説明

アムロジピン含有フィルム製剤

【課題】アムロジピン又はその塩の安定性を向上させたフィルム製剤を提供すること。
【解決手段】本発明のフィルム製剤は、コーティング層からなる一対の最外層と、該最外層に挟持された少なくとも1つの薬物層とを備え、薬物層がアムロジピン又は及びその塩と、ポリビニルピロリドンと、グリセリンと、フィルム形成剤とを含有することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アムロジピン又はその塩の安定性を向上させたフィルム製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗剤であるアムロジピン及びその塩は、優れた血管拡張作用を有し、高血圧症や狭心症の治療薬として使用されている。
また、アムロジピン又はその塩を含有するする製剤の剤型としては、錠剤、カプセル剤、ゼリー剤、グミ剤、ドライシロップ、散剤、細粒剤、顆粒剤、チュアブル剤、口腔内崩壊錠、フィルムコート錠等が知られている(特許文献1〜7)。
【0003】
近年平均寿命が伸長し、日本人口における65才以上の割合も21%に達している。このような状況の中、介護を必要とする嚥下困難な高齢者でも服用可能な剤型が望まれていた。上記剤型の中で口腔内崩壊錠は、口腔内での崩壊性が速く嚥下し易く、水なしで服用可能といった優れた利点を有しているが、そのためには添加物を多く配合する必要があり、より一層嚥下し易く、かつ簡便に製造可能な製剤が望まれていた。
【0004】
このような要望に応えるべくフィルム製剤が開発されているが、フィルム製剤は、例えば、セルロース系高分子等の基剤で構成される薄いシート状の製剤(特許文献8)であり、口腔内崩壊錠の利点を保持しつつ、基剤量が少ないため、口腔内崩壊錠より崩壊性が早く、嚥下し易いという長所を有している。
しかしながら、アムロジピン又はその塩を含有するフィルム製剤は未だ知られていない。
【0005】
【特許文献1】特開2003−40775号公報
【特許文献2】特開2006−306754号公報
【特許文献3】特開2007−63263号公報
【特許文献4】特開2007−126407号公報
【特許文献5】特開2008−13489号公報
【特許文献6】特開2008−133231号公報
【特許文献7】特開2008−133232号公報
【特許文献8】特許第3460538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らはアムロジピン又はその塩を含有するフィルム製剤を常法により調製したところ、意外にもフィルム製剤中ではアムロジピン又はその塩の安定性が非常に悪く、このままでは医薬品としての供給は困難であるとの問題点を見出した。
したがって、本発明の課題は、アムロジピン又はその塩の安定性を向上させたフィルム製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、コーティング層からなる一対の最外層の間に薬物層を配置し、薬物層中にアムロジピン又はその塩に特定成分を組み合わせて含有せしめることで、アムロジピン又はその塩の安定性が顕著に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、コーティング層からなる一対の最外層と、該最外層に挟持された少なくとも1つの薬物層とを備え、薬物層がアムロジピン又はその塩と、ポリビニルピロリドンと、グリセリンと、フィルム形成剤とを含有することを特徴とするフィルム製剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アムロジピン又はその塩の安定性、特に熱的安定性を向上させたフィルム製剤を提供することができる。また、本発明のフィルム製剤は、口腔内の水分だけで速やかに溶解(速溶性)するため嚥下し易く、ハンドリング性にも優れるものである。
したがって、介護を必要とする嚥下困難な高齢者でも容易に服用することが可能であり、高血圧症や狭心症の治療に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のフィルム製剤は、コーティング層からなる一対の最外層と、該最外層に挟持された少なくとも1つの薬物層とを備えるものである。
薬物層は、アムロジピン又はその塩と、ポリビニルピロリドンと、グリセリンと、フィルム形成剤を含有するものであるが、コーティング層は、本製剤の可塑性や成形性を向上させる効果を持ち、崩壊剤、矯味剤、甘味剤及び着色剤から選ばれる少なくとも1種と、フィルム形成剤を含有するものが好ましい。
また、本発明のフィルム製剤は、2つの薬物層の間及び/又は薬物層とコーティング層との間に各層間の圧着性や可塑性を向上させる中間層を更に備えていてもよい。中間層は、崩壊剤及び可塑剤から選択される少なくとも1種と、フィルム形成剤を含有するものが好ましい。
【0011】
次に、本発明のフィルム製剤の構成成分について説明する。
本発明に使用するアムロジピン又はその塩は、公知の製造法によって得ることが出来る。アムロジピンは、単一の光学活性体であっても、ラセミ体であってもよいが、(S)−(−)体及びラセミ体が好適に使用される。
