説明

アムロジピン及びロサルタンを含む固形薬剤学的組成物及びその製造方法

本発明は、アムロジピン(amlodipine)またはその薬剤学的に許容される塩及びロサルタン(losartan)またはその薬剤学的に許容される塩を含む心血管疾患の予防または治療用の固形薬剤学的組成物に関するものであって、本発明の組成物は低いpH条件下でもアムロジピンとロサルタンの高い溶出率及び優れた貯蔵安定性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアムロジピン(amlodipine)またはその薬剤学的に許容される塩及びロサルタン(losartan)またはその薬剤学的に許容される塩を含む心血管疾患の予防または治療用固形薬剤学的組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧の治療において、脳卒中、心不全、心筋梗塞などの冠状動脈疾患及び心血管疾患のような合併症の危険を減らすために、血圧水準自体を単純に低下させることよりも血圧を一定基準の正常範囲内に維持することがより重要である。従って、高血圧治療剤は高血圧の長期間治療に効果的でなければならない。さらに、異なる薬理学的活性を有する二つ以上の薬物の組み合わせを用いる先進治療法は予防または治療効果を向上させることができ、単一薬物の長期服用により発生する副作用を減少させることができる。
【0003】
主な高血圧治療薬として、利尿剤、交感神経抑制剤及び血管拡張剤が挙げられる。血管拡張剤は最も広範囲で処方される高血圧治療薬として、薬理学的作用に応じてACE(アンジオテンシン変換酵素、angiotensin converting enzyme)阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断剤及びカルシウムチャンネル遮断剤を含む複数の群に分かれる。
【0004】
アムロジピンは、−2−[(2−アミノエトキシ)メチル]−4−(2−クロロフェニル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸3−エチル5−メチルの一般名である。アムロジピンベシル酸塩は、現在、ノルバスク(Norvasc)という商品名で販売されている。アムロジピンは長期的に作用するカルシウムチャンネル遮断剤であって、狭心症、高血圧及びうっ血性心臓麻痺のような心血管疾患の治療に有用である。
【0005】
ロサルタンは、2−ブチル−4−クロロ−1−{[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)−1,1’−ビフェニル−4−イル]メチル}−1H−イミダゾール−5−メタノールの一般名であり、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3等に記述されている。ロサルタンカリウムは、現在、コザール(Cozaar)という商品名で販売されている。ロサルタンはアンジオテンシンIIとその受容体との相互作用を遮断して、高血圧、心不全、虚血性末梢循環障害、心筋虚血(狭心症)、糖尿病性神経障害及び緑内障を治療し、かつ、心筋梗塞後心不全の進行を予防することに主に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,608,075号明細書
【特許文献2】米国特許第5,138,069号明細書
【特許文献3】米国特許第5,153,197号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、異なる薬理学的活性を有するアムロジピン及びロサルタンの複合製剤が心血管疾患の予防または治療に有用であることを見つけ、最適化された物理的、化学的物性を有するアムロジピン−ロサルタン複合組成物を開発した。
【0008】
従って、本発明の目的は低いpH条件下でもアムロジピン及びロサルタンの高い溶出率及び優れた貯蔵安定性を示す、アムロジピン及びロサルタンを含む固形薬剤学的組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、アムロジピンまたはその薬剤学的に許容される塩、及びロサルタンまたはその薬剤学的に許容される塩を含む、心血管疾患の予防または治療用固形薬剤学的組成物を提供する。本発明の組成物は、アムロジピン及びロサルタンを、好ましくは互いに分離した形態で含み、より好ましくは互いに分離した顆粒状で含む。また、ロサルタン含量の調節は、本発明の組成物においてアムロジピン及びロサルタンの最適な溶出率をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1及び比較例1で製造された錠剤、及びアモディピン(商品名)錠に対して測定された0.01NHCl(pH 2.0)中のアムロジピン溶出率を示すグラフである(試験例1)。
