説明

アミン副生物の含有量の少ないアルキレンオキシド付加炭化水素アミドを含む燃料組成物

【課題】主要量のガソリン又はディーゼル燃料の沸点範囲の沸点を有する炭化水素とアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物とを含む燃料組成物を提供する。
【解決手段】主要量のガソリン又はディーゼル燃料の沸点範囲の沸点を有する炭化水素、及び炭化水素アミドモル当りアルキレンオキシド約3乃至50モルを有するアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物であって下記工程により製造され、そして反応生成物中のアミン副生物の量がアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物の全質量に基づき7質量%以下であり、かつ反応生成物のアミド:エステル比が約0.1:1乃至1.1:1の範囲にある反応生成物を含む燃料組成物:(a)脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルを、アンモニアまたはモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させ、次に(b)得られた中間体をアルキレンオキシドと反応させて、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド、モノ及びジエステル生成物の混合物およびアミン副生物からなる反応生成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料組成物に関する。特には、本発明は、主要量のガソリン又はディーゼル燃料の沸点範囲の沸点を有する炭化水素とアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物とを含む燃料組成物を包含するものである。
【背景技術】
【0002】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、有効な清浄性を示す。炭化水素燃料、例えばガソリンまたはディーゼル燃料の沸点範囲にある燃料におけるそれらの有用性は、内燃機関の堆積物の生成を防止し、オクタン要求値の増加を抑制し、更にはオクタン要求値を低減することで知られている。さらに、ある種のこれら化合物の使用により燃焼が改善される。アルキレンオキシド付加炭化水素アミドを含む燃料を使用すると、車両の運転性が向上すると考えられている。
【0003】
特許文献1には、炭化水素、水および乳化剤を含む燃料であって、乳化剤が非イオン性乳化剤で、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドと炭素原子数9〜21のカルボン酸アミドとの付加物からなる燃料が開示されている。
【0004】
特許文献2には、モノアミド含有ポリエーテルアルコール化合物を添加剤として燃料組成物に使用すること、およびこれら化合物を使用して吸入弁堆積物の生成を減少させ、オクタン要求値の増加を抑制し、更にはオクタン要求値を低減することが開示されている。
【0005】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造は、当該分野の熟練者には熟知されている方法で実施することができる。例えば、脂肪酸エステルをモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させて、まず中間反応生成物としてヒドロキシル化脂肪酸アミドを生成させることにより始めてもよい。次に、中間体をエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドと更に反応させることにより、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドを得ることができる。しかし、反応の過程で低分子量の副生物、特にアミン副生物、例えばプロポキシル化ジエタノールアミンなどのアルコキシル化アミンが生成して、燃料添加剤として用いたときにアルキレンオキシド付加炭化水素アミドの所望の特性とは正反対の不利益となる。そのようなアミン副生物は、極性を持ち、塩基性で水溶性であり、その結果、燃料貯蔵タンクの水底や金属表面に蓄積する傾向がある。燃料タンクの水底は、多数の蓄積した化合物の隠れ場となることで悪名が高い。適当な条件下では、ある種の低分子量アミンは存在するある種の別の化合物、例えば酸性腐食防止剤と反応して、おそらくは、ろ過器や流量計等のような分配系統内で潜在的に堆積物を形成しうる塩やガムが生成することがある。内燃機関内では、アミン副生物と燃料組成物中の他の添加剤成分との間で相互作用が生じることがあり、それがエンジン摩耗あるいはスラッジやワニスの蓄積を増加させるために、エンジン性能を悪化させる可能性がある。アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造から生じたアミン副生物の除去は、これら物質が水性抽出液と乳濁液を形成する傾向があるために煩雑である。よって、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドを含む燃料添加剤パッケージからアミン副生物を最少にすることが強く望まれている。
【0006】
さらに、エンジンに対する性能を無害化するための重要な要因は、燃料添加剤とエンジン潤滑油との混和性にある。一般に、大半の燃料添加剤部は、燃焼過程をそのままで切り抜けてピストンリングを通ってクランクケースに移動する。よって、燃料添加剤がエンジン油と、沈降物や曇りの形成など油の機能性を害するような負の反応を起こさないことが
非常に重要である。
【0007】
特許文献3には、アミン副生物、特にプロポキシル化ジエタノールアミン(PO−DEA)などのアルコキシル化アミンを非常に低い残留レベルで有する、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造方法が開示されている。この方法は、アミン副生物のレベルを2質量%以下まで下げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4297107号明細書、ボーンケ、1981年10月27日発行、
【特許文献2】米国特許第6312481号明細書、リン、外、2001年11月6日発行
【特許文献3】米国特許出願第10/993344号明細書、2004年11月19日出願、共通の譲受人に譲渡して同時係属出願中
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、燃料組成物に関する。特には、本発明は、主要量のガソリン又はディーゼル燃料の沸点範囲の沸点を有する炭化水素とアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物とを含む燃料組成物を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、主要量のガソリン又はディーゼル燃料の沸点範囲の沸点を有する炭化水素、および炭化水素アミドモル当りアルキレンオキシド約3乃至50モル、好ましくは3乃至20モル、より好ましくは4乃至15モルを有するアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物であって下記の工程により製造され、そして反応生成物中のアミン副生物の量がアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物の全質量に基づき7質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、かつ反応生成物のアミド対エステル比が約0.1:1乃至1.1:1、好ましくは約0.3:1乃至0.9:1、より好ましくは約0.5:1乃至0.7:1の範囲にある反応生成物を含む燃料組成物を提供する:(a)まず、脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルを、アンモニアまたはモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させ、そして(b)次に、得られた中間体をアルキレンオキシドと反応させて、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド、モノ及びジエステル生成物の混合物およびアミン副生物からなる反応生成物とする。
【0011】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、一般には炭素原子数が約4〜30、好ましくは約6〜24のアルキル又はアルケニルアミドから誘導される。
【0012】
脂肪酸は、一般にはC4〜C30、好ましくはC6〜C24、より好ましくはC6〜C20の脂
肪酸である。最も好ましくは、脂肪酸はヤシ油脂肪酸である。
【0013】
脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキル基は、炭素原子数が約1〜6、好ましくは約1〜4、より好ましくは約1〜2である。最も好ましいのは、脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキルエステルはメチルエステルである。
