説明

アミン誘導体及びその用途

【課題】従来材料以上に高い効率と耐久性を有するカルバゾール系正孔輸送材料を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるアミン誘導体を用いる。


(式中、R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖,分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖,分岐若しくは環状のアルコキシ基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を表す。尚、R1とR2は互いに結合して環を形成してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバゾール基が置換した新規なアミン誘導体及びその用途、特に有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略す)に関するものである。新規アミン誘導体は、感光材料、有機光導電材料として使用でき、更に具体的には、平面光源や表示に使用される有機EL素子若しくは電子写真感光体等の正孔輸送材料、正孔注入材料及び発光材料として利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子用正孔輸送材料として、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N,N’,N’−テトラ(1,1’−ビフェニル−4−イル)ベンジジン(TBDB)等のジアミン構造を有するトリアリールアミン誘導体が報告され、特に、TBPBは、α−NPDと比較して、ガラス転移温度及び正孔移動度が高いことから有機EL素子の低駆動電圧と素子寿命の向上に寄与してきた。しかし、近年では、更に有機EL素子の高効率化と長寿命化が必要となってきた。
【0003】
高効率化と高耐久性を達成する目的で、正孔輸送材料として、カルバゾール基のモノ置換体(例えば、特許文献1〜4参照)、カルバゾール基のジ置換体(例えば、特許文献5〜6参照)が報告されている。また、フルオレニル基が置換したカルバゾール基のモノ置換体も報告されている(例えば、特許文献7参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−148660公報
【特許文献2】特開2008−120769公報
【特許文献3】特開2007−126439公報
【特許文献4】国際公開2008/062636号パンフレット
【特許文献5】特開平08−003547号公報
【特許文献6】特開2004−217557公報
【特許文献7】特開2007−318101公報 一般に、カルバゾール類はガラス転移温度が比較的高く、耐熱性を有しているものの、高い平面構造を有するため、真空蒸着法等やスピンコーティング法等で薄膜を形成した際に、膜の安定性が低く、容易に結晶化してしまい、素子の寿命が極端に短いという問題点を有しており、特にカルバゾール基のジ置換体は、素子寿命が短いという欠点を有していた。一方、モノ置換体については、特許文献4等に記載されているように発光効率の向上が見られるものの、未だ耐久性を含めた有機EL素子としての性能は十分満足できるものではない。
【0005】
特許文献7には、以下に示す化合物60のような化合物が例示されているが、正孔輸送材料としての具体的な例示はなく、また、明細書中には、本発明のベンゾフルオレニル基を有するカルバゾール化合物を示す記載はない。
【0006】
【化1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来材料以上に高い効率と耐久性を有するカルバゾール系正孔輸送材料を提供することにある。更に詳しくは、有機EL素子等の正孔注入材料、正孔輸送材料及び発光材料に適したカルバゾール基が置換した新規アミン誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、一般式(1)で表される特定のアミン誘導体が、効率及び耐久性の面で従来報告されているカルバゾール誘導体より非常に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、一般式(1)で表されるカルバゾール基が置換したアミン誘導体及びその用途に関するものである。
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖,分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖,分岐若しくは環状のアルコキシ基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Arは、各々独立して炭素数6〜40の置換若しくは無置換のアリール基、又は炭素数5〜40の置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表す。尚、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。)
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0011】
上記一般式(1)で表されるアミン誘導体中のArは、各々独立して炭素数6〜40の置換若しくは無置換のアリール基、又は炭素数5〜40の置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表す。
【0012】