また、アムロジピンの塩としては薬学上許容される塩であれば特に限定されるものではないが、例えば、有機酸又は無機酸との塩が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸が例示され、また有機酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、エタンスルホン酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、コハク酸、サリチル酸、ピログルタミン酸、ベシル酸が例示される。これらは、1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。中でも、アムロジピンの塩としては、特にベシル酸との塩が好ましい。
【0012】
アムロジピン又はその塩の含有量は適宜設定することが可能であるが、例えば、成人用の製剤1枚当たり、アムロジピンとして2.5〜5mgを含有することが好ましい。また、その服用回数は1日1回であることが好ましい。これらは症状に応じて適宜増減することが出来る。
本発明のフィルム製剤中のアムロジピン又はその塩の含有量は、1〜50質量%が好ましく、2.5〜40質量%が更に好ましく、5〜30質量%が特に好ましい。また、薬物層中のアムロジピン又はその塩の含有量は、5〜90質量%が好ましく、10〜80質量%が更に好ましく、20〜70質量%が特に好ましい。
【0013】
本発明に使用するポリビニルピロリドン(以後、PVPと表記することもある)は、一般に、1−ビニル−2−ピロリドンの直鎖重合物であって、分子量が約40,000〜360,000であるが、このようなPVPとして市販品(例えば、ポリビニルピロリドンK−30、ポリビニルピロリドンK−90(日本触媒(株))や、クリージャス(第一工業製薬(株))を使用することができる。PVPは、薬物層中において、アムロジピン又はその塩の安定化剤として用いられる。
【0014】
本発明のフィルム製剤中のPVPの含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。また、薬物層中のPVPの含有量は、0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜20質量%が更に好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
【0015】
本発明に使用するグリセリンとしては、濃度84〜87%のグリセリンが好ましく、濃度98%以上の濃グリセリンが特に好ましい。このような濃グリセリンとしては、市販品(例えば、日本薬局方濃グリセリン(花王(株))、日本薬局方濃グリセリン(阪本薬品工業(株))を使用することができる。グリセリンは、薬物層中において、アムロジピン又はその塩の安定化剤として用いられる。
【0016】
本発明のフィルム製剤中のグリセリンの含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましく、1〜 5質量%が特に好ましい。また、薬物層中のグリセリンの含有量は、0.5〜50質量%が好ましく、1〜30質量%が更に好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
【0017】
本発明におけるフィルム形成剤とは、その水溶液及び/又はアルコール含有水溶液を乾燥したときにフィルムを形成する性質を有する成分を意味し、このようなフィルム形成能を有する成分であれば特に限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、HPMC)、プルラン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、カルボキシメチルセルロース・カリウム、カルボキシメチルセルロース及びアルギン酸ナトリウム等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を組み合せて用いることが出来る。とりわけ、アムロジピン及びその塩の安定性の観点から、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースを用いることが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースを薬物層及び中間層に使用し、ヒプロメロースをコーティング層に使用することが特に好ましい。
【0018】
ここで、ヒドロキシプロピルセルロースとは、セルロースのヒドロキシプロピルエーテルを意味し、市販品(例えば、セルニーSSL、セルニーSL、セルニーL、セルニーM、セルニーH(日本曹達(株))、L−HPC(低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、信越化学工業(株)等)を使用することができる。ヒドロキシプロピルセルロースにおける置換度は、特に限定されるものではなく、セルロースをエーテル化する際に置換度を予め設定することにより、所望の置換度のものを得ることができる。本発明においては、ヒドロキシプロポキシ基を50〜80%、更に53.4〜77.5%含むものが好ましい。なお、ヒドロキシプロピルセルロースの粘度は特に限定されるものではないが、例えば、20℃における2質量%水溶液の動粘度(第15改正日本薬局方)が2.0〜5.9mPa・sであるものが好ましい。ヒドロキシプロピルセルロースを薬物層及び中間層に使用する場合、中間層よりも薬物層の方が粘度の高いヒドロキシプロピルセルロースを使用することが好ましい。