【0014】
モノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンは、エタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミンおよびジプロパノールアミンからなる群より選ばれることが好ましい。より好ましくは、ジヒドロキシ炭化水素アミンはジエタノールアミンである。
【0015】
アルキル又はアルケニルアミドは、ヤシ油脂肪酸又はエステルとジエタノールアミンとの反応により得られるヤシ油脂肪酸アミドであることが好ましい。
【0016】
アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシドまたはそれらの混合物からなる群より選ばれることが好ましい。より好ましくは、アルキレンオキシドはエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはそれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0017】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、ヤシ油脂肪酸アミドとエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応から誘導されることが好ましい。より好ましくは、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドはヤシ油脂肪酸アミドとプロピレンオキシドとの反応から誘導される。
【0018】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、一般に燃料中に約10乃至10000質量ppmの範囲で存在し、好ましくは約10乃至5000質量ppm、より好ましくは約10乃至1000質量ppm、そして最も好ましくは約50乃至500質量ppmの範囲で存在する。
【0019】
別の観点では、本発明は、内燃機関において燃料組成物の抗乳化性および潤滑油混合性を改善する方法であって、内燃機関を本発明の燃料組成物を用いて作動させることからなる方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
数ある要因のうちでも、本発明は、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物の製造から生じたアミン副生物、例えばプロポキシル化ジエタノールアミンなどのアルコキシル化アミンおよびアミド対エステル比が、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物を含む燃料組成物の性能に多大な影響を及ぼすという発見に基づいている。アミン副生物が7質量%以下で、アミド対エステル比が約0.1:1乃至1.1:1の範囲にあるアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物を、ガソリン又はディーゼル燃料中に含む燃料組成物は、抗乳化性および沈降物形成の減少などの無害とする特性を示す。ガソリン又はディーゼル燃料に燃料添加剤として本発明のアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物を使用して車両の運転性を高めることによって、そのような特性がエンジン性能を改善する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述したように、本発明は燃料組成物に関する。特には、燃料組成物は、主要量のガソリン又はディーゼル燃料の沸点範囲の沸点を有する炭化水素、および下記の工程により製造されたアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物を含む:(a)まず、脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルを、アンモニアまたはモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させる、そして(b)次に、得られた中間体をアルキレンオキシドと反応させて、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド、モノ及びジエステル生成物の混合物およびアミン副生物からなる反応生成物とする。反応生成物は、アミン副生物をアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物の全質量に基づき7質量%以下で有し、また反応生成物のアミド対エステル比は約0.1:1乃至1.1:1の範囲にある。
【0022】
本発明について詳細に述べる前に、以下の用語は、特に断わらない限りは以下の意味を有する。
【0023】
[定義]
「アミノ」は、基:−NH2を意味する。
【0024】
「炭化水素基」は、主として炭素と水素とからなる有機基を意味し、脂肪族、脂環式、
芳香族またはそれらの組合せ、例えばアラルキルまたはアルカリールであってもよい。そのような炭化水素基は、脂肪族不飽和、すなわちオレフィン又はアセチレン不飽和を含んでいてもよいし、また少量のヘテロ原子、例えば酸素または窒素、または塩素などのハロゲンを含んでいてもよい。脂肪族カルボン酸と結合して用いられるなら、炭化水素基はオレフィン不飽和も含んでいてもよい。
【0025】
「アルキル」は、直鎖及び分枝鎖両方のアルキル基を意味する。
【0026】
「低級アルキル」は、炭素原子数1〜約6のアルキル基を意味し、第一級、第二級及び第三級アルキル基を包含する。代表的な低級アルキル基としては例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、およびn−ヘキシル等が挙げられる。
【0027】
「アルケニル」は、不飽和を持つアルキル基を意味する。
【0028】
「アルキレンオキシド」は、下記式を有する化合物を意味する:
【0029】
【化1】

【0030】
式中、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素または炭素原子数1〜約6の低級アルキルである。
【0031】
[アルキレンオキシド付加炭化水素アミド]
本発明は、下記の工程により製造されたアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物を含む燃料組成物に関する:(a)まず、脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルを、アンモニアまたはモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させる、そして(b)次に、得られた中間体をアルキレンオキシドと反応させて、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド、モノ及びジエステル生成物の混合物およびアミン副生物からなる反応生成物とする。反応生成物は、アミン副生物、特にプロポキシル化ジエタノールアミンなどのアルコキシル化アミンを7質量%以下で有し、また反応生成物のアミド対エステル比は約0.1:1乃至1.1:1の範囲にある。
【0032】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、一般に下記の構造を有する:
【0033】
【化2】

【0034】
ただし、Rは、炭素原子数約3〜29、好ましくは約5〜23、より好ましくは約5〜19の炭化水素基であり、
R’は、炭素原子数1〜約10、好ましくは約2〜5、より好ましくは約2〜3の二価アルキレン基であり、
R”は、炭素原子数約2〜5、好ましくは約2〜3の二価アルキレン基であり、
cおよびdは独立に、0または1、好ましくは両方とも1であり、そして
eおよびfは独立に、約0〜20の整数であるが、eとfの総和は約3〜40の範囲にある。
【0035】
炭化水素基Rは、アルキルまたはアルケニルであることが好ましく、より好ましくはアルキルである。
【0036】
eおよびfは独立に約0〜15の整数であってかつeとfの総和は約3〜30の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、eおよびfは独立に約0〜10の整数であってかつeとfの総和は約3〜20の範囲にある。
【0037】
本発明に用いられる炭化水素アミドは、次にアルキレンオキシドが付加されるが、一般には、C4〜C30、好ましくはC6〜C24、より好ましくはC6〜C20の脂肪酸または脂肪
酸低級アルキルエステルとアンモニアまたはモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンとの反応生成物であり、下記構造を有する:
【0038】
【化3】

【0039】
ただし、RおよびR’は前に定義した通りであり、そしてaは約0〜2の整数である。好ましくは、aは0である。
【0040】
