アミロイド関連疾患を診断および処置するためのペプチド、それに対する抗体、ならびにその使用方法
【課題】II型糖尿病およびアルツハイマー病などのアミロイド関連疾患を診断、予防、および処置するために使用することができるペプチドおよびそれに対する抗体を提供する。
【解決手段】少なくとも2個で15個以下のアミノ酸を有するペプチド。ペプチドはアミノ酸配列X−YまたはY−Xを含み、式中、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である。前記ペプチドを含む医薬組成物およびキット、アミロイド関連疾患を診断および処置するための使用方法。
【解決手段】少なくとも2個で15個以下のアミノ酸を有するペプチド。ペプチドはアミノ酸配列X−YまたはY−Xを含み、式中、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である。前記ペプチドを含む医薬組成物およびキット、アミロイド関連疾患を診断および処置するための使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、II型糖尿病およびアルツハイマー病などのアミロイド関連疾患を診断、予防、および処置するために使用することができるペプチドおよびそれに対する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイド物質沈着(これはまたアミロイド斑形成とも呼ばれる)は、アルツハイマー病、プリオンに関連した脳障害、II型糖尿病、家族性アミロイドーシスおよび軽鎖アミロイドーシスを含む、関連性のない様々な病理学的状態の中心的な特徴である。
【0003】
アミロイド物質は、直径が約80Å〜100Åである一定しない長さの堅い非分岐タンパク質性原繊維の密な網状構造から構成される。アミロイド原繊維は、その長軸が原繊維の長軸に直交する逆平行または平行のβ−プリーツシートに配置されたポリペプチド鎖のコア構造を含有する[Both他(1997)、Nature、385:787〜93;Glenner(1980)、N.Eng.J.Med.、302:1283〜92;Balbach他(2002)、Biophys J.83:1205〜16]。
【0004】
約20個のアミロイド原繊維タンパク質がこれまでにインビボで同定され、特異的な疾患と相関づけられている。これらのタンパク質は互いにアミノ酸配列相同性をほとんど有していないが、アミロイド原繊維のコア構造は本質的には同じである。アミロイド原繊維のこの共通するコア構造、およびアミロイド沈着物における共通物質の存在は、アミロイド物質の特定の形態を特徴づけるデータが、アミロイド物質の他の形態にもまた関係することがあり、従って、II型糖尿病、アルツハイマー痴呆またはアルツハイマー病、およびプリオンに関連した脳障害などのアミロイド関連疾患に対する薬物を開発するための鋳型設計において具体化され得ることを示唆している。
【0005】
さらに、アミロイド沈着物は、インビボでは不活性ではないようであり、むしろ、代謝回転の動的状態にあり、そして、原繊維の形成が停止される場合、退行することさえもあり得る[Gillmore他(1997)、Br.J.Haematol.、99:245〜56]。
【0006】
従って、アミロイドポリペプチドの産生を阻害するか、またはアミロイドーシスを阻害するために設計された治療は、アミロイド関連疾患を処置するために有用であり得る。
【0007】
アミロイドポリペプチドの産生の阻害−アミロイドポリペプチドの産生の直接的な阻害が、例えば、ヒト小島アミロイドポリペプチドのメッセンジャーRNA(mRNA)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用によって達成され得る。インビトロでは、小島アミロイドポリペプチドのmRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの添加またはアンチセンス相補的DNAの発現は、細胞のインスリンのmRNA含有量およびタンパク質含有量を増大させており、これにより、この方法の潜在的な有効性が明らかにされている[Kulkarni他(1996)、J.Endocrinol.、151:341〜8;Novials他(1998)、Pancreas、17:182〜6]。しかしながら、そのようなアンチセンス分子のインビボ有効性を明らかにする実験結果は何ら明らかにされていない。
【0008】
アミロイド原繊維の形成の阻害−小島アミロイドを含むアミロイドは、血清アミロイドP成分、アポリポタンパク質Eおよびパールカンなどの潜在的な安定化物質または保護物質を含有する。発達中のアミロイド原繊維に対するそれらの結合を阻止することにより、アミロイド形成タンパク質の特定部分に対して特異的な抗体による処置[Solomon他(1997)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:4109〜12]が可能であるように、アミロイド形成を阻害することができる[Kahn他(1999)、Diabetes、48:241〜53]。
【0009】
下記には、アミロイド構造を脱安定化する能力を有する薬物を操作するための現在の試みがまとめられている。
【0010】
脱安定化化合物−ヘパリン硫酸がすべてのアミロイドの成分として同定されており、ヘパリン硫酸はまた、炎症に関連するアミロイド誘導のごく初期段階においても関係している。Kisilevskyおよび共同研究者(Mature Med.、1:143〜148、1995)は、ヘパリン硫酸が炎症関連のアミロイド前駆体およびアルツハイマー病(AD)のβ−ペプチドと相互作用することを妨害する低分子量のアニオン性のスルホネート化合物またはスルフェート化合物の使用を記載した。ヘパリン硫酸は、アミロイドタンパク質の折りたたみパターンに特徴的な増大したβ−シート構造を受け入れるために可溶性アミロイド前駆体(SAA2)に特異的な影響を及ぼす。これらのアニオン性のスルホネート化合物またはスルフェート化合物は、電子顕微鏡写真によってモニターされたとき、ヘパリンにより加速されるAβ原繊維形成を阻害することが示され、また、事前に形成された原繊維をインビトロで分解することができた。さらに、これらの化合物は、急性モデルおよび慢性モデルにおいてインビボで、マウスの脾臓での炎症関連のアミロイドの進行を実質的に停止させた。しかしながら、最も強力な化合物[すなわち、ポリ(ビニルスルホネート)]は急性毒性を示した。類似する毒性が、免疫グロブリン軽鎖アミロイドーシス(AL)患者においてアミロイド再吸収を誘導することが認められている別の化合物IDOX(アントラサイクリン 4’−ヨード−4’−デオキシドキソルビシン)に関して観測されている[Merlini他(1995)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:2959−63]。
【0011】
脱安定化抗体−抗β−アミロイドモノクローナル抗体が、インビトロでβ−アミロイド斑を脱凝集し、β−アミロイド斑の形成を予防することにおいて効果的であることが示されている(米国特許第5688561号)。しかしながら、そのような抗体のインビボでの有効性を明らかにする実験結果は何ら明らかにされていない。
【0012】
脱安定化ペプチド−β−プリーツシートを破壊する合成ペプチド(「β−シート破壊剤」)を加えることにより、原繊維が解離し、アミロイドーシスが妨げられたという発見[Soto他(1998)、Nat.Med.、4:822〜6]は、臨床的観点から特に有望である。簡単に記載すると、5残基のペプチドにより、アミロイドβ−タンパク質の原繊維形成が阻害され、事前に形成された原繊維がインビトロで分解され、そして、細胞培養において原繊維により誘導されるニューロンの死が妨げられた。さらに、このβ−シート破壊剤ペプチドは、アミロイドβ−タンパク質の沈着をインビボで著しく減少させ、そしてアミロイドーシスのラット脳モデルにおいてアミロイド原繊維の形成を完全に阻止した。
【0013】
小分子−アミロイドポリペプチドと結合し、これによりタンパク質の本来の折りたたみを安定化させる小分子の使用の可能性が、トランスチレチン(TTR)タンパク質の場合に試みられている[Peterson(1998)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:12965〜12960;Oza(1999)、Bioorg.Med.Chem.Lett.、9:1〜6]。これまでに、チロキシンおよびフルフェナム酸などの分子が、アミロイド形成をもたらす立体配座変化を妨げることができることが明らかにされている。しかしながら、動物モデルにおけるこれらの化合物の使用は、未だ立証されておらず、また、これらのリガンドと結合することができる、TTR以外のタンパク質が血液中に存在するために損なわれ得る。
【0014】
抗酸化剤−別の提案された治療は、酸化ストレスを回避し、アミロイドタンパク質をその還元状態(すなわち、モノマーおよびダイマー)で維持するために抗酸化剤を摂取することであった。亜硫酸塩の使用は、TTRのより安定なモノマーをインビトロおよびインビボの両方でもたらすことが示されていた[Altland(1999)、Neurogenetics、2:183〜188]。しかしながら、抗酸化作用の完全な特徴づけは依然として得られておらず、可能な治療法に関する結果の解釈は困難なままである。
【0015】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、米国特許第6359112号(Kapurniotu)の教示に反して、アミロイド原繊維へのペプチド凝集が芳香族相互作用によって支配されることを明らかにしている。そのような知見は、アミロイド関連疾患を診断および処置するために使用することができるペプチドを効率的かつ正確に設計することを可能にする。
【発明の概要】
【0016】
本発明の一つの局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−Xを含むペプチドであって、Xが芳香族アミノ酸であり、Yがグリシン以外のアミノ酸であり、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドが提供される。
【0017】
本発明の別の局面によれば、配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125および127からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドが提供される。
【0018】
本発明のさらに別の局面によれば、配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125および127からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドが提供される。
【0019】
本発明のさらに別の局面によれば、配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125および127からなる群から選択されるペプチドが提供される。
【0020】
本発明のさらなる局面によれば、個体におけるアミロイド関連疾患を処置または予防する方法であって、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドの治療有効量を個体に与えることを含む方法が提供される。
【0021】
以下に記載される本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、ペプチドは生理学的に受容可能なキャリアもまた含む薬学的組成物の有効成分である。
【0022】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは核酸構築物から発現される。
【0023】
本発明のさらにさらなる局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドを有効成分として含み、かつ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含むアミロイド関連疾患を処置または予防するための薬学的組成物が提供される。
【0024】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドの少なくとも1個のアミノ酸はD立体異性体である。
【0025】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドの少なくとも1個のアミノ酸はL立体異性体である。
【0026】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは2個のアミノ酸の長さであり、Yはβ−シート破壊剤アミノ酸である。
【0027】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは配列番号145に述べられたようなものである。
【0028】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは3個のアミノ酸の長さであり、Yは芳香族アミノ酸であり、アミノ酸配列X−YまたはY−Xに結合されたアミノ酸残基はβ−シート破壊剤アミノ酸である。
【0029】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸はペプチドのC末端にある。
【0030】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは少なくとも3個のアミノ酸の長さを有し、かつそのN末端でチオール化アミノ酸を含む。
【0031】
本発明のさらにさらなる局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドをコードするポリヌクレオチドセグメントを含む核酸構築物が提供される。
【0032】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、核酸構築物はプロモータをさらに含む。
【0033】
本発明のさらなる局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドと結合することができる抗原認識領域を含む抗体または抗体フラグメントが提供される。
【0034】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、Yはセリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミンおよびそれらの天然の誘導体からなる群から選択される極性の電荷を有していないアミノ酸である。
【0035】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、Yはβ−シート破壊剤アミノ酸である。
【0036】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸は天然に存在するアミノ酸である。
【0037】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、天然に存在するアミノ酸はプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、リジンおよびセリンからなる群から選択される。
【0038】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸は合成アミノ酸である。
【0039】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、合成アミノ酸はCα−メチル化アミノ酸である。
【0040】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、Cα−メチル化アミノ酸はα−アミノイソブチル酸である。
【0041】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは直鎖状または環状ペプチドである。
【0042】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125および127からなる群から選択される。
【0043】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは少なくとも4個のアミノ酸の長さを有し、かつそのC末端に少なくとも2個のセリン残基を含む。
【0044】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは少なくとも3個のアミノ酸の長さを有し、X−Y以外のペプチドのうち少なくとも1個のアミノ酸はセリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミンおよびそれらの天然の誘導体からなる群から選択される極性の電荷を有していないアミノ酸である。
【0045】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは少なくとも3個のアミノ酸の長さを有し、X−Y以外のペプチドのうち少なくとも1個のアミノ酸はβ−シート破壊剤アミノ酸である。
【0046】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸は天然に存在するアミノ酸である。
【0047】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、天然に存在するアミノ酸はプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、リジンおよびセリンからなる群から選択される。
【0048】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸は合成アミノ酸である。
【0049】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、合成アミノ酸はCα−メチル化アミノ酸である。
【0050】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、Cα−メチル化アミノ酸はα−アミノイソブチル酸である。
【0051】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸はペプチドにおけるX−Yの下流に位置される。
【0052】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸はペプチドにおけるX−Yの上流に位置される。
【0053】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは少なくとも3個のアミノ酸の長さを有し、ペプチドのうち少なくとも1個のアミノ酸は正電荷を有するアミノ酸であり、ペプチドのうち少なくとも1個のアミノ酸残基は負電荷を有するアミノ酸である。
【0054】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、正荷電を有するアミノ酸はリジン、アルギニン、およびその天然および合成の誘導体からなる群から選択される。
【0055】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、負荷電を有するアミノ酸はアスパラギン酸、グルタミン酸、およびその天然および合成の誘導体からなる群から選択される。
【0056】
本発明のさらにさらなる局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドと結合できる抗原認識領域を有する抗体または抗体フラグメントを有効成分として含み、かつ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含むアミロイド関連疾患を処置または予防するための薬学的組成物が提供される。
【0057】
本発明のさらにさらなる局面によれば、個体におけるアミロイド関連疾患を処置または予防する方法であって、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドと結合できる抗原認識領域を有する抗体または抗体フラグメントの治療的に有効な量を個体に与えることを含む方法が提供される。
【0058】
本発明のさらにさらなる局面によれば、下記一般式を有するペプチドが提供される:
式中、C*はD配置を有するキラルな炭素である。
R1およびR2は各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボキシ、C−チオカルブからなる群から選択され;
R3はヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロおよびアミンからなる群から選択され;そして
R4はアルキルである。
【0059】
本発明のさらにさらなる局面によれば、個体におけるアミロイド関連疾患を処置または予防する方法であって、下記一般式を有するペプチドの治療有効量を個体に与えることを含む方法が提供される:
式中、C*はD配置を有するキラルな炭素である。
R1およびR2は各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボキシ、C−チオカルブからなる群から選択され;
R3はヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロおよびアミンからなる群から選択され;そして
R4はアルキルである。
【0060】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、R4はメチルである。
【0061】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、R1およびRは各々、水素であり、R3はヒドロキシである。
【0062】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは環状ペプチドである。
【0063】
本発明は、II型糖尿病などのアミロイド関連疾患を診断および処置するために使用することができる、新規なペプチド、組成物および方法を提供することによって、現在知られている形態の様々な欠点に対処することに成功している。
【0064】
本明細書で使用される技術用語と科学用語はすべて、特に断らない限り、本発明の属する技術分野の当業者が共通して理解しているのと同じ意味を持っている。本明細書に記載されているのと類似の又は均等の方法と材料は本発明を実施又は試験するのに使用できるが、適切な方法と材料は以下に述べる。争いが生じた場合、定義を含めて本特許明細書が基準である。さらに、本明細書の材料、方法及び実施例は例示することだけを目的とし本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
本明細書では一例として添付の図面を参照しながら本発明を説明する。図面に示す詳細は一例であって、本発明の好ましい態様の具体例を挙げる目的しかなく、本発明の原理および概念的特徴を最も有効かつ理解しやすいと考えられる形で説明するために記載するものである。この点に関して、本発明の構成上の詳細は、本発明の基本的理解に必要な程度にしか詳しく説明していないが、本明細書と図面を合わせて検討することにより、当業者には、本発明のいくつかの形態を実際に具体化する方法が明らかになるだろう。
【図1】図1は、多数のアミロイドタンパク質に由来するペプチド群の、KyteおよびDolittleの尺度を使用して推定されるような、自己会合能とその疎水性とを示す模式図である。分析されたペプチドの疎水性とアミロイド形成能との間には相関が何ら認められないことに留意すること。このペプチド群における潜在的なアミロイド原繊維形成能に対する唯一の明らかな目安は、芳香族性と最小長さの組合せである。
【図2】図2a−cは、阻害性芳香族試薬のRo47−1816/001(図2a)、チオフラビンT(図2b)およびCR色素(図2c)とのアミロイド結合を模式的に示す。
【図3】図3a−cは、ヒトIAPPおよび齧歯類IAPPと本発明の合成ペプチドとの間での一次配列比較の模式図である。図3aはヒトIAPPおよび齧歯類IAPPの配列アラインメントである。ブロック部は、配列間で大きな不一致を示す7個のアミノ酸の部分配列を示す。「基本アミロイド形成ユニット」が太字によって表され、下線が引かれている。図3bは野生型IAPPペプチド(配列番号1)の化学構造を示す。図3cは、基本アミロイド形成ユニットに由来するペプチドの一次配列および配列番号を示す。
【図4】図4a−bは、原繊維形成の間の時間を関数とする405nmでの光の吸光度、従って、IAPP由来ペプチドの凝集速度論を反映する吸光度を示すグラフである。下記の記号が使用される:黒四角−N1A、白丸−G3A、黒丸−野生型、白三角−L6A、白四角−I5A、および黒三角−F2A。
【図5】図5は、光散乱によって測定されたときの会合したIAPPペプチドおよび誘導体の平均粒子サイズを示すヒストグラムである。それぞれの柱は3回〜5回の独立した測定の結果を表す。
【図6】図6a−nは、事前に会合させたIAPPペプチドへのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。通常場および偏光場での顕微鏡写真が、下記の寝かせたペプチド懸濁物のそれぞれについてそれぞれ示される:N1Aペプチド(図6a〜図6b)、F2Aペプチド(図6c〜図6d)、G3Aペプチド(図6e〜図6f)、野生型ペプチド(図6g〜図6h)、I5Aペプチド(図6i〜図6j)、およびL6Aペプチド(図6k〜図6l)。
【図7】図7は、「寝かせた」IAPPペプチドおよび誘導体の電子顕微鏡写真である:N1Aペプチド(図7a)、F2Aペプチド(図7b)、G3Aペプチド(図7c)、野生型ペプチド(図7d)、I5Aペプチド(図7e)、およびL6Aペプチド(図7f)。示されるスケールバーは100nmを表す。
【図8a】図8aは、野生型hIAPPと、細菌のコドン使用頻度に従って改変された対応する配列との核酸配列アラインメントである。改変された塩基には下線が引かれている。
【図8b】図8bは、48kDaのMBP−IAPPタンパク質の細胞質発現のために使用されるpMALc2x−NNベクターの模式図である。V8 Ek切断部位および(His)6タグがmalEタグのベクター配列のC末端に融合されている。MBPタグを除くためのXa因子切断部位が示されている。
【図9】図9は、MBPおよびMBP−IAPP融合タンパク質の細菌発現および精製を示すタンパク質ゲルGelCode Blue染色である。細菌細胞抽出物が調製され、タンパク質がアミロース樹脂カラムで精製された。25μgのタンパク質を含むサンプルがレーン1〜3のそれぞれに加えられ、これに対して、5μgのタンパク質がレーン4〜5のそれぞれに加えられた。タンパク質が12%SDS−PAGEで分離され、GelCode Blue染色により可視化された。分子量マーカーを左側に示す。レーン1−0.5mMのIPGTで誘導されたMBP可溶性抽出物、レーン2−0.1mMのIPGTで誘導されたMBP−IAPP可溶性抽出物、レーン3−0.5mMのIPGTで誘導されたMBP−IAPP可溶性抽出物、レーン4−精製MBP、レーン5−精製MBP−IAPP。矢印はMBP−IAPPを示す。
【図10】図10a−bは、hIAPPにおける推定されるアミロイド形成配列を示すドットブロット画像(図10a)およびそのデンシトメトリー定量(図10b)である。
【図11】図11は、原繊維形成の間の時間を関数とする405nmでの光の吸光度、従って、IAPP由来ペプチド(配列番号14〜19)の凝集速度論を反映する吸光度を示すグラフである。
【図12】図12a−fは、事前に会合させたIAPPペプチドへのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。偏光場での顕微鏡写真が、下記の1日寝かせたペプチド懸濁物のそれぞれについて示される:NFLVHSSNNペプチド(図12a)、NFLVHSS(図12b)、FLVHSS(図12c)、NFLVH(図12d)、FLVHS(図12e)、およびFLVH(図12f)。
【図13】図13a−fは、「寝かせた」IAPPペプチドの電子顕微鏡写真である。NFLVHSSNNペプチド(図13a)、NFLVHSS(図13b)、FLVHSS(図13c)、NFLVH(図13d)、FLVHS(図13e)、およびFLVH(図13f)。示されるスケールバーは100nmを表す。
【図14】図14a−fは、フーリエ変換赤外分光法によって測定されたときの不溶性IAPP凝集物における二次構造を示すグラフである。NFLVHSSNNペプチド(図14a)、NFLVHSS(図14b)、FLVHSS(図14c)、NFLVH(図14d)、FLVHS(図14e)、およびFLVH(図14f)。
【図15】図15は、メジンの以前に報告されたアミロイド形成ペプチドフラグメントの化学構造である[Haggqvist(1999)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96:8669〜8674]。
【図16】図16a−bは、原繊維形成の間の時間を関数とする405nmでの光の吸光度、従って、メジン由来ペプチドの凝集速度論を反映する吸光度を示すグラフである。図16aは短期間の速度論アッセイを示す。図16bは長期間の速度論アッセイを示す。
【図17】図17a−fは、「寝かせた」メジン由来ペプチドの電子顕微鏡写真である。NFGSVQFA−図17a、NFGSVQ−図17b、NFGSV−図17c、FGSVQ−図17d、GSVQ−図17e、およびFGSV−図17f。示されるスケールバーは100nmを表す。
【図18】図18a−fは、事前に会合させたメジン由来ペプチドへのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。偏光場での顕微鏡写真が、下記の寝かせたペプチド懸濁物のそれぞれについて示される:NFGSVQFA−図18a、NFGSVQ−図18b、NFGSV−図18c、FGSVQ−図18d、GSVQ−図18e、およびFGSV−図18f。
【図19】図19a−cは、メジンのヘキサペプチドのアミロイド形成フラグメントのアミロイド形成特性に対するアラニン変異の影響を示す。図19aは、原繊維形成の間の時間を関数とする405nmでの光の吸光度、従って、メジン由来アラニン変異型の凝集速度論を反映する吸光度を示すグラフである。図19bは、「寝かせた」メジン由来のアラニン変異型の電子顕微鏡写真であり、スケールバーは100nmを表す。図19cは、事前に会合させたメジン由来ペプチド変異型へのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。
【図20】図20a−bは、ヒトカルシトニンのアミノ酸配列(図20a)およびヒトカルシトニンのアミロイド形成ペプチドフラグメントの化学構造(図20b)である。カルシトニンのオリゴマー化状態およびホルモン活性にとって重要である残基17および残基18には下線が付されている[Kazantzis(2001)、Eur.J.Biochem.、269:780〜791]。
【図21】図21a−dは、「寝かせた」カルシトニン由来ペプチドの電子顕微鏡写真である。DFNKF−図21a、DFNK−図21b、FNKF−図21c、およびDFN−図21d。示されるスケールバーは100nmを表す。
【図22】図22a−dは、事前に会合させたカルシトニン由来ペプチドへのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。偏光場での顕微鏡写真が、下記の寝かせたペプチド懸濁物のそれぞれについて示される:DFNKF−図22a、DFNK−図22b、FNKF−図22c、およびDFN−図22d。
【図23】図23は、フーリエ変換赤外分光法によって測定されたときの不溶性カルシトニン凝集物における二次構造を示すグラフである。
【図24】図24a−cは、カルシトニンのペンタペプチドのアミロイド形成フラグメントのアミロイド形成特性に対するアラニン変異の影響を示す。図24aは、「寝かせた」カルシトニン由来のアラニン変異型の電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。図24bは、事前に会合させたカルシトニン由来のペプチド変異型へのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。図24cは、フーリエ変換赤外分光法によって測定されたときの変異型ペプチドにおける二次構造を示すグラフである。
【図25】図25は、「寝かせた」ラクトトランスフェリン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図26】図26は、「寝かせた」血清アミロイドAタンパク質由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図27】図27は、「寝かせた」BriL由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図28】図28は、「寝かせた」ゲルゾリン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図29】図29は、「寝かせた」血清アミロイドP由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図30】図30は、「寝かせた」免疫グロブリン軽鎖由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図31】図31は、「寝かせた」シスタチンC由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図32】図32は、「寝かせた」トランスチレチン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図33】図33は、「寝かせた」リゾチーム由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図34】図34は、「寝かせた」フィブリノーゲン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図35】図35は、「寝かせた」インスリン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図36】図36は、「寝かせた」プロラクチン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図37】図37は、「寝かせた」β2ミクログロブリン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図38】図38は、IAPPの自己会合に対する阻害ペプチドの作用を示すグラフである。四角−野生型(wt)IAPPペプチド;三角−wt−IAPP+阻害ペプチド;丸−ペプチドなし。
【図39】図39は、原繊維形成の間の時間を関数とする405nmでの光の吸光度、従って、IAPP由来ペプチド(配列番号46〜49)の凝集速度論を反映する吸光度を示すグラフである。
【図40】図40は、7日間寝かせた後のIAPPアナログの濁度を示すヒストグラム図を示す。
【図41】図41a−fは、「寝かせた」IAPPアナログの電子顕微鏡写真である。NFGAILSS−図41a、NFGAILSS−図41b、NIGAILSS−図41c、NLGAILSS−図41d、NVGAILSS−図41e、およびNAGAILSS−図41f。示されるスケールバーは100nmを表す。
【図42】図42a−cは、最小のアミロイド形成配列SNNXGAILSS(X=システイン以外の任意の天然アミノ酸)のアナログに対するIAPP−NFGAILSSの結合を示す。図42aは結合させたペプチドアレイの短期間の暴露を示す。図42bは結合させたペプチドアレイの長期間の暴露を示す。図42cは、デンシトメトリーおよび任意単位を使用する、短期間の暴露(図42a)の定量を示す。
【図43】図43aは、すべての残基について(黄色は十分に可能な、オレンジ色は部分的に可能な)、L−プロリンについて(青色)、およびアキラルなAib残基について(マゼンタ)の可能な立体配置を示すラマチャンドランプロットである。図43b−cは、長い野生型IAPPペプチドの化学構造(ANFLVH、配列番号124、図43b)およびそのAib改変された構造のペプチド(Aib−NF−Aib−VH、配列番号125、図43c)を示す模式図である。改変のために好適な官能基は青色でマークされており(図43b)、一方、改変された基は赤色でマークされている(図43c)。
【図44】図44a−dは、「寝かせた」IAPPアナログの電子顕微鏡写真である。図44a−ANFLVH;図44b−ANFLV;図44c−Aib−NF−Aib−VH;図44d−Aib−NF−Aib−V。示されたスケールバーは100nmを表わす。
【図45】図45a−dは、事前に会合された野生型およびAib改変されたIAPPペプチドに結合するコンゴーレッドを示す顕微鏡写真である。偏光場顕微鏡写真が以下の寝かされた(即ち、11日目の)ペプチド懸濁物の各々について示される。図45a−ANFLVH;図45b−ANFLV;図45c−Aib−NF−Aib−VH;図45d−Aib−NF−Aib−V。
【図46】図46a−bは、フーリエ変換赤外線分光分析(FI−IR)によって決定された通りの不溶性野生型およびAib改変されたhIAPP凝集物の二次構造を示すグラフである。図46a−野生型ペプチドANFLVHおよび矢印によって示されるように対応するAib改変ペプチド。図46b−野生型ANFLVHおよび矢印によって示されるように対応するAib改変ペプチド。
【図47】図47は、アミロイド原繊維形成に対するAib改変ペプチドの阻害効果を示すグラフである。野生型IAPPは単独でまたは本発明の様々なペプチドと共にインキュベートされた。時間の関数としての原繊維形成は、ThT蛍光を用いて決定された。
【図48】図48は、IAPP−自己会合に対する短い芳香族配列(配列番号112−123)の阻害効果を示すヒストグラムである。
【図49a−c】図49a−cは、IAPP原繊維化阻害剤の選択の反復サイクルを表わすグラフである。原繊維化はThT蛍光アッセイによってモニターされた。IAPP単独(4μM)の蛍光値またはアッセイされる化合物(40μM)の存在におけるIAPPの蛍光値が試験された。測定はIAPP蛍光がプラトーに達成された後に行なわれた。IAPP蛍光は任意に100として設定された。図49aは、IAPP原繊維化阻害剤の選択の第一ラウンドの結果を示す。EG1=D−Phe−D−Phe−D−Pro;EG2=Aib−D−Phe−D−Asn−Aib;EG3=D−Phe−D−Asn−D−Pro;EG4=Aib−Asn−Phe−Aib;EG5=Gln−Lys−Leu−Val−Phe−Phe;EG6=Tyr−Tyr;EG7=Tyr−Tyr−NH2;EG8=Aib−Phe−Phe。図49bは、IAPP原繊維化阻害剤の選択の第二ラウンドの結果を示す。EG13=Asn−Tyr−Aib;EG14=Asn−Tyr−Pro;EG15=D−Pro−D−Tyr−D−Asn;EG16=D−Tyr−Aib;EG17=D−Pro−D−Tyr;EG18=D−Tyr−D−Pro。図49cは、IAPP原繊維化阻害剤の選択の第三ラウンドの結果を示す。d−F−P=D−Phe−Pro;P−d−F=Pro−D−Phe;EG19=Asn−Tyr−Tyr−Pro;EG20=Tyr−Tyr−Aib;EG21=Aib−Tyr−Tyr;EG22=Aib−Tyr−Tyr−Aib;EG23=D−Asn−Tyr−Tyr−D−Pro。
【図49d】図49dは、IAPP原繊維化阻害剤の選択の第四ラウンドの結果を示す。EG24=Pro−Tyr−Tyr;EG25=Tyr−Tyr−Pro;EG26=Pro−Tyr−Tyr−Pro;EG27=D−Tyr−D−Tyr;EG28=D−Pro−Aib;EG29=D−Phe−D−Pro;EG30=D−Trp−Aib;EG31=D−Trp−D−Pro。
【図50】図50は、D−Trp−AibによるAβ(1−40)原繊維形成の阻害を示すグラフである。Aβ1−40ストック溶液は、100mMのNaCl,10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中に、5μMの最終濃度に、10μMのD−Trp−Aib(三角形)ありで、またはいかなる添加剤もなしで(四角形)希釈された。蛍光値は、各サンプルに0.3μMのThtを添加した後で測定された。結果は、二つの独立した測定の平均を表わす。
【図51】図51a−cは、TEMによって可視化されるようにAβの原繊維化に対するD−Trp−Aibの阻害効果を表わす顕微鏡写真である。図51aは、Aβ単独を示す。図51b−cは、阻害剤の存在下でAβインキュベートされた二つの異なる視野を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明は、II型糖尿病などのアミロイド関連疾患を診断または処置するための新規なペプチド、それに対する抗体、それらを含む組成物、およびそれぞれの使用方法に関する。
【0067】
本発明の原理および操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解することができる。
【0068】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示すか、または図面に示す各構成成分の構築および配置の細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することができ、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、限定的であると見なすべきでないことを理解しなければならない。
【0069】
アミロイド原繊維形成を妨げるか、またはアミロイド物質を分解するための数多くの治療方法が先行技術に記載されている。しかしながら、現在の治療方法は、細胞毒性、非特異性および送達といった壁によって制限されている。
【0070】
本発明を実施に移している間に、また、II型糖尿病などのアミロイド関連疾患に対する新規な治療様式について探し求めている間に、本発明者は、原繊維形成を行わせるアミロイド形成性のペプチドに特徴的な配列を同定した。この発見は、秩序のあるアミロイド形成には、非特異的な疎水性相互作用を伴う以前に記載された機構[Petkova(2002)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99:16742〜16747]ではなく、むしろ、分子相互作用の特異的なパターンが関係していることを示唆している。
【0071】
本明細書中下記に、そして下記の実施例の節にさらに例示されるように、本発明者は、アミロイド形成における芳香族残基に対する非常に重要な役割を考えていた。アミロイド形成プロセスにおける芳香族残基の関与は、分子認識および自己会合におけるπスタッキング相互作用の十分に確立された役割と一致している[Gillard他(1997)、Chem.Eur.J.、3:1933〜40;ClaessensおよびStoddart(1997)、J.Phys.Org.Chem.、10:254〜72;Shetty他(1996)、J.Am.Chem.Soc.、118:1019〜27;McGuaghey他(1998)、πスタッキング相互作用:タンパク質における機能、J.Biol.Chem.、273、15458〜15463;SunおよびBernstein(1996)、J.Phys.Chem.、100:13348〜66]。πスタッキング相互作用は、平面の芳香族環の間で形成される非結合の相互作用である。そのような秩序だったスタッキング構造の形成に伴う立体的な制約が、超分子構造の形成をもたらす自己会合プロセスにおいて基本的な役割を有している。そのようなπスタッキング相互作用は、おそらくはエントロピー駆動によるものであるが、DNAの二重らせん構造の安定化、タンパク質の三次構造のコア充填および安定化、ホスト−ゲスト相互作用、ならびに溶液中でのポルフィリン凝集などの多くの生物学的プロセスにおいて中心的な役割を果たしている[アミロイド原繊維の自己会合におけるπスタッキング相互作用の可能な役割についてのさらなる総説については、Gazit(2002)、FASEB J.、16:77〜83を参照のこと]。
【0072】
本発明者は、アミロイド斑の形成によって特徴づけられる疾患を処置または診断するために利用することができる非常に有効な診断用ペプチド、予防用ペプチドおよび治療用ペプチドを作製することが初めて可能になる、ジペプチド(実施例45−47参照)のように短い芳香族ペプチドの分子認識を媒介する能力を証明した。
【0073】
従って、本発明の一つの局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドが提供される。この配列を含むペプチドの例は配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125および127に述べられる。後述する実施例の節の実施例36〜39に与えられた結果によって示されるように、本発明者は、従来技術の教示に反して、アミロイド自己会合を規定しているのは疎水性よりむしろ芳香族性であることを発見した。従って、本発明のペプチドの芳香族アミノ酸はアミロイド原繊維の形成にとって非常に重要である。
【0074】
芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、フェニルグリシン、あるいは、それらの修飾体、前駆体または機能的な芳香族部分を含む(しかしこれらに限定されない)任意の天然に存在する芳香族残基または合成された芳香族残基であり得る。本発明のペプチドの一部の形成し得る芳香族残基の例を下記の表2に示す。
【0075】
下記の実施例の節に示す結果によって明らかにされるように、本発明は、様々な程度の自己凝集速度論および凝集物構造を示すペプチドの設計を容易にする。
【0076】
本明細書中で使用される表現「自己凝集」は、水溶液中で凝集物(例えば、原繊維)を形成するペプチドの能力を示す。自己凝集するペプチドの能力、ならびにそのような自己凝集の速度論およびタイプにより、アミロイド疾患の処置または診断でのペプチドの使用が決定される。
【0077】
凝集速度論および凝集物構造は、作製されたペプチドの特異的な残基組成およびおそらくは長さ(図1参照)によって主に決定されるので、本発明は、配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125,127,128〜147または148に示す配列を含むより長いペプチド(例えば、10個のアミノ酸〜50個のアミノ酸)、または、好ましくはこれらの配列のいずれかを含むより短いペプチド(例えば、2個〜15個のアミノ酸、好ましくは少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも10個、例えば12個のアミノ酸、好ましくは15個以下のアミノ酸)の両方を包含する。
【0078】
アミロイド形成の速度を速めるために、本発明のペプチドは、好ましくは、少なくとも1つの極性の電荷を有していないアミノ酸をさらに含み、そのようなアミノ酸としては、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、あるいはそれらの天然の誘導体または合成誘導体が挙げられるが、これらに限定されない(表2参照)。
【0079】
本発明のこの局面の一実施態様によれば、アミノ酸残基Yは極性の電荷を有していないアミノ酸である。
【0080】
本発明のこの局面の別の実施態様によれば、ペプチドは少なくとも3個のアミノ酸、上で記載されたX−Y/Y−Xアミノ酸配列およびX−Y/Y−X配列の上流(N−末端)または下流(C−末端)のいずれかに位置される追加の極性の電荷を有していないアミノ酸を含む。
【0081】
本発明のペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸の長さであることができ、かつ少なくとも1対の正電荷を有しているアミノ酸(例えばリジンおよびアルギニン)および負電荷を有しているアミノ酸(例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸)を含むことができる(例えば配列番号27〜29)。そのようなアミノ酸組成は好適でありうる。これは、実施例の節の実施例21に示すように、反対の電荷の間での静電的相互作用により、秩序のある逆平行構造の形成が誘導されうるからである。
【0082】
さらに、本発明のペプチドは、4個のアミノ酸の長さであることができ、かつX−Y/Y−X配列のC−末端に二つのセリン残基を含む。
【0083】
さらに、本発明のペプチドは、3個のアミノ酸の長さであることができ、チオール化アミノ酸残基(即ち、硫黄イオンを含む)を、好ましくはそのN−末端に含む(例えば、配列番号149および150、それぞれD−Cys−D−Trp−AibおよびL−Cys−D−Trp−Aib、並びにそれらのアシル化およびアミド化形)。このようなペプチド形態は非常に価値がある。なぜならば、それは還元特性をペプチドに与え、それによって還元剤および酸化防止剤として(ともに神経防護作用のために重要でありうる(Offen他(2004)、J Neurochem.89:1241〜51);およびアミロイド阻害剤としての両方で作用しうる。チオール化アミノ酸の例は、天然に存在するアミノ酸システインおよびメチオニンおよびTyr(SO3H)の如き合成アミノ酸を含むが、それらに限定されない。
【0084】
本発明者らは、原繊維形成を支配する配列特徴を同定しているので、本発明の教示はまた、原繊維には凝集せず、原繊維形成を防止もしくは減少させること、または、以前に形成された原繊維を破壊することのいずれかが可能であり、従って、治療薬として使用することができるペプチドの設計を可能にする。
【0085】
例えば、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号17、配列番号19、配列番号25または配列番号30によって包含されるペプチドを治療のために利用することができる。なぜならば、これは、下記の実施例の節に示すように、そのようなペプチドは、野生型ペプチドと比較したとき、凝集を示さず(配列番号9)、または、遅い凝集速度論を示す(配列番号9および配列番号10)からである。アミロイド形成は非常に遅いプロセスであるので、これらのペプチド配列は、生理学的条件のもとでアミロイドーシスを完全に阻害するか、または著しく遅らせると考えられる。
【0086】
本明細書に用いる用語「ペプチド」とは、天然ペプチド(分解産物、合成ペプチド又は組換えペプチドのいずれか)並びにペプチドを生体中でより安定又はより細胞内への浸透が可能なように修飾していてもよいペプチド類似体(ペプチドアナログ)であるペプトイド及びセミペプトイドなどのペプチド擬似体(典型的には、合成ペプチド)を含む。このような修飾としては、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾が挙げられるがこれらに限定されず、CH2−NH、CH2−S、CH2−S=O、O=C−NH、CH2−O、CH2−CH2、S=C−NH、CH=CH又はCF=CH、骨格修飾及び残基修飾が挙げられるがこれらに限定されない。ペプチド擬似体化合物を調製する方法は、当該技術分野ではよく知られており、例えばQuantitative Drug Design, C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon出版(1992)に特定され、これは本明細書中に完全に記載されているか如く参考文献により取り込まれている。これに関するさらなる詳細を以下に記載する。
【0087】
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)を、例えばN−メチル化結合(−N(CH3)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH2−)、α−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは例えばメチルなどのアルキル基)、カルバ結合(−CH2−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH2−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH2−CO−)(式中、Rは炭素原子上に天然に存在する「通常の」側鎖)により置換してもよい。
【0088】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合のいずれにおいて生じてもよく、同時に数箇所(2〜3箇所)で生じてもよい。
【0089】
天然芳香族アミノ酸、Trp、Tyr及びPheが、フェニルグリシン、Tic、ナフチルアラニン(Nal)、フェニルイソセリン、トレオニノール、Pheの環状メチル化誘導体、Phe又はo−メチル−Tyrのハロゲン化誘導体などの合成非天然酸で置換してもよい。
【0090】
上記よりさらに、本発明のペプチドは1つ以上の修飾されたアミノ酸または1つ以上の非アミノ酸モノマ−(例えば脂肪酸、炭水化物複合体など)も含んでもよい。
【0091】
本明細書中及び請求の範囲の部分中に用いる用語「アミノ酸」又は「アミノ酸(複数)」とは、20個の天然に生じるアミノ酸であって、これらのアミノ酸はしばしば翻訳後にin vivoで修飾され、例えばヒドロキシプロリン、ホスホセリン及びホスホトレオニンが挙げられ、及び2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、ノル−バリン、ノル−ロイシン及びオルニチンなどの、しかしこれらに限定されない他の通常にはないアミノ酸を含むものと理解されるべきである。さらに、用語「アミノ酸」はD−及びL−アミノ酸の両者を含む。
【0092】
以下の表1及び2は、本発明において用いられる天然に生じるアミノ酸(表1)及び慣用でない又は修飾アミノ酸(表2)を挙げる。
【表1】
【表2】
【0093】
本発明のペプチドは、好ましくは、ペプチドが可溶性の形態であることが要求される治療薬または診断薬において利用されるので、本発明のペプチドは、好ましくは、1つ以上の非天然型または天然型の極性アミノ酸を含み、そのようなアミノ酸には、そのヒドロキシル含有側鎖によりペプチドの溶解性を増大させることができるセリンおよびトレオニンが含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