【図2】図2は、実施例1〜4で製造された錠剤に対して測定された0.01N HCl(pH 2.0)中のアムロジピン溶出率を示すグラフである(試験例2)。
【図3】図3は、実施例1、3及び7、並びに比較例1及び2で製造された錠剤に対して測定された人工胃液(pH1.2)及び0.01N HCl(pH 2.0)中のアムロジピン溶出率を示すグラフである(試験例3)。
【図4】図4は、実施例4〜6及び比較例2で製造された錠剤に対して測定された0.01N HCl(pH 2.0)中のアムロジピン溶出率を示すグラフである(試験例4)。
【図5】図5は、実施例1、3及び7、並びに比較例1及び2で製造された錠剤、及びコザール(商品名)錠に対して測定された人工胃液(pH1.2)及び0.01N HCl(pH 2.0)中のロサルタン溶出率を示すグラフである(試験例5)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
アムロジピン及びロサルタンを含む本発明の固形薬剤学的組成物は、低いpHでもアムロジピン及びロサルタンの高い溶出率を示すことによって、既存の単一製剤に比べて優れた心血管疾患の予防または治療効果を示し、二つの薬物の副作用を最小化する。
【0012】
本発明に用いられるアムロジピンは、薬剤学的に許容される多様な形態の塩であってもよい。アムロジピンの薬剤学的に許容される塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、ベシル酸塩及びカンシル酸塩が挙げられるが、これらに制限されるものではない。中でも好ましくは、アムロジピンベシル酸塩及びカンシル酸塩が用いられ、より好ましくは、アムロジピンカンシル酸塩が用いられる。また、本発明に用いられるアムロジピンは、アムロジピンラセミ体及びS-アムロジピンであってもよい。
【0013】
本発明に用いられるロサルタンは、薬剤学的に許容される多様な形態の塩であってもよい。本発明に用いられるロサルタンの好ましい薬剤学的に許容される塩はロサルタンカリウムである。
【0014】
本発明の組成物において、アムロジピンまたはその薬剤学的に許容される塩とロサルタンまたはその薬剤学的に許容される塩は、1:2.5〜1:20、好ましくは1:5〜1:10範囲の重量比に相応する量で用いられる。
【0015】
本発明の組成物は、狭心症、高血圧、動脈攣縮、心不整脈、心肥大、脳梗塞、うっ血性心不全及び心筋梗塞のような心血管疾患に対して優れた予防または治療効果を提供することができる。
【0016】
アムロジピン及びロサルタンの二つの薬物を単純混合して複合製剤を製造する場合、ロサルタンのゲル化(gelation)という不都合が起きる。ロサルタンは精製水に溶解されやすく、または比較的高いpH(例えば、pH6.8)で容易に溶出されるが、低いpH(例えば、pH 2.0またはpH 1.2)では、ゲル化によって溶出が非常に遅い。市販されているロサルタン製剤であるコザール(Cozaar(商品名))が用いられる場合、pH1.2〜2.0範囲において初期30分間で溶出されたロサルタンの溶出率は、30%に満たない。アムロジピンとロサルタンの複合製剤において、ロサルタンがゲル化することによっては、アムロジピンが製剤の内部に閉じこめられる可能性もある。
【0017】
さらに、アムロジピンとロサルタンを単純混合して製造された複合製剤は、主に、アムロジピン、ロサルタン及び賦形剤間の望ましくない化学反応に起因して非常に乏しい貯蔵安定性を持つ。
【0018】
ロサルタンゲル化及び安定性低下などの前述した問題点を解決するために、アムロジピンをロサルタンと物理的に分離させることによって、アムロジピンとロサルタンの複合製剤を製造することができる。
【0019】
アムロジピンをロサルタンと物理的に分離して複合製剤を製造する一実施態様であって、アムロジピンの分離された顆粒を錠剤に打錠し、この錠剤をロサルタン含有混合物と混合し、得られた混合物を二層錠剤に打錠することによって、二層錠剤を製造することができる。しかし、この方法は特殊な二層打錠機を要し、二重の質量偏差が頻繁に起き、打錠速度の減少に起因して生産性が低下するなど、多くの問題点を有する。従って、一般打錠機により打錠可能な薬剤学的組成物及びその製造方法に関する研究が必要となる。
【0020】
本発明は、また、アムロジピンまたはその薬剤学的に許容される塩をロサルタンまたはその薬剤学的に許容される塩と物理的に分離させた後、これらを別途に顆粒化することによって、二つの薬物間の接触が最小化されたアムロジピンとロサルタンの複合製剤を提供する。従って、好ましくは、本発明は互いに分離して顆粒化されたアムロジピンとロサルタンを含む固形薬剤学的組成物を提供する。
【0021】
