説明

アミロイド線維伸長ペプチド

【課題】アミロイド線維を形成しうる危険性やその「種」となるアミロイド線維核、あるいはその元になるタンパク質分子種の量を見積もる診断薬を開発し、早期にアミロイド病に罹病していること、あるいは罹病する可能性があることを判断、アミロイド病の予防薬や治療薬の開発。
【解決手段】ヒトのαシヌクレイン蛋白のアミロイド線維コアー部位ペプチドである76番目から94番目〜96番目に相当するペプチド、それらの94番目のPheが他のアミノ酸に置換されたペプチド、ならびにそれらのアミロイド病の検査、予防または治療における使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイド線維伸長ペプチド、アミロイド病の検査におけるその使用、ならびにアミロイド病の予防または治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医学の進歩によって人の寿命が延び、世界的に高齢化社会に向かっている。ここで、新たな病気として、人の尊厳や生活の質に深く関わっている認知症をはじめとする脳神経変性病が生じ、社会的な問題となっている。アルツハイマー病やパーキンソン病、プリオン病(狂牛病)をはじめとする脳神経変性病は、特殊なタンパク質(それぞれ、Aβ1−42、αシヌクレイン、プリオン)の構造が変化して、β構造に富んだアミロイド線維という不溶性の物質を細胞内外で長い年月をかけて蓄積することによって発症するとされている。
【0003】
また、脳神経変性病に限らず、体の様々な臓器や血液中においても、ある種のタンパク質が高濃度で長期間存在するとアミロイド線維を形成し、臓器や組織に沈着することで病気が発症する。これらの病気はアミロイド病(アミロイドーシス)と呼ばれており、20種類以上の病気が知られている(非特許文献1)。例えば、β2ミクログロブリンが血中に高濃度で存在すると関節などにアミロイド線維が蓄積して痛みを生じる。β2ミクログロブリンは人工透析を行っている患者の血液中に高濃度に蓄積されることが知られており、日本でも数十万人がそのアミロイド病の発症予備軍となりうる。さらに、膵臓や肝臓などに蓄積して全身性アミロイドーシスを引き起こすインスリンやアミリン、リゾチームなどもアミロイド線維を形成することが知られている。
【0004】
アミロイド線維の形成は、タンパク質の安定性とも大きく関係しており、コンフォーメーション変化が起こり、アミロイド線維の種(シード)に相当するものが先ず形成され、その後、その「種」に次々と構造変化したタンパク質が結合して伸長してアミロイド線維が形成される、いわゆる「核形成−核依存的伸長」の機構で起こることが分かっている。
【0005】
高齢化社会の中で多くの人が質の高い生活を享受するためには、神経変性病をはじめとするアミロイド病の克服が大きなポイントとなる。このためには、アミロイド病を早期に診断する技術を開発する必要がある。さらに、アミロイド病の予防薬や治療薬の開発も必要となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G.T.Westermark and P.Westermark, Amyloid, Vol.7, 19 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アミロイド線維を形成しうる危険性やその「種」となるアミロイド線維核、あるいはその元になるタンパク質分子種の量を見積もる診断薬を開発し、早期にアミロイド病に罹病していること、あるいは罹病する可能性があることを判断することが必要である。そして、アミロイド病の予防薬や治療薬の開発も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決せんと鋭意研究を重ね、αシヌクレインの特定の部分ペプチドが、αシヌクレイン以外の様々なアミロイド性タンパク質の「種」に対して伸長する能力を有することを見出した。さらに本発明者らは、これらのペプチドの特定の変異体が、自らはアミロイド核形成を起こさないが、アミロイド核が存在する場合にはアミロイド線維伸長反応を起こすことを見出した。本発明者らは、これらの知見から本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下のものに関する。
(1)下記(a)〜(d):
(a)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Xaa(配列番号:1)、
(b)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Xaa−Val(配列番号:2)、
(c)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Xaa−Val−Lys(配列番号:3)、および
(d)(a)〜(c)のペプチドにおいて1個ないし数個のアミノ酸が付加、欠失または置換されているペプチド