脂肪酸または脂肪酸低級アルキルエステルの酸部は、RCO−(ただし、Rは炭素原子約5〜19個を含むアルキル又はアルケニル炭化水素基であることが好ましい)であることが好ましく、その代表としては、カプリル、カプロン、カプリン、ラウリン、ミリスチン、パルミチン、ステアリン、オレイン、リノール等がある。酸は飽和であることが好ましいが、不飽和の酸が存在していてもよい。
【0041】
酸部を保持する反応体は、天然油、例えばヤシ、ババスーヤシ、パーム核、パーム、オリーブ、ヒマシ、ピーナッツ、ナタネ、牛脂、豚脂、ラード油、鯨脂、ヒマワリ等であることが好ましい。一般に、用いることができる油は数種類の酸部を含み、その数や種類は油の原料によって異なる。
【0042】
脂肪酸低級アルキルエステルの低級アルキル基は、脂肪酸の低級アルキルエステルから誘導することができる。低級アルキルエステルは、炭素原子数が好ましくは約1〜6、より好ましくは約1〜4、最も好ましくは約1〜2の低級アルキル基を持ち、例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、およびヘキシルエステルがある。好ましくは、低級アルキルエステルはメチルエステルである。
【0043】
酸部は、完全にエステル化した化合物もしくは完全にはエステル化していない化合物に供することができ、例えばグリセリルトリステアレート、グリセリルジラウレート、グリセリルモノオレエート等がある。ジオールおよびポリアルキレングリコールを含むポリオールのエステルも用いることができ、例えばマンニトール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、ポリオキシエチレンポリオールのエステル等がある。
【0044】
アンモニア、または第一級又は第二級アミン窒素を持つモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンを反応させて、本発明に用いられる炭化水素アミドを生成させることができる。一般にモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンは、下記式で特徴づけることができる:

HN(R’OH)2-bb

ただし、R’は前に定義した通りであり、そしてbは0または1である。
【0045】
代表的なアミンとしては、これらに限定されるものではないが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ブタノールアミン等を挙げることができる。
【0046】
反応は、酸部とアミンとを当量で含む油を加熱して所望の生成物を生成させることにより遂行することができる。反応は一般に、反応体を約100℃乃至200℃、好ましくは約120℃乃至150℃で、1乃至約10時間、好ましくは約4時間維持することにより遂行することができる。溶媒中で、好ましくは生成物を使用することになる最終組成物と混和性がある溶媒中で反応を行うことができる。
【0047】
本発明の実施に用いることができる代表的な炭化水素アミド反応生成物としては、下記の酸部を持つエステルとアルカノールアミンとから生成するものが挙げられる:
【0048】
第 1 表
───────────────────────
エステルの酸部 アミン
───────────────────────
ラウリン酸 プロパノールアミン
ラウリン酸 ジエタノールアミン
ラウリン酸 エタノールアミン
ラウリン酸 ジプロパノールアミン
パルミチン酸 ジエタノールアミン
パルミチン酸 エタノールアミン
ステアリン酸 ジエタノールアミン
ステアリン酸 エタノールアミン
───────────────────────
【0049】
その他の使用できるアルカノールアミンとの混合反応生成物は、次のような油の酸成分から生成させることができる:ヤシ、ババスーヤシ、パーム核、パーム、オリーブ、ヒマシ、ピーナッツ、ナタネ、牛脂、豚脂、鯨脂、トウモロコシ、タル、綿実等。
【0050】
本発明の一観点では、(i)ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル(OH基の一部又は全部がエステル化されている)と、(ii)ジエタノールアミンとの反応により、所望の反応生成物を製造することができる。
【0051】
代表的な脂肪酸エステルとしては、炭素原子約6〜20個、好ましくは約8〜18個、より好ましくは約12個を含む脂肪酸のエステルが挙げられる。これらの酸は、化学式RCOOH(ただし、Rは、炭素原子約7〜17個、好ましくは約11〜13個、より好ましくは約11個を含むアルキル炭化水素基である)で特徴づけることができる。
【0052】
用いることができる脂肪酸エステルの代表的なものとしては、グリセリルトリラウレート、グリセリルトリステアレート、グリセリルトリパルミテート、グリセリルジラウレート、グリセリルモノステアレート、エチレングリコールジラウレート、ペンタエリトリトールテトラステアレート、ペンタエリトリトールトリラウレート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールペンタステアレート、プロピレングリコールモノステアレートがある。
【0053】
本発明の別の観点では、(i)脂肪酸低級アルキルエステルと(ii)ジエタノールアミンとの反応により、所望の反応生成物を製造することができる。
【0054】
代表的な脂肪酸低級アルキルエステルとしては、低級アルキル基が炭素原子約1〜6個、好ましくは約1〜4個、より好ましくは約1〜2個を含む、脂肪酸の低級アルキルエステルが挙げられる。低級アルキルエステルはメチルエステルであることが好ましい。脂肪酸は、化学式RCOOH(ただし、Rは、炭素原子約7〜17個、好ましくは約11〜13個、より好ましくは約11個を含むアルキル炭化水素基である)で特徴づけることができる。用いることができる脂肪酸の代表的なものとしては、ラウレート、ミリステート、パルミテートおよびステアレートがある。
【0055】
エステルとしては、酸部が次のような天然油で代表されるような混合物であるものを挙げることができる:ヤシ、ババスーヤシ、パーム核、パーム、オリーブ、ヒマシ、ピーナッツ、ナタネ、牛脂、豚脂(葉)、ラード油、鯨脂。
【0056】
好ましいエステルは、下記の酸部を含むヤシ油の低級アルキルエステルである:
【0057】
第 2 表
──────────────
脂肪酸部 質量%
──────────────
カプリル 8.0
カプリン 7.0
ラウリル 48.0
ミリスチン 17.5
パルミチン 8.2
ステアリン 2.0
オレイン 6.0
リノール 2.5
──────────────
【0058】
本発明に用いられるアルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、炭素原子数約4〜30、好ましくは約6〜24のアルキルアミド、もしくは炭素原子数約4〜30、好ましくは約6〜24で少なくとも一又は二箇所の不飽和があるアルケニルアミドから誘導されることが好ましい。本発明に適した所望のアルキルアミドの例としては、これらに限定されるものではないが、オクチルアミド(カプリルアミド)、ノニルアミド、デシルアミド(カプリンアミド)、ウンデシルアミドドデシルアミド(ラウリルアミド)、トリデシルアミド、テトラデシルアミド(ミリスチルアミド)、ペンタデシルアミド、ヘキサデシルアミ
ド(パルミチルアミド)、ヘプタデシルアミド、オクタデシルアミド(ステアリルアミド)、ノナデシルアミド、エイコシルアミド(アルキルアミド)、またはドコシルアミド(ベヘニルアミド)を挙げることができる。所望のアルケニルアミドの例としては、これらに限定されるものではないが、パルミトオレインアミド、オレイルアミド、イソオレイルアミド、エライジルアミド、リノリルアミド、リノレイルアミドを挙げることができる。アルキル又はアルケニルアミドは、ヤシ油脂肪酸アミドであることが好ましい。
【0059】
脂肪酸エステルとアルカノールアミンから炭化水素アミドを製造することについては、例えば米国特許第4729769号(シュリクト、外)に記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0060】
炭化水素アミドに付加されるアルキレンオキシドは、炭素原子数約2〜5のアルキレン基から誘導される。アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびペンチレンオキシドからなる群より選ばれることが好ましい。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドが特に好ましい。さらに、アルキレンオキシドの混合物も望ましく、例えばエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物を使用して、本発明のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドを生成させることができる。エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの混合物の場合に、それぞれのモル比は約1:5乃至5:1で使用することができる。
【0061】