【0019】
また、ヒプロメロースとは、メチルセルロースに2−ヒドロキシプロピル基を導入したセルロースエステルを意味し、市販品(例えば、TC−5、SB−4、メトローズ(信越化学工業(株)等)を使用することができる。ヒプロメロースにおける置換度は、特に限定されるものではなく、メチルセルロースをエーテル化する際に置換度を予め設定することにより、所望の置換度のものを得ることができる。本発明においては、ヒドロキシプロポキシ基を4〜12%、更に7〜12%、メトキシル基を19〜30%、更に28〜30%含むものが好ましい。なお、ヒプロメロースの粘度は特に限定されるものではないが、例えば、20℃における2質量%水溶液の動粘度(第15改正日本薬局方)が3.0〜15.0mPa・sであるものが好ましい。
【0020】
本発明のフィルム製剤中のフィルム形成剤の含有量は、0.5〜75質量%が好ましく、1〜70質量%が更に好ましく、2〜65質量%が特に好ましい。
また、薬物層中のフィルム形成剤の含有量は、5〜90質量%が好ましく、10〜80質量%が更に好ましく、20〜70質量%が特に好ましい。
更に、コーティング層中のフィルム形成剤の含有量は、30〜90質量%が好ましく、40〜80質量%が更に好ましく、50〜70質量%が特に好ましい。
また更に、中間層中のフィルム形成剤の含有量は、30〜95質量%が好ましく、40〜90質量%が更に好ましく、50〜85質量%が特に好ましい。
【0021】
本発明のフィルム製剤の薬物層には、上記成分以外に、必要に応じて、通常用いられる医薬品添加物を1種又は2種以上用いることが出来る。医薬品添加物としては、例えば、後述する崩壊剤、着色剤、矯味剤、甘味剤、可塑剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、薬物層中のこれらの含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜設定することが可能である。
【0022】
本発明に使用する崩壊剤としては、例えば、カルメロース及びその塩、デンプン、ショ糖脂肪酸エステル、ゼラチン、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、デヒドロ酢酸及びその塩、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、マルチトール、トレハロース等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合せが好ましい。中でも、マルチトール、トレハロースが特に好ましい。
本発明のフィルム製剤中の崩壊剤の含有量は、1〜30質量%、特に5〜25質量%であることが好ましい。
また、コーティング層中の崩壊剤の含有量は、5〜60質量%、特に10〜50質量%が好ましい。
更に、中間層中の崩壊剤の含有量は、1〜60質量%、特に10〜50質量%が好ましい。
【0023】
本発明に使用する矯味剤としては、例えば、メントール、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸及びこれらの塩等の酸味剤等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合せが好ましい。中でも、メントールが特に好ましい。
本発明のフィルム製剤中の矯味剤の含有量は、0.05〜1質量%、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。
また、コーティング層中の矯味剤の含有量は、0.1〜5質量%、特に1.0〜2.0質量%が好ましい。
【0024】
本発明に使用する甘味剤としては、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、グリチルリチン酸又はその塩(例えば、アルカリ金属塩)、ソーマチン、アセスルファムカリウム、サッカリン又はその塩(例えば、アルカリ金属塩)等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合せが好ましい。中でも、グリチルリチン酸の塩、サッカリンの塩及びスクラロースが特に好ましい。
本発明のフィルム製剤中の甘味剤の含有量は、0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%が好ましい。
また、コーティング層中の甘味剤の含有量は、0.1〜40質量%、特に1.0〜20質量%が好ましい。
【0025】
本発明に使用する着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、カラメル、黒酸化鉄、酸化チタン、三二酸化鉄、タール色素、アルミニウムレーキ色素、銅クロロフィリンナトリウム等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合せが好ましい。中でも、酸化チタン、三二酸化鉄が特に好ましい。
本発明のフィルム製剤中の着色剤の含有量は、0.01〜10質量%、特に0.05〜5質量%が好ましい。
また、コーティング層中の着色剤の含有量は、0.1〜20質量%、特に0.2〜15質量%が好ましい。
【0026】