[(a)〜(c)においてXaaはPhe以外のいずれかのアミノ酸を意味し、(d)に記載のペプチドにおいてXaaは保持されている]
からなる群より選択されるペプチド。
(2)XaaがGly、Ala、Ser、Met、His、LeuまたはArgである、(1)記載のペプチド。
(3)XaaがGlyである(2)記載のペプチド。
(4)下記(e)〜(g):
(e)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Gly(配列番号:4)、
(f)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Gly−Val(配列番号:5)、および
(g)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Gly−Val−Lys(配列番号:6)
からなる群より選択される(3)記載のペプチド。
(5)標識されている(1)〜(4)のいずれかに記載のペプチド。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のペプチドを含む、アミロイド病の検査用組成物。
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載のペプチドを構成成分として含む、アミロイド病の検査用キット。
(8)対象から得た試料に(1)〜(5)のいずれかに記載のペプチドを接触させ、次いで、アミロイド線維の生成の有無を調べることを特徴とする、アミロイド病の検査方法であって、アミロイド線維が生成した場合に、対象がアミロイド病に罹患しているか、罹患するおそれがあると判定する方法。
(9)下記(h)〜(m):
(h)(1)請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチド、
(i)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe(配列番号:7)、
(j)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val(配列番号:8)、
(k)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val−Lys(配列番号:9)、
(l)Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val−Lys(配列番号:10)、および
(m)(i)〜(k)のペプチドにおいて1個ないし数個のアミノ酸が付加、欠失または置換されているペプチドからなる群より選択されるペプチドを含む、アミロイド病の予防または治療用医薬組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、広範囲のアミロイド病の早期診断が可能な検査方法、予防および治療が可能となる。該検査方法は大がかりな設備を必要とせず、しかも比較的短時間で済むという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はαシヌクレインの全アミノ酸配列を示す。アミロイド線維核領域(コアー)領域を黒くしている。
【図2】図2は合成核部位ペプチドによるアミロイド線維形成を示す。(a)はThioT結合測定によるアミロイド線維形成の経時変化を示す。0.5mMペプチド、25mM Tris−HCl pH7.5緩衝液、150mM NaCl中、37℃でインキュベートした。黒丸はSP61−89、白丸はSP76−89、黒四角はSP81−96、白四角はSP76−96を用いた場合である。(b)はSP81−96のアミロイド線維形成後のTEMによるイメージ、(c)はSP76−96のアミロイド線維形成後のTEMによるイメージである。
【図3】核部位ペプチドのアミロイド線維形成能における94番目のフェニルアラニン残基の役割を示す。(a)はThioT結合測定によるアミロイド線維形成の経時変化を示す。黒丸はSP76−94、黒四角はSP76−93、白丸はSP76−91、白四角はSP76−94F94Gを用いた場合である。(b)はSP76−94の線維形成後のAFMによる観測イメージである。スケールバーは200nmである。(c)はSP76−94の線維形成実験前後のCDスペクトル測定結果である。白丸は0時間、黒丸は350時間後である。
【図4】図4はSP76−94F94Gの線維伸長反応を示す。(a)はThioT結合測定によるアミロイド線維形成の経時変化を示す。SP76−94F94Gのみの場合をグレーの棒で、10%(v/v)のSP76−94アミロイド線維をシードとして添加した場合を黒の棒で示す。(b)はシードを添加したサンプルの336時間後のTEM観測イメージである。スケールバーは200nmである。