炭化水素アミドに付加されるアルキレンオキシドの所望のモル数は、炭化水素アミド1モル当りアルキレンオキシド約3乃至50モルの範囲にある。より好ましくは、約3乃至20モルの範囲が特に望ましい。最も好ましくは、炭化水素アミドモル当りアルキレンオキシドのモル範囲として約4乃至15モルの範囲である。
【0062】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドは、ヤシ油脂肪酸アミドとエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを含むアルキレンオキシド付加反応から誘導することが好ましい。しかし、本発明に燃料添加剤として使用できるアルキレンオキシド付加炭化水素アミドはまた、様々な種類と種々のモル数のアルキレンオキシドが様々な種類の炭化水素アミドに付加した混合生成物であってもよい。
【0063】
本発明に用いられるアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物は一般に、アミン副生物、特にはプロポキシル化ジエタノールアミンなどのアルコキシル化アミンを7質量%以下で含有する。以下に、7質量%以下のアミン副生物を含有するアルキレンオキシド付加炭化水素アミドの一般的な製造方法について簡単に説明する。
【0064】
上記の反応過程では、前に背景技術で述べたように、燃料分配系統およびエンジン性能に悪影響を及ぼすような種々のアミン副生物が生成しうる。これらアミン副生物は、ジエタノールアミンまたはアルコキシル化ジエタノールアミンまたはそれらの混合物の形をとることができる。特に配慮すべきなのはプロポキシル化ジエタノールアミンである。アミン副生物は、水、酸性水または無機塩を含む水またはそれらの組合せで抽出することにより、効率良く除去することができる。無機塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、臭素、塩素、ヨウ素、酢酸塩、アンモニウムおよび硫酸塩を含んでいることが好ましく、より好ましくはナトリウム、カリウム、塩素、アンモニウムおよび硫酸塩であり、そして最も好ましくは塩化ナトリウムである。この抽出操作は、酸性アルミナ、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウム(商品名:フロリシル(Florisil)、マグネソル(Magnesol))など酸性の固体担体に通すろ過を使用するよりも効果がある。本発明に係る方法では、水、無機塩を含む水またはそれらの組合せでの抽出を利用することが好ましい。抽出の有効性は、洗浄回数、洗浄毎に使用する抽出剤の量、すなわち水または無機塩を含む水の量、温度、抽出時間等により影響される。一般に、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物は
、水/塩化ナトリウム溶液を用いて、約5℃乃至95℃、好ましくは約5℃乃至50℃で、より好ましくは約5℃乃至30℃の範囲の温度で、約10乃至120分の範囲の時間をかけて抽出される。この抽出工程後に得られた最終アルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物は、アミン副生物、特にプロポキシル化ジエタノールアミンなどのアルコキシル化アミンを、一般に7質量%以下で、好ましくは4質量%以下で、より好ましくは2質量%以下で含んでいる。
【0065】
さらに、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造から生じるその他の副生物としては、種々のモノ及びジエステルが挙げられ、それらのオキシド付加誘導体も含まれる。これら他の副生物は、アルキレンオキシド付加炭化水素アミドの製造過程で同時に起こるエステル交換反応およびアミド化反応によって生成する。
【0066】
本発明によれば、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物のアミド対エステル比は、例えばフーリエ変換赤外分光光度法により測定すると、約0.1:1乃至1.1:1の範囲にあり、好ましくは約0.3:1乃至0.9:1の範囲にあり、より好ましくは約0.5:1乃至0.7:1の範囲にある。
【0067】
炭化水素系燃料に添加されるアルキレンオキシド付加炭化水素アミドの量は、一般に約10乃至10000質量/質量ppm(活性成分比)の範囲にある。好ましくは、所望の範囲は燃料組成物の全質量に基づき、約10乃至5000質量ppmであり、より好ましくは約10乃至1000質量ppmの範囲であり、最も好ましくは約50乃至500質量ppmの範囲である。
【0068】
[その他の添加剤]
本発明の燃料組成物はまた、少なくとも一種の窒素含有清浄剤を含有していてもよい。本発明に使用するのに適した清浄剤としては例えば、脂肪族炭化水素アミン、炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミン、炭化水素置換コハク酸イミド、マンニッヒ反応生成物、ポリアルキルフェノキシアルカノールのニトロ及びアミノ芳香族エステル、ポリアルキルフェノキシ−アミノアルカン、ポリアルキルピロリジン、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0069】
本発明に用いることができる脂肪族炭化水素置換アミンは一般に、少なくとも1個の塩基性窒素原子を持ち、かつ炭化水素基の数平均分子量が約700乃至3000である直鎖又は分枝鎖炭化水素置換アミンである。好ましい脂肪族炭化水素置換アミンとしては、ポリイソブテニル及びポリイソブチルモノアミン及びポリアミンが挙げられる。
【0070】
本発明に用いられる脂肪族炭化水素アミンは、当該分野では公知の従来法により製造される。そのような脂肪族炭化水素アミンおよびその製造については、米国特許第3438757号、第3565804号、第3574576号、第3848056号、第3960515号、第4832702号及び第6203584号に記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0071】
本発明に使用するのに適した清浄剤の別の部類には、炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンがあり、ポリエーテルアミンとも呼ばれている。代表的な炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンとしては、炭化水素基が炭素原子1〜約30個を含み、オキシアルキレン単位の数が約5〜100の範囲にあり、そしてアミン部がアンモニア、第一級アルキル又は第二級ジアルキルモノアミンまたは末端アミノ窒素原子を持つポリアミンから誘導された、炭化水素ポリ(オキシアルキレン)モノアミン及びポリアミンが挙げられる。オキシアルキレン部は、オキシプロピレンまたはオキシブチレンまたはそれらの混合物であることが好ましい。そのような炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンに
ついては、例えば米国特許第6217624号(モーリス、外)及び第5112364号(ラス、外)に記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0072】
炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)モノアミンの好ましい種類は、ポリ(オキシアルキレン)部がオキシプロピレン単位またはオキシブチレン単位またはオキシプロピレン単位とオキシブチレン単位の混合物を含んでいる、アルキルフェニルポリ(オキシアルキレン)モノアミンである。アルキルフェニル部のアルキル基は、炭素原子数1〜約24の直鎖又は分枝鎖アルキルであることが好ましい。特に好ましいアルキルフェニル部は、テトラプロペニルフェニル、すなわちアルキル基がプロピレン四量体から誘導された炭素原子数約12の分枝鎖アルキルであるものである。
【0073】
本発明での有用性が認められる炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンの別の種類は、例えば米国特許第4288612号、第4236020号、第4160648号、第4191537号、第4270930号、第4233168号、第4197409号、第4243798号及び第4881945号に開示されている炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミノカルバメートであり、その各開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0074】
これらの炭化水素ポリ(オキシアルキレン)アミノカルバメートは、少なくとも1個の塩基性窒素原子を含み、そして平均分子量が約500乃至10000、好ましくは約500乃至5000、より好ましくは約1000乃至3000である。好ましいアミノカルバメートは、アミン部がエチレンジアミンまたはジエチレントリアミンから誘導されたアルキルフェニルポリ(オキシブチレン)アミノカルバメートである。
【0075】