本発明に使用する可塑剤としては、例えば、ゴマ油、ソルビトール、ヒマシ油、プロピレングリコール、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸エステル)、ポリエチレングリコール[例えば、マクロゴール400(オキシエチレン単位の重合度nが7〜9、以下、同様)、マクロゴール600(nが11〜13)、マクロゴール1500(nが5〜6と、nが28〜36との等量混合物)、マクロゴール4000(nが59〜84)、マクロゴール6000(nが165〜210)]等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合せが好ましい。中でも、ポリエチレングリコール、特にマクロゴール400が好ましい。
本発明のフィルム製剤中の可塑剤の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%が更に好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
また、中間層中の可塑剤の含有量は、0.1〜50質量%、特に0.1〜30質量%が好ましい。
【0027】
本発明のフィルム製剤は、コーティング層、薬物層、コーティング層が順次積層された3層構造を基本形態とするものであるが、同一種の層を隣接して積層した場合、それらは互いに密着し一体となって同一の機能を奏するため、本発明においては実質的に一層として取り扱うものとする。なお、フィルム製剤全体の厚みは、好ましくは50〜200μm、特に好ましくは70〜180μmである。その場合、薬物層の厚みは、好ましくは10〜50μm、特に好ましくは20〜40μmであり、またコーティング層の厚みは、好ましくは10〜50μm、特に好ましくは20〜50μmである。これにより、口腔内において速やかに溶解させることが可能である。また、本発明のフィルム製剤の大きさは、服用しやすいものであれば特に限定されるものではないが、例えば、1〜5cm2程度の大きさにすることが好ましく、その形状も服用しやすいものであれば特に限定されるものではなく、例えば、方形、円形、楕円形等を適宜選択することが可能である。
【0028】
本発明のフィルム製剤は、慣用又は公知の方法により適宜製造することができる。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の剥離フィルム上に、第一のコーティング層を積層し、次いで薬物層を積層した後、更に当該薬物層上に第二のコーティング層を積層することにより製造することができる。また、剥離フィルム上に、第一のコーティング層を積層し、更に薬物層を積層した中間製品と、別途、剥離フィルム上に第二のコーティング層を積層し、更に薬物層を積層した中間製品を作製し、次いで両者の薬物層同士が対向するように貼り合わせて圧着することによっても製造することが可能である。
また、2つの薬物層の間又は薬物層とコーティング層との間に中間層を有する場合には、上記と同様の方法により製造することが可能であるが、例えば、剥離フィルム上に、第一のコーティング層、中間層、薬物層、中間層、第二のコーティング層を順次積層するか、あるいは剥離フィルム上にコーティング層、中間層、薬物層を順次積層した中間製品を二式作製し、次いで両者の薬物層同士が対向するように貼り合わせて圧着することで製造することが可能である。
なお、第一のコーティング層と第二のコーティング層におけるフィルム形成剤は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
精製水30質量部に、ベシル酸アムロジピン3.47質量部(アムロジピンとして2.5質量部)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SL、日本曹達(株))6.95質量部、ポリビニルピロリドン(PVP−K90、日本触媒(株))1.0質量部及び濃グリセリン(局方濃グリセリン、花王(株))1.08質量部を加えて攪拌溶解し、薬物層溶液を得た。
また、精製水/無水エタノール(15質量部/15質量部)混合溶媒に、ヒプロメロース(TC−5R、信越化学工業(株))5.35質量部、トレハロース2.0質量部、サッカリンナトリウム0.3質量部、グリチルリチン酸二カリウム1.25質量部、L−メントール0.10質量部及び三二酸化鉄0.04質量部を加えて攪拌溶解し、コーティング層溶液を得た。
更に、精製水20質量部に、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SSL、日本曹達(株))5.2質量部、マルチトール3.0質量部、マクロゴール400 1.8質量部を加えて攪拌溶解し、中間層1溶液を得た。
先ず、ポリエステル製剥離フィルム上にコーティング層溶液を展延し乾燥してコーティング層を形成した後、該コーティング層上に薬物層溶液を展延し乾燥して薬物層を積層させた。次いで、薬物層上に中間層1溶液を展延し乾燥して、コーティング層/薬物層/中間層1の3層構造体を得た。
この3層構造体を2式作製し、2つの3層構造体の中間層同士が対向するようにラミネート機で熱圧着させ、コーティング層/薬物層/中間層1/薬物層/コーティング層の5層構造体を得た。この5層構造体を20×14mmに切断し、厚さ約100μmのフィルム製剤を得た。
【0031】
[実施例2]