【図5】図5はSP76−96F94Gの各種アミロイド線維核(シード)に対する伸長反応の様子をThjoT結合測定による経時変化にて示す。1mg/ml SP76−96F94G、1%(v/v)シード添加、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)、300mM NaCl、20mM ThioT、120min−1振盪、37℃。
【図6】図6は蛍光顕微鏡を用いたSP76−96F94Gの線維伸長反応の直接観察結果を示す。(a)はαシヌクレイン線維シードのみを添加したコントロール、(b)はαシヌクレイン線維シードを用いて48時間後、(c)はGroESシードを用いて48時間後、(d)はインシュリン線維シードを用いての20時間後(e)はリゾチーム線維シードを用いての20時間後のSP76−96F94G線維伸長の様子である。図中の白いバーはいずれも10μmを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、パーキンソン病の原因タンパク質の1つであるαシヌクレインのアミロイド線維のアミロイド核部分を同定した。さらに本発明者らは、同定したアミロイド核部分の部分ペプチドおよび変異ペプチドについても検討を重ねた結果、自身ではアミロイド線維形成は起こさないが、アミロイド核が「種」として存在する場合に限り、それを足がかりにして伸長してアミロイド線維を形成するという、従来になかったユニークな性質を有するペプチドを見出した(実施例参照)。すでに本発明者らは、αシヌクレイン全長のタンパク質が異種タンパク質のアミロイド線維核に対しても伸長することを見出しているが(H. Yagi, E. Kusaka, K. Hongo, T. Mizobata, Y. Kawata, J.Biol. Chem. 280, 38609-38616, 2005)、上記のようなユニークな性質を持ったペプチドが見出されたのは今回が初めてである。
【0013】
上記のユニークな性質を有する本発明の新規ペプチドの具体例は下記のものである:
(a)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Xaa(αシヌクレインの76番目のアミノ酸から94番目のアミノ酸までに相当するペプチドにおいて94番目のフェニルアラニンを他のアミノ酸に置換したペプチド、配列番号:1)、
(b)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Xaa−Val(αシヌクレインの76番目のアミノ酸から95番目のアミノ酸までに相当するペプチドにおいて94番目のフェニルアラニンを他のアミノ酸に置換したペプチド、配列番号:2)、
(c)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Xaa−Val−Lys(αシヌクレインの76番目のアミノ酸から96番目のアミノ酸までに相当するペプチドにおいて94番目のフェニルアラニンを他のアミノ酸に置換したペプチド、配列番号:3)、および
(d)(a)〜(c)のペプチドにおいて1個ないし数個のアミノ酸が付加、欠失または置換されているペプチド。
【0014】
上記(d)のような変異ペプチドも本発明に包含される。ただし、いずれのペプチドにおいても、上記性質を有するためには94番目のフェニルアラニンがフェニルアラニン以外のアミノ酸(Xaa)により置換されていることが必要である。ペプチドが上記性質を有するために好ましいXaaとしてはGly、Ala、Ser、Met、His、LeuあるいはArgなどが挙げられ、より好ましいXaaとしてはグリシンが挙げられる。
【0015】
したがって、上記のユニークな性質が特に顕著なペプチドとしては:
(e)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Gly(αシヌクレインの76番目のアミノ酸から94番目のアミノ酸までに相当するペプチドにおいて94番目のフェニルアラニンをグリシンに置換したペプチド、SP76−94F94G、配列番号:4)、
(f)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Gly−Val(αシヌクレインの76番目のアミノ酸から95番目のアミノ酸までに相当するペプチドにおいて94番目のフェニルアラニンをグリシンに置換したペプチド、SP76−95F94G、配列番号:5)、および
(g)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Gly−Val−Lys(αシヌクレインの76番目のアミノ酸から96番目のアミノ酸までに相当するペプチドにおいて94番目のフェニルアラニンをグリシンに置換したペプチド、SP76−96F94G、配列番号:6)
が挙げられる。
【0016】