治療用の場合、本発明のペプチドは、好ましくは、少なくとも一つのβ−シート破壊剤アミノ酸残基を含み、それは以下に記載されるようなペプチド配列に位置される。そのようなβ−シート破壊剤アミノ酸を含むペプチドは、アミロイドポリペプチドの認識を保持するが、その凝集を予防する(以下の実施例の節の実施例40〜45参照)。本発明のこの局面の一つの好ましい実施態様によれば、β−シート破壊剤アミノ酸は、約−120度〜−140度の典型的なβ−シートφ角でなく、約−60度〜+25度の限定されたφ角によって特徴づけられ、それによりアミロイド原繊維のβ−シート構造を破壊する、プロリンの如き天然に存在するアミノ酸である(例えば、配列番号45,112,119,120,122,123,128,130,134,138,139,140,141,143,144,146,147および148、「背景技術」の節を参照)。他のβ−シート破壊剤アミノ酸はアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、リジンおよびセリンを含むが、これに限定されない(ChouおよびFasman(1978),Annu.Rev.Biochem.47,258による)。
【0095】
本発明のこの局面の別の好ましい実施態様によれば、β−シート破壊剤アミノ酸残基は、Cα−メチル化アミノ酸の如き合成アミノ酸であり、その立体構造条件が制限される[Balaram,(1999),J.Pept.Res.54,195〜199]。天然のアミノ酸と違って、Cα−メチル化アミノ酸はCαに結合された水素原子を有し、それはアミド結合のφおよびΨ角に関してそれらの立体特性に幅広く影響する。従って、アラニンは幅広い範囲の可能なφおよびΨ立体構造を有するが、α−アミノイソブチル酸(Aib、上の表2参照)は制限されたφおよびΨ立体構造を有する。従って、少なくとも一つのAib残基で置換される本発明のペプチドは、アミロイドポリペプチドを結合できるが、その凝集を防止する(実施例40〜44参照)。このようなペプチドは配列番号113,114,117,118,121,135,136,137,143,145,149,129および131に記載されている。
【0096】
本発明のこの局面のβ−シート破壊剤アミノ酸はペプチドのX−Y/Y−Xアミノ酸配列の位置Yに位置されることができる(例えば、配列番号123,143,144,145,146,147,148参照)。あるいは、本発明のこの局面のペプチドは少なくとも3個のアミノ酸であることができ、かつX−Y/Y−Xアミノ酸配列以外のいずれかの位置に破壊剤アミノ酸を含む(例えば配列番号117参照)。
【0097】
β−シート破壊剤アミノ酸は芳香族残基の上流に(配列番号122参照)またはその下流に(配列番号123参照)位置されてもよい。
【0098】
本発明のこの局面の一つの好ましい実施態様によれば、ペプチドは3個のアミノ酸の長さであり、Yは芳香族アミノ酸であり、アミノ酸配列X−YまたはY−Xに結合されたアミノ酸残基はβ−シート破壊剤アミノ酸であり、それはペプチドのC末端で結合されることが好ましい(例えば配列番号135および140)。
【0099】
本発明のこの局面の別の好ましい実施態様によれば、ペプチドは2個のアミノ酸の長さであり、かつYはβ−シート破壊剤アミノ酸である(例えば配列番号121,143〜148)。
【0100】
本発明のこの局面の最も好ましい実施態様によれば、ペプチドは下記一般式を有するジペプチドである:
式中、C*はD配置(R配置とも称される)を有するキラルな炭素であり、
R1およびR2は各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボキシ、チオカルボキシ、C−カルボキシレートおよびC−チオカルボキシレートからなる群から選択され;
R3はヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロおよびアミンからなる群から選択され;そして
R4はアルキルである。
【0101】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルキル基は、1個〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルキル基は、1個〜4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロおよびアミノであり得る。
【0102】
「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。シクロアルキル基の非限定な例には、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンがある。シクロアルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロおよびアミノであり得る。
【0103】
「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の非限定的な例には、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルがある。アリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、シクロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、シアノ、ニトロおよびアミノであり得る。
【0104】
「ヒドロキシ」基は−OH基を示す。
【0105】
「アルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0106】
「アリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アリール基を示す。
【0107】
「チオヒドロキシ」基は−SH基を示す。
【0108】
「チオアルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−S−アルキル基および−S−シクロアルキル基の両方を示す。
【0109】
「チオアリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−S−アリール基を示す。
【0110】
「カルボキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−C(=O)−R’基(式中、R’は、水素、ハロ、アルキル、シクロアルキルまたはアリールを示す。
【0111】
「チオカルボキシ」基は−C(=S)−R’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0112】
「C−カルボキシレート」基は−C(=O)−O−R’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0113】
「O−チオカルボキシレート」基は−C(=S)−O−R’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0114】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0115】
「アミン」基は−NR’R’’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りであり、R’’はR’について規定される通りである)を示す。
【0116】
「ニトロ」基は−NO2基を示す。
【0117】
「シアノ」基は−C≡N基を示す。
【0118】
好ましくは、R4はメチルであり、従って上の化合物はD−トリプトファン−α−アミノブチル酸(D−Trp−aibまたはD−トリプトファン−α−メチル−アラニンとも称される)、またはその誘導体である。
【0119】
改変されていないジペプチド、L−配置を有するペプチド、逆転された配置を有するペプチド(即ち、トリプトファン(D/L)のC〜N配列およびα−メチルアラニン)、または上記ペプチド配列を包含する巨大分子(例えば、ペプチド、固定されたペプチド)が知られていることが認識されるだろう(例えば、WO 02/094857,WO 02/094857,EP特許No.966975,US特許No.6255286,6251625,6162828および5304470)。しかしながら、このような分子は上で記載されたペプチドとは化学的にかつ生物学的に異なり、その独自の活性はその構造に厳しく依存する。
【0120】
本発明のペプチドは、好ましくは、直鎖状形態で利用されるが、環化がペプチド特性を大きく妨害しない場合には、環状形態のペプチドもまた利用され得ることが理解される。
【0121】
環状ペプチドは、環状形態で合成され得るか、または所望される条件(例えば、生理学的条件)のもとで環状形態を取るように構成され得るかのいずれかである。
【0122】
例えば、本発明の教示によるペプチドはコアペプチド配列に隣接する少なくとも2個のシステイン残基を含むことができる。この場合において、環化は二つのCys残基間のS−S結合の形成によって作成されることができる。側鎖と側鎖の環化はまた、式−(−CH2−)n−S−CH2−C−(但し、n=1または2である)の相互作用結合の形成によって作成されることができ、それは例えばCysまたはホモCysの含有およびその自由SH基と例えばブロモアセチル化Lys,Orn,DabまたはDapの反応によって可能である。さらに、環化は、例えばアミド結合形成によって、例えばGlu,Asp,Lys,Orn,ジアミノブチル(Dab)酸、ジアミノプロピオン(Dap)酸を鎖(−CO−NHまたは−NH−CO結合)の様々な位置に含ませることによって得られることができる。骨格と骨格の環化はまた、式H−N((CH2)n−COOH)−C(R)H−COOHまたはH−N((CH2)n−COOH)−C(R)H−NH2(式中、n=1〜4であり、さらにRはアミノ酸の天然または非天然の側鎖である)の改変されたアミノ酸によって得られることができる。
【0123】
従って、本発明は、原繊維の会合を導くアミロイドペプチドの構造的決定因子の正体に関する結論的データを提供する。
【0124】
そのため、本発明により、アミロイドーシスの予防/処置または診断のために利用することができる様々なペプチド配列の設計が可能になる。
【0125】
実施例6〜35に記載されているように、本発明者は数多くのアミロイド関連タンパク質において本発明のコンセンサスな芳香族配列(配列番号7)を同定することができたことが理解される。従って、本発明により、本質的にすべてのアミロイド形成タンパク質のアミロイド形成フラグメントを正確に同定することが可能になる。
【0126】
さらに、小さい芳香族分子、例えば、Ro47−1816/001[Kuner他(2000)、J.Biol.Chem.、275:1673〜8、図2a参照]および3−p−トルオイル−2−[4’−(3−ジエチルアミノプロポキシ)フェニル]ベンゾフラン[Twyman(1999)、Tetrahedron Letters、40:9383〜9384]などが、アルツハイマー病のβ−ポリペプチドの重合を阻害することにおいて有効であることが明らかにされており[Findeis他(2000)、Biochem.Biophys.Acta、1503:76〜84]、その一方で、芳香族要素を含有するアミロイド特異的色素、例えば、コンゴーレッド(図2b)およびチオフラビンT(図2c)などが一般的なアミロイド形成阻害剤であるという事実は、本発明の認識モチーフを、アミロイドの自己会合のためには十分であることを実証している。
【0127】
本発明のペプチドを得ることができることにより、アミロイド斑を解離させるために、またはアミロイド斑の形成を予防するために使用することができる、本発明のペプチドに対する抗体を作製することが可能になる(米国特許第5688561号)。
【0128】
用語「抗体」は、完全な抗体分子、ならびに、マクロファージに結合することができるその機能的フラグメント、例えば、Fab、F(ab’)2およびFvなどを示す。これらの機能的な抗体フラグメントは下記のように定義される:(i)Fab、抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含有するフラグメントであり、完全な抗体を酵素パパインで消化して、完全な軽鎖と、一方の重鎖の一部とを生じさせることによって製造することができるフラグメント;(ii)Fab’、完全な抗体をペプシンで処理し、その後、還元して、完全な軽鎖と、重鎖の一部とを生じさせることによって得ることができる抗体分子のフラグメント;抗体分子1個あたり2つのFab’フラグメントが得られる;(iii)F(ab’)2、完全な抗体を、その後の還元を伴うことなく、酵素ペプシンで処理することによって得ることができる抗体のフラグメント;F(ab’)2は、2つのFab’フラグメントが2つのジスルフィド結合によって互いに結合している二量体である;(iv)Fv、これは、2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作されたフラグメントとして規定される;および(v)単鎖抗体(「SCA」)、遺伝子融合された単一鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子。
【0129】
これらのフラグメントを作製する様々な方法がこの分野では知られている(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1988(これは参考として組み込まれる)を参照のこと)。
【0130】
抗体(すなわち、モノクローナルおよびポリクローナル)を作製する様々な方法がこの分野では広く知られている。抗体は、この分野で知られているいくつかの方法のいずれか1つによって作製することができる。そのような方法では、抗体分子のインビボ産生の誘導、開示されているように免疫グロブリンライブラリーまたは非常に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすること[Orlandi D.R.他(1989)、Proc.Natl.Acad.Sci.、86:3833〜3837;Winter G.他(1991)、Nature、349:293〜299]、あるいは、培養での連続した細胞株によるモノクローナル抗体分子の作製を用いることができる。これらには、限定されないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびエプスタイン−バールウイルス(EBV)−ハイブリドーマ技術が含まれる[Kohler G.他(1975)、Nature、256:495〜497;Kozbor D.他(1985)、J.Immunol.Methods、81:31〜42;Cote R.J.他(1983)、Proc.Natl.Acad.Sci.、80:2026〜2030;Cole S.P.他(1984)、Mol.Cell.Biol.、62:109〜120]。
【0131】
本発明による抗体フラグメントは、抗体のタンパク質分解的加水分解によって、またはフラグメントをコードするDNAの大腸菌もしくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物もしくは他のタンパク質発現システム)での発現によって調製することができる。
【0132】
抗体フラグメントは、従来の方法による完全な抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体フラグメントを、F(ab’)2として示される5Sフラグメントを得るためにペプシンによる抗体の酵素切断によって作製することができる。このフラグメントは、3.5SのFab’一価フラグメントを作製するために、チオール還元剤と、そして必要な場合には、ジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基に対する保護基とを使用してさらに切断することができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素切断では、2つの一価Fab’フラグメントおよび1つのFcフラグメントが直接生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4036945号および同第4331647号、ならびにそれらに含まれる参考文献に記載されている(そのような特許はその全体が参考として本明細書により組み込まれる)。Porter、R.R.、Biochem.J.、73:119〜126、1959もまた参照のこと。フラグメントが、完全な抗体により認識される抗原に結合する限り、抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽−重鎖フラグメントを形成させるための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、あるいは、他の酵素的技術、化学的技術または遺伝学的技術などもまた使用することができる。
【0133】
Fvフラグメントは、VH鎖およびVL鎖の会合を含む。この会合は、Inbar他、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、69:2659〜62、1972に記載されるように非共有結合であり得る。あるいは、可変鎖を、分子間ジスルフィド結合によって連結することができ、または、グルタルアルデヒドなどの化学試薬によって架橋することができる。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによってつながれたVH鎖およびVL鎖を含む。これらの単鎖の抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによってつながれたVHドメインおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、その後、発現ベクターは、大腸菌などの宿主細胞に導入される。組み換え宿主細胞により、リンカーペプチドが2つのVドメインをつないでいる単一のペプチド鎖が合成される。sFvを製造するための様々な方法が、例えば、WhitlowおよびFilpula、Methods、2:97〜105、1991;Bird他、Science、242:423〜426、1988;Pack他、Bio/Technology、11:1271〜77、1993;Ladner他、米国特許第4946778号(これらはその全体が参考として本明細書により組み込まれる)によって記載される。
【0134】
別の形態の抗体フラグメントは、1つだけの相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識ユニット」)を、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製される。例えば、LarrickおよびFry、Methods、2:106〜10、1991を参照のこと。
【0135】
ヒトへの適用の場合、本発明の抗体は、好ましくは、ヒト化される。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合性の部分配列など)のキメラ分子である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補的決定領域(CDR)に由来する残基が、所望する特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体または導入されたCDR配列もしくはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含むことができる。一般に、ヒト化抗体は、実質的にすべての可変ドメイン、または少なくとも1つの可変ドメイン、典型的には2つの可変ドメインを含み、この場合、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含み、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜329(1988);Presta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596(1992)]。
【0136】
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法がこの分野では広く知られている。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上のアミノ酸残基が、非ヒトである供給源からその中に導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、導入可変ドメインから典型的には選ばれる導入残基として示されることが多い。ヒト化は、本質的には、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって、Winterおよび共同研究者の方法[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜327(1988);Verhoeyen他、Science、239:1534〜1536(1988)]に従って行うことができる。従って、そのようなヒト化抗体は、実質的には全体ではないヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4816567号)。実際、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基およびおそらくはいくつかのFR残基が齧歯類抗体における類似部位に由来する残基によって置換されているヒト抗体である。
【0137】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレーライブラリー[HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marks他、J.Mol.Biol.、222:581(1991)]を含む、この分野で知られている様々な技術を使用して製造することができる。Cole他およびBoerner他の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体を調製するために利用することができる[Cole他、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985);Boerner他、J.Immunol.、147(1):86〜95(1991)]。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されている遺伝子組換え動物(例えば、マウス)に導入することによって作製することができる。抗原刺激したとき、ヒト抗体の産生が観測され、その抗体産生は、遺伝子再配置、組み立ておよび抗体レパートリーを含むすべてのことにおいてヒトで見られる抗体産生と非常に類似している。この方法は、例えば、米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号、同第5661016号に記載され、また、下記の科学的刊行物に記載される:Marks他、Bio/Technology、10、779〜783(1992);Lonberg他、Nature、368:856〜859(1994);Morrison、Nature、368:812〜13(1994);Fishwild他、Nature Biotechnology、14、845〜51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology、14、826(1996);LonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.、13:65〜93(1995)。
【0138】
本明細書中上記で述べられたように、本発明のペプチドに対する1つの具体的な使用は、アミロイド斑形成に関連する疾患の予防または処置である。
【0139】
従って、本発明のさらにまた別の局面によれば、個体におけるアミロイド関連疾患を処置する方法が提供される。本発明による好ましい個体対象は哺乳動物であり、例えば、イヌ、ネコ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒトなどである。
【0140】
用語「処置する」は、アミロイド斑形成を減少させるか、もしくは予防すること、または、罹患組織における斑の出現を実質的に減少させることを示す。表現「アミロイド斑」は、原繊維アミロイド、ならびに、凝集したが、原繊維ではないアミロイド(以降、「プロト原繊維アミロイド」、これもまた病原性であり得る)を示す。例えば、凝集したが、必ずしも原繊維ではない形態のIAPPが、培養において毒性であることが見出された。Anaguianoおよび共同研究者[(2002)、Biochemistry、41:11338〜43]によって示されるように、プロト原繊維IAPPは、パーキンソン病の病理発生に関係しているプロト原繊維α−シヌセリンと同様に、合成された小胞を細孔様機構によって透過した。IAPPアミロイド細孔の形成は、早期のIAPPオリゴマーの形成およびその消失からアミロイド原繊維の出現までと一時的に相関していた。これらの結果は、プロト原繊維IAPPが、他のプロト原繊維タンパク質がアルツハイマー病およびパーキンソン病の発症にとって重要であるようにII型糖尿病にとって重要であり得ることを示唆している。
【0141】
本発明に従って処置されるアミロイド関連疾患には、II型糖尿病、アルツハイマー病(AD)、早発型アルツハイマー病、遅発型アルツハイマー病、前徴アルツハイマー病、パーキンソン病、SAAアミロイドーシス、遺伝性アイスランド症候群、多発性骨髄腫、髄様ガン、大動脈の医学的ガン腫、インスリン注射アミロイドーシス、プリオン全身性アミロイドーシス、慢性炎症アミロイドーシス、ハンチントン病、老年性全身性アミロイドーシス、下垂体アミロイドーシス、遺伝性腎アミロイドーシス、家族性英国痴呆、フィンランド遺伝性アミロイドーシス、家族性非神経障害性アミロイドーシス[Gazit(2002)、Curr.Med.Chem.、9:1667〜1675]、そして、プリオン病(ヒツジおよびヤギのスクレイピー、ならびに、ウシ類のウシ海綿状脳症(BSE)を含む)[WilesmithおよびWells(1991)、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、172:21〜38]、そして、ヒトのプリオン病(これには、(i)クールー、(ii)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(iii)ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)および(iv)致死性家族性不眠症(FFI)が含まれる)[Gajdusek(1977)、Science、197:943〜960;Medori、Tritschler他(1992)、N Engl J Med、326:444〜449]が含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
本発明の方法は、本発明のペプチドの治療有効量を個体に与えることを含む。ペプチドは、様々な送達方法のいずれか1つを使用して与えることができる。様々な送達方法および好適な配合物が、薬学的組成物に関して本明細書中以下に記載される。
【0143】
アミロイド疾患を処置するために用いられたとき、本発明のペプチドは、原繊維形成を防止するために、または、原繊維形成を減少させるために、または、事前に形成された凝集物を競合的に脱安定化させることにより、形成された凝集物を脱凝集するために好適なアミノ酸配列を含むことが理解される。例えば、配列番号45,112〜123,125,127,128〜149および150は、アミロイド疾患(特にII型糖尿病)を処置するために利用することができる。これは、下記の実施例の節の実施例35および実施例45に示すように、そのような配列が、阻害ペプチドの存在下ではチオフラビンTと結合するアミロイド形成ペプチドの能力が低いことによって明らかであるように、IAPPの自己会合を妨害するからである。
【0144】
あるいは、配列番号10または配列番号11に示すペプチドは、下記の実施例の節に示すように、ペプチドにおけるロイシンまたはイソロイシンのいずれかの置換により、非常に遅い凝集速度論が誘発されるので、II型糖尿病の強力な阻害剤として使用することができる。インビボでのアミロイド形成は非常に遅いプロセスであるので、生理学的条件のもとでは、全長IAPPの場面においてイソロイシンまたはロイシンをアラニンに置換したときには、原繊維化が生じないと考えられる。
【0145】
あるいは、自己凝集性ペプチド、例えば、配列番号17、配列番号19および配列番号28〜配列番号30に示すペプチドなどをアミロイド原繊維化の強力な阻害剤として使用することができる。これは、そのようなペプチドは、アミロイドフラグメントによって形成されるホモ分子会合体ほどには秩序を有していないヘテロ分子複合体を形成することができるからである。
【0146】
短いペプチドフラグメントを治療で使用する際の大きな障害の1つは、立体特異的な細胞プロテアーゼによるそのタンパク質分解的分解であるので、本発明のペプチドは、好ましくは、天然アミノ酸のD−異性体から合成されることが理解される[すなわち、インベルソ(inverso)ペプチドアナログ、Tjernberg(1997)、J.Biol.Chem.、272:12601〜5;Gazit(2002)、Curr.Med.Chem.、9:1667〜1675]。
【0147】
さらに、本発明のペプチドには、そのレトロアナログ、インベルソアナログおよびレトロ−インベルソアナログが含まれる。ホルモンの完全なレトロ−インベルソアナログまたは延長された部分的なレトロ−インベルソアナログは、生物学的活性を保持または増強することが一般に見出されていることが理解される。レトロ反転化はまた、酵素阻害剤の合理的な設計の分野に適用されている(米国特許第6261569号を参照のこと)。
【0148】
本明細書中で使用される「レトロペプチド」は、本来のペプチド配列とは反対方向で組み立てられる、L−アミノ酸残基から構成されるペプチドを示す。
【0149】
天然に存在するポリペプチドのレトロインベルソ改変では、α−炭素立体化学が対応のL−アミノ酸のα−炭素立体化学とは逆であるアミノ酸、すなわち、D−アミノ酸またはD−allo−アミノ酸からの、本来のペプチド配列とは逆の順序での合成的な組み立てが伴う。従って、レトロインベルソアナログは、逆になった末端および逆方向のペプチド結合を有し、その一方で、本来のペプチド配列におけるような側鎖のトポロジーを本質的に維持している。
【0150】
さらに、アミロイド原繊維形成における主要な争点の1つは、本来の形態から積み重なったβ鎖構造へのアミロイドポリペプチドの移行であるので、阻害ペプチドは、好ましくは、立体効果のためにペプチド骨格を制約するN−メチル化アミノ酸を含む[Kapurniotu(2002)、315:339〜350]。例えば、アミノイソ酪酸(Aibまたはメチルアラニン)は、短い天然ペプチドにおけるα−ヘリックス構造を安定化することが知られている。さらに、N−メチル化はまた、分子間のNHからCOへのH結合能に影響を及ぼし、従って、H結合を形成する相互作用によって安定化される多層β鎖の形成を抑制する。
【0151】
コリル基などの有機基を本発明のペプチドのN末端またはC末端に付加することは、治療ペプチドの効力および生物利用性(例えば、神経変性疾患の場合における血液脳関門の横断)を改善することが示されているので好ましいと理解される[Findeis(1999)、Biochemistry、38:6791〜6800]。さらに、電荷を有しているアミノ酸を認識モチーフに導入することにより、アミロイド原繊維のさらなる成長を阻害する静電的反発を生じさせることができる[Lowe(2001)、J.Mol.Biol.、40:7882〜7889]。
【0152】
本明細書中上記に述べたように、本発明の抗体はまた、アミロイド関連疾患を処置するために使用することができる。
【0153】
本発明のペプチドおよび/または抗体は、そのものとして、または、薬学的に受容可能なキャリアと混合されている薬学的組成物の一部として個体に与えることができる。
【0154】
本明細書で使用する「医薬組成物」は、本明細書の記載する有効成分の1つまたは複数と、他の化学成分(例えば生理学的に適切なキャリアおよび賦形剤)との製剤を指す。医薬組成物の目的は生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0155】
本明細書において「有効成分」という用語は、生物学的効果を説明できるペプチドまたは抗体調製物を指す。
【0156】
以下、交互に用いられる「生理学的に受容可能なキャリア」および「医薬的に許容できるキャリア」という用語は、生物にとって著しい刺激の原因にならず、かつ投与される化合物の生物活性および特性を抑止しないキャリアまたは希釈剤を指す。アジュバントがこれらの用語に含まれる。医薬的に許容できるキャリアに含まれる成分の1つは、例えばポリエチレングリコール(PEG)、有機媒体および水性媒体の両方で広範囲の可溶性を有する生物適合ポリマーでありうる[Mutterら(1979)]。
【0157】
本明細書において「賦形剤」という用語は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の例には炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、様々なタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールなどがあるが、これらに限るわけではない
【0158】
薬物の製剤および投与に関する技術は「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.(ペンシルバニア州イーストン)の最新版に見いだすことができ、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0159】
適当な投与経路としては、例えば経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻腔送達、腸管送達または腸管外送達(筋肉内注射、皮下注射、および骨髄内注射、ならびに髄腔内注射、直接脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注入、または眼内注射を含む)などを挙げることができる。
【0160】
また、全身的な方法よりもむしろ、例えば患者の体の特定の領域に直接調製物を注射する局所的な方法で調製物を投与してもよい。
【0161】
本発明の医薬組成物は当技術分野で周知の方法により、例えば通常の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、捕捉または凍結乾燥法などを利用して製造することができる。
【0162】
本発明で使用される医薬組成物は、有効成分を医薬として使用できる製剤に加工しやすくする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容できるキャリアを使って、常法により製剤化することができる。適切な製剤は選択した投与経路に依存する。
【0163】
注射の場合は、水性溶液(好ましくはハンクス液、リンゲル液または生理食塩水緩衝液などの生体適合緩衝液)に、本発明の有効成分を製剤化することができる。経粘膜投与の場合は、浸透される壁に適切な浸透剤を製剤中に添加する。そのような浸透剤は当技術分野では広く知られている。
【0164】
経口投与の場合は、活性化合物を当技術分野で周知の医薬的に許容できるキャリアと混合することにより、化合物を容易に製剤化することができる。前記キャリアを使用することにより、本発明の化合物を、患者による経口摂取用の錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することができる。経口用医薬品は固形の賦形剤を使用し、随意に、得られた混合物を粉砕し、所望により適当な補助剤を添加してから、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠の核錠を得ることによって、製造することができる。適切な賦形剤には、充填剤、例えば乳糖、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類、セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理的に許容できるポリマーがある。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を添加してもよい。
【0165】
糖衣錠の核錠には適当なコーティングが施される。この目的には濃厚な糖溶液を使用することができ、その糖溶液は、所望により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含むことができる。識別のためまたは活性成分量の様々な組合わせを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠剤皮に染料または顔料を加えてもよい。
【0166】
経口使用が可能な医薬組成物には、ゼラチン製の押込み式カプセル剤ならびにゼラチンと可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)とでできた軟密封カプセル剤が含まれる。押込み式カプセル剤は、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および所望により安定剤と混合した有効成分を含むことができる。軟カプセル剤の場合は、有効成分を適当な液体(脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁することができる。さらに安定剤を加えてもよい。経口投与用製剤は全て、選択した投与経路に適した投与量でなければならない。
【0167】
経口腔粘膜投与の場合、本組成物は常法によって製剤化された錠剤または口中錠の形態をとることができる。
【0168】
鼻腔吸入による投与の場合、本発明で使用するための有効成分は、適当な噴射剤(例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、または二酸化炭素)を使って、加圧容器または噴霧器から、エアロゾルスプレーの形で便利に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、バルブを設けて、計量した量を送達することによって、決定することができる。本化合物と適当な粉末基剤(乳糖またはデンプンなど)との粉末混合物を含む、ディスペンサーの(例えばゼラチン製)カプセルおよびカートリッジを処方することもできる。
【0169】
本明細書に記載の調製物は、例えばボーラス注射または持続注入などによる非経口投与用に製剤化することもできる。注射用製剤は、例えばアンプルなどに一回量型として、または多用量容器に入れて、所望により保存剤を添加して提供することができる。本組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションであることができ、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの調剤用薬剤を含んでもよい。
【0170】
非経口投与用の医薬組成物として、水溶性活性調製物の水溶液が挙げられる。また、有効成分の懸濁液を適当な油性または水性注射懸濁液として調製することもできる。適切な親油性の溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルなどの合成脂肪酸エステル、トリグリセリドまたはリポソームなどがある。水溶性注射懸濁剤は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含んでもよい。所望により、本懸濁剤は、高濃度溶液の調製物を得ることができるように、有効成分の溶解度を増加させる適当な安定化剤または化合物をさらに含んでもよい。
【0171】
また、有効成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば滅菌パイロジェンフリー水)で構成させる粉末の形態をとってもよい。
【0172】
本発明の調製物は、例えば通常の坐剤用基剤(カカオ脂または他のグリセリドなど)を使って、坐剤または停留浣腸剤などの直腸用組成物に製剤化することもできる。
【0173】
本発明で使用するのに好適な医薬組成物は、有効成分が意図した目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物を含む。より具体的には、治療有効量とは、病気の症状を予防、緩和または改善するのに有効な、あるいは処置される対象の生存を延長させるのに有効な有効成分の量を意味する。
【0174】
治療有効量の決定は当業者の能力の範囲内でよい。
【0175】
本発明の方法において使用される調製物に関して、治療有効量または用量は、まずインビトロアッセイによって推定することができる。例えば、用量を、動物モデルで策定することができ、そのような情報を使って、ヒトで有効な用量をより正確に決定することができる。
【0176】
本明細書に記載する有効成分の毒性および治療効力は、標準的なインビトロ薬学的手法により、細胞培養または実験動物で決定することができる。これらのインビトロ、細胞培養アッセイおよび動物実験で得られたデータは、ヒトに使用する用量範囲の策定に利用することができる。投与量は、利用する投与経路に依存して、この範囲内で変動しうる。個々の医師は患者の状態を考慮して正確な処方、投与経路および投与量を選択することができる(例えば「The Pharmacological Basis of Therapeutics」(1975)第1章、第1頁のFinglらの記事を参照されたい)。
【0177】
処置すべき状態の重症度および反応性に応じて、投与は単回投与または複数回投与とすることができる。この場合、処置は数日〜数週間または治癒が達成されるか疾患状態の軽減が達成されるまで持続する。
【0178】
投与すべき組成物の量は、当然ながら、処置対象、病気の重症度、投与方法、処方医の判断などに依存するだろう。
【0179】
また、適合する医薬キャリア中に調剤された本発明の調製物を含む組成物を製造し、適当な容器に入れ、表示された状態の処置に関する表示をすることができる。
【0180】
本発明の組成物は、所望により、有効成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含有するパックまたはディスペンサー装置、例えばFDA認可キットとして提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックのように金属箔またはプラスチック箔からなってもよい。パックまたはディスペンサー装置には、投与上の注意を添付してもよい。パックまたはディスペンサーには、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって指定された形式で容器に添付された、組成物の形状またはヒトもしくは動物への投与に関する当局の認可を示す通知を載せてもよい。そのような通知は、例えば処方薬に関して米国食品医薬品局によって許可されたラベリング、または許可された添付書類であることができる。
【0181】
本発明のペプチドまたは抗体はまた、本明細書中上記に記載される任意の好適な投与様式を用いて個体に投与された核酸構築物から発現させることができることが理解される(すなわち、インビボ遺伝子治療)。あるいは、核酸構築物が、適切な遺伝子送達ビヒクル/方法(トランスフェクション、形質導入、相同組み換えなど)および必要とされる場合には発現システムによって好適な細胞に導入され、その後、改変された細胞が培養で拡大され、個体に戻される(すなわち、エクスビボ遺伝子治療)。
【0182】
本発明のペプチドまたは抗体の細胞発現を可能にするために、本発明の核酸構築物はさらに、少なくとも1つのシス作用調節エレメントを含む。本明細書中で使用される表現「シス作用調節エレメント」は、トランス作用調節因子と結合し、その下流に位置するコード配列の転写を調節するポリヌクレオチド配列(好ましくは、プロモーター)を示す。
【0183】
任意の利用可能なプロモーターを本発明の方法論によって使用することができる。本発明の好ましい実施形態において、本発明の核酸構築物によって利用されるプロモーターは、形質転換された特定の細胞集団において活性である。細胞タイプ特異的および/または組織特異的なプロモーターの例には、肝臓特異的であるアルブミンなどのプロモーター[Pinkert他(1987)、Genes Dev.、1:268〜277]、リンパ系特異的プロモーター[Calame他(1988)、Adv.Immunol.、43:235〜275]、特にT細胞受容体のプロモーター[Winoto他(1989)、EMBO J.、8:729〜733]および免疫グロブリンのプロモーター[Banerji他(1983)、Cell、33729〜740]、ニューロン特異的プロモーター、例えば、ニューロフィラメントプロモーター[Byrne他(1986)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:5473〜5477]など、膵臓特異的プロモーター[Edlunch他(1985)、Science、230:912〜916]、または乳腺特異的プロモーター、例えば、乳清プロモーター(米国特許第4873316号および欧州特許出願公開第264166号)などが含まれる。本発明の核酸構築物はさらにエンハンサーを含むことができ、エンハンサーは、プロモーター配列の近くまたは遠くに存在させることができ、プロモーターからの転写をアップレギュレーションするように機能し得る。
【0184】
本発明の方法論の構築物はさらに、好ましくは、適切な選択マーカーおよび/または複製起点を含む。好ましくは、利用される構築物はシャトルベクターであり、これは、大腸菌(この場合、構築物は適切な選択マーカーおよび複製起点を含む)においてともに増殖することができ、細胞における増殖、選ばれた遺伝子および組織における組み込みのために適合性を有することができる。本発明による構築物は、例えば、プラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体であり得る。
【0185】
現在好ましいインビボ核酸導入技術には、アデノウイルス、レンチウイルス、I型単純ヘルペスウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)、および脂質に基づくシステムなどのウイルス構築物または非ウイルス構築物によるトランスフェクションが含まれる。遺伝子の脂質媒介導入のための有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPEおよびDC−Cholである[Tonkinson他、Cancer Investigation、14(1):54〜65(1996)]。遺伝子治療において使用される最も好ましい構築物はウイルスであり、最も好ましくは、アデノウイルス、AAV、レンチウイルスまたはレトロウイルスである。レトロウイルス構築物などのウイルス構築物は、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサーもしくは遺伝子座規定エレメント(1つまたは複数)、または、選択的スプライシング、核RNAの核外輸送、もしくはメッセンジャーの翻訳後修飾などの他の手段により遺伝子発現を調節する他のエレメントを含む。そのようなベクター構築物はまた、ウイルス構築物に既に存在していない場合、パッキングシグナル、長末端反復(LTR)またはその一部、そして、使用されるウイルスに対して適切なプラス鎖プライマー結合部位およびマイナス鎖プライマー結合部位を含む。さらに、そのような構築物は、典型的には、ペプチドまたは抗体を、それらが存在する宿主細胞から分泌させるためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は哺乳動物のシグナル配列である。場合により、構築物はまた、ポリアデニル化を行わせるシグナル、ならびに1つ以上の制限部位、および翻訳終結配列を含むことができる。例として、そのような構築物は、典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッキングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、および3’LTRまたはその一部を含む。非ウイルスである他のベクターを使用することができる(例えば、カチオン性脂質、ポリリジンおよびデンドリマーなど)。
【0186】
本発明のペプチドの自己凝集性のために、そのようなペプチドはまた、生物学的サンプルにおけるアミロイド原繊維/斑の強力な検出剤として使用することができると考えられる。これは、特徴的な神経原繊維変化(NFT)および神経炎性局面について脳組織が死後に調べられた後に明確な診断がなされ得るだけであるアルツハイマー病などのアミロイド関連疾患にとって特に重要である。
【0187】
従って、本発明のさらにまた別の局面によれば、生物学的サンプルにおけるアミロイド原繊維の存在または存在しないことを検出する方法が提供される。
【0188】
この方法は、生物学的サンプルを、アミロイド原繊維と共凝集することができる本発明のペプチドとインキュベーションし、その後、そのペプチドを検出し、それにより、生物学的サンプルにおけるアミロイド原繊維の存在または存在しないことを検出することによって行われる。立体配座的な集合体を認識することができる様々なペプチド試薬がこの分野では知られており、そのいくつかが、Bursavich(2002)、J.Med.Chem.、45(3):541〜58;Baltzer、Chem.Rev.、101(10):3153〜63に総説される。
【0189】
検出のために利用される生物学的サンプルは、任意の身体サンプル、例えば、血液(血清または血漿など)、唾液、腹水、胸水、尿、生検試料、単離された細胞、および/または細胞膜調製物などであり得る。組織生検物および体液を哺乳動物から得る様々な方法がこの分野では広く知られている。
【0190】
本発明のペプチドは、凝集物形成のために好適な条件(すなわち、緩衝液、温度、インキュベーション時間など)のもとで生物学的サンプルと接触させられる。例えば、好適な条件が、実施例の節の実施例2に記載される。生物学的サンプルとのインキュベーションの前にペプチドを事前に凝集させないために様々な対策が取られる。この目的のために、新しく調製されたペプチドストックが好ましくは使用される。
【0191】
生物学的サンプル内のタンパク質複合体を、この分野で知られているいくつかの方法のいずれか1つによって検出することができ、そのような方法では、生化学的および/または光学的な検出スキームを用いることができる。
【0192】
複合体の検出を容易にするために、本発明のペプチドは、好ましくはタグまたは抗体によって標識される。標識化は、標識化方法に依存して、凝集体形成の前に、または凝集体形成と同時に、または凝集体形成の後に行うことができることが理解される。本明細書中で使用される用語「タグ」は、定量可能な活性または特性を示す分子をいう。タグは、フルオレセインなどの化学的蛍光体、または緑色蛍光タンパク質(GFP)もしくは関連タンパク質などのポリペプチド蛍光体(www.clontech.com)を含む蛍光性分子であり得る。そのような場合、タグは、好適な励起光を当てたときに生じるその蛍光によって定量することができる。あるいは、タグは、エピトープタグ、すなわち、特異的な抗体が、他の細胞エピトープと実質的に交差反応することなく結合することができる極めて特有のポリペプチド配列であり得る。そのようなエピトープタグには、Mycタグ、Flagタグ、Hisタグ、ロイシンタグ、IgGタグ、ストレプトアビジンタグなどが含まれる。
【0193】
あるいは、凝集物の検出を本発明の抗体によって行うことができる。
【0194】
従って、本発明のこの局面により、アミロイド原繊維を含むことが疑われる身体組織または体液などの生物学的サンプルをアッセイまたはスクリーニングする方法が提供される。
【0195】
そのような検出方法はまた、アミロイド沈着の予防または分解において有用な強力な薬物を発見するためのアッセイにおいて利用され得ることが理解される。例えば、本発明は、試験化合物の高処理能スクリーニングのために使用することができる。典型的には、本発明の共凝集するペプチドは、アッセイ体積を減少させるために放射標識される。その後、競合アッセイが、試験化合物による標識の置換をモニターすることによって行われる[Han(1996)、J.Am.Chem.Soc.、118:4506〜7;Esler(1996)、Chem.271:8545〜8]。
【0196】
本発明のペプチドはまた、インビボでのアミロイド沈着の強力な検出剤として使用され得ることが理解される。アミロイド沈着物と結合することができる設計されたペプチドは、非放射能的に標識されるか、または放射性同位体で標識され、この分野で広く知られているように、本明細書中上記で議論されたアミロイド関連疾患の発症または存在を診断するために個体に投与することができる。アミロイド沈着物またはアミロイド様沈着物に対するそのような標識されたペプチドの投与後の結合を、この分野で知られているインビボ画像化技術によって検出することができる。
【0197】
本発明のペプチドは診断キットまたは治療キットに含めることができる。例えば、特定の疾患関連タンパク質またはそれに対する抗体のペプチドセットを、適切な緩衝液および保存剤とともに1つ以上の容器に包装することができ、そして、診断のために、または治療的処置を行うために使用することができる。
【0198】
従って、ペプチドは、それぞれを単一の容器において混合することができ、またはそれぞれを個々の容器に入れることができる。好ましくは、容器はラベルを含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジおよび試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。
【0199】
さらに、安定化剤、緩衝剤、遮断剤などの他の添加剤もまた加えることができる。
【0200】
そのようなキットのペプチドはまた、ビーズ、アレイ基体(例えば、チップ)などの固体支持体に結合させることができ、診断目的のために使用することができる。
【0201】
キットに含まれるか、または基体に固定化されるペプチドは、本明細書中上記に記載されるような検出可能な標識に結合させることができる。
【0202】
キットはまた、試験された対象が、目的とするアミロイドポリペプチドに関連する状態、異常または疾患に罹患しているかどうか、あるいはそのような状態、異常または疾患を発症する危険性を有するかどうかを明らかにするための説明書を含むことができる。
【0203】
本発明のさらなる目的、利点、および新規の特徴は、制限を意図しない以下の実施例の実験によって当業者に自明である。さらに、上記の本発明および以下の特許請求の範囲に記載の各々の種々の実施形態および態様は、以下の実施例の実験により支持される。
【実施例】
【0204】
ここでは、上記説明と共に以下の実施例を参照して、非限定的様式で本発明を例示する。
【0205】