本発明の一実施態様によると、(1)アムロジピンまたはその薬剤学的に許容される塩及びロサルタンまたはその薬剤学的に許容される塩をそれぞれ顆粒化してそれぞれの分離した顆粒を製造する段階及び(2)この顆粒を混合する段階を含む方法により、顆粒化されたアムロジピンとロサルタンが互いに分離されたアムロジピン−ロサルタン複合製剤を製造することができる。前記方法により製造された本発明の複合製剤は安定性が低下することがない。その理由はアムロジピン顆粒とロサルタン顆粒との混合が顆粒の減少された非表面積に起因し、かつ、用いられた賦形剤がそれぞれの薬物を取り囲むことに起因して二つの薬物間の接触面積を最小化するためである。この方法により製造された実施例1〜7の複合製剤はアムロジピンとロサルタンとを単純混合して得られた錠剤である比較例1の複合製剤に比べてアムロジピンの向上した溶出率を示し(図1参照)、アムロジピンの高い安定性を示す(表2参照)。
【0022】
本発明の組成物はアムロジピン顆粒及びロサルタン顆粒それぞれに薬剤学的に許容される担体または賦形剤を含むことができる。薬剤学的に許容される担体または賦形剤としては、例えば、微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、グリシン、デンプン、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、複合ケイ酸塩及びクロスポビドン)、及び顆粒化結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン及びアカシアガム)が挙げられる。また、本発明の組成物はステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセル及びタルクのような潤滑剤をさらに含むことができる。
【0023】
これにもかかわらず、互いに分離して顆粒化されたアムロジピンとロサルタンを含む固形薬剤学的組成物はロサルタンのゲル化に起因して低いpH条件下でロサルタンの溶出率を満足できないという問題点を依然として有している。このような問題点は、経口服用時の製剤が低いpH値を有する酸性胃液に最初に露出するため、製剤の生体利用率に良くない影響を大きく及ぶことが予想される。従って、正常成人の胃内のpHが1.0〜3.5範囲であり、ロサルタンのCmaxが食後に約10%減少することから見て、胃内の正常なpH範囲、すなわちpH1.0〜pH3.5にわたって高いロサルタン溶出率を示すことができる製剤に対する開発が必要となる。
【0024】
本発明者らはロサルタンの使用量に応じて特に低いpHでアムロジピン及びロサルタンの溶出率が大きく変わることを見出した。従って、本発明はまた、アムロジピン及びロサルタンの最適の溶出率を示す、特定量のロサルタンを有する固形薬剤学的組成物を提供する。
【0025】
アムロジピン及びロサルタンを含む本発明の組成物は正常成人の胃内のpH範囲にあたる1.0〜2.0範囲のpH値でアムロジピン及びロサルタンの高い溶出率を示し、本発明の組成物は、組成物の総重量に対してロサルタンを、好ましくは3〜25重量%、より好ましくは5重量%〜22.3重量%の量で含む。ロサルタンの含量が25重量%以下である場合、低いpHでアムロジピンとロサルタンの溶出率が全て増加する。具体的には、ロサルタンを25重量%以下の量で含む複合製剤内のアムロジピンは低いpH条件下でも非常によく溶出され、特にこのような製剤はアムロジピンの溶出判定基準であるpH1.0〜pH2.0で30分経過時、該溶出率の80%以上を満足できる(図2〜4参照)。また、ロサルタンを25重量%以下の量で含む複合製剤は、既存のロサルタン単一製剤であるコザール(商品名)錠に比べて低いpH条件下で非常に高いロサルタン溶出率を示す(図5参照)。従って、本発明の複合製剤はアムロジピン及びロサルタンの非常に高い生体利用率を示すことができることが予想される。一方、ロサルタンの含量が3重量%未満である場合、製剤の全体サイズが大きくなりすぎて患者の服薬コンプライアンスが低下する。
【0026】
本発明のまた別の実施態様によると、本発明は、ロサルタンを組成物の総重量に対して3重量%〜25重量%の量で含む、互いに分離して顆粒化されたアムロジピンとロサルタンを含む固形薬剤学的組成物を提供する。
【0027】
また、本発明は75μmのメッシュ(mesh)を通過する微粒の百分率が50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満の顆粒化されたロサルタンを含む固形薬剤学的組成物を提供する。
【0028】
これに関して本発明者らは、ロサルタンの総使用量以外にも、ロサルタン顆粒の粒径に応じて、特に低いpHでアムロジピン及びロサルタンの溶出率が大きく変わることを見出した。より具体的には、本発明者らはロサルタン顆粒中の微粒の分率を減らすほどアムロジピンとロサルタンの溶出率が改善することを見出した。
【0029】
従って、本発明のまた他の実施態様によると、本発明はロサルタン顆粒で75μmのメッシュを通過する微粒の百分率が50%未満であることを特徴とし、互いに分離して顆粒化されたアムロジピンとロサルタンを含む固形薬剤学的組成物を提供する。