本発明に使用するのに適した清浄剤のまた別の部類は、炭化水素置換コハク酸イミドである。代表的な炭化水素置換コハク酸イミドとしては、ポリアルキル又はポリアルケニル基の平均分子量が約500乃至5000、好ましくは約700乃至3000であるポリアルキル及びポリアルケニルコハク酸イミドが挙げられる。炭化水素置換コハク酸イミドは一般に、炭化水素置換コハク酸無水物を、アミン窒素原子に結合した少なくとも1個の反応性水素を持つアミン又はポリアミンと反応させることにより製造される。好ましい炭化水素置換コハク酸イミドとしては、ポリイソブテニル及びポリイソブタニル(またはイソブチル)コハク酸イミド、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0076】
本発明での有用性が認められる炭化水素置換コハク酸イミドについては、例えば米国特許第5393309号、第5588973号、第5620486号、第5916825号、第5954843号、第5993497号及び第6114542号および英国特許第1486144号に記載されていて、その各開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0077】
本発明に用いることができる清浄剤の更に別の部類は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、少なくとも1個の反応性水素を含むアミンおよびアルデヒドのマンニッヒ縮合により一般に得られる、マンニッヒ反応生成物である。高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、ポリアルキル基の平均分子量が約600乃至3000であるポリアルキルフェノール、例えばポリプロピルフェノールおよびポリブチルフェノール、特にポリイソブチルフェノールであることが好ましい。アミン反応体は、一般にはアルキレンポリアミンなどのポリアミンであり、特にはエチレン又はポリエチレンポリアミン、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラアミン等である。アルデヒド反応体は、一般には脂肪族アルデヒドであり、例えばパラホルムアルデヒドおよびホルマリンを含むホルムアルデヒド、およびアセトアルデヒドである。好ましいマンニッヒ反応生成物は、ポリイソブチル基の平均分子量が約1000であるポリイソブチル
フェノールをホルムアルデヒドとジエチレントリアミンで縮合させることにより得られる。
【0078】
本発明に使用するのに適したマンニッヒ反応生成物については、例えば米国特許第4231759号及び第5697988号に記載されていて、その各開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0079】
本発明に使用するのに適した清浄剤の更に別の部類は、ポリアルキルフェノキシアミノアルカンである。好ましいポリアルキルフェノキシアミノアルカンとしては、下記III式
を有するものが挙げられる:
【0080】
【化4】

【0081】
式中、R5は、平均分子量が約600乃至5000の範囲にあるポリアルキル基であり

6およびR7は独立に、水素または炭素原子数1〜約6の低級アルキルであり、そして
Aは、アミノ、アルキル基の炭素原子数が1〜約20のN−アルキルアミノ、各アルキル基の炭素原子数が1〜約20のN,N−ジアルキルアミノ、またはアミン窒素原子数が約2〜12で炭素原子数が約2〜40のポリアミン部である。
【0082】
上記III式のポリアルキルフェノキシアミノアルカンおよびその製造については、米国
特許第5669939号に詳しく記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0083】
ポリアルキルフェノキシアミノアルカンとポリ(オキシアルキレン)アミンの混合物も、本発明に使用するのに適している。これら混合物は米国特許第5851242号に詳しく記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0084】
本発明での有用性が認められる清浄剤の好ましい部類は、ポリアルキルフェノキシアルカノールのニトロ及びアミノ芳香族エステルである。好ましいポリアルキルフェノキシアルカノールのニトロ及びアミノ芳香族エステルとしては、下記IV式を有するものが挙げられる:
【0085】
【化5】

【0086】
式中、R8は、ニトロまたは−(CH2n−NR1314(ただし、R13およびR14は独
立に水素または炭素原子数1〜約6の低級アルキルであり、そしてnは0または1である)であり、
9は、水素、ヒドロキシ、ニトロまたは−NR1516(ただし、R15およびR16独立
に水素または炭素原子数1〜約6の低級アルキルである)であり、
10およびR11は独立に、水素または炭素原子数1〜約6の低級アルキルであり、そして
12は、平均分子量が約450乃至5000の範囲にあるポリアルキル基である。
【0087】
上記IV式に示したポリアルキルフェノキシアルカノールの芳香族エステルおよびその製造については、米国特許第5618320号に詳しく記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0088】
ポリアルキルフェノキシアルカノールのニトロ及びアミノ芳香族エステルと炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンの混合物も、本発明での使用が好ましく考えられる。これら混合物は米国特許第5749929号に詳しく記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0089】
本発明に清浄剤として用いることができる好ましい炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンとしては、下記V式を有するものが挙げられる:
【0090】
【化6】

【0091】
式中、R17は、炭素原子数1〜約30の炭化水素基であり、
18およびR19は各々独立に、水素または炭素原子数約1〜約6の低級アルキルであり、かつ各R18とR19は各−O−CHR18−CHR19−単位で独立に選ばれ、
Bは、アミノ、アルキル基の炭素原子数が1〜約20のN−アルキルアミノ、各アルキル基の炭素原子数が1〜約20のN,N−ジアルキルアミノ、またはアミン窒素原子数が約2〜12で炭素原子数が約2〜40のポリアミン部であり、そして
mは、約5〜100の整数である。
【0092】
上記V式の炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンおよびその製造については、米国特許第6217624号に詳しく記載されていて、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0093】
V式の炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンは、それだけで、あるいは他の清浄剤、特にはIII式のポリアルキルフェノキシアミノアルカンまたはIV式に示したポリア
ルキルフェノキシアルカノールのニトロ及びアミノ芳香族エステルと組み合わせて使用することが好ましい。より好ましくは本発明に用いられる清浄剤は、V式の炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンとIV式に示したポリアルキルフェノキシアルカノールのニ
トロ及びアミノ芳香族エステルとの組合せである。特に好ましい炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミン清浄剤は、ドデシルフェノキシポリ(オキシブチレン)アミンであり、特に好ましい清浄剤の組合せは、ドデシルフェノキシポリ(オキシブチレン)アミンと4−ポリイソブチルフェノキシエチルパラ−アミノベンゾエートの組合せである。
【0094】
本発明に使用するのに適した清浄剤の別の種類は、キャブレータ/インジェクタ用の窒素含有清浄剤である。キャブレータ/インジェクタ用清浄剤は一般に、数平均分子量が約100乃至600で少なくとも1つの極性部と少なくとも1つの非極性部を保有する比較的低分子量の化合物である。非極性部は一般に、炭素原子数約6〜40の線状又は分枝鎖アルキル又はアルケニル基である。極性部は一般に窒素を含有している。代表的な窒素含有極性部としては、アミン(例えば、米国特許第5139534号及び国際公開第WO90/10051号に記載されている)、エーテルアミン(例えば、米国特許第3849083号及び国際公開第WO90/10051号に記載されている)、アミド、ポリアミド及びアミドエステル(例えば、米国特許第2622018号、第4729769号及び第5139534号及び欧州特許第149486号に記載されている)、イミダゾリン(例えば、米国特許第4518782号に記載されている)、アミンオキシド(例えば、米国特許第4810263号及び第4836829号に記載されている)、ヒドロキシアミン(例えば、米国特許第4409000号に記載されている)、およびコハク酸イミド(例えば、米国特許第4292046号に記載されている)を挙げることができる。
【0095】
本発明に使用できる更に別の清浄剤は、米国特許第6033446号に記載されている下記I式を有するポリアルキルピロリジン、またはその燃料可溶性塩であり、その開示内容も参照内容として本明細書の記載とする。
【0096】
【化7】

【0097】