上で説明したペプチドは修飾されていてもかまわない。修飾の例としては、ペプチドの側鎖官能基を誘導体化すること等が挙げられる。かかる誘導体化は当業者によく知られている。例えば、アラニンの水酸基を修飾してもよく、グルタミン酸のγ−カルボキシル基を修飾してもよい。また、上記ペプチドにおいて1またはそれ以上のアミノ酸残基を非天然または人工アミノ酸に変更してもよい。ペプチド中の変異、修飾あるいは誘導体化の部位は、上記性質を損なわないかぎり、ペプチドのいずれの部位にあってもよい。例えば、ペプチドの内部残基が変異(例えば、他のアミノ酸で置換、欠失、付加等)、修飾あるいは誘導体化されていてもよく、ペプチドのC末端またはN末端において変異、修飾あるいは誘導体化されていてもよい。ただし、94番目のフェニルアラニンがフェニルアラニン以外のアミノ酸により置換されていることが必要である。
【0017】
ここで、本明細書におけるペプチドの標記方法について説明する。本発明のペプチドのアミノ酸残基番号は図1に示αシヌクレインのアミン酸配列の番号と一致する。本明細書において、アミノ酸はカナ標記のほか、当業者によく知られた3文字表記または1文字表記で示される。本明細書において、αシヌクレインのX番目のアミノ酸からY番目のアミノ酸からなる部分ペプチドを、「SPX−Y」と標記することがある。例えば、図1のαシヌクレインのアミノ酸76からアミノ酸96までからなる本発明のペプチドをSP76−96と標記することがある。本明細書において、本発明のペプチド中のアミノ酸残基を特定するに際し、αシヌクレインのZ番目のアミノ酸に相当するものである場合には、「Z番目のアミノ酸」あるいは「アミノ酸Z」と標記することがある。例えば、「94番目のPhe」あるいは「Phe94」という場合には、図1の94番目のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基をいう。さらに、本発明のペプチドがαシヌクレインのアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む場合には、その位置を示す数字の前に本来のアミノ酸、後に異なるアミノ酸を表示する。例えば、本発明のペプチドSP76−96の94番目のPheがGlyに置き換わっているペプチドを、「SP76−96F94G」と標記することがある。
【0018】
上で説明した本発明のペプチドは、自身ではアミロイド線維形成は起こさないが、アミロイド核が「種」として存在する場合に限り、それを足がかりにして伸長してアミロイド線維を形成するという極めてユニークな性質を有する。これらのペプチドは、同種タンパク質であるαシヌクレインだけでなく、他のアミロイド性タンパク質の「種」に対しても伸長する能力を有する。したがって、これらのペプチドを用いて、アミロイド病の発症前のアミロイド線維核や前駆体分子種の存在を確認することができる。すなわち、すなわち、上で説明したペプチドは、検体中にアミロイド線維形成の「種」があるかどうかを判断する試薬として利用価値がある。そして、これらのペプチドを用いることによって、検体中の「種」の存在を調べ、アミロイド病の発症を早期に診断することができる。アミロイド病(アミロイドーシス)は、アミロイド線維が臓器や組織に沈着することで発症する病気であり、パーキンソン病やアルツハイマー病などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、本明細書において、「アミロイド核」、「アミロイド線維核」、「種」、「シード」は同義である。また、特に断らないかぎり、本明細書で用いられる他の用語の意味は当該分野で一般的に認識されている意味に解される。
【0019】
したがって、本発明は、上で説明したペプチドを含む、アミロイド病の検査用組成物および検査用キットを提供する。さらに本発明は、対象から得た試料に上で説明したペプチドを接触させ、次いで、アミロイド線維の生成の有無を調べることを特徴とする、アミロイド病の検査方法を提供する。該方法において、アミロイド線維が生成した場合に、対象がアミロイド病に罹患しているか、罹患するおそれがあると判定する。上記検査方法、検査キットおよび検査方法においてアミロイド線維の生成を確認する手段・方法としては、以下のようなものが挙げられるが、限定するものではない。
【0020】
先ず、対象から試料を得る。試料採取は、アミロイド線維が存在あるいは生成する可能性のある身体部位から得ることができる。対象から得た試料に上で説明したペプチドを接触させた後、一定時間後(例えば、数時間〜数百時間後)に、アミロイド線維に特異的に結合する色素(例えば、チオフラビンTなど)と混合し、色素の結合を調べることによりアミロイド線維の生成を確認する。色素は、試料とペプチドとの接触時に添加しておいてもよく、色素添加のタイミングは特に限定されない。アミロイド線維の生成は、蛍光を測定すること、光学顕微鏡にて観察すること、あるいは透過型電子顕微鏡または原子間力顕微鏡などを用いること、円偏光二色性を調べることなどにより行うことができるが、このような手段・方法に限定されず、当業者は、他の手段・方法を適用してアミロイド線維の生成を確認することができる。