一般に、本明細書中で使用した用語および本発明で使用した実験手順には、分子、生化学、微生物学、および組換えDNAの技術が含まれる。このような技術は、文献で完全に説明されている。例えば、“Molecular Cloning: A laboratory Manual”、Sambrook他、(1989);“Current Protocols in Molecular Biology”、第I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubel他、“Current Protocols in Molecular Biology”、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland、(1989);Perbal,“A Practical Guide to Molecular Cloning”、John Wiley&Sons、New York、(1988);Watson他、“Recombinant DNA”、Scientific American Books、New York;Birren他編、“Genome Analysis: A Laboratory Manual Series”、第1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、(1998);米国特許第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号、および同第5272057号に記載の方法;“Cell Biology: A Laboratory Handbook”、第I〜III巻、Cellis,J.E.編、(1994);“Current Protocols in Immunology”、第I〜III巻、Coligan J.E.編、(1994);Stites他編、“Basic and Clinical Immunology”、第8版、Appleton&Lange、Norwalk,CT、(1994);Mishell and Shiigi編、“Selected Methods in Cellular Immunology”、W.H.Freeman and Co.、New York、(1980)を参照のこと;利用可能な免疫アッセイは、特許および化学論文に広く記載されており、例えば、米国特許第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号、および同第5281521号;“Oligonucleotide Synthesis”、Gait,M.J.編、(1984);“Nucleic Acid Hybridization”、Hames,B.D.and Higgins S.J.編、(1985);“Transcription and Translation”、Hames,B.D.and Higgins S.J.編、(1984);“Animal Cell Culture”、Freshney,R.I.編、(1986);“Immobilized Cells and Enzymes”、IRL Press、(1986);“A Practical Guide to Molecular Cloning”、Perbal,B.、(1984)および“Methods in Enzymology”、第1〜317巻、Academic Press、“PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications”、Academic Press、San Diego,CA、(1990);Marshak他、“Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual”、CSHL Press、(1996)(その全てが本明細書中に完全に記載されているかのように参照として援用される)を参照のこと。他の一般的引例を、本明細書中に記載する。引例中の手順は当該分野で周知であると考えられ、読者の都合のために記載する。引例中に含まれる全ての情報は、本明細書中で参考として援用される。
【0206】
(実施例1)
hIAPP基本アミロイド形成ユニットのアラニンスキャン−原理およびペプチド合成
膵臓アミロイドがII型糖尿病患者の95%以上に見出される。膵臓アミロイドは、37アミノ酸長の小島アミロイドポリペプチド(IAPP、GenBankアクセション番号gi:4557655)の凝集によって形成され、その細胞毒性が疾患の発達に直接的に関連している。IAPPアミロイドの形成は、可溶性IAPPから凝集β−シートへの立体配座の移行を介して進行する、核形成に依存した重合プロセスに従っている。近年、IAPPのヘキサペプチド(22〜27)(NFGAIL、配列番号111)(これはまた「基本アミロイド形成ユニット」と呼ばれる)がβ−シート含有アミロイド原繊維の形成に十分であることが示されている[Konstantinos他(2000)、J.Mol.Biol.、295:1055〜1071]。
【0207】
この「基本アミロイド形成ユニット」を構成する残基の特異的な役割に対するさらなる洞察を得るために、体系的なアラニンスキャンを行った。その疎水性またはβ−シート構造を形成する傾向を大きく変化させることなく、ペプチドの分子境界を特異的に変化させるためにアミノ酸をアラニンで置換した。アラニンスキャンを、ヒトIAPPに特有な区域の場面において行った(図3a)。この区域には、全長ポリペプチドにおいてNFGAILモチーフの後に2つのセリン残基が含まれる。これらの8個のアミノ酸のペプチド配列を使用した。これは、これよりも短いペプチドは疎水性であり、そのため、溶解性が低くなっているからである。図3bには、野生型ペプチドの化学構造の概略図を示し、一方、図3cには、作製した種々の変異型ペプチドにおけるアミノ酸置換を示す。
【0208】
方法および試薬−ペプチド合成をPeptidoGenic Research&Co.Inc.(Livermore、CA、米国)によって行った。ペプチド配列が正しいことを、Perkin Elmer Sciex API I分光計を使用してイオンスプレー質量分析法によって確認した。ペプチドの純度を、水および0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)における10%から70%へのアセトニトリルの直線勾配を使用して、C18カラムでの逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって確認した。
【0209】
(実施例2)
濁度測定によってモニターされたときのIAPPペプチドフラグメントおよび変異型誘導体の凝集の速度論
IAPPペプチド由来フラグメントの自己会合を研究するために、凝集および不溶化の速度論を、405nmでの濁度測定を使用してモニターした。
【0210】
速度論的凝集アッセイ−新しいペプチドストック溶液を、凍結乾燥形態のペプチドをDMSO(脱凝集化溶媒)に100mMの濃度で溶解させることによって調製した。何らかの事前の凝集を避けるために、新しいストック溶液を、実験前に毎回その度、調製した。ペプチドストック溶液はアッセイ緩衝液に希釈され、96ウエルプレートに下記のように入れられた:2μlのペプチドストック溶液が98μlの10mM Tris(pH7.2)に加えられ、2%DMSOの存在下でのペプチドの2mMの最終濃度にした。濁度データを405nmで測定した。2%DMSOを含む緩衝液溶液がブランクとして使用された。濁度が数個の時間点について室温で測定した。
【0211】
結果−図4aに示すように、野生型ペプチドフラグメント(配列番号1)は、熟成させていないhIAPPヘキサペプチドについて以前に報告されたプロフィルと非常に類似する凝集速度論プロフィルを示した[Tenidis他(2000)、J.Mol.Biol.、295:1055〜71]。そのようなプロフィルは、核形成に依存した重合機構[JarrettおよびLansbury(1992)、Biochemistry、31:6865〜70]を強く示している。20分の遅れ時間の後、野生型ペプチドは不溶性原繊維に自己会合した。ペプチドG3A(配列番号4)は、野生型ペプチドのプロフィルと本質的に同じプロフィルを示した。N1Aペプチド(配列番号2)は、野生型ペプチドのプロフィルと比較した場合、異なる速度論プロフィルを有するにもかかわらず、より大きい凝集速度論を媒介した。興味深いことに、N1Aの凝集は、核形成依存性がより小さいようであった。イソロイシンまたはロイシンのアラニンへの置換(それぞれ、ペプチドI5A(配列番号5)およびペプチドL6A(配列番号6))は凝集速度論を低下させたが、凝集速度論を完全には止めなかった。フェニルアラニン残基のアラニンへの置換(ペプチドF2A、配列番号3)は、ペプチドの凝集能の完全な喪失をもたらした。F2Aペプチドは水系アッセイ緩衝液において完全に可溶性であった。
【0212】
まとめると、アミロイド形成フラグメントの速度論的凝集研究により、IAPPの活性フラグメントによるアミロイド形成プロセスにおけるフェニルアラニン残基に対する大きな役割が示唆された。
【0213】
(実施例3)
凝集物の平均粒子サイズの測定
濁度アッセイは、様々なペプチドの凝集能および速度論に関して重要な評価をももたらす一方で、形成された実際の凝集物のサイズに関する情報をもたらさなかった。アミロイド構造の見かけの流体力学的直径は、アミロイド構造の不規則性のために変化するが、それにもかかわらず、形成された構造の大きさの程度に関する明らかな目安をもたらすことができ、また、様々なペプチドによって形成される構造を比較するための量的な基準を与えることができる。
【0214】
従って、様々なペプチドによって形成された凝集物の平均サイズを、動的光散乱(DLS)実験を使用して測定した。
【0215】
方法−濃度が10mMである新しく調製したペプチドストック溶液を10mMのTris緩衝液(pH7.2)に希釈し、さらに0.2μmのフィルターでろ過して、100μMペプチドおよび1%DMSOの最終濃度にした。粒子サイズ測定が、レーザー光源のALV−NIBS/HPPS非侵襲的後方散乱装置を用いて行われた。自動補正データが、平均見かけ流体力学的直径を得るために、ALV−NIBS/HPPSソフトウエアを使用して近似した。
【0216】
結果−様々なペプチドによって形成された構造体の平均見かけ流体力学的直径を図5に示す。
【0217】
まとめると、様々なペプチドによって形成された構造体の見かけ流体力学的直径は、濁度アッセイによって得られた結果と一致しているようであった。濁度アッセイの場合のように、野生型ペプチドおよびG3Aペプチドは、非常に類似する流体力学的直径の粒子を形成させた。より小さい構造を、N1A、I5AおよびL6Aの誘導体ペプチドに関して観測した。従って、濁度アッセイと一致して、DLS実験は、大きな粒子が、示した実験条件のもとでは、F2Aペプチドによって形成されなかったことを明瞭に示している。
【0218】
(実施例4)
コンゴーレッド(CR)結合アッセイによる野生型ペプチドおよび誘導体のアミロイド形成能の試験
偏光顕微鏡観察と組み合わせられたコンゴーレッド(CR)染色を、本発明のペプチドのアミロイド形成性を試験するために使用した。アミロイド原繊維は一般に、特に原繊維IAPPはCRと結合し、金色/緑色の複屈折を偏光下で示す[Cooper(1974)、Lab.Invest.、31:232〜8;Lansbury(1992)、Biochemistry、31:6865〜70]。
【0219】
方法および試薬−10mMのTris緩衝液(pH7)で4日間インキュベーションしたペプチド溶液をガラス製の顕微鏡スライドガラス上で乾燥させた。染色を、10mMのTris緩衝液(pH7.2)における1mMのCRを加え、その後、1分間インキュベーションすることにより行った。過剰なCRを除くために、スライドガラスを二回蒸留水で洗浄し、乾燥させた。80%エタノール(v/v)に溶解させた飽和CR溶液を、凝集性が悪いペプチドについて使用した。そのような場合、染色を、洗浄することなく行った。複屈折を、偏光ステージを備えたWILD Makroskop m420(x70)を使用して測定した。
【0220】
結果−野生型、N1AおよびG3AのペプチドはCRと結合して、特徴的な緑色/金色の複屈折を示した(通常の場については図6g、図6aおよび図6eを、そして偏光下での顕微鏡観察については図6h、図6bおよび図6fをそれぞれ参照のこと)。I5AおよびL6AのペプチドはCRと結合し、そして、希ではあったが、特徴的な複屈折を示した(通常の場についてはそれぞれ図6iおよび図6k、そして偏光についてはそれぞれ図6jおよび図6l)。ペプチドF2A(NAGAIL)はCR結合能を示さなかった(通常の場について図6c、そして偏光については図6d)。CRで染色した乾燥後の緩衝液溶液を陰性コントロールとして使用した(通常の光および偏光について図6mおよび図6nをそれぞれを参照のこと)。興味深いことに、結合性の大きな違いが、陰性コントロールおよびF2Aペプチドについては観察されなかった。
【0221】
F2Aペプチドは原繊維を形成することができないことを実証するために、14日間インキュベーションしたペプチド溶液を結合アッセイにおいて使用した。ある程度の凝集が、2週間にわたりペプチドを「寝かせた」後で目視により観察されたが、CR染色はアミロイド構造を何ら示さなかった(結果は示されず)。同じ条件のもとで、野生型ペプチドのインキュベーションは著しいCR複屈折をもたらした。
【0222】
(実施例5)
原繊維形成性のペプチドおよび変異型の超微細構造分析
様々なペプチドの潜在的原繊維形成能を電子顕微鏡観察分析によって評価した。
【0223】
方法−ペプチド溶液(10mMのTris緩衝液(pH7.2)における2mMのペプチド)を室温で一晩インキュベーションした。原繊維形成を、200メッシュの銅グリッドに置き、カーボン安定化ホルムバールフィルム(SPI Supplies、West Chester、PA)で覆った10μlのサンプルを使用して評価した。20秒〜30秒のインキュベーションの後、過剰な液体を除き、グリッドを2%酢酸ウラニル水溶液でネガティブ染色した。サンプルを、80kVで稼働するJEOL 1200EX電子顕微鏡で調べた。
【0224】
結果−様々なペプチドによって形成された構造をさらに特徴づけるため、ネガティブ染色の電子顕微鏡観察分析を行った。以前の結果と一致して、フィラメント構造が、無定形の原繊維を生じさせたF2A(図7b)を除くすべてのペプチドについて観察された(図7a〜図7f)。I5AペプチドおよびL6Aペプチドによって形成された原繊維(それぞれ、図7eおよび図7f)の出現頻度は、野生型ペプチド(図7d)、N1AペプチドおよびG3Aペプチド(それぞれ、図7aおよび図7c)の出現頻度と比較して低かった。F2A、I5AおよびL6Aのペプチドについて示されるEM場はまれにしか観察されなかったが、これらの画像によって示された結果は、前節に示された量的結果を裏付けており、従って、原繊維形態学の定性的分析を提供している。
【0225】
野生型、N1AおよびG3Aのペプチドについて観察されたもつれた網状構造は、これらの原繊維の速い形成速度論によって説明することができる(実施例2参照)。より明瞭な構造およびより長い原繊維が、低頻度にもかかわらず、I5AペプチドおよびL6Aペプチドについて観察された。これらのより長い原繊維は、より秩序だった原繊維の組織化を可能にする、より遅い速度論の結果であり得る。
【0226】
まとめると、電子顕微鏡観察およびCR分析の定性的結果は、ヘキサアミロイドペプチドにおけるフェニルアラニン残基がそのアミロイド形成能のために非常に重要であることを強く示唆している。
【0227】
(実施例6)
hIAPPの基本アミロイド形成ユニットにおける認識ドメインのマッピング−原理およびMBP−IAPP融合タンパク質合成
潜在的な認識ドメインを体系的にマッピングおよび比較するために、hIAPPの配列全体にわたる28個のメンブランスポットの重複するペプチド(すなわち、hIAPP1〜10、hIAPP2〜11、・・・、hIAPP28〜37)のアレイと相互作用するhIAPP(GenBankアクセション番号gi:4557655)の能力を検討した[Mazor(2002)、J.Mol.Biol.、322:1013〜24]。
【0228】
材料および実験手順
細菌株−大腸菌株TG−1(Amersham Pharmacia、スウェーデン)を分子クローニングおよびプラスミド増殖のために使用した。細菌株BL21(DE3)(Novagen、米国)をタンパク質過剰発現のために使用した。
【0229】
合成IAPPおよびMBP−IAPP融合タンパク質の操作−細菌のコドン使用頻度を含むように改変さしたヒトIAPPの合成DNA配列(配列番号58)を、8個の重複するプライマー(配列番号50〜57)をアニーリングすることによって作製した。PCRが、95℃で1分間、55℃で1分間および72℃で1分間の30サイクルによって行われた。アニーリング生成物を連結し、IAPP1プライマー(配列番号50)およびIAPP8プライマー(配列番号57)を使用して増幅した。その後、MBP−IAPP(MBP GenBankアクセション番号gi:2654021)融合配列を、IAPP合成テンプレートを使用して構築し、その後、このテンプレートを、YAR2(配列番号60)プライマーおよびYAR1プライマー(配列番号59)を使用して増幅し、それにより、V8 Ek切断部位および(His)6タグをIAPPのN末端に挿入した。2つのプライマーはNotIおよびNcoIのクローニング部位をそれぞれ含んだ。得られたPCR産物をNcoIおよびNotIで消化し、pMALc2x−NN発現ベクターに連結した。pMALc2x−NN発現ベクターは、pMALc−NN19のポリリンカー部位をpMALc2x(New England Biolabs、米国)にクローン化することによって構築した[BACH(2001)、J.Mol.Biol.、312:79〜93]。
【0230】
タンパク質の発現および精製−強いPtacプロモーターの下流にMBP−IAPPをコードする発現プラスミドpMALc2x−IAPPによって形質転換した大腸菌BL21細胞を、100μg/mlのアンピシリンおよび1%(W/V)のグルコースを補充した200mlのLB培地で生育させた。A600=0.8の光学密度に達すると、タンパク質の発現を、30℃で3時間、0.1mMまたは0.5mMのIPTGで誘導した。
【0231】
細胞抽出物を、以前の記載[Gazit(1999)、J.Biol.Chem.、274:2652〜2657]のように、凍結−融解、その後の短時間の超音波処理を使用して、20mMのTris−HCl(pH7.4)、1mMのEDTA、200mMのNaCl、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)において調製した。タンパク質抽出物を、20,000gでの遠心分離によって清澄化し、4℃で保存した。MBP−IAPP融合タンパク質を、抽出物をアミロース樹脂カラム(New England Biolabs、米国)に通すことによって精製し、同じ緩衝液における20mMのマルトースによる溶出によって回収した。精製したMBP−IAPPは4℃で保存した。タンパク質濃度を、BSAを標準としてPierce Coomassieプラス試薬(Pierce、米国)を使用して測定した。MBPおよびMBP−IAPPのタンパク質画分をSDS/12%ポリアクリルアミドゲルで分析し、ゲルをGelCode Blue(Pierce、米国)で染色した。
【0232】
MBP−IAPP内のジスルフィド結合が酸化されているかどうかを調べるために、精製したMBPタンパク質およびMBP−IAPPタンパク質を5当量のN−ヨードアセチル−N’−(8−スルホ−1−ナフチル)エチレンジアミン(IAEDANS)(Sigma、Rehovot、イスラエル)と暗所において室温で一晩反応させた。遊離した色素を、標識されたタンパク質から、QuickSpin G−25 Sephadexカラムでのゲルろ過クロマトグラフィーによって分離した。その後、MBPおよびMBP−IAPPの蛍光を測定した。小さい蛍光標識化が検出されただけであった(平均して、タンパク質分子あたり0.1未満のプローブ分子)。MBPおよびMBP−IAPPの標識化の間には大きな差は認められなかった。このことは、発現したIAPP分子におけるジスルフィド架橋は大部分が酸化されていたことを示唆していた。
【0233】
結果
組み換えMBP−IAPPの発現および精製−完全なhIAPPを細菌において発現させる以前の試みは成功していなかったので、タンパク質を、hIAPPを発現時に所望されない凝集から保護するMBP融合体として発現させた[Bach(2001)、J.Mol.Biol.、312:79〜93]。融合タンパク質の合成は、図8aに示すように細菌のコドン使用頻度を使用して行った。得られた融合配列を、図8bに示すようにpMALc2x−NNにクローン化して、大腸菌BL21(DE3)に導入した。生育条件、細胞抽出物調製およびタンパク質精製は、本明細書中上記に記載するように行った。IPTGによる誘導により、可溶性画分における高レベルのMBP−IAPPの蓄積がもたらされ、5%未満のMBP−IAPP融合タンパク質が細胞抽出物の不溶性画分に見出された(データは示さず)。MBPおよびMBP−IAPPの典型的な精製工程から得られた一部分を図9に示す。示されるように、GelCode Blueで染色したSDS/ポリアクリルアミドゲルをデンシトメーターでスキャンすることによって計算すると、48kDaのMBP−IAPPが総可溶性タンパク質の25%にまで蓄積していた。振とうフラスコにおいて30℃で誘導すると(A600=2.0)、MBP−IAPPが1Lの細胞培養あたり約150mgのレベルで細胞質に可溶性タンパク質として蓄積した。精製時の喪失にもかかわらず、MBP−IAPPが80mg/l・細胞の収量でほぼ均一に精製した。IAPPのさらなる適用および好都合な均一性精製のために、MBPタグを除くためのXa因子切断部位に加えて、さらなるHis−Tagもまた含まれていた(図8b)。このHis−Tagは、IAPP配列のN末端のLys残基でのEk V8切断によって除くことができ、これにより、野生型IAPPの放出が得られる。
【0234】
(実施例7)
hIAPPポリペプチドにおける分子認識配列の同定
IAPPペプチドアレイの構築−hIAPP1〜37の連続した重複する配列に対応するデカマー(配列番号61〜88)を、SPOT技術(Jerini AG、Berlin、ドイツ)を使用してセルロースメンブランマトリックス上で合成した。ペプチドは、C末端のアミノ酸を介してWhatman50セルロース支持体(Whatman、Maidstone、英国)に共有結合させた。ペプチド分解に対する安定性がより大きく、また、生来的な認識モチーフの提示がより良好であるので、N末端のアセチル化をペプチドスキャンのために使用した。
【0235】
ペプチド合成−ペプチド合成を、Peptron,Inc.(Taejeon、韓国)によって行われた固相合成法を使用して行った。ペプチド配列が正しいことを、HP1100シリーズLC/MSD[Hewlett−Packard Company、Palo Alto、CA]を使用してイオンスプレー質量分析法によって確認した。ペプチドの純度を、水および0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)における0%から100%へのアセトニトリルの30分の直線勾配を1ml/分の流速で使用して、C18カラムでの逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって確認した。
【0236】
結合研究−セルロース上でのペプチドアレイを、最初に、Tris緩衝化生理的食塩水(TBS、20mM Tris(pH7.5)、150mM NaCl)における5%(V/V)の脱脂乳でブロッキングした。その後、セルロースメンブランを、同じブロッキング緩衝液において4℃で12時間、10μg/mlのMBP−IAPP1〜37の存在下でインキュベーションした。次いで、セルロースメンブランをTBSにおける0.05%ツイーン20で繰り返し洗浄した。セルロースメンブランに結合したMBP−IAPP1〜37を抗MBPモノクローナル抗体(Sigma、イスラエル)により検出した。HRP結合ヤギ抗マウス抗体(Jackson Laboratories、米国)を二次抗体として使用した。免疫ブロットを、Renaissanceウエスタンブロット化学発光試薬(NEN、米国)を製造者の説明書に従って使用して発色させ、シグナルを、デンシトメトリーを使用して定量した。再使用のためのセルロースメンブランの再生を、62.5mMのTris、2%のSDS、100Mmの2−メルカプトエタノールを含む再生緩衝液I(pH6.7)と、8Mの尿素、1%のSDS、0.1%の2−メルカプトエタノールを含む再生緩衝液IIとで順次洗浄することによって行った。洗浄工程の効率を、記載したように、メンブランを化学発光試薬と接触することによってモニターした。
【0237】
結果
IAPPポリペプチドにおける結合性配列の同定−hIAPP分子間の分子間認識を媒介するIAPP分子における構造モチーフを同定するために、hIAPP1〜37分子のアミノ酸1〜10からアミノ酸28〜37に対応する28個の可能な重複するデカマーをセルロースメンブランマトリックス上で合成した。セルロースメンブランに結合させたペプチドをMBP−hIAPP1〜37と一晩インキュベーションした。セルロースメンブランを高塩緩衝液で洗浄した後、セルロースメンブラン上の免疫ブロットを分析し、結合をデンシトメトリーによって定量した(図10b)。合成時のペプチドカップリング効率が変化し得るので、測定された結合は半定量的であることが理解される。
【0238】
図10a〜図10bに示すように、多数のペプチドセグメントが、MBP−IAPPに対する結合を示した。IAPPポリペプチドの中心に位置するアミノ酸配列(すなわち、hIAPP7〜16〜hIAPP12〜21)が、MBP−hIAPP1〜37に対する最も顕著な結合を示した。別の結合性領域をIAPPのC末端部分(hIAPP19〜28〜hIAPP21〜30)において同定したが、この場合の結合はそれほど顕著でなかった。さらに第3の結合スポットがIAPPのN末端部分(hIAPP2〜11)に存在したが、この場合、中心のモチーフの近くでの典型的な分布は明らかではなかった。このことは、この結果が偽であり得ることを示唆している。ブロットを過度に感光させた後でさえも(データは示さず)、(hIAPP1〜10またはhIAPP3〜12のいずれに対しても)このペプチドの近くにおける結合は検出されなかった。さらに、ジスルフィド架橋に対して2〜11の領域の非常に近いところでは、生理学的条件のもとでの原繊維化のプロセスが可能でないと考えられる。
【0239】
アレイ化したペプチドと結合する際のMBP自体の関与を除外するために、ペプチドが結合したセルロースメンブランをMBPだけとインキュベーションし、免疫ブロッティングによって分析した。結合はメンブランの発色後には確認されなかった(示さず)。
【0240】
これらの結果により、hIAPPの以前に明らかにされた結合モチーフ[すなわち、基本アミロイド形成ユニット、hIAPP20〜29、Westermark(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.、13:5036〜40;Tenidis(2000)、J.Mol.Biol.、295:1055〜1071;AzrielおよびGazit(2001)、J.Biol.Chem.、276:34156〜34161]に加えて、hIAPP内における分子認識の主要な中心ドメインを同定した。ペプチドアレイの結合分布のプロフィル(図10b)は、NFVLH(配列番号17)がコアの認識モチーフとして役立ち得ることを示唆している。
【0241】
(実施例8)
濁度測定によってモニターしたときのhIAPPペプチドフラグメントの凝集速度論の特徴づけ
hIAPPペプチドアレイに対する組み換えMBP−hIAPP融合タンパク質の結合分析(実施例7)により、推定の自己会合ドメインをhIAPPタンパク質の中心部分において同定した。
【0242】
アミロイド原繊維を形成することができる最小の構造モチーフを同定するために、この推定の自己会合ドメインに含まれる一連のペプチドを、405nmでの濁度測定を使用してモニターしたときの凝集について試験した。
【0243】
下記の表3には、調べたペプチドを示す。
【表3】
【0244】
材料および実験手順
速度論的凝集アッセイ−新しく調製したペプチドストック溶液を、凍結乾燥形態のペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)に100mg/mlの濃度で溶解することによって作製した。何らかの事前の凝集を避けるために、新しいストック溶液をそれぞれの実験のために調製した。ペプチドストック溶液を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)プレートのウエルにおいて、下記のようにアッセイ緩衝液に希釈した。8μlのペプチドストック溶液を92μLの10mM Tris(pH7.2)に加えた(従って、ペプチドの最終濃度は8%のDMSOの存在下で8mg/mlであった)。濁度データを405nmで集めた。試験サンプルと同じ量のDMSOを含有する緩衝液溶液をブランクとして使用し、ブランクを結果から差し引いた。濁度を、THERMOmax ELISAプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して室温で連続的に測定した。
【0245】
結果
濁度アッセイを、水性媒体において凝集する様々なペプチド(表3)の能力を測定するために行った。種々のペプチドフラグメントの新しいストック溶液をDMSOにおいて作製し、その後、Tris緩衝液溶液に希釈し、濁度を、タンパク質凝集の目安として、2時間にわたってモニターした。図11に示すように、NFLVHSS、FLVHSSおよびFLVHSのペプチドは大きい濁度を示した。NFGAILの短いペプチドによるアミロイド形成については以前[Tenidis(2000)、上記]に報告されていたが、遅れ時間は非常に短いか、または全くなく、従って、これらの実験条件下では検出できず、しかしながら、凝集速度論プロフィルは、ヘキサペプチドhIAPP22〜27(NFGAIL)について観測された凝集速度論プロフィルと類似したことが理解される。他方で、ペプチドNFLVHSSNNは非常に遅い濁度を示し、一方、NFLVHおよびFLVHはほとんど全く濁度を示していない。著しくより長くインキュベーションした後でさえ、有意な濁度は、後者の2つのペプチドに関しては観測されなかった。アミロイド原繊維形成のないことは、部分的に荷電したヒスチジン残基の静電的反発のためであると考えられる。
【0246】
(実施例9)
コンゴーレッド(CP)結合アッセイによるhIAPPペプチドのアミロイド形成性の試験
偏光顕微鏡観察と組み合わせられたコンゴーレッド(CP)染色を、本発明のペプチドのアミロイド形成性を試験するために利用した。アミロイド原繊維はCRと結合して、金色/緑色の複屈折を偏光下で示す[Puchtler(1966)、J.Histochem.Cytochem.、10:355〜364]。
【0247】
材料および実験手順
コンゴーレッド染色および複屈折−少なくとも1日間寝かせた、10mMのTris緩衝液(pH7.2)における8mg/mlのペプチド溶液の10μLの懸濁物をガラス製の顕微鏡スライドガラスの上で一晩乾燥させた。染色を、以前の記載[Puchtler(1966)、上記]のように、80%エタノール(v/v)溶液における飽和コンゴーレッド(CR)およびNaClの10μLの懸濁液を加えることによって行った。溶液を0.45μmのフィルターによりろ過した。その後、スライドガラスを数時間乾燥させた。複屈折を、直交偏光子を備えるSZX−12実体顕微鏡(Olympus、Hamburg、ドイツ)を用いて測定した。
【0248】
結果
コンゴーレッド染色および複屈折−濁度アッセイ(実施例8参照)において形成された凝集物の何らかの可能なアミロイド性を明らかにするために、CR複屈折アッセイを行った。ペプチドフラグメントを、CRによる染色、および直交偏光子を備えた光学顕微鏡のもとでの試験によってアミロイド形成性について調べた。速度論的アッセイの結果と一致して、また、図12b〜cおよび図12eに示すように、NFLVHSS、FLVHSSおよびFLVHSのペプチドは典型的な複屈折を示した。これに対して、NFLVHSSNN、NFLVHおよびFLVHのペプチドは非常に弱い複屈折を示したか、または複屈折を全く示さなかった(図12a、図12dおよび図12f)。ペプチドNFLVHSSNNはより弱い特徴的な複屈折を示した(図12a)。ペプチドNFLVHはサンプルの縁において強い不鮮明な染色を示した(図12d)。ペプチドFLVHは複屈折を示さなかった(図12f)。FLVHペプチドが、長い遅れ時間のためにアミロイド原繊維を形成しないかどうかを試験するために、5日間寝かせたペプチド溶液のサンプルを調べた。同じペプチドをまた、水溶液において、非常に高い濃度(10mg/ml)で試験したが、複屈折はすべての場合に検出されなかった。このことは、このペプチドはアミロイドを形成しないことを示している(データは示さず)。
【0249】
(実施例10)
原繊維形成hIAPPペプチドの超微細構造分析
様々なペプチドの潜在的原繊維形成能を電子顕微鏡観察分析によって評価した。
【0250】
材料および実験手順
透過電子顕微鏡観察−少なくとも1日間寝かせた、10mMのTris緩衝液(pH7.2)における8mg/mlのペプチド溶液の10μLサンプルを400メッシュの銅グリッド(SPI supplies、West Chester、PA)に置き、カーボン安定化ホルムバールフィルムによって覆った。1分後、過剰な液体を除き、その後、グリッドを2%酢酸ウラニル水溶液でさらに2分間ネガティブ染色した。サンプルを、80kVで稼働するJOEL 1200EX電子顕微鏡で調べた。
【0251】
結果
様々なペプチドによって形成された構造をさらに特徴づけるために、ネガティブ染色での顕微鏡観察を行った。以前の結果と一致して、無定形の凝集物が見出されるだけのFLVHペプチドを除いて、すべてのペプチドフラグメントが原繊維構造を示した(図13a〜図13f)。NFLVHSSNNペプチドは、上記に記載するように、全長ペプチドによって形成されるフィラメントと類似する長い薄いコイル状フィラメントを示した(図13a)。NFLVHSS、FLVHSS、FLVHSのペプチドは、NFGAILフラグメントについて記載されるように、長い幅広いリボン様原繊維を示した[Tenidis(2000)、上記;それぞれ、図13c〜図13e]。NFLVHペプチドによって形成された原繊維は薄くて短く、フィラメントではなく、むしろ、プロトフィラメントであると見なすことができる。その出現は、はるかにより低い頻度であり、EM写真は、一般的な視野ではなく、かなり希な事象を表している(図13d)。図13fに示すように、FLVHペプチドは無定形凝集物の形成を媒介した。
【0252】
(実施例11)
hIAPPペプチドフラグメントの二次構造分析
フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)を、hIAPPアミロイド形成ペプチド原繊維および非原繊維ペプチドの二次構造を明らかにするために行った。
【0253】
材料および実験手順
フーリエ変換赤外分光法−赤外スペクトルを、DTGS検出器を備えるNicolet社のNexus470FT−IR分光計を使用して記録した。寝かせたペプチド溶液のサンプルを、濁度アッセイから採取し、その後、CaF2ウインドウ(Sigma)プレート上に懸濁し、真空乾燥させた。ペプチド沈着物を二回蒸留水で再懸濁し、続いて乾燥させて、薄いフィルムを形成させた。この再懸濁手順を2回繰り返して、水素から重水素への交換が最大になることを確実にした。測定値を、4cm−1の分解能および2000回の走査平均化を使用して得た。透過率極小値をOMNIC分析プログラム(Nicolet)によって決定した。
【0254】
結果
FT−IR研究−図14a〜図14fに示すように、原繊維ペプチドはすべてが、β−シート構造について典型的な十分に明らかにされた極小バンドを1620cm−1〜1640cm−1付近に有するFT−IRスペクトルを示した。これに対して、それ以外の方法により原繊維について出現を有しないテトラペプチドFLVHのスペクトルは、ランダムコイル構造の典型である。NFLVHSSNNペプチドのスペクトルは、β−シート含有量が大きいことを示す1621cm−1における透過率極小、ならびに、非β構造の存在を示唆する1640cm−1および1665cm−1における極小を示した。別の小さい極小が、逆平行のβ−シートを示す1688cm−1において観測された(図14a)。NFLVHSSペプチドのスペクトルは大きな極小バンドを1929cm−1および1675cm−1に示した。このスペクトルは逆平行のβ−シート構造の典型である(図14b)。類似するスペクトルが、1625cm−1における大きな極小および1676cm−1における小さい極小を伴ってペプチドFLVHSについて観測された(図14e)。FLVHSSペプチドのスペクトルはまた、大きな極小を1626cm−1に示した。このスペクトルはまた、いくつかの小さい極小を1637cm−1〜1676cm−1付近に有したが、それらは、シグナルよりもノイズに類似する形状を有した(図14c)。NFLVHペプチドのスペクトルは、1636cm−1における極小(これもまたβ−シートを示す)を示したが、それ以外のスペクトルと比較したとき、非β構造の存在を示し得るこのバンドは、1654cm−1および1669cm−1における観測された極小と同様に、移動していた(図14d)。対照的に、FLVHペプチドのスペクトルは、1620cm−1〜1640cm−1に極小を示さないが、ランダムコイル構造に典型的な1646cm−1〜1675cm−1の付近に多数の極小を示した(図14f)。
【0255】
FLVHテトラペプチドがアミロイド原繊維を全く形成することができないか、または、検出することができない原繊維形成が遅い速度論の結果であるかを調べるために、同じ実験条件においてペプチドの溶液を2ヶ月間にわたってインキュベーションし、原繊維の存在を調べた。しかしながら、アミロイド原繊維形成の証拠は、EM顕微鏡観察、CR染色またはFT−IR分光法を使用して検出されなかった。これらの結果は、エネルギーを考慮することにより、テトラペプチドが原繊維を形成することができないことを示唆し得る。すなわち、3つのペプチド結合から構成される鎖のスタッキングのエネルギー寄与は、オリゴマー化のエントロピー損失よりも小さい。
【0256】
まとめると、超微細構造の観察結果は、濁度アッセイおよびコンゴーレッド複屈折アッセイによって明らかされるような知見と一致している。同時に、実験データにより、アミロイド形成能が強い、hIAPPペプチド内の新規のペンタペプチドエレメント、すなわち、FLVHSペプチドを同定した。興味深いことに、hIAPPポリペプチドの同じ中心ドメインに見出されたNFLVHペプチドがアミロイド形成性であることが見出されたが、原繊維を形成するその能力はやや劣っていた。
【0257】
(実施例12)
メジンの最小アミロイド形成ペプチドフラグメントの同定
背景
メジン(GenBankアクセション番号gi:5174557)は、大動脈中膜アミロイド沈着物の主要構成成分である[Haeggqvist(1999)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96:8674〜8669]。以前の研究では、大動脈中膜アミロイドが50歳を超える患者の97%に見出されていた[Mucchiano(1992)、Am.J.Pathol.、140:811〜877]。しかしながら、そのようなアミロイド沈着物の病理学的役割は依然として不明である。これらのアミロイドは、老齢に関係づけられる大動脈血管の低下した弾性において役割を果たしていることが示唆されていた[Mucchiano(1992)、上記;Haeggqvist(1999)、上記]。研究では、トリプシン消化ペプチドNFGSVQFVが中膜アミロイド形成ペプチドとして明瞭に同定されたが、依然としてアミロイド形成性であるペプチドの最小配列、およびアミロイド形成プロセスを媒介する分子的決定因子は明らかにされなかった。そのような情報は、メジンの特定の場合における原繊維化プロセスを真に理解するために重要であるが、また、一般にはアミロイド原繊維のプロセスに対するパラダイムとしても重要である。
【0258】
メジンの最小の活性フラグメントを、発表されたオクタペプチドに由来する短縮化されたアナログの機能的および構造的な分析を使用して決定した[Haeggqvist(1999)、上記]。
【0259】
材料および実験手順
ペプチド合成は実施例7に記載した。
【0260】
下記の表4には、調べたペプチドを示す。
【表4】
【0261】
結果
分子認識および自己会合のプロセスを媒介するために必要となる分子情報を保持するメジンの構造エレメントに対するさらなる洞察を得るために、インビトロでアミロイド原繊維を形成するメジンの短いペプチドフラグメントおよびそのアナログの能力を調べた。図15aには、調べた最も大きいペプチドフラグメントの化学構造の概略図を示す。
【0262】
(実施例13)
メジン由来ペプチドフラグメントの凝集の速度論
濁度アッセイを、実施例8に記載したように行った。
【0263】
様々なメジン由来ペプチドの凝集能に関する最初の洞察を得るために、濁度アッセイを行った。アミロイド形成オクタペプチドおよびその短縮化アナログの新しく作製したストック液をDMSOにおいて調製した。その後、ペプチドを水溶液に希釈し、濁度を、時間の関数として405nmでの吸光度を追跡することによってモニターした。図16aに示すように、NFGSVペンタペプチドは、インキュベーションの数分以内に最も大きい程度の凝集を示した。溶液の物理的試験により、ペプチドはゲル構造を形成したことを示した。NFGSVQVオクタペプチドの凝集の速度論は速すぎて、測定することができなかった。これは、濁度が、水溶液への希釈により直ちに既に観測されたからである(図16a〜図16b)。類似する速い速度論が、GSVQテトラペプチドに関してもまた観測された。NFGSVQ、FGSVQおよびFGSVの短縮化ペプチドは、約30分かけて濁度の穏やかな増大を示し(図16b)、その後、わずかに減少した。このことは、大きな凝集物の沈降によって説明することができる。まとめると、そのような速度論および濁度値は、類似するサイズのアミロイド形成ペプチドに関して以前に観測されたものと類似していた(AzrielおよびGazit、2001)。
【0264】
(実施例14)
メジン由来ペプチドフラグメントの超微細構造分析
電子顕微鏡観察分析を、実施例10に記載したように行った。
【0265】
メジン由来ペプチドフラグメントの原繊維化能を、ネガティブ染色を使用する電子顕微鏡観察(EM)によって行った。ペプチドフラグメントのストック溶液を懸濁し、4日間寝かせた。原繊維構造が、NFGSVQFAオクタペプチドを含有する溶液(図17a)および短縮化NFGSVQを含有する溶液(図17b)の両方で明瞭に認められた。両方の場合において、構造は、IAPPポリペプチドおよびβ−アミロイド(Aβ)ポリペプチドのような、はるかに長いポリペプチドに関して観測された構造と類似していた。より短いゲル形成性のNFGSVペンタペプチドは典型的なアミロイド構造を形成しなかったが、繊維状構造の網状構造を形成した(図17c)。繊維状網状構造が、最近、グルタチオンペプチドのゲル化のときに観測されたことには留意しなければならない[LyonおよびAtkins(2001)、J.Am.Chem.Soc.、123:4408〜4413]。典型的な原繊維を、広範囲の調査にもかかわらず、FGSVQペンタペプチド、GSVQテトラペプチドまたはFGSVテトラペプチドを含有する溶液では検出することができなかった。FGSVQペプチドの場合(図17d)、幾分かの原繊維的な秩序だった構造を認めることができる一方で、典型的なアミロイド形成ペプチドによって形成された構造とは著しく異なっていたが、GSVQペプチドおよびFGSVペプチドの場合、原繊維構造を見出すことができなかった(それぞれ、図17eおよび図17f)。
【0266】
(実施例15)
コンゴーレッド(CR)結合アッセイによるメジン由来ペプチドのアミロイド形成能の試験
CR染色を、実施例9に記載したように行った。
【0267】
CR染色を、様々なメジン由来ペプチドによって形成された構造が典型的な複屈折を示すかどうかを明らかにするために行った。図18bに示すように、NFGSVQヘキサペプチドはCRと結合し、特徴的な明るい強い緑色−金色の複屈折を示した。NFGSVQFVオクタペプチドもまた、ヘキサペプチドに関して観測された複屈折よりも典型的ではないが、著しい複屈折を示した(図18a)。ゲル形成性のNFGSVペプチド沈殿物は非常に低い程度の複屈折を示した(図18c)。FGSVQおよびFGSVのペプチドは、CRにより染色しても、複屈折を示さなかった(それぞれ、図18dおよび図18f)。それらの2つのペプチドと陰性コントロール(すなわち、ペプチドを含まない緩衝液溶液)との間には著しい差は明らかになかった。興味深いことに、予想外の高レベルの複屈折がGSVQテトラペプチドに関して観測され(図18e)、一方で、それから形成された構造の形態(図18e)は、アミロイド原繊維の形態とは明らかに異なっていた。このことは、これらの構造が、強い複屈折において反映される著しい程度の秩序を有し得ることを示している。
【0268】
(実施例16)
メジンの自己会合に対するフェニルアラニン置換の影響
最小のアミロイド形成ヘキサペプチドによるアミロイド原繊維形成のプロセスにおけるフェニルアラニン残基について考えられる役割を解明するために、フェニルアラニンのアミノ酸をアラニンで置換した。アラニン置換ペプチドを調製し、メジンの様々なフラグメントについて記載したのと同じ方法で調べた。図19aに示すように、著しく低下した濁度が、野生型のヘキサペプチドと比較したとき、アラニン置換ペプチドに関して観測された。NAGSVQペプチドの寝かせた溶液をEMによって可視化しても、明らかな原繊維構造を検出することはできなかった(図19b)。これは、野生型ペプチド(図17b)に関して認められる非常に多い原繊維構造とは完全に対照的である。さらに、可視化した構造は、上記に記載したようなNFGSVペプチドおよびFGSVQペプチド(図17c〜図17d)に関して観測されたような秩序度を何ら示さないが、FGSVテトラペプチド(図17e)に関して観測されたような完全に非原繊維の構造と非常に類似していた。興味深いことに、ある程度の複屈折を、(GSVQペプチド(図18e)に関して観測されたように)アラニン置換ペプチドによっても依然として検出することができる(図19c)。これらの結果は、CR染色がアミロイド形成の単独の指標として使用されることに関してさらなる疑いをもたらしている[Khurana(2001)、J.Biol.Chem.、276:22715〜22721]。
【0269】
まとめると、これらの結果は、アミロイド原繊維を形成することができるメジンの短縮化フラグメントがヘキサペプチドNFGSVQ(配列番号21)であることを示している。だが、より短いペンタペプチドフラグメントのNFGSV(配列番号22)が、アミロイドに典型的でない繊維状構造の網状構造を示した。アミロイド形成性のNFGSVQヘキサペプチドは、小島アミロイドポリペプチド(IAPP、実施例1〜5を参照のこと)の最小のアミロイド形成フラグメントに著しく類似している。総合すると、結果は、アミロイド原繊維の形成をもたらす自己会合プロセスにおけるスタッキング相互作用の仮定された役割と一致し、また、アミロイド原繊維とβ−ヘリックス構造との間の示唆された相関と一致している。
【0270】
(実施例17)
ヒトカルシトニンの最小アミロイド形成ペプチドフラグメントの同定
ヒトカルシトニン(hCT、GenBankアクセション番号gi:179880)は、甲状腺のC細胞によって産生されている、カルシウムの恒常性に関与する32個のアミノ酸長さのポリペプチドホルモンである[AustinおよびHealth(1981)、N.Engl.J.Med.、304:269〜278;Copp(1970)、Annu.Rev.Physiol.、32:61〜86;Zaidi(2002)、Bone、30:655〜663]。hCTから構成されるアミロイド原繊維が甲状腺の髄様ガンと関連することが見出されている[Kedar(1976)、Isr.J.Sci.、12:1137;Berger(1988)、Arch.A.Pathol.Anat.Histopathol.、412:543〜551;Arvinte(1993)、J.Biol.Chem.、268:6415〜6422]。興味深いことに、合成hCTは、甲状腺に見出される沈着物に類似する形態を有するアミロイド原繊維をインビトロで形成することが見出されている[Kedar(1976)、上記;Berger(1988)、上記;Arvinte(1993)、上記;Benvenge(1994)、J.Endocrinol.Invest.、17:119〜122;Bauer(1994)、Biochemistry、33:12276〜12282;Kanaori(1995)、Biochemistry、34:12138〜43;Kamihara(2000)、Protein Sci.、9:867〜877]。アミロイド形成のインビトロプロセスは媒体のpHによって影響される[23]。電子顕微鏡観察実験により、hCTによって形成された原繊維は直径が約80Åであり、長さが数マイクロメートルにまでなることが解明されている。原繊維は互いに会合していることが多く、インビトロでのアミロイド形成は媒体のpHによって影響される[Kamihara(2000)、上記]。
【0271】
カルシトニンは、パジェット病および骨粗鬆症を含む様々な疾患に対する薬物として使用されている。しかしながら、hCTが生理学的pHの水溶液において会合し、アミロイド原繊維を形成しやすいことは、薬物としてのその効率的な使用に対する大きな制限である[Austin(1981)、上記;Copp(1970)、上記;Zaidi(2002)、上記]。サケCT[Zaidi(2002)、上記]は、hCTに対する臨床的に使用されている代替物であるが、配列相同性が低いために、処置された患者において免疫原反応を生じさせている。従って、hCTによるアミロイド形成の機構を理解し、かつこのプロセスを抑制することは、アミロイド形成機構の関連においてだけでなく、カルシトニンの改善された治療的使用に対するステップとしても非常に重要である。
【0272】
円偏光二色性(CD)研究により、水中では、単量体hCTは室温で秩序のある二次構造をほとんど有していないことが明らかにされている[Arvinte(1993)、上記]。しかしながら、円偏光二色性、蛍光および赤外分光法を使用するhCT原繊維の研究により、原繊維化したhCT分子がα−ヘリックスおよびβ−シートの両方の二次構造成分を有することが解明された[Bauer(1994)、上記]。NMR分光法による研究では、TFE/H2Oのような、様々な構造を促進する溶媒において、hCTが、主に残基範囲8〜22において両親媒性のα−ヘリックスの立体配座を取っていることが示されている[Meadows(1991)、Biochemistry、30:1247〜1254;Motta(1991)、Biochemistry、30:10444〜10450]。DMSO/H2O中では、中心領域における短い二重鎖の逆平行のβ−シート形態が残基16〜21によって作製される[Motta(1991)、Biochemistry、30:2364〜71]。
【0273】
この構造データ、およびアミロイド形成プロセスにおける芳香族残基の提案された役割に基づいて、本発明者は、カルシトニンの自己会合を媒介するために十分である短いペプチドフラグメントを同定した[Reches(2002)、J.Biol.Chem.、277:35475〜80]。
【0274】
調べたペプチド−酸性pHに対するアミロイド形成の以前に報告された感受性[Kanaori(1995)、上記]に基づいて、低いpHでプロトン化を受ける負電荷を有しているアミノ酸がアミロイド形成プロセスにおいて重要な役割を果たし得ることが示唆されていた。hCTにおける唯一の負電荷を有しているアミノ酸はAsp15である(図20a)。さらに、hCTのオリゴマー化状態および生物活性におけるLys18およびPhe19の残基に対する非常に重要な役割が最近示された[Kazantzis(269)、Eur.J.Biochem.、269:780〜91]。2つのフェニルアラニン残基がその領域に存在することと一緒になって、hCTにおけるアミロイド形成決定因子の構造分析がアミノ酸15〜19に向けられた。図20bは、最長ペプチドの化学構造の概略図を示し、下記の表5は、この研究で使用した様々なペプチドフラグメントを示す。
【表5】
【0275】
(実施例18)
カルシトニン由来ペプチドフラグメントの超微細構造分析
電子顕微鏡観察分析を、実施例10に記載したように行った。
【0276】
カルシトニン由来ペプチドフラグメントの原繊維化能を、ネガティブ染色を使用して電子顕微鏡観察(EM)によって行った。ペプチドフラグメントのストック溶液を0.02M NaCl、0.01M Tris(pH7.2)に懸濁し、2日間寝かせ、ネガティブ染色した。全長ポリペプチドによって形成される原繊維構造[Arvinte(1993)、上記;Benvenge(1994)、上記;Bauer(1994)、上記;Kanaori(1995)、上記;Kamihara(2000)、上記]と類似する原繊維構造が、DFNKFペンタペプチドを含有する溶液において高頻度で明瞭に認められた(図21a)。より短いDFNKテトラペプチドもまた原繊維構造を形成した(図21b)。しかしながら、形成された構造は、DFNKFペンタペプチドによって形成された原繊維構造と比較した場合、それほど秩序を有していなかった。DFNKによって形成された原繊維構造の量もまた、DFNKFペンタペプチドと比較して少なかった。明らかな原繊維は、広範囲の調査にもかかわらず、FNKFテトラペプチドおよびDFNトリペプチドを含有する溶液を使用すると検出することができなかった。FNKFテトラペプチドの場合、無定形の凝集物のみを見出すことができた(図21c)。DFNトリペプチドは、ゲル形成性のトリペプチドによって形成される構造[Lyon(2001)、上記]と類似した、より大きな秩序を有する構造を形成した(図21d)。FNKFテトラペプチドおよびDFNトリペプチドのペプチドが原繊維を一切形成することができないかどうか、または観測結果が遅い速度論の結果であるかどうかを調べるために、同じ実験条件で、ペプチドの溶液を2週間にわたってインキュベーションした。この場合もまた、明らかな原繊維構造を検出することができなかった(データは示さず)。
【0277】
(実施例19)
コンゴーレッド(CR)結合アッセイによるカルシトニン由来ペプチドのアミロイド形成能の試験
CR染色を、実施例9に記載したように行った。
【0278】
CR染色を、様々なhCT由来ペプチドにより形成された構造が典型的な複屈折を示すかどうかを明らかにするために行った。図22a〜図22dに示すように、すべての調べたペプチドがある程度の複屈折を示した。しかしながら、緑色の複屈折がDFNKFペンタペプチドに関して観測され、この複屈折は明瞭であり、かつ強かった(図22a)。それ以外のペプチドに関して観測された複屈折のレベルはより低いが、ペプチドを含有しないコントロール溶液を使用して複屈折を検出することができなかったので、有意であった。DFNKテトラペプチドのより低いレベルの複屈折(図22b)は、EMを使用して観測されるように(図21b)、より低い程度の原繊維化と一致していた。しかしながら、FNKFテトラペプチドおよびDFNトリペプチドに関して観測される複屈折はある程度の秩序だった構造を表し得ることが理解される[Lyon(2001)上記]。
【0279】