式中、R1は、平均分子量が約500乃至5000の範囲にあるポリアルキル基であり

2は、炭素原子数約2〜6の直鎖又は分枝鎖アルキレン基であり、
3は、HまたはCH3であり、そして
xは、0〜約4の整数である。
【0098】
1は、平均分子量が約500乃至3000の範囲にあるポリアルキル基であることが
好ましく、より好ましくは約700乃至2000、最も好ましくは約700乃至1500の範囲にある。
【0099】
さらに、R1は、ポリプロピレン、ポリブテン、もしくは1−オクテンまたは1−デセ
ンのポリアルファオレフィンオリゴマーから誘導されたポリアルキル基であることが好ましい。より好ましくは、R1はポリイソブテンから誘導されたポリアルキル基である。最
も好ましくは、R1は、メチルビニリデン異性体を少なくとも約20%含む高反応性ポリ
イソブテンから誘導されたポリアルキル基である。
【0100】
2は、炭素原子数約2〜4の直鎖又は分枝鎖アルキレン基であることが好ましい。最
も好ましくは、R2は炭素原子約2または3個を含む。
【0101】
3は、Hであることが好ましい。
【0102】
xは、0〜約2の整数であることが好ましい。最も好ましくは、xは0である。
【0103】
また、本発明の燃料添加剤組成物には、炭化水素系燃料に使用することが知られている一種、二種又はそれ以上の他の添加剤も組み合わせることができる。そのような添加剤としては、これらに限定されるものではないが、清浄剤または分散剤などの堆積物抑制添加剤、腐食防止剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、抗乳化剤、静電気防止剤、凝固防止剤、アンチノック剤、酸素化剤、流動性向上剤、流動点降下剤、セタン価向上剤、および補助溶解剤を挙げることができる。
【0104】
ディーゼル燃料は、一般に各種の添加剤を従来の量で含有している。添加剤としては、低温流動性向上剤、流動点降下剤、貯蔵安定剤、腐食防止剤、帯電防止剤、殺生剤、燃焼調整剤又は防煙剤、染料、および消臭剤を挙げることができる。そのような添加剤の例は文献と同様に当該分野でも知られている。よって、少数の添加剤についてのみ詳細に述べる。貯蔵安定剤については、有機過酸化物の蓄積を防ぐ各種の酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール、N,N−ジアルキルパラフェニレンジアミン、およびパラ−アミノフェノール等を挙げることができる。色安定剤は別の群を構成し、特定の例としては第四級アミン、第二級アミン、イミダゾリン、および第四級アルキル第一級アミン等を挙げることができる。別の貯蔵安定剤の群には、貯蔵期間中酸化の触媒として働く金属に対する各種の金属不活性化剤がある。また別の貯蔵安定剤には、粘着性で不溶性の残留物や他の固形物が燃料の適正な燃焼を妨害しないように小粒子として分散させておく各種の分散剤がある。そのような化合物には、油溶性のエトキシル化アルキルフェノール、ポリイソブチレンアルキル化コハク酸イミド、およびアルキル化コハク酸無水物のポリグリコールエステル等がある。
【0105】
酸素および/または水の影響を一般に阻止する腐食防止剤について考えると、腐食防止剤は一般に金属表面に一分子保護膜を形成する極性有機分子である。化学的に、そのような腐食防止剤は一般的に次の三種類に分かれる:(1)複合カルボン酸又はそれらの塩、(2)有機リン酸及びそれらの塩、および(3)アンモニウムマホガニースルホネート。
【0106】
ディーゼル燃料用の燃焼調整剤は、ディーゼル機関内で黒煙、すなわち未燃焼炭素粒子の形成を抑制することが分かっている。これら添加剤は、炭素粒子の燃焼に触媒作用してCO2にするだけではなく、燃焼サイクルの初期段階で遊離炭素の形成を抑制すると思わ
れる。一般に、異なった二種類の化学物質がディーゼル・スモークを抑制するのに有効である。第一の種類はアミン又はスルホネート錯体中のバリウム及びカルシウム塩からなり、一方、もう一種類はマンガン、鉄、コバルトおよびニッケルなどの遷移元素の金属アルキルからなる。
【0107】
燃料中の各種燃料添加剤の量は、相当な範囲に渡って変えることができる。一般に、ディーゼル燃料安定剤の好適な量は約3乃至約300ppmである。腐食防止剤の好適な量は約1乃至約100ppmであり、防煙剤の好適な量は約100乃至約5000ppmである。当然、それより多い又は少ない量も燃料の種類やディーゼル機関の種類等に応じて使用することができる。
【0108】
また、ディーゼル燃料は、各種の無硫黄及び硫黄含有セタン価向上剤を含んでいてもよい。無硫黄化合物は、文献並びに当該分野で知られている硝酸塩セタン価向上剤であることが望ましい。例えば、そのような硝酸塩セタン価向上剤の記述は、米国特許第2493
284号、第4398505号、第2226298号、第2877749号及び第3380815号;ナイガード、外著による記事「ディーゼル燃料の点火特性を改善する手段」、ジャーナル・オブ・インスティチュート・オブ・ペトロリウム(J. Inst. Petroleum)、第27号、p.348−368(1941年);ガードナー、外著による記事「ディーゼル機関の予備炎色反応」第1部、ザ・インスティチュート・オブ・ペトロリウム(The Institute of Petroleum)、第38巻、p.341(1952年5月);およびボーゲン、外著による記事「圧縮点火燃料用点火促進剤」、ペトロリウム・リファイナー(Petroleum Refiner)、第23巻、第7号、p.118−52(1944年)に示されていて、その内
容も各種の硝酸塩セタン価向上剤に関しては全て参照として本明細書の記載とする。セタン価向上剤は一般に、炭素原子数約1〜約18、望ましくは炭素原子数約2〜約13の硝酸アルキルである。特定の硝酸塩セタン価向上剤の例としては、硝酸エチル、硝酸ブチル、硝酸アミル、硝酸2−エチルヘキシル、およびポリグリコール二硝酸塩等を挙げることができる。硝酸アミルおよび硝酸2−エチルヘキシルが好ましい。硫黄含有セタン価向上剤は、例えば米国特許第4943303号に記載されている。硫黄含有セタン価向上剤と硝酸塩セタン価向上剤などの無硫黄セタン価向上剤との組合せもディーゼル燃料に用いることができる。
【0109】
燃料可溶性の不揮発性キャリヤ液又は油も、本発明に用いられるアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物と併用することができる。キャリヤ液は、オクタン要求値の増加に大幅に寄与することなく、不揮発性残渣(NVR)または燃料組成物の非溶剤液体分を実質的に増加させる、化学的に不活性な炭化水素可溶性液体媒体である。キャリヤ液は天然油であっても合成油であってもよく、例えば、鉱油、精製石油、水素化及び非水素化ポリアルファオレフィンを含む合成ポリアルカン及びアルケン類、合成ポリ(オキシアルキレン)誘導油、例えば米国特許第4191537号(ルイス)に記載のもの、並びにポリエステル類、例えば米国特許第3756793号(ロビンソン)及び第5004478号(ボーゲル、外)、および欧州特許出願公開第356726号(1990年3月7日発行)及び第382159号(1990年8月16日発行)に記載のものがある。
【実施例】
【0110】
本発明について以下の実施例により更に説明するが、実施例は特に有利な方法の態様を示すものである。実施例は、本発明を説明するために記されるのであって、本発明を限定するものではない。
【0111】
[実施例1]
下記の実施例は、アミン副生物を7質量%以下で含み、アミド:エステル比が約0.1:1乃至1.1:1の範囲にある本発明のアルキレンオキシド付加炭化水素アミドの代表的な製造方法を説明するものである。
【0112】
1a)ココアミド−DEAの製造
機械的撹拌器と温度計を備えたフラスコに、メチルココエート、すなわちヤシ油のメチルエステル2000グラム(g)を、グリセロール0.05質量%以下と一緒に入れた。次いで、ジエタノールアミン(DEA)926gを加えた。混合物を約150℃で約4時間加熱した。反応時間の終りに混合物を約95℃まで冷却し、そして約450mmHgの減圧下でストリップしてメタノールを除去した。生成物のDEA含量は、2.0質量%以下であった。
【0113】
1b)プロポキシル化ココアミド−DEAの製造
プロポキシル化ココアミド−DEAの代表的な製造では、撹拌器と温油冷却ジャケットを備えたオートクレーブに、実施例1aのココアミド−DEA2000gを充填する。次いで、水酸化カリウム37gを加える。オートクレーブを約120℃に加熱し、30mm
Hg以下の減圧にして生成した水を除去する。オートクレーブを窒素で大気圧に戻した後、プロピレンオキシド1548gを約4時間かけて加える。プロピレンオキシドの充填が終わったのち約6時間で反応が完了する。オートクレーブを約95℃まで冷却し、そしてフロリシル、水およびろ過助剤で処理することにより触媒を取り除く。混合物をブフナーロートでろ過する。ガスクロマトグラフィーで測定すると、生成物は一般に、プロポキシル化−DEA(PO−DEA)を約2乃至25質量%含んでいる。
【0114】
[実施例2]