炭素数6〜40の置換若しくは無置換のアリール基としては、具体的には、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アントリル基、9−アントリル基、2−フルオレニル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−sec−ブチルフェニル基、2−sec−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−イソペンチルフェニル基、2−ネオペンチルフェニル基、4−tert−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−(2’−エチルブチル)フェニル基、4−n−ヘプチルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−(2’−エチルヘキシル)フェニル基、4−tert−オクチルフェニル基、4−n−デシルフェニル基、4−n−ドデシルフェニル基、4−n−テトラデシルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−(4’−メチルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4’−tert−ブチルシクロヘキシル)フェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、4−エチル−1−ナフチル基、6−n−ブチル−2−ナフチル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4,6−ジ−tert−ブチル−2−メチルフェニル基、5−tert−ブチル−2−メチルフェニル基、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル基、9−メチル−2−フルオレニル基、9−エチル−2−フルオレニル基、9−n−ヘキシル−2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、9,9−ジエチル−2−フルオレニル基、9,9−ジ−n−プロピル−2−フルオレニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、3−n−プロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、4−イソブトキシフェニル基、2−sec−ブトキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、4−イソペンチルオキシフェニル基、2−イソペンチルオキシフェニル基、4−ネオペンチルオキシフェニル基、2−ネオペンチルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、2−(2’−エチルブチル)オキシフェニル基、4−n−オクチルオキシフェニル基、4−n−デシルオキシフェニル基、4−n−ドデシルオキシフェニル基、4−n−テトラデシルオキシフェニル基、4−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、4−n−ブトキシ−1−ナフチル基、5−エトキシ−1−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、6−エトキシ−2−ナフチル基、6−n−ブトキシ−2−ナフチル基、6−n−ヘキシルオキシ−2−ナフチル基、7−メトキシ−2−ナフチル基、7−n−ブトキシ−2−ナフチル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、2−メチル−5−メトキシフェニル基、3−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−5−メトキシフェニル基、3−エチル−5−メトキシフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−ジエトキシフェニル基、3,5−ジ−n−ブトキシフェニル基、2−メトキシ−4−エトキシフェニル基、2−メトキシ−6−エトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、2−フェニルフェニル基、4−(4’−メチルフェニル)フェニル基、4−(3’−メチルフェニル)フェニル基、4−(4’−メトキシフェニル)フェニル基、4−(4’−n−ブトキシフェニル)フェニル基、2−(2’−メトキシフェニル)フェニル基、4−(4’−クロロフェニル)フェニル基、3−メチル−4−フェニルフェニル基、3−メトキシ−4−フェニルフェニル基、9−フェニル−2−フルオレニル基、4−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−クロロ−1−ナフチル基、4−クロロ−2−ナフチル基、6−ブロモ−2−ナフチル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,5−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4−ジクロロ−1−ナフチル基、1,6−ジクロロ−2−ナフチル基、2−フルオロ−4−メチルフェニル基、2−フルオロ−5−メチルフェニル基、3−フルオロ−2−メチルフェニル基、3−フルオロ−4−メチルフェニル基、2−メチル−4−フルオロフェニル基、2−メチル−5−フルオロフェニル基、3−メチル−4−フルオロフェニル基、2−クロロ−4−メチルフェニル基、2−クロロ−5−メチルフェニル基、2−クロロ−6−メチルフェニル基、2−メチル−3−クロロフェニル基、2−メチル−4−クロロフェニル基、3−クロロ−4−メチルフェニル基、3−メチル−4−クロロフェニル基、2−クロロ−4,6−ジメチルフェニル基、2−メトキシ−4−フルオロフェニル基、2−フルオロ−4−メトキシフェニル基、2−フルオロ−4−エトキシフェニル基、2−フルオロ−6−メトキシフェニル基、3−フルオロ−4−エトキシフェニル基、3−クロロ−4−メトキシフェニル基、2−メトキシ−5−クロロフェニル基、3−メトキシ−6−クロロフェニル基、5−クロロ−2,4−ジメトキシフェニル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