【0030】
本発明の組成物は、抗酸化剤のような安定化剤をさらに含むことができるが、この抗酸化剤は、複合工程中、他の薬剤学的に許容される賦形剤とアムロジピンとの望ましくない反応に対して、かつ、光または水分によるアムロジピンの経時的変形に対して、アムロジピンの安定性を増加させる機能を果たす。本発明に用いられる抗酸化剤の代表的な例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ピロ亜硫酸ナトリウム及びこれらの混合物が挙げられる。本発明において、前記抗酸化剤のうち最も好ましくはブチル化ヒドロキシトルエンが用いられる。
【0031】
本発明のまた別の実施態様によると、本発明は、
a)ロサルタンまたはその薬剤学的に許容される塩及び薬剤学的に許容される賦形剤の混合物を顆粒化し乾燥して、ロサルタン顆粒を得る段階と、
b)アムロジピンまたはその薬剤学的に許容される塩及び薬剤学的に許容される賦形剤の混合物を顆粒化し、乾燥して、アムロジピン顆粒を得る段階と、
c)段階a)で得られたロサルタン顆粒を段階b)で得られたアムロジピン顆粒と混合する段階とを含む、
互いに分離して顆粒化されたアムロジピン及びロサルタンを含む固形薬剤学的組成物の製造方法を提供する。
【0032】
段階a)またはb)の顆粒化工程において、通常的な湿式顆粒化または乾式顆粒化の技術が用いられる。
【0033】
本発明の組成物は、経口、口腔及び舌下を含む経口投与の多様な経路を通じて錠剤、カプセルまたは多重粒子の形態で投与されることができる。しかし、本発明の組成物の投与経路は患者の症状及び要求値に基づいて担当医者によって決められるべきである。
【0034】
本発明の組成物は、好ましくは錠剤の形態で製剤化することができる。好ましくは、本発明の組成物から得られたこのような錠剤は外部コーティング層を有し、このコーティング層はフィルムコーティングを形成することができる通常の高分子化合物からなることができる。このコーティングの含量は、投与容易性及び製造効率のために最小に減少されなければならず、製剤の総重量に対して約1重量%〜10重量%、好ましくは約3〜5重量%の範囲であり得る。前記コーティングは通常の錠剤コーティング方法によって行われる。前記組成を有し、前記方法によって製造された錠剤は通常の保管条件下で非常に安定し、光及び水分に対しても非常に安定する。
【0035】
以下、本発明を下記実施例に基づいて詳しく説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであるだけ、本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例)
実施例1:複合錠剤の製造−(I)
−ロサルタン顆粒部−
ロサルタンカリウム 50.0mg
微結晶セルロース 175.0mg
クロスポビドン 12.0mg
−アムロジピン顆粒部−
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピンとして5mg)
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.1mg
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
精製水 (65.0mg)
−潤滑剤−
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
−コーティング部−
ヒプロメロース 8.0mg
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0mg
二酸化チタン 2.0mg
タルク 0.1mg
エタノール (200.0mg)
精製水 (50.0mg)
前記ロサルタン顆粒部の成分を、ローラーコンパクターを用いて乾式顆粒化して75μmのメッシュを通過する微粒を20重量%以下の量で含むロサルタン顆粒部を製造した。アムロジピン顆粒部の成分を精製水65.0mg(錠剤当たり)を用いて湿式顆粒化した後、メッシュを通過させて乾燥して特定量の成分を有するアムロジピン顆粒部を製造した。前記アムロジピン顆粒部を、混合器を用いて30分間前記ロサルタン顆粒部と混合した。次いで、ここにステアリン酸マグネシウム潤滑剤を該当量添加し、5分間混合した。結果的に得られた混合物を打錠し、この錠剤を特定量のコーティング部成分を有するコーティング組成物でコーティングして複合錠剤を得た。この複合錠剤はアムロジピン5mg及びロサルタン50mgを含み、このロサルタン含量はコーティング部を除いた錠剤重量の約12.5%にあたる。
【0036】
実施例2:複合錠剤の製造−(II)
−ロサルタン顆粒部−
ロサルタンカリウム 50.0mg
リン酸二水素カルシウム 175.0mg
クロスポビドン 12.0mg
−アムロジピン顆粒部−