(実施例20)
凝集したhCT由来ペプチドの二次構造
FT−IR分光法を、実施例11に記載したように行った。
【0280】
アミロイド沈着物は、β−プリーツシート構造が多い原繊維に特徴的である。様々なペプチドフラグメントによって形成された二次構造に関する量的な情報を得るために、FT−IR分光法を使用した。寝かせたペプチド溶液を、実施例11に記載したように、CaF2プレート上で乾燥させ、薄いフィルムを形成させた。図23に示すように、DFNKFペンタペプチドは、(1639cm−1および1669cm−1に)二重の極小を示し、そして、逆平行のβ−シート構造と一致し、かつ小島アミロイドポリペプチドのアミロイド形成性のヘキサペプチドフラグメントのスペクトル[Tenidis(2000)、上記]と著しく類似する、アミドIのFT−IRスペクトルを示した。DFNKテトラペプチドに関して観測されたアミドIのスペクトル(図23)は、β−シート構造にとってそれほど典型的ではなかった。DFNKテトラペプチドは、逆平行のβ−シートを反映し得る1666cm−1における極小を示した一方で、β−シート構造に関して典型的に観測される1620cm−1〜1640cm−1付近の典型的な極小を有していなかった。FNKFテトラペプチドは、秩序のない構造に典型的であり、かつ、小島アミロイドポリペプチドの短い非アミロイド形成フラグメントのスペクトル[Tenidis(2000)、上記]に類似するFT−IRスペクトルを示した(図23)。DFNトリペプチドは、(1642cm−1および1673cm−1に)二重の極小を示し(図23)、そして、β−シート構造およびランダム構造の混合と一致する、アミドIのFT−IRスペクトルを示した。このことはさらに、EM可視化によって観測される構造が、β−シート構造エレメントから主に構成されたある程度の秩序だった構造を表し得ることを示している。
【0281】
(実施例21)
カルシトニン由来ペプチドの自己会合に対するフェニルアラニン置換の影響
カルシトニンの自己会合プロセスにおけるフェニルアラニン残基に対する考えられる役割を洞察するために、フェニルアラニンのアミノ酸をペンタペプチド(配列番号31)の場面においてアラニンで置換した。DANKFペンタペプチドの寝かせた溶液をEMによって可視化しても、明らかな原繊維構造を検出することができなかった(図24a)。可視化した構造は、(FNKFテトラペプチドに関して認められる無定形の凝集物と比較したとき)、ある程度の秩序を示したが、緑色−金色の複屈折を観測することができなかった(図24b)。DANKAペンタペプチドのFT−IRスペクトルは、FNKFテトラペプチドおよび他の短い非アミロイド形成ペプチドのFT−IRスペクトル(これは秩序のない構造に典型的である[Tenidis(2000)、上記])と類似していた。まとめると、フェニルアラニンからアラニンへの置換の影響は、小島アミロイドポリペプチドの短いアミロイド形成性のフラグメントの場面におけるそのような変化の影響[Azriel(2001)、上記]と非常に類似している。
【0282】
まとめると、hCT由来ペンタペプチド(配列番号27)は、十分に秩序だったアミロイド原繊維を形成することができることが明らかにされた。電子顕微鏡観察の可視化により認められるような典型的な原繊維構造(図21a)、CRにより染色したときの非常に強い緑色の複屈折(図22a)、および典型的な逆平行β−シート構造(図23a)、これらのすべてが、DFNKFペンタペプチドが非常に強力なアミロイド形成因子であることを示している。自己会合することができる他のペンタペプチドを本明細書中上記に示した。それでも、複屈折の程度および電子顕微鏡観察による形態学に関して、hCTフラグメントは、β−アミロイド(Aβ)ポリペプチドの強力なアミロイド形成フラグメントのKLVFFAE[Balbach(2000)、Biochemistry、39:13748〜59]と類似する最も大きいアミロイド形成能を有するペンタペプチドであるようである。リジンおよびアスパラギン酸における反対の荷電の間における静電的相互作用により、秩序だった逆平行構造の形成が誘導されると考えられる。興味深いことに、DFNKポリペプチドは、DFNKFペプチドと比較した場合、著しく低下したアミロイド形成能を示した。ペンタペプチドが強力なアミロイド形成因子のための下限であると考えられる。このことは、IAPPの2つのペンタペプチド(NFLVHおよびFLVHS)がアミロイド原繊維を形成することができるが、それらの共有する共通部分(テトラペプチドFLVH)はそのような原繊維を形成することができないことを明らかにする最近の結果と一致している(実施例1〜5を参照のこと)。
【0283】
(実施例22)
ラクトトランスフェリンからのアミロイド形成ペプチドの同定
ラクトトランスフェリン(GenBankアクセション番号gi:24895280)によるアミロイド原繊維形成は家族性上皮下角膜アミロイド形成に関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、ラクトトランスフェリン由来ペプチドのLFNQTG(配列番号32)のアミロイド形成特性を調べた。
【0284】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するラクトトランスフェリン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図25に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、ラクトトランスフェリンのLFNQTGがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0285】
(実施例23)
血清アミロイドAタンパク質からのアミロイド形成ペプチドの同定
血清アミロイドAタンパク質(GenBankアクセション番号gi:134167)の断片は慢性炎症アミロイドーシスの症例のアミロイド状態で見出されている[Westermark他(1992)、Biochem.Biophys.Res.Commun.、182:27〜33]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、血清アミロイドAタンパク質由来ペプチドのSFFSFL(配列番号33)のアミロイド形成特性を調べた。
【0286】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成する血清アミロイドAタンパク質由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図26に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、血清アミロイドAタンパク質のSFFSFLがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0287】
(実施例24)
BriLからのアミロイド形成ペプチドの同定
ヒトBRI遺伝子は第13染色体上に位置する。BriL遺伝子生成物(GenBankアクセション番号gi:12643343)のアミロイド原繊維はニューロンの機能不全及び痴呆と関連する(Vidal他(1999)、Nature、399、776〜781)。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、BriL由来ペプチドのFENKF(配列番号34)のアミロイド形成特性を調べた。
【0288】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するBriL由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図27に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、BriLのFENKFがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0289】
(実施例25)
ゲルソリンからのアミロイド形成ペプチドの同定
ゲルソリンタンパク質(GenBankアクセション番号gi:4504165)の断片はフィンランド遺伝性アミロイドーシスの症例のアミロイド状態で見出されている[MauryおよびNurmiaho−Lassila(1992)、Biochem. Biophys. Res. Commun.、183:227〜31]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、ゲルソリン由来ペプチドのSFNNG(配列番号35)のアミロイド形成特性を調べた。
【0290】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するゲルソリン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図28に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、BriLのSFNNGがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0291】
(実施例26)
血清アミロイドPからのアミロイド形成ペプチドの同定
ベータアミロイドによるアミロイド原繊維形成は血清アミロイドP(GenBankアクセション番号gi:2144884)との相互作用によって促進される。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、血清アミロイドP由来ペプチドのLQNFTL(配列番号36)のアミロイド形成特性を調べた。
【0292】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成する血清アミロイドP由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図29に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、血清アミロイドPのLQNFTLがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0293】
(実施例27)
免疫グロブリン軽鎖からのアミロイド形成ペプチドの同定
免疫グロブリン軽鎖(GenBankアクセション番号gi:625508)によるアミロイド原繊維の形成は一次全身性アミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、免疫グロブリン軽鎖由来ペプチドのTLIFGG(配列番号37)のアミロイド形成特性を調べた。
【0294】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成する免疫グロブリン軽鎖由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図30に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、免疫グロブリン軽鎖のTLIFGGがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0295】
(実施例28)
シスタチンCからのアミロイド形成ペプチドの同定
シスタチンC(GenBankアクセション番号gi:4490944)によるアミロイド原繊維の形成は遺伝性の脳のアミロイドアンギオパチーと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、シスタチンC由来ペプチドのRALDFA(配列番号38)のアミロイド形成特性を調べた。
【0296】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するシスタチンC由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図31に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、シスタチンCのRALDFAがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0297】
(実施例29)
トランスサイレチンからのアミロイド形成ペプチドの同定
トランスサイレチン(GenBankアクセション番号gi:72095)によるアミロイド原繊維の形成は家族性アミロイド多発神経障害と関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、トランスサイレチン由来ペプチドのGLVFVS(配列番号39)のアミロイド形成特性を調べた。
【0298】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するトランスサイレチン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図32に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、トランスサイレチンのGLVFVSがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0299】
(実施例30)
リゾチームからのアミロイド形成ペプチドの同定
リゾチーム(GenBankアクセション番号gi:299033)によるアミロイド原繊維の形成は家族性非神経障害性アミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、リゾチーム由来ペプチドのGTFQIN(配列番号40)のアミロイド形成特性を調べた。
【0300】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するリゾチーム由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図33に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、リゾチームのGTFQINがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0301】
(実施例31)
フィブリノーゲンからのアミロイド形成ペプチドの同定
フィブリノーゲン(GenBankアクセション番号gi:11761629)によるアミロイド原繊維の形成は遺伝性腎アミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、フィブリノーゲン由来ペプチドのSGIFTN(配列番号41)のアミロイド形成特性を調べた。
【0302】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するフィブリノーゲン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図34に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、フィブリノーゲンのSGIFTNがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0303】
(実施例32)
インシュリンからのアミロイド形成ペプチドの同定
インシュリン(GenBankアクセション番号gi:229122)によるアミロイド原繊維の形成は注射局在アミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、インシュリン由来ペプチドのERGFF(配列番号42)のアミロイド形成特性を調べた。
【0304】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するインシュリン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図35に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、インシュリンのERGFFがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0305】
(実施例33)
プロラクチンからのアミロイド形成ペプチドの同定
プロラクチン(GenBankアクセション番号gi:4506105)によるアミロイド原繊維の形成は下垂体アミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、プロラクチン由来ペプチドのRDFLDR(配列番号43)のアミロイド形成特性を調べた。
【0306】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するプロラクチン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図36に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、プロラクチンのRDFLDRがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0307】
(実施例34)
ベータ−2−ミクロチューブリンからのアミロイド形成ペプチドの同定
ベータ−2−ミクロチューブリン(GenBankアクセション番号gi:70065)によるアミロイド原繊維の形成は血液透析関係のアミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、ベータ−2−ミクロチューブリン由来ペプチドのSNFLN(配列番号44)のアミロイド形成特性を調べた。
【0308】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するベータ−2−ミクロチューブリン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図37に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、ベータ−2−ミクロチューブリンのSNFLNがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0309】
(実施例35)
本発明の教示に従って同定したアミロイド形成ペプチドのアミロイド形成の阻害
全長ポリペプチドによるアミロイド形成を阻害する、本発明の教示に従って同定したIAPPのアミロイド形成ペプチドの能力を、ペプチド配列NFLVHPP(配列番号45)に示すように、β−破壊剤のプロリン残基を認識配列に付加することによって調べた。
【0310】
阻害剤の存在下および非存在下でのアミロイド原繊維形成の程度を、分子指示剤としてチオフラビンT(ThT)を使用して評価した。ThT色素の蛍光の程度は、溶液中のアミロイド原繊維の量に直接的に相関する[LeVine H 3rd.(1993)、Protein Sci.、2:404〜410]。IAPP溶液(10mMのTris緩衝液(pH7.2)における4μMのhIAPP)を、40μMの改変ペプチド(すなわち、NFLVHPP)の存在下または非存在下、室温でインキュベーションした。この溶液を、50mMリン酸ナトリウム(pH6.0)に3μMのチオフラビンT(ThT)を含有する溶液に10倍希釈し、LS50B分光蛍光計(Perkin Elmer、Wellesley、MA)を使用して450nmでの励起による480nmにおける蛍光を測定することによって原繊維形成を測定した。コントロールとして、10mMのTris緩衝液(pH7.2)をThT溶液に希釈し、蛍光を、記載したように測定した。
【0311】
結果−図38に示すように、IAPPは単独では、アミロイド形成タンパク質について予想されるように高レベルのThTの蛍光を示したが、阻害ペプチドの存在下では蛍光が著しく増大した。従って、これらの結果により、NFLVH配列がIAPPポリペプチドにおけるアミロイド形成決定因子として確認される。
【0312】
(実施例36)
アミロイドの会合における疎水性残基の重要性
IAPPの基本アミロイド形成ユニットにおける芳香族残基の重要性を実施例1〜実施例5において明らかにした。記載したように、フェニルアラニンをアラニンに置換すると、アミロイド形成フラグメント(NAGAIL、配列番号9)がインビトロでアミロイド原繊維を形成する能力がなくなった。この観測の結果、他の短いアミロイド関連配列における芳香族残基の顕著な存在(実施例12〜実施例35)、ならびに、化学および生化学における自己会合プロセスにおけるπスタッキングの広く知られている役割に基づいて、芳香族残基のスタッキングがアミロイド原繊維形成プロセスにおいて役割を果たし得ることが示唆されている[Gazit(2002)、FASEB J.、16:77〜83]。
【0313】
研究を、さらに、フェニルアラニン残基が、その芳香族性のためにというよりは、その疎水的性質のために重要であるかどうか示すために拡張した。IAPPの基本アミロイド形成ユニット(すなわち、NFGAILペプチド)の自己会合に対する疎水性残基によるフェニルアラニン置換による影響を検討した。
【0314】
この研究で使用したペプチドおよびその表示の一覧を下記の表6に示す。
【表6】
【0315】
これらの疎水性アミノ酸はフェニルアラニンと類似の疎水性を有するか、または、フェニルアラニンよりもさらにわずかに疎水性が大きい[Wolfenden(1981)、Biochemistry、20:849〜855;Kyte(1982)、J.Mol.Biol.、157:105〜132;Radzicka(1988)]が、それらは芳香族性でないことが理解される。さらに、バリンおよびイソロイシンは、β−シートの多いアミロイド原繊維の形成にとって重要であると推定される非常に強いβ−シート形成因子であると見なされている[Chou(1974)、Biochemistry、13:211〜222;Chou(1978)、Annu.Rev.Biochem.、47:251〜276]。
【0316】
(実施例37)
濁度測定によってモニターしたときの、疎水性に改変されたhIAPPペプチドフラグメントの凝集速度論の特徴づけ
実験手順−実施例8に記載したように行った。
結果
疎水性に改変されたIAPP由来ペプチドアナログの凝集能に対する洞察を得るために、濁度アッセイを行った。野生型ペプチドおよび様々なペプチド変異型の新しく作製したストック溶液をDMSO中で作製した。その後、ペプチドを緩衝液溶液に希釈し、濁度を、時間の関数として405nmでの吸光度を追跡することによってモニターした。図39に示すように、濁度の著しい増大が、水溶液へのその希釈後数分以内に、野生型のNFGAILSSオクタペプチドについて観測された。凝集曲線の形状は、濁度の急速な増大が最初の1時間に存在し、その後、モニターされたインキュベーション時間全体にわたる濁度のはるかにより遅い増大を伴う飽和曲線の形状に類似していた。これは、おそらく、自由な構成要素の数を律速因子とする迅速な凝集プロセスを反映している。対照的に、アナログペプチドはどれも、何ら意味のある凝集挙動を明らかにせず、また、すべての疎水性アナログならびにアラニン置換アナログの濁度は、少なくとも24時間にわたって非常に低いままであった(図39)。
【0317】
疎水性アナログの非凝集挙動が極めて遅い速度論の結果であるかどうか明らかにするために、ペプチドアナログの溶液を同じ実験条件で1週間にわたってインキュベーションし、終点の濁度値を測定した。図30に示すように、やや低い程度の濁度がNIGAILSSに関して観測され、より低い程度が、濁度の低下する順に、NLGAILSS、NAGAILSSおよびNVGAILSSのペプチドについて観測された。しかしながら、NIGAILSSの場合でさえ、濁度の程度は、野生型のNFGAILSSタンパク質と比較して著しく低下していた(図40)。さらに、より低い程度の凝集が、疎水性が大きいβ−シート形成因子のバリンへの置換に関して観測されたので、凝集能と疎水性またはβ−シート形成傾向との間には相関が何ら認められなかった。NFGAILSS野生型ペプチドの終点濁度値のわずかな低下は、24時間のインキュベーションの後で得られた値と比較した場合、キュベット表面に付着する非常に大きい凝集物が形成したことを反映し得る。
【0318】
(実施例38)
疎水性に改変されたhIAPPペプチドフラグメントの超微細構造分析
電子顕微鏡観察分析を、実施例10に記載したように行った。
様々なアナログペプチドによって形成された何らかの可能な構造の超微細構造可視化を5日間のインキュベーションの後で行った。この構造分析は、様々な凝集物を個々に可視化するので、最も高感度な方法を表す。その目的のために、形成された構造の存在および特徴を、凝集アッセイ(実施例32)においてインキュベーションした同じペプチド溶液を用いて、ネガティブ染色を使用して電子顕微鏡観察によって調べた。予想されたように、十分な秩序を有する原繊維が野生型ペプチドのNFGAILSSペプチドフラグメントに関して観測された(図41a〜図41b)。いくつかの無定形の凝集物もまた、改変したフラグメントに関して認めることができた(図41c〜図41f)。しかしながら、それらの構造は、顕微鏡グリッドでは著しく多くなかった。より大きい凝集性構造が、アラニンアナログと比較した場合、より疎水性の置換体に関して観測された。それでも、上記で述べたように、NFGAILSSペプチドに関して認められた秩序だった原繊維構造とは異なり、これらの凝集物は極めて希であり、秩序だった構造を有していなかった(図41c〜図41f)。それらの不規則で、散発的な構造は、かなり疎水性の分子を長くインキュベーションした後で予想されるような、ある程度の非特異的な凝集と一致している。
【0319】
(実施例39)
IAPPの自己会合におけるフェニルアラニンの特異的な機能の決定
IAPPの自己会合におけるフェニルアラニン残基の特異的な役割を決定するために、メンブラン型結合アッセイを、「基本アミロイド形成ユニット」を認識する全長hIAPPの能力を促進させる分子決定因子を体系的に調査するために行った。この目的のために、フェニルアラニン位置を体系的に変化させたペプチド(配列番号91〜110)のアレイと相互作用するMBP−IAPP(実施例6参照)の能力を検討した。
【0320】
材料および実験手順−実施例6〜実施例7を参照のこと。
結果
SNNXGAILSSモチーフ(配列番号90)(式中、Xは、システインを除く任意の天然アミノ酸である)に対応するペプチドアレイを構築した。図42aに示すように、MBP−IAPPの結合を、芳香族性のトリプトファン残基およびフェニルアラニン残基をX位に含有するペプチドについて明瞭に観測した(図42a)。興味深いことに、結合はまた、フェニルアラニンがアルギニンおよびリジンなどの塩基性アミノ酸で置換したときにも観測された。対照的に、その位置の疎水性置換体のいずれに関しても、結合は、メンブランに長時間曝された後でさえも観測されなかった(図42b)。
【0321】
短時間の暴露での結合を、デンシトメトリーを使用して評価した(図42c)。しかし、合成時のカップリング効率、従って、スポットあたりのペプチドの量が変化し得るので、測定した結合は半定量的であるとして解釈しなければならないことが理解される。しかしながら、この場合、様々なペプチド変化体の間における結合の差が顕著であることが極めて明瞭であった。
【0322】
まとめると、これらの観測結果のすべてが、アミロイド形成プロセスの促進における芳香族残基の役割を実証している。
【0323】
(実施例40)
α−アミノイソブチル酸(Aib)置換アミロイド形成ペプチドの設計および立体配座
IAPPポリペプチド(即ち、IAPP14−20、上記表3参照)の最小アミロイド形成領域は、それに結合し、それをブロックし、その凝集を妨げることができる阻害剤を設計するためのターゲット配列として選択された。
【0324】
実験アプローチ
アミロイド形成ペプチドの凝集能力をなくすために、β−シート破壊剤をターゲット配列に組み入れ、ペプチドが原繊維を形成するためにモノマーが一緒にスタッキングされるβ−シート配座を示すことができないようにする。α−アミノイソブチル酸(Aib)は、カルボキシル基のCαに結合された二つのメチル残基を含有する非天然のアミノ酸である。天然のアミノ酸と違って、この分子はCαに結合された水素原子を有しない。これは、特にアミド結合のφおよびΨ角に関するアミノ酸の立体特性に広く影響する。アラニンは幅広い範囲の可能なφおよびΨ立体配座を有するが、α−メチル化アラニンであるAibは制限されたφおよびΨ立体配座を有する。図43aはL−アラニンおよびD−アラニンのラマチャンドランプロットの重なりから導かれるAibの立体配座マップを示す。図43aについて明らかなように、可能な角度は小さな領域に制限され、全体の構造はβ−鎖立体配座よりむしろα−ヘリックス立体配座のためにずっと好適である。
【0325】
従って、Aibは、アミロイド凝集の中心であるβ−シート立体配座を妨げるために使用することができる。特に、Aibとプロリンのラマチャンドランプロットの間の比較は、Aibがプロリンより強力なβ−シート破壊剤であることを示す(図43a)。
【0326】
IAPPアミロイド形成領域を含む二つのペプチド(即ち、ANFLVHおよびANFLV、それぞれ配列番号124および126)を合成して、アラニンおよびロイシン残基を置換するAibを含ませた。次のアミノ酸配列、即ちAib−NF−Aib−VH(配列番号125)およびAib−NF−Aib−V(配列番号127)を含む新しく合成されたペプチドをそれぞれ図43b〜cに示す。
【0327】
ペプチド合成−固相技術を使用してPeptron,Inc.(Taejeon,韓国)によってペプチドを合成した。ペプチドの正確な正体は、HP1100シリーズLC/MSDを使用してイオンスプレー質量分析法によって確認された。ペプチドの純度を、水および0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)における0%から100%へのアセトニトリルの30分の直線勾配を1ml/分の流速で使用して、C18カラムでの逆相高圧液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)によって確認した。
【0328】
ペプチド溶液−新しく調製したストック溶液を、凍結乾燥形態のペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)に100mMの濃度で溶解することによって作製した。何らかの事前の凝集を避けるために、新しいストック溶液をそれぞれの実験のために調製した。ペプチドストック溶液を、下記のようにマイクロチューブに希釈した。5μlのペプチドストック溶液を95μLの10mM Tris(pH7.2)に加えた(従って、ペプチドの最終濃度は5%のDMSOの存在下で5mMであった)。
【0329】
(実施例41)
野生型およびAib改変hIAPPペプチドの超微細構造分析
上の実施例40に記載されたペプチドの原繊維形成能を電子顕微鏡分析によって評価した。
【0330】
材料および実験手順
透過電子顕微鏡−4日間(wtペプチド)および10日間(改変ペプチド)寝かせた、10mMのTris緩衝液(pH7.2)における5mMペプチド溶液の10μLサンプルを、400メッシュの銅グリッド(SPI Supplies,West Chester PA)上に置き、カーボン安定化ホルムバールフィルムによって覆った。1分後、過剰な液体を除き、次にグリッドを2%酢酸ウラニル水溶液でさらに2分間ネガティブ染色した。サンプルを80kVで稼動するJEOL 1200EX電子顕微鏡で調べた。
【0331】
結果
Aib含有ペプチドのアミロイド原繊維を形成する能力を、天然のIAPPペプチドと比較して調べた。Aib改変および野生型ペプチドの寝かせた溶液を、ネガティブ染色を使用して電子顕微鏡(EM)のもとで調べた。図44a−bに示すように、両天然ペプチド、即ちANFLVH(図44a)およびANFLV(図44b)は、全長IAPPタンパク質によって形成された原繊維に対して高い類似性を有する原繊維構造を形成した。他方、Aib含有ペプチド、即ち、Aib−NF−Aib−VH(図44c)およびAib−NF−Aib−V(図44d)に対して、より長いインキュベーション期間後であっても、原繊維構造は全く存在しなかったが、無定形の凝集物はなお存在していた。これは、本発明のAib置換ペプチドが原繊維形成できないこと示唆している。
【0332】
(実施例42)
コンゴーレッド結合アッセイによる野生型およびAib置換IAPPペプチドのアミロイド形成能の試験
材料および実験手順
コンゴーレッド染色および複屈折−10日間寝かせた、10mMのTris緩衝液(pH7.2)における5mMペプチド溶液の10μL懸濁液を、ガラス製の顕微鏡スライドガラスの上で一晩乾燥させた。染色を、80%エタノール(v/v)溶液における飽和コンゴーレッド(CR)およびNaClの10μL懸濁液を加えることによって行なった。溶液を0.2μmフィルターによりろ過した。その後、スライドガラスを数時間乾燥させた。複屈折を、直交偏光子を備えるSZX−12実体顕微鏡(Olympus,Hamburg、ドイツ)を用いて測定した。100×の倍率で示される。
【0333】
結果
コンゴーレッド染色を使用して、Aib改変ペプチドのアミロイド形成能を評価した。スライドガラスを、直交偏光子を使用する顕微鏡のもとで調べた。図45a〜bは、ANFLVHおよびANFLVペプチド(それぞれ図45aおよびb)の両方に対して典型的な黄緑の複屈折を示す。しかしながら、EM研究によれば、Aib改変ペプチド、即ちAib−NF−Aib−VHおよびAib−NF−Aib−Vは複屈折を全く示さなかった。これは、Aib改変ペプチドがアミロイド原繊維を全く形成できないことを示唆している(図45c〜d)。
【0334】
(実施例43)
Aib改変IAPPペプチドフラグメントの二次構造分析
フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)を、Aib改変hIAPPの二次構造を決定するために行なった。
【0335】
材料および実験手順
フーリエ変換赤外分光法−赤外スペクトルを、DTGS検出器を備えるNicolet社のNexus470FT−IR分光計を使用して記録した。2週間寝かせたペプチド溶液のサンプルを、CaF2プレート上に懸濁し、真空乾燥させた。ペプチド沈着物をD2Oで再懸濁し、続いて乾燥させて、薄いフィルムを形成させた。この再懸濁手順を2回繰り返して、水素から重水素への交換が最大になることを確実にした。測定値を、4cm−1の分解能および2000回の走査平均化を使用して得た。透過率極小値をOMNIC分析プログラム(Nicolet)によって決定した。
【0336】
結果
FT−IR分光法を使用して、観察された構造の内部立体配座を解明した(上の実施例42および43参照)。Aibの含有時の図46a〜bに示すように、IAPPペプチドはIRスペクトルにおいてシャープな変化を示した。ANFLVHおよびANFLVペプチドスペクトルは、1630cm−1および1632cm−1のそれぞれに極小を有するβ−シートスペクトルの典型であるが、Aib−NF−Aib−VHおよびAib−NF−Aib−Vペプチドは、1670cm−1および1666cm−1のそれぞれに極小を示し、それは無秩序なコイル立体配座を特徴とする。
【0337】
まとめると、これらの結果は天然のIAPPペプチドとAib含有ペプチドの間の根本的な差異を示唆する。天然のペプチドは高度にアミロイド形成性であるが、改変Aib含有ペプチドはアミロイド原繊維を形成することができない(実施例41〜43)。
【0338】
(実施例44)
Aib改変ペプチドはIAPPポリペプチドによるアミロイド形成を阻害する
Aib阻害剤存在下および非存在下でのアミロイド原繊維形成の程度を、分子指示剤としてチオフラビンT(ThT)を使用して評価した。ThT色素の蛍光の程度は、溶液中のアミロイド原繊維の量に直接的に相関する[LeVine H 3rd.(1993),Protein Sci.2:404〜410]。
【0339】
材料および実験手順
フーリエ変換赤外分光法−IAPP溶液(10mMのTris緩衝液(pH7.2)における4μMペプチド)を、40μMの様々なペプチド溶液の存在下または非存在下で室温でインキュベートした。溶液を、50mMリン酸ナトリウム(pH6.0)に3μMのチオフラビンT(ThT)を含有する溶液に10倍希釈し、Perkin Elmar LS50B分光蛍光計を使用して450nmでの励起による480nmにおける蛍光を測定することによって原繊維形成を測定した。コントロールとして、10mMのTris緩衝液(pH7.2)をThT溶液に希釈し、蛍光を記載したように測定した。
【0340】
結果
図47に示すように、全てのAib改変ペプチドは、全長IAPPポリペプチドの会合を阻害することができた。これは、アミロイド形成ペプチドのAib改変が様々な治療用途において強力な抑制ツールとして役立ちうることを示唆している。
【0341】
(実施例45)
ジ−およびトリ−芳香族ペプチドはIAPPポリペプチドの凝集を阻害しうる。
短い芳香族アミノ酸配列がアミロイドポリペプチドの会合を阻害する能力を研究し、β−シート破壊剤アミノ酸がこのような阻害を容易にする能力に接近するために、テトラ−、トリ−およびジペプチドのアレーを合成および評価した。
【0342】
実験手順
ペプチド合成−この実施例45および実施例46〜47に使用されたペプチドおよびその表示の一覧を下記の表7に示す。ペプチド合成は以下の実施例46〜47に記載されている。
【0343】
【表7】
【0344】
ThT蛍光−上記実施例44参照
結果
阻害ペプチドを、(記載したような)標準ThT蛍光アッセイを使用して評価した。図48は、142時間のインキュベーション後、IAPP凝集がプラトーに達した後の終点値を示す。凝集アッセイを、IAPPポリペプチド(4μM)および阻害ペプチド(40μM)の存在下で行なった。
【0345】
図48に明らかに示すように、短い芳香族アミノ酸配列はその凝集を阻害しながらIAPPポリペプチドに対する認識を媒介する。最良の阻害剤は、Aib−Phe−Pheペプチド(EG12)であり、そこではAib残基はアミロイド関連構造を形成しうる最短の認識エレメントに結合されている[Reches and Gazit,Science(2003),300(2619):625〜7]。D−Tyr−D−Pro(EG18)およびD−Tyr−D−Aib(EG16)は、IAPP凝集に対して有意な阻害効果を示し、これは単一芳香族残基が分子認識を媒介する能力を実証する。興味深いことに、Aibはプロリンより高い阻害活性を示した。さらに、芳香族アミノ酸に対するβ−シート破壊剤アミノ酸の位置で異なるペプチドEG17とEG18の間の活性の有意な差は、ペプチドの組成だけでなく、順序に対する役割を示唆する。
【0346】
(実施例46)
最良に実施するIAPP原繊維化阻害剤の選択およびそれを選択する基準
ペプチド合成−ペプチド合成(EG5,EG6およびEG7,D−Phe−Pro,およびD−Pro−Pheを除く)を、固相合成(Peptron,Inc.,Taejeon、韓国)を使用することによって行なった。ペプチドの同定はイオンスプレー質量分析法によって確認された。ペプチドの純度を、逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって確認した。EG5,EG6,およびEG7,D−Phe−Pro,およびD−Pro−Pheを、Bachem(Bubendorf、スイス)から購入した。小島アミロイドポリペプチド(IAPP)を、CalBiochem(La Jolla CA、米国)から購入した。
【0347】
チオフラビン蛍光アッセイ−hIAPP原繊維化はチオフラビンT色素結合アッセイによってモニターされた。hIAPP1〜37ストック溶液を、阻害剤(40μM)ありまたはなしの10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)において4μMの最終濃度に、そして1%(vol)のHFIPの最終濃度に希釈した。希釈直後、サンプルを4℃で20000×gで20分間遠心分離し、上澄み画分を蛍光測定のために使用した。各測定ごとに、Thtを3μMの最終濃度で1mlサンプルに添加し、測定を、Perkin−Elmer(励起450nm,2.5nmスリット;発光480nm,10nmスリット)を使用することによって行なった。バックグラウンド放射線は全てのサンプルから差し引いた。
【0348】
結果
潜在的な阻害剤の同定および阻害剤設計のための規則−IAPP原繊維化の小さなペプチド阻害剤を同定し、阻害剤の最小長さおよびその最大安定性を最適化するために、ペプチド選択の反復サイクルを、D−アミノ酸配列アナログを使用して行なった。
【0349】
図49aに示された選択の第一ラウンドは、トリペプチドのように短いペプチドがIAPPによるアミロイドの形成を効率的に阻害しうることを証明した。EG01とEG03の比較は、短いペプチド内のAsn残基の存在がアミロイド形成の阻害に貢献しないことを示唆し、さらに適切な阻害のためにβ−破壊剤とともに芳香族部分を使用することを支持する。EG05、アミロイド形成のための公知の阻害剤[Tjernberg他(1996)、J.Biol.Chem.271:8545〜854]によるIAPP原繊維化の効果的な阻害は、芳香族残基によるアミロイド形成の一般的な阻害を示唆する。実際に、EG05およびずっと短いEG08(Phe−Pheに結合したAib)エレメントの同様の活性は、EG05の一般的な阻害がその芳香族の性質に由来することを明らかに示唆する。
【0350】
図49bに示された選択の第二ラウンドは、効果的な阻害がトリペプチドによってだけでなくジペプチド(EG16,EG17,EG18)によっても達成されうることを証明した。全ての場合において芳香族部分へのD−異性体の結合を使用した。EG16とEG17の間の差は、阻害剤の設計のための規則を確立するために次のラウンドでさらに研究された。図49cは選択の第三ラウンドの結果を示す。EG20対EG21(d−F−P対P−d−F)の第三ラウンドにおける比較(図49c)は、第二ラウンドにおけるEG16とEG17を比較することによって得られた結果、およびEG24とEG35を比較することによって得られた結果(第四ラウンドにおいて−図1d)とともに、(芳香族DまたはL)−(β−破壊剤)に述べたようなジペプチド阻害剤の設計のための一般式を示唆する。これらの選択ステップは、(芳香族DまたはL)−(芳香族DまたはL)−(β−破壊剤)に述べたようなトリペプチド阻害剤のための一般式をさらに与えた。
【0351】
第四ラウンドはまた、四つの推定される代謝的に安定なジペプチドEG28,EG29,EG30,EG31の阻害能力を証明した。再び、阻害配列のための芳香族アミノ酸およびベータ破壊剤の有用性が強調される。
【0352】
(実施例47)
D−Trp−Aibによるβ−アミロイドポリペプチド原繊維形成の阻害
ペプチド合成−上の実施例46参照。組換えβ−アミロイド(Aβ1−40,>98%純度)を、rPeptide(Athens GA、米国)から購入した。
【0353】
チオフラビンT蛍光アッセイ−Aβ1−40の原繊維化をチオフラビンT色素結合アッセイによってモニターした。Aβ1−40ストック溶液を、阻害剤ありまたはなしの100mM NaCl,10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)において5μMの最終濃度に希釈した。各測定ごとに、Thtを0.1mlサンプルに添加し、0.3μMのThTおよび0.4μMのポリペプチドの最終濃度にした。測定を、Jobin Yvon FluroMax−3(励起450nm,2.5nmスリット;発光480nm,5nmスリット、積分時間1秒)を使用して行なった。バックグラウンド放射線を全てのサンプルから差し引いた。
【0354】
透過電子顕微鏡観察−10μLサンプルを400メッシュの銅グリッド(SPI supplies,West Chester PA)に置き、カーボン安定化ホルムバールフィルムによって覆った。1分後、過剰な液体を除き、その後、グリッドを2%酢酸ウラニル水溶液でさらに2分間ネガティブ染色した。サンプルを80kVで稼動するJOEL 1200EX電子顕微鏡で調べた。
【0355】
結果
阻害の蛍光測定−D−Trp−AibがIAPP以外の分子によってアミロイド形成を阻害できるかどうかを試験するために、アルツハイマーのβ−アミロイド1−40(Aβ)をモデル系として作用した。図50に示すように、阻害剤の不存在下では、Aβは約100時間の原繊維化における遅延段階を示し、その後蛍光レベルにおける急速な増加を示した。10μMのEG30の存在下では、遅延時間は有意に増加され、プラトーに達したときの蛍光全体は阻害剤なしで観察されるより有意に低かった。
【0356】
これはさらに、芳香族阻害剤が一般的なアミロイド阻害剤および会合の共通のメカニズムとして作用しうることを示唆する[Gazit(2002),FASEB J.16,77〜83]。
【0357】
超微細構造分析−阻害のメカニズムの情報を得るために、その末端(termination)アッセイ時の蛍光アッセイからとった試料を電子顕微鏡によって調べた(図51a〜c)。阻害剤を含まないAβのサンプルには明確で良く規定されたアミロイド繊維が存在していた(図51a)。対照的に、EG30の存在下では、Aβはほとんど無定形凝集体(図51b)としてまたは分断された原繊維(図51c)として検出された。これは、阻害剤の存在下で形成されたそれらの原繊維であっても短く、おそらく機能不全であったことを示唆している。
【0358】
従って、D−Trp−Aib化合物は、極めて小さい分子において薬学的特性の独自の組み合わせを提供する:
【0359】
1.へテロ芳香族相互作用:増殖するアミロイド原繊維(Gazit,2002)の芳香族認識界面とトリプトファンインドールの間の相互作用は、増殖する鎖のさらなるホモ分子自己会合を直接的かつ正確にブロックする特定の配向された結合を可能にする。
【0360】
2.Aib立体配座制限:β−アミノイソブチル酸(Aib)、即ち例外的に幾何学的な制約を有するアミノ酸の結合は、極めて強いβ−シート破壊効果を誘導し、アミロイド原繊維の増殖を停止させる鍵となる手段である。このβ−破壊策略は、分子のサイズ及び複雑性に関して従来技術(プロリン導入)と比較すると明らかな利点を示す。
【0361】
3.安定なD−異性体立体配座:阻害剤はD−アミノ酸および非キラルのAib部分から作られる。これは、開裂できないペプチド結合の形成を生じ、従っておそらく高い生理学的安定性を生じる。
【0362】
4.ペプチド結合スタッキング:その小さなサイズにかかわらず、典型的なペプチド結合(異性体的に安定なものであるが)は分子内に保持される。かかるペプチド結合の独自の平面の特性は、β−鎖相互作用と一致した正確な幾何学形態を有するそれらの部分的に平面の共鳴構造のため、増殖するアミロイド鎖上の分子の特定の幾何学的に制約されたスタッキングを可能にする。
【0363】
5.静電反発:電荷を有する末端の存在は、さらなる結合モノマーの静電反発を生じる。このような反発は、他のペプチド阻害剤において電荷を有するアスパラギン酸を導入することによって達成される[Soto他(2003),J.Biol.Chem 278:13905]。これは、タンパク質分解を減少するためにこれらのペプチドの末端をブロックする必要性があるからである。D−Trp−Aibの非天然の安定な異性体形態は、有意に小さな分子を生じる最小のフレームワーク内で電荷を有する末端の保持を可能にする。
【0364】
6.嵩高い疎水性部分:トリプトファンインドール基は、極めて小さい分子系において独自の嵩高さおよび疎水性の性質を提供する。トリプトファン部分は最も高い膜分配係数を持つことが十分に確立されている。この特性は経口バイオアベイラビリティおよび血液脳関門(BBB)移行のための鍵となる利点を持つはずであると考えられる。
【0365】
7.酸化防止活性:インドール基は、フリーラジカルの除去によって酸化防止剤として作用することも知られている。実際、ADを処置するための薬剤候補の幾つかは、この特性に基いている(例えば、MindSetのインドール−3−プロピオン酸)。しかしながら、このような分子はAD関連酸化ストレスから神経細胞の保護に有効であるが、それらはD−Trp−Aib分子フレームの独自の原繊維化阻害特性を欠く。
【0366】
8.小さなサイズ:D−Trp−Aibは顕著に小さい活性分子である。前のパラグラフ(1〜7)に記載された独自の特性の全ては、300Da未満の分子内で維持される。この開裂できない分子の小さなサイズは、低い免疫原性を維持しながら、経口バイオアベイラビリティ、長い半減期、およびBBBの移行を示唆する。
【0367】
明確化のために別個の実施態様で記載された本発明の特定の特徴は、単一の実施態様で組み合わせて与えられてもよいことが認識される。逆に、簡単のために単一の実施態様で記載された本発明の様々な特徴は、別個に、またはいかなる好適な組み合わせで与えられてもよい。
【0368】
本発明をその特定態様に関して説明したが、多くの代替、変更および変形態様が当業者にとって明白であることは明らかである。したがって、特許請求の範囲の精神およびその広い範囲に包含されるそれらの代替、変更および変形態様は、全て本発明に包含されるものとする。本明細書で言及した刊行物、特許および特許出願は全て、各個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個別的に参照によりここに組み入れられて示されるのと同程度に全体をこの明細書中に参照により組み入れられる。さらに、本願で行う参考文献の引用および記載は、当該参考文献を本発明に対する先行技術として利用できるとの自認ではないと解釈されるものとする。
【配列表フリーテキスト】
【0369】
配列番号1〜6,8〜49,61〜89、及び91〜150は合成ペプチドの配列である。
配列番号7はコンセンサス配列である。
配列番号50〜57、及び59〜60は一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列である。
配列番号58は細菌中での発現のための改変されたIAPP cDNAの配列である。
配列番号90はペプチドアレーコンセンサス配列である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、II型糖尿病およびアルツハイマー病などのアミロイド関連疾患を診断、予防、および処置するために使用することができるペプチドおよびそれに対する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイド物質沈着(これはまたアミロイド斑形成とも呼ばれる)は、アルツハイマー病、プリオンに関連した脳障害、II型糖尿病、家族性アミロイドーシスおよび軽鎖アミロイドーシスを含む、関連性のない様々な病理学的状態の中心的な特徴である。
【0003】
アミロイド物質は、直径が約80Å〜100Åである一定しない長さの堅い非分岐タンパク質性原繊維の密な網状構造から構成される。アミロイド原繊維は、その長軸が原繊維の長軸に直交する逆平行または平行のβ−プリーツシートに配置されたポリペプチド鎖のコア構造を含有する[Both他(1997)、Nature、385:787〜93;Glenner(1980)、N.Eng.J.Med.、302:1283〜92;Balbach他(2002)、Biophys J.83:1205〜16]。
【0004】
約20個のアミロイド原繊維タンパク質がこれまでにインビボで同定され、特異的な疾患と相関づけられている。これらのタンパク質は互いにアミノ酸配列相同性をほとんど有していないが、アミロイド原繊維のコア構造は本質的には同じである。アミロイド原繊維のこの共通するコア構造、およびアミロイド沈着物における共通物質の存在は、アミロイド物質の特定の形態を特徴づけるデータが、アミロイド物質の他の形態にもまた関係することがあり、従って、II型糖尿病、アルツハイマー痴呆またはアルツハイマー病、およびプリオンに関連した脳障害などのアミロイド関連疾患に対する薬物を開発するための鋳型設計において具体化され得ることを示唆している。
【0005】
さらに、アミロイド沈着物は、インビボでは不活性ではないようであり、むしろ、代謝回転の動的状態にあり、そして、原繊維の形成が停止される場合、退行することさえもあり得る[Gillmore他(1997)、Br.J.Haematol.、99:245〜56]。
【0006】
従って、アミロイドポリペプチドの産生を阻害するか、またはアミロイドーシスを阻害するために設計された治療は、アミロイド関連疾患を処置するために有用であり得る。
【0007】
アミロイドポリペプチドの産生の阻害−アミロイドポリペプチドの産生の直接的な阻害が、例えば、ヒト小島アミロイドポリペプチドのメッセンジャーRNA(mRNA)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用によって達成され得る。インビトロでは、小島アミロイドポリペプチドのmRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの添加またはアンチセンス相補的DNAの発現は、細胞のインスリンのmRNA含有量およびタンパク質含有量を増大させており、これにより、この方法の潜在的な有効性が明らかにされている[Kulkarni他(1996)、J.Endocrinol.、151:341〜8;Novials他(1998)、Pancreas、17:182〜6]。しかしながら、そのようなアンチセンス分子のインビボ有効性を明らかにする実験結果は何ら明らかにされていない。
【0008】
アミロイド原繊維の形成の阻害−小島アミロイドを含むアミロイドは、血清アミロイドP成分、アポリポタンパク質Eおよびパールカンなどの潜在的な安定化物質または保護物質を含有する。発達中のアミロイド原繊維に対するそれらの結合を阻止することにより、アミロイド形成タンパク質の特定部分に対して特異的な抗体による処置[Solomon他(1997)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:4109〜12]が可能であるように、アミロイド形成を阻害することができる[Kahn他(1999)、Diabetes、48:241〜53]。
【0009】
下記には、アミロイド構造を脱安定化する能力を有する薬物を操作するための現在の試みがまとめられている。
【0010】
脱安定化化合物−ヘパリン硫酸がすべてのアミロイドの成分として同定されており、ヘパリン硫酸はまた、炎症に関連するアミロイド誘導のごく初期段階においても関係している。Kisilevskyおよび共同研究者(Mature Med.、1:143〜148、1995)は、ヘパリン硫酸が炎症関連のアミロイド前駆体およびアルツハイマー病(AD)のβ−ペプチドと相互作用することを妨害する低分子量のアニオン性のスルホネート化合物またはスルフェート化合物の使用を記載した。ヘパリン硫酸は、アミロイドタンパク質の折りたたみパターンに特徴的な増大したβ−シート構造を受け入れるために可溶性アミロイド前駆体(SAA2)に特異的な影響を及ぼす。これらのアニオン性のスルホネート化合物またはスルフェート化合物は、電子顕微鏡写真によってモニターされたとき、ヘパリンにより加速されるAβ原繊維形成を阻害することが示され、また、事前に形成された原繊維をインビトロで分解することができた。さらに、これらの化合物は、急性モデルおよび慢性モデルにおいてインビボで、マウスの脾臓での炎症関連のアミロイドの進行を実質的に停止させた。しかしながら、最も強力な化合物[すなわち、ポリ(ビニルスルホネート)]は急性毒性を示した。類似する毒性が、免疫グロブリン軽鎖アミロイドーシス(AL)患者においてアミロイド再吸収を誘導することが認められている別の化合物IDOX(アントラサイクリン 4’−ヨード−4’−デオキシドキソルビシン)に関して観測されている[Merlini他(1995)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:2959−63]。