【0021】
具体的には、上記ペプチド約0.1mM以上,例えば約0.5mM(約1mg/ml)、好ましくは約1.5mM(約3mg/ml)、より好ましくは約3mM(約6mg/ml)を、アミロイド線維伸長反応を調べたい試料に添加することが望ましい。伸長反応時間は約25〜37℃で約24時間、好ましくは48時間、より好ましくは200時間またはそれ以上行うことが望ましい。好ましくは、伸長反応は中性付近の緩衝液中で振盪しながら行う。反応系にNaClなどの塩類を適当濃度、例えば数十mM〜約1M程度添加してアミロイド線維伸長反応を行ってもよい。色素が光感受性である場合など、必要に応じてアミロイド線維伸長反応中は適宜遮光してもよい。
【0022】
上記検査方法、検査キットおよび検査方法において、上で説明したペプチドが検出可能な標識にて標識されていてもよい。標識は、発色基、蛍光基、吸光基、例えば、Cy5、ダンシル基、フルオレセイン基、ナフタレンスルホン酸基、ナフチル基、ピレン基など、あるいは放射性基などであってもよいが、これらに限定されない。
【0023】
アミロイド病はアミロイド線維そのものに毒性があるのではなく、アミロイド線維形成を起こす過程の凝集体やアミロイド核、オリゴマー分子種などが毒性の原因であるとも考えられている(I.C. Martins, I. Kuperstein, H. Wilkinson, E. Maes, M. Vanbrabant, W. Jonckheere, P.V. Gelder, D. Hartmann, R. D'Hooge, B. De Strooper, J. Schymkowitz, F. Rousseau, EMBO Journal, 27, 224-233, 2008)。したがって、むしろ、できるだけ素早いアミロイド線維を形成させて無毒化してしまうことがアミロイド病の予防や治療につながると考えられる。したがって、「種」が存在しさえすればそれを足場としてアミロイド線維を形成するペプチドを、アミロイド病の予防または治療に用いることができる。
【0024】
したがって、本発明は、下記のペプチドからなる群より選択されるペプチドを含む、アミロイド病の予防または治療用医薬組成物を提供する:
上記(a)〜(h)のいずれかに記載のペプチド、
(i)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe(SP76−94、配列番号:7)、
(j)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val(SP76−95、配列番号:8)、
(k)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val−Lys(SP76−96、配列番号:9)、
(l)Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val−Lys(SP81−96、配列番号:10)、および
(m)(i)〜(k)のペプチドにおいて1個ないし数個のアミノ酸が付加、欠失または置換されているペプチド(ただし、94番目のPheは保持されている)。
【0025】
(i)〜(m)のペプチドは修飾されていてもかまわない。修飾の例としては、ペプチドの側鎖官能基を誘導体化することが挙げられる。かかる誘導体化は当業者によく知られている。例えば、アラニンの水酸基を修飾してもよく、グルタミン酸のγ−カルボキシル基を修飾してもよい。また、上記ペプチドにおいて1またはそれ以上のアミノ酸残基を非天然または人工アミノ酸としてもよい。ペプチド中の変異、修飾あるいは誘導体化の部位は、上記性質を損なわないかぎり、ペプチドのいずれの部位にあってもよい。例えば、ペプチドの内部残基が変異(例えば、他のアミノ酸で置換、欠失、付加等)、修飾あるいは誘導体化されていてもよく、ペプチドのC末端またはN末端において変異、修飾あるいは誘導体化されていてもよい。
【0026】
本発明のアミロイド病の予防または治療用医薬組成物は、公知の方法にて製造されうる。また、本発明のアミロイド病の予防または治療用医薬組成物の剤形は特に限定されず、例えば、溶液状、乾燥固体状などであってもよく、好ましい剤形は溶液状である。これらの有効成分たるペプチドの投与量は、1〜10mg/kgなどであってもよく、好ましい投与量は10mg/kgである。これらの条件は例示であり、医師により適宜選択、変更されうる。
【0027】
本発明のペプチドおよびそれらの変異ペプチドは一般的な固相法(Fmoc法やBoc法など)によって化学合成することができ、遺伝子組み換え法によっても得ることができ、あるいはそれらを組み合わせた方法によっても得ることができる。これらの方法は当業者によく知られている。
【0028】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、実施例はあくまでも例示説明であり、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【実施例1】