機械的撹拌器と温度計を備えたフラスコに、実施例1に記載した操作と同様にして製造したPO−DEA含量が約23.2質量%のプロポキシル化ココアミド−DEA200g、およびトルエン110gを入れた。混合物に、約80℃の水200gおよび飽和塩化ナトリウム溶液26.8gを加えた。約80℃で30分間混合した後、混合を止めた。相を30分で分離させた。底部の水性相を取り除いた。有機相を水と飽和塩化ナトリウムでもう1回洗浄し、相分離させた。二回目の水性相を取り除いて、一回目の水性相と一緒にした。有機相を約95−100℃、<30mmHgの減圧下で30分間、あるいは有機相中のトルエンと水が全部除去されるまで、回転式で蒸発させた。ストリップした生成物を計量し、分析した。水性相に移った水溶性部分も、液/液抽出器具を用いて酢酸エチルで抽出した。ガスクロマトグラフィーで測定したところ、PO−DEA含量は約23.2質量%から約1.6質量%に効率良く減少した。フーリエ変換赤外分光光度法(FT−IR)に基づき、アミド:エステル比は約0.62:1と測定された。
【0115】
[実施例3]
機械的撹拌器と温度計を備えたフラスコに、実施例1に記載した操作と同様にして製造したPO−DEA含量が約23.2質量%のプロポキシル化ココアミド−DEA200g、水200g、および飽和塩化ナトリウム溶液26.8gを入れた。20−30℃で30分間混合した後、混合を止めた。相を30分で分離させた。底部の水性相を取り除いた。頂部の有機相を水と飽和塩化ナトリウムでもう1回洗浄し、相分離させた。有機相を約95−100℃、<30mmHgの減圧下で30分間、回転式で蒸発させた。ストリップした生成物を計量し、ガスクロマトグラフィーで分析した。PO−DEA含量は、約23.2質量%から約1.4質量%に効率良く減少した。FT−IR分析では、アミド:エステル比は約0.62:1であった。
【0116】
[実施例4]
NaClを使用しなかったこと以外は、実施例2に記載したようにして実施例4の操作を行った。PO−DEA2.8質量%を含むプロポキシル化ココアミド−DEAを水で洗浄した。しかし、水洗を溶媒は用いたがNaClは用いないで行った。PO−DEA含量は、2.8質量%から1.0質量%に効率良く減少した。FT−IR分析では、アミド:エステル比は約1.1:1であった。
【0117】
[実施例5]
実施例2に記載したようにして実施例5の操作を行ったが、溶媒もNaClも使用しなかった。PO−DEA含量は、2.8質量%から0.9質量%に効率良く減少した。FT−IR分析では、アミド:エステル比は約1.1:1であった。
【0118】
[実施例6] 抗乳化性試験
界面活性剤を燃料にブレンドするときはいつでも、充分な水分離能力(抗乳化性)を確保するように注意しなければならない。こうする理由は主に、乳濁液形成の徴候である曇りや白濁の出現を防ぐことにある。これら乳濁液はフィルタを詰まらせることがある。さらに、乳濁液は望まない成分を分配系統から車両タンクに汲み上げて運ぶことがある。このために、調合済燃料が一定の抗乳化性要求条件に合格することを保証するために試験が
行なわれる。追加の添加剤を配合して抗乳化性を改善してもよいが、余分な費用がかかる。
【0119】
PO−DEAを1.9質量%以下で有するプロピレンオキシド付加ココアミド−DEA(バッチ2)の抗乳化性を、改良ASTM D1094法を使用してPO−DEA19.
3質量%を有する別のバッチ(バッチ1)と比較した。この方法は、ガソリン中の水溶性成分の存在、およびこれら成分の体積変化及び燃料−水界面への影響を測定するものである。この技術を使用することにより、アミンのような水溶性成分の存在が明らかになる。界面に影響を及ぼす不純物は、フィルタ分離器の機能を早急に解除して遊離した水や粒子を通過させがちである。
【0120】
試料を、清浄なガラス製シリンダ内で水性緩衝液と一緒に周囲温度で簡単に振とうした後、混合物を静置して炭化水素相と水性相に分離させる。5分間静置した後、水性相の体積の変化を測定する。炭化水素/水界面の外観についても泡や膜の有無を調べた。抗乳化性(又は水分離性)試験の基準では、緩衝水のみpH7に指定している。しかし、抗乳化性試験を拡大して、一般に製造または分配系統で見られる水性状の範囲、すなわちpH4、pH7、pH10に似せた追加の水組成物やシミュレートした海水も含ませた。市販のポリエーテルアミン系堆積物抑制添加剤およびメチルt−ブチルエーテル15%をブレンドした市販の基材ガソリンを用いて、これらの試験を実施した。試験不合格となる特別に調製した水混合物のどれかで不合格があるか否かに注意することが重要である。
【0121】
抗乳化性または燃料が水を完全に分離する能力は、美的展望と性能上の展望両面から重要な特性である。燃料製造者は皆、基材燃料が明度や透明度、曇り度に関する規定要求条件(例えば、ASTM D4814、アネックスA1、米国市場で販売される基材ガソリ
ンの水溶解度仕様)に従うことを要求している。さらに、一部の燃料販売業者はその調合済燃料(基材燃料に添加剤又は添加剤類を加えたもの)に、燃料相に関してASTM D
1094試験で評定1を指定している。評定1は、燃料が澄んで透明であることに相当し、一部の燃料販売業者が要求する最も厳しい基準である。
【0122】
しかしながら、燃料の外観よりも重要であるのは、燃料系統の腐食および堆積物形成の誘因を防ぐために必然的に燃料に水を含ませないことである。ASTM D1094試験
の二番目の数値が非常に重要であるのはこのためである。この数値は燃料/水界面の状態に関係している。ある一定時間、タンクの底部にあってよどんだ水層は、燃料自体からの極性分子が豊富になる。事実、これが、燃料自体と安定な乳濁液を形成する能力を持つよどんだ水層をもたらす。これにより、水も、またあるとすれば苛性アルカリ及び無機塩などの水溶性不純物も両方とも、燃料分配系統を通って運ばれて腐食および堆積物形成を招くことになる。曇ったレース模様の断片がある界面層を有する燃料は、燃料と水が相互に入り混じった証拠である。清浄で透明な界面は、極性の燃料分子が水性層に移り変わることを許さない。また、清浄で透明な界面は水性層をきれいに除去するか、あるいは排出させることができる。このために、製造者は燃料/水界面についてASTM D1094試
験で評定1b又は2を指定している。
【0123】
下記第3表に、ASTM D1094試験の結果を表す。
【0124】
第 3 表
─────────────────────────────────────
バッチ PO−DEA pH4 pH7 pH10 海水
(質量%) F I S F I S F I S F I S
─────────────────────────────────────
無 − 1 1b 1 1 1 1 1 1 1 1 1b 1
─────────────────────────────────────
1 19.3 4 1 2 1 1 1 1 3 1 1 1b 1
─────────────────────────────────────
2 1.9 1 1 1 1 1 1 1 1
─────────────────────────────────────
略語:F=燃料相 I=界面 S=分離
評定等級の説明:燃料相:1=澄んで透明 2=若干の曇り
3=明白な曇り 4=ひどい曇り 5=不透明
界面:1=清浄で透明
1b=少量の小泡または界面領域の50%を覆う「レース模様」
2=領域の>50%、<100%に「レース模様」又は泡の断片
3=ゆるいレース模様−領域の100%に渡って少量の浮きかす、<1ml
4=密なレース模様−大量の浮きかす<3ml
5=密なレース模様−大量の浮きかす>3ml
分離:1=燃料及び/又は水層内に乳濁液及び/又は沈殿物が全く無い
1+=燃料の若干の曇り
2=燃料又は水層内に、またはガラス製シリンダに密着した小さな気泡
又は水/燃料液滴
3=燃料及び/又は水層内に乳濁液及び/又は沈殿物
【0125】
[実施例7] エンジン潤滑油混合性試験
性能の別の重要な側面は、エンジン油中で沈降物やスラッジを形成する傾向にある。燃料添加剤を使用するときに、燃料の一部がクランクケース油に至る途中で作用するのは普通のことである。これらの添加剤はしばしばエンジン油と非混和性で、沈降物およびスラッジを形成する。
【0126】
加速したエンジンの潤滑油混合性の研究は、スラッジとワニスの形成可能性を識別するように設計されているが、PO−DEAを4質量%以下で有するプロピレンオキシド付加ココアミド−DEAの試料を用いて実施した。試験には、プロピレンオキシド付加ココアミド−DEA添加剤2.5質量%を、二種類の異なる市販のプレミアム10W−30エンジン潤滑油[ペンゾイル10W−30(油A)およびシェブロン10W−30(油B)]に混合することが含まれた。混合物を150−160°Fで7日間加熱し、そして室温まで冷却した。この試験準備後に、混合物について1週間に1回液相および沈降物形成の変化を観察した。下記の第4表は、この試験の結果を示している。数値評定が低いほど結果が良いことを示す。
【0127】
第 4 表
────────────────────────────────
バッチ PO−DEA アミド/エステル 油 沈降物
(質量%) 比 評定
────────────────────────────────
A 1.9 1.2 油A 2
B 0.2 1.8 油A 2
C 0.8 1.5 油A 2
A 1.9 1.2 油B 2
B 0.2 1.8 油B 2
C 0.8 1.5 油B 2
────────────────────────────────