また、炭素数5〜40の置換若しくは無置換のヘテロアリール基としては、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含有する芳香環基であり、例えば、4−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−フリル基、2−フリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基などの複素環基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
上記一般式(1)で表されるアミン誘導体中のR〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖,分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖,分岐若しくは環状のアルコキシ基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を表す。尚、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。
【0015】
炭素数1〜18の直鎖,分岐若しくは環状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基等を挙げることができる。
【0016】
炭素数1〜18の直鎖,分岐若しくは環状のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等を例示することができる。
【0017】
また、置換若しくは無置換のフェニル基としては、フェニル基又は上記したアルキル基又はアルコキシ基が置換したフェニル基を表す。
【0018】
以下に好ましい化合物を例示するが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
上記一般式(1)で表されるアミン誘導体は、例えば、以下に示すような公知の方法により合成することができる(Tetrahedron Letters,39,2367(1998)に記載のアミノ化,Chemical Review,Chem.Rev.,1995,95,p2457−2483に記載の鈴木−宮浦カップリング参照)。より詳細には、9−(クロロフェニル)カルバゾール誘導体を原料に、対応するボロン酸誘導体を合成した後、ブロモヨードベンゼンとの鈴木−宮浦カップリング反応により、9−(4−ビフェニリル)カルバゾール誘導体を合成する。引き続き二級アミンと反応させ、本発明の上記一般式(1)で表されるアミン誘導体を合成することができる。合成したアミン誘導体は、クロマトグラフィー、再結晶及び昇華精製等の精製操作を行うことにより、純度99.9%以上で得ることができる。
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、R〜R及びArは、前記と同一の置換基を表す。)
本発明のアミン誘導体は、有機EL素子の正孔注入材料、正孔輸送材料又は発光層のホスト材料としても利用可能であるが、特に正孔輸送材料として使用した際に、従来の材料以上に駆動電圧の改善と高い電力効率が期待できる。また、本発明のアミン誘導体は、カルバゾール基を部分構造に持ちながらもベンゾフルオレニル基の11位に結合した置換基により、材料自身の結晶化が抑制されることから、有機EL素子の耐久性向上も期待できる。
【0024】
従って、有機EL素子若しくは電子写真感光体等の正孔注入材料、正孔輸送材料又は発光材料としてのみでなく、光電変換素子、太陽電池、イメージセンサー等の有機光導電材料の分野にも応用できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明による上記一般式(1)で表されるアミン誘導体は、従来の材料以上に低電圧駆動と高い電力効率を示し、更に高いガラス転移温度を有するため、有機EL素子の耐久性向上、寿命の改善が期待できる。そのため、有機EL素子若しくは電子写真感光体等の正孔輸送材料又は発光材料等として利用できる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に解説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例で得られた化合物の同定は、FDMS測定により行った。FDMS測定は、日立製作所製 M−80Bを使用して実施した。
【0027】
また、HPLC純度は、以下の条件下で測定した。
・機器 :東ソー製 マルチステーションLC−8020
・カラム:Inertsil ODS−3V(4.6mmφ×250mm)
・検出器:UV検出器(波長=254nm)
・溶離液:メタノール/テトラハイドロフラン=9/1(v/v比)
有機EL素子の駆動電圧及び発光輝度測定は、TOPCON社製 輝度計LUMINANCE METER(BM−9)を用いて行った。
【0028】
合成例1(N−フェニル−9−アミノ−11,11−ジメチル−11H−ベンゾ[a]フルオレン)
窒素置換した1lの3つ口フラスコに、9−クロロ−11,11−ジメチル−11H−ベンゾ[a]フルオレン(国際公開2007/119800号パンフレットの方法に従って合成) 51.0g(0.183mol)、アニリン51.1g(0.549mol)、酢酸パラジウム0.411g(1.83mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド 21.1g(0.220mol)、o−キシレン 580mlを加えた。最後にトリ−tert−ブチルホスフィン 1.48g(7.32mmol)を加え、130℃に加熱した。20時間後、加熱を終了し、室温まで放冷した。この反応液を純水(500ml)、飽和NaCl溶液(200ml)で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(展開溶媒トルエン)、更にo−キシレンで再結晶を行うことにより、白色粉末32.9gを得た(収率65%,HPLC純度=99.4%)。FDMS測定により、目的のN−フェニル−9−アミノ−11,11−ジメチル−11H−ベンゾ[a]フルオレンであることを確認した。