【0029】
実施例1:本発明のペプチドの同定
(1)αシヌクレインアミロイド線維核部位の同定
H. Yagi, A. Sato, A. Yoshida, Y. Hattori, M. Hara, J. Shimamura, I. Sakane, K. Hongo, T. Mizobata, Y. Kawata, J. Mol. Biol. 377, 1593-1606, 2008に記載の方法に準じて行った。すなわち、H. Yagi, E. Kusaka, K. Hongo, T. Mizobata, Y. Kawata, J.Biol. Chem. 280, 38609-38616, 2005に示す方法でαシヌクレインのアミロイド線維を作成し、その後、Lysを特異的に認識してペプチド鎖を切断するAchromobactr Lyticus protease I (APIと略称)と、疎水性アミノ酸を認識してペプチド鎖を切断するproteinase K (PKと略称)で別々に消化した。残存する不溶性部分を7.5Mグアニジンに可溶化させた後、逆相HPLCで単離生成し、アミノ酸シークエンサーと質量分析計にて分析した。参考のため、αシヌクレインの全アミノ酸配列を図1に示した。得られた消化ペプチドは、それぞれ、
ARI消化ペプチド:Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val−Lys(SP81−96、配列番号:10)、および
PK消化ペプチド:Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala(SP76−89、配列番号:11)
であった。
【0030】
(2)同定した核部位ペプチドの性質検討
上で同定した2つの核部位ペプチドのほか、これら2つのペプチドの重なり部分であるThr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala(SP81−89、配列番号:12)や、これら2つの同定ペプチドの領域すべてに渡ったペプチドAla−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val−Lys(SP76−96、配列番号:9)など、様々な種類のペプチドを化学合成し、それらのアミロイド線維形成の特徴を調べた(表1)。アミロイド線維形成は、それぞれ終濃度0.5mMのペプチドを150mM NaClを含む25mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)に溶解させ、37℃で毎分170回転(170min−1)の振盪速度で振盪することで行った。適宜サンプルを取り出し、PBS−saline緩衝液中25μM チオフラビンT(ThioT)と混合し、励起波長440nm、蛍光観測波長480nmで測定した。さらに、アミロイド線維は透過型電子顕微鏡(TEM)または原子間力顕微鏡(AFM)、円偏光二色性(CD)によっても確認した。その結果、C末端領域を含むSP81−96とSP76−96が自発的にアミロイド線維を形成することが分かった(図2)。
【0031】
次に、これらのペプチドのC末端領域のそのアミノ酸がアミロイド線維形成に重要であるかを調べるために、C末端を少しずつ削ったペプチドを作成してアミロイド線維形成を調べた。その結果、94番目のPhe(Phe94)を持っているSP76−94はアミロイド線維を形成するが、Phe94がないSP76−93やSP76−91はアミロイド線維を成形しないことが分かった。これらの結果から、Phe94がアミロイド線維形成に重要な役割を果たしていることが示された(図3、表1)。
【0032】
そこで、SP76−94あるいはSP76−96のPhe94をGlyに置換したSP76−94F94GとSP76−96F94Gを合成して、これらのペプチドのアミロイド線維形成について調べた。これらのペプチドはアミロイド核が「種」として存在しなければ、アミロイド線維を形成することはできないが、「種」が存在するとそれを足がかりにして伸長し、結果的にアミロイド線維を形成することが判明した(図4、表1)。すなわち、これらのペプチドは、それ自身はアミロイド核を形成する脳力はないが、アミロイド核が存在していればアミロイド線維伸長を起こすことができるという、極めてユニークな性質を有している。
【0033】
これらのペプチドのユニークな性質を利用すれば、検体中にアミロイド線維形成の「種」があるかどうかを判断することができる。すなわち、アミロイド線維を作る「種」があれば、最終的に時間が経てばアミロイドが形成され、様々なアミロイド病が発症する可能性があるので、この「種」の存在を調べることで、アミロイド病の発症を予期することができる。したがって、かかるユニークな性質を有するペプチドは、アミロイド病の早期診断のための検査に非常に有用である。
【0034】
【表1】