【0011】
脱安定化抗体−抗β−アミロイドモノクローナル抗体が、インビトロでβ−アミロイド斑を脱凝集し、β−アミロイド斑の形成を予防することにおいて効果的であることが示されている(米国特許第5688561号)。しかしながら、そのような抗体のインビボでの有効性を明らかにする実験結果は何ら明らかにされていない。
【0012】
脱安定化ペプチド−β−プリーツシートを破壊する合成ペプチド(「β−シート破壊剤」)を加えることにより、原繊維が解離し、アミロイドーシスが妨げられたという発見[Soto他(1998)、Nat.Med.、4:822〜6]は、臨床的観点から特に有望である。簡単に記載すると、5残基のペプチドにより、アミロイドβ−タンパク質の原繊維形成が阻害され、事前に形成された原繊維がインビトロで分解され、そして、細胞培養において原繊維により誘導されるニューロンの死が妨げられた。さらに、このβ−シート破壊剤ペプチドは、アミロイドβ−タンパク質の沈着をインビボで著しく減少させ、そしてアミロイドーシスのラット脳モデルにおいてアミロイド原繊維の形成を完全に阻止した。
【0013】
小分子−アミロイドポリペプチドと結合し、これによりタンパク質の本来の折りたたみを安定化させる小分子の使用の可能性が、トランスチレチン(TTR)タンパク質の場合に試みられている[Peterson(1998)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:12965〜12960;Oza(1999)、Bioorg.Med.Chem.Lett.、9:1〜6]。これまでに、チロキシンおよびフルフェナム酸などの分子が、アミロイド形成をもたらす立体配座変化を妨げることができることが明らかにされている。しかしながら、動物モデルにおけるこれらの化合物の使用は、未だ立証されておらず、また、これらのリガンドと結合することができる、TTR以外のタンパク質が血液中に存在するために損なわれ得る。
【0014】
抗酸化剤−別の提案された治療は、酸化ストレスを回避し、アミロイドタンパク質をその還元状態(すなわち、モノマーおよびダイマー)で維持するために抗酸化剤を摂取することであった。亜硫酸塩の使用は、TTRのより安定なモノマーをインビトロおよびインビボの両方でもたらすことが示されていた[Altland(1999)、Neurogenetics、2:183〜188]。しかしながら、抗酸化作用の完全な特徴づけは依然として得られておらず、可能な治療法に関する結果の解釈は困難なままである。
【0015】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、米国特許第6359112号(Kapurniotu)の教示に反して、アミロイド原繊維へのペプチド凝集が芳香族相互作用によって支配されることを明らかにしている。そのような知見は、アミロイド関連疾患を診断および処置するために使用することができるペプチドを効率的かつ正確に設計することを可能にする。
【発明の概要】
【0016】
本発明の一つの局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−Xを含むペプチドであって、Xが芳香族アミノ酸であり、Yがグリシン以外のアミノ酸であり、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドが提供される。
【0017】
本発明の別の局面によれば、配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125および127からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドが提供される。
【0018】
本発明のさらに別の局面によれば、配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125および127からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドが提供される。
【0019】
本発明のさらに別の局面によれば、配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125および127からなる群から選択されるペプチドが提供される。
【0020】
本発明のさらなる局面によれば、個体におけるアミロイド関連疾患を処置または予防する方法であって、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドの治療有効量を個体に与えることを含む方法が提供される。
【0021】
以下に記載される本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、ペプチドは生理学的に受容可能なキャリアもまた含む薬学的組成物の有効成分である。
【0022】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは核酸構築物から発現される。
【0023】
本発明のさらにさらなる局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドを有効成分として含み、かつ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含むアミロイド関連疾患を処置または予防するための薬学的組成物が提供される。
【0024】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドの少なくとも1個のアミノ酸はD立体異性体である。
【0025】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドの少なくとも1個のアミノ酸はL立体異性体である。
【0026】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは2個のアミノ酸の長さであり、Yはβ−シート破壊剤アミノ酸である。
【0027】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは配列番号145に述べられたようなものである。
【0028】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは3個のアミノ酸の長さであり、Yは芳香族アミノ酸であり、アミノ酸配列X−YまたはY−Xに結合されたアミノ酸残基はβ−シート破壊剤アミノ酸である。
【0029】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸はペプチドのC末端にある。
【0030】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは少なくとも3個のアミノ酸の長さを有し、かつそのN末端でチオール化アミノ酸を含む。
【0031】
本発明のさらにさらなる局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドをコードするポリヌクレオチドセグメントを含む核酸構築物が提供される。
【0032】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、核酸構築物はプロモータをさらに含む。
【0033】
本発明のさらなる局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドと結合することができる抗原認識領域を含む抗体または抗体フラグメントが提供される。
【0034】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、Yはセリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミンおよびそれらの天然の誘導体からなる群から選択される極性の電荷を有していないアミノ酸である。
【0035】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、Yはβ−シート破壊剤アミノ酸である。
【0036】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸は天然に存在するアミノ酸である。
【0037】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、天然に存在するアミノ酸はプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、リジンおよびセリンからなる群から選択される。
【0038】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸は合成アミノ酸である。
【0039】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、合成アミノ酸はCα−メチル化アミノ酸である。
【0040】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、Cα−メチル化アミノ酸はα−アミノイソブチル酸である。
【0041】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは直鎖状または環状ペプチドである。
【0042】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125および127からなる群から選択される。
【0043】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは少なくとも4個のアミノ酸の長さを有し、かつそのC末端に少なくとも2個のセリン残基を含む。
【0044】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは少なくとも3個のアミノ酸の長さを有し、X−Y以外のペプチドのうち少なくとも1個のアミノ酸はセリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミンおよびそれらの天然の誘導体からなる群から選択される極性の電荷を有していないアミノ酸である。
【0045】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは少なくとも3個のアミノ酸の長さを有し、X−Y以外のペプチドのうち少なくとも1個のアミノ酸はβ−シート破壊剤アミノ酸である。
【0046】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸は天然に存在するアミノ酸である。
【0047】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、天然に存在するアミノ酸はプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、リジンおよびセリンからなる群から選択される。
【0048】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸は合成アミノ酸である。
【0049】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、合成アミノ酸はCα−メチル化アミノ酸である。
【0050】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、Cα−メチル化アミノ酸はα−アミノイソブチル酸である。
【0051】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸はペプチドにおけるX−Yの下流に位置される。
【0052】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、β−シート破壊剤アミノ酸はペプチドにおけるX−Yの上流に位置される。
【0053】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは少なくとも3個のアミノ酸の長さを有し、ペプチドのうち少なくとも1個のアミノ酸は正電荷を有するアミノ酸であり、ペプチドのうち少なくとも1個のアミノ酸残基は負電荷を有するアミノ酸である。
【0054】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、正荷電を有するアミノ酸はリジン、アルギニン、およびその天然および合成の誘導体からなる群から選択される。
【0055】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、負荷電を有するアミノ酸はアスパラギン酸、グルタミン酸、およびその天然および合成の誘導体からなる群から選択される。
【0056】
本発明のさらにさらなる局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドと結合できる抗原認識領域を有する抗体または抗体フラグメントを有効成分として含み、かつ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含むアミロイド関連疾患を処置または予防するための薬学的組成物が提供される。
【0057】
本発明のさらにさらなる局面によれば、個体におけるアミロイド関連疾患を処置または予防する方法であって、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドであって、少なくとも2個で15個以下のアミノ酸の長さを有するペプチドと結合できる抗原認識領域を有する抗体または抗体フラグメントの治療的に有効な量を個体に与えることを含む方法が提供される。
【0058】
本発明のさらにさらなる局面によれば、下記一般式を有するペプチドが提供される:
式中、C*はD配置を有するキラルな炭素である。
R1およびR2は各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボキシ、C−チオカルブからなる群から選択され;
R3はヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロおよびアミンからなる群から選択され;そして
R4はアルキルである。
【0059】
本発明のさらにさらなる局面によれば、個体におけるアミロイド関連疾患を処置または予防する方法であって、下記一般式を有するペプチドの治療有効量を個体に与えることを含む方法が提供される:
式中、C*はD配置を有するキラルな炭素である。
R1およびR2は各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボキシ、C−チオカルブからなる群から選択され;
R3はヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロおよびアミンからなる群から選択され;そして
R4はアルキルである。
【0060】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、R4はメチルである。
【0061】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、R1およびRは各々、水素であり、R3はヒドロキシである。
【0062】
記載される好ましい実施態様におけるなおさらなる特徴によれば、ペプチドは環状ペプチドである。
【0063】
本発明は、II型糖尿病などのアミロイド関連疾患を診断および処置するために使用することができる、新規なペプチド、組成物および方法を提供することによって、現在知られている形態の様々な欠点に対処することに成功している。
【0064】
本明細書で使用される技術用語と科学用語はすべて、特に断らない限り、本発明の属する技術分野の当業者が共通して理解しているのと同じ意味を持っている。本明細書に記載されているのと類似の又は均等の方法と材料は本発明を実施又は試験するのに使用できるが、適切な方法と材料は以下に述べる。争いが生じた場合、定義を含めて本特許明細書が基準である。さらに、本明細書の材料、方法及び実施例は例示することだけを目的とし本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
本明細書では一例として添付の図面を参照しながら本発明を説明する。図面に示す詳細は一例であって、本発明の好ましい態様の具体例を挙げる目的しかなく、本発明の原理および概念的特徴を最も有効かつ理解しやすいと考えられる形で説明するために記載するものである。この点に関して、本発明の構成上の詳細は、本発明の基本的理解に必要な程度にしか詳しく説明していないが、本明細書と図面を合わせて検討することにより、当業者には、本発明のいくつかの形態を実際に具体化する方法が明らかになるだろう。
【図1】図1は、多数のアミロイドタンパク質に由来するペプチド群の、KyteおよびDolittleの尺度を使用して推定されるような、自己会合能とその疎水性とを示す模式図である。分析されたペプチドの疎水性とアミロイド形成能との間には相関が何ら認められないことに留意すること。このペプチド群における潜在的なアミロイド原繊維形成能に対する唯一の明らかな目安は、芳香族性と最小長さの組合せである。
【図2】図2a−cは、阻害性芳香族試薬のRo47−1816/001(図2a)、チオフラビンT(図2b)およびCR色素(図2c)とのアミロイド結合を模式的に示す。
【図3】図3a−cは、ヒトIAPPおよび齧歯類IAPPと本発明の合成ペプチドとの間での一次配列比較の模式図である。図3aはヒトIAPPおよび齧歯類IAPPの配列アラインメントである。ブロック部は、配列間で大きな不一致を示す7個のアミノ酸の部分配列を示す。「基本アミロイド形成ユニット」が太字によって表され、下線が引かれている。図3bは野生型IAPPペプチド(配列番号1)の化学構造を示す。図3cは、基本アミロイド形成ユニットに由来するペプチドの一次配列および配列番号を示す。
【図4】図4a−bは、原繊維形成の間の時間を関数とする405nmでの光の吸光度、従って、IAPP由来ペプチドの凝集速度論を反映する吸光度を示すグラフである。下記の記号が使用される:黒四角−N1A、白丸−G3A、黒丸−野生型、白三角−L6A、白四角−I5A、および黒三角−F2A。
【図5】図5は、光散乱によって測定されたときの会合したIAPPペプチドおよび誘導体の平均粒子サイズを示すヒストグラムである。それぞれの柱は3回〜5回の独立した測定の結果を表す。
【図6】図6a−nは、事前に会合させたIAPPペプチドへのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。通常場および偏光場での顕微鏡写真が、下記の寝かせたペプチド懸濁物のそれぞれについてそれぞれ示される:N1Aペプチド(図6a〜図6b)、F2Aペプチド(図6c〜図6d)、G3Aペプチド(図6e〜図6f)、野生型ペプチド(図6g〜図6h)、I5Aペプチド(図6i〜図6j)、およびL6Aペプチド(図6k〜図6l)。
【図7】図7は、「寝かせた」IAPPペプチドおよび誘導体の電子顕微鏡写真である:N1Aペプチド(図7a)、F2Aペプチド(図7b)、G3Aペプチド(図7c)、野生型ペプチド(図7d)、I5Aペプチド(図7e)、およびL6Aペプチド(図7f)。示されるスケールバーは100nmを表す。
【図8a】図8aは、野生型hIAPPと、細菌のコドン使用頻度に従って改変された対応する配列との核酸配列アラインメントである。改変された塩基には下線が引かれている。
【図8b】図8bは、48kDaのMBP−IAPPタンパク質の細胞質発現のために使用されるpMALc2x−NNベクターの模式図である。V8 Ek切断部位および(His)6タグがmalEタグのベクター配列のC末端に融合されている。MBPタグを除くためのXa因子切断部位が示されている。
【図9】図9は、MBPおよびMBP−IAPP融合タンパク質の細菌発現および精製を示すタンパク質ゲルGelCode Blue染色である。細菌細胞抽出物が調製され、タンパク質がアミロース樹脂カラムで精製された。25μgのタンパク質を含むサンプルがレーン1〜3のそれぞれに加えられ、これに対して、5μgのタンパク質がレーン4〜5のそれぞれに加えられた。タンパク質が12%SDS−PAGEで分離され、GelCode Blue染色により可視化された。分子量マーカーを左側に示す。レーン1−0.5mMのIPGTで誘導されたMBP可溶性抽出物、レーン2−0.1mMのIPGTで誘導されたMBP−IAPP可溶性抽出物、レーン3−0.5mMのIPGTで誘導されたMBP−IAPP可溶性抽出物、レーン4−精製MBP、レーン5−精製MBP−IAPP。矢印はMBP−IAPPを示す。
【図10】図10a−bは、hIAPPにおける推定されるアミロイド形成配列を示すドットブロット画像(図10a)およびそのデンシトメトリー定量(図10b)である。
【図11】図11は、原繊維形成の間の時間を関数とする405nmでの光の吸光度、従って、IAPP由来ペプチド(配列番号14〜19)の凝集速度論を反映する吸光度を示すグラフである。
【図12】図12a−fは、事前に会合させたIAPPペプチドへのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。偏光場での顕微鏡写真が、下記の1日寝かせたペプチド懸濁物のそれぞれについて示される:NFLVHSSNNペプチド(図12a)、NFLVHSS(図12b)、FLVHSS(図12c)、NFLVH(図12d)、FLVHS(図12e)、およびFLVH(図12f)。
【図13】図13a−fは、「寝かせた」IAPPペプチドの電子顕微鏡写真である。NFLVHSSNNペプチド(図13a)、NFLVHSS(図13b)、FLVHSS(図13c)、NFLVH(図13d)、FLVHS(図13e)、およびFLVH(図13f)。示されるスケールバーは100nmを表す。
【図14】図14a−fは、フーリエ変換赤外分光法によって測定されたときの不溶性IAPP凝集物における二次構造を示すグラフである。NFLVHSSNNペプチド(図14a)、NFLVHSS(図14b)、FLVHSS(図14c)、NFLVH(図14d)、FLVHS(図14e)、およびFLVH(図14f)。
【図15】図15は、メジンの以前に報告されたアミロイド形成ペプチドフラグメントの化学構造である[Haggqvist(1999)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96:8669〜8674]。
【図16】図16a−bは、原繊維形成の間の時間を関数とする405nmでの光の吸光度、従って、メジン由来ペプチドの凝集速度論を反映する吸光度を示すグラフである。図16aは短期間の速度論アッセイを示す。図16bは長期間の速度論アッセイを示す。
【図17】図17a−fは、「寝かせた」メジン由来ペプチドの電子顕微鏡写真である。NFGSVQFA−図17a、NFGSVQ−図17b、NFGSV−図17c、FGSVQ−図17d、GSVQ−図17e、およびFGSV−図17f。示されるスケールバーは100nmを表す。
【図18】図18a−fは、事前に会合させたメジン由来ペプチドへのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。偏光場での顕微鏡写真が、下記の寝かせたペプチド懸濁物のそれぞれについて示される:NFGSVQFA−図18a、NFGSVQ−図18b、NFGSV−図18c、FGSVQ−図18d、GSVQ−図18e、およびFGSV−図18f。
【図19】図19a−cは、メジンのヘキサペプチドのアミロイド形成フラグメントのアミロイド形成特性に対するアラニン変異の影響を示す。図19aは、原繊維形成の間の時間を関数とする405nmでの光の吸光度、従って、メジン由来アラニン変異型の凝集速度論を反映する吸光度を示すグラフである。図19bは、「寝かせた」メジン由来のアラニン変異型の電子顕微鏡写真であり、スケールバーは100nmを表す。図19cは、事前に会合させたメジン由来ペプチド変異型へのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。
【図20】図20a−bは、ヒトカルシトニンのアミノ酸配列(図20a)およびヒトカルシトニンのアミロイド形成ペプチドフラグメントの化学構造(図20b)である。カルシトニンのオリゴマー化状態およびホルモン活性にとって重要である残基17および残基18には下線が付されている[Kazantzis(2001)、Eur.J.Biochem.、269:780〜791]。
【図21】図21a−dは、「寝かせた」カルシトニン由来ペプチドの電子顕微鏡写真である。DFNKF−図21a、DFNK−図21b、FNKF−図21c、およびDFN−図21d。示されるスケールバーは100nmを表す。
【図22】図22a−dは、事前に会合させたカルシトニン由来ペプチドへのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。偏光場での顕微鏡写真が、下記の寝かせたペプチド懸濁物のそれぞれについて示される:DFNKF−図22a、DFNK−図22b、FNKF−図22c、およびDFN−図22d。
【図23】図23は、フーリエ変換赤外分光法によって測定されたときの不溶性カルシトニン凝集物における二次構造を示すグラフである。
【図24】図24a−cは、カルシトニンのペンタペプチドのアミロイド形成フラグメントのアミロイド形成特性に対するアラニン変異の影響を示す。図24aは、「寝かせた」カルシトニン由来のアラニン変異型の電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。図24bは、事前に会合させたカルシトニン由来のペプチド変異型へのコンゴーレッドの結合を示す顕微鏡写真である。図24cは、フーリエ変換赤外分光法によって測定されたときの変異型ペプチドにおける二次構造を示すグラフである。
【図25】図25は、「寝かせた」ラクトトランスフェリン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図26】図26は、「寝かせた」血清アミロイドAタンパク質由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図27】図27は、「寝かせた」BriL由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図28】図28は、「寝かせた」ゲルゾリン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図29】図29は、「寝かせた」血清アミロイドP由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図30】図30は、「寝かせた」免疫グロブリン軽鎖由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図31】図31は、「寝かせた」シスタチンC由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図32】図32は、「寝かせた」トランスチレチン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図33】図33は、「寝かせた」リゾチーム由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図34】図34は、「寝かせた」フィブリノーゲン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図35】図35は、「寝かせた」インスリン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図36】図36は、「寝かせた」プロラクチン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図37】図37は、「寝かせた」β2ミクログロブリン由来ペプチドの自己会合を示す電子顕微鏡写真である。スケールバーは100nmを表す。
【図38】図38は、IAPPの自己会合に対する阻害ペプチドの作用を示すグラフである。四角−野生型(wt)IAPPペプチド;三角−wt−IAPP+阻害ペプチド;丸−ペプチドなし。
【図39】図39は、原繊維形成の間の時間を関数とする405nmでの光の吸光度、従って、IAPP由来ペプチド(配列番号46〜49)の凝集速度論を反映する吸光度を示すグラフである。
【図40】図40は、7日間寝かせた後のIAPPアナログの濁度を示すヒストグラム図を示す。
【図41】図41a−fは、「寝かせた」IAPPアナログの電子顕微鏡写真である。NFGAILSS−図41a、NFGAILSS−図41b、NIGAILSS−図41c、NLGAILSS−図41d、NVGAILSS−図41e、およびNAGAILSS−図41f。示されるスケールバーは100nmを表す。
【図42】図42a−cは、最小のアミロイド形成配列SNNXGAILSS(X=システイン以外の任意の天然アミノ酸)のアナログに対するIAPP−NFGAILSSの結合を示す。図42aは結合させたペプチドアレイの短期間の暴露を示す。図42bは結合させたペプチドアレイの長期間の暴露を示す。図42cは、デンシトメトリーおよび任意単位を使用する、短期間の暴露(図42a)の定量を示す。
【図43】図43aは、すべての残基について(黄色は十分に可能な、オレンジ色は部分的に可能な)、L−プロリンについて(青色)、およびアキラルなAib残基について(マゼンタ)の可能な立体配置を示すラマチャンドランプロットである。図43b−cは、長い野生型IAPPペプチドの化学構造(ANFLVH、配列番号124、図43b)およびそのAib改変された構造のペプチド(Aib−NF−Aib−VH、配列番号125、図43c)を示す模式図である。改変のために好適な官能基は青色でマークされており(図43b)、一方、改変された基は赤色でマークされている(図43c)。
【図44】図44a−dは、「寝かせた」IAPPアナログの電子顕微鏡写真である。図44a−ANFLVH;図44b−ANFLV;図44c−Aib−NF−Aib−VH;図44d−Aib−NF−Aib−V。示されたスケールバーは100nmを表わす。
【図45】図45a−dは、事前に会合された野生型およびAib改変されたIAPPペプチドに結合するコンゴーレッドを示す顕微鏡写真である。偏光場顕微鏡写真が以下の寝かされた(即ち、11日目の)ペプチド懸濁物の各々について示される。図45a−ANFLVH;図45b−ANFLV;図45c−Aib−NF−Aib−VH;図45d−Aib−NF−Aib−V。
【図46】図46a−bは、フーリエ変換赤外線分光分析(FI−IR)によって決定された通りの不溶性野生型およびAib改変されたhIAPP凝集物の二次構造を示すグラフである。図46a−野生型ペプチドANFLVHおよび矢印によって示されるように対応するAib改変ペプチド。図46b−野生型ANFLVHおよび矢印によって示されるように対応するAib改変ペプチド。
【図47】図47は、アミロイド原繊維形成に対するAib改変ペプチドの阻害効果を示すグラフである。野生型IAPPは単独でまたは本発明の様々なペプチドと共にインキュベートされた。時間の関数としての原繊維形成は、ThT蛍光を用いて決定された。
【図48】図48は、IAPP−自己会合に対する短い芳香族配列(配列番号112−123)の阻害効果を示すヒストグラムである。
【図49a−c】図49a−cは、IAPP原繊維化阻害剤の選択の反復サイクルを表わすグラフである。原繊維化はThT蛍光アッセイによってモニターされた。IAPP単独(4μM)の蛍光値またはアッセイされる化合物(40μM)の存在におけるIAPPの蛍光値が試験された。測定はIAPP蛍光がプラトーに達成された後に行なわれた。IAPP蛍光は任意に100として設定された。図49aは、IAPP原繊維化阻害剤の選択の第一ラウンドの結果を示す。EG1=D−Phe−D−Phe−D−Pro;EG2=Aib−D−Phe−D−Asn−Aib;EG3=D−Phe−D−Asn−D−Pro;EG4=Aib−Asn−Phe−Aib;EG5=Gln−Lys−Leu−Val−Phe−Phe;EG6=Tyr−Tyr;EG7=Tyr−Tyr−NH2;EG8=Aib−Phe−Phe。図49bは、IAPP原繊維化阻害剤の選択の第二ラウンドの結果を示す。EG13=Asn−Tyr−Aib;EG14=Asn−Tyr−Pro;EG15=D−Pro−D−Tyr−D−Asn;EG16=D−Tyr−Aib;EG17=D−Pro−D−Tyr;EG18=D−Tyr−D−Pro。図49cは、IAPP原繊維化阻害剤の選択の第三ラウンドの結果を示す。d−F−P=D−Phe−Pro;P−d−F=Pro−D−Phe;EG19=Asn−Tyr−Tyr−Pro;EG20=Tyr−Tyr−Aib;EG21=Aib−Tyr−Tyr;EG22=Aib−Tyr−Tyr−Aib;EG23=D−Asn−Tyr−Tyr−D−Pro。
【図49d】図49dは、IAPP原繊維化阻害剤の選択の第四ラウンドの結果を示す。EG24=Pro−Tyr−Tyr;EG25=Tyr−Tyr−Pro;EG26=Pro−Tyr−Tyr−Pro;EG27=D−Tyr−D−Tyr;EG28=D−Pro−Aib;EG29=D−Phe−D−Pro;EG30=D−Trp−Aib;EG31=D−Trp−D−Pro。
【図50】図50は、D−Trp−AibによるAβ(1−40)原繊維形成の阻害を示すグラフである。Aβ1−40ストック溶液は、100mMのNaCl,10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中に、5μMの最終濃度に、10μMのD−Trp−Aib(三角形)ありで、またはいかなる添加剤もなしで(四角形)希釈された。蛍光値は、各サンプルに0.3μMのThtを添加した後で測定された。結果は、二つの独立した測定の平均を表わす。
【図51】図51a−cは、TEMによって可視化されるようにAβの原繊維化に対するD−Trp−Aibの阻害効果を表わす顕微鏡写真である。図51aは、Aβ単独を示す。図51b−cは、阻害剤の存在下でAβインキュベートされた二つの異なる視野を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明は、II型糖尿病などのアミロイド関連疾患を診断または処置するための新規なペプチド、それに対する抗体、それらを含む組成物、およびそれぞれの使用方法に関する。
【0067】
本発明の原理および操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解することができる。
【0068】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示すか、または図面に示す各構成成分の構築および配置の細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することができ、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、限定的であると見なすべきでないことを理解しなければならない。
【0069】
アミロイド原繊維形成を妨げるか、またはアミロイド物質を分解するための数多くの治療方法が先行技術に記載されている。しかしながら、現在の治療方法は、細胞毒性、非特異性および送達といった壁によって制限されている。
【0070】
本発明を実施に移している間に、また、II型糖尿病などのアミロイド関連疾患に対する新規な治療様式について探し求めている間に、本発明者は、原繊維形成を行わせるアミロイド形成性のペプチドに特徴的な配列を同定した。この発見は、秩序のあるアミロイド形成には、非特異的な疎水性相互作用を伴う以前に記載された機構[Petkova(2002)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、99:16742〜16747]ではなく、むしろ、分子相互作用の特異的なパターンが関係していることを示唆している。
【0071】
本明細書中下記に、そして下記の実施例の節にさらに例示されるように、本発明者は、アミロイド形成における芳香族残基に対する非常に重要な役割を考えていた。アミロイド形成プロセスにおける芳香族残基の関与は、分子認識および自己会合におけるπスタッキング相互作用の十分に確立された役割と一致している[Gillard他(1997)、Chem.Eur.J.、3:1933〜40;ClaessensおよびStoddart(1997)、J.Phys.Org.Chem.、10:254〜72;Shetty他(1996)、J.Am.Chem.Soc.、118:1019〜27;McGuaghey他(1998)、πスタッキング相互作用:タンパク質における機能、J.Biol.Chem.、273、15458〜15463;SunおよびBernstein(1996)、J.Phys.Chem.、100:13348〜66]。πスタッキング相互作用は、平面の芳香族環の間で形成される非結合の相互作用である。そのような秩序だったスタッキング構造の形成に伴う立体的な制約が、超分子構造の形成をもたらす自己会合プロセスにおいて基本的な役割を有している。そのようなπスタッキング相互作用は、おそらくはエントロピー駆動によるものであるが、DNAの二重らせん構造の安定化、タンパク質の三次構造のコア充填および安定化、ホスト−ゲスト相互作用、ならびに溶液中でのポルフィリン凝集などの多くの生物学的プロセスにおいて中心的な役割を果たしている[アミロイド原繊維の自己会合におけるπスタッキング相互作用の可能な役割についてのさらなる総説については、Gazit(2002)、FASEB J.、16:77〜83を参照のこと]。
【0072】
本発明者は、アミロイド斑の形成によって特徴づけられる疾患を処置または診断するために利用することができる非常に有効な診断用ペプチド、予防用ペプチドおよび治療用ペプチドを作製することが初めて可能になる、ジペプチド(実施例45−47参照)のように短い芳香族ペプチドの分子認識を媒介する能力を証明した。
【0073】
従って、本発明の一つの局面によれば、アミノ酸配列X−YまたはY−X(但し、Xは芳香族アミノ酸であり、Yはグリシン以外のアミノ酸である)を含むペプチドが提供される。この配列を含むペプチドの例は配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125および127に述べられる。後述する実施例の節の実施例36〜39に与えられた結果によって示されるように、本発明者は、従来技術の教示に反して、アミロイド自己会合を規定しているのは疎水性よりむしろ芳香族性であることを発見した。従って、本発明のペプチドの芳香族アミノ酸はアミロイド原繊維の形成にとって非常に重要である。
【0074】
芳香族アミノ酸は、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、フェニルグリシン、あるいは、それらの修飾体、前駆体または機能的な芳香族部分を含む(しかしこれらに限定されない)任意の天然に存在する芳香族残基または合成された芳香族残基であり得る。本発明のペプチドの一部の形成し得る芳香族残基の例を下記の表2に示す。
【0075】
下記の実施例の節に示す結果によって明らかにされるように、本発明は、様々な程度の自己凝集速度論および凝集物構造を示すペプチドの設計を容易にする。
【0076】
本明細書中で使用される表現「自己凝集」は、水溶液中で凝集物(例えば、原繊維)を形成するペプチドの能力を示す。自己凝集するペプチドの能力、ならびにそのような自己凝集の速度論およびタイプにより、アミロイド疾患の処置または診断でのペプチドの使用が決定される。
【0077】
凝集速度論および凝集物構造は、作製されたペプチドの特異的な残基組成およびおそらくは長さ(図1参照)によって主に決定されるので、本発明は、配列番号4,12〜19,27〜45,112〜123,125,127,128〜147または148に示す配列を含むより長いペプチド(例えば、10個のアミノ酸〜50個のアミノ酸)、または、好ましくはこれらの配列のいずれかを含むより短いペプチド(例えば、2個〜15個のアミノ酸、好ましくは少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも10個、例えば12個のアミノ酸、好ましくは15個以下のアミノ酸)の両方を包含する。
【0078】
アミロイド形成の速度を速めるために、本発明のペプチドは、好ましくは、少なくとも1つの極性の電荷を有していないアミノ酸をさらに含み、そのようなアミノ酸としては、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、あるいはそれらの天然の誘導体または合成誘導体が挙げられるが、これらに限定されない(表2参照)。
【0079】
本発明のこの局面の一実施態様によれば、アミノ酸残基Yは極性の電荷を有していないアミノ酸である。
【0080】
本発明のこの局面の別の実施態様によれば、ペプチドは少なくとも3個のアミノ酸、上で記載されたX−Y/Y−Xアミノ酸配列およびX−Y/Y−X配列の上流(N−末端)または下流(C−末端)のいずれかに位置される追加の極性の電荷を有していないアミノ酸を含む。
【0081】
本発明のペプチドは、少なくとも3個のアミノ酸の長さであることができ、かつ少なくとも1対の正電荷を有しているアミノ酸(例えばリジンおよびアルギニン)および負電荷を有しているアミノ酸(例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸)を含むことができる(例えば配列番号27〜29)。そのようなアミノ酸組成は好適でありうる。これは、実施例の節の実施例21に示すように、反対の電荷の間での静電的相互作用により、秩序のある逆平行構造の形成が誘導されうるからである。
【0082】
さらに、本発明のペプチドは、4個のアミノ酸の長さであることができ、かつX−Y/Y−X配列のC−末端に二つのセリン残基を含む。
【0083】
さらに、本発明のペプチドは、3個のアミノ酸の長さであることができ、チオール化アミノ酸残基(即ち、硫黄イオンを含む)を、好ましくはそのN−末端に含む(例えば、配列番号149および150、それぞれD−Cys−D−Trp−AibおよびL−Cys−D−Trp−Aib、並びにそれらのアシル化およびアミド化形)。このようなペプチド形態は非常に価値がある。なぜならば、それは還元特性をペプチドに与え、それによって還元剤および酸化防止剤として(ともに神経防護作用のために重要でありうる(Offen他(2004)、J Neurochem.89:1241〜51);およびアミロイド阻害剤としての両方で作用しうる。チオール化アミノ酸の例は、天然に存在するアミノ酸システインおよびメチオニンおよびTyr(SO3H)の如き合成アミノ酸を含むが、それらに限定されない。
【0084】
本発明者らは、原繊維形成を支配する配列特徴を同定しているので、本発明の教示はまた、原繊維には凝集せず、原繊維形成を防止もしくは減少させること、または、以前に形成された原繊維を破壊することのいずれかが可能であり、従って、治療薬として使用することができるペプチドの設計を可能にする。
【0085】
例えば、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号17、配列番号19、配列番号25または配列番号30によって包含されるペプチドを治療のために利用することができる。なぜならば、これは、下記の実施例の節に示すように、そのようなペプチドは、野生型ペプチドと比較したとき、凝集を示さず(配列番号9)、または、遅い凝集速度論を示す(配列番号9および配列番号10)からである。アミロイド形成は非常に遅いプロセスであるので、これらのペプチド配列は、生理学的条件のもとでアミロイドーシスを完全に阻害するか、または著しく遅らせると考えられる。
【0086】
本明細書に用いる用語「ペプチド」とは、天然ペプチド(分解産物、合成ペプチド又は組換えペプチドのいずれか)並びにペプチドを生体中でより安定又はより細胞内への浸透が可能なように修飾していてもよいペプチド類似体(ペプチドアナログ)であるペプトイド及びセミペプトイドなどのペプチド擬似体(典型的には、合成ペプチド)を含む。このような修飾としては、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾が挙げられるがこれらに限定されず、CH2−NH、CH2−S、CH2−S=O、O=C−NH、CH2−O、CH2−CH2、S=C−NH、CH=CH又はCF=CH、骨格修飾及び残基修飾が挙げられるがこれらに限定されない。ペプチド擬似体化合物を調製する方法は、当該技術分野ではよく知られており、例えばQuantitative Drug Design, C.A.Ramsden Gd.,Chapter 17.2,F.Choplin Pergamon出版(1992)に特定され、これは本明細書中に完全に記載されているか如く参考文献により取り込まれている。これに関するさらなる詳細を以下に記載する。
【0087】
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)を、例えばN−メチル化結合(−N(CH3)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH2−)、α−アザ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは例えばメチルなどのアルキル基)、カルバ結合(−CH2−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH2−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン二重結合(−CH=CH−)、レトロアミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH2−CO−)(式中、Rは炭素原子上に天然に存在する「通常の」側鎖)により置換してもよい。
【0088】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合のいずれにおいて生じてもよく、同時に数箇所(2〜3箇所)で生じてもよい。
【0089】
天然芳香族アミノ酸、Trp、Tyr及びPheが、フェニルグリシン、Tic、ナフチルアラニン(Nal)、フェニルイソセリン、トレオニノール、Pheの環状メチル化誘導体、Phe又はo−メチル−Tyrのハロゲン化誘導体などの合成非天然酸で置換してもよい。
【0090】
上記よりさらに、本発明のペプチドは1つ以上の修飾されたアミノ酸または1つ以上の非アミノ酸モノマ−(例えば脂肪酸、炭水化物複合体など)も含んでもよい。
【0091】
本明細書中及び請求の範囲の部分中に用いる用語「アミノ酸」又は「アミノ酸(複数)」とは、20個の天然に生じるアミノ酸であって、これらのアミノ酸はしばしば翻訳後にin vivoで修飾され、例えばヒドロキシプロリン、ホスホセリン及びホスホトレオニンが挙げられ、及び2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、ノル−バリン、ノル−ロイシン及びオルニチンなどの、しかしこれらに限定されない他の通常にはないアミノ酸を含むものと理解されるべきである。さらに、用語「アミノ酸」はD−及びL−アミノ酸の両者を含む。
【0092】
以下の表1及び2は、本発明において用いられる天然に生じるアミノ酸(表1)及び慣用でない又は修飾アミノ酸(表2)を挙げる。
【表1】
【表2】
【0093】
本発明のペプチドは、好ましくは、ペプチドが可溶性の形態であることが要求される治療薬または診断薬において利用されるので、本発明のペプチドは、好ましくは、1つ以上の非天然型または天然型の極性アミノ酸を含み、そのようなアミノ酸には、そのヒドロキシル含有側鎖によりペプチドの溶解性を増大させることができるセリンおよびトレオニンが含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
治療用の場合、本発明のペプチドは、好ましくは、少なくとも一つのβ−シート破壊剤アミノ酸残基を含み、それは以下に記載されるようなペプチド配列に位置される。そのようなβ−シート破壊剤アミノ酸を含むペプチドは、アミロイドポリペプチドの認識を保持するが、その凝集を予防する(以下の実施例の節の実施例40〜45参照)。本発明のこの局面の一つの好ましい実施態様によれば、β−シート破壊剤アミノ酸は、約−120度〜−140度の典型的なβ−シートφ角でなく、約−60度〜+25度の限定されたφ角によって特徴づけられ、それによりアミロイド原繊維のβ−シート構造を破壊する、プロリンの如き天然に存在するアミノ酸である(例えば、配列番号45,112,119,120,122,123,128,130,134,138,139,140,141,143,144,146,147および148、「背景技術」の節を参照)。他のβ−シート破壊剤アミノ酸はアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、リジンおよびセリンを含むが、これに限定されない(ChouおよびFasman(1978),Annu.Rev.Biochem.47,258による)。
【0095】
本発明のこの局面の別の好ましい実施態様によれば、β−シート破壊剤アミノ酸残基は、Cα−メチル化アミノ酸の如き合成アミノ酸であり、その立体構造条件が制限される[Balaram,(1999),J.Pept.Res.54,195〜199]。天然のアミノ酸と違って、Cα−メチル化アミノ酸はCαに結合された水素原子を有し、それはアミド結合のφおよびΨ角に関してそれらの立体特性に幅広く影響する。従って、アラニンは幅広い範囲の可能なφおよびΨ立体構造を有するが、α−アミノイソブチル酸(Aib、上の表2参照)は制限されたφおよびΨ立体構造を有する。従って、少なくとも一つのAib残基で置換される本発明のペプチドは、アミロイドポリペプチドを結合できるが、その凝集を防止する(実施例40〜44参照)。このようなペプチドは配列番号113,114,117,118,121,135,136,137,143,145,149,129および131に記載されている。
【0096】
本発明のこの局面のβ−シート破壊剤アミノ酸はペプチドのX−Y/Y−Xアミノ酸配列の位置Yに位置されることができる(例えば、配列番号123,143,144,145,146,147,148参照)。あるいは、本発明のこの局面のペプチドは少なくとも3個のアミノ酸であることができ、かつX−Y/Y−Xアミノ酸配列以外のいずれかの位置に破壊剤アミノ酸を含む(例えば配列番号117参照)。
【0097】
β−シート破壊剤アミノ酸は芳香族残基の上流に(配列番号122参照)またはその下流に(配列番号123参照)位置されてもよい。
【0098】
本発明のこの局面の一つの好ましい実施態様によれば、ペプチドは3個のアミノ酸の長さであり、Yは芳香族アミノ酸であり、アミノ酸配列X−YまたはY−Xに結合されたアミノ酸残基はβ−シート破壊剤アミノ酸であり、それはペプチドのC末端で結合されることが好ましい(例えば配列番号135および140)。
【0099】
本発明のこの局面の別の好ましい実施態様によれば、ペプチドは2個のアミノ酸の長さであり、かつYはβ−シート破壊剤アミノ酸である(例えば配列番号121,143〜148)。
【0100】
本発明のこの局面の最も好ましい実施態様によれば、ペプチドは下記一般式を有するジペプチドである:
式中、C*はD配置(R配置とも称される)を有するキラルな炭素であり、
R1およびR2は各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボキシ、チオカルボキシ、C−カルボキシレートおよびC−チオカルボキシレートからなる群から選択され;
R3はヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロおよびアミンからなる群から選択され;そして
R4はアルキルである。
【0101】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルキル基は、1個〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルキル基は、1個〜4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロおよびアミノであり得る。
【0102】
「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。シクロアルキル基の非限定な例には、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンがある。シクロアルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロおよびアミノであり得る。
【0103】
「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の非限定的な例には、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルがある。アリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、アルキル、シクロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、シアノ、ニトロおよびアミノであり得る。
【0104】
「ヒドロキシ」基は−OH基を示す。
【0105】
「アルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0106】
「アリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アリール基を示す。
【0107】
「チオヒドロキシ」基は−SH基を示す。
【0108】
「チオアルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−S−アルキル基および−S−シクロアルキル基の両方を示す。
【0109】
「チオアリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−S−アリール基を示す。
【0110】
「カルボキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−C(=O)−R’基(式中、R’は、水素、ハロ、アルキル、シクロアルキルまたはアリールを示す。
【0111】
「チオカルボキシ」基は−C(=S)−R’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0112】
「C−カルボキシレート」基は−C(=O)−O−R’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0113】
