタノール(10mL)を添加した。混合物を室温で1日激しく撹拌し、その後、濾過して固体を除去した。固体をメタノール(20mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製した。調製用HPLCによる2度の精製後、依然として微量の不純物が含まれていた。生成物を0.5mLの2N HClのアセトン溶液(4.5mL)から再結晶化させた。-20℃で結晶が徐々に形成した。結晶を濾過により収集し、アセトンですすぎ、真空乾燥させた。標題化合物が白色固体として得られた(37.6mg、0.085mmol、収率10%)。
【0225】
化合物#155

段階1:DMF(5.5mL)に溶解したジエチレントリアミン(0.110mL、1.0mmol)およびトリエチルアミン(0.41mL、3.0mmol)の冷溶液(0℃)に、4-シアノベンゾイルクロリド(365mg、2.2mmol)を添加した。混合物を一晩中4時間撹拌し、その後、水(40mL)で希釈した。水層を酢酸エチル(4×25mL)で抽出した。有機層を合わせ、水(2×10mL)、塩類溶液(1×15mL)で洗浄し、その後、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を真空乾固させると、化合物が黄褐色固体として得られた(296.7mg、0.605mmol、収率61%)。
【0226】

段階2:無水エタノール(10mL)および1,4-ジオキサン(5mL)の混合物に懸濁させた、粗トリス-ニトリル(296.7mg、0.605mmol)の懸濁液を0℃まで冷却し、乾燥HClで飽和させ、得られた混合物を1日室温で撹拌した。溶液の体積を約4mLまで減少させ、エーテルを添加した。濾過により粗アミデートを収集し、真空乾燥させた。エタノール(10mL)に溶解したこの固体および炭酸アンモニウム(1.20g、12.0mmol)の混合物を一晩中室温で撹拌した。その後、混合物を濾過し、濾液を濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製した。調製用HPLC画分を濃縮すると、白色固体が形成した。濾過により固体を収集し、真空で乾燥させた。標題化合物が白色固体として得られた(129.1mg、0.146mmol、収率24%)。
【0227】
化合物#156

1,5-ビス(4-ニトロフェノキシ)ペンタン(176mg、0.508mmol)をH2(55psi)下、酸化白金(IV)(14mg)を用いて、エタノール(3mL)および酢酸エチル(3mL)の混合物中、4時間還元させた。混合物をセライト上で濾過し、パッドをメタノール(5mL)で洗浄した。濾液を減圧下で濃縮乾燥させ、残渣を真空で30分間乾燥させた。その後、残渣を1,4-ジオキサン(5mL)およびジクロロメタン(1.5mL)の混合物に溶解した。N-メチルモルホリン(0.13mL、1.13mmol)を添加し、続いて1-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)-3,5-ジメチル-1H-ピラゾールハイドロブロマイド(270mg、1.08mmol)を添加した。懸濁液を1日室温で撹拌した。ジクロロメタンを蒸発させ、混合物を60℃の油浴で2日間加熱した。反応を質量分析によりモニタした。固体を濾過により除去し、濾液を2N HCl(2mL)で酸性化し、その後減圧下で濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製した。標題化合物が油として単離された(25.1mg、0.043mmol、収率8.5%)。
【0228】
化合物#158

段階1:DMF(9.0mL)に溶解した1,9-ジアミノノナン(480mg、3.0mmol)およびトリエチルアミン(2.05mL、14.5mmol)の冷溶液(0℃)に、4-シアノベンゼンスルホニルクロリド(1.25g、6.3mmol)を添加した。混合物を一晩中4時間撹拌し、その後、水(40mL)で希釈した。沈澱したベージュの固体を濾過により収集し、真空乾燥させると、対応するスルホンアミドが得られた(1.28g、2.62mmol、収率87%)。
【0229】

段階2:無水エタノール(10.0mL)および1,4-ジオキサン(4.0mL)の混合物に懸濁させた、1,9-ビス-(4-シアノベンズスルホンアミドアミド)ノナン(318mg、0.651mmol)の懸濁液を0℃まで冷却し、乾燥HClで飽和させ、得られた混合物を24時間室温で撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。黄褐色固体が得られた。エタノール(10mL)に溶解したこの固体および酢酸アンモニウム(1.05g、13.6mmol)の混合物を24時間室温で撹拌した。混合物がゲルに変わった。メタノール(10mL)を添加すると溶液となった。濃HCl(1.5mL)を添加するといくらかの塩化アンモニウムが沈澱した。混合物を濾過し、その後濾液を濃縮乾燥させ、真空で乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製し、凍結乾燥させると、標題化合物が白色固体として得られた(205.2mg、0.273mmol、収率42%)。
【0230】
化合物#159

段階1:DMF(6mL)に溶解した1,5-ジアミノペンタン(0.35mL、3mmol)およびトリエチルアミン(0.49mL、3.5mmol)の冷溶液(0℃)に、3-シアノベンゾイルクロリド(550mg、3.3mmol)を添加した。混合物を一晩中室温で撹拌し、その後、水(40mL)で希釈した。沈澱したベージュの固体を濾過により収集し、真空乾燥させると、対応するアミド、500mg、1.39mmol、収率90%が得られた。
【0231】