表1の核(種)なし、有りは実施例2の(2)で述べる方法で作成したαシヌクレインのアミロイド線維核(種)のなし、有りを示す。+は線維が形成されたこと、−は線維が形成されなかったことを示す。n.d.は未測定であることを示す。
【実施例2】
【0035】
実施例2:本発明のペプチドのアミロイド線維伸長
(1)アミロイド線維伸長およびその条件
アミロイド伸長ペプチドとして、SP76−94F94GとSP76−96F94Gをペプチド研究所(大阪)に依頼して化学合成したものを使用した。0.5mMに相当するペプチドを秤量し、25mM Tris−HCl pH7.5,150mM NaClの緩衝液に溶解し、シリコナイズドした試験管中に調製した。調製したサンプルは、37℃、170min−1で振盪し、アミロイド線維形成を行った。
【0036】
(2)αシヌクレインおよび異種タンパク質GroES、インシュリン、リゾチームのアミロイド線維核(種、あるいはシード)の調製
これらのアミロイド線維は以下のようにして形成させた。αシヌクレインおよびGroESは、それぞれH. Yagi, E. Kusaka, K. Hongo, T. Mizobata, Y. Kawata, J.Biol. Chem. 280, 38609-38616, 2005およびT. Higurashi, Y. Hiragi, K. Ichimura, Y. Seki, K. Soda, T. Mizobata, Y. Kawata, J. Mol. Biol. 333, 605-620, 2003に従って精製した。ウシのインシュリンとニワトリのリゾチームはシグマとナカライテスクからそれぞれ購入した。αシヌクレイン、インシュリン、リゾチームのアミロイド線維核の形成方法は上記H. Yagi, E. Kusaka, K. Hongo, T. Mizobata, Y. Kawata, J.Biol. Chem. 280, 38609-38616, 2005に記載された方法で行った。GroESは7量体のコシャペロニンであり、病気とは関係のないオリゴマータンパク質であるが、変性状態で長時間放置すると典型的なアミロイド線維を形成することがすでに確かめられており(T. Higurashi, H. Yagi, T. Mizobata, Y. Kawata, J. Mol. Biol. 351, 1057-1069, 2005)、その方法に従ってアミロイド線維核を調製した。
【0037】
上記の方法で調製したアミロイド線維核の溶液を超遠心分離(110,000xg,4℃,1時間)にかけ、沈殿画分を回収し、25mM Tris−HCl pH7.5に再懸濁し、溶液中の沈殿が均等になるように超音波破砕(Amplitude 20,PULSER 1,30秒)を行った後、ThioTによる蛍光が一定になるように希釈してシード(種)サンプル(タンパク質量は30μg程度)を調製した。
【0038】
(3)各種シード存在下でのSP76−94F94GとSP76−96F94Gを用いた線維伸長
本発明のペプチドの由来と同種であるαシヌクレインアミロイド線維シードや異種タンパク質で病気とは無関係のGroESタンパク質のアミロイド線維シード、異種タンパク質であるが病気に関連しているインシュリンとリゾチームのアミロイド線維シードをそれぞれ存在させて、SP76−94F94GとSP76−96F94Gによるアミロイド線維伸長実験を行った。
【0039】
1M NaClを含む25mM Tris−HCl pH7.5緩衝液に終濃度5μMのThioT、1〜6mg/mlのアミロイド線維を伸長させるべきペプチドを、様々なシード存在下でよく混合した後、150μlずつ、96穴のプラスチックマルチプレートのウェルに分注し、Thermal Seal RTでシールし、アルミホイルで遮光しながらTAITEC BIO−SHAKER BR−51を用いて、120min−1で振盪させながら、37℃でインキュベートした。適当な時間に、アミロイド線維形成の指標となるThioTの蛍光測定をTECAN Infinite M200プレートリーダーを用いて行った。SP76−94F94Gを用いた結果を図5に示した。同種のαシヌクレインのシードからは48時間後にはアミロイド線維伸長がすでに起こっていた。一方、異種タンパク質のインシュリンのシードでも96時間後には、GroESのシードとリゾチームのシードは192時間後にアミロイド線維伸長が起こっていることが明らかになった。
【0040】
さらに、この反応が線維核由来であることを裏付けるとともに、線維の詳細な形態観察を、さらに感度の良い蛍光顕微鏡を用いて行った。1M NaClを含む25mM Tris−HCl pH7.5緩衝液に終濃度5〜20μMのThioT、1〜6mg/mlのアミロイド線維を伸長させるべきペプチドをそれぞれ、シード存在下でよく混合した後、10μlをスライドガラス上に載せ、気泡が入らないように丁寧にカバーガラスで覆った後、余分な溶液をクリーンワイプで吸い取り、周囲をマニキュアで固め、アルミホイルで遮光した状態で37℃、20〜48時間インキュベートした。使用ペプチドはSP76−96F94Gであった。核シードの量は30μg、SP76−96F94Gの量はαシヌクレインとGroESシードの場合3mg/ml、インシュリンシードおよびリゾチームシードの場合6mg/mlであった。アミロイド線維伸長は、ZEISS Axiovert 200蛍光顕微鏡を用い、ThioTの蛍光によって調べた。結果を図6に示す。同種であるαシヌクレインのシードだけでは見られなかったアミロイド線維(図6a)がSP76−96F94G添加後48時間(図6b)で、さらに異種シードであるGroESシード添加後48時間(図6c)、インシュリンシード(図6d)、リゾチームシード(図6e)の20時間後に伸長したアミロイド線維の蛍光顕微鏡写真を示した。このように、SP76−96F94Gは、異種シードであるインシュリンシードおよびリゾチームシードからもアミロイド線維を伸長できることが確認された。
【0041】
これらの結果から、SP76−94F94GやSP76−96F94Gには、同種のαシヌクレインのシードからは最も早く、そして、異種タンパク質由来の線維核からでも線維を伸長させる能力を有することが判明した。このように、このペプチドは脳神経変性病に関わるαシヌクレインのアミロイド線維形成をはじめ、他のアミロイド病(インシュリンやリゾチームが関与)、更には、病気とは関係していないGroESタンパク質のアミロイド線維でさえ、それらの「種」が存在していればそれを基に伸長する性質を有することが証明された。このユニークな性質は、これらの本発明のペプチドを広範なアミロイド病の早期診断や検査に使用可能ならしめるものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、アミロイド病の診断薬および予防・治療薬の分野において利用可能である。
【配列表フリーテキスト】
【0043】
SEQ ID NO:1 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 76-94 of alpha-synuclein in which amino acid 94 is substituted with other amino acid (Xaa) than phenylalanine.