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピンとして5mg)
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.1mg
リン酸二水素カルシウム 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
精製水 (65.0mg)
−潤滑剤−
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
ロサルタン顆粒部とアムロジピン顆粒部それぞれで微結晶セルロースの代わりにリン酸二水素カルシウムを用いたことを除いては実施例1と同一の工程を行って複合錠剤を製造した。この複合錠剤はアムロジピン5mg及びロサルタン50mgを含み、このロサルタン含量はコーティング部を除いた錠剤重量の約12.5%にあたる。
【0037】
実施例3:複合錠剤の製造−(III)
−ロサルタン顆粒部−
ロサルタンカリウム 50.0mg
微結晶セルロース 175.0mg
クロスポビドン 12.0mg
−アムロジピン顆粒部−
カンシル酸アムロジピン 15.68mg(アムロジピンとして10mg)
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.2mg
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
精製水 (65.0mg)
−潤滑剤−
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
−コーティング部−
ヒプロメロース 8.0mg
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0mg
二酸化チタン 2.0mg
タルク 0.1mg
エタノール (200.0mg)
精製水 (50.0mg)
アムロジピンの量とブチル化ヒドロキシトルエンの量を2倍にしたことを除いては実施例1と同一の工程を行って複合錠剤を製造した。この複合錠剤はアムロジピン10mg及びロサルタン50mgを含み、このロサルタン含量はコーティング部を除いた錠剤重量の約12.3%にあたる。
【0038】
実施例4:複合錠剤の製造−(IV)
−ロサルタン顆粒部−
ロサルタンカリウム 100.0mg
微結晶セルロース 350.0mg
クロスポビドン 24.0mg
−アムロジピン顆粒部−
カンシル酸アムロジピン 15.68mg(アムロジピンとして10mg)
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.2mg
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
精製水 (65.0mg)
−潤滑剤−
ステアリン酸マグネシウム 5.0mg
−コーティング部−
ヒプロメロース 8.0mg
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0mg
二酸化チタン 2.0mg
タルク 0.1mg
エタノール (200.0mg)
精製水 (50.0mg)
ロサルタン顆粒部の構成成分それぞれの量を2倍にし、ステアリン酸マグネシウムを5mg用いたことを除いては実施例3と同一の工程を行って複合錠剤を製造した。この複合錠剤はアムロジピン10mg及びロサルタン100mgを含み、このロサルタン含量はコーティング部を除いた錠剤重量の約15.5%にあたる。
【0039】
実施例5:複合錠剤の製造−(V)
−ロサルタン顆粒部−
ロサルタンカリウム 50.0mg
微結晶セルロース 25.0mg
クロスポビドン 12.0mg
−アムロジピン顆粒部−
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピンとして5mg)
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.1mg
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
精製水 (65.0mg)
−潤滑剤−
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
−コーティング部−
ヒプロメロース 8.0mg
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0mg
二酸化チタン 2.0mg
タルク 0.1mg
エタノール (200.0mg)
精製水 (50.0mg)
前述した特定量で成分を用いたことを除いては実施例1と同一の工程を行ってコーティング部を除いた錠剤重量の約20%の量でロサルタンを含む複合錠剤を製造した。
【0040】
実施例6:複合錠剤の製造−(VI)
−ロサルタン顆粒部−
ロサルタンカリウム 50.0mg