実施例1の薬物層溶液中のベシル酸アムロジピン配合量を、6.93質量部(アムロジピンとして5.0質量部)に変えたほかは実施例1と同様にして、厚さ約100μmのフィルム製剤を得た。
【0032】
[実施例3]
実施例1と同様にして薬物層及び中間層1溶液を得た。また、実施例1のコーティング層溶液のグリチルリチン酸ニカリウム1.25質量部を、スクラロース0.42質量部に変えて、コーティング層溶液を得た。更に、精製水2質量部に、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SSL、日本曹達(株))1.6質量部、マクロゴール400 0.4質量部を加えて攪拌溶解し、中間層2溶液を得た。
先ず、ポリエステル製剥離フィルム上にコーティング層溶液を展延し乾燥してコーティング層を形成した後、該コーティング層上に中間層1溶液を展延し乾燥して中間層1を積層させた。次いで、中間層1上に薬物層溶液を展延し乾燥して、コーティング層/中間層1/薬物層の3層構造体を得た。
この3層構造体を2式作製し、一方の3層構造体の薬物層上に中間層2溶液を展延し乾燥して、コーティング層/中間層1/薬物層/中間層2の4層構造体を得た。
次いで、得られた3層構造体の薬物層と4層構造体の中間層2が対向するようにラミネート機で熱圧着させ、コーティング層/中間層1/薬物層/中間層2/薬物層/中間層1/コーティング層の7層構造体を得た。この7層構造体を20×14mmに切断し、厚さ約100μmのフィルム製剤を得た。
【0033】
[実施例4]
実施例1と同様にして、薬物層溶液を得た。また、実施例3と同様にしてコーティング層溶液を得た。更に、実施例1の中間層1溶液の溶媒を、精製水/無水エタノール(13.5質量部/6.5質量部)に変えたほかは同様にして、中間層1溶液を得た。
先ず、ポリエステル製剥離フィルム上にコーティング層溶液を展延し乾燥してコーティング層を形成した後、該コーティング層上に中間層1溶液を展延し乾燥して中間層1積層させて2層構造体を得た。
この2層構造体を2式作製し、一方の2層構造体の中間層1上に薬物層溶液を展延し乾燥して、コーティング層/中間層3/薬物層の3層構造体を得た。
次いで、得られた2層構造体の中間層1と3層構造体の薬物層が対向するようにラミネート機で熱圧着させ、コーティング層/中間層1/薬物層/中間層1/コーティング層の5層構造体を得た。この5層構造体を20×14mmに切断し、厚さ約100μmのフィルム製剤を得た。
【0034】
[参考例1]
実施例1の薬物層溶液中に、ポリビニルピロリドン及び濃グリセリンを配合しないほかは実施例1と同様にして、厚さ約100μmのフィルム製剤を得た。
【0035】
[参考例2]
実施例1の薬物層溶液中に、濃グリセリンを配合しないほかは実施例1と同様にして、厚さ約100μmのフィルム製剤を得た。
【0036】
[試験例]安定性試験
実施例1〜4及び参考例1〜2のフィルム製剤について、50℃で0.5ヶ月及び1ヶ月保存後のアムロジピンの残存率を測定した。残存率は、製剤中のアムロジピン含量をHPLC法で測定し、製造直後の含量に対する割合で算出した。
【0037】
実施例及び参考例で得られたフィルム製剤の組成、並びに安定性試験の結果を表1に示す。なお、表1中、50℃で0.5ヶ月保存したものを「50℃−0.5M」と表記し、また50℃で1ヶ月保存したものを「50℃−1M」と表記した。
【0038】
【表1】

【0039】
表1から明らかなように、ベシル酸アムロジピンを含有する薬物層にポリビニルピロリドンと濃グリセリンとフィルム形成剤を配合した本発明のフィルム製剤(実施例1〜4)は、50℃で1ヵ月間保存した後でも、アムロジピンの残存率は高い数値を示した。
一方、薬物層にポリビニルピロリドン及び/又は濃グリセリンを含有しない参考例1及び2のフィルム製剤では、経時的にアムロジピンの残存率が低下することが確認された。
したがって、アムロジピンを含有する薬物層にポリビニルピロリドンと濃グリセリンを配合することにより、アムロジピンの安定性が顕著に向上されることが判明した。
また、本発明のフィルム製剤(実施例1)を水なしで服用させたところ、30秒以内に口腔内で溶解したことから、即効性が期待されることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層からなる一対の最外層と、該最外層に挟持された少なくとも1つの薬物層とを備え、
薬物層がアムロジピン又はその塩と、ポリビニルピロリドンと、グリセリンと、フィルム形成剤とを含有することを特徴とするフィルム製剤。
【請求項2】
フィルム形成剤がヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒプロメロースである、請求項1に記載のフィルム製剤。
【請求項3】
2つの薬物層の間及び/又は薬物層とコーティング層との間に中間層を更に備える、請求項1又は2に記載のフィルム製剤。

【公開番号】特開2010−64965(P2010−64965A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230608(P2008−230608)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000161714)救急薬品工業株式会社 (14)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】