段階2:無水エタノール(10mL)および1,4-ジオキサン(10mL)の混合物に懸濁させた、1,5-ビス-(3-シアノベンズアミド)ペンタン(480mg、1.33mmol)の懸濁液を0℃まで冷却し、乾燥HClで飽和させ、得られた混合物を1日室温で撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。茶色がかった固体が得られた。エタノール(20mL)に溶解したこの固体および炭酸アンモニウム(2.55g、20mmol)ならびに4Åのモレキュラーシーブ(175mg)の混合物を一晩中室温で撹拌した。その後、混合物を濾過し、固体をメタノールですすいだ(2×10mL)。TFA(1.5mL)を添加し、濾液を濃縮乾燥させた。粗生成物を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製し、凍結乾燥させると、標題化合物が白色固体、180.2mg、0.289mmol、収率25%、として得られた。
【0232】
化合物#160

段階1:DMF(9mL)に溶解した1,4-ジアミノブタン(0.3mL、3mmol)およびトリエチルアミン(0.49mL、3.5mmol)の冷溶液(0℃)に、4-シアノベンゾイルクロリド(550mg、3.3mmol)を添加した。混合物を一晩中室温で撹拌し、その後、水(20mL)で希釈した。沈澱したベージュの固体を濾過により収集し、真空乾燥させると、対応するアミド、0.48g、1.39mmol、収率90%、が得られた。
【0233】

段階2:無水エタノール(10mL)および1,4-ジオキサン(10mL)の混合物に懸濁させた、1,4-ビス-(4-シアノベンズアミド)ブタン(460mg、1.33mmol)の懸濁液を0℃まで冷却し、乾燥HClで飽和させ、得られた混合物を1週間室温で、HClで3飽和させて撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。茶色がかった固体が得られた。エタノール(20mL)に溶解したこの固体および炭酸アンモニウム(2.55g、20mmol)ならびに4Åのモレキュラーシーブ(175mg)の混合物を一晩中室温で撹拌した。その後、混合物を濃縮乾燥させた。粗生成物を水に再懸濁させ、懸濁液を遠心分離にかけた。上清を調製用RP-HPLC(Vydac C18、215nm、50mL/分、0.1% TFAを含むH2Oに溶解した0%〜90%のMeCN)により精製し、凍結乾燥させると、標題化合物が白色固体、191mg、0.307mmol、収率23%、として得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記からなる群より選択される、治療的有効量の化合物を被験者に投与する段階を含む、被験者においてアミロイド関連疾患を治療または予防する方法:
N-(6-アミノヘプチル)-4-ブロモベンズアミジン(化合物#145)、
4-ブロモ-N-{7-[(4-ブロモベンズイミドイル)-アミノ]-ヘプチル}-ベンズアミド(化合物#146)、
N-ヒドロキシ-4-(9-ヒドロキシアミノノニルオキシ)-ベンズアミジン(化合物#147)、
N-[7-(4-カルバミミドイルベンゾイルアミノ)-ヘプチル]-テレフタルアミド酸エチルエステル(化合物#148)、
N-[9-(4-カルバミミドイル-ベンゾイルアミノ)-ノニル]-テレフタルアミド酸エチルエステル(化合物#149)、
4,4'-(ペンタメチレンジアミジノ)ジ(p-ブロモベンゼン)(化合物#150)、
4,4'-(ノナメチレンジアミジノ)ジ(p-ブロモベンゼン)(化合物#151)、
4,4'-(ノナメチレンジアミジノ)ジ(p-メトキシベンゼン)(化合物#152)、
4-メトキシ-N-{2-[2-(4-メトキシフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾール-1-イル]-エチル}-ベンズアミジン(化合物#153)、
4,4'-(ペンタメチレンジアミジノ)ジ(p-メトキシベンゼン)(化合物#154)、
2,2'-(p-アミジノフェニルカルボキサミド)-N,N-ジエチル-p-アミジノベンズアミド(化合物#155)、
{4-[5-(p-アミノフェノキシ)-ペンチルオキシ]-フェニル}-(4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-イル)-アミン(化合物#156)、
4,4'-(ノナメチレンジスルファミル)ジ(アミジノベンゼン)(化合物#158)、
3,3'-(ペンタメチレンジアミノカルボニル)ジ(アミジノベンゼン)(化合物#159)、
4,4'-(テトラメチレンジアミノカルボニル)ジ(アミジノベンゼン)(化合物#160)、およびそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項2】
被験者がアミロイド関連疾患の治療または予防を必要とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アミロイド関連疾患がIAPPと関連する、請求項1〜2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
アミロイド関連疾患がβ-アミロイドと関連する、請求項1〜2のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
アミロイド関連疾患が、アルツハイマー病、ダウン症候群、II型糖尿病、軽度認識障害、加齢黄斑変性症、または脳アミロイド血管症である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
化合物が経口投与されるように適合される、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
被験者がヒトである、請求項2記載の方法。
【請求項8】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項9】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項10】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項11】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項12】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項13】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項14】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項15】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項16】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項17】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項18】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項19】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項20】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項21】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項22】
下記構造を有する化合物、および薬学的に許容されるその塩。

【請求項23】
請求項8〜22のいずれか一項記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項24】
薬学的に許容されるビヒクルをさらに含む、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
治療的有効量の、請求項8〜22のいずれか一項記載の化合物を含むアミロイド関連疾患の治療または予防のための薬学的組成物。
【請求項26】
アミロイド関連疾患が、アルツハイマー病、ダウン症候群、II型糖尿病、軽度認識障害、加齢黄斑変性症、または脳アミロイド血管症である、請求項25記載の組成物。

【公表番号】特表2007−518786(P2007−518786A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550316(P2006−550316)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000617
【国際公開番号】WO2005/079780
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506253229)ニューロケム (インターナショナル) リミテッド (1)
【Fターム(参考)】