「O−チオカルボキシレート」基は−C(=S)−O−R’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0114】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0115】
「アミン」基は−NR’R’’基(式中、R’は本明細書中で定義される通りであり、R’’はR’について規定される通りである)を示す。
【0116】
「ニトロ」基は−NO2基を示す。
【0117】
「シアノ」基は−C≡N基を示す。
【0118】
好ましくは、R4はメチルであり、従って上の化合物はD−トリプトファン−α−アミノブチル酸(D−Trp−aibまたはD−トリプトファン−α−メチル−アラニンとも称される)、またはその誘導体である。
【0119】
改変されていないジペプチド、L−配置を有するペプチド、逆転された配置を有するペプチド(即ち、トリプトファン(D/L)のC〜N配列およびα−メチルアラニン)、または上記ペプチド配列を包含する巨大分子(例えば、ペプチド、固定されたペプチド)が知られていることが認識されるだろう(例えば、WO 02/094857,WO 02/094857,EP特許No.966975,US特許No.6255286,6251625,6162828および5304470)。しかしながら、このような分子は上で記載されたペプチドとは化学的にかつ生物学的に異なり、その独自の活性はその構造に厳しく依存する。
【0120】
本発明のペプチドは、好ましくは、直鎖状形態で利用されるが、環化がペプチド特性を大きく妨害しない場合には、環状形態のペプチドもまた利用され得ることが理解される。
【0121】
環状ペプチドは、環状形態で合成され得るか、または所望される条件(例えば、生理学的条件)のもとで環状形態を取るように構成され得るかのいずれかである。
【0122】
例えば、本発明の教示によるペプチドはコアペプチド配列に隣接する少なくとも2個のシステイン残基を含むことができる。この場合において、環化は二つのCys残基間のS−S結合の形成によって作成されることができる。側鎖と側鎖の環化はまた、式−(−CH2−)n−S−CH2−C−(但し、n=1または2である)の相互作用結合の形成によって作成されることができ、それは例えばCysまたはホモCysの含有およびその自由SH基と例えばブロモアセチル化Lys,Orn,DabまたはDapの反応によって可能である。さらに、環化は、例えばアミド結合形成によって、例えばGlu,Asp,Lys,Orn,ジアミノブチル(Dab)酸、ジアミノプロピオン(Dap)酸を鎖(−CO−NHまたは−NH−CO結合)の様々な位置に含ませることによって得られることができる。骨格と骨格の環化はまた、式H−N((CH2)n−COOH)−C(R)H−COOHまたはH−N((CH2)n−COOH)−C(R)H−NH2(式中、n=1〜4であり、さらにRはアミノ酸の天然または非天然の側鎖である)の改変されたアミノ酸によって得られることができる。
【0123】
従って、本発明は、原繊維の会合を導くアミロイドペプチドの構造的決定因子の正体に関する結論的データを提供する。
【0124】
そのため、本発明により、アミロイドーシスの予防/処置または診断のために利用することができる様々なペプチド配列の設計が可能になる。
【0125】
実施例6〜35に記載されているように、本発明者は数多くのアミロイド関連タンパク質において本発明のコンセンサスな芳香族配列(配列番号7)を同定することができたことが理解される。従って、本発明により、本質的にすべてのアミロイド形成タンパク質のアミロイド形成フラグメントを正確に同定することが可能になる。
【0126】
さらに、小さい芳香族分子、例えば、Ro47−1816/001[Kuner他(2000)、J.Biol.Chem.、275:1673〜8、図2a参照]および3−p−トルオイル−2−[4’−(3−ジエチルアミノプロポキシ)フェニル]ベンゾフラン[Twyman(1999)、Tetrahedron Letters、40:9383〜9384]などが、アルツハイマー病のβ−ポリペプチドの重合を阻害することにおいて有効であることが明らかにされており[Findeis他(2000)、Biochem.Biophys.Acta、1503:76〜84]、その一方で、芳香族要素を含有するアミロイド特異的色素、例えば、コンゴーレッド(図2b)およびチオフラビンT(図2c)などが一般的なアミロイド形成阻害剤であるという事実は、本発明の認識モチーフを、アミロイドの自己会合のためには十分であることを実証している。
【0127】
本発明のペプチドを得ることができることにより、アミロイド斑を解離させるために、またはアミロイド斑の形成を予防するために使用することができる、本発明のペプチドに対する抗体を作製することが可能になる(米国特許第5688561号)。
【0128】
用語「抗体」は、完全な抗体分子、ならびに、マクロファージに結合することができるその機能的フラグメント、例えば、Fab、F(ab’)2およびFvなどを示す。これらの機能的な抗体フラグメントは下記のように定義される:(i)Fab、抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含有するフラグメントであり、完全な抗体を酵素パパインで消化して、完全な軽鎖と、一方の重鎖の一部とを生じさせることによって製造することができるフラグメント;(ii)Fab’、完全な抗体をペプシンで処理し、その後、還元して、完全な軽鎖と、重鎖の一部とを生じさせることによって得ることができる抗体分子のフラグメント;抗体分子1個あたり2つのFab’フラグメントが得られる;(iii)F(ab’)2、完全な抗体を、その後の還元を伴うことなく、酵素ペプシンで処理することによって得ることができる抗体のフラグメント;F(ab’)2は、2つのFab’フラグメントが2つのジスルフィド結合によって互いに結合している二量体である;(iv)Fv、これは、2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作されたフラグメントとして規定される;および(v)単鎖抗体(「SCA」)、遺伝子融合された単一鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子。
【0129】
これらのフラグメントを作製する様々な方法がこの分野では知られている(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1988(これは参考として組み込まれる)を参照のこと)。
【0130】
抗体(すなわち、モノクローナルおよびポリクローナル)を作製する様々な方法がこの分野では広く知られている。抗体は、この分野で知られているいくつかの方法のいずれか1つによって作製することができる。そのような方法では、抗体分子のインビボ産生の誘導、開示されているように免疫グロブリンライブラリーまたは非常に特異的な結合試薬のパネルをスクリーニングすること[Orlandi D.R.他(1989)、Proc.Natl.Acad.Sci.、86:3833〜3837;Winter G.他(1991)、Nature、349:293〜299]、あるいは、培養での連続した細胞株によるモノクローナル抗体分子の作製を用いることができる。これらには、限定されないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびエプスタイン−バールウイルス(EBV)−ハイブリドーマ技術が含まれる[Kohler G.他(1975)、Nature、256:495〜497;Kozbor D.他(1985)、J.Immunol.Methods、81:31〜42;Cote R.J.他(1983)、Proc.Natl.Acad.Sci.、80:2026〜2030;Cole S.P.他(1984)、Mol.Cell.Biol.、62:109〜120]。
【0131】
本発明による抗体フラグメントは、抗体のタンパク質分解的加水分解によって、またはフラグメントをコードするDNAの大腸菌もしくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物もしくは他のタンパク質発現システム)での発現によって調製することができる。
【0132】
抗体フラグメントは、従来の方法による完全な抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体フラグメントを、F(ab’)2として示される5Sフラグメントを得るためにペプシンによる抗体の酵素切断によって作製することができる。このフラグメントは、3.5SのFab’一価フラグメントを作製するために、チオール還元剤と、そして必要な場合には、ジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基に対する保護基とを使用してさらに切断することができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素切断では、2つの一価Fab’フラグメントおよび1つのFcフラグメントが直接生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4036945号および同第4331647号、ならびにそれらに含まれる参考文献に記載されている(そのような特許はその全体が参考として本明細書により組み込まれる)。Porter、R.R.、Biochem.J.、73:119〜126、1959もまた参照のこと。フラグメントが、完全な抗体により認識される抗原に結合する限り、抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽−重鎖フラグメントを形成させるための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、あるいは、他の酵素的技術、化学的技術または遺伝学的技術などもまた使用することができる。
【0133】
Fvフラグメントは、VH鎖およびVL鎖の会合を含む。この会合は、Inbar他、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、69:2659〜62、1972に記載されるように非共有結合であり得る。あるいは、可変鎖を、分子間ジスルフィド結合によって連結することができ、または、グルタルアルデヒドなどの化学試薬によって架橋することができる。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによってつながれたVH鎖およびVL鎖を含む。これらの単鎖の抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによってつながれたVHドメインおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、その後、発現ベクターは、大腸菌などの宿主細胞に導入される。組み換え宿主細胞により、リンカーペプチドが2つのVドメインをつないでいる単一のペプチド鎖が合成される。sFvを製造するための様々な方法が、例えば、WhitlowおよびFilpula、Methods、2:97〜105、1991;Bird他、Science、242:423〜426、1988;Pack他、Bio/Technology、11:1271〜77、1993;Ladner他、米国特許第4946778号(これらはその全体が参考として本明細書により組み込まれる)によって記載される。
【0134】
別の形態の抗体フラグメントは、1つだけの相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識ユニット」)を、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製される。例えば、LarrickおよびFry、Methods、2:106〜10、1991を参照のこと。
【0135】
ヒトへの適用の場合、本発明の抗体は、好ましくは、ヒト化される。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合性の部分配列など)のキメラ分子である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補的決定領域(CDR)に由来する残基が、所望する特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体または導入されたCDR配列もしくはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含むことができる。一般に、ヒト化抗体は、実質的にすべての可変ドメイン、または少なくとも1つの可変ドメイン、典型的には2つの可変ドメインを含み、この場合、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含み、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜329(1988);Presta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596(1992)]。
【0136】
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法がこの分野では広く知られている。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上のアミノ酸残基が、非ヒトである供給源からその中に導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、導入可変ドメインから典型的には選ばれる導入残基として示されることが多い。ヒト化は、本質的には、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することによって、Winterおよび共同研究者の方法[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜327(1988);Verhoeyen他、Science、239:1534〜1536(1988)]に従って行うことができる。従って、そのようなヒト化抗体は、実質的には全体ではないヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4816567号)。実際、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基およびおそらくはいくつかのFR残基が齧歯類抗体における類似部位に由来する残基によって置換されているヒト抗体である。
【0137】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレーライブラリー[HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marks他、J.Mol.Biol.、222:581(1991)]を含む、この分野で知られている様々な技術を使用して製造することができる。Cole他およびBoerner他の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体を調製するために利用することができる[Cole他、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985);Boerner他、J.Immunol.、147(1):86〜95(1991)]。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されている遺伝子組換え動物(例えば、マウス)に導入することによって作製することができる。抗原刺激したとき、ヒト抗体の産生が観測され、その抗体産生は、遺伝子再配置、組み立ておよび抗体レパートリーを含むすべてのことにおいてヒトで見られる抗体産生と非常に類似している。この方法は、例えば、米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号、同第5661016号に記載され、また、下記の科学的刊行物に記載される:Marks他、Bio/Technology、10、779〜783(1992);Lonberg他、Nature、368:856〜859(1994);Morrison、Nature、368:812〜13(1994);Fishwild他、Nature Biotechnology、14、845〜51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology、14、826(1996);LonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.、13:65〜93(1995)。
【0138】
本明細書中上記で述べられたように、本発明のペプチドに対する1つの具体的な使用は、アミロイド斑形成に関連する疾患の予防または処置である。
【0139】
従って、本発明のさらにまた別の局面によれば、個体におけるアミロイド関連疾患を処置する方法が提供される。本発明による好ましい個体対象は哺乳動物であり、例えば、イヌ、ネコ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒトなどである。
【0140】
用語「処置する」は、アミロイド斑形成を減少させるか、もしくは予防すること、または、罹患組織における斑の出現を実質的に減少させることを示す。表現「アミロイド斑」は、原繊維アミロイド、ならびに、凝集したが、原繊維ではないアミロイド(以降、「プロト原繊維アミロイド」、これもまた病原性であり得る)を示す。例えば、凝集したが、必ずしも原繊維ではない形態のIAPPが、培養において毒性であることが見出された。Anaguianoおよび共同研究者[(2002)、Biochemistry、41:11338〜43]によって示されるように、プロト原繊維IAPPは、パーキンソン病の病理発生に関係しているプロト原繊維α−シヌセリンと同様に、合成された小胞を細孔様機構によって透過した。IAPPアミロイド細孔の形成は、早期のIAPPオリゴマーの形成およびその消失からアミロイド原繊維の出現までと一時的に相関していた。これらの結果は、プロト原繊維IAPPが、他のプロト原繊維タンパク質がアルツハイマー病およびパーキンソン病の発症にとって重要であるようにII型糖尿病にとって重要であり得ることを示唆している。
【0141】
本発明に従って処置されるアミロイド関連疾患には、II型糖尿病、アルツハイマー病(AD)、早発型アルツハイマー病、遅発型アルツハイマー病、前徴アルツハイマー病、パーキンソン病、SAAアミロイドーシス、遺伝性アイスランド症候群、多発性骨髄腫、髄様ガン、大動脈の医学的ガン腫、インスリン注射アミロイドーシス、プリオン全身性アミロイドーシス、慢性炎症アミロイドーシス、ハンチントン病、老年性全身性アミロイドーシス、下垂体アミロイドーシス、遺伝性腎アミロイドーシス、家族性英国痴呆、フィンランド遺伝性アミロイドーシス、家族性非神経障害性アミロイドーシス[Gazit(2002)、Curr.Med.Chem.、9:1667〜1675]、そして、プリオン病(ヒツジおよびヤギのスクレイピー、ならびに、ウシ類のウシ海綿状脳症(BSE)を含む)[WilesmithおよびWells(1991)、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、172:21〜38]、そして、ヒトのプリオン病(これには、(i)クールー、(ii)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(iii)ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)および(iv)致死性家族性不眠症(FFI)が含まれる)[Gajdusek(1977)、Science、197:943〜960;Medori、Tritschler他(1992)、N Engl J Med、326:444〜449]が含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
本発明の方法は、本発明のペプチドの治療有効量を個体に与えることを含む。ペプチドは、様々な送達方法のいずれか1つを使用して与えることができる。様々な送達方法および好適な配合物が、薬学的組成物に関して本明細書中以下に記載される。
【0143】
アミロイド疾患を処置するために用いられたとき、本発明のペプチドは、原繊維形成を防止するために、または、原繊維形成を減少させるために、または、事前に形成された凝集物を競合的に脱安定化させることにより、形成された凝集物を脱凝集するために好適なアミノ酸配列を含むことが理解される。例えば、配列番号45,112〜123,125,127,128〜149および150は、アミロイド疾患(特にII型糖尿病)を処置するために利用することができる。これは、下記の実施例の節の実施例35および実施例45に示すように、そのような配列が、阻害ペプチドの存在下ではチオフラビンTと結合するアミロイド形成ペプチドの能力が低いことによって明らかであるように、IAPPの自己会合を妨害するからである。
【0144】
あるいは、配列番号10または配列番号11に示すペプチドは、下記の実施例の節に示すように、ペプチドにおけるロイシンまたはイソロイシンのいずれかの置換により、非常に遅い凝集速度論が誘発されるので、II型糖尿病の強力な阻害剤として使用することができる。インビボでのアミロイド形成は非常に遅いプロセスであるので、生理学的条件のもとでは、全長IAPPの場面においてイソロイシンまたはロイシンをアラニンに置換したときには、原繊維化が生じないと考えられる。
【0145】
あるいは、自己凝集性ペプチド、例えば、配列番号17、配列番号19および配列番号28〜配列番号30に示すペプチドなどをアミロイド原繊維化の強力な阻害剤として使用することができる。これは、そのようなペプチドは、アミロイドフラグメントによって形成されるホモ分子会合体ほどには秩序を有していないヘテロ分子複合体を形成することができるからである。
【0146】
短いペプチドフラグメントを治療で使用する際の大きな障害の1つは、立体特異的な細胞プロテアーゼによるそのタンパク質分解的分解であるので、本発明のペプチドは、好ましくは、天然アミノ酸のD−異性体から合成されることが理解される[すなわち、インベルソ(inverso)ペプチドアナログ、Tjernberg(1997)、J.Biol.Chem.、272:12601〜5;Gazit(2002)、Curr.Med.Chem.、9:1667〜1675]。
【0147】
さらに、本発明のペプチドには、そのレトロアナログ、インベルソアナログおよびレトロ−インベルソアナログが含まれる。ホルモンの完全なレトロ−インベルソアナログまたは延長された部分的なレトロ−インベルソアナログは、生物学的活性を保持または増強することが一般に見出されていることが理解される。レトロ反転化はまた、酵素阻害剤の合理的な設計の分野に適用されている(米国特許第6261569号を参照のこと)。
【0148】
本明細書中で使用される「レトロペプチド」は、本来のペプチド配列とは反対方向で組み立てられる、L−アミノ酸残基から構成されるペプチドを示す。
【0149】
天然に存在するポリペプチドのレトロインベルソ改変では、α−炭素立体化学が対応のL−アミノ酸のα−炭素立体化学とは逆であるアミノ酸、すなわち、D−アミノ酸またはD−allo−アミノ酸からの、本来のペプチド配列とは逆の順序での合成的な組み立てが伴う。従って、レトロインベルソアナログは、逆になった末端および逆方向のペプチド結合を有し、その一方で、本来のペプチド配列におけるような側鎖のトポロジーを本質的に維持している。
【0150】
さらに、アミロイド原繊維形成における主要な争点の1つは、本来の形態から積み重なったβ鎖構造へのアミロイドポリペプチドの移行であるので、阻害ペプチドは、好ましくは、立体効果のためにペプチド骨格を制約するN−メチル化アミノ酸を含む[Kapurniotu(2002)、315:339〜350]。例えば、アミノイソ酪酸(Aibまたはメチルアラニン)は、短い天然ペプチドにおけるα−ヘリックス構造を安定化することが知られている。さらに、N−メチル化はまた、分子間のNHからCOへのH結合能に影響を及ぼし、従って、H結合を形成する相互作用によって安定化される多層β鎖の形成を抑制する。
【0151】
コリル基などの有機基を本発明のペプチドのN末端またはC末端に付加することは、治療ペプチドの効力および生物利用性(例えば、神経変性疾患の場合における血液脳関門の横断)を改善することが示されているので好ましいと理解される[Findeis(1999)、Biochemistry、38:6791〜6800]。さらに、電荷を有しているアミノ酸を認識モチーフに導入することにより、アミロイド原繊維のさらなる成長を阻害する静電的反発を生じさせることができる[Lowe(2001)、J.Mol.Biol.、40:7882〜7889]。
【0152】
本明細書中上記に述べたように、本発明の抗体はまた、アミロイド関連疾患を処置するために使用することができる。
【0153】
本発明のペプチドおよび/または抗体は、そのものとして、または、薬学的に受容可能なキャリアと混合されている薬学的組成物の一部として個体に与えることができる。
【0154】
本明細書で使用する「医薬組成物」は、本明細書の記載する有効成分の1つまたは複数と、他の化学成分(例えば生理学的に適切なキャリアおよび賦形剤)との製剤を指す。医薬組成物の目的は生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0155】
本明細書において「有効成分」という用語は、生物学的効果を説明できるペプチドまたは抗体調製物を指す。
【0156】
以下、交互に用いられる「生理学的に受容可能なキャリア」および「医薬的に許容できるキャリア」という用語は、生物にとって著しい刺激の原因にならず、かつ投与される化合物の生物活性および特性を抑止しないキャリアまたは希釈剤を指す。アジュバントがこれらの用語に含まれる。医薬的に許容できるキャリアに含まれる成分の1つは、例えばポリエチレングリコール(PEG)、有機媒体および水性媒体の両方で広範囲の可溶性を有する生物適合ポリマーでありうる[Mutterら(1979)]。
【0157】
本明細書において「賦形剤」という用語は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の例には炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、様々なタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールなどがあるが、これらに限るわけではない
【0158】
薬物の製剤および投与に関する技術は「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.(ペンシルバニア州イーストン)の最新版に見いだすことができ、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0159】
適当な投与経路としては、例えば経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻腔送達、腸管送達または腸管外送達(筋肉内注射、皮下注射、および骨髄内注射、ならびに髄腔内注射、直接脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注入、または眼内注射を含む)などを挙げることができる。
【0160】
また、全身的な方法よりもむしろ、例えば患者の体の特定の領域に直接調製物を注射する局所的な方法で調製物を投与してもよい。
【0161】
本発明の医薬組成物は当技術分野で周知の方法により、例えば通常の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、捕捉または凍結乾燥法などを利用して製造することができる。
【0162】
本発明で使用される医薬組成物は、有効成分を医薬として使用できる製剤に加工しやすくする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容できるキャリアを使って、常法により製剤化することができる。適切な製剤は選択した投与経路に依存する。
【0163】
注射の場合は、水性溶液(好ましくはハンクス液、リンゲル液または生理食塩水緩衝液などの生体適合緩衝液)に、本発明の有効成分を製剤化することができる。経粘膜投与の場合は、浸透される壁に適切な浸透剤を製剤中に添加する。そのような浸透剤は当技術分野では広く知られている。
【0164】
経口投与の場合は、活性化合物を当技術分野で周知の医薬的に許容できるキャリアと混合することにより、化合物を容易に製剤化することができる。前記キャリアを使用することにより、本発明の化合物を、患者による経口摂取用の錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして製剤化することができる。経口用医薬品は固形の賦形剤を使用し、随意に、得られた混合物を粉砕し、所望により適当な補助剤を添加してから、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣錠の核錠を得ることによって、製造することができる。適切な賦形剤には、充填剤、例えば乳糖、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類、セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理的に許容できるポリマーがある。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤を添加してもよい。
【0165】
糖衣錠の核錠には適当なコーティングが施される。この目的には濃厚な糖溶液を使用することができ、その糖溶液は、所望により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含むことができる。識別のためまたは活性成分量の様々な組合わせを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠剤皮に染料または顔料を加えてもよい。
【0166】
経口使用が可能な医薬組成物には、ゼラチン製の押込み式カプセル剤ならびにゼラチンと可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)とでできた軟密封カプセル剤が含まれる。押込み式カプセル剤は、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および所望により安定剤と混合した有効成分を含むことができる。軟カプセル剤の場合は、有効成分を適当な液体(脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁することができる。さらに安定剤を加えてもよい。経口投与用製剤は全て、選択した投与経路に適した投与量でなければならない。
【0167】
経口腔粘膜投与の場合、本組成物は常法によって製剤化された錠剤または口中錠の形態をとることができる。
【0168】
鼻腔吸入による投与の場合、本発明で使用するための有効成分は、適当な噴射剤(例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、または二酸化炭素)を使って、加圧容器または噴霧器から、エアロゾルスプレーの形で便利に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、バルブを設けて、計量した量を送達することによって、決定することができる。本化合物と適当な粉末基剤(乳糖またはデンプンなど)との粉末混合物を含む、ディスペンサーの(例えばゼラチン製)カプセルおよびカートリッジを処方することもできる。
【0169】
本明細書に記載の調製物は、例えばボーラス注射または持続注入などによる非経口投与用に製剤化することもできる。注射用製剤は、例えばアンプルなどに一回量型として、または多用量容器に入れて、所望により保存剤を添加して提供することができる。本組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションであることができ、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの調剤用薬剤を含んでもよい。
【0170】
非経口投与用の医薬組成物として、水溶性活性調製物の水溶液が挙げられる。また、有効成分の懸濁液を適当な油性または水性注射懸濁液として調製することもできる。適切な親油性の溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルなどの合成脂肪酸エステル、トリグリセリドまたはリポソームなどがある。水溶性注射懸濁剤は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含んでもよい。所望により、本懸濁剤は、高濃度溶液の調製物を得ることができるように、有効成分の溶解度を増加させる適当な安定化剤または化合物をさらに含んでもよい。
【0171】
また、有効成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば滅菌パイロジェンフリー水)で構成させる粉末の形態をとってもよい。
【0172】
本発明の調製物は、例えば通常の坐剤用基剤(カカオ脂または他のグリセリドなど)を使って、坐剤または停留浣腸剤などの直腸用組成物に製剤化することもできる。
【0173】
本発明で使用するのに好適な医薬組成物は、有効成分が意図した目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物を含む。より具体的には、治療有効量とは、病気の症状を予防、緩和または改善するのに有効な、あるいは処置される対象の生存を延長させるのに有効な有効成分の量を意味する。
【0174】
治療有効量の決定は当業者の能力の範囲内でよい。
【0175】
本発明の方法において使用される調製物に関して、治療有効量または用量は、まずインビトロアッセイによって推定することができる。例えば、用量を、動物モデルで策定することができ、そのような情報を使って、ヒトで有効な用量をより正確に決定することができる。
【0176】
本明細書に記載する有効成分の毒性および治療効力は、標準的なインビトロ薬学的手法により、細胞培養または実験動物で決定することができる。これらのインビトロ、細胞培養アッセイおよび動物実験で得られたデータは、ヒトに使用する用量範囲の策定に利用することができる。投与量は、利用する投与経路に依存して、この範囲内で変動しうる。個々の医師は患者の状態を考慮して正確な処方、投与経路および投与量を選択することができる(例えば「The Pharmacological Basis of Therapeutics」(1975)第1章、第1頁のFinglらの記事を参照されたい)。
【0177】
処置すべき状態の重症度および反応性に応じて、投与は単回投与または複数回投与とすることができる。この場合、処置は数日〜数週間または治癒が達成されるか疾患状態の軽減が達成されるまで持続する。
【0178】
投与すべき組成物の量は、当然ながら、処置対象、病気の重症度、投与方法、処方医の判断などに依存するだろう。
【0179】
また、適合する医薬キャリア中に調剤された本発明の調製物を含む組成物を製造し、適当な容器に入れ、表示された状態の処置に関する表示をすることができる。
【0180】
本発明の組成物は、所望により、有効成分を含む1つまたは複数の単位剤形を含有するパックまたはディスペンサー装置、例えばFDA認可キットとして提供することができる。パックは、例えば、ブリスターパックのように金属箔またはプラスチック箔からなってもよい。パックまたはディスペンサー装置には、投与上の注意を添付してもよい。パックまたはディスペンサーには、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって指定された形式で容器に添付された、組成物の形状またはヒトもしくは動物への投与に関する当局の認可を示す通知を載せてもよい。そのような通知は、例えば処方薬に関して米国食品医薬品局によって許可されたラベリング、または許可された添付書類であることができる。
【0181】
本発明のペプチドまたは抗体はまた、本明細書中上記に記載される任意の好適な投与様式を用いて個体に投与された核酸構築物から発現させることができることが理解される(すなわち、インビボ遺伝子治療)。あるいは、核酸構築物が、適切な遺伝子送達ビヒクル/方法(トランスフェクション、形質導入、相同組み換えなど)および必要とされる場合には発現システムによって好適な細胞に導入され、その後、改変された細胞が培養で拡大され、個体に戻される(すなわち、エクスビボ遺伝子治療)。
【0182】
本発明のペプチドまたは抗体の細胞発現を可能にするために、本発明の核酸構築物はさらに、少なくとも1つのシス作用調節エレメントを含む。本明細書中で使用される表現「シス作用調節エレメント」は、トランス作用調節因子と結合し、その下流に位置するコード配列の転写を調節するポリヌクレオチド配列(好ましくは、プロモーター)を示す。
【0183】
任意の利用可能なプロモーターを本発明の方法論によって使用することができる。本発明の好ましい実施形態において、本発明の核酸構築物によって利用されるプロモーターは、形質転換された特定の細胞集団において活性である。細胞タイプ特異的および/または組織特異的なプロモーターの例には、肝臓特異的であるアルブミンなどのプロモーター[Pinkert他(1987)、Genes Dev.、1:268〜277]、リンパ系特異的プロモーター[Calame他(1988)、Adv.Immunol.、43:235〜275]、特にT細胞受容体のプロモーター[Winoto他(1989)、EMBO J.、8:729〜733]および免疫グロブリンのプロモーター[Banerji他(1983)、Cell、33729〜740]、ニューロン特異的プロモーター、例えば、ニューロフィラメントプロモーター[Byrne他(1986)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:5473〜5477]など、膵臓特異的プロモーター[Edlunch他(1985)、Science、230:912〜916]、または乳腺特異的プロモーター、例えば、乳清プロモーター(米国特許第4873316号および欧州特許出願公開第264166号)などが含まれる。本発明の核酸構築物はさらにエンハンサーを含むことができ、エンハンサーは、プロモーター配列の近くまたは遠くに存在させることができ、プロモーターからの転写をアップレギュレーションするように機能し得る。
【0184】
本発明の方法論の構築物はさらに、好ましくは、適切な選択マーカーおよび/または複製起点を含む。好ましくは、利用される構築物はシャトルベクターであり、これは、大腸菌(この場合、構築物は適切な選択マーカーおよび複製起点を含む)においてともに増殖することができ、細胞における増殖、選ばれた遺伝子および組織における組み込みのために適合性を有することができる。本発明による構築物は、例えば、プラスミド、バクミド、ファージミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体であり得る。
【0185】
現在好ましいインビボ核酸導入技術には、アデノウイルス、レンチウイルス、I型単純ヘルペスウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)、および脂質に基づくシステムなどのウイルス構築物または非ウイルス構築物によるトランスフェクションが含まれる。遺伝子の脂質媒介導入のための有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPEおよびDC−Cholである[Tonkinson他、Cancer Investigation、14(1):54〜65(1996)]。遺伝子治療において使用される最も好ましい構築物はウイルスであり、最も好ましくは、アデノウイルス、AAV、レンチウイルスまたはレトロウイルスである。レトロウイルス構築物などのウイルス構築物は、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサーもしくは遺伝子座規定エレメント(1つまたは複数)、または、選択的スプライシング、核RNAの核外輸送、もしくはメッセンジャーの翻訳後修飾などの他の手段により遺伝子発現を調節する他のエレメントを含む。そのようなベクター構築物はまた、ウイルス構築物に既に存在していない場合、パッキングシグナル、長末端反復(LTR)またはその一部、そして、使用されるウイルスに対して適切なプラス鎖プライマー結合部位およびマイナス鎖プライマー結合部位を含む。さらに、そのような構築物は、典型的には、ペプチドまたは抗体を、それらが存在する宿主細胞から分泌させるためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は哺乳動物のシグナル配列である。場合により、構築物はまた、ポリアデニル化を行わせるシグナル、ならびに1つ以上の制限部位、および翻訳終結配列を含むことができる。例として、そのような構築物は、典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッキングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、および3’LTRまたはその一部を含む。非ウイルスである他のベクターを使用することができる(例えば、カチオン性脂質、ポリリジンおよびデンドリマーなど)。
【0186】
本発明のペプチドの自己凝集性のために、そのようなペプチドはまた、生物学的サンプルにおけるアミロイド原繊維/斑の強力な検出剤として使用することができると考えられる。これは、特徴的な神経原繊維変化(NFT)および神経炎性局面について脳組織が死後に調べられた後に明確な診断がなされ得るだけであるアルツハイマー病などのアミロイド関連疾患にとって特に重要である。
【0187】
従って、本発明のさらにまた別の局面によれば、生物学的サンプルにおけるアミロイド原繊維の存在または存在しないことを検出する方法が提供される。
【0188】
この方法は、生物学的サンプルを、アミロイド原繊維と共凝集することができる本発明のペプチドとインキュベーションし、その後、そのペプチドを検出し、それにより、生物学的サンプルにおけるアミロイド原繊維の存在または存在しないことを検出することによって行われる。立体配座的な集合体を認識することができる様々なペプチド試薬がこの分野では知られており、そのいくつかが、Bursavich(2002)、J.Med.Chem.、45(3):541〜58;Baltzer、Chem.Rev.、101(10):3153〜63に総説される。
【0189】
検出のために利用される生物学的サンプルは、任意の身体サンプル、例えば、血液(血清または血漿など)、唾液、腹水、胸水、尿、生検試料、単離された細胞、および/または細胞膜調製物などであり得る。組織生検物および体液を哺乳動物から得る様々な方法がこの分野では広く知られている。
【0190】
本発明のペプチドは、凝集物形成のために好適な条件(すなわち、緩衝液、温度、インキュベーション時間など)のもとで生物学的サンプルと接触させられる。例えば、好適な条件が、実施例の節の実施例2に記載される。生物学的サンプルとのインキュベーションの前にペプチドを事前に凝集させないために様々な対策が取られる。この目的のために、新しく調製されたペプチドストックが好ましくは使用される。
【0191】
生物学的サンプル内のタンパク質複合体を、この分野で知られているいくつかの方法のいずれか1つによって検出することができ、そのような方法では、生化学的および/または光学的な検出スキームを用いることができる。
【0192】
複合体の検出を容易にするために、本発明のペプチドは、好ましくはタグまたは抗体によって標識される。標識化は、標識化方法に依存して、凝集体形成の前に、または凝集体形成と同時に、または凝集体形成の後に行うことができることが理解される。本明細書中で使用される用語「タグ」は、定量可能な活性または特性を示す分子をいう。タグは、フルオレセインなどの化学的蛍光体、または緑色蛍光タンパク質(GFP)もしくは関連タンパク質などのポリペプチド蛍光体(www.clontech.com)を含む蛍光性分子であり得る。そのような場合、タグは、好適な励起光を当てたときに生じるその蛍光によって定量することができる。あるいは、タグは、エピトープタグ、すなわち、特異的な抗体が、他の細胞エピトープと実質的に交差反応することなく結合することができる極めて特有のポリペプチド配列であり得る。そのようなエピトープタグには、Mycタグ、Flagタグ、Hisタグ、ロイシンタグ、IgGタグ、ストレプトアビジンタグなどが含まれる。
【0193】
あるいは、凝集物の検出を本発明の抗体によって行うことができる。
【0194】
従って、本発明のこの局面により、アミロイド原繊維を含むことが疑われる身体組織または体液などの生物学的サンプルをアッセイまたはスクリーニングする方法が提供される。
【0195】
そのような検出方法はまた、アミロイド沈着の予防または分解において有用な強力な薬物を発見するためのアッセイにおいて利用され得ることが理解される。例えば、本発明は、試験化合物の高処理能スクリーニングのために使用することができる。典型的には、本発明の共凝集するペプチドは、アッセイ体積を減少させるために放射標識される。その後、競合アッセイが、試験化合物による標識の置換をモニターすることによって行われる[Han(1996)、J.Am.Chem.Soc.、118:4506〜7;Esler(1996)、Chem.271:8545〜8]。
【0196】
本発明のペプチドはまた、インビボでのアミロイド沈着の強力な検出剤として使用され得ることが理解される。アミロイド沈着物と結合することができる設計されたペプチドは、非放射能的に標識されるか、または放射性同位体で標識され、この分野で広く知られているように、本明細書中上記で議論されたアミロイド関連疾患の発症または存在を診断するために個体に投与することができる。アミロイド沈着物またはアミロイド様沈着物に対するそのような標識されたペプチドの投与後の結合を、この分野で知られているインビボ画像化技術によって検出することができる。
【0197】
本発明のペプチドは診断キットまたは治療キットに含めることができる。例えば、特定の疾患関連タンパク質またはそれに対する抗体のペプチドセットを、適切な緩衝液および保存剤とともに1つ以上の容器に包装することができ、そして、診断のために、または治療的処置を行うために使用することができる。
【0198】
従って、ペプチドは、それぞれを単一の容器において混合することができ、またはそれぞれを個々の容器に入れることができる。好ましくは、容器はラベルを含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジおよび試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。
【0199】
さらに、安定化剤、緩衝剤、遮断剤などの他の添加剤もまた加えることができる。
【0200】
そのようなキットのペプチドはまた、ビーズ、アレイ基体(例えば、チップ)などの固体支持体に結合させることができ、診断目的のために使用することができる。
【0201】
キットに含まれるか、または基体に固定化されるペプチドは、本明細書中上記に記載されるような検出可能な標識に結合させることができる。
【0202】
キットはまた、試験された対象が、目的とするアミロイドポリペプチドに関連する状態、異常または疾患に罹患しているかどうか、あるいはそのような状態、異常または疾患を発症する危険性を有するかどうかを明らかにするための説明書を含むことができる。
【0203】
本発明のさらなる目的、利点、および新規の特徴は、制限を意図しない以下の実施例の実験によって当業者に自明である。さらに、上記の本発明および以下の特許請求の範囲に記載の各々の種々の実施形態および態様は、以下の実施例の実験により支持される。
【実施例】
【0204】
ここでは、上記説明と共に以下の実施例を参照して、非限定的様式で本発明を例示する。
【0205】
一般に、本明細書中で使用した用語および本発明で使用した実験手順には、分子、生化学、微生物学、および組換えDNAの技術が含まれる。このような技術は、文献で完全に説明されている。例えば、“Molecular Cloning: A laboratory Manual”、Sambrook他、(1989);“Current Protocols in Molecular Biology”、第I〜III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubel他、“Current Protocols in Molecular Biology”、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland、(1989);Perbal,“A Practical Guide to Molecular Cloning”、John Wiley&Sons、New York、(1988);Watson他、“Recombinant DNA”、Scientific American Books、New York;Birren他編、“Genome Analysis: A Laboratory Manual Series”、第1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、(1998);米国特許第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号、および同第5272057号に記載の方法;“Cell Biology: A Laboratory Handbook”、第I〜III巻、Cellis,J.E.編、(1994);“Current Protocols in Immunology”、第I〜III巻、Coligan J.E.編、(1994);Stites他編、“Basic and Clinical Immunology”、第8版、Appleton&Lange、Norwalk,CT、(1994);Mishell and Shiigi編、“Selected Methods in Cellular Immunology”、W.H.Freeman and Co.、New York、(1980)を参照のこと;利用可能な免疫アッセイは、特許および化学論文に広く記載されており、例えば、米国特許第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号、および同第5281521号;“Oligonucleotide Synthesis”、Gait,M.J.編、(1984);“Nucleic Acid Hybridization”、Hames,B.D.and Higgins S.J.編、(1985);“Transcription and Translation”、Hames,B.D.and Higgins S.J.編、(1984);“Animal Cell Culture”、Freshney,R.I.編、(1986);“Immobilized Cells and Enzymes”、IRL Press、(1986);“A Practical Guide to Molecular Cloning”、Perbal,B.、(1984)および“Methods in Enzymology”、第1〜317巻、Academic Press、“PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications”、Academic Press、San Diego,CA、(1990);Marshak他、“Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual”、CSHL Press、(1996)(その全てが本明細書中に完全に記載されているかのように参照として援用される)を参照のこと。他の一般的引例を、本明細書中に記載する。引例中の手順は当該分野で周知であると考えられ、読者の都合のために記載する。引例中に含まれる全ての情報は、本明細書中で参考として援用される。
【0206】
(実施例1)
hIAPP基本アミロイド形成ユニットのアラニンスキャン−原理およびペプチド合成
膵臓アミロイドがII型糖尿病患者の95%以上に見出される。膵臓アミロイドは、37アミノ酸長の小島アミロイドポリペプチド(IAPP、GenBankアクセション番号gi:4557655)の凝集によって形成され、その細胞毒性が疾患の発達に直接的に関連している。IAPPアミロイドの形成は、可溶性IAPPから凝集β−シートへの立体配座の移行を介して進行する、核形成に依存した重合プロセスに従っている。近年、IAPPのヘキサペプチド(22〜27)(NFGAIL、配列番号111)(これはまた「基本アミロイド形成ユニット」と呼ばれる)がβ−シート含有アミロイド原繊維の形成に十分であることが示されている[Konstantinos他(2000)、J.Mol.Biol.、295:1055〜1071]。
【0207】
この「基本アミロイド形成ユニット」を構成する残基の特異的な役割に対するさらなる洞察を得るために、体系的なアラニンスキャンを行った。その疎水性またはβ−シート構造を形成する傾向を大きく変化させることなく、ペプチドの分子境界を特異的に変化させるためにアミノ酸をアラニンで置換した。アラニンスキャンを、ヒトIAPPに特有な区域の場面において行った(図3a)。この区域には、全長ポリペプチドにおいてNFGAILモチーフの後に2つのセリン残基が含まれる。これらの8個のアミノ酸のペプチド配列を使用した。これは、これよりも短いペプチドは疎水性であり、そのため、溶解性が低くなっているからである。図3bには、野生型ペプチドの化学構造の概略図を示し、一方、図3cには、作製した種々の変異型ペプチドにおけるアミノ酸置換を示す。
【0208】
方法および試薬−ペプチド合成をPeptidoGenic Research&Co.Inc.(Livermore、CA、米国)によって行った。ペプチド配列が正しいことを、Perkin Elmer Sciex API I分光計を使用してイオンスプレー質量分析法によって確認した。ペプチドの純度を、水および0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)における10%から70%へのアセトニトリルの直線勾配を使用して、C18カラムでの逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって確認した。
【0209】
(実施例2)
濁度測定によってモニターされたときのIAPPペプチドフラグメントおよび変異型誘導体の凝集の速度論
IAPPペプチド由来フラグメントの自己会合を研究するために、凝集および不溶化の速度論を、405nmでの濁度測定を使用してモニターした。
【0210】