D 2.1 0.64 油A 1
D 2.1 0.64 油B 1
────────────────────────────────
沈降物評定:0=沈降物無し 1=極若干の沈降物 2=若干の沈降物
3=大量の沈降物 4=3よりも明らかに多い沈降物
油A=ペンゾイル10W30、SJ/SL APIサービス分類
油B=シェブロン10W30、SJ/SL APIサービス分類
【0128】
これらの結果は、PO−DEA2.1質量%と共にアミド対エステル比が0.64であるプロピレンオキシド付加ココアミド−DEAが、高いアミド対エステル比を有する組成物に比べて、沈降物及びスラッジ形成が少ないことを明らかにしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要量のガソリン又はディーゼル燃料の沸点範囲の沸点を有する炭化水素、および炭化水素アミドのモル当りアルキレンオキシド約3乃至50モルを有するアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物であって、下記の工程により製造され、そして反応生成物中のアミン副生物の量がアルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物の全質量に基づき7質量%以下であり、かつ反応生成物のアミド:エステル比が約0.1:1乃至1.1:1の範囲にある反応生成物を含む燃料組成物:(a)まず、脂肪酸または脂肪酸の低級アルキルエステルを、アンモニアまたはモノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンと反応させ、そして(b)次に、得られた中間体をアルキレンオキシドと反応させて、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド、モノ及びジエステル生成物の混合物およびアミン副生物からなる反応生成物とする。
【請求項2】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、炭化水素アミドモル当りアルキレンオキシド約3乃至20モルを有する請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項3】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、炭化水素アミドモル当りアルキレンオキシド約4乃至15モルを有する請求項2に記載の燃料組成物。
【請求項4】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、炭素原子数約4〜30のアルキル又はアルケニルアミドから誘導されたものである請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項5】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、炭素原子数約6〜24のアルキル又はアルケニルアミドから誘導されたものである請求項4に記載の燃料組成物。
【請求項6】
アルキル又はアルケニルアミドがヤシ油脂肪酸アミドである請求項5に記載の燃料組成物。
【請求項7】
ヤシ油脂肪酸アミドが、ヤシ油脂肪酸又はエステルとジエタノールアミンとの反応により得られたものである請求項6に記載の燃料組成物。
【請求項8】
脂肪酸がC4〜C30の脂肪酸である請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項9】
脂肪酸がC6〜C24の脂肪酸である請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項10】
脂肪酸がC6〜C20の脂肪酸である請求項9に記載の燃料組成物。
【請求項11】
脂肪酸がヤシ油脂肪酸である請求項10に記載の燃料組成物。
【請求項12】
脂肪酸の低級アルキルエステルの低級アルキル基が炭素原子数約1〜6である請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項13】
脂肪酸の低級アルキルエステルの低級アルキル基が炭素原子数約1〜4である請求項12に記載の燃料組成物。
【請求項14】
脂肪酸の低級アルキルエステルの低級アルキル基が炭素原子数約1〜2である請求項13に記載の燃料組成物。
【請求項15】
低級アルキルエステルがメチルエステルである請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項16】
モノ又はジヒドロキシ炭化水素アミンが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミンおよびジプロパノールアミンからなる群より選ばれる請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項17】
炭化水素アミンがジヒドロキシ炭化水素アミンである請求項16に記載の燃料組成物。
【請求項18】
ジヒドロキシ炭化水素アミンがジエタノールアミンである請求項17に記載の燃料組成物。
【請求項19】
アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシドまたはそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項20】
アルキレンオキシドが、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはそれらの混合物からなる群より選ばれる請求項19に記載の燃料組成物。
【請求項21】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、ヤシ油脂肪酸アミドとエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応から誘導されたものである請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項22】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、ヤシ油脂肪酸アミドとプロピレンオキシドとの反応から誘導されたものである請求項21に記載の燃料組成物。
【請求項23】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、燃料中に約10乃至10000質量ppmの範囲で存在する請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項24】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、燃料中に約10乃至5000質量ppmの範囲で存在する請求項23に記載の燃料組成物。
【請求項25】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、燃料中に約10乃至1000質量ppmの範囲で存在する請求項24に記載の燃料組成物。
【請求項26】
アルキレンオキシド付加炭化水素アミドが、燃料中に約50乃至500質量ppmの範囲で存在する請求項25に記載の燃料組成物。
【請求項27】
アミン副生物が、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物の全質量に基づき4質量%以下である請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項28】
アミン副生物が、アルキレンオキシド付加炭化水素アミド反応生成物の全質量に基づき2質量%以下である請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項29】
アミン副生物が、ジエタノールアミン、アルコキシル化ジエタノールアミンまたはそれらの混合物である請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項30】
アミン副生物がアルコキシル化ジエタノールアミンである請求項29に記載の燃料組成物。
【請求項31】
アルコキシル化ジエタノールアミンがプロポキシル化ジエタノールアミンである請求項30に記載の燃料組成物。
【請求項32】
アミド対エステル比が約0.3:1乃至0.9:1の範囲にある請求項1に記載の燃料組成物。
【請求項33】
アミド対エステル比が約0.5:1乃至0.7:1の範囲にある請求項32に記載の燃料組成物。
【請求項34】
内燃機関において燃料組成物の抗乳化性および潤滑油混和性を改善する方法であって、内燃機関を請求項1に記載の燃料組成物を用いて作動させることからなる方法。

【公開番号】特開2012−255175(P2012−255175A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219728(P2012−219728)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2006−133925(P2006−133925)の分割
【原出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)