【0029】
FDMS:335(M+)
合成例2(N−(4−ブロモ−1,1’−ビフェニル−4’−イル)カルバゾールの合成
200mlナス型フラスコに、トリメトキシボラン1.87g(18mmol)とTHF20mlを仕込み、ドライアイス−アセトン浴で−78℃に冷却した。その後、N−(1−クロロフェニル)カルバゾール 4.0g(13.6mmol)から調製したグリニヤール試薬(0.4mol/l−THF溶液)34mlを1時間で滴下した後、引き続き室温で12時間熟成した。10%塩酸水溶液25mlを滴下し、反応を終了させてから、反応液をジエチルエーテル20mlで3回抽出した。有機層を濃縮し、得られた残渣にトルエン50mlを添加することで対応するボロン酸を粉末として得た(3.0g[10.4mmol],収率58%)。
【0030】
得られたボロン酸、ブロモヨードベンゼン2.83g(10mmol)、20%炭酸ナトリウム水溶液16g、THF30ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム57mg(0.05mmol,0.5mol%)を加え、窒素雰囲気下、5時間加熱還流した。冷却後、有機層を分液し、引き続き溶媒を留去した。得られた残渣をトルエン/メタノールから再結晶することにより、対応するN−[(4−ブロモ−1,1’−ビフェニル)−4’−イル]カルバゾールを2.86g合成した(収率72%)。
【0031】
実施例1(化合物A3の合成)
窒素置換した200mlの3つ口フラスコに、合成例2で合成したN−[(4−ブロモ−1,1’−ビフェニル)−4’−イル]カルバゾール 2.8g(7.0mmol)、合成例1で合成したN−フェニル−9−アミノ−11,11−ジメチル−11H−ベンゾ[a]フルオレン 2.81g(8.4mmol)、酢酸パラジウム16mg(0.071mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド 0.81g(8.4mmol)、o−キシレン 60mlを加えた。最後にトリ−tert−ブチルホスフィン 68mg(0.34mmol)を加え、130℃に加熱した。14時間後、加熱を終了し、室温まで放冷した。この反応液を純水(60ml×2)、飽和NaCl溶液(30ml)で洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(展開溶媒トルエン/ヘキサン)、更にトルエンで2回再結晶することにより、白色粉末2.9gを得た(収率64%,HPLC純度=99.5%)。
【0032】
実施例2(素子作製)
厚さ130nmのITO透明電極を有するガラス基板をアセトン、イソプロピルアルコールで順次超音波洗浄し、次いで、イソプロピルアルコールで煮沸洗浄した後、乾燥した。更に、UV/オゾン処理したものを透明導電性支持基板として使用した。ITO透明電極上に、銅フタロシアニンを真空蒸着法により25nmの膜厚で成膜した。次に、化合物A3を真空蒸着法により45nmの膜厚で成膜し、正孔輸送層を形成した。次に、アルミニウムトリスキノリノール錯体を真空蒸着法により60nmの膜厚で成膜し、発光層及び電子輸送層を形成した。なお、上記有機化合物の蒸着条件は、真空度1.0×10−4Pa、成膜速度0.3nm/秒の同一条件で成膜した。次に、陰極としてLiFを0.5nm、Alを100nm蒸着し、金属電極を形成した。更に、窒素雰囲気下、保護用ガラス基板を重ね、UV硬化樹脂で封止した。このようにして得られた素子に、ITO電極を正極、LiF−Al電極を負極にして、20mA/cmの定電流密度条件下で駆動させた際の輝度、駆動電圧、電流効率及び電力効率を表1に示す。
【0033】
比較例1〜3
化合物A3の代わりに、以下に示した比較化合物1〜3(夫々、特許文献5に記載の化合物(7)、特許文献1に記載の化合物(A6,A39))を用い、実施例2に準じて素子を作製した。電流密度20mA/cm時の輝度、駆動電圧、電流効率及び電力効率に関する評価結果を表1に示す。
【0034】
【化6】

【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるアミン誘導体。
【化1】

(式中、R〜Rは、各々独立して水素原子、炭素数1〜18の直鎖,分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1〜18の直鎖,分岐若しくは環状のアルコキシ基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を表し、Arは、各々独立して炭素数6〜40の置換若しくは無置換のアリール基、又は炭素数5〜40の置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表す。尚、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載のアミン誘導体を発光層、正孔輸送層又は正孔注入層のいずれかに用いることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2010−64963(P2010−64963A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230549(P2008−230549)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】