速度論的凝集アッセイ−新しいペプチドストック溶液を、凍結乾燥形態のペプチドをDMSO(脱凝集化溶媒)に100mMの濃度で溶解させることによって調製した。何らかの事前の凝集を避けるために、新しいストック溶液を、実験前に毎回その度、調製した。ペプチドストック溶液はアッセイ緩衝液に希釈され、96ウエルプレートに下記のように入れられた:2μlのペプチドストック溶液が98μlの10mM Tris(pH7.2)に加えられ、2%DMSOの存在下でのペプチドの2mMの最終濃度にした。濁度データを405nmで測定した。2%DMSOを含む緩衝液溶液がブランクとして使用された。濁度が数個の時間点について室温で測定した。
【0211】
結果−図4aに示すように、野生型ペプチドフラグメント(配列番号1)は、熟成させていないhIAPPヘキサペプチドについて以前に報告されたプロフィルと非常に類似する凝集速度論プロフィルを示した[Tenidis他(2000)、J.Mol.Biol.、295:1055〜71]。そのようなプロフィルは、核形成に依存した重合機構[JarrettおよびLansbury(1992)、Biochemistry、31:6865〜70]を強く示している。20分の遅れ時間の後、野生型ペプチドは不溶性原繊維に自己会合した。ペプチドG3A(配列番号4)は、野生型ペプチドのプロフィルと本質的に同じプロフィルを示した。N1Aペプチド(配列番号2)は、野生型ペプチドのプロフィルと比較した場合、異なる速度論プロフィルを有するにもかかわらず、より大きい凝集速度論を媒介した。興味深いことに、N1Aの凝集は、核形成依存性がより小さいようであった。イソロイシンまたはロイシンのアラニンへの置換(それぞれ、ペプチドI5A(配列番号5)およびペプチドL6A(配列番号6))は凝集速度論を低下させたが、凝集速度論を完全には止めなかった。フェニルアラニン残基のアラニンへの置換(ペプチドF2A、配列番号3)は、ペプチドの凝集能の完全な喪失をもたらした。F2Aペプチドは水系アッセイ緩衝液において完全に可溶性であった。
【0212】
まとめると、アミロイド形成フラグメントの速度論的凝集研究により、IAPPの活性フラグメントによるアミロイド形成プロセスにおけるフェニルアラニン残基に対する大きな役割が示唆された。
【0213】
(実施例3)
凝集物の平均粒子サイズの測定
濁度アッセイは、様々なペプチドの凝集能および速度論に関して重要な評価をももたらす一方で、形成された実際の凝集物のサイズに関する情報をもたらさなかった。アミロイド構造の見かけの流体力学的直径は、アミロイド構造の不規則性のために変化するが、それにもかかわらず、形成された構造の大きさの程度に関する明らかな目安をもたらすことができ、また、様々なペプチドによって形成される構造を比較するための量的な基準を与えることができる。
【0214】
従って、様々なペプチドによって形成された凝集物の平均サイズを、動的光散乱(DLS)実験を使用して測定した。
【0215】
方法−濃度が10mMである新しく調製したペプチドストック溶液を10mMのTris緩衝液(pH7.2)に希釈し、さらに0.2μmのフィルターでろ過して、100μMペプチドおよび1%DMSOの最終濃度にした。粒子サイズ測定が、レーザー光源のALV−NIBS/HPPS非侵襲的後方散乱装置を用いて行われた。自動補正データが、平均見かけ流体力学的直径を得るために、ALV−NIBS/HPPSソフトウエアを使用して近似した。
【0216】
結果−様々なペプチドによって形成された構造体の平均見かけ流体力学的直径を図5に示す。
【0217】
まとめると、様々なペプチドによって形成された構造体の見かけ流体力学的直径は、濁度アッセイによって得られた結果と一致しているようであった。濁度アッセイの場合のように、野生型ペプチドおよびG3Aペプチドは、非常に類似する流体力学的直径の粒子を形成させた。より小さい構造を、N1A、I5AおよびL6Aの誘導体ペプチドに関して観測した。従って、濁度アッセイと一致して、DLS実験は、大きな粒子が、示した実験条件のもとでは、F2Aペプチドによって形成されなかったことを明瞭に示している。
【0218】
(実施例4)
コンゴーレッド(CR)結合アッセイによる野生型ペプチドおよび誘導体のアミロイド形成能の試験
偏光顕微鏡観察と組み合わせられたコンゴーレッド(CR)染色を、本発明のペプチドのアミロイド形成性を試験するために使用した。アミロイド原繊維は一般に、特に原繊維IAPPはCRと結合し、金色/緑色の複屈折を偏光下で示す[Cooper(1974)、Lab.Invest.、31:232〜8;Lansbury(1992)、Biochemistry、31:6865〜70]。
【0219】
方法および試薬−10mMのTris緩衝液(pH7)で4日間インキュベーションしたペプチド溶液をガラス製の顕微鏡スライドガラス上で乾燥させた。染色を、10mMのTris緩衝液(pH7.2)における1mMのCRを加え、その後、1分間インキュベーションすることにより行った。過剰なCRを除くために、スライドガラスを二回蒸留水で洗浄し、乾燥させた。80%エタノール(v/v)に溶解させた飽和CR溶液を、凝集性が悪いペプチドについて使用した。そのような場合、染色を、洗浄することなく行った。複屈折を、偏光ステージを備えたWILD Makroskop m420(x70)を使用して測定した。
【0220】
結果−野生型、N1AおよびG3AのペプチドはCRと結合して、特徴的な緑色/金色の複屈折を示した(通常の場については図6g、図6aおよび図6eを、そして偏光下での顕微鏡観察については図6h、図6bおよび図6fをそれぞれ参照のこと)。I5AおよびL6AのペプチドはCRと結合し、そして、希ではあったが、特徴的な複屈折を示した(通常の場についてはそれぞれ図6iおよび図6k、そして偏光についてはそれぞれ図6jおよび図6l)。ペプチドF2A(NAGAIL)はCR結合能を示さなかった(通常の場について図6c、そして偏光については図6d)。CRで染色した乾燥後の緩衝液溶液を陰性コントロールとして使用した(通常の光および偏光について図6mおよび図6nをそれぞれを参照のこと)。興味深いことに、結合性の大きな違いが、陰性コントロールおよびF2Aペプチドについては観察されなかった。
【0221】
F2Aペプチドは原繊維を形成することができないことを実証するために、14日間インキュベーションしたペプチド溶液を結合アッセイにおいて使用した。ある程度の凝集が、2週間にわたりペプチドを「寝かせた」後で目視により観察されたが、CR染色はアミロイド構造を何ら示さなかった(結果は示されず)。同じ条件のもとで、野生型ペプチドのインキュベーションは著しいCR複屈折をもたらした。
【0222】
(実施例5)
原繊維形成性のペプチドおよび変異型の超微細構造分析
様々なペプチドの潜在的原繊維形成能を電子顕微鏡観察分析によって評価した。
【0223】
方法−ペプチド溶液(10mMのTris緩衝液(pH7.2)における2mMのペプチド)を室温で一晩インキュベーションした。原繊維形成を、200メッシュの銅グリッドに置き、カーボン安定化ホルムバールフィルム(SPI Supplies、West Chester、PA)で覆った10μlのサンプルを使用して評価した。20秒〜30秒のインキュベーションの後、過剰な液体を除き、グリッドを2%酢酸ウラニル水溶液でネガティブ染色した。サンプルを、80kVで稼働するJEOL 1200EX電子顕微鏡で調べた。
【0224】
結果−様々なペプチドによって形成された構造をさらに特徴づけるため、ネガティブ染色の電子顕微鏡観察分析を行った。以前の結果と一致して、フィラメント構造が、無定形の原繊維を生じさせたF2A(図7b)を除くすべてのペプチドについて観察された(図7a〜図7f)。I5AペプチドおよびL6Aペプチドによって形成された原繊維(それぞれ、図7eおよび図7f)の出現頻度は、野生型ペプチド(図7d)、N1AペプチドおよびG3Aペプチド(それぞれ、図7aおよび図7c)の出現頻度と比較して低かった。F2A、I5AおよびL6Aのペプチドについて示されるEM場はまれにしか観察されなかったが、これらの画像によって示された結果は、前節に示された量的結果を裏付けており、従って、原繊維形態学の定性的分析を提供している。
【0225】
野生型、N1AおよびG3Aのペプチドについて観察されたもつれた網状構造は、これらの原繊維の速い形成速度論によって説明することができる(実施例2参照)。より明瞭な構造およびより長い原繊維が、低頻度にもかかわらず、I5AペプチドおよびL6Aペプチドについて観察された。これらのより長い原繊維は、より秩序だった原繊維の組織化を可能にする、より遅い速度論の結果であり得る。
【0226】
まとめると、電子顕微鏡観察およびCR分析の定性的結果は、ヘキサアミロイドペプチドにおけるフェニルアラニン残基がそのアミロイド形成能のために非常に重要であることを強く示唆している。
【0227】
(実施例6)
hIAPPの基本アミロイド形成ユニットにおける認識ドメインのマッピング−原理およびMBP−IAPP融合タンパク質合成
潜在的な認識ドメインを体系的にマッピングおよび比較するために、hIAPPの配列全体にわたる28個のメンブランスポットの重複するペプチド(すなわち、hIAPP1〜10、hIAPP2〜11、・・・、hIAPP28〜37)のアレイと相互作用するhIAPP(GenBankアクセション番号gi:4557655)の能力を検討した[Mazor(2002)、J.Mol.Biol.、322:1013〜24]。
【0228】
材料および実験手順
細菌株−大腸菌株TG−1(Amersham Pharmacia、スウェーデン)を分子クローニングおよびプラスミド増殖のために使用した。細菌株BL21(DE3)(Novagen、米国)をタンパク質過剰発現のために使用した。
【0229】
合成IAPPおよびMBP−IAPP融合タンパク質の操作−細菌のコドン使用頻度を含むように改変さしたヒトIAPPの合成DNA配列(配列番号58)を、8個の重複するプライマー(配列番号50〜57)をアニーリングすることによって作製した。PCRが、95℃で1分間、55℃で1分間および72℃で1分間の30サイクルによって行われた。アニーリング生成物を連結し、IAPP1プライマー(配列番号50)およびIAPP8プライマー(配列番号57)を使用して増幅した。その後、MBP−IAPP(MBP GenBankアクセション番号gi:2654021)融合配列を、IAPP合成テンプレートを使用して構築し、その後、このテンプレートを、YAR2(配列番号60)プライマーおよびYAR1プライマー(配列番号59)を使用して増幅し、それにより、V8 Ek切断部位および(His)6タグをIAPPのN末端に挿入した。2つのプライマーはNotIおよびNcoIのクローニング部位をそれぞれ含んだ。得られたPCR産物をNcoIおよびNotIで消化し、pMALc2x−NN発現ベクターに連結した。pMALc2x−NN発現ベクターは、pMALc−NN19のポリリンカー部位をpMALc2x(New England Biolabs、米国)にクローン化することによって構築した[BACH(2001)、J.Mol.Biol.、312:79〜93]。
【0230】
タンパク質の発現および精製−強いPtacプロモーターの下流にMBP−IAPPをコードする発現プラスミドpMALc2x−IAPPによって形質転換した大腸菌BL21細胞を、100μg/mlのアンピシリンおよび1%(W/V)のグルコースを補充した200mlのLB培地で生育させた。A600=0.8の光学密度に達すると、タンパク質の発現を、30℃で3時間、0.1mMまたは0.5mMのIPTGで誘導した。
【0231】
細胞抽出物を、以前の記載[Gazit(1999)、J.Biol.Chem.、274:2652〜2657]のように、凍結−融解、その後の短時間の超音波処理を使用して、20mMのTris−HCl(pH7.4)、1mMのEDTA、200mMのNaCl、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)において調製した。タンパク質抽出物を、20,000gでの遠心分離によって清澄化し、4℃で保存した。MBP−IAPP融合タンパク質を、抽出物をアミロース樹脂カラム(New England Biolabs、米国)に通すことによって精製し、同じ緩衝液における20mMのマルトースによる溶出によって回収した。精製したMBP−IAPPは4℃で保存した。タンパク質濃度を、BSAを標準としてPierce Coomassieプラス試薬(Pierce、米国)を使用して測定した。MBPおよびMBP−IAPPのタンパク質画分をSDS/12%ポリアクリルアミドゲルで分析し、ゲルをGelCode Blue(Pierce、米国)で染色した。
【0232】
MBP−IAPP内のジスルフィド結合が酸化されているかどうかを調べるために、精製したMBPタンパク質およびMBP−IAPPタンパク質を5当量のN−ヨードアセチル−N’−(8−スルホ−1−ナフチル)エチレンジアミン(IAEDANS)(Sigma、Rehovot、イスラエル)と暗所において室温で一晩反応させた。遊離した色素を、標識されたタンパク質から、QuickSpin G−25 Sephadexカラムでのゲルろ過クロマトグラフィーによって分離した。その後、MBPおよびMBP−IAPPの蛍光を測定した。小さい蛍光標識化が検出されただけであった(平均して、タンパク質分子あたり0.1未満のプローブ分子)。MBPおよびMBP−IAPPの標識化の間には大きな差は認められなかった。このことは、発現したIAPP分子におけるジスルフィド架橋は大部分が酸化されていたことを示唆していた。
【0233】
結果
組み換えMBP−IAPPの発現および精製−完全なhIAPPを細菌において発現させる以前の試みは成功していなかったので、タンパク質を、hIAPPを発現時に所望されない凝集から保護するMBP融合体として発現させた[Bach(2001)、J.Mol.Biol.、312:79〜93]。融合タンパク質の合成は、図8aに示すように細菌のコドン使用頻度を使用して行った。得られた融合配列を、図8bに示すようにpMALc2x−NNにクローン化して、大腸菌BL21(DE3)に導入した。生育条件、細胞抽出物調製およびタンパク質精製は、本明細書中上記に記載するように行った。IPTGによる誘導により、可溶性画分における高レベルのMBP−IAPPの蓄積がもたらされ、5%未満のMBP−IAPP融合タンパク質が細胞抽出物の不溶性画分に見出された(データは示さず)。MBPおよびMBP−IAPPの典型的な精製工程から得られた一部分を図9に示す。示されるように、GelCode Blueで染色したSDS/ポリアクリルアミドゲルをデンシトメーターでスキャンすることによって計算すると、48kDaのMBP−IAPPが総可溶性タンパク質の25%にまで蓄積していた。振とうフラスコにおいて30℃で誘導すると(A600=2.0)、MBP−IAPPが1Lの細胞培養あたり約150mgのレベルで細胞質に可溶性タンパク質として蓄積した。精製時の喪失にもかかわらず、MBP−IAPPが80mg/l・細胞の収量でほぼ均一に精製した。IAPPのさらなる適用および好都合な均一性精製のために、MBPタグを除くためのXa因子切断部位に加えて、さらなるHis−Tagもまた含まれていた(図8b)。このHis−Tagは、IAPP配列のN末端のLys残基でのEk V8切断によって除くことができ、これにより、野生型IAPPの放出が得られる。
【0234】
(実施例7)
hIAPPポリペプチドにおける分子認識配列の同定
IAPPペプチドアレイの構築−hIAPP1〜37の連続した重複する配列に対応するデカマー(配列番号61〜88)を、SPOT技術(Jerini AG、Berlin、ドイツ)を使用してセルロースメンブランマトリックス上で合成した。ペプチドは、C末端のアミノ酸を介してWhatman50セルロース支持体(Whatman、Maidstone、英国)に共有結合させた。ペプチド分解に対する安定性がより大きく、また、生来的な認識モチーフの提示がより良好であるので、N末端のアセチル化をペプチドスキャンのために使用した。
【0235】
ペプチド合成−ペプチド合成を、Peptron,Inc.(Taejeon、韓国)によって行われた固相合成法を使用して行った。ペプチド配列が正しいことを、HP1100シリーズLC/MSD[Hewlett−Packard Company、Palo Alto、CA]を使用してイオンスプレー質量分析法によって確認した。ペプチドの純度を、水および0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)における0%から100%へのアセトニトリルの30分の直線勾配を1ml/分の流速で使用して、C18カラムでの逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって確認した。
【0236】
結合研究−セルロース上でのペプチドアレイを、最初に、Tris緩衝化生理的食塩水(TBS、20mM Tris(pH7.5)、150mM NaCl)における5%(V/V)の脱脂乳でブロッキングした。その後、セルロースメンブランを、同じブロッキング緩衝液において4℃で12時間、10μg/mlのMBP−IAPP1〜37の存在下でインキュベーションした。次いで、セルロースメンブランをTBSにおける0.05%ツイーン20で繰り返し洗浄した。セルロースメンブランに結合したMBP−IAPP1〜37を抗MBPモノクローナル抗体(Sigma、イスラエル)により検出した。HRP結合ヤギ抗マウス抗体(Jackson Laboratories、米国)を二次抗体として使用した。免疫ブロットを、Renaissanceウエスタンブロット化学発光試薬(NEN、米国)を製造者の説明書に従って使用して発色させ、シグナルを、デンシトメトリーを使用して定量した。再使用のためのセルロースメンブランの再生を、62.5mMのTris、2%のSDS、100Mmの2−メルカプトエタノールを含む再生緩衝液I(pH6.7)と、8Mの尿素、1%のSDS、0.1%の2−メルカプトエタノールを含む再生緩衝液IIとで順次洗浄することによって行った。洗浄工程の効率を、記載したように、メンブランを化学発光試薬と接触することによってモニターした。
【0237】
結果
IAPPポリペプチドにおける結合性配列の同定−hIAPP分子間の分子間認識を媒介するIAPP分子における構造モチーフを同定するために、hIAPP1〜37分子のアミノ酸1〜10からアミノ酸28〜37に対応する28個の可能な重複するデカマーをセルロースメンブランマトリックス上で合成した。セルロースメンブランに結合させたペプチドをMBP−hIAPP1〜37と一晩インキュベーションした。セルロースメンブランを高塩緩衝液で洗浄した後、セルロースメンブラン上の免疫ブロットを分析し、結合をデンシトメトリーによって定量した(図10b)。合成時のペプチドカップリング効率が変化し得るので、測定された結合は半定量的であることが理解される。
【0238】
図10a〜図10bに示すように、多数のペプチドセグメントが、MBP−IAPPに対する結合を示した。IAPPポリペプチドの中心に位置するアミノ酸配列(すなわち、hIAPP7〜16〜hIAPP12〜21)が、MBP−hIAPP1〜37に対する最も顕著な結合を示した。別の結合性領域をIAPPのC末端部分(hIAPP19〜28〜hIAPP21〜30)において同定したが、この場合の結合はそれほど顕著でなかった。さらに第3の結合スポットがIAPPのN末端部分(hIAPP2〜11)に存在したが、この場合、中心のモチーフの近くでの典型的な分布は明らかではなかった。このことは、この結果が偽であり得ることを示唆している。ブロットを過度に感光させた後でさえも(データは示さず)、(hIAPP1〜10またはhIAPP3〜12のいずれに対しても)このペプチドの近くにおける結合は検出されなかった。さらに、ジスルフィド架橋に対して2〜11の領域の非常に近いところでは、生理学的条件のもとでの原繊維化のプロセスが可能でないと考えられる。
【0239】
アレイ化したペプチドと結合する際のMBP自体の関与を除外するために、ペプチドが結合したセルロースメンブランをMBPだけとインキュベーションし、免疫ブロッティングによって分析した。結合はメンブランの発色後には確認されなかった(示さず)。
【0240】
これらの結果により、hIAPPの以前に明らかにされた結合モチーフ[すなわち、基本アミロイド形成ユニット、hIAPP20〜29、Westermark(1990)、Proc.Natl.Acad.Sci.、13:5036〜40;Tenidis(2000)、J.Mol.Biol.、295:1055〜1071;AzrielおよびGazit(2001)、J.Biol.Chem.、276:34156〜34161]に加えて、hIAPP内における分子認識の主要な中心ドメインを同定した。ペプチドアレイの結合分布のプロフィル(図10b)は、NFVLH(配列番号17)がコアの認識モチーフとして役立ち得ることを示唆している。
【0241】
(実施例8)
濁度測定によってモニターしたときのhIAPPペプチドフラグメントの凝集速度論の特徴づけ
hIAPPペプチドアレイに対する組み換えMBP−hIAPP融合タンパク質の結合分析(実施例7)により、推定の自己会合ドメインをhIAPPタンパク質の中心部分において同定した。
【0242】
アミロイド原繊維を形成することができる最小の構造モチーフを同定するために、この推定の自己会合ドメインに含まれる一連のペプチドを、405nmでの濁度測定を使用してモニターしたときの凝集について試験した。
【0243】
下記の表3には、調べたペプチドを示す。
【表3】
【0244】
材料および実験手順
速度論的凝集アッセイ−新しく調製したペプチドストック溶液を、凍結乾燥形態のペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)に100mg/mlの濃度で溶解することによって作製した。何らかの事前の凝集を避けるために、新しいストック溶液をそれぞれの実験のために調製した。ペプチドストック溶液を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)プレートのウエルにおいて、下記のようにアッセイ緩衝液に希釈した。8μlのペプチドストック溶液を92μLの10mM Tris(pH7.2)に加えた(従って、ペプチドの最終濃度は8%のDMSOの存在下で8mg/mlであった)。濁度データを405nmで集めた。試験サンプルと同じ量のDMSOを含有する緩衝液溶液をブランクとして使用し、ブランクを結果から差し引いた。濁度を、THERMOmax ELISAプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して室温で連続的に測定した。
【0245】
結果
濁度アッセイを、水性媒体において凝集する様々なペプチド(表3)の能力を測定するために行った。種々のペプチドフラグメントの新しいストック溶液をDMSOにおいて作製し、その後、Tris緩衝液溶液に希釈し、濁度を、タンパク質凝集の目安として、2時間にわたってモニターした。図11に示すように、NFLVHSS、FLVHSSおよびFLVHSのペプチドは大きい濁度を示した。NFGAILの短いペプチドによるアミロイド形成については以前[Tenidis(2000)、上記]に報告されていたが、遅れ時間は非常に短いか、または全くなく、従って、これらの実験条件下では検出できず、しかしながら、凝集速度論プロフィルは、ヘキサペプチドhIAPP22〜27(NFGAIL)について観測された凝集速度論プロフィルと類似したことが理解される。他方で、ペプチドNFLVHSSNNは非常に遅い濁度を示し、一方、NFLVHおよびFLVHはほとんど全く濁度を示していない。著しくより長くインキュベーションした後でさえ、有意な濁度は、後者の2つのペプチドに関しては観測されなかった。アミロイド原繊維形成のないことは、部分的に荷電したヒスチジン残基の静電的反発のためであると考えられる。
【0246】
(実施例9)
コンゴーレッド(CP)結合アッセイによるhIAPPペプチドのアミロイド形成性の試験
偏光顕微鏡観察と組み合わせられたコンゴーレッド(CP)染色を、本発明のペプチドのアミロイド形成性を試験するために利用した。アミロイド原繊維はCRと結合して、金色/緑色の複屈折を偏光下で示す[Puchtler(1966)、J.Histochem.Cytochem.、10:355〜364]。
【0247】
材料および実験手順
コンゴーレッド染色および複屈折−少なくとも1日間寝かせた、10mMのTris緩衝液(pH7.2)における8mg/mlのペプチド溶液の10μLの懸濁物をガラス製の顕微鏡スライドガラスの上で一晩乾燥させた。染色を、以前の記載[Puchtler(1966)、上記]のように、80%エタノール(v/v)溶液における飽和コンゴーレッド(CR)およびNaClの10μLの懸濁液を加えることによって行った。溶液を0.45μmのフィルターによりろ過した。その後、スライドガラスを数時間乾燥させた。複屈折を、直交偏光子を備えるSZX−12実体顕微鏡(Olympus、Hamburg、ドイツ)を用いて測定した。
【0248】
結果
コンゴーレッド染色および複屈折−濁度アッセイ(実施例8参照)において形成された凝集物の何らかの可能なアミロイド性を明らかにするために、CR複屈折アッセイを行った。ペプチドフラグメントを、CRによる染色、および直交偏光子を備えた光学顕微鏡のもとでの試験によってアミロイド形成性について調べた。速度論的アッセイの結果と一致して、また、図12b〜cおよび図12eに示すように、NFLVHSS、FLVHSSおよびFLVHSのペプチドは典型的な複屈折を示した。これに対して、NFLVHSSNN、NFLVHおよびFLVHのペプチドは非常に弱い複屈折を示したか、または複屈折を全く示さなかった(図12a、図12dおよび図12f)。ペプチドNFLVHSSNNはより弱い特徴的な複屈折を示した(図12a)。ペプチドNFLVHはサンプルの縁において強い不鮮明な染色を示した(図12d)。ペプチドFLVHは複屈折を示さなかった(図12f)。FLVHペプチドが、長い遅れ時間のためにアミロイド原繊維を形成しないかどうかを試験するために、5日間寝かせたペプチド溶液のサンプルを調べた。同じペプチドをまた、水溶液において、非常に高い濃度(10mg/ml)で試験したが、複屈折はすべての場合に検出されなかった。このことは、このペプチドはアミロイドを形成しないことを示している(データは示さず)。
【0249】
(実施例10)
原繊維形成hIAPPペプチドの超微細構造分析
様々なペプチドの潜在的原繊維形成能を電子顕微鏡観察分析によって評価した。
【0250】
材料および実験手順
透過電子顕微鏡観察−少なくとも1日間寝かせた、10mMのTris緩衝液(pH7.2)における8mg/mlのペプチド溶液の10μLサンプルを400メッシュの銅グリッド(SPI supplies、West Chester、PA)に置き、カーボン安定化ホルムバールフィルムによって覆った。1分後、過剰な液体を除き、その後、グリッドを2%酢酸ウラニル水溶液でさらに2分間ネガティブ染色した。サンプルを、80kVで稼働するJOEL 1200EX電子顕微鏡で調べた。
【0251】
結果
様々なペプチドによって形成された構造をさらに特徴づけるために、ネガティブ染色での顕微鏡観察を行った。以前の結果と一致して、無定形の凝集物が見出されるだけのFLVHペプチドを除いて、すべてのペプチドフラグメントが原繊維構造を示した(図13a〜図13f)。NFLVHSSNNペプチドは、上記に記載するように、全長ペプチドによって形成されるフィラメントと類似する長い薄いコイル状フィラメントを示した(図13a)。NFLVHSS、FLVHSS、FLVHSのペプチドは、NFGAILフラグメントについて記載されるように、長い幅広いリボン様原繊維を示した[Tenidis(2000)、上記;それぞれ、図13c〜図13e]。NFLVHペプチドによって形成された原繊維は薄くて短く、フィラメントではなく、むしろ、プロトフィラメントであると見なすことができる。その出現は、はるかにより低い頻度であり、EM写真は、一般的な視野ではなく、かなり希な事象を表している(図13d)。図13fに示すように、FLVHペプチドは無定形凝集物の形成を媒介した。
【0252】
(実施例11)
hIAPPペプチドフラグメントの二次構造分析
フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)を、hIAPPアミロイド形成ペプチド原繊維および非原繊維ペプチドの二次構造を明らかにするために行った。
【0253】
材料および実験手順
フーリエ変換赤外分光法−赤外スペクトルを、DTGS検出器を備えるNicolet社のNexus470FT−IR分光計を使用して記録した。寝かせたペプチド溶液のサンプルを、濁度アッセイから採取し、その後、CaF2ウインドウ(Sigma)プレート上に懸濁し、真空乾燥させた。ペプチド沈着物を二回蒸留水で再懸濁し、続いて乾燥させて、薄いフィルムを形成させた。この再懸濁手順を2回繰り返して、水素から重水素への交換が最大になることを確実にした。測定値を、4cm−1の分解能および2000回の走査平均化を使用して得た。透過率極小値をOMNIC分析プログラム(Nicolet)によって決定した。
【0254】
結果
FT−IR研究−図14a〜図14fに示すように、原繊維ペプチドはすべてが、β−シート構造について典型的な十分に明らかにされた極小バンドを1620cm−1〜1640cm−1付近に有するFT−IRスペクトルを示した。これに対して、それ以外の方法により原繊維について出現を有しないテトラペプチドFLVHのスペクトルは、ランダムコイル構造の典型である。NFLVHSSNNペプチドのスペクトルは、β−シート含有量が大きいことを示す1621cm−1における透過率極小、ならびに、非β構造の存在を示唆する1640cm−1および1665cm−1における極小を示した。別の小さい極小が、逆平行のβ−シートを示す1688cm−1において観測された(図14a)。NFLVHSSペプチドのスペクトルは大きな極小バンドを1929cm−1および1675cm−1に示した。このスペクトルは逆平行のβ−シート構造の典型である(図14b)。類似するスペクトルが、1625cm−1における大きな極小および1676cm−1における小さい極小を伴ってペプチドFLVHSについて観測された(図14e)。FLVHSSペプチドのスペクトルはまた、大きな極小を1626cm−1に示した。このスペクトルはまた、いくつかの小さい極小を1637cm−1〜1676cm−1付近に有したが、それらは、シグナルよりもノイズに類似する形状を有した(図14c)。NFLVHペプチドのスペクトルは、1636cm−1における極小(これもまたβ−シートを示す)を示したが、それ以外のスペクトルと比較したとき、非β構造の存在を示し得るこのバンドは、1654cm−1および1669cm−1における観測された極小と同様に、移動していた(図14d)。対照的に、FLVHペプチドのスペクトルは、1620cm−1〜1640cm−1に極小を示さないが、ランダムコイル構造に典型的な1646cm−1〜1675cm−1の付近に多数の極小を示した(図14f)。
【0255】
FLVHテトラペプチドがアミロイド原繊維を全く形成することができないか、または、検出することができない原繊維形成が遅い速度論の結果であるかを調べるために、同じ実験条件においてペプチドの溶液を2ヶ月間にわたってインキュベーションし、原繊維の存在を調べた。しかしながら、アミロイド原繊維形成の証拠は、EM顕微鏡観察、CR染色またはFT−IR分光法を使用して検出されなかった。これらの結果は、エネルギーを考慮することにより、テトラペプチドが原繊維を形成することができないことを示唆し得る。すなわち、3つのペプチド結合から構成される鎖のスタッキングのエネルギー寄与は、オリゴマー化のエントロピー損失よりも小さい。
【0256】
まとめると、超微細構造の観察結果は、濁度アッセイおよびコンゴーレッド複屈折アッセイによって明らかされるような知見と一致している。同時に、実験データにより、アミロイド形成能が強い、hIAPPペプチド内の新規のペンタペプチドエレメント、すなわち、FLVHSペプチドを同定した。興味深いことに、hIAPPポリペプチドの同じ中心ドメインに見出されたNFLVHペプチドがアミロイド形成性であることが見出されたが、原繊維を形成するその能力はやや劣っていた。
【0257】
(実施例12)
メジンの最小アミロイド形成ペプチドフラグメントの同定
背景
メジン(GenBankアクセション番号gi:5174557)は、大動脈中膜アミロイド沈着物の主要構成成分である[Haeggqvist(1999)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96:8674〜8669]。以前の研究では、大動脈中膜アミロイドが50歳を超える患者の97%に見出されていた[Mucchiano(1992)、Am.J.Pathol.、140:811〜877]。しかしながら、そのようなアミロイド沈着物の病理学的役割は依然として不明である。これらのアミロイドは、老齢に関係づけられる大動脈血管の低下した弾性において役割を果たしていることが示唆されていた[Mucchiano(1992)、上記;Haeggqvist(1999)、上記]。研究では、トリプシン消化ペプチドNFGSVQFVが中膜アミロイド形成ペプチドとして明瞭に同定されたが、依然としてアミロイド形成性であるペプチドの最小配列、およびアミロイド形成プロセスを媒介する分子的決定因子は明らかにされなかった。そのような情報は、メジンの特定の場合における原繊維化プロセスを真に理解するために重要であるが、また、一般にはアミロイド原繊維のプロセスに対するパラダイムとしても重要である。
【0258】
メジンの最小の活性フラグメントを、発表されたオクタペプチドに由来する短縮化されたアナログの機能的および構造的な分析を使用して決定した[Haeggqvist(1999)、上記]。
【0259】
材料および実験手順
ペプチド合成は実施例7に記載した。
【0260】
下記の表4には、調べたペプチドを示す。
【表4】
【0261】
結果
分子認識および自己会合のプロセスを媒介するために必要となる分子情報を保持するメジンの構造エレメントに対するさらなる洞察を得るために、インビトロでアミロイド原繊維を形成するメジンの短いペプチドフラグメントおよびそのアナログの能力を調べた。図15aには、調べた最も大きいペプチドフラグメントの化学構造の概略図を示す。
【0262】
(実施例13)
メジン由来ペプチドフラグメントの凝集の速度論
濁度アッセイを、実施例8に記載したように行った。
【0263】
様々なメジン由来ペプチドの凝集能に関する最初の洞察を得るために、濁度アッセイを行った。アミロイド形成オクタペプチドおよびその短縮化アナログの新しく作製したストック液をDMSOにおいて調製した。その後、ペプチドを水溶液に希釈し、濁度を、時間の関数として405nmでの吸光度を追跡することによってモニターした。図16aに示すように、NFGSVペンタペプチドは、インキュベーションの数分以内に最も大きい程度の凝集を示した。溶液の物理的試験により、ペプチドはゲル構造を形成したことを示した。NFGSVQVオクタペプチドの凝集の速度論は速すぎて、測定することができなかった。これは、濁度が、水溶液への希釈により直ちに既に観測されたからである(図16a〜図16b)。類似する速い速度論が、GSVQテトラペプチドに関してもまた観測された。NFGSVQ、FGSVQおよびFGSVの短縮化ペプチドは、約30分かけて濁度の穏やかな増大を示し(図16b)、その後、わずかに減少した。このことは、大きな凝集物の沈降によって説明することができる。まとめると、そのような速度論および濁度値は、類似するサイズのアミロイド形成ペプチドに関して以前に観測されたものと類似していた(AzrielおよびGazit、2001)。
【0264】
(実施例14)
メジン由来ペプチドフラグメントの超微細構造分析
電子顕微鏡観察分析を、実施例10に記載したように行った。
【0265】
メジン由来ペプチドフラグメントの原繊維化能を、ネガティブ染色を使用する電子顕微鏡観察(EM)によって行った。ペプチドフラグメントのストック溶液を懸濁し、4日間寝かせた。原繊維構造が、NFGSVQFAオクタペプチドを含有する溶液(図17a)および短縮化NFGSVQを含有する溶液(図17b)の両方で明瞭に認められた。両方の場合において、構造は、IAPPポリペプチドおよびβ−アミロイド(Aβ)ポリペプチドのような、はるかに長いポリペプチドに関して観測された構造と類似していた。より短いゲル形成性のNFGSVペンタペプチドは典型的なアミロイド構造を形成しなかったが、繊維状構造の網状構造を形成した(図17c)。繊維状網状構造が、最近、グルタチオンペプチドのゲル化のときに観測されたことには留意しなければならない[LyonおよびAtkins(2001)、J.Am.Chem.Soc.、123:4408〜4413]。典型的な原繊維を、広範囲の調査にもかかわらず、FGSVQペンタペプチド、GSVQテトラペプチドまたはFGSVテトラペプチドを含有する溶液では検出することができなかった。FGSVQペプチドの場合(図17d)、幾分かの原繊維的な秩序だった構造を認めることができる一方で、典型的なアミロイド形成ペプチドによって形成された構造とは著しく異なっていたが、GSVQペプチドおよびFGSVペプチドの場合、原繊維構造を見出すことができなかった(それぞれ、図17eおよび図17f)。
【0266】
(実施例15)
コンゴーレッド(CR)結合アッセイによるメジン由来ペプチドのアミロイド形成能の試験
CR染色を、実施例9に記載したように行った。
【0267】
CR染色を、様々なメジン由来ペプチドによって形成された構造が典型的な複屈折を示すかどうかを明らかにするために行った。図18bに示すように、NFGSVQヘキサペプチドはCRと結合し、特徴的な明るい強い緑色−金色の複屈折を示した。NFGSVQFVオクタペプチドもまた、ヘキサペプチドに関して観測された複屈折よりも典型的ではないが、著しい複屈折を示した(図18a)。ゲル形成性のNFGSVペプチド沈殿物は非常に低い程度の複屈折を示した(図18c)。FGSVQおよびFGSVのペプチドは、CRにより染色しても、複屈折を示さなかった(それぞれ、図18dおよび図18f)。それらの2つのペプチドと陰性コントロール(すなわち、ペプチドを含まない緩衝液溶液)との間には著しい差は明らかになかった。興味深いことに、予想外の高レベルの複屈折がGSVQテトラペプチドに関して観測され(図18e)、一方で、それから形成された構造の形態(図18e)は、アミロイド原繊維の形態とは明らかに異なっていた。このことは、これらの構造が、強い複屈折において反映される著しい程度の秩序を有し得ることを示している。
【0268】
(実施例16)
メジンの自己会合に対するフェニルアラニン置換の影響
最小のアミロイド形成ヘキサペプチドによるアミロイド原繊維形成のプロセスにおけるフェニルアラニン残基について考えられる役割を解明するために、フェニルアラニンのアミノ酸をアラニンで置換した。アラニン置換ペプチドを調製し、メジンの様々なフラグメントについて記載したのと同じ方法で調べた。図19aに示すように、著しく低下した濁度が、野生型のヘキサペプチドと比較したとき、アラニン置換ペプチドに関して観測された。NAGSVQペプチドの寝かせた溶液をEMによって可視化しても、明らかな原繊維構造を検出することはできなかった(図19b)。これは、野生型ペプチド(図17b)に関して認められる非常に多い原繊維構造とは完全に対照的である。さらに、可視化した構造は、上記に記載したようなNFGSVペプチドおよびFGSVQペプチド(図17c〜図17d)に関して観測されたような秩序度を何ら示さないが、FGSVテトラペプチド(図17e)に関して観測されたような完全に非原繊維の構造と非常に類似していた。興味深いことに、ある程度の複屈折を、(GSVQペプチド(図18e)に関して観測されたように)アラニン置換ペプチドによっても依然として検出することができる(図19c)。これらの結果は、CR染色がアミロイド形成の単独の指標として使用されることに関してさらなる疑いをもたらしている[Khurana(2001)、J.Biol.Chem.、276:22715〜22721]。
【0269】
まとめると、これらの結果は、アミロイド原繊維を形成することができるメジンの短縮化フラグメントがヘキサペプチドNFGSVQ(配列番号21)であることを示している。だが、より短いペンタペプチドフラグメントのNFGSV(配列番号22)が、アミロイドに典型的でない繊維状構造の網状構造を示した。アミロイド形成性のNFGSVQヘキサペプチドは、小島アミロイドポリペプチド(IAPP、実施例1〜5を参照のこと)の最小のアミロイド形成フラグメントに著しく類似している。総合すると、結果は、アミロイド原繊維の形成をもたらす自己会合プロセスにおけるスタッキング相互作用の仮定された役割と一致し、また、アミロイド原繊維とβ−ヘリックス構造との間の示唆された相関と一致している。
【0270】
(実施例17)
ヒトカルシトニンの最小アミロイド形成ペプチドフラグメントの同定
ヒトカルシトニン(hCT、GenBankアクセション番号gi:179880)は、甲状腺のC細胞によって産生されている、カルシウムの恒常性に関与する32個のアミノ酸長さのポリペプチドホルモンである[AustinおよびHealth(1981)、N.Engl.J.Med.、304:269〜278;Copp(1970)、Annu.Rev.Physiol.、32:61〜86;Zaidi(2002)、Bone、30:655〜663]。hCTから構成されるアミロイド原繊維が甲状腺の髄様ガンと関連することが見出されている[Kedar(1976)、Isr.J.Sci.、12:1137;Berger(1988)、Arch.A.Pathol.Anat.Histopathol.、412:543〜551;Arvinte(1993)、J.Biol.Chem.、268:6415〜6422]。興味深いことに、合成hCTは、甲状腺に見出される沈着物に類似する形態を有するアミロイド原繊維をインビトロで形成することが見出されている[Kedar(1976)、上記;Berger(1988)、上記;Arvinte(1993)、上記;Benvenge(1994)、J.Endocrinol.Invest.、17:119〜122;Bauer(1994)、Biochemistry、33:12276〜12282;Kanaori(1995)、Biochemistry、34:12138〜43;Kamihara(2000)、Protein Sci.、9:867〜877]。アミロイド形成のインビトロプロセスは媒体のpHによって影響される[23]。電子顕微鏡観察実験により、hCTによって形成された原繊維は直径が約80Åであり、長さが数マイクロメートルにまでなることが解明されている。原繊維は互いに会合していることが多く、インビトロでのアミロイド形成は媒体のpHによって影響される[Kamihara(2000)、上記]。
【0271】
カルシトニンは、パジェット病および骨粗鬆症を含む様々な疾患に対する薬物として使用されている。しかしながら、hCTが生理学的pHの水溶液において会合し、アミロイド原繊維を形成しやすいことは、薬物としてのその効率的な使用に対する大きな制限である[Austin(1981)、上記;Copp(1970)、上記;Zaidi(2002)、上記]。サケCT[Zaidi(2002)、上記]は、hCTに対する臨床的に使用されている代替物であるが、配列相同性が低いために、処置された患者において免疫原反応を生じさせている。従って、hCTによるアミロイド形成の機構を理解し、かつこのプロセスを抑制することは、アミロイド形成機構の関連においてだけでなく、カルシトニンの改善された治療的使用に対するステップとしても非常に重要である。
【0272】
円偏光二色性(CD)研究により、水中では、単量体hCTは室温で秩序のある二次構造をほとんど有していないことが明らかにされている[Arvinte(1993)、上記]。しかしながら、円偏光二色性、蛍光および赤外分光法を使用するhCT原繊維の研究により、原繊維化したhCT分子がα−ヘリックスおよびβ−シートの両方の二次構造成分を有することが解明された[Bauer(1994)、上記]。NMR分光法による研究では、TFE/H2Oのような、様々な構造を促進する溶媒において、hCTが、主に残基範囲8〜22において両親媒性のα−ヘリックスの立体配座を取っていることが示されている[Meadows(1991)、Biochemistry、30:1247〜1254;Motta(1991)、Biochemistry、30:10444〜10450]。DMSO/H2O中では、中心領域における短い二重鎖の逆平行のβ−シート形態が残基16〜21によって作製される[Motta(1991)、Biochemistry、30:2364〜71]。
【0273】
この構造データ、およびアミロイド形成プロセスにおける芳香族残基の提案された役割に基づいて、本発明者は、カルシトニンの自己会合を媒介するために十分である短いペプチドフラグメントを同定した[Reches(2002)、J.Biol.Chem.、277:35475〜80]。
【0274】
調べたペプチド−酸性pHに対するアミロイド形成の以前に報告された感受性[Kanaori(1995)、上記]に基づいて、低いpHでプロトン化を受ける負電荷を有しているアミノ酸がアミロイド形成プロセスにおいて重要な役割を果たし得ることが示唆されていた。hCTにおける唯一の負電荷を有しているアミノ酸はAsp15である(図20a)。さらに、hCTのオリゴマー化状態および生物活性におけるLys18およびPhe19の残基に対する非常に重要な役割が最近示された[Kazantzis(269)、Eur.J.Biochem.、269:780〜91]。2つのフェニルアラニン残基がその領域に存在することと一緒になって、hCTにおけるアミロイド形成決定因子の構造分析がアミノ酸15〜19に向けられた。図20bは、最長ペプチドの化学構造の概略図を示し、下記の表5は、この研究で使用した様々なペプチドフラグメントを示す。
【表5】
【0275】
(実施例18)
カルシトニン由来ペプチドフラグメントの超微細構造分析
電子顕微鏡観察分析を、実施例10に記載したように行った。
【0276】
カルシトニン由来ペプチドフラグメントの原繊維化能を、ネガティブ染色を使用して電子顕微鏡観察(EM)によって行った。ペプチドフラグメントのストック溶液を0.02M NaCl、0.01M Tris(pH7.2)に懸濁し、2日間寝かせ、ネガティブ染色した。全長ポリペプチドによって形成される原繊維構造[Arvinte(1993)、上記;Benvenge(1994)、上記;Bauer(1994)、上記;Kanaori(1995)、上記;Kamihara(2000)、上記]と類似する原繊維構造が、DFNKFペンタペプチドを含有する溶液において高頻度で明瞭に認められた(図21a)。より短いDFNKテトラペプチドもまた原繊維構造を形成した(図21b)。しかしながら、形成された構造は、DFNKFペンタペプチドによって形成された原繊維構造と比較した場合、それほど秩序を有していなかった。DFNKによって形成された原繊維構造の量もまた、DFNKFペンタペプチドと比較して少なかった。明らかな原繊維は、広範囲の調査にもかかわらず、FNKFテトラペプチドおよびDFNトリペプチドを含有する溶液を使用すると検出することができなかった。FNKFテトラペプチドの場合、無定形の凝集物のみを見出すことができた(図21c)。DFNトリペプチドは、ゲル形成性のトリペプチドによって形成される構造[Lyon(2001)、上記]と類似した、より大きな秩序を有する構造を形成した(図21d)。FNKFテトラペプチドおよびDFNトリペプチドのペプチドが原繊維を一切形成することができないかどうか、または観測結果が遅い速度論の結果であるかどうかを調べるために、同じ実験条件で、ペプチドの溶液を2週間にわたってインキュベーションした。この場合もまた、明らかな原繊維構造を検出することができなかった(データは示さず)。
【0277】
(実施例19)
コンゴーレッド(CR)結合アッセイによるカルシトニン由来ペプチドのアミロイド形成能の試験
CR染色を、実施例9に記載したように行った。
【0278】
CR染色を、様々なhCT由来ペプチドにより形成された構造が典型的な複屈折を示すかどうかを明らかにするために行った。図22a〜図22dに示すように、すべての調べたペプチドがある程度の複屈折を示した。しかしながら、緑色の複屈折がDFNKFペンタペプチドに関して観測され、この複屈折は明瞭であり、かつ強かった(図22a)。それ以外のペプチドに関して観測された複屈折のレベルはより低いが、ペプチドを含有しないコントロール溶液を使用して複屈折を検出することができなかったので、有意であった。DFNKテトラペプチドのより低いレベルの複屈折(図22b)は、EMを使用して観測されるように(図21b)、より低い程度の原繊維化と一致していた。しかしながら、FNKFテトラペプチドおよびDFNトリペプチドに関して観測される複屈折はある程度の秩序だった構造を表し得ることが理解される[Lyon(2001)上記]。
【0279】
(実施例20)
凝集したhCT由来ペプチドの二次構造
FT−IR分光法を、実施例11に記載したように行った。
【0280】
アミロイド沈着物は、β−プリーツシート構造が多い原繊維に特徴的である。様々なペプチドフラグメントによって形成された二次構造に関する量的な情報を得るために、FT−IR分光法を使用した。寝かせたペプチド溶液を、実施例11に記載したように、CaF2プレート上で乾燥させ、薄いフィルムを形成させた。図23に示すように、DFNKFペンタペプチドは、(1639cm−1および1669cm−1に)二重の極小を示し、そして、逆平行のβ−シート構造と一致し、かつ小島アミロイドポリペプチドのアミロイド形成性のヘキサペプチドフラグメントのスペクトル[Tenidis(2000)、上記]と著しく類似する、アミドIのFT−IRスペクトルを示した。DFNKテトラペプチドに関して観測されたアミドIのスペクトル(図23)は、β−シート構造にとってそれほど典型的ではなかった。DFNKテトラペプチドは、逆平行のβ−シートを反映し得る1666cm−1における極小を示した一方で、β−シート構造に関して典型的に観測される1620cm−1〜1640cm−1付近の典型的な極小を有していなかった。FNKFテトラペプチドは、秩序のない構造に典型的であり、かつ、小島アミロイドポリペプチドの短い非アミロイド形成フラグメントのスペクトル[Tenidis(2000)、上記]に類似するFT−IRスペクトルを示した(図23)。DFNトリペプチドは、(1642cm−1および1673cm−1に)二重の極小を示し(図23)、そして、β−シート構造およびランダム構造の混合と一致する、アミドIのFT−IRスペクトルを示した。このことはさらに、EM可視化によって観測される構造が、β−シート構造エレメントから主に構成されたある程度の秩序だった構造を表し得ることを示している。
【0281】
(実施例21)
カルシトニン由来ペプチドの自己会合に対するフェニルアラニン置換の影響
カルシトニンの自己会合プロセスにおけるフェニルアラニン残基に対する考えられる役割を洞察するために、フェニルアラニンのアミノ酸をペンタペプチド(配列番号31)の場面においてアラニンで置換した。DANKFペンタペプチドの寝かせた溶液をEMによって可視化しても、明らかな原繊維構造を検出することができなかった(図24a)。可視化した構造は、(FNKFテトラペプチドに関して認められる無定形の凝集物と比較したとき)、ある程度の秩序を示したが、緑色−金色の複屈折を観測することができなかった(図24b)。DANKAペンタペプチドのFT−IRスペクトルは、FNKFテトラペプチドおよび他の短い非アミロイド形成ペプチドのFT−IRスペクトル(これは秩序のない構造に典型的である[Tenidis(2000)、上記])と類似していた。まとめると、フェニルアラニンからアラニンへの置換の影響は、小島アミロイドポリペプチドの短いアミロイド形成性のフラグメントの場面におけるそのような変化の影響[Azriel(2001)、上記]と非常に類似している。
【0282】
まとめると、hCT由来ペンタペプチド(配列番号27)は、十分に秩序だったアミロイド原繊維を形成することができることが明らかにされた。電子顕微鏡観察の可視化により認められるような典型的な原繊維構造(図21a)、CRにより染色したときの非常に強い緑色の複屈折(図22a)、および典型的な逆平行β−シート構造(図23a)、これらのすべてが、DFNKFペンタペプチドが非常に強力なアミロイド形成因子であることを示している。自己会合することができる他のペンタペプチドを本明細書中上記に示した。それでも、複屈折の程度および電子顕微鏡観察による形態学に関して、hCTフラグメントは、β−アミロイド(Aβ)ポリペプチドの強力なアミロイド形成フラグメントのKLVFFAE[Balbach(2000)、Biochemistry、39:13748〜59]と類似する最も大きいアミロイド形成能を有するペンタペプチドであるようである。リジンおよびアスパラギン酸における反対の荷電の間における静電的相互作用により、秩序だった逆平行構造の形成が誘導されると考えられる。興味深いことに、DFNKポリペプチドは、DFNKFペプチドと比較した場合、著しく低下したアミロイド形成能を示した。ペンタペプチドが強力なアミロイド形成因子のための下限であると考えられる。このことは、IAPPの2つのペンタペプチド(NFLVHおよびFLVHS)がアミロイド原繊維を形成することができるが、それらの共有する共通部分(テトラペプチドFLVH)はそのような原繊維を形成することができないことを明らかにする最近の結果と一致している(実施例1〜5を参照のこと)。
【0283】
(実施例22)
ラクトトランスフェリンからのアミロイド形成ペプチドの同定
ラクトトランスフェリン(GenBankアクセション番号gi:24895280)によるアミロイド原繊維形成は家族性上皮下角膜アミロイド形成に関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、ラクトトランスフェリン由来ペプチドのLFNQTG(配列番号32)のアミロイド形成特性を調べた。
【0284】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するラクトトランスフェリン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図25に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、ラクトトランスフェリンのLFNQTGがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0285】
(実施例23)
血清アミロイドAタンパク質からのアミロイド形成ペプチドの同定
血清アミロイドAタンパク質(GenBankアクセション番号gi:134167)の断片は慢性炎症アミロイドーシスの症例のアミロイド状態で見出されている[Westermark他(1992)、Biochem.Biophys.Res.Commun.、182:27〜33]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、血清アミロイドAタンパク質由来ペプチドのSFFSFL(配列番号33)のアミロイド形成特性を調べた。
【0286】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成する血清アミロイドAタンパク質由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図26に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、血清アミロイドAタンパク質のSFFSFLがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0287】