微結晶セルロース 350.0mg
クロスポビドン 24.0mg
−アムロジピン顆粒部−
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピンとして5mg)
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.1mg
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
精製水 (65.0mg)
−潤滑剤−
ステアリン酸マグネシウム 5.0mg
−コーティング部−
ヒプロメロース 8.0mg
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0mg
二酸化チタン 2.0mg
タルク 0.1mg
エタノール (200.0mg)
精製水 (50.0mg)
前述した特定量で成分を用いたことを除いては実施例1と同一の工程を行ってコーティング部を除いた錠剤重量の約8.5%の量でロサルタンを含む複合錠剤を製造した。
【0041】
実施例7:複合錠剤の製造−(VII)
−ロサルタン顆粒部−
ロサルタンカリウム 50.0mg
クロスポビドン 12.0mg
−アムロジピン顆粒部−
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピンとして5mg)
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.1mg
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
精製水 (65.0mg)
−潤滑剤−
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
−コーティング部−
ヒプロメロース 8.0mg
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0mg
二酸化チタン 2.0mg
タルク 0.1mg
エタノール (200.0mg)
精製水 (50.0mg)
前述した特定量で成分を用いたことを除いては実施例1と同一の工程を行ってコーティング部を除いた錠剤重量の約22.2%の量でロサルタンを含む複合錠剤を製造した。
【0042】
比較例1:アムロジピン及びロサルタンの単純混合物含有直打錠の製造
−混合部−
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピンとして5mg)
ロサルタンカリウム 50.0mg
微結晶セルロース 150.0mg
リン酸二水素カルシウム 60.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 24.0mg
ポリビニルピロリドン 3.0mg
−潤滑剤−
ステアリン酸マグネシウム 2.0mg
すべての成分の該当量を共に混合した後、得られた混合物を直打錠に製造した。この直打錠はアムロジピン5mg及びロサルタン50mgを含み、このロサルタン含量は錠剤重量の約16.8%にあたる。
【0043】
比較例2:複合錠剤の製造−(VIII)
−ロサルタン顆粒部−
ロサルタンカリウム 100.0mg
微結晶セルロース 38.0mg
クロスポビドン 12.0mg
−アムロジピン顆粒部−
カンシル酸アムロジピン 7.84mg(アムロジピンとして5mg)
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.1mg
微結晶セルロース 90.0mg
マンニトール 40.0mg
デンプングリコール酸ナトリウム 17.0mg
ポリビニルピロリドン 5.0mg
精製水 (65.0mg)
−潤滑剤−
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
−コーティング部−
ヒプロメロース 8.0mg
ヒドロキシプロピルセルロース 2.0mg
二酸化チタン 2.0mg
タルク 0.1mg
エタノール (200.0mg)
精製水 (50.0mg)
前述した特定量で成分を用いたことを除いては実施例1と同一の工程を行ってコーティング部を除いた錠剤重量の約32.0%の量でロサルタンを含む複合錠剤を製造した。
【0044】
以上の実施例1〜7、比較例1及び2の製剤の物性を下記表1に示した。
【0045】
【表1】

【0046】
試験例1:アムロジピン溶出試験
実施例1で得られたアムロジピン5mg-ロサルタン50mg含有複合錠剤、比較例1で製造されたロサルタンとアムロジピンの混合物含有直打錠、及びカンシル酸アムロジピン製剤であるアモディピン(Amodipin、商品名)それぞれに対して下記条件で薬物溶出試験を実施した。
−試験条件−
溶離液:0.01N HCl(pH 2.0)500ml
溶出試験システム:USPパドル式、75rpm
温度:37℃
−分析条件−