SEQ ID NO:2 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 76-95 of alpha-synuclein in which amino acid 94 is substituted with other amino acid (Xaa) than phenylalanine.

SEQ ID NO:3 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 76-96 of alpha-synuclein in which amino acid 94 is substituted with other amino acid (Xaa) than phenylalanine.

SEQ ID NO:4 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 76-94 of alpha-synuclein in which amino acid 94 is substituted with glycine (SP76-94F94G).

SEQ ID NO:5 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 76-95 of alpha-synuclein in which amino acid 94 is substituted with glycine (SP76-95F94G).

SEQ ID NO:6 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 76-96 of alpha-synuclein in which amino acid 94 is substituted with glycine (SP76-96F94G).

SEQ ID NO:7 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 76-94 of alpha-synuclein (SP76-94).

SEQ ID NO:8 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 76-95 of alpha-synuclein (SP76-95).

SEQ ID NO:9 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 76-96 of alpha-synuclein (SP76-96).

SEQ ID NO:10 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 81-96 of alpha-synuclein (SP81-96).

SEQ ID NO:11 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 76-89 of alpha-synuclein (SP76-89).

SEQ ID NO:12 is an amino acid sequence corresponding to amino acids 81-89 of alpha-synuclein (SP81-89).

SEQ ID NO:13 is an amino acid sequence of the amyloid fiber core region of human alpha-synuclein.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d):
(a)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Xaa(配列番号:1)、
(b)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Xaa−Val(配列番号:2)、
(c)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Xaa−Val−Lys(配列番号:3)、および
(d)(a)〜(c)のペプチドにおいて1個ないし数個のアミノ酸が付加、欠失または置換されているペプチド
[(a)〜(c)においてXaaはPhe以外のいずれかのアミノ酸を意味し、(d)に記載のペプチドにおいてXaaは保持されている]
からなる群より選択されるペプチド。
【請求項2】
XaaがGly、Ala、Ser、Met、His、LeuまたはArgである、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
XaaがGlyである請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
下記(e)〜(g):
(e)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Gly(配列番号:4)、
(f)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Gly−Val(配列番号:5)、および
(g)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Gly−Val−Lys(配列番号:6)
からなる群より選択される請求項3記載のペプチド。
【請求項5】
標識されている請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のペプチドを含む、アミロイド病の検査用組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載のペプチドを構成成分として含む、アミロイド病の検査用キット。
【請求項8】
対象から得た試料に請求項1〜5のいずれか1項記載のペプチドを接触させ、次いで、アミロイド線維の生成の有無を調べることを特徴とする、アミロイド病の検査方法であって、アミロイド線維が生成した場合に、対象がアミロイド病に罹患しているか、罹患するおそれがあると判定する方法。
【請求項9】
下記(h)〜(m):
(h)請求項1〜4のいずれか1項記載のペプチド、
(i)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe(配列番号:7)、
(j)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val(配列番号:8)、
(k)Ala−Val−Ala−Gln−Lys−Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val−Lys(配列番号:9)、
(l)Thr−Val−Glu−Gly−Ala−Gly−Ser−Ile−Ala−Ala−Ala−Thr−Gly−Phe−Val−Lys(配列番号:10)、および
(m)(i)〜(k)のペプチドにおいて1個ないし数個のアミノ酸が付加、欠失または置換されているペプチド(ただし、94番目のPheは保持されている)
からなる群より選択されるペプチドを含む、アミロイド病の予防または治療用医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−116724(P2011−116724A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277681(P2009−277681)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】