(実施例24)
BriLからのアミロイド形成ペプチドの同定
ヒトBRI遺伝子は第13染色体上に位置する。BriL遺伝子生成物(GenBankアクセション番号gi:12643343)のアミロイド原繊維はニューロンの機能不全及び痴呆と関連する(Vidal他(1999)、Nature、399、776〜781)。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、BriL由来ペプチドのFENKF(配列番号34)のアミロイド形成特性を調べた。
【0288】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するBriL由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図27に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、BriLのFENKFがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0289】
(実施例25)
ゲルソリンからのアミロイド形成ペプチドの同定
ゲルソリンタンパク質(GenBankアクセション番号gi:4504165)の断片はフィンランド遺伝性アミロイドーシスの症例のアミロイド状態で見出されている[MauryおよびNurmiaho−Lassila(1992)、Biochem. Biophys. Res. Commun.、183:227〜31]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、ゲルソリン由来ペプチドのSFNNG(配列番号35)のアミロイド形成特性を調べた。
【0290】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するゲルソリン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図28に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、BriLのSFNNGがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0291】
(実施例26)
血清アミロイドPからのアミロイド形成ペプチドの同定
ベータアミロイドによるアミロイド原繊維形成は血清アミロイドP(GenBankアクセション番号gi:2144884)との相互作用によって促進される。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、血清アミロイドP由来ペプチドのLQNFTL(配列番号36)のアミロイド形成特性を調べた。
【0292】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成する血清アミロイドP由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図29に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、血清アミロイドPのLQNFTLがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0293】
(実施例27)
免疫グロブリン軽鎖からのアミロイド形成ペプチドの同定
免疫グロブリン軽鎖(GenBankアクセション番号gi:625508)によるアミロイド原繊維の形成は一次全身性アミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、免疫グロブリン軽鎖由来ペプチドのTLIFGG(配列番号37)のアミロイド形成特性を調べた。
【0294】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成する免疫グロブリン軽鎖由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図30に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、免疫グロブリン軽鎖のTLIFGGがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0295】
(実施例28)
シスタチンCからのアミロイド形成ペプチドの同定
シスタチンC(GenBankアクセション番号gi:4490944)によるアミロイド原繊維の形成は遺伝性の脳のアミロイドアンギオパチーと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、シスタチンC由来ペプチドのRALDFA(配列番号38)のアミロイド形成特性を調べた。
【0296】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するシスタチンC由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図31に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、シスタチンCのRALDFAがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0297】
(実施例29)
トランスサイレチンからのアミロイド形成ペプチドの同定
トランスサイレチン(GenBankアクセション番号gi:72095)によるアミロイド原繊維の形成は家族性アミロイド多発神経障害と関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、トランスサイレチン由来ペプチドのGLVFVS(配列番号39)のアミロイド形成特性を調べた。
【0298】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するトランスサイレチン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図32に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、トランスサイレチンのGLVFVSがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0299】
(実施例30)
リゾチームからのアミロイド形成ペプチドの同定
リゾチーム(GenBankアクセション番号gi:299033)によるアミロイド原繊維の形成は家族性非神経障害性アミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、リゾチーム由来ペプチドのGTFQIN(配列番号40)のアミロイド形成特性を調べた。
【0300】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するリゾチーム由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図33に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、リゾチームのGTFQINがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0301】
(実施例31)
フィブリノーゲンからのアミロイド形成ペプチドの同定
フィブリノーゲン(GenBankアクセション番号gi:11761629)によるアミロイド原繊維の形成は遺伝性腎アミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、フィブリノーゲン由来ペプチドのSGIFTN(配列番号41)のアミロイド形成特性を調べた。
【0302】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するフィブリノーゲン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図34に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、フィブリノーゲンのSGIFTNがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0303】
(実施例32)
インシュリンからのアミロイド形成ペプチドの同定
インシュリン(GenBankアクセション番号gi:229122)によるアミロイド原繊維の形成は注射局在アミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、インシュリン由来ペプチドのERGFF(配列番号42)のアミロイド形成特性を調べた。
【0304】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するインシュリン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図35に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、インシュリンのERGFFがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0305】
(実施例33)
プロラクチンからのアミロイド形成ペプチドの同定
プロラクチン(GenBankアクセション番号gi:4506105)によるアミロイド原繊維の形成は下垂体アミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、プロラクチン由来ペプチドのRDFLDR(配列番号43)のアミロイド形成特性を調べた。
【0306】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するプロラクチン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図36に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、プロラクチンのRDFLDRがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0307】
(実施例34)
ベータ−2−ミクロチューブリンからのアミロイド形成ペプチドの同定
ベータ−2−ミクロチューブリン(GenBankアクセション番号gi:70065)によるアミロイド原繊維の形成は血液透析関係のアミロイドーシスと関連する[SacchettiniおよびKelly(2002)、Nat Rev Drug Discov、1:267〜75]。アミロイドの自己会合における芳香族残基の提案された役割に基づいて、ベータ−2−ミクロチューブリン由来ペプチドのSNFLN(配列番号44)のアミロイド形成特性を調べた。
【0308】
材料および実験手順−実施例7および実施例10に記載した。
結果−原繊維超分子の超微細構造を形成するベータ−2−ミクロチューブリン由来ペプチドの能力を特徴づけるために、ネガティブ染色での電子顕微鏡観察分析を行った。図37に示すように、穏和な条件のもとで、フィラメント状構造を、選択したペプチドについて観測した。このことは、ベータ−2−ミクロチューブリンのSNFLNがポリペプチドの自己会合のために重要であることを示唆している。これらの結果はさらに、本発明によりアミロイド形成ペプチドの配列を予測することができることを実証している。
【0309】
(実施例35)
本発明の教示に従って同定したアミロイド形成ペプチドのアミロイド形成の阻害
全長ポリペプチドによるアミロイド形成を阻害する、本発明の教示に従って同定したIAPPのアミロイド形成ペプチドの能力を、ペプチド配列NFLVHPP(配列番号45)に示すように、β−破壊剤のプロリン残基を認識配列に付加することによって調べた。
【0310】
阻害剤の存在下および非存在下でのアミロイド原繊維形成の程度を、分子指示剤としてチオフラビンT(ThT)を使用して評価した。ThT色素の蛍光の程度は、溶液中のアミロイド原繊維の量に直接的に相関する[LeVine H 3rd.(1993)、Protein Sci.、2:404〜410]。IAPP溶液(10mMのTris緩衝液(pH7.2)における4μMのhIAPP)を、40μMの改変ペプチド(すなわち、NFLVHPP)の存在下または非存在下、室温でインキュベーションした。この溶液を、50mMリン酸ナトリウム(pH6.0)に3μMのチオフラビンT(ThT)を含有する溶液に10倍希釈し、LS50B分光蛍光計(Perkin Elmer、Wellesley、MA)を使用して450nmでの励起による480nmにおける蛍光を測定することによって原繊維形成を測定した。コントロールとして、10mMのTris緩衝液(pH7.2)をThT溶液に希釈し、蛍光を、記載したように測定した。
【0311】
結果−図38に示すように、IAPPは単独では、アミロイド形成タンパク質について予想されるように高レベルのThTの蛍光を示したが、阻害ペプチドの存在下では蛍光が著しく増大した。従って、これらの結果により、NFLVH配列がIAPPポリペプチドにおけるアミロイド形成決定因子として確認される。
【0312】
(実施例36)
アミロイドの会合における疎水性残基の重要性
IAPPの基本アミロイド形成ユニットにおける芳香族残基の重要性を実施例1〜実施例5において明らかにした。記載したように、フェニルアラニンをアラニンに置換すると、アミロイド形成フラグメント(NAGAIL、配列番号9)がインビトロでアミロイド原繊維を形成する能力がなくなった。この観測の結果、他の短いアミロイド関連配列における芳香族残基の顕著な存在(実施例12〜実施例35)、ならびに、化学および生化学における自己会合プロセスにおけるπスタッキングの広く知られている役割に基づいて、芳香族残基のスタッキングがアミロイド原繊維形成プロセスにおいて役割を果たし得ることが示唆されている[Gazit(2002)、FASEB J.、16:77〜83]。
【0313】
研究を、さらに、フェニルアラニン残基が、その芳香族性のためにというよりは、その疎水的性質のために重要であるかどうか示すために拡張した。IAPPの基本アミロイド形成ユニット(すなわち、NFGAILペプチド)の自己会合に対する疎水性残基によるフェニルアラニン置換による影響を検討した。
【0314】
この研究で使用したペプチドおよびその表示の一覧を下記の表6に示す。
【表6】
【0315】
これらの疎水性アミノ酸はフェニルアラニンと類似の疎水性を有するか、または、フェニルアラニンよりもさらにわずかに疎水性が大きい[Wolfenden(1981)、Biochemistry、20:849〜855;Kyte(1982)、J.Mol.Biol.、157:105〜132;Radzicka(1988)]が、それらは芳香族性でないことが理解される。さらに、バリンおよびイソロイシンは、β−シートの多いアミロイド原繊維の形成にとって重要であると推定される非常に強いβ−シート形成因子であると見なされている[Chou(1974)、Biochemistry、13:211〜222;Chou(1978)、Annu.Rev.Biochem.、47:251〜276]。
【0316】
(実施例37)
濁度測定によってモニターしたときの、疎水性に改変されたhIAPPペプチドフラグメントの凝集速度論の特徴づけ
実験手順−実施例8に記載したように行った。
結果
疎水性に改変されたIAPP由来ペプチドアナログの凝集能に対する洞察を得るために、濁度アッセイを行った。野生型ペプチドおよび様々なペプチド変異型の新しく作製したストック溶液をDMSO中で作製した。その後、ペプチドを緩衝液溶液に希釈し、濁度を、時間の関数として405nmでの吸光度を追跡することによってモニターした。図39に示すように、濁度の著しい増大が、水溶液へのその希釈後数分以内に、野生型のNFGAILSSオクタペプチドについて観測された。凝集曲線の形状は、濁度の急速な増大が最初の1時間に存在し、その後、モニターされたインキュベーション時間全体にわたる濁度のはるかにより遅い増大を伴う飽和曲線の形状に類似していた。これは、おそらく、自由な構成要素の数を律速因子とする迅速な凝集プロセスを反映している。対照的に、アナログペプチドはどれも、何ら意味のある凝集挙動を明らかにせず、また、すべての疎水性アナログならびにアラニン置換アナログの濁度は、少なくとも24時間にわたって非常に低いままであった(図39)。
【0317】
疎水性アナログの非凝集挙動が極めて遅い速度論の結果であるかどうか明らかにするために、ペプチドアナログの溶液を同じ実験条件で1週間にわたってインキュベーションし、終点の濁度値を測定した。図30に示すように、やや低い程度の濁度がNIGAILSSに関して観測され、より低い程度が、濁度の低下する順に、NLGAILSS、NAGAILSSおよびNVGAILSSのペプチドについて観測された。しかしながら、NIGAILSSの場合でさえ、濁度の程度は、野生型のNFGAILSSタンパク質と比較して著しく低下していた(図40)。さらに、より低い程度の凝集が、疎水性が大きいβ−シート形成因子のバリンへの置換に関して観測されたので、凝集能と疎水性またはβ−シート形成傾向との間には相関が何ら認められなかった。NFGAILSS野生型ペプチドの終点濁度値のわずかな低下は、24時間のインキュベーションの後で得られた値と比較した場合、キュベット表面に付着する非常に大きい凝集物が形成したことを反映し得る。
【0318】
(実施例38)
疎水性に改変されたhIAPPペプチドフラグメントの超微細構造分析
電子顕微鏡観察分析を、実施例10に記載したように行った。
様々なアナログペプチドによって形成された何らかの可能な構造の超微細構造可視化を5日間のインキュベーションの後で行った。この構造分析は、様々な凝集物を個々に可視化するので、最も高感度な方法を表す。その目的のために、形成された構造の存在および特徴を、凝集アッセイ(実施例32)においてインキュベーションした同じペプチド溶液を用いて、ネガティブ染色を使用して電子顕微鏡観察によって調べた。予想されたように、十分な秩序を有する原繊維が野生型ペプチドのNFGAILSSペプチドフラグメントに関して観測された(図41a〜図41b)。いくつかの無定形の凝集物もまた、改変したフラグメントに関して認めることができた(図41c〜図41f)。しかしながら、それらの構造は、顕微鏡グリッドでは著しく多くなかった。より大きい凝集性構造が、アラニンアナログと比較した場合、より疎水性の置換体に関して観測された。それでも、上記で述べたように、NFGAILSSペプチドに関して認められた秩序だった原繊維構造とは異なり、これらの凝集物は極めて希であり、秩序だった構造を有していなかった(図41c〜図41f)。それらの不規則で、散発的な構造は、かなり疎水性の分子を長くインキュベーションした後で予想されるような、ある程度の非特異的な凝集と一致している。
【0319】
(実施例39)
IAPPの自己会合におけるフェニルアラニンの特異的な機能の決定
IAPPの自己会合におけるフェニルアラニン残基の特異的な役割を決定するために、メンブラン型結合アッセイを、「基本アミロイド形成ユニット」を認識する全長hIAPPの能力を促進させる分子決定因子を体系的に調査するために行った。この目的のために、フェニルアラニン位置を体系的に変化させたペプチド(配列番号91〜110)のアレイと相互作用するMBP−IAPP(実施例6参照)の能力を検討した。
【0320】
材料および実験手順−実施例6〜実施例7を参照のこと。
結果
SNNXGAILSSモチーフ(配列番号90)(式中、Xは、システインを除く任意の天然アミノ酸である)に対応するペプチドアレイを構築した。図42aに示すように、MBP−IAPPの結合を、芳香族性のトリプトファン残基およびフェニルアラニン残基をX位に含有するペプチドについて明瞭に観測した(図42a)。興味深いことに、結合はまた、フェニルアラニンがアルギニンおよびリジンなどの塩基性アミノ酸で置換したときにも観測された。対照的に、その位置の疎水性置換体のいずれに関しても、結合は、メンブランに長時間曝された後でさえも観測されなかった(図42b)。
【0321】
短時間の暴露での結合を、デンシトメトリーを使用して評価した(図42c)。しかし、合成時のカップリング効率、従って、スポットあたりのペプチドの量が変化し得るので、測定した結合は半定量的であるとして解釈しなければならないことが理解される。しかしながら、この場合、様々なペプチド変化体の間における結合の差が顕著であることが極めて明瞭であった。
【0322】
まとめると、これらの観測結果のすべてが、アミロイド形成プロセスの促進における芳香族残基の役割を実証している。
【0323】
(実施例40)
α−アミノイソブチル酸(Aib)置換アミロイド形成ペプチドの設計および立体配座
IAPPポリペプチド(即ち、IAPP14−20、上記表3参照)の最小アミロイド形成領域は、それに結合し、それをブロックし、その凝集を妨げることができる阻害剤を設計するためのターゲット配列として選択された。
【0324】
実験アプローチ
アミロイド形成ペプチドの凝集能力をなくすために、β−シート破壊剤をターゲット配列に組み入れ、ペプチドが原繊維を形成するためにモノマーが一緒にスタッキングされるβ−シート配座を示すことができないようにする。α−アミノイソブチル酸(Aib)は、カルボキシル基のCαに結合された二つのメチル残基を含有する非天然のアミノ酸である。天然のアミノ酸と違って、この分子はCαに結合された水素原子を有しない。これは、特にアミド結合のφおよびΨ角に関するアミノ酸の立体特性に広く影響する。アラニンは幅広い範囲の可能なφおよびΨ立体配座を有するが、α−メチル化アラニンであるAibは制限されたφおよびΨ立体配座を有する。図43aはL−アラニンおよびD−アラニンのラマチャンドランプロットの重なりから導かれるAibの立体配座マップを示す。図43aについて明らかなように、可能な角度は小さな領域に制限され、全体の構造はβ−鎖立体配座よりむしろα−ヘリックス立体配座のためにずっと好適である。
【0325】
従って、Aibは、アミロイド凝集の中心であるβ−シート立体配座を妨げるために使用することができる。特に、Aibとプロリンのラマチャンドランプロットの間の比較は、Aibがプロリンより強力なβ−シート破壊剤であることを示す(図43a)。
【0326】
IAPPアミロイド形成領域を含む二つのペプチド(即ち、ANFLVHおよびANFLV、それぞれ配列番号124および126)を合成して、アラニンおよびロイシン残基を置換するAibを含ませた。次のアミノ酸配列、即ちAib−NF−Aib−VH(配列番号125)およびAib−NF−Aib−V(配列番号127)を含む新しく合成されたペプチドをそれぞれ図43b〜cに示す。
【0327】
ペプチド合成−固相技術を使用してPeptron,Inc.(Taejeon,韓国)によってペプチドを合成した。ペプチドの正確な正体は、HP1100シリーズLC/MSDを使用してイオンスプレー質量分析法によって確認された。ペプチドの純度を、水および0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)における0%から100%へのアセトニトリルの30分の直線勾配を1ml/分の流速で使用して、C18カラムでの逆相高圧液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)によって確認した。
【0328】
ペプチド溶液−新しく調製したストック溶液を、凍結乾燥形態のペプチドをジメチルスルホキシド(DMSO)に100mMの濃度で溶解することによって作製した。何らかの事前の凝集を避けるために、新しいストック溶液をそれぞれの実験のために調製した。ペプチドストック溶液を、下記のようにマイクロチューブに希釈した。5μlのペプチドストック溶液を95μLの10mM Tris(pH7.2)に加えた(従って、ペプチドの最終濃度は5%のDMSOの存在下で5mMであった)。
【0329】
(実施例41)
野生型およびAib改変hIAPPペプチドの超微細構造分析
上の実施例40に記載されたペプチドの原繊維形成能を電子顕微鏡分析によって評価した。
【0330】
材料および実験手順
透過電子顕微鏡−4日間(wtペプチド)および10日間(改変ペプチド)寝かせた、10mMのTris緩衝液(pH7.2)における5mMペプチド溶液の10μLサンプルを、400メッシュの銅グリッド(SPI Supplies,West Chester PA)上に置き、カーボン安定化ホルムバールフィルムによって覆った。1分後、過剰な液体を除き、次にグリッドを2%酢酸ウラニル水溶液でさらに2分間ネガティブ染色した。サンプルを80kVで稼動するJEOL 1200EX電子顕微鏡で調べた。
【0331】
結果
Aib含有ペプチドのアミロイド原繊維を形成する能力を、天然のIAPPペプチドと比較して調べた。Aib改変および野生型ペプチドの寝かせた溶液を、ネガティブ染色を使用して電子顕微鏡(EM)のもとで調べた。図44a−bに示すように、両天然ペプチド、即ちANFLVH(図44a)およびANFLV(図44b)は、全長IAPPタンパク質によって形成された原繊維に対して高い類似性を有する原繊維構造を形成した。他方、Aib含有ペプチド、即ち、Aib−NF−Aib−VH(図44c)およびAib−NF−Aib−V(図44d)に対して、より長いインキュベーション期間後であっても、原繊維構造は全く存在しなかったが、無定形の凝集物はなお存在していた。これは、本発明のAib置換ペプチドが原繊維形成できないこと示唆している。
【0332】
(実施例42)
コンゴーレッド結合アッセイによる野生型およびAib置換IAPPペプチドのアミロイド形成能の試験
材料および実験手順
コンゴーレッド染色および複屈折−10日間寝かせた、10mMのTris緩衝液(pH7.2)における5mMペプチド溶液の10μL懸濁液を、ガラス製の顕微鏡スライドガラスの上で一晩乾燥させた。染色を、80%エタノール(v/v)溶液における飽和コンゴーレッド(CR)およびNaClの10μL懸濁液を加えることによって行なった。溶液を0.2μmフィルターによりろ過した。その後、スライドガラスを数時間乾燥させた。複屈折を、直交偏光子を備えるSZX−12実体顕微鏡(Olympus,Hamburg、ドイツ)を用いて測定した。100×の倍率で示される。
【0333】
結果
コンゴーレッド染色を使用して、Aib改変ペプチドのアミロイド形成能を評価した。スライドガラスを、直交偏光子を使用する顕微鏡のもとで調べた。図45a〜bは、ANFLVHおよびANFLVペプチド(それぞれ図45aおよびb)の両方に対して典型的な黄緑の複屈折を示す。しかしながら、EM研究によれば、Aib改変ペプチド、即ちAib−NF−Aib−VHおよびAib−NF−Aib−Vは複屈折を全く示さなかった。これは、Aib改変ペプチドがアミロイド原繊維を全く形成できないことを示唆している(図45c〜d)。
【0334】
(実施例43)
Aib改変IAPPペプチドフラグメントの二次構造分析
フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)を、Aib改変hIAPPの二次構造を決定するために行なった。
【0335】
材料および実験手順
フーリエ変換赤外分光法−赤外スペクトルを、DTGS検出器を備えるNicolet社のNexus470FT−IR分光計を使用して記録した。2週間寝かせたペプチド溶液のサンプルを、CaF2プレート上に懸濁し、真空乾燥させた。ペプチド沈着物をD2Oで再懸濁し、続いて乾燥させて、薄いフィルムを形成させた。この再懸濁手順を2回繰り返して、水素から重水素への交換が最大になることを確実にした。測定値を、4cm−1の分解能および2000回の走査平均化を使用して得た。透過率極小値をOMNIC分析プログラム(Nicolet)によって決定した。
【0336】
結果
FT−IR分光法を使用して、観察された構造の内部立体配座を解明した(上の実施例42および43参照)。Aibの含有時の図46a〜bに示すように、IAPPペプチドはIRスペクトルにおいてシャープな変化を示した。ANFLVHおよびANFLVペプチドスペクトルは、1630cm−1および1632cm−1のそれぞれに極小を有するβ−シートスペクトルの典型であるが、Aib−NF−Aib−VHおよびAib−NF−Aib−Vペプチドは、1670cm−1および1666cm−1のそれぞれに極小を示し、それは無秩序なコイル立体配座を特徴とする。
【0337】
まとめると、これらの結果は天然のIAPPペプチドとAib含有ペプチドの間の根本的な差異を示唆する。天然のペプチドは高度にアミロイド形成性であるが、改変Aib含有ペプチドはアミロイド原繊維を形成することができない(実施例41〜43)。
【0338】
(実施例44)
Aib改変ペプチドはIAPPポリペプチドによるアミロイド形成を阻害する
Aib阻害剤存在下および非存在下でのアミロイド原繊維形成の程度を、分子指示剤としてチオフラビンT(ThT)を使用して評価した。ThT色素の蛍光の程度は、溶液中のアミロイド原繊維の量に直接的に相関する[LeVine H 3rd.(1993),Protein Sci.2:404〜410]。
【0339】
材料および実験手順
フーリエ変換赤外分光法−IAPP溶液(10mMのTris緩衝液(pH7.2)における4μMペプチド)を、40μMの様々なペプチド溶液の存在下または非存在下で室温でインキュベートした。溶液を、50mMリン酸ナトリウム(pH6.0)に3μMのチオフラビンT(ThT)を含有する溶液に10倍希釈し、Perkin Elmar LS50B分光蛍光計を使用して450nmでの励起による480nmにおける蛍光を測定することによって原繊維形成を測定した。コントロールとして、10mMのTris緩衝液(pH7.2)をThT溶液に希釈し、蛍光を記載したように測定した。
【0340】
結果
図47に示すように、全てのAib改変ペプチドは、全長IAPPポリペプチドの会合を阻害することができた。これは、アミロイド形成ペプチドのAib改変が様々な治療用途において強力な抑制ツールとして役立ちうることを示唆している。
【0341】
(実施例45)
ジ−およびトリ−芳香族ペプチドはIAPPポリペプチドの凝集を阻害しうる。
短い芳香族アミノ酸配列がアミロイドポリペプチドの会合を阻害する能力を研究し、β−シート破壊剤アミノ酸がこのような阻害を容易にする能力に接近するために、テトラ−、トリ−およびジペプチドのアレーを合成および評価した。
【0342】
実験手順
ペプチド合成−この実施例45および実施例46〜47に使用されたペプチドおよびその表示の一覧を下記の表7に示す。ペプチド合成は以下の実施例46〜47に記載されている。
【0343】
【表7】
【0344】
ThT蛍光−上記実施例44参照
結果
阻害ペプチドを、(記載したような)標準ThT蛍光アッセイを使用して評価した。図48は、142時間のインキュベーション後、IAPP凝集がプラトーに達した後の終点値を示す。凝集アッセイを、IAPPポリペプチド(4μM)および阻害ペプチド(40μM)の存在下で行なった。
【0345】
図48に明らかに示すように、短い芳香族アミノ酸配列はその凝集を阻害しながらIAPPポリペプチドに対する認識を媒介する。最良の阻害剤は、Aib−Phe−Pheペプチド(EG12)であり、そこではAib残基はアミロイド関連構造を形成しうる最短の認識エレメントに結合されている[Reches and Gazit,Science(2003),300(2619):625〜7]。D−Tyr−D−Pro(EG18)およびD−Tyr−D−Aib(EG16)は、IAPP凝集に対して有意な阻害効果を示し、これは単一芳香族残基が分子認識を媒介する能力を実証する。興味深いことに、Aibはプロリンより高い阻害活性を示した。さらに、芳香族アミノ酸に対するβ−シート破壊剤アミノ酸の位置で異なるペプチドEG17とEG18の間の活性の有意な差は、ペプチドの組成だけでなく、順序に対する役割を示唆する。
【0346】
(実施例46)
最良に実施するIAPP原繊維化阻害剤の選択およびそれを選択する基準
ペプチド合成−ペプチド合成(EG5,EG6およびEG7,D−Phe−Pro,およびD−Pro−Pheを除く)を、固相合成(Peptron,Inc.,Taejeon、韓国)を使用することによって行なった。ペプチドの同定はイオンスプレー質量分析法によって確認された。ペプチドの純度を、逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって確認した。EG5,EG6,およびEG7,D−Phe−Pro,およびD−Pro−Pheを、Bachem(Bubendorf、スイス)から購入した。小島アミロイドポリペプチド(IAPP)を、CalBiochem(La Jolla CA、米国)から購入した。
【0347】
チオフラビン蛍光アッセイ−hIAPP原繊維化はチオフラビンT色素結合アッセイによってモニターされた。hIAPP1〜37ストック溶液を、阻害剤(40μM)ありまたはなしの10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)において4μMの最終濃度に、そして1%(vol)のHFIPの最終濃度に希釈した。希釈直後、サンプルを4℃で20000×gで20分間遠心分離し、上澄み画分を蛍光測定のために使用した。各測定ごとに、Thtを3μMの最終濃度で1mlサンプルに添加し、測定を、Perkin−Elmer(励起450nm,2.5nmスリット;発光480nm,10nmスリット)を使用することによって行なった。バックグラウンド放射線は全てのサンプルから差し引いた。
【0348】
結果
潜在的な阻害剤の同定および阻害剤設計のための規則−IAPP原繊維化の小さなペプチド阻害剤を同定し、阻害剤の最小長さおよびその最大安定性を最適化するために、ペプチド選択の反復サイクルを、D−アミノ酸配列アナログを使用して行なった。
【0349】
図49aに示された選択の第一ラウンドは、トリペプチドのように短いペプチドがIAPPによるアミロイドの形成を効率的に阻害しうることを証明した。EG01とEG03の比較は、短いペプチド内のAsn残基の存在がアミロイド形成の阻害に貢献しないことを示唆し、さらに適切な阻害のためにβ−破壊剤とともに芳香族部分を使用することを支持する。EG05、アミロイド形成のための公知の阻害剤[Tjernberg他(1996)、J.Biol.Chem.271:8545〜854]によるIAPP原繊維化の効果的な阻害は、芳香族残基によるアミロイド形成の一般的な阻害を示唆する。実際に、EG05およびずっと短いEG08(Phe−Pheに結合したAib)エレメントの同様の活性は、EG05の一般的な阻害がその芳香族の性質に由来することを明らかに示唆する。
【0350】
図49bに示された選択の第二ラウンドは、効果的な阻害がトリペプチドによってだけでなくジペプチド(EG16,EG17,EG18)によっても達成されうることを証明した。全ての場合において芳香族部分へのD−異性体の結合を使用した。EG16とEG17の間の差は、阻害剤の設計のための規則を確立するために次のラウンドでさらに研究された。図49cは選択の第三ラウンドの結果を示す。EG20対EG21(d−F−P対P−d−F)の第三ラウンドにおける比較(図49c)は、第二ラウンドにおけるEG16とEG17を比較することによって得られた結果、およびEG24とEG35を比較することによって得られた結果(第四ラウンドにおいて−図1d)とともに、(芳香族DまたはL)−(β−破壊剤)に述べたようなジペプチド阻害剤の設計のための一般式を示唆する。これらの選択ステップは、(芳香族DまたはL)−(芳香族DまたはL)−(β−破壊剤)に述べたようなトリペプチド阻害剤のための一般式をさらに与えた。
【0351】
第四ラウンドはまた、四つの推定される代謝的に安定なジペプチドEG28,EG29,EG30,EG31の阻害能力を証明した。再び、阻害配列のための芳香族アミノ酸およびベータ破壊剤の有用性が強調される。
【0352】
(実施例47)
D−Trp−Aibによるβ−アミロイドポリペプチド原繊維形成の阻害
ペプチド合成−上の実施例46参照。組換えβ−アミロイド(Aβ1−40,>98%純度)を、rPeptide(Athens GA、米国)から購入した。
【0353】
チオフラビンT蛍光アッセイ−Aβ1−40の原繊維化をチオフラビンT色素結合アッセイによってモニターした。Aβ1−40ストック溶液を、阻害剤ありまたはなしの100mM NaCl,10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)において5μMの最終濃度に希釈した。各測定ごとに、Thtを0.1mlサンプルに添加し、0.3μMのThTおよび0.4μMのポリペプチドの最終濃度にした。測定を、Jobin Yvon FluroMax−3(励起450nm,2.5nmスリット;発光480nm,5nmスリット、積分時間1秒)を使用して行なった。バックグラウンド放射線を全てのサンプルから差し引いた。
【0354】
透過電子顕微鏡観察−10μLサンプルを400メッシュの銅グリッド(SPI supplies,West Chester PA)に置き、カーボン安定化ホルムバールフィルムによって覆った。1分後、過剰な液体を除き、その後、グリッドを2%酢酸ウラニル水溶液でさらに2分間ネガティブ染色した。サンプルを80kVで稼動するJOEL 1200EX電子顕微鏡で調べた。
【0355】
結果
阻害の蛍光測定−D−Trp−AibがIAPP以外の分子によってアミロイド形成を阻害できるかどうかを試験するために、アルツハイマーのβ−アミロイド1−40(Aβ)をモデル系として作用した。図50に示すように、阻害剤の不存在下では、Aβは約100時間の原繊維化における遅延段階を示し、その後蛍光レベルにおける急速な増加を示した。10μMのEG30の存在下では、遅延時間は有意に増加され、プラトーに達したときの蛍光全体は阻害剤なしで観察されるより有意に低かった。
【0356】
これはさらに、芳香族阻害剤が一般的なアミロイド阻害剤および会合の共通のメカニズムとして作用しうることを示唆する[Gazit(2002),FASEB J.16,77〜83]。
【0357】
超微細構造分析−阻害のメカニズムの情報を得るために、その末端(termination)アッセイ時の蛍光アッセイからとった試料を電子顕微鏡によって調べた(図51a〜c)。阻害剤を含まないAβのサンプルには明確で良く規定されたアミロイド繊維が存在していた(図51a)。対照的に、EG30の存在下では、Aβはほとんど無定形凝集体(図51b)としてまたは分断された原繊維(図51c)として検出された。これは、阻害剤の存在下で形成されたそれらの原繊維であっても短く、おそらく機能不全であったことを示唆している。
【0358】
従って、D−Trp−Aib化合物は、極めて小さい分子において薬学的特性の独自の組み合わせを提供する:
【0359】
1.へテロ芳香族相互作用:増殖するアミロイド原繊維(Gazit,2002)の芳香族認識界面とトリプトファンインドールの間の相互作用は、増殖する鎖のさらなるホモ分子自己会合を直接的かつ正確にブロックする特定の配向された結合を可能にする。
【0360】
2.Aib立体配座制限:β−アミノイソブチル酸(Aib)、即ち例外的に幾何学的な制約を有するアミノ酸の結合は、極めて強いβ−シート破壊効果を誘導し、アミロイド原繊維の増殖を停止させる鍵となる手段である。このβ−破壊策略は、分子のサイズ及び複雑性に関して従来技術(プロリン導入)と比較すると明らかな利点を示す。
【0361】
3.安定なD−異性体立体配座:阻害剤はD−アミノ酸および非キラルのAib部分から作られる。これは、開裂できないペプチド結合の形成を生じ、従っておそらく高い生理学的安定性を生じる。
【0362】
4.ペプチド結合スタッキング:その小さなサイズにかかわらず、典型的なペプチド結合(異性体的に安定なものであるが)は分子内に保持される。かかるペプチド結合の独自の平面の特性は、β−鎖相互作用と一致した正確な幾何学形態を有するそれらの部分的に平面の共鳴構造のため、増殖するアミロイド鎖上の分子の特定の幾何学的に制約されたスタッキングを可能にする。
【0363】
5.静電反発:電荷を有する末端の存在は、さらなる結合モノマーの静電反発を生じる。このような反発は、他のペプチド阻害剤において電荷を有するアスパラギン酸を導入することによって達成される[Soto他(2003),J.Biol.Chem 278:13905]。これは、タンパク質分解を減少するためにこれらのペプチドの末端をブロックする必要性があるからである。D−Trp−Aibの非天然の安定な異性体形態は、有意に小さな分子を生じる最小のフレームワーク内で電荷を有する末端の保持を可能にする。
【0364】
6.嵩高い疎水性部分:トリプトファンインドール基は、極めて小さい分子系において独自の嵩高さおよび疎水性の性質を提供する。トリプトファン部分は最も高い膜分配係数を持つことが十分に確立されている。この特性は経口バイオアベイラビリティおよび血液脳関門(BBB)移行のための鍵となる利点を持つはずであると考えられる。
【0365】
7.酸化防止活性:インドール基は、フリーラジカルの除去によって酸化防止剤として作用することも知られている。実際、ADを処置するための薬剤候補の幾つかは、この特性に基いている(例えば、MindSetのインドール−3−プロピオン酸)。しかしながら、このような分子はAD関連酸化ストレスから神経細胞の保護に有効であるが、それらはD−Trp−Aib分子フレームの独自の原繊維化阻害特性を欠く。
【0366】
8.小さなサイズ:D−Trp−Aibは顕著に小さい活性分子である。前のパラグラフ(1〜7)に記載された独自の特性の全ては、300Da未満の分子内で維持される。この開裂できない分子の小さなサイズは、低い免疫原性を維持しながら、経口バイオアベイラビリティ、長い半減期、およびBBBの移行を示唆する。
【0367】
明確化のために別個の実施態様で記載された本発明の特定の特徴は、単一の実施態様で組み合わせて与えられてもよいことが認識される。逆に、簡単のために単一の実施態様で記載された本発明の様々な特徴は、別個に、またはいかなる好適な組み合わせで与えられてもよい。
【0368】
本発明をその特定態様に関して説明したが、多くの代替、変更および変形態様が当業者にとって明白であることは明らかである。したがって、特許請求の範囲の精神およびその広い範囲に包含されるそれらの代替、変更および変形態様は、全て本発明に包含されるものとする。本明細書で言及した刊行物、特許および特許出願は全て、各個々の刊行物、特許、または特許出願が具体的かつ個別的に参照によりここに組み入れられて示されるのと同程度に全体をこの明細書中に参照により組み入れられる。さらに、本願で行う参考文献の引用および記載は、当該参考文献を本発明に対する先行技術として利用できるとの自認ではないと解釈されるものとする。
【配列表フリーテキスト】
【0369】
配列番号1〜6,8〜49,61〜89、及び91〜150は合成ペプチドの配列である。
配列番号7はコンセンサス配列である。
配列番号50〜57、及び59〜60は一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列である。
配列番号58は細菌中での発現のための改変されたIAPP cDNAの配列である。
配列番号90はペプチドアレーコンセンサス配列である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列X−YまたはY−Xを含むペプチドを有効成分として含み、かつ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含むアミロイド関連疾患を処置または予防するための薬学的組成物であって、Xが芳香族アミノ酸であり、かつYがβ−シート破壊剤アミノ酸であり、ペプチドが2個のアミノ酸の長さを有する薬学的組成物。
【請求項2】
前記ペプチドの少なくとも1個のアミノ酸はD立体異性体である請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記ペプチドの少なくとも1個のアミノ酸はL立体異性体である請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記β−シート破壊剤アミノ酸は天然に存在するアミノ酸である請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記天然に存在するアミノ酸はプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、リジンおよびセリンからなる群から選択される請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記β−シート破壊剤アミノ酸は合成アミノ酸である請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記合成アミノ酸はCα−メチル化アミノ酸である請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記Cα−メチル化アミノ酸はα−アミノイソブチル酸である請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
ペプチドは直鎖状または環状ペプチドである請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
ペプチドは配列番号143〜148からなる群から選択される請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
ペプチドは配列番号145に述べられたものである請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記β−シート破壊剤アミノ酸はペプチドのC末端にある請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
配列番号145で規定される合成ペプチド。
【請求項14】
下記一般式を有する合成ペプチド:
式中、C*はD配置を有するキラルな炭素である。
R1およびR2は各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボキシ、C−チオカルブからなる群から選択され;
R3はヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロおよびアミンからなる群から選択され;そして
R4はアルキルである。
【請求項15】
R4はメチルである請求項14に記載のペプチド。
【請求項16】
R1およびR2は各々、水素であり、R3はヒドロキシである請求項14に記載のペプチド。
【請求項17】
下記一般式を有する合成ペプチドを有効成分として含み、かつ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む薬学的組成物:
式中、C*はD配置を有するキラルな炭素である。
R1およびR2は各々独立して、アルキルおよびカルボキシからなる群から選択され;
R3はアルコキシおよびアミンからなる群から選択され;そして
R4はハロによって置換されたアルキルである。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含み、かつ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む薬学的組成物。
【請求項19】
アミロイド関連疾患の治療のために同定された医薬の製造における、請求項1〜12,17および18のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
前記アミロイド関連疾患がII型糖尿病またはアルツハイマー病である請求項19に記載の使用。
【請求項1】
アミノ酸配列X−YまたはY−Xを含むペプチドを有効成分として含み、かつ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含むアミロイド関連疾患を処置または予防するための薬学的組成物であって、Xが芳香族アミノ酸であり、かつYがβ−シート破壊剤アミノ酸であり、ペプチドが2個のアミノ酸の長さを有する薬学的組成物。
【請求項2】
前記ペプチドの少なくとも1個のアミノ酸はD立体異性体である請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記ペプチドの少なくとも1個のアミノ酸はL立体異性体である請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記β−シート破壊剤アミノ酸は天然に存在するアミノ酸である請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記天然に存在するアミノ酸はプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、リジンおよびセリンからなる群から選択される請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記β−シート破壊剤アミノ酸は合成アミノ酸である請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記合成アミノ酸はCα−メチル化アミノ酸である請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記Cα−メチル化アミノ酸はα−アミノイソブチル酸である請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
ペプチドは直鎖状または環状ペプチドである請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
ペプチドは配列番号143〜148からなる群から選択される請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
ペプチドは配列番号145に述べられたものである請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記β−シート破壊剤アミノ酸はペプチドのC末端にある請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
配列番号145で規定される合成ペプチド。
【請求項14】
下記一般式を有する合成ペプチド:
式中、C*はD配置を有するキラルな炭素である。
R1およびR2は各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、カルボキシ、C−チオカルブからなる群から選択され;
R3はヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、ハロおよびアミンからなる群から選択され;そして
R4はアルキルである。
【請求項15】
R4はメチルである請求項14に記載のペプチド。
【請求項16】
R1およびR2は各々、水素であり、R3はヒドロキシである請求項14に記載のペプチド。
【請求項17】
下記一般式を有する合成ペプチドを有効成分として含み、かつ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む薬学的組成物:
式中、C*はD配置を有するキラルな炭素である。
R1およびR2は各々独立して、アルキルおよびカルボキシからなる群から選択され;
R3はアルコキシおよびアミンからなる群から選択され;そして
R4はハロによって置換されたアルキルである。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれかに記載のペプチドを有効成分として含み、かつ薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む薬学的組成物。
【請求項19】
アミロイド関連疾患の治療のために同定された医薬の製造における、請求項1〜12,17および18のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
前記アミロイド関連疾患がII型糖尿病またはアルツハイマー病である請求項19に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8a】
【図8b】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図20】
【図23】
【図38】
【図39】
【図40】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49a−c】
【図49d】
【図50】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図51】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8a】
【図8b】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図20】
【図23】
【図38】
【図39】
【図40】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49a−c】
【図49d】
【図50】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図17】
【図18】
【図19】
【図21】
【図22】
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【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
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【図36】
【図37】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図51】
【公開番号】特開2012−246299(P2012−246299A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165656(P2012−165656)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2006−518484(P2006−518484)の分割
【原出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(504292015)テル アヴィヴ ユニヴァーシティ フューチャー テクノロジー ディヴェロップメント エル.ピー. (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2006−518484(P2006−518484)の分割
【原出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(504292015)テル アヴィヴ ユニヴァーシティ フューチャー テクノロジー ディヴェロップメント エル.ピー. (7)
【Fターム(参考)】
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