カラム:5μm液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルで充填されたステンレス鋼カラム(内径4.6mm、長さ15cm)
移動相:メタノールと0.03Mリン酸二水素カリウムとの混合物(600:400、 v/v)
検出器:紫外分光光度計(350nm)
流速:1.5 ml/分
注入量:20μl
−溶出率の判定基準−
30分経過時80%以上。
−結果−
図1に示すように、実施例1によりロサルタンとアムロジピンの分離した顆粒を用いて製造された複合錠剤は、比較例1の直打錠に比べてさらに2倍以上高いアムロジピン溶出率を示した。また、比較例1の錠剤の溶出率は、判定基準を満たしていない一方、実施例1の錠剤の溶出率は判定基準を満した。
【0047】
試験例2:実施例1〜4の製剤のアムロジピン溶出試験
実施例1〜4の複合錠剤それぞれに対して試験例1と同一の試験及び分析条件下で薬物溶出試験を実施した。
−結果−
図3に示すように、実施例2〜4の複合錠剤は、高くてかつ安定したアムロジピン溶出率を示して、これは0.01NHCl(pH 2.0)での実施例1の錠剤の溶出率に類似している。このような結果から、複合錠剤中のロサルタンの重量百分率が適正水準を超えない場合、複合錠剤は賦形剤の種類及びアムロジピンまたはロサルタン顆粒部の量と関係なく、高くかつ安定したアムロジピン溶出率を示すことがわかる。
【0048】
試験例3:実施例1、3及び7、並びに比較例1及び2の製剤のアムロジピン溶出試験
実施例1、3及び7、及び比較例1及び2で製造された錠剤それぞれに対して試験例1と同一の試験及び分析条件下で薬物溶出試験を実施した。
−試験条件−
溶離液:人工胃液(pH1.2)または0.01N HCl(pH 2.0) 900ml
溶出試験システム:USPパドル式、50rpm
温度:37℃
−結果−
前記溶出試験システム(USPパドル式、50rpm)は、経口製剤用薬物の溶出率を測定するのに最も広く用いられ、用いられた溶離液(人工胃液(pH1.2)または0.01N HCl(pH 2.0))は、胃管のpHと類似したpHを有する。
【0049】
図3に示すように、実施例1、3及び7で得られた複合錠剤は、比較例1及び2で得られた錠剤に比べて非常に高いアムロジピン溶出率を示した。この結果は、ロサルタン及びアムロジピンの分離した顆粒を含み、ロサルタンを25重量%以下の量で含む製剤の初期30分間で、溶出率が低いpH(pH1.2及びpH 2)で判定基準を満たす80%以上であることを示す。
【0050】
試験例4:実施例4〜6及び比較例2の製剤のアムロジピン溶出試験
実施例4〜6及び比較例2で得られた複合錠剤それぞれに対して、試験例1と同一の試験及び分析条件下で薬物溶出試験を実施した。
−結果−
図4に示すように、実施例4〜6で得られた複合錠剤の30分経過時の溶出率が80%以上であり、これは試験例3の結果と一致する。
【0051】
試験例5:実施例1、3及び7、並びに比較例1及び2の製剤のロサルタン溶出試験
実施例1、3及び7、並びに比較例1及び2で得られた錠剤及びコザール(商品名)それぞれに対して、下記条件下で薬物溶出試験を実施した。
−試験条件−
溶離液:人工胃液(pH1.2)または0.01N HCl(pH 2.0)900ml
溶出試験システム:USPパドル式、50rpm
温度:37℃
−分析条件−
カラム:5μm液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルで充填されたステンレス鋼カラム(内径4.6mm、長さ15cm)
移動相:
移動相A−リン酸緩衝液:アセトニトリル(850:150、v/v)
移動相B−アセトニトリル
濃度勾配(gradient)システム
【0052】
【表2】

【0053】
検出器:紫外分光光度計(250nm)
流速:1.5ml/分
注入量:10μl
−結果−
前記溶出試験システム(USPパドル式、50rpm)は、経口製剤用薬物の溶出率を測定するのに最も広く用いられ、用いられた溶離液(人工胃液(pH1.2)または0.01N HCl(pH 2.0))は胃管のpHと類似したpHを有する。
【0054】
図5に示すように、実施例1、3及び7で得られた複合錠剤は、比較例1及び2で得られた錠剤、及びロサルタン単一製剤であるコザール(商品名)に比べて非常に高いロサルタン溶出率を示した。
【0055】
試験例6:アムロジピンの安定性試験
アムロジピンとロサルタンの分離した顆粒を用いて製造された実施例1で得られた複合錠剤、及び比較例1で得られた直打錠に対して下記条件下で安定性試験を行った。
【0056】
培養条件:40℃、75%相対湿度でHDPE瓶
培養時点:0ヶ月、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月
試験対象:アムロジピン
分析条件:実施例1の分析条件
その結果は下記表3の通りである。
【0057】
【表3】

【0058】
前記表3で分かるように、実施例1で得られた複合錠剤が、比較例1で得られた直打錠に比べてさらに高いアムロジピン安定性を示した。
【0059】
以上、本発明を前記実施例を中心に説明したが、これは例示に過ぎず、本発明は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者に明らかであり、多様な変形及びそれに等しいその他の実施例を、以下に添付した特許請求の範囲内で行うことができるという事実を理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムロジピン(amlodipine)またはその薬剤学的に許容される塩、及びロサルタン(losartan)またはその薬剤学的に許容される塩を含む心血管疾患の予防または治療用の固形薬剤学的組成物。
【請求項2】
前記アムロジピンまたはその薬剤学的に許容される塩と、前記ロサルタンまたはその薬剤学的に許容される塩が互いに分離していることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アムロジピンまたはその薬剤学的に許容される塩と、前記ロサルタンまたはその薬剤学的に許容される塩が両方とも互いに分離して顆粒化されていることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ロサルタンまたはその薬剤学的に許容される塩を組成物の総重量に対して3重量%〜25重量%の量で含むことを特徴とする請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ロサルタンまたはその薬剤学的に許容される塩を組成物総重量に対して5重量%〜22.3重量%の量で含むことを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記アムロジピンの溶出率がpH1.0〜2.0範囲において30分経過時、その溶出率の80%以上であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
75μmのメッシュ(mesh)を通過する微粒の百分率が50%未満の顆粒化されたロサルタンをさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
75μmのメッシュを通過する微粒の百分率が25%未満の顆粒化されたロサルタンをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
75μmのメッシュを通過する微粒の百分率が10%未満の顆粒化されたロサルタンをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記アムロジピンの薬剤学的に許容される塩がアムロジピンカンシル酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記心血管疾患が、狭心症、高血圧、動脈攣縮、心不整脈、心肥大、脳梗塞、うっ血性心不全及び心筋梗塞からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項3に記載の組成物の製造方法であって、
a)ロサルタンまたはその薬剤学的に許容される塩及び薬剤学的に許容される賦形剤の混合物を顆粒化し、乾燥して、ロサルタン顆粒を得る段階と、
b)アムロジピンまたはその薬剤学的に許容される塩及び薬剤学的に許容される賦形剤の混合物を顆粒化し、乾燥して、アムロジピン顆粒を得る段階と、
c)段階a)で得られた前記ロサルタン顆粒を段階b)で得られた前記アムロジピン顆粒と混合する段階とを含み、
互いに分離して顆粒化された前記アムロジピン及び前記ロサルタンを含む、組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−515767(P2012−515767A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547742(P2011−547742)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/KR2009/000704
【国際公開番号】WO2010/085014
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(510316693)ハンミ・ホールディングス・シーオー.,エルティーディー. (10)
【氏名又は名称原語表記】HANMI HOLDINGS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】#45, Bangi−dong, Songpa−gu, Seoul 138−828, Republic of Korea
【Fターム(参考)】